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肥田次郎君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となっている
国有鉄道運賃法の一部を改正する
法律案に対し、絶対反対の
理由を明らかにして
討論を行なうものであります。(
拍手)
このたびの
国鉄運賃の
値上げの
理由は、
政府の
所得倍増計画に
国鉄の
輸送力を適合させ、現在でも不足しておる
国鉄の
輸送力を
増強するために、
昭和三十六年を初年度とした新五カ年
計画に要する総額九千七百五十億円の金を、
運賃値上げという手っとり早い手段によった、こういうふうに述べておるのであります。
国鉄当局も資料を作っていろいろとPRをしておりますので、われわれも、従来よりもはるかに認識を深めることができました。ただし、私たちが言うところの認識とは、当局の資料では疑問を深めるとともに、
関係者の説明を聞けば聞くほど、その無
責任さに不安を倍増したのであります。(
拍手)あたかも、大道ヤシの商法をほうふつさせるのであります。
政府は、三十二年の
値上げのときにも、
輸送力を
増強し、蒸気はもう古いから電化やディーゼルに切りかえる、こういうことで、経費の総額五千九百八十六億円を五カ年
計画として立てたのであります。ところが、池田
内閣にかわったとたんに、この
計画は打ち切られたのであります。驚いて、これまでの
経過を見ますると、四年間に、幹線輸送に四五%、電化と電車で四七%、
ディーゼル化は四八%と、いずれも五〇%以下の
進捗率であったのであります。ことに、殺人的な国電の混雑を緩和するため二千九百五十両の電車を購入するはずのものが、たった千三百七十六両、この低率と怠慢について、私たちは、
政府の
責任を追及しなければならぬと思うのであります。(
拍手)しかも、疑わしい点では、
新線建設は八四%、諸改良費では実に一一二%と出ているのであります。これは、
新線建設や、
内容がいいかげんに
報告できやすいところの諸改良では、一一二%の経費の使い越しをやったというわけでありまして、これではとても
計画通りにいかないから、ここらが打ち切りの潮どきだろう、こういうふうな処置に出たのではないかという不安がわれわれにはあるのであります。(
拍手)
私たちは、新五カ年
計画を
審議するにあたりまして、この点を追及いたしましたが、満足な
答弁が得られなかったのであります。池田
政策の変更か、あるいは、このまま進めがたいところのお家の事情か、そのいずれかであろうと推測するものでありますが、
政府の
責任を追及したいと思うのであります。(
拍手)
第一次五カ年
計画がこのような結末になったので、これを取りつくろうために生まれたのが新五カ年
計画だと私たちは思います。もし、初めの
計画が予定
通り進んでいたならば、当然、第二次五カ年
計画という誇り高い呼称が用いられたはずであろうと思うのであります。新五カ年と呼ぶところに問題があろうと思います。わが党では、国の
計画は絶対のものだと
考えております。岸
内閣のときに立てられた五カ年
計画が、池田さんの
内閣になったら、新五カ年
計画として、今までの
計画が打ち切られてしまう。池田さんの
内閣がつぶれたら今度は新々五カ年
計画、こういうことでは、
国民の迷惑はこの上もないのであります。
内閣がだれにかわっても、交通輸送のごとき長期を要するところの
計画は、軽々しく変更すべきではない。それには、
鉄道、
バス、トラック、船舶、航空、このようなものを含めたところの総合的輸送
計画の基本のかまえを立てることが必要・であります。
次に、国の動脈である
国鉄の輸送
対策は、その目的と手段に誤りがある。これが
計画のそごを来たしていると私たちに
考えております。国有
鉄道が、
公共企業体として
公共性に重点が置かれているにもかかわらず、
公共と
企業の使い分けの議論が出て参ります。これは明らかに
資本主義経済のもとにおけるところの矛盾でありまして、
公共性を
資本主義経済下では発揮できないという、このことを証拠立てておると思います。(
拍手)現在の
国鉄に
公共性があるとすれば、これは
利用者と
利用者の間におけるところの共済的な現われでありまして、政治の力も
資本家の残飯も、
国鉄の
公共性にはつぎ込まれていないのであります。
私は、輸送と労働
対策の問題が、なお
国鉄の運営に対して大きく
影響しておることを訴えたいと思います。当局は、口を開けば、人員をふやさずに輸送を完遂するといって、職員は十年前の四十四万人余りに押えております。その間に、
新線建設では二千百キロ余りもふえておるのであります。組合を弾圧するための公安官を三千二百人もかかえて、その経費は十五億円を出しております。十年先の機械化に備えて職員はまだ首を切ろうというのでありますから、輸送
計画が絶対に解決しないということを私たちは
指摘したいと思うのであります。(
拍手)総裁は愛社精神というものを説いております。
国鉄に一番愛着心を持っておるのは、油や泥にまみれて職場で働いておる人、乗客にもまれて、もみくちゃになって現場で働いておる人、どういう人が骨身を削って輸送の任務を全うしておるのであります。首切りの愛社精神よりも、労働者の
生活と権利を保障すること、これが輸送問題を解決する先決の条件であります。(
拍手)
運輸大臣も、総裁も、深く反省をしてもらいたいと思います。
最後に、このたびの
運賃値上げは
国鉄運賃法に違反をする疑いがあります。
運賃法四
原則では、公正妥当な
運賃であるべきことを規定していますが、今度の
値上げは、
新線建設や電車購入を目的にしています。すなわち、
運賃の中に、電車を買う金、
新線建設をする金、これが含まれているわけであります。これが公正な
運賃とはどうしても言えないと思います。途中でもし
計画が中止になった場合には、明らかに
運賃の先取りになるのであります。(
拍手)不当な高い
運賃を今きめるということについては、きわめて不穏当であると思うのであります。(
拍手)
第二は、
運賃は原価を償うものとなっておりますが、
原価計算の資料を求めましたが、これは出て参りません。資料がないのであります。従って、新
運賃は、必要なだけの額をまずきめて、そして、それから逆算をしてはじき出されたところの大ざっぱな
賃率でありまして、
運賃原価というものには全く値しない高額なものであります。(
拍手)これは
運賃の名目によるととろの大衆の収奪であろうと
考える次第であります。(
拍手)
第三は、産業の発展に資すること、とあります。これは、
国民の経済を豊かにするため、そのための産業の発展をさしているのでありまして、国の動脈から五千億に近い収入と、四十四万余りの
国鉄労働者の血と汗を独占
資本の開発のために使ったり、反動権力を養う足場にしてはならないということであります。(
拍手)
第四には、賃金及び
物価の安定に寄与することを規定しておりまして、
国鉄の
運賃は、日本経済の基調であり、現行
物価の均衡のかぎとなっているのでありますから、
国鉄の
運賃が上がれば、経済の基底をゆさぶり、
物価の均衡が破れるのは当然であります。
国鉄が上がれば、私鉄、市電、地下鉄、
バス、すべての
交通機関の値上がりを来たして参りますことは、今までの例の示すところでありまして、
大臣や
総理大臣が何と言われても必ずあとから現われてくる現象であります。(
拍手)今起こっておるところの諸
物価の値上がりはその前ぶれであって、経済に重大な
影響の及ぶことは、もう時間の問題だと私たちは
考えます。
生活が不安になれば、労働者の賃上げはいよいよ激しくなりましょう。とりわけ、
農村出身者の多くが働いているのは
中小企業であります。ここでは、交通費の
補償はありません。電車代、
バス代が高くなって、そうして、そのために多額の交通費が要ってくれば、
農村出身の
中小企業で働いている労働者、こうしたものは、いよいよこれからまた物情騒然たる状態が現われてくるだろうと思うのであります。
さて、この
運賃の値上がりを、参考のために従来と比べてみたいと思います。東京から大阪までで百五十円の値上がりをいたします。
池田総理大臣の広島では百九十円上がります。鹿児島へ参りますると実に二百九十円高くなりまするから、およそどこに帰られても、代議士諸公のみやげ話になる話ではございません。国電に一つ例をとってみますると、電車一両のキロ当たりの経費というものは、われわれの計算では六十五円八十七銭と出ます。二十五人乗れば、黒字になります。定期の客で百人乗れば、これも
採算点が出ます。定員を百六十八人の車といたしますると、最近二倍半くらい詰め込んでおります。これが年間の純益百億円以上になります。よろしいですか、年間の純益が百億円以上、これが国電の
利用者が
負担しておるところの、不当に高い
公共負担でございます。(
拍手)
わが
日本社会党は、この
不合理をなくするために、
公共負担法案を提案いたしております。
公共負担法案とは、
政府の
運賃値上げにかわるものでありまして、
国鉄、私鉄の
公共性を生かす目的で、
公共的な割引や
施設に要する費用は国で
負担をして
国民生活を豊かにする、
経済発展の方向を示したものであります。
新線建設や電車の購入の金まで
利用者に
負担させようという
政府の
考え方と、われわれの
考え方とは、全く対照的な対案であるのであります。(
拍手)
政府提案になる、このたびの
運賃値上げは、要約いたしますると、
国鉄運賃法に違反する
値上げである疑いが濃厚である上に、
計画の進捗に対する
責任の所在があいまいであります。ことに、石炭の輸送価格はなお未決定と聞いておりますので、この問題をあとに残して、
値上げだけを先決するということは、許されないことだと思うのであります。(
拍手)さらに、
運賃値上げによって起こる経済変化は、直ちに
国民大衆の
生活に重大な悪
影響を及ぼすことになりまするから、この立場からしても、
運賃の
値上げは許すわけには参りません。
このような重大な
議題が、
審議も十分尽くされずに、登録されたところの六名の
質問者の
質問を許さず、
審議途中で打ち切ったこの自民党の横暴に対しては、われわれは何としても納得するわけには参らないのであります。(
拍手)このような重大な
法案を自民党の単独で議決された
運賃値上げに対しては、絶対に反対をいたすものであります。
時たまたま、朝日新聞も、池田
内閣の支持も下り坂になった、三九%だ、と報道しております。この
国民大衆の声に耳を傾けて、このたびの
運賃の
値上げを率直に撤回して、
公共負担法の成立に協力されること、これが、
池田総理の常に言われているところの愛用されている言葉であるところの、政治の姿勢を正すということになるのであろうと私たちは思います。(
拍手)
池田総理大臣の御協力を強く要望いたしまして、私の反対
討論を終わる次第であります。(
拍手)