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1961-03-02 第38回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月二日(木曜日)     午前十時十三分開議  出席分科員    主査 三浦 一雄君       青木  正君    赤澤 正道君       井出一太郎君    仮谷 忠男君       松野 頼三君    足鹿  覺君       淡谷 悠藏君    角屋堅次郎君       川俣 清音君    高田 富之君       永井勝次郎君    三宅 正一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 周東 英雄君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         国 務 大 臣 迫水 久常君  出席政府委員         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局長)  山口  酉君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (経理局長)  木村 秀弘君         総理府事務官         (経済企画庁大         臣官房長)   村上  一君         総理府事務官         (経済企画庁大         臣官房会計課         長)      川村 鈴次君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  大來佐武郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  曾田  忠君         農林事務官         (大臣官房長) 昌谷  孝君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         農林事務官         (畜産局長)  安田善一郎君         食糧庁長官   須賀 賢二君         林野庁長官   山崎  齊君         水産庁次長   高橋 泰彦君         通商産業事務官         (大臣官房長) 樋詰 誠明君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     井上  猛君         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衞君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (重工業局長) 佐橋  滋君         通商産業事務官         (軽工業局長) 秋山 武夫君         通商産業事務官         (繊維局長)  松村 敬一君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      大堀  弘君         中小企業庁長官 小山 雄二君  分科員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁調         整局農林課長) 後藤伝一郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局物価政策課         長)      佐藤 健司君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局総合開         発課長)    玉置 康雄君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    村田 豊三君         建設事務官         (河川局次長) 鮎川 幸雄君     ————————————— 三月二日  分科員高田富之委員辞任につき、その補欠と  して三宅正一君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員三宅正一委員辞任につき、その補欠と  して角屋堅次郎君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員角屋堅次郎委員辞任につき、その補欠  として足鹿覺君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員足鹿覺委員辞任につき、その補欠とし  て高田富之君が委員長指名分科員選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算経済企画庁、農  林省及び通商産業省所管  昭和三十六年度特別会計予算農林省及び通商  産業省所管      ————◇—————
  2. 三浦一雄

    ○三浦主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  本日は昭和三十六年度一般会計予算経済企画庁農林省及び通商産業省所管及び同特別会計予算農林省及び通商産業省所管予算を議題といたします。  質疑を続行いたします。永井勝次郎君。
  3. 永井勝次郎

    永井分科員 貿易逆調心配されておるわけであります。これは単に野党としての立場で見ているのではなくて、実際に取り扱っている業界においても相当心配されておるわけでありますが、ひとり政府だけは心配はない、黒字基調は変わらない。こういうふうに言っておるのでありますが、それではなぜ変わらないか、心配はないのかという説得するだけの根拠がまだ示されておりません。そこで昨日来、この問題についていろいろ論議があったわけでありますが、あらためて通産大臣及び経済企画庁長官からなぜ心配がないのかという根拠を明確にお示しを願いたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国際収支の問題は最近の情勢によりますと、悲観的な予想にもかかわらず、さらに堅実な歩調で黒字情勢を続けて参ったのであります。これが最近ドル防衛あるいはアメリカ景気後退等によって、この国際収支情勢というものは行き詰まるのではないかということをいわれておるのであります。そこでどの程度まで行き詰まるかというようなことについてよく検討しておるのでありまして、ドル防衛といっても、アメリカは別に輸入制限をするとか、その他の関税障壁を上げて、いわゆる保護政策に転換をするというようなことはいっておらない。あくまでアメリカとしては世界全体の貿易量をふやすことによって、ドル防衛をしていくのだということを新政府も言っております。ただ日本輸出貿易関係のあるのは、つまり特需関係がどの程度減るか、それからまたアメリカ世界貿易拡大するのだ、みずからそれに努力するのだということで、アメリカ輸出ドライブが相当高まってくるだろう。従って第三国市場において輸出競争が激甚になるだろう、この二点が当面問題になってくるのでございます。それからまたアメリカ景気後退によって三十四年度に示されたような対米輸出というものは望めない。三十五年度は相当減っておりますが、大体三十五年の経過を三十六年度においても、ある程度までたどるのではないか、こういうこともいわれております。こういったような要因について検討してみまして、特需関係の問題もそう大したことはない。それから第三国市場競争が激甚になるという問題は、これはどうせ経済国際戦争でございますから、アメリカが特に輸出ドライブをかけるとかかけぬとかいうことにかかわらず、日本としては相当の努力をして輸出市場拡大強化ということに努力して参っており、また低開発国である中南米、東南アジア等におきまして、従来から相当種を植えつけておる。それが少し物を言ってきかかっているのでございまして、そういう点ではますます貿易拡大期待することができるというようなことを専門家も見ておるのでございます。それからまた対米輸出の問題でございますが、アメリカ景気後退も大体その原因等もわかっておる。それから新政権の手によって新しい予算時期が七月から開始されるというようなことから見て、景気後退も大体そこらが頂上ではないか、こういうような観測があるのでありまして、これらの要素を総合いたしまして日本海外輸出国際収支というものはそう悲観すべき状態ではない、こういう判断をしておるのでございます。
  5. 迫水久常

    迫水国務大臣 私は全体を総合的に申し上げますと、一月に非常に大きな赤字が出まして、これは分析しますと、大体輸出はほぼ考えておったような線です。ところが輸入が思ったよりも多く出ているという状態なんでして、この輸入が思ったより多く出たということは、先般から御説明いたしておりますように、季節的なもの、特に在庫減少を、補充した部分というようなことから出てきたものであって、そこに決して思惑的な要素は含んでいない。従って輸入について今後ともずっと思惑的なものは起こらないであろうということが考えの前提であります。それから輸出はおおむね予想した線に沿うていくであろうというふうに考えておりますので、心配をする必要はない。もちろん輸出の問題については、さらにそれを増進することは非常に好ましいことでありますから、輸出増進について、できるだけ政府民間努力をすることは当然なのですけれども、大体六月ころまでは経常収支は赤が続くであろうということは想像しておりますし、場合によってはその間に総合収支においても赤の出るものがあるかもしれませんけれども、下期に至って問題はずっと変わってくる、こういうふうに考えておって、結局心配はないという判断です。
  6. 永井勝次郎

    永井分科員 両大臣の説明を聞きますと、大へん不確定要件を土台にして、その上に架空な夢を描いている、こういうように断ぜざるを得ないのであります。たとえばアメリカ景気後退が六月、七月ごろから回復するだろう、こういう希望的期待でありますけれども、これについては、今のドル防衛の体制でアメリカが自主的に可能であるかどうかということについて疑問を持っておることであるし、時期的にそういうふうに早く解決するかどうかということについても、これは非常に不確定な条件であります。また輸出競争においてこれはもうあたりまえなんだから、こういうふうなことを言っておりますけれども、実際にそういう観測が甘いのではないか。あるいは経済企画庁長官が言われているように、在庫が減ってきて、それの充足的なものが輸入を刺激しているだけであって、将来の思惑的なものはないというのでありますが、国内における産業投資状況から見ましても、アメリカ関係においては、機械関係やその他、五〇%というものが輸入期待しておる。景気がいいのだ、所得倍増だ、こう実際の状況よりもセーブするということでなくてそれにつけ景気をしておる。つけ景気をしておるから、昭和四十年ごろまでに完成すべき予定のいろいろな設備というものが、もうことし来年ででき上がってそこまで到達するというふうに、非常にふくれていく。それでは国内における供給がバランスがとれているかというと、とれない。その部分輸入で補うというような方向にこれは刺激されていくと思うのであります。そういうような点から、非常に不確定な条件の上に立って夢を描いているという以外にはわれわれには感じられない。それで、そうですか、それじゃ安心だ、こういうことは言えないのであります。  そこで通産大臣に伺いますが、アメリカICA関係は、私はこんなものは総額から見てもそう大したことはないのでありますから、その影響というものはそう問題にすることはないと思います。問題はアメリカが目的的に五十億ドル前後の黒字を出す、こういうふうな方向貿易振興をやって参ります。今まで赤字を出しておったのを五十億ドル黒字を出すということになれば、アメリカ黒字になった分は、どこかの国々にそれがしわ寄せされて赤字になってくるわけであります。そういう関係から申しますと、対西欧関係においてそういうような力を生み出せるかどうかというと、そう大きな期待はできないのであります。そうすると、アジアなりあるいは東南アジアなりアフリカなり、そういうような方向にその力がずっと伸びてくるのではないか。その面における日本経済的な貿易上における影響というものをどのように評価していくか。アメリカが目的的に五十億ドルから一年に黒字を出すという急激な貿易進出政策に対して、アジア及びアフリカ東南アジアにおいてどのようなことを予想され、これに対してどう対応する対策がこっちにあるのか、こういうことを具体的に伺いたいと思います。
  7. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカにおいてもすでにドル防衛対策に取りかかっておりまして、すでに貿易面においては五十億の黒字を出しておるという状況でございます。ただ世界政策に金を相当使っておるので、それとの差引においてなお赤字を出すであろうということは今日予測されておりますが、それが五十億ドル黒字を実現しておるのですから、よほど減るのではないか、かように考えております。  そこで、具体的に各地域別輸出競争に当面して、日本はどういうことをなさんとしておるかというお話でございますが、これは各種各様努力を続けて参らなければならぬのでございまして、結局いい物を安く売るということが、何といっても国際市場進出に際しての一番大事な問題である。そのためには一体どうすればいいか。国内産業高度化体質改善、あるいはまた輸出面における各般の努力が払われなければならぬのでございまして、特に低開発国におきましては、延べ払いの問題、輸出入銀行資金量を増大いたしまして、有効需要の力をつける、あるいはまた一次産品の問題を取り上げまして、たとえば南方、東南アジアにおける日本家畜飼料トウモロコシでありますが、そういったようなものは今日においてはほっておけば国際商品にならない。これに相当手をかけて、乾燥の設備をやるとかあるいは貯蔵施設を作ってやるとかいうようなことをいたしますれば、それが十分に国際商品として日本もこれを受け入れることができるのであります。そういったような経済協力をいたしまして、そうして日本貿易量拡大商品市場拡大ということに努力して参る。低開発国におきましては、大体こういったような経済協力と一緒に輸出振興努力をするということが必要であると思います。アメリカあるいはカナダ方面につきましては、いろいろ最近の自主規制等においても反省すべき、あるいは改善すべき面が出て参りましたが、根本の基調はやはり秩序ある輸出努力をする。欧州方面においては、経済外交によってできるだけガット三十五条の問題を解消いたしまして、そしてほんとうに平等な立場において輸出ができるようにするといったような努力をする。その他共産圏におきましても、ソ連圏との通商航海条約におきましては一年の契約が三年に改善されております。中共貿易についてはしばしば論議されるように、とにもかくにもケース・バイ・ケース民間ベース貿易を積み上げていく、こういったような諸般の方策を各地域別に適切な施策を実行して貿易拡大努力する、こういう方針で参りたいと考えております。
  8. 永井勝次郎

    永井分科員 大臣は先ほど来、政府貿易振興努力をした、努力をした、それが実を結んでくるんだと言っておりますが、一体具体的にどういう努力をしたのですか。アメリカに対してはどういう努力をした、東南アジア中近東に対してはどういう努力をした、西欧にはどういう努力をしたということを、簡単でいいですから一つ具体的に言ってもらいたい。それが実を結ぶのだという期待が持てるのかどうかはこちらで評価します。はっきりおっしゃって下さい。
  9. 今井善衞

    今井(善)政府委員 地域別に申し上げますと、アメリカで一番問題になりますことは、向こう民間団体日本品に対する輸入制限を希望しまして政府に働きかけておるわけでございます。私どもといたしましては、政府を相手にいたしまして、とにかくこういう輸入制限運動が実を結ばないように、いろいろ外交交渉をやっておるわけでございます。今までたとえば関税委員会にいろいろ提訴されましたものが、結局却下になるとか、いろいろ努力してやっておるわけでございまして、近くは対米綿製品につきまして、こちらの割当をふやすべく厳重に折衝したい、かように考えておるわけでございます。  それから西欧諸国との関係は、これは日本がイギリスあるいはフランスあるいはベネルックス三国等から、ガットにおきまして差別待遇を受けておりまして、この差別待遇を撤回すべく、いろいろ努力をしておるわけでございます。  それから東南アジアにつきましては、何と申しましても機械類輸出が今後一番有望なわけでございまして、これにつきましては、日本機械工業を育成するほか、輸出する場合に、たとえば輸出延べ払いであるとか、あるいはそのほか経済協力拡大するとか、予算上いろいろの努力をしておるわけでございます。それから特に東南アジアとの場合におきまして、向こうの農産物の中心でありますところの米が、日本の豊作のためになかなか買いがたいような事情になりつつございますが、それにつきましては、米につきましても、日本国内事情が許す限りにおきまして、買付を維持すべく努力をしておるのでございますが、ただいま大臣から申されましたように、特に家畜飼料中心でございますところのトウモロコシにつきまして、たとえばタイとかビルマの米を買うかわりに、トウモロコシあたりをよけいにとれないかということで、従来からいろいろ努力をしておるわけでございまして、そのために、たとえばタイからトウモロコシ輸入が急激にふえてきておる。ことしあたり、おそらく三十万トン程度になると思いますし、今後もますますふえて参ると思います。ビルマにつきましても、さような努力をしておるわけでございます。あるいは、タイあたりからゴムもできるだけ買い付けるようにする。二、三年以前におきましては、タイとの国際収支は、わが方の輸出が約八、九千万ドル輸入の方はわずかに二、三千万ドルという状態でございまして、日本品輸入制限をするとか、いろいろ動きがあったのでございますが、最近におきましては、さようなトウモロコシ買付とかあるいはゴム買付をふやすということによりまして、貿易のアンバランスの差というものが非常に縮まって参りまして、そういう声が非常に薄らいで参りました。  それから今度は中近東におきましては、これはやはり日本輸入をしてやらなければ向こう日本品輸入を許可しないという国々が大部分なのでございます。ところで、イランにいたしましても、イラクにいたしましても、その買うものにつきまして、非常に高い。その高いものを何とかこなしまして、日本側に入れて、そして日本輸出もしていきたい。イランイラク等につきまして、いろいろ輸出入調整をして努力をしておるわけでございます。  アフリカ等につきましても、中近東と同じような事情がございまして、いろいろさような努力をしておるわけでございます。  他方、わが方といたしまして、特に対米あるいは欧州向けで、日本安売りという非難がございますので、それに対しまして、輸出組合等におきまして、安売りをしないように、いろいろ業界自身自主調整という形でやっておるわけでございます。
  10. 永井勝次郎

    永井分科員 それじゃ地域別一つ検討して参りたいと思います。今、対米貿易関係ではいろいろ今まで政府努力してきた、その結果が実を結んでくるのだ、こういうのですが、どういうふうに実を結んでくる話が出るのかと思ったら、何も実を結ぶ話は出ないで、民間団体から排撃を食うからそれに対して今一生懸命にやっているのだという、実を結ばない結果の報告だけでしょう。何か実を結んだ報告がありましたか。今までやってきたことが逆になって、民間団体からボイコットを食うような動きがあるという失敗報告だけなんです。現われた現象についてあわててやっているということだけなんです。問題は、対米関係においては、アメリカ市場調査が足りないと私は思う。それから、アメリカのような大きな国に対して、そして州々でこれはいろいろ事情が違います。それを、日本が現在やっているのは、アメリカの国として、一本の対象としてやっておる。そこに失敗がある。ある州については日本からの輸出が超過する。そこでは日本からの持ち込みについていろいろな問題がある。ある州については向こうから買付の方が多くて、日本から品物がいかないという部分がある。こういうふうに、アメリカといったって広いのですから、州々によってそれぞれの貿易関係においては事情が違う。そういう事情に対してそれぞれの州がそれぞれの貿易を取引している実情に応じた手というものが打たれておらない。これは業界日本政府やり方に対していろいろ批判しているのです。何も動いていない。ジェトロがどうだこうだといったって、ジェトロなんか何もやっていないのです。そういうことで、外交関係だって経済外交はほとんどやっていないのです。業者みずからの努力によって開拓していっているのです。何もやっていないのですよ。政府はただじゃましなければいいということは、業者が言っていることなんです。それを、うんとやっているから実を結ぶなんて、そんな大きな口はきけないと思う。民間団体からこれが反対を食うことが実を結んだことなんですか、伺います。
  11. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカの州の力が相当強いのでありまして、そしてその州に存在する日本輸出産業と見合う産業があって、それが極力日本品輸入を排除する、あるいは高い関税障壁を設けるというようなことについては、もうしばしばそういう運動を起こして参っております。それで、中央政府としてもそれをやはりある程度は取り上げざるを得ない。しかしそういったようなことでは国際貿易自由主義ということをくずすことになりますから、なるべくそうしないでいきたいという配慮がございまして、これに対応して日本としても、しからばということで自主規制をやりまして、そして向こう関税障壁を高めるというようなことを阻止して参っておるのであります。しかし、今回の綿製品等におきまして自主規制をやって参ったのにもかかわらず、全体のアメリカ輸入数最はふえ、そして日本のこれに対する比率がまたたく間に減ったという事実がここに現出いたしました。これに対してはあらためて来年度から協定がさらに更改されることになりますので、これに対しては十分に政府からも働きかけて、そしてお互いの納得ずくでこの日本自主規制というものが、正直者ばかを見たというようなことのないように、自主規制するかわりには日本商品というものの健全な伸長を向こうに認めさせる努力をしたいと考えておるわけであります。これは民間同士貿易でありまして、政府がその障害を除くという面において努力をして参っており、また将来もその方向において努力したいと考えておる次第であります。
  12. 永井勝次郎

    永井分科員 私は当面している日本経済の盛衰をかけておる問題が貿易だと思うのです。ことに所得倍増計画の重点は国際貿易に置かなければならないことはもちろんだと思います。それほどの重要な課題であり、また本年は赤字が出るかどうかということで、国際収支関係心配されているこの問題に対して、その担当の通産大臣がぼけたような答弁ばかりで、何のことを言っているのだかわからぬ。このくらいのことはだれでも言うのです。正直者ばかを見ないとか、それからうまくやるようにとか、そんなことはだれでも言う。うまくやるようにどういうふうにやっているかということが問題なんで、それを聞いているのです。抽象的な答弁でなく、具体的に言ってもらいたいと思います。たとえば、政府日本見本市を開く、見本市を開いたらそれでPRが十分で、それが日本一つの大きな宣伝だと思ったらとんでもない間違いで、見本市の結果として現われたのは、見本市小売値段まで出すことです。小売値段まで出してしまったら、今度は貿易業者がおもしろ味がなくなっちゃう。貿易業者がもし見本市品物を買ってそして向こう一つ取引をやろうというおもしろ味がなくなってしまう。ですから、見本市をやるにしても、見本市そのものをやったらその結果がどうだ、やり方がどうだという具体的な問題をもっと吟味しなければいかぬ。たとえば向こうに売るにいたしましても、アメリカにはアメリカの流通機構がある、その流通機構に乗せて物を売っていかなければ長続きしない。どういうふうな売り方をしておるかというと、めくらめっぽうに、ただ向こうで取引があるからといってどんどん売って、向こうの流通機構を無視した売り方をしておる、その辺から排撃を食う。ただ見本市をやるから、やりましたと事務的な報告では商売というもの、経済というものは動いていかない。通産大臣は具体的に見本市に対する反省でどう思っておるのか、それから今までの売り方について、向こうの流通機構に乗せて向こうの方へ浸透させるような形でやっておるのかどうか。その点において、やっておることはみな失敗しておるのです。どうですか。
  13. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 小売値段見本市で出してやっておるということは、私は今あなたから聞いたのですが、そういうことは常識上ちょっと考えられない。即売会ならいいですが、いやしくも国際見本市において小売値段まで出すというようなことはあり得ないことだと思いますが、もしそういう事実があるとすれば、これは商売としてはよほど下手なやり方だと思います。そこまで政府は干渉する気持は持っておりません。大体において政府の受け持つ分野というものはきまっておる。国際貿易であるから、そういう細部にまで手を取り足を取るということは、かえって商売のじゃまになるということを考えておりますので、そこまではめんどうは見ないつもりであります。しかし、政治的に大きな面においてこの点が障害がある、あるいはこういう点を一つ配慮してくれということがありますれば、それに対応して努力して参っておるわけであります。見本市開催に関してアメリカの流通機構に云々というようなことを言われますが、そこまでは私どもといたしましては積極的には干渉しないことにしております。
  14. 永井勝次郎

    永井分科員 干渉するとかしないとかでなくて、たとえば安売りをさせないように指導するとか、売り方が悪かったら、こういう状況だからこういう売り方はまずい、こういうふうに具体的に指導するということは、市場調査をしておる政府なり、経済外交をやる政府一つの資料提供じゃないですか。そんなことまで干渉しないで、まずくなっても、国と国との話だけやっておる、おれの方は責任がないとかいうそんなばかなことはないでしょう。やはりアメリカにはアメリカ一つの流通機構というものがあるし、ヨーロッパに行けば一つの流通の秩序というものがある、その秩序に合ってうまく市場調査がちゃんとできておれば、ここの売り方はどういうふうに売らなければいかぬ、取引はここに重点を置かなければいけない、こういう点で考えていかなければならぬ。民間の商社だからそれは民間の責任だといってほったらかさないで、それがどういうふうに向こうに生かされておるかということを見ていかなければならぬと私は思う。たとえば、幸いにしてアメリカ貿易について制限措置を講じないということになれば、これは表面そういうふうにしておいて、実際は国産愛用ということで今盛り上げておるわけです。盛り上げておりますけれども、経済の取引というものは国の指令がそんなに一人々々すみずみにまで行き届くものでなくて、向こうの消費者大衆というのは国産であれ何であれ、安くていいものなら置いたいという、こういう気持があるのです。国の方ではドル防衛のためにこうやりたいという政治的な意図がありましょう、目的がありましょう。だけれども大衆というものはよくて安ければ品物を買いたいという気持があるのだから、そういう情勢の中で、市場調査が従来ちゃんとできておれば、そういう層にぐんぐん突っ込んでいけばいい。その線から自然に出てきたものが、日本品物向こうに流れるという形になってくるような、そういう措置をやって、根を張ることが、貿易のほんとうのねらいなんです。国と国との窓口で話し合って、そうしてそれで貿易が進むのだという、そんなのんきな考え方じゃだめだと思うのです。消費者大衆は日本品物が浸透すれば買いたいのです。ところがそういう点が浮き上がって、それを阻止するような行政措置がなされておるというところに問題があるので、もっとしっかり腰を据えてやらなければ、ケネディ待ちばかりやっていたのでは私はだめだと思うのですがどうですか。
  15. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今言った値くずしをやる、そういうように日本があとからあとから安売り競争をやる、そうして先に仕入れたものがまだはけないうちに市場がくずれてくる、それじゃ日本品は安心して買えないというのが対米輸出に関して長年繰り返された現象でございまして、そういうようなことはどうしても業者だけにまかしておいてはいかぬというので、輸出組合あるいは輸出品工業組合等を制定いたしまして、そうしてそういう乱売をするというようなことのないように、政府の方で規制して参っておることは御承知の通りであります。こういったようなことが依然としてまだ繰り返されておりますから、この問題については政府は団体法等の活用によってそういうことのないようにしておる。これはたえず努力しなければならぬ問題であろうと思います。一ぺんやったからもうそれでよろしいというものじゃない。  それからまた、良品も廉価に売りつけるということが何といっても国際市場開拓の大きな鉄則である。しかしながら良品を廉価に売るということだけではやはり工合が悪いことがあって、そのためには団体法等によって自主規則をやらなければならぬ。自主規制をしてもなおかつ今度は向こうの方では良品を廉価に売られるからますます日本品はおそろしい。たとえば今度の既製服等において、大体協定が一年に十二万着ということになっておって、アメリカの全体の市場が二千何百万とかいう、非常に膨大なものでありますから、そのうちのごく一部分である。ところが、十二万着まだ輸出しないうちに日本のものは非常にいいものが安く入る。これは大へんだというので向こうの縫製の労働組合が今度はこれに対して輸入阻止の運動をする、あるいはまたさらに一歩進めて日本の……。(永井分科員大臣、そういうことはわかっています。」と呼ぶ)ちょっと待って下さい。あなたのおっしゃることに今答えておるのです。  そういうことでこれに対して非常な反撃を受けておる。まあ、そういうようないろいろなじゃまが入るので、そういうものを排除するのが国家の任務であるというので、そういう点をやっておるわけであります。こまかい何ぼで売るとか、市場の調査といったようなことはこれは当業者にまかして、そうして何かそこに大きな障害があった場合にそれを除くということにわれわれは精力を傾ける。おのおの分野が遣うのでありますから、こまかいところまで立ち入って干渉するというようなことは私らはやらない、ただ大きな障害を取り除くということに力を注ぐ、こういう建前で行っております。
  16. 永井勝次郎

    永井分科員 次々に、一カ月前に売ったものがその次の月にはまたそれより下回る安い値で売る。たとえばミシンの場合でもライターの場合でもあるいはいろんな綿製品の場合でもそういうことがあって規制した。これはわれわれが今までやってきたので、通産大臣は新しく通産大臣になってそういうことが目新しいかもしれないけれども、そういうことはわれわれ論議をして、そうして措置もとって参りましたし、あるいはいろいろやってきておる。そういうことはわかり切っておることなんです。私が言っておるのは、安売りすればそれでいいのだということを言っておるのではないのです。消費大衆というものは、安くて良質であれば買いたい、こういう需要の実態がそこにあれば取引はできるのだから、それに合わせるようにやれと言っておるのであって、大臣のように一つの例を引かれて、安売りすればこうだ、そんなことは百も承知で前からわかっておることなんです。そういう議論をしておったのでは話が進みません。そういう片寄った一部分一つの例をとって、貿易を振興するための措置としてやっておるので、それは貿易の振興にならないことなんだから、そういうものは取り除いていかなければならない対象になるのだということは議論の余地のないところです。そんなことを言っておるのではないのです。そうして大臣貿易振興を大いにやったから今にそれが実を結んでくるであろう、こういうことを最初に大臣答弁をされましたから、それではどういうふうに振興対策をやったかというと、今話を聞くと、そういう積極的なことはやらないのだ、市場調査もおれの方の仕事ではないのだ、それは民間にまかしておるのだ、そうして民間が取引をして問題が起こったら、その問題の始末をするのが政府の仕事なんだ、その見解において自分はやっておるのだ、こういうお話でありますから、それならば貿易振興なんて大きな口をきかぬ方がよろしい。そんなことはいやでもおうでも処理しなければならないことなんです。それが通産省の貿易振興対策だということになると、おそるべきものだ。これは時間がありませんからまた別の機会に論議しなければならないと思うのですが、それだけが方針なんだということになると私は問題だと思うのです。アメリカの方ばかりやってはおられませんが、アメリカ関係では、ズボンにいたしましても、洋服にいたしましても、今大臣が言ったように縫製品関係は新しい方向でうんと伸びようとしておる。その面において伸びていけばそこに障害があって、それに適応したような対策をこっちが立てていかなければならないということはもちろんでありますが、そういうふうに需要があれば必ずそこに輸出努力のしがいがあるのだ、だから消費者大衆はそういうものなんだから、対米貿易においてももっと向こうの流通機構なり、あるいは市場調査なり、あるいは見本市を開くについてもいろいろこういう問題があるからそういう点を注意しておやりなさい、こう言っているのです。それをおれの方はそんなことはしないのだ、こういうのならそれまでの話であります。通産行政というもの、貿易振興対策というものは、問題の処理だけが仕事なんだ、こういうふうな見解でおやりになるということならそれでけっこうであります。  その次には、西欧関係でありますが、西欧関係だって雑貨類等は相当に有望であるし、光学関係とかその他のいわゆる食器類、くつ下の編機であるとか、あるいはトランジスター、その他の部品であるとか繊維関係や塩化ビニールとか、こういった関係のものはヨーロッパの方にも相当有望であります。有望でありますが、それにはやはり向こう市場調査がちゃんとできて、そうして向こうの抵抗が少ないような形で入れていかなければ、ただ売れればいいのだというのでぼかぼかやれば、向こうの抵抗が出てくるのはあたりまえのことであります。そういうことは通産省はやらないのだ、こういうことでありますから私はこれ以上その点について質問したってしようがないと思うのですが、やはり貿易を振興するには向こうの機構を活用していくのだ、こういうやり方をしなければいけないと思います。ことにヨーロッパなんかはアメリカよりももっと流通機構なり何なり経済の機構が整備されていて、それに適応したような売り方をしなければならぬと思うのでありますが、この点はどうでありますか。
  17. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 市場調査を一切やらないのだというふうにもしおとりになるとすれば、それは訂正いたします。ただ民間貿易でございますから、その民間の触角によってその商売の道を探してもらって、そしてそれをやってもらう。政府といたしましては、それに即応して、そして障害があれば取り除く。また積極的に政府の方において誘導すべき点があればもちろん誘導いたしますが、国家貿易でございませんから、市場調査を綿密にやって云々というところまでは、それはおのずから意味が違う、こういうことを申し上げたのであります。ことに対米貿易等においては、問題はむしろ乱売競争といったような面にあるのでありますが、しかし最近は乱売もしない、良品を廉価に売る、それに対して今度は向こうの方の抵抗がこういったようなところまで出てきておりますから、それはそれとして、政府の任務としてそれの打開に努めておる。欧州の問題については、お説の通りこれはいろいろ開拓すべき分野がございますが、まず欧州市場を開拓するには経済外交が先行して——日本品差別待遇しておる国がほとんど大部分です。ガット三十五条の援用を、取り除くということにまず主力を注がなければならぬ。そのためには日本自体の姿勢も正さなければならぬ。すなわち貿易自由化を実行いたしまして、そして国際的に平等な立場で取引をしようじゃないか、その意向を形の上で示すということがまず必要ではないか。それに基づいて経済外交をやりまして、日本品に対する特殊扱いを改めてもらう、こういうことが一番大きな前提であるように考えます。その点まず私どもは対欧州市場開拓には重点を置いて考えておる次第でございます。
  18. 永井勝次郎

    永井分科員 そうすると大臣は、三十五条適用の差別対遇を撤廃するということもなんですが、ヨーロッパの方では日本が八条国に移行せよということを強く要求しておるようですが、それはどうですか。
  19. 今井善衞

    今井(善)政府委員 日本のIMFに対する関係は、現在十四条国ということになっておりまして、まだ為替資金が十分ではないという理由で為替制限をすることができる。欧州のほとんど全部の国は今回八条国に移ります。八条国と申しますと、結局為替収支上の理由で為替制限をしてはならないということになるわけでございまして、欧州諸国が日本の現状を、特にこの貿易状態国際収支状態を見まして、日本も八条国で欧州並みになってほしいという希望を持っていることは確かではないかと考えるのでございますが、それらの討論の場というのは、IMFの理事会なりあるいは総会なりそういうふうなところで討議される問題にたるわけでございます。
  20. 永井勝次郎

    永井分科員 八条国の解説を聞いているわけではないのです。そこで、八条国に移行せよ、それをしないならIMFの十五条二項の(a)によって日本に勧告せよ、こういう強い意見まで出ているのです。政治的に解決するというなら、政治的な問題をもっぱらやるというなら、貿易振興のために対ヨーロッパ関係では、こういう問題を通産省がほんとうはやらなければならぬじゃないですか。通産大臣はこういう問題について八条国が何だかさっぱりわけがわからない。そういう状態でもっぱらやるという狭い分野における担当すら満足に知らないような状態ではできないじゃありませんか。IMFの十五条二項の(a)の勧告といういろいろな動きに対して、どのように情報をおつかみになっておりますか。
  21. 今井善衞

    今井(善)政府委員 かつてIMFで第十四条国じゃないということを勧告された例はあるのでございまして、数年前にドイツ、それから二年ほど前にイタリアがIMFから勧告を受けておるわけであります。イギリス、フランス等におきましては、勧告を待つまでもなく自発的にかような八条国移行の態度をとったのでございますが、日本に対しまして、この夏から秋に開かれますIMFの理事会におきまして、いろいろ議論があるだろうとわれわれは考えておる次第でございます。
  22. 永井勝次郎

    永井分科員 ですから対ヨーロッパの貿易の問題を政治的に扱うというならば、問題は貿易自由化に対する腹をきめていかなければ、ヨーロッパのところと日本とは一段階ずれていると思うのです。たとえばヨーロッパの方では、もう貿易の自由化については論議が過ぎて、八条国移行を宣言しているのです。日本はどうかというと貿易自由化はどうだ、こうだと舞台が一つずれたところで今論議しておる。だからうまくヨーロッパとは食い合わない。ですからヨーロッパの力では十五条二項の(a)でIMFからいわゆる制裁規定としてやらないなら金を貸すな。それからIMFからの脱退を勧告するというような強い意見まで出ておるのです。もっぱら政治的にやるのだという通産省がそういう情報もつかまないで、一つ舞台のずれたところでもさもさやっておるから、ヨーロッパの方の貿易振興なんということはできっこないと思うのです。それはそれでいいです。  次に東南アジアですが、東南アジアは売ろうと思ったら幾らでも売れます。幾らでも売るためにはいろいろな条件があるわけです。延べ払いなり何なりうんとやればどんどん進むわけです。それから向こう輸出するためには向こう品物を買ってやらなければならぬ。買えば損をするという条件の中でこれをどうやるかということが主たる問題だと思うのでありますが、それにいたしましてもアメリカドル防衛貿易振興がどんどんやってくれば、やはり東南アジア、ヨーロッパの方にも押していくでしょうし、全世界に押していく。よしアメリカがそうやるならということで、ヨーロッパの方でネジを巻いてまた貿易の方に力を入れてくる。そういう点でかち合うのが東南アジア中近東だと思うのです。そうなるとそれぞれの国の力関係でこの市場をどう押えていくかという一つの分岐点になると思うのです。ですから少ない力でできるだけの効果を上げなければならないのに、先般問題になったときにイラン関係イラン関係日本が片貿易なんです。向こうに売ってばかりいてイランの方からは日本に対して千二百ドルくらいは一つ何か買ってくれといった。それについて政府は六カ月か七カ月間くらいもさもさもさもさ相談々々ばかりして商機を逸して、ヨーロッパの方でぐっと入っちゃった、こういう関係があるのです。これは大臣知っていますか。ですから東南アジアにおける貿易振興の問題点は何かということはわかっていたら、こういうことだっててきぱきして、半年も七カ月も、商談が始まってから、引き合いが始まってからぽさっとやっていれば商機を逸してしまうことはあたりまえです。イランの問題はどういうふうに反省しておられますか。
  23. 今井善衞

    今井(善)政府委員 イランの問題は、これはお話しのように従来約五千万ドルほど日本側から輸出しておりまして、向こう側の物資が割高でありますために、日本としても輸入がほとんどないという状態で、今お話がございましたように輸入につきましては千二百万ドルのものを買うごとを努力するという協定が結ばれたわけでございます。ところで買うとなりますと、やはり綿花なり何なり非常に割高であるという、その割高の物資を需要者に押しつけるわけにはいかないということで、何とか輸出輸入調整しなければならぬ。そのために輸出の方からある程度拠出してもらいまして、そして割高の物資の補給に充てる、こういうことに現在相なっておるわけでございます。初めてのケースでございましたので、その間輸出業者あるいは輸入業者の間に非常に相談ごとに手間取ったということは遺憾でございますけれども、やはりさようなことをしなければ輸出は伸びない。私どもといたしましては現在そういうラインで輸入につきましても進めておる次第でございます。
  24. 永井勝次郎

    永井分科員 話が出ましたからなにしますが、たとえば向こう国々はこちらからの輸出超過になっていって、向こうから買ってやらなければなかなか向こうに入らない。買うためには損をする。こっちから売るために向こうから損をしても買ってやる、損をするものを輸入する、そのかわり向こうから物を買うことによってこっちから輸出力が出るのですから、それがたとえば三井なら三井、三菱商事なら三菱商事が向こうから品物を買う。そして向こうに三菱なり三井なりそれが売る、こういうことになればこれは差引勘定でそろばんをとってやるのですけれども、たとえば三井、三菱が輸入をして損をかぶる。そして向こう輸入力を、買う力を向こうにつけた。そうすると今度は向こうに売るときには三井が売るのではない。三菱が売るのではない。だれかが向こうに売るのだ。輸入力ができたところで向こうに売るのだ。こういう形の貿易では、だれも損をして輸入するということはできないわけです。そこでやはり東南アジアとの貿易についてはその損をして輸入をする、その損をその会社だけに背負わせないで、何とかプールをするとかなんとかの措置をしなければ、これは取引は円滑にいかないと思うのです。そういう問題の処理はどういうふうに考えていますか。
  25. 今井善衞

    今井(善)政府委員 全くその通りでございまして、日本におきましては今までさような措置はなかったのでございます。これは今まで輸入の場合の外貨資金の割当によりましてある程度操作しておったのでございますが、だんだんそういうこともできなくなるということで、そういう措置がとれなくなるわけでございます。ドイツなりイタリアにつきましては、真相ははっきりわかりませんけれども、どうもさような措置をとっているようでございます。イタリアにつきましては、日本が現在イランに対しましてとったような措置を前からとりまして、それによりまして貿易が伸びておる。ドイツにおきましては、これは関係のある業者と話し合ってそこでもって話し合いの上で、輸出の方から輸入の方にある程度出しておるという状態になっておるようであります。日本といたしましても何らかそういう組織がなければいかぬわけでございます。総合商社は自分のふところ勘定の中で輸出輸入とやれるかもしれませんが、それだけでは輸出は伸びないということで、輸出入取引法の改正におきまして、この輸出業者輸入業者が特定の地域につきまして必要な場合は協定ができるという仕組みを現在私どもとしては考えて、国会に提出して御審議願いたい、かように考えている次第でございます。
  26. 永井勝次郎

    永井分科員 東南アジア貿易の振興振興という口のかけ声だけではいけないのです。ヨーロッパの方はヨーロッパの共同体の関係では、あそこの輸出は四百億ドルから四百五十億ドルくらいの貿易量でしょう。そのうちの一割の四十五億ドル内外、日本の全輸出量くらいなそういう量を、東南アジアにヨーロッパはひもをつけているのです。あの地域においてヨーロッパは四十五億ドル前後のひもがついた市場を確保しているわけです。そこへ日本が食い込んでいってやるというからには、もう少し積極的な対策、ただ口先で何とかしなければいけないでなくて、もっと具体的にやらなければいけない。そして今計った輸入による赤字輸出によるもうけ、それをどう調整していくかという関係については、あの地域について国なら国について一つ調整組合のようなものを作って、輸出でもうけたものの半分くらいは積み立てておく、そうして向こうから品物輸入して損するものの埋め合わせの調整金としてこれを使うとか、こういうふうに具体的にもっとテンポを早く問題を処理していくような考えはないですか。そういうことでもしなかったら、東南アジアはただ大いにやらなければいかぬ、やらなければいかぬと言って済むものでない。ですから調整組合を作らせて、輸出でもうけたものの半分は積み立てさせる、そして輸入して損したものの埋め合わせをする。こういうことはどうです。これは大臣答弁できるでしょう。
  27. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今局長から申し上げましたが、輸出入取引法の内容の重要な点がそこに触れておりまして、それを今国会へ提出して御審議願おうとしておるわけでございます。
  28. 永井勝次郎

    永井分科員 それから東南アジアとの貿易については、私は後進地域開発資金のつぎ込み方が非常に問題になってくると思います。一体後進地域開発の援助資金というのは、ドル防衛に協力するという立場からいきますと、アメリカの指図でやらなければならぬということになるが、日本日本としてのやはり立場があると思う。大した金でもないのですから、これをそこらにばらまけばちっとも効果のない形でこれはなにします。ですから効果のあるようにするにはどこをどういうふうにねらうかというねらいがきちっと定まらなければいけないのですが、大臣どうですか。後進国地域の開発資金のつぎ込み方は、対象の国はどこをどういうふうにきめておるのですか、伺います。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあこれは相手方の問題ですから、向こうにその気がなければならぬ。今までやっておったのはインドでございます。これは円資金のクレジットを設定してやっておりますが、御承知の通りインドのいわゆる膨大な五カ年計画としてはまだまだ向こうとしては援助を期待したいところだろうと思いますが、それぞれ鉄鋼関係においても大きな資源が開発されんとしておりますので、民間においても相当考えておる。それからブラジルのミナスの製鉄所であります。主として資源国に対してその資源を確保するという意味において、相当大規模な援助を考えざるを得ないものと考えております。
  30. 永井勝次郎

    永井分科員 これは重要な案件なんで、私は外務省及び大蔵省にも出席を求めているのですが、見えないようでありますが、通産大臣は閣僚でありますから、こういう国策の重要な問題については所見が述べられていいと思います。一体どこの国を対象にするのですか、もっとはっきり伺いたい。あるいはアメリカドル防衛に対する協力という形だとするならば、アメリカの肩がわりをするという形になりますと、台湾とかフィリピンとか南ベトナムとか、こんなところを対象にするのですか、こういうところを対象にするなら、これは私は問題があると思うのですが、どうですか。
  31. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これはやはりただアメリカに頼まれたから、あるいは言われたから云々というのではなくて、日本独自の考え方によって、日本の必要とする資源を確保する、あるいはまた日本輸出市場を育成する、そういう意味において考えていかなければならぬのでありまして、特にどの国に限定するという考え方は持つべきではないのではないかと思います。できるだけこっちの力に相応する経済協力をすべきであると考えております。
  32. 永井勝次郎

    永井分科員 大した金でもないし、力のない金を有効に使うといったら、国を限定しないなんて、そんなのんきなことを言っていたら、ちょうど一握りの灰を空にぶちまいて、これだけの肥料がそこらに散らばったのだというのと同じになってしまうのですよ。どこかに集中してやらなかったら効果が上がらないと私は思う。後進国地域に対する対象国について閣僚である通産大臣から話が聞けないということは残念なんですが、通産大臣は独立してどうこうという大きな口をききますけれども、問題の背景をもっとつかんでいればそんな単純なものの発言はできないはずだと思います。  そこで私は東南アジアについては、やはりクレジットの問題が問題であると思います。一体こういう西欧各国は、一つの実績として四十五億ドルからの実績を持っている。さらに蓄積された外貨資金を持って延べ払いでどんどん競争してくると思う。それに対抗して日本がやるというのには、やはり相当腹を据えてやらなければいけないのですが、どのくらいのクレジットのワクを用意されておるか、そうしてこのワクにおいてどのくらいの貿易をこっちに伸ばすというお考えを持っておられるか。
  33. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今年度の輸銀の運用し得る金は九百七十億円であります。しかしながら、今お話のように輸銀の金は制約されるべきものではなくて、もっと大きな話があれば、日本の力の限度においてはこれ以外にも考えなければならぬと思うのであります。
  34. 永井勝次郎

    永井分科員 そこで私は貿易逆調というようなことが起こってきて経常収支赤字になっていく、あるいは資本勘定の関係で短期資金が多くなって、その短期資金だけの数字をつかまえて外貨がこれだけあるなんて大きな口をきいていたら大へんなことになるし、それだけの力を背景にして、東南アジア貿易を振興する、延べ払いをやるというのには、西欧各国を対象にし、相手にし、アメリカを相手にして競争するというためには、東南アジアでは非常に問題がある。ここで貿易を伸ばしていくということについては、今言っただけでも非常に問題があると思う。  そこで外貨の問題ですが、通産大臣は外貨が安定した状態において手持ちしておる、これだけの力があれば、ことしの貿易は、東南アジアにおいてヨーロッパあるいはアメリカ競争しても十分だ、こういうふうにお考えですか。
  35. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 よくいわれておりますが、この三月末においては、二十億ドルの外貨資金というものがたまってくるわけであります。ただいまの日本輸出振興の構想から申しまして、もちろん多々ますます——つまり低開発国経済援助をして、そしてそれをやりながら貿易の領域を拡大するということを考えますと、もちろんこれで十分だとは言いませんけれども、大体この程度であれば、日本のただいまの貿易振興の構想を実行するに足るということを考えております。
  36. 三浦一雄

    ○三浦主査 いかがですか、永井さん、だいぶ時間もたちましたが……。
  37. 永井勝次郎

    永井分科員 まだ中小企業の問題が……。
  38. 三浦一雄

    ○三浦主査 それでは一つ簡潔にお願いいたします。
  39. 永井勝次郎

    永井分科員 こっちは簡潔だけれども、答弁がもたもたして、はっきりした答弁をしないから……。
  40. 三浦一雄

    ○三浦主査 通産省でも簡潔に一つやっていただきます。
  41. 永井勝次郎

    永井分科員 通産大臣に伺いますが、今外貨の問題で、これで十分だ、安心がいくんだなんて言っておるのは、通産大臣くらいのものじゃないですか。ほかの人はずいぶん心配しておるんですよ。外貨の関係だって、クリーン・ローンあるいは短期インパクト・ローンあるいは輸入ユーザンス、こういうものがふえているのではないですか。経常収支関係において、この前総括質問のとき言ったのだって、大蔵大臣から発表されたのは七億内外じゃないですか。経常収支赤字をずっと重ねていく、こうした短期の不安定資金がふえたって、これは力になりませんよ、どうですか。これでも東南アジアでヨーロッパ、アメリカを相手にして貿易競争をしていく、延べ払いのクレジットを設定していく、それにおいて十分にしてかつ安心だというような、そういう資金関係ですか。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 二十億ドルの外貨準備が安定したものであるかどうかというお話だったと思いますが、短期資金であろうと何であろうと、とにかく急激にこれがどこかに引き出されてしまうというようなことでないのでありまして、これは大体安定した外貨準備であるということをわれわれは考えております。
  43. 永井勝次郎

    永井分科員 あまりのんき過ぎてだいぶずれているのではないか、こう思いますけれども、しかし、私は、まじめに、この貿易関係の問題は担当省でありますからもう少し真剣に考えてくれなければいかぬ。私はもっとこれはさらに地域別に検討し、さらに品目別に貿易関係はそんなに安心がいくのか、こういうことを検討したいのです、外貨の面からも。しかし時間がありませんからこの点は省略いたしますけれども、ざらっとさわっただけでも、ヨーロッパの関係についてはなかなか容易でないということ、西欧関係についてもさっぱり市場の状況もわからないで、ただ民間期待で伸びるんだ、伸びるんだ、東南アジアに行くとわずかの資金でヨーロッパや何かを向こうに回して、延べ払いその他において競争ができるのだ、あるいは確かに日本見本市によって効果を上げたのは豪州でありますけれども、豪州は日本から向こう品物が行き過ぎて、片貿易になって、向こうでは輸入制限をしなければいけないというような動きになってきている。この面も、豪州の方面へ日本品物が出ていくというのには非常に困難な状態がある。しかも、今日本で大いに期待しているのは垂機械類、そういうものに期待しておるが、造船はもう下り坂で見込みがないでしょう。そうすると、ヨーロッパ、アメリカ等の先進国と対決して垂機械をどんどん伸ばしていくのだという条件はなかなかないのではないか。雑貨の類を伸ばすということについては部分的にいろいろな抵抗が出てくる。そうすると、貿易振興については実態をもう少し十分に検討して、それに対応した地域別対策、品目別な対策、そしてそれに伴う国内の諸体制というものを整備しつつ外へ伸ばす力を持っていかなければならない。私の今までの短い時間における質疑の中においても、通産大臣はこれほど重要な問題について、全体を把握していない。事務当局から耳打ちされなければ答弁も満足にできないというような状態で、ただ貿易振興だ、貿易振興だとかけ声をかけているだけでは私はいけないと思う。私はもっとほかの委員会においてこの貿易の問題については論議をいたしたいと思います。時間があまりありませんから、この問題についてはもっと御検討を願う、そして何も具体的な内容を持たないで、そらとぼけたようなことばかり言っているのだというふうにわれわれは理解しておりますから、一段の努力を願っておく次第であります。  時間がなくなりましたから、私は簡単に中小企業の問題についてお尋ねをいたすわけであります。今まで中小企業の関係について通産省は幾つかの立法を行ないましたけれども、その法律というものはほとんど効果を上げていない。私は法律を作ったときから、これは毒にはなっても薬にはならない、こう言ってきたのでありますが、百貨店法にいたしましても、団体法にいたしましても、下請の関係にいたしましても、あるいは商工会法の関係にいたしましても、ほとんど効果の上がらないものばかりじゃないですか。それはなぜかというと、大企業に影響を与えないように、しかし何とか中小企業をやっているというような格好を示さなければならぬからという立場で立法をしているから、そういう結果になっているのだと思うのです。そこで、せめては下請関係の代金支払いの問題だけはもう少し、独禁法にも違反することであるし、あるいは公正取引の関係からいってもこれはチェックできる問題でもあるし、これだけでも効果を上げるようにがっちりやってみたらどうですか。今の時代に二百日の二百五十日のというような長期の手形が公然と使われて、親企業が下請をこんなにいじめている状態を看過するなどということはふらちだと思うのです。法律があるのですから、もっとこれははっきりとおやりになったらいかがですか。ここ半年くらいの間にこれを確立するという決意を持ってお立ち上がりになりますか、どうですか。
  44. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 支払い遅延の防止については、御承知の通り法律がありまして、これは公取の所管になっております。私どもの方としても、これはどうもいかぬというような事例がございますれば、さっそく公取にかけ合ってその是正を申し入れておる、こういう状況であります。
  45. 永井勝次郎

    永井分科員 今大臣はそういう事例があればと、事例がないような話ですが、中小企業庁長官、そんな状態なんですか。
  46. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 仕事の分け方はただいま大臣が申されましたようなことになっております。私どもといたしましてはしょっちゅう実情を調査いたしますために、本省のみならず通産局にもこの関係の調査権限を持った職員を配置いたしまして常時調査しております。問題があるところは公取にこれを連絡する。公取の方で権限を持って処置する、こういうことにいたしております。何分にも件数といいますか事例が非常に多いものですから網に漏れるものがないでもありませんが、極力調査いたしまして公取に連絡するようにいたしておる次第でございます。
  47. 永井勝次郎

    永井分科員 大臣はそういう事例があればこれは公取の仕事である、長官の話を聞くとないわけでもなさそうだ。何と言うのですか、国会における答弁のための答弁をやっているのですが、もっと実態をつかまえてそういう話をしてもらいたい。この間予算の公聴会に中小企業の代表が見えたときも、取引関係においてはこれはひどいものだと言っている。こういうことは天下公知の事実じゃないですか。そういう事実の上に立ってああいう下請関係の代金支払い促進の法律もできたのです。その後その問題は、個人的に言うと、お産の払いだとか何の払いだとか代名詞がいろいろついているそうですが、そういうひどい状態であるにもかかわらず、担当の長官がそういうことがありそうだとか、あればとか、そんなのんきな状態ではないじゃないか。もっと実態ははっきりしているじゃないですか。そんなのんきな状態ですか。それまでしているなら大体どういう済度で手形が出されているか、実情を示していただきたい。
  48. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 私の申し上げましたのは、中小企業庁といたしましては常時そういう事態を調査して、下請の支払い遅延等のありました場合にはその事例を公取に持っていくということで、常時調査して公取に連絡しているわけであります。先ほど申しましたのは人手の関係もありますし、全部そういうものがあったのをすぐ右から左に目が行き届いてつかまえるところまでは、いっていないということを申し上げたわけであります。手の及びます限りそういう調査をして連絡いたしておるのであります。
  49. 三浦一雄

    ○三浦主査 三宅正一君。
  50. 三宅正一

    三宅分科員 大臣お急ぎのようでありますから、そしてほかの同僚議員の非常に御研究になった時間をいただきますのは恐縮でございますから、ごく簡単にお伺いいたしますが、私はこの間の雪害関係の連合審査会でも申し上げたのでございますが、日本が資本主義時代に入りまして、米を中心にする経済から第二次、第三次、工業、商業等が盛んになるにつれて、表日本と裏日本との格差が非常に大きくなってきている。これでは船の片方だけに人も富も集まって、半分の部面がからになってしまって、ひっくり返るという非常に危険な状態にきていると思います。その根本原因は、少なくとも裏日本について言えば、雪の害を防除することについて国の政治が怠慢だったことにあると私は思うのであります。今度の雪害を見ておりますと、客車がとまりましたのが年末年始にかけて五日間、貨車がとまりましたのが二十五日間であります。従いまして工業関係、商業関係などは材料が入らない、品物が出せないという状態のために、手形の不払い等でもってどうにもこうにもならぬ面が非常に大きくなっておったと思うのであります。   〔主査退席、赤澤主査代理着席〕 私は通産大臣日本所得倍増計画を推進する大きな立場におられまして、この格差を直すことができないで格差拡大をやっておったのでは、日本の国全体が社会的にも非常に不安になると思うのであります。そういう意味においては、少なくとも鉄道、道路等は、現在の技術の段階におきまして、ほんとうに国がやる気になりさえすれば、たとえば鉄道についていえば、流雪溝をほんとうに作り、そしてヒーターの入った転轍機をつけ、そしてラッセル、ロータリー等の近代的なものを置いて、そうして待避線などをもう少しつければ、汽車など一日とまるというのは、現在の技術においてはあり得ないと思います。道路ももっと幅員を広げて流雪溝とか、なだれよけとかいろいろなものを置いて、近代の技術を使っていけば、トラックやバスが国道においてとまるということはないと思うのであります。これが私は格差解消の上からいっても、政治の公平の上からいっても、当然の話であると思うのでありますが、この点についてはもちろん御異議はないと思いますが、さように考えられますか、どうですか。
  51. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 全く御同感でございます。
  52. 三宅正一

    三宅分科員 その観点から、国務大臣としては全体のことでありますが、特に通産省について申し上げたいのは、たとえばそういう関係におきまして、今度の雪害による生産関係でもって手形の不渡りがどれだけ出て、どうなったかという、いわゆる産業生活の上における影響について、一体しっかりした調査機関だとか、あるいは資料等をお持ちになっているかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  53. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その点は遺憾ながら十分に把握しておりません。ただ商工関係の融資期待額として、大体三億数千万程度に上っておるであろうという調査が届いております。
  54. 三宅正一

    三宅分科員 そういう点の調査がまだできておらぬところにも、私は日本政治の大きな弱点があると思うのでありまして、過去のことを追及するわけじゃありませんけれども、少なくとも今度の雪害を契機にいたしまして、交通関係の道路、鉄道などがとまらないだけの施設に、ほんとうに国が取り組むという決意をきめるということが必要じゃないか。その点において通産省の関係について申し上げますと、物価が非常に暴騰いたしまして、特に雪の中にあって、果樹だながこわれた、そこへ長岡の震災が起きた、そこで材木の値上がりについては、農林省関係で営林署でもって値段を安く払い下げるというような手を打っておりますが、少なくとも国の支配力の及びまするセメントでありますとか、鉄鋼でありますとか、あるいは鉄板であるとか、亜鉛鉄板であるとかいうものについては、こういう機会に暴利を占めるということを押える意味におきましても、それから伊勢湾台風等におきましても、政府のあっせんによりまして、公共機関がお願いをいたしまして、卸物価でお見舞の意味においても出すという線も出まして、物価値上げをある程度押えたのでございますが、こういう点についての処置を一つぜひやっていただきたいし、現にそれについて何か手を打っておられるかどうか、承りたいと思います。
  55. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体雪害問題につきましては、災害防除に準じて取り扱うということになっておりまして、ただいま申し上げた融資の問題等につきましては、これに準じて便宜な方法で取り扱うようにいたしております。それからさしあたりの物資対策といたしましては、まことに不十分で申しわけないのでありますが、申し入れがあればその点を円滑にあっせんするようにいたしたいと思います。
  56. 三宅正一

    三宅分科員 まだ雪の中におりますから、地震で倒れたうちも応急手当だけで、あとから来ると思いますが、来ましたら、ほんとうに親切にやってやっていただきたいと存じます。  その問題に関連いたしまして、私は裏日本産業をほんとうに開発いたします前提条件としては、先行手段としての道路交通の確保がありますが、同時に裏日本は雪が降りますから、水力電気というものは非常に豊富であります。富山県では県営電力をやりまして、安い電力を県下へ供給いたしましたことによって、あそこは裏日本においてよその県と違って工業化を推進しております。ところがその他の大きな電力開発は、みな東京や関西に持って行ってしまいますから、ロスだけの点でも政策料金で、地元については雪の害を受けておるのであるし、工場分散の見地からいって、電力の送電ロスだけでも電源地帯については安くするというような、それだけの程度の手を打たれましても、私は電力を大きな原料とする工業というものは、そういう地方に起きると思うのであります。  それから最近通産大臣よく御承知でしょうが、ガスが非常に出だしましたけれども、ガスなどについても、今帝石などが考えておりますのは、東京へ持ってきてタウン・ガスに使おうとしておるのであります。タウン・ガスはむしろ重油か何かでやった方がいいのでありまして、その意味においても、私はこういう資源の水力電気は東京へ持ってきてしまって、それで雪の害だけはこうむる。ガスが出たけれども、これも東京へ持ってきたという行き方ではなくて、少なくとも通産省あたりがいわゆる工業の地方分散という見地からいっても、原料として地方において使わせるという対策を根本的に考えていただきたいと思うのであります。帝石自体もあれだけたくさんの人をかかえて、石油は出ない、外国との競争ということで、ガスで食わなければならぬ。高く売れるところへ持っていくということをやりますれば、またせっかく出たガスで土地を荒らされるというだけで、東京へ持ってこられるということでは、私は日本の恒久の発達からいいましてはなはだまずいことと思います。時間もありませんので、ほんの決意を促すだけでありますが、こういう点についてもほんとうに取っ組んでやるような御決意があるかないかを承りたいと思います。
  57. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北陸方面の天然ガスについては、埋蔵量が相当あるということが逐次明らかになっております。それでこれの活用は、どうしてもこれを地元で使うということが不可能であれば、これはやむを得ませんけれども、そういうことはございません。最近このガスを利用して逐次工業の計画が現われてきております。さように指導して参りたいと思っております。
  58. 三宅正一

    三宅分科員 時間がないそうですから、もう一点だけ御質問いたします。  従いまして、イタリアにおける戦後の産業の復興というものは、ムッソリーニが残した施策ではありましたけれども、石油がない、石油を掘るつもりで、エニという国策会社を作った。そうして石油は出なかったが、ガスが出た。これを公益的にほんとうに効率的に利用をしたことが、イタリアにおける化学工業を非常に盛んにしたのでありまして、私は日本におけるガス資源というものは、まだ相当あると思うのであります。従いまして、この際、そのガスの開発については、営利会社にまかせるというようなことでなしに、これらの機構をもっと国策会社的にして、ほんとうに開発もする、調査もする、それから利用の方についても、その土地において利用させるというような大きな手を打っていただきたいということを期待いたします。  同時に、もう一つお願いをいたして質問をしたいことは、私は、雪に関する総合研究所がないということも非常に怠慢だと思うのであります。たとえば流雪溝その他の関係において道路交通の確保ができる。それからまた除雪住宅を作りまして、屋根の傾斜をすこしよくいたしますれば、できる。   〔赤澤主査代理退席、主査着席〕  通産大臣も聞いておられると思いますが、ことし鉄筋コンクリートの学校が新潟においてつぶれた。これなども耐雪建築についての総合研究がないのじゃないかと思うのであります。それから経済の調査についても、これがどう影響するか、固定資産税などの問題についても大きな柱を使わなければならない。耐久年限は少ない。しかし調査所がありませんから、十日町の土木派遣所の調査を資料にして地元が陳情しておるということであれば、ほんとうにかゆいところに手の届くことはできないと思うのであります。私は、この際、気象の関係、それから交通の関係、住宅の関係、それから社会施設の関係経済に及ぼす経済調査等を総合いたしました総合研究所というものをこの機会に作りますことが、応急対策で世話をしてやることよりは、もっと大きな根本問題だと存じます。それで、これは通産省だけでやれることではありませんけれども、所得倍増計画の推進的な役割をしておられまする通産省といたしましては、その不利を除いてやる意味におきまして、さらに、雪の利用等も高度化するという意味におきましても、総合研究所の設立については、国務大臣として閣議において、この間も申し上げたのでありますが、一つこれを推進していただきたい。そうして、それぞれの研究機関をもっと集大成するようにしていただきたいと期待をいたしておるのであります。  この三点の答弁を得まして、私の質問を終わります。
  59. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ガスの問題につきましては、ただいま石油資源開発会社と帝石と、この二つが大きなガス鉱区を持っておりますが、ただ、どっちでこれを総合的にやるかといったような、やや権限的な問題がございますが、それはそれとして、今後非常に重要な資源としての価値を高めておる現状でございますので、これの開発につきましては、一そう努力したいと考えております。  それから、ただいま雪に関する総合研究所の話がありましたが、よく心に込めてはかって参りたいと思います。
  60. 三浦一雄

    ○三浦主査 それでは午前中はこの程度にします。午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩      ————◇—————    午後二時八分開議
  61. 三浦一雄

    ○三浦主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。角屋堅次郎君。
  62. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 私は農林水産関係の問題を中心に数点農林大臣にお伺いをいたしたいと思うわけでありますが、もともと農林水産委員会のホーム・グランドもございますので、詳細な問題についてはその委員会でさらにいろいろな問題についてただして参りたいと考えておるわけであります。  御承知の通り、今度の国会は農業基本法を初め三十数件に上る関係法案等も出て参りまして、一般にもある意味では農政国会としての性格を持っておる、こういうふうに非常に注目をされておることは御承知の通りであります。すでに一昨年から農林漁業基本問題等でも農政上の各般の問題について検討がなされて、それぞれ農業関係あるいは林業関係あるいは水産関係等について答申がなされ、おそらく政府としてはその線に基づいて今度の農林関係の施策を提案する、こういう立場であろうかと思うわけであります。ただ私どもが直接農政に関係するものとして今後の日本農業の方向というものを考えてみます場合に、一方にはこれから始まる貿易自由化の国際的な資本攻勢のあらしを受けなければならない。他面、国内においては農業外資本力の、特に成長が大きいといわれる畜産部面あるいは将来果樹部面も入ってくるかもしれませんが、そういう農業外資本力の農業への進出という、内における資本攻勢というものもありまして、その中で従来の零細な家族経営の日本農業というものを一体どういうふうに改善をしていくか、これが非常に重大な問題だと思うのであります。従来私ども農林水産委員会に籍を置いておりまして農政上の問題をいろいろ論議して参りましたが、これからの農政問題というのは、従来のように養蚕問題が起こったときには養蚕、果樹問題が起こったときには果樹という個々の問題をやるのではなくて、農政全般の視野から、一体日本の農業をどう変えていくかということを非常に重要視しなければならぬ。そういう観点からいたしますと、今度の国会に農業基本法を初め、いろいろなものが出て参りましたけれども、私は農林大臣としての基本的な立場からするならば、この際、今度の通常国会では十分農政上の問題については論議を尽くすことは尽くすのでありますけれども、しかしこの問題については審議の推移等とも見合って、さらにあらためて臨時国会等も召集し、そして農政関係の学者といわず、団体側といわず、直接農林水産関係に従事する農林水産関係者といわず、各般の意見を十分集大成いたしまして、新しい農政に対するところの確固たる施策を樹立する、こういう慎重さが私はあってもいいのではないかというふうにも実は思うのであります。  その次に、農業基本法を初め各般の問題は、いろいろ農林省案ができた以降においても、政府、与党部内でも論議があり、しかもまた今日予算案を衆議院において打ち上げなければならぬという段階においても、なおかつまだきまらないという状況等もあるのでありまして、従って会期一ぱいに、数にたよって最終的には押し切るというふうなことではなしに、そういう点については十分今後の審議の推移とも見合って、各般の意見を十分集大成をしてやっていく、こういう心がまえで臨まれるつもりであるかどうかということについて、まず農林大臣にお伺いしたいと思います。
  63. 周東英雄

    ○周東国務大臣 御意見はごもっともでありますが、私どもが農業基本法を制定して本国会に提出いたしますにつきましては、御承知の通り、過去二年間、政府におきましては農林漁業基本問題調査会、党におきましては農林漁業基本政策調査会というものを設けて、十分に調査研究を進めて参ったものでございます。その間におきまして、政府に置かれました農林漁業基本問題調査会におきましては、今御指摘のようにこれは多方面にわたって学者や実際家や、あらゆる方面の人を網羅して意見も聞き、またその調査に基づいて結論を得て本国会に提案されたような次第でありまして、これには十分各界の意見を取り入れておるつもりでおります。もとよりそう申しましても基本法はあくまでも一つの政策の方向を決定し、それらに対して必要だと考えられる施策を第二条において八項目を掲げ、しかもその八項目の中にそれぞれ広い問題を含んでおりますが、大体の方向をあそこに現わしておる。しかもこれらの施策をなすについて、国がこの施策を実施するために必要な法制上の処置または財政上の処置をとることを義務づけております。従ってそれらの各法案に関し、またそれらの施策を実現するについて今後も出てくるでありましょう法制というものは、この国会に一応当面の問題として出して参りました法案以外にもまだ私はあると思います。そういうふうなことについて、実施面において十分な御意見を聞き、慎重さをもって臨みたいと思っておりまするし、これらの基本法の制定にあたりましては、国会におきまして十分慎重な御審議をいただき、それらの参考となるべきものは、具体的の法制の制定にあたって十分考えていきたいと思っております。
  64. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 この農業基本法を中心とする諸法案の取り扱いの問題につきましては、やはり基本的には今申したような考え方で、総合的計画的に、かつきめこまかく衆知を集めて、新しい農政の方向を樹立するという慎重な態度でやらなければならぬと考えておりますけれども、これは今後の審議の推移にも待つことでありますから、この点についてはさらにお伺いをすることを避けますが、先ほども申しましたように、農林漁業基本問題調査会から、農業関係、林業関係、漁業関係それぞれについて答申が出されておるわけであります。農業にしても林業にしても漁業にしても、それぞれ産業として内容には幾多の問題があるわけですが、今度の国会には、政府は農業基本法を中心とした諸法案の整備ということで提案されておりますけれども、元来私ども考えておりましても、この林業関係の問題というものは、いわばタブーになっておる感があるのでありまして、国土の七割近くを占める林野関係の国土総合開発の観点から、これからの方向をどうするか。あるいは林業内部の経営問題をどうしていくか、国有林あるいは民有林、こういうものの本来のあり方というものは、現状と見合ってどういうふうにしていったらいいかというような、いろいろな問題が林業関係でもございます。そういう点でやはり林業の問題については、基本的な林業問題を中心とした林業基本法というものが当然考えられなければならぬと思いますし、漁業の問題についても、沿岸漁業あり沖合いあり遠洋漁業ありということで、一方には資本漁業が存在すると同時に、他面には零細な家族経営のものが存在するという、農業とは違った性格の部面がありますけれども、私どもは漁業の問題については、特に沿岸あるいは沖合い等を中心として、漁業基本法というようなものを考えるべきであるということで、今党としてもその成案を急いでおるわけでありますけれども、こういう他産業に比して非常に低位にある農業関係、林業関係、漁業関係を、全体の現状分析の上に立ってそれぞれにやはり基本法というものを基本的に考えて、これからの経済の発展に即応して、他産業と見合う農林水産関係者の所得向上をはかっていくということを真剣に考えるべきではないかと思いますが、これらの点について農林大臣としてどう考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  65. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ごもっともな御意見であります。今度一応農業基本法が出ますが、これの中には関連的に林業というものが入って参ります。ことに国有林野とか公有林野というものが農業関係の農地の造成等にどういう関係を持つとか、あるいは今後伸ばしていこうとする牧野関係にどういう関係を持つかという方面については関連的に出ております。また、林業と農業というものを一体化した形における農林一体化の考え方も、ところによってはでき得ることでありまして、そういう方面にも一部出ておりますが、しかしその他の問題につきましては、林業については、この間も申しましたが、大きな立場で、一体日本の木材資源というものをいかに涵養し、いかに将来の産業に必要なる木材の供給をしていくかという問題が大きな問題として一つある。それに対して財政金融その他の処置を一体どうするか。しこうしてまた林業経営に関して、場合によっては、多分に公共性を持っている山のことでありますから、それらの山持ちの団体についてどういうふうなことを考えていくかという問題は今後の問題として残されております。これらは順を追うて私どもは立てるべきだと思います。もう一つは、この間も申しましたように、林業経営の立場でなく、山村における経済の立て方というものを一体どうするかという問題が残り、そこには当然炭焼きとか薪炭の生産に従事をして零細な生計を営んでおる方面の将来をどう考えるかという問題が大きな問題だと思います。これらについても今度の予算で一部についてはそれらの措置を講じておりますが、まだ十分とは思っておりませんので今後も措置をとりたいと思います。  それから漁業でありますが、これは一番むずかしい問題でありますが、これには、御指摘のように資本漁業あるいは沿岸漁業というものの調整をどうするか、または、同じく資本漁業と申しましても、遠く公海に臨んでやる遠洋漁業と、近海、沖合いの漁業というものとの調整をどうするかというような問題がもとより私はあると思います。しかし最も重大なのは沿岸漁業に対する処置をどうするか、ここに御指摘の漁業基本法というものが必要じゃないかという問題が出てくると思うのです。ただいま私どももその問題について法案等について検討を加えております。できれば本国会に御審議を願いたいと思いますが、今までは大体沿岸漁業振興法という形で一つの法案を用意しておりますけれども、もう少し基本的に掘り下げる余地はないかということで再検討をしておるわけであります。ただ私は、この前申しましたが、沿岸漁業の振興なり沿岸漁業に対する処置をつけるについて、また他産業との調整をはかるについて一番大事な漁業権制度の確立が、改正がまだ見込みが立っていない。これは御承知のように三年計画で調査会を設置しておりますのが、三十六年度一ぱいかかります。この問題が解決せられるということになると、よほど基本の立て方が変わって参ろうかと思います。ややそういう面においてはそれを待っている形もありますが、しかし私どもとしては、漁業権制度の確立を待たずしてやり得る漁業に対する基本的な制度はどうかというようなことで、ただいま検討をいたしておるようなわけであります。
  66. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 ただいまの林業に対する基本法の問題、あるいは漁業に対する基本法の問題等は、これはやはりこれからの経済の高度成長の中で、ややもすればおくれがちの農林水産関係の問題を考える場合に、常に後手に回りながら対策が立てられるのでなくて、先手に回って物事を考えるという姿勢から見ても、これは十分考えてもらわなければなりません。もともと農業基本法の問題にいたしましても、今委員長席におられる三浦さんが農林大臣当時に、私が農林水産委員会の総括質問でこの問題に触れたときには、まだ非常に消極的な意見でございました。同時にその次の福田農林大臣のときに、農林漁業基本問題調査会が設置をされる法案の審議の際に、一体この農林漁業基本問題調査会の結論を指向する方向というのは、即農業基本法の制定ということであるのかどうかという質問に対しても、それはそうなる場合もあるし、そうならぬ場合もある、こういうふうな当時のお話でございました。冒頭に申し上げましたように、やはり農業基本法が打ち出されてくる経緯からいたしましても、常に追い込まれてものを考えるということでなしに、ある意味では私は従来から日本の農政というものはぬるま湯の農政であったと思うのですけれども、これからはやはりあらしにもまれる農政の時代に入ってくると思うのであります。そういう点からいって、農業のみならず、林業あるいは漁業等についても、十分この国の基本的な施策というものを明らかにする基本法の検討というものは、早急に開始されていいのじゃないか、こういうふうに思います。  次に、農林省の機構改革のこれからのあり方という問題について大臣にお伺いしたいわけでありますが、その前に、行政管理庁の方からも来ておりますので、行政管理庁の方に少しくお伺いしたいわけでありますが、政府の行政機構改革のこれからの方針というものは一体どういうふうに考えておられるのか。あるいは当面行政機構改革の重点として考えておるものがあるならば、やはり明らかにしてもらいたい。従来行政機構改革の関係では、答申等の推移から見ますと、自治省の問題が出たり、あるいはまた国防省の昇格の問題が出たりして、われわれの期待する方向とは背馳した内容のものが相当にあるわけでありますけれども、行政機構改革のこれからの方針なり、あるいはまた特に当面重点として考えておる内容、さらにまた近く定員法を廃止する法律案が出されるように承知をいたしておるわけでありますが、この定員法を廃止するに至った理由、あるいはまたこれに対する各省側の見解というようなものは、一体具体的にどういうものであったのか。私どもこの定員法の問題等については、従来の功罪というものについて十分顧みなければなりませんけれども、しかし、これは仕事の内容等によって現業関係としからざるものというところでは、これからの定員法の廃止問題に対する受けとめ方も違っておるやに判断をいたしておるわけであります。これは近く出て参りますれば十分検討しなければならぬ問題だと思いますけれども、行政機構改革のこれからの方針と定員法廃止の問題についてお伺いしたいと思います。
  67. 山口酉

    ○山口政府委員 機構改革につきましては、政府の方針は、できるだけ簡素な機構にしたいということでございますけれども、簡素と申しましても、簡素自体が目的ではございませんで、行政事務を能率的に処理するということがねらいでございますので、行政事務の実態がだんだん複雑になって参りますにつれて、行政機構もある程度複雑化してくるのは必然的な勢いであると思います。しかし、その中でもできるだけ行政費の負担を軽くするという意味で、できるだけ簡素な機構にしていくというふうに努力をいたしておるわけでございます。当面どういう点を重点的に考えるかということでございますが、機構の改革というものはそうしょっちゅうやるべきものではないと考えております。機構が新しくなりますと、その新しい機構に習熟するまでに相当の期間がかかって、その間の行政事務の処理に悪影響を及ぼすということもありますので、必要やむを得ない事情に至るまでは、でき得るだけ機構いじりはやらない。ただし行政の業務の内容は毎年度非常に加わって参りますし、客観情勢の推移に伴って変貌して参りますので、必要やむを得ない限度において情勢に応じた体制をとっていく、こういうことで今国会にも一部の改正を御審議願うことになっております。  定員法の問題でございますが、これは現在の定員法につきまして、従来非常に弊害が起こっておりましたことにつきましては、すでに数次の国会で定員法の御審議の段階で附帯決議もつけられておる次第でございまして、すでに周知の事実になっておるわけでございます。昨年政府では新しい定員管理制度を考えるべきだとして、政府部内に連絡協議会を作りまして、約一年間にわたって各省庁と協力して新制度を考えて参ったのでございます。本日あたりおそらく提案になる運びでございますが、その内容は、定員という制度はもともと行政組織の規模を確定するものでございますので、本来行政規模の基準となります行政組織法に基準が置かれておらなければならない、そういう意味で従来あったことはあったのでございますが、きわめて簡素でございまして、それを受けた各省の組織法である設置法におきましても、一応定員の規定を置いておりますけれども、そこで定めずに、さらに定員法に譲っております。定員法に譲りました経緯は、御承知の通り大規模な行政整理をやる目的で作ったものでございますが、本来ならば、行政組織の規模は、その機構と同時に設置法に規定さるべきものである、たとえば、農林省の機構組織であれば、農林省の設置法を見れば、機構もその構成要員である定員もわかるということになっておるのが本来でございます。その本来の姿に返って規定していこうということにいたしたわけでございます。さらに従来、非常に定員法の弊害になっておりましたことは、法律で定員を規制していくという建前でありながら、定員の内外に同種のものがございまして、それが身分上の取り扱いに差異があるということから、定員内職員として繰り入れすべきであるという議論が盛んにあったわけであります。こういう問題につきましては、定員法の従来の規定がきわめてあいまいであって、そのために定員管理というものが完全に行なわれていなかったというので、定員規制をすべきものはどういうものかという基準をきめることにいたしたわけでございます。新しい考え方におきましては、その定員規制をする場合に、身分的の差をつけないようにしようということで、組織について安定した関係を持つところの職務を規定するということにいたしましたために、そうなりますと従来定員外として取り扱っておったものを相当多数に定員内として取り扱うべきことになるはずでございます。そういう数を現在でとらえ得るものについては最大限にとらえる措置をいたしまして、従来の定員法の中で規定しておりました関係の機関につきましては、ほぼ四万七千六百九十三というような数字を新たに定員規制の対象とするということにいたしました。それからその規制の仕方につきまして、法律で規制するものにつきましては非現業と公共事業等につきましては法律にいたしまして、五現業につきましては、企業の弾力性を考慮して、別に給与総額という制度がございますので、政令の規定にまかせる、かような考え方にいたしております。
  68. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 ただいまの管理部長の説明のうち、行政機構の改革の問題についても必ずしも明確な方針があるようにも承りませんが、特に今度の国会に出されて参ります定員法の問題については、いろいろ問題が多いのでありまして、いずれ法案の審議の中で十分論議を尽くしたいと思いますが、ただ、今管理部長の話の中で、定員法に弊害があったやのごとき話がございましたけれども、これはむしろ定員法そのものに問題があるというよりも、やはり運営の問題の上で実情にそぐう点とそぐわない点、そういうようなことが国会を通じて論議の対象になったのであって、定員法そのものが大きな障害の原因を作ったということはなかろうというふうに考えておるのであります。  そこで、本論に入りまして、農林省関係の機構改革の問題でありますけれども、大臣は、これからの農政の方向の中で、農林省の機構改革についてどういうお考えで対処されようとするのか、今度の国会にあたりましても、御承知の通り農林官房の強化の問題であるとか、あるいは試験研究機関の農林水産技術会議等を中心とした運営の問題であるとか、あるいはまたその他二、三の重要な改正が出て参っておるわけでありますけれども、本来農林省の機構改革の問題については、政府提出の基本法案の第二十三条の中でも、「農林行政に関する組織の整備及び運営の改善」という一般的な条項でうたっておるわけでありますし、また農林漁業基本問題調査会の中でも、この部面における意見の開陳等もあるわけでありますが、農林大臣農林省のこれからの機構改革という問題に対する御所見を承りたいと思います。
  69. 周東英雄

    ○周東国務大臣 私は新しい農業のあり方をきめ、これに対する施策を実行していく上におきましては、何としても農林省の行政の機構についても、その方向に沿った改革をする必要があると思っております。従来ともすれば各局が思い思いに、別々に、その所管についての農政をやっておったことがなきにしもあらずと思うのでありますが、今度は大きな立場で新しい農業の方向をきめ、それを指導していく上につきましては、各局は農村に対する、あるいは農業に対する総合計画の一部を分担して同じ方向に指導していくというような形に機構が動かされることが必要だと思います。しかしそのことは、中央より一そうに地方における指導あるいは助長をなす機関についても、そういう考え方のもとに調整のある一つの機構が必要だと思うのであります。第一線がばらばらになっては困ると思います。そういう意味におきましては、そういう方向で機構に新しい行き方を考えたいと思っておりますが、ただいま行政管理庁の局長も申しましたけれども、思いつきばかりを何べんもやるということはいけませんので、今度の問題につきましては、慎重にいかなる形がよいかを考えることが必要だと思います。これは農業基本法と関係法案の通過をさしていただいた後において、三十七年度予算等を考えるときには、それまでにいかなる形に機構の姿があるべきかということを中央、地方を通じて考えてみたいと考えております。さしあたって中央における考え方におきましては官房等において各局を調整することが必要でありましょうし、従って官房における機構の改革を今度お願いし、同時に今後の試験場のあり方というものは今後の農政を指導する上において非常に大きな役割をなすものでありますから、その部分については一部改正の方を進めて目下国会において御審議をわずらわしておる次第であります。
  70. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 農林省の機構改革の問題については、重要部面については今後の検討課題ということを申されたわけでありますけれども、最近出ております二、三の例から判断をいたしますと、率直にいって、私は最近出ておる機構改革に関連した関係法案は、従来の農林省の機構の一部を切り売りしているという感じがいたしておるのであります。たとえば官行造林の問題における森林開発公団への移管の問題、あるいは農業共済の事業団の設置に伴う保険課の大半の職員の移転の問題、あるいはまた愛知用水公団に豊川の国営事業の関係を移していこうというふうな問題、これはそれぞれ非常に複雑な理由があるやに判断をいたしますけれども、そういう現われた部面を見て参りますと、農林省の従来の機構をなしくずしに切り売りしていくという感が率直にいってするわけであります。同時に基本的な問題としては、いわゆる行政と事業とを分離していこうという考え方がおそらくこれからの政府の、あるいは農林省の行政機構改革の前提として農林省の機構改革を答えていこうという考え方がわれわれの判断としてあるわけであります。たとえば食糧庁の機構につきましても、いわゆる事業部面の問題についてはこれを公社なり公団なりに移していこうという考え方が出て参ったり、あるいはまた林野庁の問題についても国有林野事業等の問題については、数年前からそういう意見はありましたけれども、これを公社に移すというふうな考え方が爼上に上って参ったり、あるいは現業的な性格を持つ農地局等についてもそういう考え方を検討しようというような話があったり、先ほども農林行政の第一線の農山漁民に対する総合的なあり方ということを言われましたが、そういう名のもとにおいて、農林省の出先機関、たとえば農地事務局と統計調査事務所というようなものを中心にした地方農林局の設置の問題、こういうふうないろいろな問題が爼上に従来から上っておると判断をいたしておるわけでありますが、こういう農林省のこれからの機構改革の方向の問題について、もう少しく具体的に一つ考え方を明らかにしていただきたい。
  71. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ただいま申し上げましたようにこれは重要な問題でありまして、一ぺん変えたらそう思いつきでたびたび変えることはできない問題であります。私は新しい農政のあり方の問題として、先ほど申しましたように、従来の農政指導その他等につきまして、全部が一つの農業の方向、指導の方向に向かって各分野を分断する方向にものを考えていきたい。それに沿うように地方庁の管轄または地方の出先の問題はもとより、県関係についても考えていきたいと思っておりますので、今私は軽々にどうする、ああするということを申し上げることはまだ早いと思うのです。それほど簡単なものではなくて、今後の農政があなたの御指摘のようにむずかしければむずかしいだけ、それを一ぺんやったら、これはりっぱなものに持っていくということであるだけに、私は慎重な研究をしていきたい、かように思っております。  それからただいま御指摘でありますが、いろいろと行政と事業を分離するのはどうもおかしいじゃないかというお尋ねであります。いろいろ御意見もあると思いますが、私は従来からむしろ逆に与野党を通じてなぜ官僚ばかりやっているのか、むしろ非能率な国営なんというようなことよりも、国の処置よりも、これを民営に移せという議論こそたびたび伺いましたが、このごろはその一つの現われということでありますか、官行造林等も相当な部分も終わりまして、今後の部分はむしろ開発公団にやっていただく、あるいは保険の行政と監督と事業とを分離していくということは、私はむしろ新しい考えとしてはいいじゃないか。ただ問題はその間に国がそれで責任をはずして何もかまわぬということになっちゃいかぬので、そこに純然たる民営と違った形においてこれを指導し、これに国の責任をもってやっていくということならば、私は仕事によりますけれども、国がやることだけがよくて、公団等に移すということが悪いとだけは断定できないのじゃないか、かように思います。
  72. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 農林省の機構改革に対する大臣としての考え方は、次の通常国会を目ざして私が申したような内容のものを含んでくるかどうかは別として、準備をして参りたい、こういうふうに受け取ってよろしいわけでございますか。
  73. 周東英雄

    ○周東国務大臣 その通りであります。
  74. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 後ほど具体的な法案として出されておる問題についてはさらに触れて参りたいと思いますが、この機会に畜産局長もおいででありますので、民間委譲というふうな問題に関連して、少しく畜産関係の問題についてお尋ねしておきたいと思います。畜産局長も御承知の通り、北海道の日高牧場の問題についてはかねて中央競馬会の方かり、これの一部民間委譲と申しますか、中央競馬会への委譲問題が出て参っておりまして、こういうふうな問題等も含んでかねて畜産局では馬政協議会と申しますか、そういうところでこれからの馬政のあり方というようなものをいろいろ検討されておるやに承っておるのであります。もともとこの日高牧場の移管問題は、来たるべきオリンピックの東京開催等とも関連をして、優良競走馬の育成というふうな点もからみ合って出てきたやに聞いておるわけでありますけれども、オリンピックの競馬関係ではこれがなくなったやに聞いておりますが、その問題は一応立ち消えたといたしましても、日高牧場の中央競馬会への移転問題については、相当やはり政治的な問題が介在しておるというふうに私ども承っております。この詳細についてはこの席上では触れることを避けまして、あらためていずれこれらの問題がさらに進展をしてくるならばお伺いをしたいと思いますが、当面この問題についてはどういう経緯になっておるかお伺いしたいと思います。
  75. 安田善一郎

    ○安田政府委員 日高牧場の現状につきましては別に必要でございましたらお答えをいたしますが、日高牧場をより有効に使えといういろいろの角度の面が約四年前からあったそうでございまして、その陰には必ずしもお尋ねになりました中でおっしゃいましたような、オリンピックのためとか、中央競馬会へということばかりでなしに、いろいろな意見が出ております。これに対しまして研究をしておるわけであります。この研究の態度は、馬政協議会という軽種馬、農耕馬を通じました権威者のお集まりを願って、農林省の意見を固めるための研究をしていただいております、その途中であります。農林省はそれをいただいてよく研究してきめたいと思います。しかしごく最近これを取り扱っております態度は、衆議院の予算委員会や決算委員会、参議院の決算委員会でお答えを申し上げました通りに、畜産の現情に即して、将来に適応する振興の促進上、国立の種畜牧場はどういうふうにあったらいいかということを研究しておくことが大事でありまして、その中において馬の牧場をどう考えようかとしておるのであります。そして馬は年々減少をいたしておりますが、この現象をとらえまして、将来いかに考えるか、農耕馬ではどういうふうに考えるか、軽種馬ではどういうふうに考えるかということを中心に考えておるわけであります。まだ最終案はできておりませんが、考え方のうちで、国の施設としましては、軽種馬は昔と違って今は競馬用の馬をおもにいたしておるのでありますから、農耕用馬に重点を置いて、軽種馬は、同じ予算が取れる際には、双方拡充し得ればけっこうですが、ウエートとしては産業用馬中心、あるいは馬以外の乳肉卵を生産する家畜に重点を置いた国立の種畜牧場として整備拡充をしたらいいのじゃないかという意見が一つあるわけであります。そこでどんな意見が地方から来ておるかというと、日高地方は馬の生産及び育成では日本有数の適地であります。かつ民間の種馬生産業者が多くおられますから、自分で大牧場を馬生産育成のため経営しないで、余勢種付として民間に対してやるのではなく、国で生産を行なわず、全般的に民間に対して初めから補助的に種付をやるという意見が地元の種畜牧場から来ております。もう一つは、軽種馬協会という団体がございまして、軽種馬の総合的な民間団体でありますが、これが日高牧場を買い入れるか借りるか、できたならば国の負担で自分らが全部使わしてもらえるようにしてもっと生産事業を十分にしたい、そういう意見があります。もう一つは、中央競馬会が一つの意見の提出者でございます。今同法によりましては、馬の生産に関する事業はできないようになっておるが、育成に関する事業はできるようになっておるのであります。それを競馬馬の性質にかんがみて、中央競馬会で日高牧場をもっと使わしてもらったらいいじゃないか、そういう要望が来ておるのであります。これに対しまして最後の分は、すでに従来から約三十頭の育成をするため、建物、土地を貸しておる状態でありますが、さらに大きく貸し付けるか、払い下げるか、政府の出資でいくか、そういうことをやるか、やらぬか、こういうことを検討中であるわけであります。
  76. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 日高牧場の問題については、今後の進展と見合って、いずれまた機会を得てお尋ねをいたさなければならぬかと思います。  ちょうど経済企画庁の長官もお見えでありますが、御承知の通りわが国の場合には、四つの島に九千四百万近い国民が、それぞれ生活の場を得ていかなければならぬということでありますから、この狭い国土の総合的な開発ということは非常に重要だと思うのであります。国土総合開発の問題については、御承知の通り国土総合開発法があって、その中で全国の総合開発計画、あるいは都道府県総合開発計画、あるいはまた地方総合開発計画、さらに特定地域総合開発計画、こういう四つに分類して総合開発計画を立てることになっておるわけですが、今日まで遺憾ながら全国的な総合開発計画というものについては必ずしも十分具体的な成案がなくて、むしろ各個別的に地域開発というのが先行して参る、それで総合的な、バランスが失われるというふうな批判等もあるわけであります。最近、工業の開発にいたしましても、四大地域あるいはベルト地帯でつないだ今後の工業開発のみならず、後進地域における開発もやらなければならぬということがいろいろ言われておるわけでありますが、そういうことを言われるにつけ、やはり全国的な総合開発計画というものを具体的に樹立する段階ではないかというふうに考えます。いずれ農林関係の問題についてはさらに進んでお尋ねしたいと思いますが、全般的な立場から一つ大臣から…。
  77. 迫水久常

    迫水国務大臣 全国的な総合開発計画につきましては、従来いろいろな関係上、法律ができてから十年間、手はつけてはあったのですが、結末を得ておりません。そこでただいまお述べになりましたような相当逼迫した事情も出て参りましたので、ただいま経済企画庁におきまして、本年上半期中にこれを作り上げるべく一生懸命に努力を開始いたしております。従いまして、非常にいいものができるかどうか今一生懸命にやっておりますけれども、現在は努力中であることを御承知願いたいと思います。
  78. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 農林関係に入りまして、国土の総合開発の重要な一環として、農林関係のこれからの総合開発をどうするか。御承知の通り、今日農林水産関係には千五百万程度の有業人口をかかえておる。これを他産業と見合う所得水準に持っていくためには、政府の考え方からいくならば、この人口の相当部分を他産業に移して、そうして農業自体の問題を解決するという考え方であるやに判断をするわけですけれども、この狭い国土にたくさんの国民をかかえて、それぞれ生活の場を与えるという観点からいったならば、今後ともにやはり農林水産関係部面における総合開発を積極的に推進しなければならぬ、かように私どもは考えておるわけであります。ところが本国会開始以来、それぞれ関係の委員会で質問に答えた答弁の中から見ますと、たとえば水田、畑等の拡大計画というふうなものをお伺いして参りますと、水田の場合には、昭和三十五年の三百四十万七千ヘクタールに対して、十年後の四十五年では、むしろこれが減少いたしまして三百三十六万五千ヘクタール、畑の場合には、三十五年の二百七十三万六千ヘクタールに対して、若干前進をいたしまして二百八十五万一千ヘクタール、計では、三十五年の六百十四万三千ヘクタールに対して、四十五年では少しく前進をして六百二十一万六千ヘクタールでありますが、この程度のいわゆる農業基盤拡大を前提として、政府が考えておられるような自立農家の問題なり、あるいは協業化の問題なりということがはたしてできるのかどうか。冒頭に申し上げましたように、国際的な自由化のあらしの問題、あるいはまた国内における農業外資本力の農業進出の問題に対して、国際競争力を十分持った日本の農業の樹立あるいは経営の近代化等が十分達成し得ると考えられるかどうか、こういう点についてお伺いをいたしたいと思います。
  79. 周東英雄

    ○周東国務大臣 先ほど企画庁長官にお尋ねのありましたことと関連し、総合開発計画の分は、基本法の趣旨にのっとりまして、今まで振興局にありましたのを官房に移して強化するつもりであります。  さらに今のお尋ねでありますが、一応めどといたしまして、基本年次から四十五年におきましては大百何十万町歩で、現在あります面積より少し上回るという程度になっておりますが、これは今後基本法制定後におきまして、将来における確実なる需給の見通しの上に立って、作物ごとに一体どういうふうな供給をはかっていくか。また御指摘のように、畜産とか果樹というようなものが新しく生産所得増大のために登場して参ります。それについて従来の畑地以外に、牧野あるいは傾斜地とか山地地帯をどういうふうに開発して伸ばしていけばいいかという見通しの上に立って、今後における土地造成、基盤の造成については計画を進め、これに対しまして必要なる資金計画等も幅を持って考えていくつもりであります。もとより私どもは面積のふえることは必要に応じて考えていかなければならぬし、決して新しい土地の造成についてやぶさかなものではないのです。けれどもただ土地だけを増加するだけでなくて、やはり土地の生産性向上のための土地改良なり、またその土地を利用するについて、機械化あるいは技術の高度利用というような方面からも、生産性を高めるということをあわせて、自立農家といいますか、所得の増大、生産の増大というようなことをはかっていくわけです。この点はあくまで私どもは将来の需給の、バランスの見通しの上に立って、そうして必要なる土地の開発をなし、また土地の面積を開発するだけでなくて、土地の生産性を高め、またその土地の高度利用のために機械化、技術の利用ということが考えられて、相互一体になって今後の農業所得の増大なり生産性を高めるということでなければならぬと考えております。
  80. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 かつて昭和三十三年に農地行政白書を農地局の方で発表された際には、当面開墾関係で百五十万町歩、さらに干拓関係で十万町歩、これは開墾可能地としては具体的には数学としてもっと上るけれども、当面こういうものについては緊急にやらなければならぬということで打ち出されておったのですけれども、最近の農業の再編成のあらしに吹きまくられまして、先ほど申したような相当後退をした形で、従ってむしろ農業人口の削減ということを唯一のたよりにして、これからの農業の再編成をやろうという感を深くするような形に後退してきているのじゃないか。もっとも国土の総合開発の中で、農林関係の問題を取り上げる場合には、戦後緊急開拓政策としてやったような、ああいうとりあえず生活の場を与えるという、そういうずさんな開拓政策というものは戒めなければならぬのでありまして、従来農林省でもやりましたようなパイロット・ファーム等の、ああいうむしろ既設の農村等に対する指導的な役割を果たすような、そういう近代的な農業を作るという前提に立って、従ってこれは自然的にも耕境限界その他の問題等については、科学的な精査を当然やらなければなりませんが、しかし今日もやはり農村における過剰人口を単に経済の高度成長に期待しながら他産業に振り向けていく。現実に今日若い世代の諸君が年間六十万近く農村外に出ている。しかしまた一方においては三十万近くのものが農村に還流をしてきているということもあって、今後の農業のにない手というものがむしろだんだん失われていき、サラリーマン的な農家や老人と御婦人だけの農業になっていく危険性なしとしない現状から見て、農林省としてもこれからの農業の立て方とすれば、積極的なかまえをもってやっていく。その重要な一環としては、この狭い国ではありますけれども、四つの島の国土総合開発の重要な一環としての農林関係の生産基盤を計画的に、総合的に、科学的に確立する。そういう姿勢が私は重要であると思うのであります。そういう点について直接仕事をやっておられる農地局長の方から。
  81. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今お話しになりました数字と所得倍増計画なり三十三年の農地行政白書のお話、その通りでございまして、先生のお読みになりました百五万というのは、将来の耕地としての可能地というものはこのくらいあるだろうという意味の推定をした数字でございます。これに対しまして今所得倍増計画で十年間で少し増して耕地として約三十万くらい、こういう考えであります。その際に、先生のおっしゃいましたように、開拓、干拓、土地改良等でその役割をになうわけでございますが、特に開拓につきましては、これも先生御承知のように、百五十万ヘクタール買いました中で、適地の選定基準前に買いましたのが百二十万ばかりで、ほとんど大部分でございまして、当時の事情やむを得ず入りまして、あのような状態になっておりますので、最近の開拓につきましては、先ほど先生のおっしゃった。パイロット・ファームとかいわゆる基本の類型というものを作りまして、育成規模でございますとか所得、いろいろ考えまして、入りました人については資金その他のめんどうを見て、過去のようなことは起きぬようにということで、十分調査をし、その上で建設工事が終わって初めて入れる、そうして開拓していく、開拓したものは失敗しないようにするというような態度で続けていきたいと考えております。
  82. 三浦一雄

    ○三浦主査 角屋君に申し上げます。あなたには予定より二十分以上配付してありますから、収束的にお願いします。
  83. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 時間の関係もありますので、それでは近く竣工になる予定になっております愛知用水の関係の問題について、少しくお伺いをしたいと思います。  この問題についてはかねて私ども農林水産の関係でも何回かにわたりまして現地調査もし、またその実態に基づいていろいろ委員会でも御意見を申し上げて参ったわけですが、いよいよこの五月には待望の通水式も行なわれ、現実に愛知用水公団の事業としては、その辺のところで大部分は完了するという運びになっておるわけであります。これは申し上げるまでもなく、世界銀行あるいは見返り資金等の外資導入を含む農林省のこの種農業の関係中心にした総合開発としては画期的な大事業でありまして、しかもアメリカの技術援助等も受けながら、今日完成の運びに近づいておるわけであります。私はその点ではこれらの関係者の今日までの苦難な道の中での努力というものに敬意を表するにやぶさかではございませんが、ただ問題は牧尾橋にダムを作り、また木曾川を流し、兼山から水を取り入れて幹線水路あるいは支線水路等をもって、これから水が来た前提に立っての農業を中心にした営農の発展、あるいはまた工業用水への一部転用というようなことが行なわれるわけですが、かねてから新しいこういう総合開発における営農関係の問題というものについては、畑灌等について日本の場合にはやはり十分経験のある部面でありませんので、この方面に対する試験研究、あるいはこれに農家自身が十分なる理解と熱情を持つということについてもいろいろ問題がございました。今度の営農計画の中では、主として四千六百戸の地元増反を中心にいたしまして、新規の入植は二百二十一戸というふうに承っておりますが、愛知用水事業の今後の問題としてはたくさんの問題はありますけれども、一つには用水計画の中で農業用水というものは工業用水との競合の中で十分確保されていくのかどうかという問題が一つと、こういう大事業が資金計画の変更等に伴い、たとえば見返り円資金等は年利四分というきわめて条件はいいわけでありますけれども、そういう方面の当初期待が相当程度減少する等のこともあって、さらにまた予算増加に伴って農民負担が増高する危険性というものが言われておるわけであります。そういう農民負担の問題が、具体的に現地の農家負担の域を越えない程度で、今後償還される見通しにあるのかどうか。さらにまた委員会でも問題にしましたような、これからの知多半島における工業の発展等に伴う、特に最近着工いたしております東海製鉄等の用水関係の問題が、具体的に農業用水との競合の中ではどういうふうに調整をされていくのか、こういうふうな問題について少しくお伺いしたいと思います。  つまり愛知用水事業の完成への状況、あるいは本年の一月に基本計画が修正になりましたけれども、基本計画の修正に伴うところの変更、資金計画の問題あるいは用水配分の問題あるいはまた農家負担額の問題、さらに東海製鉄等を中心にした工業用水との競合関係の問題、こういう問題についてお伺いしたいと思います。
  84. 伊東正義

    ○伊東政府委員 愛知用水のことでございますが、この一月に基本計画の変更をやりましたのは御承知の通りでございます。中で三万三千ヘクタールといっておりました面積が減少いたしました。あるいは事業費が三百三十一億でございましたのが四百二十三億、水が従来は農業用水が一億一千万トンくらいでございましたが、一億四千万トンくらいというような点で、基本計画の変更をいたしまして実施計画を作り、縦覧公告の法的手続を終わったわけであります。この中で先生の御質問のありました水の問題でございますが、これは実は農業用水が工業用水に食われてしまうのじゃないかという御心配があったようでございます。今度の基本計画におきましても、実はあの地帯の営農形態としまして、早植えの傾向が非常に出ておることや、あるいはあの辺で非常に酪農経営が出てくるということで、畑灌漑等につきましても灌漑期間を今までよりも若干長くしたらどうかというような問題、それから畑灌のロス等についても見方が少し甘かったのじゃないかというようないろいろな点がございまして、一億一千万トンといっておりました農業用水を、一億四千万トンと実はふやしております。これは梅雨期の無効放流になります期時の水を取るということで、何らほかの方の変更なしにまかなえるということにいたしております。   〔主査退席赤澤主査代理着席〕  それから将来の工業用水との問題でございます。これは東海製鉄との関係、いろいろございますが、私どもの方としましては、工業用水関係で下流に調整池を作ってもらいます。あるいは木曾川の取水条件が現在は兼山二百トン、今渡百トンということになっておりますが、こういうものも県等で話し合いがつきまして、そういうところにもしも話し合いがつきますれば、農業用水というものを犠牲にして工業用水を取っていくのだということなしに確保できるのじゃなかろうかという見通しを実は持っております。ただしこれは関係県との話し合いが十分行なわれた上での話でございますが、そういう見通しを持っておりまして、少なくともあそこで要ります農業用水は必ず確保するという態度でやっております。  それから負担関係でございますが、これは従来三百三十一億でやっておりましたときにも反当が四万三千二十五円でございましたが、これは四百二十三億になりましても、やはり同じ額でやっていこうということで実は今基本計画等も考えております。といいますのは、いろいろ負担関係の中で実はこの三万三千ヘクタールが三万ヘクタールに減りましたので、それ自体でも若干負担関係はふえるというようなことになるのでございますが、その点につきましては県、国等がかなり事業費のふえたものを出す。ことに県等では相当出してもらうことになっております。そういうことを操作いたしまして、農民負担の総額が九十九億でございましたが、これを九十一億まで下げて、やはり四万三千二十五円でやっていこうという計画を作っております。これが具体的の個々の人について一人が果樹園で何ぼ、水田で何ぼという問題は今後の問題になろうかと思いますが、水の問題、負担の問題は、私どもとしましては最初に計画しましたものは、今基本計画を変更しましても確保できるという前提でやっております。
  85. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 愛知用水の事業の完成に伴う諸般の問題については、いずれまた関係委員会で専門的な立場からお伺いする機会があろうと思いますが、当面この愛知用水公団が仕事の終了ということと関連をいたしまして、御承知の通りこれからの愛知用水の技術陣容というものをどう活用していくかということは非常に重要なことであります。これが便宜的に豊川用水の国営の関係の計画を愛知用水公団の事業の中に入れて当面を切り抜けよう、これは御承知の例の非常に政府与党内でもめました水資源開発管理公団、こういう仮称のものが権限関係等で紛争をいたしまして、これが農林省が当初予定したようにできますれば、この中に相当部分のものを吸収していこうという腹案であったように聞いておりますけれども、これが一年延びたというふうな問題とも関連をして、将来のこういう開発管理公団ができる場合のいわば拠点的な考え方もあるかどうか知りませんけれども、当面の切り抜け策として豊川用水の国営事業を織り込んだ公団方式をとろうとしております。これはそういう考えであるかと判断をしておるのですけれども、それは別としても、非常に場当たり的、機械的な切り抜け方ではないのか。現実にこの問題については現地側でも相当に問題が起こっておるようでありますけれども、こういう愛知用水事業のような総合的な事業の経験を持つ技術陣容というものを統一的に活用するということは私も賛成ではありますが、それがもよりの豊川用水とくっつけて公団の生き延びをはかろうということは、いささか場当たり的なやり方のように感ずるわけですけれども、これはもっと再検討をさるべき問題ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  86. 伊東正義

    ○伊東政府委員 場当たり的ではないかというお話でございますが、これは私どもの方で水資源の開発管理公団というものを考えましたときの一環として、実は豊川も入っておるのでございます。これは豊川でありますとか、先生御承知の濃尾第二、あるいは利根川関係の埼玉合口の問題、印旛沼の問題、そういう今までの特別会計というような規模ではなかなか手に負えぬような大規模なもの、その他多目的の用水との関係が非常にあるようなものにつきましては、これは愛知用水公団でやりました方式で一貫施工して、非常に早期に経済効果を上げていくというやり方が最も適当だろうということで、昨年の六月ごろからそういう考えで実はやっておったわけでございます。たまたま公団問題等につきまして、各省の関係がありまして、全国的な問題はできておりませんが、豊川につきましては、前から計画の一環として考えておりましたので、それがだめになったからそこで切り抜けるということではなくて、前の計画の一環として私どもは考えております。将来もできますればそういうふうに考えていきたいと思います。
  87. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 農地局長は非常にまじめな顔をして答弁を逃げられましたけれども、これは水資源開発管理公団の経緯とも関連をして、私が申したような経過になっておるように私は判断しておる。いずれにしてもこの問題についてもまた審議の機会があるわけですから、時間の関係上次に話を進めたいと思いますが、これはやはり愛知用水公団の技術陣容を統一的に生かすという部面と、従来やっておる農林省としての国営事業というものとの関連は、やはりこれは別個の問題としてどういうふうに調整するかということを再検討してもらいたいと思います。  さらに林野関係では、すでに法案も出ておるわけでありますけれども、例の官行造林の廃止問題にからみ、森林開発公団へのこの種事業の移管の問題であります。時間もありませんから、この問題について詳細にこの委員会で追及をすることはできませんけれども、私どもはこの森林開発公団が、最近仕事がだんだんと少なくなって参りまして、廃止直前の運命にある、これを何とかやはり存続させなければならぬということで思いついたのが、従来四十年近くやっておる官行造林に手をつけて、これからやる分については森林開発公団でやらせる。ところが森林開発公団が従来やってきた業務の実績というものについても、なかなかいろいろ現地側で問題が提起されていることも御承知の通りでありまするし、また今後森林開発公団がこの種事業をやっていくという場合は、単にこれは資金供給機関的なものであって、二者契約をやるにいたしましてもあるいは三者契約をやるにいたしましても、単にこれは資金を出すだけであって、従来と違って官行造林部面の運営というものが公団に出された場合には、非常にずさんな形になる危険性を持ってくるのじゃないか、こういうふうに思うわけです。同時にこの法案については国会の審議のさなかであるにもかかわらず、林野庁の方では「水源造林のしおり」というものを印刷されまして、各市町村に全部配っておるわけです。この中身を見ますと、もうすでにこの法案については四月一日から実施されるかのごとく、従って「水源造林のすすめ」という冒頭のところでは、「この四月一日からは、国の機関である森林開発公団が必要な資金を全部出すことになりますので、土地の持ち主や造林の能力のある人は公団と分収造林契約を結んで造林をするようにしてください。」こういうことで、今国会の審議のさなかに地方自治団体の公的な機関にこれを送って、そうして着々と既成の事実としてこの方面の仕事を進めていくというのは、むしろこれは実態としては国会軽視の形になるのじゃないかと思う。しかも林野庁関係の新聞を見ると、すでに北陸方面で申し込みの第一号があったとかなんとかいうことが書いてあるやに聞くのですけれども、いずれにしてもこれは今後慎重に審議をしたいと思っておる問題でありまして、こういう軽率な林野庁の態度というのは、国会の審議のさなかに、非常に国会軽視の問題だと思いますが、いかがです。
  88. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ごもっともなお尋ねですが、由来予算が通りました後も、国の仕事がすぐ年度初めから施行されないうらみがあって、せっかくの計画が年度半ばごろまでも放置されるということは、非常にいけないことでありまして、従って幸いにしてこの法案が通りました暁におきましては、一日も早く水源林造林が実行されていくように、あらかじめ旨を述べておくということは、必ずしも私は軽視の問題ではないと思うのです。それがほんとうに予算を取り、法律を施行して、敏速に四月からやろうということであれば、一日も早く水源林造林に行くというような準備をしておくということでございます。不幸にしてこれが通りませんと、あるいはおくれたということになれば、それだけ施行がおくれるわけでありますが、それにしても趣旨を鮮明にしておいて、通った暁には早くやろうということでありますので、その点は御了承を願いたいと思います。
  89. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 それはまことに言いのがれでありますが、国会との関連においては私はむしろ大臣としては行き過ぎの点を戒めるという気持がすなおであろうかと思う。私どもこの官行造林の関係の仕事を森林開発公団でやらせるというこの理由が、どうも政府提案の法案の説明等を見てもはっきりしない。大臣が川俣委員の質問に対して答えた中でも、これは国がやっても公団がやってもえらい変わりがないのだ、ただ何か能率が少し違うようなお言葉がちょっとはさまったようでありますけれども、それであるならば従来の通りなぜ国でやらないのかという反論にも相なるわけですし、同時に従来御承知のように、官行造林の場合の優先順位というものがありまして、これは市町村の公有林というものを中心にし、水源涵養上、実際に全体計画の中で私有林等を含まなければならぬ場合には、私有林も含んでもよろしい、こういう優先順位の問題が従来からあったのでありますけれども、今度の水源造林の考え方を見て参りますと、五町歩以上の団地であれば、市町村の山であろうと、部落有の山であろうと、会社の山であろうと、個人の山であろうと、これはいずれもできる、こういう感じがいたすわけでありまして、従来の市町村あるいは部落等の持っておった公有林的な性格のものを中心にし、地方団体の財政の寄与というふうなものをかなりやってきた百行造林というものが、今後いわゆる山持ちのための水源造林という形に切りかえられていく危険性を十分持ってくるのじゃないかと考えておるわけですが、その点はいかがでございましょうか。
  90. 周東英雄

    ○周東国務大臣 御意見でございますが、私はそういう点には山持ちの問題であろうが、地方公共団体の所有であろうが、多分に公共性を持つ水源林としてこれを造林していくことが一番治水の上からも必要であり、また水源を涵養するという上に必要だということで、事業を進めていくということはいいのじゃないか。そういうときにまで山持ちのものをやってはいかぬとか、公共団体だけやれというようではいけないのじゃないか、かように思っております。
  91. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 これは官行造林の歴史的な経過というものを考慮に入れずに、端的に言うならば、従来からタブーになっておる山林関係の問題の中で、特に政府与党の立場から言うならば、山持ちの立場に立ってこの種造林事業を推進していくという底意が、明らかにこの問題の中にも出ておるというふうに私は判断をいたすわけであります。分収歩合等の問題についてもこのパンフレットの中では二者契約、三者契約等の場合に、土地所有者が四〇%ないし三〇%、造林者が二〇%ないし一〇%、費用負担者の公団が六〇%ないし四〇%というふうなことをこの印刷物の中にも書いておりますけれども、一体これはいかなる算出基礎に基づいてこういうふうに書いておるのか、その辺のところを伺いたい。
  92. 山崎齊

    ○山崎政府委員 先ほどお話のありました所有関係につきまして簡単に申し上げますと、二十三万二千町歩の水源林造林を予定いたしております。このうちで九万一千町歩は市町村有林でございます。部落有林が約五万町歩、残りが私有林というふうにわれわれは考えておりまして、やはり市町村有林を主体にして進むというふうにわれわれは考えておるのであります。  それから分収率につきましては、その投ぜられる造林費、その土地の価格、私有林でありますと税金、そういうふうなものがどういうふうに投ぜられるかというようなことを検討いたしまして、今お話のあったような大体の範囲に入ってくるのではないかと見ているわけであります。
  93. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 官行造林の問題は、営林署あるいは担当区等の従来の業務の内容から見ても、今後やはり森林開発公団にこの仕事が移されるということになると、全国的には営林署関係で約二十程度、あるいは担当区関係では百をこえる程度の統廃合というものが起こってくるのではないか。あるいはまたこれに従事する相当大量の従業員の首切り問題というふうなことをはらんでくるのではないか。こういうことが当然こういう機構改変の行なわれる場合には予想されるわけですが、この問題については一体どういうふうにお考えですか。   〔赤澤主査代理退席、主査着席〕
  94. 山崎齊

    ○山崎政府委員 この事業を従来の営林署の機構によりまして従来通りやっていくというふうに考えました場合でも、従前は一件当たりの契約面積が四十町歩、五十町歩というような大面積のものであったのでありまして、事業を計画的にやっていくというようなことも可能であったのでありますが、今後五町歩ないし十町歩というような小面積のものが全体の契約件数の中で七十数%も占める。しかも奥地に分散いたして点在するというふうな形態になって参りますと、従来のように造林事業の実行まであるいは維持管理まで、従来の機構によってやっていくということは非常に困難であり、また造林事業の実態にも適合しないというふうな考え方に基づいて、このやり方を変えていくというふうに考えたわけであります。この人員の問題につきましては、定員内職員あるいは常勤労務者等合わせまして約五百名ばかりがこれに関係いたしておりますが、造林事業といたしまして、新柄をやめましても、あとの従前やったところの保育管理等の仕事も残っておりますし、またそういう地域におきましては民有保安林の買い入れ等の業務も進んでおるというような関係からいたしまして、営林署の改廃の問題は全然起こらない。担当区につきましてもまず十年あるいはそれ以降の時期におきましてはともかくといたしまして、当分の間はこういうようなものによって動くようなものはないというふうに考えております。また国有林作業員につきましては、国有林自体といたしましても、造林事業を今後面積も拡大し、あるいはまた造林の仕事自体の質的な向上もぜひともやらなければいかぬというふうに考えておるのでありまして、既往の作業員は国有林本来の仕事の方に吸収していく、転用していくということを考えておりまして、これによって首を切るようなことはないというふうに考えております。
  95. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 官行造林関係の仕事を、森林開発公団の延命策として移していくということには、私どもは基本的に反対であります。同時に森林開発公団の仕事がなくなってきて今後どうするかという問題については、たとえば今後道路予算については、非常に画期的な予算計画をして道路の整備をやろうというふうなことを考えておるわけですけれども、たとえばそういう一環として道路の整備を画期的なこれからの出資と見合って——私ども地方におって痛感をすることですけれども、漁村地帯あるいは山間部、いろいろなところで産業道路的な道路の整備が非常に待たれておる地域が多い。農業と他産業との所得格差の是正とかなんとかいうことを言いますけれども、何といたしましても経済の動脈は道路交通、港湾の問題にあるわけでありますから、この際森林開発公団が従来から予定をしておったそういう関係の部面の仕事が軽少になってきたということであるならば、これからの農林水産関係の基本的な基盤の重要な一環としての道路関係、こういうものについての産業道路的な性格の部面について積極的に農林省としても腹案を立て、これを建設省でやるか、あるいはこういう公団的なものでやるかは別として、私ども非常に不便なところに足を踏み込むごとにそういうことを痛感しておるわけであります。ことにこれからの道路に関しては相当の予算が組まれておるわけでありまして、今までの考え方では国道や県道を中心にしてやろうというのですが、そういうことを上からおろしてくると同時に、また下から僻地あたりをささえにして、そういう方面からも迎え水をやっていく、相呼応して道路の全体的な整備をはかっていく、そういう観点で森林開発公団等の活用部面もやはり考えていくべきではないか、こういうふうに思うわけですが、この点について一つ大臣からお答え願いたい。
  96. 周東英雄

    ○周東国務大臣 林道の問題については、今の林道に関する補助、助成というようなものでは非常に制約があったことは御承知の通りであります。今後の問題といたしましては山村の開発と申しますか、そういう広い意味合いにおける山村道路というような形に林道の助成を考えていきたい。ことしはそういう点に関する予算も組んでおるわけであります。
  97. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 最後に水産関係について簡潔にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど冒頭に基本問題についてお尋ねをしましたときに、大臣からも少しくその内容に触れられたのですが、今年の三月には漁業制度調査会の方から答申が出される予定でありまして、それに基づいて漁業法改正の問題、あるいは水産協同組合法の改正問題、あるいはまた資源保護法の改正問題等、各般の問題について漁業全般の法制改正をやらなければならぬという段階にあるわけです。私ども地元の関係から申しまして、非常に関係の深い真珠関係の問題について、御承知の通りここ数年来真珠の輸出産業における比重が非常に増大をして参りまして、たとえば昭和三十五年度の真珠の輸出額を見ますと、百十五億二千五百万円というふうな巨額に上っておる。本来真珠は輸出産業でありますから、この方面の比重が相当ふえるのは当然でありますが、過去の伊勢湾台風、あるいはチリ津波の災害等を乗り越えて、日本の農林水産関係における輸出問題の中では、非常に大きな比重を占める産業として今日発展をしてきておるわけであります。そこで今後の真珠産業の発展の問題についてはいろいろ考えなければならぬ問題がありますけれども、その重要な一環として真珠事業法の改正問題というふうな問題も出ておりますし、例の漁業権関係では区画漁業権をどうするかという問題も出ておるわけでありまして、こういう今後の真珠産業の発展問題についてどういうふうにこれから対処されようとするのか。同時にこの真珠の輸出先の非常に重要な部分を占めておりますところのアメリカ方面において、業界紙を見ますと、米国の税関の方で一部の日本業者に対して追加税の徴収を行なっておる、これは二、三年前から問題になっておりまして、日本の真珠輸出組合としても関係方面と折衝しながらこの問題解決に当たっているやに聞いておるわけでありますけれども、この問題について農林省として具体的に関係方面とどういうふうに折衝されて処理されてきておるのかということを、この際お伺いをしておきたいと思うのであります。
  98. 周東英雄

    ○周東国務大臣 真珠というものが最近輸出産業としてますます重大な地位を占めてきておることは御指摘の通りです。これらに関してあらゆる観点から将来の真珠事業のあり方について考えなければならないと思っておりますが、ただいま御指摘の真珠事業法の改正というものにつきましては目下検討中でありますが、今国会には提出するまでの手はずになっておりません。なおほかの点については局長から答弁いたします。
  99. 高橋泰彦

    ○高橋政府委員 お尋ねのアメリカにおきまする真珠に対する輸入関税の問題でございます。御承知のように現在では輸入関税が従価五%ということに相なっておりますが、ただ日本の生産者が輸出業者を兼ねてアメリカに支店を置いて向こうに真珠を輸出する場合に、この算定の基礎につきまして、他の輸入専門業者との間に評価の問題について若干問題があるようでございます。具体的に申しますと、ネックレス一連百ドルという場合に、通常の真珠の場合それは安過ぎるのじゃないか、支店を置いてあるというだけの理由で不当に安いのではないかというようなことで、たとえば百二十五ドルに評価して五%をかける、こういったような向こうの関税をかける場合の評価の問題について、若干私どもの業界向こうの関税との関係で問題があるようでございまして、ただいま真珠の輸出組合がそこいら辺の事情対策につきまして、大使館その他に調査を依頼しておる段階でございますので、そのような情報を得た上で関係方面と連絡の上善処いたしたい所存でございます。
  100. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 以上をもちまして本委員会における質問を終わりたいと思いますが、農林水産関係の基本政策あるいは法案に関連した各般の問題については、農林水産委員会というホームグラウンドがありますから、いずれその際あらためて具体的にお伺いすることにいたしまして、私の質問を終わります。
  101. 三浦一雄

  102. 永井勝次郎

    永井分科員 先日農林大臣に国産大豆の問題についてお尋ねいたしたわけでありますが、大臣及び食糧庁長官から三十五年産の大豆は三千二百円農家手取りを保障するという御答弁があって、この点はその限りにおいてわかりました。三十六年度大豆の価格を三千二十円と下げておるわけです。この一年の間に諸物価もずっと上がっている、そうしてそれに若干の黒目の大豆を白目にするとかそういう耕種肥培の関係をちょっと手をかけたという程度でそんなに顕著に値段が下がるのかどうか。諸物価が上がっているときに三千二十円で貿易自由化によって農家に打撃を与えないんだという保障が、この価格保障で十分であるとお考えになる根拠、値下げをした根拠を示していただきたい。
  103. 周東英雄

    ○周東国務大臣 この点は永井さんも御承知の通り支持価格であって、農安法による最低支持価格というのは三千二十円になります。予算上の買上価格をそうきめておるわけでありまして、もしそれ以上に売れれば何も三千二十円に買う必要はない。最低支持価格をそうきめておるわけであります。その点は御了承願いたい。
  104. 永井勝次郎

    永井分科員 三十五年産は農家手取り三千二百円を保障して、そうして支持価格であるから三十六年産は三千二十円、こういう価格で保障するというのは、百八十円も一挙に値下げをした。値下げしても十分農家に打撃を与えないんだというこの経済的な根拠、価格算出の基礎をお示し願いたい。
  105. 周東英雄

    ○周東国務大臣 これは従来の実際の取引価格を標準にして過去三年の平均をとって三十六年産について三千二十円ということを出しておるわけであります。
  106. 永井勝次郎

    永井分科員 過去の実績からいえば三千二百円なんだ。それはそういう基礎できめられたのですが、三十六年度三千二十円、これで十分だ、こう算出された基礎、それを伺いたい。
  107. 周東英雄

    ○周東国務大臣 それは従来から支持価格の最低の部分、それ以下に下がるという場合を、支持価格は農安法によって従来からのほかの関係と同じようにきめておるわけであります。その間における実際上の取引がそれ以上高く売れれば、これは自由取引でよいのでありますが、それ以下に下がった場合における最低支持価格を三千二十円にしておるわけです。
  108. 永井勝次郎

    永井分科員 三十五年産は三千二百円で最低保障しているでしょう。最高は何ぼ売れても三千二百円だけだということじゃないでしょう。三千二百円というものは三十五年産については保障しているのでしょう。ところが三十六年産になると三千二十円の最低価格保障ということになるから、一挙に百八十円下がるんじゃないですか。だから下がってもいいんだ、これで十分なんだというその基礎をお伺いしたい。
  109. 周東英雄

    ○周東国務大臣 それは三十五年席は、こういう制度を今新しく考え方を立てます前における、実際上の自由化前の一つの取引の実際価格の平均をとって買い上げますという従来の政府の約束を、そのまま実行するのでありまして、三十六年産、これからの問題は新しい見地に立って取引価格がそれ以上に取引されるということは、これは望ましいことであります。しかしそれ以下になった場合も三千二十円を、最低価格支持として保障するという農安法の規定によっていくのでありますから、私は別にこれに対して不当はないと思っております。
  110. 永井勝次郎

    永井分科員 そこがわからないのですよ。過去の三カ年の実績は三千二百円を保障するのが当然だ、こういう実績が出た。貿易自由化をするについては農家にしわ寄せをしないんだという前提条件貿易が自由化されたわけです。もし貿易自由化が国内産業影響を与えないんだという立場とするならば、しなければならぬものはたくさんあります。大豆なんかよりも先にやらなければならぬものがたくさんあります。たとえば鉄鋼なんか国際価格だって総理大臣みずからおっしゃっていられるわけですから、それじゃこの部分から自由化したって差しつかえないわけです。そういうものを差しおいてまず第一番に大豆類が出された。これは国際価格からいって非常な打撃である。打撃であるがそれはしわ寄せしないのだという保障の上に立ってこれは何したのですから、農民はこれを了承していたわけです。ところが過去の実績は三千二百円、それが来年になったら、三千二百円というのは三十五年産だけだ。もう量が少ないんですからね。ことしはもう量が少ないんだから、そういうことで——三十六年産から一挙に一俵で百八十円下げるのですから、過去の実績を無視し、それから貿易自由化によるしわ寄せをしないという公約を無視し、そして諸物価が上がっておるのに、逆に大豆だけ引き下げるという、そういう計算基礎が、先ほど言った前提条件に立ったら、農民は了解しないでしょうし、われわれも理解に苦しむわけです。ですから、これに当然の理由があるなら別ですけれども、当然の理由がなかったら、やはり過去の実績によって三千二百円保障してもらわなければならない。それ以上保障してもらわなければならぬ、こう思います。
  111. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話ですが、実際上の取引価格は、御承知の通り、輸入大豆は二千八百円ですか、そのくらいです。それに対して、実際上の取引の関係は三千二百円程度になっておりますので、その差額関係を見て、三千二百円で買っておる。三十六年産、これからの大豆については、やはりある程度これからの取引の実績を考えますが、しかし、輸入大豆の二千八百円というような関係よりも上の三千二十円を支持価格としてきめていっておるのであります。だから、私は実質的には日本の大豆の生産費その他との関係もございますが、取引の実際価格というものとの幅及び輸入大豆の価格というものを考えながら、三千二十円以上は保障する、こういう形で新しいこれからの生産大豆についての処置を、これからの問題ですから、考えていっていいと思います。
  112. 永井勝次郎

    永井分科員 この問題はもう少し時間がかかるから、ほかに進めなければならぬから、あと回しにします。しかし、これだけの合理化をするんだから、この一年間に合理化して、三十五年の三千二百円と三十六年度の三千二十円というものは、これで引き合うんだ、合理化によってそれだけは消化されるんだというここに合理化の内容があれば、これは別ですけれども、過去の実績から見たって、条件から見たって、それは値下げできる条件経済環境の中にないのに、それを下げるということは、了承しません。これはまた別の機会に伺います。  そこで、三千二百円の価格で農家手取りを保障するということが、先般の答弁ではっきりしたわけでありますが、この農家手取り三千二百円というのは、農家庭先の価格のことであるか。これはわれわれは農家庭先の価格である、こういうふうに了解しておるのですが、この点はいかがですか。
  113. 周東英雄

    ○周東国務大臣 こまかいことは事務に答弁させますが、大体庭先の価格でございます。
  114. 村田豊三

    ○村田説明員 ただいま大臣からお答えした通りでありまして、農家の庭先、いわゆる農家手取り三千二百十円というものを保障するという態度で、ただいま大蔵省と折衝中でございます。
  115. 永井勝次郎

    永井分科員 そうしますと、三千二百円農家手取り保障ということは、農家庭先である、こういうことですね。——了承いたしました。  そこで、その大豆の品位の問題ですが、これは素俵で三千二百円、こういうことでわれわれは了承してきたのでありますが、素俵三千二百円ということでよろしいですか。もし大臣わからなければ、村田部長からでけっこうです。
  116. 村田豊三

    ○村田説明員 従来農協系統で、あるいは農協以外の集荷業者もございますが、実際に末端で農家で取引をいたしております姿で三千二十円という形でございますので、一応素俵の包装込みという解釈でいたしております。
  117. 永井勝次郎

    永井分科員 重ねて何しますが、新聞でちらほら見るところによると、作り二等だとかこういうことが出ていたのですが、そうでなくて素俵である、こういうことですね。
  118. 村田豊三

    ○村田説明員 その点は、過去におきまして取引の形態が、御承知のようにいろいろ違っておりますが、これらの点は、従来も御承知のように農協あたりで共同計算方式で取引をしております。その実態に即応した過去の実態をそのまま認めて農家に保障できるような措置を講じたい、かように考えております。
  119. 永井勝次郎

    永井分科員 取引といっても、農家との間の取引とか、商人間の取引とか、輸出関係の取引という工合に取引段階がいろいろあるわけです。そうすると、今言った村田部長のは農家との間における、生産者との取引における段階、こういうことですね。そこのところははっきりしておいてもらわぬと……
  120. 村田豊三

    ○村田説明員 御指摘の点、非常にこまかい取引の実態になるのでございますが、いわゆる作り二等の取引のことを御指摘になっておられるのかと思います。それらの点につきましては、その経費の方は従来の集荷業者が負担をしておるものでございます。当然集荷業者にその分は入ってくる取引の実態になっております。
  121. 永井勝次郎

    永井分科員 それでは三十五年産大豆の取引は、農家庭先の価格である、それから取引の大豆の品位は素俵取引である、こういうふうに了解してよろしいですか——というより、そういうふうに今までの答弁ではっきりしましたから、これは大臣よく確認しておいて下さい。  そこで、ちょっと主査にお尋ねしますが、農林大臣は退席されるのですか。
  122. 三浦一雄

    ○三浦主査 ちょっと今緊急な用があるということで、退席したいという希望でございます。
  123. 永井勝次郎

    永井分科員 それでは僕の質問の間たけ——あとは出てくるのですか。
  124. 三浦一雄

    ○三浦主査 あとには出て参ります。
  125. 村田豊三

    ○村田説明員 先ほどの質問の素俵取引と包装取引の問題でございますが、先ほどもお答えいたしましたが、取引の実態に即してその点は処置して参りたいと思います。
  126. 永井勝次郎

    永井分科員 通産大臣にお尋ねいたしますが、午前中の質問に引き続きまして、本年は国際貿易の市場は相当激烈になる、こういうことは予定されておられることと思いますが、この点はどうです。
  127. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはりドル防衛の見地から、アメリカが相当海外市場において輸出ドライブをかけて参るということが予想されますので、その意味においては国際貿易競争が激化するということを覚悟していかなければならぬと考えております。
  128. 永井勝次郎

    永井分科員 まあ形容詞でいえば、激化して参る、大臣もわれわれも同じ理解だと思う。それならば、その激化の形がどんな形で出てくるか、地域別にあるいは品種別、品目別にいろいろ違うでありましょうが、総括して具体的にどんな形で激化の姿が具現してくるかということについて御見解を伺いたいと思います。
  129. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局どの市場におきましても比較的よいものが廉価に売りさばかれるということになりますれば、その商品が一番強いわけであります。そういったような意味におきまして、アメリカ輸出競争力が、まず良品廉価というような点でくるのではないか。それからまた、買う方からいうと、外貨の持ち合わせがない、そういう場合に条件を緩和して、そして延べ払いでよろしいとかいったような支払い条件を緩和することによって、相手方の魅力を引きつけるということに参りましょう。まあ各品物によってそれは一様でない、地域によっても一様でない、かように考えております。
  130. 永井勝次郎

    永井分科員 そうしますと、対米貿易関係においては、日本輸出はどういう品目が伸び、どういう品目が横ばい、どういう品目がへこむ、こういうふうに選別されておられるのか、伺いたい。
  131. 今井善衞

    今井(善)政府委員 対米貿易につきましては、昨年の下期からやや停滞ぎみなのでございます。その原因は、アメリカ景気の停滞と、それから特に日本の対米輸出が昨年の上期に伸びましたので、その結果、日本商品につきましてのストックが相当向こうとしてふえてきたという関係で買気が落ちたということでございまして、従来御承知のように対米輸出品目として一番大きなものは繊維品でございます。次に雑貨、それからトランジスター等の軽機械という形でございまして、品目としては非常に多種多様な品目がございまして、やはりそれらのものが景気の立ち直り、特にその商品在庫がはけるに従いまして輸出が伸びるものと考えております。
  132. 永井勝次郎

    永井分科員 特に影響を受けるもの、これは新しい方向としては運動具、たとえばグローブとかそういうものも相当出るようなんでありますが、そんな関係はどうですか。どういう品目は伸びる、どういう品目は横ばい、どういう品目はへこむ、こういうことを簡単に品目別に言ってもらえば、そんなにたくさん品目はないのですから、実情をお示し願いたいと思います。
  133. 今井善衞

    今井(善)政府委員 大きな品目としまして繊維でございますが、繊維の一次品と申しますか、織物関係につきましては、これは対米綿製品の交渉がわが方に有利に解決できますればやはり伸びる。二次製品につきましてもこれは同様だと思います。それから毛織物につきましては、現在例の向こうのボイコット運動等がございまして、その余波を受けましてあるいはちょっと減退するかもしれぬ。それから雑貨類でございますが——合板等につきましては需要が幾らか停滞しておる、それの余波を受けるのではないかと思います。それからトランジスターにつきましてでございますが、これは従来非常によく伸びております。ところで現在業界からの輸入制限運動等がございまして、これはいろいろ問題がございますけれども、やはり伸びるのではないか、かように考えております。そのほか軽機械類、ミシン、双眼鏡、カメラこれらはやはり在庫調整が済みますれば伸びていくというふうに考えます。あとは、去年非常によけい出ました鋼材につきましては、これは向こうの市況が立ち直って参れば出るかもしれませんが、現在のところ非常に市況が悪いということで、鋼材等については減るのではないか、かように考えております。
  134. 永井勝次郎

    永井分科員 品目別に大体了承されます。いずれにいたしましても、アメリカ市場においては西欧との競争に打ち勝つものが出ていく、こういうことが言えると思う。ですからアメリカ市場においてもヨーロッパと競争が激化してくるということは、これは計算に入れておかなければならぬと思います。それならばアメリカとの関係における輸入関係はどういうふうな見通しを持っておられますか。昨年に比べて、どういうものがふえる、あるいはどういうものが減ってよろしい、今の在庫状態から見て、どういうものが上半期なりあるいは第二・四半期なり下期なりにどういうふうにして動くか、大体全体の動きですね、そういうものを輸入立場から検討されているところを述べていただきたい。
  135. 今井善衞

    今井(善)政府委員 実は輸入の方につきましては、詳しくは検討しておりませんが、御存じのように、アメリカから入れておりますものは、食糧あるいは原材料が中心でございます。特に原料の自由化が行なわれますと、アメリカの原料は比較的安いという問題がございますので、やはり若干ふえるのではないか。一番大きなものといたしまして綿花あるいはスクラップ、そういったものでございますが、これは若干ふえるのではないか。それから小麦、大豆そのほか機械類というような格好になろうと思いますが、原材料を中心にいたしまして、やはり若干ふえると考えます。
  136. 永井勝次郎

    永井分科員 輸出関係については、アメリカ経済が立ち直れば、こういう前提を置いても、伸び悩む、相当に減ることを予定しなければならぬ、輸入関係は、昨年に比べると、機械類を初めとして原材料等の在庫が今少ないようですし、もっと入ってくる、こういう関係で、この点から見れば、対米輸出関係貿易関係からだけ見れば、逆調基調である、こういうことが言えると思います。それならばヨーロッパの関係ですが、ヨーロッパの関係については、輸出入についてどういうふうに検討されておるか、前年に比較してどうであるかという、大ざっぱでいいが、品目別にどういうものが伸び、どういうものが下がるか、こういうことを検討されたものがあったら、示していただきたい。
  137. 今井善衞

    今井(善)政府委員 実は輸入につきましては、国別の検討というものは非常に困難なのでございまして、実は数字をもって検討したことはないのでございます。特にAAに移行しますと、業界としまして有利なところから買い付けるということになりますので、従いまして、どこから買い付けるということは、的確に判断できないということになります。  ところでヨーロッパに対する輸出につきましては、昨年度これは非常に伸びまして、今数字は持ち合わせておりませんけれども、たしか三割五分程度は伸びておると思いますが、ことしにおきましてもやはりある程度——ある程度と申しますと、去年よりは伸び方は少ないと思いますけれども、少なくとも一割五分程度はふえるのではないか、かように考えております。その伸びる品物については、従来の商品から考えまして、やはり日本の得意とするところの繊維品なりあるいは雑貨、軽機械類、こういうものが伸びるのではないか。イギリス等につきましては、これはカン詰等ございますけれども、これはかりに大して伸びないにいたしましても、その他のものでやはり伸びるのではないか、かように考えております。輸入につきましては、大体向こうから機械類その他半製品を入れておりますが、これはふえると思いますけれども特に著しくふえるということはないと思います。
  138. 永井勝次郎

    永井分科員 西欧関係輸出は現在四億五千万ドル内外、これは一割ぐらいか、一億ぐらいか、輸出が伸びそう……。もっとはっきり言って下さい。それはあとでまとめて……。今四億五千万ドルぐらいある輸出が、それを伸ばすには、これは黙って手をこまねいていたら自然に出るというものではなくて、相当これは激しい競争になるだろう。そのなにをどういうふうに伸ばすかということについては、むろん向こう市場調査も必要であるし、たとえば塩化ビニールが出るようになったといったって、どこに持っていったって塩化ビニールは出るわけじゃないので、やはりそういう需要に即応していかなければならぬというわけですが、ヨーロッパに伸ばすための条件、そういうものは何であるというふうにお考えになって、どういう手を打つのか。それから、輸入関係について私は調査をしていないなんて、これは怠慢だと思うのです。輸入関係はグローバルで輸入するのだからどこから輸入するのかわからぬというような、そんなのんきな話は私は言えないと思う。常に出し入れをにらんでおいて、ここは輸入超過になっているからここへもっと突っ込めというように、そうなれば突っ込む条件があるのですから、そういうことをにらみ合わしてやっていかなければならぬ。片目つぶって貿易をやるといったってこれはだめで、両目を開いてやらなければならぬ。それでヨーロッパに対して伸ばすという予想を立てている以上は、どういうふうにしてどういうものを伸ばすのだという、もっと具体的なものを示してもらいたい。
  139. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ヨーロッパのおもなる諸国にはいずれも対日貿易におきましては差別待遇をしておる現状であります。そこで、この問題はやはりわれわれの方といたしましても自由化を急ぐとともに、ガット三十五条援用の問題を解消してもらって、そしてお互いに平等の立場日本品を迎えてくれるというその基礎を作るのがまず先決条件であると思いますが、そのためには、まず主要国のうちでもイギリスを中心といたしまして折衝をする必要があるのじゃないか。ある程度の意向も向こうに動いておるようでございますが、いずれにいたしましても、今後十分その点をもっと詰めまして、そしてその一角から打開する必要があるのじゃないか、かように考えるわけであります。品目別のことにつきましては局長から申し上げます。
  140. 今井善衞

    今井(善)政府委員 イギリスにつきまして向こう側がガット三十五条を援用いたしますとともに、通商協定を毎年取りかわしておりまして、向こうは品目別にこういうものを買う、こういうものを輸入許可する、こういうものについて日本も買ってほしいというふうな商品別の協定がございます。その協定は毎年お互いに話し合って、全体の数量、金額をふやしていくという立場で毎年々々ふえて参っております。その際に一番問題になりますのは、このイギリスがIMFの八条国を宣言いたしまして、ほかの地域にはすべて輸入を自由にしておるにもかかわらず、日本だけに対しては三十五条を援用して非常にシビアな輸入制限を行なっているというような現状でございまして、従ってその三十五条の援用の撤回とともにそういう交渉を有利に進めていかなければならぬ。その場合にやはり品目的には食料品あるいは繊維製品、雑貨、そういったものが中心でございます。  それからフランスにつきましても同様の通商協定がございまして、品目別に話し合って輸出を伸ばしていく、フランスに対しましては生糸であるとか、絹織物だとか、あるいは雑貨だとか、そういったものが中心でございます。ドイツにつきましては、これはそういう協定はございませんけれども、向こうはすでにIMF八条国に移行しておりますにもかかわらず、日本だけに対しまして六品目について相当厳重な輸入制限をしておる。その六品目につきましては、日本として一番輸出可能の有望の品物でございまして、それらにつきましては向こう輸入数量をふやさせるように毎年々々交渉をする。かようにそれぞれの国と交渉しながら日本品をよけいに買ってもらう努力をしておる次第でございます。
  141. 永井勝次郎

    永井分科員 ヨーロッパとの取引は共同市場の関係もあり、自由連合の関係もあって、あそこはぽつんぽつんと品物をやったってなかなかいけないのです。ワクを設けて、ワク内の取引をやっておるので、まず貿易拡大するにはその国のワクを拡大していくということから始めなければ貿易拡大はヨーロッパ向けについてはできないと私は思う。それで、そういうことは主として政府関係になるんじゃないか。八条国へ移行する問題で、ガット三十五条の適用除外の問題でもこれは非常に政治的な関係があって、西ドイツが八条国に移行しておるのに日本に対して制限するというけれども、日本が三十五条の適用を受けておるのにこっちが制限をやって、一方的にお前の方は自由じゃないか、こういうことはいけない。当然なんで、ヨーロッパの関係においても市況関係からいえば、イギリス、イギリスと先ほどから言いますけれども、イギリスはそんなに期待できないのではないか。イギリスよりもドイツあたりが、たとえば食器の関係だとか、おもちゃの関係だとか、くつ下の編機であるとか、こういった需要がもっとうんと多いということでもあるし、経済的にも向こうはうんと力があるのですから、そういう関係で、繊維の関係でもドイツなんかにはもっと入るんじゃないか。ねらいをもう少し西独に向けて、そうしてワクをふやしてそこへ突っ込んでいく、こういう方向をとらなければヨーロッパはそんなに伸びないかと思いますが、この点はどうですか。
  142. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私がイギリスと申しましたのは、イギリスが三十五条の援用を撤回すれば数国がこれに右へならえをするという情勢に相当あるようでありますから、これは一つの大きな目標だと思っておるのであります。西独につきましても、御指摘のように、いわゆる経済外交交渉によって打開していく必要があろうかと思います。西欧の諸国が何がゆえに日本に対してかような差別待遇をするかと申しますと、日本それ自身が非常に外国品に対して差別待遇しているじゃないかということが共通の一つの理由としてあげられておるのでございますから、同時にわれわれの方といたしましても、自由化問題はプラン通り実行しなければならぬ、かように考えております。
  143. 永井勝次郎

    永井分科員 そうすると、ヨーロッパ向けにおいても、私が今大ざっぱに言ったように、まず三十五条、八条の問題から解決していかなければならぬとすれば、なかなかそう急にはできない。国のワクをまず広げなければできない。そういう関係からいえば、そんなにおいそれと簡単には伸びない。しかし力が向こうはあるのですから、その力のあるところに消費が起こる、刺激していけば入る条件があるが、その努力が足りない。しかしそんなことを言っておっても伸びないから、当面の問題としては、この関係から機械その他の関係は相当輸入が刺激されていく、統計上見ても多いようでございますが、現在以上に伸びる条件はそんなにないと思う。ただ、東南アジアですが、東南アジアは先ほど来話を聞いておりましても、延べ払いをしなければならぬ、あるいは経済援助をしなければならぬ、こちらから前提条件を作らなければ向こうは買ってくれない、あるいは損する物を向こうから入れなければいけない、いろいろ前提条件があるのですから、そうすると、そういう関係政府が腹をきめてやらなければいかぬ。延べ払いなら外貨をどのくらいのワクの中で、どれだけの期限延べ払いしてよろしいという大体のワクを与えて、そのワク内で商社が自由に活動できるような、そういう条件を整備してやらなければならないですが、その関係についてはどのくらいの腹が政府はすわっているのですか、伺います。
  144. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 東南アジア等におきましては、多くの国に対して御指摘のような経済援助をしながら輸出量を拡大強化して参る以外に良法はないと考えておりまして、従来からもその努力をして参っておりますが、一つ一つの場合に輸銀を通じまして、輸銀で審査をして、この問題の打開に努めている状況であります。
  145. 永井勝次郎

    永井分科員 今言ったように取引というものは商機があるのです。引き合いがあったらそれに即刻対応していかなければならぬ。そこは日本ひとりの舞台ではないので、アメリカも突っ込んでおるでしょうし、ヨーロッパの方も突っ込んできておる。そういう競争の中で取引をするのですから、延べ払いについては、即刻商社が出先で対応ができるような条件がなければならぬ。ところが日本の場合は四の五のいって、さっき言ったようなイランのようなのは、とうに商機を逸してしまっている。そういう政府やり方がブレーキになっておる。こういう関係があるわけです。でありますから、外貨のワクをどのくらい与えて、そうして延べ払いについてはどうするのか。経済援助、経済援助といいますけれども、経済援助の競争からいえば、とてもそれはヨーロッパの共同市場なんかと太刀打ちできるものではありません、アメリカ競争できるものではない。少ない資金をもって経済援助の一つの効果を上げるというためには、ぱらっと、目標を定めないで、その場その場で対象を見つけてやるというような、そんなまどろっこしいことや、むだなことをしていては、これはかないっこありません。でありますから、日本がどこの国をどういうふうに押えていくのだというねらいを定めて、そこに集中援助をするのでなければ、私は効果が上がってこないと思います。そういうかまえがないのじゃないですか。その点はどうですか。  それから経済援助はその国その国で——さあヨーロッパと競争する、アメリカ競争する。通産大臣日本は大したものだ、大したものだといやに自己満足しておりますけれども、競争場裏に出て、外貨の手持ちだって、競争にも何もなるものじゃありません。日本がわずか七億前後の経常資金をもって、これもどんどん赤字を出していって、あぶないような状態だ、そういう中に、六十億も七十億も、そしてまた共同市場という大きな背景を持ってやってくる国々と、どうして一つ一つ競争できると思いますか。ですから集中しなければいけない。だからワクをきめなければならぬ、そして即刻商社がそれの引き合いのときに、どしどしやっていけるような商機が必要なんです。そして集中しろ。こういうふうに考えるのですが、その点はどうですか。
  146. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 商社が独力で、自分の信用力をもってやるという限度におきましては、これは商売でありますから、商機を逸しないようにやれるのでありますけれども、やはり輸銀の資金を使うということになりますと、大体今までの方式をとる以外に適当な方法がないような気がいたします。ただ比較的迅速をたっとぶのであるから、手早く、審査をいたしまして、商機を逸しないようにしなければならぬと考えておるわけであります。
  147. 永井勝次郎

    永井分科員 大臣、私はこの関係については、三菱も三井も伊藤忠も丸紅も兼松も、そういった商社の関係の重役連中に会って実際の状態をいろいろ調べてきました。こういうことで延べ払いを商社の力でやれといったって、現実にやれないじゃないですか。やはり国の背景において、ある程度めんどうをみていくというようななにがなければお前はやりたければやれ、非常に不安定な取引先に、それも外国と競争しながらやっているところに、お前自由にやれといったって、やれるものじゃないのです。そういうところがちっともない。アメリカが現在貿易を振興させるというためには、どんな努力をしていますか。あれだけの力のある国でさえ日本にどんどんやってきて日本ではどういうPRをしているか。その商品見本市はどういう効果が上がっているか、小さいところまで調べていって、この問題が効果があるとなれば、すぐまねをして、膨大な資金でどんどんやっておる。ヨーロッパだって、イギリスはどうやっているかといえば、御承知のように、ドイツを学べ、そうして貿易を喜べ、そういうことで非常な国策として貿易をやっておる。ところが日本貿易はどうです。うんと伸ばさなければいけない。弱い力で、しかも相手の強いところに突っ込んでいかなければならぬというときに、その弱い力の通産大臣が窓口である。へっぴり腰で、のらりくらりしながら、おっかなびっくりで、七億の外貨を後生大事に持ちながらやっていたのでは、これは勝負になるものではありません。ですから、これはやはり腹を据えて、貿易日本の国策のよって立つ経済の大きな方向だというからには、それだけの努力と、それだけの一つの国の方針というものがそこに集中されなければ、漫然と手をこまねいて、問題が起こったらおれの方がするのだ、それが貿易振興の唯一の政策だということでは問題にならぬじゃないですか。ですから、東南アジアをもし伸ばすというならば、延べ払いの問題だって、損のいくものを輸入するのだ、あるいはプラント輸出に対するいろいろなコンサルタントの問題だって、あるいはアフター・サービスの問題だってやらなければならぬことが一ぱいあるじゃないですか。そういう関係について太刀打ちできるような一つの体制を整えることが必要だ、こう思うのですか、どうですか。
  148. 今井善衞

    今井(善)政府委員 お話非常にごもっともなのでありまして、私どももさらに努力をしなければならぬと思いますが、ただ、たとえばドイツあたり現実に延べ払いで出てきております場合には、主としてドイツの生産会社が自分の金融で出てくるというようなケースが非常に多いわけです。商品金融会社という輸銀式のものもございますけれども、むしろ自己資金で出てくるという場合が主体になっておるように考えております。それからアメリカも実は全部自己資金で出ておるのでございます。今までアメリカ輸出入銀行はございますけれども、これは従来海外の輸入業者の方にクレジットを与えておりますけれども、自国の輸出業者にクレジットを与えていない。従って、日本等に比べて非常に見劣りするから、もっと制度でもって輸出業者にクレジットを与えるようにしたいというふうな動きがあるほどでございまして、むしろ自己金融が主体になっておるのでございます。わが方におきましては、遺憾ながら担当の商社なりあるいはメーカーがそれほど力がないということで、国の財政投融資を利用する面が非常に多いと思いますが、私どもといたしましても、輸銀の金なり何なりできるだけたくさん、しかもこの運用につきましては、円滑に運用していかなければならぬ、かように考えております。
  149. 永井勝次郎

    永井分科員 アメリカやヨーロッパの商社は日本の個人商社と比較にならない。比較にならないが、向こうはそうやっているからとものまねばかりやっていれば、力のないものが負けていくのはあたりまえで、議論の余地がないと思います。そういう中を押し切っていく。それを押しのけてこっちが突っ込んでいくのだ。そうでなくても、実績からいえば、ヨーロッパの方は東南アジアに対して四十五億も五十億もの実績を持っているのです。日本輸出の総額ぐらいのものをあの地帯にひもつきにして持っているのですから、そういうところに突っ込んでいくというからには、プラントにいたしましても、アフター・サービスにいたしましても、もっと体制を整える必要があるでしょうし、あるいはクレジットの関係でも、いろいろ商社で足りない分は、独占資本の擁護にならない範囲におけるいろいろな国の施策というものがあると思う。そういう関係を無視しては、向こうでこうやっているから、こっちもその範囲でやるということでは負けるにきまっている。  豪州だって、豪州の取引はどういうふうにお考えですか。向こうは外貨が不足になったからといって、ことしは伸びないと思います。豪州は縮むと思いますが、その点はどうですか。
  150. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 第一点につきましては、乏しい資金量でろくなことはできぬのじゃないかと言いますけれども、しかしながらできるだけの資金量を備えまして、そしてプラント協会等の活動も大いに促進しておりますし、それからアジア経済研究所の活動も三十六年度においてもっと強化、拡大するようにしております。大体お話の方向には手順を一応そろえております。ただどうも足弱じゃないか、徴弱じゃないか、もう少し強化したらどうだというお話ならば、これはもう全く御同感でございまして、今後この線に沿うて努力したいと思います。  それから豪州でありますが、豪州は最近まで資源に対して非常に封鎖主義をとっておった。しかしそれではいかぬと思ったのでしょう。最近は鉄鉱資源やその他の重要資源を漸次公開するというような気運になって参りまして、つい二、三日前ですか、視察団の連中が向こうに出かけて参っておるというような関係もございまして、重要資源の獲得市場としてさらに従来よりも意義を非常に加重して参った、かように考えております。
  151. 三浦一雄

    ○三浦主査 永井さん、いかがでしょうか。もうすでに前後二時間ですよ。
  152. 永井勝次郎

    永井分科員 わかりました。そこで、なぜヨーロッパが対外貿易について強いか、あるいはアメリカがなぜ強いか。この力関係を私は分析する必要があると思う。アメリカはあれだけ国内に大きな消費市場を持っていて、それが一つのクッションになって、そうして外に出ていく。力の比較にはとてもならない。ヨーロッパはどうかといえば、貿易・為替自由化の前提条件として、西ドイツなりフランスなりあるいはイタリアなり、あそこの国々中心になって共同市場を作って、そして広域経済の基盤をとって、だんだんヨーロッパはいわゆる一つ経済圏としてやろう、こういうまでの下工作をし、基盤を作って、それから出てきておる。さらにそれだけでは足りないから、イギリスとも一緒になろう、こういうような動きさえある。ところがアジアにおける日本が、こんなちっぽけな小さい国で、そうしてことしの経済景気をささえる力にしましても、国内の消費の五〇%を期待しながら貿易を、経済成長をやっていくんだ。こんな情ないことで、そうしてあぶない橋を渡っていく。私は所得倍増がどんどん公約しているようにりっぱにできていけばお目にかかります。物価も上がらなければお目にかかります。また通産大臣が今、足弱がないか、そんなことはない、おれはしっかりやっているんだ、できるだけのことはやっているんだ。それで貿易が伸びればけっこうなんです。ですからことしの貿易がどうなるかということは、何カ月かたてば実績が出てくるわけですから、われわれが今地域別に大まかに検討した範囲において私は責任をお互いに負い合う立場において発言しなければいけない、その場のがれではいけないと思う。そういうことを考えていけば、私はアジアにおける日本というものは、外に伸びる力及び国内において生産を増強していく、そのクッションというものは、やはり広い地域における経済提携、地域なり経済力というものを結集していく方向にいかなければいけない。それを一人立ちしてアメリカ向こうに回す、ヨーロッパを向こうに回す、そうして戦うんだ。そんなこと言ったって、これは通産大臣がどんな力があったって対抗できるものじゃない。そういうふうな検討をして参りますと、どうしたってこれは中共貿易であるとか、あるいは東南アジアに対するいろんな施策であるとか、あるいはソ連との貿易であるとか、そういう関係をもっと角度を変えた立場で、アメリカの顔色だけ見て立ったりすわったりするようなこんな自主性のないやり方でなしに、やはりそれぞれの地域における経済圏というものを確立して、外に力を伸ばす、こういう態勢をとらなければいけないと思うのですが、この点については通産大臣いかがでしょう。
  153. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ヨーロッパはヨーロッパの理由があって一つ経済広域圏というものを結成しているわけであります。日本はいつまでも孤立した立場でどうするかというようなお話でありますが、日本日本の与えられた環境によって切り開いていくよりしようがない。そこでお隣の中共貿易の問題についてどう考えるかというお話でございますが、これはまだ政府間協定の段階ではないのでありまして、どこまでも民間貿易のベースによってだんだん拡大して参る。ちょうど貿易協定が中断されます前までは出入り合計一億四、五千万ドルまでいったと思うのであります。目標はたしか出入り合計二億ドル。それに比較して現状は微々たるものでございますから、あの当時の目標に達するためにも相当前向きの努力をする必要がある、かように考えますので、民間貿易の問題等についても強制バーターの制度を緩和いたしまして、できるだけ貿易を伸ばし得るように指導しているのが現状であります。
  154. 永井勝次郎

    永井分科員 この国際貿易の動くところ向かうところ、そういうものを展望したら、日本アジアにあって何をしなければならないかという、そこに一つの政策が出てこなければならぬと思う。みずからの運命はみずからが開拓しなければいけないが、それを日本の運命というものはみんなアメリカにおまかせして、アメリカからもう少し中共の脈を引いてみたらどうかと言われれば、そうしようかと腰を上げる、それはいけないと言われると引っ込む。中共に行ってごらんなさい。実際に中共の港に船の入らないのは日章旗とアメリカの星条旗だけですよ。あとの国々は、承認してなくとも、実際的にはみな船が入って取引をやっている、香港を通してやっている、いろいろなところを通して実際の経済的な効果を上げている。一切のものが動いてしまって、アメリカが動いたときに、それではというので日本がしり馬に乗って、何か金魚のふんのようにくっついていっても、そのときはもう手おくれなんです。日本アジアにおける日本という立場からは何といっても広域経済一つ経済圏というものを確立しなければならぬということはあたりまえのことです。流れるままに流れるだけというのなら別ですけれども、そういう通産大臣では私は困る、もっと意欲的なものがなければ困る。どこに日本貿易を伸ばすところがありますか。アメリカを向いたって、ヨーロッパを向いたって、東南アジアを向いたって、相手をしのいでやるというところは、今ずっと大まかに回っても、ないじゃないか。そういう立場にいて、それでもアジアにおける日本のなには台湾を相手にするんだ、韓国を相手にしていく、ICAの受注だけを唯一のしがみにして、ちっぽけなものにかじりついてやっていく。こんなことでは日本貿易の前途というものはまことに暗たんたるものがあると思うのであります。委員長が盛んに時間々々と言いますから、貿易の問題は、私はもう少し国際情勢を現実に把握して、その把握の上に立って、場当たりでなしに、日本経済的な運命をかけていくものが今後の貿易だと思いますから、一つ魯鈍にむち打って大いにがんばっていただきたいと思う。  そこで通産大臣、電気事業法はいつお出しになるんですか。
  155. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 公益事業法という形でやっておりますが、電気に関して特別の法制を考える必要はもちろんあると思いますが、ただいま考究中であります。
  156. 永井勝次郎

    永井分科員 その考究は十カ年計画ですか、二十カ年計画ですか。
  157. 大堀弘

    ○大堀政府委員 電気事業法案についてはかねてから検討を続けておりますが、何と申しましても基本的な法律でございまして、現在のところさらに問題を煮詰めておりまして、できるだけ早い機会に成案を得て御審議をいただきたいと思います。
  158. 永井勝次郎

    永井分科員 今までに何年かかりましたか。
  159. 大堀弘

    ○大堀政府委員 公益事業令は二十五年に出ておりまして、その後ポツダム政令全般についての臨時措置法が出まして、それが現在続いて効力を持っております。今日の情勢におきまして電気事業法を新たに制定する必要を考えまして、現在検討中でございます。基礎的な法律でございますので、相当検討に時間を要するわけでございます。
  160. 永井勝次郎

    永井分科員 電気事業法を今度の議会に出すと言ってから四つか五つの議会を経過しているのですよ。ちゃんと原案はできておる。それをあっちこっちから注文を受けて引っぱられてペンディングになっておる。基本法をそっちのけにして、今度の国会だってその一部分を何か出すでしょう。ちょびりちょびりとわけのわからないものを出してきて、なしくずしにやっていくということじゃ困ると思う。料金問題だって何だってこれだけ大きな問題になっているときに、やはり基本法が出てそれに基づくいろいろな検討がなされなければいかぬと思うのです。私は総括質問のときにちょっと問題に触れたのですが、通産大臣、いなかの方の電力料金が、その日の生活にも食うや食わずだという農家が一年に二万、三万という電灯料金を負担しなければ電灯がつかないというような状態になっておる。これでいいのですか。私はこういう実態をもう少し調べて、公益事業というからには、生活必需品ですし、せめて電灯については全部の者が同じ料金で享受できるように、それくらいの措置が公益事業の名においてなされなければいけないと思うのです。この点について、是正するならする、できないならできないということの決意をお伺いしたい。
  161. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 電灯のない地方、部落等はだんだん解消されつつありますけれども、まだまだその事実が残っていることはまことに残念でございます。できるだけさような場所のないように、担当の企業体を督励いたしまして目的の実現に努めたいと考えております。
  162. 永井勝次郎

    永井分科員 大臣、無電灯地帯の解消はまた別ですよ。私はそういうことを言っているのじゃない。それも問題があります。一つの電灯をつけるのに十五万、二十万の自己負担をしなければならないのですから問題がありますけれども、そういう若干の補助を受けてつけたところの電灯料金が非常に高いもので供給されておるということです。またその設備は、自分たちの受電組合ということで自分たちで修理しながら電灯の供給を受けておるのですから、年月がたちますとこれを更新しなければならぬ。更新するときには補助がないのです。そうすると、ちょっとした部落でも電灯をつけるだけに七、八百万とか一千万だとかという膨大な負担をしなければ、その設備の更新ができないというのが実態なんです。この問題をどうするのか。公益事業なら、せめてそういうところは均等な取り扱いにおいてなされなければならないのではないかという問題を言っているのです。無電灯地帯は無電灯地帯でまた別です。
  163. 大堀弘

    ○大堀政府委員 ただいま御指摘のケースは、農山漁村電気導入促進法という法律によりまして、農村の方が共同で受電設備を作って、一括して電気会社から電気を買って個々の家庭に配っておるというケースについてのお話かと存じますが、これにつきましては御指摘のように補修その他に相当の経費がかかるわけでございますが、これは電気会社に引き取ってもらいたいという御要望も最近ございます。この点につきましては、私どもも逐次その方向にいきたいとは考えておりますが、何と申しましても非常に広がった地域におきましてこれを一挙に買い取ります場合は、結局一般の需用家の料金負担においてこの問題を解決するという結果に相なりますので、一挙にこの問題を解決することは困難かと思いますが、できるだけ、経理的に許す範囲において逐次改善して参りたい、かように考えておるわけであります。
  164. 永井勝次郎

    永井分科員 私も一挙にやれなんということを言っているのじゃない。だんだんにおやりになってけっこうですが、だんだんにおやりになるとすればどういうふうにしておやりになるのか、具体的にお示しを願いたい。
  165. 大堀弘

    ○大堀政府委員 これは地域によりまして非常に事情が異なっております。たとえば九州の場合におきましては比較的処理がしやすい場合がございまして、これらにつきましては逐次その方向によって計画的に引き取らせていくようにいたしたいと考えておりますが、北海道地域等におきましてはかなり地域が広がって散在しておりますので、この場合は相当改善には時間を要するものと考えております。これは結局既存の需用家の負担において解決する以外にございませんので、現在はそういう方にはある程度は工事負担金という形において部分的に負担を願っておるわけでございますけれども、その工事負担金を全廃すれば結局一般の需用家に全部かぶせていくという結果にも相なりますので、その負担の公平を考えましてやっていかなければならぬと考えております。
  166. 永井勝次郎

    永井分科員 そうすると、全体の需用者に負担をかけるから部分的に負担をかけるのだ、そういうふうにおやりになるのですか。そういうやり方ならば僻陬の者は救われないのはあたりまえですよ。政府が金を出してやるとか、あるいは公益事業だから会社が全体の中でプールしてそれをやるというのじゃなくて、部分的にそれを処理するということなら何も政府の力を借りなくたって、自分の力があれば自分の負担でやれるのはあたりまえです。そんなことまでだんだんにやるなんて政府から干渉をされなくたって、力があればやります。貧乏な、その日の生活にも困る人たちが、電灯一つつけるのに何百万あるいは一千数百万という負担ができないから、この問題はできないでいるのじゃないですか。それならば経済的にどう措置するのだ、やるというからには政府がどれだけの措置をするのだ、あるいは会社にこれだけ負担をさせる、料金の上においてこう措置する、こういうことでなくして、だんだんにやるなんて、そんなことは政府から説明を聞かなくたって、黙っていたって、力があれば自分でやります。だから、経済的な措置をしておやりになるのかどうかということです。
  167. 大堀弘

    ○大堀政府委員 先ほど大臣からお話しがございましたように、全般といたしましては無電灯部落に対する電灯の導入につきましては相当の実績をあげて、日本はかなり高い水準になっております。ただ、地域によりましては、山間僻地に一軒々々存在しておりまして、配電線を引くには相当な電柱を設けて電線を引かなければならぬ。こういうケースがございますと、これを電気会社の負担においてやるということをいたしますれば、結局はこれは私企業でございますから全体の電気料金にかかってくるわけでございます。従いまして、できるだけその方向には努力させるようにいたしておりますけれども、具体的ケースとしては逐次やって参る以外にないと思います。
  168. 永井勝次郎

    永井分科員 大臣答弁でも局長の答弁でも、私の質問とそれから実態を把握しないのかあるいはとぼけて焦点はずれのことを言っているのか知らないが、無電灯の地区については相当の実績を上げている——実績を上げるも何もないですよ。一戸について農林省は一万五千から二万円の補助金を出す。実際かかるのは十五万、二十万かかるのです。貧乏でも、せめてラジオを聞きたい、せめては電灯をつけたい、こういうところから、借金して十五万、二十万の自己負担において、一万五千か二万の補助金で電灯をつけているのですよ。これを実績を上げているという、そういうもののつかみ方ではとんでもない話です。そういう設備をした、そうすると電力料金はうんと高い、そうしてその設備はみんな自分たちで補修し、管理していかなければならぬ、相当負担がかかってくる。ですから電灯一個について年額二万、三万という負担をしておる。その施設が腐朽してくれば、それを更新するために今度部落で一千万近くの負担をしなければ更新できない。更新するときには補助金がない、こういう問題で悩んでいるのです。これをプールした料金の中で——公益事業であるからにはこれは必需品ですよ。生活必需品であるのに、そこの人に負担してもらわなければならない、こういうことだったら何も政治でもなければ、政策でもありません。あたりまえのことですよ。だからそういう問題をどうするかということが一つ。それからそこに送電する料金が非常に高いんです。農家の使う基本料金等が一般のよりうんと高いのです。高くないと言うんだったら数字を示しますか、私は持っているんです。基本料金が四百七、八十円です。一日十分使っても二十分使っても、まぐさを切るためにちょっと使っても、基本料金というものはこれだけになる。ですから単価が非常に高くなっている。こういう関係において、電気を使うよりも、ヤンマーの発電機を使った方がずっと経済だ。こういうふうに電化を奨励しながら逆な方向にいく方が経済だ、こういうやり方をしている。これがいけないというんです。それを是正するのが担当である皆さん方のなにじゃないですか。
  169. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 多少言葉が足りたかったようでありますが、そういう問題の解消のために、特に従来の需用者にそのために料金を上げるとかいうように負担の増加をするということであれば、これは控えなければならぬ、こういうことを申し上げたようであります。そこで、従来の需用者に特別の負担をかけないで、会社の勉強によって、蓄積資産というものによってそれを吸収するということは、これは大いに促進いたしたいと思っております。
  170. 永井勝次郎

    永井分科員 通産大臣としてこれだけの仕事を一つやっていただけば、いかに零細な農民が喜ぶか、これは大きな助けだと思う。歴史に残る一つの業績だ、こう思います。そういうふうに一つがんばってやっていただきたい。それをやるための前提条件として実態をお調べいただきたいと思います。  私はこれで質問を終わりますが、私は総括質問のとき、消費物資はどのくらい上がっているか、あるいはサービス料はどのくらい上がるか、あるいは公共料金がこういうふうに上がる、あるいは独占価格が、どんなに生産性を上げても値段が下からない——それに対し物によっては国内値段が上がれば輸入するから、それによって値段を押えることができるんだ、こういうことであったから、それは輸入するためには外貨がどのくらいあるかということを検討しなければならぬというので、貿易の問題も触れたいと思ったんですが、そういうものは触れられなかった、総合的にそういう問題を検討できなかったわけですが、今貿易の問題を調べても、ことしは黒字ということはとうてい望みが薄い。赤字逆調に変わっていく、こういうふうにわれわれは考える。そういたしますと、経済企画庁長官なり総理大臣なり、皆が、物価は上がらないと言っているが、実際は上がっていっている。そうしてそのときになってみなければわからないような将来の問題について、貿易黒字だなんて、そのときそのときの場当たりのつけ景気を私はあまりし過ぎていると思う。所得倍増ということは、これは池田内閣の一つの専売ではなくて、技術革新という時代の所産なんです。池田内閣の功績でも何でもない、技術革新の時代の所産なんです。その時代の所産を、池田内閣はどう日本の政治の中に、経済の中にそしゃくして、これを正しく民生の安定、向上のために生かすかという問題が池田内閣の仕事だと思っているわけであります。それを、いかにも自分の手で所得倍増がなにして、貿易黒字で、日本産業は大したものだ、こう一人よがりしたって私はいかぬと思う。そういう意味において、私はもっと皆さんがまじめになって、どこに欠点があるか、どこに不十分な点があるか、虚心に、謙虚に検討していただくことを希望する次第であります。
  171. 三浦一雄

    ○三浦主査 足鹿覺君。
  172. 足鹿覺

    足鹿分科員 二十五日には、時間が参りまして、農林大臣等に対する若干の質疑が残っておりますので、まずそれを二、三伺いまして、そのあとで防衛関係について伺い、時間が許せば経済企画庁関係についても重要な関連がありますので伺いたいと存じます。  これは、いずれ機会があろうかと思いますので、きょうはくどくは触れませんが、いまだに昭和三十五肥料価格が暫定のまま推移しております。政府は、二月末ないし三月の初めには肥料審議会を開催して政府の考えを諮問すると伝えられておりましたが、一向にその動きはありませんが、いつごろどういう諮問をされようとしておるか、その構想はどんなものでありますか、ごくその中心について御答弁願いたいと思います。
  173. 周東英雄

    ○周東国務大臣 肥料審議会の問題に関しましては、私どももできるだけ早く開きまして、諮問を申し上げて正式な決定をいたしたいと努力いたしております。それは、何としても今まで肥料の合理化というものもなかなか進捗せず、いろいろの計画を立てていながら、なかなか肥料の値を下げられないという状況にありました。このたびはぜひとも一定の年限の間に早く合理化の実を上げて、そしてこの年次計画のもとに、年々どのくらい肥料が合理化されて、下げられるかということをはっきりと国民の前に見せて、将来は、その一定の年限以後の問題については、ほんとうに下げられた肥料価格で取引ができるようにしたい、そういう方向に向かってもっぱら合理化の促進、その計画の決定を慫慂しつつ今日に来ておったわけであります。大体の目安はついて、御指摘のように二月中にはお諮りができるように考えておりましたが、どうもまだ合理化の線につきまして意見の一致を見ない点がございますので、おくれておりますことを遺憾といたしますが、ただいませっかく促進をいたしておるような次第でございます。それならばいつごろかということについて、まだちょっとはっきり時間的に申し上げることはできませんが、三月中には何とかしたい、こういうような考えで進めております。今もっぱら各工場別の合理化の問題です。
  174. 足鹿覺

    足鹿分科員 肥料問題については基本的な問題が大体五つくらいあると思うのです。すなわち生産需給関係、また合理化関係は、ただいま農林大臣からお話がありましたが、これは大きな問題であります。また本年度予算とも、将来の予算とも非常に関係の生じますのは、いわゆる輸出赤字の処理の問題がございます。すなわち百十五億をめぐりまして、減税措置によるとか、いろいろ巷間伝えられておりますが、合理化の基本が定まり、それが具体的に実施をされまして、メーカーも国際競争に耐え得るような合理化が行なわれ、またその合理化の結果は、政府が農業基本法すらも考えておる段階でありますから、当然また相当額の適正な値下げが行なわれる、こういうことで、政府が責任のある基本方針と具体的の措置を伴わない限り、いたずらに問題解決をあわせるために、暫定的な措置でもって輸出赤字対策問題をやることは、私はよろしくないと思うのであります。それについては多く申し上げません。また別な機会に申し上げます。なお価格の算定方式、これは三十五肥料年度のもう末期に近くなってき、本年の水稲その他の作付を前にして、いまだマル公価格が決定を見ないというようなことでは、これは農民も、またメーカー側も、あるいは配給に当たっているものも、しごく迷惑しておるわけでありまして、こういう点について巷間バルク・ラインの方式を改訂する動きがあったり、あるいはマル公制度の一時停止の動きがあったり、非常に錯雑して、必要以上に疑心暗鬼を生じておると思うのでありますが、これらの既存の方針を堅持されるかどうか。また一部には肥料二法の廃止すらも主張しておる向きもあるやに思いますが、これらのただいま私が指摘しました輸出赤字の処理の問題あるいは価格形成方式の問題、肥料二法の問題等に対して、特に農民の立場に立たれる、消費者の立場に立たれる農林大臣としての、確固たる御所信の上に立って合理化対策中心に検討を進めておられるかどうか、この点をはっきりしていただきたいと思います。
  175. 周東英雄

    ○周東国務大臣 こまかいお尋ねの点については局長から申し上げたいと思いますが、根本方針は、ただいま私がお答えをいたしましたように、何とかして農民に早く安くなった肥料の供給をしたい。それについては、今まで合理化々々々といって、なかなか延び延びになっておるようでありましたので、私は就任早々、とにかくこれははっきりと一定年限をきめて早く合理化の線を出してもらいたい、それがために必要ならば合理化に対して必要な資金の融通も考える。しかしいずれもじんぜんと延ばしておってはいかない、ぜひ合理化して、そうしてその年限が過ぎれば当然安い肥料が農民に与えられるように、また合理化の途中、その年限内におきましても、年々の合理化されたる肥料の価格というものの見通しをはっきり示してもらいたい、こういう要求をして、徹底的にこの際合理化をし、一面輸出に対してもとにかく将来だんだん損失が出ないように、国際競争に耐え得るように輸出工業としての肥料工業も育成しつつ、その結果と申しますか、ねらいは農村に対する安い肥料の供給を確保したい、こういうことで進んでおるわけであります。私の根本方針はあなたの考えと変わらないのであります。
  176. 足鹿覺

    足鹿分科員 私が指摘しましたバルク・ライン方式、あるいは肥料二法の堅持、こういった基本の上に立って、今大臣が所信を述べられたような構想のもとに進めておられるかどうかということが私の質問の中心であります。
  177. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 合理化計画が非常におくれております。と申しますのは、現在までの合理化計画といいますのは、ほとんど業界業者の合理化計画を大体中心にしてやったのでありますけれども、一応政府としてどういう合理化計画を立てるかということで根本的にやっておりますので、その点が少し手間どっておりまして、正式の肥料審議会が開けないことは申しわけないと思いますけれども、その考え方としては、一応お尋ねの今までの過去の赤字については、これは税制措置で処理する、実はこういう根本方針のもとに現在大蔵省、通産省と協議検討中の段階でございます。今後価格の決定方式につきましても、あくまで現在の肥料二法の建前を堅持しましてやっていくという考え方でございまして、現在の肥料二法を廃止するというようなことは考えておりません。
  178. 足鹿覺

    足鹿分科員 ただいまも永井委員から御指摘がありましたように、わが国の肥料の輸出が国際競争場で非常に負けておる。先般も中国から引き合いがあっても、価格が折り合わぬというような点で、残念ながらそれを投げておる。こういった点から従来の輸出赤字処理と申しましても、これはわが国の貿易の振興によって外貨の獲得、そういう意味から肥料二法を制定した当時私どもはその審議に当たり、相当修正も加えて成立せしめた当時の事情も存じておりますが、あらゆる方面で国際競争に負けておる。しかも従来の赤字を減税措置等でやらねばならぬといったような事態において、こういう事態を彷徨しておったのでは、私は本来の肥料二法の精神を逸脱しているのではないかとすら申し上げたいのであります。これはただいま大臣なり局長から肥料二法を堅持して、今後も根本策を進めるということでありますから、きょうはこの問題については深くお尋ね申し上げることを控えておきたいと思います。  ただ一点だけ伺いますが、合理化計画の目標は、農林、通産、企画関係において一応設定ができましたか。何ぼに目標を置いて現在合理化の根本策を進めておられるか、その点だけ聞いておきたいと思います。
  179. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 今の御質問の点でございますが、先ほど申し上げました通り、工場の内容を十分洗いまして、今検討しております。そして合理化計画そのものにつきましても、できるだけ設備能力等も十分洗いまして、一番安いものから取り上げて合理化をする、こういう考え方のもとにやっておりますが、その作業が通産省の方でまだ十分に済んでおりませんので、数字的な目標というものがまだきまっていない状況でございます。それを洗いましたあとで、一番安くなりますところの目標計画を立てたい、こういうことで作業をやっておる段階でございます。
  180. 足鹿覺

    足鹿分科員 政府の農業基本法を熟読してみますと、農業生産資材対策というものはどこにもありません。一字か二字、どこかにあった記憶がありますが、全く軽視しておられる現われではないかと思うのでありますが、これは追って農業基本法審議の際に十分検討さしていただきたいと思います。  肥料問題の締めくくりとして、合理化計画に対する融資措置というものは、今までに終わっておるように聞いておりますが、今あなた方が考えておられる合理化計画で、来年度にどの程度の財政投融資を必要とするか、また来年度の国の予算あるいは財政投融資の面で新しい合理化政策を打ち出された場合には——今提出中の予算で処理のつかない場合には、次の機会に対処されるのかどうか。当然そうだろうと思いますが、今までの投融資は一応済んだというふうにわれわれは聞いておりますが、その間の事情はどうですか。
  181. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 合理化計画に対しましては、従来開銀から融資の措置を講じて参っておるのでありますが、これは通産省の所管でございますので正確な数字は覚えておりませんけれども、ことしも十何億というものを開銀融資で出してくる、こういうことで予算は組んであるように承知をいたしております。合理化計画の進行いかんによりまして、足りない場合には特別の処置を考えなければいかぬかと思いまするけれども、一応そういう計画で進んでおるように聞いております。
  182. 足鹿覺

    足鹿分科員 資料として一つ御提出を願いたいのでありますが、今までの財政投融資、予算関係等、肥料二法ができましてからの詳細な資料、それから今各メーカー別のコスト・ダウンの合理化の方法を検討しておるといわれますが、先ほど見ますと、肥料要覧ですか、そういうものには堂々とメーカー別のコストその他の資料が出ておるのに、われわれには「いろはにほへと」順で出るといって、同僚川俣議員が非常に憤慨しておられました。われわれもそういうことでは困る。あなた方が出された資料にちゃんと載っておるのでありますから、そういう点についてはもっと虚心たんかいに、必要なものは必要のようにちゃんとお出しになり、全委員にそれを御配付願いたいと思いますが、よろしいですか。
  183. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 今までのメーカー関係の仕事は、所管が通産省でございますので、通産省の方に御請求をいただきたいと思います。
  184. 足鹿覺

    足鹿分科員 それでは、そういう事情でありますから、お含みおきを願い、善処を願います。
  185. 三浦一雄

    ○三浦主査 私の記憶が違うといけませんから、書面に書いてここにお出し願います。そうすれば御伝達いたしますから……。
  186. 足鹿覺

    足鹿分科員 そこで、これから防衛関係についてお尋ね申し上げるわけでありますが、それに入ります前に、中海干拓淡水化の事業に関連をいたしまして、特に農林大臣また政府委員等にお尋ねをいたします。  私が本年二月一日衆議院議長あてに提出をいたしました質問主意書にございますが、それで私がお尋ねをいたしました点は二項の(二)でありまして、防衛庁が設置せんとしているジェット戦闘機基地の新設または拡張が、目下進行中の中海干拓淡水化事業に重大な影響を及ぼすと考えられますが、農林省関係省と連絡協議を行なったかどうかという質問主意書に対しまして、池田総理大臣名をもって、去る二月十日付をもちまして、「調査測量を実施しなければ影響の有無については明確にならない。農林省関係省との連絡協議は、正式には行なっていない。」という御回答がございました。大臣も、農林問題については非常な御抱負なり御経歴もあるわけでありますが、これは中海干拓計画に関連して農林省が現在実施、設計の準備中と伝えられているものであります。この経費によりますと、昭和三十七年から実施を予定いたしまして、三十六年度予算に千八百万円、三十五年度予算に五百万円を計上いたしまして、現在着々準備が進められております。その経費の概算を見ますと、共用事業費が十八億八千四百三十万円、干拓事業費が四十九億一千二百五十五万円、沿岸農業水利事業といたしまして十一億二千二百八十三万円、この内訳は宍道湖と弓浜半島であります。予備費等が七億八千六百十九万円、合計概算として八十七億二百万円という国費をつぎ込みまして、今後継続事業として六カ年計画でありますが、実施されんとしております。これは御存じのように、今設置されんとしているこの弓浜半島に、昭和十六年、太平洋戦争の初期に海軍の飛行基地ができまして、当時の農民から三百数十町歩をわずか反当三百八十円で無理無理引き揚げたものであります。当時の農民は、お国が戦いに勝つならばというので、涙をのんで、半ば強制的な土地の収用に応じた、いわくつきの土地であります。この気の毒な状態に対して、私どもはこの弓浜半島の農地を奪われた農民諸君に、農林省も御協力をいただいて、この沿岸に代行干拓を続続行なっておるのが実情でございます。すでに完成をして作付をした者もあり、早期完成を念願してひたすら国に要望をしている者もあり、それとは別にこの今回の中海干拓淡水化が着工寸前というところにこぎつけまして、今申しました農地の造成に二千五百町歩を初め、大きな計画が進んでおる。その着工寸前に、最近防衛庁の現在輸送航空団が設置されております。また全日空が民間飛行場として季節的に併用しておりますが、これをジェット戦闘機基地とする計画が進み、F86D五十機その他を十数機、兵員千五百名を想定して、昭和三十八年からジェット戦闘機基地として防衛庁が使用ぜんと計画をしておるのであります。こういう重大な計画が過般来伝えられまして、私もこの主意書を提出いたしまして政府の方針を、施設整備費の問題に限定しましてお尋ねをいたしましたら、いろいろと御答弁がございました。そのとき答弁書の第二項で、調査測量はもう終わったのかという私の質問に対して、「次期航空団の基地として拡張を考えているが、調査測量も実施していない現在では計画の詳細は決められない、こう答弁しておきながら、私は昨日やむを得ない所用のために郷里へ帰っておりましたら、現地の庄子司令は、防衛庁は一応の調査を終えて三月十日前後にその計画を公表する旨の重大発言をしておるのであります。私が質問主意書を提出いたしましてから十四日ばかりの後に、二月十日付でこの答弁がありましたが、わずかな間にそう急速に進むものでありますか。進むといたしますならば、農林省が百億近い巨費を投じて今着手寸前というところに来ておる。このまん中ヘジェット戦闘機F86Dの航空団を設けました場合に、——既存の、現在のあの地帯の、そういう事情で農地を奪われましたのは、鳥取県側は平均三反から三反半であります。島根県側は営農状態はいいようでありますが、その間に大根島という島がありまして、これもほとんど零細農、半農半漁で辛うじて生計を保っておる、こういう状態でありまして、近年政府の施策等も手伝いまして、成長部門としての畜産をこの過小な経営に入れようというので、豚や鶏が相当入ってきておる。また将来の干拓淡水化後における営農も、そういった家畜を入れた、特に大家畜の酪農なども入れた営農形式をとることは、鳥取県、島根県側も基本方針として完成後における利用方法もきまっております。そういうときに、過去においても実績がありますように、そうした動物に対しても非常な被害を与えるようなジェットの戦闘機基地がここへできますならば、中海干拓淡水化というものは事実上においてその成果お減殺され、あるいは失うようなときが来はしないかということを、私は思想やイデオロギーを越えて、多年の恵まれない山陰の僻地に今ようやくこういうことが根ざしておる、政府の後進性開発は遅々として進みませんが、すでに今まで思い切った予算を投入しておりましたならばこれはすでにもう完工しておったとも思いますが、やむを得ません現状でありますけれども、そういうところへ持ってきて、過去において忍ぶべからざる軍への協力をした農民をさらに痛めつけるようなジェット戦闘機の基地化を防衛庁が一方的にやっていいのか。三月十日前後に防衛庁は発表すると言っておるが、農林省はそういった巨費を投じて計画を立てつつある今日、一言のあいさつもなければ協議もない、そういったことで一体済むのかどうか。一体防衛庁はどのように庄子司令に対してそのような重大発言を命じたのか。この前大森施設課長に私が聞いたときも、まだ海のものとも山のものともわからぬと言ったではないか。にもかかわらず、郷土の各新聞は一斉にその計画を発表する、しかも科学的根拠を伴って説得をする、こういうように、実に国会の予算もまだきまらない、衆議院は今最終段階にあるとはいえ、これから参議院で本格的な審議が行なわれようというときに、国会の審議権を冒涜するようなそういうことをやっていいのか。私どもは国政の運営に当たって、これは公正を欠いておると思います。その点について農林大臣として協議を受けられたか、また話し合いを持たれたか。持たれたとするならばどういう協議を受け、どういう回答をされたか、その間の事情をつまびらかにしていただきたいと思います。
  187. 周東英雄

    ○周東国務大臣 まことに恐縮な次第でありますが、私まだ協議を受けておりません。そういう事情でありますので、その間の事情もあまりつまびらかにいたしておりませんが、農林省には正式の協議は来ておらぬようであります。
  188. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今大臣からお答えがありましたように、この件につきましてはまだ協議を受けておりません。当然先生のおっしゃいますような問題になりますと、これは協議を受けまして、どういう被害があるがどうだというようなことをやはり私の方としても一緒に調査する必要がございますので、これは協議がありますればもちろんそういう問題について十分検討いたしたいと思っております。
  189. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 ただいま現地の司令が三月十日に何か発表を行なう、それでその基礎としましてすでに防衛庁は滑走路の延長について中海の必要な調査を終了しておるという御趣旨の御質問がございましたが、事実これはこの前答弁書として提出をいたしてございますように、調査はまだ全然やっておりません。もちろん基礎調査をやりまして、水深とか地質とか岩盤のかたさとかというようなものがはっきりいたしませんと、具体的な計画が出て参りません。もちろんそういう物理的な調査だけでなく、ただいま御指摘になりましたように、中海の干拓計画と矛盾をいたさないように、また漁業等に対してできるだけ被害を与えないように、あるいはただいま御指摘のありましたような大根島に対する騒音等の被害が及ばないようにという趣旨から、一応私どもの希望としてはこういう方向に対して滑走路を延長したいという程度の希望は持っておりますが、しかしはたしてそういう基礎調査の結果、そういうことになり得るかどうかというようなことは、調査が終わっておりませんので出て参っておりません。従ってこの調査が進みますと大体のめどがつきますので、その上で具体的に、農林省だけでなく、建設省あるいは運輸省、関係各省に御相談を申し上げたい、こういうふうに考えておる次第でございます。従いまして、今現地の司令が三月十日に何か発表をすると申しましたのは、おそらく現在地元におきまして非常に誤解に基づくいろんな御心配がございますので、そういう御心配は、もしわれわれの希望のような設計になればございません、あります場合にはこの程度ございます、しかしこれに対してはこういう対策を講じますということを具体的にお話をしまして、そして地元の方々の誤解を解くようにわれわれの希望を地元でもって申し上げるということを司令は申したものと私は推測いたす次第でございます。
  190. 足鹿覺

    足鹿分科員 防衛庁当局に、先般この問題が伝わりましたので、当時大森施設課長にも私は伺った。そのことはこの質問主意書の二項の(三)または(四)にある。「昭和三十五年八月、源田空将が美保基地を訪れた目的は何か。(四)本年一月、島根県庁に航空自衛隊美保基地輸送航空団基地業務群本部吉野静夫二等空尉を派遣した事実があるが、その目的は何か。」こういうことを非公式に大森施設課長に私は尋ねた。ところが、別段そういう指令は出しておりませんが、源田さんがどういうことを言ったか、また吉野二等空尉なるものが島根県庁にどういう目的で行ったか、自分たちとしては関知しないと言った。ところが池田首相名で私に答弁がありましたものについては、「源田空将が昨年八月美保基地を訪れたのは、航空幕僚長として初巡視を目的としたものである。」と言い、吉野二等空尉の島根県庁訪問については、「干拓計画について話をきかせたものである。」こう答弁書には記載して提出してきているのであります。そういたしますと、中央での農林省関係省との話し合いはしない、現地のあなた方の自衛隊の司令といい、あるいはその末輩の二等空尉といい、防衛庁の知らぬそういうことをどの権限に基づいてやるのでありますか。あなた方の指令しないことを現地が勝手にやっていいのでありましょうか。規律が厳正な自衛隊でなければならぬということを常に防衛庁出局は言っておられますが、あなた方の命令しない、あなた方の何ら指示をしないことを、勝手に県庁へ行ったり、あるいは初巡視と称して地元民に大きな衝撃を与えるような戦闘機基地の設置を堂々と談話を発表したり、そういうことがあっていいのでありましょうか。私はまことに奇怪しごくだと思います。そういう点については、経理局長がただいまも御答弁になりましたが、あなたで不足だとは申しませんけれども、今私が質問をしておりますこと、また前段申し上げたようなことについては、当然防衛庁長官が御答弁になってしかるべき問題だと思う。これは一飛行基地の問題として、あなた方はきわめて簡単に考えておられるようでありますが、将来戦闘機の機種がF104Jというふうにだんだん変わってくる。あなた方はその国産化を目ざしてやっておられる。そういたしますならば、当然機種はそのときの情勢によって変わって参りましょう。従って現在の影響というものよりも、もっと将来には大きな影響が参ります。あとで触れますが、公有水面埋立法等についても、その埋め立てによる利益が埋め立てによって生ずる被害を下回るような場合には許可してはならぬと規定しているではありませんか。そういう規定すらもあるわけでありまして、このようなことについては、十分に調査測量をあなた方が恣意的にやられる前に、当然地元民の意見を十分に聴取する、あるいは関係省とも打ち合わせをする、あるいは協議をする、そういった慎重の上にも慎重な、そして将来に及ぼす影響ということを考えられて、虚心に処置をされることが私は妥当でないかと思う。今お話を聞きますと、これから関係省と協議すると言われますが、現地ではそういう発表をしているんですよ。ここにたくさん新聞の切り抜きを持っておりますが、あなた方の意思とは別に、現地の司令にはそういう権限があるのですか、それは自衛隊法のどの根拠によってそういうことができるのでありますか。
  191. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 一等最初に御質問になりました源田空将が現地へ行って何かしゃべったというお話と、それから吉野二等空尉が島根県庁へ行って干拓計画の話を聞いたという点でございますが、答弁書にもございますように、源田空将は美保基地に対して初巡視をいたしまして、そうして初巡視の際に記者団に対して、将来この美保の滑走路を延長したいという意見を述べておるということは、われわれも聞いております。もちろんそういうことは、記者団の質問に答えて源田空将が言ったわけでございまして、それを言いに向こうの方に出したということは絶対ございません。それから吉野二等空尉が島根県庁に行きました事情については、この島根県庁へ行った直後——一週間ぐらいあとでございますが、本庁で幹部会がございまして、司令を呼び出しておった。これは単に美保だけではございませんで、全国の幹部を本庁に集めて、そうして長官が初めて御就任になったあいさつを兼ねて、いろいろな懇談をいたした、そういう会議が持たれたことがございます。その際に、現地の司令といたしましては、おそらく美保の滑走路延長の問題を聞かれるに違いないというような点を予想いたしまして、吉野二等空尉を島根県庁へ出して、そうして干拓計画がどうなっておるかというような調査をいたさせたようでございます。従ってこれも今度の本庁から指令をして調べさせたというような事実は絶対にございません。  それから将来F104Jを配置するのではないかという御質問でございますが、ただいまのところはF104Jを配備する計画には全然なっておりません。F86Fでございます。  それから測量前に地元の意見もよく聞き、また関係省との打ち合わせも十分に行なえということでございますが、これはまことにごもっともでございまして、われわれといたしましては従来のいろいろな基地関係の経験にもかんがみまして、できるだけ地元で誤解のある点は十分に御説明を申し上げて、地元の方々の御納得を得た上で測量にとりかかりたい、こういうつもりでおります。反対を押し切って強行するというようなことは全然考えておりません。
  192. 足鹿覺

    足鹿分科員 その点は重要でありますので、長官がおいでになりましてからさらにまた委員長において質問を許していただきたいと思います。
  193. 三浦一雄

    ○三浦主査 長官の御要求はないでしょう。
  194. 足鹿覺

    足鹿分科員 さっきお願いしておきました。参議院の都合で……。
  195. 三浦一雄

    ○三浦主査 ここは御承知の通りの分科会ですから……。
  196. 足鹿覺

    足鹿分科員 申し上げるまでもないと思いますが、今あなた方が予定しておられます美保基地ですね。現在航空団が設けられております美保基地は、一番島根半島に接近した半島でありまして、北は日本海、内は中海にありまして、そこに突出しております。一番狭いところは一里ないのであります。ややその狭いところへあなた方は今これを考えられておる。昭和三十一年にあなた方が考えられたときも、地元の非常な反対によって断念せざるを得なくなった。しかし一応形の上で断念されたようでありますが、伝え聞くところによりますと、二カ年くらい秘密裏に調査をしておられたというふうにわれわれ聞いております。どの船かわかりませんが、一カ所に十数時間も定着して、そうして調査測量をやった形跡がある。これは地方の住民が言っております。船から、たばこが切れたのでたばこを買いに上がってきた。ところが、お前たちは何しにあそこを調査しておるかと言ったら、いや海底の土質やあるいは水深等を調査しておるのだ、たばこが切れたから上がったのだ、こまかいことは自分たちは使用人だからわからぬが、安来や米子の業者に使われておる云々のことを言ったと伝えられますが、これは中海淡水化に関する調査かとも一見思われる節もありますが、その場所があたかも飛行場拡張を予定されておる地帯でありますので、われわれは疑念を持たざるを得ない。局長は誤解と言われますが、私は決して事実を曲げたり一つの考え方からあなた方の答弁をそういうふうに持ち込もうなどというようなけちな量見は毛頭ありません。前段で申し上げましたように、思想やイデオロギーの問題を越えて、きょうは防衛論争等は一切他の同僚、先輩に譲って、具体的な問題を言っておる。何を誤解しておりますか。誤解なんかしておりません。あなた方が実地を知らないんです。昭和十四年、大東亜戦争のさ中に設けられた経緯は申し上げましたが、その基地は、現在あなた方が使用しておる航空団の基地は、民家から五十メートル飛行場の末尾は離れたところですよ。米子——境線の国鉄が二、三十メートルの近距離にあるところですよ。しかも県道はずっとその飛行場を取り巻いて、もともと飛行場の中を通っておりましたものを、大東亜戦争当時に飛行場の周囲をずっと回るように県道を迂回せしめたところでありますよ。とにかく地元民にははかり知れない大きな被害を与え、損失を与え、営農上あるいは生活上、社会教育上いろいろな点において大きな被害を与えたところでありますよ。それを今度は拡張であるか、新設であるかも明確にしておらない。私が幾たびも防衛庁をみずからたずね、あるいは陳情団とともにたずね、あるいはその他の方法によってたずねても、拡張であるのか新設であるのか、それすらも一向明らかにしないではありませんか。そういうあなた方の不誠意な態度がもしかりに誤解が百歩を譲ってあったとしても、そういうあなた方が地元民に真相を知らさない、そういうところから誤解せざるを得ない。あなた方の責任じゃないですか。誤解とは何に基づいて誤解と言いますか。そういう事情でございまして、現美保基地における自然的、社会的、経済的諸条件を勘案いたしまして、これが適地とあなた方が判断される根拠がどこにありますか。現存しておるから云々、ただし地元民、われわれは、現在あるものまで持っていけとは言っておりません。涙をのんで、この被害はやむを得ないという気持です。現地の地元の人も私どもも、持っていってもらいたいが、しかし、輸送航空程度のものであるならば、それすらも持っていけというようなもぎどうなことは、言った覚えはありません。地元民も現に大きな被害を受けながら、涙をのんでおるのでありますよ。施設そのものがあるから、それを拡充するということでは理屈になりません。誤解とは一体何を誤解と言いますか。われわれや地元住民に誤解をかりに生ませたとしましたならば、あなた方自体の秘密主義、何でも握っておって、そうして国会議員が尋ねても、地元の人々が高い族費を使って陳情に来ても、実態を明らかにしないところに非常な誤解が生まれる。それはあなた方の責任というべきでしょう。誤解とは何ですか。
  197. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 私が誤解と申し上げましたのは、言葉が不十分でまことに恐縮でございますが、地元でいろいろ発表されております新聞の記事等を見ますと、御心配にならなくてもいいようなことが非常に大きく出ておる。そういう面であるいは誤解があるのじゃないか。ただ事実は事実でございますから、従って滑走路を延長した場合にどういう程度の地域はどういう音響の影響があるとか、そういう事案をもっとはっきり出しまして、そうして地元民の方々に過度の恐怖と申しますか、そういうものを与えることなく、また事実として悪い影響のありますことはこれを隠すことなく、その結果の措置について御相談を申し上げたい、こういう意味で誤解を解きたいと言った次第でございます。  しかしながらこの計画の全貌を何か防衛庁で隠しておるのじゃないかというお話でございますが、これもわれわれとしては別段隠し立てをするという趣旨ではございませんで、一等最初申し上げましたように、調査がまだ完了しておりません。全然調査に着手しておりません。そういう状況でございますので、はたしてその防衛庁の希望だけを外に出して、そうしてこういう方向にこの程度伸ばしたいという程度のものでお話を申し上げても、事実それと測量調査をやりました結果、そういう希望がそのまま実現するかどうかということについてのめどがございませんので、それで現在までは、何と申しますか、われわれの希望するような方法、設計も公表することを差し控えておるという次第でございます。しかし現地の方々のいろいろな新聞等による御心配も次第に大きくなって参っておりますので、できればわれわれの希望をそのまま表に出す。ただしこれは調査を完了しておりませんので、このままになるとかならぬとかということは申し上げられませんけれども、希望としてはこう希望いたしておる、その結果、それが実現すればどの地域についてはどういう影響があり、どの地域については影響がないということを、もう少しはっきり表に出したいということを現在考えておる次第でございます。  なお、昭和三十一年から二カ年でございますか、測量班が出て何か調査をやったというお話でございますが、これは当時私も防衛庁におりませんので、ただいま担当の課長に聞きましたところが、そういう事実は全然ございません。この点は何かの間違いであろうかと思います。
  198. 足鹿覺

    足鹿分科員 答弁書の四によりますと、「騒音については、地形、風向等の影響によって被害状況も異なってくるので滑走路の位置が未決定の現在では、騒音被害の範囲については決定できない。」かように御答弁になっておりますが、その通りですか。
  199. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 これは滑走路の位置のいかんによりまして、音響の方向と申しますか、たとえばここの地域では何フォン以上、ここは何フォン以下というような、そういう面が滑走路の位置がきまりませんとはっきり出て参りません。そういうことをこの四項で答弁いたした次第でございます。
  200. 足鹿覺

    足鹿分科員 しからば伺いますが、去る二十八日に自衛隊の庄子美保司令は、記者に次のように発表しておる。「基地周辺の騒音について七十フォン以上は補償の対象になっており、学校、病院など公共施設だけに該当するようになるだろう。」と言っております。そしてさらに語を進めまして「美保の拡張計画は今のところ滑走路の距離が二千四百メートルなので飛行機の機種はF86Dしかこないはずだ。一部にF104がくるように伝えられているが、これは誤りだ。F86Dの騒音は他の基地の測定などで滑走路を中心に半径五キロの楕円の範囲が七十フォン以上と考えられ、これを美保にあてはめると十幾つかの補償対象が出ると考えられる。ジェット機が始動する際の音を消す研究も進みサイレンサー」云々ということを言っておりますが、すでに十幾つの補償対象を考えておるということを言明しておるのですよ。何を根拠にして、今この答弁書が妥当なものだと局長は言われましたが、それならば司令がこういう言明をしたり、記者会見をして意見を述べるような機会はないではありませんか。全くの想定だなんということは、それは言いのがれにすぎないと思います。だれが見ても、こういう発言をすれば、大体風向その他いろいろな点も勘案して、大体の計画はできておると思う。従って騒音被害の程度もわかり、それに対するところの補償等についてもいろいろと述べておるではありませんか。だから、あなた方はいわゆる地元民の意思を尊重するなどと言われますが、地元民の反対の空気は、これは政党だとか、政派だとか、そういうものは別であります。われわれは革新陣営に属するものでありますから、すぐにイデオロギー的にあなた方は見るでしょう。しかしそういう甘いものではありませんぞ。われわれは一つの信念としても持っておりますが、われわれが一、二の言動をして、あの昭和三十二年に、アメリカの駐留軍の通信施設をアメリカ軍の権力と国家権力が一緒になってやっても、現地はこれをはね返しておるのです。そして三十二年には撤退をしておる。一部民間に農地は返されておる。現在大蔵省の所管の国有財産ともなっておるわけであります。その所管がえの手続も——あなた方は三カ月の計画で行政財産としての所管がえも、現地にすでに測量班を派遣されておる。どこからその測量班は派遣されたかということを尋ねてみますと、大蔵省と防衛庁の大阪地本、その出先である広島その他から来ておると現地では言っておるではありませんか。とするならば、海上においても調査測量が行なわれた形跡があり、またあなた方が拡張か新設かを言葉を濁しておられますが、事実においては拡張ではなくして新設だという話も一部に伝わっております。あなた方の方面からもそういうことを言われた事実も聞いておりますが、拡張か新設かまず一問一答でいきましょう。
  201. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 これは現在千八百メートルの滑走路がございますのを二千四百メートルに拡張いたしたい、こういう意味でございます。ただ問題は、現在持っております滑走路をそのまま延長しますと、先ほど御指摘になりましたように、大根島の上にかかる。従って、ただいまわれわれの希望といたしましては、その滑走路の方向を変えて、そうして大根島にかからない、いわゆる大根島の牧畜の支障にならない方向に模様がえをしたい。そういう意味におきましては、単なる滑走路の延長だけではなく、一部模様がえをしたいという希望を持っております。
  202. 足鹿覺

    足鹿分科員 しからば、大根島は避けた、明らかに新設であろうと私も考えますが、今あなた方が考えられておることは、ここを基地としますと、もとは大根島の上空を目ざしておったものが、村民の反対によって変更の余儀なきに至った。次に松江市を目ざして有名な大橋川の上空を目ざしていく計画を立てられた。これまた反対が出た。そこで現在考えられておるのは、新しく農林省が揖屋工区として三百三十一ヘクタールを干拓埋め立てをしようというその上空に出るやに地元民では伝えられております。なおあなた方は、新設だから、大根島はよけたから影響がないなどということは、現地の実情をお知りにならない。また農林省ともいろいろ検討しておられないという証拠だろうと思いますが、一部には、島根県側の各市町村が——あとで申しますが、——一齊に反対、市議会、町村議会で反対をすでに決議しておる、それをあなた方はあらゆる手段を通じていわゆる懐柔し、そうして反対派の市議会の決議を事実上じゅうりんするような各種の動きが伝えられております。一時はどこへ向けても地元の反対がある。そこでこの弓浜半島に沿って島根半島の方へ向ける計画も伝えられておった。ところが技術当局では、島根半島がびょうぶのように立っておったのでは離着陸に支障があるというので、これもおじゃんになった。あらゆる角度から見て、技術的にも、あるいは住民の意思、周囲の自然的、社会的諸条件からいって、現在あそこに飛行場があるのが無理なんだ、あなた方は認識を誤まっておるのではないかと私は思います。もし新設だといたしますならば、航空法に基づいて二千四百メートルを滑走路といたした場合におきましては、航空法と自衛隊法百七条によりまして優先規定があることを私も存じておりますが、その訓令によりますと、飛行場の規模その他が相当大きなものになるようであります。最初地方民が思っておったのは、思い過ごしの点もあるようにあなたは言われますが、要するに、幅四十五メートル、長さ二千四百メートル、こういうものが今の飛行場の先に若干海へ出る程度に考えておったようです。私どももこういう関係は全くしろうとでありますので、いろいろ調べてみると、滑走路の外側周辺に着陸帯と称するものができます。それを含めて埋め立てをいたしますと、正確な計算ではありませんが、約二十町歩くらいになるのではなかろうか。ちょっと計算が私も急いでおりましたのでわかりませんが、とにかくその程度のものだろうと思います。そうしますと、その周囲に今度は転移表面なるものができ、またその外側に水平表面ができ、滑走路の中心から四キロないしは五キロの範囲にあって高さ四十五メートルの地上の建築物あるいは植物は撤去を命ぜられ、あるいは新設することができないという航空法上の規定を、あなた方も自衛隊法百七条の訓令において守っておられるようでございます。そういたしますと、今農林省が計画をし、また経済企画庁の長官もおいでになっておったようでありますが、あそこは今度の後進地域開発の工業の再編成指定地帯で、また通産省の工業立地調査法に基づく将来の山陰の中心としての指定も受けております。また今後は自治庁の、あの周辺には相当人口が稠密なところでありまして、境を突端とし、米子、島根県側に来て安来、東出雲町、八束さらに進んで松江市というふうに、山陰における一番人口稠密で、しかも資源が豊富で、交通の要衝に当たって、われわれはこの将来の開発にすべてをかけてきたんです。そういう重要な地帯であります。そういう地帯に、これは農林大臣なり農地局長にお伺いいたしますが、最近の傾向として、農地として造成されたものが、途中において工業地帯やあるいはそれに付随する地帯に転換せざるを得ないような情勢と聞いております。またそれもやむを得ないと思いますが、頭から干拓、埋め立てを計画するならば、やはり計画的に、工場地帯あるいはその関連地帯、あるいは教育地帯あるいは農耕地帯というふうに計画的にやっておられるであろうし、これからもやられると思います。そういたしますと、その周辺は、いわゆる国が法律に基づいて指定したものが半ばその成果を失い、あるいは全然将来の臨海工業地帯としての発展も、あるいはその他の山陰の後進地帯としての発展も、何らわれわれは希望を持つことができなくなりますが、そういうあらゆる諸情勢、現在はもちろんのこと、将来にわたっての、そのようなわれわれの地方住民の唯一の夢をあなた方はぶち破って、将来防衛の目的を達すると思いますか。地元民のそういう夢を破って、地元民の協力を得られると思っていますか。もちろんあとで申し上げますが、地元民の意思表示を明確になっております。そういう事実を、今私が指摘したようなことをあなたは今まで知っておられたのでありますか、そういう点についても、経済企画庁なりあるいは通産省なり、あるいは農林省なり、いろいろな方面とそういう既存の計画、今後の計画等についても十分注意を払われる責任と義務があろうと思う。多くの国費を費やして、地元民のいわゆる反対を押し切ってやられんとするところに無理があるではありませんか。そういう点について、農林省当局は、現在の中海干拓はもちろんのことでありますが、その構想も、今私が指摘したような点等を考え合わせられまして、計画を進めておられると思いますが、そういう点についての支障はないのでありましょうか。できれば関係の諸大臣がおられるといいのですが、とりあえず農林大臣から……。
  203. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ただいま私どもの局長がお答えいたしましたように、現在までそれらの計画について協議を受けておりませんが、ただ防衛庁の方でも、ただいま経理局長のお話のように、まだ実際的の調査、設計に入っておらない、大よその、よかろうかという見当をつけて、後に具体的に協議をするということであります。お話を伺いました以上は、それらの計画等に関しまして、私どもの計画、すなわちそこに新しく干拓をして農地の造成をしようということの計画と、その新しい防衛庁の計画との間に非常にそごする、あるいは困る問題が起こるならば、それらについてよく相談し、場合によっては設計の変更を求めるということにもなるでありましょうが、大体内容もまだ積極的に今協議を受けておりませんので、何とも申し上げられませんが、その点は、新しく設計をして着手しようとしている干拓事業というものの目的と、それらの関係における新しい防衛庁の計画というものは十分検討して、慎重に処置をするように努力いたしたいと思います。
  204. 足鹿覺

    足鹿分科員 防衛庁は新設か拡張かどちらかということをはっきり答えて下さい、計画として。
  205. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 言葉で単に新設か拡張かということよりも、さっき申し上げましたように、滑走路を千八百を二千四百にするという点が一点でございます。内容でございますが、それが一点でございます。それからもう一点は、現在の滑走路をそのまま延長するのではなくて、ただいま農林大臣からお答えのありましたように、干拓計画がそごをしないように、われわれとしてはできるだけその方向を考えて参らねばなりません。またそのほかに、工場立地、誘致の問題との関連もございます。それから船舶の運航の関係もございます。そういう点とできるだけマッチして、そうして、それに支障を及ぼさないような面において今後計画を立て、そして最終的には関係各省に御相談をいたしまして、それでわれわれの気づかなかったいろいろな支障があるかもしれませんので、そういう点については忌憚のない御批判をいただいて、最終的な計画をきめたいという意味で、滑走路の方向をおそらく変えなくちゃなるまいという点と、この二点が現在の計画の内容になっております。
  206. 足鹿覺

    足鹿分科員 もう滑走路の方向は変えようがないじゃないですか。あなた方は三転も四転もして、現在が最終案じゃないですか。それすらも今私が指摘したような大きな障害がある。これをさらに南に振ろうとするならば、米子市の上空を飛ぶことになるではありませんか。しかも米子市には、ここに四百十三ヘクタールの干拓計画もすでにできておるのです。そういうふうに八方ふさがりではありませんか。あなた方は一つのものを固執しておられるのだが、いわゆる裁量の余地、検討の余地はすでに尽きておるじゃないですか。最初大根島に向けて反対を受け、次には大橋川に向けて反対を受け、現に揖屋地区上空を目ざして検討しておる。これも地元民の東出雲町は満場一致町議会の議決によって反対を決議しており、安来の市議会も反対の議決をしておるとするならば、あなた方が方向を変換する余地はもう現実にないではありませんか。あなたは現地を見られたかどうか知りませんが、現地をごらんになって、その余地があるという判断が出れば、これはもう論議の余地のない一つの盲信です。防衛庁当局の盲信であって、あなた方はややもすれば、地元の者は科学的根拠に立たない反対運動をしておる云々というようなことをしばしば出先が放言をしておりますが、科学的根拠などを地方住民が知るわけがない。かつて昭和三十二年の一月には、自衛隊の現在の輸送航空団の飛行機が海中に落ちましたし、昭和三十一年にはアメリカの無人機が民家の上に落ちましたし、危険は身をもって知っております。現地の人々は、あなた方が東京の防衛庁の机の上で考えておられるような、そういうものではありません。憲法に保障された生命と財産にすらも危倶を抱いておるから、本能的な反対運動が起きるのであります。誤解でもありませず、あなた方に検討の余地はないと私は断ぜざるを得ないと思いますが、まあそういう議論は別としまして、しからばあなたは、補償の問題についても、先ほどの私の質問についてお答えになりましたが、美保の庄子司令は十幾つの補償云々ということを言っておりますが、補償の対象となります根拠は何でありますか。私どもの調べたところによりますと、一戸三百万円ないしは一千万円も金がもらえる。根が三反や三反未満の零細農でしょう。だからきょうの日に困っておる諸君は、三百万円ももらえるという条件つきなら、自分たちはその方がいいというので、もらってどこかへ逃げてしまう。今日の生活に困っておる者は、こういう気持にならざるを得ないでしょう。しかもあなた方現在使っておられる航空自衛隊の隊員すらも、現在のごう音に耐えかねて、みずからは遠方から通っておるではありませんか。自衛隊の職員自身も、その基地の中に住むことをきらって、よそから通っている事実をあなた方は知っておられますか。いわんやジェット機が基地として配置され、将来F104Jが来た場合においては、騒音の被害がますます大きくなり、耐えがたいものになるでしょう。現在自分たちの職務としておる諸君もよそから通っておるというこの事実を、あなた方は何と見るのですか。そういった点から、私どもとしては、当局の態度をまことに遺憾とするものであります。すなわち、この補償の基準というものは、何と何によって今までなされ、またもしあなた方がこの計画を遂行せんとする場合には、どのような基準によってどのような額を予定しておられますか。それはあなた方が今度の国会に提出しておられます施設整備費の中に含まれておりますか。
  207. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 現地の司今が十四カ所ばかり補償をしなくちゃなるまいということを話したというお話でございますが、これは私初耳でございます。ただこれは補償ではなくて、私の推測では、おそらく学校、病院等に対する防音対策の補助費のことを申したのではないか、こういうふうに考えます。それで防音対策に対する補助金の支払いの基準でございますが、これは調達庁が現在まで米軍基地の近辺に対して行なっておりますと同様の基準でございまして、騒音対策の補助金としては、現在のところは、七十ホーン以上の騒音を一時間に十回程度受けるという地域にある学校または病院に対して、防音装置をするための補助金を出しております。現地の司令が申しましたのは、おそらくこういう補助金のことではないかというふうに考えられます。なお一般の補償につきましては、先ほども申し上げましたように、滑走路の方向等によって騒音の区域が相当違って参りますので、そういう意味におきましては、現在はっきりした金額で幾らというものは、まだ出る段階ではございません。  それからなお、三十六年度に要求いたしております施設整備費の中に、補償あるいは防音の補助金が含まれておるかどうかという御質問でございますが、これは含まれておりません。
  208. 足鹿覺

    足鹿分科員 島根県議会は美保基地対策委員会というものを設けていまして、三島委員長が二十七日午後の調査会におきまして現地視察をした結果を報告いたしております。いずれ詳細なる資料はあとで私も申し上げますが、新聞の報道によりますならば、詳細に防衛庁当局からいろいろと話があった、そうして最後に同庁としては両県が推進している中海干拓には影響がないという結論を出しておる、こういうことを報告しておりますが、あなた方は協議しないのものをいっこういう結論を出したのでありますか。農林当局に伺いますが、これは三島委員長の食言でありますか。協議もしないものを影響がないとは、どういう根拠に基づいてあなた方は島根県の調査特別委員会に説明をしたのでありますか。先ほど農林大臣はまだ協議を受けておらぬ、事務当局も知らぬと言っているではありませんか。すべてがあなた方はそういうやり方ではありませんか。少し良心に恥じてやっていただきたい。われわれと立場は異にしておりましても、そういうことはいやしくも防衛の本義に照らしてどこまでもやるんだというおつもりでありましょう。しかし防衛庁は、その防衛の必要のために地元住民を泣かしめ、他に迷惑を与えて、その生活権や教育やあらゆる面に大きな影響を与えてまでも、そういうところに設置しなければ、防衛の目的が達成できないというものではありますまい。もっとあなた方は虚心たんかいに考える必要があろうかと思う。私は現に先日、あなた方の説明を聞いた島根県議の福間定朝君から一部始終聞きました。十数名の専門家を並べて調査員が調査に行った。県議会の諸君はしろうとでありますから、そのことに対して何らの意見の発表もできないような、あらゆる科学的ないろいろな数字を示して言われたということであります。従って自分たちは何のことやらわからなかったと言っております。要するに判断はあなた方の判断を押しつけようという考え方であって、地元から来た人々に対して正確な判断の資料を与えておることは私は思いませんが、それによると、今述べたように三島委員長は県の調査特別委員会に報告しておるが、農林省と協議したこともないものが、干拓その他営農に支障がないとは何を根拠にして言われたのでありますか、防衛局長経理局長も、あるいは建設本部長もお立ち会いになったでしょうが、その事実いかん。
  209. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 三島委員長がどういうおつもりでお話しになりましたか、私つまびらかにしません。そしてまたそちらにおいでになりましたときも、私も防衛局長も実はその席に立ち合っておりません。おそらく空幕で詳細な御説明をしたものでございます。それで三島委員長一行は東京へおいでになって、ただいま御指摘になりましたようないろいろなこまかい数字のデータについて、もっぱら空幕において御説明を申し上げた。そのあとで、説明だけでは不十分だから一つほかの飛行場を見たいというお話がございまして、空幕の管理部長がお供をして松島に行ったわけでございます。松島は御承知のようにF86F——ちょうど今後われわれの希望いたしております美保の機種と同じ機極でございます。これは私は空幕の管理部長から聞いた話でございますが、同日は非常に天候に恵まれて、松島の基地におきましては四十機ばかりのF86Fが上空を飛んでおった、稼働率が非常に高かったというような状況でございました。それで現地をごらんになった委員の方々が、何キロ離れた場合にはどういう感触だということを一々実験になったわけでございます。なおそのときに、現地では豚とか鶏なんかが、騒音に驚いて子供を生まなくなったり、あるいは卵を生まなくなったりするといううわさが飛んでおるかどうかということで、松島の助役さんに直接お話をお聞きになった。ところが助役さんは、そういうことはございません、現にそこに建築しつつあるものはこれは豚小屋です、全然そういう事実はありませんというお答えがありまして、それでわれわれとしてそれは杞憂だったかなというような感想を漏らされて、現地にそれ以上突っ込んでおいでにならなかったという報告を管理部長から承っております。従って今先生がおっしゃったお話は、おそらく三島委員長がそういう東京における説明、あるいは松島における実験等からごらんになって、現地にお戻りになってからお話しになったのではないかというふうに考えられます。
  210. 三浦一雄

    ○三浦主査 ちょっと足鹿さんに御相談ですが、今の問題はもう約一時間以上おやりになったのですが、これは特に御希望があってお許ししたのですけれども、他にもまだ企画庁等の質疑が終わっておりませんので、一つ適宜に終了するようにお願いしたいと思います。もしもなんでしたら、まだ第一分科会もやっておるそうですから、第三分科会農林省関連事項ということでお許ししてあるのですから、その点をおくみ取り下さるようにお願いします。
  211. 足鹿覺

    足鹿分科員 できるだけそういうふうにしたいと思っております。  この点は新聞記者が、はっきり中海干拓等には影響ないと結論を出しておる、こういうふうに報道しておりますから、その真偽をめぐっての論争になりますので、これは別な機会に譲りましょう。とにかくあなた方は、あの干拓の計画についても、地元のいろいろな諸条件についても、頭から問題にしておらぬ、防衛庁の独断の上に立って事態を進めようとしておる、そういうことは大体言えると思います。  補償の問題でありますが、これは水産庁に伺います。これはあとで触れたいと思っておりましたが、公有水面埋立法施行令によりますと、五十町歩以上は建設大臣の許可、それ未満は本法第二条によりまして「埋立ヲ為サムトスル者ハ地方長官ノ免許ヲ受クヘシ」ということになっており、さらに四十二条で「国ニ於テ埋立ヲ為サムトスルトキハ当該官庁地方長官ノ承認ヲ受クヘシ」とございます。そうしてその承認を受ける場合の条件といたしまして、同法施行令によりますと、いろいろな場合を想定して、規定しております。すなわち漁業権者等の同意を必要とするということになっておりますが、補償の基準については、漁業の場合漁業権と漁権という言葉が使われておりますが、漁業権とは何か、漁権とは何か、その解釈と、公有水面埋立法を適用する場合の見解を一つこの際明らかにしていただきたい。
  212. 高橋泰彦

    ○高橋政府委員 補償関係の御質問でございまするが、ただいま御指摘になった通りでございまして、公有水面を埋め立てする場合には、漁業権者の同意を必要とするものと考えております。その補償算定の基準でございまするが、これは他の法令にございますように、通常生ずべき損失は補償さるべきものというふうに心得ております。
  213. 足鹿覺

    足鹿分科員 これは水産庁としては漁民の生活を守り、漁業の振興をはかられる場合において重要なことでありますが、次長の御答弁ではあまりにも抽象的で、私にはよくわかりませんが、漁業権とは、知事が免許をしたものをさして漁業権といいますか、それ以外の漁権とは何をさしますか。
  214. 高橋泰彦

    ○高橋政府委員 漁業法によりますと、漁業権というのは共同漁業権、定置漁業権及び区画漁業権の三つを言うのでありまして、原則として知事の免許を受けるものを漁業権というわけでございます。ただ漁業法では、必ずしも漁業権という名称は使っておりませんが、先生御承知のように漁業は漁業権漁業だけではなくて、通常知事の許可を要する漁業並びに農林大臣の許可を要する漁業等があるのでございまして、その場合、漁業者はそれらを通称漁業権という名称を使う場合がありまするけれども、漁業法上の漁業権といいまするのは、ただいま言いましたように、知事の免許を受ける三つの共同漁業権、定置漁業権、区画漁業権、これを漁業権というのが正確だろうと考えます。
  215. 足鹿覺

    足鹿分科員 防衛庁に伺いますが、昭和二十八年七月一日に原案が公布され、その後昭和三十年七月十一日に改正になりましたもので「陸上・海上・航空、各自衛隊等における土地の購入又は使用に関する対価及び補償基準要綱」「防衛庁経理局」というものが一つある。それから昭和三十三年十一月二十一日、防衛庁長官左藤義詮長官の名において「教育施設騒音防止対策工事費補助金の交付に関する訓令」というものがある。補償の基準としてはこの二つしか私ども存じておりませんが、ほかにあったらそれを明らかにしていただきたい。なお防衛庁経理局の出した補償基準要綱の三十条にあります漁業補償とは、ただいま水産庁次長が説明したものをさしておるのかどうか、その点を明らかにしていただきたい。
  216. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 騒音補償あるいは漁業権等に対する補償の通達は、ただいま御指摘になりました二つでございます。それから第二の点は、これはただいま水産庁からお答えになりました漁業権に対しては、これは全部補償の対象になります。
  217. 足鹿覺

    足鹿分科員 水産庁に伺いますが、本日は資料を忘れてきましたが、知事が知事名によって漁業者に許可証というものを出しております。その件数は相当多数に上っておりますが、そのもの等は漁業権または漁権の範囲内におけるものでありますか、その他の手続によるものでありますか。これは県規則で公布しておるようでありますが、その県規則の根拠法は漁業法その他何でありましょうか。
  218. 高橋泰彦

    ○高橋政府委員 御指摘の知事の許可を要する漁業権というのは、漁業法第六十五条の知事に権限を委任した規定によりまして、知事が当該県の漁業調整規則に基づいて知事の許可を要するものとしてやっておる漁業でございます。従いまして、正確に申し上げますと、この種の漁業は性質としては営業権に非常に似ておる性格のものでございまして、漁業法でいう漁業権には正確には該当しないわけでございます。しかしながら、これらの、営業権と申してもいいかと思いますが、この知事の許可を受ける漁業がいろいろな制限を受ける場合に、補償の対象になるかならないかという問題は、漁業法でいう漁業権に該当するかしないかとは別の問題でございまして、たとえば駐留軍によるところの漁業補償の問題、防衛庁によるところの漁場制限の場合、こういう漁業を一般的に制限する場合には、知事の許可漁業といえども補償の対象になっておることは御存じの通りであります。
  219. 足鹿覺

    足鹿分科員 恐縮ですがもう二、三問お尋ねさせていただきたいと思います。  先ほど私が指摘した佐藤長官名のものと経理局長名の要綱、それによるということでございますが、よろしいですね。ほかにはないのですか。
  220. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 ほかにはございません。
  221. 足鹿覺

    足鹿分科員 そうしますと、私が先ほど指摘しましたように、飛行機の飛ぶ直下とかあるいは騒音被害の大きいと想像される地帯の人々が、自分のうちは三百万円もらう、あるいは千五百万円もらうということを思い込み、また思い込ませたものがあるというような事態は、今までありますか。またこれを基準とするならば、どういう適用をしたならばそういう数字が出るのでありますか。この要綱によりますと、漁業権のみならず、海上の問題は別としまして、宅地あるいは建造物、農地あるいは使用権その他いろいろな点について詳細触れておりますが、それらのものを計算して出された場合に、たとえば従来民家の移転等をやられた場合、それらの根拠法を基準としてやられた場合にどういう事態が起きておりますか。そういうことは荒唐無稽の全くの想像だと思いますが、現地ではとにかくその思い込ました者があり、またそう思い込んでいる。それがもらえなければいやだ、こういうわけです。それは保守とか革新とかということじゃないのです。その点はどうですか。
  222. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 規定といたしましては、ただいま申し上げましたように、二つの通達によって補償を行なっております。ただ移転補償の問題でございますが、現地で百万とか三百万とかいうことがうわさとして飛んでおるというお話は、私もどこからそういううわさが出ておるかわかりません。ただ、たとえば滑走路の直下にあって、騒音に耐えられない、そのために移転をしたいというような方がございますと、それは規定ではなくて予算措置として移転の補償ができ得ることになっております。むしろこれは三十六年度の予算でそういう移転補償の金額を要求しておるわけでございまして、従来調達庁においては実績があるようですが、防衛庁におきましては従来一件だけ、浜松においてそういう実績を持っております。
  223. 足鹿覺

    足鹿分科員 それはこの昭和三十六年度一般会計予算二百四ページ、総理府所管防衛本庁の二十項、移転等補償金千六百四十万、これでありますか。
  224. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 さようでございます。
  225. 足鹿覺

    足鹿分科員 今までは全くない。これは何を根拠として出すのですか。予算措置と言われますが、出す根拠は二つしかないではありませんか。何を根拠としてそういうものを予算に計上されております。
  226. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 これは予算によります行政措置として支出をいたしております。
  227. 足鹿覺

    足鹿分科員 従来はないと言っていたでしょう。一件あったということなんですね。新しく千六百四十万円を計上されたことは、れっきとしたあなた方みずからが作った二つの通達あるいは要綱によって基準が示されているのでしょう。それ以外の予算措置と申しますと、あなた方はつかみ金を国費においてやるのですか。
  228. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 これは必ず法律的に裏づけがなければ補償金が出せないというものではございませんで、たとえば移転等補償金にいたしましても、また損害賠償等による補償金にいたしましても、予算的に認められておりますれば、その範囲内において予算目的に合致しておれば、支出ができるものと考えております。
  229. 足鹿覺

    足鹿分科員 そうしますと、あなた方が予算を計上されたその算定の基準は何ですか。
  230. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 この三十六年度の予算で要求いたしております千六百四十万円は、美保ではございませんで、ほかのところでございます。大体移転をいたしますために必要なる金額を各項別に算定をいたして要求をしておるわけでございます。
  231. 足鹿覺

    足鹿分科員 それはどこですか。
  232. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 新田原でございます。
  233. 足鹿覺

    足鹿分科員 それはおかしいじゃないですか。予算措置なら何でもできるという御解釈のようでありますが、この昭和三十年七月十一日改正公布になりました補償基準要綱は膨大なものでありまして、建物、建物の一部、工作物及び設備、使用開始に伴う補償、その他立毛あるいは立木竹の移植、建物、工作物及び設備の移転または移築等々、ちゃんと根拠があるじゃありませんか。なぜこの根拠を無視して予算措置でいかなければならぬのでありますか。私はいろいろと検討してみますと、防衛予算というものは、一般会計の計上額、国庫債務負担行為額、繰り越し明許及び調達庁の施設提供費等、以上の四つのファクターから伸縮自在になっておるようであります。これはあたかも戦前の帝国議会が軍事費に対しては一切審議をする権限を奪われておったそれと最近の傾向は事実上同じようになってくる。だんだんこういう事態になるのでありますが、私は、現在の予算総則の根本の精神は、単年度の会計の原則を堅持しているものである、それが健全財政を維持していくゆえんであろうと思う。ただ継続して物事をなす場合においては、やむを得ざる場合としての例外措置を予算総則の随所において認めておるにすぎないと思う。しかるに何ぞや、まだ具体的な計画もなければ調査も行なっておらぬ、地元住民の意思も聞いておらぬというものを堂々と予算に計上し、あるいはまた私が今指摘しましたような基準等によらざる予算措置であればまあよろしかろう、やり得るんだというお話を経理局長はなさいましたが、それはあなた防衛庁本庁その他の経理の総責任者としては少しずさんではありませんか。かりに今までは慣例となってそういうことがあったとしても、この二つの基準に基づいて、そして正確に算定されることがあなたの本来の任務だと私は思いますが、あなたはただいま言われたことに対して責任をお持ちになりますか。
  234. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 多少説明が不十分でございました点はおわびいたしますが、規定を全然離れてという趣旨ではございませんで、長官の通達において、直接規定がない場合におきましても、この規定の中には除外例が認められておりまして、その他必要がある場合には長官の承認を得て補償ができるということになっております。従って、これは具体的に、こういう騒音による移転補償というものは規定してございません。ございませんが、しかし個別的な承認を得て支出ができるということに相なっております。
  235. 足鹿覺

    足鹿分科員 先例のない移転補償……。
  236. 三浦一雄

    ○三浦主査 たびたびですけれども、農林省関係ならば許しますけれども、それはちょっと無理じゃないですか。——それでは簡潔に一つお願いをいたします。
  237. 足鹿覺

    足鹿分科員 あなたは過去に例がない、またこの基準にもどうも正確に載っておらぬ、それはいわゆる防衛庁長官の裁量によってきまるんだ、こういうお話でありますが、それはおかしいではありませんか。何のために基準が設けられておるのであるか。しかもこういう基準は、農林省の干拓経費は大体において一反歩十五万円程度のものでありますが、今あなた方が計画されようとしておりますものは、一反歩三百万円をこえるでしょう。もっとふえるかもしれません。とにかくべらぼうなものであります。そういうはたの官庁の経費と比べれば著しい懸隔のあるもので、膨大な国民の血税を、基準にも基づかない、何をやっても最後には長官決定でいいということは暴言ではありませんか。法の欠陥であるならば、当然それは基準を明らかにして、そして住民をしてよるところによらしめていくのが私は本来のまじめな政治だと思います。私は、あなた方が基準もない予算措置でつかみ金を分けるようなことを言うから、一反歩三百万円、千五百万円もらえるというような荒唐無稽に近いことを地元住民をして思い込ませる、それをあなたたちは賛成署名があった、地元民は賛成の者もあるというふうに鬼の首をとったように誤り判断されておるのではないかと思う。あなた方はもっと事態を、その奥にあるものをもっとお考えになってしかるべきだと思います。  それから埋め立てを今やらんとして計画を立てておるところは、中海であります。そうしますと、公有水面の埋め立ての免許権はどちらにあるという考え方に立ってあなた方は計画を進めておられますか、これが一点。  それから地元住民の意思を明らかにするために、昭和三十一年十一月十五日に米子市議会が、保守も革新もない、当時の拡張計画に対して反対をした決議文もございます。これは朗読を省略して速記録に載せていただきたいと思いますが、提案の趣旨弁明あるいは賛成の意見発表等の中には、郷土を思う熱情に燃えたものがある。何らイデオロギー的なものでもなけらねば思想的なものでもない。ほんとうに郷土の平穏と豊かな生活をこいねがう至情の表われのものであるということをつけ加えておきますが、最近は二月六日に安来市議会、続いて三十六年二月七日には東出雲町議会等々、引き続き地方住民の意思を代表する機関で反対の意思表明をしておりますが、これらの意思表明後における行動を、あなた方は庄子氏やその他いろいろの人々を通じていろいろな形で説得をしておる。とにかく反対派の言うことは科学的根拠がない、こういうことを言って、もっともらしい数字を並べて、そうして架空の上において説得活動をしておられます。それは地方住民の真の意思に待とうというまじめな態度ではないと思いますが、そういう地方住民あるいは地元住民の意思をどういうふうにあなた方は認識しておられるか。これが第二点。  それから企画庁長官にお伺いいたしたいのは、時間がありませんので、端折って要点だけ申し上げますが、あの地域は、山陰におけるところの大山出雲総合開発特別指定地域であります。それに基づきまして、現在総合計画が着々進んでおる地帯であります。そして通産省の工場立地調査法に基づく指定地域であります。また現在自治省が考えております基幹都市の指定の候補地にもなっておるやに聞いております。また建設省の広域都市の指定をも、山陰でほかのところといってはありませんので、それをも指定を受けんとしておるところだと聞いております。そのように、あらゆる角度から、後進性の打開、いわゆる太平洋地帯の都市の過度集中を排して、いわゆる辺境の地にも、均衡ある工業の再配置をしたいということは、今度の予算の中のあなた方の中心の方針だと私どもは承っております。そのような事態を根底からくつがえすようなことが、防衛庁のみで、農林省とも相談をしない、企画庁とも通産省とも運輸省とも、どことも相談しないで——長官はたびたび離席をされましたから、私の質疑応答をお聞きになることができなかったことを残念に思いますが、とにかく防衛庁としてはそういう方針を進めつつあるのであります。これらの点について、山陰の後進性打開という点から考えられまして、そういう地帯に影響がないとお考えになりますか。また影響ありとするならば、いわゆる経済の均衡ある成長発展のために、防衛庁のそのような考え方は、地方開発の本義に反するものである、こういう立場から、明確な意見を発表せられ、また農林省も国費百億近いところの経費を投じて、すでに中海干拓淡水化を実施寸前に至っておる今日、この無謀な防衛庁の計画に対して、いわゆる虚心たんかいに、その中止あるいは撤回を命じていただきたいと私は思います。幾たびも繰り返して申し上げますが、これは、私どもは、山陰の僻地の地方住民の将来を託した重大な地帯であるがゆえに、あえて他の同僚委員にも非常に御迷惑ではございましたが、長い時間をおかりした次第であります。私は、決して一つ立場にとらわれ、あるいは観念によって、偏見を持って質問戦をする立場ではございません。郷土を愛し、その平和な発展を願う至情から、地方住民の声をこの国会を通じて防衛庁当局にもしかと聞いていただき、関係方面の御善処を私は特にこの際強く求めるものでありますが、これについて、国土の総合開発のその中心官庁を代表されるところの迫水長官、また農林省の干拓淡水化推進の中心に立たれておる農林大臣の御所信をこの際最後に承りまして私の質問を終わりますが、両大臣の御答弁の前に私の指摘した点から順次御答弁をお願いいたしたいと思います。  まだたくさんございますが、また別の機会に申し上げて、他の議員の御迷惑をできるだけ避けたいと思いますので、きょうはこの程度で私の質問を終わります。
  238. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 ただいまの御質問の第一点の公有水面埋立法による許可権限の問題でございますが、私たちといたしましては、ただいまのところ鳥取県知事がその権限をお持ちになっておると考えております。  第二点の、地元で非常に強い御反対がございましたことはわれわれも十分承知いたしております。そういう反対に対してどういう認識を防衛庁として持っておるかという御質問でございますが、これらの御反対の中には、非常にごもっともなと申しますか、騒音等の点で御迷惑をおかけする土地もございます。事実そういう点がないとは申しません。しかし、先ほども申し上げましたように、中には全く必要以上におそれておられるというような面がないでもございません。従って、われわれといたしましては今後も事実を事実として、こういう計画ならばこの辺についてはこういう被害がございます、しかしこの辺についてはこういう被害はございませんというその事実を明らかにいたしまして、その上でその損害に対しましては十分な補償をしますと同時に、またその必要以上にお考えになっておられる方には、その事実を明らかにして、誤解を解いていただきたい、こういうふうに考えております。
  239. 周東英雄

    ○周東国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたように、防衛庁としては、一応のめどがつきましたならば、協議をされることになっております。もちろん地元の方々の理解を得るということが第一でありますが、私どもとしては、せっかく立てました干拓設計、干拓事業と矛盾するようなことのないように、十分協議の際におきまして善処いたしたいと思います。
  240. 迫水久常

    迫水国務大臣 具体的の問題につきまして、はなはだうかつでございましたが、本日承ったような次第でございまして、従って私の方にまだ何にも連絡がございませんでしたが、総合開発の見地から至急に調査をいたしたいと思います。
  241. 三浦一雄

    ○三浦主査 この際農林省から未提出法案の要綱についての説明を聴取することといたします。周東農林大臣
  242. 周東英雄

    ○周東国務大臣 農林省関係法案の中で予算関係いたす法案が法案として未提出になっておりますこと、そのために皆様の予算審議に対しまして非常に御迷惑をかけておることに対しましては、心から恐縮に存じております。  その中に五つございますが、一、大麦及び裸麦の生産及び政府買い入れに関する特別措置法案要綱、二、大豆、菜種交付金法案要綱、三、畜産物の価格安定等に関する法律案要綱これは大体明日の閣議、または明日の持ち回り閣議で提出ができると考えておりますが、今日はまだ要綱によって御説明申し上げることをお許し願いたいと思います。四、農業災害補償法の一部を改正する法律案要綱、五、農業保険事業団法案要綱、この二つにつきましては種々の関係からいたしまして少しく法案としての提出がおくれると考えます。大体今日はこまかく書いたものを提出いたしておりますから、まことに予算審議に御迷惑をかけておることにつきましてはおわびをいたしますが、これから各関係局長をしてこれらの要綱について説明をいたさせますから、どうぞよろしくお願いをいたします。
  243. 三浦一雄

    ○三浦主査 それでは須賀食糧庁長官
  244. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 ただいま大臣から御説明のございました関係法案の中で、食糧庁関係の麦と大豆の法案につきまして簡単に御説明申し上げます。  麦の関係の法案はお手元に要綱が差し上げてございますように、大麦及び裸麦の生産及び政府買い入れに関する特別措置法、この標題の示すような内容になっておるわけでございまして、大麦、裸麦は最近需給の事情が著しく変わっております。それに対する措置といたしまして、当分の間特別措置法によって措置を行なわんとするものであります。  それで内容の要点を申し上げますと、この要綱の順序にも掲げてございますように、農林省で従来の麦の需給の推移、また今後の見通しというようなものを作案いたしまして、これを基礎として大麦、裸麦についてここ数年の計画をもちまして、実際の需要に見合うような転換の方向を急速に進めて参りたいと考えておるわけでございます。それに即して政府買い入れの方も転換の計画と相呼応いたしましてきめて参りたいという考え方でございます。それで中央で麦作の転換方針、また国全体としての大、裸麦の政府買い入れ数量、こういうものを作案いたしまして、これを都道府県市町村を通じまして、末端にまでおろしていく考え方でございます。  それからこの施策の推進をいたしますのには、この要綱の第六にございまするように、転換奨励金その他の予算措置を伴っておるわけでございまして、ただいま御審議をいただいておりまする農林関係予算の中にも、麦対策といたしまして総計約四十億円の予算を計上いたしております。そのうち三十億円が、この要綱の第六の第一号にありまする転換奨励金でございまして、大、裸麦の他作物への転換を奨励いたしますために転換奨励金を出すわけであります。それから、転換に伴いまして、都道府県市町村、また農業関係の団体におきましてもいろいろ御活動を願うわけでありますので、それに要する経費もこれらによって支出するわけであります。なお転換関係の、転換作物の指導の推進でありますとか、そういういろいろな面につきましても、この法律の裏づけによりまして補助金を交付するつもりでございます。  それから麦の政府の買い入れは、第七によりまして、大、裸麦につきましては制限買い入れということを考えております。  それから、大、裸麦の政府買い入れ価格でございますが、これは現在食管法に麦の買い入れ価格の規定があるのでございます。大、裸麦は、冒頭に申し上げておりますように、需給の事情等が大幅に変わってきており、積極的に転換の促進をいたすわけでございますので、この第八に規定をいたしておりまするように、従来のパリティ価格を下らざるものとしという基準できめておりまするきめ方を、大、裸麦につきましては今回改めて参りたいと思っておるわけでございます。従いまして、この法律は、今申し上げましたような特別措置法でございまするので、この法律が施行されております間は、食管法の四条の二の規定は、大、裸麦につきましてはこれを適用しない。いわゆる食管法の特例法律という形に相なるわけでございます。  なお、最後に第十としまして、昭和三十六年産の大麦、裸麦の買い入れでございますが、これはすでにまきつけをいたしておりますような関係もありまして、できる限りこの買い入れについては農家に迷惑を及ぼさないという考え方をもちまして、三十六年産の大裸麦は過去三年の政府買い入れ数量を基準としまして、これに生産事情を参酌してきめるという特別のきめ方を経過的にいたしておるわけでございます。  以上が大、裸麦の特別措置法に関する概略の御説明でございます。  それからもう一つ、大豆、菜種交付金法案要綱がございますが、これは大豆、菜種につきまして、大豆の輸入の自由化に伴いまして、大豆及び菜種の価格が低落をすることが予想されますので、当分の間交付金を交付することによりまして、農家経済に与えまする影響を防止したいという考え方でございます。この交付金は、集荷業者を通じて出す考え方でございまして、その手順等が第二以下にきめてあるわけでございます。  第二以下できめておりまする要点を申し上げますと、第二の一にありますように、まず基準価格をきめるわけでございます。これは、従来農産物価格安定法におきましてきめておりました大豆、菜種の政府買い入れ基準価格、いわゆる農家に対しまして保障をいたします価格が従来の農安法にあったわけでありますが、それと同じような性質のものといたしまして、基準価格というものをまずきめるわけであります。それから、実際に大豆の輸入の自由化をいたしました場合、それらによりましておのずから市価が出て参るわけであります。それと基準価格との差額、それに集荷団体が要しまする経費等をそれぞれ加えまして交付金ということにするわけであります。  それから、この交付金は予算によりましても対象になる数量をきめているわけでございまして、この法律案の第三にもありますように、過去の出回り数量を参酌いたしまして対象数量をきめて参るつもりでございます。これをきめまする手続は、中央できめましたものを、都道府県知事、市町村長を通じてたんねんにそれぞれ割当をしていくという方法をとっております。こういう方法によりまして、合計三十億の大豆、菜種に対する予算を計上いたしておるのでありますが、それを実際に支出をいたしまする基準をそれぞれこの法律案の各要綱できめているわけであります。  なお、これは三十六年産の大豆、菜種から適用することにいたしております。三十五年産につきましては、別途予算措置をもちまして早急に処理をするという方針でありますことをつけ加えておきます。  簡単でございますが、以上で終わります。
  245. 安田善一郎

    ○安田政府委員 畜産物価格安定等に関する法律案要綱をごく簡単に御説明申し上げます。  予算といたしましては、これは畜産物事業団——これは仮称でありますが、この設立に要する経費として、政府の出資五億円についての経費ということで予算関係しておるわけでございます。種々委員会でも御指摘になりましたように、畜産物の流通改善、価格適正化に関しまする諸制度がまだ弱いではないかという御意見がございますが、これに対しまするものの一つでございまして、きょうの法制局の審議では、畜産振興事業団という名前はどうだろうという審議をただいまもしておるわけでございますが、これは政府出資十億、民間出資一億五千万でまず設立いたしまして、これに一時借入金制度、また長期の借入金制度を加えまして、従来の酪農振興基金法というものに基づきまする酪農振興基金の業務をあわせて行ないますると同時に、指定乳製品、指定食肉の買い入れ、保管、売り渡し、また、輸入にかかわりまするものの指定乳製品、指定食肉よりは、もう少し広範囲な乳製品及び食肉を買い入れまして、その事業団の売り渡しまする価格、買い入れまする価格を、上限の維持価格あるいは下限の維持価格といたしまして、上下に価格を設けまして、その操作によりまして、乳製品及びその原料になる生乳、原料乳、指定食肉、及びそのもとでありまする肉畜の価格の安定をはかりたいと思っているものでございます。簡単に言いかえますと、新しい政府出資を中心にしまする畜産振興事業団の機能を新設運営いたしまして、これに従来の債務保証事業のような酪農振興事業を加えまして、主要な畜産物の価格安定とその原料及び乳業者に対する金融の円滑化をはかり、これに酪農振興基金の廃止を伴っておるものでございます。  以上が要点でございます。
  246. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 農業災害補償法の一部を改正する法律案要綱、それから農業保険事業団法案要綱について御説明申し上げます。  農業災害補償制度の抜本的な改正をしようということで、この二つの法案の準備を現在いたしておるわけでございますが、この中で農業保険事業団法上案の力が直接三十六年度の予算関係するものでございまして、農業災害補償法の一部改正法律案の方は、この改正制度は三十七年度から実施をしようということで考えておりますので、三十六年度の予算と直接関係はございません。  第一に、農業災害補償法の方の内容について、条項を追って申し上げてみますると、第一に、現在の画一的な強制加入方式の緩和をはかっていこうということ。それから第二に、農作物共済につきましての補てんの内容を充実していきたい、こういうことでございまして、その内容といたしましては、原則として農家単位制というものを取り上げていきますとともに、補てんの金額を引き上げていきたい、こういうことでございます。それから第三に、農業共済組合等の農作物共済にかかる共済責任を拡充いたしまして、従来県の連合会で持っておりました通常災害の責任を市町村の末端の共済組合に全部おろしていこう、こういう考え方を基本にいたしておるのであります。第四番目に、農作物共済の共済掛金率の決定あるいはその共済掛金の国庫負担等の改定はきわめて技術的な問題でございますけれども、そういう内容を規定していきたいということでございます。それから第五番目は病虫害についてであります。その内容といたしましては、病虫害がだんだん防除できる態勢になってきておりますので、特殊なものを除きまして、病虫害部分の掛金の割引ができるようなことを一つ考えていきたい、こういう内容のものでございます。  こういう内容でございまして、実際の実行は三十七年度からということで考えておりまするが、これらの制度を実行するにあたりまして、農業機構といたしましては、農業保険事業団というものを中央に作ろう、こういうことを考えておるのでありまして、これが来年度の予算関係をいたすのであります。三十七年の二月から、現在の農林省の特別会計でやっておりまする仕事を、農業保険事業団、これは仮称でございまするけれども、そういうものに移りまして、事業の責任を明確にし、能率を上げた運用ができるようにしたい、こういうことで考えておるわけでございます。  事業団の方の内容は、大体その他の事業団等の例文にのっとっているようなものでございますが、事業団は法人とする、役員及び職員の規定、業務に関する規定、この業務につきましても、この事業団がどういう仕事をやるかという規定が農業災害補償法の方にも入ろうと思いますので、ここには、一応要綱といたしましては、とりあえず農業共済組合または共済事業を行ないます市町村がやっている共済責任を保険するということを中心に考えているわけであります。それから財務及び会計、監督の条項、こういうふうなものが一応その内容になっておるのでございまして、昭和三十七年の二月から事業団を発足させる、こういうことで、予算といたしましては、事業団交付金として二億七千五百万円というものを計上しているわけでございます。  以上簡単でございますが、御説明申し上げます。
  247. 三浦一雄

    ○三浦主査 これで説明は終わりました。
  248. 川俣清音

    ○川俣分科員 議事進行について。——今の説明だと、何も法案をおくらす理由がないようでありますから、これだけ説明ができますれば、明日じゅうに法案を提出願いたいと思います。今の説明だと、何も問題はなさそうだ、問題がない説明ですから、それならば即刻出せるはずだから、おくれる理由はないと思いますので、このような手続をしてほしいと思います。
  249. 三浦一雄

    ○三浦主査 速記をとめて。   〔速記中止〕
  250. 三浦一雄

    ○三浦主査 速記を始めて。  それではこれから経済企画庁に対する質疑を続行いたします。淡谷悠藏君。
  251. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 企画庁長官には、この前の総括質問の際にいろいろお伺いしたいと思ったのでありますが、おかぜを召しましたそうで、大へん残念に思っております。実は今度の国民所得倍増計画を読みまして、計画が各業種間の所得の格差と地域間の所得の格差を一日も早くなくしようという熱意のあふれている点に敬意を表したいと思います。特に農業方面におきましても非常な熱意を持たれまして、この中に、わが国経済では農業革命と工業高度化とが結合した形での構造変革が進められることになるというふうな、非常な情熱を傾けられたことに心強さを覚えるわけでありますが、この農業革命とあえて言うほどの構造革命に実は非常な期待をもってしさいに読んでみました。ところが、農業の構造を改革し所得の格差をなくするために、第一の必要な条件となる土地の問題について、私にはどうしてもうなずけないものがございますので、これはしさいに読んではみましたけれども、なかなか出てこない。きょうは大へんおそくなりましてお疲れではございましょうけれども、こういうふうな観点からじっくりとお答えを願いたいと思うのであります。私この計画に基づいて調べたところによりますと、一ヘクタール以下の土地の総計が大体二百三万町歩ある。それから一ヘクタール以上のものは二百三十五万町歩、こういうふうな計が出たのですが、これはあなたの方の集計と違ってないでしょうな。
  252. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 現在の実績は、すぐ調べましてお返事いたします。
  253. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 大体四百三十万町歩というのが今の統計でもわかっておることなのですが、そうして十年後における農業の企業的な確立というものの形を、この計画書に基づいて読んでみますと、まず自立家族経営としては二・五ヘクタールを基準として百万戸、これで概算二百五十万ヘクタールは要りますね。しかもここで経過的非自立経営というものを言われ、さらにこの経過的な非自立経営が二つの方向に分離して、一つは自立家族経営となり、一つは協業化して近代的な農業を作る、こういう構想のようですが、これに大体水田の協業というものを、経営面積を二十から四十ヘクタールに押え、畑の協業は四十から六十ヘクタールに押えますと、十年後の農地の計画は六百万ヘクタールくらいになるように拝見したのですが、この点はどうでしょう。
  254. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 六百万くらいと見ております。
  255. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 そうすると、この四百三十万町歩の耕地を六百万町歩にふやす構想というのは、一体どこにございますか。実は私拝見したけれどわからない。どういうふうな伸び率でこの差額の百七十万町歩というものを十年間におふやしになるのか、この点を一つお聞きしたいと思います。
  256. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 ただいま耕地面積は百七十万町歩の増加とお話ございましたが、たしか三十万町歩程度の増加になっておりましたので、四百三十万町歩と淡谷先生のおっしゃいますのは、あるいはこちらの考えております数字とちょっと違うのでございますが……。
  257. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 何年の統計ですか。
  258. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 こちらでは基準として三十一−三十三年平均を使っております。
  259. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 私もこれは同じように農林省の統計に基づいて出した数字なのですが、総計四百幾らになります。
  260. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 これは北海道を入れてでございますけれども、三十年で耕地面積は五百八十万町歩になっております。
  261. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 三十何年の統計ですか。
  262. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 五百八十万町歩は昭和三十年度現在でございます。
  263. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これは私も見たのですが、少し違うようですが、まあこれはいいです。そこでこの五百八十万町歩をちょうど分解していくボーダー・ラインとでも申しますか、経過的非自立経営というふうに見ておりますが、一ヘクタールを基準にした場合に耕地の面積はどういうふうな分解をしますか。
  264. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 将来の姿につきましては、完全非自立経営で百万戸、経過的非自立経営につきましては、実はいろいろ小委員会で検討いたしましたが、将来の経過的非自立経営のことにつきましては、いろいろ検討すべき点もありますので、小委員会報告には掲げておりますが、この倍増計画の本体には入っておらないのであります。大体小委員会の段階におきましては、農業の近代化が進んだ場合においては、この経過的非自立経営というのは二百五十万戸程度、平均一町歩というふうに見ておるわけであります。
  265. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 その土地の面積がどれくらいに分かれるかということです。一ヘクタール以下のものがどれだけ、一ヘクタール以上のものがどれだけかということです。
  266. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 御承知のように、この農業近代化小委員会におきましては、農家を三つのカテゴリーに分けまして、経過的非自立農家は平均一町歩と見ております。その下の完全非自立農家は平均〇・五町歩、二百万戸というような見方をいたしておるわけでありますから、全体として五百五十万戸とすれば、その中の約四割足らずが平均〇・五町歩というような格好になっております。
  267. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これは非常に大事なことですが、私のも実は国会の方に配られましたものからとった数字ですが、あなたの方にもございましたら、あまりに数が違いますから、引き合わせてみたらどうかと思います。昭和三十年の三反未満の農家というものは、戸数にして百二十六万七千九百十五戸と見ておりますが、これは違っておりますか。
  268. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 昭和三十年の三反未満の農家戸数でございますね。百二十六万八千戸が内地で、北海道は三反未満というのはございませんで、五反未満が四万二千戸でございます。
  269. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 そうしますと三反歩は北海道は関係ないですね。それで面積は二十二万一千五百四十一町歩と出ていますが、どうですか。三反歩未満の集計ですね。
  270. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 ちょっと手元の統計にはその面積はございませんので……。
  271. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 どうもこれは数字を一々合わしていると長くなりますから、この点はちょっと保留しておきますが、たとえばあなたは五百八十万町歩とおっしゃる。私は四百三十万町歩と言う。どこか北海道か何かが入る入らないというような違いがあるかもしれませんが、いずれにいたしましても六百万町歩となりますと、今までの農家の持っております土地は全部協業農家か二・五ヘクタールの農家に入らないと、これだけの反別にはなりませんね。どうですか。
  272. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 農家の数の減少をある程度見込んでおりますので……。
  273. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 どれくらい見込んでおられますか。
  274. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 現状より約五十万戸の減少を見込んでおります。
  275. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 五百八十万六千百五という三十年度の戸数の計がここに出ておりますが、多少数が違いましても一割の減ですね。これはおそらく一町歩未満の農家だろうと思うので、この戸数が減じまして、全部土地を放したとしても数はしれたものです。どうもこれはあとでいろいろ総理が問題にされておりましたけれども、農家の六割首切り論は間違いなんだ、これを他の産業に吸収するのだと言っておりますけれども、どうもだんだん話を進めて参りますと、このうちのほんの一部が他の産業に吸収されて、特に兼業農家というものを残して、農外所得もやはり当てにして農業所得の増加を考えておられるようですが、これは企画庁長官も同じ御意向ですか。いわゆる第二種兼業を残したままで、一方においては食糧も自給させる、一方においては農外所得も取って、この農家の所得を増すのだ、手をつけないのだというような答弁は、農林大臣からも総理からも伺っているのですが、企画庁長官の御意思はどうですか。
  276. 迫水久常

    迫水国務大臣 結果的に申しますと、お話の通りだと思います。つまり専業農家、第一兼業農家、第二兼業農家というものはみなそういう形で残る。ただこれを所得倍増計画の方では自立家族経営農家、経過的非自立農家、完全非自立農家、こう分類しておりまして、それが専業農家、第一兼業農家、第二兼業農家の分類にぴたっとうまく合わない、その間におのずからズレがあるものですから、そこでその間に所得倍増計画と総理大臣の言っておられるものとをあわせて説明することになると、非常にむずかしいところが出てくるのです。
  277. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これは計画は非常に勇ましく立てまして、もう十年後の青写真もできておるし、農業革命もやるのだということがありますけれども、手をつけてみたら、総理が言う通りまさに難事中の難事だろうと思う。それにしても一応計画だけは根拠のあるものにしておきませんと、この四十何億の予算が泣きますので、やはり企画庁の仕事というものを無責任な青写真にしないようにするために、もう少し煮詰めてみたいと思うのです。  そこで二・五ヘクタール以上の自立農家を百万戸作る構想だけでも、農地の移動が行なわれないとこれはどうしてもできない。この農地の移動を行ないますというと、その農地を新しく開拓するか、第一種、第二種、両方を通じて兼業農家の土地を、無理のない方法かもしれませんが、兼業さしてこれを合併していくか、この二点しかないのですが、企画庁のほんとうの腹は、新しい農地を造成するところにあるのか、今までの農家の土地を無理のない方法で買い上げて、これを二・五以上の農家に集中するのか、どっちですか。
  278. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 耕地の面積はあまり拡大いたしませんで、労働力が他の産業にも農村から吸収される点、ことに若い労働力がまず流出いたしまして、初めは戸数はあまり減少いたしませんが、だんだん世帯交換が進行するに従いまして戸数にも影響して参ります。その場合にはやはり残った在村の農民がより大きな耕作をする、それからもう一つは今の第二種兼業、この近代化小委員会で完全非自立農家と申しておりますところは、実は現在第一種兼業よりも、家計調査によりますと生活水準も高いわけでございます。農外所得が非常に大きい形になっておりまして、そういう点を考えますと、たとえば農地法その他にある程度の変化がございまして、たとえば農地の委託耕作ができるとか、そういう道が開かれて参りますと、むしろ三反歩、五反歩を無理に家族労力でやらないでも、委託耕作に出すというような形で農業をやる人の経営の面積が広がるというような可能性も考えておるわけでございます。
  279. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 私は現在の第一種兼業農家、第二種兼業農家というのは、土地を放さないという一つの信念を持っているわけです。というのは、これは確かに低賃金がなくなる、割がいい賃金で頼まれてきますと、若い階層だけでなしに、農業がいやな人があるでしょう。けれども、自給自足の農業のあり方というものは、普通の流通経済の採算に乗らない強味を持っております。ささえております。同時に、土地を所有したという意味の形でいつかは地価が上がるだろうという一つのばく然とした投機心がなかなか土地を放さない。これを無理やり放さすと暴動が起こりかねないような抵抗があると思う。これは正直に言って、第二種兼業農家の数が非常に多い。三分の一もありましょうか。この農家を土台にして農業革命をやろうと思ったら、これは少し無理が生ずるのではないかと思いますので、むしろこれは第二種兼業農家、第一種兼業農家は今のままにしておいて、新しい農業の形態を新しい農地の造成に求められた方が、農業の理想を達成するのには早道だと思いますが、これは正直にいってあなた方の構想の中には農地造成の構想が入っていないんですがね。これは非常に大きな今の弱点でもあるし、今の農業基本法の弱点でもあるというふうにわれわれは考えるのですが、どうですか。
  280. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 農地の中には実は草地は入っておりませんので、将来の牧畜等の関係でそちらの方の面が広がることも考え得ると思うのでございますが、耕地につきましては、非農業の面の生産性が高くなるといたしますと、農業の方もほぼそれに比例して生産性を上げていく必要がございます。その場合には、限界的な耕地と申しますか、非常に労働条件の悪いところというのは、農業としても非常に困難な問題が出て参るわけでございましょうし、農業近代化小委員会の考え方といたしまして、基本問題調査会もそうでございますが、あまり耕地の拡大というものを見込んでおらないと考えておるわけでございます。
  281. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 どうでしょうかね。私は新しい畜産をやる場合に、従来の山林原野というようなものを畜産の場にすることは少々冒険ではないかという考えを持っております。これは御承知の通り日本の原野、つまり牧野もそうですが、おそろしく荒れております。これは牧野の土質というものは、草が自然に枯れて、それが自然の肥料になるので、非常に地味が豊かになりますけれども、放牧をしたら最後、還元するものはごく少量の排泄物しかありませんから、放牧地というものはおそろしく荒れます。従ってこれからの酪農というものは、農林省の方でも構想しておられますが、やはり単なる自然の牧野ではなしに、耕作した農地という構想が新しい構想ではないかと思います。従ってこれはあなたの方で従来の田畑以外の土地を耕地と思われないと、そこに少し考え方の相違が出てきますけれども、この草地、山地を耕作する形にしますと、やはり新しい農業構想では土地をもっとふやさないとできないでしょうね、どうですか。
  282. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 実は正直のところ私もあまり専門家でございませんのでだんだんむずかしいのでございますが、これは私農林省専門家から聞いたことでございまして、正式な農林省の意見になっておるかどうかわかりませんのですが、従来日本では牧草地がうまく発展しないということが常識になっておったのでありますけれども、ニュージーランドとかヨーロッパ等の最近の経験からいたしますと、肥料とか家畜の飼い方、放牧のいたし方によりまして、日本のような気候でもかなり牧野に変わる可能性も見られる。この方を大いに研究しょうというような話もあるようでございます。それからこの基本計画でも土地利用の面におきましては、飼料作物に対しての土地の面積が十年間に倍以上ふえるように考えてはおるわけでございます。
  283. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 土地の面積を倍にする計画がおありになれば私は実はけっこうだと思うのです。つまり田畑の耕地も入れ、それから山林原野の開放も考えて倍にするというのは、これはやや構想が立ちます。しかし現在の耕地面積だけで新しい農業をやろうというのは、ちょっと計画としても不可能だと思うのです。それから山地の問題ですが、ニュージーランドあるいは他のヨーロッパ諸国の放牧の仕方は全然日本とは違います。牧野そのものを交代するわけです。一ぺん放牧して草を食ってしまうと、あと二、三年間は休ましておく。広い沃野があって初めてできるやり方なのです。それからまたほうっておくのではなくて草を食ったあとには肥料をまきます。その点は一極の耕地に近い形態、牧野の手入れが耕地と同じような手入れになるような形でできるというようになっていきます。私はこまかい数字をあげますときょうはおそうございますから眠くなりますけれども、大体一ヘクタール以下の農家は半分なのです。ですから、半分の農家が大体土地を放さないでくるとすると、やはりそれを補うためには新しい農地、牧野を開放しないと、これはいやでも農民の首切りが始まるという最後にきます。これから農業基本法のいろいろな論争も行なわれましょうから、そこにわれわれが作った農業基本法と政府のお出しになっている農業基本法が、この農地造成をやるかやらないかによって、かなり違っているということがはっきり現われてきているのです。私は山林原野を開放するということは、一つの新しい農法の最初の第一のスタートになると思いますが、どうもこれは三浦委員長が農林大臣のころの構想なのですけれども、新しく山林原野の開放をやろうと思うと非常に抵抗があるということを聞いているのですが、これは第三次の農地改革をやるのではないか。そうした政治的な抵抗のために、これは企画としては非常にまずいけれども、農地の造成には手をつけないのだといううわさもございますが、これは作業の間になかったのですか、正面に言ってもらいたいのですが。
  284. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 私どもの聞いております範囲では、その点はなかったように存じます。最近の農家の統計によりましても、上層農家といいますか耕地面積の大きい農家がふえる。それから兼業農家もふえて中間がだんだん減るという傾向も見られますので、一方におきましていわゆる完全自立的な農家に進む。農業で一応他産業と所得のバランスするような経営、他方におきまして農業が従であるような副業、土地はただいま淡谷先生のお話のようになかなか手放さないかもしれないのですが、しかし所有権が移動するかしないかいろいろ問題があると思いますけれども、耕作として従来のようなやり方でやるかどうか。十年たちますとまわりの所得も相当上がって参りますし、地価の点も実は倍増計画で農業以外に必要な土地の面積を、住宅、工場用地、商業用地、街路、公共用地等について一応検討いたしておりますが、大体既存の耕地の三%ぐらいで、所得が倍増しまして、工業化産が三倍になりましても土地はその程度でございます。そのほか必要の土地は全部農地をつぶすわけではございません。埋め立て等もございますし、土地の需給関係からいっても、現在非常にあっちこっちで地価が上がっておりますけれども、全般的に申しますればこの情勢がいつまで続くかどうかも疑わしいと存ずるわけでございます。過去の統計をどう見るかによるわけでございますけれども、当時の委員会としてそれほど耕地面積をふやさなくても、内部の分解作用によりまして報告に書かれたような形の可能性があるのではなかろうかという議論になっていたように承知いたしております。
  285. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 現在の米麦を中心とした田畑の面積はこれにとどまるでしょう。しかし新しく果樹、畜産を入れてしかも近代的な農業をやるとすると、さっきあなたのおっしゃった通り、牧野とかあるいは新しい開拓地の必要がどうしても生ずるし、また第二種兼業、第一種兼業の人が土地を放さないと、何としても土地の新しい造成が必要になってくるのです。これは最初の池田総理の構想とまた国会における論議の過程におきましてはだいぶん変わってきたように思う。正直言って倍増計画のあとの方は、きょうは触れませんけれども、農業だけに関しては非常に大ざっぱな青写真のように考えますので、やはり虚心たんかいに新しい農業のいわゆる計画書に基づく革命のためには、この辺でもう一ぺん検討して、はだのきめのこまかな農業発展の形を考えてもいいのではないかと思いますが、その際にやはり今の農地造成というものに対してあまりかたくなになることはない。山林原野などは幾らも開放して、探せば場所がございますので、ここまではやはり伸ばすような構想を持たないと、非常に苦しい羽目になるのではないかと思うのですが、その点はどうですか。
  286. 迫水久常

    迫水国務大臣 きょうは淡谷さんから非常にいろいろなことを教えていただきまして、私はほんとうに感謝をいたしますと同時に、所得倍増計画の中で農業の面が私自身も一番弱いし、今お話のようにやや大ざっぱと言っては悪いですけれども、そういう感じが私もしておりました。ただこれは農業基本法という問題を農林省も考えておりますような関係から、根本的ないろいろな問題は農業基本法が出てからというように考えられましたので、こういうような格好になったものと私は思っておりまして、それで所得倍増計画と同時に所得倍増計画の構想というのが同じ閣議決定になっている。それにも農業基本法を中心にしたものの考え方を持っております。従いまして時期をいつということもちょっと申し上げかねますが、淡谷さんのおっしゃった通り、農業の部面というものは、農業基本法との関連においてもう一ぺん再検討したものが当然出てくる筋合いのものであると私も考えております。
  287. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 ぜひそうあってほしいと思うのです。それから特にさっきのお話の中間の農家が倒れていって二つの階層に分離をしたと言っておられるのですね。これは都会における中産階級の分解と同じような分解が農村でも行なわれている。これは今の中間と見られております一・五、一ヘクタール程度の農家では、機械を入れますと、この機械を消化するだけの面積はない。そうかといって自家用の労働でやる場合にはこれは大き過ぎる。従ってごく小さな、つまり五反歩以内くらいの休みのレジャーを利用した農業は非常に持ちがいいわけですね。それから昔のように肥料なども下肥などのようなきたないものを使わないで、簡単な化学肥料なんかもできるのでありますから、こういうふうな形で飯米百姓といったものがなくならない。そういうものを無理に放させると危険もあるし、農民の抵抗も強いのです。これはむしろ残したままにしておいて、思い切った構想をこれに持っていかれた方がいいと思いますし、また機械を入れるにしても、二・五ヘクタールというものをもう一ぺん私は御検討願いたいと思う。これは現在の耕地をふやさずに土地配分の構想を描いたので、非常に窮屈だったろうと思います。今の機械の性能では、二・五ヘクタールでは使えないのです。少なくともトラクターなども、ハンド・トラクターがだんだんすたれていっています。あのハンド・トラクターなんというものは、外国では偉い政治家が週末の休みにガーデンで使っているのがハンド・トラクターで、ほんとうの運動具だと言われています。それを農機具の先頭に立てるようなことをやっていきますと、何しろ機械力というものは疲労を知らないところにいいところがあるのですが、これを扱っている人間が機械のあとから歩いて耕作するのでは、機械は疲れないけれども人間が疲れまして、性能が非常にはばまれます。従って最近は中型のトラクター、つまり乗って動かすトラクターにかわってきておりますが、乗用トラクターが入ってきますと、とても二・五ヘクタールでは機械化ができないのです。これははっきり私は申し上げておきたいと思う。どうしてもこれは五町歩ないし六町歩は要りますが、そこまでいきますと、自営農家というものの構想がくずれていくわけです。そこに協業農家というものが出てきましょう。一昨日も私は農林大臣に協業のあり方を聞いてみたのですが、やはり農地、農機具、労力までも協業でやるのだというところまで大臣は踏み切られました。そうしますと、やはり協業体というものは、従来の農家というものの農業から農場というものの農業に変わっていくわけですね。今の日本の農業を、片一方には工業段階で近代的な工業というものがあるのに、工業生産に対して従来の農家経済で対立しようというところに、格差の非常に大きな形があると思う。これはどうしても、日本の農業も農家農業から農場の農業に転換するときに私はきていると思います。ところがこの農場経営で一番困るのは、経営学がない。これは学者に聞いてもその通りなんですが、日本の農学の一番弱い点は、技術の点でも、単なる農家経営の面でもできますけれども、農場経営の学問がないのですね。本もないのです。世界的に弱いでしょう。しかしやはり協業をやり農場経営をやるならば、農村の教育の方面でも、単なる技術の指導だけじゃなくて、経営、しかも農場経営の指導が非常に大事になってくる。この協業が一方において農場にまで発展していきますと、二・五ヘクタールの農家と六十ヘクタールの農場との非常に激しい需要競争が、需要供給の面でも生産費の面でも、始まります。これでは二・五ヘクタールの自営農家は持ちません。これはやはり新しく今までの第一種兼業、第二種兼業の方に落ちていく形がある。これは急速に自営農家をなくするなんということは私は考えておりませんから、やはり十分の見通しを持つという構想に立った計画であるならば、そこまでやはり日本の農業の本体というものを突き詰めて考えていただきませんと、私はほんとうの農家の推進ができないと思うんです。  それからもう一つ、資金なんかの面におきましても、これは従来の工業その他の資金と同じ観念では農業資本になりません。回転率も非常に低いし利率も安くて、長期でなければだめだし、ときには天災等も伴いますから、これは非常に素朴な考えかもしれませんけれども、この所得倍増の十カ年計画というものは、徹底した保護政策に基づいて立てられないと、早くこの自由競争のあらしにさらすと、せっかく立ち直りかげた農業というものがもう一ぺん転覆するのじゃないかということを実は真剣に心配しているので、ことし私は珍しく本職に返りまして予算委員会でも農村問題一本で、本気になっていろいろお話も承り、私の意見も申し上げましたけれども、所得倍増計画予算の立て方なんかも、古いものはすっかりなくし切れず、新しいものには踏み切れず、かといってこのままの状態でおるならば、ジリ貧状態になってしまうという煩悶がありありと現われてきているのです。これは質疑応答の間にも正直に感じます。きょうは迫水長官から非常に率直に御意見を伺って愉快なんですけれども、この際やっぱり虚心たんかいに日本農業の発展のために、一つこの基礎をなしました国民所得倍増計画をなくしないで、これをもっと肉づけ、発展させるような方向にさらに進んでいただきたい、こういう考えを持っております。われわれもこれはできるだけ真剣に考えたいと思うのです。実は予算委員会で総理に聞いてみましたら、これを読んでないというので私どもは非常に腹が立ったのです。幾ら何でも迫水長官は非常に熱心にやられたと思いますが、特に閣議決定の所得倍増計画がそれくらい軽く見られたことに対して私は腹が立ちました。十年後の計画というと夢みたいに思って、理想的過ぎると申しますけれども、今のような自由貿易は当然の運命であり、またこの自由貿易に面して、非常に生産性の低い日本の農業がこんな目にあうことは十年前からわかっておったのです。その十年前にわかっておったのを、依然として狭い自作農の範囲に閉じこもってきた日本の農政というものは、やはり今になって非常に苦しんでいる。この苦しみはやはりこの農業の沈滞を脱却する貴重な苦しみにしたいという考えを私は持っております。やはりここで足踏みしないで、一つ前向きに踏み出すようにもう一ぺん慎重に御操作を願いたいと思いますが、これはどうですか。
  288. 迫水久常

    迫水国務大臣 私としては、きわめて貴重な教えをいろいろ受けまして、非常に感謝をいたしております。所得倍増計画の農業に関する部面におけるものの考え方の基礎を、きょうは淡谷さんから教わったような感じさえするのであります。そういうことを言うのははなはだ申しわけない次第でありますけれども、十分勉強もいたしますし、また御趣旨の点もよく考えて、今度は私も少し勉強して、淡谷さんと本式に渡り合うくらいの知識を備えたいと思います。先ほど申しましたように、この計画はとにかく一応作って、これでスタートしていくわけですけれども、農業基本法との関係において、農林省ともよく相談をして、もう一ぺん見直したい、ほんとうにそう思っております。
  289. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 あとで川俣さんが大へん強いしっぺをはじくらしいのですが、私はさっきから非常に甘い質問をして終わりますけれども、一つお願いしたいのは、あしたもう一ぺんこの統計を私突き合わしてみたいと思います。これは数字の問題だし、こんな差があるとお互いに誤りますから、どこかに食い違いがあるでしょうから、これをただしたい。つまり、三十年度でもけっこう、三十三年度でもけっこうです。できるならばこの統計に表われておるような形で、かなりめんどうでもじきわかると思いますから——私ももう一ぺん見てきます、三反未満、三反から五反未満、五反から一町歩というふうにこまかい区分けですね、私これは統計表で写してきたのですから、これはあると思いますから、統計の出方とこれを合わしてみたいと思います。これは別に責める意思はありませんが、できるならばこの土地計画をもう一ぺん教えてもらいたいのです。ないならないでけっこうですよ。われわれも考えてみます。ただこの統計から見ますと、どうしても将来において二・五ヘクタールの自営農家百万戸と、あとは協業農家に耕作させる農地対象というものは的確に出てこないですね。第二種兼業農家、第一種兼業農家をつぶしてまえば別です。その無理が私たちに言わせれば池田さんの六割首切り論の根拠なんです。当然出てくる。これは農家をつぶしてしまって、土地を集めれば別ですけれども、農家は残しておいて六百万町歩の土地というものを考えてみますと、これは農民の首切りしかない。新しい耕地を造成する場合は耕地は広げない。今伺いますと耕地も牧畜と果樹なんかに使う、新しい耕地の考え方、これを単なる山林原野というような考え方に食い違いがあるようです。そういうことをやはり詰めていきたい。もう一つ、二種兼業、一種兼業に手をつけるなという根拠は、開拓農業を考え直してもらいたい。農民というものは長い間所有権絶対の観念のもとに苦しんできたものですから、農地改革で自分の土地にしたのだという魅力は、今の年寄りが生きている間はとてもなくならない。死んでも放しません。むしろ新しい国の土地を開拓させた開拓農業に新しい農業の抱負を持ってはどうかと考えるのです。ごく新しいところです。それも今までの開拓農業を見ますと、既成農家の水準に達することをもって開拓農業の理想にした形があるのです。せめて一般の農家のような生活をしたいというのが開拓者の心理だと思う。私はそこに基準を置かないで、今までの農家の構想と開拓農業の構想は本来違うものだと思うのです。それをどうも地元増反とかなんとかいう農民の土地欲にこびた政策が行なわれまして、非常に大きな開拓農業の構想がないのです。根釧地区の開拓、青森県の上北の開拓は、これは非常に経営上の苦難をなめておりますし、直していただかなければならぬこともありますけれども、非常に大きな夢を持たしていると思います。それがどうもひょっと間違うと、もう一ぺん昔の地元増反とか、ごく小さな自営既成農家の形に転落するおそれがありますので、むしろこの所得倍増計画なんというものは、開拓農業の面に大胆に実行されてしかるべきものでないかと思う。これはまだまだこまかい構想は要りますが、この中に開拓農業に対する構想というものがない、ありますか。
  290. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 確かに御指摘のように開拓農業の政策はそれほど入っておらないようです。
  291. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これはあげますとたくさんございましょうけれども、あしたまたこの統計の面について短いことを申し上げます。ただもう一つ実際の質問があるのです。  今の夢のような十年先の話は愉快でしたけれども、これはあまり愉快な話ではないかもしれません。経済企画庁予算の中に離島振興事業費というのがありますね。経済企画庁が実際にこういう仕事をやっているのかいないのかわかりませんが、離島振興事業費を丙号の繰り越し明許に入れた理由はどこにあるのですか。
  292. 曾田忠

    ○曾田政府委員 お答えいたします。離島振興費は予算といたしましては一括経済企画庁予算に計上されておるわけですけれども、実際の予算の執行にあたりましては、それぞれの各省に全額移しかえまして、それぞれの各省が実施をいたしております。しかもその内容は、御承知かと思いますけれども、道路とか港湾とかその他大体公共事業でございまして、公共事業になりますと農地の問題でありますとか、あるいは設計の問題あるいは天候等の問題によりまして、事業の繰り越しが起こるおそれがあるというようなわけで、他の公共事業と同じ繰り越し明許になっております。
  293. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これは私はちょっと見ましていつもおかしく思っておるのであります。経済企画庁がこういう項目で予算をお取りになるのはけっこうでしょうけれども、やはりこの繰り越し明許費なんというのは少し考え直す必要が企画庁としてもあるのではないかと思うのです。これは私は防衛庁のいろいろな質問のときに話をしましたけれども、防衛庁などは人件費を除いて全部繰り越し明許なんです。訓練費、弾薬費、それから毎年七十億から八十億くらいの翌年度繰り越しがあり、不用額を出し、同じ弾薬費で繰り越し明許のほかに国庫債務負担行為がある。そのまねが農林省にも各省にも現われてきております。これはさっき足鹿さんも言いましたけれども、単年度で打ち切る予算の原則からいえば非常に問題があります。離島振興で申し上げたいと思いますのは新島の問題であります。いろいろ見ますと、離島開発の費用がたくさん出ているようであります。それがちっとも使われないわけじゃないでしょうけれども、継続明許費くらいまでいってしまって、一方では離島振興の仕事が進まないうちに防衛庁が離島振興の仕事をするという形、波止場を作ってみたり、道路を作ってみたり、さっき足鹿さんの質問にもありました通り、おそろしく他の省の予算に比べると大ざっぱなんです。ロッキードの問題を質問したときに、どうしても数が合わない。合わなかったら、一千ドル以下は四捨五入しておりますという答弁なんです。農林省なんかの予算でみるとほとんどなくなりますよ。三十六万円以下を四捨五入をしたらなくなるわけです。これは各省間の予算の取り方というものが総体的に考えても個別的に考えても非常にずさんなものがあると思いますが、企画庁はそこまで手が入らぬでしょうね、どうです。
  294. 曾田忠

    ○曾田政府委員 今資料を持っておりませんので、離島振興関係の繰り越しがどの程度かちょっと申し上げかねますが、問題になりますのは、たとえば漁港とか港湾等におきましては何といいますか、相当地理的にまた気象的に波が高いとかいろいろな特別な条件が起こる場合がございまして、そういう場合におきましては、ある程度の繰り越しはやむを得ないのではないだろうか、そういうような事態はあると思っております。
  295. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これは丙号の繰り越し明許にはっきり離島振興事業費だけは出ておるわけなんです。それからほかにもたくさん企画庁でやっている事業があるようですが、これはいずれもやはり離島振興法と同じように各省に分けてやるくらいのものですか。
  296. 曾田忠

    ○曾田政府委員 企画庁の事業といたしましては、今申し上げました離島振興費と国土総合開発事業調整費、あと国土調査費というのがございますが、私どもの所管のことを申し上げておりますが、そのうち離島振興費と国土総合開発調整費はすべて各省に移しかえて使用するということになっております。
  297. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これはちょっと店を貸しただけですね、離島振興費は。仕事をやりますか。
  298. 曾田忠

    ○曾田政府委員 先に総合開発事業の調整費のところから申し上げますと、企画庁の総合開発事業と申しますと、非常に各省にまたがっておりまして、各省のそれぞれの予算の額といいますか、あるいはそれぞれ各省の重点を置く個所が違っておる。そういう場合におきまして、それぞれの事業の進捗をバランスのとれるようにはかるという意味におきまして、企画庁長官が各事業の調整をはかるということになっておりまして、その費用といたしまして大体三十五年度におきまして七億程度調整費がついておるわけであります。これは今申し上げましたような理由で、各省のアンバランスを調整するという意味におきまして、各省に当然移しかえて使うべきものであるということに考えております。  それから離島振興費につきましては、実は昭和三十三年度から初めて経済企画庁に一括予算が計上されまして、各省に移しかえて使うということになったわけでございますが、この理由は、事業の個所も非常に多くありますし、こまかい。また各離島の人々はそれぞれ各省に各事業についてお願いに上がるというような関係で、離島全体のどこを重点的に仕事をやったらいいかという把握が非常に困難でありまして、従って昭和三十三年度において閣議決定によって、離島についてこの島の重点の事業はどこであるかというふうに重点的に各省と折衝して予算を離島につけてやる。そういう意味において企画庁に一括計上するということになったわけでございます。
  299. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 これは経済企画庁予算の半分くらい、二十五億くらいですね。いたずらに予算が大きいようですが、企画庁の方はあまりなくて、これが半分も占めているというのは何だか変な気がする。離島なんという仕事は相当離れた場所でやられるのは当然なんですから、目が届かないだけにさまざまなことがあると思いますから、やっぱり店を貸した以上は警告もし、指導もしてもらわぬと困ると思います。あしたまた統計を合わせましてから、短い時間でも長官の御意見を伺いたいと思います。終わります。
  300. 三浦一雄

    ○三浦主査 川俣清音君。
  301. 川俣清音

    ○川俣分科員 淡谷君からだいぶんおどかしを受けたようですけれども、私も初めは少し低姿勢でお願いしよう、こう思っております。  ちょうど淡谷君の問題に引き続いて先にこれをお尋ねしておきたいと思うのです。あとから本論に入るわけですが、総理府の統計局の労働の臨時調査によって農林業種の所得分布を見ますと、どうも政府の説明とは異なったような結果が出ているのじゃないかと思いますので、お尋ねしたいと思います。  それは農林業の場合は、小農の方の所得が伸びないで中農の方が伸びて、最高層の方がまた所得が伸びないという結果が出ておるのです。これはもう少し正確に申し上げますと、二十七年に最低一〇%の第一位の層、一番下の層の所得は、全所得の一・五%であったが、三十三年度には一・〇と、〇・五%下がっておる。三十五年もまた一・〇と同じですが、大体所得の比重がだんだん低下してきている。さらに第三位の三〇%までの階層を調べてみますと——第四位以上になると、所得の比重率はかえって拡大しておるようでありまして、たとえば下から第四位の一〇%の階層は、二十七年には全所得の五・七%であったのが、三十五年には六・〇%となって上昇しております。ところがさらに第九位層も、二十七年には一六・六の所得を占めておったものが、三十五年には一八・三と、これも拡大しております。ところが、第十位の最高所得層は、二十七年には二八・四が、三十三年度には二六・〇と下がってきております。さらに三十五年度には二五・〇と、これまた下がってきております。従ってかえって最高所得層だけは縮小してきておるようです。これを見ますると、農業所得面で見た農林業の個人所得分布は、雇用者や全世帯で見た傾向とは異なっておるのじゃないかと思われるのです。従ってどうも最高所得の比重が縮小して、中層から少し上のところまでは確かに拡大しておる。大体第七位から第九位までの中、上層の農家の所得は拡大しておるのが特徴であるが、最高所得のものは下がっておるということは、これはどういうことであろうか。これは私なりの判断ですが、おそらく農業経営の大規模化の限度を示しておるものじゃないか、他の企業と違って農業の場合には限界があるのではないかと思われる。これは私の見方なんです。これは総理府の統計から持ってきたものなんですが、大臣はそういうように、農業所得階層においてはこうした限界があるということを多分御存じだと思いますが、大臣の御見解を一つお伺いいたします。
  302. 迫水久常

    迫水国務大臣 どうも率直に御答弁をして悪いのですけれども、今のような統計は私はまだ一ぺんも勉強したことがありませんので、その統計を一ついただいて私も勉強をしてみます。明朝までそれを答えるということはちょっと無理かもしれませんが、一つ勉強します。
  303. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは総理府の統計ですからどうぞごらん願いたいと思います。  次に、迫水大臣はたびたび委員会などで、自分だけは消費者の立場に立ってやらないとだれもやる者がないというふうに大いにたんかを切られたので、私はそういう意味において大いに意を強うするので、漸次お尋ねしていきたい、こう思うのです。  これはできるだけ端折って簡単にお尋ねしたいと思うのですが、一つは砂糖であります。ただいま農林省から明日出す予定の大豆なたね交付金法案の要綱の説明がございました。その説明によりますと、「この法律は、外国産大豆の輸入の自由化が国内産の大豆及びなたねの価格に及ぼす影響が大であることにかんがみ、当分の間、国内産の大豆及びなたねについて交付金を交付する措置を講じ、もって農家所得の安定に資することを目的とする」という法案が明日出されるそうでございます。国産大豆及び菜種が自由化によって非常な影響を受けるので交付金を出そう、こという考えのようであります。ところがこれは迫水さんは昨年の十一月、前内閣時代でございましたが、水田さんとあなたと、農林大臣は南條さんでございましたが、三人で、ことしの四月以降できるだけ早い機会に砂糖の自由化をやろうということに踏み切られたわけです。これはことしになってからまたやめられたわけなんですね。それでそのときの様子を見ると、会議の結論は砂糖の輸入の自由化には慎重な態度をとる、それから輸入粗糖の関税率は据え置く、砂糖の輸入に対する外貨の割当は必要に応じてふやす、国内の甘味資源の育成には十分な対策を講ずるということですが、そうすると大豆と砂糖とはどういう理由でこう区別しなければならないのでしょうか。一般の世論によりますと、砂糖、製糖業界が超過利潤年八十億以上にも上るということで、何とか砂糖を安く消費をしたいという熱望があるわけです。ほかのものは高くなっても、砂糖くらい安くなっていいのじゃないかという非常に大きな消費者の期待があるわけです。大臣大いに消費者の側に立つという声明なんですが、これについての御回答を願いたいと思います。
  304. 迫水久常

    迫水国務大臣 砂糖自由化の問題についてのいきさつからお話を申し上げます。昨年のたしか十一月末だったと思いますが、急に農林大臣の方から話がございまして、貿易・為替の自由化計画大綱によりますと、砂糖というものは慎重に扱うのだということでうしろの方の後順位だったのですが、それが急に話がございまして、それはどういうことかというと、砂糖業者に非常な超過利潤が出ているし、本来あるべきところの砂糖の値段よりもずっと高い砂糖の値段になっているから、この際これをもっと下げなければならない。それには関税を上げてくれれば自由化をしてもよろしい、こういうことを南條農林大臣は言い出したわけです。そこで急にそういうことを言い出したわけは、今回御審議を願っておりまする関税定率法の改正の原案を関税審議会とかなんとかというところで審議をしている最中でして、それはたしか十二月三日か何かまでに結論を出さないと審議に乗らない。乗らないともうだめになってしまうということで、どうしてもこの一日、二日の間に砂糖の関税の値上げだけはきめてくれと、こういうことを南條さんが言われました。いろいろ審議はしたのですけれども、砂糖の関税をかけるということは、砂糖の値段を下げることとは御承知のように逆行するわけです、関税を高くすることは。それでいろいろ問題がありましたけれども、自由化をするというのならば関税を上げることに同意しよう。だから問題は自由化の方からいったのではなしに、関税を上げることの方から話がいきまして、そうしてただ関税を上げることは、自由化はそのままほったらかされてしまって関税だけ上げられるということになると、むしろ値段が高くなって工合が悪いことであるから、関税の引き上げは、これは六円五十銭だったと思いますが、する。しかしそれの実施の時期は自由化の時期と一緒にするのだということを十一月の末にきめました。そして翌日の新聞を見ますと、関税を上げる方が大きく出て、この実施は自由化の時期と一緒というふうに出るかと思ったら、案に相違して自由化決定というふうに新聞に出たから、印象的には世間には私どもがやりました趣旨とは少し違った印象を与えたと思います。とにかくそういうことで関税を上げて、自由化を同時にする。逆に言えば、農林省の方は自由化をするときに関税の引き上げが実施されるということで、結局自由化の時期というものは農林省にまかされたような形であったのですけれども、私としましては自由化をすることによって砂糖の値段が下がってくると思っておりましたから、できるだけ早くそれをやれやれということを申したような次第でございます。  しかるに本年になりましてからいよいよ関税の法律案を提案をする時期になりまして、農林省から再び話がありましたのは、もし自由化をする場合には、かりに関税を引き上げても非常に低いところまでくるおそれができてくる。というのは、向こうの方の原糖の価格が最初、単位は忘れましたけれども三セント四五、それが三セント以下になってきているので、今ここで関税を上げると同時に自由化をするようなことをしたならば、日本の砂糖というものは非常に安い値段になってしまうおそれがある、そういうことになった場合は、国内の甘味資源というものを保護する上から非常に困るから、しばらくその自由化は待つ、そのかわり関税を上げることをやめてもよろしい、こういうことでいろいろずいぶんそこで研究いたしましたけれども、結局砂糖の輸入割当の数量を次の外貨予算において大幅にふやすということを前提として、国内甘味資源に迷惑をかけるということなしに、その線のすれすれのところまで砂糖の値段が下がってくるようにするためには、外貨割当を大いにふやそう、今度はふやすのだということを前提にして砂糖の自由化を取りやめた次第でございます。結局消費者の立場はいけないというし、農林省の方は国内甘味資源の方へ、そこのところのちょうど妥協点というものは幾ら一体割当をしたらちょうどいいところへくるかということが問題になるわけです。
  305. 川俣清音

    ○川俣分科員 私がお尋ねしたのは、きょうわざわざ大豆の方は輸入によって甚大な打撃を受けるということから、交付金でいこうというのを一本出したわけなんですね。そこで甘味資源であろうと同じじゃないかと思うのです。今国民の期待しているのは、特に長官に期待しているのは、砂糖をどの程度下げてくれるかということだろうと思うのです。それだからといって別に甘味資源を保護しなくてもいいということは消費者も言わぬでしょうけれども、何か砂糖だけは下げてくれ、交付税の方式でいきますれば、消費者の希望と農民の希望とが、計算がありまするから問題はありましょうけれども、考え方としては両方立つような考え方ということになりましょうね。砂糖だけはどういうわけで区別しなければならなったかという理由がはっきりしないわけです。
  306. 迫水久常

    迫水国務大臣 実は大豆の方は為替・貿易自由化計画大綱によりますと、昨年の十月にすでにそれを自由化しなければならぬことになっておったわけです。これは申し上げていいかどうかわかりませんが、対米十品目というものは急速に自由化するという前提をとっておりまして、そのうちの一つの問題で現在自由化されてないものはアメリカから入れる大豆だけで、ほかの国から入ってくる大豆は自由化されているわけです。対米十品目の中の大豆は、計画では昨年の十月に自由化を実施することになっておりました。それを、私が経済企画庁長官に就任しましたのが七月でありますが、従って自由化を実施しようということをしきりにせっついたのでありますが、なかなかそれは国内の大豆対策というものがどうしても予算を取ってやらなければいけないというようなことから、今日まで伸び伸びになっている。区別をしなければならぬという理由になるかならぬかわかりませんが、砂糖の方は当分自由化せずというランクに入っており、一方大豆の方は昨年十月に自由化するというランクであったところが、さしあたり立場においてこういう取り扱いが違ってきた理由だと思います。
  307. 川俣清音

    ○川俣分科員 あまりこれで時間をとることもいたしませんが、とにかく国民に与える印象は、十月に大豆の方が踏み切って、十一月に砂糖の方が踏み切った。順序を繰り上げになったか知りませんが、大豆に次いで砂糖、砂糖を関税をもってしますならば、甘味資源のために出す交付金等から見ましても、関税の三分の二もありますれば十分可能になってくるだろうと思います。関税率にもよりますけれども。そうなって参りますればあえて砂糖だけを区別にしなければならないという——消費者の立場に立たれると言われるから、どうも少しふに落ちないという気持がするのです。これはもう一度答弁いただきましてあとは次に移りますけれども、まだ何とか消費者からいうと期待があると思いますので。これは非常に悪いのは、何か農林関係の議員が甘味資源確保のためにやったというようなことも言われていますけれども、砂糖業界でもこれは池田総理のひもつきもある。おれが引き受けるとかいろいろな運動があったこともあるのですよ。これは総理官邸から農林省へ電話したことも事実なんです。私もこの前の国会で言いましたけれども、たまたま私が農林省へ行っておるときに総理官邸から電話がきて、あわてて出たところが業者なんです。今総理官邸に来て陳情しておるから、農林省でもそのつもりでおってほしいという陳情なんです。官邸を使ってまでの陳情があるのですから、従ってここにいろいろな疑惑も生じまするから、中立の立場にあるあなたは大いにがんばってほしい、こう思うのです。
  308. 迫水久常

    迫水国務大臣 少なくとも私の立場は——総理大臣官邸から電話をかけたような事実があるということを川俣さんはおっしゃいましたけれども、それはほんとうであるかどうかということは私は確認しておりませんから知りませんけれども、少なくとも私に関する限りは、砂糖屋から一ぺんも陳情を受けたことはありませんし、砂糖の値段というものは甘味資源対策とすれすれのところまで、下げ得るところまで下げようというので、今私は来年度の外貨の割当をどこまでするか、ここが一つの勝負どころだと思っておるのです。
  309. 川俣清音

    ○川俣分科員 私があえてこういう心配をしますのは、だんだん貿易事情も悪化してくるのじゃないか、私の見解をもってしますればこういうふうに見ておるのです。日本産業の伸びが二兆六千億ぐらいに経企では見ておられるようですね。これが二兆八千とかいうことになってくると、どうしてもその二千億の伸びの二割か三割、いわゆる五、六百億は輸入超過になるのではないかというふうに私なりに計算するわけです。そうすると何だか外貨の割当は非常に困難になってくるのではないかというふうに懸念されまするから、そこに大きな期待を持っておられましても不安な気がいたします。砂糖の問題はこの程度にいたします。  次に肥料の問題でございますが、硫安の合理化のために、政府は開銀を通じまして十四億融資をすることにいたしております。これは硫安の需給安定法、いわゆる硫安の合理化のために政府が長年硫安工業に融資をいたしましたり、補助いたしたりしてきたわけです。この段階に至りまして農産物の生産費を極力引き下げていかなければならない段階にきたと思うのです。農産物の国際競争に耐え得るようにするには、農産物の主要なコストでありまする肥料を下げていくということが重要なことだと思うのです。そこでどうして一体外国の農産物に対抗できるかというと、やはり生産費の中の大きな傷を占めておりまする肥料の価格を下げていくということがまず必要じゃないか。それでは日本の硫安工業が合理化できないかということになりますると、最近は御承知の通り合成硫安から回収硫安へ、廃ガスを使うような方向に変わってきておりまして、かなり硫安のコストが下がってきたわけです。ところが一方においては、従来通りの硫安会社も依然としてあるわけです。ところが相当合理化したところの硫安会社の製造はとめておいて、最下位にあるコストの高いところを下げていこう、通産省はこういうことです。これは通産行政として、非常に弱い硫安工業を引き上げていこうとする救済的な考え方を、私は必ずしも悪いとは思いません。しかし今硫安の合理化をはかろうというときにあたって、もっと安い硫安を作る工場があるときに、その工場の方はストップさせておいて、下を上げていかなければならないという合理化政策はない、私はそう思う。これはあなたの立場に立ってもおそらくそうだと思うのです。ところが通産省は、わざわざ一番最下位のものを何とか上げていこう、こういうやり方です。私の方はそうでなくて、何とかして合理化して、合理化したものを優先的に考えていくことの方がより必要ではないか。肥料が足りないとすれば、むしろコストの安いところをストップさせておるのですから、それ以上の拡張をストップさせておるのですから、もっと増産すればもっと安くなる。それをストップさせて、下のコストの高い方をもう少しコスト・ダウンさせよう、こういう努力なんです。このために合理化資金十四億円を使うということは、合理化の方法じゃない。救済の方法でありましょう。企業救済にはなりましょうが、合理化というからには、やはり合理化資金でなければならぬだろう、私はそう思うのですが、経企長官はどういうふうにお考えになりますか。もっと詳しいことを申し上げてもよろしいのですけれども……。
  310. 迫水久常

    迫水国務大臣 どうも通産省の行政を私が批判しなければならぬ立場のような御質問でして、私はこれはちょっとお答えがいたしにくいと思います。   〔主査退席、仮谷主査代理着席〕
  311. 川俣清音

    ○川俣分科員 きのう実は農林省から通産省に交渉しても、なかなか経過をお話しにならなかったから、私の方からこういう交渉をしておるであろうということを説明したわけなんです。農林省では、合理化計画内容について、納得がいかないからあくまで検討したい、第二は原価要素の想定のルールを、今後三カ年にわたって固定できるように協議したい、合理化がほんとうに進行していくのかどうか、それを協議したい、こういうことですね。もう一つは、過去の赤字の処理方法です。処理方法は、通産省はこれを救済に持っていきたい、こういうことでしょうが、農林省の方は、この合理化方法をしっかりきめてからでなければ、救済をするといっても百十五億過去に赤字があった、これを救済していこう、こういうわけでしょう。それはいいにしても、基本的な態度をきめてから、ほんとうにこれができるかできないかというめどがついてから、その赤字の解消の問題について入っていってもよろしい、こういう態度をとっておるようなんです。この立場で実は交渉しておられるようですが、なかなか通産省は頑強で自分の説を曲げておられないようです。難航しておるようです。以前はこの肥料審議会はあなたの方の所管でやっておった。(迫水国務大臣「今でも」と呼ぶ)今でもそうですか。そういたしますればなおのことだと思うのです。批判は別にいたしまして、十四億の合理化資金を出すからには、やはり農産物の生産費を引き下げていくのが今の必至の仕事でなければならない。するとやはり肥料の一番大宗を占めておるところの硫安を下げていく。硫安を下げると、ほかの肥料も自然に下がっていきます。それに力を入れるべきではないか。そうでなければ農民の所得をふやすということはできない。価格を上げていくことはできないのですから……。そうするとコストを下げるしかない。そうすると一番いいのは肥料ということに、これはしろうとでもそうなるわけです。そのために合理化資金を使うのであろうと私は思うのです。それなら意味があると思う。救済なら、失業救済なら中小企業の救済ということでやる。合理化の名をかりて合理化できない方策はとるべきではないと私は思う。この点ぐらいは御答弁できると私は思います。
  312. 迫水久常

    迫水国務大臣 実は肥料審議会というのは、私の方の所管でございます。ただしこの肥料審議会というのは、ふざけた答弁をするなとおっしゃるかもしれませんけれども、農林省と通産省にさじきを貸しているような立場です。そこでお客さんなかなかうるさくてきまらないので、そろそろ経済企画庁もお茶とか座ぶとんを持って、何とかそこで調整をしなければいかぬのではないかというふうには考えておりまして、その基準というのはどこへ行くかというと、今川俣さんおっしゃった通り、肥料の値段を合理化で下げるというところに、一銭でも安くするという方向に私たちは大いに協力をしていこう、こう考えております。
  313. 川俣清音

    ○川俣分科員 その言質を大いに買って、その点だけは終わりたいと思います。  次に木材ですが、これは総理も長官も、いたずらに木材が高くなって、何か押えなければならぬという苦労をされておるようです。そこでその熱意は私は大いに買うのですが、国有林に対して二百万立米の増伐を期待しておられるようです。これに対して問題があるので、やめたようなやめないようなお話ですが、そこで一つ大臣、こういう点を私は考えるのですが、私の考え方について御批判を願いたい、こう思うのです。国有林野事業というのは、私から言わせれば、あれは需給並びに価格の間接統制をしておる役目を果たしておる。うしろに大きな蓄積を持ちまして、価格が上がったときに切り出すぞという威力、実際はどれだけの効果があるのか知らないけれども、相当の蓄積を持っておるために、いつでも市場に売り出すことができるという威力を背景にしておるところに、国有林野事業の一つの大きな使命がある、私はそう見ておるのですが、価格の調整、安定と需給の調節の役目を果たしておるのが、国有林野事業の一面の大きな仕事であろう。もちろん治山治水というような公共的な面もありましょうけれども、それも一つの役割。ところが実際切り出せないような数量とか、あるいはもう切り出すとあとが続かないようだというと、いよいよもって威力がなくなってしまう。むしろ背負っておる方が威力がありますけれども、もう今切り出してしまうと、あとは続かないのだというと、民有林の方が切り出すことをやめまして、値上がり待ちということになって、むしろ木材が出てこないような結果になるのじゃないか。民有林の方は限度がありますから、もう国有林はとてもだめだと見ると、ますます民有林が伐採を押えてくるという傾向になった場合、ますます需給が悪くなるのじゃないか、私はそう判定するのですが、大臣この点について御検討になったことがございますか。
  314. 迫水久常

    迫水国務大臣 実は物価の問題は重大問題でございまして、卸売物価で指数の上がっておるのは木材だけと言ってもいいくらい、これは気になってしようがないものですから、農林大臣に、ちょっと私しろうと考えで、これを下げるためには、国内の木をよけい切るか、それでなければ輸入をするか、これ二つによって供給をふやしていく以外に方法はないと考えまして、木材の上がっておる一つの理由として、パルプ会社が設備をよけいしてしまって、設備に食わせるパルプ原料を確保するために、山を買いあさっているからなんだという話も聞きました。現実の問題としては供給をふやしてもらおう、パルプはパルプの方で通産省に一つ話をして、何らかの措置をとってもらおう、今までこのパルプの問題については、通産省の方で何かいい考えはないかということを言っておりますが、農林省の方に供給をふやす方法として、国有林を切れないかということを農林大臣に相当私はせっつきました。そうしたところが、農林大臣の方でいろいろお考え下すって出てきたところが、先般発表いたしました素材二百万立方米を目標として、自分の方の計画及び予算の範囲内でもってまかなえる限度において、できるだけ一つ切ってやろうというお答えを得たわけです。今川俣さんのおっしゃったようなことは、確かにそれはあると思います。もちろんそれは農林省が十分考えた上でこれだけのサービスをしてやろうとおっしゃって下さったのだと私は思って、非常に感謝しておるというわけであります。
  315. 川俣清音

    ○川俣分科員 これはこういうことなんですね。町村でも基本財産を親代々にわたって、町村長が、先代、先々代の町村長が植林をしたものを、だれでも自分の時代に切って、町村財政に余裕をつけたいということをやりたがるわけなんです。これで処分してしまうと、あとの町村財政がそれで参ってしまう場合がたくさんあり得るわけです。従って今これは林道を多くつけるとか、切り出しの予定ができますと、ムードで私は下がり得ると思うのですけれども、今の状態ではどんなに切るといっても、底がすれていると思われるというと、一向にそれによって価格が下がらない傾向が出てくる。むしろ逆な傾向が出てくるのじゃないか。あれだけ国有林があせっておれば、おれの方でもっと伐採を押えるというふうな風潮が出てくるのじゃないかという危険を私は感ずるわけです。そこで、この点を申し上げたのですが、一つ考慮してしかるべきではないかと思います。  次に、電力の問題ですが、大臣はたびたび消費者の側に立って極力電力料金を上がらないようにしようという御説を主張しておられるようです。しかしどうも大臣は一体ほんとうはどっちを向いて言っておられるのだろう、こういう疑いがあるわけです。消費者の方には上げないようにすると言うが、実際の腹とか、からだの方は電力会社の方に向けて、上げるのはやむを得ないのじゃないかというような格好をしているのじゃないか。ちょっと様子を見ると、すぐ上げられるのじゃないかという不安が国民の間に非常にあるのじゃないか。今後の経済の成長に伴って、電力事情はますます需用が増してくるでしょう。それに対して、これとばかりに電力会社が圧力をかけて上げるのじゃないかという不安が——これは不安じゃなくて、ほんとうにそういうあれが出てきていると思う。何か迫水さんは上げない上げないと言うけれども、どうもほんとうの腹は上げるところにあるのじゃないかという疑いがある。あなたの信用にも関するので、この点はっきりしてほしい、こう思います。
  316. 迫水久常

    迫水国務大臣 私の精神は、それは上げないということにおいては決して間違いないです。ただ不幸にして、私は相当のインテリでありまして、いろいろ説明をされて、なるほどそれはしようがないかなということを納得してしまうと、それでもおしゃもじを持ってどうしてもというわけには私はいきません。それは十分抵抗して消費者の立場に立ってやりますけれども、納得した限界がくると、それで一応通産省なら通産省が、そういう生産の立場からはじき出した数字に対して、さらに消費者の立場から何とかならないかといって、うちの調整局長なんかをわずらわして抵抗して、さらにそれを引き下げることに成功もしつつあるわけですが、従ってどっちを向いているのだというと、腹と顔とは違わないのですけれども、力弱くして押し切られるということはありましても、絶対に腹と顔とは違いません。
  317. 川俣清音

    ○川俣分科員 腹と顔とは違うということは、どうも私のあれは言い過ぎかもしれませんけれども、押し切られるのじゃないか。どうも経企長官怪しい——怪しいと言うとまた語弊があるかもしれませんけれども、とうとう押し切られるのじゃないか。政治の情勢からいって、消費者の立場を、ただ一人孤立であって、政府の中においてもあるいは政党の中でも孤立して、とうとう押し切られるであろうという心配だろうと思うのです。そこで電力料金の値上げの要素になっているのは、いろいろ、人件費の値上がりももちろんあるでしょうが、その一番大きな要素になっているのは、九州は特にダム効率が悪いために、発電を火力に変えなければならない、それから常時の水量が得られないというところに大きなコスト高の原因があるようです。私今数字を持っておりますけれども、これを長々と述べる時間はないのですが、通産大臣でないから、大臣には大まかなところでいいと思います。   〔仮谷主査代理退席、主査着席〕  そこで、この問題はダム効率が非常に悪い、あれだけの大きな資本をかけていながら所要の貯水量が得られない、そこに非常にコスト高が出てくるのであろう。あれだけの固定資本をかけてしまってその回収ができないというところに、その一番大きなコスト高の原因があるのじゃないか。それで火力に仰がなければならぬというところにその原因がある。それでどうも和解せないのは、そういう計画が悪かった責任を消費者に負わせるということは無理じゃないかと思うのです。自分たちの設計、計画が悪いためにダム効率が下がった責任を消費者が負わなければならぬ、需用者が負わなければならぬということにはならないと私は思う。経営上の、普通に人件費を食うとか、あるいは経費が上がったのと違って、初めの計画と実際とが違ったのは、やはり設計なり当初計画が悪かった責任であって、これはやはり需用者が負うべきものではない。むしろ国はダム効率が下がらないように上流地点に砂防工事その他の施設をしてやって、効率の下がらないようにしてやることの方が至当ではないか。ということは、計画が悪いと見えまして堆積土が非常に高いのですね。貯水量が減ってくるわけです。常時流せない結果が出ているわけです。土砂が入って一定の水量を得られないわけですよ。そうすると、その水量からくる発電力は下がってくる。そして火力に仰がなければならぬということになる。これは満腹の貯水量をもって最初の計画通りの能率が上がっておりますと、それだけのキロワットが出ますからいいわけですが、だんだん貯水量が減ってくるわけです。そうすると、私ども見ますると、数字的な説明はしませんけれども、金はかけたが半分より効果が上がっていないというところに問題があるのではないかと思います。そこでやはり上流の設備を、これは会社がやるか国がやるか、あるいは東電では多摩の水源地に自分の山を持っておりまして、保安林にして、伐採をしないで一定の貯水量を得ようという計画を現在やっております。ところが東電は最近、木材が高くなったということでこれを売りにかかっている。そうするとこれはまたダムの堆積が多くなって低下するのじゃないかというふうに思います。これは別会社にして持っておるようでありますが、一向その別会社の経営が、山を持っているだけで経営がよくならぬものですから、売り払おうということになって、保安林を解除して伐採に入ろうということらしいのですがね。もしもそんなことをすると、これもまだダム効率が下がってくるのではないか、こう思います。だからそれだけの犠牲を払っておれば——それは一方の子会社は赤字になっておるかもしれませんけれども、親会社の発電会社はそれだけ効率が下がらぬでおるということ、これもやはりプラスの面じゃないかと思うのです。そういう点について、ただ抵抗しないでも、やはりこういう計画のずさんなものについては責任を追及する立場、それだけはコストから抜くというぐらいな勢いを示さないと、なかなか対抗できないのじゃないか、こういうことで大臣を鞭撻したいのですが、どうですか。
  318. 迫水久常

    迫水国務大臣 いろいろ私の方にこういう知識を与えていただきまして、ありがとうございました。それでただ、今問題になっているのは、川俣さんは九州電力のことを頭に持っておっしゃっていらっしゃると思うのですが、九州電力は率直にいって若干上げなければならぬ状態になっておると思います。これはずいぶんいろいろ勉強もしまして、それで通産省が最初一二・六というような数字を出してきたのを、少なくとも一〇%台に押し下げようとして非常に努力をしまして、大体それは成功すると思いますが、ことにその低い方の、定額灯の人とかあるいはそういう人たちのところの方はさらに今やっている最中でございまして、上がる分をできるだけ少なくしようと思ってやっておるのですけれども、ただ設計が悪かったことの責任は、これは全部会社が負うべきだから消費者に転嫁するなとおっしゃっても、会社がつぶれて電力がなくなったらどうするかということになると、やはりそれもちょっと抵抗すべからざる一つの議論のように思います。そこでやはりほどほどのちょうどいいところがいいのだと思うので、そこのいいところを探し出すのに実際率直にいって苦労しておるのですけれども、九州電力以外のあとの電力につきましては、私はまた決心を新たにして臨みたいと思っております。
  319. 川俣清音

    ○川俣分科員 まず九州電力から抵抗を示していかないと、ほかは、九電だけは特別だというわけにはいかなくなってくる。ほかの電力会社にすぐ影響してくるであろうと思います。そうして九州の電力全部が値上げになってきますと、あなたの一番懸念する物価高の傾向が、そこからまた生じてくるであろうと思います。何といいましても、あらゆる生産の原動力でありまする電力が値上がりすることによって物価に与える影響というのは、それこそ深刻な問題があると思うのです。ですから、一つの抵抗線をはずすといりと——一つならいいじゃないかと、私は必ずしもそう思わないわけじゃない。しかし一つがやはり二つになり、全部の電力会社に及ぶであろうということを考えるわけです。ことに九電などについては、大臣、これはひどいのですよ。九州の洪水なんか見ますと、電力会社が水門をあけまして、土砂を抜いて有効貯水量を高めようなんということをやっている。そのために水害が起きて、電力会社に対する賠償の問題が、現に二カ所ぐらい起きております。やはり上流に対する処置を前もってやらないために起こってきたと思うのです。上流に対する処置を、国にやってもらうか自分でやるかして、もう少しかけておけば、こうしたことが起きなかったのじゃないか。その措置をやらないで、結果は上げなければならぬという、これは独占企業だからやれると思いますが、一般ではとてもこんなことはできないと思います。そういう意味で九電に対しましても、大臣は、先ほどあぶないのじゃないかというと大丈夫だと言って、また九電だけは別だなんということを言われると、全体があぶないというような判断にもなってくるので、さっきの弁明はどこへいったかわからなくなってくるおそれがあると思うのですが、もう一ぺん一つ伺いたい。
  320. 迫水久常

    迫水国務大臣 九電は、昨年私が入閣をする前に申請を出しているというところに一つの問題がありまして、少なくとも私が入閣をしてから申請が出てきたものに対しては、また別段の決意をもって臨もうと考えております。
  321. 川俣清音

    ○川俣分科員 次に、いよいよ本論に入りたいと思いますが、あなたの方から、水資源開発促進法案の要綱が出ております。なかなか法律案が出てこないのは、官房長官の説明によりますと、建設省あたりから水資源開発公団、あるいは利水公団というような構想もあって、あるいは愛知用水公団等の関係もあって、なかなか固まらないでおるのだ、こういうお話でありました。そこで要綱を出してこられたから、これでいいのかと思ったら、なかなか関連する事項がありまして、これがすぐ法案になりかねるような説明でもあったのですが、大臣、その点はどうなんでしょうか。
  322. 迫水久常

    迫水国務大臣 私の理解いたしますところでは、この法律案要綱というものは、大体このまま法律になり得ると思います。ただこういう法律で作りました一つの計画を実施する主体として、もし公団というものを設置することに話し合いがつきますれば、やはりここに若干の条文が加わって、この実施の主体は、別に公団法によって定める公団がこれを実施するのだ、こういうことを一条か二条か書きたいという希望で、それをはっきり書くまで出すなといわれたものですから、私どもの方は待っていたわけです。私どもの方の法律案としては、これで完結しているものと御了解いただいてけっこうです。
  323. 川俣清音

    ○川俣分科員 私は必ずしもそう思わないのですよ。それは、この目的に、「特定の河川の水系における水資源の総合的な開発及び利用の高度化の促進に関する基本的事項を定め、」と、こうなっております。「及び利用の高度化の促進に関する基本的事項」については、大臣の今御説明のようなことになると思うのですけれども、「特定の河川の水系における水資源の総合的な開発」この特定の河川というのは何をさすのでしょうか。
  324. 曾田忠

    ○曾田政府委員 要綱の目的に書いてございますが、産業の発展と都市人口の増加に伴いまして水の需要が著しく増大するというような地域に供給する水の開発をはかるというのが、この法案の大きなねらいでございます。従いまして、たとえて申し上げますと、京浜地区、東京、横浜、あるいは千葉地区と申しますか、あるいは中京地区、阪神地区、そういうような著しい廃業の発展と都市人口の増加に伴いまして水の需要が急激に増大すると思われるような地域を考えておりまして、その地域に供給する水のもととなります河川は、たとえば京浜地区におきましては利根川、中京地区におきましては木曾川、阪神地区におきましては淀川、その他これに準ずるような重要な地区の河川を考えております。
  325. 川俣清音

    ○川俣分科員 私はおそらくそんな答弁をするだろうと思ったのです。日本の河川法には多くの欠陥があって、今まで法令もいろいろ解釈もあり、紛争もある。明治四十年以来、昔の内務省それから今の建設省、電力関係は通産省になりますか、それから農林省、これらの権限争いが幾多の事例を生んでおる問題なんです。どうして企んだかというと、学者の説によるまでもなく、法律的には河川法の不備が原因であると認められておるわけなんです。建設省でいう河川とは何かというと、定義がない。指定したのは河川であるというだけで、河川に対する定義がないのです。それじゃ河川というのはどこまで指定しているのかというと、指定の限度もない。河川とは公川だというけれども、公川の先は秋川なんです。どこまでの流水が河川法の適用の水量であって、どこから上が河川法の適用外だというあれもないのです。そこで来た水を分配するということは、これはいろいろな新しい経済情勢に応じて分配をしなければならない。水の秩序を変えていこう、こういうことも一つ考えられます。いろいろな国民的な要望に従って、社会情勢の変化に従って、配分を変えていく。水資源の開発というと、どこまで一体建設省なりが権限を持っておるのか。上流の管轄については、農林省と建設省では従来から争ってきたのです。林野庁の長官によると、山腹は私の方がやるのだ、こういう説明をしておりますが、建設省の予算によりますと、砂防工事の事業もかなり大きな予算を組んでおる。農林省も砂防工事、建設省も砂防工事、建設省は指定河川の上流だという。農林省も準用河川の上流だという。同じことなんです。いずれも砂防をやろうというわけです。ただ建設省の所管になっておりますのは、法律からいえば河川法の適用河川ないしは準用河川ということになる。それじゃ準用河川の上流はどこまでか。これは水流てについてはいろいろ学説がありますが、敷地と水の流れと加わって水利権だ、こういうらしいんですね。ところが建設省も災害が起きると、それは準用河川よりも上流だからというわけで、災害に対しては建設省は入らない。これは町村負担であるとかあるいは個人負担なんです。水のほしいときには、上流までおれのところの権限だという。上流に水害が起きた場合には、おれの区域外だというわけです。ところが上流からたらたらとした水が集まって大きな川になりますけれども、山の上から大きな水が来るものじゃないことは、これは常識でわかるでしょう。幾多の渓谷から少しずつ流れてきて、合流して小河川になり、それからまた合流して準用河川になり大河川になる、いわゆる指定の河川になる。水資源の開発ということになると、もっと上流のことでしょう、資源の開発ですもの。利用配分なら、これは別ですよ。今までもこの点で言葉が非常にあいまいなんです。大臣、御存じですか。国土総合開発審議会水制度部会というのがございまして、これは非常にいろいろな水資源について論争をやっているのです。この審議会は、満場一致は一つもないのです。みんな多数、賛成者何名、反対何名ということでできている。水についての権限の問題について、学説的にもいろいろ分かれておりますし、この委員の諸君がみんな意見が違うくらいなんです。一番多数ので三十四人というのがございますが、最高のあれは水資源の保護という点でだけ、三十四人出ておる。これでも一人の反対がある。一致している点は、保安林と砂防指定地の重複を整理、することと、建設省と保安林との調整をやるということで——これですら満場一致じゃない、一人反対がありましてまとまっていないのです。それほど水の問題については、昔からいろいろ紛争のあるものですよ。それを簡単に、いやこれならば大丈夫ですということになると、私もこれでずいぶんいろいろ調べてみましたけれども、幾多の反対の判例もある。農業水利についても判例によりますと、古田が優先するんだ、上流にある田が優先するんだ、いや平等水利権だというようなことで、一つの水についても幾多の判例がある。今建設省と法務省に、水に関する判例件数や何か調べてもらっておりますが、とても膨大であって資料は出せないということです、学説でもいろいろある。河川ないし水流には、公川と私川の区別あるいは公水と私水の区別があり、公川ないし公水は河川法その他公法の規律を受け、私川ないし私水は民法その他私法の規律を受けると一般には説明されておると、こう言われている。そうすると準用河川の上は私水、だということになる。私水が集まったものが公水になるわけでしょう。水資源の涵養というと、かなり上流まで行かなければならぬわけですね。それからやってこないと——下流に水をためるには、上流の水が急激に洪水にならないように、土砂を含んでこないように、上流から施設を講じていかないと、さっきのような発電ダムのような結果が起きてくる。上流の水をどうしてもだんだんとめていって、時間をかけて一ぺんに流されないように徐々に持ってきて——徐々に持ってくるというのは、水の流れを温和にして持ってきてここにためるということにしなければならない、貯水をするということでいかなければならぬ。激流で持ってこないて温和にして持ってきて、そうしてそれを長く時間をかけて貯水をする。それが降った水が一ぺんに流れていかないで有効水量としよう、こういうことがおそらく水資源の開発と私はそう理解するのですが、大臣、そうじゃないのですか。どこかの雨水をためて持ってくるというわけじゃないでしょう。
  326. 迫水久常

    迫水国務大臣 私はこの法律の要綱を見まして、きわめて常識的に考えて、今川俣さんのお話を聞いてなるほどこれは非常にむずかしいものだということはよくわかりましたが、きわめて常識的に考えてみて、河川というと、われわれなんか通常ある観念の川と、その中の水資源というのは資源としての水という意味で、要するに水ということじゃないかと実は私は思っておったのでありますが、奥山に入って、木の下、木の葉の下をくぐっている水、そこまでもの水をいうのではないというふうに、あっさり読んでおりました。通常の常識的の川、そこの流れておるところの水というものを考えて、今まで実はちっとも疑問を持たなかったのであります。
  327. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは、建設省所管の河川というのは一つの指定した河川だけをさすようになっている。それ以外には建設省の所管でたくなってきているわけです。ここに今までのいろいろな係争件数がありますが、この権利の争いというようなものについては、内務省時代、明治以来非常に紛争が絶えなかった。それを今度は利用の面から簡単に——確かに私どもも最近の産業の発達及び都市人口の増加に伴って、これはやはり国民に水を必要に応じて配分しなければならぬ、新しい秩序を立てなければならないという考え方は反対じゃないのです。ただ、その水をどう確保するか、そこにこの法律の使命がなければならぬのじゃないか。できた水を、それではちょうだいいたします、それでは分けます、というわけにいかぬ。これはいろいろな権利関係が付随しておるものであって、御承知の通り、水げんかというものは、日本の歴史の上におきましても、今のような労働争議よりも大きな社会的紛争をして、明治時代からあるわけです。水利権の争いがあるわけですから、従って、どうして一体上流の水を激流にしたいで温和にして流して貯水をするかということが、私はいわゆる水資源の開発だと思うのです。流れる水をただとめるだけならば、これは洪水予防とかいうことになるでしょう。そうではなくて、やはり開発してもっと多量の水を持ってこようというのがねらいじゃないのですか。今ある水を分配してやろうというのじゃないでしょう。もう少し多量の水を有効に使わせようというのが、大臣、ねらいじゃないですか。私はそう理解するのですがね。
  328. 迫水久常

    迫水国務大臣 私はもっとごく単純に考えて、全部ためて、洪水が一ぺんにどっと流れたいように洪水をためてそれを使うというふうに理解しておりました。山奥の水の出てくるところでたくさん集めて、そこを開発して水をよけいとってくるということには考えないで、大体通常の常識として、ある川に洪水の水が流れてくる、それを一ぺんに流さないでためておいて、それをうまく利用することがいわゆる水資源の開発と、こう理解しておりました。
  329. 川俣清音

    ○川俣分科員 河川法は、明治初年にできたときの説明によりましても、大体治水的な考え方で河川法ができているという法律解釈になっている。従って、利水という考え方をしておらないというところに、河川法の欠陥があるといわれているわけです。だから、大臣の考え方は旧来の河川法の考え方だということになる。それでは、先ほど申し上げましたように、ちょうど発電所のダムと同じように土砂ばかりが入って参りますと有効貯水量というものが減ってくる、ですから、どうして多くの流れる水を一時温和にためておくかということが水資源の開発ではないか、私はこう思うのですが、どうも少し検討が不十分ではないかと思うのです。水資源の問題についてはいろいろ学説がありますから、これもやはり一つ検討しておかないと、法律というものは定義がなければならないと思うのです。常識だといいましても、これで人の力を規制します、権利を押えるものですから、やはり軽率であってはならないと思うわけです。今ごろになって農地被買収の問題で地主の抵抗が起きて参っておりますが、水の権利の制約につきましては、いろいろな抵抗が起きてくると思いますので、そう常識でというわけにはいかないのじゃないか。権利の発生を阻害し、または制限をし、束縛をするものでありますから、一つ十分検討をしていただきたい、こう思うのであります。
  330. 迫水久常

    迫水国務大臣 この法律の実施、ことに計画を立てた後における実施については、もちろんその権利関係には十分気をつけなければならぬと思っておりますが、この条文を読むのにそうむずかしく読まなくともいいのじゃないかという感じがちょっと私にはするのですけれども……。
  331. 川俣清音

    ○川俣分科員 この法律が通ることによって、水利権に及ぼす影響などをお考えに入れないとすれば軽率ではないか、こういうのであります。
  332. 迫水久常

    迫水国務大臣 それは考えます。
  333. 川俣清音

    ○川俣分科員 そうすると上流の解釈——河川の解釈から何から全部はっきりしないと、この法律ができますというと、おれはそういうつもりではなかった、そうは考えていないといわれましても、規制を受けるのですから、河川がどこまで及ぶのかわからないというと、人の権利の上に自分が新しく権利を発生させることになりますので、これは問題なんです。もし、よくおわかりにならなければ、古いやつからみんな持ち出して一つ説明せざるを得ない結果にたると思います。
  334. 曾田忠

    ○曾田政府委員 この法律の趣旨は、水資源の総合的な開発によりまして、水の供給量をふやすことを考えているのでありまして、現在持っております灌漑用水とかあるいは水道用水等の既得の水利権を減らすことは考えておりません。しかし、たとえばかりに既得の水利権が土地改良等によりまして量が減ってくるという場合におきましては別でございますけれども、そういう理由がない場合におきまして、既得の水利権を侵すということは考えておりません。従いまして、この法律によりまして水資源の開発の基本計画ができました場合におきまして、この計画に基づいて、たとえばダムの工事をやる場合におきまして、新たに水利権をもらわなければその水を使えないということは、河川法の建前上当然でありますから、その場合の許可にあたりまして、都道府県知事が既得の水利権その他につきまして考慮して水利権を付与するというように考えております。
  335. 川俣清音

    ○川俣分科員 それは、あなたの方は少し研究が足りないのですよ。昭和二十九年十二月二十五日、国土総合開発審議会の水制度部会を見てごらんなさい。この部会で問題になった、「治山、治水及び水資源の利用、保全の総合性を確保するため、左のごとく措置するものとする。治山、治水及び水資源の利用、保全の諸計画を総合調整するため、内閣総理大臣は、水資源に関する基本計画を決定するものとすること。」大体こういうことでしたね。これに対して、三十六名中賛成者二十名です。大体あなた方と同じようなことに対して、この専門の部会で賛成した人は二十名なんですよ。反対意見が、少数意見ですけれども、「「第一治山、治水及び水資源の利用、保全の総合性に関する事項」を削る。」という少数意見もある。非常に意見が分かれるところですから、単純にあなたのような説明がされましても、審議会の専門家の中ですから、二十名の賛成者より得られなかった。これは十分な検討をされてないんじゃないかということです。
  336. 迫水久常

    迫水国務大臣 私はさっきからお話を承っておりまして、ここで河川という言葉の定義といいますか、これはどういうことをいうのだということの問題のように実は私は承っておったのですけれども、水資源の開発というものを、こういうふうに計画的にやること自身が何か法律違反というのですか、そういうことになるという御質問なんですか、それとも河川というものの定義はどういうふうに考えているのか、こういうことなんですか、どういうことなんですか。
  337. 川俣清音

    ○川俣分科員 問題は二つあると思います。今の河川法による河川なのか。河川法によって一ぺん規制があるわけですね。河川という定義をしてあらためて規制をする、この河川に関する限りにおいてはこういうことをやるのだというふうに規制があるわけですね。これは従来の河川法による規制と、新しくできる規制と、規制が変わるわけでしょう。そうすると、権利の関係が違ってくるわけでしょう。増大するか縮小するか、旧来の河川法によって慣習的に認められた、慣習法に基づく水利権と、新しくできる特定の河川の水系と、そこに制限、制約が加わってくるのではないか、これは法律上当然なことでしょう。ただあなた方の意図されております利用の高度化の促進のために、水の配分を変えていこう。そのねらいは決して悪くはないと思うんですよ、配分を変えるんですから。
  338. 迫水久常

    迫水国務大臣 利水の方ですか。
  339. 川俣清音

    ○川俣分科員 利水ですね。配分を変えるんですよ。従来受けた人、これは変えるところから下流は配分について問題があるのでしょう。上流についても問題が出てくるんですよ。上流については問題ないだろうと言いますけれども、冗談じゃないですよ。これは農業知識がおありになればわかるわけですが、ためられた水でも、ダムを切ったりして冷たい水が出て参りますと、夏の場合でありますと水の温度一度の下がりは、水稲の場合においては六升の減収とかという一つの計算もあるわけです。水温の保持ということも問題になってくるわけです、農業用水の場合は、水を非常に多くためると水温が下がるわけですから。ですから権利の侵害が生じてくるわけです。そこで単に所管の争いと見ないで、やはり基本的な日本の過去の河川法の不備をそのままにして、その上に乗っての法律は無理ではないか、こういうことなんです。
  340. 迫水久常

    迫水国務大臣 非常にむずかしい、法制局長官でも連れてこなければ、ちょっと簡単に答弁のできないような御質問でございますが、私はもう非常にこれを常識的に考えて、川の水をせきとめて、それでできるだけ水をたくさんそこに集めて、それを高度に利用する、その計画を作るためのこれは法律であって、その計画を作る手続というようなものがずっと書いてあるのがこの法律だと思いましたから、私は今川俣さんの御質問を伺ってずいぶんむずかしい問題があるなあとは思いますけれども、ちょっと実はこの法律を考える上に私は川俣さんの御意見がぴんと——そう言っては悪いけれども、ぴんとこないような感じで実は承っているのです。だから問題が河川の定義というものをどう考えるかといえば、これはここに書いてある河川というものは、ほかの法律にも多分あると思いますけれども、河川法の河川から上の方の、人の庭に流れている川まで入るのか、秋川まで入るのか、こういうことですか。通常川ということで理解していただけたら、これはこの計画を作るだけの法律なんです。計画を作った上で実施するときに、水利権がどうであるとか、あるいは私川の場合にその人の承諾を得なければならないとか、財産上のいろいろな問題が出てくるので、ちょうど環状七号線なら環状七号線という道路の計画を作り、いよいよそれを実施するときになると、そこにある家を買わなければならぬ、それががんばってしまったらどうにもならない、いろいろあるでしょうが、計画は、青写真を作るのですから、そのときにはそこまで考えなくてもいいのではないかなというように、実は思っているのです。それは間違いでしょうか。
  341. 川俣清音

    ○川俣分科員 そこで、河川法自体に問題があるわけです。あらためてまた特定の河川というわけで河川を指定することになるでしょうと思うのですけれども、そうすると、これは河川法の適用外の河川だということになりますと、今までに河川法適用外の河川というものは、国から河らの援助を受けていない河川ということになる、何らの恩恵も受けていない河川、その水というものは、何らの国の恩恵も受けていない河川になるわけです。何も恩恵を受けていないで、今度おれのところによこせ、簡単にいえばこういうことになる。特定をするときに、河川法の適用の河川だといたしますれば、堤防とかそういうものは日本の国の経費あるいは国の補助金で、かなり上の方に行けば補助金でしょうが、下流は国費でしょう、かなり中流に行くと県費、もっと上流へ行くと補助費でできておるわけです。ですから、その水を集めてきてこれを分配するのだといえば、これは文句はないでしょう。ずっと上流から水を持ってきているから問題はない。上の方は全然自分の方で、上の堤防でも何でも国でやらないで、おとなしく水だけよこせ、ここからきた分だけはこれはおれのものだという権利の発生するということは、それは重大な問題だと私は思うのですよ。それもおわかりにならないですか。
  342. 迫水久常

    迫水国務大臣 私は、特定の河川という読み方が、これは利根川と読んだらどうなるのですか、利根川水系における水資源の総合開発。つまり利根川とか淀川とかいう特定の名前が出せないから、何か、特定というのは、結局この調査会で指定するでしょうけれども、それでその利根川といえば、逆に伺って悪いのですけれども、普通利根川といった場合にはどこからどこまでをいうのですか。
  343. 川俣清音

    ○川俣分科員 それは河川法によって指定された区域を利根川区域と称するのです。
  344. 迫水久常

    迫水国務大臣 それじゃ私はこれでいいのではないかと思いますけれども、河川法で指定された区域の上の、利根川のさらに上流の、名前は何とついておるか知らぬけれども、そこの水のことをいっているのではないと思うのです。利根川というところの水のことを私はいっているのだと思っているのです。
  345. 川俣清音

    ○川俣分科員 たまたま利根川は重要河川として、河川法の指定河川なんです。しかしそういう重要河川として指定した河川なのか、また別に指定するという意味か、特定ですからね。河川法による河川だというと、まだ範囲がきまっておる。日本では河川法による河川はこれこれだときまっておりますから、そこでこれは河川法のもっと上流から、水資源というものを、普通にいわれている水部会などの考え方というものは、上流から確保してこなければならないという考え方のようなんです。ところがあなたの方はそうじゃないという考え方だ、そこで私は水部会で今まで検討されたものと非常に開きがあるのじゃないか。従来のあなたの方の資源開発で研究されたものとこれとはつながらないじゃないかということなんです。
  346. 迫水久常

    迫水国務大臣 非常にむずかしい御質問で、私そこまで研究しておりませんから研究をしますけれども——もちろん研究いたします。いたしますけれども、特定の河川ということを言って、今まで河川法で指定していない河川なんかは実際は出てこないと思うんです。とにかくこれだけの大がかりなことをやるんですから、利根川とか淀川とか——それは名も何にもない、指定もされていないような川に、これだけの大がかりなことをやることは全然ないといってもいいほどないと思いますから、結局ここにある河川というのはどうしてもいかなければ、河川法に指定せられたる河川、こういうと私は解釈していただいて間違いないのじゃないかと思います。というのは具体的に考えているのはやっぱり利根川とか淀川とかそういうありふれたといっては悪いですけれども、ちゃんとした河川法の河川だけで、利根川というのはどういうふうに河川法で指定されているのか知りませんけれども、水源からやはり河口までが利根川と指定されているのじゃないでしょうか。途中からですか。
  347. 川俣清音

    ○川俣分科員 その上は重要河川です。その上は秋川です。
  348. 三浦一雄

    ○三浦主査 いかがでしょうか、これで……。
  349. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは予算関係があるんです。
  350. 三浦一雄

    ○三浦主査 これは法律審議の際もあるのですから、予算に制限してこの程度にとどめていただきたいと思いますが……。
  351. 川俣清音

    ○川俣分科員 この程度じゃないですよ。これから問題なんです。  そういたしますと、あなたのような考え方をすると建設省の公団方式と同じことなんです。公団でやるというと、利根川であるとか淀川を公団でやりたいという計画で、これは必ずしも実現するものだという建設大臣の——予算はどうするのだと聞いたところが、これはあとで予備費を流用するのだという答弁だったのです。流用はという言葉が少し誤解を受けるから予備費から出資してもらうのだ、こういうことなんです。そうすると同じものなんですね。公団で一体割り切れるのか、そうじゃなくてもっと、あなたの方は総合開発でしょうから、もっと上流まで考えるというところにあなたの特徴があるのじゃないかと私は好意的に理解しておった。下流の水でやるのだと建設省の考え方と同じことなんです。そうすると二つのものができるということにたるんです。それから愛知用水も同じ、豊川用水も同じことなんですね。もう少し上流のことを考えるというのだったら、これはまた画期的な日本の水資源の開発ということになると思います。前の部会において水資源を開発すべきだというそういう趣旨にのっとったとすれば、これはまた根本的には愛知用水とも異なるし、あるいは建設省の治水公団ですか、そういうものとも異なるということになるんですが、同じものをみんな考えておるということになるとこれはおかしい、こういうことなんであります。主査、よく聞いておいて下さい。
  352. 迫水久常

    迫水国務大臣 公団でやるか、あるいは政府が直轄でやるか、あるいは府県にやらせるか、施行の主体というものはここにまだきまっていないわけですけれども、その施行する主体はきまりませんけれども、その計画を作る手続をきめたのがこの法律なんでして、その計画を作る場合に、おそらくダムや何かを作るところは、もう秋川とか何かという私の川の辺にはおそらくダムは、さあそこのところちょっとわからないけれども、ほかの経費で作るのじゃないでしょうか、もし必要があれば……。そこのところへいくと、建設省に来てもらわないとちょっと私には答弁ができかねるのです。この法律はそれほど、今川俣さんのおっしゃったように画期的な、今度は河川がまたもう一つの上のところまでわれわれの方が目をつけて、そこのところをどうしようというところまで、実は少なくとも私は考えてなかったのですが、おそらく考えてないのじゃないかと思いますが……。
  353. 川俣清音

    ○川俣分科員 建設省に言わせますと、公団ができて公団がいいか悪いか、私は問題はあると思いますけれども、そういう公の水を、営利団体ではないにしてもやはり一つの営利がかなり入ったのが公団でしょうから、独立採算とかいうことになってくるでしょう、公団は。そうするとやはり採算を主にするということになって参りましょうから、ちょっと問題だとは思いますけれども、しかしあなたの言い方だと、方式からいえば公団と同じことなんです。ただ公団でやるのか国でやるのかという見解はまだ聞いておりませんけれども、あなたの方は公団でやるのか公団に移すのか、公団でやるかわかりませんけれども、それが問題だということです。  それからもう一つ最後に話があるのですが、私はこの水資源の開発というと、今秋は私川とかなんとか問題がありますが、この上から発電所のダムの場合も同様です。ことに今後水の需要がふえて参るとしますれば、山の中においてどうして水を保有しておだやかに流してよこすかということを考えていかなければならぬ。それが今まで保安林といわれておったわけですね。従って保安林などは国がやはり治山治水とともに一般経費でやるべきじゃないかと思うのです。私の水から出てくるというと、いろいろな権利が発生していくであろう。やはり国の予算で治山をやり、治水をやるということが必要ではないか。それと同時にやはり水の一番しみ出てくるところを涵養林と通常いわれていますが、水源涵養林、これを保安林に指定しておったり、指定してない場所もありますが、重要な水を保安林として指定して、水のもととして、資源としているわけです。従ってこの水資源については、こういう保安林などについては国が経営をすべきではないか、私はそう思っておるのです。ところが林野庁も下流でどうもそういうことを考えるならば、これは上の方の水資源も公団でやらしてもいいからというような、だんだん上へ出てくるわけですね。そうすると、上を公団がやるとなると、やはり今度は個人という弱い権利が公団という強い権利になってくるのです。国の権利というと、どうしてもやはり上流から下流までおだやかに持ってきて、その水を配分することにしなければ、配分はうまくいかないのじゃないか。水の量さえ多分に持ってくれば、下流の水利権が、一定の水量さえあればいい、水温も関係しますけれども……。減ることは問題ないのですけれども、たくさん持ってきて、安全に持ってくるならば、水利権を現実的には侵さないことになると思います。人に自分の余った水をやったって問題はないのですからして、そうすると、どうしてもたくさん量を持ってこなければ権利の衝突が起きるであろう。利根川にしましても十分な水を持ってきますならば、下流における分配でいざこざは起きないと思うのです。水量が少ないときに初めて水げんかというやつが起きるわけですから。どうして上流から持ってくるかということが考えられてこなければならぬのじゃないかと思うから、私はやはり上流の措置を政府が考慮すべきではないか。そうすると、やはり保安林などについても、もっと治山の上からも、治水の上からも広範な施策を考えていくべき時代にきたのじゃないか。川の水がほしいというならやはり上流から解決していかなければならぬのじゃないか、こういう意味で申し上げのですから、どうぞ。
  354. 迫水久常

    迫水国務大臣 その点きわめてよくわかりました。これは全く川俣さんのおっしゃる通りと思います。ただ問題はそういうようなうんと上の方から始めるのを国がやるべきか、公団でやるべきかということは、これはまた別な、私の関係の問題ではないと思うのです。私はこの法律を……。
  355. 川俣清音

    ○川俣分科員 水資源というからには、あなたがここへ踏み切ったからにはそこまでいくべきじゃないか。
  356. 迫水久常

    迫水国務大臣 これはよくわかりました。お話の趣旨はやっとわかったのです。なかなかどうも理解がおそくて恐縮でございました。やっとわかりましたから、その点は頭に置いてできるだけ勉強いたします。
  357. 三浦一雄

    ○三浦主査 それでは他に経済企画庁及び通商産業省所管予算についての御質疑はありませんか。——なければ両所管の質疑は一応終了いたしました。  明日は午前十時より開会し、農林省所管予算について審査を行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後九時四十分散会