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1961-02-10 第38回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月十日(金曜日)    午前十時四十分開議  出席委員   委員長 船田  中君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 横路 節雄君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       赤澤 正道君    井出一太郎君       稻葉  修君    臼井 莊一君       江崎 真澄君    小川 半次君       上林山榮吉君    菅  太郎君       北澤 直吉君    倉石 忠雄君       櫻内 義雄君    園田  直君       田中伊三次君    床次 徳二君       中野 四郎君    中村三之丞君       羽田武嗣郎君    前田 正男君       松浦周太郎君    松野 頼三君       松本 俊一君    三浦 一雄君       山崎  巖君    淡谷 悠藏君       岡  良一君    木原津與志君       小松  幹君    河野  密君       田中織之進君    楯 兼次郎君       堂森 芳夫君    永井勝次郎君       野原  覺君    長谷川 保君       松井 政吉君    佐々木良作君       西村 榮一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         農 林 大 臣 周東 英雄君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 木暮武太夫君         郵 政 大 臣 小金 義照君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 池田正之輔君         国 務 大 臣 小澤佐重喜君         国 務 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         内閣官房長官 保岡 武久君         法制局長官   林  修三君         警察庁長官   柏村 信雄君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  大來佐武郎君         外務事務官         (国際連合局長)鶴岡 千仭君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (為替局長)  賀屋 正雄君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算  昭和三十六年度特別会計予算  昭和三十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 船田中

    船田委員長 これより会議を開きます。  昭和三十六年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 船田中

    船田委員長 井手以誠君より議事進行発言を求められております。この際これを許します。井手以誠君
  4. 井手以誠

    井手委員 質問に先だって一言委員長に対し、議事の運営に関し注意を促したいと思うのであります。  きのうの各新聞の夕刊によりますると、三面のトップに、「右翼国会いやがらせ」あるいは「右翼の〃国会攻勢〃が問題化」、それが大きく報道されておるのであります。私はきのう、委員会終了直前に出席して参りました木原君に、君はどうしてきょう来なかったかと聞きましたところ、実は井手君、自分は避けておったよ。きょう国会に出てきておったところが、議員面会所右翼の方から面会を求められた。その前にも、議員会館電話がかかってきた。その電話の内容について、新聞は次のように木原君の話を載せておりますが、その談話によりますと、四日の連合審査会——これは当委員会ではありませんけれども連合審査会で、どんな質問をするかと電話がかかってきた。そんなことは言えないと言ったところが、変なことをしゃべると、われわれ右翼は黙ってはいない。どんなことが起きても責任は持たぬぞとおどした。こういうようなことを、きのうの夕方、木原君は私に言うのであります。そういう事情であるから、自分はきょうは済まなかったけれども出席できなかった、おそらくあすも出れないかもしれない、一つ御了承願いたいという話がございました。ごらんの通り、一番向こうの木原君の席は、欠席のままであります。(「審議権放棄だ」と呼ぶ者あり、笑声)審議権放棄だなんてことではない、重大な問題です。笑いごとじゃ、ありません。こういう右翼からのいやがらせ面会の強要、電話での脅迫、これは木原君だけではないのであります。それは私どもの党の猪俣浩三氏や、自民党の所属である池田委員長に対してもきのう面会が求められておる。これは社会党ばかりの問題ではございませんよ。与野党を通ずる、言論の府である国会審議の重大な問題である。現に予算委員である木原君が、実はきょう自分野原君の質問に関連して、自分質問させてくれぬかと前から私に頼んでおりました。質問したい人間が出席できないということ、これはどうしたことでしょう。民主政治下における言論最高機関である国会において、自由に発言ができないということ、これは黙過すべきことでは断じてございません。私は本日この問題を深く掘り下げてお尋ねしようとか、そういう意味は持ちません。本日はこういうことのないように、われわれは身辺の不安なく、安心して国会審議ができるように、国政の審議に当たれるような、そういう態勢を作ってもらいたいということ、それを委員長を通じて、委員長は議長と政府に対して、国会議員身辺の不安なく、安心して国会審議ができるような態勢をとってもらうことを委員長から警告を発してもらいたいということ、それを私はお願い申すのであります。もし今後も重ねてこういうことがありますならば、われわれは国会審議について、重大な決意をしなくてはならぬことを、警告を添えて、私は委員長の善処をお願い申し上げるのであります。(拍手)
  5. 船田中

    船田委員長 ただいま井手以誠君の御発言に対しましては、委員長といたしましてその趣旨を了承し、善処いたします。     —————————————
  6. 船田中

    船田委員長 質疑を続行いたします。野原覺君。
  7. 野原覺

    野原(覺)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、主として労働問題、それから教育問題、なおまた当面いたしておりまするその他の若干の重要な問題について質問をいたしたいと思うのであります。  まず最初にお尋ねいたしたいことは、八日の英国下院におきまして、池田総理の先月三十日の社会党加藤勘十氏の質問に対する答弁が問題にされておるのであります。この新聞報道を私も昨晩手にいたしまして驚いたのでございますが、「ロンドン八日発UPI・共同」の報道といたしまして、読売の記事によりますと、「英保守党コートニー議員は八日英下院で、池田首相が二十八日行なったイギリスの対中国対策に関する発言は明らかに誤っており、」このことに関して外務大臣質問をいたしておるのであります。コートニー議員質問いたしました要点は、報道によりますと、「池田首相イギリス中国国連加盟反対していると述べたが、この発言訂正するために政府はいかなる措置をとるのか」、こう尋ねておるのであります。これに対しましてヒース国璽尚書が次のように答弁をいたしております。「池田首相発言全文を入手すればすぐ措置を検討する」というのであります。そこで私は先月三十日に加藤勘十氏の質問に対して、総理答弁をされました、その答弁速記を実は読んでみたのでございますが、その速記によりますと、その個所は次のようになっておるわけであります。「御参考までに申し上げておきまするが、北京政府認めております英国におきましても、昨年の暮れ、北京政府国連代表権を持つことについて論議がかおされました。採択の結果、現政府考えは、これは認めるべきではないという結論に達したのが、昨年の暮れでございます。私は、世界の状況を見まして、」云々という答弁がなされておるわけでございますが、この個所コートニー議員の取り上げ質問個所になっておると私は思うのであります。  そこで、お尋ねしたいことの第一点でございますが、英国から発言全文を要求して参りましたかどうか、この点は外務大臣にお尋ねいたします。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。ただいま御質問の点に関しまして、私ども新聞を見まして、これは公電はまだございませんでしたが、直ちにイギリスのわが方に駐在しておられますモーランド大使においでを願って、ただいまお示しになりました速記録を手交いたし、そして事情を話をいたしました。この事情と申しますのは、池田総理のお考えは、御承知の昨年十二月十二日のイギリス国会におきまして行なわれましたドネリー議員の提案にかかる政府不信任案、これが二百五十九対百七十七で否決をされたという事実を言っておられるということを申したのでございます。念のため申し上げますと、これは中共代表権問題を一年間たな上げするという案について政府国連でとった態度について不信任案が出たわけでございます。その事実を言っておられるのであるということを話したのでございます。ところがモーランド大使におかれては、日本語もよくできる方でありますので、文辞章句の間にその意味がよくわかるというお気持であったようでございます。そこで、今朝電報が参りまして、この趣旨についてわが方のロンドンにおります大使館から、先方政府に問い合わせましたところが、すでにモーランド大使からの電報が来ておって、趣旨はよく了解をした、従ってこういうことはイギリス政府においては完全に了解しておるから今後問題になることはなかろう、こういう趣旨電報が参っております。そういう趣旨のことを言ってきておるのでございます。さよう御了解願います。
  9. 野原覺

    野原(覺)委員 ただいまの外務大臣答弁によりますと、イギリス下院において、労働党から現在の英国政府に対して不信任案が出された、その不信任案討論採決のことを総理加藤勘十氏に対して答弁をしたのである、こういうように私は受け取ったのでございますが、そういたしまするならば、先月三十日の加藤勘十氏に対する総理答弁は明らかに間違いではございませんか。何となればこの速記によりますと、昨年の暮れ北京政府国連代表権を持つことについて論議がかわされました英国においては、その論議の結果、国連加盟英国が踏み切るという方向をとることはいけないのだ、このように明確に総理答弁をしておるわけであります。この点について総理のお考えを重ねてお尋ねいたします。
  10. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 昨年の十二月十二日に、ただいまお話のありましたごとく、北京政府国連代表権を持つことができなかった、こういうことにつきまして政府に対する不信任案が出たのであります。そのことにつきまして採決の結果、イギリス政府北京政府代表権認むることについての論議をしないという政府措置イギリス国会認めたものだ、この事実を私は言ったわけでございます。
  11. 野原覺

    野原(覺)委員 これはとんでもないことであります。あなたも一たん国会において答弁をされたことでございますから、速記ごらんになられて率直に訂正をされたらいいのであります。私がお尋ねしたいことは、あなたの答弁が、英国は終始一貫北京政府国連加盟することは反対しておるのだ、こういう考え方であなたは答弁をなさっております。このことをお認めになりませんか。
  12. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私の意味は、中共政府イギリス認めている、しかし国連代表権を持たすことにつきましての論議はたな上げする、このイギリス政府態度を私は言ったのでございます。
  13. 野原覺

    野原(覺)委員 それではお尋ねいたしますが、英国ではこの国連北京政府加盟することについて、いつ、どんな機関論議をして採決をしたことがございますか、私の知る限りでは、英国態度は早くから中国を承認しておる。もとより去年の国連総会においてはたな上げ賛成をしたのであります。このたな上げ賛成をしたのは、国連を分割することがあってはならない、自由主義陣営が割れるようなことがあってはまずいからというので、英国は消極的な態度でたな上げ賛成をしておるのであります。八日のこの外務大臣上院における演説を読んでみますと、これははっきりしておる。外務大臣は何と言っておるかといえば、「国際政治の現実は中国国連加盟を必要としていると常に考えてきたし、現在でもそう考えている。」上院でこのように明言をしておるわけであります。だから英国態度というものは北京政府国連加盟させなければならぬということで終始一貫をしてきておるのであります。ところがあなたの本会議における答弁は違う。だから私がお尋ねしたいことは、英国がこの北京政府国連加盟について反対であるという論拠は一体どこにあるのかということであります。
  14. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の先ほどのお答えが十分でなかったための御質問かと思いますから、私から申し上げますが、総理の言われましたことについての速記録そのもの先方に提示いたしまして、そうしてそれによってイギリス政府におかれてさようなことでよく真意がわかったということでございますから、そういう点について私の説明が不十分であったための御質問であれば、さようなことに申し上げたいと思うのであります。  なおその速記録イギリス態度について、政府のとった態度を、認めないということになっておる云々ということがあると思いますが、それは政府中共加盟のたな上げについてとった態度、すなわち中共国連代表権認めないということについて、消極的にとっている態度については、イギリス国会で支持されておる、こういうふうに総理は言われております。まあ言葉が足りぬといいますか、そういう点はございますが、そういう点は間違いであるとか間違いでないとかいう議論を越えて、先方もよく事情了解したことでございますから、どうか一つ国際問題でございますから、私の答弁が不十分であればなお続けて申し上げますけれども、そういう点は事実を一つ認識を願いたいと思う次第でございます。
  15. 野原覺

    野原(覺)委員 私は総理にお尋ねをしたいのですが、外務大臣からただいま答弁がございましたけれども総理は、英国北京政府国連加盟することについては賛成をしておるのだということをお認めになるかどうかということであります。
  16. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 英国北京政府を承認しております関係上、理論的には国連への代表権認めるという気持はございましょう。しかし現在の問題としては、現段階におきましては、代表権審議することにつきまして消極的態度をとっておるのであります。その消極的態度をとっていることを私は言っておるのであります。
  17. 野原覺

    野原(覺)委員 そのことは三十日の答弁速記とははるかに違うのであります。あなたの三十日の答弁速記は、何回も申し上げますが、「英国におきましても、昨年の暮れ、」云々であります。「採決の結果、現政府考えは、これは認めるべきではないという結論に達した」。ところが英国北京政府国連加盟することについて討論をしたり採決をしたことはないのであります。英国では、ないのです。あなたは、これは英国では討論をして、採決をして、北京政府国連加盟することは認めるべきでないという結論に達した、こう言っておりますが、英国では、ないではございませんか。英国では、あるという証拠がございますか。ないでしょう。ないのになぜこういう間違ったことを国会においてお話しになるのかということが問題であります。その点をどうお考えになりますか。
  18. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は、ただいま申し上げましたごとく、北京政府国連への代表権認めるか認めないかのその審議に対しまして、これを審議しないという消極的態度をとったことの意味をそういうふうに言っておるのであります。十分でない点はそれはあるかもわかりませんが、そういう考えで言っております、こう言ったら、英国の方もそれでよくわかった、こういうことになっておるのであります。
  19. 野原覺

    野原(覺)委員 この答弁速記は、そういたしますと訂正をしてもらわなければならぬのであります。取り消しをしてもらわなければならぬのであります。英国に対してはあなたはそのような了解をお取りつけになられたかは知りませんけれども国会に対してばどうなさる。国会に対しては、あなたが北京政府国連加盟することはこれはまだ早いのではないかとか、あるいはアメリカ側の意向を十分考えなければそういうことについてはうっかりお話はできないとか、そういうあなたの考えを裏づけるために、このような答弁国会をごまかし、国民をごまかそうとしておる。はしなくもこれが英国で問題になったのであります。英国は違うということが問題になって、与党議員質問に立って——野党ではない。しかも政府もまたこれは池田総理答弁が違うじゃないかということを今日は認めておるのです。あなたが了解をつけたから英国の方は了解するかもわかりませんけれども、この速記は明らかに違うのであります。言いかえるならば、あなたは英国訂正の申し入れに対して訂正をしたことであります。そこで私がお尋ねしたいことは、国会に対してはこの発言をどうなさるのか。この発言について国会に対してはどうされるのかということであります。
  20. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 あらためて申し上げます。私の三十日の本会議における答弁は、ただいま申し上げましたごとく、北京政府代表権について論議することをたな上げした、この事実を言っておるのでございます。そういうふうに私はお考え願いたいと思います。
  21. 野原覺

    野原(覺)委員 そうなれば、この速記取り消してもらわなければならぬのであります。どこからどう読んで、裏返して読んでみましても、そのようにはとれないことになっておるのであります。あなたの真意がそうであるとするならば、この発言、三十日のあなたの御答弁というものは、あなたの真意とは違った御答弁になっておるのであります。外交上、国際上大きな問題でございますから、私は何もあなたのあげ足をとってどうこうしようとは思いません。率直にこの点は言葉が足りなかったとか取り消される方が最も望ましいのではないかと思うのでございますが、いかがでございますか。
  22. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 ただいま申し上げましたのが私の真意でございます。もしそういうふうにとれないとされるならば、皆さんのお考えによりまして取り消してもよろしゅうございますが、私の考え方は現段階においては代表権認めることにつきまして消極的態度をとっている、こういうことを言っておるのでございます。
  23. 野原覺

    野原(覺)委員 事あるごとに総理は、英国北京政府国連加盟に対する態度について表明をされておるのであります。いつでございましたか、あなたは内閣記者団との会見の際にもそういうことを申しておるのであります。従ってこれは私の考えるところによりますと、やはり三十日に答弁をされたということは、この当時においては英国北京政府国連加盟については反対であるのではなかろうかと考えておったのではないか。ところが今日イギリスから抗議をされて了解を取りつけるというようなことになったようでございますが、この点はいかがでございますか。あなたが一月のいつでございましたか、期日は忘れましたが、内閣記者団に対する談話は三十日の答弁と全く同じことになっておる。従って私は、総理としては英国態度は、北京政府国連加盟には反対ではないかと思っておったのではなかろうかと思うのであります。それは場合によっては取り消してもよろしゅうございますがということでありますが、そうであるとするならばあなたの勘違いであります、あなたのはき違いであります。英国態度についてあなたの認識が十分でなかったということになるわけでございますから、三十日の答弁のこの個所については、取り消すなら取り消すとこのようにはっきりした方が、英国側においても了解する場合に快く了解ができるのではないか。そうであるならばこれは私どもまたいろいろ国会において話し合いをしなければならぬかと思うのでありますけれども国会の方も問題が解決するのではないか、このように思いますので、私はあなたに好意的にお取り消しになってはいかがでございますかということを申し上げておるわけであります。もう一度お尋ねいたします。
  24. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 記者会見におきましてイギリス政府中共政府を承認しておる、しかし国連への代表権認めていない、こういうことを申しました。この意味もやはりたな上げ論賛成しておる、こういうことを表わしておるのであります。今速記を見ますと、「採決の結果、現政府考えは、これは認めるべきではない」。この間に私はこういうことを、今までの態度を変えることを認めるべきではないというふうな解釈にしていただいたらいいと思います。私は、イギリスが承認し、また考え方として、理論的に代表権認めるべきであるというふうな議論のあることも知っております。ただ現段階においてはそういう結果になっておるということを言っておるのであります。
  25. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたはまた重大な発言をされたのであります。私はできるだけこの問題を解決したいと思って申し上げておるのにかかわらず、あなたのただいまの発言速記を見ればわかるのでありますが、実に重大な発言をされておるのであります。英国国連加盟認めるべきでない——一月二十八日の記者会見で、あなたはイギリス中国を承認しておるが、国連加盟認めていない、国連加盟を承認していない、こういうあなたの御認識が間違いであります。国連加盟はなるほどたな上げ論賛成をいたしました。だが、この御認識が間違いであります。だから、これが保守党の中で問題になってきたのです。なぜ問題になってきたかといえば、イギリス政府の終始一貫した態度は、中国国連加盟させるべきだが、中国国連加盟すればアメリカ国連から脱退をする、あるいは国連を破壊することになるので、忍耐強く加盟に努力すべきだ。英国態度中国国連加盟を承認した態度であります。承認するという積極的な態度であります。反対ではない。認めるべきではないという消極的な態度ではないのであります。反対はどこにもしていないのであります。このことで実はイギリス労働党から去年の十二月の十二日に不信任案が出た。イギリス労働党の出した不信任案の要旨は、中国国連加盟させることのできなかった政府を信任せずということであったのであります。これに対して与党側討論あるいは政府答弁というものはいかがであったかと申しますと、国連加盟させるべきだ、国連加盟させるという政府態度は終始一貫をしておるのだ、けれども国連に今加盟させるということに、英国がそういう具体的な行動に踏み切りますと、自由主義陣営が割れるじゃないか、だから慎重にやるのだ、こういうことであります。英国態度国連加盟賛成であります。反対ではないのです。ところがあなたの三十日の本会議答弁速記というものは、明らかに英国反対だということになっておるのでありますよ。だからあなたが了解を取りつけてイギリス政府了解をしたというならば、それでもよろしい。しかし国会をどうしてくれるんだということを私は言っておる。だからこの際いろいろお考えになられて、速記も御検討になられて、適当な機会に、この予算委員会で御答弁ができないならば、本会議を開くなり何なりして、この速記についてはすみやかに取り消し措置があってしかるべきではないか、このように思うのであります。   〔「好意ある質問ですよ」と呼ぶ者あり〕
  26. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 御好意ある質問とはよくわかっておりますが、私の気持はただいま申し上げましたように、また最近におきましてもイギリス外務大臣は、中共認めるということと、そして国連をごちゃごちゃにするということと二つを考えると、今までの態度をとってきたのだということ、結果において代表権認め会議につきましては消極的態度をとった過去の事実を言っている。その消極的態度を変更することはしない、こう私は考えておったのであります。従いまして、ただいま申し上げることによって御了承いただきたいと思います。
  27. 船田中

    船田委員長 この際関連質問を許します。横路節雄君。
  28. 横路節雄

    ○横路委員 総理にお尋ねをしますが、これは非常に重大な問題ですから、はっきりしておきたいと思うのです。  ただいま野原委員からもお話がございましたように、去る一月三十日の衆議院本会議におけるわが党の加藤勘十氏の質問に対する総理答弁は、「昨年の暮れ、北京政府国連代表権を持つことについて論議がかわされました。採決の結果、現政府考えは、これは認めるべきではないという結論に達したのが、昨年の暮れでございます。」こうなっておるのです。この総理答弁は、イギリス政府は、国連に中華人民共和国は加入さすべきでない、代表権を持つべきでないのだというのがイギリス政府考えで、それはそのまま認められたのだ。私たちがお尋ねをしているのはこの点なんです。この点は、イギリス政府考えに対する総理の見解は明らかに間違いだ。だから私たちが今お尋ねしているのは、イギリス政府は中華人民共和国は国連に加入さすべきだという基本的な方針には変わりはないのだ、この点を一体総理はお認めになるのかどうか、この点をまずお尋ねをしたいのです。
  29. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 それは先ほど申し上げておりますように、北京政府を承認しておるのでございますから、理論的にいえば、国連加盟認めるという趣旨が理論的だと思います。しかし実際問題といたしましては、先ほど来申し上げましたように、代表権云々する、論議する会議に対しましては、消極的態度をとっている、この事実を言っておるのでございます。認めるべきではないということは、ただいま申し上げましたように、今までの消極的態度を変更することを認めない、こう御了承願いたいと思います。
  30. 横路節雄

    ○横路委員 今総理は中華人民共和国をイギリスは承認している。従って理論的にいえば、中華人民共和国は、イギリスとしては国連に加入さすべきだ。しかし現実には加入することには反対だ、理論的に当然そうなるであろうから、自分考えは、イギリスは中華人民共和国の国連加入は消極的なんだ、こういうように御答弁なさいましたが、そうではないのです。この点がイギリス国会で問題になって、先ほど野原委員からも——これは小坂外務大臣の説明も私は足りないと思う。昨年の十二月十二日、イギリス労働党下院に中華人民共和国を国連に加入させることのできなかった政府は信任できないというので、現政府不信任案を出した。これに対して、政府はこう言っているのですよ。中華人民共和国は国連に加入させるべきだが、中華人民共和国が加盟すれば、アメリカ国連から脱退し、国連を破壊することになるので、忍耐強く加盟に努力すべきだ。この前提は中華人民共和国の国連加入は、イギリスとしては全力をあげて努力をするのだ。何も理論的に正しいばかりではない、現実にそういっている。ただ今、去年の秋の総会でやれば、アメリカ国連から脱退をして、国連の破壊を招くことになるおそれがあるから、たな上げしたのだ。なおこのとき同じ十二日の日に、イギリス下院では、ゴッドバーという外務政務次官によって、中華人民共和国は国連で議席を与えるべきだというイギリスの見解をその際にも表明しているのです。だから理論的ではないのですよ。それをあなたは、日本政府は、池田内閣は、中華人民共和国は承認してない。中華人民共和国の国連加入にはあなたたちはいまだ反対なんだ。その理屈をつけるために、イギリスは中華人民共和国は承認しているが、国連には加入させないのだ。それをわざわざあなたはその理論の裏づけとして出しておる。それが間違いであるということを私たちは今指摘しているので、今あなたの言うように、これは理論的にそうなるであろうから、そういう意味では消極的なんだと言う。それは全く間違いです。これはあなたの速記は間違いですよ。ですから、ここで率直に、イギリス政府としては中華人民共和国の国連加入には、政府としては当然考えているし、その努力をしているのだ。この点については、あなたお認めになられて、本会議答弁速記を御訂正にならなければだめですよ。私はやはり総理は折り目を正すと言ったのですから、政治の折り目を正すということは、間違いは間違い、言い過ぎは言い過ぎ、訂正訂正としておやりになることですよ。この問題は率直になさった方がいいのです。
  31. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は、イギリス政府が今お話のように、中共にいずれは代表権を持たすべきだという考えで進んでおることも承知しております。ただ、ただいまの現実の問題としては、今のたな上げ賛成をしておるわけでございます。これを言っただけでございます。従いまして、もしあなた方の方で訂正しろといえば、こういう意味でございますということを申し上げます。それはイギリス政府中共を承認しております。そうしてまた国連代表につきましても努力しようとしております。しかし現実の問題としては、たな上げ賛成投票をしておるのでございます。日本は承認しておりません。そうして今後は慎重に世界の情勢を見ながら弾力的に考えていくというように御了承を願います。もしそれが前の分と違っておるということならば、前のが足りなかったのですから、そういうふうにお考え願えるように訂正してもよろしゅうございます。私の真意はそれでございます。
  32. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、総理お答えはだんだん率直になってきた。訂正するというなら訂正しますというのですから。そうするとここの総理お答えは、何といっても説明の断わりがないのですから、昨年の暮れ、北京政府国連代表権を持つことについての論議をかわされたが、採決の結果は、現政府考え認めるべきではないという結論に達したのでございますという、これは間違いでございますから、訂正しますなら訂正します、もう一ぺんはっきり言って下さい。
  33. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私はただいま答えたような意味でございますから、そう御了承願いたいと思う。それで訂正するかしないかは、これは委員長あるいはなんの方で、補足説明をしたのでございますから、そういうふうに御了承願いたいと思います。
  34. 横路節雄

    ○横路委員 総理訂正するかしないかはというのではなしに、だれが読んでみても誤解を生ずるわけです。だから、ここではっきりと、訂正します、こう言われた方が、私は問題はあとに残らぬと思う。
  35. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私の考えておる意味は、横路さん、おわかりいただきましたか。イギリス政府は承認し、そしてまた国連加盟代表権を与えることについて努力しておりましょうが、しかし現実の問題としては、そういう段階に行くことには反対しております、こういう意味でございます。従いましてもしそういうふうにとれないとすれば、今のような意味でございますから、御了解願います。
  36. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 どうもいろいろ御論議があるところへ出てきて恐縮でございまするが、実はちょっとこれは外交問題で若干微妙なところがございますから、ただいまの御発言に関連して、正確に事実を申し上げた方がいいと思いますから、申し添えます。決してこれはお言葉を返す意味ではございません。事実を申し上げます。  まず十二月十二日の不信任案は、国連加盟の問題ではなくて、中共国連における代表権認めることのできなかったことについて政府を信任せず、こういうことでございます。  それからただいま御引用になりましたゴッドバー外務政務次官の答弁趣旨でございますが、念のために簡単に最後のところだけ、問題のところを読んでみます。「もしこのモラトリアムを解除しても多数の国が中共加盟を支持するかどうかは明らかでない。忍耐強く緊張の緩和を待ち、何時の日にかこの問題の得失を恐怖や激情にかられることなく、論議する時の来るを待つ以外に方法はない。われわれの求めるのは進歩である。米国新政権が成立すればできる限り早い機会に現政府と行って来たようにこの問題について討議したいと考えている。また中共政府自体とも現実的に話合ができるのではないかとも考えている。中共国連に入れることを推進することは目下のところ有害無益なので中共とのコンタクトを維持し、拡大する他の方法を探究してきた。中共にある代表部に大使をおくろうとも考えており、中共がこれに応じ相互的な取極ができるならば幸いである。」こういうことでございます。念のため申し上げます。
  37. 横路節雄

    ○横路委員 総理、どうも総理のお言葉を聞いていると、どちらにでもとれるように御答弁なすっていますが、やはり国際的に非常に影響が大きいですから、私は誤解のないように、衆議院本会議における加藤勘十氏に対する答弁のうち、中華人民共和国の国連加盟の件については、私の言については言葉が足りないからこの点は取り消すなら取り消す、こういうふうにおっしゃっていただきたいことが一つ。もう一つ、これは総理にお尋ねしますが、松平国連大使が帰ってきて、そうして一週間あなたたちと相談をする。そうしてこの秋の国連総会に、アメリカは、また中華人民共和国の国連加盟についての一年間のたな上げが出そうだ、こういうことについては政府のあなたたちの見解をただして帰るのだ、こういうように言っている。そこでまず私は第一番目に、先ほどの本会議における答弁について、率直に、やはり折り目を正すというのですから、ここで折り目を正して、取り消しをなさるなら取り消すということ……。
  38. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私の真意が十分尽くせなかったならば、ただいまお答えしたような意味におとり願います。これが訂正になるかどうか、私はこういう意味で申し上げておるのであります。それを訂正とお考えになるならば訂正とお考え下さってもよろしゅうございます。私の意味は先ほど申し上げた通りでございます。
  39. 横路節雄

    ○横路委員 今の総理答弁では、この問題は解決しないのです。それからせっかくわれわれが、野原委員からも言っているように、われわれとしては好意的に総理がみずから善処されるように要求したのに、あなたたちが勝手に解釈できるならばそう解釈したまえということでは、われわれは納得できないのです。なおこれは私は関連ですから……。
  40. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 あなた方勝手に解釈なさいというのではないのでございます。そういう意味におとり願いたい。だからそれが訂正ということなら訂正でよろしゅうございます。こういう意味です。訂正でよろしゅうございます。ただ私の考え方はこういう考え方であったと申し上げるのであります。
  41. 野原覺

    野原(覺)委員 この問題につきましては、横路委員から率直な取り消しの要請を重ねていたしましたけれども、私の意味はそういう意味だから、訂正と理解するならばそれでもよろしいという実にあいまいな御態度であります。私はこれは残念でならぬのであります。国際的な問題でございますから、私ども総理答弁のあげ足をとって、いろいろとここで問題にして紛糾を来たそうなどとは毛頭思っていないのであります。私は英国国会であれが問題になった。日本の真意が疑われておる。日本という国は、日本の政府英国政府を正しく理解していないではないかと国会で問題になったわけでございますから、この予算委員会の席上で、総理が、実はこの個所については間違いであったから、私の言葉が足らなかったから取り消すのだ、こういうことになりますと、英国政府は、この問題については私は釈然とすると思う。話をつけて了解を求めたといいますけれども、出先の大使はあるいは了解をされたかもしれない。しかしながらあなたのこの国会における答弁速記英国に送ってみなさい。野党において、与党において、これはだめじゃないか、やはりそう言って、これを取り消していないなら問題が残るじゃないかということになるのであります。  私は大事な点でございますから、もう一度重ねて申し上げますが、あの個所はどう考えても、これは文章構成からいっても、あなたの真意を伝えていないのであります。あなたの御真意はわかりました。その御真意をあの文章は表現していないのであります。いかがでございますか。
  42. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 外務大臣からの通告によりますと、今朝イギリス政府におきましても了承したということでございます。  それから第二段の本会議での言葉が足りなかった。足らぬ点があるかもわかりません。しかし私の真意はこういうことでございますとお話し申し上げたのであります。では前と違うということになれば、それでは訂正しましょう。前と違うというなら。ただ真意はこうであったということで御了承を願いたい。それでは訂正ではないかといえば、訂正とお考えになれば訂正でよろしいのでございます。ただ私の気持はこういう気持でございます。あなた方の了解を得ればいいわけであります。
  43. 野原覺

    野原(覺)委員 それでは次にお尋ねをいたしますが、総理がただいまお認めになられましたように、英国は、中華人民共和国政府国連加盟させるべきだ、実はこういう態度で終始一貫してきておるわけであります。このことについて私ども社会党としても、いろいろの機会に、本会議委員会で、総理にいろいろお尋ねもし、御要請もして参ったのでございますが、私は中華人民共和国政府国連にいつ加盟させるかという時期は、なるほどいろいろな世界の状況を見なければならぬでございましょうから、言えないでありましょうけれども国連加盟させなければならぬというその時期が近まりつつある、いずれは国連加盟させなければならぬであろうというお考え総理はお持ちでございましょうか、お尋ねいたします。
  44. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 世界の情勢を十分検討いたしております。しかし私は、いかなる方法が最も世界の平和、ことに極東の平和に貢献するかという問題につきましては、施政方針で申し上げましたごとく、重大な問題として考えておるのであります。だが今それではどうするかということにつきましての分は、慎重に、しかも弾力的に考えて参ります。前向きの考え方でいく。中身は今のところ言えません。イギリスのように承認しておる国でも、この問題につきましては、なかなかむずかしい、国連をこわすか、あるいは中共の代表を認めるか、非常にむずかしいことがある、こう言っておるのであります。ことに私としては、今具体的にどうこうということは申し上げかねることを御了承願いたいと思います。
  45. 野原覺

    野原(覺)委員 いつかは加盟させなければならないというお考えを持っておられるようにも受け取るのでございますが、いかがですか。
  46. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は具体的には申し上げられませんので、施政演説あるいはここの御答弁で一応御了承願いたいと思います。
  47. 野原覺

    野原(覺)委員 この問題は、いずれ外務委員会あるいはその他の機会になお私どもは追及をして参らなければならぬと思うのであります。  そこでこの点についての最後に申し上げておきたいことは、先般総理は、国という不穏当な発言をなさった。それからまた今度は、この英国国会で問題になりましたような発言も出てきておるわけであります。私はこういう点について、やはり今後は御注意なさった方がよかろうと思うのであります。この点を念のために申し上げておくのであります。  次にお尋ねしたいことはILOの問題でございますが、これは文部大臣にお尋ねをいたしたいと思うのであります。文部大臣は、一月二十日の記者会見でございましたか、ILO脱退辞せずという発言をなさったのであります。私は非常な御良識のある文部大臣にしては不穏当な、不見識な発言ではないか、これは荒木さんのまさか本意ではなかろうと思うのでございますが、実際のところはどういうことであったのでございますか。この点についてお伺いいたします。
  48. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えいたします。去る一月二十日、文部省の記者会見におきまして、いろいろと今後起こるであろう仮設的な質問が続出いたしまして、話がはずみ過ぎたものでございますから、新聞ごらんいただいたようなふうにとれることを申したことは事実でございますが、しかし考えてみれば、率直に申してまことに遺憾千万であり、不用意であったことを考えまして、そこでその翌日の記者会見で、また私の真意と言い過ぎの点を釈明をいたしまして、遺憾の意を表した次第であります。なおまた先日参議院の本会議で御質問がございまして、同様の趣旨お答え申しておきました。遺憾千万に存じております。
  49. 野原覺

    野原(覺)委員 非常に率直な御答弁で、私はその点には敬意を表したいと思うのでありますが、あなたの御答弁の中に、遺憾千万であったということでありますが、どういう点が遺憾であったか、これを重ねてお尋ねいたします。
  50. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 新聞報道されました事柄でございます。具体的に繰り返すことすらも実はいかがかと思いますが、ILOがともすれば共産圏の代表にひっかき回されておると表現されておりました。さらには最悪の場合には脱退を辞せずというふうなことを言ったというふうに表現されております。特にその二点について私は恐縮に思っております。
  51. 野原覺

    野原(覺)委員 取り消したならば私は問題にしないのであります。ところがただいまあなたの御答弁にもございましたように、取り消しはなさらないで釈明をなさっている。言いわけをなさっている。この点が私はいささかふに落ちぬのであります。どういう点が問題があるかという私の問いに対して、あなたはILOがソ連からひっかき回されているという点が一点、もう一点は、ILO脱退辞せずというようなことは不穏当だ、この二点をお示しになられたのでございますが、これは確かに問題の個所であります。この個所は大へんなことです。ILOというものは、ソ連にひっかき回されていないことは、お隣に石田労働大臣がおられて、よく御承知なんです。これは天下周知の事実なんです。ILOというものは、西欧資本主義国家が最も力点を置いているところの国際労働機構であります。共産圏はここでは全く活動していないのです。その点をあなたはソ連からひっかき回されている、こう言う。私はこういうようなことは、単なる釈明ではいかぬと思うのです。大へんなことなんです。あなたが一市井人であるならば問題はございますまい。これは失言で済みます。しかしながらあなたは文教の長官です。文部大臣です。政府の閣僚が事実と違ったようなことを記者談話で発表する。記者談話というものは、これは今日の社会機構のもとでは国民に話すようなことであります。そういうような考え方であなたが文教行政をやっているから、問題が次から次と起こるのです。あなたのやり方を見ていると、そういうものなんです。だから私はこの点は実はもう少し追及しなければならぬのであります。あなたは総理大臣から注意され、外務省から抗議をされ、労働大臣からも、亀井労働次官があわてて文部省にどなり込んで、何ということを言うのだ、こういうことになって、あわてにあわてて、ああいうような釈明という形をとられたに違いないのであります。従ってどういうわけであなたは、ILOはソ連にひっかき回されているということを言われたのか、あなたは言いわけを言っておりますけれども、何か根拠があるに違いない。全くILOについては何も知らなくて、全くの無知で、ILO精神がどんなものやら、ILOというものがどういう組織運営をなされているか何も知らなくて、あなたは新聞記者団に平然と談話をされたのか、そのどちらかだろうと思うのでございますが、いかがですか。
  52. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えいたします。遺憾千万であると申し上げたことは、取り消す以上のことであるという気持で申し上げました。単に取り消しで済むものでもあるまい、遺憾であったという意思表示をいたしたつもりでございます。ILOのおい立ちの記、概略ながら知らないわけではむろんございませんでした。ただ総会等において各国代表が現われますと、共産圏代表が入ってきますと、どっちの代表なんだという半畳が飛ぶということはうわさに聞いております。そんなふうなことが念頭にあって、つい申しましたことがひっかき回しているのだというふうに印象づげたと見えまして、活字になった。そのことを私は恐縮に思っております。以上お答えいたします。
  53. 野原覺

    野原(覺)委員 実は私はあなたの平素の御発言に対する、特に文部大臣になられてからの御発言に対する反省の度合いがいかがなものかと思っていろいろお聞きしておるのであります。あなたはILOについては知っておったのだということなんですが、知っておったらあのような発言はできないはずであります。知っておりながらあのような発言をするということは、ILOを侮辱することなんです。日本の国際的な信頼を傷つけることであります。ILOは国際連合の機関なんです。ガットの総会等いろいろ日本は国際的な会合に顔を出しておるわけでございますが、ILO脱退辞せずというようなことを平然として言われるということになりますと、日本の国際的な信用というものはどうなるのでございますか。あなたは釈明をいたしました。釈明をしたのだから一切は済んだのだ、こういうようなお考えのようでございますけれども、私は簡単にこれは済まぬのであります。しかもあなたがもしILOを知らなかったのだということであれば、知らずにあのような発言をするということは、これまたその軽率のそしりを免れぬのであります。  そこで総理大臣にお尋ねをいたしたいのでございますが、あなたの閣僚のお一人である文部大臣が、ILO脱退辞せずというような発言をされたことについて、あなたはどのように考えておられますか。
  54. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 少し言い過ぎだと思って注意をいたしました。
  55. 野原覺

    野原(覺)委員 少しの言い過ぎでございますか。総理の御答弁を聞きますと、少し言い過ぎだということでございますが、これはそういう簡単なものではないと私は思うのです。少しの言い過ぎでございますか。これは実は大へんな問題がひそんでおると思うのであります。いかがでしょう。
  56. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 これは文部大臣が言っておりますように、ほんとうに申しわけない、こう言っておるのでございます。私はそれ以上これを追及しようとは思いません。
  57. 野原覺

    野原(覺)委員 私は総理大臣が文部大臣に対してどのような注意をされ、どのような反省を求められたかは知らぬのであります。しかしながらこれはもう総理大臣がよく御承知のように、日本は国際協調の立場をとっていくということに憲法はなっておるし、同時にまたあなたの外交方針の基調というものは、国際連合に重点を置くのだということであります。これは日本の国策なんです。日本の国家の基本的な方針であります。それに対して文部大臣が脱退辞せずと言うのであります。これを文部大臣が釈明をしたから、もうそれで事は済んだのだ、そういう涼しい顔であなたが事をおさめられるということはいかがなものかと私は思うのであります。ほんとうの話はどうであったのか。あなたは文部大臣にどのような注意とどのような反省を求められたのか。これは求められたに違いないのでございますから、承っておきたいと思います。
  58. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 あの記事を私、新聞記者から聞きまして、それは変なことを言ったものだなとこう言った。そして会う前に釈明、取り消し、陳謝の意味を言っておる。それからその後会いまして、だいぶひどいことを言ったが、注意せにやいかぬ、このくらいのことの注意を与えたのであります。
  59. 野原覺

    野原(覺)委員 重ねて総理にお尋ねをしたいと思いますが、荒木文部大臣は日教組となかなか会おうとしないのであります。会わないのであります。日教組というのは、荒木文部大臣に言わせますと、暴力団の集団だ、こういうことも申しておるのでありますが、日教組は全国の教育者の作っておるところの組合であります。その組織人員は五十万といわれ、六十万といわれておるのであります。全国の教員の作っておるところの組合に対して、荒木文部大臣が会わない。このことは、これは総理のお考えでございますか。池田内閣の統一的な方針として、そういうお考えに立っておられるのかどうか。日教組とは会わなくてもよろしいというような考えに立っておるのかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  60. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 文部行政につきましては、文部大臣にまかせておるのでございます。文部大臣がどういう理由で会わないかということは、私も演説その他で聞いております。私はまあしばらく様子を見よう、こういうので、文部大臣にまかしておるのであります。
  61. 野原覺

    野原(覺)委員 文部行政は文部大臣にまかしておるということで、あなたはしばらく様子を見ようということだということでございますが、私はこの問題は非常に重大に考えております。文部大臣にお尋ねいたしますが、あなたはどういう根拠で会おうとしないのか。何か会ってはいけないという法的根拠でもあるのですか、お尋ねいたします。
  62. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えいたします。御承知の通り日教組という全国組織の団体は、むろん憲法上結社の自由権に基づいて存在しておることは間違いないのでありますけれども、ただ文部大臣という立場で団体交渉をする相手方ではない、そういう意味で、日教組の代表者と会いますことは違法である、かように考えて、その立場からはお目にかかっておらないのであります。しからば団体代表者でないということで、団体交渉でないということで、事実上会うか会わぬかの問題は、これは実際問題だと思います。会おうと会うまいと自由だと、極端に言えば言えないこともない。もし日教組のよって立つところの倫理綱領が、一般国民が見てすなおに是認できるものであり、かつまた日教組結成以来の行動が、万人が認めるような教育の中立ということを厳粛に守り続けておる団体でございますならば、法律上の団体交渉の相手でなくてもお目にかかることはあり得ると思いますけれども、当面私はお目にかからない方が適切だと存じまして、お断わりをしておるのであります。
  63. 野原覺

    野原(覺)委員 文部大臣、あなたは大へんな答弁をされたのだが、会うことは違法だ。会うことが違法だというのは、どういう法的根拠があってそう言うのですか、お尋ねいたします。
  64. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。野原さんよく御承知でございますように、日教組の構成員たる教職員は、地方公務員でございます。地方公務員は地方公務員法に基づいて、明らかに地域職員団体を作る権利が与えられております、都道府県、市町村において。そしてまた団体交渉権も法律上認められております。ですから団体交渉という立場ならば、地域職員団体の立場において、都道府県、市町村の教育委員会と法定事項について交渉する。また場合によっては一種の協約もできるような道が開かれておると承知いたしますから、その範囲内ならば、これはむろん文部大臣がかれこれ申し上げる立場ではございません。それが現在の教育制度と申しますか、教育公務員に対する結社の自由ないしは団体交渉権の制度上の限界だと思います。制度上から申し上げれば、先刻申し上げましたように、文部大臣という立場は全国組織の任意団体たる日教組の代表者と団体交渉をする権限も義務も与えられていない。だから団体交渉という立場でお目にかかることは違法だ、こう申し上げたのであります。
  65. 野原覺

    野原(覺)委員 抽象的な法律の解釈論みたような御答弁を私は要求していないのです。一体地方公務員法の何条にそういうことがあるのか、お尋ねいたします。どこにあるか、その条文を示してもらいたいということを聞いておるわけであります。
  66. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。地方公務員法第五十一条ないし五十五条かと記憶いたします。正確なところは政府委員から必要ならば申し上げさせていただきます。
  67. 野原覺

    野原(覺)委員 地方公務員法の第五十一条から第五十五条だということでございますが、一体そこのどこに全国の連合体としての日教組と文部大臣が会ってはいけないという法的根拠がありますか。文部大臣は、団体交渉の義務がないという法的な根拠がそのどこにあるのか。五十一条から五十五条というような間口の広いことではなしに、その条文を一つ指摘をしてもらいたい。
  68. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。憲法以下もろもろの法律制度のどこにも積極的に、文部大臣が日教組と団体交渉をしてはいかぬという消極的な規定も、あるいはすべきだという規定もむろんございませんけれども、私の承知しますところでは、制度上団体交渉という場合の交渉の相手方は、明確に法律に定まっておるというのが通例だと心得ます。そういう意味で、あくまでも地方公務員たる教職員団体の団体交渉の相手方はその任命権者であり、あるいはまた給与その他を具体的に決定し執行する相手方であるという意味で、地方教育委員会がこれに当たるという制度に従って行動すべきものと心得ておるわけであります。
  69. 野原覺

    野原(覺)委員 給与その他を具体的に決定すると言いますが、義務教育費国庫負担法というのがあることは文部大臣御承知の通りであります。義務教育費国庫負担法によれば、その半額は国が持つことになっておる。しかもあの義務教育費国庫負担法の給与費というものは、あの負担法から出されるところの金はほとんどが教員の給与に回るのであります。そうなれば文部省に対して、政府に対して自分の賃金について、給与について交渉する場合には、当然全国団体というようなものが文部大臣に交渉すべきではないのですか。あなたの言われた今の御答弁からいって、それはいかがですか。
  70. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。お説でございますが、政府が、文部省が窓口としまして義務教育費国庫負担法に基づいて、実費の半額をお世話はいたします。これは法律上決算でもって決済するという制度になっておることで明らかでございますように、その必要経費の二分の一の国家財政支出のお世話をする窓口だ、そういう立場であろうかと思います。半分は地方公共団体が負担しまして、憲法にいうところの義務教育は無償とするという結果に相なるわけでございますが、あくまでもそれは経費の支出のお世話役であって、地方公務員法にいうところの給与、勤務条件その他の問題についての団体交渉の相手たるべき立場ではなくて、おっしゃるような意味においては、あくまでも地方教職員団体として団体交渉の相手方たる地方教育委員というものでなければならないと心得ております。
  71. 野原覺

    野原(覺)委員 その点は非常に大きな詭弁であろうと私は思う。そこで私は、この問題はいずれまたあとの質問に関連がございますからお尋ねをいたしますが、大学の教職員組合というのがありますね。国立大学の教職員の組合は文部大臣と交渉する権利はあると思います。これはいかがですか。
  72. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。国立学校の場合は、地方公務員たる小中学校等の場合とむろん相手方は違うことは当然だと思います。
  73. 野原覺

    野原(覺)委員 そうなりますと、文部大臣と交渉する権能を持っておる。文部大臣は国立大学の教職員組合ともこれは交渉しなければならない。国家公務員法に明記しておるわけであります。国家公務員でございますから、大学教職員組合の相手方の当局とは文部大臣でなければならぬことは、これは言うまでもないのであります。その国立大学の教職員組合は日教組に加入をしておる。そうして大学教職員組合が自分たちの代表として選んだところの代表が日教組の役員であります。ILOの精神からいうならば、これは私は当然大学の教職員組合の諸君が、大学の教職員諸君が民主的に選んだ代表者と会わなければならぬかと思うのでございますが、これはいかがですか。ILOの精神に合わないということになると、大へんな矛盾を来たすわけですが、この辺はいかがですか。
  74. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。最初ちょっとおっしゃいましたことについて付言さしていただきますが、国立の大学の場合は地方公務員である教職員の場合と違うと申し上げました。違うことは確かでございますが、文部大臣が直接の任命権者、あるいは給与決定権者ではございませんので、やはりその管理の立場にあるところの、大学であれば大学長というものが相手方であると心得ます。事実問題として会う会わないの問題は、日教組の場合と同様であろうかと思います。さらに日教組という、憲法に従って結社の自由権のもとにでき上がった日教組の代表者というものと当然会うことが、ILOの趣旨であるというふうなお話でございますが、趣旨はあるいはそうかと思います。思いますけれども、その趣旨を具体的に加盟国それぞれに適用します場合、各加盟国の主権の立場において自主的に何がしかの相違があることも、これは当然であるかと思いますが、日本では御案内のごとく教育は中央集権は適当でない、地方分権の立場から基本的な考えを打ち立ててやるべきであるという制度になっております。そのことからいたしまして、先刻来申し上げるような制度上のことを申し上げておるわけでございます。ですから、あくまでもILO精神にのっとって考えましても、日本という国においては先刻申したように拒否するのが合法的である、適当である、こういうふうになっていると思います。
  75. 野原覺

    野原(覺)委員 大学教職員組合の交渉の相手は大学の学長とか学校当局だということで、あなたはお逃げになりますけれども、大学の教職員が国家公務員である限り、国家公務員法の九十八条に明記をしておるのであります。人事院の定める手続に従って、国家公務員は国家、国家の代表、政府の代表、国家とはこの場合には文部大臣であります。文部大臣が会わなければならぬことにこれは明記されておる。この点は大きなあなたの認識の違いであろうかと思う。そうなりますと、その大学の諸君が自分たちが選んだ代表として代表が出てきた場合には、その代表とは会わなければならぬのが、このILO九十八号の私は精神であろうかと思うのです。ILOの九十八号というのはすでに日本政府は批准をしておるのです。こういう点から見て、確かにこれはあなたは法的根拠があって、文部大臣が日教組に会う義務はないのだと仰せられますけれども、法的根拠はどこにもないのであります。あなたが会わないという法的根拠はどこにもないのであります。会わなければならぬ。  私は労働大臣にお尋ねいたしますが、ILOの八十七号が批准をされましたならば、もとよりこれは日教組を組合として認めていかなければならぬ。それから同時にまた八十七号を批准した場合には、団体交渉の義務が文部大臣に生ずるのではないか、こう思うのでございますが、労働大臣はどうお考えになりますか。
  76. 石田博英

    ○石田国務大臣 ILO条約のただいま御指摘の九十八号では、公務員は御承知の通り除外されておるのであります。それから八十七号条約が批准されました場合は、これはいかなる人々によって構成される結社も自由が確立するわけでございます。しかしその場合、文部大臣がどういう団体と会わなければならないかという義務規定は、それから直ちに出てくるのではなくして、やはり八十七号条約で結成されたその結社がそれぞれの直接の相手方に対しての問題と相なるのでありまして、それが直ちに文部大臣が交渉に応じなければならぬということになるとは私は理解いたしておらないのであります。なお、公務員は公務員法、地方公務員法によりまして、労働組合法の適用から除外されておるのでありますから、これは直接には労働省の所管ではございませんので、結局その御判断は文部大臣の御判断によるのが正しいと考えております。
  77. 野原覺

    野原(覺)委員 ILOの九十八号で公務員が除外されておると言いますが、これは九十八号のたしか六条でございますか、それをあなたはさしておると思うのです。ところがILOの方で私どもが調べてみますと、あの九十八号の六条に書いておる公務員を除外するというあの公務員とは、地方公務員はささないということになっておるのであります。この辺はいかが理解しておりますか。
  78. 石田博英

    ○石田国務大臣 私の理解では、地方公務員を除外しておるというふうには理解いたしておりません。
  79. 野原覺

    野原(覺)委員 これは労働大臣がわからなければ労働省の事務当局でもよいのでありますが、あの公務員は、国の行政に従事する公務員というのが実は英文で書かれたところの法文になっておる。国の行政に従事する公務員とは国家公務員です。それを日本はどういう都合か知りませんが、公務員と誤訳をしたのであります。これは今度ILOで問題になる。国の行政に従事する公務員──フランス語の原文を見ても、私はフランス語はわかりませんが、原文は、これはやはり国家公務員という意味になっている。ILOの原文というものは、英文と仏文で書くことになっておるようであります。この点から見て、国家公務員だ。国家公務員ということにしなければいかぬものを、どういう都合か、日本の政府は公務員ということに誤訳をしておるというのであります。この辺はいかが労働省は理解しておりますか。
  80. 石田博英

    ○石田国務大臣 私は外国語に弱いものですから、外国語の解釈その他は事務当局からお答えをいたします。  私の理解では、法令あるいは条例その他によって待遇条件が保障せられておる公務員は、六条によって除外されるものと理解をいたしておるのであります。
  81. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ただいまお話にもございましたように、フランス語の方には、フォンクショネール・ピブリークという言葉が使ってあります。これは全般に公務員をさしますので、石田労働大臣のお答えになりました通り、正文でございます。
  82. 野原覺

    野原(覺)委員 その点は、あなたはフランス語がおわかりになるからそういうことを言われたようでありますけれども、英文では国の行政に従事する公務員とあるじゃありませんか。労働省の事務当局のどなたか答弁をしてもらいたい。国の行政に従事する公務員とは、国家公務員でなければならぬということなんです。この点が今日、労働法の学者から指摘をされておるはずなんです。これはどうなっておりますか。
  83. 石田博英

    ○石田国務大臣 条約の解釈は直接外務省の所管でございますから、外務省の解釈に従って労働省ではやっておるのでございまして、法文の解釈は外務省に御答弁を願いたいと存じます。
  84. 野原覺

    野原(覺)委員 この問題は、外務省では実は公務員だということで、これは言葉のやりとりに終わるでございましょうから、私は後日究明して参りたいと思うのであります。  そこで、労働大臣に重ねてお尋ねしたいことは、八十七号が批准されますと、連合体の代表と文部省は会わなければならぬということに、八十七号の第六条でございますか、明記されておる。これはあなたがお読みになればわかるように、八十七号の第六条には、「この条約の第二条、第三条及び第四条の規定は、労働者団体及び使用者団体の連合及び同盟に適用する。」と、こうあるわけであります。だから、この第六条によって当然これは連合体というものと交渉しなければならぬことになる。連合体は単位組合と同等の権利を持つというのがこのILO八十七号第六条の精神であるはずなんです。そうなれば、日教組という連合体は、都道府県の教職員組合が交渉権を持つならば、当然交渉権を持つべきなんだ。連合体は単位組合と同等の権利を持つわけでございますから。この点はいかがですか。
  85. 石田博英

    ○石田国務大臣 御説の通り、連合体も労働団体ということになるわけであります。ただそれによって直ちに文部大臣が、団体交渉、面会その他に応ずる応諾義務が直接的に生じてくるとは思っておりません。
  86. 野原覺

    野原(覺)委員 それで明確になりましたことは、ILOの精神からいえば、文部大臣はやはりその連合体の代表と会わなければならぬということであります。
  87. 石田博英

    ○石田国務大臣 私は、会わなければならないという応諾義務を生ずるものではないと、こうお答えしたのであります。
  88. 野原覺

    野原(覺)委員 応諾義務を生ずるものでないということは、あなたは国内法をさすのだろうと思うのであります。国内法がある限り応諾義務はないのだ、その国内法は地方公務員法だ、こういうことを言うのだろうと思うのでありますが、いやしくもILO八十七号が批准されましたならば、ILOの批准されたその条約の精神に矛盾する国内法は認めないというのがILOの建前でございましょう。あなたは本会議答弁で、国内法を尊重しなければならぬということがILOの精神だ、ILOにはそう書いておるのだ、だから国内法は尊重しなくちゃならぬのだ、こう言いますけれども、ILO八十七号八条によりますと、その第二項で、実はILOの条約の精神にそぐわない国内法というものはとるべきではないということがついておるのであります。それから見るならば、八十七号が批准されたならば、連合体が認められることになるわけでございますから、当然連合体を認めないところのそういった国内法というものは廃止されなければならぬもの、そうしなければILOの批准の意味はないのであります。いかがですか。
  89. 石田博英

    ○石田国務大臣 ILO八十七号条約が批准されました場合は、その八十七号条約に相背馳する国内法は、これは整理されなければならぬことは申すまでもございませんが、私がただいま応諾義務がないということを申し上げたのは、国外法との関連によって申し上げたのではないのでありまして、八十七号条約そのものから直ちに応諾義務を生ずるものではないのだということを申し上げているのであります。(「違法だ、違法だ」と呼ぶ者あり)違法であるとか違法でないとかいう言葉は使っておりません。  それからもう一つ申し上げます。八十七号条約の八条であったと思うのでありますが、それを今、私の本会議における答弁をお取り上げになったと思いますが、これは国内法を尊重しなければならないというような消極的な表現ではないのでありまして、労使の団体あるいは個人は、他の団体と同様に国内法に従わなければならないということが明記されておるということを申し上げたのであります。
  90. 野原覺

    野原(覺)委員 このことは、ILOの八十七号の第八条一項の「この条約に規定する権利を行使するに当っては、労働者及び使用者並びにそのそれぞれの団体は、他の個人又は団体化された集団と同様にその国の法律を尊重しなければならない。」これにあなたは重点を置かれておるのであります。これは法治国家の国民である限り当然であります。当然のことをこの八条の一項は規定しておるのです。ところがその第二項に、そこでその国の法律とはどんなものでなければならぬか、この条約が批准される限り、「その国の法律は、この条約に規定する保障を害するようなものであってはならず、」——いいですか、この条約に規定する保障とは何かといえば、ILOの八十七号の第六条によって、連合体は単位組合と認められるということなのです。「この条約に規定する保障を害するようなものであってはならず、また、これを阻害するような方法で適用してはならない。」だから八十七号が批准されたならば、あなたは当然に権利は生じないと言いますけれども、連合体を認めないような国内法というものは廃止されなければならぬのです。これはILOの精神からいって当然のことなのです。批准をしながらそういったILOの条約に違背するような国内法を残すということはできない。それならば批准の意味はない、このように思うのであります。
  91. 石田博英

    ○石田国務大臣 私が先ほど応諾義務を生じないと言ったことは、現在ある国内法との関連で言ったことではございません。八十七号の条約を批准しましても、その条約自身から生じてこないということを申し上げたのであります。  それから、単位組合と認められる、労働団体として認められることは申し上げました。しかし、文部大臣がその労働団体の代表と会わなければならないという応諾義務は、直接的に生じてこないのだということを申し上げたので、その団体が、たとえば……(「違法だ、違法だ」と呼ぶ者あり)私は違法とか違法でないという言葉を使っておりません。私の所管でございません。  それからもう一つ、八十七号条約が批准されれば、国内法はその精神に反するようなものであってはならぬから、それに合わせて整備をしなければならず、またそうでない法律の解釈も、その精神に合わないような適用や解釈をしてはならぬことは、私も先ほど申し上げましたし、お説の通りであります。
  92. 野原覺

    野原(覺)委員 この問題は、ILO八十七号の批准がこの国会に出るのかどうか。私はその時期等についてはまたあとでお尋ねをしたいと思うのでございますが、八十七号が批准される限り、これは考えておかなければならぬことであります。従って、地方公務員法の五十二条から五十六条、こういうような国内法があるから会う義務はないのだ、こう申されますけれども、ここがやはり問題がある。実は法的に問題があるだけではなしに、道義的に、政治的に問題が生じてくると私は思うのであります。文部大臣は日本全国の教員諸君となぜ会わぬのか、前の文部大臣の松田さんをあなたは見てごらんなさい。松田さんは、ひまがあれば会おうじゃないか、話そうじゃないか、君らと話すことによって自分は文部行政を考えていくのだ、そういう謙虚な態度で、常に教員諸君の意見をも聞きながら文部行政をやっていかなければならぬという態度で、松田文政というものは続けてこられたのである。ところが、あなたになってから、どういうものか高飛車で、先ほどのILOの失言ではございませんけれども、一体何をどう勘違いをされたのか、なかなか日教組とは会わない。会う必要がない、おれは会う義務はないのだ、こういうような態度で、一体一国の文教行政というものがなされていいかどうかということ、ここがやはり問題であろうと思うのであります。いかなる団体の代表とでも、自分の所管する限りは会おうじゃないか、話を聞こうじゃないか、こういう態度でいかなければならぬと思うのでございますが、これは総理大臣、あなたはどうお考えになりますか。
  93. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 日教組と会う会わぬの問題につきましては、所管の文部大臣がいろいろ考えておることと思います。そうして、会う場合におきましては、どういう問題について会うか。やはり今のような日教組のあり方では、文部大臣は会う適当な時期でないと考えておるのじゃないかと思います。
  94. 野原覺

    野原(覺)委員 今のような日教組のあり方では会う必要がないということは、これはどういうことですか、もっと具体的に言うと……。
  95. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほど文部大臣が言った通りに、倫理綱領その他につきましてだいぶ意見が違っておるようでございます。詳しくは文部大臣から……。
  96. 野原覺

    野原(覺)委員 倫理綱領その他で意見が違っておると言いますが、倫理綱領というものは組合が決定をしたところの方針であります。組合員諸君がこれでよろしいと納得して決定したのであります。それを文部大臣が、おれは気に食わぬから、政府は気に食わぬから、そんなものは認められない。だから会わぬのだ——これは労働大臣にお尋ねいたしますが、ILOをまた私は持ち出しますけれども、ILOの九十八号違反ではございませんか。組合が民主的に決定した方針が気に食わないから会わないということは、ILOで認めておりますか。九十八号は批准しておるのですよ。いかがですか、労働大臣。
  97. 石田博英

    ○石田国務大臣 組合の綱領、規約その他は、これはもちろん自主的に定められるものであって、それに対してどうこうと言うものではございませんが、私は所管外でもあり、倫理綱領というものを実はしっかり読んではおりません。従って、それについての私の批判はいたしませんけれども、先ほど申しましたように、地方公務員、国家公務員を含めて公務員、これは私そう理解しておりますが、これは九十八号の適用から除外されております。従って、文部大臣が教員の団体と会わなければならぬ義務を生ずることは私は考えておりません。
  98. 野原覺

    野原(覺)委員 そこで文部大臣にお尋ねをいたします。あなたは答弁しようとなさった都合もございますからお尋ねをいたしますが、組合の立てておる方針が気に食わないから会わないというのは、ILO精神から見てどうなるのですか。あなたはどう思いますか。   〔「文部大臣だ、文部大臣だ」と呼ぶ者あり〕
  99. 石田博英

    ○石田国務大臣 私は誤解を招くので申し上げますが、先ほどから私が申し上げておりますのは、ILOの精神、九十八号の規定は、地方公務員、国家公務員というものを含めて公務員、そう政府は理解しておりますが、それは除外しております。従って、文部大臣が地方公務員、国家公務員の団体と会う、会わないということは、それは直ちにILOの精神に反すると私は理解していないということをお答えをいたします。
  100. 野原覺

    野原(覺)委員 この点は速記に残ることでございますから、後日またILOに対してあなたが失態を来たさないように、今日ただいまからよく気をつけておってもらいたいと思います。これはILOの精神からいって重大な問題になる個所であります。  それから総理にお尋ねをいたしますが、あなたの施政演説の中に、このILO八十七号の批准についてお触れになっておられるのであります。本気で、この国会で、どんなことがあっても批准をするという熱意を持っておられるのかどうか。私どもはいろいろ案ぜられる点もなきにしもあらずでございますが、この国会で必ず批准をやるという決意があるのかどうか。それではいつ批准をやろうとなさっておるのか、政府はいつ提案をされるのか、その点をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  101. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 施政方針演説で述べた通りで、ただいま準備をいたしておるのであります。
  102. 石田博英

    ○石田国務大臣 ILO八十七号条約の批准の問題は、昭和三十四年二月、労働問題懇談会の答申に基づいて準備を進めて参ったのであります。この答申は、八十七号条約はILOの基本的な条約の一つであるから批准をすべきものだということが一点、いま一点は、それに伴って国内法の整備を行なうべきであるということが二点、第三点はその批准をするにあたって、あるいは批准してからあとも、労使の団体が国内法に従う態勢を作る、従うという建前を堅持するということが三点でございます。従って、そういう精神に基づいて、私どもは国内法の整備その他の準備を進めているのであります。  それから、本気で批准をするつもりかどうかというお話でありますが、政府の施政方針の演説の中にも方針を言い、そうして案がまとまって提出いたしました以上は、もちろん国会が批准をされることを希望するのであります。ただ、批准をするかしないかということは、これは今度は国会が御判断になることでありまして、私どもが申し上げることではございません。  それから、批准の案件の提出時期は、あとう限りすみやかにいたしたいと思って、鋭意努力いたしております。
  103. 野原覺

    野原(覺)委員 あとう限りすみやかに出していただきたいのであります。  なお、この際申し上げておきたいと思うのは、国内法の整備について、ILOの精神をそこなうような国内法の整備をなさらないように、そういうことをされますとまた国際的に問題が生ずるから、私は念のためにこれは御注意を申し上げておきたいと思うのであります。聞くところによれば、政府考えられておるところの国内法のあるいは廃止なりあるいは改正なりというものは、ILOの精神から見てどうかと思われるようなことがたくさんあるようにも私は思われますから、これはいずれ提案されたときに私どもははっきり意思を表明したいのでありますが、この点は今から気をつけておかれるように申し上げておきたいと思うのであります。  ILOの問題でもう一点だけ、これは文部大臣にお聞きいたしますが、日教組が今度提訴いたしました。あなたがなかなか会おうとしないし、あなたの文教行政というものがILOの精神に違反しているようにも思われるので、一体どういうことでございましょうかと日教組はILOに対して要請をしたのであります。できるならば政府に対して勧告もしてもらいたいという要請をしたのであります。これに対して、文部大臣は反論を出されておるのでございます。私はその反論を新聞で拝見したのでありますけれども、日教組が提訴したことに対する反論になっていない。これは故意にああいうようにされたのかどうか。たとえば、日教組が提訴いたしましたのは佐賀の事件というのをあげておる。愛媛の問題をあげておるのでありますが、佐賀の問題や愛媛問題というものが中心になっておるにもかかわらず、一言半句もそれには触れていない。そうして国民に日教組は暴力団体だというようなことを印象づけるような、そういうことばかりが実は示されておるのであります。これは何か意図するところがあるのではないかと思う。あなたの所見を承っておきたい。
  104. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。ことさらに意図する意思は毛頭ございません。実は正月の十五日までに答弁資料が到着するようにということでILOの方から照会がございまして、それだけには誠実に応じなければなるまいというので送りました。そのことを記者諸君が仄聞されまして、回答を出したのなら、その要旨でも発表すべきではないかという御要望がございまして、適当な時期には一つ発表しましょうということでおりました。たまたま参議院の本会議でも同じような御質問がございましたので、適当な時期が来たらばせめて発表したいと思っておるというお答えに応じまして、実は比較的簡単に考えておったのですけれども、承りますと、ILO関係の往復文書等は原則として外交上の秘密扱いに慣例上なっておるという趣がわかりまして、さりとて最小限度、発表できるものならば発表しなければならないような格好にもなっておりましたから、重ねてそういうことを関係省とも協議し、現地とも打ち合わせましたところが、要旨だけならよろしかろうということになりましたので、新聞ごらんの通りのことを発表したのであります。ことさらなる意図を持って発表したわけでは毛頭ございません。率直に私どもILOに答弁しましたのは、事実に基づいた根拠を示して、日教組のILO提訴が事実に反していると信ずるところを事務的に判断して送付したのでございまして、いわんやその要旨だけを発表しましたことに、ことさらなる意図はむろんございませんことを申し上げます。
  105. 野原覺

    野原(覺)委員 私が尋ねておりますのは、日教組の提訴したことに対する反論でなければならないのです。たとえば佐賀の事件とか、愛媛の事件というものをあなたは全然お触れになっておらない。こういう点が本質をぼかしておるのではないか。しかし、これはいずれもILOで審議されることでございますから、これ以上は申し上げません。  なお、文部省の反論の中に、教員の賃金は安くないということがあるのですが、ほんとうに安くないのですか、あなた、ほんとうにそう思っておりますか、これをお尋ねいたします。
  106. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 もっと給与をよくしたいと一方において思っておりますが、現実の給与状況を横の関係で比較してみますと、必ずしも私は悪くないと思っております。そのことを数字をもって回答にもいたしておるのであります。
  107. 野原覺

    野原(覺)委員 文部大臣、国際的に見てどうですか。国際的に見て、教員の賃金は高いか安いか、これはいかがですか。
  108. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。今のお尋ねの点は、事務当局で調べておるかどうかは存じませんが、私は存じません。
  109. 野原覺

    野原(覺)委員 いやしくも文部大臣は、事教育に関して重大な責任を持たれる方でありますから、教員が賃金を問題にして、給与を問題にしていろいろなことをやっておるわけでございますので、日本の教員の給与が国際的にどうであるかということくらいは検討しておってしかるべきでないかと私は思うのであります。  そこで、私はもう一度申し上げておきたいことは、一九五八年の十月にILOの教員問題専門家会議が実は結論を出しておるのであります。これはILOの機関であります。この教員問題専門家会議の決議は、日本の教員は非常に低賃金であるといって、実は各国の統計を出しております。これはお話にならないのであります。イタリアよりも低いのであります。それからまた勤務評定についても触れておるのであります。勤務評定というものは、労働者と協議して実施しなければならないにもかかわらず、労働者の意思を無視して勤務評定がなされるということは間違いではないか、こういうことをこの専門家会議結論を出しておる。それから、団体交渉についても、団体交渉権は認められなければならない、日本の全国組織である日教組は、当然その交渉相手は文部大臣でなければならない、こういうようなことも実は専門家会議結論を出しておるわけであります。こういう点も十分お考えになられて、今後問題に対処されまするように私は要望いたしておきたいと思います。  次に、続けて選挙に関する問題で若干お尋ねをしたいと思うのであります。池田総理にお尋ねしたいことは、あなたの施政演説の中に、清潔な政治ということが強く述べられておるわけでありまして、この点については田中織之進委員からも実は質問をしたのでございますが、私は、清潔な政治とは清潔な選挙でなければならないのではないかと思うのであります。ところが、今度の選挙を見ておりますと、まことに残念なことではございますが、検挙者は戦後最高であると書かれております。同時にまた、違反の中で、記録破りの買収選挙だと述べられておるのであります。私は委員長を通じてこの資料の要請をいたしましたが、その資料によってみましても、前回昭和三十三年の選挙とは比較にならないくらい莫大な、大きな違反を出しておるわけでございますが、この点について総理大臣はどのようにお考えになりますか。あなたの清潔な政治という考え方からいって、今度の選挙違反をどのようにお考えになるか、お尋ねいたします。
  110. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 選挙違反が非常に多かったことはまことに遺憾でございます。百日選挙といわれる今回の選挙で従来よりもたくさん出たといろことは、百日選挙が一つの原因であったかと思いますが、しかし、いずれにいたしましても、選挙違反がたくさん出たということはまことに遺憾なことでございますので、今後これを改めるべく選挙法の改正その他いろいろな措置をとっていきたい。たとえばこういうことの起こりますのは、候補者も何でございますが、一般国民に対しまして、選挙の公明が民主主義のもとであるということをよく理解していただくように、法律の改正にとどまらず、各般の措置をとっていきたいと思います。
  111. 野原覺

    野原(覺)委員 法務大臣にお尋ねをいたしますが、昨日私が請求いたしました資料について御説明を願いたいのであります。これは法務大臣が答弁できなければ柏村警察庁長官でもけっこうでありますが、どなたかこの説明をしていただきたい。
  112. 安井謙

    ○安井国務大臣 お答えいたします。前回の衆議院の総選挙におきまして、違反の件数は、一月十九日現在における数字は一万六千三百五十七件、三万一千六百三十一名となっております。これを罪種別に申し上げますと、買収が一万二千五百八十件、人員が二万七千五百四十六名、自由妨害が百八十四件、二百十一名、戸別訪問が一千八十件、人員が一千二百九十九名、文書図画の制限違反が一千八百十四件、人員が一千九百六十九名となっておる次第でございまして、目下指名手配で逃走中の被疑者は、三十三年五月の選挙におけるものが三名、三十五年十一月のものが三十六名、こういうことになっております。
  113. 野原覺

    野原(覺)委員 柏村警察庁長官にお尋ねいたします。一体この逃亡者でございますが、昭和三十五年の十一月選挙では三十六名も逃亡者がおるわけであります。一体警察はこの逃亡者たちについては本気に探しておるのかどうか。三十六名の逃亡者は、これはまさか外国に逃げておるわけじゃ私はなかろうと思うのです。選挙をやるものは、申し上げるまでもございませんが、選挙は勝たなければならぬから、若干の違反はあるでありましょう。しかしながら選挙を汚すようなへ民主主義を汚すような選挙があってよくないことは言うまでもないのであります。私は違反があったならば法のさばきを受ける、法の前に立って、違反があったかないか堂々とその法の審判を受けることが法秩序の確立ではなかろうかと思うのであります。そういう意味で、逃亡者というものは私はどうしてもこれは許すことができないと思う。この点について警察はどういう捜査をやっておるのか、承りたいのであります。
  114. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 お答え申し上げます。警察といたしましては、ただいまお話のございましたように、選挙違反に対しましては厳正にこれを取り締まる方針をもって臨んでおるわけであります。ただいま指名手配三十六名がいまだにつかまらないのは非常に手ぬるいではないかという御趣旨のように承ったのでありますが、今回の選挙につきましては、全国指名手配した者は百名程度に上っておるわけでございまして、逐次これを捜査をし、逮捕をいたして参ったわけでございますが、遺憾ながらいまだに三十六名が逮捕に至らない状況でございますが、警察といたしましては鋭意さらに追及を続けるつもりでございます。
  115. 野原覺

    野原(覺)委員 昭和三十三年の五月選挙で、この報告によりますと三名とあるわけでございます。三十三年五月といえば、今から三年前になるわけでございますが、この三名は三年たつもなお逮捕されていないのであります。百名くらいあったのが逐次逮捕されておるとあなたは答弁をされましたけれども、私ども考えでは、警察の逮捕捜査の状況というものはいいかげんな手かげんをしておるのではないかと疑われる節を持つのであります。右翼テロの問題で警察に対しては手きびしい批判が国会においても世論においても下されておるわけでございますが、一体この三名はどういうことになっておるのか。この点お尋ねいたします。
  116. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 お答え申し上げます。三十三年五月の選挙におきまする逃亡者につきましても、なお三名逮捕に至らないということは、まことに遺憾に存じておりますが、警察としましては鋭意捜査に当たっておるわけでございまして、決して手かげんを加えてこれを見のがしておくというようなつもりは毛頭ございません。
  117. 野原覺

    野原(覺)委員 警察庁長官、あなたはそこにおっていただきたいんですが、この三名はどなたですか。そうしてどなたに関係している方でございますか。お尋ねいたします。
  118. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 三十三年五月の選挙違反でいまだに逃亡しておりますのは、松川氏夫妻と伊藤肇という三人でございます。
  119. 野原覺

    野原(覺)委員 その関係している方、だれの選挙で松川氏夫妻、それから伊藤という人が出てくるのか。私は文書で出していただきたいということを要求いたしたのでございますが、文書では出せないから、質問ならば答弁するということもあったのであります。私はあえてお尋ねをいたします。それはどなたですか。
  120. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 御要望がございまして資料を提出すべき筋かとも存じましたが、やはり全部を出すということはいろいろ人権上の問題もございますし、今まで警察としましては選挙違反の全国手配者について公表をいたしておりません。従いまして、今まで今回の分についても出しておりませんわけでございます。従って、全貌を御披露することはお許しを願いたいと思いますが、ただいまたっての御要望でございますので、三十三年の分について申し上げますと、椎名悦三郎氏の関係者松川昌蔵同じく敏、それから三鬼陽之助氏の関係として伊藤肇の三人であります。
  121. 野原覺

    野原(覺)委員 総理にお尋ねいたします。私はあなたの清潔な政治ということについて心から共鳴をいたしますからあえてお尋ねをするのでございますが、清潔な政治とは清潔な選挙でなければならぬ、このことは総理もお認めであります。そこで私はあえてお尋ねをいたす。政治の姿勢を正すために清潔な政治ということを身をもって国民に範を示すためにあえてお尋ねをいたしますが、閣僚の中に昭和三十三年の選挙、昭和三十五年の選挙で選挙違反に問われておる——御本人ではありませんけれども、御本人に関係した方が今度の選挙では選挙違反に問われて逃亡者を出す、あるいはまたこの違反に問われておる何十件あるいは数百名というものが選挙違反で検挙をされ、逮捕をされ、捜査をされておる、そういう閣僚が池田内閣には何人おられますか、お尋ねいたします。
  122. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 選挙の公正、違反のないことを期しておりまするが、ただいま数多い違反の中で現閣僚がどれだけおるという調べはまだもらっておりません。もし何だったら関係当局から調べてお答えさせます。
  123. 野原覺

    野原(覺)委員 警察庁長官にお尋ねいたしますが、閣僚の中に何名おられますか、お尋ねします。
  124. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 お答え申し上げます。選挙違反も買収から形式犯までいろいろございますので、閣僚の個々についてどういう違反があったかということは、特別にそれを調べたものはございません。
  125. 野原覺

    野原(覺)委員 閣僚個々について違反があったかどうかではございません。その閣僚の選挙に関連しておる者が今日違反に問われておる、その閣僚はどなたかということを聞いたのであります。あえて御答弁がなければ私は残念なことでありますが申し上げたいと思います。しかしこれは私が申し上げて間違いがあってはいけませんので、お尋ねをいたしておるわけであります。  法務大臣にお尋ねをいたします。法務大臣は捜査の責任者でございますから、選挙違反の取り締まりの責任者でございますから、これはお知りであろうと思いますが、違反者を出しておられる閣僚とはどなたでございますか、何名でどなたでございますか、お尋ねいたします。
  126. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 お答えいたします。ただいまの御質問の、閣僚中において選挙違反云々ということでだれとだれかということについては取り調べをいたしておりません。  なお私この際にはっきり遺憾の意を表しますが、私自身は、私の関係の者で若干名の者が違反に該当いたしました。この点につきましては私は検察当局をして厳正公平に処置をしてもらっております。(発言する者あり、笑声)この点はなはだ遺憾の意を表する次第でございます。
  127. 野原覺

    野原(覺)委員 これは笑い話ではないのであります。今日国民はどう言っておるかと申しますと、選挙違反を捜査しなければならないその責任者が選挙違反を出しておるじゃないか。今植木法務大臣からあのような自己反省がなされましたけれども、清潔な政治をうたっておる池田内閣でありながら、選挙違反を捜査しなければならない選挙の取り締まりの責任者に、選挙違反を出しておる者を法務大臣に置くということは、私はこれはどうしても納得できないのであります。自民党の中にはたくさんの優秀な諸君があるはずなんです。優秀な方々がおられるはずであります。選挙違反を最も公平厳正に摘発をして取り締まっていくということであるならば、なぜ違反に関係をしておられる方を法務大臣にしなければならぬのか、これがどうしても納得できない、この点について総理大臣のお考えを承りたいのであります。
  128. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 植木法務大臣に選挙違反があることを存じませんでした。従いまして私はりっぱな法務大臣としての資格者と考えまして任命いたしたのでございます。
  129. 野原覺

    野原(覺)委員 法務大臣は私が申し上げるまでもなく、これは国民の全部がそう思っておるのでありますが、選挙違反に関係のない清潔な方を法務大臣に——植木さんももとより清潔な方であり、植木さんが選挙の違反に関係者を出しておるから植木さんが有罪であるなどとは申さないのであります。しかしながら違反を摘発しなければならぬ立場にある方は、違反を出さない方でなければならぬ、出していない方でなければならぬ、これが素朴な国民の感情であります。この点をどう思いますか。
  130. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほど申しましたごとく、任命の際には私は存じませんでした。その後聞きました。しかし案件は今係争中でございまして、私は非常な悪性のものでもないと聞いておるのであります。
  131. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたがそういう御答弁をなさることを国民の皆さんは聞いておるわけであります。ほんとうに本気で清潔な政治を考えておるのかどうか、あなたは政治の姿勢を正さなければならぬと常におっしゃって、政治の姿勢を正すには国民皆さんの御協力が必要でございます、こういうことをことあるごとに述べておられるのであります。これは間違いではありません。しかし政治の姿勢を正すためには政治の最も大きな責任者であるところの内閣の姿勢、内閣というものを正さなければならぬのじゃないか。政府みずからを正さずして国民に協力を求めましても、国民は協力はできないのであります。だから私は本日は言いにくいことでございますけれども池田内閣はこれからずっと政治をやっていく上に、ほんとうに日本の政治は清潔なものだということを示すために、このような選挙違反を出しておられるような方は法務大臣としては私はいかがなものであろうかと考えて実はお尋ねをしたのであります。大したことであるのかないかは別であります。李下に冠を正さずという言葉がある、私はこれだろうと思うのです。なお今の内閣には、私から申し上げますが、先ほど警察庁長官の御答弁にもありましたように、昭和三十三年に逃亡されておられる方は、松川さん夫妻は椎名通産大臣の総括主宰者だと聞いておるのであります。逃亡するとは一体何事でありますか。選挙違反をやっておるならば、堂々と出てきて、法のさばきを受けるべきであります。これが選挙で落選をした者であるとかなんならいざ知らず、少くとも今日国政の大きな責任をになっておる閣僚が昭和三十三年から総括主宰者を選挙違反に出して逃亡さしておるとは何事でありますか。このような者をあえてその閣僚に選んだのはどういうわけでありますか。植木さんについては総理は知らなかったというのであるが、しかし椎名さんについては知らなかったとは言えないでしょう。昭和三十三年からこういう状態なんです。私は、法の秩序を確立するということはこれは最も大事なことなんだ。法秩序の確立とは何か。法違反を犯したならば、法のさばきを受けるということでなければ、法の秩序の確立にならぬのであります。ところが総理のやり方は、逃亡者を出しておられるような方をなぜ一体閣僚に持ってきたのか。これがあなたの清潔な政治であるのかということを私は申し上げたいのであります。いかがですか。
  132. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は椎名君の人格識見が、国務大臣として適当であると考えて任命いたしました。しかるところ総括責任者が逃亡しておることも、もちろん知っております。このことにつきましては極力これを捜索することで進んでおります。
  133. 野原覺

    野原(覺)委員 政治の姿勢を正すとか、清潔な政治でなければならぬということは、私は単なる口頭禅ではないかという気がして残念でならぬのであります。これは総理の責任であるばかりではございません。その人御本人についても私は考えていただかなければならぬのであります。一体今日の世相、右翼テロの問題、いろいろな問題が起こっておるのでございますが、国民は何と言いますか。内閣は何だ、選挙違反を出しておる者が選挙違反の捜査をやるとは何事だ、こう言っておるのであります。閣僚の中に昭和三十三年から逃亡者を出して、のうのうと閣僚におさまっておるのは、何事だと言っておるのであります。こういう姿勢を正さないで、一体日本の国の政治ができるとお考えになっておるならば、大へんなことであります。だから私はあえてお尋ねをいたしておるのであります。特に農林大臣の周東さんにしてもそうであります。人格、識見は植木、椎名、周東御三名ともりっぱであることは私も承知いたしておるのであります。これはりっぱではありますけれども、しかし事選挙直後の組閣に、選挙違反に関係したところの者を何も好んで持ってこなくてもいいじゃないか。これを持ってくるところに、あなたの清潔な政治というものが今日国民から疑われる。あえてこういうことをやるならば、私はあなたの清潔な政治というものを信頼することはできない。私ではない、日本国民全体がこれは信頼できないと思うのであります。重ねて総理の御所見を承ります。
  134. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 選挙違反が出たからといって、その当選した候補者が絶対に閣僚になる要件を欠くと考えるわけにも参りません。しかし清潔な政治をする上におきまして、こういう点は将来考えていきたいと思っております。
  135. 野原覺

    野原(覺)委員 なおこの問題は問題があるわけでございますが、時間もありませんのでこれをもって終わりたいと思うのでありますが、私は、このような問題を関係者に起こしておられるような方々は、政治道義心に立ってこれは考えていただくべきではなかろうか。総理自分が選んだ閣僚でございまするから、あのような御答弁をあえてなさっておるかもしれませんけれども、国民に対してやはり範を示さなければ私はならぬと思うのであります。清潔な政治とあなたがおっしゃっても笑っておるのです。岸前首相が三悪の追放をやられたのであります。三悪の追放と言ったら、中野文化会館でそれを言ったら聴衆が大声で笑ったのであります。労働者だけではない、一般の市民が笑ったのであります。どこにこういうことで政治の実をあげることができるのか。私は、たくさんな優秀な諸君が与党にはある、たくさんの議員の中にはあるのでありますから、池田内閣がほんとうに政治の姿勢を正していくためには、そのことを今日ただいまから十分お考えになられて対処されまするように御要望申し上げまして質問を終わります。(拍手)
  136. 船田中

    船田委員長 午後二時より再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ————◇—————    午後二時二十七分開議
  137. 船田中

    船田委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐々木良作君。
  138. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は民社党の立場に立ちまして、これから質問を展開するわけでありますが、御承知のようにわが党は総括質問では一人でありますので、従いまして政治、外交、経済の全般にわたりまして、池田内閣の根本的な考え方をお尋ねいたしたいと思います。一つ率直な御答弁をお願いいたします。  まず序論的な立場に立ちまして、現に政権を担当しておられるわけでありますので、池田総理の政治へのかまえにつきまして、一、二点お伺いをいたしたいと思います。  御承知のように嶋中事件を焦点とする相次ぐ右翼テロ、さらに凶悪な殺人、強盗、誘拐等の事件が頻発いたしておりまするし、あるいはまた例のダンプ・トラック、火薬トラック踏み切り衝突事件、さらにはまた鉱山の非常におそるべき事故等が相次いで頻発をいたしております。これらの険悪な世相に対しまして、今、日本における最大の政治の責任をになっておられますところの池田総理の政治家としての御所感をまず承りたいと思います。
  139. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 政治の衝に立つ人は、まず自分自身から身をおさめ、家をととのえる、これが必要であると考えます。従いまして、自分の身をおさめ、また政治のあり方、姿を正しくする。こういうことでお互いに民主的に、共同して社会秩序を保つように進んでいこう。こういう念願で政治の衝に当たっておる次第であります。
  140. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それらの険悪な世相に対しましては、まず政治の姿を正すという考え方で政治に当たられておるという御発言であります。まことにけっこうでございます。しかし、実際問題といたしまして、私どもも政治家の端くれの場所をになっておるわけでありますが、現在の政治は、大臣からわれわれ陣がさに至りまするまで、党務、政務あるいはまた選挙運動等々、ほんとうに寧日のない日を送っているわけでございます。特に池田総理あたりにおきますると、必ず昼も夜も、おそらく寧日のない多忙な日を送っておられると思います。たまに箱根あたりに行かれましても、決して安閑とした日はあまりなかろうかと存じます。そのように政治家という政治家が、ほとんど毎日きりきり舞いをしておる状態でありながら、世相は一そう険悪な状態を続けつつある。むしろ悪ははびこりつつある、暴力もまさにはびこりつつあるこの現象に対しまして、何が一番欠けておるのであろうか。今総理は政治の姿勢を正そうと言われましたけれども、政治の姿勢を正そうとするその効果はちっとも現われてはおりません。重ねて一つ御所見を承りたいと思います。
  141. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 最近嶋中事件が起きまして、いろいろ問題がありますが、私は、やはり国民生活の安定向上、そうしてみんなが順法精神を尊重して、そうしてお互いに社会のため、お互いのためという気持になっていただければ、落ちついてくるものと考えておるのであります。
  142. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 政治の最高の責任をになっておられる総理発言としては、私ははなはだ不満であります。みんな国民が言うことを聞いてやってくれればおそらくおさまるであろう、あるいは取り締まり法規を強化するならば、これはまた平穏を回復するであろう、こういう考え方でありまして、まさにそういう考え方が現在の政治の最大の欠陥になっており、それが私は逆に世相に反映をしておるものではないかと思います。御承知のように力がすべてを支配する、結局力があるものは勝つのだ。こういう考え方が一般の庶民の中に脈々と今脈打つような状態で芽ばえつつあります。力というのは、御承知のようにはっきり言えば金の力あるいは権力、あるいは暴力でありましょう。金力、権力、暴力をもって代表される力というものが現在の社会の中心のものである。こういう状態が現在のような暴力ムードを起こしつつある最大の原因だと思います。こう思って現在の政治の姿をながめます際に、現在の政治の姿がそのまま権力、金力あるいはまた暴力とまでは言いかねるけれども、そのような力が政治の中に支配しておりまして、政治自身に社会をリードし、政治が社会のかがみになるような政治のあり方に欠けておるところに最大の原因があるのではなかろうかと私は思うわけであります。逆に言うと、現在の世相こそは、こういう荒れ果てた政治の状態がそのまま影を映しておるものでなかろうかと思う。むしろ政治家の中にはんとうの意味の哲学を失い、総理自身が、いうならば力あるいは唯物論的な考え方をもって政治をリードされておるところに私は根本の問題があろうと思うわけであります。特に今度の嶋中事件にかんがみまして、お話新聞紙上で承りますると、治安対策を急がれるのはけっこうでありまするけれども、その治安対策の内容は、新聞紙上でありまするから明確にはわかりませんが、ともかくも警察権力を強めて、そして取り締まりを強化しようということがむしろ一番中心の考え方のようであります。もし今度の治安対策の根本がそのようなものであるとしまするならば、一番最初総理は、現在の険悪なる世相に対して最大の責任を負い、そしてまたこの世相を直そうとするならば、それこそ政治の姿を正すことだ、こういうふうに言われましたけれども、この政治の姿をみずから正すことにほんとうの力をいたさずして、むしろ権力者が非権力者に対して臨む、そういう態度で政治に臨まれることに根本的な原因があろうかと思う。権力的な形で今の世相をおきめようとすると、まさに結果は逆の状態にはね返ってくるであろうことを十分に感じ取られて、そして今度の問題を契機として、ほんとうの考え方に改めていただきたいと私は思うわけであります。官房長官は見えておらないようでありますが、この間の新聞を見ますと、官房長官の治安対策に対する談話の中で、政治の姿を正しくすることが最も大切である、こういうふうに述べておられながら、すぐそのあとでは、それを受けてやることは、刃物所持禁止の立法であるとか、現在の警察のあり方、警職法の問題、こういうふうな考え方にすぐ転換されておられまして、ほんとうの、現在の社会の中にあるところの暴力ムードの根源自身に対しまして、政治のあり方からこれを正そうという一番のもとが欠けておる、こういうふうに思うわけであります。重ねて今度の暴力事件と関連をいたしまして、総理の所信を私は承りたいと思います。
  143. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 施政演説でも述べておりましたごとく、憎しみと争いは破滅への道だ、親愛と協力は繁栄に通ずるものだということを、私ははっきり言っておるのであります。こういう気持で今までもやって参りましたし、今後もこの気持で進んでいきたいと思います。  なお、最近のような事件が起こりまして、これをどうするかという問題は、単に刃物取り締まりだけの問題じゃございません。私は、こういう治安確保につきましての万般の措置をどういうふうにしたらいいかということを、協議会と申しますか、民間の方々の専門家の意見を聞きながら善処していこうといたしておるのであります。単に取り締まり法規を強化するということだけで事足れりとするのではございません。しかし、今の取り締まり法規で十分かということにつきましての検討を加えるというのはその一部でございます。これでもって事終われりという気持はございません。
  144. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 治安対策の問題は私のきょうの本議題ではありませんので、深く追おうとはいたしませんが、今総理お話を承っておりましても、実際にあの事件が起きましてからの警察当局なりあるいは政府当局なりの態度を見ますと、まず責任はないのだと責任回避を中心として考えておられます。そしてそのために今度はすぐ反射的な形で、責任をとれる状態にしようとするならば警察権力をふやせ、こういう状態だけが今起こっておる。そして決して国会の中で、あるいは政府の中で、えりを正して、現在の世相に対してむしろ政治の責任を痛感して、これに対して立ち向かうという正しい姿勢は、私は感ぜられないわけであります。どうか総理は、この世相の根本的な問題が現在の政治のあり方自身にあるということを再反省をせられまして、今後の対策に向かわれますことを強く要望をいたしておきます。  さて政治の問題の第二の問題といたしまして、聞くところによりますと、総理は五、六月ごろ渡米の計画を持っておられるようであります。この渡米目的を明確に承りたいわけであります。せんだって当委員会におきまして、井手委員からガリオア、エロアの問題に関する質問がありました際に、総理は、渡米してどんな話をするかまだきめておらぬ、こういう御答弁のように承りました。それがもしガリオア、エロアに限ってまだ方針がないということでありますならばまだしも、まさかと思いますが、今漫然と渡米の計画だけがあって、そしてここで具体的に何を話してこよう、何をしに行こうという具体的な方針がないとするならば、これははなはだ不謹慎なことだと思いまするが、渡米目的について総理の所信を承りたいと思います。
  145. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は、いつとはまだはっきりしておりませんが、今打ち合わせ中でございますが、国会が済みましたら、アメリカの政権も変わったわけでございますので、行って、日米共通の問題あるいは世界平和確保の問題等々、万般のことについて相談しよう、話し合おうと思っておりまするが、ただ具体的にこの問題をどうする、あの問題をどうするというところまではきめていないのでございます。
  146. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 御承知のように、ケネディ新大統領は、数次の教書等におきまして、立ち向かうべき問題に対しまして明確な方針をもって臨もうといたしております。総理は、ケネディ大統領よりも先に総理になっておられるわけでありまするので、従って、現在の世界情勢に対しまして、またその中で日本が緊急に処理し、解決し、立ち向かわなければならぬ問題につきましては、明確な方針を定められる余裕はあったはずであります。私は、今ここに一々具体的に明確なその内容を示せとはあえて申しませんけれども、一国の総理が、初めて自由世界陣営のいわゆる旗がしらたるアメリカに向かって話し合いに行こうといわれる場合には、あらかじめ議会を通じて、たとえば非常に重要な問題でありまするところの国連の問題だとか、先ほど来問題になっております中共の問題にしましても、さらにまたドル防衛の問題に対しましても、具体的な、日本としてはこのような方針で向かいたいという基本的な方針を確固としてきめられて、その尺度をもって私はアメリカとの交渉に臨まれるべきであると考えまするが、五、六月ごろといわれるその渡米までに、そのような方針を明確に定め、同時にまたその大部分は国民の前に明らかにして、そして渡米の目的と方針を国民の前にさらしながら交渉をされる方針でありまするか、承りたいと思います。
  147. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 交渉前におきまして、どういう問題についてこういう方針で話をするというところまでは私はいけないと思います。しかし、出発に際しましては、自分としてはこういう問題を取り上げたいということは言う機会があるかと思うのですが、いずれにいたしましても、他国の大統領と会いますときに、こういう問題についてこういう方針で話を進めるということは、私は言い得ないと思います。
  148. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 言える、言えないの問題は、その内容の部分的な問題についてでありまして、私が今ただしておりまするのは、総理の姿勢についてであります。従いまして、いやしくもアメリカに臨まれてお話をされようと思いまするならば、少なくとも中国問題については大体こういう方針でいかれるらしい、そのような方針が国民の前に明らかにされないならば、何のために行かれるのか、これはさっぱりわけのわからぬことになる。そうしますというと、いつかもやゆされましたごとくに、また参勤交代か、こういうことにならざるを得ない世評を浴びられると思います。今私は重ねて総理答弁を求めようとは思いませんけれども、行かれる前には、問題を具体的に整理され、しかも国民の代表の集まっておる通常議会の開会中はまだ長いのでありまするから、これの中で、日本の代表として立ち向かわれる基本的な方針を確固として立てられて臨まれることを強く要望申し上げまして、外交問題に移って参りたいと思います。  わが民社党は、今年度の活動方針におきまして、今年度の外交の焦点を冷戦緩和の一点にしぼって活動する方針を決定をいたしております。そして、そのために最大の課題は次の三点ではなかろうか、すなわち、国連の問題及び中国の問題、最後に安保を中心とするところの自衛の問題、この三つの問題の処理に、冷戦緩和の方向に向かって力一ぱい取り組むことをことしの外交方針の基本に私どもは掲げておるわけであります。従いまして、これらにつきまして基本的なお考えをお伺いをいたしたいと思います。  まず第一に、国連問題についてでありまするが、自民党並びに自民党政府は、従来国連中心主義、国連中心外交という看板を上げられております。従って池田内閣もまた国連中心外交という方針をとっておられるわけでありまするが、私は、まず国連中心外交というのは一体具体的にどんな内容を持つものであるか、総理の御所見を承りたいと思います。
  149. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 世界の平和確保の機構といたしましては、国連が一番強力、最高のものと私は考えております。われわれは世界の平和を念願する以上、この国連の機能を強化することに全力をあげていくべきだと思います。国連機能の強化とは、お互いが国連を宣伝の場所にせず、協力して機能強化、すなわち国際協力、連帯主義のもとに平和を打ち立て、また後進国に対しましてのあらゆる援助をやり、ともにともに栄えていくことを考える、これが国連中心の考えでございます。
  150. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 承りますると、国連中心主義というのは、現在の国連にも協力しながら、同時に現在の国連機能の中でなし得る最大限の努力を行なって、戦争防止をすることを中心に活動し、さらにまた、現在の国連機能の不備を理想的な形に機構を改組することも含めて、国連とともに活動するということのように承ったわけでありまするが、従来まで池田内閣あるいはそれ以前の自民党内閣として、そのような活動を現に国連を中心として行なわれておったかどうか、私ははなはだ疑問に思っておるわけでありまするが、国連中心主義という立場から、私は、国連協力というのは一体具体的にどういうことをすることを意味するのか。また御承知のように、安保理事会が大国の拒否権というデッド・ロックに乗り上げている現状で、戦争防止のための国連活動には一体どんな方法があるのか、一つ重ねて承りたいと思います。
  151. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。従来の国連の機能に対してわれわれが発言し、特にこの点で要望した点は、安保理事会の機能の強化でございます。その一環といたしまして、この構成の人員をふやせということを主張いたしております。これはかなり取り上げられておりますが、まだ最終的な結論には達しておりません。もう一つは、経済社会理事会、いわゆるECOSOCというのがございます。これもまた人員をふやすように要望いたしております。このわが国の二つの提案は、相当に毎回議論されておりまして、もう一息というところのように私ども感じておる次第でございます。
  152. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 国連協力の具体的な内容の中に、軍事協力というものもあろうかと思います。日本は、今国連協力の原則に立って国連への軍事協力の問題についての基本的な方針を持っておられるか、伺いたいと思います。
  153. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御承知のように、われわれは憲法で、いわゆるわれわれの施政の及ぶ範囲を越えて兵を出すとか、武力行使に参画するとか、こういうことはできないわけでございます。そういう意味で、われわれはまた非常に平和というものに対しての発言も──一番最近の大戦の敗戦国でございますし、また原爆の初の被害国でもある。こういう面から軍縮問題に対して、あるいはわれわれの体験を通して強く発言しておることは御承知の通りでございます。その意味で現在の核実験の停止協定を作ろうじゃないかということを進めておりますと同時に、昨年の暮れ、核の拡散防止というものに対する決議案もわれわれから出しまして、そういう面で、一番軍縮の主体をなします、また実行可能な面で考えられまするところの核問題について、強く軍縮を翹望する立場から発言をいたしておる次第でございます。
  154. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 国連憲章によりますと、加盟国は国連に協力する義務を明確に負わされておる。そしてその憲章の中におきましては、軍事協力の義務も明確に負わされておる。この問題について、軍事協力を求められた場合、日本の方針いかんという質問であります。
  155. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この場合は、われわれの憲法の規定があるから、それには遺憾ながら沿い得ない。他の面で、いろいろな社会的な福祉という面で協力するのがわれわれの許されたる範囲であるということを明確にいたしておるわけであります。
  156. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 先般スエズ動乱のときに、国連事務総長から日本の自衛隊幹部数名の参加を求められて、これを断わったことは聞いております。最近またコンゴにおける国連軍についても同様日本の兵力提供の要請があったと聞いておりまするが、事実がありましたかどうか、この御答弁はなされておりますかどうか、承りたいと思います。
  157. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは新聞にさようなことが伝えられたのでございますが、われわれの方には正式にさような要請は参っておりません。従いまして断わったということもございませんけれども、来れば断わる気持でおりましたが、さような申し入れはございませんでした。
  158. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて承りますが、先ほどの小坂外務大臣お話によりますと、日本は憲法の立場から軍事協力はあり得ない、なさないという方針を確立されておるように見えます。軍事協力を行なわないという方針のもとに、国連憲章が規定するところの軍事協力の問題は解決でき得るのか、重ねて承りたいと思います。
  159. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これはそういう憲法が日本にあるということは周知されておりまして、しかもそのことを承知の上で国連加盟が許されたわけでございますから、さような立場は貫き得る、かように考えております。
  160. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうしますと、国連から軍事協力を求めることは本来基本的に間違っておる、日本の態度了解されておるのだから、従ってそういう申し出というものはあるべきものでない、こういうふうにまで割り切って考えてよろしゅうございますか。
  161. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 われわれといたしましては、さような基本的な態度考えておるわけでございます。そういうことをよく徹底せしめるように各国の代表にも理解を求めております。従いまして、さようなことはおそらくあるまい、かように思っている次第でございます。
  162. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて伺いますが、軍事協力の義務は初めから免れておるというふうに解せられまするならば、朝鮮事変の際等におきまして、日本は国連軍の旗を立てて行動したところのアメリカの軍隊に、事実上たとえば基地提供等の形で協力をしておったと思います。そうすると、これらは安保条約あるいはまた占領下という特殊な状態のもとにのみ行なわれた事態であって、正常なる日本の独立した状態においては、安保条約等の拘束のない限り、国連プロパーでの兵力提供義務を求められることはあり得ないし、従ってそのような立場での海外派兵はあり得ない、こう割り切って解釈してよろしゅうございますか。
  163. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御承知のように、集団自衛権の問題が憲章に取り上げられましてから、二国間あるいは数カ国間におきます相互安全保障の条約がございまして、これは憲章の認めておるところでございます。さような立場から、安保条約がございますれば、それに関する協力というものはあり得るわけでございます。しかし、そのことは国連に直ちに報告されなければならぬ、かようなことになっております。御質問の、日本としてはそうした憲法上の制限があるから、日本における国連の軍事協力については一定の制限がある、こういうことに私どもはただいまの御質問趣旨を解釈をいたしておる次第でございます。
  164. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 重ねて明確に承っておきます。安保の問題の論議の際に、いわゆる海外派兵の問題がいろいろ問題になったことは御承知の通りであります。この海外派兵の問題に対する政府の基本的な考え方は、憲法にも許されておると解釈しておられるところの自衛権の立場に立って、自衛権の範囲内において海外派兵の問題を考える、大体こういう基本的な考え方だったと思います。従いまして自衛権の発動の範囲は原則として領域内であろうと思うけれども、それはたとえば渡洋爆撃等の場合には域外にも及び得るかもしれないことを含みながら、海外派兵の問題はあくまでも日本の自衛権の立場で答弁が終始されておったと私は思います。今私がお伺いいたしておりますのは、その安保のときに論ぜられました海外派兵の問題が、日本固有の自衛権の範囲内ということと関連をいたしまして、国連憲章が日本を例外に扱っておるならばいざ知らず、日本を例外に扱わずに正面から取り組んでおりますのは、明確な海外派兵を含めたところの軍事協力であります。従いましてたとえばコンゴならコンゴに事件が起こった場合に、日本はあくまでも例外的な立場に立って国連の兵力提供義務をはっきりと断わるという基本的な方針を確立し、しかも憲法解釈におきましてもその方針を貫いてよろしゅうございますか。特に私は念のために伺っておきますが、憲法は非常に注意深く前段におきまして国連中心主義を明確にうたって、そして国際平和のために国連に協力することを明確にうたっております。さらにまた憲法九条の戦争放棄の規定とともに、多分憲法九十八条だったと思いますが、もし間違ったらお確かめ願いたいと思いますけれども、一項を起こして、憲法と平等な立場で条約履行の義務をはっきりとうたって、どっちが優先するかわからない方針をとっておる。従いまして、あの当時の考え方からすると、日本国憲法を定める場合には、国連中心の考え方に、私は今のような国際平和のための兵力提供義務を含めて解釈できるような考え方でできておったのではなかろうかと思います。私はこの考え方には本来賛成しかねるのでありますが、明確に今のような小坂大臣の方針を貫き得るかどうか、重ねて承っておきたいと思います。
  165. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 明確にもう一度申し上げますが、いかなる場合にも海外派兵というものはあり得ない、施政権の及ぶ範囲以外に兵を出すということはない、かようなことで解釈をいたしておりますから、御了承願いたいと思います。  それから国連加盟の場合でございますが、軍事的協力をなし得るということは国連加盟の不可避的な義務ではないということでございます。たとえば永世中立を標榜しておりますオーストリアも国連加盟をされておる、かようなことでございます。  さらに条約と憲法の関係でございますが、条約を結びます場合に、憲法上のそうした定めがございますことを政府はもちろん強く念頭に置いて条約を結ぶわけでございます。そのときの政府態度が問題だと思いますが、いかなる政府も、さような憲法に反する条約を進んで結ぶということは、私はあり得ないことだと思います。  なお、法律解釈といたしまして、憲法上の解釈等について御必要がございますれば、法制局長官から御答弁いたさせます。
  166. 林修三

    ○林(修)政府委員 実は今の点で、かつて私この予算委員会でございましたか、内閣委員会で御質問を受けて、お答えしたことがございます。その点ちょっと繰り返したいと存じておるわけでございます。  御承知のように国際連合憲章のいわゆる軍事的協力、これはつまり兵力を必ず出さなければならないということを義務づけられているわけではないのでございまして、いろいろな国際警察活動が行なわれる場合に、それに協力する方法は必ずしもいわゆる兵力提供のみの協力とは限らないわけでございまして、ほかの方法ももちろんあるわけでございます。たとえば朝鮮事変の場合における国際連合との間のいわゆる国連軍協定というものも、私はその一つの例だと思います。ああいう形もあり得るわけでございまして、これは日本の憲法において、いわゆる海外派兵、日本が自衛権の範囲を出て海外に対して兵力を出すようなことはしない。こういう憲法がありましても、これは国際連合憲章に違反するということには私はならないと思います。ただここで純粋にまた問題を考えまして、しからば国際連合が将来いわゆる国際警察軍というものを作った場合に、それに対して日本が自衛隊というようなものを提供することがいかなる場合においても憲法違反かという問題になりますと、これはまた考えなければならない問題が私はあると思っております。これはかつてお答えしたことがあると思いますが、そういう場合の国連のあり方と申しますか、あるいはその国際警察軍のでき方、あるいはその国際警察軍の与えられている任務、たとえば選挙の監視であるとか、あるいは純粋の警察目的で行なわれるものもあるわけでございます。そういうもののいかんによって、必ずしも、日本の憲法が禁止しておらない範囲における協力、自衛隊を提供するということも、これは全くあり得ないことではないと私は思います。これはたしかかつて私がこの席上においてお答えしたことがあると思います。ただ、現在の自衛隊法ではそういうことはできないことは明らかでございますが、純粋の憲法論として考えれば、将来理想的な国際連合ができて国家間のいろいろな紛争を国内警察活動と同じような形で国連が解決をつけていくというような形になった場合において、それに参加することを今の憲法が全く認めておらないかといえば、私は必ずしもそうは言えないと思います。この点は多少問題があると思いますけれども、その場合の国際警察軍ないし国際警察隊の組織、任務内容いかんによっては考える余地がある。これは純粋の法律論であります。政策論は別であります。そういうふうに考えております。
  167. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 法律論の建前にも一応問題があろうかと思いますが、問題を先に急がせていただきます。  国連に対する軍事協力の問題と並行いたしまして、当然に経済的な協力の問題があろうかと思います。朝鮮の国連軍の場合、あるいはスエズの国連軍の場合におきましても、日本政府は相当の経済的援助を行なっておると思います。特に朝鮮の場合には、五一年九月八日の例の吉田・アチソン交換公文におきましても、「国際連合の行動に重要な援助を従来与えてきましたし、また、現に与えています。」こう述べられております。予算書等を見ますと、スエズあるいは今後起こるべきコンゴ等の問題におきまして、分担金の形で負担をされておりますことはわかるのでありますが、これは本題とちょっとかけ離れますけれども、どうも明確を欠いておりますし、予算書を幾らひっくり返して見てもわからないのは、朝鮮国連軍の場合における経済援助の姿、及びその額、一体これはどこからどう見ればいいのか、これを一つお教え願いたいと思います。
  168. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。政治、経済面における国連措置、特に平和維持のためのもろもろの措置がございますが、御承知の後進国援助のための特別基金拡大援助計画、国際児童基金というようなものがございまして、各国の割当が──割当といっても必ずしも強制する立場ではございませんが、後進国の経済援助の基金は、日本はたしか二・一九%であったかと思いますが、これは、今度御審議をいただいております予算には、その通り思い切って初めてこれだけの額を計上した次第でございます。  なお、今の朝鮮における場合、これは一つ事務当局からお答えいたさせます。
  169. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 ちょっと重ねてお伺いいたしますが、私のお伺いいたしたいのは、軍事協力と関連するような形における経済協力です。たとえば予算書を見ますと、スエズ問題についての国連分担金というのが三十五年度でも三十六年度でも明確にあがっておる。どうも私はふに落ちないのだが、先ほどの派兵義務というものを完全に断わり切れる状態である。にもかかわらず、軍事行動に対する分担金というものはちゃんと負担する。これは、たとえばおれの方はもう軍隊は出せぬから金でかんべんしてくれとか、そういう話し合いでもできておるのか。当然の国連協力の義務として出てくるものであるとするならば、私は、兵力提供の義務とこれらの行動に対する分担金の負担という問題とをそんなに明確に区別して考えられるものかどうか、はなはだ疑問に思うわけでありますが、お答えを願いたい。
  170. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その問題につきましては、たしかスエズは九千万から出しておると思いますが、これは各国が寄って、この動乱が再び起きないようにというようなことで、現在スエズ地区にも国連軍が出ておるわけでございます。しかし、この国連と申しましても、ただ軍隊を出しておくわけにもいきませんので、加盟国がその費用を分担するということになっておりまするが、これは必ずしも強制でもないような形になっております。その分に応じてできるだけ分担するということでありまして、一応の割当があるわけでございます。ところが、たとえばスエズの場合は出していない相当な大国がございます。しかし、その大国に対して出せということも、何かなかなかそういう強制力がないというような形が今の国連の現状のようでございます。その意味で、やはり国連をささえるものは国連を構成しておる国自身である。国連といえどもいろいろな行動をする場合にそれをささえる資金が要るのでございますから、加盟しておる国が誠実にその義務を履行して、国連という平和維持の機構をささえていくまたは強化していく、かようなことが必要だと思います。その意味で、私どもはまじめにその義務を履行している。こういう立場で分担をしているわけであります。これは、兵隊を出せる国と、日本のようにそういうことができない国とあるわけでございます。それを強制するということは別の観点に立っておる、かように理解しております。
  171. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 必ずしも明確でないように思いまするが、一応これは別の問題のときに譲りたいと思います。  関連してちょっと念のために承りたいのですが、国連分担金というものがあります。これは普通の国連分担金であろうと思いますが、昨年度に比べまして今年度は倍額、四億が八億に一ぺんに飛躍いたしておりまするが、これも何か適当な配分の基準でもあるのか、特別にふえておる理由はどういうところにあるのか、簡単にお伺いしたいと思います。
  172. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 事務当局からさらに補足いたさせますが、一応の基準がございまして、今まではそれを値切っておったのが、今度は思い切ってその通りやった、こういうことでございます。
  173. 鶴岡千仭

    ○鶴岡政府委員 お答え申し上げます。国連の中にこの分担金をきめる小さな委員会がございまして、その委員会の中で国民所得、それから国全体の収入、そういったものを標準にいたしまして分担金がきめられて、これを総会が受諾するという手続で、日本の分担金は二・一九ということにたしか一昨年きまったのでございます。ことしの国連分担金がふえております一つの理由は、比率は同じ二・一九でありますけれども国連の事業が非常にふえたということが一つ。もう一つは、国連加盟国の数がふえ、従って金を使ういろいろな範囲はふえたのでございますけれども、費用の分担能力はさほど増加していないということで、日本のような国になりますと、二・一九という比率でございますので、おのずから金がふえたということに相なるのでございます。たとえばコンゴの費用のごときはその適例でございます。
  174. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 こまかい問題でありまするから、別の機会に内容を確かめたいと思います。  国連問題について重ねて最後にお伺いをいたしたいと思いまするが、先ほど小坂外務大臣から、たとえば核兵器の禁止その他の問題について相当国連で活動しておられるようなお話を承りました。しかしながら、御承知のように、安保理事会というものが拒否権の発動によってデッド・ロックに乗り上げておる現状で、冷戦緩和に向かおうとする基本的な問題はほとんど具体的な議題になり得ない、あるいは効果をおさめ得ない状態であると思います。このときにあたって、御承知のごとき、かつても行なわれたという例のあるところの、安保理事会に対する勧告決議というものがあったはずだと思います。従いまして、今日本が立ち向かおうとするところの冷戦緩和の問題に特別に具体的な──今核兵器の問題にいたしましても、あるいは軍縮計画の問題にいたしましても、多分軍縮計画というのは安保理事会でその計画を作成されなければならぬという憲章もあったと思います。これら重要な課題が安保理事会のデット・ロックに乗り上げた姿のままで、具体的には国連の動きとして実をあげる状態になっておらないと思いまするが、これらの問題について国連において日本代表は具体的な活動をほんとうに開始いたしておるのかどうか。世論を背景にいたしまして、冷戦緩和のための諸条件、諸活動を、今申し上げましたような軍縮活動計画作成勧告とかあるいは核兵器の禁止勧告とか、そういう決議をとるための具体的な行動を起こしたことがあるのか。起こしておるのか、起こそうとしておるのか。その辺の行動の内容を承りたいと思います。
  175. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御指摘の点は、全く国連の中心の問題だと私ども考えております。御承知の緊急特別総会というものが、安保理事会が行き悩んだ場合に開かれ、その決議によって事務総長の指揮のもとに行動がとれるというようなことはございますけれども、やはりあくまで決議は決議でございまして、強制力を伴わない。従ってその決議に対して文句がつき、またそうしたものに対しての費用の分担はお断わりというような大へんな大国がいるわけでございます。そういう場合には非常に行き悩むわけで、ただいまでは、まさに御指摘の通り、われわれとしても真剣にこの問題は研究いたしておる問題でありますし、また世界の世論にもそれは訴えておる問題でございます。先ほど申し上げたように、核の問題、核実験停止協定の問題は、これは日本が最初から言い出し、そのたびごとにやっておる問題で、ことしこそは、私が本会議でも申し上げましたように、核実験停止協定だけはぜひ何とかしたいというふうに考えて、関係国と話し合っておるところでございます。最近に私どもが理解しておりまする点では、この将来は明るいのではないか、かような感じを受けておるような次第であります。
  176. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 勧告決議をかりに行ないましても、なかなかそれの効果を上げにくい状態であることも承知をいたしております。しかしながら勧告決議が行なわれたという事実は、それは一歩前進であることには間違いなかろうかと思います。そして御承知のように大国主義が君臨をいたしております現在の国連の中で、ほんとうに仕事をしようとするならば、小国が一緒になりまして大国主義を打破していくところに基本的な活動があろうかと思います。もし日本の外交方針、池田内閣の外交方針が国連中心主義であるということでありますならば、この大国主義に刃向かうことこそが真の国連中心主義でなければならないと思います。従いまして、勧告決議を行なってもそれを受ける方の安保理事会の方の体制が整うとか整わないとか、それを別問題といたしまして、小国の先頭に立って今冷戦緩和のために立ち向かう雄々しい姿を国連の中で行なうことそれ自体が、私は国連中心主義の基本的なあり方であろうと思います。しかしながら従来の動きを、私ども新聞面を通じて見るくらいのことでありまするから内容はよくわかりませんけれども、とにかく従来の日本代表を中心とする国連の舞台における活動は、私どもはどうにもこの国連活動をちゅうちょしているような状態にしか見えないわけであります。それは私どもには大国主義に追随であり、同時にそのことはアメリカ依存主義であって、決して国連中心主義で動いておるのではないのではなかろうかという疑いを持たざるを得ない状態で見ておるわけであります。  繰り返して申し上げまするが、本来国連というものは、大国一致の原則が支配する国際情勢のもとに発足したわけであります。ところが現在は、この国連機能が東西両陣営、特に米ソの対立の状況のもとで、その対立緩和と戦争防止に全機能をあげて立ち向かわなければならぬ状態にあるはずであります。従いましてもし本格的な国連中心主義をとられるならば、この大国主義に立ち向かうための勇気を持って国連で活動するということ以外にはないはずでありまして、大国主義に立ち向かうか、立ち向かわないかが、国連中心外交をとるかとらないかの岐路に立っておると思います。小坂外務大臣は、現在これまでの日本の外交がこの大国主義に正面から立ち向かう形で国連で活動しておったとほんとうに認められますか。
  177. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御指摘のように、かつての構成国の間において作られました安保理事会が、今日の国連の姿をそのまま反映しておるものではないから、安保理事会の理事の数をふやしたいということを従来からいっておるわけであります。そこでそういう面で大国主義によって国連が規制されているというのは、必ずしも今日の世界の実勢を反映したものではないということは、国連の中においても申しておるわけであります。  ただただいま御指摘のように、日本の国連活動についてはいろいろ御批判があるわけでありまして、私どもも謙虚にその御批判というものは承っておるわけでございます。従って総理大臣も先般言われましたように、国連代表部の強化ということを考えまして、今回若干のそういう方向に沿うた、この際できるだけのことはしてみたわけでございますが、今後ともさらにこの問題については深く考えて参りたいと思います。  ただアメリカ追随ということでありますが、私ども決してさようなことは考えておりません。ただ世界全体の緊張を緩和して、国連中心と申しますけれども国連を強化して、国連というものがほんとうに世界平和のための唯一最高の機関の実体を名実ともに備えるものにしたいという、国連中心ということを私ども考えておるわけでございます。そういう点から見ますと、やはりただ一人で飛び上がってみてもいけません。これはまたお話の小国ということもございましたが、小国は小国としてやる、また大国に対してもその立場からものを言う、またわれわれはアジアにおける機械工業方面では先進国であります。また文化教養の面では相当先進国の立場にあると思いますので、そういう立場からわれわれの主張はすべての人たちに理解させて、その協調の上に今仰せられたような国連の強化ということをやってみたい、かようなことを考えておるわけでありまして、話し合いはいたしますけれども、別に追随はいたさない、こういう考えでやっておるつもりであります。なお御注意の点は大いに傾聴いたし、できるだけその方向でやって参りたいと考えております。
  178. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 つもりはけっこうでありますけれども、客観的に現われておる現象は、やはり国連の中におきましてもアメリカ追随主義という形にしか見られておらない。それが証拠には小国の中におきまして日本が信用をもって迎えられる状態にあるかどうか、私ははなはだ疑問に思っておるわけであります。  時間がありませんので議論は差し控えますけれども、やがて開かれる休会明けの総会の場におきましても、当然軍縮問題あるいは核問題等が現われてくると思いますが、この場合に今小坂大臣が言われたような形でアメリカ追随の国連中心でない姿を、この舞台で明確に見せていただくことを重ねてお願いをいたして、次に移りたいと思います。  国連問題について最後にもう一つだけ伺っておきたいと思います。九月に予定されております十六回総会におきましては、憲章改定議案が出るはずであります。御承知のように一九五六年の十回総会におきまして憲章の全面改定が議題に提供されましてからずっと懸案になって延び延びになっておりますが、ことしは数回目の二年目の議題と相なっておるわけであります。従いまして、この国連改組の問題は、国連中心主義の立場に立とうとする池田内閣は、そうして現在の国連機能の不備を十二分に痛感しておるわが国としては、当然最も重要なる議題でありますから、これに正面から取り組み、確たる方針を持って臨まれるだろうと思いますが、現在の準備並びに方針を承りたいと思います。
  179. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題につきましては、今、日本はそれを研究するための委員会を作れという提案をいたしまして、先頭に立って努力をしておるわけでありますが、実勢はなかなかそう簡単にもいかぬような状況であるということでございます。  なおお言葉を返すようで失礼でございますが、先ほど日本の国連態度は非常に信用がないというお話がございましたが、私はさようなことはないと思っております。例をあげるのが適当かどうかわかりませんが、たとえば国際司法裁判所の裁判官は、日本は二回続けてうまくいきませんでしたが、昨年は米ソに次いで第三番目にわが国の出しました田中候補が当選されたわけでございます。さらに昨年はユニセフの執行委員会委員国に選ばれましたと同時に、総会の副議長の選挙に立候補いたしまして、これも最高点をもって日本は当選しております。信用がないならば最高点は取れぬのではないかというふうにも思っております。もちろんこれでいいということを私は申し上げておるのではなくて、できるだけその方向をよく生かそうということは考えて申し上げておる次第でございます。  なお先方に出ております新聞記者諸君との間の意見の調整等も、まだまだ大きく改善すべき余地がございますので、そういう点にも今後は十分に注意して参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  180. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 わが国の代表が国際司法裁判所判事に任命されたとか、あるいはその他の役をもらったとかいうことが信用の表示であるかどうか、私はこれははなはだ疑問であると思います。むしろ逆に、アメリカ側についておるならば役が振り当てられるということも十分考えられ得るわけであります。従いましてそういう形ではなしに、たとえばAAグループからほんとうに兄弟国としての尊敬と信頼を持たれるような状態で国連の活動が行なわれておるかどうか、私ははなはだ疑問に思っておるわけであります。一つ御努力をお願いをいたしたいと思います。  それからさらにこの憲章改定のための議案に対しまして、それを研究するための委員会を作れと提案をしておるのだけれどもという話でありまするが、私のお伺いいたしたいのはそういうことではありませんで、大国主義をはっきりと否定し、そしてこの冷戦の中で、東西両陣営の中で、国連機能が麻痺しておるような状態の中で、小国は毎日ひやひやしなければ生きておられない状態の中で、国連をどう改組するならば小国といえどもほんとうに安心し得る状態になり得るか、こういう問題に対して日本はむしろ痛切なる感じを持っておるわけでありますから、日本独特の改組案を持って臨まれるべきだと私は思ったわけであります。従ってその基本的な方針を伺ったわけであります。
  181. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日本といたしましては、もちろん基本的な方針をお言葉のように持つわけでございますが、それを実現するための方法として、委員会を作ってやるようにという提案をいたしておるわけでございます。なおAAグループにつきましても、われわれアジアの一員であるということを、特にこの施政方針を述べまする際にも強調いたしたような次第でございまして、私どもはこの強い自覚のもとに行動したいと思います。  ただ一口にAAと申しましても、現在御承知のように大体方向が三つくらいに分かれておるような状況でございまして、何とか全体が一つの平和維持、東西冷戦緊張の緩和並びにわれわれ自身の繁栄ということの方向で、非常に穏健な、しかも着実な方向に参るようになることが望ましいと考えて、さような方向で努力したいと思っております。
  182. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私の望むような答弁がいただけないのはまことに残念でありまして、私は基本的な国連改組案を持って臨む、その方針の内容の、せめて形だけでも伺いたいと思ったのでありまするが、まだとてもそういう状態ではなさそうであります。責めてみましても、これは理屈と理屈の応酬になろうかと思いますから、先へ急がざるを得ないと思います。  ただ最後に私は重ねて要望いたしておきます。基本的な国連の改組案と同時に、御承知のように現在の国連憲章それ自体は、わが国はまだ明確な敵国扱いを受けておるわけでありまして、せんだってどこかの委員会でわが党の受田君も質問をいたしておりまするように、全面的な条文修正は当然わが国から提出しなければならぬ状態であるはずであります。五十三条の二項あるいは百七条、旧敵国扱いを明確に日本は受けておるわけであります。条文の中にも明確に敵国の規定をされておるわけであります。従いまして、たとえば中国問題を処理しようと思いましても、中ソ友好同盟条約の動きというものに対しましては、国連憲章の規定の中でわが国は明確な敵国扱いを受けておるわけであります。従いましてこれらの憲章条文それ自身の全般的な改正は、これは国連という大きな問題の改組以前に、わが国として当然にやらなければならぬ問題である。それらにつきましてもほとんどお触れをいただかなかったことはまことに残念でありますが、時間の関係上先を急がざるを得ませんので、この問題につきましての質問を打ち切りたいと思います。  繰り返して申し上げますが、言葉ではなしに、ほんとうに国連中心主義の立場をとられるならば、国連の中における大国主義に正面から立ち向かうことである、同時に現在の国連がほんとうの機能を果たさないという欠陥を十二分に指摘されておりますならば、その改正のための渾身の努力をされ、そうして秘密的な、あるいは官僚的な外交ではなしに、日本国民が一本になりまして、この国連を中心にして世界の平和を保てるような状態に問題を持ち込む努力をされたいということを重ねて希望を申し上げます。  外交の第二の問題といたしまして中国問題を少し触れたいと思います。時間が大へん迫って参りますので、一つ政府側の答弁も簡単に要を得てしていただくようにお願いをしたいと思います。  まず中国問題の早急な解決は、極東の平和、冷戦緩和のためにも、わが国独自の平和と繁栄のためにも、緊急中の緊急事であると思います。池田内閣はこれに対しまして本格的な熱意をもって取り組む用意ありやいなや、総理の御所信を承りたいと思います。
  183. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 施政方針演説で述べた通りでございまして、私は世界の平和、極東の平和の上から考えましても、中国問題は真剣に取り組まなければならぬ問題だと思っております。ただ問題は世界的な問題でございますので、日本だけでどうこうということはできません。世界の情勢の変化を見ながら善処いたしたいと思っております。
  184. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 中国の問題は世界の問題であるから、従ってなかなかむずかしい、ここがいつでも池田総理の逃げ場所になっておると思います。ほんとうは私はこの態度に最も批判的な見方をいたしておるわけであります。ドイツ自身もベルリン問題に対しまして立ち向かっておる姿は、自由主義陣営の中におきまして、完全なリーダー・シップを持ちながら、最も真剣に取り組んでいる姿を発見することができると思います。私が熱意をお伺いいたしましたのは、日本自身が自由主義陣営の一員でありながらも、日本自身の立場に立って自由主義陣営を引き連れて、その指導権をもって中国問題に立ち向かわれたいことを希望いたしておるわけであります。問題解決の中心は、中国国連加盟と正常な国交の回復の問題であると思うのでありますが、特に国連加盟の問題点を明確にいたしまして、具体的に問題を提出する方法で質問を行なってみたいと思います。  具体的にお伺いをいたしますが、第一点は、政府は現在の北京政府、現在の中国を完全な国家として認められておりますか、実際の条件が備わっておると考えられておるかどうか。第二点は、従って国連憲章四条一項にいうところの加盟国としての条件を、中国は備えておると判断をせられるかどうか。そして第三点といたしまして、現在の国際平和の核心的な問題は軍縮協定の実施であると思うのでありますが、中国を除いた軍縮協定は無意味だろうと私は思うのでありますが、この点も同様に解されるかどうか、この三点についてまず明確な御答弁を承りたいと思います。
  185. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 実は外交の問題を御答弁いたします場合に、法律解釈とまたそれが及ぼす影響というものを双方勘案して申し上げなければならぬと思いますので、ただいまの御質問にあるいは正確なお答えにならぬかもしれぬということをおそれるのでありますが、とにかくあの大陸に対して支配権を確立しておるということは、事実の問題としてそうだろうと思います。しからば国連に当然入って武力の制限等も受けるべきである、こういう問題があろうかと思いますが、そういうことももちろん考えられると思いますが、しからばそれは、国連で現在軍縮協定というものができていない今日、入れたから必ずそうなるということも問題であろうと思うのであります。さらに国連憲章は、御承知のようにいろいろな制限がついておりまして、平和愛好国であるということを確認しなければならぬ、いろいろな規定があるわけでございます。その意味で私どもがどう考えるかということも必要でございますが、それと同時に、世界の各国がどう考えるかということも大きな要素になるわけであります。  以上をもちまして、はなはだ不完全なお答えだと思いますが、冒頭に申し上げたような理由で一つお聞き取りを願いたいと思います。
  186. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 各国がどう考えるかを聞いたのではないのです。日本政府池田内閣がどう考えるか、池田内閣考え方をお伺いいたしたわけです。影響を与えるというお話でありますが、外交問題として日本が不利になるような状態でありましたならば、私は答弁は要求をいたしません。しかしながら、中国問題につきましては、大国の中心であるアメリカにおきましても、あるいはソ連におきましても、あるいはまたイギリスにおきましても、堂々と今私どもが申し上げました問題については論戦が行なわれておる。なぜ日本はこれらの問題に触れることをそれほどちゅうちょされるのか。私は、外務大臣がこう言うたから一ぺんに中国問題に対しまして日本が不利な立場をとるとか、あるいは国連の中において不利な状態になるとか、こういう状態にはならぬと思います。しかし、しいて答えを求めるというわけにはいかぬかもしれませんけれども、実際問題として今いろいろ言われましたけれども中国自身が入らない軍縮協定というものがかりにできたとしましても、日本はこの軍縮協定をありがたいものができたと喜ぶことができますか。隣国である中国がそのまま抜けておる。近代装備を持った二百万の軍隊があり、核装備さえ作ろうとしているこの隣国が軍縮協定の中に入ってくるような状態でなければ、この軍縮協定は世界のものであるかもしれませんけれども、わが日本国民のものではないわけであります。その立場に立ちまして私どもが率直に問題を考えるならば、平和問題を考え、軍縮協定を考えようとするならば、その前提として中国がこれに加盟するということを考えなければ話が進まないと思うのであります。同時にまた、法律解釈のお話がありましたけれども国連憲章四条一項にいうところの加盟国の条件を備えておるか、おらないかということは、これはもう法律問題を離れて常識問題になっている。アメリカといえども、あるいはイギリスといえども、その条件を事実上具備しておることははっきりと認めておる状態ではありませんか。その状態でありながら、なぜ日本の外務大臣だけがそのことを明確に言い切れないのか。私は重ねて御答弁をお願いいたしたいと思います。
  187. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 けさほども若干問題になりましたように、他国でどうであるということを議員各位がおっしゃる場合には何もないわけでありますが、どうも政府が言いますと、なかなかここでもああいう問題が出まして、ちょっとそういう点は微妙のように考えまするのでお許しを願いたいと思います。たとえば、イギリスあたりではこういうことを簡単に言われるのでありますが、どうもわが国では少しこういうことを言うと問題になるようなので、御参考までに申し上げますと、イギリスのヒューム外務大臣のお言葉で、中共の位置をきめることと、それから国連をスマッシング──という言葉を使っておりますが、国連を壊滅させることの二つのうちの一つをとらなければならぬとすれば、答えは一つであるというような言い方をしておるので、われわれ十分この中共問題については深く研究をし、まあ、いってみれば慎重な態度で、しかし前方は見詰めているというような態度で研究してみたいと思いますので、この程度で御了承を願います。
  188. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 これは大へん恐縮ですけれども、もし私の党がせめて社会党くらいあったら決してこのままではとまりませんよ。私は一人でこう立っているから仕方ない、先へ進めます。時間もないから進めようかと思いますけれども、そういう答弁態度というのは私はないと思います。それでは、ひとり相撲をとるような格好になろうかと思いますけれども、もう少し具体的に先へ進んでみたいと思います。  おそらく小坂大臣も、今私が申し上げましたところのその三点を、腹の中では承認されるのに私はやぶさかではないと思います。にもかかわらず、そういう立場をはっきりと承認しながらも、日本政府中国国連加盟反対ないしは消極的な態度を従来とらざるを得ない状態に置かれておること、私はこれに最大の疑問を感じるわけです。日本が独自に、自由主義陣営の一員としてでも日本が独自な、ほんとうに、いうところの自主独立外交を展開しておられるならば、当然に、それこそ旗を立てて今の三点を強調しながら、国連の場におきましても、自由主義陣営の中におきましても活動ができる。それがちゅうちょされておるのは、どうしても私どもは、大国主義に追随し、アメリカ依存の外交を続けておられるからだ、こう見ざるを得ないことを注意をいたしておきたいと思います。しかし、そのような立場でありながらなおこれをちゅうちょされるか。具体的に掘り下げてみますと、おそらく、中国代表権の問題は、台湾の問題に集中的に現われてきておるのでしょう。その台湾問題の処理をめぐってどうにもこうにも、にっちもさっちもならないという感じが、日本をしてものを言わしめておらない根源だと私は推測をいたします。そこで、台湾問題の帰趨を一つ調べてみるのが、まず中国問題の基本的な条件と申しますか、問題点を明確にするもとになろうかと思いますので、もう少しこの問題を進めてみたいと思います。  カイロ宣言、ポツダム宣言並びに降伏文書によりますと、台湾は中華民国に返還することとなっておりますが、その場合の中華民国というのは現在のどっちの政府を中心に考えておるのか。同時にまた、このカイロ宣言、ポツダム宣言、降伏文書等、これらのものは領土処理の直接効果を発揮し得るものと考えられるか、効果を持った文書であるかどうか、お答えを願いたいと思います。
  189. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お話のように、カイロ宣言には、日本が清朝より奪取した領土は中華民国に返還せられるということが書いてございます。その中には台湾、澎湖島は入っております。ポツダム宣言はそれを受けて、カイロ宣言の条章は履行せらるべくと言っておるのであります。しこうして、われわれが結びましたサンフランシスコ講和条約におきましては、平和条約第二条(b)項によりまして、台湾、澎湖島に関する権利、権原、請求権の一切を放棄するということで、日本の立場はこれを放棄しているわけであります。しこうして、この間に一九四九年中華人民共和国というものができたわけであります。そこで、非常に問題がむずかしくなるわけでございます。われわれとして非常に歯切れが悪いということでおしかりをこうむるわけでございますが、これは決して大国追随あるいはアメリカ追随ということではなくて、日本自身として──日本くらいこの問題に対してむずかしい立場を持つものはない。そういうわれわれ自身の判断から、この問題は非常に慎重に扱わねばならぬ、こう考えているのであります。慎重に扱うことを考える国は他にもあるかもしれません。また現にあるのであります。世界で国連が中華民国というものを認めておる。チャイナというものの代表としてナショナリスト・チャイナというものが出ておるわけです、安保理事会に。そういうことを認めている国がたくさんあるわけであります。そういう国との関係があるから、これは世界的な問題にも広がるわけでありますが、われわれは、われわれ自身の立場からしてこの問題は慎重に扱うべきであるという前提で考えているわけでありまして、決してアメリカ追随ではないということを一つよく申し上げておきたいと思います。
  190. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 よく申し上げられまして、言葉は承りまするけれども、客観的に見まして、私は今の私の見方を変えるわけにはいかないのであります。せんだっても──話は飛びますけれども、高碕さんがアメリカに行かれたその前後や、それから中国にも行かれたその辺の一般の話を承ってみましても、中国問題というものは、あるいは台湾問題というものは、アメリカ中国との問題だ、アメリカ中国との関係が解決されない限り、われわれとしては手はつけられないのだ、大体こういう感じを持っておられる。おそらく小坂外務大臣も、池田総理も、そういう考え方を持っておられるのではなかろうかと思うのです。もしそうでないとするならば、御承知のように今、法的な効果はどうか知りませんけれども、三つの文書に、中華民国に返還することとなっておりまするけれども、法的解釈からいうならば、今お話のごとくに、この条約あるいは条文というものは、領土処理に対する直接の効果を発揮するものではなくて、直接の効果を発揮するものはやはり平和条約だろうと思います。そして平和条約というのは、日本からこの領土を取り上げる、離すということだけを規定してある。離すということだけは規定してあって、従って所属は規定されておらない。そうするならば、もし日本が本格的に問題を解決しようとするならば、国連の場でもどこでもいいから、日本がこれは離すのだけれども、一体どこに捨て子するのだ、どこに帰属すべきだということを、堂々と日本の立場でその問題のリードをすることができるはずであります。しかもその場合の可能性というのは、いろいろ勘案をいたしてみましても、今の国連の状況の中から見ますと、多分台湾の中におけるところの、台湾の持つところの軍事的な価値、あるいは軍事的な地位というものが基本的な問題になっておる。そのことがそのままアメリカの外交方針の基本的な問題である限り、日本はこれにくちばしを入れられない状態に置かれておるのではありますまいか。たとえば御承知のような形で、条約三条のやり方によって、たとえば国連の信託統治というようなものが可能性があるかどうかということを調べてみても、一般信託統治の方法をとろうとするならば、ソ連を含む各国の査察が必要になる。今あそこのところをソ連に査察されたらどうにもならぬという問題が、一番最初にこの方法を困難ならしめる基本的なものでしょう。さらにまた戦略的な信託統治という考え方をとりましても、それはやはり安保理事会の承認を得なければならないから、一ぺんにまたソ連の反対があるということで工合が悪いということになってくる。そうすると結局のところ残されておるのは、国際間の話し合いということになってくる。その話し合いの中において、アメリカがこの位置におけるところの軍事的な価値を強調し、たとえば新大統領が基地整備の基本的な方針でも立てて、その中から台湾に対するアメリカ態度が出てこない限り、ほんとうは日本は触れられないのではありますまいか。いろいろ問題がありそうでありまするから、あるいはこれを言わせるのは酷のようでありまするから、私はあえてもうこの問題に対する質問を続けようとは思いません。  ただ私は繰り返して申し上げておきたいことは、幾ら池田さんや小坂さんが、国連中心外交である、自主独立外交である、対米依存ではないと言われましても、国連の中における活動並びに中国の扱い、そして具体的には中国が本格的に国連の中に入ってきて、冷戦緩和の方向に対して協力できるような軍縮協定でも、あるいは核禁止の協定でも入れる状態にならなければ、日本の安全は保し得ないということも承知であり、経済的な提携も深めなければならぬということも承知でありながら、どこかに遠慮されて本格的の問題を進めがたいという感じを、だれでも受けておるわけであります。従って私は、それならばもっと明確に、日本というものは、今のところそういう小国と一緒になって、やれ国連中心主義だの、あるいはそれに似たような考え方でおることはできないのだ、むしろ大国依存によってのみ日本の国の運命をここに託しておらなければやれないのだという立場を、はっきりと自民党としてとられたらどうか。私は非常に残念に思いますることは、自民党という一番右の政党も、あるいはまた社会党や共産党を例に出したら悪いかしれませんけれども、左の政党も、全部国連中心主義、自主独立外交、この言葉でもって言い表わされておる。中身は全部違っておる。特に自民党内閣の方針というものを今具体的に吟味するならば、はっきりと国連の現状を肯定し、麻痺しておるところの国連の機能の中に立っては、アメリカについていかなければ日本の運命は保たれ得ないのだという考え方に割り切って、その立場を国民に出したらいいじゃないか。それを国連中心主義というような隠れみのでもってごまかされるところに、日本の外交が、国民外交的な、国民全体が火の玉になって平和を獲得しようとし、国の安全を保とうとするための手段を探そうとする意欲に燃えない最大の原因があると思う。日本の言葉は非常に便利にできておりまするから、従ってどういう内容を持とうとも、同じように国連中心、自主独立外交ということになっておる。私はきわめて不満に思うわけであります。特に小坂外務大臣のこれらのものの言い方につきまして大いなる反省を要望し、はっきりと内容に沿ったところの言葉を使われて、そうして日本の向かうべき道に対して、国民が明確に理解できるような状態で外交問題に取り組まれんことを切望いたしまして、外交問題は打ち切りたいと思います。  さて、次に経済問題に入りたいと思います。経済問題の一番中心に私が伺いたいのは、金流出とドル危機の問題についてであります。アメリカの金流出とドル危機の問題につきまして、池田総理はきわめて楽観的な見解をもって終始されておりまするが、その根拠を私は承りたいのであります。蛇足を申し上げて恐縮でありまするけれども、施政方針の演説の中におきましても、この委員会における答弁に見ましても、総理のこの問題に対する取り組み方は、超楽観的な立場に終始しておられるような感があるわけであります。文字に書いてあるところでは、私の目についたところでは、たとえば正月の日経の座談会で、小汀利得氏とともに対談をされておりますが、その中でこの問題に対して、今までアメリカが金を持ち過ぎていたから世界不況があったので、金の再配分は喜ぶべき現象である、こういうような態度を表明されたり、あるいはドルはポンドやフランとは違って世界最強の通貨だから心配することはないのだ、あるいはアメリカの国内の金準備の比率を撤廃しさえすれば、金は減っても大したことはないのだ、こういうような、私どもから見まするならば、この問題の本質をとらえておられないような発言、同時に楽観的な見方が池田総理の周囲にムードのごとき状態になって現われておると思いまするが、この問題に対すを本質について、総理の所見を承り、楽観的見解の根拠をお示し願いたいと思います。
  191. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は別に楽観しておるわけじゃないのでございます。ただ過去の世界経済の状況を見まして、アメリカに金が片寄り過ぎておる、これはある程度分散しなければならぬということは、各国の政治家、学者が言っておったのでございます。それが急激にといいますか、相当強く変わってきたということであるのであります。従いましてドル・セービングの問題が起こったときにも、私は、ICAとか、あるいは軍人の家族の帰還という問題もさることながら、それよりももっと重要なことは、ドル・ドライブによって非常な輸出競争が行なわれるということについて目をみはらなければならぬ、こう私はさきの国会でも言っておったのであります。そうしてまた今お出しになりました小汀さんとの正月の対談のときにも、小汀さんは、ドルの切り下げ、金の価格の引き上げが今にもあるというふうなことを言っておりましたから、それはそうじゃございませんということを言ったのでございまして、事実を事実とし、そうして私の見通しを言ったのでございます。従いまして軍人家族の帰還の問題は、もう御承知の通りのような状況になっておりますし、ICAの問題は、一億三千万ドルは急になくなるだろうというあれでございますが、私は、ある程度は減りましょうが、あの当時予想しておったようにICAは減らぬと見ておる。ただ問題は、ドル・ドライブの問題、私は前からこれが一番の問題だと言っておったのでございます。そのために、輸出の振興その他われわれが十分な措置を講じてこれは克服し得るものだ、また克服しなければならぬということを申しておるので、決して超楽観を言っておるわけではございません。大体私の昨年のドル・セービング、ドル防衛の問題が起こりましてからの見通しは、大体間違ってなかったかと私は思うのであります。
  192. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 伺えば伺うほど、むしろ私は逆にこの問題の本質に対する池田総理認識を疑うのであります。これが単に今アメリカのドルが海外に出ようとしておることが多過ぎるからというような問題であるかどうか、それくらいな問題であるならば、世界経済がこれほどあげて大騒動はいたさないと私は思うのであります。なお、この問題がアメリカだけの問題でなしに、全自由世界の問題であるということで、ケネディ新大統領自身が異常な決意をもってこれに立ち向かっておる。各国政府がかたずをのんで、その対策と成果を見守っておる現状であるわけであります。私は、池田総理がほんとうにこの問題に対する認識を持っておられるのか、あるいは国内的なポーズのために今のような楽観的な態度をとっておられるのか、はなはだ疑問でありまするが、この問題に対するもっと本格的な取り組み方を要望してやまないものであります。  まず今ドルの実質的価値低下の事実は、だれも疑っておらない状態でしょう。ドルの実質的価値低下の事実はだれも疑っておらない状態にあるということ、そのことが金流出の原因になっておりまするし、そのことが今、金・ドル問題の焦点であるわけであります。日本の国にとって、たとえば特需のドルが減るとか減らぬとかいう問題は、これはあとでまた論議いたしましょう。私は今総理論議をいたしたいのは、金・ドル問題の本質について、金。ドル問題の本質というものは何かということであります。言うまでもなく戦後の国際通貨制度は、ドルの信用の絶対を前提といたしておりまして、IMF規定におきましても、金とドルとがイコールの関係で結びつけられて、各国の平価は金一オンス三十五ドルの米ドルをもって表示されることになっております。その米ドルが世界通貨としての地位を下げてきたというところに、問題の基本があるわけであります。従いまして私は、今お話しになりました小汀氏と同様に、ドルの切り下げ、つまり金価格の引き上げという問題は、新大統領の否定と決意にもかかわらず、ドルの実質価値の低下の事実が続いておる限り、厳存する問題である、こう考えておるわけであります。従いましてアメリカからの金流出、ドル危機の問題は、単なるアメリカの景気後退による国際収支の一時的悪化に原因を持っておるものではない。また欧州と日本の生産力が伸びて、アメリカ商品の競争力低下というだけの問題でもないと私は考えております。その根底には一九三六年以来の軍事費増大とインフレーション、それによるところのドル紙幣の減価という問題が横たわっておるわけです。この間ドル価値は半分以下に低落をしたのに、金の価格は二十数年来一オンス三十五ドル、こういうふうに据え置かれておるという、ここのところに問題があるのでありますから、従ってこの減価したドルと金の価格の不一致を是正しない限り、金の流出はとまらないし、この問題の解決はあり得ないと私は考えておるわけであります。総理の所信を重ねて承りたいと思います。
  193. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は遺憾ながら佐々大君とは意見が違います。ケネディもドルの価値は下げない、いわゆる一オンス三十五ドルですか、これを動かさない、これでやっておるのであります。アメリカ経済は、私は早晩立ち直ってくることと見ております。
  194. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 だいぶ総理も予算でいじめられて、お疲れなのか、どうも私の言うことが、いまだに問題の焦点がおわかりになっておらぬと思う。金・ドル問題の基本は、ドルの価値と金の価格との格差にある。従ってこの格差が是正されない限り、金・ドル問題の解決はあり得ないし、金の流出もやまないだろう、こういう観点に立つわけです。私の論点をもう少し進めましょう。従ってケネディがどう言おうと、これは願望であり、希望である。従ってケネディ大統領の決意表明にかかわらず、私はドル切り下げ、金価格の引き上げという措置は早晩とられざるを得ない、こう私は思っておるわけであります。それもあまり遠くないのではないか、こう思っておるわけであります。その理由といたしまして、見通しと理由について一、二点申し上げてみたいと思います。一々具体的に説明する時間的の余裕を持っておりませんけれども、まず第一に、新大統領の短期ドル防衛措置の効果ははなはだ疑問である、こういうふうに思っております。現に金の流出は続いておりまするし、本年一月第一週、第二週の流出高は御承知のごとく二億五千六百万ドル、月に換算いたしますると五億ドルでしょう。現在危険線といわれる百八十億ドルを割って、百七十四億台に落ち込んでおりますことも御承知の通りであります。このまま流出が続きますと、年率に直せば六十億ドルくらいになるわけでありまするが、これに対しましてケネディ大統領が相当な手を打つとしても、その効果を期待し得ないので、もう二、三十億ドルも流出が続くと、きっとドルはもう持ちこたえられなくなるだろう、こう思います。さらにまた、総理は非常に自信が強いようでありますが、西欧の各国の世論も、この問題に対しまして相当きびしいものがあることを、一、二例をあげておきたいと思います。ファイナンシァル・タイムズの一月十七日号は、もしアメリカがあくまで金価格引き上げに応じないならば、自分の方、つまり西欧側で先に金価格を引き上げようという提案を行なっております。またケンブリッジ大学のミード教授は、西欧諸国が対ドル固定レートを放棄して変動レートに移ること、これは当然に外部からのドルの切り下げということになろうと思いますが、これを主張いたしておりますし、オックスフォード大学のロイ・ハロッド教授もまた、アメリカが金価格引き上げに応じなければ、西欧諸国のアメリカ商品輸入自由化措置を中止すべきだとさえ述べておられる。こういうような西欧の世論にもかかわりませず、新大統領が異常な決意をもって臨もうとするならば、これに対しまして西欧諸国もまた一時静観的態度をもって希望をこれにかけようとは思いまするけれども、いかに敬意を表しまして言葉をしばらく慎もうとしても、私は基本的な見方は変わらないと思います。なぜならば、先ほど申し上げましたように、これらの見方はすべてドルと金との格差というところに問題があるということをはっきりととらえておるからであります。  また一方第三番目に、アメリカの現在の景気後退の対策から見ましても、私は金価格の引き上げが早晩必要になってくるのではなかろうか、こう思うわけです。ケネディ大統領は一般教書で、アメリカ景気後退の深刻な現状を率直に認めまして、アイゼンハワー前大統領の楽観説を打ち消して、ほっておいても下期に自然に回復するというようなことは信じておりません。新大統領は景気回復措置をはっきりととることを明言をいたしておることは御承知の通りであります。この場合、インフレ政策へ転換したいのだけれども、インフレ政策に転換することは、それはそのまま金流出を激化されるというジレンマに陥りまするから、御承知のごとく、さしあたって健全財政のワクの中での景気対策を講ぜられておるわけでありまするが、私は結局のところ、インフレ政策に訴える以外に本格的な米国経済の立ち直りはあり得ないのではなかろうか。そうしますと、その前に金価格を引き上げてドル減価と金価格との不一致を是正して、金準備の評価額を増大させておくことが必要になってくると思う。そうすれば外国の短期ドル債権に対抗することができるからであります。すなわちインフレ政策の前提条件として、金価格の引き上げアメリカにおきましても必要になってくるだろう、こういうふうに私は見ておるわけであります。  以上三点を中心に、私はドル切り下げを予見しているのでありまするが、しかしながらおそらく総理の納得を得られないだろうと思います。しかしながら総理の見通しも、またこれは見通しの域を出るものではありますまい。見通しでありまする限り、絶対のものではないはずであります。私も見通しである。あなたも見通しであります。相当の可能性と危険性が伴うものでありまする限り、あらかじめその対策を準備しておくことは、為政者として当然と考えられるわけでありまするが、ドル切り下げに対しまして池田内閣としては、この問題に対して準備検討をされておりませんか。あるいはおられまするか。おられますれば方針を承りたい。
  195. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 いつのときにも平価の切り下げその他の議論はあるのでございます。わが国におきましても、お話の小汀さんなんかがそういうことを言っておられます。ヨーロッパでも議論のあることは私も承知いたしておりまするが、私の経験から、また私の見通しからは、ドルの切り下げは、ケネディが言っておるようにないものと認めております。こういう見込みでございます。従いまして、あるとしてのいろいろの準備は、私はただいまのところしておりません。
  196. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 それでは水田大蔵大臣にお伺いをいたします。あなたは昨年の特別国会の大蔵委員会におきまして、金ドル準備中金保有率を三〇%程度までには上げたい、こう発言されておりまするが、今なぜそういう必要を感ぜられたのか。また三〇%程度まで上げたいというお話でありまするが、現下の情勢のもとでそういうことが可能であるかどうか。可能であるならば、その方法をお教え願いたいと思います。
  197. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように十八億八千万ドルに達した日本の外貨準備のうちで、日本の金保有量は二億四千七百万ドルという、一四、五%の非常に低い率でございますので、これはだんだんに保有率をふやしたいと私は考えております。今後そういう方向に考えていこうということをこの間申したのでございますが、今あなたが議論されているような問題を中心としていろいろ問題があるときでございますので、時期として、日本がまだそういう対策をここで急速にする時期ではないということは、さっき総理から話がございましたように、私はドルの切り下げというのはやはりないと今考えています。この問題は前からいわれている問題でございましたので、私も昨年渡米しました際に、この問題を中心としていろいろ米国の考え方に特に気をつけてこの問題に当たってきたつもりでございますが、今度のケネディのやり方を見ましても、アメリカのドルの実勢の価格と、その金の値段の問題にはそういう問題がございましょう。これを解決する一番の近道は、あるいはドルの切り下げであるかもしれませんが、そういう方法をとるのだとすれば、これはもっと簡単にアメリカの政策転換もやれると思うのですが、これをいかにしてやらないでいくかというところに、今度のケネディ政策を見ましても、それに対する決意の表われがああいういろいろな具体策になって出ておることだと思いますので、私は米国はそういう方針をとるとは考えていません。必ずドル価値の防衛も、米国の国際収支を均衡させて、短期資金の流出を防げればいいのですが、これは防ぐのだ、しかも防げるのだ、従って為替管理や保護貿易主義をとらなくてもやっていけるのだ。あれだけの声明をしてやっていることでございますので、私はこの点に対する特別の対策を今日本でする時期ではないのじゃないかと思っております。将来の問題は別でございます。
  198. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 あったらどうしますか。ないかもわからぬけれども、あるかもわからぬでしょう。あったらどうします。なお、ケネディが決意を表明すると言われますけれども、日本の政府だって、何べん決意を表明したかわからぬ。暴力取り締まりを厳重にして、決して右翼テロの暴力を繰り返さないようにするという決意は何べん表明されたかも知らぬ。むしろ表明があればあるほど、逆向きに事件はふえておる状態である。特に国際的な問題の非常に多いときに、新しい大統領がそのような立場、従来の立場をとるのはあたりまえじゃないですか。もしもその逆に裏が出たらどうします。
  199. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私も財政当局として、財政責任者として、昨年就任いたしました関係で、せっかく日本が今まで、ここまでためてきた外貨が、われわれがその保有の施策を間違ったためにいろいろの問題を起こしたというようなことでしたら、これは私自身にも大きい責任になると思いましたので、特にそういう点を昨年から注意して、いろいろ米国の政策、外国の動きというものを見ながら、これに対する対策を立ててきたわけでございますが、私どもは今のところ米国がそういう方向に行かないのだという確信を現在持っておるところでございますので、そういうことは万が一と言うのですが、万が一にもないと私どもは今思っています。
  200. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 種々対策を立ててこられたという話ですが、どういう対策を立ててこられましたか。
  201. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはまたいろいろ問題がございますので、ここで一々こうだということはちょっと申し上げられませんが、やはり国際情勢に対処するためのいろいろな諸方策は、われわれは研究しているつもりでございます。
  202. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 種々対策を立ててきたと言われた。これから立てようということではないのでしょう。立ててきたと言われておるのですが、どういう対策を立て、どういうことを行なってこられましたか。諸種方策を考え、立ててきたというお話でありまするから、どういうことを考え、どういう方途を行なってこられたか、お伺いいたしているわけであります。
  203. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 将来、私どもがさっき申し上げましたように、金の保有ももう少し日本は率を上げたいというような問題につきましても、時期を見てこれができるようないろいろな準備とか、そういうようなものも私どもはやっておるつもりでございますし、そのほかいろいろドル防衛対策につきましては、もしもこういう問題が起こったときは、自分たちとしてはこういう対処の仕方をしたいというようなものは、この影響を私どもは決して軽視しているわけではございませんので、いろいろの考究をしているという状態であります。
  204. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 金にかえられる時期が来たら金保有をふやしたいというお話でありますが、そうすると今は金保有をふやすことは困難だ、できない、こう考えておられますか。
  205. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 できないということはございません。しかし欧州の諸国も金利を引き下げ、そうしてこのドル流出が激化しないようないろいろな協力政策をとるというようなことで、各国がそういう方向に出ているときでございますから、私どももその間に処して日本もいろいろ施策をする時期というものをやはり考えなければならぬという判断をしておるところでございます。
  206. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 わが国の金・ドル準備の中で金の保有率をふやそうとする場合に、つまり金を買おうとする場合、どういう可能性があるか、どういう方法があるか。その方法が今はどういう状態でふさがれておるのかということを聞きたいのです。
  207. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは米国に買いにいってもよろしゅうございますし、ロンドンの市場で買ってもよろしいし、買う方法はございますが、私は今日本がこれをする時期ではないという判断をしております。
  208. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 その通りでありましょう。せっかくドル防衛の協力を求められておる現在、とても日本の今の状態で、アメリカに向かって一つ金をくれという交渉はできますまい。同時にまたロンドン市場におきましても、御承知のごとく昨年の十月以降の暴騰によりまして、レートを完全に上回っておる状態である。その状態で日本の政府が、あるいは日銀が金を買うということは、IMFの規定に正面から触れる危険を持つわけであります。ですから、普通のルートは今や全く閉ざされておるといってもいいと思います。なぜ閉ざされておるか。なぜ閉ざされておるかというのと、それからあなたがやはり日本も金を保有しなければならないということと、これは同じことじゃないですか。日本も金をふやさなければならない状態に今追い込まれているのでしょう。だから金を買いたいと、こう言われるのでしょう。その場合には向こうが閉ざされておる。今度は日本が金が買える状態になったというときには、これはほんとうはまだ日本が金を持たなくていい状態だということになりませんか。必要なときに金を持たなければ金を保有する意味はないわけです。御所見を承りたい。
  209. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私はドルの切り下げがありそうだから買おうというのではございません。全般として、外貨の保有の仕方としてイタリアあたりが八十何%の金を持っておる。欧州各国はみな四〇%以上を持つというような状態になっておるときに、日本の一三、四%という持ち方は全般的に見て低いと思いますので、時期を見てだんだんに増していきたいという考えを持っておるだけでございまして、特に今ドルが危なそうだから、これを大急ぎで買いたいということを考えておったわけではございません。
  210. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は三年前、去年でなくて三年前に欧米を回りました。そしてその直観として、欧米の国際金融の中で金を買う非常な動きを見てとって、私はわが国の金保有率を見るときに、非常に不安を感じたのです。そして戻ってきて、すぐ三十三年の十月の臨時国会におきまして、多分三十回国会だったと思いますが、この国会において、今あなたが言われたと同じように、ドイツを見ても、イタリアを見ても、フランスを見ても、あるいはエジプトを見ても、このくらい持っておる。ところが日本の金保有率は、同じものは韓国とフィリピンと日本と三国しかない。たった二%だった。こんなばかげた話はないではないか。普通の国並みの準備を進めるべきである。今ならばまだある程度金も買えるから、進めるべきである。佐藤大蔵大臣を中心といたしまして、池田さんは責任がないと言われるかもしれないけれども、そのときの池田さんは副総理格で入閣をされておったはずであります。私はそれを懇々として、切々として訴えた。それからどういう状態が起こったか皆さん御承知の通りでしょう。その年の暮れにほんの少し買いました。それから正月にまた少し買いました。私どもが指摘してから直後に、半年もたたないうちに、二回金を買っただけでありまして、その後は全然放置されて、手をつけられておりません。その時分は買えた状態である。普通に金の保有率をふやせる状態のときに、今あなたのような心配がありますならば、あるいは常識的な考え方をするならば、なぜその場合にとられなかったか。あなたは自由民主党の党員でありましょうから、なぜとられなかったのだろう。お答えを願いたいと思います。
  211. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私はむろんそのとき責任の衝にありませんでしたが、やはりもう少し金保有量をふやしておけばよかったとは思っておりますが、今後も時期を見てそういう方向へいきたいと思っておるわけでございます。
  212. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると私はくどいようでありますが、この問題に取り組んでおりまするから、重ねてお伺いをいたします。  岸内閣当時に金保有量をふやさなかったのは、これは政策の間違いであったと水田さんお考えになりますか。
  213. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは金を保有しようと思うなら実際においていつでもやれることでございますし、私は今すぐにやらないという判断をしているだけでございます。こういうドル問題と離れても、やはり世界のいろいろ金保有の比率を見て、日本の少ないことははっきりしておりますので、これはもう少し保有率をふやしておく方がよかったのではないかと思っております。
  214. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 三年前の第三十国会のときに、佐藤大蔵大臣が同じことを答弁されました。金がほしければいつでも買えるのだから、だから別に心配することはない。今あなた自身はおそらく金融関係のどの人に会ってごらんになりましても、日本の金の保有率の低いことを心配しておられる状態だと思います。いつでも買えるんだということで、岸内閣当時は手を着けなかった。にもかかわらず、やはりドルの不安は解消せず、むしろドルの不安は最も強い形で今のさばりつつある。これに対処しまして、やはりもっと早くから金を保有しておくべきではなかったか、こういう観点に立って、あなたも三〇%程度の金保有率にしたい、こう考えられたに違いないと思う。にもかかわらず、あなたの考えられたときには、今ほとんど不可能な状態に置かれておる。これはまさに岸内閣から池田内閣に続いた一つの経済政策の大きな私は誤りであると指摘せざるを得ないのです。この辺の問題につきまして、言葉を濁さず、池田総理大臣、明確にお答えを願いたいと思います。なぜ買えるときに買おうとせずに、あなたの内閣になってから買う方がよいと判断をされたのか。
  215. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 これは、金に対する観念というものは、各国おのおの違っておるのでございます。ヨーロッパにおきましても、国際収支上でもイタリアは一番たくさん持っている。八割六分ぐらい持っております。またその他の国においても多い少ないはございますが、大体五〇%以上持っているのがヨーロッパの考えでございます。しかし日本人は金を持つことにつきまして、私の見るところでは、ヨーロッパに比較して、金に対しての執着が少ないのであります。こういうことが一つの問題でございます。  それから第二は、御承知の通り、今十八億六千万ドル持っておりまするが、この十八億六千万ドルにいたしましても、昨年の三月、一年前は十三億ドル程度、二年前はこれは十億ドルそこそこ、こういうふうなもので、今の持ち高に対しましての比例を言われるということはいかがなものかと思います。従いましてわれわれは、将来は金の持ち高をふやすことがいいということは水田君とも相談の上にきめておりまするが、急激にふえたということと、そうしてまた日本の外貨の運用として、やはり外国の証券を持っておくということも、これは金利負担の上からいっても金を持つよりは得でございまするから、そういういろいろな点を考えまして、私は過去三年間においてお話の通り二回か三回買ったと思います。そういう事情で金を持つことが、二億五、六千万ドルで、他のアメリカの証券その他を持っておるのが今までの事情であります。だから急激に外貨がふえましたから今後は相当程度の金を持とうということは、われわれは方針としてきめておるのであります。
  216. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 池田総理にしては、私は異なことを聞くわけであります。金の保有率を今私が言っておりまするのは、国際通貨の何にもまさる唯一のものとして、国際通貨の決済手段としての金の準備を言っておるわけでありまして、個人が退蔵をするかせぬか、あるいは個人が金を好きであるとかないとかいう問題とは完全に別個であるはずであります。政府として金・ドル準備の中でどれだけ、最も基本的な、最も信用のおける外貨を持つかという問題の場合の金を言っておるわけであります。従いまして、日本人が金が好きであろうが、きらいであろうが、あるいはイギリス人が金に対して執着を持とうが、この問題とは全然別個である。  それから二番目に比率の話は、だんだんと金・ドル準備額がふえてきておるのだから、その比率で言われるのは迷惑であるというお話でありまするが、それなら絶対額だけでけっこうであります。私が指摘いたしましたときの二%というのは、三年前の金・ドル準備額総額に対する二%だったのです。それがすぐその年の暮れ、一、二カ月たった後に──調べてみましょうか。すぐ暮れに三千万ドル買った。それから新年早々に一億五千七百万ドルを買った。このためにおそらくしばらくいたしますと保有率は一割四分、一四%ぐらいになったと思います。しかし私は今その率を言おうとしているのではない。その率を言おうとすれば、なおさら率は低下する一方でありますから、外国の持っておりまする実際の金保有の量と日本の量とであります。非常にアンバランスという感じを池田総理は、ほんとうに感じられないのですか。あなたが最も手本とされておりますところの自由主義陣営の中の国際通貨準備の中で、日本という国だけが異常に金準備の少ないということを感ぜられないのですか、重ねて伺いたいと思います。
  217. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 感じておりまするから、金をふやすように方針にきめていっておるのであります。
  218. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 いつ感じられましたか。そういう答弁なら私は何ぼでも食い下がる。
  219. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 去年の十月ごろでございましたでしょう。
  220. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 去年の十月ごろ、何を動機に突如として感ぜられましたか。
  221. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 金の持ち高につきまして、どこかで質問があったと思います。そこで私は、取り寄せてみましたところ、二億五千万ドル前後でございまするから、これは他国に比べても非常に低い、今の十八億六千万ドルにすれば一五・六%、岸内閣のときでは私は二〇%あるいはそれ以上だったかとも思います。こういう状況を見ましてこれは少ないぞ、だんだんふやすようにしていこうということは、去年の九月か十月であったと思います。これはドル・ドライブの問題とドル・セービングの問題とは別に、日本としてももっと持つべきじゃないか、こういうことを大蔵大臣に話したのでございます。
  222. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 おそるべき感覚だと思うのです。日本の金・ドル準備の中で占めておるところの金の比率なり量というものについての、これは少な過ぎるという感じを、去年の九月か十月ごろ初めて持たれたのですか。それからその前は二〇%程度は持っておったんだろうくらいに、ほんとうに考えておられたのですか、重ねてお伺いしたい。
  223. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 その通りでございます。
  224. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 あなたは岸内閣当時、先ほど申し上げましたように私が最も問題を指摘し、そうして佐藤大蔵大臣は多分あなたとも、大蔵大臣でありますからいろいろ意見を疎通しながら私は問題を展開し来たったと思います。その時分に持っておった日本の金保有高はわずかに二%ですよ。それを二〇%と錯覚をされる感じ、それから去年の九月か十月ごろ少な過ぎるなあと感じられる感じ、あんまり池田さん、大ざっぱ過ぎやしませんか。それで経済はおれにまかしておけと言われましても、私はとてもまかせられませんね。
  225. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 二%というのはどういう計算になりますか。
  226. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 当時の数字は忘れましたが、あとで取り寄せてみましょうか。大蔵大臣、それなら三年前、主計官でもだれでもいい聞いてみて下さい。政府側から答弁さして下さい。
  227. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 実は私の二〇%というのは、三年ぐらい前は外貨保有高十億程度ではなかったかと思います。そうして二億五千万ドル程度持っておったと思うのであります。
  228. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 はっきり見て下さい。
  229. 賀屋正雄

    賀屋政府委員 三十三年の暮れの国会で御質問がありました以後、金を若干買っております。それを買います前の三十三年末の外貨保有高は八億六千百万ドル、その当時の金は九千万ドルでございまして、パーセントにいたしまして一一%というようなことになっております。それからニューヨークとロンドンの市場におきまして、約一億五千万ドル程度買っております。
  230. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 その三十三年の買う前──三十三年の暮れと三十四年の正月に買う前にどれだけ持っておったか。
  231. 賀屋正雄

    賀屋政府委員 三十三年末の買う前は九千万ドルであります。
  232. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 何%になりますか。
  233. 賀屋正雄

    賀屋政府委員 一一%でございます。
  234. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今数字を持ち合わせませんから、この問題はそれじゃ留保いたしましょう。ただ私は先ほど来申し上げておりますように、この問題の非常に深刻な状態に対しまして、心からなる危惧の念を持って見ておるわけであります。従いまして、もしドル切り下げの危険に対する備えを行なおうとするならば、現在とられるべき経済政策の基盤といたしまして、先ほど来申し上げておりまするところの金保有をできるだけ増加するという一点と、さらにまた予算の性格としては三十六年度予算の性格を中心にして考えまして、景気に対して中立的な予算を編成して景気変動に対する弾力性を保有し、特に物価抑制策をとらなければならぬという第二の予算性格の問題と、第三番目に輸出促進、国際収支の維持のためのでき得る限りの措置という三点を、最も中心に考えておるわけであります。にもかかわらず池田内閣の所得倍増を中心とするところの政策並びに三十六年度予算の性格は、まさに私の考え方とは正反対な状態であるわけでありまして、不安の念を禁じがたいのでありまするが、現在の国際的な経済状況とドル不安の状態に備えまして、私の提示しましたところの三点に対する総理大臣の基本的な考え方、御批判をいただきたいと思います。
  235. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 まことに恐縮でございますが、三点をちょっともう一回おっしゃっていただきたい。
  236. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 第一点は、金保有をふやすこと、第二点は、景気に対して中立的な予算の編成を行なうこと、従って景気変動に対する弾力性を持たせることと物価抑制の措置を配慮することです。三点としましては、当然に輸出振興、国際収支の維持のための措置を強力にとること、これが考えられ得るところのドル切り下げの危険に対する目下の対策ではなかろうかと考えるが、御批判をいただきたい。
  237. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 金の保有につきましては、先ほど申し上げましたごとく、最近二、三年におきまして外貨保有高が非常に多くなって参りました。徐々にふやしていこうという方針でおります。なお三十六年度の予算は中立予算、こういうことでございますが、私も中立予算だと考えております。歳入歳出が合いまして、一般会計で公債、借入金をしていないのです。これは中立予算でございます。従いまして、第三の物価抑制、私は大体卸売物価は下がりぎみだ、消費者物価につきましてはできるだけの措置をとって、不当な上がり方は許せない、とにかく安定、消費者物価も安定の方向をとっていこうといたしております。そしてまたこの輸出振興という問題は、これはもうわれわれの最も重要な政策でございまして、輸出振興につきましては、一応今予算で各般の措置をとっておりまするが、世界の情勢を見ながら私は輸出振興策をこの上とも続けていきたい、強力に進めていきたいと思っております。
  238. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今の三点を中心といたしまして、池田内閣の所得倍増政策の性格並びに三十六年度予算の性格の吟味に入りたい、こう思ったのでありまするが、予定の時間もほとんど来たようであります。従いまして、私はまことに残念でありまするが、以下の各論を中心としたところの本格的な予算批判の問題は、また別の機会に譲りたいと思います。  ただ最後に、考え方の基本について、具体的な問題一つだけをお伺いをいたしたいと思います。所得倍増計画の目的は、わが国経済の高度成長とともに、個人所得の拡大と安定を目的としておるものだと私は思います。従いまして、年次計画的な実行予算の骨格をもってその裏づけとなさなければ意味をなさないものだ、こう考えておりますが、そういう状態の所得倍増計画であり、三十六年度予算がそのような格好で組まれておるかどうかという点について、最も小さい具体的な一つの例をもって内容を確かめさしていただきたいと思います。  低所得者層の所得拡大と生活安定を目標とせられて、今回の所得税の免税点の引き上げが行なわれたものだと思います。政府案によりますと、五人家族で年収三十九万八百七十円を免税点といたしておりまするから、月収にいたしますと、平均三万三千円弱であります。この三万三千円弱というものをどういうふうに考えておられるのかということが私の質問の中心であります。つまり来年度の財源的理由に基づいてこの免税点をきめられ、三万三千円という基準の生活をしいようとせられるのか、あるいは所得倍増計画の中で安定した標準生計を三万三千円程度と見た計画目標なのかという質問なのであります。もし前者でありまするならば、十カ年計画でさらにどの程度にまで引き上げようとする目標を持っておられるのか。もし後者でありまするならば、三万三千円弱の家計支出、その支出の想定内訳をどういうふうに考えられて、三万三千円でもって標準生計が営めるという考え方に立たれておられるのか伺いたい。特に私は、この際にも、もし三万三千円をもって標準家計を目標とされておりまするならば、また一方におきましては、倍増計画は産業資金の確保のために、平均大体一六%程度になる個人貯蓄をあてにいたしております。従いまして、実際は三万三千円の中から、一六%を減じて、二万七千七百二十円というのが、標準世帯の標準生計の内容になろうかと思う。しかもその標準世帯というのは、夫婦とそれから十五才以上の子供が一人と、未満の子供が二人、合わせて五人というわけになりますが、この五人の生計費を二万七千七百二十円でまかなおうというのでありますから、その支出の標準家計簿を私は説明を願いたい、こう思うわけであります。これでは足らなくて、所得倍増計画を進めるに従って一つの安定した生計の目標を持とうということでありますならば、それはどの辺に目標を持っておられるのか、計画でありますからその計画目標を明確に示されたい、こう思うわけであります。
  239. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 所得倍増計画につきましては、十年以内に一つなし遂げよう、こういうふうに国民の御努力を願おう、こういたしておるのであります。従って各年別がどうなるかということは、ただいまのところ年別計画はできておりません。私はこれから八年後、九年後の分はなかなかむずかしいのでありますから、とりあえず三年九%というので打ち出しておるのでございます。この三年間につきましても、できるだけ早い機会に三年間くらいはやってみたいという気持でおるのであります。  それから五人家族で三十九万円が課税の最低限度だ、こうなっておりますが、将来これをどんどん上げていきたい、どの程度にやっていくかということは、やはり年次別の生産、所得の増強によって考えられなければならぬと思うのであります。三十九万円のうちで貯蓄率が一五%とおっしゃったようでございますが、私は都市で一三、四%、農村で一〇%くらいに思っております。それを差引いたあとの生活態様につきましては、私はまだ検討いたしておりません。関係事務当局から答えさせます。
  240. 大來佐武郎

    ○大來政府委員 倍増計画では、ただいま総理からお答えございましたように、十年以内に国民所得を倍増するということで、国民所得が倍増いたした場合の姿を一応描いておるのでございますが、この年次別のものは、毎年の年次の翌年次経済の見通しという形で、その年々に翌年次をはじくという建前になっておるわけでございます。国民所得が二倍になりましたときの勤労世帯の消費者支出の総額として一応はじいておりますのは、この勤労世帯の世帯構成一人当たり消費水準というものを一年間の金額ではじいておりまして、これが十七万九千円という形になっておるわけでございます。従いまして、この算定におきましては、特に免税点との関係考えたと申しますよりも、国民所得が二倍になりました形の中における個人消費の姿を考えまして、それから算定いたしたものでございまして、ただいま御質問のありましたように、免税点と直接の関係が出てくるような形にはなっておりません。
  241. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、今回の免税点から出てくるところの三万三千円ないし二万七千七百円何がしというものは、これは財源的な措置で、この辺まで今引き得るから引いたということだけでありまして、何らの具体的な目標も内容も持っておらぬ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  242. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私も、減税につきましては、これは御承知の通り、所得倍増政策をとる以上、年々国民所得は上がっていきますが、その場合に国民の租税負担をどの程度に見るか、一定の基準を置いて、それ以上国民負担が多くならないようにしたいという考えから、今年度の減税の幅をいろいろはじきまして、そうしてことしは法人税、所得税中心の減税をする。この両税の減税の割合も大体均衡をとった割合をきめまして、そうして、その範囲内で所得税をどういうふうに減税するかということにおきまして、御承知のように、課税所得七十万円以下の中小所得者を中心の減税をすることをきめました。そうして標準世帯が大体二割程度の減税になるように、一つのめどを持ってその他との均衡をとる。また企業の体質改善という面から見る減価償却の問題についても、やはり二割の短縮というようなものを目標とするというようなことで、この間いろいろ技術的な問題、均衡の問題で税制調査会で長い間研究をしていただいて、その案によったという次第でございます。
  243. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は、所得倍増計画の内容を見ましても、説明書を見ましても、所得倍増計画という限り、やはり計画性を持ってはっきりと目標を定めて、個人所得としてどの辺の所得を目標として生活を安定させようかという具体的な内容を当然含んでおる、こう考えまして、今度の免税点の措置も、免税点を今後だんだんと上げることによりまして、その目標とするところの個人所得の内容をはっきりと描いておられるのだ、こう考えたのでありますが、企画庁のそろばんと、それから財源措置をもって適当に考えてやられる大蔵省の考え方と、これは計画性を持っていないものだというふうに感ぜざるを得ないわけであります。そうすると、やはり倍増論あるいは倍増政策というものは、選挙スローガン的な一つの目標でありまして、具体的な計画だ、こういうふうな考え方は成り立たない、こう思うわけであります。もう時間もありませんし、その内容について実は具体的に触れる予定でありましたけれども、割愛をいたします。  最後に私は、所得倍増計画を中心として、その初年度としての三十六年度序算の内容を吟味しておったのでありますが、今申し上げましたように、だいぶ私どもがまじめにこの問題に取り組み過ぎておりまして、政府の方は必ずしもそういう態度でなかったということに対して、心から遺憾の意を表しておく次第であります。さらに国際収支に対しまして、特にケネディ大統領のドル防衛策を中心として巻き起こりつつあるところの現象に対して、国際収支の問題について、あるいは貿易激化の問題について、さらにまた国内的にとられておるところの金利引き下げ政策の矛盾について、これから予想されるところの輸出入取引法改正の方向の危険性について等々お伺いをし、さらにまた農産物の自由化の要請は今の問題とともに相当強く押し迫ってきつつあるが、これに対するところの方針を定めておられるのか、あるいは具体的な検討を開始されておるのかどうか、さらにはまた今度のドル防衛策で端的に現われ得る可能性のあるところの軍事援助に対する打ち切りあるいは削減を中心といたしまして、わが国の第二次防衛計画の変更が当然に予想されておるのではなかろうか、この辺の具体的な内容について承りたいと思いましたが、時間の関係上、これを割愛をいたします。  ただ、最後に一点だけ。せっかく農林大臣見えておりますので、予想されるケネディ政策の前に、農産物の自由化の要請は非常に強く現われてくるだろうと思います。そしてまた、昨年のこの予算委員会において、私が最も強く自由化の問題の中で農産物の非常に強い影響とこれに対する対処方針の困難性を指摘して、自由化の激化にもかかわらず、農産物の自由化に対しましては、農村の本格的な体質改善に向かう方向と、ある程度の内容が見つかるまでは、ほとんど不可能であろうということを指摘し、当時の農林大臣もこれを肯定されておったのでありますが、今度のドル防衛策は、相当きびしく迫って参ります。その際に、農林大臣は従来の農林省の方針をもって対処でき得るかどうか、見通しと決意をお伺いいたしたいと思います。
  244. 周東英雄

    ○周東国務大臣 農産物の輸入に関しましては、従来から非常に慎重な態度をとっておるわけでありますが、ことに御指摘のようなドル防衛対策ということが出て参りますけれども、私どもはドル防衛対策というケネディ政策というものがあろうがなかろうが、農産物輸入につきましては、あくまでも内地農村、農業というものの立場を考えて、これに処置をいたしたいと考えております。ことに御指摘のように、アメリカが特にこの点から農産物輸入を強制するということはないかというお話、御懸念であります。私どもは、農産物輸入に関しましては、ガット加入国の一員といたしまして、ガットの原則がやはり公平無差別輸入というものが原則になっておりますから、特にケネディ政権のドル防衛政策が出て参りましても、アメリカだけが特別に日本に輸入を強制してくるということもできない、私どもはあくまでただいま申し上げたような方向をもって対処いたしますし、自由化を促進いたしますについても、品目別に、たびたび申しておりますように、農業保護という立場からいたしまして、内地農村における産物ごとに国際競争力に耐え得るような品質改良とかあるいは近代化によってコスト・ダウンする、あるいはやむを得ないものにつきましては価格差の補給をするというような処置をとらない限りは、自由化の方向には進んでいけない、かような政策は従来もとっておったところと変わらない方向であります。
  245. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 これで質問を終わりますが、私はきょうの質問を通じまして、直感をいたしましたことは、池田内閣の激動しつつあるところの世界経済に対するかまえに対しまして、非常に不安の念を一そう強めたことを明確に意思表示をいたします。同時にまた、金流出とドル危機の問題に対しまして、池田総理は相変わらず楽観論を持って終始されておりまするが、この問題は一そう険悪な状態で世界経済を強く風靡して参ろうと思います。私は先ほど申し上げましたように、ドルの引き下げは早晩行なわれるだろうという予感を持ってこの問題に立ち向かっておるわけであります。考えの違い、見通しの相違はありましても、あくまでも日本経済を守ろうという観点に立って問題を提起いたしておるわけであります。どうかこの問題について一そう検討を進められて、対処を誤たないようにされんことを強く要望いたしておきたいと思います。私の心配をいたしておりますのは、ドル危機あるいは金流出の問題に対する認識の仕方が、総理と非常に違っておるということ。従いまして、今度のケネディ政権が一応行なおうとしておるドル防衛措置が直接に日本に及ぼす影響という問題と、先ほどのドル危機の問題と、ほんとうははっきり峻別をして考えておるわけであります。ドル危機の問題と、それから直接に第一義的にドル防衛措置として行なわれるケネディ政権の政策が直接に影響を及ぼす問題と、今申し上げましたように、峻別をしながら考えておりますので、従ってケネディ政権のこの政策は、また別の意味で非常にきびしく日本経済に迫ってくる面を感じておるわけであります。従いまして、これにつきましても、選挙中にあげたスローガンだからということで所得倍増あるいは三十六年度のあの大きな予算のワクに幻惑されず、国内需要の喚起に焦点を向けて、そうして日本の経済を考えられて、国際経済的な観点を見失わない立場で対処されんことを重ねて希望いたしますと同時に、前段において日本の国連外交に対して申し上げましたところの、われわれの不満と不安に対しまして、率直な批判をいただきながら、十分に考慮せられんことを特に希望いたしまして、質問を終わりたいと思います。(拍手)
  246. 船田中

    船田委員長 明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十四分散会