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1961-05-23 第38回国会 参議院 外務委員会 第17号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十六年五月二十三日(火曜日) 午前十一時十七分開会
—————————————
出席者
は左の
通り
。
委員長
木内
四郎
君 理事 青柳 秀夫君 井上 清一君 森 元治郎君
委員
草葉
隆圓
君 笹森
順造
君
杉原
荒太
君
野村吉三郎
君 堀木 鎌三君
加藤シヅエ
君 佐多
忠隆
君 羽生 三七君 曾祢 益君 佐藤 尚武君
政府委員
法務省民事局長
平賀
健太
君
外務政務次官
津島 文治君
事務局側
常任委員会専門
員
結城司郎次
君
説明員
法務省民事局
第 二
課長
阿川 清道君
外務省アジア局
南西アジア課長
内田
宏君
外務省経済局次
長
高野
藤吉
君
外務省条約局外
務参事官
東郷
文彦
君
通商産業省通商
局振興部長
生駒 勇君
—————————————
本日の
会議
に付した案件 ○
外国仲裁判断
の
承認
及び
執行
に関す る
条約
の
締結
について
承認
を求める の件(
内閣提出
、
衆議院送付
) ○
所得
に対する
租税
に関する二重
課税
の
回避
及び
脱税
の
防止
のための
日本
国
政府
と
シンガポール自給
州
政府
と の間の
条約
の
締結
について
承認
を求 めるの件(
内閣提出
、
衆議院送付
) ○
日本国
と
フィリピン共和国
との間の
友好通商航海条約
の
締結
について承 認を求めるの件(
内閣送付
、
予備審
査)
—————————————
木内四郎
1
○
委員長
(
木内四郎
君) それでは、ただいまから
外務委員会
を開会いたします。
外国仲裁判断
の
承認
及び
執行
に関する
条約
の
締結
について
承認
を求めるの件、
所得
に対する
租税
に関する二重
課税
の
回避
及び
脱税
の
防止
のための
日本国政府
と
シンガポール自治
州
政府
との間の
条約
の
締結
について
承認
を求めるの件。 以上、
衆議院送付
の両件を
一括議題
といたします。両件は、去る十八日
衆議院
から送付されまして、本付託となりましたから、念のために申し上げておきます。 両件につきましては、先般
提案理由
の
説明
を聴取いたしましたが、さらに
補足説明
を
政府当局
から聴取いたしたいと思います。 まず、
外国仲裁判断
の
承認
及び
執行
に関する
条約
につきまして、
法務省
の方から参っております
平賀民事局長
からお願いいたします。
平賀健太
2
○
政府委員
(
平賀健太
君) ただいま
議題
となっております
外国仲裁判断
の
承認
及び
執行
に関する
条約
は、一九二七年ジュネーブで
締結
されました
外国仲裁判断
の
執行
に関する
条約
、これを実質的に修正したものでございます。その
修正点
は、すでに
外務省
の方から
提案理由
の御
説明
の中に詳細に述べておることと存ずるのでございますが、この
条約
の
適用範囲
をさらに広げた、それから、この
外国仲裁判断
の
効力
の
承認
及びこれに
執行力
を付与することにつきましてさらに条件を緩和したこと、その他の点につきまして大きな改善がなされておるのでございます。それからなお、わが
国内法
といたしましては、
民事訴訟法
中に
仲裁判断
に関する
手続規定
があるのでございますが、
外国仲裁判断
に関しましては、特に明文の
規定
を置いていないのでございます。しかしながら、わが
民事訴訟法
の
立場
におきましても、この
外国仲裁判断
の
効力
を認めないというわけではないのでございまして、これは、
仲裁判断
というものが
紛争
の当事者間の
合意
に基づくものである。契約に基づくものである。その
合意
の
効力
を
基礎
としております
関係
で、わが
国内法
の
立場
におきましても、
外国仲裁判断
の
効力
を
承認
するというのが正しい
解釈
であると思うのでございます。この
外国仲裁判断
の
効力
の
承認
につきましては、
国際司法
上種々複雑な問題があるのでございまして、これは、
ひとり民事訴訟法
のみならず、
国際私法
の
原則
を定めましたところの法例の
規定
と彼此対照いたしまして
解釈
をしなくてはならぬ、かなり複雑な問題でございまして、
国内法
として立法的に解決すると申しましても、しかく簡単にいかんのでございますが、幸いに、今回のこの
条約
が
わが国
においても
承認
されますと、いろいろなむずかしい
解釈
上の問題がほとんどこの
条約
によって解決つくのではないかと思われる次第でございまして、
わが国
におきまして、
外国
でなされたところの
仲裁判断
の
効力
が問題になります場合に、非常に大きな貢献をするのではないかと考えておるのでございます。なお、この
仲裁判断
というものの
効用
につきましては、これはもう皆様十分御承知だと思いますので、るる述べる必要はないと思うのでございますが、特に
外国
との
貿易
におきましては、この
仲裁判断
というものが非常に大きな
効用
を持つのでございまして、もしこれを
裁判手続
によって行なうということになりますと、非常に複雑な
手数
がかかる。また
費用
もかかる。従って時間もかかる。しかも、たとえば、
わが国
の
貿易業者
が
外国
の
裁判所
に
相手方
を訴えまして、そこでかりに勝訴の
判決
を得ましても、これを
日本
に持ってきて、
日本
にその
相手方
が財産を持っておるというような場合を仮定いたしまして、
日本
の
裁判所
でその
判決
を
執行
しようといたしましても、これはできないのでございます。
外国
の
裁判所
の
判決
というものは、当然に無条件に
わが国
では
効力
が認められないのでございまして、普通の事態のもとにおきましては、これを
執行
することができ一ない。何か
条約
その他の
合意
に基づきまして、その
外国裁判所
の
判決
の
効力
を
承認
するということになっておりますれば格別でございますが、現存におきましては、一般的にはそういう
条約
はないのでございまして、
わが国
内でこれを
執行
するということは不可能なのでございます。もちろんこれは、
日本
の
商人
ないし
貿易業者
にとりまして有利な点ばかりではございません。逆に、
日本
の
商人
がこの
仲裁判断
で負けまして、
日本
の
国内
でこれを
執行
されるという不利益もあるわけでございまして、
相互
的ではございますけれ
ども
、とにかく
外国
との
取引関係
におきまして
紛争
が生じました場合に、迅速に
手数
をかけないで、また
費用
、時間もかけないで、
紛争
の解決がすみやかにできるという点で、これは、
わが国
の
貿易
、
外国
との
取引
においても非常に大きな有用な働きをするのではないかと考えております。 なお、細部の点につきましては、御
質問
に応じましてお答えをいたしたいと存じます。
木内四郎
3
○
委員長
(
木内四郎
君) 次に、
シンガポール自治
州
政府
との間の二重
課税防止条約
につきまして、
外務省
の
内田南西アジア課長
から
補足説明
を伺うことにいたします。
内田宏
4
○
説明員
(
内田宏
君)
シンガポール
との二重
課税防止条約
について
補足説明
を申し上げます。
東南アジア
との二重
課税防止条約
は、さきに
昭和
三十四年
パキスタン
と、それから
昭和
三十五年
インド
と
締結
いたしまして、すでに
国会
の御
承認
を得て発効いたしております。また、
パキスタン
につきましては、
利子条項
が抜けておりましたために、
利子条項
に関する
補足条項
を作りまして、今
国会
においてすでに御
承認
を得ております。このたび御提出申し上げました
シンガポール
は、
東南アジア
につきましては第三番目の二重
課税防止条約
でございます。これは、本年当初から
交渉
いたしまして、
シンガポール自治
州
政府
は
イギリス政府
よりこの
締結
のための授権と同意を得まして、四月十一日に署名をいたしまして、ここに
批准
のための
国会
の御
承認
を縛るように提出している次第でございます。 本
条約
は、大体従来
締結
いたしました
パキスタン
、
インド
の例にならっておりまして、
前文
と二十カ条にわたってなっております。
基本的ライン
は、
インド
、
パキスタン
と大体同じ形でございます。 まず、
産業投融資
につきましての
課税
の
減免条項
を設けております。これは、具体的に申し上げますと、配当は一五%、それから、
利子
及びロイヤリティは
免税
ということになっております。また、
シンガポール
は新しい国でございますので、
国内産業育成
のためにパイオニア・
インダストリー
、いわゆる
創始産業法
というものを作りまして、重要な
産業
につきましては、当初の
期間
におきまして
免税
をいたしております。この
適用
によりまして
シンガポール
において
免税
を受けたものにつきましては、
日本
において
総合課税
をするときに、
シンガポール
で支払われたものとみなして、みなし
控除
を行なう。このみなし
控除
は、すでに
パキスタン等
においても認められておる例でございますが、これを
シンガポール
にも
適用
しているわけでございます。そのほかに、
産業
以外の船舶、それから航空機の
運航所
程についても、
相互免除
をされております。これは、
日本
の
海運
、
航空業
に資するところ非常に大であると存じます。このほかに、本
条約
では、
短期滞在者
とか、
政府職員
、
交換教授
、
留学生等
に対しましても
免税措置
を定めておりまして、この
条約
によりまして、まあ
わが国
と
シンガポール
との間の
経済技術
及び
人的交流
が一そう促進されると思います。それで、この
条約
の
締結
によりまして、大体
日本
の方が稗益することが多いと存じます。
シンガポール
は、この
日本
との
経済協力
を非常に歓迎いたしまして、すでに
シンガポール側
で四月二十八日に
批准手続
を了しておりまして、
わが国
の
批准
を符っておるような次第でございます。 以上をもって
補足説明
を終わります。
木内四郎
5
○
委員長
(
木内四郎
君) それでは、さらに、
日本国
と
フィリピン共和国
との間の
友好通商航海条約
の
締結
について
承認
を求めるの件をもあわせて
議題
といたしまして、
政府当局
から
補足説明
を伺いたいと思います。
高野藤吉
6
○
説明員
(
高野藤吉
君) それでは、
日本
と
フィリピン
との間の
友好通商航海条約
に関しまして
補足説明
を申し上げます。
日本
と
フィリピン
は、一九五六年に
日比賠償協定
が結ばれまして、
締結
以来しばしば
通商航海条約
を結ふという希望を持って、
お互い
にその意思を表明し合っておりましたのですが、なかなか
フィリピン
は戦後
日本
に対する感情があまりよくなく、そういう気運が熟さず、やむなく
貿易
及び
入国滞在
につきまして暫定的な取りきめでやって参った次第でございます。しかし、両者におきまして
お互い
に
通商条約
を結ぼうという時期が昨年の初め以来熟しまして、昨年の二月から本格的な
交渉
に入った次第でございます。初めに、二月二十三日にマニラで
会議
を開きまして、四月に至りまして東京に移り、約八カ月の長い
間交渉
をいたしまして、昨年の十二月ようやく妥結を見た次第でございます。本
条約
は、全文十カ条からなっておりまして、
入国
、
滞在
、
事業活動
、
通商
、
海運等
の
事項
につきまして
最恵国待遇
を
お互い
に供与する。戦後
東南アジア諸国
と
日本
は、
インド
、
マレー
、または最近は
パキスタン
と結びましたが、
通商航海条約
としては、
インド
、
マレー
は単に
通商協定
でございますが、
通商航海条約
としては初めてのものであります。また、
フィリピン
にとりましても、独立以後
最初
のものでございます。実際の
貿易量
を見ますと、昨年わが方の
輸出額
は約八千四百六十五万ドルになっておりまして、
輸入額
が、非常に入超になっておりまして、一億一千三百六十三万ドル、主要の
輸入品
は、木材、
銅鉱石
、
鉄鉱石
、それから
繊維原料
でございます。それから、わが方のおもな
輸出品
は、
金属
及び
金属製品
それから機械、
繊維製品等
でございます。これができますれば、この大きな市場もまた格段と
貿易
が進むものと考えております。 以上、簡単でございますが、御
説明
を申し上げます。
木内四郎
7
○
委員長
(
木内四郎
君) それでは、ただいま
補足説明
をお伺いしました三件について
質疑
に入りたいと思います。
質疑
のおありの方は、順次御発言をお願いします。
杉原荒太
8
○
杉原荒太
君 私、ちょっと
予算委員会
の方がありますので、失礼ですが、先に
一つ
質問
させていただきます。先ほどの
法務省
の
説明
それ
自体
について、私ちょっとお尋ねしたい。
説明
の中で、
外国判決
の
効力
の問題について触れられたんだが、
外国判決
の
日本
における
効力
及びその
執行
についての
民訴
のたしか
相互
の
保証
という
要件
があったと思いますが、その
相互
の
保証
の
内容
をどう理解していられるか。まあ
条約
がある場合は、それは疑いの余地はないと思いますが、その他要するに
相互
の
保証
というものの
内容
をどう
解釈
しておられるのか。その点を
一つ
。
平賀健太
9
○
政府委員
(
平賀健太
君) たとえば、
日本
と他の
A国
というものを考えますと、
日本
と
A国
との間におきまして、
A国
の
判決
を
日本
においても
効力
を
承認
するということを
日本
が約束し、また
A国
におきましても、
日本
の
裁判所
がした
判決
の
効力
を
承認
する。まあそういう
条約
でもってそういう
合意
が成立している場合、これがその典型的な場合であろうと考えております。
相互
の
保証
があるとき……。
杉原荒太
10
○
杉原荒太
君 いや、私の聞きたいのは、
条約
という形式でそういうことが
保証
される、これは問題ないのですよ。私の聞きたいところは、単にそれだけに限定されるのか。そのほかの場合もあり得るのか。あるとすれば、どういう場合があるかということをお聞きしているのです。
平賀健太
11
○
政府委員
(
平賀健太
君) 普通は、これは
一つ
問題がございますのは、ある
外国
で
日本
の
裁判所
の
判決
の
効力
を
承認
するならば
日本
でも
承認
する。これは、その
外国
におきましても、
日本
がその国の
裁判所
のした
判決
を
承認
するならば、
日本
の
裁判所
のした
判決
も
承認
するという、そういう
国内法
の
規定
がある。たとえば、
民訴
の二百条の、
相互
の
保証
があるという四号、問題になっている
相手国
の
法律
にもこれと同じような
内容
の
法律
がある場合は、これは
民訴
でいう
相互保証
があるということになるのかならぬのかという問題があると思います。これは、
解釈
が必ずしも一定しておりませんけれ
ども
、私
ども
の実務の
取り扱い
では、同じような
相互
の
保証
があるぞという
規定
がそれぞれの
相手国
の
国内法
にもあるというだけでは、いわゆるこの
相互保証
があるとは解していないのでございます。
外国
の方でも、私
ども
の知っております限りにおき・ましても、
外国
でも、やはりそれで
相互
の
保証
があるというふうには
解釈
して取り扱ってないように考えるのでございます。御
質問
の場合はその場合ででもあろうかと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
杉原荒太
12
○
杉原荒太
君 私もそうだと思う。ただ
相手
の
国内法
だけでもって
相互保証
の
要件
が満たされているという
解釈
は、私も実はとっていないのだが、それ以外に、今までの
先例
もある、そういうものがあるかどうか。そういう場合、どういう
取り扱い
を実際してきているのか。たとえば、私のお聞きしたいのは、
相手国
の
政府
、さらに具体的に言えば、こちらから言えば、こちらの
大使
に対して
向こう
の
外務大臣
から、
つまり国
を代表してその点を確約すれば、
民訴
のその
相互保証
の
要件
を満たしていると、こういう
解釈
ができるものかどうか。そういう点が大きいので聞いている。
平賀健太
13
○
政府委員
(
平賀健太
君) その点は、私、
相手
の
国内法
にもよるのではないかと思うのであります。たとえば、
外国
の
大使
と
日本
の
外務大臣
との間の
交換公文
というようなものを考えました場合に、
日本
では、
民訴
にこういう
規定
がございます
関係
で、そういう
合意
をする
権限
が
政府
にあると私思うのでございますが、
条約
としての
効力
を持たなくても、
条約締結
の
手続
をとらなくても、その点は可能だと思いますが、
相手国
の
政府
にその
権限
があるかどうかということにかかってくるのではないかと思うのでございます。
日本
と同様でございましたら、
交換公文
でもその点は可能ではないかと私は考えます。これは、なお
外務省
の方から御答弁いただければいいと思います。
杉原荒太
14
○
杉原荒太
君 いや、あなたの方がいい。それは、それぞれの、たとえば
相手国
の
政府
あるいは
外務大臣
が
日本
に対してそういう言明をするにあたって、その前提としては、
国内法
で
法律
的に可能だということがなくちゃもちろんいかんです。それはもちろんのことだと思う、
お互い
に。しかし、そういう場合に、他の、特にこれは
裁判所
が有効と認めるかどうか。それは非常に重大な
法律
問題だ。そういう場合、つまり
相手国
の
外務大臣
と
日本
の
大使
との間にそういう公式の書簡の往復というものがあれば、その
要件
を満たしたと
解釈
されるかどうかです。
平賀健太
15
○
政府委員
(
平賀健太
君) 満たすと考えます。
杉原荒太
16
○
杉原荒太
君 それじゃ、別の問題で御
質問
いたします。
フィリピン
との
条約
に関することですが、第一にお尋ねしたいのは、
政府
の
提案理由
の
説明
によると、
政府
は、
日本
と
フィリピン
との間の
貿易
、
通商関係
を
長期
かつ安定した
基礎
に置くため、
通商航海条約
の
締結
を
フィリピン側
に申し入れてきたと、それはそれとしてけっこうなことであります。しかし、でき上がった
条約
を見るというと、
長期安定性
の
要求
の上から見て、きわめて不満足なものである。具体的に指摘すると、第一に、
有効期間
というのがわずか三年です。単なる
貿易協定
ならともかく、いやしくも
通商航海条約
と銘打ったものの
期限
としてはあまりにも短い。それが、またさらに、その三年の
期間
後はいつでも終了させることができるということを
規定
しておる。すなわち、三年の後には、全然
予告期間
もなしに廃棄し得るようになっておる。これでは、
長期安定性
の、
長期
かつ安定した
基礎
の上に置くという
要求
が満たされていない。だから、この
条約
の
締結
の
趣旨
を述べた
前文
、プレアンブルの中にも、「
相互
に有利な
基礎
の上に」置くためというふうな文句でお茶を濁さざるを得ない格好になってきておる、しかし、
政府
として、もとよりこれは決して満足しておられるわけじゃなかろうと思う。むしろ
通商航海条約
全体、それ
自体
に対して先方必ずしも乗り気でなかったのを、とにかくこの
条約
の
締結
まで誘導してこられた点の
政府
の
努力
、苦心というものは、私十分察する。しかし、それにしても、この
期限条項
が一体こんなところに落ちつかざるを得なかったというのは、一体どういう経緯があったか。その点を
一つ
説明
して下さい。
高野藤吉
17
○
説明員
(
高野藤吉
君) 御指摘の点は、まことにごもっともでございまして、
政府
といたしましても、三年よりも長い
期間
、すなわち、五年の
期間
をもちましてこの
条約
を結びたかったのでございますが、
フィリピン側
といたしましては、初めての
協定
であるし、なかなか長い間の
条約
は非常に難色を示しまして、五年を強闘いたしますと、
条約自身
の
締結
も疑われると、
フィリピン
としては、いわば試験的にこれをやるという
意味
で、三年ならばよろしいということで、妥協の産物といたしまして、われわれとしては、五年にいたしたかったのですけれ
ども
、何もないよりも、とりあえず三年間の
協定
があれば、それの方がないよりもいいという観点から
締結
いたしたわけでございます。そのあと六ヶ月の通告でこれが廃案できますが、なければ、
向こう
、
フィリピン側
が満足していれば、そのまままた続くという
協定
で、半分は満足されたと、われわれは考えておる次第でございます。
杉原荒太
18
○
杉原荒太
君 大体
趣旨
は了解しました。ただ、最後のあなたの
説明
は事実と違うじゃないか。六カ月
予告
というのは、一番初めの三年間のときの六ヵ月のことで、三年過ぎたらいつでもというので、
予告期間
ないですよ。まあそれは事実だから、調べるまでもなく、そう書いてあるのだから、その点いいです。 次に、
通商条約
の
用語
として、
最恵国待遇
だとか、あるいは内
国民待遇
とか、あるいは
国民待遇
という
言葉
は、これは熟した
一つ
の
内容
を持っておると思うが、無
差別待遇
という
言葉
もときどき出てくるのだが、一体これは、
外務省
では、どういう
内容
のものと観念しておられるのか。
最恵国待遇
との区別及びその
相互
の
関係
は一体どう観念しておられるか。
高野藤吉
19
○
説明員
(
高野藤吉
君) 私
ども
といたしましては、
条約
の
用語
の慣例に従いまして、
最恵国待遇
という
言葉
を使いたかったのでございますが、
フィリピン
といたしましては、その
言葉
にこだわりまして、無
差別
という
言葉
を使いたいというので、まあわが方が譲歩いたした次第で、
内容
的には変わらないと、われわれ考えております。
杉原荒太
20
○
杉原荒太
君 そういうふうに解しているの、全然
内容
的には変わらぬと。まあ
言葉
それ
自体
の
意味
から、字義としては、つまり
外国人
の間で
待遇
を異にせぬという場合、
内国人
と
外国人
との間の、これも
一つ
の無
差別待遇
という
言葉
としてはそういうのだが、この無
差別待遇
という
言葉
を使った場合、いつも
最恵国待遇
と同じ
意味
に使うというのですか。
高野藤吉
21
○
説明員
(
高野藤吉
君) われわれはそういうふうに
解釈
しております。
杉原荒太
22
○
杉原荒太
君 そうすると、
内外人
の
差別
がない場合のはどういうことなんですか。これは、
言葉
というより、
通商航海条約
に開通しての
用語
として、それは……。
高野藤吉
23
○
説明員
(
高野藤吉
君) 無
差別待遇
という場合には、
外国人
との
関係
において無
差別
即
最恵国待遇
で、内
国民
との比較において問題が起きる場合には、そういう
意味
では使っておらないわけであります。
杉原荒太
24
○
杉原荒太
君 それはそれでいいですがね。いいが、
一つ
、あまりあっちこっちで混同したように使わぬように、それが確立しておるなら、それでいいのだけれ
ども
、これはそのように限らぬですよ。ときどきこれが出てくるので、その
内容
があっちこっちに違ったものを同じ
言葉
で表現すると非常に誤解を起こすから私は聞いておる。 それから次に、二条に、
裁判所
の
裁判
を受ける
権利
について
最恵国待遇
を
規定
しておる。それで、この二条には、
裁判
を受ける
権利
以外の
事項
も、いろいろな
事項
がまとめられて、
最恵国待遇
を保障しているわけですが、ここに、この中身を見るというと、
裁判所
の
裁判
を受ける
権利
と、それから、それ以外のここに掲げてある
事項
は、
待遇
問題を考えるとき、実は
性質
がかなり通う
性質
のものなんですれ、本来。他の
事項
についてはともかく、
裁判所
の
裁判
を受けろ
権利
については、これは、内
国民待遇
を与えないで、単に
最恵国待遇
のみを与えるようにここに
規定
してあるわけだが、これは一体どういうわけであるか。いやしくも
裁判
を受ける
権利
は、これはもう
内外人平等主義
というのが今日の
文明国
の通義である。また、ある点
国際法
の論理の
原則論
でもあると思う。
日本憲法
だって、もちろんこれは、
裁判
を受ける
権利
として、
内外
の
平等主義
の建前をとっておる。これは
憲法学者
の一致した見解である。おそらくこれは、それだからほかの
事項
とは非常に違うのだが、もちろんこの
最恵国待遇
も
規定
していいですよ。しかし、その場合は、内
国民待遇プラス最恵国待遇
というふうにするのが私は筋だと思うので、一体これは、どういうわけで内
国民待遇
を
向こう
は与えないというのか。どうもこれは、私には腑に落ちない。そこはどういうわけであったのか。その点を
説明
してもらいたい。
東郷文彦
25
○
説明員
(
東郷文彦
君) 第二条の
規定
は、この前、あれは
パキスタン
でございましたか、この前の
条約
のとき御
説明
申し上げましたように、実は、
日本国
との
平和条約
第十二条の
規定
をとりまして、
東南アジア諸国
の中で
最初
に結びました
インド
との
条約
の際、それを
平和条約
の
規定
をとって
締結
しましたわけで、その後これが
一つ
の型になって、今回の場合もこういう
規定
になっておりまして、お話の
通り
、
裁判
については、当然内
国民待遇
であるべきでございますが、
規定
としては、その前の型によりまして、今回もこの第二条の
規定
になっております。
杉原荒太
26
○
杉原荒太
君 まああなたの方の
説明
はそういう
説明
だろうけれ
ども
、一体こういうのをああいう
戦争終末
の処理の
条約
に書いてあるのが、何か
先例
といえば
先例
だけれ
ども
、もう少しこっちとしてはそこをふるい分けて検討してやった方がいいように思う。そうしてやられても、しかし
向こう
がどうしてもそれをきかなかった、それは別ですよ。こっちの
努力
としては、そういうところをもう少し
努力
した方がいいように思う。一体されたのですか。どうなんですか。
高野藤吉
27
○
説明員
(
高野藤吉
君)
交渉
の途上におきましては、われわれも内
国民待遇
を
要求
いたしましたのですが、
フィリピン
がどうしても聞かないために、やむなく
インド方式
、
インド
の
先例
がありましたから、これ以上は譲れないということで、こういうような
条約
に相なった次第であります。
杉原荒太
28
○
杉原荒太
君 これには、何条か、いろいろの
事項
について
最恵国待遇
の保障があるけれ
ども
、それには
一つ
の大きな例外があって、アメリカとフィリッピンとの間の諸
条約
に基づいたものは、これは
適用
外とするということになっておるのだが、アメリカとのその
条約
ですね。そういうものは、これは、実質的にはこの
条約
の重要な
内容
をなすのだから、
一つ
資料として、言わないでも出すぐらいにして下さい。 それからなお、ついでに一言聞いておくけれ
ども
、私は前から感づいていることだけれ
ども
、今度のでも、
説明
書の書き方、これは簡単は簡単でけっこうですよ。しかし、あまり簡単にしようと思って、
条約
の条文と照らし合わしてみるというと、正確を欠く点があるから、こういう点も注意してもらいたいと思う。
高野藤吉
29
○
説明員
(
高野藤吉
君) できるだけ御
趣旨
に沿いたいと思います。 それから、米比の特恵
関係
に関する資料につきましても、後刻提出いたしたいと思います。
森元治郎
30
○森元治郎君
仲裁判断
の
承認
及び
執行
に関する
条約
だけれ
ども
、
内容
は、国際
貿易
上当然必要なことだとは思いますが、問題は、
日本
が少し先走ってこの
条約
に参加しておるような感じがするのですが、それは、四十四カ国ばかり集まって
会議
をやって、そうして現在これに加盟しているのは十一カ国、四分の一しか入っていない。
日本
として、この
条約
に
関係
のありそうな、
インド
ネシアとか、あるいはビルマ、台湾
政府
、南ベトナムとか、問題の起こりそうな国は、まだこれに入っていない、もう少しよその、
関係
の起こりそうな国の参加を符ってから入ってもいいのじゃないか。なぜ急ぐのかを伺います。
東郷文彦
31
○
説明員
(
東郷文彦
君) いわゆる主要国の中で、お話のように、まだアメリカとかイギリスとかは入っておりませんが、アメリカなどは、連邦と州との
関係
というような問題もありまして、今のところ、まだ加入の見込みはないかと思いますが、イギリスなどは、近く入るのではないかと思っております。それから、特に
東南アジア諸国
については、お話のごとく、まだタイ、
インド
等でございますけれ
ども
、もともと
わが国
としても、そういう特に近隣の
東南アジア諸国
がこの
条約
に入ることが最も望ましいわけでありますが、さればこそ、従来ともエカフェその他において、この問題については、いわば
日本
が、
言葉
はいいかどうかわかりませんが、主導権をとってきたという形でありまして、そういうところから、
日本
がこの場合には率先して入って、そういう国を今後入るように持っていく、こういう
趣旨
で、また、
条約
の
内容
自身も非常にいい
条約
でございますから、なるべく早く入りたいというふうに考えております。
森元治郎
32
○森元治郎君
相手
の国が入って来なくちゃ、これは
お互い
に
関係
を持てないので、先走って、主導権をとるといっても、人がいないのに主導権のとりょうもないのだが、どういうふうにしてよその国をこれに参加させるようにさせるのですか。
東郷文彦
33
○
説明員
(
東郷文彦
君) ただいま主導権と申しましたのは、たとえばエカフェの
会議
とか、経済
関係
のいろいろな
会議
なり接触なりがあるわけでございますので、そういう
会議
を利用して
相手国
を説得する、そういうふうに考えたいと思います。
森元治郎
34
○森元治郎君 これは、ソビエトが珍しく早々と入っているのですが、これはどういう
意味
かな。
阿川清道
35
○
説明員
(阿川清道君) この
条約
は、国家の主権を
承認
するというふうな
関係
でございませんので、もっぱら商
取引
の当事者が自由意思に基づいて仲裁に付する契約をしまして、それに私人である第三者、私的機関である仲裁機関の下した判断の
効力
を
承認
するという、そうしてその
執行
を認めるということでございますので、どこの国でも、その敏活的な考慮その他を離れまして、入りやすい
条約
であると、こういう
性質
から来ておるのじゃないかと推測するわけであります。
羽生三七
36
○羽生三七君 ちょっと関連して。そうすると、そういういう場合、国営
貿易
をやっている国は、私人、私の
貿易
商とはどういう
関係
になるのですか、この
条約
で。
平賀健太
37
○
政府委員
(
平賀健太
君) 国が
取引
を一般
商人
と同じ資格におきまして
取引
をしている場合には、その国が仲裁契約の当事者になるわけでございます。たとえば、
日本
の
商人
と契約を
締結
します場合には、同時に仲裁契約をその国との間に結びまして、
紛争
が生じました場合に
仲裁判断
に付するということになるわけでございます。国でありますと私人でありますと、同様でございます。
羽生三七
38
○羽生三七君 ちょっと事務的なことになるのですが、よくわからないので、機構を承わりたいのですが、これは、何か常設機関というものがあれば、どういう形のものか、それから、この仲裁人の選定というのはだれがやるのか、どういう人がなるのか、そういう機構的なことをちょっとわかるように
説明
していただきたい。
生駒勇
39
○
説明員
(生駒勇君) ただいま御指摘のございました常設仲裁機関というものの
内容
につきまして御
説明
申し上げます。
わが国
におきましては、国際商事仲裁協会というものが、この常設機関として設置されているわけでございます。これは社団法人でございまして、会長は、現在足立正商工
会議
所会頭がなっているのでございます。おおむね職員は二百数名でございまして、また、予算規模から申しますと、大体二千万円程度の予算であるということでございます。これは、民法上の社団法人でございますので、社員がたしか三百五十七名ということになっているわけでございまして、これに対しまして、国といたしましては補助金を出しまして、この補助金は、先年度は百五十万円程度でございまして、本年度、三十六年度は二百万円程度の補助金を支出いたしまして、国際商事仲裁の強化ということをはかっておる次第でございます。 国際商事仲裁協会の行なっております
事項
は、大体三点ございます。
一つ
は、商事
紛争
の仲裁、調停及びあっせん、二番目がクレームの未然
防止
及び相談施設の活用、三番目が
外国
仲裁機構との提携という、三つの柱があるわけでございます。これを中心に運営しておるわけでございます。
羽生三七
40
○羽生三七君
国内
はそれでわかりましたが、国連ではどういう名称で、常設機関はどうなっておりますか。
阿川清道
41
○
説明員
(阿川清道君) 別に国連で常設仲裁機関を作っておるというのはないと承知しております。
羽生三七
42
○羽生三七君 そうすると、ここには国連事務総長に云々ということがしばしば出てくるのですが、それを国際的に、つまり当事者
相互
の国の間だけでなしに、これが世界的にといいますか、加盟各国を統一的に何か連絡する機関というものは別にないのですか。
生駒勇
43
○
説明員
(生駒勇君) ただいまの
法務省
の
説明
を補足いたします。 国際間事仲裁協会におきましては、先ほど御
説明
申しましたように、
外国
仲裁機構との提携ということがございます。その中におきまして、アメリカ仲裁協会でございますとか、全ソビエト連邦商業
会議
所でございますとか、ドイツ仲裁
委員
会というようなところと、九つの
貿易
仲裁
協定
を
締結
しておる次第でございます。
羽生三七
44
○羽生三七君 もう
一つ
お伺いしますが、そうすると、当事国同士で話し合うだけで、国際的な統一機関というものは別にないわけですね。
東郷文彦
45
○
説明員
(
東郷文彦
君) この
条約
には、事務局というようなものはございませんですから、今お話しのような
意味
で、国際的な統一機関というものはございません。しかしながら、この問題は、世界
貿易
に大いに
関係
があることでございますので、この新しい
条約
を作りますのにあたっては、国連の経済社会理事会の決議、それから、それに基づいて国連主催の
会議
でやりまして、従って、この
条約
の中には、いわば国際連合事務局が文書の上の連絡役みたいな
立場
にはございます。しかし、それ以上常設的な事務局のようなものはございません。
羽生三七
46
○羽生三七君 この仲裁人の選定はどういうところでやるわけですか。
平賀健太
47
○
政府委員
(
平賀健太
君) 仲裁人の選定は、これは、
原則
といたしまして、仲裁契約の当事者が選定方法をきめるわけでございます。これはいろいろの実例がございまして、よくございますのは、
紛争
の当事者が、それぞれ一人ずつの仲裁人を選定する、二人の仲裁人ができるわけでございますが、さらに、その二人の仲裁人が
合意
でもって、中立の第三者を、これはアンパイヤーですが、これもやはり仲裁人でございますが、これを選定して、三人でやるというような例が普通に行なわれておるようでございます。しかしながら、仲裁契約におきまして、場合によりましては、仲裁人の選定方法を定めてないことがあるわけでございます。そういう場合に備えまして、各国の
国内法
におきましては、
日本
でございますと、
裁判所
が関与いたしますが、
裁判所
が関与いたしまして仲裁人を選定するというような補充的な
規定
が設けられておりまして、それによりまして仲裁人が選定されるということになるわけでございます。
木内四郎
48
○
委員長
(
木内四郎
君) ほかに御
質疑
はございませんか。——それでは、本日はこれにて散会いたします。 午後零時六分散会 ————・————