○野原正勝君 私は、自由民主党を代表し、去る十八日
内閣から提案せられました
農業基本法案に対し、
政府のこれに対する
見解をただし、あわせて、その決意を伺いたいと存ずるものであります。
わが党は、すでに
昭和三十三年以降、国際及び
国内における経済の動向に対処し、わが農業の向かうべき基本
方針を宣明する
農業基本法を制定するため、党の総力をあげて、これが策案に邁進して参ったのでありますが、
政府においてもその必要を認め、
内閣に農林漁業基本問題調査会を設置し、各界の権威を網羅して鋭意調査に当たられた結果、昨年その答申がなされたのであります。党及び
政府一体となってのこれらの努力は、みごとに結実いたしまして、ここにわが農政史上画期的なる
農業基本法案の提案と相なったのでありまして、われわれは、この歴史的な瞬間に際会し、ひとしお感慨深きものを覚えるものでありまするが、
池田総理を初め各大臣におかれましても、また同様の御心境にあることと存ずるのであります。しかしながら、
農業基本法案は、わが六百万農家の将来の命運に重大な
関係を持つ幾多の基本政策をその
内容といたしておりまするがゆえに、本案施行にあたっては容易ならざる決意と万端の準備とを必要とするものであります。そこで、私は、これらの決意と準備について、
池田総理以下
関係各大臣にお伺いいたし、もって全国農民の負託にこたえたいのでございます。(
拍手)
この
農業基本法案は、
日本国憲法及び教育基本法と同様、特に前文を置きまして立法の精神を説きまするとともに、農業に関する政策の目標を
示し、その向かうべき大道を明らかにいたしておりまするが、これは、いわば
国民の発した光栄ある農業宣言とも申すべきものでありまして、この法案の重大性を遺憾なく
示しているものであります。(
拍手)
すなわち、そこにおきまして、まず、
日本の農民諸君が多くの困難に耐えつつ、
国民経済の発展と
国民生活の安定に寄与して参りました偉大なる業績を賞賛し、
国家社会及び地域社会の重要な形成者として、
国民の勤勉な能力と創造的精神の源泉たる使命を全うしてきた歴史的な意義を強調し、しこうして、また、将来にわたり民主的で文化的な
国家を建設する上において、農民諸君の受け持つ役割がいかに広範かつ重要であるかを指摘することによって、わが農業と農民の努力に対する
国民の期待を表明し、次いで、近時
わが国産業、経済の著しい発展に伴い、農業と他産業との間の生産性及び生活水準の格差が
拡大しつつある
事態に対処して、農業の持つ各般の不利を補正し、農民の自由な意思と創意工夫を尊重しつつ、農業の近代化と合理化をはかることによって、農民諸君が他の
国民各層と均衡するところの健康かつ文化的な生活を営むことができるよう諸政策を集中することが、農業及び農民に課せられた使命にこたえるゆえんのものであると同時に、公共の福祉を念願する
国家国民の崇高なる責務に属するものであることを、簡潔にして力強く内外に宣言しておるのであります。(
拍手)まことにその言やよし、おそらく、全国六百万農家の方々は、この本
会議場より流れ出るところの声に耳を傾け、
総理の自信と
責任感に満ちた御
発言を期待しておると信じまするがゆえに、本法成立後、その施行について全
責任を負う
内閣を代表して、
農業基本法の完全なる運用についての
総理の不退転の決意を伺っておきたいのであります。(
拍手)
次に、私は、農業に関する政策の目標と施策の
内容について、逐次、各大臣の御
見解をただすことといたします。
すでに法律案前文においても明らかな
通り、国の農業に関する政策の目標は、
国民経済の成長発展及び社会生活の進歩向上に即応し、農業の自然的、経済的、社会的不利を補正し、他産業との生産性の格差が是正されるよう、農業の生産性の向上と農民
所得の増大及び農民の地位の向上とをはかることにあるのでありまするが、かかる目標を達成するため、国としては、あらゆる部面にわたって必要な施策を総合的に講ずべきは当然であります。そこで、第二条は、これら施策の
内容を総括的に掲げておるのでありますが、農林大臣を初めとして各省大臣は、それぞれの立場において、
農業基本法立法の精神に照らし、所管行政を積極果敢に展開し、もって農政の政策目標を達成すべき政治
責任を負うのであります。すなわち、新農政の第一着手は、まずもって農業の生産性の向上にありますが、これについては、農業の生産基盤たる土地及び水の利用開発を大前提といたします。従来、とかく低生産地帯といわれておりました畑作地帯等に対し、積極的に土地利用の高度化をはかるはもちろん、畜産振興、酪農振興の基盤たる草地や果樹園等の大規模な開発に邁進しなければならないのでありますが、従来とかく画一的に流れやすい行政の弊害を改めまして、南北に長い
日本列島の地域的特色を十分にこなした上で、きめのこまかい地域農政が実施されなければならないのであります。しこうして、一方におきましては、蛋白食糧、ビタミン食糧への需要の高度化に応ずる生産部門の再編成を実施するのでありますが、資本装備の高度化及び技術向上と相待って、
わが国農業の生産性向上はまだまだ十分に可能であり、総生産を増大し得る膨大な余地が随所に残されておるのでありまして、わが農業は、指導よろしきを得るならば、前途洋々たる青年期にあると申しても過言ではないのであります。われわれといたしましては、かくして農業の生産性の向上をはかりつつ農業総生産の増大を期するのでありまして、この車の両輪の上に立って、一方においては価格政策のよろしきを得、また、他方によって農業構造政策の新展開を待ち、もって農業、農民の向上前進のため事に当たりたいのであります。
以上の前提を置いて、各省大臣に御
質問を申し上げることといたします。
まず、企画庁長官にお伺いいたします。
農業基本法案策定の背後に
国民所得倍増計画があることは、御
承知の
通りであります。しかして、その
国民所得倍増計画によれば、
日本経済の成長率をここ三カ年は九%以上とし、その後もまた引き続いて伸ばして参りまして、十年を出ずして
国民の総
所得を二倍以上に引き上げることと相なっております。こうした
国民経済の発展と成長の中において、農林漁業という第一次産業部門の生産の伸びは、わずかに年率二・九%とせられているにすぎないのであります。企画庁の計算されました十カ年間の行政投融資総額は、周知の
通り、十六兆一千億でありますが、その中において、農林漁業投融資はわずかに一兆円とせられておるのであります。率直に申しまして、われわれは、この投融資計画にはなはだ不満であります。農政の
転換期を迎え、
所得格差を解消しようというわれわれの主張に対し、経済審議会の答申はあまりにも現実の
要請を無視したものであると
考えられ、われわれとしましては、かかる計画をそのまま閣議決定されては困るのであって、この際、農林漁業に対する投融資に関しては、あらためて再検討の上、必要とあれば十分これを増加することを条件として同計画を認めたことは、すでに御案内の
通りであります。そこで、今ここに確かめておきたいことは、この
農業基本法が成立し、三十七年度の予算案が編成されるころまでには、新しい構想による農林漁業振興のための施策として相当大きな額の行政投融資計画が示されるものと思うが、企画庁長官はそれを受け入れられるだけの腹がまえであるかどうかを伺っておきたいのであります。(
拍手)
次に、大蔵大臣にお伺いいたします。
農業基本法の制定に関して、全国よりほうはいとして要望が生じましたゆえんのものは、
昭和二十八年をピークとして漸減した農林予算の現状を憂慮し、農林行政の積極的展開を裏づける財政投融資の画期的増大を願う気持がその
一つであることは、否定できないところであります。
農業基本法の制定は、それ自体が最終
目的ではなく、財政的背景を持つ農業新政策の展開の第一歩であることを銘記すべきでありましょう。
昭和三十六年度農林予算は、幸いにして、前年度に対比し四二%という画期的増大を見たわけでありまするが、将来にわたってさらに飛躍的
拡大を見なければならぬことは、基本法案第四条の規定よりしても当然であります。それにより
農業基本法は初めて画龍点睛を得るのでありまするが、大蔵大臣の御所信のほどを表明せられたいのであります。(
拍手)
次に、自治大臣にお伺いいたします。
農業基本法の制定に伴い、国は、今後の農業施策について長期見通しの上に立って生産政策を樹立し、これに関連して、農地の整備、開発、また、農業経営規模の
拡大等、高度の地域性を持った種々の施策を推進することに相なるわけでありまするが、これら国の施策を行なう上において、地方公共団体の果たす役割はいやが上にも大なるものとなるわけであります。しかるに、農業を産業の大宗とする地方公共団体は、むしろ、その財政が窮乏し、今後の積極的な農業投資を推進する上に、国の施策に応ずる財政上の余裕があるかどうか。現行の地方交付税制度の中では、積極的に地方公共団体が投資を行なうについてきわめて不十分であるといわざるを得ないのであります。従いまして、これらの地方公共団体に対しては、その最大の産業である農業に対し、国と一体となって積極的な農業政策の実施を可能とするよう、地方交付税等の制度を改善して、財政上の優遇措置を講ずべきであると思われまするが、御所見を伺っておく次第であります。
次に、通産大臣にお伺いいたします。
世上、往々にして、
農業基本法の制定に関し、これが農産物貿易自由化を促進するための準備措置であるかのごとく曲解する向きもないでもないのであります。われわれとしましては、むろん、農業生産性の向上をすみやかに達成し、
海外農業との競争力を増強するに努めることが肝要であり、これが施策をますます
強化しなければならぬと存ずるものでありますが、諸般の準備整わざるうちに自由化を行なうことは、断じてわれわれのとらざるところであり、
政府もまた同
意見と
考えるのであります。(
拍手)ガットの規定においても、弱小農業をかかえる
国家に対しては各種の特例を認めており、手放しの貿易自由化対策を強制するものではないと信ずるものであります。農産物の貿易自由化に関連するIMFまたはガットの
条約上の問題、あるいは関税操作、輸入制限の問題等に関するわが方の厳然たる
方針をこの際明らかにして、全国農民諸君の不安を解消されたいのであります。(
拍手)
次に、農畜産物の価格対策に関して、大蔵大臣及び農林大臣にお伺いいたしたい。
価格政策の要諦は、いかにして農民の
所得を安定せしめ、安んじて生産に精進せしめるかにあることは、言を待たないところであります。
農業基本法は、言うまでもなく、農民の
所得を安定向上せしめ、他産業従事者との
所得並びに生活水準を均衡化せしめるという至上
目的を持つわけでありますが、これらの諸対策のうちにおいて価格対策の占める重要性はますます重大化して参るのであります。各種農畜産物の中において、すでに生産が需要を超過し、従来のごとき硬直した価格形成方式をもってしては
国家財政ないしは消費者の家計に対し過重の負担をしいるものもないではなく、あるいは現行価格水準をもってしては需要のこれ以上の伸張を阻害するものがないでもないことは、これを率直に認めなければならぬのであります。大麦、裸麦のごときはその一例でありましょう。従いまして、一方においては有効なる作付
転換方策を採用しつつ、他面においては弾力性を帯びた価格決定
方法を採用することは理の当然であると存ずる次第であって、この国会において画期的な麦作対策を講ずるゆえんのものもそこにありまするが、この際厳に注意すべきは、農民の収入がいささかも減少しない方策を堅持すると同時に、将来に向かっては経営の合理化、近代化への道を開かねばならぬことであります。さらに、農業生産の前途において、生産の各部門を再編成して、いわゆる生産の選択的
拡大を期し、畜産、果樹等、成長部門の育成に対する各種施策を
強化するにあたって、そこに重要な役割を果たすのは価格政策、流通政策でありまするが、たとえば、牛乳、乳製品の価格形成方式におきましても、畜産物事業団の価格
支持方法は、まず酪農民の生産する牛乳そのものの生産費を基準とし、酪農民の
所得増大を期し、あわせて流通加工の合理化による消費者価格の引き下げをはかり、もって牛乳の飛躍的増産、消費の
拡大を促進するに役立つものでなければならないのであります。従って、
農業基本法のうたう価格安定なるものは、あくまでも農畜産物の価格
支持を原則とし、生産費並びに
所得の補償を大眼目とするものであると信ずるのであります。大蔵、農林両大臣の御所見はいかがでありましょうか、伺っておきます。
次に、構造改善対策に関して、農林大臣、通産大臣、労働大臣に対してお伺いいたしたいのであります。
構造改善対策が今後の農業基本政策において占める役割はきわめて重大でありまするし、
農業基本法案におきましても相当の重点を置いて規定していることは、御
承知の
通りであります。しかるに、世間には、往々にして、問題の本質を歪曲し、あるいはことさらに悪意の宣伝の具に供する
目的をもって、構造改善対策が貧農切り捨て政策であるかのごとく流布する向きがあるのであります。われわれは、かくのごとき、ためにする
見解は、断じてとらざるところであります。わが農業構造の
根本的な欠陥は、零細経営、手労働耕作、耕地分散というようなことであります。何人もこのことを否定する者はないと存じます。今後わが農業が国際農業に伍して繁栄し得るためには、これらの致命的弱点をすみやかに改善し、是正することが急務であります。よって、われわれといたしましては、わが農業の就業構造並びに経営構造の両面にわたって抜本的の改革を行なう必要があると存ずるのでありまするが、幸いにして、
わが国民経済の高度成長下において、労働力に対する新規雇用の
要請はきわめて顕著なものがあるのであって、これをてことして農業過剰人口の吸収をはかり、残された農業経営の
拡大化に進むことは、だれが
考えてもきわめて適切妥当な政策といわざるを得ないのであります。むろん、わが党といたしましては、経営
拡大のための前提となるべき施策としては、農業生産基盤の整備
拡大と資本装備の高度化に努め、効率の高い農業生産の場を積極的に拡充するに努めるわけであり、なかんずく、畜産、果樹、特産物を中心とする草地開発及び畑作の振興に対して全力を傾倒する所存でありまするが、これと並行して、農家の二、三男の諸君を中心として、適材適所、その希望に応じて、新たなる飛躍の天地を第二次、第三次産業部門に創造し、もって農村人口の適正な再配置を実現することは、近代
国家として当然の責務であると存ずるのであります。しこうして、一方、農業経営構造改善対策にあっては、人口の適正配置と、農地、草地等の積極的な造成により、自立経営農家の育成と協業の助長をはかるわけでありまするが、以上に関連して、各大臣にお伺いいたすのであります。
まず、農林大臣といたされましては、欧米
各国の現状とも対比して、経済の高度成長下における
わが国の農業人口の適正な割合はいかなるものであるとお
考えになり、また、農業経営の中核となるべき家族中心の自立経営農家としては、将来いかような規模と資本装備を持つものを理想とし、これを育成するつもりでおられますか、また、兼業農家の生活
内容の充実向上ということをも、農民福祉の見地に立って、農政の重要目標とせられるべきものと思うが、どうか、また、協業組織、協業経営の存在についても、決してこれを軽視しては相ならぬと思うが、その助長のための具体的な措置としてはいかなるものをお
考えになっておりましょうか、御
意見を伺いたのであります。
さらに、労働大臣としては、農村人口の転就職、職業訓練等について、いかようなる計画をお持ちになっておられましょうか、詳細に伺っておきたいのであります。
また、通産大臣としては、工業の地方分散、低開発地域の工業促進等の措置により、労働市場、商品市場を農村に散在せしめ、もって離農や農作物の生産、流通、消費に有利な条件を作る方途を講ずべきでありますが、その具体的方策はいかがでありましょうか。
次に、農林金融問題について、大蔵、農林大臣にお伺いいたします。
昭和三十六年度予算案において、いわゆる農村近代化資金制度を創設し、三百億円の農協系統資金を制度金融に組み入れるための画期的な措置を講じ、とかく農民資金が系統外に流れやすい状態を改善することとしたのであります。今後における農業の生産、流通、加工の面における融資対策の演ずる重大性にかんがみ、公庫融資、制度融資を通じ、三十六年度融資総額が千億を突破するに至りましたことは、まことに農民諸君とともに慶賀にたえないところであります。しこうして、翻って
考えまするに、この種長期低利資金に対する農民の需要は将来ますます増大の一途をたどるものと思われ、農業の近代化、合理化に対する有力なきめ手になるとさえ存ぜられるのでありまして、三十七年度以降、公庫資金並びに近代化資金を通じ、資金造成量をさらに飛躍的に増大するはもちろん、近代化資金に関しては、末端金利七分ないし七分五厘とする計画に対しては、今後すみやかにこれを改定し、国の金利補助を二分ないし三分以上とし、農民の金利負担を一そう引き下げることが肝要と存ぜられるのであります。以上について、大蔵、農林大臣の所見を伺っておきたいのであります。
次に、荒木文部大臣にお伺いいたします。
農業近代化を実現するための重要なる施策として、人材の養成確保、教育、研究及び普及事業に関し、特に第十九条を設けてこれを明らかにしておりますが、農業振興の基礎は、何と申しましても、教育に負うところきわめて甚大であります。初等義務教育においては、農業に関する基礎教育に一段と力を注がれたいと
考えるものでありまするが、さらに、農業高校における教育は、農業近代化を担当する中堅青年養成の機関でありますので、それにふさわしい施設の充実をはかり、将来の
日本農業を背負って立つ有為の青年を農村に確保するよう、りっぱな教育の場を作ることに特に力を注ぐ必要があると存ぜられますと同時に、農村地帯に工業学校をもあわせ設置いたしまして、農家の二、三男等を中心に、その希望により工業方面に飛躍できる措置を講ずべきであります。さらには、農業に関する大学教育及び学術研究についても時代の潮流におくれないよう、また、青年教育についても、ラジオ、テレビ等、広く普及している時代でありますので、一そうの工夫を望むものであります。文部大臣の御
見解をお伺いいたします。(
拍手)
さらに、農村における環境の整備、保健衛生及び農村の婦人問題に関し、厚生大臣並びに労働大臣にお尋ねいたしたい。
農村の生活環境は、都市と比べ、きわめて非衛生であり、文化的生活にはほど遠いものがあります。特に、医療施設等においては、いまだに無医村地帯と称すべきものも少なくないのであります。交通機関にも恵まれざる農山村において、まことに憂慮にたえないことでありますが、
国民皆保険により疾病の早期発見と治療を徹底し、
国民の健康増進を期するためには、農村に対してこそ最大の力を注ぐ必要があり、国の
責任に帰すべき事項と
考えるのであります。医療厚生あるいは農村簡易水道、公衆浴場の設置、保健婦及び助産婦の設置等については、格段の配慮を加えねばならないと思うのであります。
さらに、婦人労働問題についてでありますが、
日本農業の現実は、婦人の労働力にささえられており、婦人は家庭の主婦たる使命に加え、常に過重な労働を負担しているのであります。私は、ここに、むしろ農業近代化以前の問題として、あまりにも過重な労働の重圧から婦人を解放することこそ、農業基本政策上の大問題の
一つと
考えるものであります。(
拍手)貧しさよりの解放、婦人の過重なる労働負担のよってきたる原因の除去は、かかってここにあるのであります。常に黙々として働き、次代の生命を育て続けている農村婦人の地位の向上こそは、
農業基本法制定の有力な契機と申せましょう。農村における託児所、保育所、婦人ホーム等の増設、家事労働軽減対策等、なすべき事柄は山積しております。農村婦人問題について格段の努力をいたさねばなりません。その御所見はいかがでありましょうか。
以上、労働大臣、厚生大臣並びに農林大臣の御
意見をお伺いする次第でございます。
次に、建設大臣にお伺いいたします。
農村の振興をはかり、農村の環境を改善するため最も重要なる問題は、農村における道路交通網がいまだきわめて不十分な状態に置かれている点であります。産業経済発展の動脈であり、不可欠の条件たる道路網、交通網の整備につき、
政府は道路十カ年計画を策定し、二兆一千億の巨費をもって雄大な施策を行なうこととせられている点に関しては、もとより賛成いたすものでありまするが、しかしながら、かくのごときうらやましい計画の外に置かれているというよりも、むしろ置き忘れられんとしているものは、実に農村地帯における道路問題であります。山村地帯に対しては、三十六年度予算において山村振興林道を建設することとなりました。山村民に光明をもたらしている次第でありますが、今後、農村振興道路網の整備充実を実現し、農業の生産基盤を整備し、地域格差解消の
根本対策の
一つともなすべきものと思うものでありますが、建設大臣の御
意見をお伺いする次第であります。
最後に、運輸大臣に伺いたい。
農業の発展のために運輸政策の果たす役割が大きいことは、申すまでもないところであります。今日の国有鉄道の経営
方針ないしは国鉄運賃の決定原則は、ややもすれば大都市中心、商工業中心に流れ、地方開発、農業開発をとかく軽んずる傾向がないでもないのであります。農業と他産業との
所得格差が
拡大している事実は、すなわち、
国民所得の地方格差の
拡大を意味するものであるのであります。国鉄等に依存することの多い農林水産物については、新線の建設、運賃負担等については今後格段の配慮が加えらるべきは当然であると存ぜられますが、運輸大臣の御
見解を伺っておきたいのであります。
以上、
政府提案にかかる
農業基本法案について若干の御質疑を申し上げましたが、
池田総理大臣以下各大臣におかれては、
世界の
各国がこの十年に、激動する政治経済の中にあって、いずれも
農業基本法を制定し、とかくおくれがちな農業の保護育成、その近代化について血みどろなる努力をいたしておる事実をすでに十分に御
承知のことと存じまするがゆえに、
わが国もようやくここにその制定に踏み切ったわけでありまして、むしろ、われわれをもってすれば、おそきに失した感すらなきにしもあらずであります。すみやかにこれら先進
諸国の戦列に伍して、しかも、これをすみやかに追い越すことができますよう、諸般の施策の推進に手抜かりのない努力を傾けられるよう、重ねて要望する次第であります。
なお、社会党におかれましても、本日、くしくも、
農業基本法案の
趣旨説明を本
会議において同時にされたわけでありまして、その御精進については敬意を表するにやぶさかでないわけであります。その
内容の細部におきましては
見解を若干異にする点もございますが、願わくは、わが農業、農民の熱望にこたえ、小異を捨てて大同につかれ、
農業基本法のすみやかなる成立のため格段の御
協力を示されんことを要望いたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇〕