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1961-02-13 第38回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月十三日(月曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 船田  中君    理事 青木  正君 理事 重政 誠之君    理事 野田 卯一君 理事 保科善四郎君    理事 井手 以誠君 理事 川俣 清音君    理事 横路 節雄君       相川 勝六君    赤澤 正道君       稻葉  修君    臼井 莊一君       小川 半次君    上林山榮吉君       菅  太郎君    北澤 直吉君       倉石 忠雄君    櫻内 義雄君       園田  直君    田中伊三次君       床次 徳二君    中野 四郎君       中村三之丞君    羽田武嗣郎君       前田 正男君    松本 俊一君       三浦 一雄君    山崎  巖君       淡谷 悠藏君    岡  良一君       木原津與志君    小松  幹君       河野  密君    高田 富之君       楯 兼次郎君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    野原  覺君       松井 政吉君    佐々木良作君  出席国務大臣         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 池田正之輔君         国 務 大 臣 迫水 久常君         国 務 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         警察庁長官   柏村 信雄君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  大來佐武郎君         公安調査庁次長 關   之君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         通商産業事務官         (石炭局長)  今井  博君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月十一日  委員佐々木良作辞任につき、その補欠として  田中幾三郎君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員田中幾三郎辞任につき、その補欠として  佐々木良作君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算  昭和三十六年度特別会計予算  昭和三十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 船田中

    船田委員長 これより会議を開きます。  昭和三十六年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。保科善四郎君。
  3. 保科善四郎

    保科委員 私はただいまから良識作興安全保障の問題、防衛力整備、そういう問題に関しまして関係閣僚に質問をいたしたいと思います。時間の制約もありますので、どうぞ簡明誠実にお答えを願いたいと思います。  まず良識作興に関する問題でありますが、近ごろの世相は、まことに憂うべき状態にありますことは御承知通りであります。私は良識の麻痺していること今日よりはなはだしきはないと考えております。こういう観点に立ちまして、私は文部大臣に対し、良識作興について特にどういう所見を持っており、またいかなる対策を持っておられるかを、お伺いをいたしたいと思います。
  4. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。お話しの通り当今世相と申しますか、ことに青少年犯罪続出等を通じまして見ますると、何か足りないような世相であるように思われます。まさしく御指摘通り良識欠除と申しますか、デモクラシーというものに対するなまはんかな理解あるいはことさらこれを曲解し、悪用するがごとき風潮もないではないと思われるのでありますが、いずれにしましても国民全体が、ことに青少年が次の世代をになうべき立場においてもっとしっかりした良識を持ってもらいたいと思うことは、ひとり文教関係者のみならず、一般世論もこれを期待しておるように思うわけであります。ことにこのことは青少年に関します限りは、義務教育課程ないしは高等学校教育、さらには大学教育を通じましても、ほんとうに新しい憲法下の理念を身につけて、良識ある日本人として世界の諸民族からも信頼と敬愛をかち得るに足る教育をみっちりと教え込む責任を感じておる次第でございます。
  5. 保科善四郎

    保科委員 ただいま大臣から考えの根本を示されたのでありますが、私はこの所得倍増計画の完成ということに対しては、まずほんとう日本人を育成するということが先決のように考えておるわけであります。称して、あるいは新しい日本精神とでも申し上げましょうか、実は私はこの終戦後の日本の建て直しの重点が、民主主義の線に沿うて改めるにあったと考えております。ところがいつの間にか共産主義思想が入ってきて、国内対立を起こさせるような、いわゆる階級対立思想に、いつの間にか置きかえられてしまった。その上一家の中でも親と子を対立させるような教育が行なわれた。こういうねらいはみな日本国内に争いを起こさせて、平和な生活ができないようにしよう。その結果が今日の社会秩序混乱を起こし、今日の状態にさしてしまったと、私はそう見ております。  そこで、ただいま大臣が言われたように、何と申しましてもここでこの混乱を救うために、何かの建て直しをしなくてはいけない。私は文部大臣教育基本法に改正を加えるというようなことを漏れ承っておるのでありますが、これは当然だと思います。私はこの機会において、一体どういう構想を持っておられるか、これをお伺いいたしたいと思います。
  6. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。私が就任早々教育基本法の問題に触れたことがあるのであります。それは憲法占領中に、いわば与えられた憲法であるという角度から、法律に基づいて再検討をされつつある。同様に教育基本秩序をきめますところの教育基本法が、独立を回復して十年、おそきに過ぎるくらいのことでありましょうが、日本人みずからの自主的立場に立って再検討を加うべき時期でもあり、また課題ではなかろうかという意味において触れたことがございます。今でもそう考えてはおりますが、  ただ問題は、これを具体的にどうするかになりますれば、一文部省が行政的に事務的な立場で取り扱うべきものではむろんございません。検討するとなれば、良識あるその道の権威者をわずらわして、ゆっくりとそのおい立ちの記あるいは内容等検討していただいて、ことに教育基本法が制定されました当時のいわゆる刷新委員会良識ある方々さえも、当時の置かれました無条件降伏占領中であるという客観条件のもとに、言うべきことも言い得ないままに原案が作られ、国会におきましてもことごとくGHQのアプルーヴァルをもらい得るかいなかの範囲内において制定されたことも事実でございますから、そういうことを念頭に置いて、トップ・レベルの権威者を網羅して検討していただいたらいかがであろうか、検討すべき課題であるという意味において言及したことは記憶いたしております。  先ほども申し上げました通り、ただいまも私一個としてはそういうことであろうと考えておりますが、これが今後に向かっての取り扱いは慎重であるべきであり、また方法等も特に考慮せらるべきであろう、かように考えておるような次第でございます。
  7. 保科善四郎

    保科委員 大体の考え方がわかりましたが、先ほど指摘されました通り、現在の一番の欠陥は、日本の昔から二千六百年伝わってきたいい点が非常にぼけてしまった。私はやはりほんとう日本人を作るには、もちろん外国のいい点を十分に取り入れて、世界的視野に立って幅の広い日本人を作ることは大事でありますが、同時に日本のいい点はこれをどこまでも長養していかなくちゃならぬ。そういう点において歴史教育を今度やられるということはまことにけっこうなことでございますが、同時に、どうも家庭教育が十分でなくなった。過般のテロにおいても、親が、子供がどういうようにしておったかということを知らないというようなことが新聞に現われている。まことに遺憾なることであると思います。この家庭教育の振興ということについて、文部大臣はどういうように考えておられますか。
  8. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。御指摘通り青少年良識欠除しております原因終戦直後の時代にさかのぼらざるを得ないと思いますが、御案内のごとく、占領政策遂行上の必要からとは申しながら、日本の特に義務教育課程において、日本地理日本歴史と修身とを教えることを直ちにやめろという厳命が、昭和二十年の十二月に占領命令として出されまして、直ちにこれを取りやめて最近に参っております。ようやく一昨年から小中学校におきましては、道徳教育を実施せねばならないということに決定を見まして発足いたしましたことは、おくれたりとはいえども、けっこうなことであったと思います。さらに昭和三十六学年度から新しい教育課程を実施することに決定いたしまして、小中学はもちろんのこと、高等学校におきましても、特に道徳倫理の教科をもっと腰を据えて教え込もう。さらには日本歴史日本地理というものも特にこれを取り上げて、じっくりと教えていこうということに相なっておりますことは、これまたおくれながらまことにけっこうだと思うのであります。  ただ遺憾なことは、その間にありまして日教組のあり方が、特に幹部諸公のものの考え方が、御指摘のごとく、教壇を通じて赤色革命のにない手となるように青少年を育成せよということを明確に打ち出して、末端の教師諸公を指導し来たっておることは、国民的立場において遺憾しごくであったと申さなければなりません。ことに道徳教育については絶対反対、道徳教育戦争につながるというきわめて未熟な論理を展開して反対し続け来たっておる。このことを世人がひとしく遺憾に思っておるわけでございまして、こういうことが知らず知らずの間にがんぜない子供たちの脳裏にしみ込んで、ともすれば道義感が薄れ、あるいは良識が麻痺する状況になっておるのではなかろうかをおそれるものであります。  そういう状況のもとに子供たち終戦以来非常に気の毒な育ち方をしておるわけでありますが、それに加えまして、御指摘のごとく、家庭においての教育と申しますか、あるいはしつけと申しますか、そういうことがいわばおとな自信喪失のゆえに言うべきことも言わない、たしなむべきこともしようとしない。最もいい意味において人間的な子供を愛する親としての至情から発することすらもが、遠慮がちにふるまわれたこともまた子供たちにとりましては私は不幸であったと思います。もっとおとな良識をかき立てて、新しい時代に前向きに必要な事柄を子供たちにしつける角度から、親身になって家庭であたたかく包んでもらいたい。私自身も個人的なことを申しておそれ入りますが、そういう意味では努力が足りなかったことを思うものの一人でありますが、全国民、全家庭におきまして、そういう気持で子供たちを包み込んではぐくんでいきますならば、いわゆる青少年犯罪も、もっと少なくなすことが可能であると私は思うのであります。  そういう意味合いから、文部省といたしましても、社会教育の面についてはいろいろと具体的な施策を従来もやってきておりますが、三十六年度の予算に関連して申し上げましても、幾らかでもそういう意味合いにおいて効果を上げ得るようにという考慮から、いろいろなことを施策し、実行しようとしておるような次第でございます。
  9. 保科善四郎

    保科委員 次に世界情勢に関して外務大臣にお伺いをいたしたいと思います。  過般ケネディ米国大統領は、その一般教書においてきわめて率直に世界情勢に言及をいたしまして、米国民の奮起を促しております。私は、端的に現在のこの両陣営状況を見ますと、現実ソ連中共共産諸国は準戦時体制をとっており、またアメリカを初めとして主要なる自由諸国戦時と平時の中間体制にありと、そう判断をいたしております。私は政府が、所得倍増政策ということに非常に力を入れることは大へんけっこうなことでありますが、もう少し国民に対して世界現実に対する認識を与えることが必要ではないかと考えておるものでございます。  去る一月六日のソビエト党集会においてフルシチョフ首相がいろいろなことを申しておりますが、その戦争に関する部分だけを取り上げてみますと、これを三つに分けております。第一は世界戦争で、これは避けられると言うております。第二は局地戦争で、将来もこれはあり得ると申しております。第三には解放戦争、これは正義の戦争である、神聖なる戦争であるとこれを肯定をいたしまして、全幅の支持を惜しまない、こう申しております。これは一月二十五日のソビエトの全新聞に掲載されました。また中共戦争不可避であるという議論を唱えており、これを正当正義化しておる。本日の毎日新聞のロンドンのUPI電報を見ますと、「深刻な中ソの論争」ということで戦争不可避かどうか、限定戦争世界戦争に発展するか、社会主義は暴力によらないで達成できるか、平和共存の問題、非共産主義解放運動を支援すべきかどうか、それから最後に現段階をどう規定するかという問題に関することを書いてありますが、その最後の、どういうように現段階を規定するかというところで、ソ連は、帝国主義崩壊の時期である、社会主義への過渡期である、社会主義世界組織結成確立の時期だという結論を下しておりすすが、中共は、戦争革命時代である、そう規定しておるということを報じております。また、他方、一月三十円にケネディ大統領は、先ほど申し上げましたようにその一般演説において、アジアにおける中共態度を激しく批判をいたしました。そうして軍事機構の強化、防衛戦略の再検討を行なう。とりあえず局地戦争を防止するために、空輸能力の増大あるいはポラリス潜水艦計画促進、全ミサイル計画促進即時措置を指令しておるというような状況でございます。こういうような国際情勢現実に対して、国民に正確なる認識を与えるために外務大臣は、どういう一体処置をおとりになろうと考えておられるか、その点について外務大臣のお考え伺いたいと思います。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答え申し上げます。お話通り、現在の世界におきまして最も重視すべき問題は、東西対立の問題であろうと思うのであります。お話のごとく、アメリカケネディ大統領もその就任演説におきまして、この際東西双方が新しく平和の追求を始めるべきことを呼びかけまして、他の自由諸国もまた、これがための態勢を整えつつあるのでありますけれども、一方、昨年末のモスクワ共産党首脳会議声明も、戦争不可避ではないといいまして、平和共存を唱えておるのであります。このようにして、今や世界東西陣営ともに、国際緊張緩和への努力を整えつつあるということが看取できるのであります。しかしながら、モスクワ共産党会議声明も、平和共存とは階級闘争の一形態であるとしておりまして、冷静に現実を見る限り、国際緊張緩和の前途を軽々しく楽観的にのみ見ることもできないのであります。国際緊張のよって来たった原因が根深いものであるだけに、単に国際緊張緩和への気がまえを示すだけでなくて、そのための具体的の方途を見出すことが最も重要であると考えるのであります。東西を引き離すよりも、双方を結びつける問題、たとえば核実験停止協定というようなものの締結や一般軍縮問題の解決のために、着実に努力を重ねることによりまして、次第に相互信頼の雰囲気を作って、東西緊張をやわらげることによって逐次、東西間の懸案の解決をはかるということが重要な問題と考えまして、私どももそのような見地に立って協力をしていきたいと思っております。ただいまお話の中にございました一月六日のソ連フルシチョフ首相演説は、中央委員会付属上級党学校社会科学アカデミー、マルクス・レーニン主義研究所という党三機関集会において行なわれたものでございまするが、これは従来のソ連態度を明らかに表明したもので、特に変わったということでもないようでございます。ただ、御指摘のように、世界戦争はよくない、局地戦争世界戦争に発展する可能性があるからこれはいかぬということでありまするが、解放戦争については、ベトナム人民武装闘争アルジェリア人民戦争というようなものは許されるべきであるのみならず、不可避であるというような言明もございまして、そうした状況というものについては、われわれの平和努力ということによりまして、そうした緊張的な見方というものをできるだけ緩和するようにしていかなければなりませんことを考えて、われわれ大いにこの点努力を要するものと考えております。
  11. 保科善四郎

    保科委員 ただいまソビエトは特に後進地域に関して非常に力を入れるということを申しておりますし、現在またやっておるわけであります。われわれ自由諸国においても、後進地域対外経済協力に対して、格別なる重心を置いておるわけでありまするが、一体ソ連なり中共なりが、この後進地域に対する経済的進出がどういう工合になっておるか、これをちょっと外務大臣から御説明を願いたい。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 後進地域なり低開発国なりという言葉は、これはいろいろにとられるわけでございますが、私どもデベロッピング・カントリー、開発されつつある地域というような言葉も使ってみたりしておりまするが、試みに中近東、アフリカ、中南米、アジアというふうなもので見てみますると、かようなことになっております。アフガニスタンに対しましてアメリカ援助、これは一九五四年七月から一九六〇年の六月までをとっておりますが、これは共産圏の方も同様でございますけれどもアフガニスタンに対しまして九千七百万ドル、共産圏からの援助は一億一千七百万ドル、イランに対しましては、アメリカ四億二千七百万ドル、共産圏から六百万ドル、イラクに対しては、アメリカ千六百万ドル、共産圏からが二億一千六百万ドル、トルコに対しては、アメリカ七億二千四百万ドル、共産圏一千七百万ドル、アラブ連合に対しましては、アメリカ二億四千九百万ドル、共産圏七億六千六百万ドル、イエーメンはアメリカ八百万ドル、共産圏四千四百万ドル、アフリカで見まして、エチオピアはアメリカ六千四百万ドル、共産圏一億一千四百万ドル、ガーナはアメリカ三百万ドル、共産圏五千万ドル、ギニアはアメリカ二百万ドル、ソ連六千八百万ドル、それからアルゼンチンに対しまして、アメリカ四億一千六百万ドル、共産圏一億四百万ドル、それからキューバに対しまして、アメリカ一千六百万ドル、ソ連一億四千八百万ドル、ビルマに対しまして、アメリカ八千八百万ドル、ソ連一千二百万ドル、カンボジアはアメリカ一億九千五百万ドル、ソ連三千五百万ドル、セイロンはアメリカ七千百万ドル、ソ連五千八百万ドル、インドはアメリカ十五億五千二百万ドル、ソ連九億三千三百万ドル、インドネシアはアメリカ二億三千万ドル、共産圏五億一千三百万ドル、ネパールはアメリカ二千三百万ドル、共産圏四千百万ドル、それからユーゴスラビアに対しまして、アメリカ六億七千六百万ドル、ソ連一億一千一百万ドル、かようなことになっております。総体として、今あげました国に対しまして、アメリカからの援助が五十五億五千五百万ドル、それから共産圏から三十四億六千百万ドル、かようなことになっております。多少飛ばしました点もございますが、あげました国のほかに若干の国が入っておるわけであります。以上のような状況であります。ただ、これらの国におきまして、最近やはり経済援助ひもつきにするということに対する強い反発がありまして、共産圏からの援助が多いということをもって、必ずしも非常に共産主義に染まっているということは言えないと考えます。そうしたひもつき援助を排除するという傾向は強く起きておるということを特に申し加えさしていただきたいと思います。
  13. 保科善四郎

    保科委員 ただいま自由、共産両圏の未開発地域に対する援助状況を詳細に説明されましたが、日本はようやく特別国会で五十億円の経済協力基金が成り立ち、さらに今回五十億の増加をされることになっておりますが、今の状況から見まして、日本所得二倍増の計画を完遂するためにも、私は特に東南アジアに対する経済協力が非常に必要だと考えておるのでありますが、一体あの程度の経済協力基金で、この今示されたような事態にそぐうように大蔵大臣考えられておるかどうか、もっとこれを増さなくちゃいかぬと考えておるかどうか、御所見伺いたい。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、日本はまだ今後賠償を八億ドルも払う義務を持っておりますので、この賠償が事実上は他国に対して経済協力になるような方式で、両国でいろいろ相談してやっておりますので、今まで他の援助の余力が十分なかったという状態でございますが、今後は、この賠償を通じて経済開発協力するということと、今度できた基金をさらに増額するということ、それからもう一つは、輸出入銀行を通ずる援助方式というようなものをいろいろあわせて、今後の後進国援助に特段の力を尽くそうと考えております。
  15. 保科善四郎

    保科委員 今の同じ問題に対して経済企画庁長官の御所見伺いたい。
  16. 迫水久常

    迫水国務大臣 お話通り、あの真金ではほんとに小さいものでございますけれども経済援助といいましても、必ずしもすぐに取っつけるものでもございませんので、いわば小さく住んで大きく育てるといいますか、逐次大蔵省とも御相談をして資金をふやしていきたいと思っております。
  17. 保科善四郎

    保科委員 次は官房長官にお伺いいたしたいと思います。  わが国の情報機関は御承知通り非常に貧弱でございます。ただいま申し上げましたように、世界が非常に激動しておる、あらゆる面において正確なる情報を迅速、確実につかんで、それに対して適切に時期を失せず政治的な処置をとっていくということが非常に必要であると思うのでありますが、政府において、アメリカ中央情報局のような機関を、広範なる情報収集分析利用をするというようなために、総理の直轄としてそういうような機関整備する必要があると思うのでありますが、政府にそういう考えがございますか、一つ伺いたい。
  18. 大平正芳

    大平政府委員 国際関係が大へん複雑になって参りましたし、また交通、通信等の発達によりまして、世界が非常に鋭敏になったと申しますか、そういう状況国内にも波及し、波紋を呼んでおるというような状況におきまして、御指摘のように政府情報活動が活発でなければならぬ、またそれの分析利用に周到でなければならぬということは私どもも絶えず考えておるところでございます。しからばそういう政府情報収集分析利用が満足な状態にあるかと申しますと、これまた御指摘のように、まだきわめて貧弱な状態にありますことも、率直に認めなければならぬと思っております。そこで、それでは中央情報局のような機構整備考えておるかという御質疑でございますが、とりあえず私どもは現在各省庁に分担されておりまする情報収集というものをもう少し活を入れていきたい。そして各省庁の間の情報の連絡、協力という関係、さらには御指摘分析という面におきましても、一歩進んで努力してみたいと考えておるわけでございまして、ただいまのところじみちなそういう努力を続けて参りたい姿勢でおるわけでございます。従いまして中央に強力な情報機関を作るという考えはただいまのところ持っておりませんが、今御指摘にございました点もよく考慮いたしまして、今後十分検討、考慮さしていただきたい、そう存じておる次第でございます。
  19. 保科善四郎

    保科委員 これは、前に緒方副総理の時代情報局の構想があって、言論機関の反対にあって取りやめることになったと記憶しておるのでありますが、これは言論を統制する機関にするという誤解を取り除くことが必要であって、何も政治をするために情報のない政治などというものはあり得ないのですから、正確なる情報を適時につかんで、これを適当に活用していく、それを国家のいい政治の面に使っていく、こういうことで十分に一つ言論機関とも了解を得られれば、当然遠慮せずにこういうものはやるべきだと思う。独立国になってどこに——政治をするに必要なる情報収集分析機関整備していないという国はないのでありますから、もっと積極的に一つおやりになることを希望いたしておきます。  次に、安全保障の問題について、防衛庁長官、外務大臣等にお伺いをいたしたいと思います。  私は、国家の安全保障のないところに国民生活の向上安定というものは期せられないと考えております。ところが、ただいま分析をいたしましたように、現在の世界情勢は、両陣営の首脳者が申しております通り、力の均衡の上に立って平和が保たれておる、こういう状態であるということは、これは何人といえども否定することはできないと思います。かかる環境において、わが日本は、国連の重要なる一員として、憲法の許す範囲内において世界戦争抑制に協力をして、わが国の独立自衛の目的を達成し、世界の平和に貢献するの要ありと私は考えておるものであります。外務大臣なりあるいは防衛庁長官は、いかなる方策をとってこういうような日本世界における責任を遂行しようとしておるか、それをお伺いいたしたいと思います。
  20. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先般の本会議における施政方針の演説の中でも申し上げましたように、われわれといたしましては、そうした武力によるところの東西緊張が冷戦の形で保たれておりまする現状を、できるだけこれを雪解けの方向へ持っていくように考えなければならぬ、そのためには、まずその国々自身がバランスを失しないようにしなきゃならぬ。たとえばわが国におきましては、わが国の経済を繁栄させて国民考え方を安定させていくと同時に、もし万一わが国が侵されるようなことになりまする場合には、これをあくまで自衛しなければならぬ。しかもわが国のみにおいて自衛することができない部分については、これは日米安保条約によってその安全を保つ、かような考え方に立っておるわけでありまするが、それと同時に、東西の新しい冷戦を、今までそうした部面のなかった地帯に引き込まないようにわれわれとしては考えていかなければならぬ、こういうことを考えておるわけでございます。それと同時に、われわれとしてはできるだけ問題を話し合いによって解決する、その話し合いも、自分たちが言ったことが聞かれなければもう相手の言うことは聞かぬという態度でなく、あくまでも忍耐強く話し合うことが必要である。同時に内政に干渉しない、相互に内政不干渉という立場を各国がとることによって、世界平和への道を進んでいかなければならぬ、かような考え方でおる次第でございます。
  21. 西村直己

    ○西村国務大臣 保科委員から言われる通りケネディの新教書あるいはモスクワにおける各国の共産党の首脳者の会合等を通して、世界に対する外交その他の面についての意見というものは相当われわれもよく理解し得るところであります。従って、私どもといたしましては、防衛庁すなわち自衛隊の本来の任務、言いかえれば国土の自衛、そのための安全、平和を守る、こういう任務に向かってますますこれを生かしていかなければならぬというのが私どもの所信であります。言いかえますれば、日米の安全保障体制の基盤、いま一つは国土の自衛、二つの面を有効適切にやって参る。その基本方針は、すでに昭和三十三年でございましたか、国防会議において示されておる通りの基本方針でやって参りたい、こういう考えでございます。
  22. 保科善四郎

    保科委員 安全保障に対する施策はいろいろあると思いますが、その最も第一義的なものは、現在の平和はただでは得られているものではない。終戦後十カ年間、朝鮮やあるいはいろいろなところで局地戦争があったにかかわらず、日本は全く平和のうちに経済成長を遂げることができたのであります。どういうわけでこういうようなことが得られたかというようなことを国民全体が認識をして、現実の問題に立脚して、それが達成できるような国民認識が私は一番必要だと思うのですが、そういうことを達成する手段として防衛庁長官はどういうことをお考えになっておられますか。
  23. 西村直己

    ○西村国務大臣 お答えいたします。もちろん世界情勢に対する認識そのものは、私どもよりむしろ外務大臣の御所管において大いにそういう知識の普及をやっていただくと同時に、国の安全、自衛ということにつきましては、私ども、できるだけ外部の方々に御認識をいただきたい。同時にまた自衛隊自体の存在を、率直に申しますれば、国民によくわからす、その意義をわからす、また存在そのものについてわかりやすくする。実は私が着任いたしまして、自衛隊の用語の平易化ということを唱えておるのもその一つでございます。わかりやすい自衛隊、従って何も国民から不可思議であるとか秘密であるとか、あるいは理解しにくいとかいう状態でないような自衛隊に持っていく。と同時に、その基盤に基づいた、国民の手によって運用される自衛隊であるという認識を持っていく。そういう面からも私は部内からもやって参りたい。同時に他面において、貴重な税金を使っておる自衛隊である以上は、規律、訓練、言いかえますれば、国民信頼感も厚くする、こういうような考え方で、私は部内の統制に当たっておる、こういうことでございます。
  24. 保科善四郎

    保科委員 国防会議というのが御承知通りございます。日本の国防会議は一つの安全保障会議だと思うのです。こういうところで外務大臣なりあるいは大蔵大臣経済企画庁長官というような方々が集まられて、いろいろな情勢検討されて、日本安全保障の上においてどういうことをとるべきかというようなことがここで議せられるわけであります。こういうようなものは、何か知らぬけれども、一年に一回というようなものじゃなくて、たびたび開いて、そうしてこの国防会議の話し合いを——これは戦争を抑制するのですから、そう大して秘密なものはないはずであります。こういうようなものを一つ十分に国民にお知らせをして、そうして、そういう認識を与えられることが必要だと思うのですが、この点に関して外務大臣、どうお考えになりますか。
  25. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。防衛庁長官からまた御所管に関してでありますからお答えがあると存じますが、私は保科委員のただいまの御所見通り考えます。やはりもう少しひんぱんに、特定の問題のみでない場合にでもいろいろな話し合いをする、各般の情勢についての認識を相互に深める、それを通じて国民の諸君に毛状態を知ってもらうということが必要だと思います。  なお先ほどお話に関連してでございますが、私は今日日本の繁栄というものがここまで参りましたのは、やはり国が平和に保たれる、国の安全が保障される、しかもそれが少ない経費で保障されるということが非常に大きいと思うのであります。ことしの予算あたりでも、防衛費が総予算の一〇%を割るという状況でございますが、私はそのことをやはりよく国民各位に知ってもらうことが必要であるというふうに思う次第であります。
  26. 西村直己

    ○西村国務大臣 国防会議は、御存じの通り、国防の基本に関する問題を取り扱う、また同時に、かりにこれが出動等の際における一つの審議をいたす総理大臣の諮問機関としての存在であります。不幸にいたしまして、従来はややもするとこれがあまりかたい形で、年に一度重要問題があるときだけ開かれたのでありますが、先般の国防会議の際に、できれば月に一度ぐらいずつは国防会議の懇談会のようなものを開催いたして、そうしてそのつどやはり広い観点から、広い視野から、日本の国の安全、自衛、防衛、こういったような諸問題を懇談をいたして参ったらどうか、こういうような考え方で私どもはこれが運用に当たって参りたい、こういう考え方で、この所管そのものは総理なり官房長官でございますが、防衛庁長官といたしましてはそういう面から推進するように、内部では意思の統一がはかられつつある段階でございます。
  27. 保科善四郎

    保科委員 次に防衛庁長官にお伺いしたいのですが、中共が二、三年以内に核兵器の装備をするであろうと言われておりますが、どういうように判断をいたしておられますか。
  28. 西村直己

    ○西村国務大臣 その点につきましては、私ども的確な情報をつかんでおるわけではありませんが、そういうような下話は情報として私どもの方へ流れておることは事実でございます。
  29. 保科善四郎

    保科委員 これは、私は核兵器を作ることはあるいは可能じゃないかと思います。しかし、これを運ぶミサイルを作るということはとうてい二、三年にはできないのじゃないかと私は判断しておるのでありますが、いずれにしても隣りの戦争不可避論を唱えておる中共が核兵器を装備するという努力をしておる。こういう中共の核装備がわが国の安全保障に一体どういう影響を持ってくるか、これに関する防衛庁長官の所見伺いたい。
  30. 西村直己

    ○西村国務大臣 もちろん近国である中共が核装備をすることについては、かりに装備するとすればわが国に脅威を与えることは事実でございましょう。しかしながら、わが国といたしましては、かりに——かりにでございます。——そういうようなことがありましても、従来の方針通り核武装はしないという方針を持って参りたい、こういう考えでございます。
  31. 保科善四郎

    保科委員 核兵器を装備しないという政策をわが政府はとっているわけであります。ところが、中共が核兵器を装備するという可能性がある、こういうことになると、国民がやはり心配になるわけであります。政治の要諦は、国民の不安を除くということが一つの重要なる題目でございますので、国民を安心させるには、われわれはそういうような可能性に対して一体どういうことを考えていかなければいかぬかということについて、防衛庁長官の所見を承りたいと思います。
  32. 西村直己

    ○西村国務大臣 もしかりにそういう事態がありましたにいたしましても、われわれは、核武装は、わが国といたしてはいたしません。ただし私どもは、その意味においてこそまた安全保障体制というものが一つ結ばれておるわけでございます。言いかえますれば、わが国の守りは、これを野球の例で申しますと、内野であります。外野に対する守りは、安全保障体制の他の関係の国々が当然またその必要な限度においてのことをやるとわれわれは確信しておる次第であります。
  33. 保科善四郎

    保科委員 結局日本は核装備をしないのであるからして、日米安全保障条約を堅持することによって国民の不安を除く以外にないという結論だと私は了承をするわけであります。  次に、国家公安委員長と防衛庁長官にお伺いしたいのですが、安全保障の問題は、単に国防上に制約さるべきものではないのであって、国内の治安という問題に対しても、この国際情勢の推移というのが非常な影響を持っていることは、私が申し上げるまでもないことであります。ことに先ほど分析いたしましたように、国際共産主義諸国が、新しい戦術を使って、いろいろな手口を持ってきておる、こういう事態において、国の治安の任にあるものは、これを防衛するために慎重なる考察と計画のもとに、国民に不安のないように国内治安の確立をするということが特に必要であると考えるのでありますが、そういう点について防衛庁長官と国家公安委員長は、緊密なる連絡をとって、必要なる予防手段を考え、またそれを演練をしておかないと、いざというときに間に合わないだけでなく、また防衛の手段にもならない、未然に防ぐということにもならないのじゃないか、こういうように私は考えるのであります。それらの点について、両閣僚がどういうようにお考えになっておるか、御所見伺いたいと思います。
  34. 安井謙

    ○安井国務大臣 お話通りに、国内治安の問題に関しまして、これはむろん警察が第一線の任務を負っておるわけでございますが、防衛庁とも十分緊密な関連が必要でございまして、事前に防衛庁長官と国家公安委員長の間に協定ができております。国内治安のため必要な場合に自衛隊が出動します場合の基本綱領もきめておる次第で、なお、それの細目につきましては、防衛次官、警察長官との間にも細目協定をきめて、さらに必要な現地協定といったようなものもきめて、常時出動の際の遺憾なきを期しておるわけでございます。
  35. 西村直己

    ○西村国務大臣 自衛隊の任務は、もちろんわが国の独立、安全、平和を守る。これが主任務であります。国内治安は国家公安委員会なり委員長の方の所管でございます。しかし間接侵略あるいは大規模なるいろいろな騒擾事件というものに対する治安維持も、自衛隊のやはり補足任務ではあるわけであります。従いまして、公安委員長と緊密なる連絡はとっておるのであります。ただし、自衛隊といたしましては、厳くまでも主任務とはやや違った面でございます。従いまして、私どもが直ちに治安の維持そのものを正面から背負うということよりも、あくまでも警察において治安維持をやっていただく補足任務として考えております。従って、自衛隊は平素におきましてあらゆる面の規律、訓練、これは厳正にやっております。自衛隊自体が動かないでも、それ自体が結果的には治安維持に役に立つ、存在すること自体が治安維持に役に立つ、こういうような意味考えておるのであります。
  36. 保科善四郎

    保科委員 次は、長期防衛計画に関して、防衛庁長官にお伺いをいたしたいと思います。先ほどお話をいたしております通り、あるいは御答弁にありました通り、わが国の経済成長は確かに世界の驚異でありますが、同時に現在の世界情勢に対処をして、いかに安全保障を確保するかということに対する国民の関心が少ないということもまた同様に世界の驚異であると私は目ております。戦後の世界を見ましても、そういうようなことを痛惑いたしておるわけであります。世界各国がこの現状において防衛を全うするためにいかなる努力をしておるか、主要国の防衛費の国民所得に対する割合がどうなっておるかということを、防衛庁長官から御説明を願いたいと思います。
  37. 西村直己

    ○西村国務大臣 各国、——NATOあるいはSEATO等に分けて申し上げてもいいのでありますが、一応大づかみに申し上げます。国民所得に対して国防費の割合であります。もちろんこれは国民所得の内容あるいは国防費の内容によっては異論があるかもわかりませんが、一応世界統計年鑑その他によりまして出ておりますところを見ますと、アメリカにおきましては国民所得に対する国防費が一二・七%、イギリスが八・一%、フランスが七・九%、イタリアが四%、西ドイツが五・二%、ソ連邦が七・七%、スイスが三・五%、インドが二・五%、ビルマは九・四%、フィリピンが二・四%、日本はたしか今年度一・四三%じゃないかと思っております。
  38. 保科善四郎

    保科委員 今防衛庁長官が説明されましたように、よく総理は日本は大国と言われますが、最も少ない防衛費でもって安全を保障しておるわけであります。私は、この新しい事態に処する長期防衛計画を策定するにあたりまして、少なくとも世界並みに、この土地において戦争抑制に必要な、真空を生じさせないような防衛費を負担することは、当然の義務であると思っておるのであります。そういう点から見て、本年度は一・四一%であり、昨年よりも減っております。私は、少なくとも二%ぐらいは投入しても、ほかのいろいろな施策をするのにじゃまにならないのではないかと考えるのでありますが、まず経済企画庁長官にお伺いいたしたい。
  39. 迫水久常

    迫水国務大臣 防衛費の割合が国民所得に対して二%くらいまでは出しても、ほかには妨害にならないのではないかという御質問でございますが、大体昭和三十二年にきめられました国防の基本方針にも、民生を安定するということが二番目に出ております。国防の基本としては、要するに民生が安定し、国民生活が向上し、経済が安定成長するということが大事であると思っております。現在の日本状態におきましては、経済の安定成長ということをまず確保する、ことに政府の施策というものが民間の経済成長におくれておりますので、これを取り返して、産業基盤の整備をし、また国民生活充実の基盤の整備をするということが重点的に行なわれなければならないと考えておりますので、経済の安定成長、国民生活充実の方の番人たる経済企画庁長官といたしましては、国防費の割合が一・四%前後という今日の段階、これでやっと道路なんかもどうやらある程度のことができるというような状態でありまして、ちょうどいいところにいるのではないかと思っております。
  40. 保科善四郎

    保科委員 ずいぶん変な答弁だと思いますけれども、これはこれから研究していただくのですから、即答を求めないから十分に御検討願いたい。とにかく日本が大国だと言うているのですから、やはり少なくとも極東の場合において、自分のところだけでも真空を起こさせないようにするだけの責任は果たさなくちゃいけないのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。こういう観点から防衛庁長官は長期防衛計画を作っておると私は存じておるのでありますが、すでに長期防衛計画に関しては、この委員長も本会議において、前内閣時代に岸総理に質問をして、これはやるという言明をされておる。今度はアメリカ大統領もかわり、ドル防衛とかいろいろな問題がありまして、やむを得なかったと思いますが、すみやかにやはり長期防衛計画を作って、日本がここでどういうような責任をとって、日本に関する限り世界に迷惑をかけないような事態にするのだということは、これは最も必要であると考えるのであります。こういう観点に立って、長期防衛計画を議せられる構成員がここに四人おられるのでありますから、長期防衛計画の策定について、すみやかにこれを国防会議にかけて、そうして日本のあり方というものをはっきりさせる必要があると思うのですが、これらに関する所信を国防会議の構成員である四人に伺いたいと思います。
  41. 西村直己

    ○西村国務大臣 防衛費が少ないじゃないかということについて、あるいは長期の見通しが立っていないじゃないかという点について、大へん御激励をいただきまして、私も非常にありがたいと思うのであります。ただ、防衛費につきましては、国力、国情に応じ、従って、必ずしも防衛費そのものが大きくなってもいい場合もあろうと思います。たとえば道路が整備されること自体が、また広い意味においては国の安全保障の一つの意味にもなろう、こういう観点もありますが、でき得る限り防衛庁長官といたしましては、今後も国民の御支持と相待って、防衛費につきましては実質的な整備をはかって参りたいと思います。従いまして、同時に長期計画というものにつきましても、長期の見通しはあった方が私ははるかによいと思うのであります。本年度は、諸般の事情から単年度の予算編成で、従って単年度の国防会議における方針を立てたわけでありますが、次年度以降につきましては、先般の国防会議を開きました際におきましても決定をいたしまして、すみやかに私どもの手で次期防衛力整備計画を立案の上、国防会議において決定をする、こういう決定になっておる次第であります。
  42. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お二方からお答えになりました通りですが、われわれの方の立場からいたしましても、国際的に見ても、また国内的に見ても、バランスのとれた防衛計画を作ってもらいたいと考えております。
  43. 水田三喜男

    水田国務大臣 今防衛庁長官からお答えになりました通りでございまして、第一次の防衛計画は本年度で一応完了するということになっております。従って、今後の防衛計画を至急作る必要がございますが、本年度は遺憾ながら第二次計画が間に合いませんでして、この三十六年度は従来の五カ年計画がまだ完成していない部分が相当多うございますので、この完成にもっぱら力を注ぐということを中心の予算を編成したわけでございますが、三十七年度以降の二次の計画というものは、どうしても私どもは必要だと思いますので、この計画は、至急防衛庁がこれに当たっていただいて、そうして国防会議にこれを早くかけるようにというのがこの前の国防会議の決定でございましたので、やはり国の財政に見合った今後の年次計画というものを至急持つ必要があろうと考えております。
  44. 迫水久常

    迫水国務大臣 私は、長期の防衛計画というものをぜひ至急に立ててほしいと念願をいたしております。それは私どもの所掌いたしておりまする長期経済計画との見合いもございまして、防衛力の達成計画というものはぜひ至急に立ててほしいと念願をいたしておる次第であります。  ただ、私が国防会議の一員に加えられておりますのは、先ほど申しました通り昭和三十二年六月十四日、防衛力整備目標について、という書類にもあるのですが、「この目標の達成に当っては、常に経済の安定を害しないように留意し、特に年次別の増勢については財政事情を勘案し、民生安定のための諸施策との均衡を考慮しつつ、弾力的にこれを決定する。」この経済の安定成長の番人として私はここのところを受け持てというのが、私が議員になっておるところだと思いますので、その趣旨に従ってできるだけ努力したいと思います。
  45. 保科善四郎

    保科委員 先ほど防衛庁長官は非常に遠慮をされたようでありますが、長期防衛計画はあった方がいいというような非常に遠慮された発言でありましたが、私はなければならぬと思う。どうしても、やはり防衛力ほんとうのなには、防衛生産力ができなければ防衛力にならないのですから、今の長期防衛計画が立たなければ防衛生産力の計画も立ちませんし、ほんとう防衛力にはならないのであります。そこで、そういう遠慮をなさる必要はないのでありますから、十分に御存じなんですから、必要であるということで、この上とも御推進を願いたいと思います。  次は、私は、防衛庁長官に一つお伺いをしたいのですが、防衛庁が発足してから、非常に世界の兵器が革新的に変革を来たしました。こういったような事態において、今の防衛庁の機構でもって運用が能率的にいくかどうかということについて私は疑問を持っているわけであります。私は、すみやかに防衛庁の機構をこの事態に合うように改革をする必要があると思っておる一人でありますが、防衛庁長官の所見をお伺いいたしたいと思います。
  46. 西村直己

    ○西村国務大臣 私も、はっきり申し上げておきます。言葉の表現でありますが、長期防衛計画はあった方がよろしいというのはやや表現がやわらかいのでありますが、もちろん、防衛庁といたしましては、すみやかに防衛計画を立てるという意味から参りましても、これが必要であるということの意味でそう申し上げておるのでありまして、防衛庁長官が遠慮しているわけではございませんから、その点は御了承願いたいと思います。むしろ意欲的でございますけれども、あまり言葉の表現にとらわれ過ぎてもいかぬと思います。  それから次に、防衛庁の機構の問題でございます。確かに戦後自衛隊は十年たちまして、内部も相当整備され、また不断に私どもは、国民の御支持を得たく努力をいたしておるのでありまして、事実上、今回防衛二法案等を提案いたしましたのも、その趣旨にも基づいて内部の整備をはかろうというのでございます。と同時に、内部の機構でございますが、機構におきましても改編すべき点がややあろうということは私も了承いたしております。従って今回の法案におきましては、統合幕僚会議の権限の強化と申しますか、拡充と申しますか、そういうような世界の戦略、戦術、軍の運用に相待って、自衛隊の本来の意義を生かしていくような法案の改正も行なっております。なお、将来の機構の改編につきましては、部内におきまして真剣な検討を加えている段階でございます。
  47. 保科善四郎

    保科委員 私は、ただいままでこの所得倍増問題に関連をいたしまして、精神の作興の問題、国民に不安を及ぼさないようにする安全保障の問題、あるいは国内治安の問題、こういう問題について今まで質問をいたし、それぞれ適切なる御返答を得たわけでありますが、こういったような関係の問題はどうもみんな触れたがらない。どういうわけか知らぬけれども触れたがらない。ところが国家の安全保障というのは国家成立の根本の問題でございまして、私はこういう問題に対しては消極的じゃいかぬと思う。従来総括質問においても、これらの問題にはあまり多く触れられていないのであります。また施政方針の演説にも国家安全保障に関する問題が見当たらない。こういうのは世界の現状に実にそぐわないように私は考えておるのであります。私は、もっと勇気を持って国家の安全保障に対する認識国民にわかってもらうという努力を十分にしていただきたいということを御要望申し上げておきたいと思います。  最後後進地域の開発に関する問題について若干大蔵大臣と自治大臣にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、若干専門的なことは主計局長からお答えを願っておいて差しつかえないと思います。  第二に、後進地域開発のための財政援助措置についてお伺いをいたしたいと思います。政府は現行の東北開発促進法、九州地方開発促進法、四国地方開発促進法等における国庫負担の特例措置等の合理化をいたしまして、全国の後進地域に通ずる国庫負担の特例措置を制度化するという方針をとっておるように承知しておるのでありますが、これはきわめて当を得た処置であると思うのであります。その内容は予算審議にも関係がありますので、法案として具体化されて、すみやかに国会に提出されることを念願いたしておるわけでありますが、これを今国会にいつごろ御提出になるお見込みでありますか、伺いたいと思います。
  48. 水田三喜男

    水田国務大臣 なるべく早く成案を得たいと思って、今大蔵省と自治省当局で案の検討をいたしておりますので、近く成案を得て国会に提出できることと考えております。
  49. 保科善四郎

    保科委員 次にお伺いをいたしたいのは、先日の総理大臣の施設方針演説でもございましたが、後進地域のためには積極的な財政援助を行なう、こういうように言うておられる。その内容は、むろん現行制度の引き上げ率や援助額を上回る積極的な財政援助を行なうということであると確信をいたしておりますが、三十六年度の政府予算の編成に際しては、この積極的な財政援助の規模について、百四十八億とかあるいは百二十八億とか、いろいろ論議がかわされて、府県のグループ別の引き上げ率等も大蔵省の当局から示されております。その結果、地方団体においては相当期待をしておるようでありますが、その期待にこたえるために大蔵大臣は当然いろいろなことを考えておられると思うのですが、その内容のごく概要だけを一つお伺いをいたしたいと思います。主計局長でもけっこうです。
  50. 石原周夫

    ○石原政府委員 いわゆる未開発地域の特例、公共事業の補助、負担金に関しまする特例につきましては、先ほど大蔵大臣がお答えをいたしましたように、現在関係省の間におきまして検討中でございまして、まだ結論を見るに至っておりませんが、取り急ぎ検討をしているところでございます。従いまして、まだ内容についてこういうことであるということを申し上げる段階に立ち至っていないわけでありまするが、大体の点につきましては、御承知のように地方公共団体におきまする財政力にも相当差があるのでありますから、その差等のありまするところ、貧弱なるところにおきまして公共事業を行ないまする場合において、負担率なり、補助率なりにつきまして、これを優遇と申しまするか、いたすことをします。御承知のように従来から地方の再建団体あるいは東北、九州ないしは最近におきまする四国というような地域に関する特例法がございますので、こういうものもできるだけこの中に織り込みまして、一体としての考え方をとって参りたい。こういうことで今企画庁、自治省、大蔵省と相談をいたしておる次第であります。
  51. 保科善四郎

    保科委員 この点に関してはまだ折衝中であると思いますが、自治省がわれわれ後進地域の意見を代表しているわけですから、どうぞ十分に一つ自治省の意見を取り入れられて、総理大臣あるいは大蔵大臣もおっしゃっているわけですから、これを現実予算の上に表わしていくように、特別にお願いをいたしたいと思います。  これをもって私の質問を終わりたいと思います。
  52. 船田中

    船田委員長 午後一時より再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午前十一時四十七分休憩      ————◇—————    午後一時四十二分開議
  53. 船田中

    船田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木原津與志君
  54. 木原津與志

    ○木原委員 私は時間の関係上質問の点を、まず第一番に法務大臣並びに警察当局の方に治安関係についてお伺いをいたし、その後外務大臣に日韓交渉の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  まず警察当局にお伺いいたすのでございますが、せんだって右翼のテロに関連いたしまして、警察当局が国会議員の護衛を強化せよという指令を出したということにつきまして、これは国内だけでなく、外国方面でも非常な関心を呼び起こしたらしく、十一日夜のモスクワ放送その他でこれを非常に問題にしておる。モスクワ放送の日本向けの放送を新聞承知したのでございますが、こう言っておる。「この指令は日本の議会民主主義ほんとうの値打ちを十分はっきりと示しておる。これは率直に言うてただごとではないという感じを抱かせる。自由世界の思想をたたえる者がお題目にしておる民主主義はどこに姿を消したのか」というようなことを外国放送で伝えておるというのでございます。そこで私どもも護衛強化の対象になっておる者といたしまして、日本の議会政治が始まってから国会議員の全員に対してそうした護衛警備の強化が指令されたというようなことは、日本の憲政史上でも初めてではないかと思う。こういう治安が非常に不安な様相を呈しておるのに対しまして、私どもは非常に遺憾に思う。過般来法務、地方行政の連合審査の際におきましても私は一言触れたのでございますが、この問題につきまして、どうして右翼のテロを防止するかというような問題につきましては、いろいろと政府においても対策を講ぜられておるところだろうと思う。その根源となるものは、こういったようなテロを行なうところの団体がそのまま存置されておるというところに、一般の不安と警戒が非常につのるのであります。私はそこで率直に治安当局にお伺いしたいのですが、その恐怖の根源になっておる団体に対してどうして破防法を適用することができないのか、その適用することができないのが主として法律的な理由によるのか、あるいは政治的な理由によるのか、その点をまず治安当局にお伺いをしたいと思います。詳細に説明していただきたい。
  55. 安井謙

    ○安井国務大臣 嶋中事件を中心にいたしまして、これが世論の上からも国会の上からも非常に議論が起こっております。また警察当局としましてもこういった事件をなからしめるように、今後も万全を期したいということを考えておる最中でございます。これに直接関連いたしまして、いろいろな言論をされた方にもし間違って被害があるというようなことがあってはいかぬというので、実は国会の方々に対しましても当面の問題として万全を期するような措置を一応とっておるわけでございます。この問題は別にしまして、破防法適用の問題につきましては法務大臣の方から御答弁願います。
  56. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 お答えいたします。凶悪なるテロ行為に対してそれの絶滅を期するがために、こうした傾向のある団体に対して破防法をなぜ適用できないのか、その理由は云々という御質問でございますが、その点は政治的な理由があるというようなことは何もございません。むしろ現在の破防法の規定するところによって、われわれ当局といたしましてはそれぞれ平常から努力をして調査もいたしております。ことに凶悪な犯罪が行なわれましたのを契機になお一そう深く注意をいたしまして、そうした情報収集調査に当たっておるのでございますが、ただいままでのところまだ現行法を適用いたしまして、特定の団体に対して解散を命ずるとか、あるいは適宜な規制措置を講ずる段階までの証拠資料があがっておらないのでございます。御承知通り破防法におきまして解散を命ずるためには、破壊的暴力行為を行なう団体であって、そうしてそういうことがすでに事実として行なわれ、しかも将来にわたってまた継続し、反覆されるおそれがあるような場合には、審査会に付しまして解散を命ずることもできるというようなことになっておりますが、その点についての十分なるまだ資料が的確につかめませんので、そのためにその手続に及ぶ団体は、今日までのところにはまだない状態にあるのでございます。
  57. 木原津與志

    ○木原委員 破防法の第七条が直接の適用条文になろうかと思うのです。破防法の第七条によれば「左に掲げる団体が継続又は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があり、」こういう要件を備えておる団体に対しては、公安審査委員会がこの破防法の適用によって、そういう団体を解散させるということになっておる。そこで私もこれについて事実関係をいろいろ調べてみた。昨年の安保闘争のときのデモに対するいろいろなテロ行為、このテロ行為をやった事案がたくさんございますが、その六割、半数以上は大日本愛国党の集団的なテロになっておる。そうしてまた数カ月を経過いたしまして、この団体の構成員が、浅沼社会党委員長を白昼日比谷の公会堂において暗殺をしておる。その後数カ月、三カ月余にして同じ団体の構成員が、当日脱党はいたしておりますが、その構成員の人が嶋中事件、すなわち嶋中家に押し入って御承知通りの暗殺刺傷事件を起こしておる。しかもそれがその団体の構成員であり、この団体の首領たる人がそのつど、われわれは自衛行動として、正当防衛としてテロをやるのである。赤色革命が目前に迫っておる。この革命に対抗して、われわれは自衛手段として具体的なこういうテロ行動をするのだ、将来もこの行動は続けていくのだということを、その団体の首領、党首の人がはっきりと世間に公言をして、決意を宣明しておる。これだけの事実だけで、この事実をもってしても、この団体が、継続または反覆して、将来さらに団体の活動として、暴力主義的破壊活動を行なうおそれがあると認むるに十分な理由があるという、この構成要件に私はぴったりこれこそはっきり当てはまるのじゃないかと思う。これが過去において、今度の嶋中事件についてだけのことでとどまっておるという場合においては、要件上あるいは欠くるものがあろうかと思うのですが、もうすでに昨年の六月以来継続して、数回にわたってこの暗殺テロが行なわれ、しかも、それを将来も行なうのだということを、決意を党首なる人が宣明をしておる。具体的事実として現われておる。こういうようなテロ団体——私は右翼をテロ団体と言うのではない。右翼の、綱領を掲げる中で特にこういうような直接テロの実行行為を事とするというこの団体に対して、一体どこに法律上の要件の欠缺があるのか。治安当局がこの解散というような、こういうような温床をまず社会からなくしてしまうということが、これはもう犯罪防止上の一番先決問題だと思う。これをいまだにそのままにしておって、そうして国会議員を何人警備しようと、あるいは被害のおそれのある文化人の警護を十分にしようとしてみても、その温床を断つことなくして、警備だけを万全にしようとしたって、それはもうできることじゃない。警察官あるいはその他の警備の任につく人たちも、人数は知れておる。機会は多数ある。それに警備の人は数が少ないということになれば、いつまたこの種の事案が続発、再発あるいは再々発するであろうかということは、これはもう当然の、われわれには予測ができることなのである。まず、なぜ根を断つということを心がけないのか。一体どこにその法律上の要件を欠くるところがあるか。私はこれだけの事実、この事実だけでこの団体、こういう団体の解散の要求、請求は十分な理由があると思うのですが、いま一回、もっと具体的に、どこの点が足らぬのか。もしどういう行為が新たにつけ加えられ、あるいは証拠があがる場合においては解散ができるのだということを具体的に、詳細に、法務大臣並びにこの事務の当局の方でもいいですから、一つ詳細に要件をお聞かせ願いたい。
  58. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 事実認定と法の適用の問題になると思います。つきましては、その事実認定の問題につきましては、申すまでもなく確実なる資料のもとに法の運用をやりませんと、国民のいわゆる結社の自由を束縛するとか、言論の自由を束縛するという大事な問題、基本的人権との関係もございますから、その事実についての確実性の認否という問題がまず大きな問題になろうと思います。次にそれらの確認せられたる事実に対していかなる法条が適用できるかできないかという第二段になると思いますが、そのいずれもの問題につきまして、ことに前者の問題につきましては、最近のあの不幸なる事件については、これはまだ調査の途中でございますが、すでに昨年行なわれた事件、あの事実等との関係についての今日までの判断は、事務当局の者に説明させていただきたいと思います。
  59. 關之

    ○關(之)政府委員 お答えいたします。昨年来の大日本愛国党の行動をごらんになりまして、ただいまのお尋ねのような御疑念を抱くのは、私はごもっともなことだと思います。ところで、なぜしからば破防法によって解散ができないかという問題につきまして、少し時間をお借りいたしまして御説明申し上げてみたいと思うのであります。ただいま御指摘の、昨年来の安保闘争に際してのいろいろの右翼陣営の事件がございましたが、その中のお尋ねのような大部分のものが愛国党によって行なわれている、こう解されるのでありますが、回数はたしか十回近くが、刑事上の犯罪事件として、その党員が検挙されたものがあるわけでございます。さてその刑事上の事件として処理された犯罪の類型を見てみますと、暴力行為等処罰ニ関スル法律の違反、道路交通法違反、公務執行妨害罪、この三者のものでありまして、この中で一番多いのは道路交通法違反という犯罪の類型に相なるわけであります。さて、それらはやはり通じてそのような行為をする、何と申しましょうか、ある性格がそこに露呈されているわけでありまするが、しからばそれらのものが破防法の線に乗ってくるかどうかという問題に相なるわけであります。ところがこれらのことは破防法の線に実は乗ってこないのであります。御承知のごとくに破防法におきましては、第四条に暴力主義的破壊活動という行為の類型が明確に記載されておりまして、その行為の類型は、第一の類型は刑法上の内乱類型でありまして、第二の類型は第四条第一項の二号にありまして、「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもって、左の諸項の行為をなすこと。」といたしまして、騒擾あるいは殺人その他の若干の行為を取り上げておりますが、さて、今申し上げました愛国党がいたしました昨年の各種の違法行為に対しましては、これに当たらないわけであります。最も近い、ものといたしまし七は、この二号のりに当たりますが、「検察若しくは警察の職務を行い、若しくはこれを補助する者、法令により拘禁された者を看守し、若しくは護送する者又はこの法律の規定により調査に従事する者に対し、凶器又は毒劇物を携え、多衆共同してなす刑法第九十五条(公務執行妨害、職務強要)に規定する行為」、こうなっておるわけであります。そういたしますと、いわゆる単純なる暴力行為等取締法違反を反覆累行いたしましても、また道路交通法違反を反覆累行いたしましても、単純なる公務執行妨害を反覆いたしましても、まだまだ破防法の規定した暴力主義的破壊活動というものには相ならない、こういうことになるわけであります。これらの行為の類型は、立案の当初にどの範囲まで入れるかということがかなり重大な問題でありまして、そういうような行為を入れるということも一応は案としては考慮されたことでありますが、それを入れた場合に非常な拡張的な運用に相なりはしないかというような心配から、この程度に実はしぼったところであります。これで昨年の愛国党の事件の御疑念に対する点は御説明申し上げた次第であります。  次の問題は、なるほど浅沼さんの事件といい、今度の嶋中の事件と申し、ともに大日本愛国党に籍を置いた二人の少年によって行なわれたことは、れっきとした隠すことのできない事実なのであります。そこから出たというその事実は否定できないのでありますが、そうかといって、たとえば浅沼さんの事件の場合に、しからばその殺人をその党首なりあるいは団体の中において、団体の行動として扇動したかどうか、あるいは教唆をしたかどうかという問題が、最も団体の規制の観点から見て重要な問題であったのであります。しかし事件の刑事上の訴追の形式は、単純なる彼自身だけの殺意であって、その背後的な教唆とか扇動の事実は認められない、こういうのが今日までのあの事件に対する調査の一応の結果に相なるわけであります。しこうして今度の事件におきましても、おそらくそのような点が最も問題になろうかと思いますが、今度の事件の経過につきましては、まだ今後の調査に待たなければ、ここで何とも申し上げられない、こういうのが現在の実情のわけであります。どうぞ、以上申し上げた点で破防法の適用の問題については御理解をいただきたい、こう思うのであります。
  60. 木原津與志

    ○木原委員 私はどうしても今の説明には納得できない。と申しますのは、扇動を受けたものかどうか、あるいは教唆をされて殺害行為をしたものかどうかという点について、はっきりした証拠が認められないという今の御説明でございますが、しからばその教唆なり扇動というようなことは、これはどうですか。刑法の処罰規定でいうところの教唆とか扇動というのと、それからこういうような破防法のようなものによって、処罰でなくて行政手段によって解散をするというような場合と、要件は一緒なんですか。教唆、扇動というものについての考え方はどうですか。
  61. 關之

    ○關(之)政府委員 この法律の上におきまする教唆及び扇動という、この言葉を処罰する場合におきましてのその概念の内容は、刑法上のことと全く同じである、こういうふうに解釈しているわけであります。なおこの点につきましては法律の中に、この扇動とはこれこれのことというふうに明確に書いてありまして、立法の当初、こういうふうにしなければ拡張乱用のおそれがあるというようなお言葉で、これが国会の修正としてここにこういうふうになったわけであります。
  62. 木原津與志

    ○木原委員 今後またいろいろとこういう右翼暴力テロというものは、続々発生することが私は予想することができると思うのですが、そのつど殺した者が、扇動を受けたのだ、だれだれから、その団体から教唆された、あるいは扇動を受けてそういうことをやったのだ、あなた方にそういう自白をする者は、犯人は絶対に出ないと思うのです。みんな自分がやったと言うて犯行をかぶるにきまっておる。自分でその罪をひっかぶる場合には、扇動も教唆も認められぬのだということになるのでありますか。この扇動があった、あるいは教唆によってそういう犯行を犯したということをあなた方が判断されるには、この事情、状況、その団体の平素の党員に対するいろいろな教育、訓練、こういったようなもの、あるいはその党のよって立っておる行動、綱領、こういったようなものと結びつけて、状況によって教唆されてこういう行為をしたのだというふうに判断するよりほかに方法がないのではないかと思う。その状況によって判断をなぜやらないのか。これは状況によって判断すれば、はっきり十七才の少年が教唆あるいは何らかの影響を受けて、この団体の影響を受けて殺人行為に出たのだ、テロ行為に出たのだということは、これは世間の常識で、だれでもそう思うのです。それを法律上り要件がないというて、教唆あるいは扇動についての証拠がないとおっしゃるのは、あなた方治安当局の方だけなんです。世間一般の人は、この状況のもとにおいて、この十七才の少年がその団体の影響を受け、教唆を受けてこういう行動に出たのだということは、もう世間の何人も疑いなくそう思っておる。そういう状況をどうしてあなた方は勘案をして、そうして治安という大きな立場に立って、こういう行政処分をすることをためらわれるのですか。私はその点について非常に不満がある。この状況によってそういう教唆、扇動についての判断をするのかしないのかということを、あなたにいま一回お尋ねしたい。
  63. 關之

    ○關(之)政府委員 何が扇動になるかという問題の証拠をとる原則みたいなお尋ねでございますが、もちろんいろいろな客観的な基盤がございまして、その上の用語でもって、あるときはごく簡単な首を下げただけで扇動になるかもしれませんし、そこらの周囲の事情というものは、やはりその言葉の価値あるいは意味、内容を評価する上において、私どもは無視しているわけではございません。やはりそういう全体のその中の雰囲気あるいは平素の用語、言葉というようなものが、すべて何がしかの力になるものなら、そういうものはすべて総合的に考えるわけでありまして、ほかのことを全部無視し、ただ一部の言葉だけがあるから、ないからというようなふうに問題を考えてはならないというふうに考えておるわけであります。そんなふうに考えましで、今回の事件につきましては、まだ調査の進展中でありまして、ここで終局的なことを申し上げる段階には至っていないのであります。
  64. 木原津與志

    ○木原委員 捜査の進展中だと言われるが、これは昨年の六月からずうっと懸案になっておるのであります。特に昨年の十月十二日の浅沼暗殺事件以来、この点について教唆、扇動があっておるかどうかということについては、もうすでにあなた方の捜査の段階は終わっておるのじゃないかと思うのです。そのとたんにまた嶋中問題が起こっておるのです。そうすればあなた方がもう結論をつけて腹をきめるかきめぬかという、今その時期にきておるのだというふうに私はあなた方に要望する。どうです。もうあなた方の腹をきめるときじゃないか。まだ捜査の段階だと言うときじゃない。適用するなら適用する、しないならしない、しない理由はこうだということをはっきり国民の前にきょう明らかにしていただきたいと思う。
  65. 關之

    ○關(之)政府委員 私ども国会において作られた法を厳正に執行いたすのが一つの職務であります。従いまして調査したことが法律に当たりますれば、その法を発動するにやぶさかではありません。しかしながら当たらないものは、やはり当たらないという場合があるかもしれませんが、その場合にはそれをまげて発動させるということはできないわけでありまして、決してそれは何らかの政治的意図とか、そういうことはありません。やはり法律に当たるかいなかということについて冷静な判断をして、正しくこれを執行いたしたい、このように考えておるわけであります。
  66. 木原津與志

    ○木原委員 今一人一殺の訓練という話が出ましたが、ある団体がそういった一人一殺ということで党員の修練、訓練をやっておるというような事実によって、この破防法でいう解散の要件になる教唆、扇動という行為を断定できませんかどうか、その点いま一回。
  67. 關之

    ○關(之)政府委員 お尋ねの問題はだいぶ仮定が入っておる問題でありまして、そのことでしからば破防法上の教唆、扇動がなり立つかいなかという問題は、どうもここでお答えいたしかねるわけであります。私どもも木原委員と同じごとく憂えておることでありまして、法の当たるものならば発動いたすというようなことは当然これはわれわれの義務として考えておる点でありまして、その点はどうぞわれわれの努力をしばらく御静観いただきたいと考えておるのであります。
  68. 木原津與志

    ○木原委員 事務当局の方とこれ以上論議してみたところでしょうがないと思うので、問題はこの治安の最高の責任を負うておられる法務大臣にその御決意を承りたい。今私が政府委員との間の質問の中でお話ししたように、またいろいろなその他のこれ以外のたくさんの資料を大臣はお持ちだろうと思う。法務当局においてはお持ちだろうと思うのです。そうすればこのテロ団体に対して法務当局が断を下すときにもうきていると思うのです。あなたは一体治安の最高責任者としてどういう腹を持っておられるか。あなたの腹一つでこの社会不安が解消するかしないか、このままこの不安の状態が続くかどうかということが私はきまると思うのです。すでに私どもの党ではもう治安当局にまかしてはおけぬから自衛の組織を、自衛隊を組織して、そうしお互いを守ろうということさえ実は論議をしておるのです。事態は非常に深刻なんです。また問題は社会党だけじゃない。自民党の方々だって自分たちだけが安全だということは言い切れぬと思う。そういう段階にだんだんと飛躍してきよるのです。問題はあなたの腹一つで、こういう犯罪の温床を撲滅するかどうかということがきまると思う。しかも当然あなたがこの破防法を適用するだけの要件は私どもは整うておると思う。あなたは最高の治安責任者として腹を据えて、腹がまえをきめて、これに対して一刀両断の措置をする意思があるかどうか、その点大臣にお伺いしたい。
  69. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 お答えいたします。先ほどもお答え申し上げましたように、この破壊活動防止法につきましては、申し上げるまでもなく第二条でもってこの法律の解釈、適用の問題については、この法律が国民の基本的権利、人権に関係する大事な問題だから、その解釈、適用については特に慎重にしなければならぬという、特別な規定もございます。こうしたこともございますので、われわれといたしましてはおあげになりましたような事実、あるいはわれわれが今回の事件に関連いたしましていろいろ今厳密なる調査をやっておりますが、こうした調査等によって得た資料で、しかもこの第二条の精神にも反しない、この法律適用にふさわしき条件が整う場合においては、峻厳な態度をもって決定をいたして参りたい、こう思っておる次第でございます。
  70. 木原津與志

    ○木原委員 その峻厳な治安当局の対策、その対策を今直ちにやらなければならぬ時期が到来しておるのです。反覆行為が繰り返されており、さらに将来においても、近い時期に、目前にそういう危機が追っておるということを、国民全体がひしひしと感じて不安におびえておる。これをあなたが黙過するというようなことは許されない。もしあなたが破防法適用は困難だ、無理だとおっしゃるならば、との温床を断つための対策、これを具体的な対策を今考究中であるかのごとく言われましたが、これをいつ具体化してどういう方法によってこれを具体化するか、その点いま一回はっきりした御決意を承りたい。
  71. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 現行法の適用については先ほど申し上げたような態度でおるのでございますが、しかし今日のこの不安なる事情をこのままにするわけには決して参りません。ついてはわれわれといたしましても、もしどうした現行法について改正を加えればさらに治安の万全を期し得るかというような問題につきましては、あえて破防法のみならず、既存の法律についての研究を今いたしております。こうした問題につきましてはいずれ関係閣僚とも相談をし、十分研究を遂げまして、なるべく早く結論を得て善処いたしたい、こう考えておる次第でございます。
  72. 木原津與志

    ○木原委員 いま一回法務大臣の答弁をわずらわしたいと思うのですが、あなた方が考えておられる対策の中に、こういう危険な団体は解散を命ずる、解散をさせる方策を考えておられますか。もし考えておられるということになれば、おそらくこの破防法の解散に関する規定の範囲が広くなる法律でなければこれは解散にならないわけなんですが、そういう温床になるものを、個々の行為を防遏するということだけでなくて、その団体そのものをつぶしてしまうというようなことについて特別の法律を考えておられるかどうか、その点お聞かせ願いたい。
  73. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 お尋ねの件もわれわれが今いろいろ研究しておる一つの対象にはいたしております。しかし具体的にどうすればいいかという問題については、ただいまのところお答えいたしかねる。まだ未熟な、研究中でございますから、急いで今研究を続けているわけでございます。
  74. 木原津與志

    ○木原委員 今研究中だとおっしゃいますから、それ以上のことは聞きませんが、要するに今日の事態は非常に重大な事態であるということを法務大臣においてもよく考えられて、そうしてすみやかな対策立法をされることを期待するわけなのです。その中で特に私が申し上げたいことは、こういうような愛国党のような反覆繰り返しておるこの団体でさえ、現行の法律の中では解散が非常にむずかしいという事務当局のお話でございますから、それならば解散を早急にできるような立法を一つぜひ作っていただきたい。そうしなければ何ぼ警備、警護を厳重にしようと、警察官を督励しようと、その団体をそのまま社会に温存するというようなことでは、これはもう警備にも限度があるのですから、とうてい不可能なことなのです。しかもその解散を命ずる行政規定の要件をもう少し緩和するか、緩和という言葉が不穏当ならば適当な言葉に直してもよろしゅうございますが、こういうような反覆累行をするような場合には、直ちに解散ができるというような立法をぜひ一つ考慮していただきたいと思う。治安関係の質問はこれで終わります。  次に外務大臣に主として日韓交渉についてお伺いいたしたいのであります。  日韓交渉は一九五二年でございますか、交渉を開始いたしまして、今日までもうすでに十年になんなんとしております。その間、ここで私が申し上げるまでもなく、この交渉が非常に難航をいたしておりまして、幾代かの外務大臣が実は手こずったものである。これを小坂外務大臣が引き継がれて、この交渉の妥結に今大わらわになって努力されておられるわけなのです。そこで小坂さんは昨年の九月でございましたか、池田内閣成立後、外務大臣として初めて韓国の首都ソウルにおいでになった。これはどういう資格でおいでになったのか知りませんが、この小坂大臣の韓国訪問を契機として、ここにまた日韓交渉が再開をされる。現在予備交渉の段階でございますが、やがてこれが本会談になろうかということをわれわれは期待いたしておるのでございます。そこであなたにお尋ねするのですが、この日韓会談が今日まで非常に難航をして妥結を見るに至らなかった。その至らなかった一番大きな問題、いろいろな問題がありましょうが、その中で何が一番の大きな障害になって今日に至っておるか、またその問題について将来の妥結の見通しはどうであるかということを、まずあなたにお伺いしたいのです。
  75. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答え申し上げます。ただいまお話のように昨年韓国のソウルを訪問いたしました。それ以来予備会談を続けておるわけでございます。私はやはり、従来の歴代の内閣において非常に苦心をされたわけでありまするが、その間にありまして、ただいま御質問のございました何が一体一番大きな障害となっているかという点は、まず全体の雰囲気といたしまして、両国間の国民感情が非常に疎通を欠いておる。日韓の間には感情的には氷が張り詰めておるという状態が、一番大きな原因ではなかろうかと思うのであります。いかなる困難の問題でも、やはり善意と相互理解、そうしたものの上にあって初めて解決できると考えまして、その相互理解を深めるためのいろいろな手だてが必要であろう、かように思っておるのであります。幸いにいたしまして、従来と違いまして、昨年四月の革命以来、現在の張勉政権というものは非常に親日ということの必要性を強調いたしておるのでございますから、会談はやっておりまするし、だんだん気持が疎通をしてくるというふうな傾向も認められます。それでは具体的には何が問題かということでございますが、これは木原委員も御承知のように財産請求権の問題、それから漁業、ことに李ラインを撤廃するという問題が一番大きな問題だと思います。その他在日韓国人の法的地位というようなものもあるわけでございます。財産請求権という問題に関しましては、本来的な請求権と、それから船舶、文化財の問題、そういうようなものがあるわけでございます。
  76. 木原津與志

    ○木原委員 先般外務大臣の言として新聞で拝見いたしましたが、日韓交渉の妥結、両国の国交の正常化がことしの前半に目ざしておる最大の懸案だというような趣旨のことをあなたが言われたということを新聞で拝見しました。同時に同じ個所で、この日韓交渉が第二の安保になるかもしれないというような記事も私は見たのであります。そこで日韓交渉の妥結という問題、国交の正常化という問題が非常に重大な懸案として、国民もこの成り行きを見詰めておる。この交渉の内容についていろいろ伝えられるところによれば、李ラインの問題あるいは国籍、法的地位の問題、対日財産請求権の問題、こういったようなものがいろいろと会議の議題になっておるのでございますが、私ども日本人としてこの会談の中でなぜ日本人があそこに置いてきた私有財産の問題、いわゆる日本人が韓国に対して有する財産請求権の問題——韓国が日本に財産請求権を持っておることはこれは当然でしょう。若干ありましょう。ありましょうが、日本が韓国に請求しなければならぬ財産請求はおそらく膨大な、韓国が日本に請求するものとはけた違いに大きなものでなければならぬ。あそこに百万近くの同胞が三十有余年間にわたって汗水流して置いてきた財産あるいは莫大な会社あるいは産業施設、こういったようなものを価格で算定してみますと、あとで大蔵大臣にどれくらいの額かお聞きしたいと思いますが、何兆億、何十兆億の私有財産だろうと思う。その私有財産は当然韓国に対して、戦時法規に基づいて、国際法の正面の規定に基づいて、われわれは請求できる権利を留保してあるわけだと思う。それが一つも日韓会談の議題にならない。なぜならないのか。一方、韓国の方は重大な問題として議題にしておる。日本側がそれに対して何らの提案もしておらない。あるいはこれについて請求権を放棄したのだということもいわれております。それは私あとから聞きますが、これが議題になっていないということが、百万の引揚者のみならず、一般国民がどうしても納得がいかない点なんです。この点についてなぜ韓国に対する日本の法人もしくは個人の私有財産を韓国から返還を求めることが議題にならないのか、また将来も全然なるべき問題じゃないのか、その点を一つ詳細に大臣からお答え願いたい。
  77. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 最初に、日韓会談がこの春の最大の課題だと私が語ったということでありますが、他にもいろいろ問題がございます。特に私は最大というふうにも言うたわけはないのでありますが、最大のものの一つだろうというふうに新聞社の方が御判断になったかと思うのであります。しかし、この日韓間の問題というものは、木原委員承知のように、非常に変則な形であるわけです。たとえば韓国の代表部というものが日本にあって、これは通称公使という形で現在おるわけでありますが、当然日本の方の代表も先方におっていい。これは国交が正常化すれば大使の交換ということになるわけでありますが、双互の関係にあっていいと思う。  それから李承晩ラインというものを公海上に設けて排他的な権利を一方的に行使する、これも非常に妙な形でありますけれども、これに関連いたしまして、終戦以来常に同胞があそこでつかまったとか、返せとかいう話だけやっておる。非常に近い国としてそういう関係だけにあるということは望ましくないことでございますから、それを正常化したい、これが私の日韓会談に対する基本的な考え方であります。これに関して両国民の間に存在する非常な相互理解不足というものを解消する。ことに韓国人の側においても、今若干お触れになりましたが、日本の統治時代にありましたころのことについて非常に激しい感情の残滓もある。こういうものはやはり近い国同士の間に氷解ずることが国際的に必要でないか、こういうことであるわけでございます。  そこで後段のお問い合わせの問題でございますが、これは御承知のように一九四五年に軍令によりまして、韓国にありましたわが方の財産については取得し所有するということに、米軍がいたしておるわけであります。四八年にこれが韓国へ引き渡されておるのであります。一九五一年に平和条約ができまして、その四条(b)項におきまして、引き渡されておるという現状を認めたのであります。そこで一九五二年に日韓の交渉が最初に行なわれましたときに、ただいま木原さんが言われたような趣旨をもって、わが方から、占領軍は戦時国際公法に認めたことしか行なえないのであるから、これは私有財産には及ばない、従って四五年の軍令においては、これは管理したにすぎないから、管理権の移転というものはあったけれども、それを認めたにすぎないのだという主張をしたわけでありますが、これがもとになりまして、これはいたく韓国側を刺激いたしまして、先方が激高して、それ以来交渉がとだえた、こういうのであります。  そこで、この解釈についていろいろその後も研究いたしました結果、一九五七年、いわゆるアメリカの解釈というものがあるわけでありますが、そのアメリカの解釈というものに対して、日本は、この解釈は妥当なものである、かように認めておるわけであります。この点は先般田中織之進委員に対してもお答えしたことでありまして在韓の日本財産というものはさように先方に譲り渡したのであるけれども、そうした事実は頭に置いて請求権の交渉の際には考えるようにする、かようなことになっておるわけであります。  そこで、そうした解釈でございますが、従来一度そういうことを主張したのに、なぜ五七年にさようなふうなことを認めたかという問題でありますが、今次の戦争におきまして、従来の国際法で認められなかったような異例の措置が連合国によってとられまして、その結果が平和条約によって承認されたことは、他にもそうした例があるわけでございます。たとえば連合国内にあります日本国民の財産は、私有財産であるにかかわらず没収されております。これは平和条約の第十四条によってでありますが、また中立国にあります日本財産も、赤十字国際委員会に引き渡されるものとされておるのであります。これは平和条約の第十六条であります。さようなこともございますし、平和条約第四条(b)項による解釈というものは、こういう解釈をするのがすなおな解釈である、こういうことになりまして、一九五七年にさようなことは日本も認めておるわけなのであります。  ただ繰り返して申し上げますが、在韓の日本の財産はそのときに先方の所有になったということを認めるということは、その認めるという事実を頭に入れて、次の財産請求権の交渉があります際には考慮をするという建前になっておるわけであります。
  78. 木原津與志

    ○木原委員 連合国が占領中に日本人の私有財産を没収したということなんですが、そう解釈されるのだということでありますが、まだ戦争状態が終結していないときに、占領地において個人の敵産を占領軍が没収するというようなことが、一体国際法上認められたことであるかどうか。私どもは国際法を若干読んだものでございますが、占領軍が敵産を管理するということは、法上これは当然なことなんです。しかし占領軍が占領したその敵産を没収するというようなことは、これは戦時国際法の違反であって、こういうようなことを前提として交渉を始められるというところに私は問題があろうかと思うのです。この点についてどうです。
  79. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お説のような議論は、私もあろうかと思うのでありますが、しかしそうした議論をいたしました結果、先ほど申し上げたように、平和条約の第十四条、第十六条でさような異例の、従来の国際法と違った措置を日本が承認をいたしておる、かような関係になっておるのであります。なお条約問題でございますから、条約局長から詳しく御答弁いたさせます。
  80. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま御指摘のありました通り、普通の戦時国際法の原則によれば、占領地におきまして私有財産の没収ということはないわけでございますが、今次戦争の跡始末の態様といたしましては、そのような異例の措置を平和条約で日本が承認したという格好になっておるのであります。同じようなことは、大臣先ほど申されたように、十四条関係の旧敵国における財産、十六条関係の中立国における財産というようなことにおきましても、普通ではあり得ない措置を平和条約の結果として日本は認めておるのでありまして、やはりこれと同じような性質の措置であろう、かように考えております。
  81. 木原津與志

    ○木原委員 平和条約によって認めておるのだと言われますが、この点についてはあとであなたにお伺いしますが、大体アメリカの法律で戦時中に——これはアメリカ大統領の命令がアメリカ軍の占領地における行動の基準になるわけなんです。アメリカの法律、アメリカ大統領の命令の中でも、占領地の個人財産、敵産を没収するという規定は何もないじゃないですか。アメリカにそういう法律がないものを、軍司令官がどうして没収することができるのですか、その点どうです。
  82. 中川融

    ○中川政府委員 本問題の一番もとになりますのは、一九四五年十二月六日に在朝鮮の米軍司令官の出しました軍令第三十三号でございますが、この三十三号には、御承知のように在朝鮮日本財産は米軍によりヴェストされ、オウンされるというふうに書いておるのでございます。従ってヴェストされ、オウンされるというのはどういう意味かということになるのでありますが、これはいろいろの論もありましたけれども、その周囲の状況その他から考えまして、やはり最終的に所有権が移転するという解釈でこの軍令が出され、またそのような解釈で米軍からこれが韓国側に移譲され、また平和条約におきましては、この四条(b)項というのは、わざわざ韓国側の注文によって入った条項であるという経緯があるのでありますから、このような経緯から見ましても、これはそのような意図のもとに作られた条項であると見るのが、やはり妥当な解釈であると考えざるを得ないのでありまして、従って政府はこの解釈によって日韓問題を処理したいと考えておる次第でございます。
  83. 木原津與志

    ○木原委員 私の聞いているところでは、アメリカの法律の中には占領地の敵産を、私有財産を没収することができるという規定は、全然ないということを聞いておる。そういう大統領の命令かあるいはアメリカの法律がありますかどうか、お伺いしたい。
  84. 中川融

    ○中川政府委員 アメリカの法律あるいは大統領の命令がどのようなものであるかということは問題ではなくて、その軍令の解釈の問題でございます。従って軍令の解釈としてこのような解釈がとられるということでありますので、これは日本としてもいたし方ない。この解釈による以外はないところでございます。いろいろの議論もあり得たわけでありますが、しかし平和条約の規定によりまして、これを最終的に承認しているということは曲げることはできないものであると考えております。
  85. 木原津與志

    ○木原委員 アメリカの法律によってアメリカ占領軍が行動をするのでしょう。アメリカの法律にないことを、私有財産を没収するという規定もないのに、軍司令官が、勝手に敵産である日本人の私有財産を、どうして没収することができますか。私どもが言うのはそこのところなんです。だからこれは敵産管理、アメリカの法律により、あるいは国際法によれば、これは当然占領軍が占領をした地域における敵国人の個有財産を管理する。占領軍司令官が管理をするということになっているのでございますから、この範囲を越えて軍司令官が勝手に敵国人の財産を没収するというようなことはできるはずがない。アメリカの法律によってもできないし、あるいは国際法によってもできない。できないことをあえて軍司令官がやったということになれば、これは軍司令官の国際法の違反であって、こういうものは効力がないじゃないか、こういうものをどうしてあなた方は認められて、その前提に立って日韓交渉を妥結されようとされるのか、その点が私にはわからない。また平和条約によって日本は承認したということをおっしゃいますが、平和条約の第四条の(a)(b)を見てみますと、日本人の私有財産については、その処理はこの平和条約ではやってないじゃありませんか。将来の特別取りきめ、韓国と日本との取りきめによるのだという趣旨に、第四条の(a)(b)両項を通読してみると、解釈しなければならぬ。またそれが妥当な解釈だと私どもは思っている。だからあなた方の言われる、アメリカの軍司令官が日本人の私有財産を没収してそれを韓国にやったのだから、移転したのだから、トランスファーしたのだから、もはや日本に私有財産の請求権がなくなったのだというようなことは、これは許されません。国際法上も筋が通らないし、またそれでは日本人立場が一体どうなりますか。三十何年朝鮮外地で営々として営んできたその財産を、何にも持たぬで、たった千円もらって引き揚げてきて、そうしてその財産はアメリカ軍が管理してくれているのだから、当然後日日本に帰ってから、戦争が済んで平和条約ができた上は、アメリカの管理権がなくなってくれば当然こっちに返るか、あるいは賠償との引きかえになるかもしれぬが、そのときはいずれも無償で没収をされることはないというかたい確信を持って、日本人は引き揚げてきている。いまだに返還を期待しているのです。それをあなた方のように、アメリカが軍司令官の軍命令で財産を没収して、そして韓国にこれをトランスファーしたのだから、もう日本としてはどうすることもできない、そういったような国際法を無視し、国際慣例を無視したようなことをどうした基礎にしてあなた方は日韓交渉をやられるのか。もしそういうようなことで日韓交渉をあなた方が妥結するということになれば、これは先ほど言ったように第二の安保問題ですよ。これはゆゆしい大事がここから起こってきますよ。私はこの質問をするために財産の帰属関係について、平和条約なんかも見てきました。見てきましたが、将来の取りきめに待っておるので、平和条約では財産の帰属関係については一言も触れちゃおらぬじゃないですか。ただ日本が承認したのは、この四条(a)項、(b)項にある通り、そういったアメリカの敵産管理によって処理したことを承認しておるのであって、財産を没収したことを日本は承認してはいないのです。また、承認するといっても、個人の私有財産を放棄してしまうこと、国家が勝手に、国民に相談なしに、議会に相談なしに、そういうような勝手な措置をすることができますか。これは国家の越権ですよ。国の財産を国が放棄するというのだったら、これは話はわかる。自国の国民の個人財産、私有財産を国が勝手に、もう要りません、返還してもらわぬでもいい、要りませんというようなことをどうして言えますか。あなた方の態度はどうもおかしいと思う。いま一回御説明願いたい。
  86. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま御指摘になりました平和条約四条の解釈でございますが、これは(a)項、(b)項両方ともあるわけでございまして、その(a)・(b)両方を一緒に考えなければならないわけでございます。(a)項によれば、別個の取りきめを結ぶということがございますけれども、同時に(b)項におきまして、それらの地域におきまして米軍司令官のとった日本財産に対する措置は承認する、その効力を承認するという規定があるのであります。従って韓国につきましては、いわゆる軍令第三十三号の効果、効力を日本は承認しておるのであります。その軍令第三十三号というものがやはり日本財産の没収である、日本財産を、最終的に所有権を奪ったものであるというふうに解釈せざるを得ないのでありまして、従って平和条約によってこれはすでにきまったところであるということでございまして、平和条約以外にあらためて日本人の財産を放棄するという問題ではないのでございます。
  87. 木原津與志

    ○木原委員 アメリカの軍政府による財産処理の効力は、なるほど承認したことになっているかもしれぬ。しかしそれは財産処理の効力を承認しているので、財産の没収とかあるいは所有権の移転とかいうようなものの承認の意味じゃないのであります。それを承認したというのだったら、第四条(a)項は——いささか法律論議になりますが、(a)項は全く意味がなくなるじゃありませんか。そしてまた大体アメリカ戦時法規を無視して——他人の財産を、たといそれが敵国人の私有財産といえども、これを没収することができないというのは世界の原則なんです。その原則をアメリカが破って没収したというようなことは、私ども考えられないし、また考えたくないのです。これは敵産の管理の効力を日本が承認したということになろうかと思うのです。だから私どもは、財産請求権について、まだ両国の取りきめが未定のままになっているというふうに考えるのでありますが、この点、将来どうなりますか。
  88. 中川融

    ○中川政府委員 第四条(a)項は、朝鮮ばかりでなく、広くいろいろな地域に、日本から離れましたいろいろな地域に適用があるわけであります。(b)項は、別に朝鮮ということは特に限定はしておりませんけれどもアメリカ軍司令官が日本財産について何かある措置をとったということになっておる。それが具体的に当てはまるのは朝鮮であります。従って(b)項があるから(a)項が要らない、有名無実になるということにはならないのでありまして、従って(b)項は朝鮮についてのいわば例外的な規定であると見ても差しつかえないと思うのであります。またこういう普通の戦時国際法で認められないような措置を日本は認めるべきではないという御意見、まことにごもっともな御意見ではありますが、これはやはり平和条約でこのような異例な措置を認めておるのでありまして、ほかにも、たとえばアメリカやイギリスその他の旧敵国にありました財産、これも私有財産でありますから当然本人に返るべきでありますが、平和条約でこれも没収されておるのであります。まして中立国にある私有財産まで、これは国際赤十字に渡せということになっておりまして、そのような異例な措置が平和条約の結果、戦勝国と戦敗国との間にきめられるという事例は、必ずしも例がほかにないでもないということを御了承願いたいと思うのであります。
  89. 木原津與志

    ○木原委員 これは条約局長、あなたのだいぶ言い過ぎですよ。そんな、アメリカが国際条約を無視して——戦時国際法では、私有財産は絶対没収をしないというのが大原則です。また過去において私有財産を没収した例はないじゃありませんか。第一次の世界大戦のときに、あのドイツ及びイタリアの終戦処理の状況によりましても、ドイツからポーランドが独立をした。領土を割譲されて独立をした。しかしあのポーランドにあったドイツ人の個人財産、私有財産、この私有財産は没収されることなく、補償を受けて、きれいにドイツ人に返されておる。イタリアにおいても同様のことがなされておる。今日まで、敗戦国の国民の私有財産が没収されるというような例は一つだってない。現に日本国内では——朝鮮では私有財産を平和条約によって没収したとあなたはおっしゃいますけれども日本の内地では、一応接収はしたけれども、米軍は講和条約ができると、その接収したものを日本政府に返しておるじゃありませんか、貴金属なんか。あなた御存じでしょう。金とか白金とかこういったようなものを接収した。接収したが、講和条約ができたらこれを返しておる。朝鮮だけ没収したんだ。内地は没収したんじゃない、管理だ。内地だけは管理だが、朝鮮は没収だ、こういう解釈がどうしてできますか。朝鮮にあった日本人の私有財産と日本にあった日本人の私有財産との取り扱いを、どうして区別されますか。
  90. 中川融

    ○中川政府委員 御指摘通り日本国内におきましては、日本の私有財産をアメリカ占領軍が没収したということはないのであります。またそういうことをする必要も実はなかったと思うのでありますが、朝鮮におきましては、遺憾ながら日本の私有財産は全部没収するという措置をとったのであります。どういう理由でということにつきましては、アメリカ側にもいろいろ聞いてみたこともあるわけでありますが、それは結局、朝鮮というものが日本から離れてあらためて一つの独立国になる、そういう際に財産関係をきれいさっぱりにしておくべきだという考えから、このような異例の措置をとったということであるのであります。
  91. 木原津與志

    ○木原委員 何度も同じことを繰り返すようですが、そういうようなことはありません。第一、そんなことを容認するということになれば、アメリカ世界の敵じゃありませんか。戦時国際法を無視して、個人の財産を占領地で没収するというようなことは、これはアメリカにとって大きな不名誉ですよ。そういうことをやってははいけない。いけないことをアメリカが、一番国際法を重視することを建前としておるアメリカが、そういうことをやるはずはないし、またアメリカの法律の中にも、敵産を没収するというような規定はないじゃありませんか。(「歯舞、色丹はどうなんだ」と呼ぶ者あり)歯舞、色丹はあとからやるから、待て。——没収することができないという明らかなことをアメリカがやるはずはない。だから、それをアメリカがやったのだといって、この膨大な日本人の私有財産を放棄して、そうしてその放棄したという上に立って今後の日韓交渉をやられるということについて非常に国民は不満を持っている。だからその点をあなた方にここで善処してもらわなければならない。
  92. 中川融

    ○中川政府委員 何回も同じお答えをするようでございますが、異例な措置ではございますが、平和条約でその効力を承認しておるのでありまして、またアメリカの軍司令官のとりました措置が、アメリカ政府あるいはアメリカの陸海軍の総司令官である大統領の命令に基づいたものであることは間違いないのでありまして、なお前々から大臣から御説明いたしましたように、この財産はアメリカに没収され韓国に渡ったのでありますが、同時に日韓間で財産関係の協議をいたします際に、その事実は当然考慮に入れるということになっておる次第でございます。
  93. 木原津與志

    ○木原委員 われわれはこれは没収されたものではない、あくまでも敵産管理を承認した、アメリカ占領軍が行なった敵産管理に対する承認を与えておったものであって、将来これは韓国と日本との間の取りきめによって、いわゆる日韓会談の過程で解決をされる問題だというふうに主張するのでございますが、時間もだいぶ経過しますし、あと継続することができませんから、ただその点だけをあなたに、政府に強く主張を申し上げて、今後とも善処することを要望いたします。  そうすると今大臣アメリカが没収したということを考慮に入れるのだということをおっしゃった。それは具体的な意味は何なのですか。どういう考慮になるわけなのですか。
  94. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今までお答え申し上げたように、四条(b)項によって放棄した、しかし(a)項によって新たに取りきめる、こういうことになっておるわけでございますから、その放棄したという事実、それが相当に膨大なものを放棄した、こういう事実を頭に入れて(a)項の取りきめのときの交渉の際に考える、かようなことでございます。
  95. 木原津與志

    ○木原委員 そうすると、放棄したということを考慮に入れるということになりますが、その点については韓国側も考慮に入れることを了解しておるのですか。
  96. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは先ほど申し上げたように、今木原委員のおっしゃる戦時国際法からするところの管理権にすぎないという主張などがあった経過から見て、一九五七年にアメリカ解釈というものに日本は同意して、これを日本の解釈としょうということにして、今も先ほどからお話ししたような経緯になっておるわけでございますが、そういうことで考慮に入れるということになっているのがアメリカ解釈であり、日本が同意した解釈である、この点については韓国側もさようなことを了承しておる、こういうわけでございます。
  97. 木原津與志

    ○木原委員 日韓会談の一番のガンは李承晩ライン、平和ラインと、それからこの財産請求権の問題だということを聞いておるわけです。考慮に入れる、日本が莫大な個人財産を放棄したということを考慮に入れるということになれば、外交のしろうとのわれわれとしましても、しろうと考えですが、そうすれば、その日本が放棄した財産のほんの何分の一かにすぎない韓国の財産請求権を、この日韓会談の中で執拗に韓国が要求してくるという態度を、あなた方の会談の外側に私どもがおってこれを見る場合に、どうも納得できない。韓国の財産請求権といったって、これは未払い賃金だとか、恩給だとかいったようなものでしょう。そういったようなものは、日本が放棄した財産から比ぶれば、その価格から比ぶれば、これはとうていものの数ではないと私は思う。そうすれば、それを放棄したことを考慮に入れるということになれば、当然そういう財産請求権を韓国が主張して、会談をデッド・ロックに今日まで乗り上げてきたということについてはどうも納得がいかない。だから私どもしろうとが推察するのに、日本アメリカとの間にはそういったことを考慮に入れるということが了解できておるが、一方韓国にはその了解ができていないのではないかというふうに考えるわけなんです。この点どうなんですか。
  98. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 考慮に入れるということは、結局プラスとマイナスがあって、それを考慮に入れていくわけでございますから、場合に上ればプラスだと思っておったものがマイナスだということもあり得るわけであります。ところが、そういう点について非常に膨大な期待権を持っておって、それが交渉の障害になるという場合もあり得ると思うのであります。最近いろいろと先方の新聞等にも出ていることなども見ますと、漸次この問題が了解されつつあるやに見えるのでございます。そのことだけでも交渉の効果というものはあろうかと私はひそかに思うのであります。
  99. 木原津與志

    ○木原委員 これは先般そういう事実はないというので外務大臣は否定されましたが、この日韓会談の財産請求権の問題にからんで、日本が金額まであげて、六億ドルの対韓援助資金を出すというようなことが韓国側の新聞から報道をされました。これは先般田中委員の質問の中で外務大臣は否定されましたが、そういったようなことで、いわゆる対韓請求権というものとのマイナスが、それが形を変えて経済援助という方向に変わって、それが具体化してくるというようなことはありませんかどうか、その点伺います。
  100. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 結論から申し上げますとございません。さような六億ドルなんということは毛頭考えたこともございません。  そこで私はこの日韓交渉というものは、非常に実は双方において政治的に誇大に考えられ過ぎている面があろうかと思っております。それは先ほど申し上げたように、非常に日本と韓国とは近い間柄です。これは当然国交を持っていい間柄にあるのであります。しかも事実上は日本と韓国との間は通商関係がございます。しかも先方は大使館に相当すべきこちらに代表部というものがあるわけでございます。ところが日本は向こうにない。しかも非常に双方国民の意思の疎通を欠いておる。こういうことを正常に戻すということが日韓関係の改善でございまして、少なくとも、私は、自分でやっていて言うのはおかしいのでありますが、それほど飛び抜けた大へんなことをやっているとは実は私も思わない。きわめて通常の外交上やるべきこと、軌道に乗せるべきことをやっている、かような程度に考えているわけでございます。
  101. 木原津與志

    ○木原委員 財産請求権の問題にからみまして大蔵大臣にお伺いいたしますが、今外務大臣アメリカの朝鮮占領軍に日本の私有財産が没収されてしまった、こういう没収をしたことを日本は承認をするということなんです。そういうことですが、そうすると、将来没収された財産の補償ということが当然没収された人たちの間の問題になろうかと思うのです。この財産の補償は一体どういうふうに考えておられるか、大蔵大臣にお伺いしたい。
  102. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはもう御承知のように海外からの引揚者に対しましてこの問題が起こり、その解決策として昭和三十一年にこの在外財産問題についての審議会を作り、この答申に基づきまして昭和三十二年に引揚者給付金等支給法というものを制定しまして、一人当たり二万八千円を最高として引揚者に給付金を支給しました。これはみな各所から引き上下げられた同胞が同一の条件にございますので、韓国から引き揚げられた引揚者に対しましてもこの措置を適用しておるということでございまして、一応この問題の処理は私ども終わったというふうに考えております。
  103. 木原津與志

    ○木原委員 個人の財産権の尊重ということは憲法二十九条ではっきりうたっておる。敵地でもない、同じ国内におった日本人が、しかも憲法の適用を受ける土地におった人なんですね。その人たちが勝手に請求権を国から放棄される。財産請求権を国が外交上の都合から放棄するというようなことになれば、これは憲法二十九条との関係からしても重大な国家の補償義務が当然残ってくるのじゃないかと思う。その補償の義務をただ単に引揚者の救助金というようなことで二万九千円か三万円足らずの金でこれを始末してしまって、あとは知らぬというのでは、これはあまりに国としてこれらの人に対する態度として非常に適切を欠いておる措置ではないかと思うのです。これは国が請求権を放棄しているのですから、当然国が子の補償を十分に尽くすように考慮されてしかるべきだと思うが、もう今後そういうような補償の措置については一切考える意思はないのかどうか、この点を大蔵大臣にお尋ねします。
  104. 水田三喜男

    水田国務大臣 この問題は前からだいぶ論議されておりました問題でございますが、なかなか処理はむずかしい。と申しますのは、内地の日本人でも軍事補償打ち切りの一連の法律によって財産を放棄させられておるという問題もございますし、そこらの勘案でこれをどう解決したらいいかというのはなかなかむずかしい問題となっていましたが、先ほど申し上げましたような形で、一応ここでこの問題の結末をつけるという趣旨から引揚者に対する給付を行なったということになっておりますので、今後これを蒸し返して別の解決方法を考えるということは、事実上私はもう困難なことではないかと思っております。
  105. 木原津與志

    ○木原委員 時間がありませんから、李承晩ラインの問題についてちょっとお聞きいたします。一月十五日の朝日新聞によると、韓国の張勉総理が韓国の民議院で野党の質問に対して、李承晩ラインは国際法に違反しておるという疑いがあるので、これを最後まで貫いていくということは非常に困難だということを言明したということを特派員の通信で明らかにしております。そういう事実があったかどうか、外務大臣からお聞きしたい。
  106. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私もその報道を新聞で読みまして、非常に合理的な基礎に立ってものを考える張勉政府に敬意を表したわけでございます。従ってそのことについて実は問い合わせてみたのでありますが、どうもこの点についてはなかなか明言を得られないのであります。しかし、いずれにいたしましても日韓関係を改善しようという前向きの姿勢で先方が乗り出してきておられるという点については、われわれ好意と好感を持ちまして、この際できるだけ両国の関係の改善に資したいと思っておるのであります。先ほど申し上げたように、日韓関係というものが現実にあるわけですが、そこに多くの不自然な形が付属物としてついておるわけであります。これを交渉によって取り除いて正常な形にしていこう、これが趣旨でございますので、そういうことに先方も非常に乗り気になってきておる。ことに私九月に参りましたときに、先方は刑期の済まないわれわれの同胞、抑留された諸君に対しても直ちに全員釈放する、こういうことを誓って、また実行してくれましたし、その後入江丸の事件もございましたが、これも現在釈放されておるわけで、こういう関係でだんだんにこの問題は相互理解の上に立って解決していくようにしたいと思っておる次第であります。
  107. 木原津與志

    ○木原委員 時間が参りましたからそろそろ最後の結論に入りたいと思いますが、民議院で張勉総理が、国際法上の公海問題もあって李承晩ラインというのはなかなか主張することが困難になっておるということを自認したということがもし事実だとすれば、これは日韓の妥結の問題について問題が一歩も二歩も前進すると私は思うのです。  そこであなたにお尋ねしたいことは、今朝鮮では、北鮮の先般の南北連邦の提案を契機として、具体的に南と北との合同——連邦制によるか何か知りませんが、とにかく朝鮮の統一ということが具体的な日程に上っておるように、新聞、雑誌でわれわれ理解しておる。こういうときに、韓国とだけの交渉妥結がかりにできたとしましても、それは朝鮮の統一あるいは対北鮮関係との問題において、非常におもしろくない結果を及ぼすんじゃないか、こういうことを私は非常に心配してこれをあなたにもお尋ねするわけなんです。  そこでそういうような国内情勢というようなものを考慮に入れられれば、幸い李承晩ライン、平和ラインという問題は、南北の統一というような問題とは何ら関係のないことなんですから、できればこの問題だけを交渉の妥結点に持っていって、そうしてそのほかの基本的な関係の問題、特に、いかにも韓国との妥結が成立すれば韓国を承認するというような結果になるようなことは、これは今度の日韓交渉の中でもやるべきではないと思うのですが、この李承晩ラインだけを対象にして日韓問題を解決するというようなことは見通しとしてできるかできないかという点を外務大臣にお伺いしたいのであります。
  108. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 南北朝鮮の統一問題については、いろいろ報道も新聞や雑誌等にありまするが、私どもの方でいろいろ見たところによりますと、これはなかなかむずかしいという印象を受けるのであります。たとえば新民党という保守党の野党においてもさようなことを言っておるということもございましたけれども、そういうことはこの際だめであるということになって、当分さような動きをとらぬようなことになっておるようでございまして、ちょっと現在のところはその見込みが、われわれの方では早急にくるものとは思えないような見方をしておるのであります。そこで韓国との間にそうした日韓関係の改善が得られたならば、北鮮の方が何か不満を感じて非常に紛糾するのではないか、かような御意見のようでございまするけれども、北鮮の問題は従来から日本との関係においてはないことになっておるので、これはこれとして別にまた処理をすることも機会があればできるのではないかと思っておるのであります。そういう統一問題があるからこれを見送ると、さしあたり李承晩ラインだけということでは先方もとても乗ってくるまいというふうに思っております。外交交渉というものはやはり先方も乗り気になりこちらも先方の言うことを理解し、また先方もということによってだんだん氷が解けていくのが、今までけわしい対立下にあった感情をほぐす上には必要でございますから、こちらは理屈攻めで公海上に排他的な線を引くのはいけないから、この線をどけろというだけでは、向こうがいやだといえばどうしてもそれはどけることができない今日の情勢でございます。そこにはやはり全体に解決できるような雰囲気を作っておいてやっていくということでないとどうも問題の解決はできぬのではなかろうか、かように思っておりますので、統一問題があるから韓国との交渉を打ち切れとおっしゃられましても、この際としてはどうもこれはとり得ない措置であるようにわれわれは思っておるような次第でございます。
  109. 木原津與志

    ○木原委員 最後に、この日韓会談はまだ将来のことで妥結に至るかどうかわかりませんが、もしこれが妥結するということになれば、これは韓国を日本が承認という形にまでいくのかどうか、その点お聞かせ願いたいと思います。
  110. 中川融

    ○中川政府委員 韓国の承認ということでございますが、これは平和条約で韓国が独立することを日本は認めておりますので、平和条約以来韓国は承認しておると考える次第でございます。従って今回日韓会談が成立いたしましても、それは両国間の国交の正常化ということになる。つまり正規の外交関係が樹立されるということでありまして、承認の問題はすでに解決済みの問題でございます。
  111. 木原津與志

    ○木原委員 これで終わります。
  112. 船田中

    船田委員長 堂森芳夫君。
  113. 堂森芳夫

    堂森委員 私は政府が発表しております所得倍増計画がはたしてほんとうに実現するかどうかということにつきましては、政府あるいは与党とは考え方を異にいたしておるのであります。しかし、かりにたとえば一歩譲りまして所得倍増計画が、政府が言っておるように進むと仮定いたしましても、政府が発表しておりまする産業の発展に対しては、ちょうど人間に食糧が必要であるごとく、産業の発展にはもちろんエネルギーというものがきわめて密接な関係にあることは当然と申さねばなりません。そこでエネルギーは、日本の過去の姿というものを振り返ってみますると、たとえば昭和の初頭におきましては、主としてエネルギー産業の経営者側の問題にあったと言っても過言ではないと思うのであります。たとえば石炭産業においては、撫順炭の輸入を制限して、そして石炭資本家たちのカルテルを形成した、こういう姿であります。電力産業におきましても、また電力業者の間の非常な競争あるいは電力連盟の形成、あるいはまた石油においても国際カルテルの日本の市場の獲得の姿であったとか、いろいろな姿を見るのでありますが、これらは主として昭和の初めころには、需要家たちといいますか、需要者、供給者たちの間の問題という姿を呈しております。しかしその後戦争中あるいは戦争直後においては量の不足、こういうわけでやはり今日のエネルギー産業あるいはエネルギーという問題とは質的に大きな違いがある。しかしその後日本の経済発展がどんどん進んで参りますにつれて、また産業自体の構造の大きな変化、また技術の進歩、そういうふうないろいろな客観的条件によりまして、エネルギー源というものに従来のような固体エネルギーから流体エネルギーを強く要求する、こういうような姿にも変わって参りました。また経済原則からいってより安いエネルギーを要求している、あるいはまた日本のように国内資源の少ない国においては、石炭は別でありまするが、石油、こういう面から申しますと、大きな国の財政のバランスからいきまして問題をはらんでおる、こういうふうに多くの問題があるわけでありますが、経済審議会の中にエネルギー部会というものが設けられて、そして政府に答申をいたしております。政府に従来からいろいろと試案があったわけでありますが、今日といえども私の考えでは、政府は何ら具体的なエネルギー産業の総合的な政策というものを持ち合わせていない。今そこに池田科学技術庁長官もおられますから後ほどお聞きしますが、エネルギー産業の昭和三十年ころから一年間の日本における経過、原子力発電の計画の経過を見ておっても、まことに朝令暮改、全く無計画、そういう姿は後ほどよくお聞きいたしますが、総合的なものがなかった、今日でもない、こう言っても過言ではないと思います。どのような具体的エネルギー政策を持っておるか、経済企画庁長官、それから通産大臣の椎名さんにまず御答弁をお願いしたい、こう思います。
  114. 迫水久常

    迫水国務大臣 エネルギーの問題につきましては、お話のような変遷がございまして、最近におきましても相当大きな急激なる変化があるようであります。御承知のように、企画庁が昭和三十二年に新経済長期計画——前の五カ年計画を立てました当時におきましては、スエズ運河の事件がありました直後等でもあり、世界的に石炭を増産する方向のものの考え方でおりまして、従って新長期五カ年計画では二十年間の展望をしまして、ちょっとはっきりしませんが、たしか石炭七千五百万トンというような数字を目標にする計画を立てておったと思います。ところが、その後急激に流体エネルギーの方向に世界的に問題が変化して参りました結果、この経済新長期計画、まあ前の五カ年計画を若干修正しなければならぬというような立場もありましたので、経済審議会の中にただいまお話のエネルギー部会というものを新設いたしまして、そこで検討をしたのであります。しかし、その検討を進行している間におきまして、今回の所得倍増計画というものが計画されて参りましたので、そのエネルギー部会では数字に触れない、大体の問題点を指摘してその方向をきめるというぐらいな抽象的な答申をいたしまして、エネルギー部会は解散をいたしました。堂森さんがおっしゃいました通り、そこには何ら具体的な問題は入っておりません。しかし、所得倍増計画の審議をしておりまするにつきましてできましたエネルギー小委員会におきましては、相当な詳細な研究をいたしておりまして、昭和四十五年におきまする今後十年間における日本のエネルギーを、水力とかあるいは、石炭、流体エネルギー、石油、こういうようなことで、どういう変遷をするだろうか、どういう目標でいくだろうか、輸入とそれから国内産のエネルギーはどういう関係になるだろうかということを相当詳細に研究をいたしまして、所得倍増計画には「合理的エネルギー体制の確立」という表題のもとに割合に詳細に書いてございます。これを具体的に実施していきますのは通産省の役目でございますけれども、従って通産大臣からお答えをする段取りでありますけれども所得倍増計画に掲げられておりまする具体的な数字等、もし御必要ならば担当の計画局長より詳細に説明いたさせます。
  115. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 お答え申し上げます。  エネルギーの問題は所得倍増計画実行の上において非常に重要な問題でございます。それで、総合対策といたしましてわれわれが考えておるのは、この非常に大きな需要が急テンポにどんどんふえて参る、それに追いつくためにどうすればいいか、この量の問題がまず第一の問題であります。それから量もさることながら、供給の安定あるいは低廉化、そういう供給体制をどういうふうに整えて参るかということも急激な量の膨張と相待って非常に大きな問題でございます。それから御承知通り、海外資源に依存する部分が非常に多いのでありまして、ただいまのところ三三、四%のものが四十五年度におきましてはほとんど六〇%に近い依存度になる、こういう関係からいたしまして、この膨大な海外の資源を獲得するためにできるだけ外貨を節約して参るということも同じく重要な問題であります。それから国内の資源といたしましては、御承知通り石炭があるのでありますが、石炭はどうも油に押されておる、国内資源を活用するという意味におきましても、あるいは雇用政策の面からいたしましても、どうしてもこれを放置するわけに参りませんから、これをできるだけ合理化いたしまして、新しい時代のりっぱなエネルギー源としてこれを活用することができるように合理化をしなければならぬという問題がございますそれから特にエネルギーのうち電力の問題でありますが、これはただいま水火力合わせて二千万キロワットを上回る能力を持っておりますが、これが倍半になる、四十五年度においては五千数百万キロワットの設備能力を具備しなければ間に合わない、こういう状況でございまして、エネルギー対策としてこれが一番金を食う部面でございます。たしか四兆数千億の資金が必要であると考えております。こういったような問題につきまして、ただいま総合的に考究いたしまして、着々必要なる手を打つように準備しておる次第でございます。  大体そういう総合対策といたしましては以上申し上げたような状況でございますので、御了承願いたいと思います。
  116. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま通産大臣の答弁、最後の方がよくわかりません。  そうしますると、通産大臣の答弁を聞いておりますと、エネルギー対策というものは、産業の発展、経済発展を阻害しないように、また輸入エネルギーというものがぐんぐん今後増していく、このエネルギー小委員会の報告を見ましても、四十五年度には石油の原油の輸入の外貨がおそらく全輸入の一九%を占めるだろう、こういうふうに報告されておりますが、そのように外貨の面において非常な圧迫を加えてくる、従ってできるだけその圧迫を少なくしていかねばならない、それからまたできるだけエネルギーは廉価なもので、しかも長期的に、安定的に供給されねばならない、こういう立場で進めていくのだ、こういうお話だったと思うのであります。また、今後十年間に要するエネルギー開発のための資金は、この報告を見ますると約六兆三千億くらいの資本が必要である、それから電力の開発だけでも四兆三千億と言われましたが、この私の読んだのでは四兆八千億といっておりますが、約五兆億くらいの資本を必要とする、こういうことを言っております。しかもエネルギー産業の、たとえば石炭産業あるいはまた石油産業、電力産業、こういうそれぞれの産業の中を見ますると、非常に多くの矛盾、問題点をかかえておるわけであります。しからば、こういうふうなそれぞれの産業部内に多くの問題点をかかえておるこういうもの、またエネルギー産業がお互いにそれぞれ競合をしてくる面もある、もちろん密接に結びついてくる面もある、非常にむずかしい関係にある。そうしたエネルギー産業のいろいろな問題点を克服していきながら、政府考えているように所期の目的が容易に達し得る、通産大臣はこういう確信をほんとうにお持ちでありましょうか、この点承りたい、こう思います。
  117. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 エネルギーの獲得問題につきましては、最もポイントは石油資源の海外からの供給を仰ぐ上において、はたして外貨が間に合うかどうかという問題が非常にむずかしい問題なわけでありまして、これに対して確信があるかという御質問のように拝聴いたしましたが……。
  118. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、そうじゃないんです。それだけじゃないんです。
  119. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それも一つだと思いますが、これらの点につきましては、四十五年の輸出額が九十数億、この目的を達成することはもちろん容易ではございませんが、従来の経過から見て、政策及び努力そのよろしきを得れば、必ずしもこれは不可能な問題ではない。その目標実現のためにあくまで努力するつもりであります。  それからまた次に問題なのは、それによってとにかく膨大なるエネルギーの供給を円滑に実行して参る。そのほかに、問題といたしましては電力の建設問題、今私は四兆三千億と申し上げたのではない。お話しの通り四兆八千億です。四兆八千億の膨大な建設資金、それを手順よく調達して、発送、配電等の設備を円満に実現して参ることは決して容易なわざではございませんが、私どもはまた決して不可能な問題でもないと思います。エネルギーの獲得、供給の問題に関しましては、いろいろな面においていろいろな難関がございますけれども、これらの難関は一つ一つ努力をして解決して参りたい、可能である、かように考えます。
  120. 堂森芳夫

    堂森委員 椎名通産大臣、私の質問をもっとよく聞いてもらいたいと思います。私が申し上げた要旨は、エネルギー産業はそれぞれ幾つかあるが、それらがお互いに競合し合っているのだ、そうでございましょう。私後ほど具体的に石炭産業と石油産業との関係をお聞きいたします。そして一年に八十億という巨大な政府予算を振り向けておる石炭産業の合理化、また一方大きな雇用問題をかかえておる石炭産業、これと石油は競合の激しいエネルギー産業であります。そのようにエネルギー産業というものはお互いに競合し合っておる。しかもそれぞれの産業は多くの問題点を持っておる。こういうものを、小委員会が問題点がたくさんあると言っているような点を克服して、はたして安いしかも安定的な、長期的なエネルギーを供給することが具体的にできるとあなたは思われますか、とう聞いたのであります。外貨だけではないのであります。今あなたは確信があるとおっしゃいましたけれども、それは後ほど具体的になかなかむずかしい、こう私はお聞きしたいと思います。
  121. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 油と石炭の競合は、お説の通りただいまでも相当熾烈なものがございます。それで五千五百万トン——七千カロリーに直して五千三百数十万トンになりますか、これを三十八年度の出炭目標にいたしておりますが、一般に心配されることは、それだけの石炭がはたして経済的に利用されるかどうか、ということは、今の重油の値段は国際的に少し割高なのでありますが、いずれはこれは下げる傾向に向かうだろうと思われる。そうすると石炭と重油との値開きがますます激しくなる、そういったような経済の流れに対して、それに逆行して、千二百円の下げというのが計画でございますが、そんなことで間に合わない、ますますギャップがひどくなる、そういう経済の自然法則に逆らって石炭を活用することは、はたして可能であるかということだろうと思いますが、これにつきましては電力会社、製鉄会社、セメント等、四、五種の大口需要方面と十分に相談をいたしまして、そしてたとい値段がどうあろうとも、大体今の計画で千二百円の値下げを実行するということであるならば、われわれは責任を持ってこれを扱っていこう。ただしその適当な、約束されたワクを越える範囲については、これは重油の専焼も許してもらわなければならぬというような話ができておりまして、五千五百万トンのうち、大体こういう大口需要の連中が約束通り実行するということになりますれば、六割はこれを消費するということになるのでございます。われわれは極力行政指導によりまして、その約束を実行し得るように、させるように努力するつもりであります。その他の、あとの三、四割の問題でありますが、これらの問題も適当な行政指導によりまして、とにもかくにも五千五百万トンのワク内の石炭の消化、活用につきましては、極力努力いたすつもりでございます。
  122. 堂森芳夫

    堂森委員 私はただいま通産大臣の答弁を聞いておりまして、どうも納得ができないのであります。後ほど石炭問題についてお聞きしていきたいと思いましたが、通産大臣から答弁がありましたから、石炭問題から今聞いてみたい、こう思います。昭和三十三年度の重油の値段はキロリットル当たり八千四、五百円であったかと思います。そういうものを基準にして、昭和三十八年の十月までに石炭はトン当たり千二百円の値下げをやれるように合理化していく、しかも十一万人をこえる炭鉱労務者を整理するという非常に大きな問題をかかえながらやっていこう、こういう方針であると思うのであります。そうして昨年以来石炭産業に対して巨額の政府予算も組み、また開発銀行からの融資あるいはその他によって着々進められておるようであります。ところが最近になりまして、千二百円の炭価の引き下げ、これによって競合エネルギーである石油との競争もできる、こういう構想がどうもあやしくなってきた、こういう声が石炭業者、大手筋からも盛んに出てきておる。こういう事情でありますが、昭和三十八年の十月までに千二百円の値下げということがほんとうに可能である、こういうふうに通産大臣はお考えでございますか、お聞きしたいと思います。
  123. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この千二百円は、よく石炭業者と協議を遂げてきめた値段でございます。でありますから、むずかしかろう、あるいは至難であろうと、いろいろな観測はあるかもしれませんが、ともかく業者も納得した数字でございますから、これに向かってあくまで努力したいと思います。実現は可能であると考えております。
  124. 堂森芳夫

    堂森委員 通産大臣はそう言われますけれども、たとえば今回鉄道の運賃が一二%引き上げられる、こういうことになりまして、この鉄道運賃の値上げだけから考えても、千二百円の値を下げていく石炭合理化政策は再検討しなければいかぬ、こういう声が盛んにあるわけでありますが、通産大臣どうですか。鉄道運賃が上がっても大丈夫ですか、この点まず承っておきたいと思います。
  125. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ちょっと頭の痛い問題なんですが、ただいまの国鉄の計画によりますと、トン当たりたしか六十円前後の、(堂森委員「六十五円です」と呼ぶ)それだけ上がるのでございます。これの問題につきましては、できるだけこれを能率で吸収するというようなことを申しましても、もう鉄道運賃はすぐ上がるのです。能率なんというものはだんだんに上がるもので、とてもこれには追いつかない。それらの問題については別途十分研究いたしていきたいと考えております。
  126. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、諸外国、ヨーロッパでは、石炭の輸送費については特別の処置をしている国もあるというふうに私は聞いております。そういう意味でございますか。考えるというのはどういう意味でございますか。承っておきたいと思います。
  127. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ドイツあたりでは、運賃補償をやっておるようでございます。これもなかなかややこしい制度でございまして、はたしてそれがいいか、他の方法によった方がいいか、いずれにいたしましても、石炭事業の条件が今日以上悪くならないように極力考究したいと思います。
  128. 堂森芳夫

    堂森委員 しからば、その千二百円の値引きは、それだけではむずかしい、非常に困難であるというファクターは他にも幾つもあると思うのです。たとえば九州電力の電気料金は上がるというのですが、これはどうですか。いつ上がるのですか。
  129. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 九電の問題については、すでに予算委員会において総理からお話がございまして、大体においてある程度の値上げはやむを得ざるものと考えて、ただいま具体案を出すように勉強中でございます。まだ結論がはっきり出ておりませんが、極力この電気料金の値上げによって炭鉱の条件が著しく悪くならぬように考えておるわけでありますが、その点は今どの程度かということを申し上げるような段階に至っておりません。
  130. 堂森芳夫

    堂森委員 おそらく政府の腹は、予算委員会が済んで、うるさい議論が出なくなったころ値上げしよう、こういうずるい考えだろうと私は思うのです。そうして目下研究中だ、こういう態度だろうと思うのです。非常にけしからぬと思います。  そこで、東京電力ももう四月からは値上げをしてもらいたいという申請をする、こういっておる。また東北電力、中部電力もそういう値上げを要求しよう、こういう気がまえで、石炭のことは直接関係はありませんけれども、今後いかがでございますか。電力料金はそういう要求があれば上げていくのですか、どうなんです。
  131. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 電力料金につきましては、ただいまのところ、東京電力は、どうもある程度これは認めざるを得ないのではないかと考えておりますが、まだ申請も何も出ておりません。他の電力会社につきましては、ただいまのところ、その必要はないということを認めております。
  132. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは、通産大臣の御答弁はき、ようの速記に載るわけですから、今後東京電力の電気料金は幾らか上げる、しかし他はその必要を認めない、こういう御答弁と了解してようございますか。
  133. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ただいまのところは、さような必要は全然認めません。
  134. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいまのところといって、また変わる場合もあるわけですね。
  135. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ただいまのところは、変わる場合も考えておりません。
  136. 堂森芳夫

    堂森委員 企画庁長官、いかがですか。あなたは値上げムードを大いに押えるのだと、こう言っておられますが、いかがですか。
  137. 迫水久常

    迫水国務大臣 私の立場は、消費者がそういう公共料金の値上げによって生活上の影響を受けまするので、消費者の声をそれに反映するというのが私の立場でございますので、いろいろこれから申請も出て参るでありましょうが、通産省は一応産業的に見る、それを私の方で消費者的の立場からもう一度検討するということで、できるだけ押えていきたいと思っております。
  138. 堂森芳夫

    堂森委員 石炭の問題に戻りますが、電気料金の値上げ、国鉄運賃の値上げ、こういうものから石炭政策には大きな影響がくるであろう、これは通産大臣も認められておる。そうして、トン当たり千二百円を下げていくことが非常にむずかしいのじゃないか、こういうふうに暗に認められておると思うのです。しかも、さらにこういうことも考えられておるのであります。かりに千二百円の値引きの合理化が済んだ、成功した、そうして大体五千五百万トンの年産の額が可能で、生産されて、そうして千二百円の値引きが可能である、こうしても、この五千五百万トンの石炭は余るだろう、一千万トンくらいの石炭は余ってしまう。それはたとえばごく最近の電力事業の電源開発の模様を見ておりますると、もちろん火力が猛烈な勢いで開発が進んでおることは、これはもう周知の通りであります。しかも電力事業では、石炭と重油の混焼ボイラー、あるいは石炭専焼ボイラー、こういうふうなものは不経済だ、重油は安くつく、しかも今後油の値段が下がっていく、こういう重油専焼の発電計画がぐんぐん進んでいく。そして石炭業者が最も大口の需要者として当て込んでおる電力事業は、なかなか石炭を買おうとしないのです。そして重油の使用はぐんぐんふえていく、こういう傾向にあるのであります。かりに千二百円の値引きを前提とした合理化が進んでいっても、石炭産業は危機が避けられぬのではないか、こういうことを言っておる大手業者もたくさんおるわけです。この点いかがでございまするか。
  139. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 重油の値段がだんだん下がるであろうということになりますと、今以上に格差が出て参りますから、おそらく予定通り消化はできないのじゃないかというお話でございますが、相当重油が今以上に下がりましても、産炭地においては、石炭といたしまして、これに相当戦える条件があるのであります。そういうようなこともありまして、産炭地の石炭による火力発電というようなものも大いに奨励したいと思います。各般の方法によって、必ずワク内の消費はするようにいたす覚悟でございますから、大体可能ではないか、かように考えます。
  140. 堂森芳夫

    堂森委員 確かに通産大臣が答弁されましたように、山元発電というようなことももちろん石炭産業をささえていく大きな一つのものになるでありましょう。そして、すでに常磐地方では山元発電が成功しておる、こういうことも私知っております。また九州においては、電力業者と石炭業者の間に山元発電の相談といいますか、取りきめといいますか、そういうものもやられておることも聞いております。しかし、本年度のこの予算を見まして、産炭地の振興について何か調査費が三千万円かついておるのでありますが、今ごろになって何を調査するのですか。産炭地の振興をもっとなぜ努力しないのでありますか。この点について伺っておきます。
  141. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今ごろになっておそいじゃないかというお話ですが、私宅ややその感がしないでもないのですが、場所によっては、もうすでに苅田港でございますとか、あるいは裏門司等においては、調査をして、そして十分にここを新しい工業地帯として造成する可能性があるというので、調査が進んでおる場所もございます。そういうような場所につきましては、これは当該の市町村が主体となってやっておりますが、起債ワクを特別に設定いたしまして、そしてその調査された部門についてはどんどん仕事を始めるようにというので、自治省とも協議を遂げまして、その方針に今具体的に研究を進めておるというような状況でありますから、これらの点につきましては、あらためて調査をするという迂遠な方法をとる必要はないというふうに思います。その他の点につきましては、気ばかりあせって何をしていいかわからぬというような地方が相当あるので、やはりちゃんと落ちついた調査をして、ロスのないように積み上げていくという方法をとらざるを得ない。これもそうゆっくりできませんので、できるだけ早くタイムリーに調査を仕上げまして、もし年度中に具体案ができましたならば、やはり裏門司、苅田港と同じような方式によってでもその実行に着手し得るように考究を遂げておるような状況でございます。
  142. 堂森芳夫

    堂森委員 通産大臣が産炭地の事業振興のためのいろいろ努力をされたことは、私よく知っておるのですが、大蔵省との交渉においてそれが認められなかった、こういう事情だと思うのであります。そのことは別にしまして、油と競合しておる非常にむずかしい関係にある石炭産業の問題でありますが、昭和三十三年にC重油キロリットル当たり八千数百円の値段を基準として、一千二百円の値引きが合理化によって可能である、こういう前提に立ったのですが、その後重油はぐんぐん値下がりをしてきておる。おそらく昭和三十八年の十月、かりに政府計画が成功していったとしても、重油はさらに値下がりが来るであろう。そういうふうな場合には、競合できないと思うのですが、こういう場合に、昭和三十八年十月においてどうする気でありますか、この点も一つ——おそらく油は下がるということは見通しが強いのであります。
  143. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 先ほど申し上げましたが、電力、製鉄ほか二、三の業種において引き取り保証の契約をやっております。これをさらに固めまして、そうすれば六割は大丈夫。それから産炭地において使う分については、これは重油が多少値下がりがありましても、十分対抗できる。その他の地方については弱いではないかという懸念を持たれると思いますが、石炭の方にいたしましても、極力今後合理化を推進いたしまして、そして現在の程度で満足するということでなしに、もっともっと三十八年以後においても合理化をいたしまして、値段を下げるという方向にこれを指導して参りたいと考えております。
  144. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、合理化という意味は、極言すると、こういうことになりませんか。優良炭鉱はぐんぐん合理化して近代化していく、そして非能率炭鉱はスクラップする。スクラップ・アンド・ビルドという言葉があるのですが、非能率炭鉱はスクラップし、優良炭鉱は建設、——ビルドしていく。こういうことになると、全部しわ寄せは中小炭鉱に来るでしょう。また雇用面においては、昭和三十八年の十月までに労働者は十一万職を失うんですよ。そういう方向に行く、こういう意味でございますか。
  145. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 三十八年度以後におきましては、大体自然減耗の程度でよろしいのではないかということを考えております。それから中小炭鉱に全部しわ寄せするのではないかというお話がございましたが、必ずしも中小炭鉱なるがゆえに不良炭鉱ではないのでありまして、最近何か北海道の日曹の石炭山なんかは、ほとんど破天荒の能率を上げております。一人当たり六十トン余りというような例もございまして、これは希有の例でありますが、中小炭鉱必ずしも不良炭鉱にあらずと考えております。
  146. 堂森芳夫

    堂森委員 近来の石炭産業の大手筋である、たとえば三菱あるいは三井、こういう方面の動きを見ておりますと、石油産業というものにぐんぐん手を伸ばしてきまして、優秀な炭鉱だけはどんどん近代化し、合理化して、そして石炭はまあまあ、こういう傾向も見られるのであります。そして労働者の整理だけはぐんぐんやっていく、こういうまことにシビアな姿をとる傾向にあるわけでありまして、これは雇用問題としても非常に大きな社会問題で、後ほど労働大臣にお尋ねしたいと思います。  そこで石炭産業の合理化について、何か政府は昨年以来石炭技術振興費補助というようなものを、今年も昨年同様組んでおります。その石炭技術の振興という面で、ぜひともやらなければならない問題として、私は石炭の地下ガス化ということがあると思うのです。昨年の予算委員会のときにも私お尋ねしたのですが、当時、今の総理大臣の池田通産大臣は、地下における液化ガス化も大いに研究します。こういう答弁があったのです。私この間うちから調べてみたのです。たしか昭和三十一年の六月東京で、エカフェの委員会が開かれましたときに、日本の代表は、日本では大いに液化ガスの研究、調査をやった、こういう発言をしておるのです。そしてまたその前年に、すでに日本の学者、技術者あたりがソ連の地下ガス化の調査に行っておる。その結果、通産省の省議でも一つ地下ガス化の調査、研究を進めようということがきまり、閣議にも報告されて、閣議でもそうしよう、こういうことになった、こういうふうに私は聞いておるのであります。ところが、その後何もやってない、こういう事情ですが、いかがでございますか。通産大臣にお尋ねしたいと思います。
  147. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 地下ガス化のアイデアは、だいぶ古くからある問題でございます。ソ連なんかで実行しておるということは、私も前から聞いておるのでありますが、遺憾ながらまだほんとう世界的にこれは確立された技術でないようであります。従ってまだわが国においてもこれを具体化しておらない状況でございます。  なお、採炭の技術については、水力採炭といったようなことが叫ばれておりますが、多少技術的にわたりまして、私もよく勉強しておりませんので、担任の局長から簡単に申し上げたいと思います。
  148. 今井博

    ○今井(博)政府委員 石炭技術の振興につきましては、三十五年度の予算で五千五百万円の技術補助金を計上いたしました。主として水力採炭を中心に研究を実施いたしました。これは北海道で着工いたしまして、一応試験としては非常な成功をおさめております。さらに引き続き来年度は五千八百万円、約三百万円程度の増加でありますが、やはり水力採炭、それから水力輸送を中心に研究を実施しておる、こういう状況でございます。
  149. 堂森芳夫

    堂森委員 石炭の千二百円というものを値下げをして、そうして重油と競合さしていこう、こういう政策を続けていく、こういうわけでありますが、私は、このような政策をやることは、もちろん大きな雇用をかかえた社会問題でもありますが、それはその通りでいい、こう思うわけでありますが、この石炭政策だけを一つ見ましても、今日巨額の予算政府が組み、また政府が財政投融資を政府資金をもってやっておる。たとえば開発銀行、こういうようなものからも巨額の資金源を得ておる。しかも多くの指導政策をとっていかなければ、エネルギー産業としての石炭産業、こういうふうなものは、ある意味ではプライベートな私企業としての一つの限界というものが来ておるのではないか。たとえばイギリスのように国営をやるとか、あるいはフランスのように国営をやるとか、ドイツはそうではありませんが、そういうふうなことを考えるべき産業であり、そういうふうな何らかの形の社会化といいますか、公営といいますか、そういう段階に来ておるのではないか、こう思いますが、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  150. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 もはやこの段階に来ては、基幹産業というものは案外投資家にとって魅力がない。しかも問題がだんだん加重されておるというようなことで、いわば経営の形態において根本的に考うべきであるというような意見も聞かないこともございません。英仏において見るような、そういう構想を立てるべきではないかという御意見でございましたが、日本のように小山の多い状況では、英仏の例にならうということは非常に至難ではないかということを考えております。
  151. 堂森芳夫

    堂森委員 通産大臣は、あなたが申されたような事情でむずかしいのではないか、こういうことでございます。私はそれは理由にならぬと思うのですが、いかがですか。
  152. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ただいま申し上げるような日本の炭鉱のあり方から見て、これを社会化するということは、むしろ適当ではないのであって、ただいまとっておるように、これを合理化いたしまして、そして炭鉱全体としての能率を上げる、こういうやり方の方が日本的である、かように考えております。
  153. 堂森芳夫

    堂森委員 この点につきまして議論しても始まりませんから、私は後の問題に移りたいと思います。  企画庁長官にお尋ねいたしますが、所得倍増計画によりますと、エネルギー需要の増加予想は、総エネルギーで三十四年度が一億三千万トンくらいになっております。それから四十五年度には約三億万トン、そして増加率は二・三倍になる。そして年率、毎年七・八%ぐらいがふえていく。そこでその中の電力を見ますると、三十四年度には八百四十五億キロワット時になる。これは実績の数字であります。それが四十五年度には二千三百五十億キロワット時になる。増加率は約二・七八倍、年々九・七%ずつ伸びていく。こういうふうな数字が示されております。これはオートメーション化がどんどん進んでいく、また家庭生活の近代化によって家庭用の電力需用もふえる、こういうことだと思うのであります。所得倍増計画では、三十一年から三十三年を基準年次としまして、大体国民総生産は七・八%くらいふえる、こういうふうに見込んでおります。三十四年度を基準にしますと成長率は七・二%強。もっとも政府は、今後三年間は九%伸びる、こういっておるのですから、この審議会の報告とは違うわけであります。そこで、この総エネルギーの需要の増加率は、この七・八の成長率を上回っておりますが、とりわけ電力需用というものは非常に大きく国民総生産の上昇率を上回っていると思います。九・七%になっておりますから、池田総理の自慢の九%ずつの成長率をさらに上回って、九・七%ずつ電力需用がふえていくのだ、こうなっております。昭和三十四年度では、電力というものが全エネルギーの中で占める率はたしか三八%くらい、そして四十五年度には四七%くらいを占める、こういうことになっております。電力業界でも、エネルギーの中で占める電力の需用の増加は、四十五年——十年後には三倍になる、こういっておるのであります。ところが所得倍増計画で、鉱工業生産は年率一一・九%の増加を見込んでおります。ところが電力需用の伸びは九・七%、こうでありますから、国民所得の伸びよりも大きいですね。それから鉱工業の生産の伸びよりも低い、こういうことになっております。いわば鉱工業の伸びよりも電力需用の伸びというものが小さい、こういうことになる。これは私が調べたところでは、諸外国、欧米諸国とは非常に違うと思うのです。たとえば過去十年くらいの経過を見ておりますと、西ドイツでは鉱工業の生産の伸びと電力需用の伸びは大体同じです。それからイタリアとかフランスあたりでは、電力需用というものが上です。日本のように下にいってないのです。アメリカやイギリスではずっと何倍かに電力需用が伸びていっている。こういう事情を見ますと、政府考えている国民所得倍増計画では十年後には西欧並みになる、こう言っていますが、やはり電力を使うことの少ない国民というのは、中進国、後進国だと思う、十年後にもやはり日本は中進国、後進国としての肩書きを残していく、こういう予想をしておりますが、この点いかがですか。
  154. 迫水久常

    迫水国務大臣 お答えをいたしますけれども、ちょっとこれは数字のいろいろなあやでございまして、計算のいろいろな型があるようでして、私はその専門家に説明してもらわないとよく説明ができませんので、計画局長からお答えいたさせます。
  155. 大平正芳

    大平政府委員 お答えいたします。ただいま堂森先生の御質問の点で、日本の電力消費の伸びは国民総生産の伸びよりは高い率であるが、工業生産の伸び率より低い、そこが他の先進国に比べてだいぶ違うではないかという御指摘がございました。実はこの点、この計画作成の場合にも非常に論議がございましたのですが、一番基本になる点は、日本の経済の今の段階では、国民総生産の伸び率と工業生産指数の伸び率の間に相当大きな開きがございまして、工業生産指数の伸びの方が国民所得なり国民総生産の伸びよりもかなり大きいのでございます。これがだんだん経済が発展いたして参るに従いまして、工業生産指数の伸びと国民所得ないし国民総生産の伸びとがほぼ同率に近くなりまして、アメリカのごときはほとんど違わないような形になって参ります。これはやはり国の経済に占めます工業のウエートが大きくなって参りますと、経済規模の伸びと鉱工業の伸びとがほぼ一致して参るわけでございますが、現在の段階におきましては、日本国民所得なり経済規模の伸びに対して鉱工業生産指数の伸びが大体二倍近く——一・五倍から二倍くらいの割合で伸びておりまして、これはやはり経済全体の工業化がまだ進行の過程である、それから電力の伸びは工業生産指数の伸びがよりやや低いという現状から考えますと、大体この倍増計画に見込んだ程度の関係になるのではないかという結論になったわけでございまして、将来日本がだんだん先進国型に変わって参りますと、ただいま御指摘のようなことに、この相互の関係も変化して参ると存じますが、これから十年の期間というのは、大体この計画を見込んだようなことになっております。
  156. 堂森芳夫

    堂森委員 今の電力の需用のこうした見通しからいきますと、将来やはり電力が非常に足らぬという事態が起きてくるのじゃないか、そしてあなた方のおっしゃるような所得倍増ができないような事態が——電力の需用という面からでも、それが日本の経済のボトル・ネックになるのじゃないか、こういうふうに思うのです。たとえばもっと具体的に言いますと、日本の経済機構の二重構造というものが、幸いにしてだんだんと近代化してくる、すなわち中小企業というものが整理統合というか、戦時中みたいな言葉ですが、そういうふうに近代化してくるという姿がどんどん起こってくる、こういうことになる。あるいはまた、所得倍増によって所得がふえるのですから、家庭生活の近代化というものがどんどん進んでいく。そうすると電気の需用が非常に大きくなってくるのじゃないか。こういう予想では電力が非常に足らぬようになるのじゃないか、こう思うのですが、いかがでございますか。
  157. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 経済がだんだんと発展して参りますと、一面におきまして、エネルギー消費、特に電力消費の増加する傾向がございます。他面、所得が高くなって参りますと、経済規模の中に占めますサービス指数、第三次産業等の比重も増加して参りますが、これはそれほどエネルギーを消費いたしません。それから工業の方も、特に日本の場合には機械工業の発展がかなり顕著でございまして、エネルギーを多量に消費する産業よりも、あまりエネルギーをよけいに消耗しない、たとえば精密機械というようなものの伸びが大きいわけでございます。こういう部門については、工業生産は伸びますけれども、それほど電力消費はふえないというような事情も一面ございまして、もちろん電力の伸びに対して非常に対策を必要とするわけでございますが、この約四兆八千億くらいの資金で発電設備を拡充して参ります。一面から申しますと、火力がだんだんと中心になって参りますので、従来の水力と火力を合わせた場合よりは幾分資金的な節約も考えられます等の事情もございますので、特に経済成長には電力の面から大きな破綻がくるというふうには予想いたしておらないのでございます。
  158. 堂森芳夫

    堂森委員 たとえば松永安左衛門さんですか、あの人が所長をしておる中央電力研究所というようなところでいろいろな見通しを発表しております。私、新聞で読んだのですが、今のような需給関係の見通しでは、おそらく日本の経済発展のネックになるのじゃないか、十年後には二倍半なんと言っておるが、電力の供給を四倍以上にしないと、電力が足らぬのじゃないか、こう言っておりますが、企画庁長官どう思われますか。
  159. 迫水久常

    迫水国務大臣 いろいろな見通しがあり、意見のあることは、私も承知をいたしておりますけれども、私といたしましては、電力の方は、そういうエネルギーの方の専門家たちが精密に計算しておるものでありますから、一応あれで間に合うものだ、こう考えております。ただ、ことに今、話を聞きますと、一〇%くらいの予備まで見込んである、こういう話でありますから、まああれで間に合うのだ、こう考えております。
  160. 堂森芳夫

    堂森委員 この小委員会の報告にも一〇%の予備を見込むべきだ、こう書いてあります。それは私も知っております。通産大臣よりよく知っておるのであります。そこで通産大臣にお尋ねしますが、電力料金は九州を上げる、東京もそうするだろう、こう言っておられますが、電力事業の産業の内容を見ると非常に不健全なものである。こういうことは私、いろいろな事業内容を調べてみたのですが、自己資本よりも借金がものすごく多い。そうして減価償却の未了というものが膨大なものがあるとか、いろいろ不健全な内容になっておりますが、電気産業はなぜそんなに内容的に苦しいのでしょうか、その原因を承りたいと思います。
  161. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 電力事業は非常に膨大な設備資金を固定する、そういう関係でございまして、戦前と戦後のいかんを問わず、これは電力事業の特色でございます。そういう点で、特に日本の最近の事業は、どの事業もそうでありますが、借金が多い。自己資本と借金とのバランスが非常に破れておる。電力等におきましても、御多聞に漏れない状況でございます。そうであればあるほど償却、金利等に追われる。ことにたびたび話が出ましたように、所得倍増計画というものによって、非常な速力で設備を拡大して参らなければならぬという情勢にありますので、その面から非常に追い込まれている、決して楽でない、そういう状況が加重されておるものと考えます。
  162. 堂森芳夫

    堂森委員 電力事業の最も苦しい理由は、新しい電源を開発すればするほど非常な建設費を必要として、そこに非常な電力会社の負担がふえていく。借金がなぜできるかというと、建設費が非常にかさむからだ、こういうことだと思うのです。この電力事業というものは、もちろん燃料費——従来の水主火従という電源開発方式が、ただいまでは火主水従、こういう方式に変わってきておるということは、大臣も御承知通りであります。ところがまた石炭とからんでくるのですが、電力会社は油の専焼の発電を要求しておる。その方が安い、こういうことになるわけでありますが、とにかく電源開発ということは非常な焦眉の急務であります。そこで企業自体の本質的な議論というものは別にしまして、電力事業の大きな負担は開発基金、こういうところにあると思います。たとえば、たしか昭和三十五年度、本年度の資金の内容を見ましても、電源開発株式会社は別でありますが、九電力会社へ百五、六十億の財政投融資が行なわれている。しかし一年に要するただいまの電源開発の資本は四千億、五千億一年に必要としておると思うのです。こういう事情であります。そこで財政投融資も減ってきた、こういうことであります。そうして社債というものに今後うんとたよっていこう。しかし社債は利息が高い。こういうことで、数日前でありますか、大蔵大臣の談話に、長期金利の値下げについて何か構想を作ってこれを近く発表する、こう言っておられますが、一体どれくらいの社債などの長期金利の資金に対して値下げをしていく考えか、あるいはそういう連関した一体としての構想はいつごろ決定するのか、これを伺っておきたい、こう思います。
  163. 水田三喜男

    水田国務大臣 長期金利にも各種の金利がございますので、それらの均衡を考えて、できるだけ早い機会に社債金利も引き下げ得るような環境を作りたいと考えて、今一連の金利引き下げについてのプログラムと申しますか、これから順を追ってやっていくいろんなやり方に対して、今大蔵省としても検討しておるところであります。できるだけ早く社債金利を引き下げられるような環境を作るつもりでおります。
  164. 堂森芳夫

    堂森委員 どうも大蔵大臣の答弁、できるだけ早くということではっきりしないのですが、これはやはり関連するところも大きいわけでありまして、その時期が明確にされない、またどういう構想なのか、ただ研究するということだけでははっきりしないのですが、答弁が得られませんからやむを得ません。  時間がございませんので先に進みますが、エネルギー産業というものは今後外貨を消費するということが非常に大きな問題になってくるわけでありますが、しからば国内資源というもの、油を一つとりましょう、そういうものにつきましても考えてみたいと思うのです。この計画によりますと、国内から生産される原油は、たしか四十五年には百五十万キロリットルくらいの原油が産出されるようにしたい。今日は六、七十万キロリットルくらいではないかと思うのです。あるいはもっとそれ以下かもしれません。ところが、昭和三十年に政府が出資しまして、石油資源開発株式会社というものができたわけです。そうして五年計画で地下資源の石油の開発をやってきました。ところが来年度の予算を見ますと、政府の出資は四億、そうして五億くらいの何か融資を受けて九億くらいのところ、三十五年度と比較いたしますると非常な縮小でありますが、もう国内における石油資源の探鉱調査というものはやめてもいい、こういう意思でございますか、まず承ってみたいと思います。
  165. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 三十五年でありましたと思いますが、五カ年計画で大体百万キロの国内資源を開発する。そのために計画を立てて着々進んで参りましたが、ただいまのところ大体六割ないし七割くらいの実績率を示しておるのであります。多少計画よりもおくれておりますので、それで大蔵省にお願いをして、この計画を一つ延ばしてもらいたい。せっかくいいところまでやってきておるのでありますから、目標の百万トンくらいの内地資源の開発をぜひ達成する段取りをつけさしてもらいたいというので、ただいまお話がありましたように、四億政府出資、五億は政府保証の民間融資ということにいたした次第でございます。これでやれると思います。
  166. 堂森芳夫

    堂森委員 通産大臣、そうおっしゃいますが、四億とかそういうようなささいな、従来とはもう激減したような予算では私はやれぬと思うんです。しかも地下資源の探鉱——石油に限らず、大体常識としては、たとえば五カ年計画を持ちますと、最初の第一回目の五カ年計画はまあ準備期間で、第二回目の五カ年計画あるいは第三回目というように長期にわたって探鉱調査をやっていかないと、そんなに一ぺんにぽんぽん当たるものでないということを私は聞いております。特に第二回目くらいの五カ年計画というものが最も重要なんだ、こう言われておりますが、これでは探鉱をやめていく、こういうことになるのじゃありませんか、いかがでございますか。
  167. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 とにかく非常に窮屈ではございますけれども、従来の規模をそう縮小しないで、とにもかくにもあと二、三年この状況を続けて参りますれば、当初の目標を達成できるのではないかということであの計画をいたした次第でございます。
  168. 堂森芳夫

    堂森委員 それは通産大臣、ごまかしの答弁だと思うのです。全石油の使用量から見ればわずかなものだから、もう国内資源の開発はやらないのだ。こういう方針でないかと私は思うのですが、しかしそれは問題があると思います。たとえばただいまスマトラに石油開発株式会社というものを持っておるでしょう。政府は保護しておるでしょう。協力しておる。あるいはまたアラビアにアラビア石油会社、これは昨年も聞いてみたのですが、政府はあまりこれには河も協力していません。こういう答弁を当時の通産大臣の池田さんは言っておられました。しかし、この間アメリカのマックダーモットという会社の何か副社長が来て、アメリカの方で融資をして、そうしてギャランティをする。さらにその裏に日本政府が保護政策をやるのだ、こういうように言ってくれないことにはアメリカにおける輸出入銀行の融資はむずかしいのだ、こういうことを言ってきて政府にいろいろ交渉しに来ておる。こう新聞には書いてあるわけです。閣議では、しからばこのアラビア石油会社の事情についてどんな話が出たのですか。一民間の会社に政府が保護政策をとっていく、こういうことになると、国民はいろいろ疑問を持つと思うのです。その間の事情も少しあわせて説明をしてもらいたいと思います。
  169. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今のマックダーモット社云々の話は全然閣議に出ておりませんし、私も聞いたことはございません。ただアラビア石油に対してはどういう政府との関係にあるかということを申し上げますならば、これは政府がもちろん出資しておりませんし、ただ開銀がその独自の見地から、重要産業としてこれに融資をしております。それから輸出入銀行もこれに融資をしている、そういう状況でございます。
  170. 堂森芳夫

    堂森委員 それは政府は何も関係していないとおっしゃいまずけれども、大体輸出入銀行と開発銀行、あるいは電力会社も出資しておるのですよ、この会社に。そうすると、どこから金が出てます。やはり国民の税金から財政投融資というものが回るのです。そういう開発銀行とか輸出入銀行が相当援助しておる、資金を出しておる、それを通産大臣がよく知らぬということでは、私は責任を果たされぬと思うのです。いかがでしょう。
  171. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 知らぬということは申し上げないのでありまして、ただ特殊会社の範疇には属してはいない。今お話しの通り政府の預金部資金等によってまかなっておる開発銀行の金、あるいは開発銀行に多少依存しておる九電力のうちの一部、輸出入銀行等においてその所要の資金を見ておる、こういう関係でございます。
  172. 堂森芳夫

    堂森委員 所管大臣といいますか、関係の深い通産大臣はそれ以上のことはお知りでないのでございますか。やはり相談には乗っておられぬのでございますか。あるいは大蔵大臣、どうでございますか。
  173. 水田三喜男

    水田国務大臣 アラビア石油がサウジ・アラビア政府とクエート王国との間に利権協定をするときには、昭和三十二年の六月でしたか、閣議了解がございました。当時の閣議了解では、政府が資金的援助は特別にしない、商業的採算の試錐があるまでアラビア石油の資金については援助というようなものは考えないということでございましたが、その後昨年の一月に第一号井の試錐があって、その採掘計画に必要な資金を輸銀から仰ぎたいという申請があって、それに対して今日まで輸銀が六十二億円の融資をしておるということはございますが、そのほかの問題では、この問題が閣議で出たことは私聞いておりません。
  174. 堂森芳夫

    堂森委員 通産大臣は、知らぬとは言いません、こう申されたのですから、知っていることを答弁してもらいたい。どういうふうに通産大臣はアラビア石油会社を考えておられるか、あるいはどういうことで折衝があったとかこの会社には私は相当問題があると思います。
  175. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 さっき開銀資金を融通しているということは、私の間違いでございますから、それは取り消します。輸銀でございます。そういうような関係にありまして、輸銀の方から融資するという際に、間接に政府の方で、このアラビア石油の問題を指導したことはある。これは私がまだ直接手がけたわけではございません。それからただいまの段階では、御承知通り十本の井戸を掘って、いずれも日産千キロ程度の世界第一級の井戸が実現した。こういう関係でありまして、今後とも試掘を続けて参りまして、そして二、三年先に一千万トンくらいの産出量になる見込みであります。それで近く向こうから油を日本に持ってこよう、それについては、いろいろ日本におきましても、石炭との関係から、ただいまは自由化しておりません。従って無制限に掘っただけ持ってきてかまわぬというわけにも参らぬ。それからまた持ってきた場合の精製の手配は、これは今までの既存の秩序というのもがございますから、それに当てはめて国内の石油産業の秩序に従ってやらなければいかぬ、こういうような制約がおのずからなければならぬところであります。ただ、その際に有為替にするか無為替にするかという問題があります。いずれにいたしましても、とにかく日本の法人でありますから、有為替にしてもごく形式的なものであって、無為替と実質においては同じだということになりそうでございますけれども、しかし従来の関係から見て、無為替ということでいろいろな方面に了解を取り付けた関係上、やはりその約束を守ってもらいたいというような、これはよく調べてみますが、そういったような要請がございます。はたしていずれが適当か、その点は厳密に至急に調査いたしまして、決定を下したいと考えます。
  176. 堂森芳夫

    堂森委員 言葉じりをとらえるようですが、間接の指導というのは何でございますか、もう少し具体的に。
  177. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 輸銀を使って金融をした関係上、輸銀がこれに対して信用を与えるか与えぬかというような点について政府の意向を徴するわけでございます。それらに対して、その当時政府として研究の結果、輸銀を通じて間接の指導をしたことはあった、そういうことを申し上げたのであります。
  178. 堂森芳夫

    堂森委員 つまり貸してやるのが適当だという助言をされたということですか。
  179. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まあ貸すについて、向こうのロイアリティの約束であるとか、その他いろいろな向こうの王様やなんかと取りきめをするわけですから、そういったような内容について間接の指導をしたということはございます。
  180. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんから、最後の問題に入りたいと思います。ただこのアラビア石油の問題は通産大臣、割合簡単に考えておられますが、いろいろなむずかしい問題を含んでおると思うのです。ということは、第一なるほど日本人の法人であるから、無為替で入ってくるだろう、こういうこともあるでしょう。その利点もございましょう。しかしこのアラビア石油会社というものは、非常に不利な条件でクエートの政府、サウジ・アラビア政府との間で結んでいる。何かタリキという辣腕の男がいるそうでありますが、これに完全に手玉にとられているんだというようなことを読んだこともあります。そうして非常にロイアリティが高い。しかも利益の五七、八%はドルで払えとか、あるいは日本に製油所を作ったり、日本に工場を作って上がった利益もドルで持ってこいとか、非常に苛酷な条件の会社です。これはかりに無為替で入ったとしても、はたして日本の国にとってドルの節約になるかどうかということは、これは問題がある会社です。間接に指導ざれたことはやはり何か援助されたのじゃないか。こう思いますが、時間がありませんからいずれまた伺います。  そこで最後に池田科学技術庁長官にお尋ねをいたします。この間原子力の長期計画というものが発表されました。そして二十年後には七百万から九百五十万キロワットくらいの原子力発電をやる、そしてあなたの談話も新聞で読みました。この長期計画に従って私は大いに推進するという猛将ぶりを発揮されておるわけであります。しかしあなたはほんとうにこの二十年計画というものがそのままできると思っておられますか、またやるべきだと思っておりますか。あなたは原子力の委員長さんですから、そう思って談話を発表されたのでしょうし、こういうものを決定した。ほんとうにやれると思っておられますか。私は過去の日本の原子力開発のこともあわせて責任を追及したいと思いますが、まずそれから御答弁願いたい。
  181. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 お答えします。二十カ年の長期計画、これはやれるかやれないかは実際はだれもわからないわけであります。それは原子力科学は現在の段階においてはまだ神代の時代、また別の表現で言えば、宇宙科学で比較するならばスプートニクが上がったくらい、この程度にしか私は出ていない、さように思っております。従ってこれがどの程度までにいくかということは、いかなる学者といえどもはっきりしたことは言えない。ただしこれからこれが進歩発達していくであろうということだけはこれは信じてよかろう、こういうことであります。従って今度の二十カ年計画におきましては、最初の十カ年は計画研究の時代でございまして、あとの十カ年、これは開発の時代だ、こういうふうに私は考えておるわけであります。従って最初の十カ年の計画時代、研究の時代において発電計画は約百万、それからあとの十カ年で六百万ないし八百五十万、こういうことになっております。これを大体の一つの大きな理想として、これにわれわれは邁進する、こういうことになっております。
  182. 堂森芳夫

    堂森委員 池田長官にお尋ねしますが、それではこれは計画じゃないのですね。ただ当てずっぽうの見通しですね。計画ですか、これを一つ。
  183. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 申し上げます。当てずっぽうといえば、そういう表現も全然当たらないとは言えないのです。しかしそれでは全然科学的な基礎がないのかといえば、これはあると言わなければならない、現実にあるのであります。でありますから、これはその人その人の解釈のしようで、私ども政府といたしましては当然あるという建前に立って推進しておる、こう申し上げておきます。
  184. 堂森芳夫

    堂森委員 池田さんはまるで神がかり的なことをおっしゃる。あなたは科学技術庁の長官ですよ。頼みますよ。今度発表した二十カ年計画の特徴を説明しましょうか。あなた、わからぬのじゃないかと思います。過去において昭和三十一年、三十二年というふうに三回にわたっていろいろな計画を発表しておるのですよ。ところがそれがどうもうまくいかなかった。それで社会党のわれわれは、そんな動力炉を外国から金を使って買ってきて、いずれは早晩古色蒼然たる博物館入りのような道具になるものを買わずに、基礎研究をもっとやりなさい。そしてそういう金があるならば先進国に若い学者をたくさん派遣して勉強をさせなさい、こう言って主張し続けてきたのですよ。ところがコールダーホール改良型を三百六十億という巨額の費用を使って、東海村に作っておるでしょう。しかし私はこれは何も——まあ反対したですよ。われわれは。そんなもったいない金はいいじゃないか。今時どうです。あの当時の原子力委員会は、原子力も何もわからぬ人が、日本国内の原子力業者というか、資本家というか、外国の原子力産業資本家に押し売りされて買うように決定した。たとえば坂田というような博士がおるでしょう。あの人たちは反対して原子力委員をやめたのですよ。そんなむちゃな計画をやるのにはおれぬと言って。そうしてまあ買ってきました。三百六十億、政府資金、開発銀行の資金、九電力——電力会社は、国民の税金から取った資金を政府から借りておるような会社まで出資して作ったのですよ。そして今度の計画ですね。今度の計画で、コールダーホール改良型の次にはアメリカの軽水型ですね。そして将来は空気ので——こういうものを二基、三基、四基買ってこようというのでしょう。ところがCP5の試験炉をアメリカから買うたでしょう。最初GEの会社に注文したら、そんなめちゃな計画では作れぬと言って断わられた。そして他の会社にいって作ってもらって持ってきて、今どうなっていますか。原子力研究所東海村では、一万キロワットの出力があるというのが一キロしか出ないのですよ。知っておられますか。その責任はだれにあるのですか。どうです。最高の責任は総理大臣にあるのですよ。一万キロが一キロしか出てないのですよ。
  185. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 ただいまの結論的なお尋ねは、CP5の問題だと思います。CP5の問題は御承知のようにこれは何もしろうとの集まっている政府がそんなことを決定できるものじゃないことは申すまでもない。日本の科学者が集まってそれがよかろう、大多数の人たちがそれでよかろうということでこれを買ったのです。しかもその当時の情勢を判断いたしますと、御承知のようにアメリカが二〇%の燃料しか外国には出さないというきびしい内規がございまして、それに基づいて二〇%の燃料を日本が買った。今では九〇%を外に出しておる。現在の立場からいいますと、九〇%の方がよかったのじゃないかということが言えると思います。ことに御承知のようにこの際ですから申しますけれども日本で買ったのは一万キロの実験炉でございます。ところがイタリアは五千キロ、世界各国では大体最高が五千キロ、日本だけが一万キロ、これは日本の学者が少し欲ばったのじゃないか、今にして思えばそういうようなことになるのです。これは日本の科学技術の水準がそこまで達していなかった、遺憾ながら。そういうことでありますから、従ってそのためにこれがうまくいかないで、あなたが今おっしゃるように、一万キロの原子炉が一キロしか出ないというような実情、これは今あなたがおっしゃったかどうか、新聞その他にも書いておりますけれども、しかしこれからわれわれは安全性を重んじながら徐々に上げていく。おそらく千キロくらいまでは上げられるであろう。それでは最初の一万キロと話が違うじゃないかという御議論が当然に出てくるのであります。しかしその当時は日本の学者がみんな集まってそれでいいといって買ったのです。そういうわけでございますから、(「政府はどうした」と呼ぶ者あり)政府じゃありません。政府はあくまでも科学者の意見を信じて、それに従って買った。そこで先ほど私が申し上げましたように、原子力科学そのものは神代時代のようなもので、まだほんとうにこれならば間違いないというものがわれわれは見つからない。残念ながらそういう段階にあるということだけを御前提に置いてお考えを願いたいと思います。
  186. 堂森芳夫

    堂森委員 それはおかしいと思うのですよ。学者に相談してやったから学者のせいだ。責任はあなた、内閣及び最高の最後の責任者は総理大臣ですよ。あなたは科学技術庁の長官じゃないですか。そんなべらぼうな、それなら政府は要りませんよ。無政府だ。どらですか、あなたは責任がないのですか。それはおかしいですよ、そういう答弁はいかぬです。
  187. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 お答えいたします。今しかしここで責任をあなたおっしゃいますけれども、まだはたして出るか出ないかはっきりしてない、それが現在の段階であります。責任ははっきりしない。そこで一キロしか出ないということになれば、その場合またあらためてその責任の所在がどこにあるかということを検討すべきであると思っております。
  188. 堂森芳夫

    堂森委員 どうも池田長官は、名じゃない、迷うている答弁ですよ。そんな無責任な答弁ではわれわれは納得できません。そこで私、この二十カ年計画の矛盾点をあげてあなたと論戦したかったのですが、時間がありませんからやむを得ないのですが、過去における動力炉をあわてて買うという方針が誤っておったのだ、それでこれから基礎研究を十年間やって、十年後は実際の応用の開発をやる、こういうことになっている。ところが最初の十年間の基礎的な研究に従事する、こういうことならば、なぜ最初の十年間に百万キロワットの原子炉の実験をやるのですか。あなたはやれるかやれぬかわからない、そんなことはないですよ。コールダーホールは動いていますよ。アメリカでも濃縮ウランの動力炉も動いていますよ。神代のことじゃないです。ただ金が幾らかかってもいいから、あるいは燃料の問題とか、あるいは安全性とか、いろいろなことがあるから、いろいろと慎重にやってきたのだ。神代のことじゃないですよ。やれるかやれぬかわからぬ、そんな権威のないものをなぜ発表したのですか。最初の十カ年というものと矛盾しないと思いますか。基礎研究をもっとやろうという十年間なら、なぜ基礎研究をやっていかないのですか。この点はどうですか。
  189. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 お答えいたします。お説のように基礎研究と申しましても、いろいろの形、段階、内容があると思います。あなたがおっしゃるように日本の学者を外国にまず留学させて基礎的な勉強をさせてくるということも一つの方法、また試験炉のようなものを日本に取り入れまして、日本でこれを研究していくということも一つの方法でありましょう。数え上げればそういう幾多の方法があるはずであります。それらをどれからやっていくかということにつきましては、日本のこれに関連する科学者の人たちが原子力委員会を中心にして、それぞれ専門委員会を設けまして、そこで検討した結果、外国にもやるし、また試験、実験炉も作った方がよろしいというふうなことで始めた、こういうことでございます。従って先の十年間は、これは研究にだけ没頭すべきであるというようなお説かと承りましたけれども、これは必ずしもそうじゃないので、電力会社の方々は、現在の段階では御承知のようにこれは火力よりもずっと高くつく、しかし十年後にはこれは相当安くいけるだろうという見通しのもとに立って、とりあえず百万キロだけでもやろうということで——これは政府がやろうというのでなしに、民間の意見としてやりたい。それならば一つ開発になることであるならばよかろうというのが私ども考えでございます。
  190. 堂森芳夫

    堂森委員 長官は、政府がやろうとするのではない、民間がやる、こうおっしゃいますけれども、しかしあなた、それは巨大な投下資本を必要とする原子力発電が、そんな政府援助とか、あるいは政府の指導とか、あるいは政府の全責任においてやるとかいうことなしにできると思われますか。第一、あなたのこの中に書いてありますよ。政府が責任を持ってやっていくのだ、こう書いてありますよ。あなたが委員長ですよ。それはおかしいじゃないですか。自分の書いた、発表した委員長声明を、また自分でひっくり返すようなことを言ってらっしゃる。いかがですか。
  191. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 決してひっくり返したわけではないので、その通りなんでありますけれども、あまりこれを積極的に表現いたしますと、実際問題として学者なんかの御意見を聞きますと、そう固まったものではない、従って私は強い表現はしたくない、そういう意味で遠慮して申し上げたはずであります。
  192. 堂森芳夫

    堂森委員 それではこの長期計画というのはただ単なる見通しであって、しっかり固まった計画じゃないのだ、こういうことに解釈していいわけですね。あなたはそうおっしゃいましたよ。できるか、できぬかわからぬと最初おっしゃいました。どうです。
  193. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 お答え申し上げます。それは必ずできるという計画ではありません。それだけははっきり申し上げます。
  194. 堂森芳夫

    堂森委員 今後電力の需用というものは累進的にふえていく、そしてこれを開発しなければならぬ、少しでも安いエネルギーをどうして供給するか、これがやはり日本の国の課題ですよ。できるかできぬかわからぬところに金をつぎ込む、これはどうです。
  195. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 今申し上げましたように、なかなかむずかしいのでありまして、従ってそこには、その計画書の中には年次計画というものは入ってない。年次計画を入れなかったことは、これは申すまでもなく確信を持って三十六年度に幾らやる、七年度には幾らというふうな企画が立たないのであります。いわば一つの大きな努力目標、こういう意味で、しかもこういう新しい科学の開発のためには、大きな一つの目標を立てて進まなければならぬのです。そういう意味においてこういうものを作った、こういうことであります。
  196. 堂森芳夫

    堂森委員 私はこの計画の中にうたわれているいろいろな内容について問題がたくさんあると思うのです。たとえばコールダーホールの改良型について今度は軽水型の炉を輸入するのだとか、あるいはいろいろなものを輸入する、こういうことがありますから、そんなことがあってはいかぬ、こういうことを私は申したいのであります。そしてこの実験炉、たとえば日本で作ってうまくいっておる問題についても申し上げたい、こう思うわけでありますが、とにかくあなたは、この計画は単なる見通しである、こういうふうに言われたと解釈しまして、それ以上追及しません。しかしあなたの政治的責任は大いにこれから追及しなければならぬ、こういうわけです。総理がおりませんからやむを得ません。私の質問はこれで終わります。
  197. 船田中

    船田委員長 十七日の公聴会の公述人中、未定でありました二名の公述人が本日決定いたしましたので、この際御報告申し上げます。一橋大学教授高橋長太郎君、全国農業協同組合中央会常務理事一楽照雄君、以上であります。  次会は明十四日午前十時より開会し、補正予算質疑に入ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十九分散会