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1961-03-04 第38回国会 衆議院 本会議 第12号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十六年三月四日(土曜日)
—————————————
議事日程
第八号
昭和
三十六年三月四日 午後一時
開議
第一
森林火災国営保険法
の一部を改正する法
律案
(
内閣提出
) 第二
国債整理基金
に充てるべき
資金
の繰入れ の
特例
に関する
法律案
(
内閣提出
) 第三
補助金等
の
臨時特例等
に関する
法律
の一 部を改正する
法律案
(
内閣提出
) 第四
地方公共団体
の
負担金
の納付の
特例
に関 する
法律
を廃止する
法律案
(
内閣提出
) 第五
下級裁判所
の設立及び
管轄区域
に関する
法律
の一部を改正する
法律案
(
内閣提出
、参
議院送付
)
—————————————
○本日の
会議
に付した案件
昭和
三十六
年度
一般会計予算
昭和
三十六
年度
特別会計予算
昭和
三十六
年度
政府関係機関予算
午後十時四十三分
開議
清瀬一郎
1
○
議長
(
清瀬一郎
君) これより
会議
を開きます。 ————◇—————
昭和
三十六
年度
一般会計予算
昭和
三十六
年度
特別会計予算
昭和
三十六
年度
政府関係機関予算
田邉國男
2
○
田邉國男
君
議事日程追加
の
緊急動議
を提出いたします。 すなわち、この際、
昭和
三十六
年度
一般会計予算
、
昭和
三十六
年度
特別会計予算
、
昭和
三十六
年度
政府関係機関予算
、右三件を
一括議題
となし、
委員長
の
報告
を求め、その
審議
を進められんことを望みます。
清瀬一郎
3
○
議長
(
清瀬一郎
君)
田邉國男
君の
動議
に御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
清瀬一郎
4
○
議長
(
清瀬一郎
君) 御
異議
なしと認めます。よって、
日程
は追加せられました。
昭和
三十六
年度
一般会計予算
、
昭和
三十六
年度
特別会計予算
、
昭和
三十六
年度
政府関係機関予算
、右三件を一括して
議題
といたします。
—————————————
昭和
三十六
年度
一般会計予算
昭和
三十六
年度
特別会計予算
昭和
三十六
年度
政府関係機関予算
〔本号(その二)に
掲載
〕
—————————————
清瀬一郎
5
○
議長
(
清瀬一郎
君)
委員長
の
報告
を求めます。
予算委員長船田中
君。
—————————————
〔
報告書
は
会議録追録
に
掲載
〕
—————————————
〔
船田
中君
登壇
〕
船田中
6
○
船田
中君
ただ
いま
議題
となりました
昭和
三十六
年度
一般会計外
二案につきまして、
予算委員会
における
審議
の
経過
並びに結果を御
報告
申し上げます。 本
予算
三案は、去る一月二十八日
予算委員会
に付託され、自後、連日にわたる熱心な
審議
を経て、本日
委員会
において
討論
、採決されたものであります。この間、
実質審議
の日数は二十五日間、
質疑
の正味時間は実に百八十七時間に及ぶものであります。この間、
委員会
といたしましては、二日間の
公聴会
を開いて各界の
権威者
八名の意見を徴し、また、六日間の
分科会
を開いて、細目にわたって審査を尽くした次第であります。
予算案
の
内容
につきましては、過般の本
会議
において
水田大蔵大臣
より詳細なる御説明がありましたので、
重複
を避け、御
報告
を省略し、また、
審議経過
の詳細につきましては
会議録
によってごらんを願うことといたしまして、ここでは主として
予算
三案をめぐって展開されました
質疑
の若干を御
報告
するにとどめたいと存じます。 まず第一に、
政府
の
予算編成
及び
規模
が問題になりました。
政府
の
予算編成
の
基本方針
は、
国際経済
の
動向
に即応しつつ、
通貨価値
の安定と
国際収支
の均衡を確保し、
経済
の適正な
成長
に資することを目途としながら、
財政
の
健全性
を保持する
方針
のもとに、
国民所得
の
倍増
を達成するため緊要とされる
施策
の推進をはかるというのであります。この
方針
のもとに編成されました
予算
は、その
規模
において、
一般会計
で
歳入歳出
とも一兆九千五百二十七億円でありまして、前
年度
の当初
予算
に比べて、三千八百三十一億円、二四・四%の
増加
となっております。
国民所得
に対する比率は、三十五
年度
の当初
予算
一五%に対して、三十六
年度
は一五・三%であります。
特別会計
は
総数
四十一、その
総計
は、
歳入
四兆四千六百四億円、
歳出
四兆一千八百十七億円でありまして、
一般
、特別両
会計
を通じ、
重複分
を差し引いた
予算純計
は、
歳入
四兆四百五億円、
歳出
三兆七千六百六十一億円であります。
政府関係機関
は
総数
十三で、その
収入総計
は一兆九千四百七十億円、
支出総計
は一兆七千七百八十八億円と、金額においてそれぞれ前
年度
より
相当程度
の
増加
を示しております。さらに、
財政投融資
の
計画
は、
総額
七千二百九十二億円でありまして、前
年度
当初
計画
に比べて、千三百五十一億円、二二・七%の
増加
であります。
財政規模
のこのような
拡大
を可能ならしめたのは、言うまでもなく、既往数年来の
日本経済
の著しい
発展
でありまして、
政府
は、この
程度
の
財政規模
は
経済成長
の現段階に見合ったものであり、決して過大なものでないとされておるのであります。
委員会
におきましては、「右の
予算編成
は、
内外情勢
に対するあまりにも安易な
楽観的見通し
を
基礎
としており、これでは
アメリカ
の
景気後退
を主因とした
国際経済
の
変化
に対応できないのではないか」との指摘がありましたが、これに対し、
政府
は、「決して手放しの
楽観論
ではなく、
国際経済
の
動向
は常に十分考慮しながらやっているから、今この
予算
をどうこうするというほどのことはない。もし、万が一非常の事態が起こったとしても、
いかよう
にもこれを運営していける。
アメリカ
の
景気
も、ケネディ新政権の
積極政策
により、本年半ば過ぎには、世界の
人々
も期待しておる
通り
、ある
程度
上向くものと考えられる。また、
ドル防衛
の
わが国国際収支
に及ぼす当面の影響は、当初の
予想
よりむしろ小さいと考えられる。しかし、
国際収支
の
長期的見通し
は、
国際競争
の激化によって決して安易な
楽観
は許されない。従って、民間のたゆまざる努力と
政府
の適切な誘導とによってこの困難を克服していかねばならない」との所信でありました。 次に、
財政支出
の
増大
は、この
予算そのもの
の中に織り込まれている
鉄道運賃
、
郵便料金等公共料金
の
値上げ
と相待って
物価騰貴
に拍車をかけるのではないかという
物価論争
が、
予算審議
の
一つ
の
焦点
とされました。
質疑
における論点は、「
政府自体
が
公共料金
を
引き上げ
ることによって
値上がりムード
を醸成する以上、他の諸
物価
の
値上がり
は必至であり、これでは
所得倍増
より前に
物価
の
倍増
がくるのではないか。
消費者物価
の中でも、
毎日庶民
の台所を潤す
必需物資
の
値上がり
は、
政府統計
の示す数字よりはるかに大きい。三十六
年度
の
消費者物価指数
一・一%の
上昇
という
政府
の
予想
のごときは、あまりにも
庶民
の感覚とかけ離れたものである。特に、
減税
や
社会保障
の恩典を受けない
階層
の
人たち
がこの
予算
から受けるものは
物価値上がり
の被害だけであり、その
生活
は一そう苦しくなるのではないか」というのであります。これに対する
政府
の
答弁
は、「
国鉄等
の
公共料金引き上げ
は、
産業
の
発展
に伴う
運輸部門強化
の要請と、これまで低い
料金
に据え置かれていた等の
特殊事情
によるやむを得ざるものであるから、これを
理由
とする他の諸事項の
便乗値上げ
は極力抑制していく。また、
経済
全体においては、
需給面
は大体バランスがとれており、しかも、
一般
的な労賃の
値上がり
は企業の
生産性
の
向上
で十分吸収することができるので、
物価
の基調をなす
卸売物価
は安定し、大体横ばいの状況である。
ただ
、
消費者物価
は、
生鮮食料
のごとく季節的に変動するものもあり、また、
一般
的な
所得
の
増加
に伴い、消費するものの質の
向上
、
小売業
や
サービス業
における
従業者
の
手間賃
の
上昇等
によるある
程度
の
値上がり
を来たしておるのは事実であるが、
手間賃上昇
による合理的なものは、
所得倍増
の
過程
において当然容認すべきものであり、しかも、
消費者物価
を全般的に見れば、
物価騰貴
を刺激し、インフレを招来する
程度
のものではない。また、
物価
が上がっても、それを上回る
所得
の
増大
があれば問題はないのであるから、特に下の方の
所得
が上の者より高い
割合
で
増加
するよう
対策
を講じていく。この
関係
において
所得倍増計画
を策定した次第である」とのことでありました。 次に、本
予算
の三本の柱としてあげられておりますものは、
減税
と
公共投資
、
社会保障
の三項目でありますが、まず、そのうちの
減税
について申し上げます。 すなわち、
所得税
、
法人税
を
中心
として、
初年度
九百二十五億円、平
年度
千百三十八億円の
一般的減税
がはかられております。
ただ
し、この
減税額
は他面における
租税特別措置
の
整理合理化
、及び
揮発油税
の
税率引き上げ
、
関税定率法等
の改正に伴う
増収額
を差し引きますと、
一般
、特別両
会計
を通じ、
初年度
六百二十一億円、平
年度
七百四十四億円となります。これにつきましては、「四千億円にも近い
租税
の
自然増収
が見込まれておるのに、
減税額
はわずかにその一六%
程度
にすぎない。また、
国民所得
に対して、
専売益金
、
地方税
をも加えた
租税負担
の
割合
は、
税制調査会
の
答申
によれば二〇%
程度
が妥当であるとされているのに、今回は二〇・七%であり、しかも、
税収
の
伸び
を見込めば、この率は二二%前後にもなり、前
年度
を上回ることになる。これでは表看板の
一つ
である
減税
もはなはだお粗末なものといわざるを得ないが、どうか」との
質疑
がありました。これに対する
政府
の
答弁
は、「大幅の
歳入増加
を
見込み
得たために、
所得税
、
法人税
において平
年度
一千億円の
減税措置
を講じた上に、さらに、
財源
を
社会保障
、
公共投資等
、
所得倍増
の
基礎
をつちかう重要諸
経費
の充実に振り向けたのであって、
減税
の公約は完全に果たしている。また、
税制調査会
の
答申
の二〇%という率も必ずしも固定的に考える必要はないと思われるが、
減税
は、なお、決して
明年度
限りのものではなく、
経済
の
成長
とともに、重要な
施策
の
一つ
として年々心がけていくつもりである」というのでありました。 次に、
社会保障関係費
であります。
社会保障関係
の
経費
の
総額
は二千四百六十六億円で、全体の一二・六%、前
年度
当初
予算
に比較して六百三十六億円の
増加
、すなわち、三割二、三分の
増加
であります。これに関しましては、「
社会保障関係費
が大幅に
増加
したといっても、
増加分
の大半は、
国民年金等
の当然
増的経費
と、
医療費引き上げ
に伴う
経費
で占められているのであるから、これによって
社会保障
が著しく前進したとは言い得ない。のみならず、
医療費引き上げ
は、真に
医療
を必要とする
零細所得者
を
保険診療
から締め出し、
基礎
の脆弱な
国民健康保険
その他をゆさぶることになる。また、
生活保護
の
基準
や失対
労務者
の
賃金単価
を
引き上げ
てはいるが、
人間並み
の
最低生活
を保障するに至っていない。いずれにしろ、
所得倍増計画
による十年後の
社会保障
の
規模
ですら現在の
西欧諸国
のそれに及ばず、ILOの
最低基準
にも達せぬようでは、はなはだ貧弱な
施策
といわざるを得ないではないか」との
質疑
がありました。これに対する
政府
の
答弁
は、「
社会保障
の
内容
はこれで十分とはいえないが、今回の
予算
の
増加
は確かに画期的なものである。
医療費引き上げ
によっても、
保険料
を上げなくても済むよう特別の
予算措置
を講じておるし、また、
生活保護費
は、今までほとんど据え置かれていた
生活扶助基準
を一八%
引き上げ
るとともに、
勤労控除
の
拡大
、ほかに
住宅
、教育、生業の各
扶助基準
の
引き上げ
、また、期末一時
扶助
の
新設等
、できる限りの
措置
がとられている。
所得倍増計画
による
社会保障
の
拡大
のためには長期的な
計画
を持たねばならないから、早急にこれに取り組むつもりである」というのでありました。 最後に、
所得倍増
の
中心課題
として
予算審議
の
一つ
の
焦点
となりました
農業
問題について申し上げます。
農林関係
の三十六
年度
一般会計予算
の
総額
は千八百七十二億円で、前
年度
に比し五百五十三億円、すなわち、四二%の大幅の
増加
であります。
質疑
の要旨は、「
日本
の
農業
は、今明らかに曲がりかどに立たされている。第二次あるいは第三次の
産業部門
の著しい
発展
に比べてはるかに取り残された
部門
となり、しかも、この
格差
は
所得倍増計画
によって
拡大
するばかりである。すなわち、
計画
によれば、鉱工業の
成長率
は年々一一%であるのに、
農業
は二・八%にすぎず、しかも、
計画
の
初年度
たる三十六
年度
は、わずかに一%の
伸び
しか見込んでいない。また、十年間に十六兆円の
行政投資
のうち、
農林関係
はわずかに一兆円である。これでは、
農民
の
所得
は
倍増
できないのではないか。
政府
は、
農業人口
の減少を
農業所得増加
の大きな要素としているが、
農業人口
は減っても、
農家戸数
はほとんど減らない。
現金収入
を
農業
以外に求める第二種
兼業農家
がふえるという現象こそ、低
賃金
と
農業
低
所得
の原因でもあり、結果でもあると思われるが、いかん」というのでありました。これに対する
政府
の
答弁
は、「前
年度
より四二%も増額した三十六
年度
農林予算
の中には、新
農政
を目ざした新規諸
経費
を
相当程度
計上している。新
農政
の眼目は、
農業
と他
産業
との
格差
を是正するにある。すなわち、構造の
変化
に即応して、
生産
を転換しつつ、
農業
の総
生産
を上げるとともに、
農業従事者
の
生産
を
増大
して他
産業従事者
の
生活水準
に均衡せしめんとするものである。これが今国会に提出した
農業基本法
の
精神
でもある。第一に、
家族経営
によって、しかも、自立し得る
適正規模
の
専業農家
を育成し、その
農業
の基盤を
拡大
していくことを
中心
に考え、これに対し
資本装備
その他
近代化
するに必要な
施設
を国において助成し、
生産性
の
拡大
をはかり、場合によっては、一部または
全面協業
によって
近代化
をはかるものに対して、同様これを助成することとし、一面、
先進諸国
におけるがごとく、
農業労働人口
が他
産業
に円滑に移行し、
生産性
が
向上
し、
所得
が増進するよう
措置
を講じていくつもりである。
経済発展
の
過程
において、
農業生産
の
伸び率
が他
産業
より多少おくれるのは、自然的または
経済的制約
によることが多い
農業
の本質上、やむを得ないと思う。
貿易自由化
、
食糧管理
、農産物の
価格支持等
の面において、一挙に急激な変革を加えることは、
農業
を破壊することにもなりかねないから、慎重にやっていきたい」とのことでありました。 さて、
質疑
は、このほか、
政治
のあり方、
国連外交
、
日韓
、日中、沖縄の問題、
文教
の問題、
科学技術
、
防衛
、
貿易
、
運輸交通
に関する
問題等
、
外交
、内政の各般にわたって行なわれたのであります。また、
政府
の掲げる
所得倍増計画
については、
審議
を通じ、終始、
質疑応答
がかわされました。また、特に突発した
右翼テロ事件
に関連して
治安対策
について論議されたことを付言しておきたいと思います。 かくて、本日、
質疑終了
後、
日本社会党
及び
民主社会党
よりそれぞれ
予算
の
編成替え
を求めるの
動議
が提出されました。その
内容
については、後刻本議場において説明されることと思われますので、省略させてい
ただ
きます。 次いで、
討論
に入り、採決の結果、両党の
編成替え
の要求の
動議
は否決せられ、本
予算
三案は多数をもって原案の
通り
可決されました。(
拍手
) 私は、ここに、理事並びに
委員各位
の御協力によって本
報告
をなすに至りましたことを心から感謝申し上げ、
委員長
の
報告
を終わる次第であります。(
拍手
)
—————————————
清瀬一郎
7
○
議長
(
清瀬一郎
君)
昭和
三十六
年度
一般会計予算外
二件に対しましては、
井手以誠君外
十五名から、三件の
編成替え
を求めるの
動議
が提出されております。
—————————————
清瀬一郎
8
○
議長
(
清瀬一郎
君) この際、その
趣旨弁明
を許します。
長谷川保
君。 〔
長谷川保
君
登壇
〕
長谷川保
9
○
長谷川保
君 私は、
日本社会党
を代表し、
政府提出
、
昭和
三十六
年度
予算
三案の撤回を求め、また、これの
編成替え
を求める
動議
を提出し、その提案の
理由
を説明せんとするものであります。(
拍手
) 私が、
昭和
三十六
年度
予算
を一見して、直ちに連想いたしましたのは、
雑貨屋
の
店頭
と
肉屋
の
店頭
でありました。なぜ私がこのようなおかしな連想をいたしたのでありましょう。 御承知のように、
池田内閣
は、三十六
年度
予算編成
にあたり、
減税
と
社会保障
と
公共投資
の三本の柱を立てたと言われたのであります。この三十六
年度
予算
を組むために、
政府
は、三十六
年度
税収
の
自然増
三千八百三十一億円と、
産業投資特別会計
の中から三十六
年度
分に振り向けられる二百四十億円と、これに
減税分
六百二十八億円を加え、計四千六百九十九億円の
財源
を用意し、この一三%余の六百三十六億円を
社会保障費
の
支出増
に、同じく一三%を
減税
に回したのであります。でありますから、世論は
減税
を細い柱だと言うたのであります。 さて、
社会保障費
の増六百三十六億円でありますが、
予算委員会
における
古井厚生大臣
の
答弁
によりましても、このうち二百八十億円は当然増分であります。また、七十四億円は、
医療費
の一〇%
アップ
によりまして医師のふところに入るので、いわば
物価値上げ
で、
社会保障
の
実体
が何らよくなるわけではありません。(
拍手
)
残り
は二百七十億円でありますが、これからさらに
医療費
一〇%
アップ
の
はね返り
である患者の
自己負担分
六十五億円と
保険者負担分
七十九億円を差し引きますと、
残り
は百二十六億円となり、もし今日伝えられるがごとく、結局において
医療費
の
アップ
が一五%くらいに落ちつくとすれば、その
国民
への
はね返り
を
社会党
の言うように
全額国庫負担
にしない限り、
国民
の側から見れば、この
残り分
も全部吹っ飛んでしまうのでありまして、
社会保障費増額
の六百三十六億円はなかったと同じであります。なるほど、今回の
予算
で
生活扶助
の
保護基準
を一八%上げる結果、標準五人
世帯
で一カ月千七百三十二円上がり、
失業対策
の
労務者賃金
が一日五十二円上がりますが、この間まで一本十五円であった大根が、このごろは六十五円、白菜一個七十円、魚の薄い切り身が七十五円にはね上がっております。
池田
さん、うそだと思ったら、家へ帰って奥さんに聞いてごらんなさい。牛乳が上がる。
汽車賃
が上がる。
郵便料金
が上がる。
授業料
が上がる。
政府
は、
所得倍増
でも
消費者物価
は一%しか上がらないと言うけれども、あっちでもこっちでも
アップ
、
アップ
で、これでは土左衛門になってしまいます。(
拍手
)
児童手当
も
母子年金
も吹っ飛んでしまいます。 精神病、結核、
老人対策等
、ごてごてと並べ立ててはいますが、
精神障害者
百三十万人、このうち、直ちに
入院
を要する者四十三万人に対し、三十六
年度
予算
におきましては、わずかに八千八百
ベッド
を作ろうというのであります。
老人対策
にいたしましても、直ちに
施設
に
入院
を要する者三万九千人、しかも、この数は急に激増するというのに、
老人福祉対策費
、四百五十
ベッド分
、四千九百二十四万円しかありません。 四月一日から皆
保険
になりますが、全国の一千百八十四の無
医地区
のために二十三台の
診療自動車
と二隻の船を、また、二千四百二十四の無
歯科医地区
にたった二台の
歯科診療自動車
を巡回させて
診療
させようという、この
予算
が千八百四十七万円なりであります。これでは、この
地区
の被
保険者
は年一回の
診療
も不可能で、一年のうち三百六十四日は一斉休診になって、
保険料
はただ取られるというのでありましょう。(
拍手
) 同じ四月一日から
拠出国民年金
が始まりますが、
厚生白書
が示す
通り
、約八百五十万人の低
所得階層
の
人々
にとって、一
世帯
一年四千円の
保険料
を三、四十年にわたってかけ続けることは至難のことで、これは
社会保障
どころか、
保険料
の
ただ取り
になりかねないでありましょう。(
拍手
)
池田内閣
の
社会保障計画
では、
所得倍増
の
最終年
、
昭和
四十五年においてさえ、今日の
西欧諸国
の
社会保障
の
最低基準
に達しない、と
政府
の
厚生白書
さえが書いております。これが
池田内閣昭和
三十六
年度
予算
の
社会保障
の
実体
で、まことに
雑貨屋
の
店頭
のごとくに、ごてごてといろいろな
生活必要品
を並べてはありますが、どれもこれも、昨年のものに少し手や足をつけた、ほうきや、
ちり取り
や、
紙くずかご
や、足のかかとの皮をこする軽石のような、安い値段のものだけを並べたものであり、
国民
の目先を変えているにすぎないのであります。 もう一本の柱、
減税
はどうでありますか。三十六
年度
予算
、
減税
六百二十八億円、これについては多言を要しません。
公共料金
の
引き上げ
が六百二十一億円、これだけで
減税
は差引ゼロになるのであります。ところが、大
資本
にとってはどうでありましょうか。
予算委員会
で、わが党の
井手委員
の質問に答えて、
政府
は、国税の
租税特別措置
による
減税額
は、三十五
年度
当初
予算ベース
で千四百七億円に上る
見込み
でございます、と、ぬけぬけと答えています。ところが、
諸君
、これだけではないのです。これは三十五
年度
当初
予算
の
見込み
で、その後の
自然増収
の
伸び
少なくとも千八百億円、これが
地方税
に
はね返り
、
地方税
の
自動的減税
四百億円、合わせて二千二百億円三十六
年度
はさらに
伸び
ることは、火を見るよりも明らかであります。
勤労大衆
へは、
片手
で
減税
を出して、
片手
で
公共料金
の
アップ
でこれをまた取り上げ、大
資本
に対しては、
減税
のげの字も言わないで、
国民
の目をかすめて、二千二百億円の大
減税
を今なおしているのであります。
羊頭
を掲げて狗肉を売るというが、
勤労大衆
には
減税
の
羊頭
を掲げて、犬の肉を食わせ、大
資本
には裏口からこっそり
霜降り牛肉
をただでくれる、これが、私が
予算
を一見して、
肉屋
の店先を思ったわけであります。
池田内閣
が吹きまくった
社会保障
と
減税
の二本の柱は、かくのごとき幽霊であるのであります。 しかるに、残る一本の
公共投資
の柱は、太い太い丸柱のようです。
公共投資
三千五百七十九億円、
財政投融資計画
から
公共事業
へ回される二千二百三十三億円を加えると、五千億円をはるかにこすわけであります。三十六
年度
財政投融資
の半分は、
文教施設
、
厚生福祉施設
、上下水道、
住宅等
、
国民生活
に直結するものだと、いかにも恩着せがましく吹聴しておられますが、そんなことは、あたりまえどころではない、まだこれでは足りないのでありまして、この
資金
の原資を見れば、
労働者
のかけた
厚生年金
や、零細な
農民
や
自営業者
がかけた
国民年金
の
積立金
、お
かみさんたち
の
へそくり
の
郵便貯金
や
簡易保険
が八〇%も占めている。
道路
や港湾を作り、
運輸
、通信、
農林漁業
や
地域開発
に使う、どれもこれもけっこうだし、この
公共投資
をてこにして、
生産
を興し、
所得倍増
の道を踏み出し、
国民生活
を改善するというのも、わからないではないが、その
資金
の公正妥当な配分が、
独占資本
のかいらいの
池田自民党政府
に、はたしてできるかどうか。東海道新幹線の線路がひん曲がって羽島駅ができたり、
道路
の整備でウエートの急減している
沿岸輸送
港を整備するために、
復活折衝
の
増ワク分
の四分の一を使う等、すでに
選挙目当て
や利権の臭気ふんぷんたるものも感ぜられ、この
公共投資予算
は、たとえていえば、だんなが男衆や女中さん
たち
の
へそくり
を巻き上げて、大きな待合、
料理屋
を建て、長火鉢の前にどっかりすわり、大もうけをし、
ぜいたく三昧
をして、お前
たち
もここで働けるからよいではないかというがごとき、大
資本本位
のやり方だと言って間違いないと思うのであります。 そのほか、
政府提出
、三十六
年度
予算
を分析してみますと、看板と
内容
とは大違い、至るところ
不満だらけ
で、
勤労国民大衆
の
結合体
であり、
勤労国民大衆
の利益を守る
社会党
といたしましては、この三十六
年度
予算
はいただけないのでありまして、これは
組み替え
を要求しなければならないのであります。しかし、選挙の直後でもあり、
与野党とも
に話し合いの
政治
をすると公約したことでもありますから、わが党は、忍びがたきを忍んで、どうやら憲法を満たす
最低限度
の
社会保障費等
の修正を申し入れ、両三日にわたり、
党首会談
までいたしたのでありますが、
自民党
は理不尽にもこれを承知いたしません。今は、正々堂々、ここに
予算編成替え
の
動議
を提出し、
社会党
の主張を明らかにし、
諸君
の御
審議
を願い
主権者
である
国民諸君
の審判を願う次第であります。(
拍手
) さて、わが党は、この
予算組み替え
によりまして、特に次の四大
政策目標
を達成しようと企図するものでございます。 その第一は、
国民
の
所得格差
の根本的な是正であります。最近の
わが国
の
経済
は、かなりの速度で
成長
を遂げ、
国民所得
も
増大
しております。しかし、この
過程
で、
所得格差
、
地域格差
は
拡大
の一途をたどっています。
政府
が、
経済成長
によって生み出された
租税
自然増収
等の
財源
を
公共投資
を最重点として支出しようとしていることは、大企業の
成長
のみを促進し、
格差
を一そう
拡大
させるという悪循環を生み出すものであります。よって、わが党は、特に大衆
減税
の幅を
拡大
するとともに、大企業、高額
所得
者からの正当な
租税
の徴収を強化し、これを
社会保障
、
農林漁業
や中小企業
対策
、文教の充実等に充てるのであります。 第二は、防衛費を削減し、
経済
を平均的に改造せんとするのであります。
わが国
憲法の精神に基づき、防衛費を大幅に削減し、自衛隊を改編して平和国土建設隊を創設し、国土開発に関連する
公共事業
を重点的かつ効率的に施行しようとするのであります。 第三は、
消費者物価
の安定であります。
自民党
政府
の
経済成長
政策は、
所得倍増
ではなくて
物価
倍増
をもたらしており、特に、その犠牲は低
所得
者階層に強くしわ寄せされています。よって、わが党は、特に、国鉄、郵便等の
公共料金
の
引き上げ
を阻止するとともに、
勤労大衆
の立場からの消費者を守る行政を強化し、
一般
諸
物価
の
上昇
を防止しようとするのであります。 第四は、
財政投融資
の運用方法の根本的転換をはからんとすることであります力
財政投融資
の原資は、
国民
の税金、
郵便貯金
、
簡易保険
、
国民年金
、
厚生年金
等、
国民
の零細な
資金
の積み立てたものであります。ところが、
自民党
政府
は、この
資金
を開発銀行、輸出入銀行等を通じて大
資本
への長期低利融資に充てています。また、
産業
基盤の強化のためと称して、
道路
や
運輸
通信
施設
、工場敷地等の建設に向けておりますが、これも大
資本
の
経済
活動に奉仕せんとするものであります。これに対し、中小企業や農漁民への
財政
資金
の供給はきわめて少額で、金利は高いのであります。勤労者福祉厚生
施設
への還元融資すらも、
資本
家の労務
対策
のために運用されています。本来、
国民
の
資金
たる
財政投融資
の運用は、全く転倒しており、
国民
の利益に合致しておりません。よって、わが党は、大
資本
への供給
資金
を
国民生活
向上
のための
資金
に大きく転換させるとともに、その利子引き下げをはかり、また、
財政投融資
との関連で、民間
資金
の民主的規制を行なわんとするのであります。 以上の四つの
政策目標
は、わが党の長期
政治
経済
計画
の方向に沿うものであり、また、こうした方向によってこそ初めて
財政
金融政策を確立することができると確信するものであります。(
拍手
) 次に、
組み替え
の要綱を申し上げます。 まず第一に、
歳入
につきましては、
所得税
は、
基礎
控除
引き上げ
、配偶者控除新設、扶養控除、給与
所得
控除の
引き上げ
、小
規模
事業
所得
者の特別
勤労控除
新設等
により標準
世帯
課税最低限を、給与
所得
者四十六万円、事業
所得
者四十一万円に
引き上げ
る。寡婦、障害者、老齢者、勤労学生等の税額控除を七千円に
引き上げ
る。白色申告者も含め、
農民
、中小商工業者の自家労賃控除一人十二万円を認め、退職
所得
控除の限度額を五百万円に
引き上げ
る。
法人税
は、中小法人に軽
減税
率を適用し、同族会社の留保
所得
課税の
特例
を廃止し、
資本
金一千万円以下の中小企業償却資産の耐用年数を一律三割短縮し、
生活
必需物資
等の物品税を廃止する。大衆酒、入場税、通行税の軽減、教育、社会事業、科学研究等への寄付は課税
所得
から控除する。以上により、
総額
約千七百三十二億円の大衆
減税
を行ないます。また、
所得税
の税率を百四十万円以上累進度を強化し、
所得
五百万以上の
法人税
率を四〇%に
引き上げ
、大
資本本位
の
租税特別措置
等を整理し、ゴルフ税、富裕税を新設する等により、
総額
約二千百五十八億円の増収をはかります。 第二に、
歳出
につきましては、防衛庁費のうち、人件費、物件費、
施設
費等を減額し、国庫債務負担行為並びに
施設
提供費を削除する。旧軍人恩給費につき、階級差の是正と受給者余命率により、交付公債による打ち切り補償を行なって、三十六
年度
支給額を節減し、公安調査庁、憲法調査会、国防
会議
、内閣調査室等の反動機構の
経費
を削除する。
公共事業
費の使用方法の改善及び平和国土建設隊の活用により、事業量を減ずることなく
予算
を節減し、
国民年金
費のうち、拠出制年金の施行を延期し、その
負担金
、交付金等を削減する。森林開発公団への出資を削除し、反動教育のよりどころとなろうとする教育会館設置費を削減する。以上によって
総額
二千六百七十二億円の支出の節減を行ないます。 さらに、自衛隊の改編により平和国土建設隊を創設し、国土の大
規模
調査、土地利用区分の設定、この区分に基づく開発を実施するとともに、これを基幹として
公共事業
の能率的運営を確保する。この
経費
は防衛庁費の残額の一部をもって充当する。
国民生活
の安定と低
所得階層
の
所得
水準
引き上げ
のため、
生活保護
基準
を五割
引き上げ
る。拠出制
国民年金
の実施を延期し、福祉年金の給付額を
引き上げ
る。
失業対策
賃金
を五割
引き上げ
、失業
保険
の給付期間を延長する。
医療費引き上げ
の
国民
負担をやめて、国保、健保、日雇い健保の国庫負担を
引き上げ
る。第二種公営住宅の建設戸数を
増加
し、未解放部落
対策
を飛躍的に強化し、また、社会福祉職員を増員して、その給与を
引き上げ
る。原爆被害者
対策
の強化、母子福祉貸付金の増額、小児麻痺
対策
を強化する。これらに要する
支出増
一千六百八十三億円といたします。
農林漁業
の
生産性
を高め、農漁民の
所得
水準を急速に
引き上げ
るため、国土の科学的調査により土地利用区分を定め、農地造成、土地改良、農地集団化等の
農業
基盤を強化する。
農業
経営の
近代化
、共同化を促進するため、
農業
サービス・センター、
農業
機械化ステーションを設置し、主要農畜産物の価格支持の強化と流通機構の整備、
農業
災害補償制度の抜本改正による
農民
負担の軽減と
所得
補償の原則の確立等を行なう。沿岸漁業振興のためのつきいそ、魚礁設置、魚価安定基金及び水産物販売購買事業団の設立出資、漁業サービス・センター等を設置する。また、
農林漁業
金融公庫の原資を五百億公募し、これに利子補給をするとともに、農協系統
資金
一千億円を
農業
経営
近代化
のため
農業
への還元融資に充て、これに利子補給を行なう。これら
農林漁業
対策
に六百四十億円の増額支出を行ないます。 中小企業
対策
強化のため、中小企業総合サービス・センターを設置して、小、零細企業への総合指導を行ない、中小企業
近代化
基金を設置して、新技術、新設備導入を促進し、勤労性事業の共同化による小組合の組織を進める。
国民
金融公庫、商工中金へ出資し、原資を
増加
し、また、貸出金利を引き下げる。これらに対して約二百四十億円増額支出する。 教育に関連する父兄負担の軽減と教育の機会均等を進めるため、義務教育費の国庫負担を増額し、
文教施設
の整備、小、中学校、高等学校の増設をする。育英事業を拡充し、私学を助成し、
授業料
の
引き上げ
を防ぐ。僻地教育の振興、教科書の無償配布、学校給食のパン、牛乳に対する補助の増額、また、果実給食の補助を行なう。これらに要する
支出増
三百四十五億円とする。 東南アジア諸国との
農業
、中小企業の技術協力等に十五億円。
科学技術
及び発明の振興、発明開発公団の設立等のために七十五億円増額。石炭鉱業の総合開発、石炭流通の合理化、石炭離職者
対策
強化等のため百三億円を増額支出する。離島振興強化のため十億円増額。防犯のための街灯設置補助十五億円増額。
公共料金
の
引き上げ
防止のため、国鉄公社に対し公共負担分及び公募債利子負担分を繰り入れ、また、郵政
特別会計
に繰り入れを行なうための増額約二百八十七億円。地域的
格差
是正のため、後進
地域開発
のための調査及び事業調整のための
支出増
三十億円。三
税収
入の増に伴い、地方交付金の増額約二百四十四億円。各種の制度的改革に備えて、予備費約三十億円を増額する。
一般
公務員及び公企体職員のベース・
アップ
、
生産
者米価の
引き上げ
については、
医療費
の一割をこえる
引き上げ
要求とともに、
労働者
、
農民
等の戦いを支援し、必要な
予算措置
を追加することといたします。 最後に、
財政投融資
の問題でありますが、
国民
の零細な
積立金
及び社会
保険
積立金
等で構成されておる
財政投融資
の
独占資本
本位の運用を改め、これを地域、
産業
、階層間の不均衡是正や雇用の
拡大
等、
国民
の利益のための運用に転換いたします。 まず、開発銀行、輸出入銀行、電源開発株式会社の原資のうち、
資金
運用部
資金
を四百二十億円削減し、これを中小企業金融公庫百億円、住宅金融公庫三百二十億円
資金
増額に充て、
一般
住宅融資及び農山漁村住宅改善融資それぞれ五万戸分に充てる。なお、開発銀行、輸出入銀行、電源開発株式会社等は、民間
資金
規制により、生保、損保の民間
資金
を公募して原資を補充する。
農林漁業
金融公庫は、農林中金、信連等の余裕金五百億円を吸収して原資を
拡大
するとともに、
一般会計
より二十億円を受け入れてその利子補給に充て、
農業
経営共同化に対する長期低利融資を強化する。
国民
金融公庫及び商工中金は、それぞれ
一般会計
よりの出資五十億円ずつを受け入れ、特に零細企業への低利融資を強化する。
厚生年金
及び
国民年金
積立金
の還元融資については、労働金庫等を経由する被
保険者
の自主的運用の道を開く。国鉄の運賃を
値上げ
せずに、新規建設分の
資金
を調達するため、民間
資金
の公募を三百五十億円増額するとともに、これに対する利子負担を軽減するため、二十五億円を
一般会計
から受け入れることとします。 以上、勤労階層の
結合体
たるわが党の政策を明らかにしつつ、三十六
年度
の
予算案
の
編成替え
を求める
動議
提出の趣旨を明らかにした次第でありますが、何とぞ、
自民党
、民社党議員
諸君
におかせられても、この堂々たる
日本社会党
の
組み替え
案を御理解いただき、御賛成賜わらんことを希望いたしまして、私の
趣旨弁明
を終わります。(拍子)
—————————————
清瀬一郎
10
○
議長
(
清瀬一郎
君) これより
予算
三件に対する
討論
と
編成替え
を求むる
動議
に対する
討論
とを一括して行ないます。順次これを許します。愛知揆一君。 〔愛知揆一君
登壇
〕
愛知揆一
11
○愛知揆一君 私は、自由民主党を代表いたしまして、
ただ
いま
議題
となりました
昭和
三十六
年度
一般会計予算外
二件に対し賛成し、
日本社会党
提案の
予算組み替え
案に反対の
討論
を行なうものであります。(
拍手
) まず、私が本案に賛成いたします最も大きな
理由
は、わが自由民主党が昨年の総
選挙
において
国民諸君
に公約いたしました数多くの重要政策が本
予算案
においてことごとく実現を見ておるということでございます。(
拍手
) 総
選挙
における公約の
中心
的課題は、
国民所得
の
倍増
を目ざす新しい
経済成長
の政策でありますが、わが党の考え方は、あくまでも自由
経済
の原則の上に立つものでありまして、
計画
を実現する原動力は、あくまでも
国民
であります。
政府
としての任務は、
国民
経済
の持つ潜在的な
成長
力を正しく評価しながら、
成長
の要因を積極的に培養して
経済
の
成長
を促進し、一方、
成長
を阻害するいろいろの要因を排除して、何人にも明るい希望が持てるような環境を作ることであります。(
拍手
)しこうして、今日特に心すべきことは、
国民
の
所得階層
の間、
農業
と非
農業
との間、大企業と中小企業との間並びに地域相互間に存在する
生活
上及び
所得
上の
格差
の是正に努めなければならないことでありまして、もって
わが国
経済
の底辺を
引き上げ
、
国民
全体の
発展
と
向上
を期するのが
政治
の責務であると考えるのであります。
政府
が、三十六
年度
予算
の編成にあたりまして、
社会保障
、
減税
、
公共投資
を初めといたしまして、
農林漁業
の
近代化
、中小企業、後進地域の開発促進、
文教
と
科学技術
の振興、
貿易
の
発展
等に特に重点を置きまして最大限の
予算措置
を講じておりまするのは、わが党の右申し述べました基本構想にのっとるものでありまして、私どもの心から賛意を表するところであります。(
拍手
) これら重要な点について、以下、きわめて簡単に御説明をいたしたいと思います。 まず、たとえば
減税
を見てみますならば、わが党の公約による
減税額
は、国税、
地方税
を合わせて平
年度
一千億円以上であります。本
予算案
においては、国税のみでも千百三十八億円に達しておるのであります。特に、中小
所得
者の負担の軽減や中小企業の体質改善と経営の安定に諸般の
措置
が講ぜられておることは、特筆さるべきことであると思います。 第二は、
社会保障
であります。この
予算
における
社会保障関係費
の
総額
は二千四百六十七億円でありまして、これは前
年度
に比べて三五%の大幅な
増加
でありますが、各省所管の
予算
のうちで、低
所得
層
対策
の
経費
を合算いたしますならば、昨
年度
に比べて実に約八百億円という飛躍的
増加
を見ておるのであります。(
拍手
)特に、
生活扶助基準
を一八%という大幅な
割合
で
引き上げ
、かつ、
勤労控除
も大幅に
引き上げ
たようなことは、最近の改定が三%
程度
にとどまったことを顧みますならば、いかに画期的なものであるか、特に強調に値するものと思うのでありまして、私どもは、こうしたことが、いわゆる防貧
対策
というものに巨歩を踏み出したものと信ずるのであります。そのほか、生別母子
世帯
の児童扶養手当制度が創設されるというような、各般にわたって、きわめてきめのこまかい
施策
が充実しておりますることは、たくましく
成長
する
経済
のらち外にありまする不幸な
人々
の前途に明るい希望を約束するものでありまして、私は衷心から賛意を表するところであります。(
拍手
) 第三は、
公共投資
でありますが、いわゆる社会
資本
の充実は、
政府
のなすべき最も重要な役割であります。三十六
年度
においては、民間設備に比較してはなはだしく立ちおくれぎみにありました公共
施設
の整備拡充はきわめて促進され、ことに、
道路
、港湾においては新五カ年
計画
が策定されまして、巨額の
行政投資
が行なわれます。また、
産業
用地の造成と工業用水の確保についても顕著な前進を示しておるのであります。 後進地域の開発について一言いたしますならば、
公共事業
費と
公共投資
の全般を通じて、まず、事業の配分に格段の配慮が加えられております。また、
公共事業
費の国庫補助率を
引き上げ
、地方負担率を引き下げ、いわゆる
特例
措置
が講ぜられますことは、国税、
地方税
を通ずる工場進出のための優遇
措置
とともに、後進地域の
所得
の
格差
是正に対して多大の貢献をなすものでありまして、まさに、わが意を得たものでございます。(
拍手
)
農林漁業
におきましては、需要に適合した農産物の導入と
近代化
に重点を置いて、前
年度
に比べ四二%増の大
規模
な
予算
が編成せられております。麦の作付転換
対策
、畜産物事業団、農地信託制度、農協
資金
の活用による
農業
経営
近代化
資金
の創設、これらは
農林漁業
の体質改善と
近代化
へ大きく踏み出したものでありまして、
農業基本法
が制定せられることとともに、私は、新味のあふれる
施策
の展開と申すべきものと思います。(
拍手
)私は、こうした政策は、コルホーズや人民公社方式を連想させるかのごとき
社会党
の政策とは全く対照的なものでありまして、農村に明るい希望を与え、また、
農業
が企業としてりっぱにやっていけるところの
基礎
を確立するものであることを確信いたします。(
拍手
) 次に、
財政投融資
につきましては、本来、これは民間融資に依存すべき民間企業が、その
資金
の多くを
財政投融資
に依存するのは好ましいものでないのであります。ところで、三十六
年度
の
計画
におきましては、
総額
七千二百九十二億円のうちの実に八割以上は、
生活
環境の整備や、
厚生福祉施設
や、中小企業や、
農林漁業
や、国土保全や、あるいは後進
地域開発
等の
国民生活
の安定
向上
をはかる
部門
へ配分せられまして、従来より画期的に改善せられておりますことを、私は心から喜ぶものであります。(
拍手
) また、今回誕生いたしまする拠出制
国民年金等
の長期の社会
保険
資金
は、一括して
郵便貯金
等と区分せられ、そうして、原則的に、
国民生活
の安定に直結した
部門
に配分せられることになりまするのは、きわめて妥当な企てであると存じます。(
拍手
) 以上は、きわめて簡単でございますが、一覧いたしました本
予算案
の
内容
でございます。 この
予算
の性格は、健全
予算
の性格を持ちます。
歳出
の一切は
租税
その他の普通
歳入
によってまかなわれ、赤字公債の発行や、過去の蓄積を食いつぶすがごとき
措置
はとられていないのでありまして、収支均衡を得たものであります。また、
一般会計
の
規模
は一兆九千五百二十七億円でありまして、前
年度
の当初
予算
に比べれば二四%の
増加
でありますが、補正を加えれば一〇・六%であり、
国民
総
生産
見込額に対比してみまするならば、その比率は一二・五%であって、前
年度
あるいは前々
年度
、あるいはその前数年に比べましても、むしろ低いとも言えるのでございます。(
拍手
)また、
政府
の財貨サービス購入の
国民
総支出に対する比率にいたしましても、一九・三%でありまして、前
年度
とひとしく、三十四
年度
よりは低く、実に
昭和
八、九年ごろにひとしいようなものでございまして、これは
国民
経済
に対する
財政
の比重として、私は妥当なものと認めるのでございます。(
拍手
) 私は、実は、原則論としては、
予算
の
規模
が実力以上に過大になるようなことは厳に慎むべきものであると考えまするが、かくのごとき状態でございますから、この
予算案
を目して、超大型であるから
景気
を刺激するおそれがあるなどという議論をする人がもしあるとするならば、それは、この
予算
の背景をなすところの
わが国
経済
が近年著しく
拡大
されておるという事実に十分な認識を持たないか、あるいはまた、適正な評価を欠いておるものと申さなければならないのでございます。(
拍手
)事実、
わが国
経済
は最近驚異的な
成長
を続け、さらに、三十六
年度
においても、個人消費の堅実な
伸び
と
財政
による適度な需要と相待って、九ないし一〇%
程度
の
成長
が可能と見込まれる反面、即売
物価
は弱含み横ばいで推移されるものと
予想
されておるのでございます。 以上のような観点から、私は、本
予算
三案は、
内容
からいっても、
規模
からいっても、あるいは性格から申しましても、
わが国
の現状に顧みて最も適切な
予算
であり、希望に満ちたものであると確信をいたしまして、この三案に心から賛意を表する次第でございます。(
拍手
)
ただ
、一、二、
政府
にこの
予算
の執行その他について、この際御留意を願いたいところがございます。それは、
一つ
は、行政を運営する面におきまして、その能率化をはかってい
ただ
きたいこと、それから、
公共投資
が
増大
するにつきましては、その運用の効率化が大切であると思うことであります。また、
政府
の目ざす
経済成長
率に見合うような民間の設備投資のあり方等について細心の注意を払ってい
ただ
きたいと思うのであります。また、今次の
予算
におきまして、国鉄運賃等の一部
公共料金
の
値上げ
が認められ、また民間におきましても、サービス
部門
の一部
料金
の
値上げ
等が行なわれておるのでございます。私は、従来不当に押えられてきた国鉄運賃の合理的改定のごときは、長期にわたる
経済成長
政策の達成上、これら公企業体が与えられた機能を円滑に遂行するため、むしろ当然と考えるのでございます。また、
生産性
の
向上
によって
賃金
の
上昇
を吸収し得ないサービス
部門
における
手間賃
等の適正な
値上げ
は、これらの職業に従事する
人々
の
所得
の
増加
という点からも、これを容認するにやぶさかではございません。しこうして、これらが
消費者物価
に影響するところはきわめて僅少であります。このことは、最近数年間にわたる実績に徴し、
わが国
における
国民所得
の
伸び
が
消費者物価
の
伸び
をはかるに上回っておるのであります。
政府
の説明するがごとく、世界で最も安定しているといわれる西ドイツにおいてさえ、
国民所得
の
伸び
が四割に対し、
消費者物価
が九・九%
上昇
したその数年の間に、
わが国
の
所得
の
伸び
は四九%、これに対して
消費者物価
の
上昇
はわずかに四・一%にとどまったことによっても明らかでございます。(
拍手
)しかしながら、
物価
の問題は、統計や数字の説明だけでは必ずしも
国民
の実感に触れた共感を呼び起こすことは困難な場合がございます。
政府
におかれては、まず、
物価
に対する基本的な長期にわたる考え方を一そう明らかにし、
国民
に対し行き届いた解説に努めるとともに、
生活
の実感に触れるような適切な
対策
を常に用意しておく必要があろうかと存ずるのでありまして、慎重なる考慮を望むものであります。 次に、
日本社会党
の
組み替え
案に対して検討を加え、反対の趣旨を明らかにいたしたいと思います。 今回の
予算案
に関し、自民、社会両党首の会談が持たれましたことは、
わが国
政治
史上画期的なことでありまして、両党首共同の談話にあります
通り
、この会談は国会を正常に運営していく上に大きな前進を示したものでありまして、皆様と喜びをともにする次第でございます。 ところで、問題は、その修正の
内容
でございます。たとえば、
社会保障
の拡充はわが党の最重要政策であり、本
予算案
は、すでに詳しく述べたごとく、その
経費
を飛躍的に増額しておるのでございます。しかし、それにしても、かりに
社会党
との間に適当な
財源
措置
に話し合いがつけば、さらに検討を加える余地がないでもなかったでありましょう。しかし、
財源
については、
社会党
は
防衛
費の削減を固執せられたのであります。
防衛
費の削減は、いわば
社会党
のお家芸でありましょうが、
防衛
費の対前年
増加
額二百億円は、給与費と国庫債務負担行為の
歳出
化等、義務的
経費
の
増加
によるものでありまして、これを削除というのは、自衛隊の機能をとめるものにほかならず、全く非現実的な提案であります。(
拍手
)そもそも、三十六
年度
における
防衛
費の総
歳出
に対する比率は九・一%であり、
国民所得
に対する比率はわずか一・四三%にすぎないのであります。しかも、こうした比率は、今
年度
は昨
年度
よりも低くなっております。昨
年度
は一昨
年度
よりも低くなっておるのでございます。三十五
年度
の総
予算
に対する比率九・八、
国民所得
に対する比率一・四八より本年は低下しておるのでありまして、安保改定後において、かえって
防衛
費に対する
国民
の負担
割合
が減少しているというこの事実を、私は、ここにあらためて指摘するものであります。(
拍手
)このことは、
一つ
には、今日、本
予算案
のごとき輝かしき
成長
予算
が、日米安保体制と最小限度の
防衛
費の可能の上にこそ初めて編成されていることを、何よりも明らかにしておるものであります。(
拍手
) さて、
社会党
は、一たび修正の話し合いが不調となりまするや、一転して、本来本質的に性格の異なる
組み替え
案を例によってここに提案せられたのでありまして、この態度は、終始一貫しない、矛盾撞着するものといわざるを得ないのであります。(
拍手
)
社会党
の
組み替え
案は、
産業
に対する大幅な増税、自衛力の廃止を前提とする
防衛
費の大幅削減等、現実と全く遊離した
内容
のものでありまして、実際の
政治
を責任をもって担当すべきものの
財政
政策としては、とうてい論ずる価値のないものと断ぜざるを得ないのであります。(
拍手
)また、
組み替え
案には、各種
格差
の是正、
公共料金
と
消費者物価
、
財政投融資
の運用等が問題にされておりますが、これらについては、
政府
原案において、総合的に、また、現実に即して可能なる限度で十分に組み入れられ、また、慎重に配慮せられていることは、すでに詳しく述べたところでありますから、これを繰り返す煩を省かせてい
ただ
きます。要するに、
組み替え
の必要などは毛頭ないのであります。いな、絶対に
組み替え
てはならぬのであります。(
拍手
) 私は、以上をもちまして、時間の
関係
もございますから、きわめて簡単でございますが、
政府
の原案に対し賛成をし、そうして、
組み替え
案に反対をするものであります。(
拍手
) ————◇—————
清瀬一郎
12
○
議長
(
清瀬一郎
君) 本日は、時間の
関係
上、これ以上議事を進めることはできませんから、本日の議事はこの
程度
にとどめ、明五日午前零時五分より本
会議
を開き、本日の議事を継続することといたします。 本日は、これにて延会いたします。 午後十一時五十二分延会 ————◇————— 出席国務大臣 内閣総理大臣
池田
勇人君 法 務 大 臣 植木庚子郎君 外 務 大 臣 小阪善太郎君 大 蔵 大 臣 水田三喜男君 文 部 大 臣 荒木萬壽夫君 厚 生 大 臣 古井 喜實君 農 林 大 臣 周東 英雄君 通商
産業
大臣 椎名悦三郎君 運 輸 大 臣 小暮武太夫君 郵 政 大 臣 小金 義照君 建 設 大 臣 中村 梅吉君 自 治 大 臣 安井 謙君 国 務 大 臣
池田
正之助君 国 務 大 臣 小澤佐重喜君 国 務 大 臣 迫水 久常君 国 務 大 臣 西村 直己君 出席
政府
委員 内閣官房長官 大平 正芳君 総理府総務長官 藤枝 泉介君 労働政務次官 柴田 栄君 ————◇—————