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政府委員(高橋泰彦君) まず
最初の第一のお尋ねは、最近における
事故の問題でございます。御存じのように、ただいま日本と韓国の間では予備会談が持たれておるわけでございますが、この予備会談が発足いたしましてから、本年に入りましてからの
事故は一件ございました。それは本年に入りまして早々の問題でございますが、入江丸という約十トン程度の、はなはだ小さい船ですが、これは長崎の対馬を基地といたしまする漁船であって、いわゆるラインに入ったか入らないかというような問題もございますけれ
ども、一応拿捕された事件が一件ございました。これは幸いにして船と乗組員とも
どもにかなり早期に帰還することができましたことは、御同慶にたえない次第であるというふうに
考えております。最近の向こうの動きにつきましては、詳細は担当であられる
海上保安庁の方から御聴取願いたいと思いますが、私
どもの聞いておる範囲では、やはりまだ今後問題がないだろうというふうには
考えられないのでございまして、私
どもとしてはやはりできるだけ刺激的な行動を避けて自粛するというような方針で、ただいま
関係者を指導しておるような次第でございます。
それから第二点のラインの内外を通しての漁業状況のお尋ねでございますが、やはりこのラインに最も深い
関係を持つ漁業の種類といたしましては、トロール漁業、それから機船底びき網漁業、それからまき網漁業、それからサバ一本釣漁業、その他のいろいろな漁業と、各種の漁業、こういうふうに分けられると思いますが、一番生産額として大きいのが
——ほぼ同じでございますが、大体底の魚を対象といたしますトロール、底びき、合計いたしまして、約三十億から三十五億ぐらい、それからまき網は、年によって違いますけれ
ども、大体その程度のアジ、サバといったようなものをとっておるわけであります。それからそのほかのいろいろなものも、なかなか見積りがむずかしいわけでございますが、約十億以内の見当であろうかというふうに
考えております。このラインのために最も
被害を受けておりまするのは、先ほど申しました底びき、トロール漁業とまき網業でございます。この漁業の大体の趨勢でございますが、このラインの設定によりまして相当手ひどい
被害は受けておりますが、その後、漁
業者の各位の非常な努力によりまして、生産はおおむね順調でございまして、この点だけから見れば、一見数字の上から見ますれば、ラインの
被害がないといわれるかもわかりませんが、そうではないのでありまして、それは非常な苦心、たとえばまき綱につきましては、李ラインからはみ出した
方々が、新しく東シナ海、黄海における新しい漁場を発見したために、辛うじて回復したためでありまして、それは単にその面における数字だけで判断すべきではない。一応何とか発展はしておるけれ
ども、やはりそういったような問題がある。こういうふうに心得ておる次第でございます。
ただいま御
質問のあったことで
お答えしそこなったのですが、これらの数数の
——ことしは幸い以上のように平和裏に経過したわけでございますが、御指摘のように、従来は相当の
被害があったわけでございますが、これらの
対策でございますが、私
どものとりました
——取締りの
対策につきましては、
海上保安庁その他から御聴取願いたいと思っております。事後処理と申しますか、そういうような
対策につきまして概略御説明いたしたいと思います。
まず、私
どものとっている
一つの点は、いわゆる特殊保険制度でございます。これは拿捕、抑留を受けた場合に、保険加入者に対して保険金を支払う。国がそれを再保険するという格好で、保険加入ということによりまして、まず財産的な
損失を船主に対して補てんするという
措置を講じております。次は乗組員に対する
措置でございまするが、これは李ラインの問題が開始したあと、乗組員給与保険法というのを設定していただきまして、これによりまして乗組員の給与を保険制度によって補てんしていくというような制度をただいまとっております。なお、この二点は、いずれも保険制度でございまするので、おのずから限界があるのは当然でございますので、それを補てんする
意味のいろいろな施策を講じて参っております。
第一は、まず漁船について申しますと、保険によって補てんするだけではなしに、事後の漁船の建造につきまして、農林漁業公庫の融資の道を開くというようなことで、漁船の再建について協力する道をとってございます。なお給与保険につきましては、これは船員側から申し出があれば、義務として船主が入らなければならないような制度にいたしておりますけれ
ども、まだ若干入っていない、つかまってみたらば入っていなかったという場合も不幸にしてございまするので、その場合には若干の補てんを国がこれを見ていく、見舞金として交付するというような制度、または不幸にして抑留された場合の差し入れ料としての交付、その他残った家族に対する、もちろん生活保護法の問題もございまするけれ
ども、それでは十分ではございませんので、家族に対する見舞金の交付、また病気になった場合には医療費の補てんというような、私
どもの事務的に
考えまして可能な制度につきましては、もちろん十全とは申しませんけれ
ども、可能なできる範囲のことはこれをやってきておるというふうに
考えておるような次第でございます。