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1961-07-15 第38回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年七月十五日(土曜日)    午前十時三十三分開会    ———————————   委員異動 六月十日委員久保等辞任につき、そ の補欠として永岡光治君を議長におい て指名した。 六月十四日委員永岡光治辞任につ き、その補欠として久保等君を議長に おいて指名した。 六月十六日委員山本杉辞任につき、 その補欠として田中茂穂君を議長にお いて指名した。 六月十七日委員田中茂穂辞任につ き、その補欠として山本杉君を議長に おいて指名した。 七月五日委員久保等辞任につき、そ の補欠として岡三郎君を議長において 指名した。 本日委員坂本昭君及び岡三郎辞任に つき、その補欠として阿具根登君及び 占部秀男君を議長において指名した。    ———————————  出席者は左の通り。   委員長      吉武 恵市君   理 事            加藤 武徳君            高野 一夫君            藤田藤太郎君   委 員            鹿島 俊雄君            紅露 みつ君            谷口弥三郎君            徳永 正利君            山本  杉君            横山 フク君            相澤 重明君            阿具根 登君            占部 秀男君            小柳  勇君            藤原 道子君            相馬 助治君            村尾 重雄君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    厚生政務次官  安藤  覚君    厚生大臣官房    総務課長    熊崎 正夫君    厚生省公衆衛    生局長     尾村 偉久君    厚生省薬務局長 牛丸 義留君    厚生省社会局長 太宰 博邦君    労働省労政局長 冨樫 総一君    労働省労働基準    局長      大島  靖君    建設省河川局次    長       鮎川 幸雄君    ———————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査  (昭和三十六年梅雨前線豪雨による  被害に関する件)  (小児マヒワクチンに関する件)  (社会保険診療報酬に関する件) ○労働情勢に関する調査  (杵島炭鉱労働争議に関する件)    ———————————
  2. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  この際、委員異動について御報告をいたします。七月五日付、久保等君が辞任し、岡三郎君が選任されました。また、七月十五日付をもって、坂本昭君が辞任し、阿具根登君が選任され、また、岡三郎君が辞任し、占部秀男君が選任されました。以上であります。    ———————————
  3. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) まず、社会保障制度に関する調査の一環として、昭和三十六年梅雨前線豪雨による災害に関する件を議題といたします。  まず、当局より概括的御説明をお願いいたしたいと思います。
  4. 安藤覺

    説明員安藤覚君) お暑いおりから、まことに御苦労さんに存じます。  去る六月二十六、二十七、二十八の三日にわたりまして集中豪雨がございました。災害救助法を適用されました被害県は十三県に及び、市区町村によりますれば百十五市区町村にわたりまして、死者二百名をも出しておりますこと、まことに悲しいできごとでございまして、なくなられました方々に対し、また、その御遺族に対して、心から弔意を表する次第でございます。  これにつきましての厚生省としての対策につきましては、即時現地太宰局長等を急派をいたしましてつぶさに実情を視察いたしまするとともに、これに対する対策を講じた次第でございまして、それらの諸般の内容につきましては、詳細太宰局長より説明いたさせますが、その以前に、総務課長から総括いたしましたものを御報告申し上げまして、皆様方の御審議の材料に供したいと存ずる次第でございます。
  5. 熊崎正夫

    説明員熊崎正夫君) お手元に「六月集中豪雨災害に対する対策」ということで、厚生省から出しました資料を差し上げてございますが、それに基づきまして簡単に御報告を申し上げたいと存じます。各局共通事項がございますので、官房の方で一括御説明いたします。  中身は、「厚生省のとった応急措置」と、それからその裏に出ております二枚目の「今後の対策」というふうに分かれてございますが、応急措置につきましては、「災害救助対策関係」と「伝染病防疫対策関係」と「その他」に分けてございます。  それで、災害救助法が適用されましたのは、ただいま政務次官が御説明いたしました通り、三枚目の資料にございますが、十三県百十五市区町村になってございます。別紙1でございます。それで、被害状況は、五枚目のところごらんになっていただければおわかりと思いますが、人的被害は計千五百七十三名、住家被害が、合計のところごらんになっていただきますと、全体の戸数と世帯数人員が出てございまして、人員にいたしまして百二十一万八千名という多大な被害に相なっておるのでございます。  それで、厚生省といたしましては、すぐ指導官現地派遣をいたしますとともに、救援物資の発送をいたしました。CAC物資、これはアメリカの宗教団体から贈っていただいております物資でございまして、これを特に長野県の方に急送いたしますとともに、日本赤十字社から衣類等を急送いたしました。それから二のところに出ておりますように、災害救助法に基づきます国庫負担金概算交付を合わせて三千五百万円、長野県と岐阜県に概算交付をいたしまして、これはすでに交付済みでございます。それからホに出ておりますように、災害救助法適用基準につきまして、長期の水びたしになっておる地域等につきましてはたき出し期間等の延長を認めておるわけでございます。  それから次の伝染病防疫対策関係につきましては、係官を急派いたしましたことは、従来の通りでございます。それから地域指定消毒等実施といいますと、これは伝染病予防法に基づきまして鼠族昆虫駆除等実施厚生大臣が指定するのでございますが、これを各県について行ないまして、あわせてハのところ長野県に対しまして、特に飯田地方につきましては非常に浸水が激しかったのでございますので、防疫班を各県から急派いたしました。  その他のところにおきましては、従来の災害の例にかんがみまして、世帯更生資金増額決定資料に出ておりますように各県につきまして決定済みでございます。それから一枚めくっていただきまして、国民健康保険事務費療養費負担金の繰り上げ支給を実施いたしました。金額は計上されておる通りでございます。  次に、Bの今後の対策でございますが、今後の対策につきましては、まだ詳細な資料が各県から出てございませんので、これは一応電話連絡によりまして概算見込額を計上いたしましたのでございまして、これらに対しましてはそれぞれ予備費の支出、あるいは現在の予算の範囲内での増額というふうな措置をそれぞれとる予定にいたしてございます。おもな分を計上いたしまして、なおこれ以上の被害報告が出て参りました場合は、それぞれ適切な措置をとる予定にいたしております。金額的に非常に大きな額に上ると考えられますのは、口に出ております「下水道終末処理施設及び水道の施設災害復旧につき特別助成検討」でございまして、これは各県にわたっておりますが、特に長野県において多大の被害をこうむった地区が多いようでございます。  それから三の「社会福祉対策関係」の対策につきましては、これまで大災害がありましたたとえば伊勢湾台風そ他の災害に準じまして、それぞれ所要の措置を講ずることにいたしております。  以上、非常に簡単でございますが、資料に基づきまして御説明を終わらせていただきます。
  6. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  7. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、一つ仮設住宅というものをどういう工合に建てたか、その仮設住宅被害者の需要にどれだけ量として満たしたか、比率ですね、その点が一つ。  それからもう一つは、屋内堆積土砂の問題がこの前から問題になっているんだが、今度はここで太宰局長大臣答弁しているように、家の中に入った堆積土砂は、全額災害救助でやるということになっておるのだが、これはどういう措置をとられたか、一つも出ていないが、この二点を伺いたい。
  8. 太宰博邦

    説明員太宰博邦君) 今回の災害につきまして、相当な雨が降ったというほかに、ところによりまして山くずれとか、がけくずれとかいうようなことで倒壊家屋があり、また、河川がそういうことで決壊いたしたために土砂が家の中に入りました。なお、ところによりましては、その後雨がやはり相当続いて、間歇的でありますが、降ったりしておりましたために、救助の方がなかなか届かない、土砂が依然として家屋内にあるというようなところもございます。そこで仮設住宅の問題でございますが、これは前々から一応厚生省といたしましては、全壊流失家屋の三割という一応のめどを持っておりますが、しかしながら、これはあくまでも一応の基準でございまして、その実地必要性に応じてその三割を上回るものが必要であるならばこれをあれしてもよろしいと、こういうことで指導いたしております。そこで今回も災害地につきましては、そういう点を係官派遣いたしまして、その点も指導をいたしております。ただ、仮設住宅の問題は申し上げるまでもなく、まず避難所なり何なりに一応難を避けて、それで応急のあれが一段落したところでいろいろ身の振り方罹災者も考える、そういうようなところで身の振り方のつく方はつける、そうしてどうにもならぬという方々を見て仮設住宅を建てるわけであります。従いまして、若干仮設住宅決定及び着手が時間的にずれることはやむを得ないと思うのであります。ただいままでのところ、幾ら建てることになったというようなことは、まだ報告が集まっておりませんけれども、先ほど申したようなことで、実地実情に応じて、三割というのは一応のめどである、これ以上のことは必要があるならばやってもよろしいということが指示してございますので、現地もおそらく遺憾なきを期しておるということを申し上げてよろしいと思うのであります。  それから第二の屋内堆積土砂でございますが、これは前回藤田委員からの御質問にお答え申し上げましたように、やはり人間が居住しておりまする屋内土砂が堆積するということは、これはどうしても取り除かねばなりませんので、これを取り除く費用は災害救助法の中に概算いたす、こういうことでありまして、これは当然それでやっておるわけであります。
  9. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 仮設住宅の問題は、今避難所から順次必要に応じてということであって、基準があるけれども、できるだけのことをしたい、それで今の時点としてはわかりました。  堆積土砂の問題は、一日も早く出さなければどうにもならぬ問題なんです。だから、今の答弁じゃ、私はこの前ここで明らかにしたことは一つも明らかになっていない。道路建設省でやる。農地農地災害対策でやる。家の中のものは災害救助法堆積土砂を出す。今まできめているのは三%なんだ。五千円単位の三軒、百戸に対して。そういうものが基準だということで、各町村はそれだけしかもらえないということで困っているということを話をいたしました。いやそうじゃないのだ、災害対策については、約束した通り入った土砂は全部災害救助法で見るのだ。あまり単位は高くないけれども単位は五千円単位でやるのだという、災害救助法基本をそういう工合に考えているのだからというお話であります。しかし、今のような格好で漸次取りのけることになっていますと言うたかって、それじゃ三%という基準はあらためて通牒を出しておられるのかどうか。これさえ明らかになれば今のお話でけっこうだと思う。そこのところさえ明らかにしてもらえば今の局長答弁でけっこうだと思う、しかし、三%という基準をしいておいて、こんなことを言うてみても意味がない。
  10. 太宰博邦

    説明員太宰博邦君) これは私、長野県の伊那地方を見に行きましたときにも、私が参りましたのはすでに大雨が降りましてから五日ほどたったあとであります。なお、そのときにも雨が降ったりやんだりということでありました。途中まさに御指摘のように、屋内土砂が堆積しているところも見ました。これはしかし、そういうふうになおあと雨が降り、土砂くずれの危険があるというようなところがありますから、なかなか作業が進まないということは、これは無理からぬことでありまして、それとは別に屋内のあれを出すということは、三%ということはこれは先ほどの仮設住宅のあれと全く同じでありまして、私の方は何もそういうものでもって縛るというつもりはないわけであります。ただ一応のめど、従来の実績からいたしまして、大体三%あるいは仮設住宅の三割というのが一つめどであります。しかし、これはあくまでも一応のめどであって、実情に応じてこれがあれになってもいいということは、これは毎回指示しているわけであります。ことさら今回そのために通牒なんかを流す必要がないくらい、毎年係長会議をやって、その点は徹底しているわけでございますので、三%というもので足りないということが出て参りました場合には、それはほんとに足りないかどうかは調べますけれども、しかし、それが必要であるというならば、私の方はそれは認めることは前にお答え申し上げたと一緒であります。
  11. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そんなあいまいなことで私は実施できないと思う。仮設住宅でありますれば、それは今日まで高いところは四〇%、五〇%のところ実施されていることは、これは私はありがたいと思っています。仮設住宅はよそへ移動する人やしない人の平均は大体救える限界ということで、五〇%で済むとか、四〇%で済むということで、それは私は仮設住宅はいいと思う。しかし、家の中に入った堆積土砂というものは、災害救助法で見るという筋が一本立ってなければ、百戸に対して三軒だという基準でそこから上回ったらいいなんていうような理屈と僕は理屈が違うと思う。水がつかったところ——名古屋台風のように十万戸もつかって土砂が幾ら入ったというような計算で出てくる問題じゃない。川の沿線ならば百戸ともつかれば百戸とも堆積土砂になっているわけですから、そのどうにもならぬ分は災害救助法でとにかく家の中に堆積土砂がきたときには厚生省が見てやるという基準が、基本が明らかになっておればそれでよろしいということを言っているのです。それを三%という基準で、過去の例で、たくさん水のつかったところ、十万戸つかっても土砂が入ったのはそんなもの一五尺それは千戸もないでしょう、そんなものをものさしにして堆積土砂の取り扱いをきめたらいかぬということをこの前言って、そういうことはきめませんと云うけれども、今もやはり三%云々というお話が出てくるわけですから、そういうことでは、前の道路建設省、後は農林省、入ったところは百軒に三軒しか救わないという、地方行政庁にいったらそれしか考えていないけれども、だからそういうことはいかぬということで、そういうことはいたしませんと言ってこの前明らかになっているのだから、家の中に入った堆積土砂災害救助法で取り除きますということの筋をはっきりしておいてもらわなければいかぬということを言っているのです。そのほかの要らぬことは言っていないのだ。それを今の三%の基準があって、上回る実情に応じてなんということを、そこへいってはその肝心な問題が全部ぼけてしまうということを言っているのですよ。わかりませんか、私の言うことが。
  12. 太宰博邦

    説明員太宰博邦君) どうも藤田委員と私別に違ったことを考えているとも思わないのでありますが、三%というその基準は一応の基準である、その一応の基準も変えろというお話であるならばこれは一つ検討はいたしますけれども、しかし、その実情に応じて、そういうものは三%をこえたから認めないということは絶対にしておらぬのでございます。それで、その実情でもって、それが四%になっても五%になっても、どうしてもそれは土砂を取り除かなければいかぬのでございますから、それを取り除いた分について私どもの方でこれはもうもっともだと思うならばこれは認めます。ですからその点においては藤田委員と私は変わっていないと思うのでございます。
  13. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もう一言言うと、僕はそんなところものさしを三%にもっていくのが間違っていると思うのです。水が百戸つかっても一%の堆積土砂を出さないでもいいところもあるわけです。それかといって百戸のうち一〇〇%土砂を全部見てやらなければならぬところもあるわけですから、だから屋内堆積土砂災害救助法救助してあげますということをさえ言えばいいのであって、それ以外ことを、基準が三%と、名古屋伊勢湾台風基準が十万戸つかってそこで三%やったからということを、それは地方行政庁にいったら大体基準は三%だから、そんな上回った、たとえば五十戸入っても三%しかもらえないというものさししかはかれないのだ、地方に行ったら、そういうものさしではかってはいけない、千戸つかっても堆積土砂が一軒入ったら一軒で済む、百戸堆積土砂が入れば百戸の分は災害救助法で取りのけてやる、こういう趣旨が徹底していなければいかぬということを僕はこの前から言っているのです。それに三%という基準を持ってきたら、地方行政庁はどういうことを考えますか、地方行政庁の立場になってものを考えてみなさいということをこの前から言っているのです。だからとにかく屋内に入った堆積土砂は、基準は別として、救助法で取りのけますということを明らかにして下さい、千戸水につかろうが、二千戸水につかろうが、それを機械的に土砂は入ってないところにそこに救助する必要はありませんと、私の言い分はこれです。それを明らかにしなさいと言っているのです。
  14. 安藤覺

    説明員安藤覚君) 藤田委員の御質問の御趣旨よくわかりました。また、太宰局長がお答え申し上げていることにつきましても、私自身としまして一応理解がいくのでありまして、しかもその二人の質疑応答については、少しニュアンスの食い違いはあるかもしれませんけれども、大体において趣旨は一致しているのではないかと思います。と申しますことは、藤田委員の言われた三%というものの基準というものを置くから、だから百戸のところでも、百戸に満たない、あるいは百戸に満たなくても三%ということにとらわれてそこに無理していこうということになるのではないかと、こういう御心配でございますので、そういう点につきましては、実際の運営においても、ぜひとも藤田委員の仰せになるようなことにならなければならぬと思います。その意味におきまして、先生の御質疑の、また御意見の御趣旨はよくわれわれとも了解できますので、太宰局長にも十分この点を考慮していただいて、実際の運営にあたってはできるだけ先生お話しの趣旨によっていかせるようにいたしたいと、かように存ずる次第でございます。
  15. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) ちょっと速記やめて。   〔速記中止
  16. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記始めて。
  17. 小柳勇

    小柳勇君 建設省厚生省被害状況はわかりましたが、次官は、閣議等で全体的な被害損害見積もり額についてどのように了承しておられるか。新聞などでわれわれ見ますが、二百五十億、三百億といっておりますが、政府はどのくらいに見積もっておられるかということをお聞きしておきたいと思います。
  18. 熊崎正夫

    説明員熊崎正夫君) 一応政府から先般の災害によります知事会議に提出をいたしました資料がございますので、これは自治省の方から提出された資料でございますが、建設関係におきましては、土木関係三百四十八億、億単位で申し上げます。農林関係では、大きなところ林道関係が約十億、それから農地が五十七億、農業用施設が九十四億、合わせて百六十億くらいになります。それから港湾関係大体一億でございます。文教が四億、計五百二十億。治山一般ということで、この五百二十億以外に一般で六十二億、総計五百八十億くらい、こういう資料になっております。
  19. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。今藤田委員も部分的に質問いたしておりましたが、三十三年、三十四年災害などで当委員会でいろいろ質問いたしましたが、現地における災害対策本部などの動きがにぶいという意見も相当あとで聞いたのですが、厚生省では今度の災害では三十三年、三十四年の災害のときと違った対策を何かおとりになったのかどうか、三十三年の対策、三十四年の対策と同じようなことで災害対策をやっておられるか、その点の変わったところをお聞きしておきたいと思います。
  20. 太宰博邦

    説明員太宰博邦君) まあ今回の災害が発生いたしますれば、これはもうすぐにそれぞれの現地災害対策のまあ本部と申しますか、そういうものができる。ことに一番ひどいと思われました長野県の下伊那地方は副知事がそこに常駐して、その下に地域を分かって部長クラスが二、三人常駐して指揮をとっているというようなことで、その辺はそういうことで、それからまた私一週間ほどたってから行きましていろいろ聞きましたのですが、大体厚生省応急救助に関します限りにおいてはまあまあ私は順調にいっていたと、これはいろんな、現地現地なりに苦労しておると思いますが、そういうことでうまくいった。今回の特色というか、一つの困りました点は、まあ下伊那地方は御承知のように、天龍川という非常に荒れる川を控えております。それにしかも山くずれ等がありましたために、その山奥の山村への救助に非常に困ったようであります。これがとても陸路では行けない。自衛隊の出動を頼んで道路開設をやっておりますが、まあたとえば飯田から束の方へ参ります大鹿村、それから上伊那郡の中川村の四億という部落は、このようなところはおそらく今日でも道路が十分についていないのじゃなかろうか、そういうようなところはとても道路開設を待っては救助が間に合いません。そこで空路でやらなければいかぬというようなところから、これはヘリコプターを動員いたしまして、これは陸上自衛隊の方に頼みまして陸上自衛隊の方から十六機、それから民間のヘリコプター、これが多いときで大体五機ほど、それからまあ米軍の方で六機ほどまた応援がありました。締めて二十七、八機のものが飯田あるいは上の方のヘリコプターの基地を中心としてそれぞれ分担して、まず医療班派遣、それから救助物資の輸送、それから陸路の便ではそういう山奥でけが人をどうにも処置できない、それから医療班をもってもそれはだめですから、病院へ運ぶためにというようなことで、これは相当活躍をしていただきました。これによってこういう奥地の救助がようやくできた、こういうようなことであります。こういう山間僻地のそういう救助の関連につきまして、今のヘリコプターというものがあったためにようやくどうにかできた、もしこれが陸路でやるというと、とても屈強な山になれた人でも峰から峰を七、八時間伝わっていくというような地域でございますので、とてもそれは間に合いません。そういうようなことは今後の災害救助対策についても、私どもとしても考えなければならぬ面がある。そういうようなことが教えられたわけです。この辺が一つ救助の面では特色でございます。  それからよけいなことになりますが、伝染病関係がだいぶ出ておりますが、実はまあ私が参りましたときに聞きましたのでは、その前から下痢患者があった、その前から下痢をしておったというのがだいぶありました。それにやはり災害のときの疲労なり何なりというのが加わっております。この辺のことはあります。しかし、そのあと防疫の方は非常にやはりうまくいっておるのでありまして、その前からの分がこの赤痢患者の発生なんかにもある程度加わっているのですが、防疫の万もうまくいっているようにまあ考えているわけであります。さようなことでございまして、中央におきましては中央対策協議会をさっそく開きまして、これは各省との連絡を緊密にとるという対策をとっております。これは前回と同様でございます。
  21. 藤原道子

    ○藤原道子君 建設省の方見えておりますか。
  22. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 見えております。
  23. 藤原道子

    ○藤原道子君 ちょっとお伺いしたいのですが、私は奥地の被害が相当ひどかったと同時に、前に被害があった所がまた繰り返されているのですね。今度の水害では狩野川の問題にいたしましても、他の被害が大きかったから割合と騒がれていなかったけれども、前に被害を受けた所がまた被害を受けたという状況なんです。そこで私がお伺いしたいのは、河川の改修工事等がどういうお考えで進められているのか、これを伺いたい。たとえて言えば、狩野川の放水路ができている、だからもう大丈夫だ、それから黄瀬川の工事も——富士山から来ている川ですね、あれも上の方がずっとできて、下の方でも工事が進むから大丈夫だと言われて、沼津市内に住んでいる……。黄瀬川の合流点に公営住宅があるわけですね。そこらは建設省では遊水地帯にしなければ危険だと言われた所で、公庫がそこへ建て売り住宅を建てて売り渡したわけなんです。ところが、それが三回も四回も今まで水害を受けているのですね。放水路ができるし、黄瀬川の工事ができれば大丈夫だということで、半数以上は越したけれども、越すことのできない人たちが残っていて、今度は避難命令が出たとたんに水がわっと来ちゃって、屋根まで水没してしまった、こういうことなんです。それは建設省が遊水地帯にした方がいいと言われながら、地元の反対にあってそれができないで、そこへ公庫の家を建ててそれでまあ被害を毎年繰り返している。これは一つの私は責任があると思うのです。と同時に、放水路ができながら工事が遅々として進まないで完成していない。まあトンネルができていながらそこまで来たる水路ができないためにまた今度のような大きな被害が起きている。私考えるのに、自衛隊ができたものですから、富士山から来る方の水をずっと上流の方から先に改修して、水が急に来るようになった。ところが、下流の方はちっとも改修が進まない。だからこれはどうも私は天災とのみあきらめ切れないものがあると思うのですが、この改修等に対してどういうふうな方法で進んでいらっしゃるのか、それを聞かしてほしいのです。
  24. 鮎川幸雄

    説明員(鮎川幸雄君) ただいま御質疑の点は、一つは現在の河川改修工事がどういうふうに行なわれているかという点と、それから狩野川の放水路の問題、それから黄瀬川の改修と住宅の関係ですが、まず河川改修のただいまの根本的な考え方を申し上げますと、御承知のように、伊勢湾台風以後相当な被害を受けまして、もちろん過去における二十八年の災害その他いろいろの点で災害を受けましたので、建設省といたしましては河川改修の根本的な対策を講じておったわけでございますが、昭和三十五年度からは治山治水緊急措置法に基づきまして、治山及び治水両方ともに昭和三十五年度を初年度といたしまして十カ年で河川の改修の基本的な事業を達成するという目標でやっているわけでございます。昭和三十六年度はこの十カ年計画の第二年度に当たるわけでございますが、十カ年計画は御承知のように、前期五カ年と後期五カ年に分かれておりまして、昭和三十六年度は治水事業の基本計画から申し上げますと、第二年度に当たるわけでございます。今度の災害におきまして、直轄河川及び中小河川等も相当の被害を受けておるわけでございますが、全般的にまだ治水事業の面から見ますと十分な域に達してないというような状況でございまして、私どもといたしましては、今般の災害の状況等にかんがみまして、応急対策はもちろん、治水事業につきましてもいろいろな点に検討を加えております。できるだけ全般的に工事が促進するように考えておるわけでございます。  それから第二点の、狩野川の治水に関する改修事業の問題でございますが、御承知のように、狩野川は、先般大災害を受けまして、狩野川につきましてはそれに対する災害復旧工事を施工いたしました。また、放水路工事は、この狩野川台風前から、ずっと昔からこの放水路工事の計画はあったわけでございますが、いろいろの災害の結果、放水路工事を早く完成するということで、建設省といたしましてもできるだけ放水路の完成に力を注いで参っておるわけであります。ただしかし、現在、完成間近には来たっておるわけでございますが、放水路周辺の地盤等が若干悪い所がございまして、これに対する措置等について早急にやらなきゃいけないという問題が起こって参りまして、放水路工事の全体の完成が若干おくれておるという状況でございます。  それから狩野川全般について申し上げますと、今度の災害におきましては、今度の災害復旧工事等によりまして、本川その他の点についての洪水による被害は非常に少なかったわけでございますが、大場川その他中小の河川等におきまして若干の破堤等ございまして、はんらんを起こしているわけでございますが、そういう点につきましては、私ども現地をただいま調査もいたしておるわけでございますが、今後、そういう狩野川の本川と結びつきのある中小河川につきましてもその調査を十分にいたしまして、本川とともにそういう中小河川災害が起こらないように全力を注いで参りたいというふうに考えておるわけでございます。
  25. 藤原道子

    ○藤原道子君 大へん委員長が時間をに気してらっしゃるので、急いで申しますけれども、とにかく、その十カ年計画を聞いたって間に合わないんですよ。実は、この狩野川の水害のあったときに、その当時の建設大臣であった遠藤さん、放水路もできるし、黄瀬川の工事もできるから大丈夫だといって、地元へ来て演説してらっしゃるものだから、地元民は安心していたわけです。今度、私の家なんかでも、あっというか間に屋根まで来ちゃった。で、留守番の人がおぶさって表に出たときには胸まで……。そういう所に十カ年住んでるんです。しかも今度は、非常に土手がいたんでいるために、沼津全市が水浸しになるんじゃないかといって大騒ぎした。今までは、こちらといいますか、狩野川の沼津駅寄りの方があぶなかったんです。今度は対岸の方も浸水している。そういうことで、しかもそれは建設省——あなたは住宅でないから仕方がないけれども、住宅の係の人たちが、遊水地帯として前から建設省が言われた所へ公庫の住宅、そこが毎年やられている。あと半数以上の人は自費で引っ越しておる。しかも、大臣は大丈夫だといって、来て演説している。そして、そこが毎年々々……、まあ死ななかったからいいようなものですが、もし人命に損傷があったらどうしますか。沼津市民の気持としては、できるならばあそこ一帯を遊水地帯として全市を守ってもらいたい、こういう希望に燃えているわけです。建設省としても、中小河川だからといって、あまり問題にしないで、だんだん毎年被害がふえてくる。この前の被害よりも、ことしの被害は倍加している。こういう点、十分に対策を立ててもらいたい。神戸の被害だって住宅地の造成が適切でなかったために被害を受けておる。公庫の住宅を建てるにしても国の費用で建るわけですから、もう少し予算を大切に、しかも人命を尊重する建前から土地を選んでいただきたい。こういうことを一つ大臣に十分申し伝えておいて、今後再びこういう事態が起らないように御考慮願いたい。時間がないようですから、これは実地を十分検証してもらいたい。狩野川と黄瀬川のくっつく場所なのですから、そこから二百メートルしか離れてないところに住宅を建てるなんて、そんなあぶないことはない。こういう点十分に対策を立てていただきたいと強く要望しておきます。
  26. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記をやめて。    〔速記中止
  27. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記をつけて。  本件に関する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 御異議ないと認めます。    ———————————
  29. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 次に、社会保障制度に関する調査の一環として小児麻痺ワクチンに関する件を議題といたします。まず、当局よりその後の経過について御説明願います。
  30. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) お手元に資料を差し上げてございますが、今夏のポリオ流行の第二次緊急対策という表示のもので、そこに去る六月二十一日に厚生省決定いたしまして、生ワクの緊急投与をいたすことにいたしました対策の要領をそこに書いてございます。その前に、ここに至ります本年のその後のポリオの流行状況をごくかいつまんで短時間に申し上げます。三枚目の表をごらん願いますと、そこに本年の七月七日までの患者数と、それから昨年の同時期七月九日まで、これが二日ズレのありますのは、週日のズレです。ずっと週報をとっておりますから。一昨年、三十四年の七月十一日までの対比を出してございます。一番下の計で申し上げますと、一番右の欄の三十四年七月十一日現在、この年は、年間を通じまして三千名も出ました年でございます。そのときの七百五十八名に対しまして、昨年一千五百二名、本年は一千四百十八名、昨年より現在におきまして約百名少のうございますが、一昨年に比べますと、約二倍弱ということで、依然として昨年の大異常流行年と同様のテンポで進んでいる、こういう状況でございます。ただし、この内訳を見ますと、一番下の欄にございます九州各県、特に佐賀、長崎を除きまして、熊本、大分、宮崎、鹿児島とそれからその上の欄にございます福岡、この五県とそれからすぐ関門をへだてております山口県、この六県が非常な異常な状況にございまして、昨年と比べていずれも多い。特に熊本が昨年の三十七名、一昨年の二十一名に比較いたしまして、二百三十七名という十倍に近い数を出しておる。それから福岡県が昨年の二十六名、一昨年の三十九名に対しましてほぼ二百名という、この両県が最も異常な状況でございます。これと対比いたして非常に特徴のございますのが、一番上の北海道が一昨年の二十一名に対しまして昨年の現在百六十三名というこの年の五月から流行の始まりました相当な時期に達しておったのでございますが、本年は昨年の三分の一以下、約四分の一というような状況で、本年はそれほど異常な状況でないというので、昨年の北の端から本年は南の果てに飛んだ、しかも昨年は五月以降が主としての流行でございましたのが、本年は二月ごろから熊木を中心にいたしましてはやり出した、すなわち大体温度十度から十五度の時期に、本年はこの付近が猛威を発揮し出したという特殊な結果から見ましても、それからこの北から南にわずかな期間を経て流行が移動したという特徴を持っておるわけでございます。  それから次の四枚目のページの第一表というのが左にございます。これはただいまの表と比べまして、二週間以前の表でございます。要するに、週間発生、二週間にどれだけ出るかというのの対比のために出したのでございますが、前の千四百十八名に比べて二週間以前が千百七十四名、すなわち二週間で約二百四十名の増数、一週間で百二十名ということでございますので、大体一日に十六、七名の発生を見ておるということでございまして、やはりことしに入りましてから最近の週間発生はもちろん最多になっているわけでございます。一日の発生患者から見ますと、昨年ほどではございませんが、相当な異常流行を見ておる、こういう状況でございます。でしかも特徴といたしましては第二表にございますように、先ほど申し上げました山口を含みました九州地方六県、この六県の小計がちょうど六月二十四日、左の一表と同じ週に五百九十六名、全国当日千百七十四名のちょうど半数以上を占めておるわけでございます。他の四十県は従って半数以下ということで、非常にこの六県に片寄って異常な状況にある。昨年北海道が多数出たと申しても、やはり千五百二名中の百六十三名でございますから、これはほぼ一割の状況でございますが、今回はかくのごとき非常な地域的な集約性を持っておるという非常な特徴を持っておるわけでございます。その下に、念のために四十県の中で、特徴のあります昨年出ました北海道との対比、北海道は本年はこの六月二十五日のときの比較では半分、それから岩手県が昨年年度間通じましては特定のごく小さい部落地域に多発をいたしましたが、このときにはまだそれを出ておらずに、しかも岩手県全体としては昨年の三倍近いという特徴を持ったところでございます。東京は昨年とほぼ同数、現在もほぼ同数でございます。しかし、一昨年と比べますと三倍というテンポを持っておるわけでございます。ほぼこの六県を除きました他の四十県の一般の中でこういう三県あたりが特徴を持っております。あと宮城県というような、あるいは群馬県というようなごく小部落に若干数多発しているというごくわずかな特徴を持っておりますが、他はあまり特有なことがなく、昨年のほぼ半数近いテンポで進んでおる、こういうことでございます。  その次のページの五ページをお開き願いますと、これが従来しからば昨年と違う点は、本年の一月以来六カ月以上一才半未満には予備費による暫定措置で注射をし、さらに四月以降は一才半以上三才まで、法の改正に基づきまして拡大して法定のソークワクチン注射をして参ったのでございます。とれとの関連が昨年と対比されるわけでございますが、この接種をした者としない者とを分けて、患者発生がどうなっているかということを、これは非常に手数のかかる調査でございましたが、一応その特徴のある熊本以下四県についていたした資料でございます。  そこでありますように、熊本県の場合には三月終わりまでに接種を二回以上やった、六カ月ないし一年六カ月の児童、これは一番最初に暫定措置でやった者、これが二万二千五百名ございまして、その中からの六月までの発病者が八名、ところが、いろいろな事情で受けなかった者、これが一万二千五百七十名ございます。これから三十一名、すなわちこれを対比いたしますと、罹病率は熊本におきましては、接種完了者は三十五名、人口十万対三十五名、一方は二百三十九名すなわちほぼ八倍、八分の一程度に罹病率が落ちております。北海道の場合は同様な分け方をいたしますと、やった者からはこの六月までには発病皆無、やらなかった三万七千名からは十名出ている、これは二十六、こういうことでございます。それから岩手県は同様にやりました四千三百名は、ここは少しおくれておりまして、従って三月までに終わった対象者は少なかったのでございますが、これはゼロ、それから当時しなかった者で六月までに発病した者は四名、十七ということになっております。それから今非常に出ております福岡県でございますが、これは二回以上完了者、患者総数が九十九名のときの五月末までの総計でございますが、これで見ますと、三才未満の者で二回以上やりました者で出た者が九名、一回だけやった者から四名、全然未接種の者から五十五名、六十八名というのが全体、それからそれの上の年令と六カ月未満の者は、これはいずれもやっていないわけでございますが、これからは一回完了からは二名で、接種しない者からは二十九名、合計いたしますとほぼ百名、九十九名、その中で一回以上やりました者が十五名、全然やらない者から八十四名、こういうことでございまして、一回ないし二回でもすでに相当な効果を現わしておりまして、十倍から二十数倍の罹病率の低下、こういうような状況になっておると思います。  それからその次のページでございますが、六ページ、これが週間発生の疫学的な移動でございまして、一番上の点線、高い山の点線が、昨年以前十カ年間の——十回週があるわけで、同じ週が十回ございますから十週でございますが、その中で一番高い週間の発生をずっとつないだものが、一番上の点線でございます。それから一番下の点線は、十週ずつございます中の一番低い週をつないだものが一番下の点線、これの中央値をとりましたのが過去十年間のいわゆる平均値といいますか、それがまん中のぎざぎざの点線でございます。これに対して本年の週間発生がどうなっておるかといいますと、実線でございまして三十六と書いてある、これが一月以来過去十年間の中央値を上回りまして、ときどきたとえば七、八週目に最高値に達して、その後大体ほぼ中央値と最高値のまん中にきておったのでございますが、五月末から過去十年間の最高値を上回るような週間発生を見出した、こういうことでございまして、これが五月末からの傾向でございまして、現在に至るまで先ほど言いましたように週間百二十名の、ちょうど左の目盛の一〇〇のところを上回って続いているわけでございますので、これは過去十年間を飛び越えて発生している状況でございます。この六月に入りまして一そう異常な状況、ことに福岡を中心に異常な状況が継続しているという資料でございます。  七ページ、最後のページは、これは年令別に、しからばどういうふうに発生しているかという数字でございまして、法律の対象になっておりますソークワクチンを二回までやった者が、零才、一才、二才、ここまでございます。三十四年、すなわち異常流行でなかった、日本の常態における年間の患者分配率が在の欄でございます。三十四年、全国で今の接種をやるべき年代、三十四年は何もやっておりません。これが七一%までがいわゆる二才以下、三才未満でございます。ここに出ておる。ところが、本年の今半数を占めております九州方面、これの六県の数の分析から見ますと、二才以下、すなわち三才未満は六三%、ほぼ普通の日本の、何にもやらなかったときと比べて一〇%患者分配率が落ちておる。これは先ほどの資料でおわかりの通りに、一月以来のおくれはいたしましたが、予防接種の効果が相当に現われてきておるのを表わしておるわけでございます。従いまして、この予防接種の対象になっておらなかった三才、四才、五才、一応六才未満という、学校へ行く前のところでしぼりました八七・九%、これが普通の発生状況でございます。ところが、本年の九州では八五%までということでございますので、この三才から五才までの年令階層の合計が本年はふえておる。昨年はこの三つを合計いたしますと一九%になりますが、本年はその部分が約二三%に増加しておる。ここに患者分配率がある程度ふえておる。それから六才から九才までに至りますと、これはほとんどふえておらないのであります。六才以降、九才までのところ、九三%が九四%になっておるというわけで、若干ふえております。しかし、それ以上の者、すなわち小学校の五年以上、十才以上になりますと、平常の年が、ここから先は六・五%を占める。全患者の六・五%が十才以上、ずっと高年令まで、全体から見ますとわずかな数でございますが、本年はそれがさらに減りまして、二・四%ということになります。いわゆる年令の移動という部分は、十才以上には少しも及んでおらない。十才以上の発病数は減っておりますが、いわゆる高発年令である三才から九才までの予防接種をやっておらぬ対象の部分にふくれておる。そのふくれた部分だけが、接種をやりました二才、一才、零才の階級で約一〇%減少しておる、こういうことでございます。これがございますので、今般の予防接種法に基づくものが全然間に合わない。ことに六月に入りましてからの異常流行の様相から見まして、三才から特に五才までが一番ふくれておりまして、何らの免疫を受けておらぬここに重点を置く。さらに六才から九才までのところにおきましては、流行の兆のある地域に対しては、これを相当に強くやる。それと二才未満でやってない者はもとよりのこと、やっておりましても、まだ一回で今に達している者、二回やったがごく最近二回が終わった者という者は効果が不十分であろうというので、これは地域の特殊性もございますが、ほとんど全部が希望するということで、対象とする、こういう状況でございます。  以上のようなことでございますので、先般の法律改正のときにいろいろ御説明申し上げました当時は、こういうような当時のデータ、それから伝染病予防調査会の流行見込みというものを徴しまして、七割一分を占めておる三才未満にことしはとりあえずやれば、全国的にはまず相当に減少し得る。特殊流行を来たさない、こういう見込みでやったのでございますが、菌の関係もございましょうし、また、気候の関係等もございまして、その点は確かに有効に働いておりますが、全国的なことしの特徴に対しては、必ずしも十分な防疫対策にならないということで、急遽千三百万人に及ぶ生ワクの追加投与というものを踏み切りまして、大臣が御発表になった通りで、すでに十二日に千万人分が到着いたしまして、さらに数日を出ずして残りの三百万人分も到着し、全部をこの七月二十日ごろから数日ないし十日のうちに全国的に投与いたしまして効力を発揮させよう。これによりまして、八月以降の発生は相当かなり大幅に防遏できる。ことにそのほかにすでに三十五万人分の検査済のものを、流行地域であります福岡、熊本にはもうすでに六月中に投与をいたしまして、これは防遏の目的をもちまして試検投与を相当量やっておりますので、これも効果を今現わしつつあるということで、これと相待ちまして、今後相当有効な防疫ができるだろう。こう存じている次第であります。
  31. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 引き続きまして、生ワクチンの配布状況を御説明申し上げます。  資料の一番最後に、各県別の割当の表がございますが、これはただいま公衆衛生局長から申し上げました生ワク投与の具体的な方法といたしまして、一千三百万人分の生ワクを、どういう形のものを輸入するかということで、防疫当局の方は低年令の大体二才以下の者には液状のものがよろしい。それ以上の者はボンボンの形で、要するに使用し得る最終の製品で輸入した方がいいということでございましたので、そういうふうなものが現在海外でどういうところにあるかということを調査いたしまして、ソ連並びに西欧、アメリカ、カナダ各国を調査いたしましたところ、ボンボンの形はソ連に相当数量あるということがわかりました。それから液状で最終の形をしているものはカナダのコンノートにあるということがわかりましたので、ボンボンの形のものを、三型混合でございまして、それをそのまま投与できる形のものを一千万人分。それから液状、これも三型混合でそのまま希釈する等の措置をしないで、最終製品としての液状のもの三百万人分を輸入することにきめたわけでございます。そういたしまして、ただいま公衆衛生局長が言いましたように、ボンボン状のものをソ連からは十二日に入荷いたしまして、現在冷凍の倉庫に置いて各県別のこの表に基づきまして配布を現在準備中でございます。それから液状のものは十七日に大体カナダから空輸される予定でございますので、それも直ちに着きましたらこの計画に基づきまして各府県に配布するという見通しを立てているわけでございます。
  32. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  33. 小柳勇

    小柳勇君 この値段ですね生ワクの。注射する場合に値段を今各所で税金に比例して代金を取っておるんですが、これは非常に困るので、一律にするかゼロにしてくれ——全額国庫負担にしてくれ、こういうことですが、その対策について一つ
  34. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 従来の法定の注射ワクチンの方でございますが、これは現在一本二百七十一円ということで市町村がやる場合に、これは政令で法律の通りましたときにきまりまして、今の所得に比例して上の方の者はある程度徴収する。こういうふうになっておるわけです。大体四分の一取るものと四分の四取るものとこういうふうにしてあるわけでございますが、それ以外がゼロ、こういうふうにしてあるわけで、お説のように、この注射につきましては、非常に事務的に手数がかかる、費用負担の問題よりも非常にバランスの問題あるいは事務手続がかかるという声があるわけでございます。これを今後事務的にも簡便で、しかも相互の負担間の不公平な感じがしないような方法を先般の二回までの実績で今考慮しているわけでございます。ただこれは府県によりまして非常に意見がまちまちでございまして、いっそ二段階にしてくれというところもあるわけでございます。その二段階という意味は、たとえば二分の一ぐらいにして全部二段階——ゼロと二分の一のものにしてくれという意見と、それから四分の一のまん中に合わしてくれという意見と、それから、むしろ所得の線の引き方を少し上までするかわりに、全額とるものと、ゼロのものにしてくれと、この三つの意見が出ておりまして、非常にまちまちでございまして、やはりこれは町村並びに県が予算を組む関係がございまして、いろいろな県の財政事情でこういうまちまちがございます。これを調整いたしまして、画一がいいか、場合によれば政令以下でございますので、結果において県、町村の負担すべき対象額と同じになれば、やり方についてはその県がして一番うまくいけばという方法にまかすか、今これは検討中でございます。秋の三回目までには調整したいと、こう思っております。  それから今度の生ワクにつきましては、六才以下は全額無料、無料というのは、国費でもって全部買い上げまして、国費一本でございます。この部分は県にただで現物交付をしてそのまま流していくということでございます。それから、それに要する事務費は、これは六才未満と限らず、生ワク投与対象に対する事務費数十円かかるものは県と国で折半して、本人は無料ということでございます。従って、六才未満は全部ただで受けられる。それから六才以上の部分は、前と同様に経済的に困る方は六才未満と同じようにただ。それから今度は一本で三十円の実費を徴収するということにしてあるわけでございますが、これもやはり県の事情によりましては、非常に流行県でございますと六才以上に対しては臨時予防接種のつもりで県費で見、区別ができないというところはまずまずけっこうである、こういうことにいたしております。これは厳重にいたしておりません。これはあまり混乱は来たさぬで簡単にできるんじゃないか、こう思います。
  35. 小柳勇

    小柳勇君 注射の方の六才以上については、希望の者については無料にしてもらいたいという陳情が方々から出ておりますが、その点いかが検討されておるかどうかという点と、それから注射の点で、秋に調整すると言いますが、全部無料にした場合予算はどのくらいかかるのであるかお教え願いたいと思います。
  36. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 六才以上の注射でなくて、今回は生ワクでございますから飲む方でございます。飲む方の点につきましても全部無料という声が出ておりますが、これはただいま申し上げましたように、六才以上は全額——全員にはやらぬのでございまして、これは大体三分の一ぐらいの予測になりますが、ある程度必要な地域、これはいろいろな線を引いて指示しておりますが、そこにやりますので、従って、全部がやるわけでないので、一応その県下において事情によってはとれるところは今三十円というあっさりした形でとる、要するに負担にたえる者は。こういうことでございますので、この点については、実際に負担上困るとかいうようなことではあまり要望は出ておりませんけれども、非常に安いものでございますから——一回でございます。従って、この点はむしろそれよりも県が住民に対してどうせこういう同じ措置をやるならば全部無料でやりたいという意味の県側の希望が強いのでございまして、これを県と十分調整するということにいたしております。  それから注射の方は、あと残っておりますのが六カ月から三才までの秋の一回分が法定で残っているわけでございます。とれの予測人数は従いまして約三百万をこすわけでございます。三百五十万ぐらい。そういたしますと、一回全員からとりますとこれに二百七十一円をかけるわけでございますので、これは相当な金額になるわけでございます。ただし、そのうち四割は大体私どもの方で無料にするというふうに国費を補助予算を認めております。それから、さらに、上層階級のうちのまた一定数は四分の一だけ本人に負担させるという、そういう差額の補助予算を組んでおるわけでございます。従いまして、三百万人といたしまして、二百七十一円でございますから約八億になるかと思います。そのうちの約半分の額は公費で結局においては見る形になります。半分ほどが自己負担の方になっていくと、こういうことになるのであります。この点につきましては、現在、先般三月末に成立した法律でございまして、一応そういうような形できめられまして、政令その他省令等もそれに基づいて今実施中でございまして、今直ちにこれを変えるというわけにはいかぬかと思いますが、ただし、そのための経済負担によって十分な注射を受けられないということにつきましては、来年の問題には十分考えなければいけませんが、ことしはそういう受ける者は全部生ワクをあわせて投与いたしますので、これは全部無料の対象になっておりますので、この点はもし三回目の問題でございましても、これはことしの流行には十分両方が合わさって効果はあってそう心配は要らない。そうと言うよりは全く心配は要らない。こういうふうに今のところは考えております。
  37. 小柳勇

    小柳勇君 予防接種法を六才以下に改正するということも含んで検討中でございますか。
  38. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) これは法の改正をもしお願いするとすれば、先般成立したものを、ことしの流行の状況並びに今学者さんを派遣しておりますが、世界における流行対策の従来の実績を見まして、改正を要するものは当然改正しなければいかぬ。また、そのやり方は、従来三回注射して、一定の期間を置いてやるように定めておりますが、これもあるいは生ワクを併用するとか、あるいは対象別によりまして効果のある方はそっちを使う、それから適当なものは注射でいくとか、いろいろな方法が講ぜられると思いますが、現在のところは、まだその点の結論は出しておりませんが、現在実施中でございますので、その成績も見、それから外国の事情が正確にわかって参りますので、これもあわせて次期の法律改正についてはその上でお願いをする、こういうふうに考えておるわけでございます。
  39. 藤原道子

    ○藤原道子君 簡単に一つ。  ソークワクチンを三回やった赤ちゃんもやはり生ワクを飲ませるのですか。それが一つ。  それからもう一つは、せんだって新聞で、生ワクを飲んだ結果の副作用があったというようなことが出ていて非常にお母さんたち心配しております。その後の経過をちょっと聞かしてほしいと思います。
  40. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 先ほどの資料で御説明いたしましたように、二回やったものでもうすでに二十分の一程度に罹病率が落ちている、非常に有効になっておりますので、普通の考えでは三回やったものは必ずしも必要でないと思うのでございますが、しかしまあ、ほとんど全児童がやるのに何か取り残されてという社会的不安にやはりかられているというすでに実情になっておりますので、これも希望すればやって差し上げるように量は計算しております。ただし、たとえばお医者さんの子供さんとか、理屈上これは十分だという方には、これは別に強制でございませんのでそれは省く、こういうことでございます。  それから副作用につきましては、すでに三千名につきましては生ワクを五月六日から学者の手によって正確に投与をいたしております。もう二カ月たっております。その間の副作用は、投与後の二、三日間ごく微熱が出た者、それから軽い下痢が起こったり、あるいは発しんがごくわずか出たというのが数%出ております。これはソークの副作用、外国の副作用と全く同程度でございます。何らあとには障害を残さぬ。  それから数日前に報告されました生ワクの投与実験によりまして、一型と三型だけが終了した者が長岡で一人相当重症な発病をいたしました。これは生ワク自身とは絶対考えられない時期でございます。ただ唯一考えられますのが、これは分けて投与いたしたので、まだ二型の投与を終わる直前に発病しておりますので、菌の検索の結果二型菌でございますとこれは何ら効果がなかったので、あるいはそれによるか、あるいは一型等でありますれば、これはその体質から見まして生ワクを飲ましても一割近くはおなかを通過するだけで免疫を作りまして、一〇%程度の免疫の体質が予測されておるわけでございます。あるいはそれで新たにかかりたものは、今検討中でございます。菌の培養もいたしておりまして、おっつけわかりますが、要するに、直接の障害はソークと同様に飲んで、これによって引き起こされるということは今のところない、安心していいと断言できるわけでございます。
  41. 藤原道子

    ○藤原道子君 心配ないと断言してよいということをもう少し強調してほしいのです。そうしないと、今まで厚生省が生ワクをちゅうちょしていらっしゃる、そこにもってきて少しでもそういうことがあったということは新聞に出るが、絶対大丈夫だという保証が新聞に出ていない。私たちは大丈夫だといって早くから生ワクを勧めたいと思っておりますが、一般の親の気持はそういうことでございますので、大丈夫だということをもう少し何かで発表していただきたい。  それからいま一つ、一方では気違いのように心配しておる親がある反面、無関心の人がおる。こういうことがありながら案外うっちゃらかしておる、こういう人に対してのPRですね。無関心の人たちも必ず受けさせるという親切心を持っていただきたい。そのときに発熱してしまっていておくれた人があって、受けられなかった人で、今度行くと薬があるとかないとか言って受けられないという人がありますから、保健所なりそれを扱う医療機関はもう少し親切に一人の残りもなく投与ができるように配慮をしていただきたい、これをお願いしたい。  それからもう一つは、きのう病院に参りましてその訴えに接したばかりでございますが、ガランタミンをやりたい、ところが高くてやれない人がいるのです。それと同じ発病をしながら、一方ではガランタミンの治療を受けておって、一方ではガランタミンをやることができない、こういうこともございますが、ガランタミンはちょっと話があれですけれども、保険扱いにするということは考えていらっしゃらないでしょうか、こういう点をお考え願いたい。  時間がないからもう一つ。治療施設が足らない、これに対しての対策をどう推進しておられるか、それもあわせて一括御答弁願いたい。
  42. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 安心であるという点の宣伝は一そう十分心がけたいと思います。  それから無関心の親、これはソークでも先ほど申し上げましたように、やらなかった者がねらわれて多発しておるということでございますので、今回も同様のことが考えられますので、すでに厚生省みずからきれいなポスターも作り、もうすでに配布済みで、かなり今度は力を入れております。ただ、ここで注意しなければならないのは、何しろ千三百万人もいる、これを七月末にやるわけです。全国一斉に。親が必ずついて参りますので二千六百万人、人口九千三百万のうち一挙にやるわけで、日本じゅうで動員されるわけですが、これが二万二千カ所で全国一斉にやるから、選挙の投票以上の大騒ぎが起こるわけです。従って、これは現在薬の投与は簡単でございますけれども、実際には受け付けをしまして、漏れのないように通知状の発送から始まりまして、全部で二万二千カ所にお医者さん最低一人配置しておきまして、すぐ飲んではいかぬような症状の者は除外することをやりますので、これは保健所、県だけでできるものではなくして、運搬のことから保存、会場の整備から、赤ちゃんでございますから日射病を起こすとかいろいろの余病の方が頻発するおそれがあるので、これらの措置を講じませんと、やりながらかえってほかの伝染病を起こしたり、いろいろの病気でかえって犠牲者が出るということがありますので、この点はその親ごさんをPRするのみならず、地区のあらゆる公に関係のある人たちにお手伝い願うことをお願いしたい。これがうまくできませんとマイナスの副作用が出るのでこれに十分努力したいと思います。  それから受けられなかった者は、禁忌症が続いている間はとめまして、あとは、当然ぜひやる。抜歯後とか、あるいはへんとう腺の手術のあと、それらはすぐやっては悪いのですから、かさぶたができて傷がなおってからやる、下痢してない者は必ずやる、追加の投与日は必ず予定いたしましてやることに厳重に指示しております。  それからガランタミンの問題は、三週間ないし一カ月、長いもので二カ月の伝染病予防法による伝染期間の治療中にガランタミンをすでに開始したものには、予防でもこれは認める。それ以後になりますと、これは一般治療なり、あるいは保険医療となりますと、例の中央医療協議会の議を経た指定になりませんと使えない、保健所が使えない、現在のところはなっておりませんので、現在では保険問題ではいかんともしがたい、こういうふうに推測いたしますが、これは保険局の所管でありますので、この問題については私からは不適当と思います。  それから治療施設につきましても、伝染期間は指定伝染病に一昨年いたしましたので、原則としては隔離病舎がある所は、隔離病舎に入れるのですが、それには小児科の医者がいない設備において必要な整形外科等の治療が早くできないということをおもんばかりまして、総合病院に県が特別に指定して、広く入れるようにいたしております。ただし、予防措置をやりませんと、ほかの子供にうつしますから、これの条件つきで許しておりますので、急盛期につきましては、昨年北海道のようなひどい所にほったらかすことは絶対ないようにいたしております。ただ問題は、長期に麻痺が残った者の育成医療でございますが、これは今後児童局で育成医療施設をどんどん拡大する通牒を出しているので、これもいいと思います。最後になりますのが、学童年令というもののいわゆる収容施設、これは教育と訓練をやる。福祉施設としては身体不自由児施設、これが非常に足らぬわけであります。この点は非常に児童局で考えていただいており、今後やってほしい。ことしの防圧対策では、ことしは相当防御できますが、昨年以前のもの、たとえば北海道は五百名残っておりますので、これらは何ともなりませんので、これはぜひお願いしておるわけであります。  それから一番御心配になりました鉄の肺につきましては、ことしは相当配給がうまくいきまして、昨日北海道の現場を見ておりますと、現在十八台配置されているうちで、一台だけ今使っております。あとは手ぐすねひいて待っているという状態でございます。絶対にことしは使わないだろうという学者の予測で幸いに思っております。それから九州につきましては、ことしは九州地区にほぼ八台配給いたしまして、さらに北海道は国で持っている分を飛行機で送るように手配いたしております。現在はまだ二台しか入っておりません。あとは入れかわり立ちかわり入りまして、ほぼ完全に目的を達している、こういう状況であります。
  43. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はもう二、三承っておきたいと思うのですが、今度の資料を見ますと、急性灰白髄炎という格好でポリオ・ヴィールスの問題が取り扱われておりますが、ポリオ・ヴィールスというのは、単にソークだけじゃない、最近ラジオ・ドクターなんかで説明があって、だんだん認識が深まってきたので、その点はやはり国民にポリオ・ヴィールスというものは、環境衛生、免疫という関係で、単に子供だけがかかるのではないということのPRが私は足らないのではないかということを一つ指摘しておきたいと思うのです。そういう意味で国民の認識をわれわれも啓蒙しなければならないのですが、その中で御認識をそういうところにピントを合わしてやってもらわなければならぬということが一つです。  それからもう一つ、第二の問題は、ここに輸入された生ワクチン、これは三型混合だといわれますから、やっぱりこれは使って非常にけっこうだと思うのですけれども、その前のソ連の貿易上の値段ですと、一セントと牛丸局長はおっしゃいますけれども、これを見るとだいぶ高くなっているが、これはどういうことになってきたかということを一つお聞きをしておきたい。  それから三番目は、ソークの一回分があと残っているわけです。二百七十一円で施行されていて、非常に高い。今度は三十円ですけれども、この前の一セントから見れば高いわけですが、問題は、六社——公共団体が多いわけですけれども、六つの業者にソークの製造が委託されているわけですけれども、ソ連やその他の国……アメリカはもう一つ割り切っていないけれども、最近のアメリカの学会でもやはりセービンの生ワクチンが免疫性からいっても優位だという結論が、新聞を見ると、出ているようですから、私はやはり生ワクチンに切りかえる、全国民対象に切りかえるというためには、早期にこれは、一つ、ソークの製造過程から生ワクチン製造過程への転換という問題が急がれていいのじゃないか。まあことしは急場で、千三百万人分を輸入をされて、これやってもらうわけですけれども、しかし、これでも完璧とは、厳密な意味では、言い切れない問題がありますから、だから、やはり国内で生ワクチンの製造に踏み切る。そして、場合によっては、そういう危険なことはわれわれ願うわけじゃないけれども、こういう患者が出たときには、国内生産によって全国民対象に生ワクチンがやれるという準備に早急にかからないと、来年の景色を見てから一ぺん考えてみようというのでは、私は、いけないのじゃなかろうか、そういうことを思うわけです。先日も武田製薬に行きましていろいろ懇談をしたのですけれども、やはりそういう議論も一つあるわけですから、その辺の考え方をどう見ておられるかということを一つ。三つ聞かしてほしい。
  44. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 私から第一の問題をお答え申し上げます。要するに、この先ほどの資料にありますように、十才以上でございますと、年間発生患者の三%程度ということで、患者自身は少ないのでございますが、確かにおとなを通じて子供に蔓延するということは確かでございます。おとなは、ある程度免疫ができておりますから、菌を飲みましても本人はかからない。しかし菌を排泄する。これによりまして、家庭の免疫のできておらない幼児に発病させるわけでございますから、これはやはりおとなも子供と同様な意味で、自分のからだの問題よりも子供にかけるということから見まして、これを一緒になって消毒防疫措置から環境整備、それから自分はかからぬでも、同一家庭の子供によく接種を受けさせるということは自分と同じように考えなければいかぬ問題でございます。その点から見まして、子供のない家庭がとかく非常に無関心でございます。子供がなければ自分らはかからぬと思っておりますが、そうでなく、その地域においては子供のないおとなも通じてばらまいている。この点でもこれは重要なことでございますので、今まで以上にこの点の解説、PRはぜひしなければいかぬ、こう思っております。
  45. 牛丸義留

    説明員(牛丸義留君) 私からあとの二問についてお答えいたします。  まず、生ワクの値段の問題でございますが、前国会開会中のこの社労の委員会で御質問がありまして、ボンボンが一セントだというととは、私ども、これはソ連の輸入をしている商社から聞いた値段でございます。それでいよいよ千三百万人分のうち千万人分のボンボンの、三型混合のボンボン型を輸入するということで調査いたしましたところ、一セントというのは、特定の商社に対しまして百万人分の、まあいわば、サービス価格だということがわかったわけでございます。それで、国際的な取引の価格は十七トンであるということがソ連の方から回答がきたわけでございまして、そうしますと、まあ私どももちょっとそれでは予算が少し狂ってきたわけでございますが、幸い、最終価格は、これは私どもは値切ったわけではございませんけれども、ソ連の貿易公庫の方から七セント八で輸出をするということが最終的にきまりましたので、その値段で商社を通じて輸入をし、買い上げたのでございます。それでそれに諸掛りを入れて三十円——六才以上の任意三十円というのは薬の値段そのものでございまして、大体七セント八は二十八円何がしになると思いますが、そういうことでございます。  それから液状の方は、これは初めから八セントということでございまして、八セントでオーダーを出しております。液状——シロップ、これはカナダのものでございますが、これは八セント。これも初めソ連が一セントだということで、十セントで売るものが、ソ連が一セントで売るならば、割引をするということで、二セント割引をしてもらって、そうして今度は、いよいよ発注したらソ連が十セントだということで、何か私どもが少しかけ引きをしたようにとられて、ちょっとごたごたがあったわけでございますが、私どもはまあ、そういうかけ引きがあったわけではございませんので、結論においてはソ連の一セントが幸いして二セントだけ安く買えたというような結果になったわけでございます。そういう事情で、最終的にはカナダから輸入しますものは八セント、それからソ連のボンボン状の方は七・八セントということで決定をして輸入手続をとっておるわけでございます。  それから次の、生ワクの国内製造に早く移ったらどうかという御質問でございますが、これは私どもも国際的に見まして、こういう情勢になっておりますので、早急に製造の準備をすべきではないかということで考えておりますし、また、業者のワクチン・メーカーの中でも、すでにそういうことを自分の社の責任において研究をされておるところもあるわけでございまして、これはちょうど柳澤先生が団長になった学者の視察団が今行っておられまして、ソ連はすでに視察を済みまして、西欧の方に今行かれたと思います。そういう先生方が八月の初めに帰ってみえますので、先生方のそういう向こうの実際の意見も聞きまして、早急に具体化していきたいというふうに考えておりますので、切りかえを早急にすべきという方向で、これからもっと具体的に問題に当たっていきたい、こう思っております。
  46. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 最後の点ですけれども、やはり六社に対する設備投資の問題にだいぶこだわっておるのだという認識が国民の中に非常にあると思うのです。私の研究したところでは、大した費用でもなさそうなんです。だから私は、政府が六社に対する設備投資の問題にこだわるというように国民は思っておるのを、私はやはり明らかにしてもらって、私たちがこの前から申し上げておる通り、そういう設備投資で、これが生ワクに切りかえるためにむだになるようなことは少ないようですけれども、もし、むだになるならば国が補償してもいい、そういうことも申し上げておるわけですから、そういう点は早くこれをやってもらわなければいかぬのじゃないかということを考えるわけです。だから、そういう意味で、厚生省の決意を次官からでも、一つ承っておきたいと思うのです。
  47. 安藤覺

    説明員安藤覚君) ただいまの藤田委員の御質疑でございますが、これにつきましては、前国会における当委員会においても、藤田委員からるる御意見の御開陳をいただきまして、われわれどももそれについての十分の認識の養成に努めて参ったわけでございます。しこうして、あの当時、御意見の中にも出ておりました学者の派遣等につきましても、鋭意促進いたしましたら、残念ながらなおあのときの予定よりもおくれたようなわけでございまして、これはやむを得ざる事情にございます。いずれにいたしましても大量八名の日本の最高の権威の方々に海外の御視察を願っておるわけであります。この方々が八月上旬には御帰国下さいまして、いろいろとデータ等もお集め相なりまして、御報告をいただくことと存じます。この学者団の御報告等も承りました上、方向といたしましてはできるだけ先生の御質疑の方向に沿ってゆきたい、かように存じておる次第でございまして、この間われわれの手によってなされるすべてのことについてはできるだけの早い処置を講ずるように努力いたしていきたい、かように存じておりますが、何分にも最後のきめ手はこの学者団の御報告に待つより仕方がない、かように考えておる次第でございます。
  48. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 尾村さんの先ほどの発言の中で、親は免疫があるけれども、親から分泌して子供にかかるというようなことを言われたと思うのですが、私の言っているのはそうでなしに、われわれ文化国家になって環境衛生のよい国にするんですから、親も環境衛生のよい国では五十才ぐらいまで平均同じ状態でかかっているという現実を——今までは環境衛生が悪かったから一、二才だったけれども、環境衛生がだんだん追及されなければなりませんが、そういうことになってくると五十才ぐらいまでは同じ率でかかるという外国の統計があるわけですから、そういう意味でのPRをしてくれということを言ったのでありますから、親は免疫を受けているけれども、子がうつるから関心を持つということでなしに、全国民を対象としたその対策を立ててそういうPRをしてもらいたいということを言ったということを認識しておいてほしいと思います。
  49. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) この点も今後日本が文明化してゆきますと、確かにそういうことになると思いますが、十分この点も認識いたしまして措置いたします。
  50. 徳永正利

    ○徳永正利君 この三表の千四百十七名患者が今出ている、この中で全快したのは何人あるか、それが一つと、それから注射一回、二回やった人は病気の重度はどういう状況か、それがもしわかったらそれと、先ほど藤原先生や藤田先生からもお話がございましたが、私、今度小児麻痺の視察をさせてもらって意外に感じたことはお母さん方が小児麻痺は一体どんなものかということを知らないのに驚いた。これは私も実はよく知らなかった。小児麻痺というのは最初の症状は一体どういう症状が出てくるのか、それから伝染というのは何か空気伝染でもやるようなつもりでおられる。口から入るんだということと、それから最初の症状は腹下しをやったり熱が出るんだ、子供の症状はどういうことになるのだということを知らないのですね、多くの人が。私は聞いてみたのです、子供を持っているお母さん方に。そういう意味一つ十分認識させるようなPRをやってもらいたい。これは最後はお願いですが、最初の一点、二点についてもしわかったらお願いします。
  51. 尾村偉久

    説明員(尾村偉久君) 今数字的に何名がどうなったという数字はまだ集計ができ上がっておりませんが、熊本、福岡、それから今回北海道、東京、私自身回ってきまして、現実に出た患者のその後の様子を聞いてみますと、二回以上やりました者では現在のところ明かに後遺症である麻痺を残しておる者というのは具体例がございませんでした。ほぼ一カ月以内の伝染期間、いわゆる急性症状でほぼ元へ復しておる。一回の者ではそれだけ若干効果が劣るわけでありますが、一回やった者でも今まで具体的には死亡したか、あるいは現に長期の麻痺をしたという具体例は今の以上四県では聞くことはできませんでした。従いまして、発病は、先ほど言いましたように、九州でも一五%の患者は一回以上受けた者も出ておりますが、出てからの症状は著しく軽い、いわゆるかぜの少し重いような状況で、不完全発病というような形が大部分、それからそれが大体注射後で、従いまして、全体の中で注射を受けた者の全快率はほぼ一〇〇に近い。それからそれ以外のものではやはりこれも昨年と同様な傾向でございまして、ほぼ三分の一が一カ月以上の後遺症を残しておる。従って、これは一カ月たちまして急性症状がおさまりますと、マッサージその他を急遽始めておりますが、最終的にはやはり長期に肢体不自由ということで一年程度以上に残るのが全体から見て二割はあるだろうということしのやはり状況です。ここに今千五百名ほどございますが、この生ワク投与が追加され、それからソークが三才以下終っておりますから、これを除外いたしましたものではやむを得ずこの数字はそう動かぬと、しかし、今後投与したものと接種を終わったものからの人数が非常に大量になりますから、これによって阻止された部分が加わりますと、ことし最終に占めました患者数の中では全快率が非常に上がる、経く済むものの率が非常に多くなる。それから死亡も現在でも昨年より、一昨年よりというように減っておりますけれども、これが一そう死亡率はうんと低下する、こう思われているわけです。
  52. 相澤重明

    ○相澤重明君 政務次官にちょっと聞いておきたいんだが、今の予防対策はわかったけれども、実際にこれらの仕事に携わる、まあ保健指導所ですね、それの補助をする保健指導員というのが、これは各地に相当出ておる、僕らみたいに末端を持っておるものとしては非常に苦労をしておるわけですよ。そういう人たちに対してさっきの事務費の問題は、国と地方自治体と半分半分ということを言ったが、保健指導員というのは民間人だからね、そういう人たちにはどういうこと考えておるのか。これは特に私横浜なんですが、今度の豪雨では全く床上浸水がほとんどなんですね、そういうところに水が引くと同時にすぐ薬を散布させる態勢を指導員からやらせるわけです、保健指導員に。他面今の流行の小児麻痺の問題については、生ワクチンを早く出せという運動を県、市を通じて一緒にやっておるわけですね、そういうような実際の民間の保健指導員の人たちに対して政府はどういうように考えておるのか、これは少し聞いておきたいと思う。ただ国があなた方机上で作ったところだけでは、これは実際の役に立たない。さっき言ったように二千万以上の人を動員して選挙以上の実際の仕事をするわけです。僕らの方では各公民館を全部利用して現在打ち合わせをやっておるわけです。その費用というものは莫大なものですよ、地元で負担するのは。そういう点の実際の扱いあるいはそれに対する気持というものはどう考えておるのか、ちょっと聞いておきたい。
  53. 安藤覺

    説明員安藤覚君) このたびのポリオ対策について、全国の行政末端において一般国民の方々から御協力をいただきまする人数及びその御努力のほどはまことに莫大なものがあろうと存ぜられます。ただいま御指摘の通りであろうと思います。しこうして、現在のところにおきましてはこうした異常なポリオの発生についての社会的相互扶助の建前において御努力願っておるわけでございますが、これらについてわれわれ当局、ことに政治面の担当をいたしておりますものといたしましては非常に感謝にたえない次第でございます。しこうして、しからばこの感謝だけで通しおおせるかというと、今年のところにおきましてはただ感謝申し上げておるわけでありますが、将来にわたってはやはり何らかのこれに対する応分のものを考えていかなければならぬであろう、民生委員という制度がございますが、この制度におきましても社会奉仕の意味においてまことに軽少なお礼であれだけのお仕事をしていただいておるわけでありますが、これらのお手伝いを願う方々に対しましても、根本的な問題としては民生委員的な考え方に立つにいたしましても、それに相応したところのものを何らか将来において考慮せなければならぬだろうとかように考えまして、衛生局長あたりともいろいろと相談をいたしておるような次第でございます。
  54. 相澤重明

    ○相澤重明君 今の点、厚生次官あたりも実際の末端の問題についてなかなか把握が十分でないと思うのだけれども、民生委員というのは、これは多少の報酬を出しておる。ところが、保健指導員というものは出していないのです。しかも、民生委員よりは、各市あるいは町内単位に数多く持たしておる。ということは、大体一人の指導員で百戸以上を持たしておるわけです。そうしなければとても保健衛生の仕事というものはなかなかできない。ですから、そういう民生委員の場合などは、五十戸とか七十戸単位の保護世帯を見るわけです。われわれ末端における者としては、いろいろそういう具体的な配慮をするわけですね。ですから、一方においては、民生委員というのは国家的なそういう立場でめんどうを見さしてやっておるのですけれども、保健指導員については、ただ保健所長のほんとうのお手伝いで、町のいわゆる衛生屋さんだというような形だけになっておる。しかし、こういうような時期にこそ非常に活躍しておるわけですよ。もちろん、働かない者は僕は何とも思っていないけれども、実際にそういう伝染病予防だとか、あるいはこういう事態に働いた者にはそれだけのめんどうを見てやるということは、私は政府としては必要ではないかと思うのです。地区によっては民生委員が動いておるところもありますが、保健指導員が、横浜市あたりでは、今度の場合は連合会自体が動いて非常によくやっておる。自分自身が地域の中で感謝しておるくらいです。そういう点は、政府も十分関係者の意見を聞いて措置をしてやってもらいたい。善処していただくことを要望いたします。
  55. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) それでは速記をやめて。   〔速記中止
  56. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記を始めて。  本件に対する質疑は、この程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 御異議ないと認めます。    ———————————
  58. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) それでは次に、社会保障制度に関する調査の一環として、社会保険診療報酬に関する件を議題といたします。御質疑のある方は、御発言を願います。
  59. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 医療費の改訂告示に関して二、三御質問申し上げたいと思います。  本日は時間がございませんから、当面の問題についてのみ質問いたしますので、答弁者におかれましても、簡潔に御答弁をいただきたいと、かように存じます。  第一点は、今回医療費改訂の告示が行なわれましたが、この告示に関連いたしまして、従来からの医療担当者側の意見とこの告示を比較してみますると、はなはだしく相違しておることは、衆目の認めるところであります。従って、これが告示されて、これによって今後の社会保険医療というものが一そう混乱に陥り、場合によりますると、重大な非常事態が起こるのではないか、かような懸念をいたすものであります。こういったことを一体お考えになられておるかどうか。この点を率直にまず承りたいと思います。
  60. 安藤覺

    説明員安藤覚君) ただいまの鹿島委員の御質疑にお答えいたしますが、先般中医協を経まして告示いたしました医療費値上げについて医療担当者側の不満を買っておる事実、これは、その後の諸般の医師会の御行動、御発表になりました声明、あるいはお約束なさいましたという党三役へのお申し入れ等、諸般の面から参りまして、私たちも医療者側の御不満の点は理解いたしておるわけでござります。しこうして、この結果医療の非常事態が発生するのではないか、これについての懸念はどうかというお言葉でございますが、あるいは、先般の武見会長の御発表になりました声明等によりますれば、そういった非常宣言をなされないとも限るまいという不安を持つのでありますが、しかし、私ども当局側といたしましては、今回の処置は、医療担当者側において御不満はあられたことでありましょうけれども、こちら側といたしましては、支払い側との間に立ちまして、できるだけの努力は申し上げたつもりであります。なるほどそこに、政治的操作において若干の遺憾な欠ける点があったかと思いますが、それらの点につきましては、私の負うべき責任が多分にあると存じますが、しかし、実質上の値上げ並びに行政上におけるところの最後の一線というものだけは、これは守らしめねばなりませんので、まことに遺憾でありましたけれども、ああいう結果になりました。しこうして、この不満によって生ずる非常事態の発生ということにつきましては、すでに事ここに至りまして、しこうして、大臣も申しておりました通り、これはあくまで暫定的なものであって、将来またお世話になるでありましょう医療協二法案等々の成立を見まして、そうして新たなる制度のもとに、全く新たなる気持を持って、この医療費、また、国民保険のもとにおける医療対策というようなものを推進して参りますのでありますからして、ここらのところにもお考えを及ぼし下さいまして、これ以上国民に不安と心配、かつまた、実質的にいろいろ国民の罹病者に災いを招かせないように切に願っておるものでございますし、先生におかれましても、その辺のところを御洞察の上、一つ何分御協力のほどをお願いいたしたいと思う次第でございます。
  61. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 ただいまの政務次官の御答弁では、今後の非常事態に対処する考え方につきましての御答弁にならぬと思うのでございまするが、とにかく私は、相当の事態が惹起されるであろうと、これははなはだ悲しむべき現象でありまするが、予想されます。そこで、これに関連してなお二、三承りたいことは、今回の告示の原案そのものは、医療協議会の答申案そのものずばりで告示が行なわれておる。かつて厚生大臣は、医療費の引き上げ一律は単価によって引き上げるということを再三言明されております。当初は点数改正でということを言われておりましたが、最近においてはすっぱりと単価で引き上げると言っておる。こういった考え方を一体この医療協議会に諮問の際に表明されたかどうか、全く白紙で臨まれたのか、これを承りたいと思います。
  62. 安藤覺

    説明員安藤覚君) ただいまの、一律引き上げをかつて言っておったのにかかわらず、結論的には中医協の答申をそのままうのみにしたじゃないかということでございまするが、実は、歴史をさかのぼりますと、昨年の十二月の予算編成当時以来、先般の国会中におきましても、古井大臣は、この問題に関しまする限りにおいては、中医協の議を経るということを何百万回となく繰り返して参っておるのであります。しこうして、この中医協の議にかけて今回の処置をとる結果になったのでございまするが、中医協を開くといえば、医師会は不参加を声明しておられまするので、まことに不本意ながら、ああいういびつな形において開かれなければならなかった。しこうして、しからば、そのいびつな形のものが大きく政治的にどうであるかといえば、まことに不満なものがございますけれども、法的に考えますれば、必ずしも不当とは申されませんので、最小限における方法として、あれでやらざるを得なかったのでございます。しこうして、こういった経緯のもとにおきまして、大臣は、先般の中医協に対して、広く当面の医療費に対する妥当な考え方はどうであろうかという抽象的な諮問をなされました。しかしながら、参考意見としては、五つの条件がこの周囲を取り巻いておるということも述べられましたし、さらには、一三%の一律引き上げということについての大臣としての考え方を事務当局に示唆せられまして、積極的に中医協に提示しておられた次第でございます。
  63. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 ただいまの御答弁によりますと、大臣は一律引き上げ、単価によって医療報酬を引き上げるという考えを持ったが、医療協議会の答申がさようなものでないためにそうやらざるを得なかったと、こういうふうに解しまするが、ここで私はなお重ねてお聞きしたいことは、この医療協議会の答申がそのまま告示に移った点、また、医療協議会の審議の過程を見ますと、とうてい今回のような答申案をあの短時日において審議は不可能と思う。医療担当者の見方によりますと、この答申案そのものが実態は厚生省政府案であろうというようなことを言っております。私も遺憾ながら、八日に答申が行なわれ、直ちに作業が行なわれて告示が行なわれたというようなことにつきましては、どうも多少疑惑を持たざるを得ないのでありまするが、これは推測でありまするので、これ以上申し上げません。しかし、とにかく一方的に、やはり政府案則答申案という感じを持たざるを得ないのであります。大臣は、単価一律引き上げを表明されながら、突如として、しかも、事務簡素化に名を借りて、この単価引き上げ相当額を点数に置きかえたということは、どうもおかしい。これによって、なお一そう医療担当者の立場を刺激し、対立激化を醸成することになると思う。この際、医療費を引き上げるということは、医療担当者の待遇改善が主体としてなされるということは当然であります。従って、そうであれば、少なくとも、医療担当者側の納得のいく線で引き上げを行なうことが、これは常識であろうと思うのであります。しかし、保険者側、被保険者側と医療担当者側のいろいろな長い間の意見の対立もありましょうし、また、立場上の争いがあることでもありましょう。従って、こういったことは、厚生大臣は高度の政治性をもって考えるべきであり、また将来の医療体制を考えたときに、十分に慎重を期すべきだと私は思うのであります。医療協議会側から意見は徴せられて、日本医師会、日本歯科医師会は意見の開陳を拒否いたしたそうでありますが、しかし、大臣は、行政庁の責任者として、この答申案に基づく告示を行なう前には少なくとも医師会、歯科医師会側に対して、内意を示されるというくらいな努力と配慮が必要だと思うのであります。そうでありませんと、この態度が一方的に答申案そのものを告示した戦闘的な、きわめて刺激的な形に受け取られるおそれがあります。また、先ほど政務次官は、党三役と両医師会の公約というようなことに触れられました。これは、新聞紙上にすでに出ておりますし、また、私の聞くところによりますと、党三役と厚生大臣との考え方は全く違っておる。告示に対して自民党三役は強い批判をいたしております。厚生大臣措置ははなはだ不都合であるということをいわれている。答申を受けると同時に、間髪を入れず告示を行なったというようなことは、今後ますますこの問題を混乱に陥れるものと思うのであります。こういったことに対して、一体安藤政務次官大臣の政治的補佐をやられておるが、どういう経緯で何ゆえに間髪を入れず告示を行なわれたのか。しかも、大臣は告示と同時に東京を離れてしまったというようなことは、私は納得いかない。本日の委員会にも出席されない。どういうような御出張か知りませんけれども、当然本委員会に出席すべきものだと思う。当面の重要問題は医療費問題だけではありません。ポリオ対策の中で生ワク等の問題について考えてみても、全国的に子を持つものとしては非常な憂慮の状況にあるのです。従って、こういう質疑は本日も当然出るわけであります。現下の状況上この点まことに遺憾であります。政務次官の率直な御所信を承りたいと思います。
  64. 安藤覺

    説明員安藤覚君) だんだんの御質問でございまして、先ほどお述べになりました中医協を差し迫った二十七日において開いて、わずかな日数においてこの大問題を解決しようということについては、一応一日の告示と腹づもりをきめまして、あくまでそれまでに御回答願いたいということを申し入れておりましたが、だんだん審議を続けて参りまして、この間御指摘のように三団体が代表をお送りになっておりません。しこうして、中医協におきましても、担当者側の欠席のままにおいて、一方的裁判ということになることは、いかにも、いかに公平を期するとはいえ、何か不安なところがあるから、医師会並びに歯科医師会、薬剤師会の御参加を得られるようにせられたい、また^そういう措置がとられたかという念を押しての御質問でございまして、政府といたしましては、一応その措置はとって参りましたが、御参加を今日まで見ることができませんというお答えをいたしましたところ、それでは中医協自体の手において何らかの措置をとろうということで、中医協から会長の名におかれまして、三団体に対して御参加方を慫慂、かつまた、意見の提示方を慫慂されたのでございましたが、これに対して、日本医師会におかれましては全く黙殺でございまして、この申し入れましたものは、医師会側のれっきとした責任ある方に申し入れをいたしたのでありますが、その後の経過を見ますと、医師会長のお耳にも入っておらなかったようでございます。また、歯科医師会におきましては、一応会長のもとにおきまして御相談の結果でございましょうが、はっきりと参加できない旨のお答えをいただきました。また、薬剤師会におきましては、一応考慮するというお答えをいただきまして、御考慮の結果、このたびは参加いたしかねるという御回答でありました。しこうして、意見の御開陳を願いました面におきましては、薬剤師会からは意見の御開陳をいただくことができましたが、他の二団体からは書類による意見の御開陳もいただくことができなかったのであります。しこうして、三十日に相なりまして、翌一日をもって告示するというのであるけれども、とうてい十分な審議が尽くされておらないから答申を書くわけに至らぬという中医協側の回答で、中間報告でございましたので、しからばということで、さらに会期を延長しまして、前後通じて八日間にわたって慎重審議を願ったわけであります。で、この間大臣といたされましては正直に申しますと、ずいぶん一円三十銭で骨を折られたのであります。そして最後の御回答を得られる瞬間までこれが方向でいき得ると信じておられたようであります。また、私も大臣を補佐する建前においてできるだけその努力を続けて参りました。しかしながら、最後に至りまして、いよいよきょうは中医協の方において、もうこれ以上われわれは審議を延ばそうとは思わない、きょうのこの時間が最後の段階である、ついてはわれわれはわれわれ独自の答申をせざるを得ない、この点はわれわれとして最後の判断をしたところであるということで、答申をお書きになりました。しこうして、答申の報告を、答申書を大臣に御手交になります前に、会長から懇談会の席から大臣への会見が申し入れられまして、われわれはいよいよ答申を書くが、それについて大臣はどう考えるかということでございましたが、大臣は答申書はまだ拝見いたしておりません。従いまして、その答申書にのっとってとやかくの御意見を申すわけには参りませんけれども、私は政党人でありまして、今日政党内閣と言われておりますが、その建前において政党人として党の打ち出しました基本方針については一応の制約を受けます、このことは皆様申し上げるまでもなく御了知のことと存じます、同時に、中医協に御諮問いたしました以上、中医協の答申については十分に考慮をして、これをお取り上げするつもりであります、もしこの間によって生ずる責任、矛盾に対する責任については、私自身の判断において、責任において処置いたします、こういうことを申されまして懇談会をお引き取りになったのであります。その後数分にしてあの答申書が出されまして、その結果、大臣は、千思万考あの裁断を下されましたわけでございまして、御旅行に出られました等のことにつきましては、あの時間にもう緊急どうしても避けられない御要請があって御旅行にお出かけになったことであろうかと存じますが、あとの党への連絡その他につきまして、まことに私の方で手おくれいたしまして、私片手落ちの数々あったことは申し訳なく存じておりますが、それらの点については全く私の責任でございますので、一つ平にその辺のところは御寛容に願いたいと思います。
  65. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 ただいまいろいろ答弁ございましたが、そのうち一点まことに前言と矛盾を感じる点があります。それは今回は全く白紙で厚生大臣は中央医療協に諮問をされたと、かように言っておられますが、今御発言の中で大臣が一円三十銭引き上げを非常に努力した、また、主張したというようなことを言われたが、もしそうであれば、これは政府案だと思うのであります。従って、私はこれらの御答弁からみて、何らかの方針はあったと思うのであります。こういったことを明確にされたい。中央社会保険医療協議会の名において厚生省は一方的な政府案を押しまくったという印象を私は強くせざるを得ません。私は、自民党三役との関係について、政務次官から御発言があったので申し上げます。とにかくこの三役と両医師会長は公約をした、私はこれの責任並びに効果云々という問題は別といたしましても、これは政治的円満解決という点から相当重要な問題だと思うのであります。こういうことがその方面にも何ら了解を得ないまま告示を行なうということは、従来とも、厚生大臣が筋を通すとか、円満にことを運ぶのだという主張を建前におきますと、何とも理解がいかない。しかも前にも質問したが、白紙と称しながら一円三十銭引き上げを相当骨を折ったというようなことは、これはりっぱに政府案だと思うのでありますが、そういうことであるならば、初めから堂々と医療協議会に所信を示すべきである。一円二十銭相当に率先賛成された厚生省が、一円三十銭引き上げを主張したといっても表面には根跡もなく、ただ疑義を招来するだけであって、何ら御答弁の価値もないと思う。  なお、重ねてお聞きしたいことは、医療協議会の答申そのものがずばりとそのまま告示されたということは今まで例がございません。常識ある関係方面では、この答申に対して厚生大臣は対処すべき政治的方策があったはずだと言っておる。わが党内の関係機関におきましてもこの点憂慮いたしまして、一両日告示についてこれを見合わせてほしいという要望意見もあったのでありますが、にもかかわらず、一方的にこれを告示し、すなわち混乱を当然予測されるにもかかわらず、告示強行をやられたことにつきましては、私は納得ができないのであります。そこで、なおこれに関連して……。
  66. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記をやめて。   〔速記中止
  67. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記を始めて。
  68. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 二、三点具体的に御質問をいたします。今回の医療費改正に伴って点数改正が行なわれた。この点数改正については、大臣は従来とも学界の意見を聞いてやるのだという一点張りであったが、今回の点数改正では学界の意見を聞いたかどうか、この点を明確にお答え願いたい。
  69. 安藤覺

    説明員安藤覚君) 簡単に答えろということでございますから、簡単にお答えいたします。学界の意見は徴しておりません。私は先ほど仰せになりました、厚生省案を一方的に押しつけたというお言葉でございましたが、お言葉じりをつかまえるようでございますが、これは厚生省意見を押しつけたのではございませんで、中医協が作りました案なんであります。それを裁断されたということでございますから、その間の段階を一つ区別しておいていただきたいと、こう思います。
  70. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 ただいまの御答弁で、学会への諮問しなかったということは、これは大臣の重大な食言であり、また公約違反でもあります。この問題については次の機会に私は是非を正します。なお、この点数改正で点数の合理化を行なったと称しておりまするが、この点数改正に関しては、両医師会ともきわめて不満、絶対反対を唱えておる。せっかく点数改正を行ない、しかも二・五%の予算補正を見込んでやったにもかかわらず、このような事態を招来するということは非常に遺憾だと思う。しかも二・五%の予算処置につきましては、特にこれは補正予算によってまかなわなければならぬ性質のものである。そこで私はこの一方的告示はますます遺憾だと思う。しかもこの点数改正の内容を見ますと、厚生省側の説明によると、引上平均率は病院が一五%、一般診療所、歯科診療所が平均二%ということになるそうであります。この数字も私はあえて積算の基礎を見ておりませんので、信頼いたしかねますが、しかし、この発表によると、両者間に平均四%の格差がある。かつて厚生省が診療所と病院との格差付けを発表されたことがある。この思想を、この考え方を生かすために行なわれたものであり、これは決して合理的な点数改正ではないということに私は断ぜざるを得ない。こういうことをやると、今後の点数改正その他に伴いまする問題に関して一般国民も非常な疑惑を持つと思う。なぜかようなものを今やらなければならぬか。医療担当者側においても点数改正は十円において行なうことを希望していることは御承知の通りである。しかもこの点数改正については、入院費、往診費、歯科有床義歯、これらの引上率関係を見ますと、全くバランスを失しておる。すなわち歯科有床義歯に関しては五%、入院、往診平均一九%の引き上げを行なうということは、いかなる理由によってかく行なわれたとかいう理論的なものが全然見当たらない。この点を私は特に遺憾とするのであります。この点簡潔にお答え願いたい。
  71. 安藤覺

    説明員安藤覚君) 点数改正をやらないといっておって点数改正をやったではないか、こういう御指摘でございますが、これにつきましてはかねて来医療担当団体側におかれましても、それは十月一日からということではこざいましたけれども、病院、診療、歯科補綴、これらについては早急にこれの是正をしろという御要望もございまして、しこうして、この間におきまして、御承知の通り、病院スト等がほうはいとして起きて参りまして、この点について入院患者並びにその患者の家族の者たちの不安というようなものは容易ならぬものがありましたことば御承知の通りでございましょうが、たまたまこの間にこの医療費の値上げといろ声も強くあがって参りました。先般の国会において幾たびか当委員会等においてもお取り上げをいただいておったようなわけでございます。従って、この間の空気というものは当然先般の国会終了後において、すなわち七月一日以後において医療費が値上げされる、こういう印象を一般国民は深く受けまして、ことに病院、診療所等においてそれぞれの経営担当者等におきましてはこのことを考えまして従業員のやむにやまれざる要望等に対しても七月一日において相当の値上げがあるとするならば、これらのものを考慮において待遇改善を善処しようというような回答をいたしてストを鎮静せしめましたものが決しく少なくございません。また、個人診療所等におきましても、かねて来何とかしたいと思っておるけれども、診療所等の改修築等も行なわれた分もございます。これらのことも考えあわせまして、これこそ政治的に、病院、診療、歯科というものの要望の切なることも考えあわせまして、このたび病院におきましては一四%強、診療所におきましては一一%弱、歯科におきましては一二%強の値上げをいたしたような次第でございまして、しこうして、点数改正と一律に申しまして、何百種類、何千種類あるであろうかと存ぜられますこれらの不合理な問題についての是正、また、これに伴なう当然引き上げねばならぬものについての引き上げ等については、今後において十二分に学界の御意見を承ってなされねばならぬことは言うまでもございませんが、病院、診療所、歯科補綴等については、かねて来ほとんど定説にひとしい御要望でもございましたので、諸般の客観情勢とも考えあわせ、病院スト等を近い将来に起こさしめない意味合いなども込めましてかような措置に出ましたことを一つ御了承願いたいと思います。
  72. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記をとめて。   〔速記中止
  73. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記始めて。
  74. 鹿島俊雄

    ○鹿島俊雄君 ただいまの御答弁で、大体今回の点数改正は、病院と診療所の格差をつけるという経済的な理由があり、やむを得ず政治的に配慮されたという御答弁と了解し、左様承っておきます。  続いて引き上げは七月一日に保険者側については遡及するが、被保険者側については遡及しないとなっておるが、法理論的に問題が起こるようにも思われますが、これらについての御見解を率直に承りたい。なぜ両者ともに同時に遡及できないか。  次に、今回の医療費の改訂により、これによって医療費が適正化されるということになるという点。かつて厚生大臣が本年度予算の中で一〇%の予算を要求しましたときには、この段階でやむを得ず一〇%の暫定引上予算措置をとったといっておりまするこのことは、医療費の暫定引き上げである、此の点私も今回の医療費引上は暫定措置であると断定いたしておりますが、この点に関して率直にお答えを願い、他の諸事項は次回に譲り、本日の私の質問を打ち切ります。
  75. 安藤覺

    説明員安藤覚君) 七月一日に遡及して医療費を支払う問題につきまして、これは従来において遡及して支払った前例があるそうであります。ところが、この場合におきましては、医療担当者側において、患者個々から徴収する場合においては、医療担当者が大きな犠牲を払われまして、徴収しないという建前を自発的になざいまして、それから、支払う団体側においてはこれを支払うというような話し合いにおいて遡及せさるということでございました。ところが、このたびは残念なことには、武見会長が、三十日の午後、天下に向かって、医療費は遡及して取るということを明確に御声明をなさいました。しかいたしますと、政治的に医療担当者側と患者との間でお話し合いをしていただくとかいうようなことができません。この観点に基づきまして法制局の意見を求めましたところ、法制局におきましては、会計法その他からいって、遡及するということは法的解釈において非常な無理がある、こういう解釈をいたしておりまして、政治情勢においては、すでに患者と医師の間においてお話し合いをしていただくことは困難な状況であるとするならば、限られた数の保険団体においては、あっせんすることによって、これは支払うということが可能であろうという建前におきまして、保険団体側が積極的に支払うという意思を持つものであるとするならば、法的問題も起こらぬというところの考え方から、患者側については支払いの義務は持たない、保険団体はこれを支払うという二段がまえにいたしまして、ああいう告示をいたしたことでございまして、この点は一つ実情御洞察の上、御了承をいただきたいと存じます。  さらに医療費につきましては、このたびの一体中医協というものの成り立ちが、御指摘になっておられますように、必ずしも満足なものではございませんで、そのもとにおいてこうした審議がなされたのでございますから、将来において、先ほども申し上げました二法案等が成立いたしまして、適正な中医協ができまして、そうしてそこに各方面の自由な御参加をいただいて満足な運営をいたしました暁において、これをさらに根本的にまでさかのぼってやっていきたい、今回はあくまで暫定的なものだということについては、大臣もかたく申しておられることであり、私もさように信じておるところでありますので、何とぞ御了承を願いたいと存じます。
  76. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記をやめて。   〔速記中止
  77. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) それでは速記を始めて。  本件に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 御異議ないと認めます。    ———————————
  79. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 次に、労働情勢に関する調査の一環として杵島炭鉱労働争議に関する件を議題といたします。  まず、当局より概況の説明を願います。
  80. 冨樫総一

    説明員(冨樫総一君) 杵島炭鉱におきましては、御承知のように企業の合理化、採算のとれるようにということで、労使間におきましていろいろ話し合いがあったようでございまするが、現在の姿から申しますると、四月十九日以来無期限ストということになっております。特に、先月の二十六日にいわゆる会社側の最終提案なるものを組合が拒否いたしまして、その後、佐賀県知事が若干あっせんの労をとられましたのでありますが、不幸にしてさしたる成果もなく今日に至っておるわけでございます。  で、会社側の提案は、最終提案として、実質的に賃金の、現在三万二千四百円ですか、これに対しまして八千円の賃下げ、それから鉱員約三千二百人に対しまして約九百人の退職者募集、その中には、聞くところによりますと、約四百人の退職応募者があったようであります。さらに北方鉱という約三百二十人でございますか、この閉鎖を年末までにする。で、それ自体としては相当きびしいということは申すまでもございません。従いまして、組合としてもそう簡単になにできないということもわれわれにはわかる。一方、会社におきましては、過去数年間に二十七億の赤字資金を注入しておるということで、このままではいわゆる住友が経営面から手を引かなければならないという、何と申しますか、経営権の問題もからみまして、他のこの日炭高松、その他の争議とは違った深刻な状態になっておるわけでございます。  で、私どもといたしましては、何といっても事態は非常に深刻かつ微妙なものがありまして、遺憾ではございまするが、そういう事態でございまするので、今日なお静観するという建前で、かつ、御承知のようにこの争議に関する労使双方の首脳部は私どもの見ているところでは、双方とも相当に思慮分別のある方々であると思いまするので、この間幸いにして、けさ無期限ストを前提とした夏季手当問題も解決したようでございまするので、至急に前向きの解決の方向が出ることを期待しているという状況でございます。
  81. 阿具根登

    ○阿具根登君 杵島問題について、ただいま概況報告いただきましたが、労使間の問題にここで立ち入ろうとは思いませんが、杵島を中心にして、杵島、日炭高松、新屋敷、仁保等が労使争議の形態に入っておる。この原因を調べてみますと、今、杵島で言われましたものと大同小異であって、いずれも賃下げと労働者の解雇に端を発しておるわけです。ただいまいただきましたこの「労働経済の分析」労働白書ですか、この労働省が書かれておる労働白書を見てみましても、これは三十五年度でございますか、三十五年度においてすでに一〇・九%の所得水準の大幅な上昇が認められておる。そうして池田内閣は所得倍増を一枚看板にしておる。一方では所得倍増で一〇・九%の賃金の上昇が認められておって、ただいま報告のありましたように、月に八千円からの減額を出されておる。一方は所得倍増で一〇・九%‐一一%から上がっているのが全国平均である。ところが一方は三万そこそこの収入の中から八千円、こういうふうに大幅な減額を出されておる。これがこの炭鉱の争議の実態であるわけであります。これに対しまして政府がとっている施策と、その施策によって来たるこの相剋の責任はだれが持つべきであるか。労働省では、この点どういうふうにお考えになっているか、お尋ねしたいと思います。
  82. 冨樫総一

    説明員(冨樫総一君) 私どもの立場では、十分申し上げる立場にもないように思いまするが、われわれの考え方を申し上げますと、石炭産業が今日油との関係において非常にむずかしい立場にある。千二百円のコスト・ダウンを絶対的に要請されておる。さらに貿易の自由化というようなことで、いわゆる斜陽産業といったようなことをいわれておるわけであります。この間におきまして個々の会社、個々の山の実情におきまして、それぞれの問題が起こり、当面おっしゃるような深刻な問題が起こっておることは、はなはだ遺憾に考えます。ただ、当面の問題につきまして、その八千円が正しいとか、ひど過ぎるとかということについて具体的にとやかく申す立場ではございませんが、しかし基本的に考えますと、石炭産業が斜陽産業とはいわれておりまするけれども、結果において消え去るという建前にはなっておりませんので、結局五千万トンベースですか、なんかで日本の産業として、重要な産業として残るという建前でございます。当面人員整理が要請されておる所が相当ございまするけれども、いずれはやはり新規従業員の募集、減耗補充なども必要とする。そういう場合におきましては、世間並みの賃金を払わなきゃ来る者はないわけですから、長期的展望におきましては、石炭産業におきましてもそれ相応の賃金を払えるという建前の計画を確立して、労使間の先行きの安定した見通しをぜひ立ててもらいたいというのがわれわれの労政の立場における考え方でございます。
  83. 阿具根登

    ○阿具根登君 まあ労政の立場の局長にこういう質問はあまり適切ではないと思うのですけれども、エネルギーの革命であるとか、斜陽産業であるというような考え方が、政府自体に先行しておると私は思うのです。たとえば今度石田労働大臣も西独に行って、西独に日本の労働者を雇ってくれと言っている。西独でまず第一に言っているのは、炭鉱の労働者をまずもらいたいと言っている。西独と日本のそれじゃエネルギーの変革というものはそれだけ違うのか。日本の方がずっと油も使っておらないですね。そうして西独の方がもっと石炭も使っておる。今斜陽産業だとか、あるいはエネルギー革命だとかいっておるけれども、先ほど局長もちょっと触れられたように、私は、近々二年もするならば日本の炭鉱の労働者が足らない、日本の炭鉱労働者を何とかして入れてくれ、こうなると思うのです。日本のこの経済の伸びから見て、今、年間総エネルギーを一億数千万トンのものを使っているが、そんなものでこの経済が持っていけるものとは思わない。そうすれば、石炭だって五千四、五百万トンで終わるとは思えない。当然これは六千万トン近くの石炭が要るということは、これはだれが考えても考えられなければならないことだ。しかも西独等ではそれが現実に行なわれておって、そうして炭鉱夫を首切るどころか炭鉱に労働者を外国からまで雇わねばならない。一千人ほしいと言っている。何で日本とドイツとこんなに違うか。こういうところに行政面の非常に大きな私は欠陥があると思う。極端にいえばその場限り、その日その日の生活を考えている。その年、その年の経済だけしか考えておらない。だから政府が石炭をたとえば五千五百万トン出せと言った場合に五千五百万トン出した業者は一番ばかを見る。一番石炭が要らないというときにうんと出した業者が利口者だ。政府が言うのはみんなうそだ。これは今日までの石炭業界の歴史を見てもらえばこういうことははっきりしておるのだ。いつも三年に一回、五年に一回好況がやってきておる。そうして石炭業界に言わせれば五年に一回好況になってくれば、その石炭業界はその四年間はどんなに苦労をしても業界は助かっていくということがいわれておる。もうすでに労働力が足らないようになってきている。大体、炭鉱の状態を見てみると、今、平均年令が三十七才から三十八才です。そうして中学、高校卒が引っぱりだこの今日、こういう首切りがあり、賃下げがあり、不安定な炭鉱には非常に希望者が少ない。ここ五年もしてみなさい。これは労働力が老朽化してしまって、炭鉱に来る者はおらない。こういう結果になることが目に見えていると私は思う。そうするならば、労働省としても、これだけ他産業が一〇%か二%——これは去年の実績なんです。この白書を見ただけの数字なんです。それでもってやっておるのに、炭鉱がなぜ八千円も一万円も賃下げを出して、そうしてこういう労使争わねばならないか。こういう点については、労働省の指導面についても私は十分考えなければならない点があるのじゃないかと、こう思うのです。その点が一点。  それから、これは基準局にも関係があるからお聞き願いたいと思って、まあ基準局で御答弁願えれば御答弁願いたいと思うのですが、はっきりした数字は覚えておりませんが、私最近九州に参りまして新聞を見てみました場合に、この一年間で西日本だけで一万四、五千名の人が炭鉱から首を切られた、こういうことなんです。ところが不思議なことには、その一万五、六千人首を切られたが、その反面、臨時工というのが千名近くふえておる、こういうことなんです。そうすると、一応炭価を千二百円下げねはいけないという名目のもとに高賃金の人を首を切っておいて、そうして今度は非常に安い賃金で臨時工を坑内に入れて、そうして石炭の採掘を臨時工にさしておるという傾向が見えておる。私はこういうことだと思っておる。そうすると、これは基準法も何もあったことではないのですね。これは私らが坑内に下がっておった三十年前の炭鉱の実態です。三十年前の炭鉱の実態というのは、一番危険なところに安い賃金で働かせるのは請負夫でございました。これを現在臨時工といっておる。そうして臨時工にやらせようとしておる。そうするならばこれは大きな政策の間違いであり、また、これは基準法から見ても違反であると思うが、一体こういう点どうお考えになっておるか。二点について質問いたします。
  84. 冨樫総一

    説明員(冨樫総一君) 前段の御質問につきましては、先ほど申し上げましたように、斜陽産業と一応はいわれておりまするが、基本的には五千万トンベースでいく、一方、だんだん慢性的失業状態から完全雇用の方向に進む、従いまして、今後炭鉱の賃金も基本的には世間並み、特に地下労働と見合った賃金を払うというその経営面におきまして、あるいは政府の経営指導面におきましても、そういう心がまえを基礎的に持っておらなきゃいけないということで、先般も、内幕を申しますと、うちの省議でもそういう話しが出まして、かつ石炭の自由化の問題も控えておるということで、一段と通産当局とも連絡をとって善処をすべき問題であるということにいたしておるわけであります。で、当面八千円とか六千円とかという賃下げ問題がございまするが、これはまあその会社その山の実情、過去の経緯等によるものと思います。私ども紛争過程における当該問題について特に発言することは差し控えなけりゃならないのでありまするが、幸いにいたしまして大辻炭鉱もつい数日前解決したようでございます。新屋敷の闘争もいわゆる条件闘争に切りかわったようでございます。また日炭高松も急速に解決の方向に向かって労使の話し合いが精力的に行なわれておるという情報も入りますし、やや愁眉を開いたような気持になっておるのであります。残る杵島炭鉱につきましては、先ほど申し上げましたように、最高の労使の首脳部は相当以上に分別のある方々だと私ども信じておりまするので、何らかの前向きの打開の線が出てくるということを期待しておるわけでございます。
  85. 大島靖

    説明員(大島靖君) 臨時工の問題は、ただいま先生御指摘の通り非常に大きな労働問題であろうかと思うのであります。これは単に石炭産業のみならず、産業全般につきまして、最近の好況に伴う雇用の情勢の中で占める臨時工の増加というものは、非常に顕著なものがある。最近はその顕著な情勢については、どの関係部門でも見えますが、依然大きな比重を占めておる。経営者が臨時工として労働者を雇用する、あるいは景気の変動に対処して臨時工という形式をとる。このこと自体についてよいとか悪いとか、必ずしも一がいに申せないと思うのでありますが、問題は臨時工という形式でもって常用的に働く形をとる。ここに問題がある。すなわち臨時工という名の常用工、これが問題であろうと、その点につきましては、やはりこれは常用的に働く常用工と同じような形にすべきものだと考えるわけであります。従って、基準法の施行の面におきましても、単に臨時工という名前だけではなしに、やはりその労働の実態において、はたして臨時的のものであるか常用的であるか、こういうふうな実質的な判断に基づいて措置するように指導いたしております。今後ともこの問題についての対策は、なお私どもも慎重に検討いたしまして今後の措置を進めて参りたいと、かように考えております。
  86. 阿具根登

    ○阿具根登君 基準局長の言われる通りですが、たとえば炭鉱に例をとってみた場合、これは掘進作業をやる場合、着炭するまでの岩磐の掘進等を臨時工でやるということはわかります。これは着炭するまでの臨時工がやっておるということは現在も行なわれておる。ところが着炭してから、採炭そのものまで臨時工がやるとするならば、炭鉱の仕事は何であるか、採炭が炭鉱の仕事なんです。石炭を掘るのです。その掘るのに臨時工を使ってやるということになれば、これは基準法も何もない。いわゆる炭鉱業そのものが都合のいいときは石炭を掘りましょう、都合の悪いときは首切りましょうというような、行き当たりばったりのやり方になってくるから、ひいては保安問題にも重大な影響を及ぼしてきておる。今日非常な保安問題を起こしており、これは商工委員会だからここでは詳しいことは申し上げませんが、そういうことを現在やられておる。そうしてその結果が大きなトラブルを起こしてきておる。こういうことになるわけなんです。  そこで、もう一つ冨樫局長質問したいのですが、労働省からいただきましたこの白書を見てみましても、三十五年度の実績が世帯主の収入の平均が三万四千五十一円、三十四年は三万円であった。四千五十一円上がった。こういうことになっておる。そうすると、先ほどの例を見ましても、あなたの数字をそのまま出してみましても、三万二千円でそれをを八千円下げるということは、一般に太陽のもとで作業するのが人間のこれは仕事なんです。ところが、太陽の光線を全然受けない坑内で、しかも悪い空気の中でガスの多い、危険の多い場所で働く人は、少なくとも坑外の倍の給料をもらっても多いという人はおらないと思うのです。私は、かりにこの三万何がしかの給与で炭坑夫を坑外で使ってくれるというならば、坑内に下がる炭坑夫はいないようになると思うのです。私自身が坑外でそれだけの金をもらえる所があって、そして君坑内に下がれと言われても、それは私自身が二の足を踏むことであろうと思うのです。そうするならば、特に坑内の労働者に対しては保護こそ差し伸べなければならないと思うわけです。それを賃金を切り下げる、単価を下げるというだけのことでやっていっていいかどうか。ささらに杵島の問題につきましては、これ以上深いことは触れたくないのですけれども、業者が、最後の通知で、これだけやらなかったならば、自分の資本は引き揚げると、こういうことでいいのか悪いのか。たとえば杵島なら杵島だけの事業をやって、どうしてもこれでいけないというならば、私はまだ話し合いの余地があると思う。ところが天下の財閥ということで今日までやられておる大きな他産業を持っている人が、その一カ所の問題に、一時のこういう混乱状態になってきて、お前のところは資本を引き揚げるということはどうであろうかと私は思うのです。それでいい悪いということは言えないと思うのですけれども、しかし政府の立場として、そういう環境に置かれた労働者の立場というものは、一体今とられておるのが悪いとかいうことが言えるであろうか。私は一番その犠牲になっておるのはこの炭鉱の労働者であり、炭鉱の労働者が何も事を好んでおるのでなくて、ほんとうにこういう状態の中で、経済が伸びて所得倍増になっているその中におって、命を賭して坑内で働いている人がこういう環境にあったならば、私はこういう状態になるのは当然ではなかろうかと思う。そうするならば、これは政府としても労働省としても、何らかあたたかい考え方を示すなり、あるいは業者に対して勧告をするなり、そういうような措置が必要ではないだろうかと、こう思うのですが、そういう点いかがでしょうか。
  87. 冨樫総一

    説明員(冨樫総一君) 当面の杵島の問題につきましては、先ほど申しましたように、経営の立場からすればそれ相応の理由があるようにも聞いております。しかし一方、従業者にとって大へんきびしいものであるということも私ども十分わかるわけでございます。しかしながら、それぞれの理由があるので、具体的には特に労政の立場として、今この時点で先生がおっしゃいましたように意見を申しにくい立場でございまするが、全般的に見まして、たとえば今度の春闘におきましても、一般の産業が三千円ムードと申しますか、これも去年のベース・アップに比べますと一・八倍、ところが斜陽産業といわれた石炭におきましても、去年が三百九十五円であったのが、計算の仕方にもよりますが、千三百五十円、あるいは千五百円というベース・アップが実現し、けさの夏季手当の妥結も組合の要求に近い線で解決したということも、必ずしも経営者もただしぼるだけ、ただ賃下げだけという態度をとっておるようでもございません。私ども基本的な考え方は、先ほど申し上げましたが、先生のおっしゃる御趣旨を十分体しまして、今後とも善処したいと考えます。
  88. 阿具根登

    ○阿具根登君 最後に希望を申し上げておきたいと思うのですが、こういう原因が出てくるのは、政府の石炭政策の私は誤りだと思うのです。そうして私は商工委員でございますが、労働と商工とあっちこっちしているんですが、労働委員会で感じることは、これは政府の施策のしわ寄せを労働省が皆引き受けているんです。賃金の上昇の世話をするどころか賃金の下がった者の世話をしている。これは職場から締め出された失業者の世話ばかりしている。こういうことになり下がっている。それは労働省の力がなくなったために、労働省が労働者を守るという立場から、そういう政策では労働省としては困る、そうすればこれだけの失業者が出るじゃないか、これだけ賃下げになるじゃないか、そういうことは政府の所得倍増ムードから、これは逆行するじゃないか、労働省としてはそういうことは困るということを、通産省なり池田総理大臣なりに、これこれと労働省は論駁すべきである。ところが、もう経済閣僚——経済閣僚一人でしょうけれども、そのしわ寄せはおれが引き受けた、この失業者だ、賃下げだ、そういうことばかりやって、本来の労働者を守る立場じゃなくて、今度は捨てられた労働者をどうしようかとうろうろしている。そういうことになる前に、もっと労働省としてはそういう政策をやられたならば、一体労働者はどうなるだろうか。これだけの失業者が出てきますぞ、これだけ賃下げになりますぞと、そういうことをする前に、政策はかくあるべきであるというものを、もっと積極的にやって、現在のようなしわ寄せ、しりぬぐいだけを労働省がやるのだというような消極的な問題でなくて、もっと積極的に私はやっていただきたい、これを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  89. 小柳勇

    小柳勇君 私も労働省に一つ今のに関連して質問しておきたいのですが、杵島の当局、会社側の話しを聞いてみましても、今までの答弁があったように、炭価の値下げをしなければならぬということ、物価が上がったということ、そういうしわ寄せが労働者に全部おぶさってきている。そういうようなしわ寄せですから、炭は出る、しかも人間は今まで通り要るのだけれども、採算をとるためにはそうしなければならぬというのが答弁なんです。それを全部労働者にしわ寄せしてきておるという実情は、まことにこれは残念しごくなことなんですが、労働省は通産省などに今まで何かそういうことでいろいろ石炭政策として話し合いをしたり、あるいは閣議に持ち込んで政策上の問題として検討したことがあるのかないのか、お聞きしておきたいと思います。
  90. 冨樫総一

    説明員(冨樫総一君) 直接私はその衝に当たっておるわけではございませんが、先ほど阿具根先生もおっしゃいましたように、労働省創立の意義というものを、私ども基本的に、現象としての労働問題処理というよりも、積極的に労働の面から経済政策にものを言うということに積極的な意義を感じて一生懸命やってきたつもりなんですが、まあ言いながらも、つい微力にして仰せられたように批判されれば申し返す言葉に窮する現状であるということは、いつも自己批判しております。今度の石炭問題につきましても、できるだけ労働省の職安が離職問題で主として通産省と接触したような消極的な連携の仕方のようでありましたので、これも最近自己批判しまして、積極的な労働経済の面からやろうという申し合わせをこの間おそまきながら省議でもいたしたような次第でございます。一つそこらへんのところで御了承をいただきまするとともに、積極的な御支援をお願いしたいと思います。
  91. 小柳勇

    小柳勇君 了承はできませんが、あなた方まだ方向違いじゃないかという気がするのです、阿具根委員が言う通り。それで、さっき新屋敷あるいは日炭高松、杵島とかおっしゃいましたが、そういうのはこれは労使だけの問題であれば労使だけの問題で解決するけれども、政策の問題なんです。政策の問題はこれはもう労使だけではいかんともしがたいのじゃないかと思うのです。そういうときにもう少し、これは先般の三池の闘争のときにもそういうことはちゃんと言われておったのであるから、所得倍増政策について大きく打ち出しておる池田内閣は、もっと積極的に石炭政策について根本的に政策を考えていかなければ、労働者は首切りさえすればいいとか、あるいは働きさえすればいいとか、そういうことであるから、会社もそれをいいことにして、もし採算とれぬ山は切り捨てるのだということになるのです。そういうことは、これは資本家としても社会正義上許せぬと思う。その資本家に対して、資本家の方を損しないように保護の措置などをとる、こういう面がある。労働者の方は首切ったら職業訓練をやる。失業救済をやる。そういうことではあまりにも片手落ちじゃないかという気がするのです。従って、根本的な対策として、池田内閣の政策としてもっとやってもらわなければならぬ。ただ、ストライキをやるからけしからぬということだけが今世間一般にいわれているのですが、そういうものではまことにわれわれ許しがたいのです。労政局長に今われわれが声を大にして言ってもしようがないことであろうけれども大臣もまだ来ておられませんけれども、近い機会にもう一ぺんこの問題を根本的にやって、しかも今団体交渉の情勢を聞きましても、会社側もあまり団体交渉もやっていないようだ。そうして片手にはあまりやったら閉鎖いたしますと、そういうおどしをかけて、絶対的な条件として押しつけてきているようなことは許せないですよ。そういうものを一つこれは労働省は一歩脱皮して、社会正義上から、あるいは政策として、大きな日本の政策として検討してやっていただきたい。一つ労政局長からも決意のほどを聞いておきたい。
  92. 冨樫総一

    説明員(冨樫総一君) 所得倍増という問題が中心でございまするが、急速な経済の発展の過程におきましては、同時に、経済の構造改革、摩擦現象が随所に起こることはある程度やむを得ないところと存じまするが、今度杵島の争議にいたしましても、ここに至った過去を語りますと、いろいろな経緯があるようでございます。しかし、よそと比較して云々するのはいかがかと思いまするが、住友の経営者といたしましても割合にここの会社は人員整理にいたしましても他の同業の住友金属その他が非常に協力して、整理された人をあたたかく受け入れるというような態度も過去からずっとあるようにも見受けられます。それで、現在表面づら非常に冷たい決裂状態にはなっておりますが、決して私どもとのまんまでずるずるというようなことにはなるまいと期待しておるわけでございます。いろいろ内面事情もあるようでございまするので、微妙な段階におきましては、この程度しか申し上げかねるわけでございます。御趣旨は十分体しまして、当面ないし長期的な立場においても努力いたしたいと存じます。
  93. 小柳勇

    小柳勇君 具体的な問題がありますが、これは労政局長の現状報告を聞いておりまして一つ落とされたのは、三名首切りが出されておる、組合活動家の首切り、この問題については、これはいわゆる労政問題が重点であります。こういう問題についても労政局長がここで報告を忘れるほど軽く見ているのだろうかという気がしたのですが、そういうことじゃないのです、絶対的なものですよ。労働運動として、日本の民主主義を守るために絶対的なことですから、こういうことはもっとウエートを重く見てもらわなきゃならぬ。  もう一つは、三万二千円でございまして、あと八千円の賃下げでございますと言われましたけれども、この三万二千円をずっと検討してみましたところが、超過労働も多いし、それから公休出勤も多い、それから、組合が採算をとるために非常に住友に移行いたしまして、努力した跡歴然たるものがある。そのあと一人当たり十六トンのやつを二十六トンに引き上げよと、莫大な規模の、早過ぎる経営合理化、そういうものが押しつけられておることです。認識を相当改めていただきませんと、杵島は給与が高かったから若干の、よそよりも高いから賃下げが出たのではないかとか、あるいは今まであまり働いておらなかったのではないかというようなことで、誤解されては非常に大へんなことでございます。杵島の、私の企業実態調査を見ましても、資料たくさんここに持ってきておりますけれども、そういうことでございますから、賃金の高いのにも高い今までの理由があったし、それから、今度会社側が持ってきている一人当たりの出炭量などというものは、想像に絶するものがある。そういうものでありますから、組合としても非常などたんばに、絶体絶命のところにある。そういうことを労働省みずからが十分認識してもらって、公式の場でいろいろ御発言になる場合は、そういう面を認識の上で御発言してもらって、会社側のやり方があまりではないか、そういうものを私は持っておるわけですが、一つ労政局長も、もし今までの御答弁のような認識であるならば、この際一つもう一回資料を十分ごらんになって、認識を改めてもらいたい。これは私の要望でございますが、以上でございます。
  94. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は今阿具根委員小柳委員の議論になったように、きょうは職安局長大臣が見えてないので、非常に残念なんです。労政局長云々ということじゃないですけれども、私は阿具根委員の言いました石炭エネルギーをどう日本の産業の燃料エネルギーに使うかという根本問題が今日置き去りになっていて、斜陽産業のもとに炭鉱労働者が犠牲になっている、重大な問題だと思います。  それからもう一つは、私はやはりこの前の三十八国会を通じて、ここで非常に長く予算委員会と社労委員会で議論をして参りました雇用促進公団ですね、あの迫水長官も大臣も来てもらって、いかにして生産性と消費のバランスをとるか、そのとり方の問題が、何といっても私は完全雇用と労働時間の短縮が問題であって、完全雇用をやらなければいかぬし、社会保障もやらなければいかぬ、そうでなければ、生産と消費のバランスがとれないのだ。だから首切られた者を受けて、首切り請負業のような格好の労働行政であっていいかということは非常に議論したので、ここじゃ繰り返さないつもりでございます。しかし私は、皆さん方専門家ですからよくおわかりの通り、日本の産業に労働保護の立場からどういう産業政策、経済政策をとったら失業者も出ないし完全雇用の道が開かれるかくらいのことは、努力すればここで議論せぬかって私はわからぬことはないので、労働省の省議でわかっていることだと思うのですね。そういうことが一つも表に出てこないということは非常に残念だと思うのです。そういう問題は、あの雇用促進公団審議のときに約束されている問題だし、特に所得十年倍増問題の中で私は大いに論議しなければならぬ問題だし、大いに議論されたと私は思うのです。だからそういう面は、大臣や職安局長や皆さん方は、省議の中で日本の経済政策の中で、もう少し前向きに私はやはり行政をやってもらいたいと思うのです。労働行政というものは請負業であっては困るということに、私はもう根本的に尽きるのじゃないかと、こういう感じがするわけです。杵島の問題の処理は、これはやはり適切に講じてもらわなければなりませんが、あわせて基本的な問題に対する熱意が、おそまきながら先日やりましたというような答弁をここで聞こうとは私は思っていなかった。今こうやっていますという具体的な経過がむしろ雇用促進公団のあの法律を成立さすときの議論の延長として、当然こういうこととこういうことをやって、今年度から来年度の日本の経済政策の中で労働保護の立場はこういう工合に推移して来年度から経済が進みますという答弁があってしかるべきだと思って黙って聞いていたのだが、おそまきながら懇談会、連絡会議を開きましたというのでは、少し社労委員会の中では答弁にならぬのではないか。しかし私は、労政局長をその問題で、あなたをいじめようとは思っておりませんけれども、ぜひこの問題は大臣、省議の中でもっと熱意をもってやってもらわないと、法律が通ったらあとは知らぬ顔、法律は勝手に歩き出すという格好では意味をなさぬのではないか、そういうことを私は強く申し上げておきたいと思うのです。ぜひ今までの経過がありますから、一日も早く円満に、そう斜陽産業のムードの中で労働者が犠牲になるようなことはやめてもらいたい。  私たちはこの問題はいずれ次の機会に、先ほどの医療問題とあわせて大臣も来てもらって根本的な議論を大いにしたいと思っておりますので、今度は今こういう工合にやっていますという報告をぜひ聞かしていただきたい、これだけは強く私は要望しておきます。
  95. 冨樫総一

    説明員(冨樫総一君) 御趣旨ごもっともでございます。ただ、先ほど申し上げましたのは、みずからの自己批判を強調したのでありまして、弁解じみたことを申し上げるのは男らしくないと思ったのですが、実際には、やはり職業安定局にいたしましても、職業訓練局にいたしましても、新興の意気に燃えまして、数字なども積極的な数字をはじきましてやっておるわけでございます。残念ながら関係の局長がおりませんで、何かほかの局長連中までぼやっとしておるようなことを言ったようで相済みませんが……。
  96. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記をやめて。   〔速記中止
  97. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 速記を始めて。  本件に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 吉武恵市

    委員長吉武恵市君) 御異議ないと認めます。  次回の委員会は理事会において相談をして皆様に御通知申し上げたいと思います。  それではこれにて散会をいたします。    午後一時四十六分散会