○前田(榮)
委員 関連して。科学
技術庁長官がせっかく来られたのですから、この際科学
技術振興のために一つ御意見を聞いておきたいと思うのです。今
経済成長率に伴う科学振興についての御抱負を承ったのでありますが、その
希望的要求というものはごもっともだと思うのでありますが、大体ほんとうの科学
技術というものを振興しょうとしたならば、ただ
学校を建てたりあるいは子弟の教養をどうするとかということでなしに、
国民の思想的傾向をそういう方向に向かうように指導しなければならぬ問題があると思う。
そこで第一に考えるべきものは、日本の官庁や会社やあらゆる方面において、いわゆる政経単部の出身者が支配的な立場の経営権というものをほとんど握っておる。また官庁におきましても、
大臣を初め次官から
局長とかいうようなものは、ほとんどそういう政経学部系の者で独占をしておるという傾向がある。これが科学
技術を重要視する社会はそうでないと思う。その一例は、これは
昭和二十九年ごろの統計で少し古いのでありますが、アメリカとソ連とを比較いたしますと、アメリカには
大学卒業者の中で理工科系は二七%、法文経済系は四三・九%、その他は
教育者系であります。ソ連の方は理工科系が九四・九%、法文経済系は四・六%というふうに十分の一
程度で、あとは
教育系統です。その当時の日本の統計を見ますると、理工科系が二一%で、法文経済系が五四・五%、あとは
教育系統であります。すなわちこれは私立の
大学であろうが公立の
大学であろうが、学生が社会へ出て優位な立場に立つところへ英才が結集する、こういう傾向は人間心理として当然なるものであります。だんだんと世界的に科学
技術というものが重要視される時代になってきたときに、日本はあわてふためいて
教育のやり方を変えなければならぬ時代が来ておると思う。そういう日本の将来をどういうように考えるかという根本に十分な目を投じてやらないと、幾ら学級をふやし、そこに
生徒を募集しようといたしましても、一般学生の中での
希望が、今日のように法文系へ英才が集中されるということでは、ほんとうに科学
技術の振興した国家にならないと思うのであります。その点をどういうように考えるか、科学
技術庁長官としてあるいは国務
大臣としてのお考えを一つお聞かせ願いたい。
もう一つは、この統計をとった当時にどれだけの学術振興費を国が使っておるかということを申し上げますと、アメリカは、これは
大学ばかりでないのでありますが、日本円に換算して一年間に九千三百九十六億円、日本は当時二百十四億円にすぎない。ところがソ連は一兆二千二百億円使っておる。この数字が今日ソ連がアメリカをしり目にかけて横行濶歩しております人工衛星等で優位な立場におる根本の原因だと、業界においても批評をいたしておるのであります。金のことはあながち日本はソ連やアメリカを追い越しておるというわけにはもちろん参りませんから、及ぶ限りの——日本の今の予算の組み方等では私はとてもだめだと思います。要するに
学校施設や
教育内容の問題のみならず、国家の全体の
体系をどこへ持っていくかということに着眼しなければならぬ政治家の
義務があるということと、あわせて今申し上げましたような経済や
法律などは何ら物を作るものではない。ただその中での調整をどうするかということを考えるだけにすまないものであります。今後の世界の科学
技術というものは、やはり世界をどちらへ持っていくかという大事な問題になっておるだろうと思います。そういう点についての所管
大臣である池田さんの御意見並びに
荒木文部大臣の
文部大臣としてのこれらに関する将来の拘負経綸等を一つお聞かせ願いたいと思います。