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1961-05-17 第38回国会 衆議院 農林水産委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月十七日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 坂田 英一君    理事 秋山 利恭君 理事 大野 市郎君    理事 小山 長規君 理事 田口長治郎君    理事 丹羽 兵助君 理事 石田 宥全君    理事 角屋堅次郎君 理事 芳賀  貢君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       金子 岩三君    川村善八郎君       小枝 一雄君    田邉 國男君       中馬 辰猪君    内藤  隆君       中山 榮一君    野原 正勝君       福永 一臣君    本名  武君       松浦 東介君    森田重次郎君       八木 徹雄君    足鹿  覺君       片島  港君    加藤 清二君       東海林 稔君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    山田 長司君       湯山  勇君    稲富 稜人君       玉置 一徳君  出席政府委員         農林政務次官  八田 貞義君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君  委員外出席者         農林事務官         (農地局愛知用         水公団監理官) 大山 一生君         参  考  人         (愛知用水公団         総裁)     浜口 雄彦君         参  考  人         (愛知用水公団         理事)     伊藤  佐君         参  考  人         (愛知総務部         長)      松尾 信資君         参  考  人         (愛知農地部         長)      森山貞之丞君         参  考  人         (愛知用水土地         改良理事長) 日高 啓夫君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 五月十七日  委員北山愛郎辞任につき、その補欠として加  藤清二君が議長指名委員に選任された。 同日  委員加藤清二辞任につき、その補欠として北  山愛郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  愛知用水公団法の一部を改正する法律案(内閣  提出第一四〇号)      ————◇—————
  2. 坂田英一

    坂田委員長 これより会議を開きます。  愛知用水公団法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本日は本案について参考人各位から御意見を聴取することにいたします。  本日御出席をいただいておる参考人方々は、お手元に配付いたしてありまする参考人名簿通りであります。  この際、参考人各位に対しまして一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず遠路わざわざ当委員会に御出席いただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。愛知用水につきまして深い関係を持っておられる参考人各位には、それぞれの立場から、この際忌憚のない御意見を承りたいと存じます。  最初に、愛知用水公団愛知県及び土地改良区からそれぞれ一人十分程度の御意見を承り、そのあとで質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず愛知用水公団側よりお願いいたします。浜口愛知用水公団総裁
  3. 浜口雄彦

    浜口参考人 愛知用水事業の現況につきまして簡単に説明をいたしたいと存じます。  愛知用水公団発足以来歩んで参りました道は必ずしもたんたんたるものではございませんでした。しかしながら、その間関係各位のたゆまざる御指導のおかげをもちまして、ただいまにおきましては、その工事がほぼ完工に近づきまして、この夏場通水に支障のない点までこぎつけましたことは、皆様とともにまことに御同慶の至りに存じます。  まず、愛知用水の水源とも申します木曽の牧尾堰堤でございますが、これは些少な付帯工事を除きまして全部工事完了いたしました。そして、先ほどから雪解けの水とかそれから雨が降ったときに水をたたえておりまして、ただいまでは、総貯水量予定七千五百万トンのうち、ほぼ三分の二に当たる五千万トンがたまっておりまして、いつでも放水できる状態に達しております。また、幹線水路につきましては、これも小さい工事を除きましてほぼ完了に近づいておりまして、六月の初旬から下旬くらいにかけまして部分々々に通水試験を行ないまして、六月末ごろを期して兼山の取水口の水門を開く予定にしております。また、支線水路、それから開墾、耕地整備等も非常な進捗を見せておるのでございます。ただ、三好、日進及び東郷の二カ町一村にまたがります貯水量九百万トンの調整池は、土地交渉の妥結がおくれました結果、この完工は少しおくれまして秋ごろになりますけれども、これは通水する貯水には一向差しつかえはございません。そういう状況にありまして、これから思わざる長雨が降るとかそういうことがない限り、先ほど申しましたように夏場通水は可能ということをわれわれは考えております。  なお、この愛知用水事業を行なうにつきましては、今非常に進歩しております重機械を駆使いたし、かつ熟練した技術者並びに職員を動員して初めてこういうことができるのでございまして、職員におきましても、公団発足以来今日まで五年有半の間に非常な経験を積み、また技術を修得いたしまして、その間アメリカの技術会社のいろいろの指導もありまして、非常な熟練の域に達しておるのでございます。また、一つチームといたしましても、方々官庁・各府県その他から集めて参った人員でございますが、これがこの年月の間に一つのまとまったチームとなったのでございます。われわれといたしまして、また、その職員といたしましても、この愛知用水事業完成の暁には、身につけた技術を他の同種の国家事業に注入したいという意欲に燃えておるのでございます。また、職員各自の身分から考えてみましても、これでこのチームがばらばらになり、自分たちが職を失うようになるということになりますと、おのずから、公団の今一番大事な仕上げのときに、そちらの方に気をとられて工事が進まないというような懸念を私ども抱いておりまして、その点につきまして関係方面方々に絶えずお願いをして参ったのでございますが、幸い、政府におきましてこの点を十分取り入れ、また公団が非常に能率をあげたということを認められまして、今回の国会に、豊川用水事業、これは従来国営でございますが、これを愛知用水公団事業に取り入れるという法案を提出されて、ただいま審議中と承っております。これによりまして、先ほど申しました職員がこの技術をさらに生かすことができるという楽しみを持っております。幸いにしてこの法案国会通りまして施行されました暁におきましても、今愛知用水の持っております人員を全部は吸収することができないのでございまして、なおただいまの段階で二百二十名ばかりがまだ行く先がきまってないのでございまして、私ども全力を尽くしましてこれをそれぞれ適所に配置転換をいたしたい、こういうように努力をしておるのでございます。関係各位におかれましてもこの上ともこの点に御指導御後援を賜われば、ありがたいしあわせに存じます。  はなはだ簡単でございますが、工事進捗状況の概略を以上申し述べました。(拍手
  4. 坂田英一

  5. 松尾信資

    松尾参考人 私がただいま御指名をいただきました愛知県の総務部長松尾でございます。本日は知事出席いたすべきでございましたが、緊急やむを得ない用件がございまして出席できませんので、お許しを得まして私が代理として出席させていただきまして、御説明申し上げたいと存ずる次第でございます。  愛知用水事業は、国会政府方々を初め各方面の御指導と御援助、並びに公団当事者地元関係者熱意努力によりまして、夢の用水と言われましたこの世紀の大事業もようやく順調に進行し、いよいよ六月には通水運び至りましたことは、まことに感激にたえないところでございます。ことに、当農林水産委員会におかれましては、本事業の当初から数次にわたって現地の御視察をいただきまして、また、国会の御審議を通じて絶えず格段の御高配を賜わり、本事業進捗のために非常の御尽力をいただきましたことは、まことに感謝至りでございまして、この機会に厚くお礼を申し上げます。  愛知県といたしましては、地元県といたしまして、農林省愛知用水公団と一体となりまして、本事業の遂行上全力を尽くして参った次第でありますが、直接県が担当いたしました工事といたしましては、農業用水支線水路公団委託事業として行なうとともに、上水道並びに工業用水につきましては、公団から資金の供給を受けて県営事業として実施いたして参ったのでございます。支線委託工事につきましては、幹線工事進行に対応して工事進捗に努めて参りました。また、畑地灌漑のための耕地整備も順調に進んでおりまして、公団直轄事業完工に合わせて県の委託工事完成できる見通しでございます。一方、上水道工業用水も順調に工事進行しておりまして、幹線水路通水とともに、これに対応して給水を開始いたしますように工事を進めております。  また、かねて御高配を賜わっております愛知用水受益地域営農指導につきましては、先般当委員会現地を御視察の際に御説明申し上げるとともに、いろいろ御指導願いましたように、三十四年以来、普及職員、農協の営農指導員等を増員するとともに、畑地灌漑試験施設の充実をはかって参り、また、愛知用水地域農業計画、さらに部落営農計画及び未端の営農計画、こうしたものの各種営農計画を確立いたしまして、さらに、本年に至りましては、新たに総合経営試験地を設置することにいたしまして、各種の施策を講じまして、通水を前にして営農指導の万全を期している次第でございます。  このように、愛知用水事業は、国会皆様方を初め、各方面格段の御指導と御援助によりまして、全体といたしましてはきわめて好成績をもって事業進捗いたしておるのでございます。しかしながら、この間におきましては、補償問題の難航とか、技術者の不足、あるいは経済事情の変動、または伊勢湾台風襲来等の幾多の難問題が発生して、工事進行を阻害されたり、あるいは工事費増大、あるいは当初の土地利用計画の変更というようなものの事情もあったわけでございますが、これらの点につきましてもそれぞれ問題を解決しまして、今日の事情至りましたことをまことに深く感謝している次第でございます。  また、完成後の管理・運営の問題につきましては、県といたしましても、農林省公団協力いたしまして、極力善処いたして参りたいと存ずるのでございます。特に、農民負担の問題につきましては、その軽減のために、県におきましてもできる限りのことはいたしたいと存じている次第でございます。  また、今後、産業、文化の発展に対応いたしまして、工業用水上水道用水等の需要が増加して参りますことに対しましては、木曽川の水資源の高度の開発利用を推進し、愛知用水施設を高度に活用して、上水道工業用水供給を増加して産業発展をはかるとともに、あわせて農民負担軽減をはかるように、各方面格段の御援助と御協力を賜わりたいと存ずる次第でございます。  今回、愛知用水工事完成を目前に控えまして、政府におかれましては、公団建設事業から管理事業に移行するために必要な諸御措置とともに、国営豊川農業水利事業を一括これに吸収する方針を立てられまして、それのために必要な愛知用水公団法の一部を改正する法律案国会に提出され、本委員会において御審議を願っていることは、地元県といたしましてはまことに感謝にたえないところでございます。  豊川用水事業は、愛知用水と並んで愛知県におきます二大開発事業でございまして、今回これが愛知用水事業に包含されますことは、本事業促進のためにきわめて適切な御措置でありまして、これによって、この地方民の多年の願望が実現されるとともに、東三河地方開発が急速に進むものと存じまして、本法案が一日もすみやかに成立いたしますように、当委員会格段の御高配お願いいたしたいと存ずる次第でございます。  以上、簡単でございますが、概要の御説明を申し上げるとともに、委員各位の御厚情に対して深くお礼を申し上げる次第でございます。(拍手
  6. 坂田英一

  7. 日高啓夫

    日高参考人 まず最初に、愛知用水工事促進につきましては、御列席の先生方格段の御配慮により、予算の裏づけと高度の技術を発揮されまして予定期間内に完了運び至りましたことにつきましては、土地改良農家を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  当土地改良区といたしましては、皆様の御好意に沿うために、受益につき諸般の準備を進めて参りましたが、その一つは、末端耕地整備事業でございます。公団委託にありまする畑地灌漑工事は、愛知県の手厚い指導のもとにほぼ完了の期に達しております。その二は、施設管理段階に入りました際に委託を受くることを予想されます支線水路等管理についてでございますが、目下これが着々体制整備中でございまして、通水を迎えるのに遺憾なきを期しておる次第でございます。  せっかく皆様の格別の御好意による御努力をいただきながら、なおこの上の要望を申し上げるのは礼を失するかとは存じますけれども、この際二、三のお願いをさしていただきたいと思います。  第一は、末端土地改良事業についてでございますが、畑地灌漑につきましても、一団地二十町歩未満の小団地がございますが、これにつきましてはほとんどいまだ手がつけられておりません。また、水田につきましても、排水改良区画整理等、今後の土地改良事業によりまして初めて愛知用水工事が万全にしてかつ大きな効果を発揮するものでありますことは、諸先生のよく御了察いただけることと存ずるのでございますが、願わくばすみやかにこれらの関連工事が施工されますよう、さらにお力添えをお願い申し上げたいと思います。  第二は、農家負担の問題でございますが、先生方のお骨折りによりまして、工事費増大受益面積の減少にかかわらず、農家負担の据え置きをいただきましたことは、私どもの厚く感謝をしておるところでございます。なお率直に申し上げますと、受益農家の現在の営農実情より申しまして、据え置かれました負担もなお農家経済には重圧であると感ずる多数の農家がございますので、もちろん通水後は県の指導のもとにすみやかに営農を改善いたしまして負担力増大全力をいたす所存でございますけれども、その実績をあげますのにはなお相当の歳月を要するものと考えられますので、負担金支払い方法等につきましてはさらに御検討をいただきたいと存じておる次第でございます。  第三は、通水期間の問題でございますが、営農意欲の向上とその実績をあげますことが本用水の成果を左右するものと考えておりまして、本用水計画されました当時とただいまとでは営農の実態が変わって参っておりまして、ただいまでは、果樹でございますとか、高級蔬菜園芸でございますとか、あるいは畜産、特に酪農等に希望を託する農家がだんだんふえて参っておりまして、これらの農家通水期間の延長を強く熱望しております。こういう状態でございますので、御賢察をいただきまして、このことにつきましても格段のお取り計らいをお願い申し上げたいと存じます。  冒頭申し上げましたように、諸先生の御配慮につきましては満腔の感謝をいたしておるものでございますが、最後のお願いといたしましてこうしたことを申し上げますのは望蜀の要望だというふうにおしかりを受けることを心配いたしながら、あえて率直にお願いを申し上げる次第でございます。(拍手
  8. 坂田英一

    坂田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。質疑は午前中で終わりたいと存じますので、御了承を願います。  角屋堅次郎君。
  9. 角屋堅次郎

    角屋委員 本日、愛知用水公団法の一部を改正する法律案審議にあたりまして、現地側から、愛知用水公団あるいは県あるいは土地改良区の理事長、それぞれ責任者方々にお集まりをいただきまして、主として愛知用水事業終了に伴う諸般の問題について御意見を承り、またいろいろ御質疑も申し上げたい、こういうことで参考人招致をいたしたわけであります。ただ、本日の参考人招致意味からいたしまして、公団の場合も県側の場合も土地改良区の場合も、せっかく世紀の大事業を終了するにあたっての最終的な参考人招致でありますから、県側においても万障繰り合わせて知事出席を仰ぎたいということを強く私は委員部を通じて申し上げておったのでありますが、残念ながら愛知県知事の御出席のないのはまことに遺憾でございます。  この際参考人方々にそれぞれ御質疑を申し上げたいと思いますが、ただ、本日の参考人招致の点からいきまして、公団総裁はともかくといたしまして、県側あるいは土地改良区の方からは、今後の愛知用水事業仕上げという意味から言って、やはりざっくばらんに諸般要望点をお聞きしたがったというふうに率直に思うのであります。この点は、土地改良区の日高さんの方からは数点にわたって御意見のあったことはまことに私はけっこうだと思いますし、同時に、県側といたしましても、その点について御要望があるならば、率直にこういう委員会を通じて御発表願うべき筋合いでなかったかというふうに私は思うのであります。  まず愛知用水公団の方にお伺いしたいわけでありますが、御承知通り愛知用水事業は、昭和三十年の十月発足以来今日まで、愛知用水公団はもちろん、県あるいは土地改良区の三位一体の協力体制の中で、途中私どもしばしば現地視察等をやりまして、昭和三十四年の七月九日の本委員会の閉会中の審査にあたりましては、大体同じようなメンバーにお集まりをいただいて、愛知用水事業のりっぱな仕上げを思う余り、いろいろ率直な意見を申し上げたのでありますが、あるいはそれが知事の欠席という理由の一つになったかどうか存じませんけれども、とにかく、それは、われわれの真意は、農林水産関係から見れば、世紀の大事業というこの愛知用水事業をりっぱに、委員会責任を持って仕上げたいという熱意にほかならなかったわけであります。  過去愛知用水事業をやって参りました経験から見て公団側お尋ねをしたいわけですが、本事業は、申し上げるまでもなく、世銀あるいは余剰農産物等外資導入を伴って実施をした特異の事業でありますけれども、今後、法律改正によって、外資導入の問題についてもこれは閉ざされているわけでなくて、そういう道も考えられ、また、さらに、法律改正の中では、新しく愛知用水公団債発行という他の性格の部面も出て参っておりまして、きのう農地局長との質疑の中でもその問題について展開したわけですが、公団側として、改正法案がかりに通過をした場合、今後豊川用水事業等を含んで事業推進をやる過程で、外資導入あるいは独自の公団債発行というふうな問題について、過去の事業経験からして、特に外資導入の問題についてはどういうふうな考え方をお持ちであるか、こういうことをまずお伺いしたいと思います。
  10. 浜口雄彦

    浜口参考人 これは、豊川用水を包含した後のことは私は申し上げる限りじゃありませんけれども、ただいま角屋さんから、経験によって外資導入の必要があるかどうかというお尋ねでごさいましたから……。  当時、世銀から借りるようになったときは、わが国の外貨が非常に逼迫状態でありましたし、それから、機械外国の新鋭の機械が全然なかったころでございますから、外資導入し、かつまた技術援助も必要だったのでございますが、将来は外資導入並びに技術援助は必要じゃない、機械も、多少古くなりましたけれども十分にありますし、技術家もその技術を身につけておりますので、外資によってこれをまかなう必要はないのじゃないかと、私の経験によって申し上げます。
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員 これは技術的な問題でありますから伊藤理事の方にお伺いしたいと思いますが、例のエリックフロア技術援助というものを愛知用水事業推進過程で受けたわけでありますが、そういう技術援助経験を通じて、わが国農業土木関係技術の前進ということには相当の貢献があったと思うのでありますけれども、特に外国のそういう技術援助を通じての教訓といいますか、あるいは彼此農業土木の対比をした場合に、向こうの学ぶべき点といいますか、そういうふうな点についてこれは技術立場の直接中心になってやっておられたわけですから、この際エリックフロア技術援助を通じての相手の学ぶべき点、あるいはまた農業土木関係に貢献した役割というふうなものについてお尋ねをいたしたいと思います。
  12. 伊藤佐

    伊藤参考人 実は、角屋先生の方が御専門でいらっしゃいまして、私は事務屋でございますので、話は逆になると思うのでございますが、しかし、五年間技術屋さんと一緒にやって参りましたので、そういう点につきまして、数点、御満足がいくかどうかわかりませんが申し上げたいと存じます。  結論的に申しまして、私の方の技術の連中は、いずれも、技術援助を受けてよかったということを申しております。これはしろうとでございますから恐縮でございますが、二、三具体的な例を申し上げますれば、今まで公団で、百二十キロにわたります水路、それからダム、ため池といったようなものをやっておりますが、従来の日本やり方でございますと、角屋先生を前に置いて恐縮でございますが、必ず工合の悪い、地盤の悪いようなところはくい打ちをしておったのでございます。ところが、当公団の仕事につきましては、全体におきまして一カ所もくい打ちをしてあるところはございません。理屈は簡単なものだと思いますが、結局、大きなものを作りますが、それだけのものは水路でございますと土をのかせます。そうしますと、下の土は、何万年、何十万年以来それだけの大きな重量を持っておったから、それだけのせる力があるのだ、それをわざわざくい打ちをする必要はない、土が悪ければいい土を置きかえればよろしい、こういうようなことで、聞いてみれば何でもないことでございますが、これは一つの大きな日本土木の革命であったというふうに聞いております。  それから、また、水路でございますが、ごらんいただきましたように、非常に幅が広うございますが、コンクリートの厚さがわずかに十センチという薄いものでございまして、従来のやり方からすれば、もっとのりを強くしまして、そうしてコンクリートもうんと要る、従って金もかかるということでございましたが、用地の点では少し金はかかりますが、そういう点は、総合比較してみますと、比較にならないほど安くできた、こういったような水路やり方も新しい一つの行き方であります。  それから、なお、昨日角屋先生の御質問で農林省との間にも何かあったやに記憶しておりますが、ダムを作ります際に、非常に基礎処理というようなものが大事なことは御承知通りでございます。その基礎処理が、特にああいったようなロックフィルダムを作るというような場合に、地盤が悪い、そのためにボーリングをやっておるわけでございますが、そのボーリングやり方が非常に簡単にしてしかも能率の上がるやり方で、経費の節約になるというようなことを、向こうボーリング専門家がずっとおりまして、実際にそれを実施いたしました。これなんかは、農業土木だけではなしに、電気の方の関係あるいは一般土木といったようなところからも技術者がたくさん見に参りまして、いずれもそれを取り入れておるといったような実情でございます。  それから、なお、従来の設計なんかでも、日本設計でございますと、細部のところは大体現場にまかしておるといったような調子でございましたのが、ごく細部のところまで全部きめまして、結局、現場の人は正直にその通りやっておれば、特別に能力がすぐれていなくてもそれでやれる、一種の機械化とでも申しますか、そういったようなことも新しい行き方でございまして、そういう点でも非常に日本全体と申しますかの設計基準の点に寄与したといったようなことも聞いておるわけでございます。  以上、ごく簡単でございますが、さような数点をあげましては、御説明にかえさしていただきます。
  13. 角屋堅次郎

    角屋委員 今伊藤理事からお話しのように、牧尾橋のロックフィルダムあるいは兼山から取り入れたあとのトンネルのライニング、サイフォン、幹線水路設計、その他各般の点について、今お話のような点ではいろいろわが国農業土木の今後の発展のために貢献するところが相当あったろうというふうに私自身も判断をいたしております。  そこで、外資導入あるいはエリックフロア技術援助の問題はこの程度にいたしまして、今度の愛知用水公団法の一部改正に伴う今後の豊川用水事業継承のすべり出しの問題については、かねて公団側からも大体八月一日発足を目途にしていろいろ御説明等も承っておったわけですが、かりに会期末ぎりぎりくらいまでのところでこの法案が処理されるとするならば、今後の事務手続の問題等から見て、きのうの伊東局長のお話等からいたしますと、八月を少しずれる場合もあり得るというお話でございましたが、公団側の準備態勢といたしましては、いろいろ法改正の中のそれぞれ事業基本計画あるいは事業実施計画、あるいはまたそれぞれ関係者の意見書の提出の問題、それの審査、それから、すべての事業実施計画の手続終了の告示、公団豊川用水事業の開始、それぞれおぜん立てがあるわけですが、今後の法律の処理に伴いますこれからのおぜん立ての問題について、公団側としてはどういうふうに御準備をなさっておられるか、簡単でけっこうですから伺いたい。
  14. 伊藤佐

    伊藤参考人 今角屋先生からおっしゃったようなそれぞれ準備が要るわけでございますが、内々準備のできるものは、農林省やなんかとタイ・アップいたしまして進めております。ただ、法律上どうしても要る期間となりますと、きのうもお話のありましたように七十五日かかりますが、これも、最後に農林大臣まで持っていく異議の申し立てというものがなければ、その辺ももっと短縮になりますので、かたがた、何とか予定されました八月一日に間に合うようにということでやっておりますが、場合によりますと、そういう点で多少足を出すということもあるかもしれぬと存じております。
  15. 角屋堅次郎

    角屋委員 公団のこれからのおぜん立ての中で、これは当然農林大臣の事業基本計画というものが出されましたのに基づいて、公団事業実施計画というものが作成されるわけでありますけれども、すでに豊川の場合は国営事業として発足しておる経緯もありまして、公団側では農林大臣の事業基本計画というようなものが出される大体の構想というようなものを予想して事業実施計同等についても準備を進められておるのかどうか、その辺のところはいかがです。
  16. 伊藤佐

    伊藤参考人 大体準備は進めております。
  17. 角屋堅次郎

    角屋委員 かねて本委員会でも問題になった点ですが、公団の性格として、建設的な事業の性格と、それから、今後愛知用水事業の終了に伴う管理的な面、こういうところに力点を置かれて、実際に愛知用水事業完了に伴うところのこれからの仕上げ問題、たとえば営農その他諸般の問題等については副次的にこれを取り扱っていく、こういう運営方針で今後いかれるつもりであるかどうか、浜口総裁の御意見を伺いたい。
  18. 浜口雄彦

    浜口参考人 営農公団のやることじゃないのでございます。公団といたしましては、営農もそれぞれ国家並びに県の指導のもとに適切な営農指導が行なわれて、愛知用水の水が有効に使われることをわれわれは希望しているわけでございます。
  19. 角屋堅次郎

    角屋委員 私の聞かんとする意味は、いわゆる工事施行と営農とは緊密な連繋を持っておるわけでありまするから、従って、国、県あるいは試験研究機関でその問題を取り扱うにいたしましても、公団側としては、やはり、将来の営農体制、これは畑灌あるいは水田その他各般の問題を含めて、そういう相互の意思統一のもとに工事施行、設計等がなされていくという意味お尋ねしたのでありまして、公団の性格としてはやはり建設的な部面、管理的な部面という点に力点はありまするけれども営農に対する配慮、これは日本農業のこれからの変貌の問題もありましょうし、どうそれぞれの地域において営農がなされることが結局りっぱな成果を生んでいくかということは、工事設計、施行と関連があるという意味お尋ねしたのであります。本来の性格については、それは今総裁からお答え願った通りだろうと思います。  そこで、工事も大体愛知用水事業については仕上げ期に来ておるわけですけれども、私ども最近現地に参っておりませんので必ずしもつまびらかでありませんが、巷間伝うるところでは、六月の通水期の場合に、場所によっては通水に支障が来るような地区が出るのじゃないか、スムーズに通水がなされるのじゃなくて、幹線水路支線水路との継ぎ目、あるいは支線水路とそれにつなぐ細支線とのつなぎ目、こういうふうな工事施行上の問題等から、百パーセントりっぱに通水できるのじゃなくて、場所的にはそういう通水に支障が来るようなところが生ずるのではないかということが巷間伝えられておるわけです。これは私は現地に参っておりませんから必ずしもつまびらかにしませんけれども、そういう心配の個所が今日予想できるかどうか。これは、公団、県あるいは土地改良区、これは直接現地におられるわけですから、そういう心配はないのか、あるいは工事施行の場所の数点においてはそういう心配もあるというふうなことがあるかどうか、その辺のことを一つお伺いしたいと思います。
  20. 伊藤佐

    伊藤参考人 ただいま角屋先生のおっしゃった通りでありまして、全体の水を通すようにということで今やっておりますが、場所によりますと、よほどこれからがんばりませんと、あぶないというふうなところもたくさんございます。そういう点につきましては特に重点的に今いろいろと最後の仕上げ努力をいたしておるような次第でございます。
  21. 角屋堅次郎

    角屋委員 公団側でそういう実情を認められたわけですから、県あるいは土地改良区もおそらくそういう実態に即して今やっておられることだろうと思いまして、県、土地改良区側のお答えは省きたいと思います。  そこで、長期のこういう仕事をやっておる過程で、実際に死傷者がどの程度に出られたのか、これを参考までにお伺いしたいと思います。
  22. 伊藤佐

    伊藤参考人 多少の相違はあるかもしれませんが、ダムにおきまして二十三名、それから、やはり水路関係におきまして二十数名、全部で四十数名、五十名弱と記憶いたしております。
  23. 角屋堅次郎

    角屋委員 本事業の遂行過程で五十数名の尊い犠牲者が出られたというお話でありますが、この点は、公団事業終了に伴いまして、あるいはそういう工事現場における何といいますか碑の建設とか、あるいは、これは私この前の視察のときにも思いついた気持をお話したのでありますが、やはり、この牧尾橋ダムあるいは兼山の取入口あるいは幹線水路の要点というふうなところには、これだけの大事業でありまするから、やはりこの事業の経過等を書いたそういう記念碑的なものを要点要点に作るということは、次代の人々がそういう歴史を今後認識をしてやっていく場合の非常に大きな教訓になるのではないかというお話をしたのですが、まあ簡単なことのようですけれども、こういう問題についてもどういうふうに処理されておるのであるか、お伺いしたいと思います。
  24. 浜口雄彦

    浜口参考人 角屋さんの御意見、まことにごもっともでございまして、現に、牧尾堰堤につきましては、今月の二十八日に完工式をやります。完工式は午後一時半でございますが、午前十一時より犠牲者の遺族の方々を招きまして慰霊祭を取り行ない、なお、ただいまおっしゃった頌霊碑と申しますか、慰霊碑の文句は今ちょっと考え中でございますが、碑を建てることにいたしております。また、水路の面におきましてもそれぞれ考えております。
  25. 角屋堅次郎

    角屋委員 きのう丹羽先生からお話が出た問題でありますけれども、私ども現地視察に行って心配した点でありますが、幹線水路等において児童の危険防止という問題をよほど考えないというと、やはり、モルタルのライニングもしてありますし、水が通水するようになると相当すべりましょうし、また、流速についても通水期には傾斜の関係で相当な流速を持ってくる。こういうような諸般の点から、これは農地局長にも丹羽先生の方からお尋ねになりましたけれども、これらの問題はこまかいようでなかなか一般の地元の関係者から見れば大へん重要な問題だと思うのですけれども公団側として、あるいは場合によっては県側として、そういう幹線水路等における危険防止というふうな問題について今後さらにどういうふうに補てんをされるのであるかということをお伺いしたいと思います。
  26. 浜口雄彦

    浜口参考人 危険防止の点につきましては、私ども前から心を砕いておるのであります。たとえば県道とか町村道と水路が交差する地点、つまり、橋でございますが、この四つのすみにさくを設ける、これはいたしております。それから、学校の近辺、つまり、学童が通るところは、網を張るなり、さくを作るなり、もうすでにやったところもございますし、また、これからもやります。なお、部落の密集している地点なんかにもそういう処置を講じます。なお、サイフォンの入口にはやはりさくを作りまして、人間が下に落ちても中に吸い込まれないようにこれもやってございます。また、人間が落ちたときにその付近に手でつかまってはい上がることのできるような設備もいたしております。
  27. 伊藤佐

    伊藤参考人 私からもちょっと補足させていただきますが、これは大へん大事な問題で、実は私ども最初から非常に頭を悩ましている問題でございます。それで、今総裁から説明をいたしました点等につきましては、それぞれ現場の事業所におきまして、地元、それから地方の警察ごとに作られております防犯協会でもって安全のこともやっておりますが、それから、学校、PTAといったような方面とそれぞれ連絡をいたしまして、現在のところではただいま申し上げましたようなことでございますが、むろんこれをもって満足とは考えておりませんので、なお今後ともできる限りそういったような点を充足して参りたい。なお、それには地元の町村でございますとかあるいは県の御協力も願わなければならないと考えておりますが、昨日もその問題は丹羽先生からお話がありまして、さっそく私の方から現地の方へ連絡をいたしまして、まだできてないところは早くするとともに、今後の点につきまして地元側と一そういろいろ御協議をいたしまして万全を期するようにと、現地の方へも言ったところでございます。
  28. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 ちょっと関連して……。  決して私はこの工事に対する批判的な態度でお尋ねしたり要望したりしているわけではないのです。ただいま角屋先生から、地元の者の要望する気持をほんとうによく理解して、昨日の私のお尋ねやら要望等にあわせてまたやっていただいたようなわけですが、この世紀的な、また感謝さるべき工事が、ちょっとした最後の事業の節約のために恨まれるような工事になってはならないと思うのです。ただいま総裁の御答弁によると、県道の横断個所だとか、あるいは学校付近だとか、部落が密集しているところとか、サイフォンの取入口に対してはそういう施設をする、中にはすべり込んだ者がとまりついてよじ登るような方法も考慮しておる、こういうお話でございますが、当然それらのことはやっていただかなくてはならない。きのうの農地局長の御答弁によりますと、残存工事費と申しますか、これが非常に少なくなってきた、だから今後よく考えてみるというお話。これは公団とは食い違うわけです。ここではっきりしておいていただきたいのは、工事中においてできないにしても、今後、愛知用水公団法が一部改正になって、主体が豊川の方へ参りまして、旧来の愛知用水関係管理のみのものになりましても、これはあくまで責任を持ってやっていただかないと、あの広い長い水路で、あの急勾配で、今角屋先生が言われましたように相当な流速、しかも水あかがつけばつるつるすべる。これが二百メートルも三百メートルも長かったならば、行きつく先もない、すがりつく先がない。こういうことでは危険この上ないのです。だから、先ほど伊藤さんは技術指導についていい面を言われたが、私は、逆に、技術指導によって非常な間違った点があると思うのです。それは、アメリカのような広い区域で、子供たちがどこでも遊ぶ場所がある、暑くなって水を欲するときにどこでも要求通りに水遊びができるという感覚であの設計がしてあると思うのです。何となれば、都会の周辺で、あの開渠で、あの急勾配で、相当の速度で水が流れていくのにかかわらず、とまってよじ上がるものもなければ、落ちることに対して危険の防止をさらにしていない。それで、今後できた上に、これは必ず悲しむべき現象が起きてくる。だから、しっかりやっておいていただかないと、感謝されるべきその工事が恨みの工事になるおそれがある。そうして、これは取り返しがつかないのですよ。私はもう一つ申し上げると、なるほど、学校の周辺だとか、あるいは部落の密集しておるところとか、県道との踏み切り等で両四隅やるのは、これはあたりまえのことだと私は思うのです。これからの子供たちが、行くな行くなと言ったとて、あのきれいな水が通る、目の前に涼しい水が通れば、子供は寄りつくのです。寄りついて落ちたら死ぬよりほかに方法はありません。あそこへ寄りついてずるずるとすべり込めば、もう死ぬ以外にない。それをしっかり一つ考慮していただきたい。農林省の方は、残存工事がもうないと言われる。あなたの方では、ぼつぼつやる。さくの方はやっていない。それでは私どもは危険この上ないから、この点は管理方式になっても十分なことをやるかやられないかということを一つしっかり承っておきたいと思います。せっかく角屋先生からお尋ねのところでありますが、私は地元で非常に痛切にそれを感じる。もし取り返しのつかないようなことがあって、その責任は一体だれが取るか。だれが取るにしたって、死んだ者の命は戻ってこないのですから、その点を一つ強くお願い申し、お考えをしていただきたいと思うのです。
  29. 伊藤佐

    伊藤参考人 私もさっきの御説明が舌足らずでありましたので恐縮でございましたが、現在は、そういったようなことで、さしあたりできます急所急所だけをとりあえずやります。それから、今後は、管理段階のものを含めまして、それを、できるだけ早い機会に、いろいろ地方の方とも御相談し、県や何かの応援も得まして、何とか心配のないようにいたしたい、こういうつもりで申し上げたのであります。おっしゃる通り、これは全く取り返しのつかない事態を生ずる問題でございますので、そういう点につきましては十分注意してやって参りたいと思います。  なお、さっき丹羽先生もおっしゃいました、アメリカとは事情が違うという問題でございますが、お説の通りでございまして、内部的にはいろいろ議論になったことを聞いております。アメリカあたりでは、むしろさくをするとかえって子供というものはさくに登りついたりして、危険を生ずることがあるから、しない方がいいのだという議論も出たそうでございますが、それはアメリカと日本は違いまして、これは私どもの方の技術者が押し切りまして、現在のところ非常に不十分ではございますが、現在の状況にまで来ておるような次第であります。あわせて御説明申し上げます。
  30. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 せっかく角屋先生の御質問のときに関連して私が長くお尋ねすることは恐縮でございますから、重ねて要望だけでおきます。どうか、私の申し上げ、また私が強くお願いしております真意をよく理解していただきたい。そこで、きのうも言いましたように、愛知用水幹線工事そのものの予算があるとかないとか、また、管理そのもので考えていくとかなんとかいうような責任のなすり合いでゆっくり考えていくというようなことでは、六月の通水で、もう、あってはなりませんが、あると考えなくてはならぬ。ところが、六月の通水になったときにおくれたというようなことのないように予算の面でもよく公団政府において考えていただいて、この点はしっかりやっていただくように重ねて私は要望しておきます。答弁の必要はありませんから、御納得いただけたら努力していただくようにお願いしたいと思います。
  31. 角屋堅次郎

    角屋委員 公団職員の今後の身の振り方の問題でありますが、私どもの資料では、三月三十一日現在で職員が六百十八名、嘱託が三十四名、常勤労務者百十八名、締めて七百七十名というふうに承知しておるわけでありますが、公団の陣容は今後五百三十名というふうなことで、これがそれぞれ、本省業務、愛知用水管理業務あるいは愛知用水残存工事の業務、さらに新しく許可されます豊川用水の建設業務というふうに分かれて参るというふうに判断をしておるわけです。従って、豊川用水に入れる人員の問題、それから、当然公団から他の方面にかわってもらわなければならない対象の人、ただいまの公団総裁のお話では、まだ十分身の振り方がきまっていないやに話が出ましたけれども、これは二百数十名、そのうちで、国家公務員関係への復帰の希望、あるいはまた地方公務員関係への復帰の希望、あるいは自然退職の見込み、こういうふうなものにそれぞれ分かれて参ると思いますけれども、もう少しこの豊川用水職員の受け入れとも関連をして職員の今後の身の振り方の問題について具体的にお話を願いたいのであります。
  32. 伊藤佐

    伊藤参考人 角屋先生おっしゃいましたように、七百七十名というのが本年の初めの定員でございます。それで、現在では、逐次、事業完成した部分、たとえて申しますと、牧尾ダムというごとき、人がだんだん要らなくなった部分、そういうようなところがらほかの方に転職を世話しておるわけでございますが、そのほか、また、そうでなく、地元採用の方で今適当な口があるからそっちの方へというふうなものもございまして、五月一日現在ではそれが七百十二名になっております。結局七百七十名から七百十二名に減っておるのでありますが、現在まだ次々にやっておりまして、近く行くのがまた数名もございます。そういったような状況でございます。実はいろいろと本人たちも迷っておる点があるわけでございます。たとえば、名古屋に居をかまえておりまして、どうしても豊川の方に行って仕事ができないというような家庭的な事情ではっきりきまっておるような人につきましては、あとの公団に残ってもらいますなり、あるいはまた名古屋でもって仕事を世話するといったことになるわけでございますが、そうではなく、あるいは県から来た、あるいは国から来たというふうな人たちにつきましては、県の方との話し合いで県がとろうといったような場合におきましても、あるいはどうも県へ帰るよりは今度は豊川ができれば豊川で思い切ってまた腕をふるってみたいといったようなこともございまして、一人二人がそういったことを考えますと、またそれがみんなにやっぱり影響したりなんかいたしまして、今のところ、この人たちは、必ず県へ帰る、こっちは国へ帰るというふうなことを必ずしもはっきりできないような情勢にございます。ただ、全体といたしまして、さっき申し上げました差引二百四十名ばかりの人たちについて、今年じゅうに転職したり、あるいは就職のあっせん、あるいはまたもとへ復帰するというような点につきましては、非常な努力が要りますし、また、いろんな方面の御協力をいただかねばならぬと思いますが、これは、できるもの、また、やらねばならぬ、かように考えております。
  33. 角屋堅次郎

    角屋委員 県側の方にお伺いをいたしたいのでありますが、県の方から、愛知用水地域農業計画案、あるいは七つに分けまして愛知用水部落営農計画案、こういうものを資料としていただいておるわけでありますけれども愛知用水事業受益地区の自然的条件あるいは農業関係、漁業関係を含めての諸条件、こういうふうなものを資料によっていろいろ判断をして参りますると、これから農業の変遷等も展望しながら営農仕上げをやるということはなかなか並み大ていのことでないように判断をいたしておるわけですけれども、基本方針として、主として農業方面におけるこれからの営農指導の持っていき方というものをどういうふうな考え方においてやっていかれようとするのか、その点、県側からまずお伺いいたしたいと思います。
  34. 松尾信資

    松尾参考人 ただいまお示しのように、この営農指導ということはきわめて重大な問題であり、また、非常に新しい時代に対応しながらこの営農指導をやっていくという点でいろいろ問題もあるわけでございますが、県におきましては、当委員会からもいろいろと御指導、御鞭撻を願いまして、県といたしまして、先般お手元にお届けしましたようなそれぞれの営農計画を立て、また、地域全体としての営農計画と同時に、これは県が全体的に掌握しまして、さらに、現地には、いわゆる地方事務所単位なり郡単位と申しますか、そうした単位ごとにそうした営農指導計画とか、同時に、そこの住民のそれぞれの組織を作り、また、町村、さらに末端に行って各部落というように、一方では営農計画を持つと同時に、それを実施していきます住民の組織を作り、末端には、それぞれ、末端下部組織といいますか、そうした営農組織まで持っていって、そうした指導計画とこの指導の組織、また、県の職員はそれぞれ現地職員を配置いたしまして、営農の万全を期しているわけでございまして、当初は、愛知用水地区も、食糧増産、いわゆる主食の増産を主体にいろいろ考えられたわけでございますが、現在の営農実態は次第に果樹あるいは酪農ということに重点が来ておりますので、これらの問題に対処しましても、できるだけ新しい時代に即応するような営農体制を作りまして、特にこの地区は、愛知用水の効果を最大限に発揮いたしますについては、いわゆる畑地灌漑ということが最も重大な問題でございまして、この畑地灌漑につきましては、県といたしましても最も重点を置きまして、いろいろ試験地を作り、全体としましてそれぞれ、その畑地灌漑試験と同時に、これを農民に実地において参加させてなれさせるというような考え方で、今後営農の万全を期したいと思います。また、営農につきまして、特にあの地域におきましては、将来工業が発展してくるに伴いましていわゆる兼業化というものも当然増大してくる。そういう点から考えまして、あの地区におきましては、ある程度兼業化は当然の問題として考えまして、しかもその兼業によっても収益が減少しないように共同経営組織というものを十分取り入れまして、今後営農体制の万全を期するように考えていきたいと考えているわけでございます。これは、しかし、実際の問題になりますと、通水したその実情に応じながら、逐次、県といたしましては、御指導も受けて、また現地農民とも協力いたしまして万全を期していきたい、かように考えている次第でございます。
  35. 角屋堅次郎

    角屋委員 これからの営農の問題はたくさん問題点があるわけですけれども、経営の拡大との関連の中で出て参ります農地造成の部分の配分を一体どうしていくのか、こういう点についてきのうも農地局長にもお伺いしたわけですが、県の資料によりますと、千五百七十八ヘクタールの耕地造成のうち、百八十三戸の入植計画、それ以外のものについては地元増反として経営の拡大にこれを配分をする、しかも、経営拡大の配分の対象としては、経営規模七十から百アールの者に対して三十ないし五十アール、場合によっては二十ないし三十アールの配分を行なう、百五十ないし二百アールの者に対して十ないし三十アールの配分を行なって、それぞれの対象農家戸数として千六百、千二百、六百五十戸、こういうものが資料として出されているわけでありますけれども、農地造成に伴いますところの入植あるいは地元増反の配分の考え方としては、こういう考え方でいかれるのであるかどうか。さらに、資料の中に、新規入植の百八十三戸の問題については、牧尾ダムの建設に伴う水没者を優先受け入れるというような方針等についても書かれているわけでありますけれども、どういうふうな現況になっているのか、こういう問題について県側の御意向、あるいはこういう問題に対して土地改良区として御意見があれば、承っておきたいと思います。   〔委員長退席、田口(長)委員長代   理着席〕
  36. 森山貞之丞

    ○森山参考人 ただいまの角屋先生の御質疑に対してお答え申し上げたいと思います。  愛知用水受益地の開拓地の配分の問題につきましては、御案内のごとく、愛知県におきましては、開拓審議会の中の入植選定部会というものが定められておりまして、これの入植選定の基準によりまして配分を行なっているわけでございます。そこで、開拓地の配分面積につきましては、その地帯の立地条件とか、また農業経営の形態あるいは資本力などの複雑な問題がございますので、一がいにその面積も決定いたしますることは非常に困難ではございます。しかしながら、愛知県におきます現在までの配分面積は、平均いたしまして一・三ヘクタールを標準といたしているわけでございます。ただ、愛知用水受益地の開拓地につきましては、昭和三十二年に愛知用水地区開拓計画を策定されたのでございまして、営農が逐次機械化の傾向がございますような点、また、自立農家の造成のためにいたしましても、従来の一・三ヘクタールの面積を増加いたしましてこれを一・五ヘクタールに大体きめているわけでございます。この内訳は、農業が一・四ヘクタール、宅地が〇・一ヘクタール、合計いたしまして一町五反と相なるわけでございます。また、このうちに〇・三ヘクタールないし〇・四ヘクタールは自給飯米確保のためにこれを水田といたすことといたしておるわけでございます。なお、この自立経営のための家族の構成につきましては、労働力の重点配分とか、また労働の能率向上等をこの入植選定の基準要素といたしておるわけでございます。また、開拓者のいわゆる資質の向上を期しまするためにも、御本人に営農に専心いたしまする決意があるかないかという点も選定の要件といたしておる次第でございます。なお、増反者の選定の基準につきましては、角屋先生の御指摘にございましたその面積でございます。  以上が現在までの愛知県の入植選定部会におきましての選定基準でございまするが、これは、堅頭申し上げましたように、昭和三十二年に定められた方式でございまして、今日農業基本法が打ち出されておりまする現在、自立いたしまして安定農家となりますためには、経営の面からいたしましても、また営農技術的な点からいたしましても、従来の土地配分面積では経営規模が小さいと考えるのでございまして、今後の開拓にあたりましては、その点を十分留意いたしまして配分計画を樹立いたして参りたいと考えておる次第でございます。  なお、御質問のございました牧尾ダム水没農家方々愛知県の受け入れの状況でございまするが、当初、愛知県内に受け入れられまするこれらの方方につきましては、愛知県といたしましては再三にわたりまして県内の現地の紹介を実施いたして参りました。そうして極力これがあっせんに努めて参ったのでございまするが、現実には、当初のお申し出は百余戸でございましたが、それをはるかに下回る二十四戸という数字に相なっておるわけでございます。この内訳につきましては、ほとんど豊橋開拓地がおもでございまして、愛知用水受益地におきましては三好開拓地区に六戸入植をされておるわけでございます。しかしながら、現在におきましては、いずれもこれらの入植の方々営農を全く軌道に乗せまして、他の開拓農家の模範となる営農状態でございまして、私ども非常に喜んでおる次第でございます。
  37. 角屋堅次郎

    角屋委員 愛知用水事業の基幹工事は一応終了し、通水段階にあるわけでありまするけれども愛知県側の資料にもありまするように、今後耕地整備事業あるいは水田改良事業として団体営なりあるいはまた非補助融資をもってやる部面というものの面積については相当な面積に上っておるわけであります。先ほども要望の中で日高さんからもお話がございましたけれども、私ども現地に参りまして耕地状態を見ますと、これはやはり、愛知用水事業が相当の大きな成果をあげるためには、仕上げは今後に残されておると思うのであります。従いまして、こういう耕地整備事業なりあるいはまた水田の改良事業等に対する県側のこれからの段取り、あるいは土地改良区としてこれからのやはり希望というようなものについて、この際一つ具体的にお話しを願いたいと思います。
  38. 森山貞之丞

    ○森山参考人 お答え申し上げます。  耕地整備事業につきましては、これは角屋先生御案内のごとく事業主体は改良区でございまして、愛知県が指導・監督するという立場に相なっておるのでございます。現在までの状況につきましては、先ほど総務部長からお答え申し上げました通り土地改良区で行なっておりまする耕地整備事業の総面積は三千七百町歩ございますが、これらにつきましては、もうほとんど四月までに完了をいたしておるわけでございます。その他、土地改良の面につきましても、十分今後農林省当局並びに公団と連絡を密にいたしまして、所期の目的完遂に努力いたして参りたい、かように考えております。
  39. 日高啓夫

    日高参考人 御質問の畑地整備の未着手のものでございますが、これは団地二十町歩以上のものにつきましてはおおむね完了いたしております。問題は、二十町歩未満あるいはごく小団地のものを今後極力国の御援助並びに県の援助をいただきまして進めて参りたいと思います。地元の要望も、そうした個所につきましては、はっきり希望のあります地区と、今後希望をとりまとめて参る地区と両方あろうと思いますが、相当面積これをいたしませんと水が末端まで利用できかねますので、これを今後の事業として取り上げて参りたい、かように思っております。
  40. 角屋堅次郎

    角屋委員 これは三十四年の七月の閉会中の審査の場合に足鹿先生から取り上げられた問題でありまするけれども、いわゆるこの愛知用水事業に伴う純収益というものを一体どこまで見込み得るか。この点については、土地改良区の方で、当時、第一次の試案としては、純収益三十八億円、第二次試案ではそれが下がりまして二十八億円、第三次試案では、さらにそれが、報告等が出ておらない部分が一部あったという理由もありましょうけれども、純収益が十五億円、こういうふうに非常に大きな激減を、第一次、第二次、第三次と逐次して参っているような経緯でございます。当時、土地改良区としても、第四次の純収益を具体的な実地の精査に基づいて立てたいということを申し述べられておりましたが、県側としてはそういう問題についてはまだ当時は作成されてはおらずに、これは県の資料ではなくして土地改良区の資料であるということで当時盛んに弁明をされておったのでございますが、県側といたしましても、やはり、こういう事業の純収益が、具体的な営農その他諸般の実地精査に基づいてどれだけ見込み得るかということは非常に重要な問題でありまして、今日の時点において、県側のこういう問題に対する試算、あるいは土地改良区が現地の精査に基づいて出しております試案、こういうものを具体的に御発表願いたいと思います。
  41. 松尾信資

    松尾参考人 作付計画等、増産につきまして、当初の計画に対して、ただいまお話がありましたように、われわれとしましても現在の実態に即応いたしましていろいろ検討いたしました。現在持っておりますこの実行計画におきましては、水稲におきまして十二万一千石、それから陸稲について五万四千石、それから、麦類については、これは当初計画を相当に減少いたしまして一万四千石、菜種一万二千石、カンショも、これは当初計画を相当減少いたしまして一千二百万貫、それから蔬菜二百万貫、それから果樹二千三百万貫、飼料作物、これは当初には考えられなかったのですが、先ほど申しましたように、酪農を増大するために一千八百万貫、こうした考え方で増産計画を立てまして、純収益としましては、これらの結果、二十億一千三百万という計画を立て、この計画に基づいて現在営農体制を進めているわけでございます。  以上、お答えします。
  42. 日高啓夫

    日高参考人 第三次試案以後は、県の方でいま少しく精密な計画を立ててもらいたいということで、ただいま総務部長から御返事申し上げましたような数字が出たわけでございますが、これに対しましては今後の努力に待たなければならないと思います。経営改善の今後の変化があると思いますが、極力これらの計画にマッチいたしますように地元のPRをいたして参りたい、かように思っております。
  43. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいま県側の純収益の基礎になる作物の増収の見込みというものが御発表になったわけですが、米麦、カンショ等、これからの政府・与党の農業政策の中では、これは名古屋市という相当大きな消費地を控えておる問題その他地域的な条件はやはりあろうと思いますけれども、ただいまのお話の点からいきますと、そういうことで行き得るかどうかということは資料をいただいて十分検討してみなければ判断はできませんが、いずれにいたしましても、約二十億一千万円という数字を出されておるようでありまして、この数字は、大体第二次試案と第三次試案の中間的な純収益、当初土地改良区で出されました三十八億円というのにははるかに遠いという関係に相なって参りまして、反当収益といたしましても相当低下してくる。  そうすると、これはきのうも取り上げた問題でありますし、かねてから問題になっておる農民の負担の問題、これは、いろいろ、受益総面積の減少等あるいは予算の増加等にかかわらず、農民負担については相当程度考えられたという経緯もあるわけですけれども、なおかつ、日高さんからお話しのように、今後の営農実績というものが所期のように進んでいかないと、はたして十分農民負担が消化できるかどうか、これは相当大きな問題であろうと思うし、でき得べくんば農民負担をさらに軽減する方途というものを十分考える必要があるのじゃないかと思うのです。この点は日高参考人からも御意見があったわけですが、県側として、今後の営農指導の問題、それによるところの成果の結実と農民負担関係というようなものについて、確信を持って遂行できるかどうかどいう点についてお伺いいたしたい。
  44. 松尾信資

    松尾参考人 農民負担の問題につきましては、県といたしましても、できるだけ軽減をしていきたい、いろいろ農林省の方のお話もございまして、反当たりの平均の負担額を当初程度に据え置くという方針に基づきまして、県が農民負担の肩がわりというような意味におきまして相当額を負担するということで農林省と話を進め、また、これは県の議会方面にはまだ話しておりませんが、そういう線で県の内部と農林省意見を一致して農民負担軽減を進めております。さらに、今後の問題といたしましては、先ほど申しましたように、できるだけ営農の成績を上げるということが大切であると思いますし、一方では、できるだけ愛知用水施設を高次的に利用するという関係におきまして、できるだけ農民負担軽減に対して努力していきたい、かように考えておるわけでございます。
  45. 角屋堅次郎

    角屋委員 当時、農民負担は平均三千三百円の負担を十年間というふうな関係で、その根拠としては、用水補給田が反当概算二千四百円、普通はだか麦の地域が二千六百円、開畑・開田が五千七百円、果樹園が二千七百円、これらの平均として三千三百円という試算をされておるわけですけれども、具体的に今日の実態について農民負担の仕訳の内容というようなものは大体どういう見当になっておるのか、数字的な問題をお話し願いたいと思います。
  46. 松尾信資

    松尾参考人 負担の問題につきましては、現在、国の方から一応平均負担で示されて、その線に沿うて県は検討しております。まだ、各受益地区、それぞれ個々の水田とかあるいは畑地灌漑、また畑地灌漑の種類によってプラスするというようなことは、それぞれ現地実情において差等も出ると思いまして、現在まだそれについては成案を得ておりません。できるだけこれを基準にして農民負担軽減ができるように、合理的に土地改良区の方、国の方とそれぞれ御相談いたしましてこれは決定さるべきものである、かように考えて、県もその立場においてできるだけ努力して今後合理的にこの問題を解決するようにやっていきたいと考えておる次第でございます。
  47. 角屋堅次郎

    角屋委員 畑地灌漑の運営と成果がどういうふうにあがってくるかということが、純収益を上げる上においても、あるいはまたあの地帯の今後の営農指導の面においても非常に重要な問題の一つになるわけですが、県側の資料によると、畑地灌漑ローテーション・ブロックというものを作って、作付等についても十分調整しながら水の補給等についてもこれを合理的にやっていこう、こういう考え方のようでありますが、なかなかこういう規制的な運営という問題については農民側としてはなれておらない問題でありまして、具体的にこの畑地灌漑ローテーション・ブロックの運営問題というものについてどういう指導をされ、具体的にどういう計画のもとに今日来ておるかという点について、県並びに土地改良区の方から実情をお話し願いたいと思います。
  48. 松尾信資

    松尾参考人 このローテーション・ブロックのそれぞれの運営の問題でございますが、これは、現在は、どっちかと言いますと、試験的に、一定地区を作りまして、それぞれの地区におきまして約一ヘクタール程度の試験区を作って、それぞれの地区の農民の参加を求めながら、同時に県においてもやり、できるだけこの実績が農民に浸透していくようにやっております。実際問題として、今後水が来てその作付統制とか水利統制とかいうものに、お示しのように非常に困難な問題があると思いまして、県におきましても、各農家に畑地灘酒読本というような名称をつけまして畑地灌漑に対する農民としてとるべき資料も作って、それをもとにして講習をする、それと同時に、現地指導に当たっております県の普及員その他にも絶えず実際と理論と両方の面から数回繰り返して指導講習をやっておりまして、それらの方法を通し、また、各部落については部落座談会などを絶えず行なって、この畑地灌漑、これは新らしい農業形態でございますので、これを完全にいくようにやっております。また、新聞とかラジオ等もこの問題につきましては非常に協力してもらいまして、いろいろの機会に、今後の名古屋付近の営農の根本はこの畑地灌漑にあるのだということでやっておりますので、現在準備体制としては順調にいっていると思います。しかし、実際の問題としては、いよいよ水が来て各町村にその水が行って、それに基づく実際計画を軌道に乗せていくというのには相当困難を予想される問題もあると思いますが、これにつきましては、土地改良区とも十分協力をいたしまして、県も最善を尽くしていきたいと思いますので、御了承願いたいと思います。
  49. 日高啓夫

    日高参考人 この問題につきましては、土地改良区といたしましては、県の指導と相待ちまして、郡単位、町村単位、さらに部落単位に分けまして、愛知用水営農推進協議会というようなものを作って参りまして、部落単位で今後のローテーション・ブロックの改善の検討をただいまいたしつつある状況でありまして、なお、さらに水系別にもこれを分けまして、目下水の参りますまでに一応の成案を得たいと思いまして努力中でございます。
  50. 角屋堅次郎

    角屋委員 愛知用水受益地区の状況から見て、臨海工業地帯の今後の進展等とにらみ合って、農地転用の動向というものが非常に注目をされるわけであります。もちろん、この点については、昭和二十五年から三十四年の十年間に約三千一三百ヘクタールの農地転用がなされておる、しかもこれが三十年以降急激な上昇傾向を示してきておるというふうなことでありまするけれども、この機会に、受益地区方面における今後の農地転用の動向というものについて、県側として、工場が地方に分散をして設置されてくるのと見合って、どういう展望を少なくとも今後十年間において持っておられるか、この点一つ県側の方からお伺いをしたいと思います。
  51. 松尾信資

    松尾参考人 最近の愛知、名古屋を中心にします工業の発展というものは、御承知のように、きわめて目ざましいものでございまして、それに伴いまして工場の増設もありますが、私どもは、名古屋地区から知多半島にかけましては、できるだけ工業は臨海工業地帯、言いかえれば、海面の埋め立て造成を主体にして、ここに重化学工業を置く、そして、もちろんそれに関連します住宅とかいうもので知多半島地方にも相当の農地壊滅が生ずるということも考えられます。しかし、工場そのものにつきましては、むしろいわゆる名古屋周辺よりはもう少し外に出まして、いわゆる衛星都市を中心にし、岐阜、三重を一体としました後背地の開発を考え、こうしたことにより内陸地帯の工業地帯を造成していくというような基本的な考えで計画を進めておりますが、現在、内陸地帯の農地の壊滅が一体どういうふうになるか、十年後にはどれだけ壊滅するかということは、現在正確な数字は持っておりませんし、また、いろいろ推定もやっておりますが、われわれも自信のあるものを持っておりませんが、公平に見て、ただいまお示しの大体これまでの農地壊滅の趨勢が今後も続く、しかし、この愛知用水受益地区におきましては、やはり、いわゆる近郊農業地帯として非常に重要な地域でございますから、われわれは、こうした近郊農業として適当な地域には工場が設置されるということはできるだけ避けていきたいという気持を持っていますので、そう、いわゆるこの知多半島の受益地区が工場化するということは、一般の想像よりは少ないと思っております。現在数字的に内陸工業地帯はどれだけという数字は持っておりますんが、今後、調査いたしまして、できるだけ正確な方向づけをやっていく。そうした意味におきまして、現在、われわれも、従来の地方計画を改定して、新地方計画というような形で、いろいろ専門家の御意見も承って計画を進めておる途中でございますので、御了承願いたいと思います。
  52. 角屋堅次郎

    角屋委員 知多半島を中心にした愛知用水受益地区の今後の産業の変遷がどうなるかということは、これはいろいろ条件があるわけですから、明確には判断できないと思いますけれども、かねて、愛知用水事業の問題と関連をして、基本計画の中で取り上げておる農業用水あるいは工業用水上水道用水の配分問題、特に当時東海製鉄の誘致問題等もからんで、今後のそういう新規の工場関係に対する工業用水は一体どこから求めるのか、場合によっては矢作川のこれからの開発の問題、あるいは天白川の伏流水の活用問題、さらにはまた工場新設地域における地下水の利用、各般の問題が一応素材としては言われたわけでありまするけれども、今後の工業の発展に伴う工業用水の総合計画というふうなものを、特にこの受益地区に焦点を合わせてどういうふうに県側として見通しておられるか、この点を一つお伺いいたしたい。
  53. 松尾信資

    松尾参考人 ただいまお示しの名古屋港を中心といたします臨海工業地帯につきましては、愛知用水計画当時におきましては、まだ日本の工業の将来というものに対する見通しもきわめて悲観的な状態でございましたので、御承知のように、われわれは、当時、愛知用水は総合開発事業としまして、工業用水については秒間にしまして約一トン程度、年間二千八百万トン程度のものを工業用水として計画し、一千七百万トン程度のものを上水道として計画したのが現在実施している計画でございます。しかし、その後、日本の工業の発展に伴い、特に臨海工業地帯の発展ということが重大でございまして、名古屋南部地区におきます東海製鉄の建設を中心にして、新しい埋め立て造成、並びにここに工場の進出が非常にわれわれの想像以上に進んでおります。われわれは、現在、名古屋南部のいわゆる臨海工業地帯の造成は、大体昭和四十五年を目標にして現在検討中で、まだ最終計画はできておりませんが、一応われわれが考えております計画としては、昭和四十五年の工業開発として、名古屋南部で約四百三十九万坪の臨海工業地帯を造成したい、これに要します工業用水としては、大体日量にしまして五十万トンないし六十万トンを要するのではないか、かように考えております。なお、このほかに、現在、知多半島東岸といいますか、いわゆる衣浦湾沿岸におきましても、最近非常に工場の進出希望が多くなりまして、ここにも臨海工業地帯の造成が進められておりまして、これは大体四十五年ごろまでに百二十七万坪ぐらいの造成ができるのではないか。それに要します工業用水は、大体日量にしまして二十万トン程度のものかと存じます。これに対しまして、この名古屋南部につきましては、工業用水は、現在の一トンのほかに、さらに約六トンくらいの水が必要になる、かように考えておるわけでございますが、これにつきましては、先ほどもお願いいたしましたように、現在この水利、水源対策というものは最も重大でございますが、これについては、われわれ地元県としても、それぞれの方面協力しまして、現在、中部地建を中心にしまして、地元と三重県、岐阜県及び農地局、通産局というようなものが一緒になりまして、木曽三川の三川協議会というものを作りまして、ここでいろいろ水源計画を検討しておりまして、これら工業地帯の発展並びに名古屋市等の都市用水の増加に対する対策、また、三重県、岐阜県等の工業用水、都市用水に対する計画、さらに農業用水との関連をいろいろ検討しておりますが、われわれの考えでは、今後これらの問題は木曽川の総合利水計画を推進することによって確保していきたい。そうして、この南部の用水については、現在、愛知用水水路を、この兼山の取水条件を改善することによって、現在の取水量を増加することによってこの水を供給したいという考えで、いろいろ関係各県と協力して調査研究を進め、そうした方向で問題を進めておるわけでございます。もちろんこれは一気に実現できる問題ではございませんで、これについては、下流方面の農民の方々立場も十分尊重し、また、関係各県の将来の利水事情というものを十分考えて、総合的に木曽、揖斐、長良三川を一体としまして、最も合理的に開発するということでこの問題を解決したいと思います。ただ、われわれは、そうした点におきまして、現在の日本実情から見て、この三川くらい水に恵まれている河川はございませんから、これを各方面協力一致して開発したならば、これらの問題は解決できるものだ、こういう確信を持っておるわけでございますが、これらにつきましては、しかし、地元のそれぞれの立場関係の調整と同時に、国において非常な御援助を得なくちゃならぬ問題だと存じます。幸いにして、国においても水資源開発については、いろいろ根本的な対策も立てられておるようでございますので、これらと関連し、今後の用水対策については格別な御配慮を願いたい、かように考えておる次第でございます。
  54. 角屋堅次郎

    角屋委員 私がお尋ねいたしましたのは、矢作川の開発の水関係の評価、あるいは天白川の伏流水の評価、さらに知多半島方面における地下水の利用の数量、こういうものについては全然お触れにならなかったわけですが、これらの問題についての県の検討の経過は一体どういうことですか。
  55. 松尾信資

    松尾参考人 先ほどの答弁は不十分でございましたが、衣浦方面は原則として矢作川の開発によって供給したい。これは、現在中部地建におきまして実地調査をしまして、来年あるいは再来年ころに事業に着手するという見通しで、現在現地で調査を進めておりますので、衣浦方面、いわゆる知多半島の東側の方面工業用水、これは原則としてこの矢作川に依存したいという考えで今計画を進めております。  天白川その他につきましては、これも応急的な水量として使いまして、現在におきましては、東海製鉄の操業が大体八月ということになっておりますので、それまでにはこの愛知用水通水を見るということで、これによって当初のわずかのものでございますが補給は可能でございます。  地下水につきましては、現在東海製鉄の工事中の用水は地下水によってまかなっております。しかし、大局的に申しますと、知多半島自身には地下水の依存量というものはきわめて少ない、また、今後においてもそう期待できないという考えで、われわれは、今後の水は、いわゆる名古屋港沿岸におきましては主として木曽川に依存する、それから、衣浦方面につきましては矢作川に依存するという考えで計画を進めておる次第でございます。
  56. 角屋堅次郎

    角屋委員 愛知用水の兼山からの水量の活用ということを相当に期待されておるようですが、これはかねて本委員会でも皆さん方を呼んだときにも相当に激論のあった点でありますけれども、今申された、いわゆる愛知用水幹線水路を使い、兼山から非灌漑期に取る、あるいは、灌漑期でも、三十立米毎秒の満ぱいの通水はやらないのだから、その面の余裕を活用をするとかいうふうな希望が県側としてあったようでありますけれども、これらの問題については、一体その後農林省あるいは公団県側との間でどういう話し合いが進んできておるのか、きょうは参考人が対象でありますから、公団側の方からこの問題に対する従来の経過についてざっくばらんにお話しを願いたいと思います。
  57. 伊藤佐

    伊藤参考人 ざっくばらんに申しますと、この問題は私の方は受け身でございます。それで、結局、そういった水のお話し合いが各方面でできました場合、そしてまた私の方の現在の計画に支障がない限り、それには下の方にため池を作るといったようなことが要ると思うのであります。そういったようなことが充足されますれば、私の方としては余裕断面を利用して通水するということについてはむろん異存はございません。それによりましてさらに農民の負担が軽くなるということであればまことにけっこう、かように考えております。
  58. 角屋堅次郎

    角屋委員 今の問題を伊藤さんはきわめて簡単にお答えになりましたが、これは、今後の推移に待たなければならない問題がはっきりすれば、さらにその時点で検討して取り上げたいと思いますが、いずれにいたしましても、愛知用水事業の基本計画との関連ないしは知多半島方面における工業の今後の発展の推移と見合って、工業用水の確保をどうするかということは大へん重要で、かつ、関係県、関係地域との総合的な関連においてはなかなかむずかしい問題を含んでおることは御承知通りでありまして、これらの問題は、今日の時点でまだ明確にならないとすれば、そういう問題が明確になった際に十分検討の上に立ってあらためてまた問題として取り上げたい、こういうふうに思います。  本日は時間も午前中ということで制限をされておりまして、特に愛知用水事業の基本工事の終了に伴う今後の実り多き成果を得るためにはどうするかという具体的な問題について詳細触れて現地側の御意見を聞くいとまがなかったのはまことに残念でございますけれども、申し上げるまでもなく、愛知用水事業は、本省あるいは公団、県、土地改良区、それぞれの長い間の努力によって基本工事としては終了の段階に来ましたけれども、今後この仕上げという問題についてはさらに一そう御努力になって、真に愛知用水が実り多き成果を得るということによって、日本の農林関係を中心にした総合開発の大きなモデル地区になるように関係者の御努力をわずらわしたいと思います。そういう点で希望を最後に述べまして、私の質問を終わらしていただきます。
  59. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 加藤清二君。
  60. 加藤清二

    加藤(清)委員 この際、私も実はたくさんの質問を持っておりまするが、角屋委員から詳細にわたって御質問がございましたので、私は簡単に要点だけをかいつまんでお尋ねいたしたいと存じます。  愛知用水がいよいよ通水する、夢の用水ができ上がるという点につきましては、この法案を生むころから苦労しておりました者の一人として、同僚議員とともに喜び、かつ期待をしておる次第でございます。普通でいきますならば、こういう大事業ができたあとには、必ず感謝意味において神社ができるのが例のようでございます。愛知用水神社という神社ができてしかるべきだと思うわけでございます。にもかかわりませず、そういう声がいまだに出ていないという点は、先ほど来皆さんから御質問があり、お答えがありましておわかりの通り、まだ最終仕上げ段階において不十分な点があるのではないか、もう一点は、受益者の方に不安と不満があるのではないか、これを解消することが、仕上げをなさる、いよいよ通水するにあたって最も肝要なことだと思うわけでございます。そして、でき得べくんば、愛知用水神社もできて、ほんとうに孫末代、子々孫孫にわたってあがめられるような基礎をこの際作っていただきたい、かように思うわけでございます。  そこで、まず第一番に、不安なり不満についてお尋ねしたいと存じまするが、地元の農民、特に受益者の中からいろいろな声が出ておりますけれども、そのうちの最たるものは一体何なのであるか、これは日高さんから承りたいと思うのでございます。聞くところによりますると、いや、私が調査したところによってもさようでございますが、あまりにも受益者の負担が多過ぎるではないかということです。そこで、一体受益者の負担は正確なところ目下の計算ではどう相なっているか。農民の負担、飲料用水の料金、工業用水の料金、これ等については一つ県側から詳細にお答え願いたいのでございます。
  61. 日高啓夫

    日高参考人 加藤先生の御質問の、地元農民の一番大きな不安と申しますか、不満は何かというお尋ねでございますが、かれこれ総合判断いたしますと、やはり、御指摘のように、将来かかって参りまする負担金、これは維持・管理費を含めまして相当額になると思いますが、そうしたことに対する償還能力の問題だと思います。どの程度が適正妥当であるかと申しますのは、やはり、今後の営農効果と申しますか、あるいは全般の農家の所得水準とにらみ合わせて判断いたしませんと、そうした勘定の問題になりますと、これは軽々に数字をただいま申し上げる段階でない、かように判断をいたしております。  なお、最近唱えられておりますような所得倍増計画というようなことが農家にも及ぶべきであり、また、及ばなければならぬと思うのでありますが、そうしたことを考えますと、少なくとも愛知用水発足当時の農家の考え方とただいまの考え方とでは、やはり相当考え方の開きがあるのではないかというふうに思うわけでございますので、今後の営農のあり方とにらみ合わせまして、負担の絶対的な数字と申しますことと同時に、負担の方法、償還の期限というふうなことを、先生方の御配慮一つ善処していただきたい、かように思うわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  62. 松尾信資

    松尾参考人 農民負担の問題につきましては、先ほど角屋先生からお話もあり、また、今、日高理事長からのお話もありましたように、現在のところでは、大体反当り四万三千円という当初の計画通りにいきますが、まだ、その内容につきましては、先ほど申し上げましたように未決定になっております。これについては、今後できるだけ農民の負担がスムーズにいくように、この地元農民の営農指導とあわせて、土地改良区の方と十分協議して、県としても最善の努力をしていきたい、かように考えております。  それから、次に、工業用水上水道の問題でございますが、当初われわれが計画いたしました際に、工業用水につきまして一番悲観的でございまして、当時の一般の意見で、工業用水を、計画して一体売れるのか、もう地下水で十分ではないのか、名古屋でそんなに工業が伸びるわけがないじゃないかというのが、実際に言いますと一般の多くの地元の意見でございましたが、その後、計画が進むにつれまして、工業用水については、予想以上に名古屋の工業地帯が発展したというような事情もあり、また、工業用水につきましては、当初は計画されなかったのが、国から四分の一の補助金が出るというような関係もございまして、われわれが通産省の方とトン当たりの料金——これはネットでありませんで契約水量でございますが、この契約水量で大体四円という線で計画しましたのが、全体としていろいろ料金の決定をする際に、償還を考えて、当初は、おそらくスタートにおいては半分程度しか供給できないという見通しでおりましたのが、当初から満度に供給できるというような関係上、四円という数字で完全に償還できて経営できるという考えでおります。  ところが、上水道につきましては、われわれは、この水道におきまして、一方水道という一つの部局で事業はやっておりますが、工業用水上水道は全部体系を分けて、当初から別途の経理をやっておるのであります。上水道につきましては、当初計画しまして、われわれは需要の点についてはむしろ当初からあまり悲観もしておりませんし、現在におきましてもきわめて希望は多いわけでございます。でありますが、何分にも、この地帯は、本格的ないわゆる上水道を引くとなると非常にむずかしい土地でございまして、上水道を本格的にするのは、大体大都市ないしは密集地帯というものを対象にして水道というものは計画されるわけでございますが、私どもは、知多半島のような水の乏しい土地には、どんなに無理があってもこの機会に水道の水を飲んでいただくような態勢をとっていきたい、従いまして、コストの面は多少無理になっても、南部一帯まで、師崎まで水道をやりたい、しかも、これはできるだけ安全に、将来永久のものでございますから、完全な水道を作りたいという考えでいろいろ設計を進めておりまして、また、地元側からも、当時はこういうへんぴな部落には水道を持っていくのはちょっと無理じゃないかという村まで、少しぐらい高くなっても仕方がないからぜひ持ってきてくれという意向もありまして、いろいろやりましたが、愛知用水幹線水路の当初の位置というものが変更になった、あるいは供給地の範囲、あるいは建設費自身も物価の値上がり等を見まして、当初われわれが計画いたしました当時より、上水道の方は約四割程度全体的に工事費がかさんできている。そうした点から言いまして、この料金の決定について、御承知のように、われわれは、大体県の卸売は十五、六円、それに町村の費用その他考えて大体二十四、五円から三十円の範囲でもってなるべくならば水道料金はおさめたいという考えで当初考えましたが、今申しましたように、その後のいろいろの経費の増加を考えまして、償還という問題を考えますと、どうしても当初の計画でいきません。それで、本年の予算のときにもいろいろ水道当局とわれわれ財政の方面とで検討して、県においてもできるだけは一般会計から当分の間は支出もある程度やるという方針で、大体現在卸売についてはトン当たり二十一円という考え方で決定いたしまして、また、町村の料金は、これは町村の実態によりまして非常に違いまして、密集地帯は割合に町村の費用がかかりません。そうした点で、安いのは三十円以下のもありますが、大体三十円ないし四十円ぐらいに現在末端料金はなるのではないか。それにつきましては、個々の町村の料金は最終的にはまだ決定していません。まあ、こうした点で水道料金については当初の予定よりはある程度高くなっておりますが、しかし、これは考えようの問題で、とにかく月十トンといたしましても三百円ないし四百円という負担で、知多半島のあの現在水に不便しておるところにこの水道が入りますれば、これはきわめて必要なことだと思いまして、できるだけ町村ともよく協力しまして無理のないように今後経営していきたい、かように考えておりますので、よろしく御了承願いたいと思います。
  63. 加藤清二

    加藤(清)委員 農民の負担が四万三千円である、これは高過ぎる、これではとても払い切れない、どなたから承っても答えは一致しておるのでございます。当初この法律が生まれるころに審議いたしました場合は、これは大体三万六千円程度でございました。それが四万三千円とはね上がっていった。この理由については別に私承ろうとは思いませんけれども、幾ら四万円が五万円になろうとも、問題は、先ほど日高さんがおっしゃいましたように、営農が進歩することによって利潤がふえ、税金その他の必要諸経費を引いてなお愛知用水にこれだけを支弁する能力ができればけっこうでございまするけれども、石当たり一万円程度のお米を作って、それで木曽のお水のおかげで反当収穫七俵が十俵にふえたというならば、これは所得もふえ、支払い能力もできるでございましょうけれども、このままではとうていそのような営農進歩によるところの増収は、試験所の発表を聞きましてもなかなかに困難なようでございます。従いまして、これは県御当局におかれましてもぜひ一つ御検討を願いたいと思います。この問題は皆さんに質問する問題ではなくして、いずれわれわれ自体が国会において論議をし、農民の負担にたえるようにしなければならぬ問題だとは心得ておりまするけれども、それにいたしましても、同じ木曽の水が流れて参りまして、名古屋の水道料金は十円、同じ愛知用水が流れて参りまして、同じ時期にできた水が、工業用水に回ると四円、飲料用水に回るとこれが四十円の余になる、こういうことになりますると、工業用水その他の補助金等々の理由のいかんを問わず、これは地元民としては不公平ではないかというそしりが出るのはごもっともだと思うのです。と同時に、同じ飲料用水にいたしましても、すでに知多半島で、厚生省の補助によって、また県の御努力によって簡易水道が行なわれているわけであります。これは、一カ月十立米程度を使いまして百円の掛り金を出せば、十分に黒字経営ができているところが多いのでございます。そうなりました場合に、もし四十円の水を十立米使えば四百円に相なるわけです。五十円から六十円程度で来ていたのが、愛知用水を作ることによってまさに十倍になるわけです。ところが、町村といたしましては、簡易水道によるところの既得権を喪失させるわけには参りません。そういうことで、町村会議員や町村の行政指導者の方々は非常に苦慮をしておられるわけでございます。従いまして、県におかれても、公団におかれても、ぜひ一つこの点に御留意していただきまして、でき得る限りこの負担軽減するということに御努力が願いたい、この点はかように希望だけを申し述べて、次へ移りたいと存じます。  先ほど、用水とか治水工事が行なわれれば大ていお宮さんができるということを申し上げましたが、これは、その業に当たった人の偉業をたたえるために、感謝のために行なわれるはずなんです。ところが、聞くところによりますと、せっかくりっぱに公団工事が仕上った、そうしたら、これはとたんに首を切られる、こういう話を聞いておりますが、もしそれが事実であるといたしましたならば、大へんなことじゃないか。かつて木曽川の治水をやって首を切られた人がございます。これはお殿様の金を使い過ぎた責任を感じて腹を切ったのでございますけれども、これは徳川の悪政のしからしむるゆえんである。お城の抜け穴を作ったおかげで、ついにその人はお城から再び出ることができずに冥途に行ってしまったということを聞きますが、これは封建時代の話です。そこで、首切りが行なわれると聞きますが、一体それは何人程度行なわれるのであるか、と同時に、その理由が、本人の希望であるのか、あるいはこの事業量が少なくなるがゆえにやむなく切らなければならないのであるか、その点だけを一つお尋ねしておきたいと思います。
  64. 伊藤佐

    伊藤参考人 私からお答えするのが適当であるかどうか存じませんが、一応申し上げます。首切りということを言われるとえらく響きが悪いのでございますが、先生がさっきおっしゃいましたように、事業量が減ることによりまして転職をしなくちゃならぬということでございます。しかし、いずれも愛知用水公団に在職いたしましてりっぱに腕を上げた人でございますので、それぞれしかるべき方面にりっぱな転職先を見つけて行ってもらうということでございます。
  65. 加藤清二

    加藤(清)委員 豊川用水をやられてそこへ全員収容されるというならば問題はございません。これは次に行なわれる治水、利水公団との関連がございますのであえてお尋ねするわけですが、首切り、転退職は、別にその方々の個人の有する原因ではなくして、その原因は事業量の減少であった、こういうことでございますか。
  66. 伊藤佐

    伊藤参考人 事業量の減少ということもございますけれども、現実の問題といたしまして、愛知用水に名古屋を中心にしていろいろ現場におられますけれども、事の性質上やはり新しいところで仕事をせねばいかぬわけでございます。かりに人数的には全員行けるといたしましても、やはりいろいろ家庭の事情その他がありまして、新しいところには行けないという人もずいぶんあるわけであります。そういう方々は現在のところいろいろ仕事を見つけて上げなければいけませんし、そういうために、大部分の人はせっかくりっぱな腕を持っておるから活用したい、活用してやろうということで、ただいま御審議いただいておるような改正法が出ておるわけでございます。
  67. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、転退職、首切り等が発生した原因を探求しておるのではございません。なぜ首切り、転退職が行なわれるか、これだけでございます。だから、その責任の所在がどこにあって、それをどうしようということをお尋ねしておるのではないのです。今の伊藤さんのお答えによりますと、勤務地が変わる、そこで通勤に困難であるということですね。
  68. 伊藤佐

    伊藤参考人 そういう面もございます。
  69. 加藤清二

    加藤(清)委員 それだけでございますか。それとも、私が察するに、愛知用水公団事業量と豊川用水工事事業量との相違が一番大きい原因ではないかと思うのでございますが……。
  70. 伊藤佐

    伊藤参考人 両方でございます。
  71. 加藤清二

    加藤(清)委員 あとは政府お尋ねすることといたしますが、首切り、転退職が行なわれても、これは愛知用水理事者側やあるいは愛知県庁の責任であるなどとは私はつゆさら考えておりません。  もう一つ、今度は公団側はやや責任があるのではないかと思われる問題一点をお尋ねしまして私の質問を終わりたいと思います。それは、先ほど同僚委員角屋さんからもあるいは丹羽先生からもお尋ねのあった危険防止の問題でございますが、浜口総裁の御答弁では満足ができないのでございます。なぜかならば、浜口総裁の御答弁によりますると、その前から心を砕いてこの危険防止に努力した、こういうお話でございます。これはごもっともなことであります。けっこうなことだとは思いますけれども、それは落ちてからの危険防止ばかりでございます。落ちないような危険防止ということが全然行なわれていない。落ちてからもなお、先ほど丹羽先生からもお話がございました通り、毎秒三十トンの水が流れるといたしました場合においては、かりにこれが横断面が三平方メートルあったといたしましても十メートルの水速があるわけでございます。そこへ子供が落ちた場合に、はたしてつかまることができるかできないか、あるいはサイホフォンの入口には網があるとおっしゃいますけれども、そこへ行くまでに死亡してしまうではないか、こういう心配があるわけでございまして、特に、その土手の上が道路になるわけです。道路の横が水路、これがオープンになっていて、さくも何にもない。これでは、学童ならずともおとなでも、たまには落ちることがあるかもしれない。特に、人家密集地帯におきましては、母親の心配が非常に大きいのです。そこで、でき得る限りの危険防止の設備と、それから周辺の幼児あるいは学童等の訓練と申しましましょうか、そういうことが必要に相なってくると思うわけでございます。そこで、公団側としまして設備費があるかないかが問題に相なりますけれども、これは設備費のあるなしの問題ではない。命にかかわる問題でございます。従って、少なくとも人家密集地帯のさくなり金網なりだけは、アメリカ流の考え方でなしに、むしろあった方が日本流である、日本の子供を救うにはさくを設けるべきである、かように思います。と同時に、幼稚園とか学校とか防犯協会等々と連絡をとられまして、通水する前に予備訓練をなさる必要があるではないか。死人が出てしまってからでは手おくれでございますので、ぜひ、この点御検討の上、死人が発生しないようにしていただきたい。首切りもいけませんが、幼児の命を断つということはもっと避けなければならぬ問題だと思うわけでございます。これについて御見解を承りたい。
  72. 伊藤佐

    伊藤参考人 今加藤先生の仰せ、一一ごもっともでございます。先ほど来角屋、丹羽両先生に対してお答え申し上げ、また、御要望もございましたように、私どもといたしましても、早急に何とか一つ万全の策をとりたい、かように考えております。
  73. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 参考人各位におかれましては御多用中にもかかわらず、本案審査のため有益なる御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇—————  〔休憩後は会議を開くに至らな  かった〕