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木下友敬君
委員長のお言葉を尊重しまして、それでは今の
質問を打ち切りまして、大臣に御答弁を願います。
大臣にお尋ねしたいのは、今、全国的な問題になっております日本医師会の一日休診を前面に出しました
厚生省との対立の
関係、このことについてであります。大臣が御就任になる前から、日本医師会と
厚生省との間は、これはあまりおもしろくない
関係になっておりまして、本来ならば、
厚生省と日本医師会というものは最も緊密な協力
関係になくちぁならないのが、坂田大臣のときの
医療協議会のメンバーの問題からこじれて参りまして、自然今日のような状態にまでなってしまったということは、私
どもも非常に遺憾に思っておるのであります。大臣もこの点御心痛のことと思うわけでございますが、日本医師会が、
さきに昨年の八月十二日でしたか、出しました
保険診療単価の一律百円
引き上げ、制限診療の撤廃、甲乙二表を一木化すること、かつ
事務を簡素化して、印地、乙地の差をやめてもらいたいというあの要望を出したのは、大臣も御存じの
通りでございますが、当時、
厚生大臣は中山さんでございましたが、この日本医師会の強力な申し入れに対してはきわめて冷淡な態度をとっておられた。なお、これは多少、私の表現の方法がまずいかもわかりませんが、あなたが大臣に就任されましてからも、日本医師会がこの問題を日本全国の医師に訴えて、また、社会に訴えて運動を展開したのに対して、日本医師会は一人相撲を取っておるのだというような表現をされたかに、私は今に記憶しておるのでございまして、案外、最初、あなたのような非常にりっぱな賢明な練達の士でさえこの問題を軽く見過ぎておられたきらいがありはしないか、こういうようなことを私は今さらながら憂えておる。ところが、これは私が申すまでもなく、
医療というものは、
国民にとって一番大事なものでございまして、今日のような状態にあるということは、他のいかなる問題よりも、社会不安を起こすということでは非常に慎重に取り扱わねばならぬことだと私は考える。
でありますけれ
ども、これはなかなか今日まで解決されておらないということの
一つの大きな問題は、先ほ
ども話しました
通りに、医務局というものは、これは
病院、診療所のあり方、特にそれが患者にほんとうにサービスしておるかというようなことにまで頭を突っ込んでいかなければならない性質のものであるが、今の
厚生省の行政というものの多くのウエートが
保険局に置かれておって、
保険局は、大臣もさっき言われましたように、
保険行政をやっていく上に、経済というものの上に非常にウェートを置き過ぎておるというきらいがあるわけです。たとえば制限診療撤廃の
一つの問題にしましても、経済とにらみ合わせればそうもいかない。あるいは竜価の問題にしましても、心の中ではもう少し上げねばならぬと思っておっても、実情はそうもいかないのだという内面的な悩みもあるかもわからない。私は、決して悪意で診療単価を上げることをこばまれるような
厚生省ではないと思っておりますけれ
ども、表面から見ました態度というものの中には、私には割り切れないものを
相当感じられるわけであります。
この経済的な問題の一番奥にあるものは、私は、
保険行政、
保険のいろいろの種類がございますが、この社会
保険の統一ができていないということに大きな
原因があると思う。たとえば組合管掌
一つ拾い上げて見ますと、私は数字をちょっと拾ってみましたが、一般に今
医療費というものはどんどん、毎年々々
医療費がかさばってきておるということをいわれておる。なるほどそうです。
医療費が医学が進むに従って上がってくるということは、これは趨勢だろうと思うのですが、
保険行政、
保険組合の中でも、この組合管掌というものを
一つ拾い上げてみますと、被
保険者から集まってくる
保険料の集まりの
保険料の額ですね、これは
昭和三十一年から
昭和三十四年、この間を見まして、三十一年と三十四年を比較してみますと、
保険料の集まり方を三十一年を一〇〇とすると、三十川年には一四四という大きな
保険料が集まっている。ところが
保険給付費、これは
医療だけでなくして、一般に全部の
保険給付費はどうかとしますと、同じ三十一年と三十四年と比較しますと、三十一年を一〇〇とすれば三十四年は一三五ということになる。
保険給付の方の増し方が
保険料金の集まり方よりもむしろまだ低いんです。ということは余裕があるということなんです。もう
一つ事務費の方を見ますと、三十一年に一〇〇だったものが三十四年には一七〇になっておる。一番上がっているのは
事務費なんです。これが今日の
保険行政の目をつけなければならないところであって、ほんとうの
医療あるいはその他の
保険給付というものの上がり方はそれほど多くないのに、
事務費の方は一七〇というような大きな数を出しておる。こういうことは当然皆さん方ももう御存じのことと思いますけれ
ども、私は特にこの点をつけ加えておきたいと思うのですが、共済組合においても大体そういうようなところでございまして、さらに政府管掌の
健康保険を見ましても、三十一年とこれは三十三年の比だけしかとつておりませんが、
保険料の集まりを三十一年を一〇〇とすれば、三十三年は一三三。
医療費の
関係はどうかとしますと、三十一年が一〇〇であれば、
医療費が一二七ということです。いつもどの例を見ましても、金の集まり方はだんだんよけい集まってきておる。であるけれ
ども、
医療費の方も増してくるけれ
ども、
医療費の増し方はそれほどでないというのが、数字の上で現われておる現実なんです。
そういうふうですから、金は余っているのです。たとえば共済組合でも、この四年間に共済組合でさえ六十三億という金を余しております。組合
保険によりますと、これは非常にたくさん金が集まっておるわけでございまして、単に金だけではございません。金以外にいろいろの
施設というようなもので、たとえば山の家とかあるいは保養とかいうもので保有されている財産というものは
相当莫大なものなんです。現金をずっと集めましたこの四年間だけでも三百二十億、その他今申しましたいろいろの
施設費などがどれぐらいあるか、これは私
どもには計算ができないのでございますが、かつて衆議院の社労
委員会で
当局に資料を請求したことがございますから、よく計算ができていると思うのですが、後刻それは
事務局の方から私は示してもらいたい。実際、含み資産というものがどれくらいあるか。ある方面では五千億あるというようなことを言っております。多少の違いはあっても、
相当額の
金額が残っているのではないかと思うのでございます。たとえば、三十三年慶を見ましても、
施設費に出したのが二百五億というのが出ているのを見ましても、
相当施設費というものが出されているだろうと思うのです。また、
経営の
内容を見ましても、
保険給付のほかに、その他の
支出というもので二百四十二億六千万円というような、その
内容を詳しく調べておりませんけれ
ども、その他の
支出という一括した名前で出されているというような、非常に潤沢な出し方をしてある。こういうふうなことを考えると、私は今の政府管掌にしましても、あるいは共済組合
関係にいたしましても、組合
保険関係にいたしましても、十分倹約をしているせいではございましょうが、決して今
医療費の支払いに困るという状態にはない。むしろ非常に多額の保有金をどの
会計でも持っているというのが実情であろうと思うのです。ただその中で比較してみますと、組合の方が一番裕福であって、そうして政府管掌の方が一番貧乏であるということは言えましょう。なおさら
国民保険の方がまた経済的には一番因っているということは、その被
保険者の富の程度から見て当然のことであると思う。
そこで私は、こういう
保険行政というものを円滑に、そうして問題をなるべく起こさないようにやっていくためには、こういうたくさんの種類の
保険のあるものを
一つ何とかして統一していくのが一番根本的な解決策じゃないかと思うのです。
保険の
建前から申しますと、お金持はお金持同士が集まり、貧乏人は貧乏人で集まるのだ。たとえば政府管掌の方は割合に富の程度の低いものの集まりであり、組合
保険の方は割合、比較的に富の程度の高い人の集まりである、こういうふうになっているのが間違いであって、富んだ者と貧しい考とを突っ込んで、これがお互いに協力して助け合うというのが私は
保険だろうと思う。お金持はお金持だけでやるのだということであれば、これは決して
保険の本来の姿でないと思う。
厚生大臣は今度は総合の企画室も作られるそうでございますが、そこでいろいろの企画をし、あるいは研究もございましょうけれ
ども、大臣自身としては、
一つの自分自身のお持ちになっている理想と申しますか、施薬というものがあると思う。この点についての大臣のお考えを伺っておきたい。