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天埜良吉君 私は本案に対する修正の動議を提出いたします。修正案文を朗読いたします。
国有鉄道運賃法の一部を改正する
法律案の一部を次のように修正する。
附則中「昭和三十六年四月一日」を「公布の日の翌日」に改める。
以上であります。
内容につきましては、申し上げるまでもなく、四月一日が過ぎましたので、当然修正を必要とするわけであります。何とぞ本修正案に賛成されるようお願いいたします。
私は、自由民主党を代表いたしまして、
国有鉄道運賃法の一部を改正する
法律案に賛成の討論をいたしたいと思います。
国鉄の輸送力は、わが国輸送力の動脈にも当たるものでありますが、その実情につきましては、今日すでに
国民の輸送需要をまかない切れない状況のもとにあり、なお、所得倍増
計画とも
関連いたしまして、今後の
経済発展の隘路とさえなるおそれがあると思われるのであります。このような輸送力の現状と今後の輸送需要の増大とに対処するため、
国鉄新五ヵ年
計画が策定されておるのでありますが、これはもう時宜に適した輸送力増強
計画であると思うのであります。その
内容は、昭和三十六
年度を初
年度とする五ヵ年間に、総額九千七百五十億円、平均年額千九百五十億円をもって東北本線、北陸本線等の主要幹線千百キロメートルの複線化や、主要幹線千八百キロメートルの電化や、電化されない区間の全面的なディーゼル化や、通勤輸送の緩和や、踏切設備の改善や、車両の装備や、東海道新幹線の建設等を行なおうとするものであります。この
国鉄新五ヵ年
計画の必要性については、何人も異論のないところでありまして、これが
実施による効果について、
国民は大きな期待を寄せているところであります。しかしながら、この九千七百五十億円の
資金をどのように調達するのが妥当であるかという点については、これは……(聴取不能)の
議論のあるところでありまして、
国鉄の所要
資金は二千百……(聴取不能)残りの千五百六十億円のうち、外部からの
借入金四百二十五億……(聴取不能)
運賃値上げにより一般利用者から……(聴取不能)
運賃値上げは行なうべきではないという
議論が対立しております。この点についての私の見解を述べれば、今日の
国鉄の
運賃制度は相互原価主義をとっている点を思い、また西欧諸外国においては、現在すでに公共
負担の国家補償は
実施されておりますけれ
ども、わが国の交通事情は、これらの諸外国とは全く異なっていることなどから考えまして、
政府出資ないしは補助により
資金を調達することの
実施は、いまだ時期尚早であると断ずるものであります。すなわち、わが国の
国鉄の実情は、西欧諸外国における
状態のように逼迫しているものではなく、
国鉄自体の今後の
経営努力に期待し得るし、また、他の交通機関の発展も
国鉄経営に対しそれほど致命的な
影響を及ぼすところまではきていないであろうと思われるからであります。また、設備改善とか通勤輸送対策の……(聴取不能)
利子負担にたえない……(聴取不能)分に充てるための自己
資金について、当然
政府の一般会計からの出資ないしは補助に仰ぐ場合は、
政府の
予算の……(聴取不能)により左右される場合もあり、これは……(聴取不能)調達
方法と言わなければなりません。従ってこのような形で
資金の調達をすることは、
企業体としては不健全な
方法でありまして、これは安定した自己
資金、すなわち
運賃の
値上げによる、
運賃収入の増額により調達することが、最も妥当な
方法であると考えるのであります。このような意味から、今回の
運賃改定をこの
程度の率で行なうことは、事情やむを得ざるものと思うのであります。
この際、審議の
過程で問題となった論議を勘案し、特に次の諸点につき
政府並びに
国鉄当局の善処を強く要望するものであります。
第一点は、
国鉄の経営上大きな
負担となっている事項に、旅客
運賃の高率な定期割引や貨物
運賃の暫定割引や、さらにまた不採算の新線建設の問題などがあります。旅客
運賃の高率な定期割引及び貨物
運賃の暫定割引については、今回は急激な
影響を避ける見地から据え置きとなっていることはやむを得ないといたしましても、すでにこの問題は根本的な
検討を加えるべき時期に到達しているものと考えるのであります。また、新線建設の問題については、不採算の新線建設は抑制されるべきものでありますが、国家的な見地から不採算の新線建設が行なわれる場合には、根本的な
政府の助成
措置が講ぜられることが必要であります。
政府は、とりあえず、今回新線建設の
利子補給を行なわれることにいたしておりますが、まことに時宜を得たものと思います。過度に大きな公共
負担の問題や、不採算新線の建設
資金の問題は、近き将来必ず惹起される重要な問題として、
政府関係当局におきまして真剣な
検討並びに対策の樹立を要望する次第であります。
第二点は、今回の
運賃改定が、一般物価や家計、すなわち生計に与える
影響であります。この点に関しては、
政府並びに
国鉄当局は、価格に占める
運賃の割合や、生計費の中に占める交通費の割合がきわめて低く、現在と
値上げ後の場合とを比べてみたとき、旅客にしても、貨物にしても、その差は一定のきわめて小さいものであり、価格や生計費にさしたる
影響はないし、また過去の
運賃値上げ後の物価変動の経験より考察すれば、ほとんど物価には
影響はないという
判断に立っておりますが、私もまたこれと同様な見解を有するものであります。さらに私は、
国鉄運賃が、戦後インフレ対策の
一つとして、一般物価に比べてかなり低いところに抑えられてきている点等を認めるものでありまして、このような点から、
国鉄運賃が客観的にまだ安いという感じを与えておるものと思います。そこで今回の
運賃改定が、物価への
影響や
国民生活の安定を十分に考慮した最小
限度の
値上げにとどめられていることを勘案すれば、この
運賃改定はやむを得ないものと認める次第であります。しかしながら、最近の物価上昇の雰囲気の中で、今回の
国鉄運賃の改定の問題が世間に不安を感ぜしめている実情にかんがみまして、この際、
政府当局の強力な物価対策の樹立と、
実施の万全の策を特に要望するものであります。
第三点は、
国鉄経営の
合理化の問題であります。
国鉄が公共
企業体として真に
合理化に徹した経営を行なっているかどうか、
国民のきわめて深い関心の存するところであります。ことに、
運賃の
値上げにより
国民に
負担を要請している場合に、
国鉄自体にその経営面で真剣な
努力が払われなければならないことは、むしろ当然であります。先般
国鉄が、土地や高架の使用料金とか、広告料金とか、構内の営業料金等の
値上げを行なったり、また交通公社に対する切符の販売手数料を引き下げたり、また遊休財産の大幅売却の
実施をしたり、さらにまた、地方線区の管理所制度を強力に推進している事実等を考察いたしますと声、
国鉄当局の最近における経営上の
努力が著しく大きいものであることは、十分に認められるところであります。しかしながら、
国鉄はわが国最大の
企業体であり、その
企業は全国的に行き渡っておるものでありまして、批判の対象になる面もまだいろいろあるものと推察されますので、今後一そうの経営
合理化への
努力を強く要望するものであります。
第四点は、
国鉄新五ヵ年
計画の完全な
実施の問題であります。
国鉄の新五ヵ年
計画は、わが国経済の飛躍的な成長に備え、
国民生活や産業活動にとって緊急かつ欠くことのできないものであると思います。従って、この
計画が緊急かつ確実に
実施されることが必要でありますが、この点に関し、
国鉄当局は、従来の五ヵ年
計画の
実施における貴重な体験に基づき、万遺憾なきを期する旨の決意を表明しております。私は、この
計画の
完全実施のために
国鉄は全力を傾注すべきことを、また、
政府においてはその
計画が完遂されるように監督を行なうとともに、これに対し十分な援助を行なうべきことをここに要望するものであります。
要するに、今回の
国鉄運賃の改定は、
運賃法に定められている
運賃決定の四原則にのっとって、
国鉄の性格と使命や、わが国経済の成長と
国鉄新五ヵ年
計画との
関係や、あるいは
国鉄運賃改定が
国民生活や産業活動に及ぼす
影響等につき十分の考慮をめぐらして
検討した結果、適当なりと認める次第でありまして、本案に賛成の意を表する者であります。