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広瀬秀吉君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました五
法案のうち、
揮発油税法の一部を
改正する
法律案並びに
地方道路税法の一部を
改正する
法律案に対しまして、
反対討論を行ないたいと存じます。(
拍手)
政府が今回行なわんとする
法改正は、新
道路整備五カ年
計画に要する二兆一千億円の
財源を充実するために、
現行揮発油税に対しまして、一
キロリットル当たり二千九百円、
地方道路税において同じく五百円、
合計三千四百円の
増税を行なおうとするものであります。
私は、これに対し、次の
諸点を指摘いたしまして、この不当な
法改正に
反対をいたすものであります。(
拍手)
まず、第一に、今回
政府が行なわんとする
揮発油税、
地方道路税に対する一
キロリットル当たり三千四百円、総額で百八十億円に上る
増税は、完全に
政府並びに自民党の
公約違反であることを指摘いたさなければなりません。(
拍手)われわれ
国民は、
政府が一千億円以上の
減税を公約したことは、はっきり記憶いたしております。しかしながら、
かって増税を行なうということを聞いたことはないのであります。
池田総理は、本
国会における
施政方針演説の中で、政治の姿勢を正すと述べられましたが、その根本は、
うそをつかない政治を行なうことでなければなりません。しかるに、その舌の根のかわかないうちに、
うそをつかないはずの総理が
うそをついたことになるのであって、まことに遺憾のきわみと申さなければなりません。(
拍手)かくして、一千億以上の
減税公約は、いつの間にか実質わずかに六百二十一億円の
減税と、
しりつぼみをいたして参り、一方において、三十五年度の税の
自然増収は四千一百億をこえ、
国民は、
減税を喜ぶどころか、
自然増収という名の
徴税攻勢におそれおののいているのであります。そればかりではありません。本日も
論議になっております
国鉄運賃の
値上げによって、四百八十六億の
増税にひとしい問題が出て参りますし、その他、各種の
値上げが多いのであります。今回の
揮発油税の百八十億
増税は、まさに、
国民の
減税期待を踏みにじった、不当、不公正の
措置といわねばならないのであります。
第二に、今次
増税の前提をなす新
道路整備五カ年
計画ないし十カ年
計画は、
わが国産業経済の構造、産業の
地域分布、
人口分布などの
総合的視野のもとに、さらには、
計画に見合う
建設業界の能力、動員可能の
労働力、
必要資材の
供給力、
土地取得の
可能性等を勘案した綿密周到な科学的、合理的なものではなくて、
圧力団体の予算ぶんどり的要素が目立つのであって、はたして実行可能な
計画であるかどうか、まことに疑わしいのであります。かかる不安定、無定見な
道路整備計画をもとにいたしまして、きわめて大幅な
ガソリン税の
増税による
財源を投入しようとするのでありまして、この面からも、
国民大衆と
納税者の納得を得られるものではありません。
ちなみに、
昭和三十三年度を
初年度とする一兆円規模の五カ年
計画は、その
進捗状況において、今日までの三カ年でようやく五〇%程度にすぎないのであります。一兆円の規模ですら
予定を完遂できなかったのに、二倍以上の二兆一千億をどうして遂行できるか、疑いなきを得ないのであります。結局するところ、いろいろな障害によって
工事は進まず、
国民の血税だけが乱費される結果に陥ることを心からおそれるのであります。(
拍手)
第三に、今回の
揮発油税は、
租税の原則をあまりにも無視したものである点を指摘しなければなりません。すなわち、
租税は、
担税力に見合うものであること、公平であること、この原則が要求されるのでありますが、今回の
増税は、このいずれをも踏みにじっておるのであります。
ガソリン税増徴の近年の推移を見ますと、この十年間にちょうど二倍になり、今次
引き上げが行なわれるとするならば二・四倍になるのでありまして、
池田内閣は、まさに、
所得倍増どころか、もはや
運賃値上げ、
郵便料金値上げ、
電気料金値上げ等、
物価倍増内閣となり下がろうといたしておりますが、今回の
ガソリン税値上げを通じて、今や、さらに
税金倍増内閣にならんといたしておるのであります。(
拍手)
政府は、
国民所得に対する
ガソリン税負担率は、今回の一五%
引き上げを見込んでも諸外国とおおむね同様であり、決して高くない、と強弁をいたしております。しかしながら、これは
国民所得の水準を無視した数字の魔術であります。今日、
ガソリン税の
販売価格中に占める割合は、
現行でも五一%であります。
消費税中、たばこに対する税金に次いで二番目の高
税率であることを、この際申し上げなければなりません。
また、
国民一人
当たり所得に対する
キロリットル当たりの
ガソリン税額は、
日本では、
国民所得一人
当たり九万円に対して二万二千七百円、米国では、七十五万円に対して一万四千四百円、英国では三十五万円に対して一万三千三百円、
フランスでは、三十一万円に対して五万二千六百五十円、
西ドイツでは、約二十六万円に対して二万五百円、
イタリアでは、十四万六千円の
所得に対して六万三千七百五十円でありまして、これを
日本の
国民一人
当たりの
所得に調整をいたしまして比較をいたしますと、
日本の
現行ガソリン税二万二千七百円に対し、米国はわずかに千七百四十円、英国は三千四百五十円、
フランスは一万五千六百七十円、
西ドイツ七千二百三十円、
イタリア三万九千六百円でございまして、
イタリアを除く諸国のいずれに比較いたしましても、きわめて高額であるのであります。言いかえれば、
欧米諸国の場合は、その高い
ガソリン価格に示されるように、
ガソリンの
購買力においても、
課税の
負担力においても、
日本にまさっているのでありまして、それとの
単純比較を出しましてこの
増税を理由づけようとするのはまさにナンセンスであります。
さらに、より一そう問題なのは、
日本では、
ガソリン税を
負担するものが、今日の情勢、特に
重油高の
ガソリン安という
石油価格体系を調整する必要があるといわれる
石油業界が、その
増税を吸収することは困難であって、従って、その大
部分は
自動車所有者が
負担することとなるでありましょう。そうだとすれば、
担税力のある
自家用乗用車を持つ者は全
自動車数のわずかに一一%、その
ガソリン消費量も一四%にすぎない、そういう
わが国の現状では、
運送業者を初め、
砂利屋さんであるとか、魚屋さん、八百屋さん、
薪炭屋さんなどの
中小企業者、あるいは
農林漁業者などの所有する三輪車であるとか、中
小型トラック、オートバイ、これらの数はまさに全
自動車数の八六%になるのでありますが、それらの
所有者が
ガソリン消費量の六〇%以上を占めておるのでありますから、今次
増税は、この
担税力のない
人たちが大
部分これを
負担することとなり、耐えがたい重税として大きな
負担となることは明らかであります。しかも、これら
中小企業、
農林漁業者の大
部分は、
税制改正による
一般減税に浴することの少ない人々であります。このことを考え合わせるならば、
ガソリン税の
増税は、まさに
中小企業、農民の血と汗の収奪であり、この
ガソリン税をもってすべての人が利益を受ける
道路整備の
主要財源とすることは、
ガソリン税総額の六〇%以上を
負担する
中小企業者や農民の犠牲において
日本の
道路が整備されるということを意味するのであります。われわれが、
道路整備に対する
財源は、
ガソリン税にその大
部分を求めるのでなくて、一般
財源の投入割合を大幅にふやし、
ガソリン税引き上げを取りやめることを要求するゆえんも、ここにあるのであります。かくのごとくして、今や、
中小企業は、
ガソリンを燃やすのではなくして、
ガソリン税を燃やして毎日営業しておる、このような怨嗟の声がちまたに広がりつつあるのであります。
さらに問題なのは、
ガソリン税は
道路整備の目的税だといわれておりまするけれども、農民がたんぼの中あるいは畑の中で使用するトラクターや動力耕転機その他の動力農機具、こういうものに使用する
ガソリンにまで一律平等にかくのごとき高
税率の
ガソリン税が増徴されることは、断じて納得し得ないところであります。(
拍手)さらに、農業の近代化、機械化、このようなことを促進しようとする
政府の施策とも全く逆行し、その大きな阻害条件となるのでありまして、この
ガソリン税増税は、まことに弱い者いじめの重税であるといわなければならないのであります。
かつて、
昭和三十四年度
ガソリン税増徴案が出された際、自民党の衆参両院有志議員百五十四名は、連名をもって、
揮発油、軽油引取税増徴に対する大蔵省内示は、
道路整備に関する
財源を他に求むる考慮を払わずして、過酷に過ぎ、業界
負担能力の限度を越えるものと認められる、よって、
政府の善処を要望する旨の決議を行なって、関係各大臣、衆議院
議長等に要望書を
提出したのであります。このことを私は今思い起こすのであります。正しく、冷静に、そうして、責任を持って事の本質を見きわめようとする者は、すべて、かくのごとく、
ガソリン税の増徴はすでに
昭和三十四年度の
増税の際において限度に達したと断定し、その不当、不公平を戒めたのであります。しかるに、
国民と関係業者のこぞっての
反対を押し切って、今回一五%ないし二〇%の
値上げを行なうことは断じて認め得ないばかりではなく、税の
負担原則を踏みにじる非民主的暴挙といわなければならぬのであります。
第四に、今次
増税が、相次ぐ公共料金
引き上げ、物価
値上げムードの中で強行された点を指摘し、このことがバス、トラック、ハイヤー、タクシー等の運賃
引き上げを誘発いたしまして、物価の
値上げの引き金となるであろうことを、真剣に警告せざるを得ないのであります。(
拍手)
政府は、
増税分は経済成長に見合う企業の伸びによって吸収され、
運賃値上げに影響なし、と言っているけれども、今日まで、
ガソリン税の大幅
引き上げにもかかわらず、運賃を上げずに、企業努力と運輸労働者の労働強化、低賃金、副利厚生の切り下げなどにしわ寄せしながら切り抜けて参った関係業界は、今度こそ
運賃値上げの絶好のチャンスだとして、今や、強力なかまえをもって、
運賃値上げの運動を猛然と開始しようとしているのであります。すでに、バス業者の団体である日乗協の伊能会長は、
ガソリン税値上げと引きかえに
運賃値上げを
政府自民党が暗黙のうちに認めているのだということを理事会に
報告をいたしまして、今や、あげて、七%ないし八%の
運賃値上げ要求を一斉に出そうとしておる情勢にあります。このことは
政府自民党の底意を物語るものでありますし、また、昨日の
大蔵委員会における
運輸大臣の答弁は、さらにこのことを明らかにいたしておるのでありまして、
値上げムードが静まった時期を見て
値上げをいたしますということが、はっきり語られておるのであります。国鉄の
運賃値上げに引き続いて、その他の運輸機関の
運賃値上げは案外に早く認めざるを得ないことになるであろうということをおそれるものであります。かりに、当面は
値上げのストップを強制的に行ないましても、運輸労働者の過酷な労働条件の改善は喫緊の必要事であります。過当競争と、長時間、低賃金労働によるトラックや砂利トラック、ダンプカーの相次ぐ大事故の発生を防ぐことも、まさに放置し得ない社会的大問題である以上、
ガソリン税の
増税の犠牲を押しつけておきながら、このような運輸労働者、運輸業界等の最低線の要求を押えることは至難のことだと存ずるのであります。しかも、
揮発油、軽油を使用する
自動車による物資輸送量というものは全輸送量の七四%に達するのでありまして、従って、これに対する
ガソリン税、軽油引取税一五%、二〇%の大幅な
増税は、石油や
ガソリンのメーカー、
販売業者段階での吸収が今日不可能に近い状態であって、おそらく、
増税分は、
ガソリン販売価格の
引き上げ、
運賃値上げ、商品への転嫁が行なわれることは必然であります。
かくして、今次
増税が及ぼす影響は、
国鉄運賃引き上げにまさる物価
値上げへの影響が推定されるのであります。物価
値上げへの影響をおそれて、口先だけの物価
値上げストップ
措置にもかかわらず、次々と物価は値上がりしようといたし、
国民消費者大衆の生活を圧迫していることは、厳然たる事実であります。(
拍手)つい最近において某新聞社が行なった世論調査は、
池田内閣の支持が五一%から三八%に下がったことを発表いたしました。しかも、その原因は、公約を裏切って次々に公共料金、物価の
値上げを行なったことに対する、
国民の生活に根ざす反撃であるのであります。
政府の真剣な反省と、今次
増税案の撤回を求むるゆえんであります。
第五に、新
道路整備が、五カ年
計画で二兆一千億という超大型のマンモス化した今日、
財源の九割以上を
揮発油税、軽油引取税に依存することは、さきに申し上げましたごとく、
中小企業がその六割以上を
負担することから見ても、
担税力はすでに限界に達し、納得することはできないのであります。
道路がよくなることによる受益者は、これら
中小企業に属する
自動車所有者ばかりではありません。
国民すべてが受益者なのであって、特に、大企業大産業の受益率は、はるかに多いのであります。しかも、長き将来にわたり、貴重な国家的資産として残るものであるから、現在の
国民の
負担ばかりでなく、将来の
国民にもその
負担を公平に分配する必要があろうと思います。従って、
道路整備の
主要財源を直接的受益者や特定産業のみが
負担する
ガソリン税に求めるあり方から、全産業的国家全体の
事業として、一般
財源を大幅に増額するのでなければ、税
負担の公平と受益の公平は期せられないのであります。さらに、
道路は後代の
国民にとって大きな資産であることにかんがみまして、この際、
ガソリン税収の伸びを償還財産とする
道路公債の発行にも新
財源を求めるべきであります。これらに
財源を求めるとともに、今日、大法人、大企業に集中的に片寄った
減税利益を与えているところの
租税特別
措置法を大幅に整理縮小することによっても、
ガソリン税を
増税せずして
道路整備の
財源を充実することは可能なのであります。
以上、私は、
ガソリン税増税案に対する幾つかの欠陥を指摘し、
反対理由を申し述べて参りました。これを要するに、今回の
ガソリン税増税は、関係企業、なかんずく、
中小企業者の
担税力の限界を越える不当なものであること、
国民経済、全産業のすべてに利益をもたらす
道路整備の主
財源としての
ガソリン税は、現在の
自動車所有者、特定産業のみに課する不公平なものであること、特に、農業用
ガソリンに対する
増税は、まさに筋違いであること、物価
値上げ、
運賃値上げの大きな原因となること、
道路整備の
財源充実は一般
財源の投入、
道路公債発行、
租税特別
措置整理等を断行して求めるべきこと、何よりも
国民の期待を裏切った
公約違反の
増税である点を指摘した次第であります。
今からでもおそくありません。
政府は、よろしく、
国民の希求するところに従って、すみやかに
ガソリン税の
増税を取りやめ、公約は必ず守るという政治道義の最低線だけは
池田内閣も守ったという実績を示して、
国民の政治不信を一掃されることを強く要望いたしまして、代表
討論を終わる次第であります。(
拍手)