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坂村政府委員 農業共済制度の問題につきましては、御
承知のようにこれは農政の
基本とも申しまする非常に大事な
制度でございますが、最近いろいろ
災害の
実態が変わって参りましたとか、あるいは
農家経済の
動き等もございまして、各方面から非常に
不満があるのでございます。これは数年来そういう
不満が非常に多かったのでございます。何とかして根本的な
改正をして、この
制度が
農民に喜ばれるようにしたい、こういうようなことでいろいろ
検討して参ったわけでございます。御
承知の
通り一昨年の秋から、
農林省の内部で
農業災害補償制度の
研究会というものを設けまして、ここで
制度の根本的な
改正については、どういうことを考えたらいいかということを
中心にいたしまして
議論をいたしましたわけでございます。その後そこで
検討されたものを大体
基礎にいたしまして、昨年の四月一日から
国会の
関係者の方々もお入りいただきまして、各層を代表する
委員をもって
協議会を設けまして、四月一日から一年近くにわたりましていろいろ
検討して参ったわけでございます。そういたしまして、実は今月の十三日でございますか、
協議会の最終の
農林大臣に対する
答申を得ておるのでございます。
その
内容は、今言いましたように、
制度としても非常にむずかしい
制度でございまして、幅も非常に広い
制度でございますので、
検討につきましても非常に時間がかかりまして、実は本来から言いますれば、三十六年から
実施をしたい、こういうつもりで
検討は始めたのでございますけれ
ども、なかなかそういうわけにも参りませんので、従いまして今度の
通常国会に
法律改正案を提案いたしまして御
審議をいただく。それが
通りましたその後、いろいろ
準備もございますので、三十七年度から
実施をする、こういう
考え方で
法律案の方は
検討いたしておるわけでございます。その
考え方といたしましては、大体において
制度の
内容は、
協議会の
答申を取り入れました形で
制度改正をしたい、こういうように考えておるわけでございます。
その要一点は、第一に今までの
画一的強制加入方式といいますものが非常に批判があるのでございますので、
実情に応じまして画一的な
強制加入方式をある
程度緩和をしたい、こういう
考え方でございます。それは従来も
任意加入のものが、たとえば
耕作面積の
規模等によって
任意加入というものと、それから当然
加入というものとの資格を区別しておったのでございます。その
任意加入の層を
実情においてある
程度拡大したいということと、それから
共済の
目的によりまして、たとえばこういう
地帯では麦を
共済事業からはずしたらいいじゃないか、
農家経済のウエートからいいましても非常に小さいものである、
重要度がないということで、その
地帯の希望で米はやりたいけれ
ども、麦ははずしたらいいじゃないか、あるいは生繭をはずしたらいいじゃないかということがございましたら、そういう
共済の
目的ごとに
事業をやるとかやらぬとかということをきめるようにしたらどうか、こういう
考え方でございます。
それから次に大きな問題は、今まで
共済制度をやって参りまする
基礎は、
筆単位で、
収量建てで
共済をかけておったのでございますが、
農家の
所得補償という点を非常に重視しまして考えますと、必ずしも
一筆単位の
共済というのが適当であるかどうかというところに問題があるのでございますので、これは
農家単位の
収量によって
共済をかけるということを
原則にして、
一筆単位の方が適当である、あるいは
一筆単位でなければどうも工合が悪いというようなところにおいては、
一筆単位も併用してやっていくということで、
原則としてはやはり
農家単位でやっていく、こういうような
考え方でございます。それと、それに応じまして
損害を受けました場合の
農家の
損失補てん、
災害における
損失を補てんする場合の
補てん額をもう少し引き上げていく、こういうことでございます。これは従来
一筆単位でやっておりまして、大体最低が千五百円、最高が四千九百円くらいの間で五段階に
農家が選んでおりましたわけであります。これは全損の場合の
実質補てんでございます。それを、大よそのところでございますが、大体
倍程度くらいには
農家単位の場合には引き上げてもいいのではないか、こういうことが
一つの
改正の
問題点になっておるわけであります。
それから今まで非常に問題の多かったのは、
災害がないところにおきましては、
農民が
共済金の
掛金をかけましても、いつもかけ捨てになっている、こういう問題がありまして、これを無事戻しを強化しろとか、こういう意見があったわけでございます。もちろんこれは無事戻し
制度というようなものも
制度として十分考えていかなければならぬということで考えておりますが、問題は今までの
プール方式が大体
通常災害については
市町村の
組合が一割の
責任を持っておりまして、県の
連合会が九割の
責任を持っておったのです。それから
異常災害は
全額国が持っているわけでございます。そういうことでございますから、
農民の
掛金をかけましたものは、
連合会に大
部分がいってしまうわけです。そうして
町村の
組合に
掛金として残っているものはせいぜい一割しかない、こういうことでございます。そこで県内におきましては相当
災害のアンバランスがございます。たとえば
安定地帯では毎年
自分のかけた金が県の
連合会へいってももらえない、この金はほかへいっているのではないか、こういう
不満があるわけであります。
農民感情としては当然のことだろうと思うのでございます。そこで
通常災害の全
責任を末端の
共済組合におろそう、こういう
考え方を
一つの骨子として考えているわけでございます。それは
掛金をかけたものは
通常災害部分については少なくとも全部
自分の
手元にある、こういうふうになるのでございまして、これが
災害がなかった場合におきましても
自分の
手元に金が残っておりますから、
積立金がふえますし、あるいは無事戻しもできる。それを積んで参ります場合には、その他の
事業等にもこれは使えるというようなことで、
農民としても備荒貯蓄的な
意味で安心して
災害がなくても金がかけられるのではないか、こういうことが
一つのねらいでございます。そういたしまして
異常災害につきましては、
町村の
共済組合と国とが直結いたしまして、
町村の
共済組合員の
共済に対しまして国が補てんする、こういう格好でやったらどうか、こういう案でございます。
さらに
病虫害の問題があります。これは
共済制度の中におきましても非常に問題になっておるのでございますが、
病虫害防除もだんだんと技術も進んで参りますし、
薬等も進歩したわけで、
相当程度防除ができるという
態勢になってきておるのであります。これにつきましては、
病虫害を
共済事故からはずしたらいいじゃないかという
議論もあったのでございますが、なかなか急にそういうわけにもいかぬだろうということで、
病虫害の
防除対策の是非という点におきましては、
病虫害の一定の基準によって、
防除態勢のできているところにおきましては、
病虫害に対する
掛金の
部分がございますから、その
部分だけは
掛金の割引をしたらどうかということにつきまして、それから当然それに対応する
掛金の
国庫負担部分がございますので、そのうちの一部を
病虫害防除に対する
補助金として交付したらどうか、こういう
考え方で
病虫害を将来はおいおい
共済事故からはずしていくということに手をつけていったらどうか、こういうふうな
考え方でございます。
そのほか
市町村の
共済組合の
運営等につきまして、たとえば
損害評価であるとか、あるいは
地元負担に対する問題であるとか、そういうような問題も
自分が
責任を負いますから、相当官主的な
運営にまかせていい
部分が広範囲に出て参りますので、そういう
関係で、相当自主的な
運営を強化していくという
考え方でいったらいいだろうということでございます。
それからそれに応じまして、今まで
町村における
事務に対しましては、国は三分の二の
負担をやっておるのでございますが、基幹的な
事務費については
全額負担したいということで、
町村の
共済組合に対します
基幹事務費、いわゆる
人件費、
庁費というようなものについては
全額国庫
負担するということでございます。これは今度の三十六年度の
予算から
実施をするということで、三十六年の七月から
全額負担に切りかえる、こういうことで
予算案にも計上いたしておるわけでございます。
内容といたしましては、大体そういうところをねらいといたしまして、
制度改正のための
法律案を
準備中でございます。
ただ、この場合に機構の問題といたしまして、今まで
連合会が
通常災害の九割の
責任を持っておりましたものが
町村の
組合に参りますものですから、そこで
連合会の
仕事についていろいろ問題があるわけでございます。そこで
予算の小
委員会といいますか、
協議会の案におきましては
連合会の
部分まで取り込んで、
中央と県とが
事業団を作る、その
事業団が
町村の
共済組合と直結して
農業共済組合の
運営をやっていったらどうか、こういう
考え方になっておりますけれ
ども、これはもちろん
予算等の
関係もございまして、三十六年度
予算におきましては
中央だけを
事業団にいたしました。県の
連合会は、とりあえずの問題といたしましては、農作物のほかに
家畜共済とかあるいは
蚕繭共済とかそういうものがあるのでございますので、これは県の
連合会でやっておるのでございます。それは
連合会としては一応そのまま残しておきまして、
中央の
事業団の
損害補てんの
事務、あるいはその他の
事務は
連合会に委託して
仕事を進めていったらどうか、こういう
考え方で現在
予算案も編成し、それから
法律案も
準備をいたしておるわけでございます。おいおい
家畜の問題あるいは
蚕繭の
問題等も、本
度度調査費等も要求いたしておりますので、
制度の
内容についても
検討を進めたい。このほか本年度におきましては
果樹の
共済であるとか、あるいは畑作の
共済であるとか、そういうものをいろいろ
予算に要求をいたしておるのでございまして、この点も本年度十分
調査をいたしまして、今後広範囲に
制度を
改正し、将来の問題として考えていきたいというふうに考えておるわけでございます。