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1961-05-31 第38回国会 衆議院 農林水産委員会大蔵委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月三十一日(水曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員  農林水産委員会    委員長 坂田 英一君    理事 秋山 利恭君 理事 大野 市郎君    理事 小山 長規君 理事 丹羽 兵助君    理事 石田 宥全君 理事 角屋堅次郎君    理事 芳賀  貢君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       川村善八郎君    久保田円次君       倉成  正君    小枝 一雄君       田邉 國男君    谷垣 專一君       中馬 辰猪君    綱島 正興君       寺島隆太郎君    内藤  隆君       中山 榮一君    野原 正勝君       藤田 義光君    本名  武君       松浦 東介君    森田重次郎君       八木 徹雄君    足鹿  覺君       片島  港君    北山 愛郎君       東海林 稔君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    西村 関一君       山田 長司君    湯山  勇君       稲富 稜人君    玉置 一徳君  大蔵委員会    委員長 足立 篤郎君    理事 鴨田 宗一君 理事 細田 義安君    理事 毛利 松平君 理事 辻原 弘市君    理事 平岡忠次郎君 理事 横山 利秋君       金子 一平君    簡牛 凡夫君       高田 富與君    山中 貞則君       米山 恒治君    有馬 輝武君       佐藤觀次郎君    田原 春次君       広瀬 秀吉君    藤原豊次郎君       堀  昌雄君    武藤 山治君       安井 吉典君  出席政府委員         大蔵政務次官  大久保武雄君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      上林 英男君         農林政務次官  八田 貞義君         農林事務官        (農林経済局長) 坂村 吉正君         農林事務官         (畜産局長)  安田善一郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   相澤 英之君         専  門  員 抜井 光三君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業近代化資金助成法案内閣提出第一〇八  号)  農業近代化助成資金設置に関する法律案(内  閣提出第一一〇号)      ————◇—————   〔農林水産委員長委員長席に着く〕
  2. 坂田英一

    坂田委員長 これより農林水産委員会大蔵委員会連合審査会を開会いたします。  大蔵委員長との協議により、私が委員長の職務を行ないます。  農業近代化資金助成法案及び農業近代化達成資金設置に関する法律案議題として審査を行ないます。
  3. 坂田英一

    坂田委員長 これより両案について質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。武藤山治君。
  4. 武藤山治

    武藤委員 トップ・バッターを引き受けまして、大蔵委員立場から、ただいま議題になっておりまする農業近代化資金設置に関する法律案、さらにそれに関連する諸問題について、いささか質問してみたいと思うわけであります。  政府が、農業近代化をはかる、さらに資本装備高度化をはかるという建前から今回出されましたこの法律を見ますと、非常に多くの問題点をはらんでおると思うのであります。  そこで、順次簡単な点からお尋ねいたしますが、まず第一に、今回提案になりました際に、日本農業を高度に資本装備をさせるのだ、こううたっておるが、一体資本装備高度化するというのは、どの程度目標日本農業構造を改善しようとしておるのか、その高度化程度ということを最初に伺っておきたいのであります。まず高度化目標という点について一つお尋ねいたします。
  5. 坂村吉正

    坂村政府委員 このたび農業近代化資金を創設いたしました場合におきまして、日本農業資本装備高度化あるいは経営合理化とか、いわゆる農業近代化というものを目標にいたしまして、それがための資金融通円滑化をはかろう、農業に適した資金融通をはかっていこう、こういう趣旨でこれを創設いたそうとしたわけでございますが、その場合におきまして、装備高度化とかあるいは近代化とかいいますものは、たとえば農業基本法等におきましてもいろいろ議論をなされておりますように、今後日本農業経営構造改善をやる、それから、それに伴いましていろいろ資本装備というものが必要になって参りまして、今後の農業推移に応じまして、この高度化の限度といいますか、程度といいまするものは、現在具体的な形でこれまでの高度化が要るんだというような具体的なものの目標はございません。けれども、農業基本法等中心とした今後の動きによりまして、農業構造改善経営の伸展がだんだん来るわけでございまして、それに応じまして、あるいはそれを促進する意味資金の供給をする、そういうような考え方のもとに、そのてこ入れとしてこの制度考えておる、こういうととでございます。
  6. 武藤山治

    武藤委員 確たる高度化近代化というものの目標はない、時代の推移、これからの農業の移り変わりによるというぼやっとした目標で、それにてこ入れをするという意味で、三百億の資金貸し出しワク、さらに利子補給、こういうことをやったというのでありますが、一応こういう案を策定するからには、やはり、五年後なり十年後なり、あるいは現在の預金状況貸し出し状況がこうなっているから、大体この程度ワクを設定すれば日本農業はこういう形に推移していくのである、そういう指導的な一つ計画の上に立ってこういう案というものは策定されなければならぬと思うのでありますが、全くそういう計画なしに、目見当で三百億という貸し出しワクを設定したのかどうか、その辺をもう一回確認をしてみたいと思います。
  7. 坂村吉正

    坂村政府委員 この制度によりまして融通をいたしまするその資金の総ワクといたしましては、三十六年度においては、当初でございまするから、一応三百億ということで考えておるのでございまするが、この根拠といたしましては、従来、こういう農業経営におきまするところの資本装備高度化のための融通制度も、一部におきましては農林漁業金融公庫において行なわれておりまするし、それから、一面におきましては、農林省におきましても、あるいは農業改良資金であるとか、あるいは有畜農家創設資金であるとか、それに加えまして、各県におきましても、県独自でいろいろの制度金融というものを、県で利子補給あるいは債務保証をし、そういうような形で行なっておるのでありまして、それらの全体の今までの動き、それから最近におきまする動き等を十分検討いたしまして今後伸びていく方向で将来の総資金ワクというものも当然考えなければいかぬ問題でありますけれども、また、それに加えまして、農業基本法等が施行されますれば、それによって農業近代化というものも進んで参るのでございますから、そういう点を頭に置きまして、とりあえず、その当初の年でございますから、従来の実績等も考慮した上で、一応三百億、こういうようなことできめましたわけでございます。
  8. 武藤山治

    武藤委員 私が申し上げるまでもなく、現在のキャピタリズムのシステムの中で、農業に新たなる投資を拡大するということがどういう位置づけを持っておるかということは当然わかっておるわけです。そこで、そういう一つの全体の機構の中で、全体の預金量貸し出し量というものの中で、こういう制度を設定すれば農業にどういう効果が現われるんだ、そういう一つ目標効果というもののねらいはあると思うのですよ。そういうものを全然お答えしないで、これからの推移とか、全体の勘案をしたとか、そういう言葉だけではわれわれ納得するわけにいかぬわけです。だから、資本装備といっても、近代化といっても、問題は中身が問題なんです。それは日本農業のどういうものを対象にしてどの程度近代化なり資本装備というものをやるんだ、そういう具体的なある程度青写真というものがあるはずです。たとえば政府には十年間の国民所得倍増論として作った文書があるんですから、おそらく農業に対してもある程度の目安というものはもうできておると思う。そういうものに対してこの資金がどういう位置づけを持っておるか、そういう点のあなたたち作成者としての考え方でけっこうなんです。そういう点を一つもう少し具体的にお示し願いたい。
  9. 坂村吉正

    坂村政府委員 今後におきまするところの農業近代化を進めていく一つ目標といいまするものは、お説の通り、あるいは所得倍増計画等におきましても、一つ目標といいますか、青写真も描かれておりまするし、それから、農業基本法の審議の際にも、いろいろそれらの問題につきましても質疑応答がございましたわけでございますけれども、ただ、きわめて率直に申し上げまして、今度の三十六年度の三百億について、それでは具体的にどれだけの目標を持って三百億を組んだのか、こういうことでございますると、これは、今後資金需要というものはますますふえて参るということでございまして、三百億でとうてい足りるものではないというふうに、私たちは率直に申し上げますと考えておるわけでございます。従いまして、当初の年でございまするし、新しい制度でもございまするので、従来の同じような種類の融通資金基礎にいたしまして、それに対してある程度最近の実情に応じまして伸び等考えまして、とりあえずそれで実行してみよう、そうして、農業に対してこの資金がどういう効果を具体的に持つか、一応実行いたしまして、今後の推移等考えていこう、こういうととで三百億を組んでおるわけでございまして、まことにどうも御不満かもしれませんけれども、そういう実情でございます。
  10. 武藤山治

    武藤委員 資本装備の問題と近代化青写真についてはできておらぬ、非常に急場で、とりあえずこれをやってみれば、どういう効果か出てくる、だんだんワクを広げていこう、こういう考え方のようですから、この二点については、あとで時間がありましたらお尋ねをすることにいたします。  次に、第二点として、今回、政府は、非常に長期低利資金制度を作った、そういう宣伝を全国にやっておるわけですが、一体、何を基準に、何年を基準にして長期と言うのか、それから、低利とは一体何を基準にして低利と言っておるのか、長期低利資金を設定したと言っておるようですけれども、一体この程度長期低利であるかということに疑問があるわけです。そこで、あなたたち考えておる長期基準低利基準というのは、一体何を基準にして言っておるのか、その点を第二にお尋ねしておきます。
  11. 坂村吉正

    坂村政府委員 農業金融におきまして、どの程度金利がいいのか、あるいはどの程度償還期限のものがいいのか、こういう問題は、ぴしっと具体的にきめますことはなかなか困難であろうと思うのでございます。御承知のように、日本金利の全体の姿の水準も、外国に比べましても非常に高いのでありまして、ですから、世界的に見まして、これはとにかく農業に対して低利長期の金だというようなものを具体的にこれだということを今言うことはなかなかむずかしいんじゃないかと思います。しかし、現状あるいは今まで運用して参りましたところで、農林省といたしまして農業金融につきましての長期低利といいまするものは、大体主として農林漁業金融公庫で、これは政府資金を主体にいたしましてやって参っておるのでございまして、これは最低三分五厘から最高七分五厘というような範囲のものでありまして、との運用利回りを見ますと五分五厘くらいになっておりますので、こういう農林漁業金融公庫のやっているものが一応現在の日本金融情勢あるいは農業施策情勢では大体長期低利だというふうに観念していいのではないかというふうに考えておるわけでございます。それから、そのほかに、系統農協等系統の金を融資しておるものもございます。これは八分ないしあるいは一割以上というようなところのものが農業金融でも系統の中で動いておるのでございまして、実態はそういうようなことになっておるのでございます。従いまして、ほんとうに長期低利のものについては、国の融資ということを大体中心にいたしまして、それを拡充していこう、そういうことで農林漁業金融公庫の方の充実をはかっていく、こういう考え方をとっております。ですから、近代化資金におきましては、どちらかと言いますれば中期のものを一応予定して、十年前後のものを大体相手にしておりまして、金利におきましても、ここに書いてありますように七分五厘という程度でとにかくやっていこう、こういう考え方をいたしておるのでございます。
  12. 武藤山治

    武藤委員 長期のものは農林漁業金融公庫の方にたよって、これは中期だ、こうおっしゃっておりますが、政府提案説明書やその他与党のえらい人たちの演説などを聞いておると、そういうことは言っておらぬ。これは長期低利資金と一口に言っておるわけです。ですから、農民は非常に長期低利で借りられるというので政府をたよって信頼する、そういう錯覚を持って受け入れておるわけです。そこで、今の御答弁では、五分程度低利だろう、長期は二十年程度だろうというふうに受け取れるわけですが、諸外国の例を見ましても、これは国会図書館に依頼して調査したわけでありますが、どこの国を見ても、日本とは全く問題にならぬほど長期低利の金を貸しておる。たとえば、アメリカ合衆国においては、五年から最高三十五年まで、年利四分五厘、フランスにおいては、三十年から七十年という長期設備資金を貸しておる。しかも率は三分であります。西ドイツにしても四分から五分の利息。イタリアも五分です。そういう点、比較していきますと、日本金利というものは、今回の制度ができても決して低くはない。七分五厘というのは農業という特殊事情から見たら非常に高い金利であります。たとえば、輸出入銀行が年四分で金を貸しておるとか、あるいは造船業者に対する利子補給とか、国家的見地からずいぶん無謀な低利金融もあるわけです。ところが、一方農業という産業を見た場合はどうでしょう。一年に一回か二回しか収穫がなくて、しかも精を出して、ことしはたくさんとれるだろうと思った、ところが、台風が来て、百日の説法へ一つという商売です。そういう商売であるから、資本主義大量生産、薄利多売の競争の社会では、企業化しろと言われても、農業というものには一定の限界があるわけです。そういう限界のある産業であるから、国家的保護を厚くし、社会政策的な見地から農業というものを十分保護しなければいけないという立場から、こういう制度というものが生まれてこなければならぬわけです。資本主義の弱肉強食の中へただほうり出して、さあお前らも企業化して競争しろ、金は貸すぞと言われてみたところで、金の量だけでは農業というものは食いついていくわけにいかない。やはり、低利長期という非常な特別扱いをしなければ、農業というものは資本主義ワク内ではとても太刀打ちはできないのであります。そういう点から検討いたしますならば、今回は、わずか二分の補給といって、しかも、共同利用でもって十五年、個人の施設が十年、農機具や家畜の場合には七年か五年、こういう政令が今作られようとしておるようでありますが、この程度では、農業が再生産を償って拡大生産ができるというような資金には決してならぬのであります。こういう点で、長期低利という基準一体何をもとにして作られたかという点に非常な疑問を持つわけです。そういう点から、今回のこういうような措置は、あなたのお考えでは、最初やってみるのだから、トライアルアンドエラーだから、失敗したらやり直せばいいんだというようなテストケースみたいな考え方で、この程度期間金利というものでがまんをしろ、こういう立場でありますのか、そういう策定をした根拠一つお聞かせ願いたいのであります。
  13. 坂村吉正

    坂村政府委員 御質問でありまするが、決してテストケーストライアルアンドエラーでやろうという意味ではございませんけれども、具体的に目標として、先ほど申し上げましたように、金額にいたしましてもそれではぴしっと三百億で足りるか足りないのかという問題につきましては、これは、そもそも三百億でいいとも申し上げられませんし、これからもどんどんふやしていかなければならない。初年度でありますから、今までの実績考えて三百億円でやったということでございます。  それから、金融金利の問題、それから期間の問題、そういう問題につきましては、私たちも、御説の通りであろうと思うのでございます。ごもっともでございまして、日本の全体の金融情勢がそういう状態になっておるのでございますけれども、まだ日本の全体の経済欧米諸国のように低金利長期融資ができるというほどまでに、底といいますか、蓄積ができていないという実態であろうと思うのでございます。ですから、農業金融の面で欧米諸国においては金利が非常に安いのでございまするけれども、それは、欧米諸国の、たとえば中央銀行割引歩合、あるいは一般市中銀行金利、こういうものを見ましても、日本に比べると非常な安さになっておるのでございまして、そういう全体の経済情勢の違いがございますので、農業金融といたしましても、それはできればできるだけ安い方がいいと思うのでございます。それから、期限も、それは長い方がいいというふうに考えるのでございますが、現状の段階におきましては、御承知通り農林漁業金融公庫におきましても、大体十年、十五年、ないし長ければ二十五年くらいの範囲で、金利は三分五厘から七分五厘という範囲で、農業においては相当長期低利の金だということで施策を講じてきているような状況でございます。これに比べまして、ある程度長期性なり低利性は幾らか薄くはなりますけれども、一応、民間の系統の金を使って、これに対して国がある程度援助をやって、そうして農業金融をやっていこうという趣旨でございますので、そういうような意味で、ある程度農林漁業金融公庫に比べれば薄くはなりますけれども、そういう意味でこの金利期限等考えておるわけでございます。
  14. 武藤山治

    武藤委員 全体の金融情勢とか、その国々の公定歩合とか、そういうものの壁があって、それ以上引き下げるわけにちょっといかないのだ、金融情勢や諸外国公定歩合と比較した場合、日本の場合は比較的高い、そういういろいろな壁があって、とにかく七分五厘以下に安くすることはちょっと困難があるのだ、今のお答えは大体そういうお答えですね。そうしますと、公定歩合を比較してみると、確かに、アメリカが三%くらい、イギリスが五%くらい、日本は大体六・三%くらい。ですから、日本公定歩合というものは、世界的に見て、先進国と比較して確かに高い。それは確かです。しかし、そういうように、イギリスが五%の公定歩合でありながら、しかも、六十年という長期で、五分という金利ができるのですね。だから、日本が六・三%の公定歩合であっても、農業というものは社会政策的に保護しなければだめなんだ、資本主義競争の中でとてもこれはもう競争にならないのだ、だから国はある程度の犠牲を負っても農業には手厚く長期低利資金をやらざるを得ないのだ、こういう政治家考え方一つによって五分にすることは可能だと私は思うのです。その可能な五分を五分にできなかったという障害一体何か。あなたのお考えでは、その障害は何だと思いますか。日本金融状態一般、あるいは国際金利水準一般という概念だけでは説明のつかない何か具体的な障害があると思うのです。その具体的な、七分五厘を五分にできなかった、あるいは六分にできなかったという理由一体那辺にあるのか。それとも、七分五厘なら、農協もどうにか健全化され、貸出需要がどんどんふえれば農協の収入もふえてくるから健全な経営になってくるだろう、その呼び水として出してやるのだから、七分五厘は決して高くない、そんなようなお考えで妥協しての額なのか。そこいらは一つはっきりとあなたたち策定者としての考え方を聞かしてもらいたい。
  15. 坂村吉正

    坂村政府委員 七分五厘の金利にいたしまして、五分なら五分ということにできなかったという理由は、全般的には、先ほど申し上げましたように、全体の金利——金融の問題といいますのは、やはり全体の経済のバランスの問題もあろうと思うのです。そういう面もございまするし、それから、農業内部におきましても、現在具体的には農林漁業金融公庫は先ほど申し上げましたような状況でございますし、それから、一面、この制度は、農業協同組合系統相当金が集まっておるのであります。この金を政府援助によって積極的に農民に還元をしよう、こういうねらいが非常に強いのでございます。  そこで、それでは現実に農業協同組合金利がどういう状況かということを見ますと、大体、末端に参りますと、九分五厘、一割というのが平均金利になっておるわけでございます。それでは農業協同組合というものは将来いつでも政府の厄介になって金利を負担してもらわなければいかぬものかどうかということを率直に考えてみますと、農業協同組合は、やはり、もっと自主的に合理化をいたしまして、自分でも金利を下げていくという努力を積極的にしなければいかぬし、その方向政府も指導していかなければいかぬだろうというふうに考えておるわけでございます。そういう意味からいたしまして、協同組合系統金融金利として、それではとりあえずの問題としてどこまでの金利目標にしたらいいかということを考えてみますと、現在一割のものを協同組合は五分にするのだというような考え方で、はたして急に極端にそういうようなことでいけるだろうか、こういうようなことも頭に描きまして、とりあえず七分五厘程度目標にして、これまで農業協同組合金利をなかなか自分では下げられないだろうし、そこまでは政府援助をしてとにかく持っていこうというようなことで、七分五厘という線をそこに出したわけでございます。それは、別の面から言いますと、国の直接融資をしておりまする農林漁業金融公庫金利最高限のところで押えた、こういう姿になっておるわけでございます。
  16. 武藤山治

    武藤委員 今の農林漁業金融公庫最高限金利七分五厘に、まあまあというところで押えた、それはそれとして、一応あなたたち考え基礎はそうだったということは了解つきますが、七分五厘ということはわれわれは不満でありますけれども、その問題は、またあと有馬委員からも質問があろうと思いますから、一応保留にしておきます。  次に、系統資金農業内部への融資という考え方でありますが、昨年末の農業内部における資金というのは、農協系統預金が八千二百三十三億円、信連が五千百十五億円あります。さらに、農林中金が二千百五十四億円ある。これだけの年末預金高に対して、貨し出しておる金額は、農協が三千三百十八億円、信連が千三百八十億円、農林中金が五百五十二億円です。この数字を見ますと、農民がみずから預金をした額のうち、自分たち農業に使用する貸し出し金というのは非常に少ない。すなわち、貸し出しが停滞をしておるという状況がよくわかるのであります。そこで、こういう資金状況から見て、三百億円というワクの設定は非常に少な過ぎる。この金利引き下げ対象になるワクを五百億、七百億ともっと大きくすべきではないか。日本農業が曲がりかどに来ておるとか言われ、あるいは、農業基本法を作って、農業を大きく転換するとか構造改善をするとか、大きなスローガンを掲げておるのでありますから、こんなけちな三百億なんというちっぽけなことを考えないで、なぜもっと五百億とか七百億とかいう大ワクを設定できなかったのか。それは、結局、資金需要はこの程度しかないだろうという考え方なのか、それとも、十年間に徐々にやっていけばいいというのであるか。そうだとすれば、申し込みが来ても需要に全部応じられないで、政治的に動いた団体だけピック・アップして貸し付けるというような、非常にへんぱな状況ワクが小さいために出てくるような気がするわけであります。そういう点で、なぜ三百億円を五百億、七百億にできなかったのか、また、しようとしなかったのか、あなたたちはこの程度でいいと初めから原案が三百億になっておったのか、もっとたくさん要求したのだけれども一大蔵省から、そこまでやらぬでもいいだろう、有効需要が拡大され過ぎるとか、設備投資が拡大され過ぎて経済に何らかの影響を及ぼしそうだとかいう警告があったためにワクが広げられなかったのか、その辺のいきさつがどうなっておるかをお尋ねいたします。
  17. 坂村吉正

    坂村政府委員 御説の通り農業協同組合系統の内部には、最近非常に預金がふえて参っておりまして、従来、三、四年前までは、総額にいたしまして四、五百億程度の増でありましたが、最近では年間一千億以上の増になっておる状況であります。そういう状況でありますので、それに対して農業協同組合貸し出しが非常に鈍っておるのであります。これを何とかほんとうに農業に還元ができるようなことにしなければいけないというととは、一つの大きな問題であろうと思うのであります。そういう意味におきまして、一面近代化資金考えたわけでありますが、先ほど申しましたように、さてそれでは当初の年に一応どの程度の総ワクをきめるか、こういう問題につきましては、もちろん、五百億、一千億と必要な措置を講じまして、幾らでも必要量に応じてワクは大きい方がいいと思うのでありますが、いろいろ金利の問題もございましょうし、それから実際の運用の問題もございましょうし、とりあえず、当初の年でありますから、きわめて安全性を見まして三百億というものを一応ワクといたしまして設定をいたしたようなわけであります。今後の問題といたしましては、十分との総ワクの増ワク自体についても最善の努力をいたしていきたいというふうに考えております。
  18. 武藤山治

    武藤委員 安全性を見て一応三百億というワクを設定したと申されましたが、実際農民の希望としてはこの程度需要がありそうだという絶対のワクというものはあるわけでしょう。あなた方が全国の農業を見渡してこの程度の七分五厘の資金というものを作ってやるには、農民の現在要望しておる要求にマッチする額というものがあるはずですね。しかしそれは予算の関係あるいは大蔵省との折衝やいろいろな関係で不可能だったというなら話は別ですが、一体どの程度ワクがあれば農民の望みがある程度かなえられるのか、そのワク一体どのくらいでありますか。
  19. 坂村吉正

    坂村政府委員 非常にむずかしい御質問でございますが、たとえば金利の問題等とも関連いたしまして、五分程度であったならばどのくらいの需要があるだろうか、七分五厘であったらどのくらいの需要があるだろうか、これは、農業金融におきましては、そういう金利と関連をいたしまして資金需要というものがだいぶ違うと思います。これは例でございますけれども、私も十年ほど前に埼玉県におりまして、新しく興農資金制度を作ったのでありますが、この場合におきましても、県がその利子補給をやって、そうして低利のもので乳牛の導入、土地改良というようなものを別に独立してやっていこうということを考えたわけであります。その場合におきましても、どの程度金利でどの程度需要があるかということは非常にむずかしい問題であります。従いまして、今度の近代化資金におきましても、私どもいろいろ検討いたしましたところでは、従来の実績等ワク、それから農林漁業金融公庫に対する七分五厘の資金需要、そういうものを基礎にいたしまして、そういう点を中心にして、当初の年でありますから、それらのある程度の伸びを見まして約三百億ということで押えまして、今年一年の実行によって、これに対する需要が非常に具体的に反映してくるであろうというふうに考えておるわけであります。それに応じて今後のワクの問題等は検討して参りたいというふうに考えております。
  20. 武藤山治

    武藤委員 そこで、お尋ねしますが、今全国に単協は幾つありますか。
  21. 坂村吉正

    坂村政府委員 信用事業を行ないますいわゆる総合農協は一万二千であります。
  22. 武藤山治

    武藤委員 その一万二千の単協を三百億円をもって平均したら、一単協当たり幾らの割当になりますか。
  23. 坂村吉正

    坂村政府委員 機械的に平均いたしますと、一単協二百五十万円か三百万円ぐらいのものになると思います。
  24. 武藤山治

    武藤委員 現在、政府は、農業構造を改善すると言って、果樹とか畜産とかを大いに奨励して、非常に膨大な資金を必要とする企業化の方向を指導しておるわけです。たとえば、豚十頭を飼うにしても、あるいは乳牛を十頭飼うにしても、二百万、三百万の資金が必要なんです。一カ所でそういう状況需要というものが非常に多いわけです。ところが、金利が高くて、不振農協で借りることができないという農民が非常に多い。そういう実態考えたら、あなたが今簡単に即答できるほど、全国に農協は一万二千あります、一単協当たり平均すると二百五十万円にしかなりません、こういう明快な答弁が出てくるのですから、当然、このワクというものも、当初だからまあこの程度であるなどという控え目な三百億円のワクなどというのは、全く私は子供にあめ玉にも似合わない微々たる予算だと思うのですよ。そういう点十分考慮しなければならぬという点を、私は今回の案に対して非常に不満を持つのです。  さらに、全国の不振農協はどのくらいあるかということもすぐわかると思いますが、私どもが、よく、養鶏をやりたい、養豚をやりたい、あるいは果樹をやりたいといって単協に申し込んでも、今の制度では単協は理事全体の保証がなければ二百万、百万の金は貸さぬ。理事の中で無理解のやつがいると、そんな金を出してあとで取れなかったらおれが判こ代取られるから大へんなことになるといって貸し出しができない。一方政府は所得倍増だ所得倍増だといって農民にどんどん投資をやれとあおっておる。実際、農民は、百万円を共同で借りるにしても、もう一つの壁がある。この間僕は信連に飛んでいって聞いてみると、信連で直接貸すことができないから、何とかして理事の判こをもらわなければならぬ、信連が骨を折りましょうといって骨を折っても、入間は自由意思ですから、おれは判を押すのはいやだと言って、理事全員の判がもらえない。まだその程度農協はいい。全然預金も貸付もできないような農協というのは全面にたくさんある。私の住んでおる市郡だけでも十三の単協があって、全く貸し出しのできない農協が五つあります。こういう状況では、そういう不振農協のところに住んでおる組合員というのは、こういう制度ができても全く恩恵が受けられない。ただ、この法律案の中に、不振農協がある場合には信連が直接貸し出しすることができるということが書いてあるけれども、比較的大きい共同施設でなければ貸し出しができないように政令でおそらくきまりそうであります。そうなると、不振農協に入っておる組合員というのは、全くこういう救済の道がなくなってくる。全体の額が二百五十万、おまけに今のような不振農協ということになりますと、制度はできたけれども全く恩恵を受けられないという農民の数は非常に多いのであります。そういう点をどの程度に事実を把握しておるか。全国の不振農協がどのくらいあって、それに所属する組合員がどのくらいか。そういう人たちは、この制度ができても、おそらくどんどん借り入れ申し込みをするようなことにはいかないのではないか。大きい農協の組合員がどんどん借りちゃって、非常にへんぱな貸し出し状況が出てくる危険がある。そういう点の危険は全くないと考えておるか。あるとしたら、全く借りられない人とどのような比例になってくるか。そういうような点をもう少し具体的に資料を見せてもらいたい。
  25. 坂村吉正

    坂村政府委員 まず、ワクの問題でございますが、この制度によりますのは当初の年といたしまして三百億円でございますが、このほかに、農業金融といたしましては、先ほど申しました農林漁業金融公庫のいわゆる低利の国の融資のものがあるわけであります。これは三十六年度は六百億という額に達し、昨年に比べまして百億近くの増加になっておるわけでございまして、それを合わせますと、一応政府てこ入れをしております農業金融は九百億、一千億に近い。その他制度金融もございますから、そういうものも入れまして一千億というふうに大体見ていいのではないかと思うのでございます。そこで、実際、先ほど申し上げましたように、一万二千の農協でこれを機械的に割ってみると、三百億では一農協当たり非常に小さなものになりますけれども、当初の年でもございますし、そういう農林漁業金融公庫の金等もございまして、とりあえずこれを運用をしていこうということを考えておるわけでございますが、お説のように、不振農協は現在非常に多いわけでございます。ここ数年来、農協の整備特別法というような法律も作りまして、いろいろ不振農協の整備を行なってきたのでございますが、それでも、現在のところ、一万二千のうち、率直に申し上げまして三分の一は大体不振農協と言っていいんじゃないかという感じがいたします。そういうような状況でございますので、不振農協でほんとうに金融の仕事ができないというようなところにつきましては、先ほどおっしゃるように、信連から直接貸し付ける、こういう制度を設けておるわけでございますが、これにつきましては、現存考えておりますのは、信連が直貸しをいたします場合には、いわゆる共同利用施設のような大きい施設だけではありませんで、農協から借りられるようなものについて信連から直接貸し出す、こういう制度を作っておるのでございますから、個人施設等につきましても当然信連が直貸しの道を開くという考え方でおりますわけでございます。  そこで、実際資金ワクがそう大きいものでございませんから、非常にアンバランスができるじゃないかという御心配はごもっともでございまして、これは、運用といたしましては、非常に機械的にそういうようなことをやることがいいのかどうか問題であろうと思うのでありまして、県等におきまして、あるいは近代化のためのいろいろな計画がございます。それから、家畜なら家畜につきましても重点的ないろいろな計画がございますので、そういう県等におきます計画等を中心にいたしまして重点的に一つ運営をしていって、そうして、必要なところにはできるだけ低利融資がいきますように、こういう工合に運用して参りたいというように考えておりますわけでございます。
  26. 武藤山治

    武藤委員 その問題は、よっぽど政府が本腰を入れて、信連なりあるいは各下部団体に強い通達を出して、そういう不振農協のもとにおける組合員の保護ということを上手に指導しないと、せっかくこれを作っても恩恵を受けられないという農民がたくさん生まれてくるので、このことは一つ忘れないで今後の指導面で生かしてもらいたい、こういう点を強く要望しておくわけでございます。  次に、貸付対象になる施設等は政令で定める、こういうことになっておりますが、その政令はもうすでにできておるのかどうか。私は大蔵委員でありますからそういうものがまだ手に入っておりませんけれども、農林委員には配付してあるかもわかりませんが、政令はすでに原案ができたかどうか。その点一つお答えいただきたい。
  27. 坂村吉正

    坂村政府委員 政令に規定いたします事項につきましては、すでに政府の内部においては案を整備いたしております。農林水産委員会の方の審議の際には当然お配りするという手はずにいたしております。
  28. 武藤山治

    武藤委員 まだ政令を見ておりませんから、事実であるかどうかわかりませんが、養鶏というものに対する施設あるいは鶏購入資金、そういうものがこの政令の対象からはずされておる、第二に、飼料の購入資金もはずされておる、こういうことを書類で見たことがあるのでありますが、今養鶏業というものが非常に盛んになって参って、年々魚の漁獲量が非常に減ってきておる日本の食生活上からも、蛋白源として養鶏というものに非常に力を入れてわけです。どこの地域に行っても、養鶏の一万羽飼い、五万羽飼いという風潮が非常に顕著になって参りました。そういう場合に、共同で鶏小屋を作るにしても、二百万、三百万という膨大な資金が要るわけで、鶏を一千羽、二千羽年々入れかえるにしても、相当の金額が必要なわけです。ところが、政府考えでは、鶏の場合は一年々々で更新するから施設資金に該当しないというような解釈をして、養鶏資金というものをこの政令の中からはずしておるようでありますが、これはまことにけしからぬと思うわけです。しかし、それがもし間違いであったとすれば幸いでありますが、ほんとうに養鶏資金さらに飼料購入資金というものをはずしておるとすれば、そのはずしておる合理的な理由ですね、どういう理由でこういうものはこの資金ワクからはずしたのか、農協から短期金融で一割二分とか一割五分の高金利でまかなう以外に手がないのだ、そういうおつもりでこれを放置しておくのか、この二つをはずした点について一つ具体的にお尋ねいたしたいと思います。
  29. 坂村吉正

    坂村政府委員 一応、ただいま準備をいたしております政令におきましては、鶏のひなを買う代金につきましては、これはきわめて短期の資金でもございますし、運転資金の性格のものでございますから、この制度からはずそうということを考えているわけでございます。先ほどから申し上げますように、資本装備高度化というようなことをねらいにいたしまして、主として施設資金中心にしてこの近代化資金は創設いたしましたわけでございまして、短期の資金農協系統資金をフルに活用するということを進めていき、一面、農協も全体の金利の引き下げにも今後努力をしていく、こういう方向考えていくべきではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。たとえばブロイラーのための養鶏、非常に大きな養鶏施設ができておるのでございますが、これに要する設備の問題とか、そういった設備を作るというようなものにつきましては当然近代化資金考えておるわけでございますが、えさとか、ひなを買うというようなものは、どちらかと言えばきわめて短期の資金であるということで、運転資金というような意味で、はずして考えております。
  30. 武藤山治

    武藤委員 そうすると、施設の場合には該当するということをはっきり承ってよろしいですか。というのは、有畜農家創設特別措置法を見ても、あるいは農林漁業金融公庫の貸付対象を見ても、今まで畜産とは何かという定義の中に養鶏は入っておらないのです。今度の政令の中でも、おそらく、畜産とは、牛、馬、綿羊、ヤギ、豚、ここまでを家畜と呼んで、鶏は家禽だから畜産の部類に入らぬという解釈がもし続いておるとすれば、従来の法律を相当改正しなければならない点が幾つも見受けられるのでありますが、そういう点で、今回は鶏の場合でも施設資金対象にする、ひなを買う場合以外は一切対象になると判断して間違いありませんか。
  31. 坂村吉正

    坂村政府委員 その通りでございます。今までもたとえば公庫資金等におきまして人工孵卵施設をどうするかというような問題もございまして、そういうような畜産に関する養鶏につきましては、これは施設については全面的に一つ制度でカバーしていこう、こういうつもりで考えておるわけでございます。
  32. 武藤山治

    武藤委員 その点は非常に不満であります。鶏とか飼料とかいうものは短期だ、確かにこれは短期かもしれないけれども、ほんとうに農家が所得をふやし、生産を高め、さらに近代化し、資本装備を充実するという建前からいけば、やはり、五年、十年という長期に相当の金額が借りられなければ養鶏家も成功しないのです。えさだって、年じゅう火の車でもって、短期金融の金を借りてぐるぐる回しておる。ある程度の余裕がなければ、養豚をやったって養鶏をやったってうまくいかないのです。そういう点、農業実態というものを忘れたような政令事項というものに農民は満足できないのです。私は非常に不満でありますが、この点は、今後の運用で十分検討し、法律は年々直せるのですから、政府法律を作ったりこわしたりする力を持っておるわけでありますから、今回の質問を通じて指摘した点は、明年また十分追及しますから、よく検討されて、農民に対してプラスになり、農民の生活が高まるような点を考えてもらいたい、この点を強く要望しておくわけであります。  最後に、結論的に申し上げますが、今回の資金制度はわずか三十億円しか基金を出さない。このことも、私は、日本の予算全体から見た場合に、全く農民をばかにした基金であると思う。たとえば、この前の非補助小団地等土地改良助成基金においてすら六十億円の金融制度を設けておる。いわば、日本の農村金融の大きな転換をはかろうとする、日本の農村にとっては一番大きな問題である今回の金融制度がわずか三十億円の基金ということは、二兆円の国の予算の中から見た場合にも、スズメの涙にも匹敵しない非常に微々たるものである。特に百億や二百億の基金を設定することなどはそうむずかしいことはないのです。減税も必要でありましょう、あるいは輸出入銀行や財政投融資の金に回すことも必要でありましょうが、数の多い個々ばらばらの個別経営で非常に生産性の低い日本農業というものを立て直すためには、二兆億円の予算の中から二百億や五百億の基金を作っても、基金をくれてしまうのじゃないのだから、私は、予算の公平化、効率化、あるいは人民に対する公、平なる恩恵という点から考えた場合に、三十億円の基金ということでは、全く、農民ががっかりするどころじゃなくて、噴飯ものであります。こういう点、一体、三十億程度の基金で今後続けていくのか、来年はさらにこれに倍の増額をして六十億にし、あるいは二百億にし、できるだけふやして日本の農林金融というものの水準がぐっとよくなるような抜本的な要求をする決意で本年の運営をしていくのか、その点のあなたたちの決意いかんによって日本農民が救われるか救われないかという重大問題であります。特に、自民党が選挙のときに農村の票を大量に取るという立場でいくならば、こんなちゃちなことでは、自民党の票は減っていって、社会党の方にふえるような農政だと言わなければならぬわけです。そういう点で、今後、執行者である皆さん、さらに政務次官、大臣等は、十分日本農業の特質を考えられて、今後の国際経済に足並みをそろえて進んでいける農業にするという前提に立って、もっともっと抜本的な基金の拡大というものをはかって農民に恩恵を与えなければならぬ、かように思うわけでありますが、最後に農林政務次官大蔵政務次官から、大臣にかわって、自民党を代表し政府を代表しての答弁を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  33. 八田貞義

    ○八田政府委員 武藤委員の御質問はまことに同感でございまして、先ほど、融資ワクが三百億円では非常に少ないではないか、もう少しワクをふやして広く均霑するように、系統資金の活用面から考えてももう少しふやすべきだという御見解に対しましては、同感でございます。もちろん、こういった一般会計から繰り入れました三十億円につきましても、融資ワクが増大すればもちろんこれをふやしていかなければなりません。その方向に向かいまして努力をいたして参ることを申し上げておきます。
  34. 大久保武雄

    ○大久保政府委員 近代化資金の基金を増額して参りますことにつきましては、私も十分関心を持っておる次第でありまして、三十六年度におきましては、これは一年まるまるではございませんので、実際は三十億も相当効率的な運用ができるものと思っておりますが、しかし、将来にわたりましては、お説のように、もっともっと農民の福利のためにこの基金は強化していきたい、かように考えておる次第でございまして、この際答弁を申し上げる次第であります。
  35. 武藤山治

    武藤委員 最後に政務次官に花を持たして答弁を受けて終わろうと思ったけれども、三十六年度においては三十億のこの基金で十分だと言わぬばかりの大久保政務次官の答弁でありますが、私は全く不満です。本来ならば、この案を撤回して、もっと基金をふやして、日本農業を本年からさらに未来に光と希望の持てるようなものにしなければいかぬと思う。これで満足しておるような大蔵政努次官では、私は、自民党を代表して政務次官になったあなたとしてはまことにお恥ずかしい答弁じゃないかと思う。あなた自身も不満であるけれども、実はこういうわけで、政調会でこうだ、大蔵大臣に押えられてやむを得ないというならば、まだ了解もするのでありますが、そんな考え方では反農民的な答弁でありますから、よりもっとしっかりしてもらいたい。百億くらいの基金を作るのは当然であったけれども、われわれの力足らずしてついにこの程度で申しわけなかったというのがあなたの立場だと思う。まことにあなたの答弁はけしからぬ。私は承知できませんけれども、またあとで時間があるときにあらためて追及したいと思います。
  36. 坂田英一

    坂田委員長 次は、有馬輝武君。
  37. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私は坂村さんにお伺いしたいと思いますが、ただいま資金の総ワクの問題並びに金利の問題につきましては武藤君から御質問がありましたので、その前提となる農業近代化という問題に限って私はお伺いをいたしたいと存じます。  この点で、お配りをいただいております本法案の提案理由説明書の中に、「農業者等の資本装備高度化をはかり、農業経営近代化を推進するため」とありまして、これが本法案の眼目だろうと思いますけれども、その資本装備がどうなるかというようなことが目的でもなく、また、経営近代化それ自体が目的でもなく、やはり、自立経営をなし得る方向へ持っていく一つのメトーデとして取り上げられた、私はこのように理解いたします。それと同時に、これは、でき得るならばコマーシャル・ベースで外国の農産物とも太刀打ちできる、今与党の方で進めていらっしゃる貿易自由化に対応しても一応太刀打ちできる程度まで持っていくことがこの法案の一つの目的ではないか、また、大きくは農業基本法がその方向をねらっておった、私はこう思うのでありますけれども、目標として、近代化された農家の姿というものをどのように想定して出発されておるのか、この出発点についてお伺いをいたしたいと思うわけであります。
  38. 坂村吉正

    坂村政府委員 農業近代化といいましても、具体的にそれではどういう姿になるのかという問題は、今後の日本経済の全体の伸び、それから、それに応じて日本農業がどういう工合に伸びていくかという問題とも関連をいたしますし、あるいは貿易自由化というような問題とも関連する問題であろうと思うのでございます。そこで、これらの農業近代化をそういう情勢に応じて進めていこう、そうして農業従事者と他産業の従事者との生活水準のバランスをとっていこうというようなところが農業近代化の最終的な一つのねらいでございます。御承知のように、最近の経済の高度成長に伴いまして、最近数年間におきます他産業農業との格差、生産性におきましても所得におきましても格差が非常に開いておるのでございまして、これを縮めて、そうして均衡をとっていくようにしようというのが農業近代化目標でございまして、それが農業基本法でいろいろ御審議をいただいておるところでございます。ですから、農業基本法の成立によりまして、今後具体的な施策はみなそれを基礎にして行なわれて参る、こういうことになるのではないかというふうに考えております。
  39. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 非常に抽象的な質問でありますので、坂村さんもお困りだろうと思いますが、しかし、この抽象的な問題が今度の農業基本法の審議の根底の問題として一番大事だろうと思うのです。私がお伺いしたいのは、これは与党の方々も真剣に考えていらっしゃいますし、私たちも不勉強ながら一生懸命勉強いたしたいと考えておりますが、先ほど申し上げましたように、農家の自立経営を達成し得る方向へ持っていく、あるいは今坂村さんが御指摘になりました産業間の格差をどうしてなくしていくかという問題について、今の坂村さんからの御答弁では、なかなか、ああそうですかという工合には参らないわけなんです。といいますのは、いま少し具体的にお伺いいたしますと、今度の農業基本法提案の際に、与党の方々の御意見、また政府の御意見を伺いますと、たとえば経営面積にいたしましても、二・五ヘクタール程度のものに持っていくとおっしゃるのですけれども、はたしてその二・五ヘクタールで何を植栽すれば経営が成り立ち得るのかという点が不明なんです。ただ単に経営面積をそれだけに持っていって成り立ち得るとは私たちは簡単に考えられないわけです。しかも、最近の新聞その他の報ずるところを見ますと、一時離農する傾向が非常に強まっておりまして、これは経済成長の過程で一つの現象として出てきておりましたけれども、それが最近になっては非常に鈍化してきておる、これは御承知通りであります。これは農民心理であろうと思います。たとい離農いたしましても、非常に不安定な職業に従事をして、なおそれにすがりついておるのは、結局は、家に帰れば田の五反もあるのだ、畑の三反もあるのだというような一つ農民心理といいますか、それが大きく作用しておるのであって、この土地を手放すという点については、池田さんがおっしゃるようになかなか簡単には参らない、私は限度に来ておるという工合に見ております。そうなりますと、経営規模をふやすためにはどうすべきかというような点についての具体案も私たちは詳しくお伺いしたいわけです。そうして、たとえば平均耕作反別が二・五ヘクタールになった場合に、何を栽培すれば、今おっしゃったように他産業と一応バランスのとれた経営となり得るのか、選択的拡大ということをうたっていらっしゃるけれども、何を今後取り上げていけばいいのか。ただ抽象的に、果樹、園芸の方向へ、あるいは畜産の方向へ努力すべきだというような御説明では、農業者を一つ方向政府の指導によって持っていくことは非常に困難じゃなかろうかと私は思うわけであります。そういう点で、これは、たとえば寒地ビートがある程度いいから暖地ビートもやってみたらどうかというような、そういう思いつきであってはならぬ。そういう意味で、将来のいわゆる農業方向として、現在までの米麦中心主義をどのように改めていこうとしておられるのか、この基本方向というものを、経営が成り立ち得る方向へ持っていくというそのワクの中で、一つここではっきり示していただきたいと思うわけであります。自信をもって農業者がついていけるような方向というものをこの際示していただきたい。
  40. 坂村吉正

    坂村政府委員 お説の通りでございまして、今後の近代化なりという方向がどういう工合に向かっていくかという問題は、これは十分政府としてもはっきりした方向を示さなければならぬという問題であろうと思うのでございます。その方向がいわゆる農業基本法で示されておる。農業基本法が制定されますことによって、農業基本法の各条項に応じて具体的な施策がいろいろその方向援助のために講じられる、こういうことになるのではないかというふうに考えておるのでございます。従いまして、たとえば農家はただ二町五反にするのだというようなことで農業基本法におきましても考えているわけではございませんで、必然的に、経済の高度成長に伴いまして、農業経営というものはこういう方向にいかざるを得ないのじゃないか、それに対して、経営が拡大し、それから所得を向上するような方向政府がいろいろの各般の援助をしていく、こういう考え方が基本法の根本的な考え方でございますので、そういう線で今後とも基本法の精神に沿いましていろいろ各般の施策を講ずるようにやっていきたいというふうに考えております。
  41. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 概括としては今局長のおっしゃった通りだろうと思いますが、この近代化資金助成法案を初めといたしまして、農業基本法の足となる各法案というものがあって、初めて基本法が生きてくるのでありまして、私は、農業基本法というものは、ただ、一つのつぼにすぎないのであって、あの形では中身は何もないと思うのですよ。今私が御質問申し上げました、将来農業の重点を何に置くのかというような点についても、ただその情勢に応じて選択的拡大をやっていくんだということしかうたっていないのでしょう。ほかに何をやりなさいという方向は示してございますか。今基本法とおっしゃいましたけれども……。
  42. 坂村吉正

    坂村政府委員 たとえば、先ほどからお話しのように、経営規模が拡大しました場合にその中でどういう農業が行なわれるかという問題になるわけでございますが、それが、いわゆる選択的拡大ということで、今後情勢々々に応じて目的に沿うような作物なり農業経営が行なわれてくるということに相なろうと思うのでございます。そこで、現在の段階では、もちろん全国おしなべてというわけではございませんけれども、たとえば畜産であるとか酪農であるとか果樹であるとかというものが非常に脚光を浴びて、今後の所得増大のための一つ方向として示されておるのでございます。そういう工合に、私は、今の問題としてはそういう問題が一つの具体的な方向として取り上げられてきているのじゃないかというように考えるのでございますが、もちろん、これは、地域々々によってもいろいろ違いましょうし、全体としてこれをやらなければいかぬのだというようなものは、やはり情勢々々に応じて地域によって考えていかなければならぬ問題であるというふうに考えておるわけでございます。
  43. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私はしょっちゅう委員会の質疑を通じて申し上げるのですけれども、委員会の国政審査というものは、言葉のやり取りであってはいかぬと思うのです。やはり、農業基本法というような農業の憲法を制定されるからには、農林省の方々も、これはほんとうに歴史的な一つ方向の決定づけでありますから、それにふさわしい研究と準備というものがなされておってしかるべきだと思いますし、十分なされておると思います。私たちも、先ほど申し上げましたように、この問題と真剣に四つに取り組んで、ただ与野党のやり取りというような形でこの問題を取り上げたくないわけです。そういった意味でお伺いをしておるのでありますが、たとえば、今後の方向として、今局長からお話のありました畜産と果樹、これも一つ方向でありましょう。ただ、それが一つ方向として示されることだけでは、現在までの農政から一歩も前進しないと思うのです。  それでは、安田さんにお伺いいたしますが、今畜産ということが取り上げられました。しかし、たとえば肉類でコマーシャル・ベースで太刀打ちできるのは黒豚くらいのものじゃないかと思うのでありますが、たとえば黒豚等について、五年後の内需をどの程度に見、そしてそのためにはどの程度資金を必要とするのか。五年でも十年でもけっこうでございますが、統計マンの安田さんのことでありますからびちっとそうした計画を組んでおられることと思いますので、この際お聞かせを願いたいと思います。
  44. 安田善一郎

    ○安田政府委員 農業近代化とその方向、また、十年後ないし五年後の青写真のようなものについて農林省は勉強しているかというようなことの御質問でございますが、それに関連して順序よく目下の研究などをお答えするといいと思いますけれども、黒豚なら黒豚の五年後、十年後の需要ということでお聞きになりましたので、ちょっとどぎまぎしております。しかし、日本農業で畜産をふやす基盤は農業経営規模の拡大であり、お話のように、農業振興のために耕地以外の土地も利用していく、畜産部門としても、全体の量として伸びていくように、個々の家畜飼育についても、もっと合理的な多数飼育をねらい、家畜の種類についても、種類を選びまして、なるべく経済性の高い乳牛とか、若齢あるいは短期の肥育牛であるとか、特に養豚、養鶏、——養鶏は採卵養鶏、肉養鶏とありますが、そういうものに重点を置いて経営高度化をはかりますと同時に、家族労働の消化を考えまして、労働報酬、従って生活の向上をはかる、そういう目標でいくのでありますが、家畜には適地適畜のものもございますので、例を黒豚で言いますと、適当な地域がございまして、現在日本の養豚の約二割でありますが、これを経済的な面から見ますると、黒豚は白豚より経済性あるいは肥育能力が低いのであります。世界的に見ましても、どちらかというとこれは衰えておるものでございます。なお日本にいない品種の肥育能力の高いものも導入する要があると思いますが、白豚、黒豚を通じて、さらに今後の品種改良を通じましても、おそらく、今の国民所得の状況あるいは国民所得の成長率が年七・八%、人口増加が年〇・九%という所得倍増計画に従いました所得弾性値などを参考にいたしますと、豚肉の消費はおそらく現在の四倍くらいになるように思うのでありまして、各種の肉類の間でも、豚の比重がうんと増しまして、五割をこえるのじゃないかと考えておるのであります。それに応じまして、適地適畜、また、同じ家畜の種類の中でも適当なものを増していくことになると思いますが、飼料問題等を通じまして合理化をはかる要もありますから、イモですとか、大麦、はだか麦の地帯ですとか、ビートの地帯ですとか、そういう部分の飼料化をうんとはかること、濃厚飼料の効率化をはかること、低廉化をはかること、それらを通じまして考えていくべきだと思うのであります。私どもは、おのずから、日本の五年・十年先の農家の姿といたしまして、黒豚がそのうちどれだけ占めるかは別といたしまして、畜産がどのくらい普及率を持つかということが問題でありますが、一応、養豚といたしましては二五%くらいの農家の普及率を十年後に持ちますれば、その中に黒豚が、現状ならば、それが伸びていけば二割。私は、黒豚は減った方がいい、もう少し低い割合でいいのじゃないかと思っておりますが、その経営の多数頭飼育等を加えました結果といたしましては、農業基本法審議の際に試案とか今研究中のことを申し上げておりますように、家族自立経営で畜産をやる場合は二五%くらいのところで主畜の経営をやってもらったらどうだろう。これは畜産を加えた能率的な合理的な経営になるだろうと思うからであります。その所得は百万円くらいをねらうのがいいのじゃないか、こんなふうに思っております。
  45. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今の問題に関連いたしまして、私の狭い見聞ですが、デンマークの農業なんかを見て参りまして、現金収入という面から、単なる畜産ではなくて畜産と結びついた加工工業というものが並行して取り上げられなければ、なかなか今おっしゃった百万円程度の収入をあげるところまでいかないのじゃないかと考えます。そこで、加工工業を取り上げました場合に、デンマークなんかでは、イギリスなりフランスなりドイツなりの一つの市場がある。私が先ほど内需の面についての見通しをお尋ねいたしましたのもその点なんですけれども、いわゆる市場の面で、今おっしゃったように内需の面だけ考えていけば足りるのか、市場を他に求めるとすればどこら辺が考えられるのか、これもまた貿易自由化との関連の中で一つ構想を示していただきたいと思うわけであります。
  46. 安田善一郎

    ○安田政府委員 日本の養豚とその国内市場または国際市場との関係ということになりますが、養豚経営の成長と安定とをはかりますのには、どうしても価格の安定が必要だと思うのであります。やはり、価格の状況が国内市場、国際市場との関係で相当大きな要素を占めるように思います。もう一つは、国際関係を検討しようとする場合の関係国におきまする肉消費ですとか、特にその国の肉の生産というものが関係を持つわけでございますが、台湾、沖繩、中共、韓国あるいはソ連、遠くはまた濠州、ニュージーランド、アメリカ、カナダ等を見まして、経済距離が比較的近いところを申し上げておるわけですが、まだ日本の肉は必ずしも安過ぎるほどではありません。たとえは、最近、輸入しようといたしましても、運賃をかけて、日本の港のCIFでありますと、外国の肉は下級肉以外はなかなか入ってこないということでございますが、その国同士の卸売価格をとりますと、日本は割高であります。国内市場は非常に需要が旺盛で、加工品は年四割の消費増が最近見られております。精肉は平均して二割の消費増がございます。動物でありますから、よほど能率をあげて品種改良をやるといたしましても、生産増加の限度がないわけでもありませんので、そうしてみますると、肉類は、私どもの技術能力、今後の補助あるいは各種の増産施策を講じましても、非常にふえまたふやすべき国内需要をまかなうと、ちょうどいいくらいになるのじゃないか、それが十年以内の姿ではないだろうか、現在は輸入を要するぐらい需要がある状態ではなかろうかと思うのです。最近の値段について見ますると、これは今国会でも豚肉価格安定法案を出して御審議をお願いいたしてございますが、過去六年ばかりの平均価格よりは相当高い水準にありまして、他の肉とのバランスも必ずしもよくございません。  以上のような状況で、いろいろ問題もありまして、畜産には、生産から加工、販売と、後進性があると思いますので、生産農家のためにも、流通過程の利益を取れるように流通改善をする、また、お話がありましたように、加工工業の利益も合理化して養豚家の方に行くように、流通・加工の合理化をはかって、生産の方にも稗益することが必要だと思うのです。近代化資金も、今回、農業者自身も、それから任意組合におきましても、農協出資の会社におきましても、それらの流通・処理・加工業に長期低利資金融資する制度を中に入れておりますが、これもその一つ施策だと御了解を願いたいと思います。
  47. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 その加工工業の面まで含めて考えますと、先ほど武藤君からも指摘がありましたように、やはり資金ワクその他利子の問題が出てくるわけでありますが、これは先ほど武藤君から指摘のあったところでありますから、私からは繰り返しません。  それで、今のことに関連して坂村さんにお伺いしたいと思いますが、加工工業の面で、たとえば澱粉の問題がございます。この点につきましては、私は、四、五年前から、澱粉の加工工業について政府が積極的なしかも抜本的な施策を講じなければとんでもないことになるのではないかということを指摘いたしますと同時に、先ほどお尋ねいたしました、今後の作物の選択の問題として、やはり今の澱粉の問題が浮かび上がって参ります。それで、最初にお伺いいたしたいと思いますが、今、澱粉の滞貨は、カンショ澱粉、バレイショ澱粉がどのくらいになっておりますか。
  48. 坂村吉正

    坂村政府委員 直接の所管でもございませんので、はなはだ失礼でございますが、資料がございませんので、いずれ調査いたしましてお答え申し上げます。
  49. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 大体、私の推定では、政府の買い入れ分の二年分以上越しておるのではないかと見ております。これは大体間違いのないところであろうと思います。それに対して精製ブドウ糖の工場等に対する積極的な施策が講じられてしかるべきだと思いますが、今食糧庁からお見えになっておりませんから、この問題についてはこれ以上詳しくお尋ねいたしませんけれども、澱粉の例一つ取り上げてみましても、やはり、農業それ自体として相当なてこ入れをしましても、先ほど申し上げましたように、経営面積その他でおのずから限界があるわけでありますから、やはり、加工工業その他と結びつけて考えていかない限り、農業近代化させる道はない。そういう面で、ただ資金を三百億準備したという形の提案ではなくて、こういう方向にこれだけの資金をという形の提案であってほしい。先ほども私が青写真ということを申し上げたのは、そういう意味からなんです。そういう構想を示していただかないと、これは私たちが納得する納得しないの問題ではなくて、基本法はできたけれども、農業者は、どうやればいいのだ、この矛盾にただ悩むだけが落ちだろうと思うのです。  たとえば、具体的な問題として一つお伺いしたいと思いますが、農林関係の補助金が二百四、五十あったと思います。これを今度の近代化資金と関連させて当然考慮されたと思うのでありますが、現在たとえば種苗対策費その他で一戸当たり五円しかいかないような補助金もあるわけです。そういったものについて再検討しておられるかどうか、再検討しておられるとするならば、今後農林関係の補助金をどういう形に整理統合していこうとしておられるか、この基本構想をお聞かせ願いたいと思います。
  50. 坂村吉正

    坂村政府委員 御質問がいろいろ各般にわたりますので、あるいは適切なお答えであるかどうかはわかりませんが、第一番目に加工の問題でございます。これは、おっしゃる通り農業といいますのは、農産物を作るだけが能ではなく、これが商品として加工され、販売され、消費されるというところにつながるわけであります。農業の所得向上ということを考えました場合には、加工の問題に相当重点を置いて考えていかなければならぬというふうにお説の通り考えておるわけでございます。そこで、いろいろ関係のところにおきましては、澱粉の問題にしましても、畜産加工の問題にいたしましても、その他農産加工にいたしましても、いろいろそれぞれの方向なり施策なりを検討しておるわけでございますが、また、この金融の面におきましても、御承知かと思いますが、農林漁業金融公庫におきましても、精製ブドウ糖、結晶ブドウ糖というようなものについては農林漁業金融公庫融資をするということも考えております。また、三十六年度からは、酪農に対しましても農林漁業金融公庫から融資をしていこう、こういうようなことでだんだんと進めて参っておるわけでございます。また、この近代化資金制度におきましても、いわゆる農業協同組合が出資者の中心となっている、あるいは過半数を持っておられるそういうような加工を行なう会社に対しましては、やはり協同組合と同じように融資対象にして、そういう方向を促進していこうというようなつもりで考えておるわけでございます。  また、補助金の問題でございますが、これは私も詳細は存じませんが、たとえば、一例を申し上げますと、農業改良資金というようなものがございまして、これは大体従来の農業に対するいろいろな補助金を資金融資に切りかえたわけでございます。その中には技術導入資金というものと施設の資金と両方あるのでございますが、技術導入資金は、全額国が融資をいたしまして、無利子で貸しておるというようなものもあって、新しい技術を入れるための資金でございますが、こういうようなものを、昔は補助金でやっておったのを融資制度に切りかえてあるわけでございます。それから、施設につきましても、たとえば保温折衷苗しろであるとか、昔はそういうようなことが行なわれておったわけであります。たとえば、畜舎、厩舎、堆肥舎等の補助金というようなものもございました。そういうようなものも、方向としてはやはり融資でいけるのじゃないかということで、農業改良資金の施設資金として融資対象に入っておったのでございますが、こういうようなものに大体いろいろ分かれておりますので、この近代化資金制度で吸収できますものは、これに一緒にして総合的に実施していこう、こういうようなことで、農業改良資金の中の施設資金については近代化資金に切りかえてやっていこうというようなことを考えているわけでございます。全体といたしまして三百億の融資ワクをことしは作りましたが、このために今までの補助金を整理したとか減らしたというようなものは、具体的に今このために幾ら減らしたというようなものではございませんが、方向としては、融資に乗っかるものはできるだけ乗っけていくという方向一つ考えたいというつもりで来ておるわけでございます。
  51. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 何も補助金の問題が多岐にわたることがいい悪いという問題ではございませんで、やはり効率的な運用ということに重点を置いて御検討を加えられませんと、私が見る限りでは、二、三年で打ち切られるものがほとんど七割、八割に上る、その額についても、末端に参ったときにはスズメの涙程度しか行かない、こういった形で、ほんとうの意味での補助金というものの役割をみずからその運用の面において減殺しておる、これが現状じゃないかと思うのです。やはり、そういう点も、こういった近代化資金を考慮されるとき等は再検討する用意があってしかるべきで、私は、そういった配慮がいささか足りないのじゃなかろうかと思うわけです。  それと、加工面につきましても考えておるということでありましたけれども、私は先ほど一例として澱粉の滞貨ということを取り上げて申しましたが、これが減るのではなくてむしろ毎年ふえていく、倉敷料だけかさんでいく、こういう状態をいつまでも放置しておいてはいかぬ。その配慮がどこにあるのか。資金面にその原因があるならば一応それに応ずる体制を用意していく、いわゆる業者の研究が足りなければけつをひっぱたく、これくらいの積極的な施策がなければ、バレイショを作りサツマイモを作る農家の不安定な状況というものは一向に解決されていかない。それと同時に、冒頭で申し上げましたように、いわゆる何を作ればいいのだという答えにもならないと思うのです。  私は、農政の基本というものは、何を作ればよいのかという農業者の問いに答えることであると思います。しかも、価格の面について、きょうは時間がありませんからそこまで触れられないけれども、やはり、それに対する価格のめんどうを見ていく、こういうあらゆる施策というものが総合されて初めて近代化方向というものが見出せる。何も三百億が多い少ないの問題じゃなくて、その青写真があるかないかという点が問題だろうと思います。そういう点についての配慮をいま少し加えていただきたい。  いま一つお伺いしたいと思いますが、これは農林水産委員会ではたびたび論議されたことであろうと思いますから、またかと言われる問題かもしれませんけれども、私は大蔵委員なので、あえてこの際お伺いしておきたいと思います。先ほど安田さんからも畜産の問題について若干のお話を伺ったのでありますが、鶏卵の問題その他にいたしましても、とにかく魚が陸に上がっておる。この状態に対応して農林省としてはどのような指導をしておられるのか。これは具体的に申し上げなくともおわかりだろうと思います。大洋、日魯その他、こういう問題について一般農業者はどのように対抗していけばいいのか、その指導方針というものをこの際お伺いしておきたいと思います。
  52. 坂村吉正

    坂村政府委員 第一の問題でございますが、具体的な近代化方向青写真というお話でございますけれども、青写真方向を示したのがいわゆる農業基本法でありますので、農業基本法の大きな線に沿うて今後の具体的な方向というものが示されてくるというように私どもは理解をいたしておるのであります。また、魚が陸に上がったという問題は、いろいろ問題を投げかけておるところであります。これは、先ほども申し上げましたように、加工の問題というものは、農産物についても畜産物についても非常に大事な問題であろうと思います。それと同時に、一つの商品の消費市場を持つという問題、消費のマーケットを持つという問題、マーケッティングの問題、そういう問題も当然同時に考えなければならない問題だろうと思います。そこで、具体的の問題として、農業協同組合なり農民なり、そういうものがみずからの力でそこまでのマーケットを持つことが現在の段階で可能かどうかという問題も同時に考えていかなければならぬだろうと思います。もちろんそういう方向も必要でございます。それと同時に、一面、やはり、加工技術であるとかマーケットとかいうものを持っておるものを利用するという面も十分に考えていいのじゃないか、そういうように私は感じておるのであります。その際に、問題は、生産者としての農民の利益が不当に害されるかどうか、こういう問題であろうと思うのであります。そこで、農業協同組合とそういう資本会社との間に、農民の作りましたいわゆる農産物の原料としての供給についての契約、あるいはその特約というようなものが、農民の利益が保護されるような姿できちんと確保される場合においては、これは農産物の消費市場を非常に大きくするということで一面では相当歓迎してもいい面もあるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。そこで、現在の指導につきましては、農業協同組合とそういう加工技術・マーケットを持っておる資本会社との間に、原料供給あるいはその他の詳細につきまして、農民の利益が保護されるような形できちんとした契約体制ができて、それが行なわれるというような方向で、中央においても全敗連等がいろいろ協定をいたしまして、そういう方向でこの問題を処理していったらどうか、こういうようなことで指導しております。   〔委員長退席、小山委員長代理着席〕
  53. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 結局その問題については何もやっていないということと同じじゃないか、今の御答弁では私はこう思うのです。これは、突っ込みますと、安井君と十二時十分までという約束をしておりますので、私の時間が参りましたのであれですが、先ほど私が御質問しましたように、これはもうあまりにも大きな問題で、答えにくい点もよくわかりますが、たとえば、米についてはどうするのだ、耕作反別は現在のところで抑えるのかどうなのか、価格の問題についてはどうするのだ、こういう点は、農業基本法方向はきまっておるとおっしゃるけれども、基本法では、山へ登れということしか書いてないので、どこの道から登れということはちっとも書いてないのです。だから、こういった関連法案というものを準備されたのだろうと思いますが、選択的拡大と言われても、何にどの程度重点を置いていくのだということはちっとも示されていない。ここで示されなければ、ちっとも農業者に対する答えにはならないと私は思うのです。これは与党の方々だって同じだろうと思う。農村を指導されるについて、何をやればいいのだということがわからない。麦をやめろというけれども、それでは何を作ればいいのか、この方向を示していただくことが一番肝心なことじゃないかと思うのです。ただ農業基本法という一つの憲法はできたけれども、この憲法だけじゃ農家の方々は生きていけませんよ。そういった意味で、現在も参議院において、ああいった抽象的な農業基本法で、協業の問題、共同化の問題一つ取り上げてみましても問題がありますので、私たちは徹底的な審議をいたしておりますが、やはり、農林省の腹がまえというものをこの際示していただきたい。この農政の転換期にかかっての、坂村さん個人の考えでもけっこうですから、今後の農業はこうあるべきだ、米麦中心からどう持っていくのだ、ただ畜産、果樹というような抽象的な話じゃなくて、どの程度に持っていくのだという構想、青写真があるならばお示しをいただき、今なければ、機会を見てお示しいただく、こういうことにして私の質問はこれで終わりたいと思います。
  54. 坂村吉正

    坂村政府委員 たびたびの御質問でございまするけれども、農業基本法におきまして基本的な方向が大体示されておるのでございまして、おっしゃる通り、あるいは山だけが示されておるという御意見もあろうかと思いまするが、山へ登るのにはそのときどきによっていろいろの道があるのでございまして、一方からだけが登り口というのじゃございませんので、そこで、いろいろな道といたしまして、私どもといたしましても、これは私個人のことを申し上げますると非常に恐縮でございまするが、たとえば近代化資金であるとか、あるいは農協法の改正であるとか、その中においては生産農業協同組合の新しい創設であるとか、あるいは農地についての信託制度であるとか、そういうようなものをいろいろ関連法案として御提案をして御審議をいただいているわけでございます。農林省は非常にいろいろの部門に分かれておりまするので、各部門で関連法案をいろいろ出しておるわけでございますが、私の方に関する限りにおいても、近代化資金法、それから農協法というようなものを非常に大きな関連法案としてお願いをいたしておるわけでございますので、そこで具体的に青写真ができ上がるのじゃないかというふうに考えておる次第でございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  55. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 各部局があるというお話ですけれども、農林大臣の頭脳は坂村さんなんですよ、経済局なんですよ。その経済局において、これは今日の農政の一番の欠陥ですけれども、先ほど質問で申し上げたような方向づけというもの、これに対する確固たる目標を示すということについて、それが正しいか誤っておるかは後日になって判断しなければなりませんけれども、非常に紳士的で、いわばちゅうちょしておられるがために、むしろ農業者に対して一つの不安を与えておる、はっきりとした目標を与え得ないという一つの逆の欠陥が出ておるのじゃないか、こう思うわけです。それは先ほど一、二の例を取り上げて申し上げたところなのでして、これはまた後日の農政一般の問題でお尋ねをしたいと思いますので、ぜひ、そういった面について、われわれに、安心して農民人たちにこうなっているのだよという話ができるような形でお示しをいただきたい。大蔵政務次官農林政務次官も、ぜひそういった面での御協力をいただきたいと思うわけです。  私の質問はこれで終わります。
  56. 小山長規

    ○小山委員長代理 安井吉典君。
  57. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 この間自民党の諸君は農業基本法を無理やり通してしまいました。まさに無理無体というような表現の方が当たるかと思うのでありますが、これはおそらく参議院でつぶれると思いますが、それにいたしましても、政府案の農業基本法の中にも農林の制度金融の問題についても触れているわけでございますが、今回さらに農業近代化資金といったような新しい仕組みを今までのきわめて複雑なシステムの中にまたお入れになる。最近の報道によりますと、農地集団化のための資金の問題にも新しい方向を出そうというふうなお企てをお持ちになっておるということも聞くわけです。大体におきまして中小企業関係の金融なんかも非常に複雑だというようなことを大蔵委員会でもよくいうのですが、しかし、農業関係の制度金融の仕組みの複雑さに至っては、これはお話にならないような状態だと思うのです。そういうような全体的な仕組みを一体どうされようとするか、特に、この新しい近代化資金の問題や、さらに農地集団化資金というような新しい構想、そういうのを全体的な構成の中にどうはめ込もうとされておるのか、その問題から一つお伺いいたしたいと思います。
  58. 坂村吉正

    坂村政府委員 農業金融の現在におきまする制度は、御承知のように、非常に複雑な面もございます。これは、農林省金融がいろいろ農林水産業に関係しますし、農業といいましてもいろいろ複雑な問題もございますので、やむを得ずそういうようなことになっているかと思うのでございますが、方向といたしましては、できるだけこれを簡素化をいたしまして、農民が利用するのにも非常に簡便に利用ができるような方向一つ簡素化をしていきたいというつもりで考えているわけでございます。従いまして、その線に沿いまして現在考えておりますところでは、先ほども申し上げましたが、きわめて長期低利のもので政府が直接融資をするというような性格のものにつきましては、大体農林漁業金融公庫を主体にいたしましてこの制度を拡充していくという考え方でございまして、それから、それよりもある程度期限につきましても短い、金利についてもある程度は高いかもしれませんけれども、中期資金を主体にいたしましたものを大体中心といたしましてこの近代化資金制度を拡充していきたい、それから、きわめて短期の運転資金というようなものにつきましては、できる限り協同組合金融というものを積極的に活用するような方向で持っていきたい、こういうことで考えているわけでございます。そこで、今まで農林省で目的ごとに利子補給をしたり損失補償をやったり債務保証をやったり、いろいろ制度金融がございます。そういうような制度金融につきましても、できるだけこの近代化資金に乗り得るものは一緒にいたしまして、そうして総合的な運用ができるようにということで考えておるわけでございます。今までの農業改良資金とかあるいは有畜農家創設資金といいますようなものがこの制度に一緒に入り込んで総合的な運用ができるようにということで計画を立てておるわけでございます。
  59. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 農地集団化資金につきましてはどういうふうにお考えですか。
  60. 坂村吉正

    坂村政府委員 農地の集団化といいまするか、農地の取得のために非常にいろいろの資金が今後とも要ると思うのでございますが、これは現在のところ農林漁業金融公庫貸し出しに相なっておるのでございます。自作農創設維持資金という資金がございますが、農林漁業金融公庫でこれを貸し出しておるわけでございまして、そこで今後どういうようなことに資金の内容を持っていきますか、これはいろいろ近代化の問題とも関連しまして検討はいたしておりまするけれども、制度としてはやはり農林漁業金融公庫において扱っていくという方向でただいまのところは考えておるわけでございます。
  61. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 私に与えられた時間があまりにも少な過ぎるものですから、この問題は一つの課題という形で持ち出すだけにいたしますが、農業基本法もさることながら、一つ農業金融基本法といったようなものをお考えになる必要があるのじゃないかと思うのでして、この点はがっちりした態度でこの問題に取り組んでいただきたい。とれからの委員会の審議の中でそういった問題についてもさらに突っ込んだ検討が行なわれるべきだと思いますので、その点はその程度にいたしまして、次に今度の法案の具体的な問題について質疑を進めたいと思います。  初めに、貸付限度額の問題についてであります。これにつきまして、法律には、五千万円限度と、一千万円限度と、さらに二百万円の範囲内と、三種類の分け方があるようでありますが、一番初めの五千万円以内という部分でありますが、これをオーバーした場合には農林大臣の承認が必要だというふうな規定になっております。私は北海道の出身ですが、北海道なんかの場合ですと、合理化澱粉工場だとか農業倉庫だとか、そういったような一件当たりの融資規模の非常に大きなものがずいぶんあるわけでありますが、そういったような場合に、一々農林大臣の認定というふうなことは、これは手続が非常に煩瑣だと思うのでありますが、何か基準をもってこういったようなものを認定されるお気持があるのか、あるいはもう少しこれを簡素化する方向をお考えになっていないのか、その点だけ一つ伺います。
  62. 坂村吉正

    坂村政府委員 協同組合の共同施設等につきましては、今までは大体農林漁業金融公庫から貸し出したのでございますが、これらの貸付限度との関連もございまして、五千万円というふうに一応押えておるのでありますが、実情によっては非常に大きな金の要るところもございます。しかし、全体の制度の運用でございまするので、やはり、一件で非常に大きな金が要るというような場合には、これは特別に考えて、特別なものとして考えていかなければいかぬだろうというふうに考えておるわけでございます。一般には五千万円というところで押えたらどうかというふうに考えておるわけでございまするが、一応、現在のところでは、五千万円をこえる場合は農林大臣の承認というつもりで考えております。しかし、その承認の方法等につきましても、いろいろ事務的に煩瑣なことがございませんように、事務的な問題といたしましては、一つ簡易に運びますように運用の上では検討いたしたいと思っております。
  63. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 次に、個人施設の借り入れ限度額が二百万円ですが、これも、政令でいろいろ段階をおつけになって、規模の小さいものは二百万円をさらに百万円に縮めるとか、そういったような仕組みをお考えになっているそうでありますが、その点はどうなんですか。
  64. 坂村吉正

    坂村政府委員 法律では最高限を二百万円というふうに押えておるのでございますが、もちろん、金を借ります場合には償還の問題等考えねばならぬ問題もございますので、そういう点を勘案をいたしまして、二百万円と百万円というぐらいの二つの段階くらいにしたらどうかということで考えております。
  65. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 これも政令の案というようなものがないと議論のしょうがないのですが、しかし、全体的に、近代化方向というのは何としても大きい規模のものが要請されてくる。これは一がいに言えませんけれども、そういったような方向が強いと思うわけです。そんなことを十分にお考えをいただいて、特殊な場合には二百万円なら二百万円の限度までは必ず借りられるのだ、どういうようなものであっても借りられるのだという仕組みだけを打ち立てておく必要があるのじゃないかという気がするわけです。これはさらに御検討いただきたいと思うわけであります。  次に、償還年限の問題です。農林漁業金融公庫の共同施設資金が今度の新資金の方に移行する場合に、前よりも少し程度が悪くなるというようなことはありませんか。
  66. 坂村吉正

    坂村政府委員 共同利用施設の農林漁業金融公庫におきまする条件は大体十五年でございまするので、この制度におきましても、今までよりも不利にすることはどうかと思うので、大体十五年ということで考えております。
  67. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 据置期間はどうですか。
  68. 坂村吉正

    坂村政府委員 据置期間も、公庫の方におきましては従来二年でございましたが、これでは三年ということで考えております。
  69. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 ずいぶん下の方の農協の段階等では、今後償還年限・据置期間を含めてそういうようなものが農林漁業金融公庫資金の条件を下回るような方向になるのじゃないか、大きなワクはきめてありますが、具体的な決定の場合にそうなるのじゃないかというような心配がなされておるようでありますが、その点は、今までよりも絶対に悪くならない、具体的な個々の決定においても悪くならない、そういうふうに理解して差しつかえありませんね。
  70. 坂村吉正

    坂村政府委員 政令に規定すべき事項というものが資料としてお配りしてございませんので、まことに恐縮でございますが、政令においては、ある程度の出入りはございましょうけれども、農林漁業金融公庫で扱われたものに大体バランスがとれるような形で償還年限等も考えたいというつもりでおります。
  71. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 先ほど武藤君の質問にもありましたが、鶏のように耐用年数の非常に短いものについて対象にしないというふうなお話でございましたが、農業経営近代化のために、集団飼育だとか、そういったような方向が打ち出されていかなくてはならないのは当然のことで、その場合に、たとえばケージだとかバタリーだとか、そういったような施設についてセットで借りるといったようなこともあり得ると思いますね。そういうような具体的な施設ができる場合には、もちろん鶏の償却は一年限りでされるかもしれないが、鶏の購入資金を含めて最初に借りることができれば、施設は残るのですから、翌年はまた新たなものを入れて、それであとは回転ができるわけです。従って、そういうようなセットの場合に何か今言ったようなことを考えるお気持はありませんか。
  72. 坂村吉正

    坂村政府委員 非常にごもっともな御質問でございまして、何とかそういうような道も考えたらいいのじゃないかという御意見も非常にあるわけでございますけれども、一応施設資金としての建前でこれは組んでおるのでございまして、そういうような意味から言いまして、農業協同組合がやはり自分の組合員の運転資金については十分一つめんどうを見ていくということも、今後十分力を入れて指導していかねばいかぬ面でもございますので、その場合においても、やはり、施設はこれでいきたい、運転資金、鶏の買い入れ資金については、農業協同組合で積極的に貸していくという方向で行った方が今後においてもプラスになるのではないかという感じがいたしておりますので、そういう方向でいきたいと思います。
  73. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 それは見解の置き方によっていろいろ考えようがあると思うわけでありますが、その点もう少し御検討いただきたいと思うわけです。  さらに、牛馬等の大家畜の購入資金の償還年限は五年ですか、これは従来と今度とはどうですか。
  74. 安田善一郎

    ○安田政府委員 家畜購入に関しましては、利子補給、損失補償を伴いまする融資制度のほかに、補助等もございます。補給対象等も数種類ございますが、御質問は、従来からある有畜農家創設特別措置法による利子補給、損失補償を伴うものと、今回の農業近代化資金融資条件の比較だと思います。現在は、有畜農家創設関係のものといたしましては、乳用牛は償還年限四年、役肉用牛と馬は五年、綿羊は三年、据置期間はいずれも一年になっております。農業近代化資金では、償還年限は延びましていずれも五年、据置期間は二年といたしております。
  75. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 その二年というのは、五年の内ですか外ですか。
  76. 安田善一郎

    ○安田政府委員 内でございます。有畜農家創設の場合も内でございます。
  77. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 大家畜の償還年限が常に短過ぎるという苦情を私どもよく聞くわけでありますが、生産効率が特に低いような地帯では、乳が十分でないうちにすぐ償還年限に入ってしまう。そういうようなものが新規導入の障害となっているというふうな事情がずいぶんあるわけです。ですから、北海道の信用協同組合連合会などでは、八年貸し出しとして現実にはやっているわけです。そういうふうな現地で苦労をしてその苦労の中から導き出した結論、こういうようなものをもっと国の制度金融の中に取り入れて、お考えを改めていただく、こういうようなことはできませんか。
  78. 安田善一郎

    ○安田政府委員 御趣旨のことはごもっともでございまして、据置期間を二年にいたしましたのは、六カ月とか八カ月の乳牛を取り入れまして、搾乳を始めて、牛乳販売代金で償還が始まるように、——従来は据置期間一年で償還四年でございましたからそれが不可能でございましたので、そういうふうに改定したつもりであります。他の家畜の場合も同様に思いますが、五年を七年ないしは八年でというお話でございますが、償還年限も適当なところがよろしいので、導入しましてから六年、七年目には前の償還が残っていない方が望ましい。償還年限が長ければ金利がかさむわけでございますから、このあたりがいいんじゃないか、こう思ったわけであります。
  79. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 ただ、現実に今やっていますね。たとえば北海道の信連なんかでやっている。そういうようなところに今度利子補給といった形の新しい仕組みを入れ込んでくるわけですが、そういう場合に矛盾が起きないでしょうか。今すでにやっておるものと、今度の仕組みと、それをどういうふうに組み合わせていけばよろしいというようにお考えでしょうか。御指導の方針を聞かせて下さい。
  80. 安田善一郎

    ○安田政府委員 北海道のように償還年限が長いような場合は、金利が高いんじゃないかと思います。金利がそれほど高くない場合は、やはり乳業会社その他の資金で事実上援助がありましたなどございまして、政府制度といたしましては、今回の案くらいでいいんじゃないだろうか。むしろ農民負担が金利ではふえないのじゃないか。しかし、その両者の調整はどうかということにつきましては、基本的には選択制度でございましょうが、政府制度でありまする農業近代化資金の条件よりその地方の農協等がよりよい融資条件で融資をしよう、こうなれば望ましいことであります。
  81. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 選択制度だからそれでセレクションが行なわれればいいと単純に考えて、それは国の段階ではそれでいいかしれませんが、現実に農協貸し出しをし、その農協そのものは農民の出資で成り立っているわけです。そういう立場で現実に問題が処理される場合、相当トラブルも起こりやすいし、いろいろな問題点になるおそれがあると思います。そういうような意味で、これはきょう私が指摘いたしました問題の中でも重要な問題だと思いますが、さらに御検討をお願いいたします。  時間が参りましたから、最後に一つ金利問題に触れて終わりたいと思います。  原資の金利基準九分五厘ですが、それをオーバーした現実の貸し出しが行なわれている場合、それの負担の問題はどうなりますか。
  82. 坂村吉正

    坂村政府委員 今まで制度金融政府がいろいろ利子補給等をやって参りました金利は、十何年前は一割四、五厘くらいのところをベースにしていろいろやって参りましたが、農業協同組合合理化というものを指導し進めて参りまして、だんだんベースも下がって参っております。二、三年前は一割ちょっとというところをベースにしてやっておりました。最近の様子を見ますると、全般的な預金金利の引き下げというような問題もございまするし、農協合理化、それから、別に農業協同組合の合併を促進する法律も今度の国会で御審議していただいて通していただいておりまして、そういうようなことで農協合理化をはかりまして、金利方面はできるだけ下げていく。必ずしも全部が九分五厘でおさまるとは思いませんが、農協の面でもある程度勉強する面がなければいかぬだろうと思うのでございまして、そういうような意味で、ベースとしてはやはり九分五厘で押えていきたいというふうに考えております。
  83. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 そういたしますと、九分五厘をオーバーしている分は、農協の負担になるのか、あるいは農民の負担になりますのか。直接農民の負担にされるというお気持でないと思いますが……。
  84. 坂村吉正

    坂村政府委員 農協に勉強していただくという意味でございますから、農協がそれだけ勉強して負担してもらう、こういうつもりで考えております。
  85. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 それにしても、農協農民の団体ですから、そこで、全組合員にかけるなら、借りる人は利益を受けるのだから、あなた持ってくれというような方向に行かないとは限らない。そういう点に十分御指導が必要な点ではないかと思うわけです。  そこで、この補助率でありますが、先ほどの武藤君の御質問にもございましたが、将来増加するというお気持はないか。むしろ将来下げていくというお気持のようにうかがえるんですが、その点はどうでしょうか。
  86. 坂村吉正

    坂村政府委員 金利の低下の問題につきましては、農協のプロパーの分についてはもちろんでございますけれども、全体の方向といたしましては、運用の実態等をも十分検討いたしまして、今後善処するような意味で十分検討して参りたいと思います。
  87. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 別のものによりますと、組合系統金融金利の低下をはかるとともに、漸次国庫補助を低減するというようなことがあるのですが、こういうふうな御方針ですか。
  88. 坂村吉正

    坂村政府委員 とりあえずの目標といたしましては、先ほど申し上げましたように、農業協同組合のプロパーの金利をとにかく七分五厘くらいに下げなければいかぬという目標政府としても農協としても掲げているわけです。そこで、それに参りまするまでの間、とにかく政府としても援助のための利子補給をやっていこうということで、一面においては農協合理化をどんどん進めていくということでありますから、そういう段階に参りました場合に、それじゃ今後の問題としてそれで農協金融金利はいいかどうかという問題、これは別であろうと思うのでございます。それはそれとして十分検討して参りたいというふうに考えております。
  89. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 私は、この法案の発想の問題から言っても、最大の問題というのはやはりここにあると思うのです。つまり、農協の組合金融金利引き下げにウエートを置いて、その呼び水に今これをしていこう、だから、今は一応出しているけれども、だんだん下げていくんだ、そういうことでは、これはもう農業近代化あるいは農業基本法の性格にもわれわれ初めから出直して言及していかなければいけないわけでありますが、農民だけの努力で、農協だけの努力で近代化方向をやっていけ、単に呼び水という格好で一応はしてやるが、だんだん下げていくのだ、あとはお前ら勝手にやれ、そういうような気持に受け取れてしょうがないのです。どうでしょう、その点はっきりお聞きしておきたいのです。
  90. 坂村吉正

    坂村政府委員 大ざっぱに申しまして、国が直接融資をするいわゆる農林漁業金融公庫の面は、これは今後ともどんどん拡充をしていかなければならぬというふうに考えておるのでございまして、それで、この農業協同組合の金を農民に還元をする、これが農業金融におきましては一つの大きな柱になるわけでございます。そこで、農業協同組合の自主性とか、そういうようなものも考えまして、農協合理化をとにかく促進して、農協がほんとうに農民のための農協になって、そして金融の面においても販売・購買の面においても近代化のために非常に自分の団体として役立つのだという方向にぜひとも指導して参りたい、こういうようなことを考えておるのでございます。そういうような意味で、これについては農協合理化というものを一面におきましては考えていかなければいかぬというふうな考え方を持っておるわけでございます。
  91. 安井吉典

    ○安井(吉)委員 議論がだいぶ続きますから、もうやめますが、ただ、農協がほんとうの農民のものとなってしっかりと自分の足で立ち上がって農民と一緒に苦労していく農業協同組合にならなければならぬ、そう仕上げたいというお気持はわかるのです。それはいいですよ。しかしながら、ここに農業近代化資金と書いてある。農協近代化資金ではないわけですよ。そういう点で、この二つの法律で、農協近代化もはかっていこう、農業近代化の面もここで一つ農民をごまかしていこう、何というか、一方だけに置かないで、一緒にここで解決をしよう、そういうような意図があるだろうと思います。だから、内容がところどころ非常に不明確な点がたくさんある、こういうことではないかと思うわけです。  さらに問題点はいろいろ委員会の段階で検討されますから、ここで私は終わります。
  92. 武藤山治

    武藤委員 先ほどの質問に関連して幾つか資料を出してもらいたいと思います。私たちは初めて国会に来たので行政機構の全般をまだ把握することもできませんから、ごく親切丁寧な資料をお作りいただきたいと思うのです。一つは、現在行なわれておる農業金融制度の種類、さらに、簡単な内容、第二には、今回の近代化資金法に対して予定しておる政令の内容、第三には、農林漁業金融公庫貸し出しておる貸し出しの内容、それも、できれば、二十万円以下、さらに二十万から五十万、五十万から百万、一件について百万以上、そういうものの件数、金額、そういうような点をできるだけ業種別、階層別にわかるような資料、こういうものを一つ至急お作りいただいて提出を願いたいと思います。
  93. 坂村吉正

    坂村政府委員 至急に整備いたしまして提出をいたしたいと思います。
  94. 小山長規

    ○小山委員長代理 連合審査会はこれにて散会いたします。    午後零時四十五分散会