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説明員(
志場喜徳郎君)
ガソリン税及び
地方道路税でございますけれ
ども、今おっしゃいましたように、確かにほとんど隔年におきまして増税されてきたわけでございます。もともとこれらの税収は、申すまでもなく
道路整備の
費用に投入するということになっておるわけでございまして、私
どもの方といたしましては、こういうように税そのものの負担の程度と申しまする観点と、それから他方におきましてその主要目的からいたしまして、
道路整備計画の緊急性ということの両面から考える立場にあるわけでございますけれ
ども、
道路整備計画の方が今回二兆一千億円ということに
予算がきまりました場合に、その
財源を現行の税率でまかなうかあるいはまた増税をしてまかなうかということの判断をどうつけるかという点が、当然税の立場から申しまして問題になるわけであります。で、私
どもの方といたしましては、確かに今おっしゃいましたように、自動車というものがふえて参りまして、
ガソリン税の税収もかなり毎年ふえてきております。で、この前の三十四年におきまして
ガソリン税を上げました際、そののちに起こりました批判といたしましては、政府の
ガソリン税の税収見積もりが過小であったのではないか。いわゆる自然増収見積もりが過小であって、そういう過小な見積もりのもとにおいて増税をはかるということはけしからぬ話じゃないかという批判もございました。従いまして、今回、この今後五ヵ年間の現行税法による税収見積もりにおきましては、この点について非常に慎重に考えたのであります。幸い今回は所得倍増十カ年
計画によりまして、
昭和四十五
年度におきまする各種の
経済指標と申しまするか、その際における自動車の状況、ガソリンの需要の状況、そういうものが倍増
計画と見合いまして、この一環として見積もられてございます。従いまして、それとの
関連におきまして、私
どもといたしましては目一ぱいに見込んだつもりでございます。ただそういたしましても、なおかつ現行の税率をもってし、しかも
道路費用全体のうちに占める税収のウエート、それが現在の一兆円
計画では六二%でございます。揮発油税、
地方道路税、軽油引取税を合わせまして、一兆円に対して六二%の
財源で構成しておるわけでございますけれ
ども、もしもこの同じような比率で現行税制のもとにおいて、
道路計画を新たな自然増収の見積もりのもとにおきまして立てました場合におきましては、まずまず当初に
大蔵省が考えておりましたように、一兆八千億程度じゃなかろうか、こういうふうに計算しておったのであります。それではしかしながら所得倍増
計画を達成する
道路計画といたしましては不十分であるという観点からいたしまして、二兆一千億にふえました。そういたしますると、同じく税収が税の
財源からしまして、目的税が二兆一千億に対して占める比率を、大体現行の
計画のような六二%前後にとどめるといたしますると、やはりここにどうしても千七、八百億円の増税を必要とするということに計算上なるわけであります。そこでしからばその負担はどうであろうかということになるわけでありまするけれ
ども、これはただいま申し上げましたけれ
ども、やはりわれわれといたしまして税の負担を考えます場合には、この二、三の観点から見ておるのでありまして、第一はガソリンというものが国際的な商品でございまして、幸いに国際比較と申しますかを持っております。そういった事情もいろいろございますけれ
ども、まあ税抜きのガソリンの価格というものは大体世界的に共通しまして、一万九千円前後でございます。これに税金がかかって小売価格が構成されるわけでありますが、従ってその小売価格の中に占める税率の割合というものが国際比較として出て参ります。これを見ますると、やはり各国とも
道路整備のために
相当ガソリンに負担を求めておる。現在もかなり高いのでありまするけれ
ども、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアに比べましても、やはり数パーセントの開きがあって、わが国は低くなっておるという点をまず一点考えております。しかしながら単価はそうでありましても、今度は国民所得というものとの
関係があるじゃないか、国民所得はわが国においては低いじゃないか。そういたしますると、負担全体といたしましてはかなり高くなりはしないかという疑問も当然出るわけでありまして、国民所得に対する
ガソリン税の税負担の割合、これも見ておりますけれ
ども、これは現行におきましては
日本では〇・八%程度でありますけれ
ども、アメリカにおいてすら一・三%、イギリス一・九、西独一%、フランス、イタリアそれぞれ二・八%ないし二・五%というわけで、これらの国々ともガソリンにかなりの負担をしておるということがわかるのであります。その点から申しますると、われわれが普通税の負担力をはかるという場合に用いておりますような国際比較ないしは国民所得における比較から考えまして、今が限度であって、これ以上増税できないということは言いにくいんじゃなかろうか。しかしながらかたがたそれだけでは増税をきめられませんわけでございます。これが他に及ぼす影響というものが重要でございます。ガソリンにおきましては、その他に及ぼす影響と申しますのはもちろんバス、トラック、ハイヤー、タクシーに対するような運賃に対する影響、ひいてはこれが一般卸売、小売の物価に対する影響を考えるわけでありますが、これはガソリンの場合で、目下の増税案では一・六%程度の卸、小売物価に対する影響というものがあります。軽油の場合におきましては〇・八%程度の影響がございましょう。これがひいて参りまして、一般の卸売物価、小売価格に対してはどう影響するか。これは
経済企画庁の大体御試算によりますのでありますけれ
ども、揮発油では卸売物価に対して〇・〇四三%、消費者物価に対しまして〇・〇〇八%、軽油の方は卸売に対して〇・〇〇六、消費者物価に対しましては〇・〇〇三、合計で卸売物価に対しまして〇・〇四九、消費者物価に対しまして〇・〇一一%それぞれ影響があるのではなかろうかというふうに考えられておりまするけれ
ども、この程度のことでありましたならばまずまずさしたる影響とは言いがたいのではなかろうかという観点も考えられます。なおまた同時にこれは今回の増税というものの額が、そのままガソリンの消費者価格というものにはね返った場合を考えるわけでありまするが、これがどうなりまするか。消費税でありまするからその転嫁を考えるのは当然でありまするけれ
ども、実際問題といたしまして、現在の石油原油の国内におけるCIF価格、つまり原油の国際価格ないしはそれを運びますタンカー・フレートというものを考えますと漸次下降ぎみにございます。その点から申しまして、実はこの前、
昭和三十四年に四千四百円ばかりの増税が行なわれましたけれ
ども、現在のガソリンの小売価格はその増税が行なわれました前の
状態に大体戻っている。これはつまり増税というものが、その後の原油の価格ないしはタンカー・フレートの価格の引き下げによりまして、吸収されてしまっているようなことになっております。ですからこの傾向のまま、さしずめやむとも思われませんで、しばらくこういう傾向をとるだろうということが考えられております。そういたしますると、またガソリンの値段も増税の当初におきまして、あるいは上がることがあるかもわからない。またそれを
予定しなければならぬとも思いますけれ
ども、長い目で見ます場合には従来のように、影響を受けるとすればまた吸収されるということになりはしないかというような点も考えるわけでございまして、さような点から考えますると、今回の緊急を要する
経済成長のための
道路計画のために、現行の五ヵ年
計画の中における特別税によるところの
財源の割合を、おおむね維持する程度におきまして、これらの目的税というものを増税するということはやむを得ないのじゃなかろうか、というような判断に立った次第であります。