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1961-02-03 第38回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月三日(金曜日)    午後三時四十六分開議  出席委員   委員長 船田  中君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 横路 節雄君       相川 勝六君    赤澤 正道君       井出一太郎君    稻葉  修君       臼井 莊一君    江崎 真澄君       小川 半次君    上林山榮吉君       菅  太郎君    北澤 直吉君       倉石 忠雄君    櫻内 義雄君       園田  直君    田中伊三次君       中野 四郎君    中村三之丞君       羽田武嗣郎君    橋本 龍伍君       前田 正男君    松浦周太郎君       松野 頼三君    三浦 一雄君       山崎  巖君    淡谷 悠藏君       岡  良一君    木原津與志君       小松  幹君    河野  密君       田中織之進君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    野原  覺君       長谷川 保君    松井 政吉君       佐々木良作君    西村 榮一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 古井 喜實君         農 林 大 臣 周東 英雄君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 木暮武太夫君         郵 政 大 臣 小金 義照君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 池田正之輔君         国 務 大 臣 迫水 久常君         国 務 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         内閣官房長官 保岡 武久君         法制局長官   林  修三君         総理府総務長官 藤枝 泉介君         警察庁長官   柏村 信雄君         大蔵政務次官  大久保武雄君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君  委員外出席者         会計検査院事務         総長      大沢  実君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算  昭和三十六年度特別会計予算  昭和三十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 船田中

    船田委員長 これより会議を開きます。  昭和三十六年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。田中伊三次君。
  3. 田中伊三次

    田中(伊)委員 一昨日起こりました中央公論の社長宅で行なわれた殺人事件、いわゆる嶋中事件について、きょう劈頭総理の御決意伺いたい、また法務大臣、警察庁長官等の御所見も伺いたいと考えておりましたが、すでに参議院と衆議院の本会議でこの問題が熱心に論議せられて、こまかい対策についてはわが衆議院におきましては与野党一致意向で、法務、地方行政連合審査会まで設ける方針がきまった。そこでこの席にこれを譲って、根本的対策にしっかり力を入れたい、こう考えて、きょうはそのことに触れません。大臣諸公にもお手元に差し上げてある私のプリントによりまして、順次お話を申し上げていきたい。そこで時間が二時間というかたい約束でありますから、私の項目はこれを読み上げるだけでも相当時間がかかる。かりに答弁を一時間要しますと、私のしゃべる時間は一時間ということになるから、そこでそのプリントが渡してあるので、よくそれをあらかじめごらんになって、要領を得たる結論お答えを願うように、あらかじめ私から要望を申し上げておきます。  まず第一に大蔵大臣伺いたいことは、第二次補正というものが出ておる。あなたは第一次補正を出したときの言明——私の記憶違いならいたし方がないが、第一次を出したときの言明は、現段階における見通しにおいては、第二次補正を出す意思がない、こういうことを明瞭に言明をされたものと私は承知をしておる。どういうわけで、どういう事情で、どういう当時見通しがさだかでなかった要素があって、ここに第二次補正を提出されるに至ったのか、審議をするにあたって、この点をまず第一に明らかに願いたいと思います。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 第一次補正の際に私から申し上げましたことは、現在確実に見込み得る増収をもって公務員のベース・アップその他緊急に処理を要する事項について補正予算を組んだということでありまして、従って、今のところ第二次補正考えておりませんと私は答えております。事情がどう変わっても第二次補正は絶対にやらないんだと申し上げたことはございません。御承知のように、まだ当時は税の見積もりにつきましても不確定要素が非常に多かったときでございますので、あの際における見込み得る歳入をもって歳出に充てるということでございます。その際北山委員からの御質問でございましたか、もし見込み違い自然増が多かった場合は……ということでしたが、これは百億、二百億というような少額な場合にはむろん問題はない。また愛知委員質問でございましたが、相当多額の自然増があるような事態になった場合はどうするかという構想を述べまして、そういう事態には私はそういう措置に賛成であると答えておったわけでございまして、当時は確実な見積もりの範囲の補正をやったわけでございまして、どんなことがあってもやらぬと申したのではございません。これは田中委員の御記憶違いだと思います。
  5. 田中伊三次

    田中(伊)委員 外交の問題に触れたいと思いますが、何といっても日本立場外交の最大の問題は、国連強化に関する問題と私は承知をする。安保条約を、非常な難関であったにかかわらず、これをようやく制定、効力を発生するに至った。この安保劈頭第一条の約束から申しましても、日米両国は、国連をして世界平和の大目的、大任務を達成せしむるためには、何としても両国国連強化に力を入れよう、こういうかたい約束安保の第一の目的であることは総理も御承知通りであります。承るところによると、総理国連強化には大へん熱意をお持ちになっておる。具体的な御意思を拝見をしてみると、国連におけるわが国出先機関は、機構の上でも人員の上でも拡充強化をしたいんだというところまで御意思が現われておるやに承るのであります。大へんけっこうなことと思うが、私がこの席で伺いたいと思うことは、役所の機構強化したり、人間の数をふやすということによって、国連わが国出先機関を将来どういうふうに運用を改めていくお考えか、国連任務を達成せしめる上に、国連強化するんだという日米共通の、共同のこの重大任務に照らして努力をする、こういう考え方に立ってお答えを願いたいと思うのですが、拡充強化された陣容、その機構というものを、どういうふうに運営をしてこの期待にこたえられるお考えか、これはまず池田総理大臣よりお伺いをしたいと思います。
  6. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 平和維持機構としての国連の機能を達成さすためには、やはりお互いが相互依存関係におきまして協調的精神を発揮することが第一であります。また国連は公正な世界世論を反映するところである、私はこういう二つの問題につきまして力を注いでいきたいと思います。従ってよくいわれておりますが、国連が宣伝の場所になる、こういうことはできるだけやめまして、ほんとうに建設的な平和維持あるいは世界経済協力機構、こういうことに向かって進まなければならぬと思います。従って今までのわが国機構につきましても、私は少し物足らぬのではないか、もっと人的質もよくするし、また活動につきましての経費その他について、許す限り潤沢にして、もっと積極的な活動をしていきたい、あるいは代表権を持つ人が四名か五名かと思っておりますが、単に今までのキャリアだけでなしに、民間のそういう方面に精通した人も入れまして、全知全能で進んでいきたい考えでございます。
  7. 田中伊三次

    田中(伊)委員 AA諸国情勢をちょっと見ただけでも、極東地域、それから東南アジアアフリカ、中近東、こういう地域を一覧をしただけでも、四十四カ国も五カ国にも及ぶ国が、国連中心として複雑な動きをしておる。こういうときに、日本の今日までの国連中心とする外交やり方を見るというと——私は専門家でないからよくわからないけれども、この外交やり方を見るというと、どうも弾力性に乏しくて、単一な外交をやっておるのではなかろうか。各地域々々において、専門担当官を赴任せしめて、そして専門担当官の手によって、自分の所管する地域については徹底的に、国連をめぐるその国の動向をとらえるようにしていくことが必要ではなかろうか。あまりにもその動き複雑多岐をきわめておるものが多いと私は思うのです。従ってせっかく機構強化せられ、人員をふやされ、今総理のお言葉によれば、将来においては許す限り予算の面でも考えよう、そこまで御熱意をお持ちになっておるものならば、いま一段進んで、一つ専門部門別運営を行なって、国連をめぐる各国の動向というものは、その専門部門を担当する役人をしてこれをキャッチせしめる、そうして遺憾なくわが国がこの対策を講じ得るように努力をしてはいかがなものか。これは私のいろいろ考えました結果の意見を申し上げるわけでありますが、そういう努力を払ってみればどんなものか、こう考えるのでありますが、いかがでしょう。
  8. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 お話通りでございまして、西欧関係あるいは東南アジア関係、ことに新興のアフリカ関係、中南米、おのずからブロック別になっておるような状況でございます。私はそういう点も考慮して、外務大臣に善処を願うつもりでおります。
  9. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それから外交問題では、次にわが国にとっては非常に大切な、中共問題に触れたいと思います。  まず虜頭に、私はどうしても池田総理から、中共に対する観察といいますか、めんどい言葉で言えば池田さんの中共観を明らかに承って、現われんとしておる現象、すでに現われておる国際上の政治面の諸現象についての、具体的対策というものを順次伺っていきたい、こう考えております。  お話を承る前に、ちょっと外務大臣に私から少しいやな話をするようですが、聞いてみたい。それはどういうことかというと、昨日の外務委員会の席において、中共の主張しておる対日三原則と称するもの、これを守るとか守らぬとか、これは承認するとか承認しないとかいう発言を、外務大臣がされたかのごとく、ラジオ、新聞一斉に全国に放送された。これは外務大臣によく御注意を願いたいと思うのですが、及ぼすところの影響まことに甚大だというのが私の考えるところであります。外務大臣はどういうお考えで三原則問題にお触れになったものか、委員会が違うから、二重になってもいいから、ここで一つ大事なことだから、一言、昨日の言明を繰り返していただきたい。結論でよろしい。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 昨日外務委員会におきまして、バンドン会議の五原則という、すなわち領土権を互いに尊重する、互いに侵犯しない、内政に干渉しない、平和共存でいく、平等互恵立場を守る、この五原則というものがあって、日本もこれに高碕氏その他が行って調印しました。それに関連して、その精神にのっとって対日三原則というものが中共側からいわれておる。すなわち日本に対して、中共を敵視しない、二つ中国陰謀に加担しない、日中友好を妨げない、こういう三原則というものができているが、これを認めるかという御質問でございました。そこで私は、日本中共を敵視した覚えはない、二つ中国を作る陰謀に加担した覚えはない、これからも日中関係友好調整考えたいと思っていることであるから、いずれも私はこの三つのことに反するごときことを従来も政府はとっておらぬと思う、われわれもさように思っておる、そういう意味において認めるということかというなら、これは認めるということになる、こういうことを申したわけでございます。われわれといたしましては、すでに田中委員承知通り内政不干渉相互立場尊重、そして懸案を話し合いによって解決する、こういう立場でこの関係改善に臨んでおるということは御承知通りです。この関係は、すべての国に対してそういうことでやって参りたいという外交方針をとっていることは御承知通りでございます。さようなことでございますから、どうぞ御理解を願いたいと思います。
  11. 田中伊三次

    田中(伊)委員 そういう態度でお話しになったということで、私はものを率直にそういうふうにお答えになったものと受け取りたいと思います。受け取りたいと思うが、池田内閣総理大臣の本会議における演説を承ってみると、日中関係改善わが国は非常に重視をしておるのだ、中共大陸という言葉を次にお使いになっておりますが、中共大陸との貿易は、その増進を希望する、歓迎するのだということを、総理大臣が、今までの保守党総理大臣では初めてわけのわかったことをおっしゃった。そこで、ただいまの外務大臣答弁の内容を聞いてみると、そこまではあなたのおっしゃることと抵触はない。その次に言うておることがよくない。二つ中国関係することは困るという——陰謀加担というニュアンスはありますけれども、中国の言っておりまする真意は、おそらくは二つ中国などというようなことにタッチをしてもらっては困るという意味であろうと思う。あなたはそういう意味においてこの三原則を認めたということになると、二つ中国ということはノータッチでいかなければならぬという理屈になるが、日本のこれからの外交をやっていくのに、二つ中国ということにノータッチで、一体外交をやれるのか。池田総理大臣仰せになることを拡張してごらんなさい。どうなる。それは簡単にいきませんよ、そういうことは。池田総理仰せになることをそのままにとっても、事実上存在をしておる中国というもの、中国大陸というもの、これは事実存在をしておる。日本外務大臣承認するとかせぬとかいう問題じゃない。事実存在をしておる。そういう事実存在をしておるものと日本国との間は両国間の改善を希望する、これを重視する、両国との間の貿易強化ということを期待するんだということは、どういうことなんだ。国際法承認を与えるといなとにかかわらず、事実上存在をしておる二つ中国というものの存在を認めた前提に立たなければ、この言葉は出てこぬじゃないか。世界九十九カ国のうちの相当部分の国が、中国に対していろいろ好意を持っておる動向というものが世界的に出てきている。日本の国が無視してやるとかやらぬとかいってみたところが、やるとかやらぬというようなことを日本の国が単一の考え方で、世界情勢を離れて推し進め得るもんじゃない、こういう状態にあるときに、大陸台湾政権というものの二つ考えないで、これを一つ考えて、中共の言うように、台湾はこれは中国大陸の国内問題で、中国大陸の一部であるなどという考え方に立たそうというのが中国の三原則意向です。そんなものを認めるなんというわからぬ話を答弁でやって、台湾はどうなる。もう台湾というのは捨てっちまうのか、これは台湾から小言がこない間に私が話しておく。台湾は捨てっちまうという話なのか、こういうことについて非常な誤解を招くのではなかろうか。池田総理のおっしゃる通り答えておけばいいのです。二つ中国問題まで含めて、それを承認するといえばすることになりますなんて要らぬことを言う必要はない。ここのところはいかがでしょう、外務大臣もう一度。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。  二つ中国を作る陰謀に加担しないということを、私どもの気持として表明したのであります。御承知のように、サンフランシスコの講和条約第二条(b)項で、日本は、台湾、澎湖島に関する権利、権原その他請求権の一切を放棄しておるのでありますから、これについてわれわれはとかく言うことはできない立場にあります。しかも、中共側は今日まで、日本保守党政権というものは二つ中国を作る陰謀に加担しておる、こう言っておりまするから、われわれはさような陰謀などということを考えることもなし、考え立場にないのだ、従って陰謀に加担するなどということはない、こういうことを私は考えまして、その意味で表明したのでございます。もちろん私も本会議演説で申しましたように、中共の問題というものは、世界全体の立場において高度の政治的判断によって考えるべき問題であると存じております。しかも御設問がございましたので、われわれはそういう敵視をしておるなどというふうに見られるいわれはないものであります、こういうことを申した次第でございます。
  13. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それでよほどはっきりわかりましたが、それではこういうことですね。外務大臣がこれから将来もいろいろ発言なさる、なさらなければならぬ機会があろうと思うが、こういうことですね。今外務大臣のおっしゃるところをはっきり私が別の言葉で言うと、二つ中国関連をして、それを作り出そうとするような陰謀に参加をするようなことはする意思がないという意思表示をしたのだ、しかし二つ中国存在大陸中国台湾中国と、その二つ中国存在というものは無視するというような意味ではない、事実上存在する二つ中国は無視する立場に立つんじゃないんだ、こういう意味に解釈をしていいのですね。
  14. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、主として力点を、日本中共を敵視しておる、こういうことをしきりに言われまするので、そうではないのであるということに置いたのであります。すなわち、第一項の敵視しない、これからも友好を妨げない、二つ中国を作る陰謀に加担しない、こういう意味で、そういうことをやってないのだということが三原則承認ということになるのならば、それは承認かもしれぬということで申したのでございまして、事実は、田中委員仰せられるように、まさに中国大陸において事実上の支配権を持っておるものと、台湾におきまして政権を持ってその地域を支配しておるもの、これは現実としてあることは私どももとよりでございまして、これからないというのではございません、今までそういう陰謀に加担したことはなかったんだ、こういうことを申したのが私の真意でございます。
  15. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それでものがはっきりしましたから、その言明通りにお考えを願いたいと思います。  そこで、これを明らかに伺った上で総理中共観伺いたいのでありますが、何だか中共ということを言うと、すぐに保守主義といいますか、現状維持派考え方によると、何だか思想をこわがって思想をいやがっておる、こわいものは思想なんだという考えがある。これは私はきょうは総理に根本問題として伺ってみたいと思うのでありますが、私の考えを一口に申し上げますと、政治がよくて経済が豊かなら思想はこわくないのだ。政治がよいということはどういうことなのか。それは世論に反逆した政治をやらぬことだ。多数党が一方的に世論に反逆した政治を推し進めるということはよくない。しかし世論とは何だという問題はあり得る。これは真剣に考えなければならぬが、かりに世論尊重政治をやって、世論が間違っておるために政治の結果が間違ったということなしとしないが、そういう場合でも反撃はないのです。世論に応じた政治をしたのですから反撃はあり得ない。世論が得心をする、世論が改まるのを待って、これに乗って新たなる政治に手をつけるという考え方が、私の言うよい政治、豊かな政治というものです。現状日本のごとくに、だんだん所得が伸びる、生産が伸びる。しかしながら、所得生産が伸びるにかかわらず、国民各層間の所得の格差は漸次縮まる傾向になってくる。昔の言葉で言えば、貧富の懸隔が縮まってくる、理想を言えばなくなってくる。そういう国全体としての、私の言う豊かな政治、豊かな経済が必要であると考える。今日の日本経済段階においては、経済企画庁長官演説の中にも言明されておるように、もう中共、ソ連の持っておる思想などというものをこわがる必要はさらにない、いやがる必要はさらにない。これをこわがったり、いやがったりするのは、する方が間違いだ、こういう考えに立っている。そして台湾政府も無視するのではないが、総理のおっしゃった中国大陸も無視はしないのだ。こういう考え方に立って参りますと、総理仰せになったように、日中両国国交関係というものは改善されることが望ましいという言葉が出てこなければならぬ。また、政府間協定をするといなとにかかわらず、大陸日本との貿易増進ということは、中小企業のみならず、わが国財界、政界をあげて腹からこれを希望して、これに協力をするという考えになろうというお考えは、まことに当然過ぎるほど当然で、今日のわが国経済の実力をもってすれば、これはちっとも無理なことではない。これでやり上げていかなければならないものだと私は考えて、総理仰せになった両国国交改善貿易促進歓迎という二つのお言葉を理解しておるのでありますが、総理中国観をお伺いをしておきたい。
  16. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 大体田中さんと同じ考えでございます。私は、共産圏諸国とも国交を結んでおるのでございます。共産主義国だからこれは絶対に排撃するというわけのものではございません。また自由国家群はおおむねそういう考え方を持っておるのであります。ただ、御承知通り朝鮮事変以後におきましては、中国のいろいろな政策につきまして、平和を好まない考え方じゃないかという疑念を持っておるのが自由国家群の間に相当あるのであります。そこで、ほんとう中国世界の平和を望んでいるということになれば、おのずから他の共産圏と同じような方向にいくべきものと考えております。だから中国政策に対する認識の問題だと思います。
  17. 田中伊三次

    田中(伊)委員 そこで、私は、近く迫られるであろう具体的な国際情勢について、中国関連をして日本が対処をすべき腹がまえを必要とすると思う問題が一、二ございますので、それを伺ってみたい。今私が申し上げましたようなことに御同意をいただき、同じ中国観をお持ちいただいて、歴代の総理言明をしなかった言明がみごとに本会議の席上において表明をせられた。この言明飾り言葉でないのだという立場に立って、私は、しっかりこの御決意の実現に対してわが政府は邁進をしてもらいたいという希望であります。  そこで具体的に申し上げますと、世界情勢を私がここでくどくどしく説くまでもなく、外務大臣総理大臣承知通り状況で、中国をめぐる動向——国連加盟九十九カ国といわれておる。これはまだ百になっていないようでありますが、九十九カ国の中で、中共問題について同情をするものの決をとってみると、外務大臣承知通り、七票か八票の差しかない。こういう段階が今日の段階であります。こういう段階がだんだんと、これが七票になり六票になり五票に迫るのかどうかわからぬが、この状況のままで秋の国連総会を迎える。秋、九月の第三火曜日が定例の会議になっておりますから、これを暦で繰ってみると九月十九日になる。九月十九日を迎えてどうしても日本が当面をする問題はどういう問題かというと、この九十九カ国の国々の中に伍して、中共国連における代表権といいますか、発言権を目ざして、この発言権を認めるべきかいなかということを前提としまして、これを議題として取り上げるかいなかということが、まず第一に多数決の議題にならなければならぬ。順序はそうなっております。理事会を経由することは要らないはずであります。国連発言権代表権を認めるかどうかということを議題にするという段階が、どうしても九月に入ると出てくる。九月には国会のある見通しがありませんから、今国会でこれを聞く以外に国民代表は道がないわけでありますから、ここで伺うのでありますが、先の話だけれども、必ず当面をしなければならぬ問題はこの問題になってくる。こういう問題になってきたときに、何だか私は言葉じりをとらえてものを言うように聞こえていやなんでありますが、日中両国国交改善を希望するというこの大事な総理の信念、この信念に立って考えてみると、賛成せぬというわけにはいかぬのじゃないか。議題にするということに反対するというわけにいかぬのじゃないか。発言権を与えるか与えぬかということは、三分の二で後の本会議で議決をするのだ。それを議題に供するか供しないかという問題、この問題にさえわが国が反対をするのだということは、総理の御信念からいうといきにくいのではなかろうかということを私は案ずるのであります。そこでこの問題に対する総理の御決意は、すぐに言えぬものかもわかりませんが、これはどういうふうにお考えになっておるかということを先に伺ってみたい。
  18. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 施政方針演説で申しております通り、この問題は、日本中国間においてきめ得られる問題ではないのであります。自由国家群の一員として、世界情勢その他を見て慎重に、しかも弾力的に考慮すべき問題だと申し上げておるのであります。この程度以上には、ただいまのところ遺憾ながらお答えできないことを御了承願いたいと思います。
  19. 田中伊三次

    田中(伊)委員 総理お答えがその限度以上むずかしいのではないかということは、与党の私も考えておるわけであります。そうであろうと思います。  それではこういうことはいかがでしょう。そう総理のおっしゃる通りやむを得ないものと私も考えますが、総理はこの国会が終わりますと外遊をしていただきたい。外遊の時期は、後にこのことに触れるつもりでおりますが、今国会終了後国連総会招集前、この国会の終わりから国連の総会が始まるまでの間に——こっちがきめたって相手のあることですから思うようにはいかぬでしょうが、外務省もそのつもりになって、一つしっかりと、なるべく国会が終了すれば早い目にこの外遊の時期を選んでいただきたい、私はこれを希望するわけであります。国民も希望する世論が強い。  しかしこの外遊をした総理大臣が何をやるかという問題なんです。今までの保守党総理大臣はずいぶん方々に行っておりますが、帰りにはみやげがなかったとか、あったとかいったようなことまで批評されるような外遊の仕方なんです。今度の池田総理大臣が本会議におけるこの重要な言明をおやりになった国会終了直後に外遊なさるという場合において、私は腹から国のために希望をしたいと思うことが二つある。  それは、第一はどういうことかというと、私が壁頭に申し上げましたこの国連強化ということを単なるうたい文句、飾り文句にしないで、日本は非常な決意を持って予算の増額も考える、人員の増加も考える、機構強化考える、専門部門を設けてまで代表者を置くのだという決意がただいま明らかになっておるわけでございますから、この国連強化という問題について、日米両国はもちろんでございますが、これをさらに拡張をいたしまして、マクミランとの間においても、アデナウアーとの間におきましても、しっかりと国連強化ということについては一つ御懇談を願いたい。  もう一つの問題は、中国をめぐる問題を一つこれらの諸国を遊説されたときに取り上げていただきたい。この中国問題はどういうことなのかというと、各国まちまちであります。ヨーロッパにおきましても、ことにNATO加盟国などはアメリカの言う通りに右へならえをしておらなければならぬ筋だけれども、必ずしも右へならえをしていない。たとえば皆さん御承知通り、西ドイツのごときは中共も認めないが台湾も認めない、こういうのです。しかしそろばんはしっかりしておりますから、貿易だけは一億五千万ドルをこえるような貿易を年々歳々やっておる。金もうけはしっかりしておる。必ずしもアメリカに右へならえしていない。悪口を言うわけではないが、イギリスの態度はどうかというと、中国承認しておるが台湾政府に対しては承認を与えていない。与えていないかと思うと台湾のどまん中の台北に相当大規模な総領事館を持って盛んに貿易その他について活躍をしておることは御承知通りです。同じNATO加盟国でもフランスの考え方とイタリアの考え方とは考え方が違う。マクミランさんのおっしゃるところを聞いてみると、これはだんだんと情報が出ておりまして、これを聞いてみると、非公式にはこういうことを言っている。何か夕食会の席のようでございますが、大きく取り上げておるニュースの中の一つに、中共承認しておるのだが、中共国連に参加させないというようなことでは、核兵器の協定も、軍備の縮小もあったものじゃない。ほんとうのことをマクミランは言っておるのでしょうね。こういうことを準公式の席においても声を出して述べているというくらい、各国は必ずしもアメリカに右へならえをしておるのじゃない。まちまち、ちりぢりばらばらの考え方だ。  もう一つ私は総理大臣にお聞きを願いたいと思うしろうと論があるのです。それはどういうことかというと、私の方の代議士の中にも数名にお願いをしたわけでございますが、私の友人大ぜいが外国に行きますときには、相当な人に会った場合には、一つ中国対策とでもいうべき各国の中共に対するなまの話を聞いてもらいたいということを希望するのですが、これらの人々がわが国に帰って参りまして、私にだんだんと話をして聞かせてくれるところを聞いてみると一つの共通点がある。それはどういう共通点かというと、それをおれの方に聞く前に、肝心のお隣の日本はどういうことなんだ、日本のお考えを先に聞きたいということが大体共通しておるようです。これだけの材料で私が判断するのも無理かもわからぬが、私の見るところでは、外国はちりぢりばらばらな中共対策というものを態度としてとりながら、腹の中では近くにおる、お隣におる日本はどういう考えを持っておるのだろうかということを全部が考えておるのではなかろうかというのが、間違いかわからぬが、私の一つの観測であります。これは総理もお考え下さるとわかるのですが、この話はありそうなことなんです。それは近くなんだから、遠い親類よりも近い隣という俗語がありますが、近いのだから、隣なんだから、二千年の歴史を持っておるのだから、血液のつながりのある国だから、気に入らぬのは思想だけでありますから、その思想は私に言わせると心配がない。こういう段階においてこの中国の問題について、全世界のどの国の政治家がこれをながめてみても、日本はどう考えておるのだろうか、日本は消極的であるべきではない。今日この段階においては、中国問題については日本が積極的に動け、積極的に日本意向を出すべきだと言わんばかりの空気、傾向が諸国にあるのではないか。あってあたりまえで、なかったらおかしい。そこへ池田総理大臣が厳然たる態度をもって親善友好を表明せられておるということにきておるわけでございますから、諸国遊説をせられるその会談の中に——これはマクミランにお会いになりましても、アデナウアーにお会いになりましても、ドゴールにお会いになりましても。——ことにケネディさんの考え方というものは、総理も御承知通り、在野時代においては中国同情論者、現在の国務卿にしても現在の国連大使にしてもアメリカ首脳部は、あげて在野時代は、中共承認をして差しつかえない、思想はこわがらぬでいいという意見を述べた人です。最近は国会に呼び出され、証言をいたしました証言の内容を聞いてみると、あれは個人としての意見である。こうして就任をいたした以上は、これは国家という大きな立場から、個人の小さい意見は制約やむを得ないといったような、日本にも似たようなことを言う人がありますが、なかなかうまいことを言っておる。しかし腹の中は、池田総理が行かれてこの情勢を頭に置いて話をなさる場合においては、相当なる効果を上げることができるのではないか、こう考えるので、国連強化に関する具体案と、それからもう一つは、私がくどく申しました中共対策をめぐる各国ばらばらの対策というものに対して、一つ日本が積極的な態度——国際情勢を見た上でと、そうばかり言わずに、積極的な態度をとって、このばらばらな列国の中国対策というものを調整することに乗り出すべき今日は時期ではなかろうか。またこれは池田総理のおやりになる任務として適当なものではなかろうか。この言明のあった後の外遊においては、このことを仰せになることがまことに適当ではなかろうか。こういうふうに考えるわけでございます。くどくなりましたが、こういうことをトップ・クラス会談の話題にのせて、ゆっくり談笑裏に懇談を遂げられる、こういうことをしていただきたいと考えますが、御意見を伺いたいと思います。
  20. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 ただいま何月何日に立って会うということはきまっておりません。ただここで申し上げ得ますことは、世界の平和、日本繁栄、日米関係強化等につきまして、両国共通の問題について話したいという気持でおるわけであります。今田中さんのお述べになりました御意見あるいは情勢につきましては、とくと私も検討いたしたいと思います。
  21. 田中伊三次

    田中(伊)委員 取り上げて重要な談笑中の話題にのせるということについて、どうか一つ積極的にお考えをいただくように、私が国民の声を代表してここにお願いを申し上げたい。  それからもう一つ外交問題について外務大臣にちょっとお伺いいたしたい。今度はそんないやなことではないのです。どういうことかと申しますと、私は経済外交ということをあなたが熱心におっしゃっておることは敬意を表しておる。経済外交中心をアメリカとイギリスに置け。簡単に申しますと、アメリカばかり言うな、イギリスもやれということなんです。それからその対米経済外交ということを主張していただく上に、幾らかもう少し強い態度で対米経済外交というものをやったらどうか。私はすぐ理屈を取り出す癖がありますが、新安保条約二つ目の約束は、国連強化についてどんな約束があるかというと、両国民は経済提携をしっかりやってともに繁栄をしよう、軍事協定ばかりすることが目的じゃないということが書いてある。これは飾り文句と言えぬのです。こういうりっぱなことが書いてあるときに、日米間の経済状況は、外務大臣承知通り、一体んどな状況か。日本の輸出商品の三分の一を買っておる、そんなことばかり言って喜んでおられない。現在やっておる状況を見てみるとよくないのです。アメリカの態度もよくない。どういう点がよくないかというと、日本独得の合板、ベニヤ板にしても、金属洋食器にしても、また写真機等にしても、トランジスター・ラジオにしても、中小企業の主として作っておりますところの繊維製品にしても、一定の数量までは普通の関税で受け取る。一定の数量をこえると、三倍、四倍の二階立関税をかけるなんということをやって、日本の商品が非常に向こうに行きにくい。御承知通り日本の通産省は、両手をすりながら頭を下げて、どうぞ一つ助けてくれ、日本は自発的に自主規制をいたします。−妙な言葉だね。新安保条約というもので、経済提携ということに全力を上げろ、これが大目的だという条約を結んだその直後に、アメリカのやっていることは、その自主規制を日本がやらざるを得ないように追い込んで、自主規制をやらされている。こういう点は、アメリカ側に言わすと言い分があるだろうと思います。日本の方が守るべきことを守らぬじゃないか。なぜ日本が守らぬかという点も多々あろうと思います。それを詳しく論ずるいとまがございませんが、日本が守るべきところを極力守ると同時に、アメリカに対しては、こういう事柄は一つ撤廃。緩和するように交渉はできぬものだろうか。第一今までどんな交渉を日本の外務省はやっておるのか。経済外交ということをうたわれることはけっこうだけれども、経済外交を強力に推進して効果を上げるような外交はやっておるようには見受けられないのです、与党の私が見ても。これはもっとしっかりやりなさい。どういう考えか。これをしっかりおやりになるという具体的方策、交渉の御決意があればこれを承りたい。まず日米経済について……。
  22. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 アメリカとの経済関係は、田中委員御指摘のように、非常に年ごとに伸びております。非常に全般によろしいのでございまして、一昨年度は全体の輸出のうち、アメリカ向けだけとって見ますと五割ふえております。昨年度も二割三分くらいになっております。今年度は御承知のようなリセッションの関係等もありまして、今までだけの歩調を期待するにはなかなか努力が要るというような状態でございますが、御承知のように民主党政権ができますに際して、さきに日本を訪問して帰って報告書を出しましたマンスフィールド氏が、その結論において言っているところは、日本経済を発展させるということが、アメリカにとって、極東全体の安定のために非常に必要なことなんだ、そのためには大いにやらなければいかぬということを言っているわけです。  そこで簡単に申しますが、アメリカの方は今の自主規制に対して、ことに綿織物、これらについても今度は一つ大いに検討し直そうということを言ってきてくれているわけです。これは二月六日に公聴会がありまして、それが始まっていくわけです。なお、そういう点にできるだけわが方の考え方をもっと明確に実際に業務をやっている人から通じさせようということで、この三月末に石坂経団連の会長を主とした貿易ミッションを出すことにしております。  全般に、いろいろお話しすると長くなりますから簡単にいたしますが、理解を深めるような態度、しかもおっしゃるように自主的に強力にやっております。なおヨーロッパの方のことに対しても、たとえば後進国開発援助グループに日本を参加させるとか、あるいはガット三十五条の撤廃に対してヨーロッパ各国も考えるようにというようなことを、アメリカの立場からまたいろいろ努力してくれておりますので、申すまでもなく、できるだけ強力に日本貿易を伸ばすように、アメリカに対して強く働きかけて参りたい、かように思っております。
  23. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それから対英経済外交のことでありますが、昨年政府努力によって戦争中の賠償を円で五億円賠償した。非常に値切って賠償したわけであるにかかわらず、イギリスの方は非常に喜んで、好感を持っておる。対日感情はこれを契機として一変したということが伝えられておる。旅行した人に聞いても事実のようです。日本は誠意があると言っておる。ことにもう一ついいのは、日本のトランジスターを見ても、ことに日本の食器、カン詰類、こういうものを見ても、日本のものは非常によい。牛が馬に化けたりはしていない。英国ではそんなことは言わぬようです。非常にいい、こう言う。そういう状況を見てみると、経済外交の推進の仕方いかんによりましては、アメリカに対する場合以上に、相当輸出の効果を伸ばし得る素地がだんだんとかもし出されつつあるということが、あなたの方でもおわかりのことと思うけれども、その観測です。それで私の言いたいのは、対米経済外交に全力を尽くすとともに、対英の経済外交にも同様以上の力こぶを入れてうんと伸ばして、昔の日英関係というものもあることで、親しみのない国ではないのだから、これは一つしっかり伸ばしていただきたい。これの御決意を承っておきたい。
  24. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お話通り非常に重要でございますから、戦前債務の問題も解決し、これまた非常に好感を持たれまして、日英文化協定もできました。全般の機運が非常によろしくなっております。そこで強力に交渉いたしまして、日英通商航海条約を結ぼうということで努力いたして、懸案を解決したいと考えております。
  25. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それで時間がありませんから、外交問題の最後に私は総理大臣にこういうことを伺ってみたい。歯舞、色丹島をめぐる北方領土——何か北方領土というものは、今の政府の行動からいうと、忘れられておるような感じがするのです。だれも忘れてはおらないのですが、何も言わぬから。北方領土の返還問題について、これはしっかり継続して、いかに時間がかかっても、慎重なる態度をもって交渉を続けるべきだ。いつ交渉するのか、いつやめたのか、何だかわからないようにすべきものではない。国民の強い要望でございますから、これはあくまでも努力を継続するということを一つ腹をおきめいただきたい。  それからもう一つは沖繩の帰属問題です。沖繩の帰属問題を現在の池田政府の言っておることを世間の者はどういうふうに受け取っておるかというと、熱意がないのだということに受け取っておる。どこが熱意がないのかというと、これは目下アメリカが施政権を持っておるわけであるから、日本領土権があるといえどもいたし方がないのだ、まあ国際情勢がだんだんと好転するのを待って、変化するのを待って考えましょうという消極的な面の発言によって答えが行なわれておるところに、熱意がないといわれるところがある。これは領土は日本の領土なんだ、一時施政権がゴムまりがへこむようにへこんでいるというだけのことで、国際情勢が変わればこれは本復すべきものである、こういうことは事実でありますから、積極的な意思をもって時期来たらばわが政府は、沖繩の復帰問題については交渉に力を入れる決意があるのかないのか。この両問題について最後に池田総理から御答弁を願いたいと思います。
  26. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 北方領土、すなわち択捉、国後、歯舞、色丹、これは私はサンフランシスコ講和条約に参りましたときにも、固有の領土であるということを言っております。その後におきましても私は常に言っておる。この考え方は一歩も後退いたしません。  沖繩の問題につきましては、御承知通り岸内閣時代、また私の内閣になりましても、小坂外務大臣から施政権の返還につきましては強く要求しておるのであります。ただアメリカにおきましては、国際情勢現状からいって、今施政権を返すことはできないと、はっきり言っております。しかし私は、時期至らばではなしに、なるべく早く施政権も返してもらうということにつきましての努力は続けるつもりでおります。ただその間におきましても、沖繩住民の生活の向上と経済の発展につきまして、アメリカと沖繩、われわれ、この三者一体となりまして、住民の生活改善経済発展には努力を続けていこう、こういうことで言っておるのであります。
  27. 田中伊三次

    田中(伊)委員 今度は迫水さん、同僚の野田卯一さんが財政経済をやるわけで、私は特に希望をして、財政経済関係のうちで物価はおれにやらせろということで、物価をお尋ねするのです。そこで物価問題について、あなたがどういう演説をなさるかということを耳を傾けて拝聴したわけです。なかなか演説は上手です。うまいことを言うておる。どういう工合に言うておるかというと、わが国経済の現段階では需給関係はバランスがとれておるから、卸売物価は上がらないのだ。局部的にちょっと上がってもドルがあるから心配は要らぬ。問題は消費者物価だが、消費者物価の方は、人件費が上がると上がらざるを得ないが、これは何でも能率の増進で吸収する、ここらがなかなか上手な表現です。能率の増進で吸収する。それならサービス料金はどうかというと、吸収しにくいけれども少しばかりだからがまんせい。公共料金は上げたけれども、もっと上げようというところをこうして押えたのだから、これはがまんをしてもらわなければならぬという、話としてはよくわかるのです。けれども、そういう優等生の論文を国民は聞こうといっておるのじゃない。物価はどんどん上がっているのですよ。これは閣僚みな聞いておいてもらいたい。物価はどんどん上がっておる。これは社会党が見ようが共産党が見ようが、保守党の僕が見ようが、物価が上がっておることは間違いない。物価とはどんな物価かというと、特に国民生活の必需品が残念ながら衣料以外は上がっておる。ことに困ったことは、その必需品中の食料品が悪い。特に食料品中、生鮮食料品が悪い。乾物が悪い。日本人のからだに大事な海草類が悪い。こういう状況というものを聞いてみると、どんどん物価は上がっている。これが上がってないというなら私は説明を聞きたい。私は本日のこの演説をするために、単なる知識、常識ではいけないから、一々店頭を見て、昨年末と比べて幾ら価格が上がっておるかということを調べておる。そのうち上がってないというのはとうふだけなんです。ところが関西に電話して私の家庭に聞いてみると、関西のとうふは値段は上がっておらないが形が小さくなっておる。結局上がっている。みそも上がっているし、しょうゆも上がっている。酒も上がっている。これは大蔵大臣よく聞いておきなさい。あなたが基準価格などというものを作って、統制撤廃などという要らぬことをするから  税金を取ることに便利だろうということで基準価格を作ったのだろうが、基準価格などというものを作った結果は、酒は一升について、二級酒でも二十円も二十五円も上がっておる。国民に非常に大事なしょうちゅうも上がっておる。合成酒も上がっておる。酒はどんどん上がっておる。パンが一斤について五円も六円も値段が上がっておるのですよ。諸君が好きなおすしは百円のすしが百二十円になっている。物価は上がりません、少しは上がってもドルがありますから、——そんなことで説明ができますか。これは迫水大臣、いろいろ言うといろいろ迷惑する閣僚があるから、私はあなた一人に聞くのですが、私はあらためてあなたに聞いてみたい。理屈は聞かぬでも、あなたの演説上手なことはよくわかっている。話はわかっている。私の聞きたいことはこういうことだ。あらためて言いますけれども、国民生活必需品をここで話題に取り上げましょう。その国民生活必需品の中で特に食料をとらえてみましょう、時間がありませんから限度はあるが……。食料も生鮮食料品はどういう努力で物価を抑制する考えなのか、具体策はどうなのか。塩乾魚はどうするのか、魚介類もどうするのか、コンブ、ワカメのような海草類はどうするのか、この大事なものは一体どうして具体的に押える考えを持っておるのか。政府は各省間に連絡会議を持っているでしょう。それは上げるための連絡じゃないのでしょう。上げるのにどんなに理屈をつけてどうして上げようかという連絡もあるのかもしれぬけれども、それは目的じゃない。押える連絡なんでしょう。政府のこの連絡会というものはどういう連絡をやっておるのか。具体的にはどういう努力で今後押えようとしておるのか。これを一つ部門別に、短い言葉でよろしい。その具体的努力の経過を聞きたい。
  28. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 田中さんの話術は非常にお上手でして、物価がどんどんといって、いかにも非常な勢いで上がっていって、国民生活がまあひっくり返るということはない、それはおっしゃらなかったと思いますけれども、非常な悪影響を及ぼしておる、こういうふうに印象づけられるような話術でお話しに相なりましたが、私どもは統計を根拠にいたして見ますと、食料品というものは、御指摘になりました生鮮食料品のうちで、魚の類が私どもの思ったような足取りをとりません。希望しておるような足取りをとりません。主食は御承知のようにきわめて安定をいたしております。肉類も昨年の九月ごろ非常に上がりましたけれども、これは輸入の手配をいたしますことによりまして安定をいたしました。ただ魚の類だけがどうも思うようにいかないのですけれども、御指摘の中の塩乾魚類とおっしゃいましたが、それは主として高いのは塩ザケと塩マスで、サケとマスが漁が少ないということ、大へん供給が少ないということが原因でありまして、これはちょっと私どものところでは、至急に塩ザケを下げろとおっしゃいましてもどうにもなりません。すしが上がった、そばが上がった。まことにその通りでございますけれども、これは理屈を言うなとおっしゃいますけれども、一言理屈を言わせていただきますれば、今日の物価の問題というのは、先ほどおっしゃいましたように、需給関係において需要が供給よりも多いからというインフレ的な問題として論議するのは間違いでございまして、世俗な言葉で申しますれば、要するに一般の人の収入がふえてくるのに伴って、小売面における従業者あるいはもろもろのサービス業における職人、そういう人たちの手間がそれに伴って均衡をとって上がってくる。この手間の上がり方をどう始末するかということなんです。パンの問題も、パンを作る職人の給料が、パンの価格構成の中では非常に高い比率を占めております。一番高いのは床屋です。ただいまとうふの御指摘がありましたけれども、とうふも、やはりとうふ屋さんの職人の手間というものが、とうふの価格を形成する非常に大きな要素なんでありまして、これを一がいに下げるということは、すべきでないと私は思っております。そこでよく御理解を願いたいのは、経済の高度成長によりまして、逐次われわれの所得というものは一様に増加をいたしておるのであります。所得の増加の割合と、このような一部面の手間の上昇によるところのサービス料金の値上がり  主としてサービスの料金が重点でございますが、そういうものはごくわずかなパーセンテージでありますから、まあいかにも憎らしげに、田中さんは、そういうものはがまんせいと私が言っておる、こうおっしゃったのですけれども、それは高度成長の過程における当然の現象として、みんなお互いに低い所得の上昇ということを理解し合っていかなければ、そういうところに働いている人たちの雇用条件の改善というものはできない、こう私は考えております。
  29. 田中伊三次

    田中(伊)委員 結局私が伺っておることが伺えない。私の聞いておるのは、具体的対策はどういう対策をおとりになって抑制するのか。僕も下がるとは思う。上がり方を抑制する努力とはどんな具体的な努力をするのか。その押え方をおっしゃいよ。
  30. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 大体サービス料金とか小売の価格というものは、自由競争の世の中ですから、ほんとうに競争を自由にさしていれば、上がる状況よりも下へ押えつけられる圧力の方が強いわけです。しかしそういうことでは過当競争がひどくなって、その人たちの生活を脅かすことになるというので、中小企業団体法とか、もろもろのいろいろなそういう方面の法律は、ダンピング防止の立場で協定価格というものを認めております。基本的には自由主義で自由競争をやっているのでありまするから、その協定価格というものを監督することによって、具体的には便乗的に、不当に限度を越した値上げというものを押えることができる、こういう仕組みであります。現在独占禁止法あるいは環境衛生に関するあの法律によるもの、あるいは協同組合の申し合わせによるもの、いずれも最終的には公正取引委員会の監督下にございますので、私どもはそういう協定値段ができました場合には、それをよく審査しまして、公取とも連絡をとって、その方法で押える、こういうことであります。
  31. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それでは人をかえて農林大臣、あなたはものが詳しいから……。生鮮食料品の上がろう、上がろうとする傾向を抑制する具体的な対策一つ御説明を願いたい。それから迫水さん、ちょっと申し上げておきますが、どんどん上がっておるというが、大したことはないというその認識は変えていただきたい。それから店頭に行っていらっしゃい。私のように店頭に行ってきなさい。総理大臣以下閣僚がその考え方を徹底して下さらぬと、国民は満足しませんよ。大して上がってないと言うが、みそは幾ら上がっておるかわかっているのですか。みそが幾ら上がっているかということは、統計を見たってだめだ。そんなことを言っているのじゃない。統計は帰って役人相手の会議の際にお使いなさい。そんなことを言っておるのじゃない。店頭の物価が上がっておるのに、それに政府としての具体的な対策がなければならぬと言うのですよ。みそは五百グラムについて——五百グラムのみそというと、片手に乗るようなものですよ。それが二十円も二十五円も上がっておるということなんです。パンが五円も六円も上がっておるということなんです。しょうゆは一升について十円も十五円も上がっておるということなんです。牛肉は今は安定しているが、これは高い値段に安定しているのですよ。冗談じゃないですよ。それは池田総理の年末の重要な発言によって、閣議で決定をした結果、枝肉の輸入に努力されたことは、どの時期にどれだけの枝肉の輸入をしたか、私も知っておる。その結果一時肉の値段は下がった。今はまた上がっておる。上がったきりで安定しておる。高価安定だ。百グラム当たりで聞いてごらんなさい。八十円の庶民が食べようという牛肉は、百二十円でとまっておる。八十円と百二十円では四十円違うのですよ。そういう考え方で、この役人のきめた統計というものについては、私は議論してみたいのだが、役人のきめた統計というものに基づいてものをお考えになるという考え方はやめて、現実に店頭におけるみその価格が上がっておる。これが国民生活と関係がある。あなたのその記録の中にある統計は、国民生活に関係ないのだ。そういう高度の議論は、物価が下がってからゆっくりやったらいい。今やる議論は、そんなことを議論しておるのじゃないのです。具体的にどうして押えるかということを、農林大臣にまず一つ生鮮食料品からお聞きしたい。
  32. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えいたします。いろいろお話がありましたが、ただいまの生鮮食料品の中でまず青果物、これはやはり何と申しましても私は供給をふやさなければならないと思う。あなたの御指摘のように、昨年の七、八、九月上がりました。去年は非常な旱魃の関係もありまして、供給がこれに伴わなかった。その結果上がっておりますが、今日は店頭のお調べがありますからなかなか統計では御承知にならぬかもしれませんが、去年の十一、十二、一月になりましてむしろ前年比は野菜の方は下がっておる。これは店頭でお調べになっても私はよくおわかりだと思う。問題はやはりその点について、将来の問題といたしましては、供給増加の方向を考えたいのと同時に、腐敗製品でありますから、その生産の調整等も生産団体が考えなければならない。また都市に出る蔬菜、くだものというものは大体わかっている。年々の伸びはわかっている。そういうところにある程度の共同の生産調整を行ない、かつ出荷調整が行なわれるべきであると思う。そういう点につきましては御指摘の点にお答えいたしますが、各市場の状況の通報制度を置きまして、そこで出荷調整をなすことが一つの方法だろう、かように考える。  それから御指摘の肉類です。これは御指摘のように一番高かったのは去年の七、八、九月ごろですが、今企画庁長官お答えのように、これは当時供給が需要に伴わない。ことに豚の肉が上がって大へんでしたが、豚を輸入いたしまして、これも現実供給量の増加につきましては、去年の秋生まれたものは、今年の四月は一人前になります。これから先は大体豚について、完全には値下がりはいたしておりませんが、七、八月ごろに比べますると、ことしの正月はちょっと下がっておりますから、この形に安定させていくことが一つの方法、これに対しましてはやはりある程度供給の増加のために、いざとなれば輸入もいたしますが、内地の生産増強をはかっていくのが一つ、もう一つは今度新たに作りました畜産物事業団と申しますか、これは従来の酪農基金と一緒にいたしますが、これらがある程度必要な場合において値上がり値下がりを調整する、これは数量調整をする機能を新たに設けるつもりでおります。  それから水産の問題、これもこまかいことは時間の関係で省略いたしますが、品目別に当たりますと、今日はだいぶ下っております。これから好漁期になります。アジなりその他大衆魚はこれからふえますので、おのずから下向きになっていくと思いますが、しかし大衆に対しては上がったり下がったりがあっては困るのです。そういうことを安定させるためにも、生産の調整ということが特に水産に必要ではないか。しかし水産は作るものではなくて、泳いでくるのをとるのですから、それに対してある種の生産調整をする。とれたものの時期別に冷蔵庫等に保管するとか、あるいは水揚げ地の指定をするというようなこと、これは市場に三十カ所ぐらい市況通報を設けまして、あの地区にはよけい集まっているからこっちに回わせというようなこともやりたい等、いろいろなことを考えている次第であります。
  33. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それではあまり時間をかけてみても仕方がありませんから、私の意見を申し上げておきたい。今農林大臣からちらっと具体的な政策の一端が出ておる、そういう具体的な政策に力を入れるべしということであります。たとえば肉が足りないのだ。一口に言うと、なぜ一体鶏の肉が足りないのかというと、鶏が足りなくなったのではなくて、それは牛肉に押されておるということです。それで牛の枝肉を輸入することに重要な意味がある。ところが政府の方は年末枝肉の輸入をすることに努力しておるが、今日枝肉を輸入することにあまり努力はしていないでしょう。これをもっと継続しなさい。これを一時的に年末だけやらないで、これをずっと継続すれば、お肉の値段は八月以前の値段に下がる。こんなものを下げることはわけがないんです。迫水さんが演説しておるように、ドルは持っておりますと言うでしょう。ドルを使わなければだめじゃないか。ドルを使ってずっとやればこれは七、八月ごろ以前の値段に下がる。ほうっておいても下がる。これをしっかりやりなさい。  もう一つは、今あなたのおっしゃったことで非常に正しいことは、野菜類は非常にいい価格の傾向にある。これは幸いにして増産ができたからです。しかしこの野菜の問題についても東京なら東京、大阪なら大阪、京都なら京都の大都市の市場を中心にして、その周辺で野菜を作っておる場合に、その野菜の反別が消費量と見合って足らなければ野菜は上がるのです。野菜というものはちょっと天気が強過ぎると乾燥ですぐ値段は上がる。温度が高過ぎても値段が上がる。乾燥が過ぎても色合いが変わってくる。そのまま台所に届く、価格は上がってくる。こういうことですから、その消費の量に十分見合うごとくに生産の量を考えて、反別が足りなければ、非常に極端なこと生言えば、大事な田をつぶしてでも野菜を作らせなければならぬ。政府が具体的努力を払うことによって、野菜はまだまだ下がることができる。まだ野菜が安いから保っておるので、この上野菜が高かったら暴動が起こるのです。大へんなことですよ。しっかりその点はお考えにならなくてはいけないと私は思う。  それから迫水さんにもう一つ私は考えてもらいたいことは、サービス料金です。世間はこういうギャップを考えているんですね。このサービス料金というものは、今あなたのお説の通り、手数料というか、人件費というものが大部分のものであるということはよくわかる。これを抑制するということになりますと、サービス業に関係をしております人件費はいつまでたっても上がらないということなんです。つまりサービス業に関係しておる人の所得は倍にならぬ。これは一体どういうことでしょうか。サービス料金に対する抑制措置、これはどういう努力を具体的  になさるのか。
  34. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 ちょっとさっきの田中さんがおっしゃったことについて申し上げますけれども、私たち物価が上がっていないという認識は決して持っておりません。物価の上がっていることは現実にこれを承認いたしておりますけれども、それはただ昨年の八月の肉の値段が絶対正しいので、それまでどうしても下げていかなければならぬものだとも考えておりません。その点は要するに、生活に対して及ぼす影響が大きくない限度にうまくいくことが希望しているところでありまして、物価の上がってないという認識があるとは思っておりません。それを申し上げておきます。  サービス料金でありますけれども、たとえば床屋の値段、これは押えたらその面にいる人の所得がふえてこない、その通りでありますから、従ってこれは上がることを容認すべきだと私は思っておるし、問題はその面における雇用の労働の対価が、当然上がるべき労働の対価以上に便乗的に上がるというのは、先ほど申しました協定価格等の押え方によって押えていく、こういうことでありまして、これはちょっとここで言い過ぎかもしれません、私個人的の考えですけれども、今後そういう協定価格でも承認するような場合には、たとえば床屋さんなら床屋さんについて協定価格を承認するような場合には、床屋の従業者の最低賃金をちゃんときめるような処置でも講じながら、その値上がり分がほかに流れてしまわないように確保するような道も講じていかなければならぬじゃないか、こういうことも考えておる次第でございます。
  35. 田中伊三次

    田中(伊)委員 そこで私の意見をちょっと申し上げて、池田総理大臣のお考えを承りたい。これは説明を略しますが、一体今迫水さんから御答弁になったようなサービス料金にしても、サービスの料金の上がり方を極端に抑制するということになれば、極端にサービス業に従事しておる人の人件費は上がってこない、収入はふえない、こういうことなんです。九割以上が人件費だという特徴を持っているサービス料金というものは、それを極端に押えるということは、それらの人々は収入がふえないのだ。一方はぐんぐんふえるのに、ここはふえぬのだということは、所得の格差がはなはだしくなってくるのだという理屈が出て参ります。ところがこういうことは、押えちゃいけぬのだということが世間に聞こえたんじゃ大へんで、散髪屋も上げよう、パーマネントも上げようということになって参りますので、国民生活に大へんな迷惑が起こってくるということなのであります。  そこで私は総理に御所見を承っておきたいのは、一体需給関係、需給関係ということを政府はよくおっしゃるのでありますが、この需給関係は、卸売物価を観測する場合の一つの尺度としては需給関係ということをお考えになることもよろしい。ただ、現在の小売物価を中心として消費者物価というものをながめてみると、非常に困った結果は、どの商品もどの商品も、同種類の商品を売っておる商人は、相結束して組合組織を作っている。これはいいことなんですよ。悪いことであるとか、これはこわせということではない。これはいいことだ。いいことなんだが、値段を協定して、協定のできた値段については、員外員といわれるアウトサイダーの人々にまでこの協定価格を守らせていこうという努力をする結果、どんなことに役立っておるのかというと、競争をやり過ぎて、一口にいうと、過当競争によってつぶれていく、倒産をしていくようなものは、こういう方式によっては助かっていくこと間違いはない、値段は下がらぬのですから。一定の値段をみなが守っておるので、どこの業者のどこへ買いに行っても、安くは売らぬのですから、倒れることはない。ところが、それと同時に、その悪い弊害は、組合組織で事実上——悪い言葉で、言い過ぎた言葉で言うと、価格は統制なんです。どういう統制か。組合の民間自主的統制だ。その結果はどういうことかというと、量がふえても値段は安くならぬ。これはお考えにならなければならぬ。現在の行き方は、量がふえても値段は安くならぬ。そこで自由競争的要素をもう少し物価対策の上で加味しよう。それは牛乳を入れることもいいし、牛肉を買うこともいい。反別をふやすこともいいし、いろいろあるだろう。反別をふやせと言ったら、今もうしろから文句が出ておる。ですから、なかなか簡単にできることではないだろうが、自由競争という要素を入れて、その業者がつぶれない限りにおいては安く売れるようにする。つぶれるのは救う道を考える、つぶさぬように自由競争をやらすという、ここは名人芸でないとできないかもわからぬが、そういう考え方に基づいた物価対策というものを根本的に一つ考え直す必要があるんではないか。これはしろうとの僕の意見ですが、これはいいと思うのですよ。この間中小企業団体法をこしらえて、過当競争を防止しようなんと言うといて、きょう私が与党から演説をして、自由競争的色調を入れようじゃないか、要素をもっと入れようじゃないかと言うことは、いかにも言いにくいことでありますが、物価があまりにひどいんです。業者の値上げでどんどん上がる傾向は、あまりにひど過ぎる。これはよくないです。業者ばかりがかわいいのじゃない。その業者は同時に消費者なんです。業者は同時に一般大衆、消費者なんですから、国全体の利益のためには、今私が申し上げたような自由競争的要素を加味したそういう大方針によって物価対策の検討をやり直そう。——これはもう大臣に聞いてみたって答えはできません。総理大臣みずからの御決心を承って、ここで直ちに御答弁がいただけなければ、慎重考慮をして、この方向に努力をしてもらいたい。
  36. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 よく物価指数と申しますが、お話のような点につきましては、卸売物価指数につきましては、よく現われておる物価につきましては、あなたのおっしゃるようなことが相当できる。たとえば繊維関係が上がりそうならば、操短の度を緩和するとかいうふうにいたします。鉄なんかでも少し上がりそうならば、独禁法の関係がありますから、公取と相談いたしまして、この程度で押えるようにしよう、下がるときにはこの程度で、独禁法に違反せぬ範囲内におきましてある程度最低価格をきめる。しかし個々の品物につきましても、通産省は業者と相談をして、この部分は国際的に少し高いじゃないかというようなことはできます。卸の方につきましてはおおむねこれができる。また輸入の物資につきましては、砂糖なんかがある程度高いということは、私はたくさん輸入すればある程度下がると思います。この問題もやはり国産甘味の問題とのからみ合いで今検討さしております。今、卸売物価でずっと高いのは木材であります。木材につきましては、私は農林大臣に一つ考え願いたいと一週間くらい前から言っている。大体今卸売物価がある程度上昇気分、横ばいというのに、ほかのところはたいがい下がっております。鉄も繊維も下がっております。木材と建築材料というものは上がっておるというので、物価が一〇二、三くらいになっている。こういう卸の部分はできますが、今問題になっている消費者物価というものは、労働賃金が上がると同時に手間賃の問題、これは厄介なのであります。だから企画庁長官が言っております労働賃金というものは、実質賃金が相当上がっております。三十年に比べまして四年間に二割、二十数%上がっておる。そういう場合において、今度は手間賃でやっておりまする消費者物価がこれについて上がらぬようにするというのは、私は公平な原則からいけないと思う。われわれの所得が上がったから手間賃でやっておる消費者物価もある程度上がることは、お互いに容認していくのが連帯性の問題だと思うのです。ただ問題は、むちゃくちゃに上がったり、不当に上がったりすることはとめなければいけない。その意味において、今までの協同組合法その他には、下がる場合の過当競争を押える、今度は上がる場合にこれを利用するのはわれわれの所期するところではないのであります。これは各法律のあれによりまして、十分に規制をしていきたいと思っております。ただ手間賃が上がってくるということにつきましては、労働賃金が上がると同じような気持で、われわれは合理的なものは容認しなければならぬ、これが、経済全般が打ちそろってよくなるゆえんだと考えておるのであります。
  37. 田中伊三次

    田中(伊)委員 もう一口。自由競争的な要素を加味して検討をし直そうという点はいかがでしょうか。
  38. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 それが、私がこの貿易自由化を唱える根本なのであります。ただ農産物につきましては、これはなかなかできませんが、自由競争というのが原則であります。自由競争を原則として、過当競争によって非常に弊害が起こる場合をわれわれがチェックすればいい。原則は自由競争でいくべきだと思います。
  39. 田中伊三次

    田中(伊)委員 そこでもう一口。この物価問題の最後に、私の意見を申し上げて御参考に供したい。  それは、サービス料金というものを特にとってみると、今総理のおっしゃる相当量の手間賃、手数料、サービス料というものは、わかりやすく言うと人件費が大部分になっておる。こういうことなんです。そこでそれを上げなければ所得はふえないし、上げたくはあるが、上げると物価が上がる結果になって消費者に響く、こういうことなんです。そこで上げたくはあるし、上げたくはなしという点をどう努力をするかというと、これは迫水さんの演説のように、能率の増進、企業の合理化で吸収をする努力を極力払うということは、これは作文じゃない、実際にやらなければならぬ。そこで私は言うのです。その企業の合理化とか能率の増進というものにも、これは限度がある。ほうっておいても売れとったら、値段が高くてもほうっておいても売れるようであったら、だれも努力しない。そこで自由競争的な要素を加味していくならば、一生懸命努力をして、能率の増進をはかり、経営の合理化をやるということに努力をするわけであります。そういう趣旨から私はこれを真剣に考えておるのでありますから、政府はこの自由競争的な要素をいかにしてこれを取り入れて、しかし商人が過当競争に陥らざるごとくに政策をとっていくということを、真剣に一つ総理以下お考えをいただきたい、こういうふうに思う。  次には、会計検査院の決算報告というものを、これはだいぶ時間が迫っておりますから、時間をかけぬように簡単に私の意見を申し上げますが——会計検査院来ておりますか。
  40. 船田中

    船田委員長 来ております。
  41. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それでは会計検査院に伺っておきたい。これは伺うというよりも、これは国会に対して昨年の末に報告が出ておる、その報告は私の目で読み違いがなかったならば、私の言う通りにきまっておるのだから、別に質問をするわけでないが、これはどういう報告かというと、これは総理に特にお聞きを願いたいのでありますが、昭和三十四会計年度を検査してみると、不当支出という件数が二百九十二件に及んでおる。幾らかこの中で是正をさしたものが中に入っておるが、とにかく二百九十二件に及んでおる。その金額は、驚くべき金額であります。十二億九千万円、十三億円になんなんとするような是正を含む不当支出というものが、ここに現われておる。一体どんな内容のものがあるかということで、三十四年のみならず、私はこの演説をするために、三十二年、三十三年、三十四年と、この三カ年間を調べてみると、非常に驚くべきことは、大蔵省にもある、運輸省にもある、農林省にもある、裁判所にもある。これを一々私がここで究明することは——決算委員会任務でありまして、この席の任務でありませんから、私は言いませんが、はなはだしいのは、地方のやっておる公共事業です。国庫補助をしておるその補助事業の補助のやり方がまことに出たらめだ。これはひどいのですよ。査定官が査定に行って、同じ工事の現場を見て、二重査定をしておる。査定が二重になっておりますから、補助金が二重に行くのです。また工事の不完全なものを完全なる工事と認めて、それに補助金が出ておる。はなはだしきは水増しをしておる。地元の持ち出しがやりにくいものでありますから、工事量を大きいものとして事業量を水増しして、これに補助金をとっておる。実際の支払いは補助金一本でやっておる。窮屈なということはわかるのでありますが、国民の血税で、いやしくも国会が予算できめた事柄を実行するのに、こういう不都合なことはいかぬじゃないか、政府は一体何をしておるのかということを言わざるを得ない。何ぼ与党でも、これは言おぬわけにはいかぬ。しかも御注意を願いたいと思うことは、総理、こういうことになっておる。三十四年と三十三年とを比べてみると、件数は少し減っておりますが、金額はふえておるのです。こういう状態になってきておるときに、私はこの原因というのは一体どこにあるかということを調べてみると、原因は三つある。非常に言いにくい話になるのでありますが、原因は三つある。この三つを一つ総理大臣のお考えをもって改めていただきたい。私がきょうこの話をする目的は、与党の立場においてこれを強調いたしますゆえんは、将来の前向きの私の話としては、これが根絶をしたい。どうすれば根絶ができるかという根絶に力を入れて、総理の御意見を伺いたいというのであります。  まず第一に、一番いけないのが一つある。それは、昨年末国会に持ってきた報告書というものは、三十四年でしょう。今からいうと二年前のものですよ。そうすると、下手をすると内閣はかわっておる。大臣は大体かわっておる。寿命がみな短いからね。(笑声)それから不当支出の役人は一体どこへ行っておるかというと、大体出世をして、局長や次官になっておる。責任をとらないのです。会計検査院からしかられて頭を下げるだけで、責任をとらない。責任をとらないのが普通であるということになっておる。ここに根絶ができない原因がある。これでは国民に済まぬですよ、こんなことをやっておったのでは。これはその官吏がやめておれば、民間におるのだから仕方がないけれども、どこに行っておろうが、現在政府の役人として存在しておる限りは、その役人に対して追っかけて責任を負わす、がんとした責任体制を確立する、引責をせい、こういうことはどうしても私はしてもらいたい。それをやれば、大いに私はその批難件数というものは激減するものと思う。ちょっと注意をしたらできることを、いいかげんにやっておる。なに、会計検査院が来たら、適当に説明しておけばいいという量見がいけない。不注意が多い。善良なる管理者の注意をもって注意をして事務をとるならば、こんなことはなかろうと思えるような事柄が相当量に及んでおる。こういうことでありますから、これはしっかり責任体制をとってもらいたいということが一つ。  それからもう一つは、会計検査院の立場です。——事務総長、そこにおすわりなさい。遠慮しないでもいい。きょうはあなたの役目だ。そこへおすわりなさい。私は説明はすべて略すが、あなたは会計検査院法三十六条というものを知っておりますね。どんなことが書いてあるか、そのまま読むことは私は記憶がないが意味はこういうことが書いてある。会計検査院は、専門の業務として会計検査を行なっている、去年も批難事項があった、ことしも批難事項があったというように、同じ種類の批難事項が継続してこれが減らないときに、よく探求するならば、会計検査の体験に照らしてみるならば、どこか制度が悪い、どこか行政が悪い、どこか法律が悪いと法律、制度、行政そのものについてという三つが法律に書いてありますが、その三つについて、これをこう改めるならば、この批難事項はなくなるだろうということが想定できるときに、会計検査院はその担当者に対して、政府に対して、その制度、法令、行政のあり方についての改善を表示するというふうに書いてあるね。私は部分的にしかわかっておらぬが、意見を具言して表示するとある。会計検査院に私は伺ってみたいが、何でも私の調べたところによると、十一年ほど前に一ぺん表示している。何でもつまらぬことを表示している。それから四、五年前に、何だこんなことかと思うような表示ができているが、この二つ以外会計検査院開聞以来表示がない。この条文はどういうふうに会計検査院は読んでいるのか。会計検査院の条文は、表示しなければならぬとは書いていないのです。表示することができるとしか書いてないのだが、その表示をしたものは、国会に報告をしなければならぬということが書いてあるが、国会に報告してきた事例が前後二回しかない。この二回以外に表示の実例があるのかどうか、これが答弁一つ。  もう一つついでに答弁してもらいたいのは、はっきり言うていいのですよ。意見を具申しても政府が聞かぬから、いやだからやらぬのだ、それはそれでよろしい。きょうは言うてよろしい。言いなさい。かまわぬ。どういう事情で会計検査院はこの三十六条の精神を守らぬのか。会計検査院はこれをやらぬようだったら有名無実だ。これを一つ答えをして下さい。それからここ過去三年間の批難件数は、私が言うたような状況が内容のものであるかどうか、どういうわけで意見表示をしないのかということ、この二つを答えていただきたい。
  42. 大沢実

    ○大沢会計検査院説明員 お答えいたします。  検査報告の批難件数その他については、大体田中委員のおっしゃった通りの件数であり、事実、内容もその通りであります。  ところで、ただいまお示しになりました会計検査院法第三十六条の問題でありますが、これはすでに御承知通り、法令、制度その他に改善を必要と認める事項があれば、会計検査院はこれに対して意見を表示することができる、こういう規定でありまして、会計検査院が経理の適正を期し、是正をはかる上にきわめて重要な規定であり、またこれを活用することは検査院の重要な職務であるということは、われわれ痛感しておる次第であります。そこで、過去におきましても、この点に対しましてはいろいろな点から検討を加えまして、先ほど田中委員は、一件か二件程度だとおっしゃいましたが、現在までに約十件のものに対して意見を表示しております。内容の個々は申し上げるひまもありませんですが、たとえば会計職員の資質を向上するには、こういう研修制度を設ける必要があるのではないか、あるいは補助制度を改善するのには、支出負担行為の制度というものを確立する、あるいは査定は机上査定でなく、現場査定をしなければいかぬではないかというような趣旨をいろいろと申し上げた次第もあります。しかしながら、ただいま御指摘にありましたように、ここ数年におきましては、いろいろの方面から検討はしておるのでありますが、まさしく御指摘の通り、意見表示をしたものはございませんので、この点は御指摘の通り、われわれとしても深く思いをいたして、将来はこの点に関しましてさらに一そうの努力を傾注して参りたい所存であります。
  43. 田中伊三次

    田中(伊)委員 今後は意見表示にしっかり努力をするということであるが、これは意見表示をやらしたい。  それから総理大臣にお聞きを願いたいのでありますが、意見表示があった場合においては、憲法上独立機関たる会計検査院の意見表示というものは、体験に基づいてやってくる意見表示でありますから、これは一つ国会もその報告を受けて、真剣に改めるべき法律は改め、改正すべき制度は改正する、行政のあり方を変えるべきものは、勧告に従ってしっかりやらすということに国会も考えていきたい。それから政府の方でも、一方において責任を確立してしっかり引責せしめると同時に、この会計検査院の将来への意見に対してはえりを正す、こういう考え方によって国民の希望にこたえていこう、——これは与党は慎んでこのことをやっていきたい、こういうふうに考えるわけでございます。なお、自分のことを言うわけでございますが、これは政府への質問ではありませんけれども、参議院のことは触れることはできませんが、わが衆議院についての状況を見てみても、決算委員会というものはあるけれども、その決算委員会は、持って参りました会計検査院の報告をなかなか上程しない。長くは一年、もっと一年をこえるようなものがほうりっぱなしになっておる。二年も前に持ってきたものをようやく昨年からだんだんと手をつけておるような状態であります。国会の方も、私たちが国会の運営に気をつけまして、提出された報告書は、その年度のものはすみやかに上程をする、そうしてシラミつぶしにその不当支出に対しては各省を呼びつけて責任を究明する、こういうがんとした態度で国会がこれに臨む。会計検査院は、法律、制度そのものについての改善の意見は、何ものにも遠慮せずにしっかりやる。きょうは病気のために会計検査院長が来ておりませんが、総長が代理をしてこの話をしっかり持って帰って、聞いて、次に持ってくる会計検査院の報告書の中には、いやしくも数年間継続して跡を断たない不当不正の支出に対しては、信念を持って一つ改正意見を持っていらっしゃい。国会、政府はこれに対してえりを正す、こういう考え方になって、これを根絶していきたいと思います。時間がありませんから、私は会計検査院関係はこれで終わるわけでございますが、総理伺いたいのは、今後はその役人がどこへ転勤を命ぜられておろうとも、あくまでも責任を追及して引責を行わしめるという責任体制の確立、それから会計検査院の意見表示に対しては、従来のごとくおざなりの態度はとらぬ、こういう二つの事柄について御意見を伺いたい。
  44. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 お説まことにごもっともでございます。その線に沿って善処いたしたいと思います。
  45. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それから次に私が伺いたいと思いますのは、時間がありませんからかけ足で伺いますが、大都市、たとえば、東京、大阪、京都、名古屋のような大都市交通の緩和について、幾らか私の具体的意見があるわけでございます。どうすれば改善ができるかという市民にとっての重大の問題があるわけであります。これについて御意見を聞いてみたいと思います。  まずこれについての御意見を伺うのは藤枝総務長官、交通を担当していらっしゃいますからお聞きしたいと思うのでありますが、まず第一は時差出勤です。これは非常に効果を上げておる。ただ、今おやりになっておることの欠点は、範囲が狭過ぎる。全通勤勤労者の四割ないし最低三割程度まで包含する程度にこの協議会の範囲の拡大をしていく。できれば全通勤者の半ばを動員することができるように、官公民の協議会を結成して、その協議会の運営によって時差出勤の強化をしてもらいたいと思う。そういうことが私は非常な効果があると思います。  それからついでに私がもう一つ申し上げたいと思うことは、警察庁を中心にしてやっております新しい道路交通法、——この道路交通法施行以来、昨年の十二月のたしか二十日であったかと記憶をいたしますが、まだ一カ月あまりにしかなっていないということであるにかかわらず、その三週目の間に生じました効果を見るというと、命をなくした死者につきましては、二割二、三分も統計上の件数が激減をしてきている。負傷者も減っている。事故の件数も非常に激減しているという現状であります。そういう現状でありますが、この欠点はどういうところに欠点があるかというと、主要道路だけについてしか実行をしていないように私は見る。たとえば高級料亭の周囲のごときは、狭い道路に自動車が置きっぱなしにしてある。人間が歩くことができぬくらい自動車が今日置いてある。新しい道路交通法の見地からいうと、こんなことをやっているのはわけがわからぬ。道路交通法の完全実施をやれ、時差出勤に力を入れて道路交通法完全実施をやれ。第一の点については藤枝長官、第二の点については警察庁長官にその御意見を伺いたいと思います。
  46. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 総理府で交通対策本部を主管しておるための御質問と思いますが、時差出勤につきましては、この冬季のとりあえずの問題といたしまして、中央官庁の相当部分と東京都で実施をいたした次第でございます。それと同時に学校並びに各会社等に呼びかけをいたしまして、学校では約百十七校が時間をおくらすか繰り上げるかに協力をしていただいておりまするし、ほかの会社でも約一割程度は御協力をいただいております。しかし、この制度を恒常的にいたしますのには、なお国鉄当局その他の詳しいデータも必要でございますので、今御提唱になりましたような形も考えつつ、恒常的な制度にいたすかどうかにつきまして、さらに検討を加えたいと存じております。
  47. 田中伊三次

    田中(伊)委員 第二の点は警察庁長官でなしに担当国務大臣に……。
  48. 安井謙

    ○安井国務大臣 お説の通りに、大都市の交通は非常に緊急な事態になっております。道路交通法も実施いたしまして、今御指摘のような効果を上げておる面もございますし、また同時に、まだふなれのために、あるいは不徹底なために、まだ行き届いていないところもございます。この点につきましては、十分今後気をつけて徹底を期したいと存じております。
  49. 田中伊三次

    田中(伊)委員 新道路交通法の完全実施——現在はどの限度まで実施をしておって、現在残っておるのはどれだけかということを一つ警察庁長官からお答え願いたいと思います。
  50. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 お答え申し上げます。昨年の十二月二十日から全面的に施行をいたしておるわけでございますが、各地方々々によりまして、特に急を要するところから取り締まり、指導ということを強化しておるようなわけでございますが、ただいまお話しのように、できるだけ広範囲に全面実施に進んで参りたい、こう考えております。
  51. 田中伊三次

    田中(伊)委員 そこで続いての交通関係は、市民の生活に非常に密接な関係がございますから、非常に具体的な所見を私が申し上げてみたいと思います。  今申し上げた二つに力を入れる、こういうこと。それからもう一つは、交差点の停留所の置き方であります。現在、御承知のごとくに交差点の手前に停留所が置いてある。これを交差点を渡った向こう側に、できれば乗降客のあまり迷惑にならぬ限度で、もう少し距離を離して、交差点の向こう側に停留所を置くことにすれば、路面電車があるという前提から申しますると、非常に交通緩和に役立つ。例が二カ所あります。これも私は昨日踏んで参りました。それは虎ノ門と田村町です。虎ノ門、田村町の南北の通りだけでございますが、渡ったところにあります。欲を言いますと、渡って現在ある位置よりも、もう二、三メートル向こうに停留所を置くことになれば、交通をスムーズにする上に非常に役立つということが一つでございます。これは幾らか金のかかる問題であるし、政府がこれをやろうといたしましても、東京都でありますと、都がこれを管理しておるわけである。また大阪、京都あるいは名古屋、神戸といったようなところが管理をしておるわけでございますから、幾らか金がかかることでありますから、この財政的措置というか、起債の対象として、これを考えるという措置は考えなければなりません。考えなければならぬが、これを市街地全部について平面交差点のあるところはことごとく渡ったところに停留所を置きかえる。これが一つ。これは専門家の御意見を聞きたい。そんなものは役に立たぬというなら、役に立たぬ御意見を聞きたい。  それからもう一つは、ニューヨークはここ二、三年の間に全部完成をしようというのであるが、これは平面交差点というか路面交差点、この路面の平面交差というものは解消したい。一本はそのままでありますが、他の一本は下をカットして切り下げて下を通す。いわゆる立体交差と一口にいわれる工事であります。この工事を市街地について全面的にこれを実施する。ニューヨークのポートから新しい資料が来ておりますから、後に藤枝君の方へ差し上げておきたいと思います。そういうことにいたしますが、このアメリカ式のカットのやり方から申しますと、経費も三分の一程度でカットができる。非常に衛生的で非常に明るい。地下を通るような感じは少しもない。こういうような状況で経費も安く実現することができる研究ができ上がって、イギリスも、これに右へならえをするようでありますが、まさにニューヨークで実施しようとしておるこの計画を参考にして、全面的に市街地は実施をしたい。これは参考までに申し上げておきます。雑踏のところだけということでは役に立たぬ。雑踏のところはすっと通れるが、はるか向こうへ行くと車がとまっているということで、結局中央に影響してくるということでありますから、市街地は原則として立体交差に改めて、平面交差は解消するという方針をとっていきたい。  それから第三は、一体品川へ入って千住に抜けるトラック、自動車が銀座のまん中を通る必要はない。こんなことをしておるのは、世界的大都市では日本だけだ。そんなことはしておりません。これはすべからく地下道をぶち抜くべきものである。地下道の抜き方はいろいろあるだろうが、今後において営団のやっておる地下鉄のトンネルの抜き方のところに注意をして、一緒に抜いてしまう。別々にやらないで、一緒に抜いてしまう。一つのトンネルの中を地下鉄も往復しておる、トラックも走っておる、通り抜けの車も走っておるということにする。一体今日の混雑は通り抜けがいけない。用事のない通り抜けが銀座のまん中を走るから日本一の雑踏になる。こういうことから、この混雑を防ぐためには地下道を思い切って作る、こういう努力をすべきものであると存じます。地下道について私が参考に申し上げたいのは、今帝都の中心部で交通の大障壁となっておりますものは、現在の宮城と東京駅であります。しかし宮城を中心として申し上げますと、御承知通り帝都高速度道路計画というものが藤枝君御承知通り計画されておる。この計画はぜひ実現をしたい。宮城はつぶすべきものでない。皇居をロータリーとして存在をせしめる、こういう考えの計画でございますから、これは大いに実現をして、予定をおくれないように一つしっかり金をかけて促進をしてもらうことは当然のことでございますが、同時にこれと別個に並行をして、二重にならないような地下道というものを考えてみると、二重橋前、これは日比谷を含める。二重橋前から日比谷を含めて東京駅の地下をぶち抜いていく。これは日本一の混雑の場所といわれる祝田橋、桜田門、こういうものの交通は緩和をされることは説明をする必要はないわけです。こういう努力をするための地下道をぶち抜いた工事をまず行なう。宮城はそのまま置くというのですから、上を高架を通そうとか、遠慮してもらって道路を通そうとかいうことを言うのではない。ですから、これは遠慮をせずに二重橋前はトンネルをぶち抜く、こういうことで一つ市民の期待に応ずるように努力をしたい。これはなかなか私が一時間や二時間ここでしゃべったからといってまとまる話ではないから、こういう意見について非常に大事なことは、路面電車のそれを切り下げて立体交差にするにしても、一つ停留所を置きかえるにしても、国道もございますけれども、大部分の重要な道路というものは国道ではなくて、都あるいは大都市等の持っております地方団体の管理に属する道路が多い。従って地方団体は、こういう方針だからお前たちやれではやらない。まず財政的な措置としては起債を許さなければなるまい。その起債は、交通混雑を改めるための特別の起債のワクというものを考えて、積極的に熱意を持って起債を許す方針をとらなくちゃいかぬだろう。それから、こういうような大事なことをやるためには、大蔵大臣にお聞きを願っておきたいのでありますが、地方起債、地方起債というて借金ばかりでやらさないで、これはやはり大事な公共事業だ、こう考えて、国がこれに対しては国庫の補助をする道も検討してよいのではないか、こういうふうに考えるのであります。これに対して、まず今私が述べましたような具体策がはたして交通緩和に役立つという信念があるかどうかということについて、藤枝長官の御答弁を承りたい。財政措置についてはこれを顧慮しなければできぬかと思うが、財政問題については大蔵大臣がどういう考え方をお持ちになるかということを聞きたい。そうしてこういう私の言うたようなことの工事の技術面ということに対しましては建設大臣の所見を引き続いてお伺いをしておきたいと思います。
  52. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 私がお答えするのが適当かどうかわかりませんが、ただいまの路面電車の停留所の問題はすでに東京都におきましても取り上げておられまして、調査をいたしておりますのが五十四カ所、実施決定をいたしましたのが二十カ所ございまして、今後もこれを推進されていくはずでございまして、路面電車がある限り、ただいま御指摘のような方法の方が交通の混雑を緩和するには非常に役立つことは事実でございます。その他の御意見につきましては、十分対策本部といたしましても各省と連絡をいたしまして、ただいまの御指摘になりましたような方向で実は考えるべく努力をいたしておる次第であります。
  53. 水田三喜男

    水田国務大臣 有効であり、かつ必要な資金の調達問題については十分検討いたします。
  54. 中村梅吉

    中村国務大臣 お答えいたします。立体交差の問題につきましては全く同感でございます。実は私ども非常に熱意を持っておるわけでございますが、ただ既設の道路につきましては、今十字路の幅員をこのままではなかなか立体交差は困難でございます。これをどういうふうに解決するか、非常に困難な問題があります。従いまして今度作りまする環状七号線のようなのは、最近の設計変更によりまして、ほとんど重要地点は全部立体交差にするように約三十八カ所ほど立体交差地点ができます。それからなお東京都と協議いたしまして、昭和通りの立体交差を考えております。目下東京都が中心になりまして設計をいたしております。なお、重要地点としましては、祝田橋の立体交差が本年度予算化ができました。その他たくさんこれは考えなければならないと思うのですが、用地の関係で容易にこれはできないと思うのです。今国会に、建設省としましては、公共事業に関連する市街地の改造に関する法律案をすみやかに提出いたしたい考えでございます。これができましたら、この法律をできるだけ適用いたしまして、十字路の解決を、全体の拡幅ということは既成市街地では困難でございますから、そういう重要地点のみについてだけでもせめてこの法律を適用しまして、若干のすみ切りなり、拡幅の道を講じまして立体交差を検討して参りたい、かように存じておる次第でございます。ただ地下自動車道につきましては、実は首都高速道路公団を作りますころ、私も同じ考えを持ちましてそういう提唱をしたことがございますが、技術的に聞いてみますると、自動車というのは地下鉄と違いまして排気が非常に多いものですから、相当長区間の地下道というものは排気の関係でとうてい無理である。短距離の部分的の場合は別でありますが、全線としましては、やはり高架高速道路による以外にないという専門家結論によりまして、私どもも当時公団を作るときに議員として設立に協力いたしましたが、今日そういう方法で高速道路の促進を実ははかっておるような次第であります。
  55. 田中伊三次

    田中(伊)委員 私の申しておりますのは、この大都市交通の問題を大都市だけにまかしておかないで、中央政府が乗り出して具体的努力を払え、こういうことなんです。それに一つしっかり力こぶを入れていただきたい。内容は具体的に以上申し上げた通りであります。  それから水田大蔵大臣に、私は減税の問題で一口だけ伺ってみたい。本年の減税は御承知通り国税中心の減税であります。しかしながら地方税でもまた国税でも、ことし手をつけなかったもので相当重要なものがある。たとえば大都市の中小企業をめぐって非常な重圧となっておるところの事業税、農村は負担をしておりませんが都市は負担をしておるという事業税であります。この事業税の減税のごときは、中小企業対策立場から急いで取り上げなければならぬ問題であると思う。それからもう一つ、目立って必要に迫られておるのが入場税でございます。テレビの台数が全国的に普及されていき、数が進むに従って映画演劇はいけない、壊滅的な打撃というべき打撃を受けておるわけであります。この実情がうそでない限りは、これに対して政府は廃止もしくは大幅減税という対処をしなければならぬ、これが実情であります。今直ちにやれというのではありませんが、次の減税計画の中には事業税と入場税は少なくとも織り込んでいかなければ実態に合わない。これについて大蔵大臣の御所見を伺いたい。
  56. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、個人事業税は昭和三十四年度に基礎控除を大幅に引き上げるという措置を一ぺんとりました。今度の所得税の改正におきましても、白色申告者の家族専従控除を新たに創設するというようなことで二十一億円前後の減税を行なっておりますし、法人事業税の方は、やはり三十四年に一ぺん税率を下げまして、今度の改正におきまして、耐用年数の短縮というようなことで、八十億円ぐらいの減税をやっておるというふうに、いろいろ努力はいたしておりますが、この事業税は、今府県の最も主要な税源になっておりますので、この事業税のあり方というもの、企業課税の一環としてのあり方、あるいは国、地方の税源の配分問題としての事業税のあり方という、この問題について、一ぺん根本的に検討するというのが税制調査会の大体のプログラムになっておりまして、今回は、御承知のように所得税、法人税の問題で検討の済んだものの減税を実施したということでございますが、この次にこの問題に入るという予定になっております。  入場税も同じように、間接税はこの次の検討によって善処するということになっておりますので、これから私どもは税制調査会で検討を願うということを考えておりますが、今おっしゃられたように興行の不振ということははっきり現在出ておるところでございますので、これもそういう意味で次年度において十分検討してこの減税を考えたいと思っております。
  57. 田中伊三次

    田中(伊)委員 質問の最後でございますが、文部大臣にお伺いをしたい。こまかい問題は時間がかからぬように取りまとめて意見をお伺いしますが、まず非常に大事な点は、私は、わが国の文教をどういうふうに持っていくことが正しいのかという問題をめぐって、新しい日本の子弟の教育をいたします場合、主として学校教育を中心伺いたいのでありますが、学校教育における新しい指導理念、指導という言葉がいけなければ教育理念、教育の基礎となるべき教育理念はどこに置くべきかということについて、幾らか所見を申し上げて大臣の御意見を伺いたいと思う。  申し上げるまでもないことでありますが、戦前のわが国の教育の指導理念は忠君愛国である。その忠君愛国をやめにしていわゆる自由主義教育といわれるものをやった。その自由主義教育というものの中身を見てみると、子供中心主義、生徒児童中心主義、生徒本位、子供本位、いやと言わないような子供本位の教育をやって参りました結果、十数年来の教育の結果大きな欠陥として現われたものが二つあると私は見る。その一つはまず第一に、好きなような教育を好きなようにやらすということを自由主義教育だということで、いやなことをやらさない教育をした結果、読み書き算数等の基礎実力というものが非常に目立って低下をしてきたということであります。これは科学をしっかりやろうという与党政府精神からいうと、こういう教育方針はよくない。そういう経過が一つ出てきておることが欠陥の一つの現われだ。もう一つ、この教育をいたしました結果の現象として出ておるところは、本日も本会議を通じて問題になっておるように、人間の命は何とも思わない。むずかしく言うと倫理観念、社会党のきらいな言葉で言うと道徳観念、そういうものがだんだんと低下をしてきた。私はこれを新倫理観念というのでありますが、その倫理の観念というものがだんだんと麻痺してきたからして、先生、先輩を尊敬しない、親は大事にしない、こういう傾向、人間の命は何とも思わない、おのれの利益以外は大事なものはないんだという観念が、子供の頭の中に自然と教育の結果植え付けられてきたということが、第二の欠陥だ。文部大臣、この二つの欠陥を補おうとして、あなたは新教育課程方針をとって、ことしの四月から小学校は新教育課程で始める、中学校は来年から、高等学校は再来年から始めるということに決心がついておるので、これはいいと思うのですが、この段階、この大事なわが国文教行政について大事な時期に、昔とっておりました忠君愛国にかわって、どういう理念をとることがよいと思うか。忠君の君はなくなったからして、忠民愛国といえば理屈は合うのだけれども、忠民愛国ともどうも言えぬのじゃないか。国を愛し、平和を愛するといったような指導理念も一つ考え方であろう。社会党も共産党も、保守主義を信奉するわれわれも、どの階層も得心のいくような、りっぱな民主主義的内容であって、今私が述べたような二つの欠陥を補う見通しのある指導理念というものが何かないか。文部大臣のお考えを、まずこの点について承りたい。
  58. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。なかなかむずかしい御質問で、専門的な用語ではお答えできませんけれども、俗に、端的に一言で申し上げれば、私は、りっぱな日本人として子供たちが育ち上がってくれるというふうな教育をやるんだ、それが教育目的から申しましたお尋ねの点にぴったりはまるかどうかちょっと疑わしいのでございますけれども、そういう申し上げ方が一応成り立つのじゃなかろうか。もとよりこれは今の憲法に淵源し、教育基本法にのっとり、学校教育法に定めるところのものを総合しまして、通俗の言葉で一言で言えば、私はそういうことじゃないかと思いますが、そのことを総理の施政方針演説の中には、お聞きいただきましたように、わが民族を愛し、わが国土を愛し、わが文化を愛する、しかも高い人格と良識を身につけたりっぱな日本人を形成するのだ、そのことが同時にまた世界人としてもりっぱな日本人として認められる、諸国民の信頼と敬愛をかち得るに値することでなければならない、まずそういうところを基本的な考え方としてねらっていくべきだ。こういうふうに総理から言っていただきましたのも、いわばその意味だと心得ております。
  59. 田中伊三次

    田中(伊)委員 この席でこの大問題を短い時間で解決をしていこうということは困難なこともわかっております。そこで私は希望しておきますが、新教育課程によって教育をやり直そうと考えておる——十分ではないでしょうが、そう企てておる最中でありますから、門出でありますから、この機会にどうか一つ仰せになったようなことを、どういう言葉で表現をして、そういう表現によれば具体的内容はどんなことだということがすぐにわかるような新しい教育理念をお考えになって、真剣に検討せられんことを、文部大臣、特にあなたという文部大臣に私は希望をしておくわけであります。  それから文部大臣に私はお尋ねしておきます。現在の非常に大事なことだけ、時間がかからないようにお答えを願いたいのでありますが、大学制度は現在は四年でございますね。それで二年は教養であって、あとの二年間は専門ということになっておる。これは専門科目が、科学技術をやかましく言っておるが、人文科学にしても専門ということになると、経済でも法律でも商学でも二年では足らぬのじゃないか。二年、二年というやつを三年、一年というわけには参らぬものか。しかもその一年も単なる包括的な基礎教育だということで教養にしないで、一年間の教養というものはAならA、BならB、昔でいうならば甲類、乙類といったことに高等学校ではなるわけでありますが、幾つかに分けて、人文科学の方向に向かわんとする者はAの教養一年を受けるべし、自然科学の中でも基礎学としての理学方面に向かわんとする者はBの教養予科を経るべし、工学的方面に向かう者はCの教養科目を経たるものでなければならぬというふうに、この基礎となるべき予科的意味を持った教養の一年と、あとの専門の三年を一貫した直線の上に乗せていくという考え方が必要ではないか。こういうことは真剣に考えてみていいのではなかろうか。実際の業態に優等の卒業生を採用して使ってみての各使った人の実感がここに出ておる。そういう点から考えてみると、私はこういう改正をすることに検討を加える必要があるやに思うのであります。大臣の御所見を承りたい。
  60. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 ただいま田中さんおっしゃったことは、専門家の間でも同様の意見があるように仄聞いたしております。なお、昨年の五月、松田前文部大臣の当時に、御指摘のようなことも含めつつ、大学制度それ自体を根本的に一つ検討しようということで、中央教育審議会に総合課題をかけております。いずれはその結論を待たなければあれこれ申し上げられませんけれども、その審議の途中におきましても、漏れ聞いたところでしかありませんが、やはり同じような御意見等が検討されつつあるやに聞いております。十分考えるべきことだと思います。
  61. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それから大臣、専科大学のことをちょっと伺っておきたい。非常に大事なことである。何回も何回も流産しておりますね。私は、これは流産は間違いだと思う。所得倍増をしなければならぬ大事な時期に、専科大学を流産させることは間違いだと思いますので、それで私は一言聞くのでありますが、この専科大学の法案は、わが国の単科大学の経営の人々から猛烈な反対があるというけれども、それは説明が悪いからだ。現在の単科大学の持っております使命と、専科大学の持つ使命とは使命が違うわけです。本質だって違うのだから、その違うところを行き届いて説明をして、宣伝を徹底して了解を求めれば、専科大学制度というものに単科大学が反対をするなんということはない。生徒は余っておる。専科大学制度というものの法案を今国会に重ねて提案をなさる御意思があるかどうか。意思があるかどうかということを聞く意味は、出せという意味なんですよ。出す気があるかどうかでなく、お出しなさい、御決意はどうか、こういうことです。
  62. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お話にもありました通り、二回ほどたしか流産しておるかと思います。流産の理由等も一応聞いておりますが、やはり高等学校からさらに二年間を加えましたくらいの一貫した専門の、昔でいえば専門学校みたいな、高等学校時分から、みっちりと仕込むための特殊な制度が現実的に有効であろう。これは産業界方面からも盛んに要望されておると承知しておりますが、提案いたしたいと思って、今検討いたしております。検討いたしております意味は、これまたさっき申し上げましたように、中教審でもやはり検討中でございますので、大体中教審も田中さんのお説と同じようなことと聞いておりますが、さらにまた、特に与党方面にも、提案するにつきましては十分御理解をいただいた上でなければ提案をすべきじゃなかろうと思いまして、そういう意味で検討を加えつつあります。
  63. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それからちょっと大蔵大臣——文教に関することですが、あなたでないと因ることがあるのであなたにお尋ねをしたい。これは、文部大臣には意見を聞かなくても賛成にきまっておる。それはどういうことかというと、一高等学校の中で工業高等学校というものがありますね。この工業高等学校は何の目的で与党が作るのかというと、所得倍増を目ざして十年後を計算してみると、四十四万人の技術者、技能者というものが不足をするのではないかと推定される。この四十四万人の技能者、技術者を補うていくためには、急にはいけないのでありまして、年々歳々逐年この工業高等学校を作り上げていかなければ、技術者、技能者の不足を補うことはできないということが現状なんです。そこで金のかかることを大蔵大臣に言うわけですが、大蔵大臣はこれに対して特段の措置をお考えを願いたいということが、大臣に聞きたいことの一つ。  それからもう一つ、高等学校について伺いたいことは、終戦後、復員の関係わが国の赤ちゃんの人口が急に増加をした。その赤ちゃんがだんだん大きくなって、来年からは高等学校に入る。従来の数と比べると、四十万人ずつ高等学校の生徒がふえてくる。これが三年間ふえる見込みで、四年目からは幾らか減る見込みでございますが、山は三年である。四十万人ずつ三年間というと、現在の高等学校の校舎で背負い切れない、乗せ切れないものが百二十万人の生徒に及ぶ。この百二十万人の生徒を積み残しにならぬように高等学校の学校に乗せていこうと思うと、どうしても既存の校舎の新増築が必要になる。ところが政府の現在の国庫の補助のやり方を見てみると、古い校舎が老朽になって改築をする場合は、本年もお金をもらっておるようでありますが、国庫の補助がある。老朽になったら国庫の補助をするけれども、新築をするときには国庫の補助をしない。この考え方はよくない。既存の校舎が老朽になったら新築をする。特別増員の理由はないのです。これもやってもらわなければならないが、特別増員の自然増員になるというこの環境がここに置かれておって、そうしてそれをどうしても収容するために新築、増築をするというときに、この新、増築に国が補助金を渋ることはよくない。私は、高等学校のこれらの生徒の父兄が非常に心配をしておるところから、一つ来年度以降においては、前向きの話になりますが、大蔵大臣としては、この問題についても財政的の補助の措置について慎重にお考えを願いたい。この二つです。
  64. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように中学の卒業生は三十八年度から四十年度にかけて急増する、それに応じて高等学校の生徒の急増も三十八年から始まるということでございますので、私どもも第一次の補正でお願いしましたように、中学と同じように前向きの配慮を高等学校についてもする必要があると考えまして、今度は三十億特別のそのための起債を計上するという措置と、同時にその場合この高等学校生徒のふえるときに所得倍増計画からいたしましても、工業高等学校卒業程度の人の不足が四万五千人もあると見込まれておりますので、三十六年度から毎年三十九年度まで一万ずつ、四十年度五千人、これだけの養成に力を入れるつもりで、すでに今まで高等学校中心にそういう産業教育とか関係の振興費をずいぶん補助いたしておりますが、特に今度は年次別に工業高等学校についての補助をする、そうして三十六年度の分だけではなくて、三十七年度の前向きの分の校舎を作るものについても、三分の一の補助をするという予算を今年計上したような次第でございまして、一般高等学校急増に対するだけじゃなくて、特に工業高等学校の育成というものについては、予算的な配慮を本年度からすでにやっているという状態であります。
  65. 田中伊三次

    田中(伊)委員 一般高等学校の新増築に対しては、起債の面はもちろんでありますが、起債の面以外にどうしても国庫の補助ということを強くやっていく、こういうことが私の意見でありますから、これは慎重にお考えいただきたい。  それからもう一つ大蔵大臣伺いたいのは、私学の振興に関する一環でありますが、大蔵省の告示で指定寄付の制度ということをやっておりますね。御記憶にありますか。これは相当寄付を学校がもらうと、寄付者はそれだけが損金に見られる。ただし大蔵大臣の告示によるところの指定の寄付でなければならぬ、こういうことなんです。その指定寄付の制度を現在の大蔵省はこれを拡充強化をしてもらいたい。私学というのは、御承知のように、時間がかかりますから簡略に言いますが、たとえば大学生だけの数を見ても七十万人の大学生がわが国にはおる。短期大学生を入れまして、大学生と名のつくものが七十一万人おる。その七十一万二千三百人という数のあるこの大学生の中で、私学は四十七万人も担当をして教育をしてくれておるということなんです。これを損金として落とすくらいのことは、大蔵大臣はお考えになる方がいいのじゃないか。国の世話にならないで自力でやっておる。借金の方について、融資の方については、大へん御配慮をいただいておる。同時にそういう指定寄付というやつは、国から利息を払って金を借りるというのじゃない、ただもらうだけのことです。損金として落としてくれるならば喜んでやろうというやつが、税金の損金に落としてくれぬから金は出せぬという会社が多いのでありますから——大部分は法人の関係なんです。これはきれいに一つ損金に落とせるように告示の指定寄付の制度というものは強く拡充をして、私学の振興に役立つようにしていただきたい、これは一つ御意見を伺いたい。
  66. 水田三喜男

    水田国務大臣 私学につきましては、指定寄付金の制度の拡充を一応しておりますが、今度の場合は、この指定寄付のときには、もっぱら設備の取得に対する場合でございましたが、その目的以外に広く広げまして、一般の寄付金のワクを広げる、今無税になる部分を多くする、研究費に対する寄付の問題がございますので、それと一緒に並んで、そういう方向でこういうものを解決したいという考えております。
  67. 田中伊三次

    田中(伊)委員 時間がかかりますので、もうこれで終わります。  最後に文部大臣、これは育英事業のやり方です。本年は池田総理以下大へん御同情をいただいて育英事業というものは大へん増額をしていただいた。私、一つ考えを持ってお願いがある。それはこの育英事業は非常に進んで参りました。昭和十七年に私が初めて代議士に出てきましたが、今から二十年前には育英事業というものは国になかった。初めて演説をした記憶を呼び起こしますが、十八年からこれができた。だんだん大きくなってりっぱな姿になりつつあることは喜んでおるのですが、あなたに一つ頼みたいことは、単価というとおかしいが、貧しい生徒に差し上げる一人当たりの月額を引き上げようと努力されることは、物価が上がるに従ってこれはやむを得ぬのです。しかしこれに努力をなさることもしてもらわなければならぬが、もっと力を入れてもらわなければならぬことは、頭数をふやしてやってもらいたい。それはどういうことかというと、私はわが党の社会保障を担当をしておる責任者の一人でありますが、社会保障的立場からはどういうことになるのかというと、所得の低い家庭の子弟の教育を国ができ得るだけ援護しようということなんです。低所得家庭の子弟教育ということに重点を置いてわが党は社会保障をしっかり進めようということが態度であります。そういう点からいうと、上げぬでいいということは言わぬ、これは努力してもらわなければならぬが、文部省の将来の構想、立案、運営方針としては月額を引き上げるということのほかに、どうか頭数をできるだけふやして、そして低所得家庭の広範囲の人々に対して学資をみつぐ道を考えていただきたい。これが一つ。  それからもう一つは、一体文部省はどういうことをやっておるのか。こういう大事な金を国民の血税から貸しておるのにかかわらず、その金を受けて就職をした人が金の支払いが悪いなんということはもってのほかだ。これは文部省しっかりしなさい。どういう理由でこの金を払わぬのかというと、あまりやかましく言わぬからだということが多いようだ。どうしてやかましく言わないか。後進の子弟のための学資になる、回収した金は貸付になるのです。大蔵省がとろうというのじゃない。先輩が、いかほどでもない金ではあろうけれども、とにかく国の援護によってめでたく学校を卒業してくれて就職ができて収入があるのです。その先輩が、同じ境遇にある後輩のために貸付の財源となるべきこの金を返還しないなんていうことは、日本の道徳、幾らすたれてもこんなことがあるものじゃない。これは道徳中の道徳です。それだけのわけを文部大臣は説きなさい。もっとしっかりこの因縁を説いて、何に使われるかということをよく説いて、後進の者に金が渡るということに力を入れてお説きになるならば、いやしくも成績のいい、いい量見を持った学生が卒業しておるわけでありますから、必ず私はこの回収の率は上がる、回収にしっかり力を入れて、そうして国に極力迷惑をかけないようにして、出してもらった金は広くこれを多数の学生に貸し与える、こういう方針をとることにしたいと思います。この二点について最後に文部大臣のお答えをいただきたい。
  68. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えいたします。第一点の特別奨学金制度をもっと拡充し頭数をふやせという御要望、同感であります。実は高等学校一万五千人を概算要求しましたが、撃退されまして一万二千人にとどまったことを残念に思っております。大学ももうちょっと一万人くらい要望したのですが、八千人にとどまりました。これは年々努力してふやしていくべき筋道のものと思います。  第二点は、借りたものを返さないのはけしからぬ。もとよりお説の通りでありますが、しかし世間で返さないのだととやかくいわれておるのよりも、回収率の成績は上がりつつあります。たとえばことしならことし返済すべき立場の人からの回収はすぐは取れませんけれども、これを五年間追求していきますと、五年目には七〇%は回収できておる。その赤字の累積が相当額になるものですから大へんなように見えますが、実績はそういう状況であります。さりとて七〇%にとどめるべきものではありませんから、税金以上の貴重なお金として、もらった人々が誠実に返してくれるように努力をいたしたいと思います。そのための一つの手段として今度予算も少しつけてもらったのですが、督励員をもっとふやしまして、大阪にもいわば日本育英会の出張所を置きまして努力してもらいたいと思っております。
  69. 船田中

    船田委員長 明日は午前十時より開会することといたし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十六分散会