○加藤勘十君 私は、日本
社会党を代表して、池田総理並びに
関係閣僚に対して、主として
外交上の問題について質問をいたしたいと存じます。(
拍手)
先ほど、総理並びに外務、大蔵両大臣、
経済企画庁長官から、それぞれ
施政方針についての御
演説を聞きました。これらの御
演説は、
国民の琴線に触れる何ものもなく、顧みて他を言うか、あるいは、くつを隔ててかゆきをかくというがごときもので、そこには一片の指導
精神の現われたるものなく、物足りないことおびただしいものがあります。(
拍手)先日の新聞に出ていた話でありますが、一高校生が、「十年後に自民党とい今政党がまだあるかしらん」こういう疑問を発したことを聞いて、総理はがく然とされたということでありますが、この少年の言葉こそ、天に口なし人をして言わしめるものではないでしょうか。(
拍手)とかく、支配的
地位にある保守派の
諸君は、きのうという過去に幻想を抱き、今日という
現実に執着して、明日という理想を語るを欲しない
傾向があります。しかし、保守派の
諸君がどのように考えておろうとも、時はいっときの休みもなく進歩の歩みを続けていくのであります。(
拍手)私たちは新鮮な時代感覚を持って、
現実と未来を貫くその連なりと取り組み、前向きの
政治を考えなければならないと存じます。(
拍手)
以下、私の質問に対し、
政府当局の御答弁も、日本の置かれたる
国際的
現実とその将来の指針となるべきものを
国民に訴える心がまえをもって率直にお答えを願いたいのであります。
その第一点は、日本の
外交の重要
課題の
一つとしての中国と
国連の
関係についてであります。
国連が結成されてすでに十有五年を経過しましたが、この間、イデオロギーの
対立や利害の不一致のために、
国連はその機能を十分に果たすことができなかったのであります。しかし、昨年末には参加国は九十九を数えるに至り、日本が加盟した当時とはだいぶん様相が変わってきております。米ソいずれの陣営にも傾かない中立、中正の機能を発揮し得るようになったのであります。こうした
傾向が顕著に現われたのは、
アフリカのコンゴ国の内紛問題や植民地主義排除に関する決議案、並びに
経済社会理事会の理事選任にあたり、五大国の
一つとして特権的にその地歩を占めてきた中華民国が、その
地位を失ったことなどに現われておるのであります。今日、
国連に中華民国の名で正式に代表権を持っておるのは台湾
政府であります。台湾
政府は、もはや、
現実には中国を代表する資格を失っておるのであります。(
拍手)中華民国は、
国連結成の当時は、米、ソ、英、仏と並んで、五大国の
一つとして、安全
保障理事会に常任理事国としての優位を占めていました。その後、中国の内戦によって、中華民国の南京
政府は台湾に本拠を置く一
地方政権に転落し、今日の北京
政府は、国名も中華人民共和国と改め、事実上
中国大陸を統治し、その六億の民を代表する
政府となっておるのであります。(
拍手)
現実の事態は、北京
政府こそ中国を代表する正統
政府であることを否定することはできないのであります。(
拍手)
国連における加盟国の
政治的あるいはイデオロギー的複雑な理由のもとに、中華人民共和国の
国連加盟はいまだに拒否されておることは、皆さんの御承知の通りであります。しかし、昨年
アフリカ大陸から十六カ国が新たに加盟するに至りまして、従来のバランスが破れ、中立派の勢力が著しく
増大し、中華人民共和国加盟の問題も、破れはいたしましたが、わずか数票の差に迫ったのであります。ことに、私たちが重視しなければならないことは、東南
アジアにおいて厳然として中立を保持しているインド、ビルマ、インドネシアはもとより、セイロン、ネパール、ラオス、カンボジア、マラヤの国々及びSEATOの加盟国であるオーストラリア、ニュージーランド等が中国の
国連加盟を支持しているということであります。また、いわゆる反共
国家としてSEATOに加盟しているタイ及びパキスタンが、最近、軍事的ひもつきでない
経済援助をソ連に求める
交渉を開始したということも、中立化の
傾向として見のがすことができない事実であると思います。こうした
国連における
情勢から推して、本年の
国連総会に中国加盟の問題が具体化する
可能性は十分うかがえるのであります。このようなとき、池田内閣は、どのような態度をおとりになるのか。昨年同様、拒否の態度をおとりになるというのか、あるいは、そのときの
情勢次第というような逃げ口上で明確な御答弁ができないのか、いずれか、この点をはっきりお答えを願いたいのであります。(
拍手)
この問題に対する
わが国の態度は、当然に北京
政府との
関係につながってきます。わが党は、中華人民共和国の
現実の
状態から、この国との国交を正常に回復し、
経済、
文化の交流は心とより、ソ連とともに一日も早く平和条約を締結して、
アジアにおける平和と
繁栄をもたらすべきことを主張してきたのであります。もちろん、こうしたわが党の主張に反対する論者も少なくないことを知っております。これらの反対論者は、第一には、台湾の存在をいかにするか、第二に、共産主義勢力の侵入をいかにするか、第三に、
わが国の将来の安全
保障をいかにするか、これらの諸点を問題としているのであります。いかにも、との三つの問題は、中国との国交回復にあたって十分考慮に値する大きな問題であることは、その通りであります。
第一の、台湾
政府は、現在アメリカの強力なる軍事的、
経済的支援によって一国の体をなしているとはいえ、
わが国の
立場から見れば、台湾という島は、サンフランシスコ条約によって放棄し、中国に返還したもので、その帰属が中国にあることは、議論の余地はないのであります。中華人民共和国側が、台湾問題は中国の国内問題であって、他国の
干渉を受くべき筋合いのものでないと主張するのは当然であります。われわれとしては、情において忍びがたきものがあっても、大義、大道に従って、台湾問題は中国国内問題として平和的に処理されるようまかすべきではないか。(
拍手)現に、北京
政府は、台湾は必ず解放するが、武力による解放は行なわない、と、しばしば声明しておるのであります。
第二の、共産主義勢力の侵入云々に対し、保守派の
諸君は一種の恐怖病に冒されておるということができます。共産主義の思想が、かりに侵入を試みられようとしても、
わが国の
社会情勢に共産主義思想を受け入れ、あるいはこれを育成する温床があるかないかが問題でありまして、思想戦には思想をもって武器として対抗する以外に方法はないのである。再軍備に多大の
予算を取り、いたずらに万里の長城を築きましても、内に金がものを言う買収
選挙が横行し、
社会保障完備への熱意は財界への人気取り策とすりかえられて影をひそめ、清潔な
政治、大衆の生活安定感という共産主義侵入の防御策は捨てて顧みられない。この
政治の貧困こそ共産主義侵入への危険信号と、
政府は大いに反省すべきではないか。(
拍手)
第三の、
わが国の安全
保障の問題については、わが党は、かねてより、日米安全
保障条約、中ソの軍事条約、この両
体制の
対立を、それぞれ条約を無効にせしむる
努力によってこれが達せられた後に、中立を守る日本独自の
立場から、
国連方式による集団安全
保障の道か、あるいは太平洋集団安全
保障の道か、そのいずれかの道を決すべきであると主張しております。中国の
国連加盟、中国との国交回復の問題は、
わが国に課せられたる本
年度の重要
課題の
一つとして、これが
解決を迫られていることは、火を見るよりも明らかであります。総理は、
国民に対し明確にお答えを願いたいのであります。(
拍手)
さらに続いて、私は、中国との
貿易再開の問題について
政府の
所信をお伺いしたいのであります。
日中国交の正常なる回復への道として、両国間の
貿易を欲する声は、保守、革新を問わず、今や
国民世論として盛り上がって参っております。かの長崎における不幸なる国旗事件のため中断した
日中間の
貿易は、諸般の新
情勢の展開によって、これ以上放任しておくととは許されぬ事情となったのではありますまいか。すなわち、戦後、軍事的に
経済的にアメリカに依存し、従属してきた
わが国は、勤勉にして
能力ある
国民の
努力によることはもとよりでありますが、弱小
企業や
労働者、農漁民の犠牲の上に、金融資本による資本の集中、
企業の合理化を行ない、みごとな
経済成長を遂げ、独占形態を確立するに至りました。今や、日本の資本主義も、
貿易の自由化とアメリカのドル防衛策に直面して、大きな危険に立たされるに至ったのであります。日本の
経済は、今や、
米国への依存といろ温室を離れ、独自の力によって
国際市場に立たざるを得なくなった以上、利害に鋭敏な
経済界は、早晩
日中関係が何らかの形で打開されなければならないとの見通しのもとに、日中
経済友好使節団の派遣とか、中国側から廖承志氏とか南漢宸氏らを招待し、両国間の友好を
増進しようとする
準備が進められておるというが、これらの企ては
政府とは無
関係で進められておるのか、それとも、
政府と了解のもとに進められておるというのか。もし了解のもとに進められておるとすれば、いかなる了解が与えられておるのか、この点、はっきりお答えを願いたいのであります。池田内閣としては、できれば民間協定で日中
貿易を
推進したいと考えているかもしれないが、中国側は、はっきり三つの
原則を承認の上での
政府間の協定でなければ再開に応じないという態度を明らかにしております。中国側の主張する三つの
原則は、一、中国敵視政策をやめる、二、
二つの中国を作る陰謀に加わらない、三、日中復交を妨害しないというのであって、
政府と
政府とが誠意を持って
貿易協定を結ぼうとする以上は当然のことである。日本側にいろいろ言いたいこともあろうが、
国際信義を守る限り認められない問題は
一つもないはずだと思われるが、これが認められない理由が他にあるか、あれば、それを
国民が納得するように明らかに知らしてもらいたい。(
拍手)
第二は、ラオスの事態と日米新安保条約との
関係についてであります。
去る十八日、小坂外相は、ラオス問題について申し入れしたわが党の成田政審会長に対し、ラオスに対して在日米軍は出動をしていない、従って、事前協議の申し出の事実はない旨を答えております。私がお聞きしたいのは、そうした単なる手続上の問題ではなくて、ラオスの内戦がアメリカの
干渉によって本格化し、戦禍が東南
アジアの一角に広がったとした場合、新安保条約下の
わが国はどうなるかということであります。在日米軍がかりに出動するようなことがあるとしたなら、すでにソ連から
わが国に対して警告が発せられておるところであるが、
わが国は、
国民の意思に
関係なく、直接何らの利害
関係もない近隣の一
地域の
紛争に自然に巻き込まれて、あるいは拡大するかもしれない戦禍の中に投じられてしまうのである。こんなおそろしいことがあろうか。
国民は不安にかられておるのであります。
私は、このラオスを取り巻く危機について、ここに、ある評論家の言葉を引用してみたいと思います。
彼いわく、「アメリカは韓国やトルコで犯したあやまちを、またもやラオスで繰り返そうとしている。民衆に根のない独裁者にドルと武器を与えて、しゃにむに反共のとりでを構築する
努力は、各国で試験済みの通り永続しないばかりでなく、逆に反米感情となってはね返ってくることを悟らねばならない。なぜアメリカは年々四、五十億ドルにも上る莫大な援助を振りまきながら、
世界の至るところできらわれるのか。アメリカのためにも
世界のためにも、今日はこの点の反省が必要なときである。ラオス政策のごときは、
一つ間違うと
戦争の危険さえあるのだから、近隣の国として見過ごすわけにいかないし、特にアメリカの与国日本は、利害の複雑と距離の近い
関係上、深甚な考慮を求めなければならない。率直にいえば、アメリカの選ぶ相手は、反共でさえあればだれでもよいのである。この場合、アメリカの出先官憲が清潔であり、アメリカの国策に忠実第一であればまだ救いはあるが、不幸にして、彼らの多くは独裁者に欺かれるか、それをかばって、見て見ぬふりしており、はなはだしいのは、腐敗の分け前にあずかって、腐敗を助長しているものさえある。アメリカが容共派とするコン・レ大尉はもちろん、パテト・ラオすらも本来は容共派ではなかった。それを
共産側に追いやったのは、むしろアメリカのサナニコン
政権援助政策にある。プーマ
政府が各派連合の中立
政権を企てたとき、アメリカはノサバンにドルと武器を与えて反抗させた。ハンガリーに対するソ連の行動を非難したアメリカが、中立を求めるプーマ打倒を援助する矛盾は弁護の余地はない。アメリカがいつも民衆を敵に回し、独裁者を仲間としているのに対して、
共産側は常に民衆を味方とし、手足とするやり方をとっている。これがアメリカが
世界じゅうで鼻をつままれ、失敗している
原因である。反共に
異議はないが、いま少し民心をとらえる上策があろうではないか。今やアメリカの授助に比例して
共産側の行動も積極化し、ノサバン軍と容共連合軍の内戦は、アメリカ対中ソの代理
戦争的色彩を次第に明瞭化してきた。もしこの
状態が
改善されぬとしたなら、戦いはラオス一国にとどまらず、南北ベトナムからカンボジア、タイにまで波及して、朝鮮
戦争以上の危険は必至である。われわれはそれをおそれる。第七艦隊を南シナ海に出動させ、沖繩の部隊を動かそうとするアメリカの態度を見ては、日本として、もはや傍観しているわけにはいかない。第七艦隊は横須賀を補助基地として使用しているし、万一、在日部隊が沖繩に向かって移動するようなことにでもなれば、当然新安保条約付属文書による事前協議が行なわれねばならぬ。
政府も事態を憂慮して、伊関
アジア局長を現地に特派して
調査するという異例の処置をとっている。万
政府が間接的にもラオス
紛争に介入することを認めでもしては、安保条約に賛成した
国民も、おそらくはあげて反対するであろう。」これは、一月二十四日付のある新聞に、保守的だといわれておる
政治評論家の某氏が寄稿した時評の一部であります。(
拍手、発言する者多し)
皆さん、名前が聞きたいのですか。名前が聞きたければ言いましょう。新聞は読売新聞、評論家の名前は御手洗辰雄氏であります。(
拍手)どうです。内外の諸
情勢に十分通暁しておる保守派の評論家でも、この場合に、このような憂いと不安を抱いておる。(
拍手)
一般国民が、もし
現実に事前協議を必要とするような事態に直面した場合、どんなに驚き、どんなに不安を感ずるであろう。(
拍手)安保条約の締結に精魂を傾けて反対したわれわれの気持に対し、
国民は、当然十分に
理解してくれることを信ずるのであります。わが党が今日といえども新安保条約に強硬に反対しているのは、日本
国民をしてこのような事態に絶対に直面せしめないためであることを、私は、ここに重ねて強調するのであります。(
拍手)
なお、ラオスを取り巻く
紛争について、
米国は、強気一方で、
国際監視
委員会の復活設置に反対的態度を示してきたが、海外通信によれば、
ケネディ氏の
大統領就任とともに幾分弾力性を帯びてきて、ラオスの中立化、
国際監視
委員会の設置に積極性を示してきたように見られるが、
現実の事態はどのようであるのか、また、日本のとるべき態度はいかにあるべきかについて、
外務大臣から率直にして正直な御答弁をお願いいたしたい。(
拍手)
なお、この際、私は、池田総理にお伺いしたいが、それは、ラオスの内戦は、このように中立を保持する以外に
解決の道なしとさえいわれておるとき、総理は、昨年の総
選挙のころ、わが党の主張する中立政策を評して幻想であると冷笑されたが、今日でもなおそのように考えておるのか、もう一度、ラオスの事態をはっきり見直して、日本民族の安全のために、あやま
ちを改むるにはばかることなく、率直
な答弁をしていただきたいのでありま
す。(
拍手)
さらに、いま一言つけ加えて申し上
げますが、日本の
外交が
国際的に
国連中心の
方針をとっておることは保守党
政権の一貫した考え方であると思うが、その
国連加盟国のある国は、アメ
リカを
中心とするいわゆる
自由主義圏に属し、あるものはソ連圏に属してい
るとはいえ、
アフリカ、ラテン・アメリカ、
アジアの多くの国々のうち、その大部分は、いずれの陣営にも属さない中立の
立場をとっておることは、厳然たる事実であります。米ソ等の大国といえども、これらの中立国の向背を無視しては、もはや
国際政局を自由に動かすことはできなくなってきたのであります。米ソの
対立を
緩和し、
世界平和を
維持するのは、実にこれらの中立国の
動きに待つところ大きいのであります。わが党は、
アジアにおける
わが国の
立場を真剣に考慮して、中立主義こそ日本の進むべき必至の道であるとの確信を持つものであり、池田総理のこの点に対する
所信をお伺いします。(
拍手)
次は、ガリオア、エロアの問題についてであります。
最近、新聞紙の報ずるところによりますると、日本
政府は、アメリカ
政府に対し、ガリオア、エロアを債務であるという前提のもとに、その金額、支払い方法などについて具体的な
交渉を始めるように伝えられておりまするが、それはほんとうでありましょうか。一体、ガリオア、エロアが何を根拠として債務というのでありまするか。
政府は、従来、しばしば、債務と心得る、と不得要領な表現を用いてきましたが、債務と言い切ってはいなかった。しかるに、これを確定債務として、その支払い方法を協議することは、明らかに憲法八十五条の規定に違反すると思うが、
政府はどのようにお考えですか。(
拍手)
政府は、アメリカの対日援助費は、平和条約第十四条(b)項に規定する直接軍事費でないから、アメリカに請求権があるという観点と、いま
一つは、
昭和二十四年四月六日の
国会において行なった阿波丸事件の対米賠償請求権放棄の決議に基づいて日米両国
政府で協定を結んだ節、吉田総理大臣とシーボルト氏との間に書簡が交換され、その交換書簡の中に、占領費並びに日本国の降伏のときから
米国政府によって日本国に供与された借款及び信用は、日本国が
米国政府に負っている有効なる債務であり、これらの債務は
米国政府の決定によってのみ減額し得ると書いてある点との
二つの事柄をとらえて、ガリオア、エロアの債務説を主張するのでしょうか。平和条約第十四条(b)項に規定された直接軍事費云々の件は、ガリオア、エロアの性格及びその使い道を検討すれば、明瞭に軍事的目的に使用されていることがわかります6すなわち、一、ガリオア、エロアの資金はアメリカ陸軍
予算として議会の承認を受け、物資の買付はアメリカ陸軍省で行なって、日本
政府は何らの権限を持たない。二、この使用者はアメリカ軍であって、日本
政府ではない。三、ガリオアは、アメリカでは軍の民生品供給
計画と呼ばれている。四、その使用目的は、軍事的
関心から、補給線と兵站線の治安を守り、これを統制するため、
秩序の回復と
維持を必要とし、
政治的には、解放者として廃墟の土地に臨み、米軍軍隊を病気と民間の不安から守るため、占領地の民生品の供給は必要であった。これだけ見ただけでも、ガリオア、エロアが普通の借款でないことは明瞭であります。(
拍手)また、二十四年四月、見返り資金特別会計が設定されるまでは、物資の金額は無記入であります。数量は不明瞭であります。どこの国に債権債務の対象となる物資の金額、数量を明記しないで債権債務を設定するものがありましょうか。(
拍手)ガリオア、エロアが普通の債権債務でない何よりの証拠であります。
外務大臣は、これらの点を調べて、どのように考えられまするか。この点もまた、はっきりお答えを願いたい。(
拍手)ガリオア、エロアを債務として確認するようなものは、以上のほかには何もない。それとも、
政府の方には何か隠れたる材料でもあるとおっしゃるならば、お示しを願いたい。これに反し、債務でないとする証拠は、今まで申し上げたことによって明瞭であります。
日本
国民は、アメリカの好意による贈与と思えばこそ、鳥のえさにしかならないようなくず豆でも、ありがたく適正代価を払っておるのであります。(
拍手)また、
国会の感謝決議に共感の
拍手を送ったのも、その現われであります。(
拍手)また、阿波丸の賠償請求権の放棄も、こうした
国民的感情を映し出したものにほかならないのであります。それを、今になって、あれは貸してやったものだから代金を返せと言われたのでは、代金の二重払いという
経済的負担もさることながら、
国民的感情を踏みにじるものとして、とうて
いがまんのならないものであります。(
拍手)
政府は、こうした
国民的感情を何と思われまするか。
ガリオア、エロアの物資がアメリカから送られたと思い込んでいた人は、現に今の
政府部内にもあるのであります。
昭和二十八年七月十日の衆議院決算
委員会で、時の岡野通産大臣は、「私は、その当時、これをちょうだいしたと思っておったものでありますから」、こう答えております。また、今大臣席におる
水田大蔵大臣も、昨秋の特別
国会の大蔵
委員会において、私の質問に答えて、「私もその当時はもらったものと思っておりました」、はっきりそう言っておるのであります。
小坂外務大臣はどうですか。
このように債務と見るべき根拠はほとんどないにもかかわらず、債務である、債務であると、押しつけるように、債務と心得るを反復繰り返しておるのは、元の総理吉田茂氏であり、岸信介氏であり、今の総理大臣
池田勇人氏であります。池田さんは、
昭和二十六年九月十四日、サンフランシスコ
会議の調印を済まして帰朝するや、新聞記者会見において、「援助費が債務であることはドッジ氏やダレス氏やアメリカ
政府当局との
話し合いで確認された」、こう語っております。ところが、
昭和二十九年五月七日の参議院本
会議において、時の副総理の緒方竹虎氏は、「対日援助を債務と心得る法的根拠はどこにあるのかとの御質問ですが、この援助は債務と確定したものではないのでありまして、
政府としては、初めから道義的にこれは債務的なものと心得て参ったものであります。平和条約締結の際、この問題について
話し合いの対象となったことはございません」、はっきり池田さんの話とは食い違った答弁を緒方さんはしておるのであります。緒方さんは今はなき人でありますから、私は、池田さんとの食い違いを責めようとはいたしません。道義的に債務と心得るというものを、あたかも法的に当然の債務であるかのごとくにすりかえて、
国民に多額の負担をしょわせることは、断じて承服できないのであります。(
拍手)
政府は
国民をして納得せしめるに足る十分なる根拠を示してもらいたいのであります。
一部には、アメリカは今ドルの流出に困り、その防止にやっきとなっておるのであるから、ドル防衛に
協力する
意味でも、支払いの
話し合いを進めたらとの意見もあるようですが、ガリオア、エロアの
解決とドル防衛問題とは全然別個の問題であります。(
拍手)これをからませることは明らかに不当、不法であります。ガリオア、エロアの問題は、あくまでも
国民が納得するよう筋道を立てて
解決すべきもので、ドル防衛に
協力するというなら、それは別個の方策を考えるべきであると思います。この点について池田総理大臣のお考えをお伺いいたしたいのであります。(
拍手)
また、一部には、同じような
条件にあったドイツがすでに支払いを開始しているのであるから、日本もドイツ方式にならって話を進めたらとの、もっともらしい意見も聞かれるのでありますが、ドイツと日本とは事情が著しく違っておるのであります。ドイツに対しては、ヨーロッパ第一主義の
立場から、最初から
計画的で、一定の
目標を立てて援助が行なわれたのでありまするが、日本の場合は、さきにも述べましたように、占領軍の軍事目的を第一としたものである。従って、その
内容も食糧を主としたもので、援助物資の中に占める高率な食糧の割合を見れば明瞭であります。
さらに、私は、現在問題となっておる日韓会談の問題についてお伺いをいたします。
現在日韓予備会談が催されているというが、日本側は、この会談にどのような心がまえをもって臨んでおるのか。朝鮮は、不幸にも、三十八度線を境として南北に分断され、
一つの民族が
二つの
国家に分かれて、互いに不信と不安と貧困に脅かされている実情であります。われわれとしては、一日もすみやかに南北の平和的統一が行なわれ、一民族一
国家の
実現せんことを切望してやまないのであります。朝鮮の問題に大きな
政治的
責任を有する隣国の日本
国民としては当然ではありますまいか。しかるに、現在の予備会談は、その運び方いかんによっては、逆に南北の分断を恒久化し、固定化し、朝鮮民族の将来の幸福についての配慮が欠けておるものと思われるが、池田総理はどういう意図をもって日韓予備会談を
推進しようとしておるのか、そのお考えを聞きたいのであります。
韓国の統治権は、明らかに三十八度線以南にしか及んでおりません。その以北は北朝鮮
政府の統治下にある。韓国は、
国連決議で合法
政府と規定されたものであるとはいえ、全朝鮮を統治するものとして認められたものではなく、朝鮮の部分におけるこの種の唯一の合法
政府として認められておるにすぎないのであります。三十八度線を境に南北に
二つの
政府が実在することは、朝鮮民族にとってこの上もない不幸なことであります。長い間李承晩
政権のもとに自由を奪われ、貧困に苦しんできた南鮮の大衆は、李承晩を追って自由を取り戻しはしたものの、アメリカから武器を幾ら多く供給されても、武器では生活はできません。大衆の生活本能は、必然的に貧困から脱却する方途を考え出さずにはおかないのであります。それは、南北朝鮮の間に
文化の交流を行ない、それを通じて南北朝鮮の統一への道を開かんとする運動が起こってきたことであります。
最近に至って、韓国
社会党は、一、南北朝鮮の視察団の交換、二、
文化の交流、三、郵便の交換、四、北朝鮮の電力と韓国の穀物とのバーター取引の問題、これらを提唱しております。また、新民党の一部では、北朝鮮の
文化、
経済交流の真意を探るために
経済使節団の派遣を、また、同党の金度演副
委員長もジャーナリストの即時交換を提唱し、さらに、呂運弘参議院議員は、朝鮮統一の方式について討議するために、北朝鮮に四、五人の代表を京城に送るよう求めることを参議院の次期会期に上程すると言っております。張勉首相は、これまで数回にわたって北朝鮮
政府から呼びかけてきた
文化、
経済の交流の問題については、単なる北朝鮮側の宣伝にすぎないと拒否してきたのでありまするが、盛り上がる要望を押え切ることができなくなって、
政府内に、統一問題研究のために二十五名の専門家からなる機関の新設を
計画するとともに、外務省にも統一問題を担当する新しい部門を設けようとさえしております。郭尚勲民議院
議長も、
各種の交流、統一提案を検討するため、超党派
委員会を結成する
準備を進めておるというのであります。
このように、韓国側において南北朝鮮の統一に対する機運が高まりかけてきたときに、南北朝鮮の分割を固定化するおそれのある日韓会談ではなく、朝鮮民族全体の将来を考慮に入れての会談でなければならないと思うが、
政府の見解はいかがですか、これまた、はっきりお伺いをいたしたい。(
拍手)もちろん、日本と朝鮮との間には、戦後処理の問題、李ラインの問題、竹島の問題、漁業権の問題等、
解決しなければならない問題がたくさんあることは認めまするが、朝鮮民族の永遠の幸福のために、朝鮮の平和的統一を妨げるおそれのある会談を避け、むしろ、南北両
政府と日本との間に
文化、人事の交流に努め、そして、地理的にも
文化的にも最も親しみを感ずる日本が、一衣帯水の朝鮮に、イデオロギーの相反する
二つの大きな陣営のいずれにも従属しない、平和な純中立国の出現を待望する態度をとることは、当然ではありますまいか。池田総理の
所信とともに、みずから韓国に渡って今回の予備会談を
推進したかに思われる
小坂外務大臣のお考えをお聞かせ願いたいのであります。
以上、私は、両国の
中心問題について
政府の
所信をお伺いいたしたのでございまするから、どうか、冒頭にも申し上げましたように、この議場を通じて全
国民に
理解せしむるように、はっきりとお答え願いたいことを希望いたしまして、私の質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇〕