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政府委員(清水康平君) いわゆる永仁の壷につきましては、私
どもといたしまして、大へん恐縮いたしておる次第でございます。今日までの経過につきましては、要点を申し上げたいと思います。いわゆる永仁の壷といっておりますが、これは壷ではなく瓶子でございまして、永仁の銘があります古瀬戸瓶子というのが正しいと申しますか、私
ども言っております名前でございます。この瓶子は、去る
昭和三十四年の六月に
文化財保護委員会におきまして、重要文化財に指定いたしたのでございます。古瀬戸につきまして銘のあるものは、御
承知かと思いますが、清和元年、一三一二年でございますか、清和元年の銘のある瓶子がございます。これは
昭和十二年に指定されたものでございます。ところがいわゆるこの瓶子、永仁の壷と言った方が
通りいいと思いますから、永仁の壷という言葉を使いますが、永仁の壷は、銘が永仁年と書いてございまして、
昭和十二年に指定いたしました清和の銘のある瓶子よりもまだ古い時代でございます。従いまして三十四年指定する前の
文化財保護委員会専門審議会における審議におきましては、最古の銘文のある瓶子としまして、わが国陶磁史上の貴重な資料として
考えられまして、指定いたしたような次第でございまして、この壷は御
承知と思いますが、
昭和十八年に、愛知県の春日井郡、詳しく字もわかりますが、春日井郡のある村から出土したといわれております。その当時は、中日新聞が報道いたしまして、その後
昭和二十三年に、これはわが国最古の銘のある古瀬戸だというのでもって指定の候補に上がったわけでございますけれ
ども、銘文の書き方について、もっと
研究する必要があるというのでもって保留にいたしまして、約十年たちました間、その銘文などを調査いたしまして、それで去る
昭和三十四年に指定になったというのでございます。
せっかく御質問ございましたから、ちょっと詳しく申し上げた方がいいと思いますので申し上げるわけでありますが、瓶子でございまするから、
二つあるのが普通でございます。その
一つがやはり永仁の銘がございまして、それがいつの間にか、どこへ行ったかわからない、たぶんこれは外国に出たに違いない、
一つはここにある、これを何とか外国に出ないようにしなければならぬという理由もあったことも
一つの理由でございますが、しかしながらこれにつきましては、地元の意見な
ども聞きまして、もちろんりっぱな作ではありますが、むしろそれよも日本の陶磁史上、文化史上、非常に古い銘のあるものだというわけで、これを指定いたしたのでございます。
ところが昨年の二月ごろから、古瀬戸につきましては、地元民に相当りっぱな
研究者がおられますが、その方々の方から、あれは少しおかしいということで、いろいろ要望書が出て参ったのでございます。従いまして、
文化財保護委員会といたしましては、昨年、前前からそういうことをいわれましたので、もちろん
文化財保護委員会は、指定されてあるものも指定されてないものも常に調査
研究する職務があるわけでございますが、そういうような要望が参りましたので、
研究に従事しておったわけでありますが、昨年の九月ごろ虚心たんかい、行きがかりにとらわれないで、これを調査しようというふうにきめまして、今日までずっと調査をいたしておるような次第でございます。
調査には、
文化財保護委員会の専門技官のほかに、博物館あるいは文化財
研究所所員でその方面の
研究者を集めまして、また民間の人も入っていただきまして、今日に至るまで、大体八回に及ぶ調査
研究をいたしておるわけでございます。
それで調査の
研究の
内容を、調査方針といたしましては、とにかく古瀬戸のころの焼物を指定してあるものも指定してないものも、あるいは破片も、いわゆるいいものも、それからどうもおもしろくないようなものも、できるだけ多く集めました。大体形の完全なものは九十何点集め、破片も、これは間違いないもの、これはおかしいものと思われるものも全部を集めまして、今日、先ほど申し上げましたように、八回にわたる調査をしておるわけでございます。調査の方針といたしましては、特にこの永仁の壷が中心になるわけでございます。他との比較をしなければなりませんが、様式でありまするとか技法、銘文などについて調査比較いたし、あるいはその焼物の土、釉薬——薬でございますが、釉薬などの科学的調査、あるいは考古学的な調査もいたしておるわけでございます。
それでそのほかに、特に私
ども今度の調査の中でも意を注いでおりまするのは、科学的調査をいたさなければならぬ、たとえばX線透視により内部を
検査しますとか、あるいは釉薬を選び非破壊螢光分析装置で調べるとか、あるいは残留磁器の測定
検査をするというような科学的な調査も現在しつつあるわけでございまして、ただいまのところ、ある方向に結論が進みつつあるわけでございます。この三月の下旬に、国宝重要文化財
関係の文化財専門審議会が開かれる予定になっておりまするので、それまでに専門的な私
どもの調査の結果をありのままに報告、諮問いたしまして、そこで審議をいたされましたその結果に基づきまして御答申あると思いますが、その御答申に基づきましてできるだけ早い機会に善処いたしたい、かように思っておるような次第でございます。