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滝井委員 これは私、もう少し根本的なところにこれから入りますから、これ以上言いませんが、一ぺん十分数字を検討して、りっぱな展開をやってみて下さい。二六%の引き上げでも、あなたの方がかつて発表したものでは、これはエンゲル係数は五七%
程度なんです。問題は、やはり稼働していない世帯で一ぺんやってみる必要がある。実は、われわれは昨年極秘に、一カ月かけて生活保護の実態調査をやったのです。驚くべき結果が出てきたのです。どういう結果が出てきたかというと、その集約された問題点は、生活保護の家庭では、まず第一に、今の生活保護の基準では、もう憲法でいう健康で文化的な生活水準などというものは、はるかかなたの夢であるということです。これはもうはっきりしてきました。もう
一つは、保護費で食うことは死を意味するということです。私
たちは二百三十世帯のものを極秘に調査したのです。二百三十世帯の中で、国から与えられる、おとなでいえば約二千円
程度のお金で食っている世帯はたった一世帯あった。そのたった一世帯も、一体どういう人であったかというと、六十六才のおじいさんです。あと二百二十九世帯というものはどこかでかせいできておった。あたかも、ちょうどあの南極に置いてきた多くの犬の中から、タローとジローという二匹の犬が、翌年行ったら生きておった。あてがい扶持のほしタラも幾分食っておったが、何を食って生きておったかわからぬが、とにかく二匹の犬が生きておった。そのタローとジローの二匹の犬が生きておったと同じ姿が、
日本の今の百六十万の生活保護の世帯の中にあるということです。すなわち二百二十九世帯というものは、月にしてみれば五割、一カ月おとなでいえば最低五割ないし七割をどこかでかせいでおる。ケース・ワーカーあるいは民生
委員の目を盗んでかせいでおることがわかりました。すなわち五割といえば千円、七割といえば千四、五百円です。これをかせいでおる。そして、ちょうど南極でタローとジローとが何かを食って生きておったと同じように今生きておる。それが実態です。そして、その二百二十九世帯の中でたった一人二千円だけ、与えられたその経費で食っているおじいさんの身体検査をしてみました。おじいさんは栄養失調です。全身浮腫です。からだが全部はれてしまっておるのです。生けるしかばねです。二千円の生活保護費では、ほかに何もかせがなければ生けるしかばねになるというの
日本の現実です。従ってわれわれは、保護費で食うことは死を意味することを発見しました。さらに、人間らしい家に住んでいないのです。保護費では人間らしい家に住むことができません。さらに子供の教育が破壊されております。電気を夜つけて勉強しようとしても、電気代が出てこないのです。だから、もう夜は勉強せずに電気を消してしまいます。こういう実態です。さらに、そこには正常な家庭生活が営まれておりません。そこにはまともな交際がないのです。お隣とのまともな交際は全然しておりません。そして健康はそこなわれる一方です。もう保護基準自身が、その被保護者が立ち上がり、世帯更生をやっていく自立更生の道をはばむ
一つの手かせ足かせになっていることがわかった。これはわれわれが極秘に百万円かけて、昨年の三月一日から三月三十一日まで、東京のある地帯を調べた実態です。
そこでこういう実態がはっきりしてきた。だから社会党は、これは最低五割上げなければならぬという結論に到達をいたしました。この社会党の主張に、厚生省の幾分の良識は二割六分を主張したのです。自民党の中にも良識の士があった。賀屋興宣、あの賀屋
委員会は五割を主張したのです。賀屋さん、おそらく罪滅ぼしだと思うのです。戦争の結果、深い傷あとが
日本の大衆に及んだ。これはやはり罪滅ぼしをしなければならぬということが賀屋
委員会の五割の念願ではなかったかと思う。ところがそれは頑迷固陋な政治によって消されてしまいました。これが実態です。
そこで、こういう実態の上に立って、私は厚生省が出しておる具体的な献立表を手に入れたのです。かつて厚生省は日患その他の団体交渉の席上で、二十五才から六十才の、厚生省が食えるという成年男子の一人一日の献立表を発表しておるのです。私は、これは夢物語みたいなものなんですから、これで一体今の世の中で食えるかどうかを
大蔵大臣なり——厚生大臣は一ぺん私は言っておるから、まあ
大蔵大臣なり厚生大臣に十分
一つ聞いてもらいたいと思うのです。それはまず朝飯です。米と外米と押し麦十一円三十八銭です。みそ汁、じゃがいも五十グラム、みそ三十グラム四円十七銭、つけもの、たくあん四十グラム一円八銭です。十六円六十三銭です。これは私は集団給食なら食えるかもしれぬと思います。二千人、三千人の集団給食なら食えるかもしれませんけれ
ども、これが一人か二人の家庭で、一体朝飯が十六円六十三銭でどうしてできますか。しかも昨年の四月から以降ずっと米もみそもしょうゆもみな一割から一割四、五分値上がりしておりますよ。一八%上げたのなんかみんな帳消しですよ。昼飯は、御飯十一円三十八銭、イカのくず煮五円三十六銭、野菜の油いため、小松菜七十グラム、油五グラム一円五十銭、十八円二十四銭です。お昼十八円二十四銭で一体食わしてくれるところがありましょうか。下の食堂でさいぜん僕らは昼食をとりながら冗談ごとを言ってみた。横路
議員が、
滝井君、それは一日に一合ずつ牛乳を三回飲んだらいいだろう、そうすると四十五円である。一合といったって、あの小さなコップ一ぱいですが、あれ三合飲んで四十五円で、あと二十円何か食う。これで一体生きられますか。これが昼飯です。夕食、うどん、ほしうどん七円九十五銭、ひき肉四十グラム十円六十八銭、しょうゆ四十グラム五十銭、砂糖三グラム三十二銭、その他ネギ、油など五円三十銭、つけもの、たくあん四十グラム一円八銭、合わせて夕飯は二十五円八十三銭、計六十円七十銭です。一割八分を
計算の都合で二割上げたとしても、一日に七十二円になるんですよ。一体今一日に七十二円で食えということを、人に言う前に、まずみずからやってごらんになっていただきたいと思うのです。私は来週一週間、
一つ大蔵大臣と厚生大臣が六十円七十銭で、私もそれは一緒にやってもよろしいと思うのです。これで食えるかどうかということです。国会に出て
答弁が——
答弁は軽労作ですが、それでやっていけるかどうかということです。政治は人に施す前にみずからやってみることですよ。みずからやってみることなくして、これで食えるのだといって、数字の上で押しつけたのでは大へんです。だから栄養失調です。これで一週間やってごらんになったら、国会に出てこられませんよ。(笑声)これは実際笑いごとではない。こういうことが二十世紀後半の原子力の
時代に、平気で
日本では政治でまかり通っておるところに問題があるのです。保守党の政治の盲点があるのです。保守党の中にも、私は良識はあると思います。こういうものがどうして直せな
いかということです。
大蔵大臣どうですか。あなたの方が、二割六分を厚生省が要求したのを、二割六分では多過ぎるといって一割八分にお削りになった。これであなたがやっていけるというならば、七十二円で一ぺん私と二人でやってみようじゃありませんか。そうして三日くらいやってみたらわかる。生活保護者は同じわれわれの兄弟ですよ。われわれ
日本人ですよ。そういう人が苦しみの声を上げておるのに知らぬ顔をする政治というものは許されぬと思う。それも四千七百億円の自然増があるときに、わずかにそれを一割八分上げて、これで社会保障は
日本の財政史始まって以来の歴史的な前進を示したなんて、一体どこのところからそういうことが出るのですか。これを
一つどうです、やってみる意思がありますか、どうです。三日間でけっこうです。それならば
予算を修正をして二割六分
程度に上げなさい。これは現実ですよ。もはや数字の遊戯と魔術ではだめです。こういう現実を
日本の百六十万の国民大衆に押しつけておるのですから、どうですか
大蔵大臣、二割六分に立ちどころにこれはここですると言うあなたに良識と勇気があるかどうか。