○愛知揆一君 私は、自由民主党を代表いたしまして、
ただいま
議題となりました
昭和三十六
年度一般会計予算外二件に対し賛成し、
日本社会党提案の
予算組み替え案に反対の
討論を行なうものであります。(
拍手)
まず、私が本案に賛成いたします最も大きな
理由は、わが自由民主党が昨年の総
選挙において
国民諸君に公約いたしました数多くの重要政策が本
予算案においてことごとく実現を見ておるということでございます。(
拍手)
総
選挙における公約の
中心的課題は、
国民所得の
倍増を目ざす新しい
経済成長の政策でありますが、わが党の考え方は、あくまでも自由
経済の原則の上に立つものでありまして、
計画を実現する原動力は、あくまでも
国民であります。
政府としての任務は、
国民経済の持つ潜在的な
成長力を正しく評価しながら、
成長の要因を積極的に培養して
経済の
成長を促進し、一方、
成長を阻害するいろいろの要因を排除して、何人にも明るい希望が持てるような環境を作ることであります。(
拍手)しこうして、今日特に心すべきことは、
国民の
所得階層の間、
農業と非
農業との間、大企業と中小企業との間並びに地域相互間に存在する
生活上及び
所得上の
格差の是正に努めなければならないことでありまして、もって
わが国経済の底辺を
引き上げ、
国民全体の
発展と
向上を期するのが
政治の責務であると考えるのであります。
政府が、三十六
年度予算の編成にあたりまして、
社会保障、
減税、
公共投資を初めといたしまして、
農林漁業の
近代化、中小企業、後進地域の開発促進、
文教と
科学技術の振興、
貿易の
発展等に特に重点を置きまして最大限の
予算措置を講じておりまするのは、わが党の右申し述べました基本構想にのっとるものでありまして、私どもの心から賛意を表するところであります。(
拍手)
これら重要な点について、以下、きわめて簡単に御説明をいたしたいと思います。
まず、たとえば
減税を見てみますならば、わが党の公約による
減税額は、国税、
地方税を合わせて平
年度一千億円以上であります。本
予算案においては、国税のみでも千百三十八億円に達しておるのであります。特に、中小
所得者の負担の軽減や中小企業の体質改善と経営の安定に諸般の
措置が講ぜられておることは、特筆さるべきことであると思います。
第二は、
社会保障であります。この
予算における
社会保障関係費の
総額は二千四百六十七億円でありまして、これは前
年度に比べて三五%の大幅な
増加でありますが、各省所管の
予算のうちで、低
所得層
対策の
経費を合算いたしますならば、昨
年度に比べて実に約八百億円という飛躍的
増加を見ておるのであります。(
拍手)特に、
生活扶助基準を一八%という大幅な
割合で
引き上げ、かつ、
勤労控除も大幅に
引き上げたようなことは、最近の改定が三%
程度にとどまったことを顧みますならば、いかに画期的なものであるか、特に強調に値するものと思うのでありまして、私どもは、こうしたことが、いわゆる防貧
対策というものに巨歩を踏み出したものと信ずるのであります。そのほか、生別母子
世帯の児童扶養手当制度が創設されるというような、各般にわたって、きわめてきめのこまかい
施策が充実しておりますることは、たくましく
成長する
経済のらち外にありまする不幸な
人々の前途に明るい希望を約束するものでありまして、私は衷心から賛意を表するところであります。(
拍手)
第三は、
公共投資でありますが、いわゆる社会
資本の充実は、
政府のなすべき最も重要な役割であります。三十六
年度においては、民間設備に比較してはなはだしく立ちおくれぎみにありました公共
施設の整備拡充はきわめて促進され、ことに、
道路、港湾においては新五カ年
計画が策定されまして、巨額の
行政投資が行なわれます。また、
産業用地の造成と工業用水の確保についても顕著な前進を示しておるのであります。
後進地域の開発について一言いたしますならば、
公共事業費と
公共投資の全般を通じて、まず、事業の配分に格段の配慮が加えられております。また、
公共事業費の国庫補助率を
引き上げ、地方負担率を引き下げ、いわゆる
特例措置が講ぜられますことは、国税、
地方税を通ずる工場進出のための優遇
措置とともに、後進地域の
所得の
格差是正に対して多大の貢献をなすものでありまして、まさに、わが意を得たものでございます。(
拍手)
農林漁業におきましては、需要に適合した農産物の導入と
近代化に重点を置いて、前
年度に比べ四二%増の大
規模な
予算が編成せられております。麦の作付転換
対策、畜産物事業団、農地信託制度、農協
資金の活用による
農業経営
近代化資金の創設、これらは
農林漁業の体質改善と
近代化へ大きく踏み出したものでありまして、
農業基本法が制定せられることとともに、私は、新味のあふれる
施策の展開と申すべきものと思います。(
拍手)私は、こうした政策は、コルホーズや人民公社方式を連想させるかのごとき
社会党の政策とは全く対照的なものでありまして、農村に明るい希望を与え、また、
農業が企業としてりっぱにやっていけるところの
基礎を確立するものであることを確信いたします。(
拍手)
次に、
財政投融資につきましては、本来、これは民間融資に依存すべき民間企業が、その
資金の多くを
財政投融資に依存するのは好ましいものでないのであります。ところで、三十六
年度の
計画におきましては、
総額七千二百九十二億円のうちの実に八割以上は、
生活環境の整備や、
厚生福祉施設や、中小企業や、
農林漁業や、国土保全や、あるいは後進
地域開発等の
国民生活の安定
向上をはかる
部門へ配分せられまして、従来より画期的に改善せられておりますことを、私は心から喜ぶものであります。(
拍手)
また、今回誕生いたしまする拠出制
国民年金等の長期の社会
保険資金は、一括して
郵便貯金等と区分せられ、そうして、原則的に、
国民生活の安定に直結した
部門に配分せられることになりまするのは、きわめて妥当な企てであると存じます。(
拍手)
以上は、きわめて簡単でございますが、一覧いたしました本
予算案の
内容でございます。
この
予算の性格は、健全
予算の性格を持ちます。
歳出の一切は
租税その他の普通
歳入によってまかなわれ、赤字公債の発行や、過去の蓄積を食いつぶすがごとき
措置はとられていないのでありまして、収支均衡を得たものであります。また、
一般会計の
規模は一兆九千五百二十七億円でありまして、前
年度の当初
予算に比べれば二四%の
増加でありますが、補正を加えれば一〇・六%であり、
国民総
生産見込額に対比してみまするならば、その比率は一二・五%であって、前
年度あるいは前々
年度、あるいはその前数年に比べましても、むしろ低いとも言えるのでございます。(
拍手)また、
政府の財貨サービス購入の
国民総支出に対する比率にいたしましても、一九・三%でありまして、前
年度とひとしく、三十四
年度よりは低く、実に
昭和八、九年ごろにひとしいようなものでございまして、これは
国民経済に対する
財政の比重として、私は妥当なものと認めるのでございます。(
拍手)
私は、実は、原則論としては、
予算の
規模が実力以上に過大になるようなことは厳に慎むべきものであると考えまするが、かくのごとき状態でございますから、この
予算案を目して、超大型であるから
景気を刺激するおそれがあるなどという議論をする人がもしあるとするならば、それは、この
予算の背景をなすところの
わが国経済が近年著しく
拡大されておるという事実に十分な認識を持たないか、あるいはまた、適正な評価を欠いておるものと申さなければならないのでございます。(
拍手)事実、
わが国経済は最近驚異的な
成長を続け、さらに、三十六
年度においても、個人消費の堅実な
伸びと
財政による適度な需要と相待って、九ないし一〇%
程度の
成長が可能と見込まれる反面、即売
物価は弱含み横ばいで推移されるものと
予想されておるのでございます。
以上のような観点から、私は、本
予算三案は、
内容からいっても、
規模からいっても、あるいは性格から申しましても、
わが国の現状に顧みて最も適切な
予算であり、希望に満ちたものであると確信をいたしまして、この三案に心から賛意を表する次第でございます。(
拍手)
ただ、一、二、
政府にこの
予算の執行その他について、この際御留意を願いたいところがございます。それは、
一つは、行政を運営する面におきまして、その能率化をはかってい
ただきたいこと、それから、
公共投資が
増大するにつきましては、その運用の効率化が大切であると思うことであります。また、
政府の目ざす
経済成長率に見合うような民間の設備投資のあり方等について細心の注意を払ってい
ただきたいと思うのであります。また、今次の
予算におきまして、国鉄運賃等の一部
公共料金の
値上げが認められ、また民間におきましても、サービス
部門の一部
料金の
値上げ等が行なわれておるのでございます。私は、従来不当に押えられてきた国鉄運賃の合理的改定のごときは、長期にわたる
経済成長政策の達成上、これら公企業体が与えられた機能を円滑に遂行するため、むしろ当然と考えるのでございます。また、
生産性の
向上によって
賃金の
上昇を吸収し得ないサービス
部門における
手間賃等の適正な
値上げは、これらの職業に従事する
人々の
所得の
増加という点からも、これを容認するにやぶさかではございません。しこうして、これらが
消費者物価に影響するところはきわめて僅少であります。このことは、最近数年間にわたる実績に徴し、
わが国における
国民所得の
伸びが
消費者物価の
伸びをはかるに上回っておるのであります。
政府の説明するがごとく、世界で最も安定しているといわれる西ドイツにおいてさえ、
国民所得の
伸びが四割に対し、
消費者物価が九・九%
上昇したその数年の間に、
わが国の
所得の
伸びは四九%、これに対して
消費者物価の
上昇はわずかに四・一%にとどまったことによっても明らかでございます。(
拍手)しかしながら、
物価の問題は、統計や数字の説明だけでは必ずしも
国民の実感に触れた共感を呼び起こすことは困難な場合がございます。
政府におかれては、まず、
物価に対する基本的な長期にわたる考え方を一そう明らかにし、
国民に対し行き届いた解説に努めるとともに、
生活の実感に触れるような適切な
対策を常に用意しておく必要があろうかと存ずるのでありまして、慎重なる考慮を望むものであります。
次に、
日本社会党の
組み替え案に対して検討を加え、反対の趣旨を明らかにいたしたいと思います。
今回の
予算案に関し、自民、社会両党首の会談が持たれましたことは、
わが国政治史上画期的なことでありまして、両党首共同の談話にあります
通り、この会談は国会を正常に運営していく上に大きな前進を示したものでありまして、皆様と喜びをともにする次第でございます。
ところで、問題は、その修正の
内容でございます。たとえば、
社会保障の拡充はわが党の最重要政策であり、本
予算案は、すでに詳しく述べたごとく、その
経費を飛躍的に増額しておるのでございます。しかし、それにしても、かりに
社会党との間に適当な
財源措置に話し合いがつけば、さらに検討を加える余地がないでもなかったでありましょう。しかし、
財源については、
社会党は
防衛費の削減を固執せられたのであります。
防衛費の削減は、いわば
社会党のお家芸でありましょうが、
防衛費の対前年
増加額二百億円は、給与費と国庫債務負担行為の
歳出化等、義務的
経費の
増加によるものでありまして、これを削除というのは、自衛隊の機能をとめるものにほかならず、全く非現実的な提案であります。(
拍手)そもそも、三十六
年度における
防衛費の総
歳出に対する比率は九・一%であり、
国民所得に対する比率はわずか一・四三%にすぎないのであります。しかも、こうした比率は、今
年度は昨
年度よりも低くなっております。昨
年度は一昨
年度よりも低くなっておるのでございます。三十五
年度の総
予算に対する比率九・八、
国民所得に対する比率一・四八より本年は低下しておるのでありまして、安保改定後において、かえって
防衛費に対する
国民の負担
割合が減少しているというこの事実を、私は、ここにあらためて指摘するものであります。(
拍手)このことは、
一つには、今日、本
予算案のごとき輝かしき
成長予算が、日米安保体制と最小限度の
防衛費の可能の上にこそ初めて編成されていることを、何よりも明らかにしておるものであります。(
拍手)
さて、
社会党は、一たび修正の話し合いが不調となりまするや、一転して、本来本質的に性格の異なる
組み替え案を例によってここに提案せられたのでありまして、この態度は、終始一貫しない、矛盾撞着するものといわざるを得ないのであります。(
拍手)
社会党の
組み替え案は、
産業に対する大幅な増税、自衛力の廃止を前提とする
防衛費の大幅削減等、現実と全く遊離した
内容のものでありまして、実際の
政治を責任をもって担当すべきものの
財政政策としては、とうてい論ずる価値のないものと断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)また、
組み替え案には、各種
格差の是正、
公共料金と
消費者物価、
財政投融資の運用等が問題にされておりますが、これらについては、
政府原案において、総合的に、また、現実に即して可能なる限度で十分に組み入れられ、また、慎重に配慮せられていることは、すでに詳しく述べたところでありますから、これを繰り返す煩を省かせてい
ただきます。要するに、
組み替えの必要などは毛頭ないのであります。いな、絶対に
組み替えてはならぬのであります。(
拍手)
私は、以上をもちまして、時間の
関係もございますから、きわめて簡単でございますが、
政府の原案に対し賛成をし、そうして、
組み替え案に反対をするものであります。(
拍手)
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