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池田(勇)
国務大臣 上林山さんの今の
数字は、私の持っている
数字とかなり違っております。お話しの通り、外貨保有高は二十億三千万ドル、そうしてモフ勘定と申しますか、大蔵
大臣が為替銀行に預けているお金と、そうして輸出ユーザンス、船を輸出いたしましてまだ債権として残っておりまするが、外貨になっていない、このモフ勘定と輸出ユーザンスとが六億八千万ドルばかりございますから、二十億三千万ドルと合わせますと二十七億ドルの外貨を持っているということに相なっておるのであります。そうしてお話しのユーロ・ダラーは大体三億ドルとおっしゃったが、二億二百万ドル程度でございます。それから輸入ユーザンスが、最近の
数字で大体九億七千五百万ドルと私は記憶しております。それから短期の借入金が一億五千万ドルと、為替銀行の負債が五千万ドル、これで為替
関係の借り入れが二億ドル、それから綿花借款が、従来六千万ドルぐらいございましたが、今は三千九百万ドル、石油
関係のスタンドバイが三千五百万ドル、合わせて十四億四千万ドルくらいになります。そうすると、差引十二億ドル余りがネットになるのでございまするが、御承知の通り九億七千五百万ドルは、短期債務と申しましても借りかけ勘定でございますから、これは輸入がふえるにつれて、それだけはずっとたまるわけなんで、これを短期債務と心得てもよろしゅうございますが、そういう事情は、十四億四千万ドルの計算にお入れ願いたいと思います。この
数字は、日銀がどう言おうと、大蔵省の最近の
数字でございますから、変わりございません。えてして
総理大臣は、為替
関係、国際収支を非常に楽観しておる、こういうのでございますが、私は決して楽観しておりません。私はどの
大臣よりも、どの国民よりも、国際収支につきましては非常な関心を持って、常にその動きを見ておるのであります。
御参考までに申し上げますが、
昭和三十二年のあの状態のときには、これは今の差し引いた十二億ドルに相当するものが、
昭和三十二年の九月には二億五千万ドルくらいでございます。これはIMFから一億二千五百万ドル借りております。こういうときの状態等々から比べますと、これは三十二年のときも、三十三年の末をとるか、三十三年の九月をとるか、三十二年の三月をとるか、三十二年の九月をとるか、いろいろとりようによって動きますが、いずれにいたしましても、あの当時よりは比較にならぬほど今の外貨事情はいい。IMFから借りておりません。また世界の各国から比べましても、御承知の通り
貿易で立っておるイギリスは輸入総額が百三十億ドルで大体三十二億ドルくらいしか外貨を持っておりません。そうすると輸入額の二四%、フランスも六十七億ドルの輸入で二十億七千万ドル、
日本ととんとんです。そうするとやはり三〇%程度でございます。ドイツは六五%、イタリアが六二%持っておりますが、
日本は四〇%持っております。こういうことを見ますと、
日本の国際収支は、決して私は楽観しておりません、非常に心配しておりますが、よその国、ベルギー、オランダよりも割合は多うございます。特殊のイタリア、まあドイツは最近
ガリオアを払いますし、また海外投資をします。そうしてまた、ドイツの金利は二回にわたって下げて、今三分になっております。五分から四分、三分五厘、三分と下げまして、アメリカと大体金利水準を同じにしましたから、まあマルクの切り上げということはやらぬと言っておりますから、そうユーロ・ダラーがドイツに入ることもないようであります。ドイツが今七十一億ドルと申しましたが、今八十億ドルくらいになっておりましょう。それが相当減ってくると思います。十五億ドルから二十億ドルくらいここ一年間で減るでしょう。そうなってみますと、私は楽観はしませんが、そう新聞雑誌に非常に騒がれておるほど心配はない。外国の人が、
日本は
経済が確かだというので、今まではほとんどなかったユーロ・ダラーがどんどん来るのでございますから、まあ、まかしておけとは申しませんが、いろいろ努力いたしまして、今後、われわれは決して輸出をおろそかにしておるというわけじゃございません、輸出は一番大事なんです。しかし
国内消費というものを
考えなければならぬ、こういう際でございますから、大蔵
大臣あるいは通産
大臣、
関係大臣に輸出
振興策をこの上ともやるようにということを常に言って、案を練っておるのでございますが、何と申しましても、やはり
国内消費が非常に伸びますときには、商社その他が
国内に売った方が簡単でもうけになるという気持で、
国内消費ムードが起こっておりますから、輸出ムードを起こすように
政府としても施策を進めていかなければならぬと思います。いろいろ心配はいたしております、決して楽観はしておりませんが、皆さんのように、もう取りつく島もないような心配をしたのでは、
日本の
経済は持ちませんし、高度成長にもならない。外貨のあり方ということよりも、やはり輸入の状況、今輸入を一番刺激しているのは輸入時期ということと、そうして綿花、羊毛の先高見越しということと、もう一つは、為替・
貿易自由化で
国内の産業の基盤を急速に強化しようという新式機械類の輸入が今相当あれしておるので、思惑もございませんし、私は、今のところ、あまり背伸びし過ぎてはいかぬ、設備投資もほどほどにと、こう言っておるのでありますが、何と申しましても自由主義
経済の建前でございますから、なかなか法的に規制というわけにはいきませんが、金融業者も民間の産業人も十分お
考えになって、長い目で見てステディに——スローとは申しません、ステディにいくように期待いたしておるわけでございます。