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1961-05-16 第38回国会 衆議院 農林水産委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月十六日(火曜日)     午前十一時三十三分開議  出席委員    委員長 坂田 英一君    理事 秋山 利恭君 理事 大野 市郎君    理事 小山 長規君 理事 田口長治郎君    理事 丹羽 兵助君 理事 石田 宥全君    理事 角屋堅次郎君 理事 芳賀  貢君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       上村千一郎君    金子 岩三君       川村善八郎君    倉成  正君       小枝 一雄君    田邉 國男君       谷垣 專一君    綱島 正興君       寺島隆太郎君    内藤  隆君       野原 正勝君    藤田 義光君       本名  武君    松浦 東介君       森田重次郎君    八木 徹雄君       足鹿  覺君    片島  港君       東海林 稔君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    西村 関一君       山田 長司君    湯山  勇君       稲富 稜人君    玉置 一徳君  出席政府委員         法制局参事官         (第三部長)  吉國 一郎君         農林政務次官  八田 貞義君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         農林事務官         (振興局長)  齋藤  誠君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局参事         官)      南部 哲也君         農林事務官         (農地局企画調         整課長)    長田 秋雄君         農林事務官         (農地局愛知用         水公団監理官) 大山 一生君         農林技官         (農地局建設部         長)      小林 国司君         農林事務官         (振興局振興課         長)      古西 一郎君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 五月十二日  委員稲富稜人君辞任につき、その補欠として西  尾末廣君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西尾末廣君辞任につき、その補欠として稻  富稜人君議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員中山榮一君及び福永一臣辞任につき、そ  の補欠として倉成正君及び上村千一郎君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員上村千一郎君及び倉成正辞任につき、そ  の補欠として福永一臣君及び中山榮一君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 五月十五日  中央卸売市場法の一部を改正する法律案内閣  提出第一九〇号)  家畜取引法の一部を改正する法律案内閣提出  第一九一号)  家畜商法の一部を改正する法律案内閣提出第  一九二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  愛知用水公団法の一部を改正する法律案内閣  提出第一四〇号)      ————◇—————
  2. 坂田英一

    坂田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出愛知用水公団法の一部を改正する法律案を議題とし、まず、補足説明を聴取いたします。伊東農地局長
  3. 伊東正義

    伊東政府委員 愛知用水公団法の一部を改正する法律案提案理由につきましては先般政務次官から御説明がありましたので、私から若干補足説明をいたしたいと思います。  今回の改正案でございますが、愛知用水事業建設工事は大体昭和三十五年度で大部分のものが終わりまして、三十六年度に入りまして、この六月を目途といたしまして通水を考えているわけでございます。それで、農林省としましては、いろいろ別公団法との関係もございますし、三十六年度の予算をやります場合には、いろいろ農林省独自の公団等を考えまして、ここに御審議を願います豊川水系以外のことも考えたのでございますが、いろいろな関係で、三十六年度の予算に計上されましたものは、現在の愛知用水公団法改正いたしまして、大部分がやはり愛知県の事業であります豊川総合水利開発事業というものを、ほぼ愛知用水公団と同じような形式で取り上げまして、工事早期完成をはかりますとともに、豊川地域、これは二十九年に閣議決定になっておりますが、この地域総合開発に寄与したい、あわせまして、愛知用水公団で非常に技術的な問題その他経験を経ました人員並びに機械等につきまして有効な活用をはかりたい、こういう趣旨で、この法案の一部改正をお願いいたすことになった次第でございます。  法案のまず第一条でございますが、これは、従来の法律には木曽川水系ということだけになっておりましたので、このたびは豊川水系も追加するということで第一条を書いておるわけでございます。  それから、次は、第二章の役員関係でございますが、これは改正をお願いいたしております点は三点ございます。第一点は名称で、役員を従来総裁、副総裁という名称を使っておりましたが、これを理事長、副理事長ということに直しましたことが一点と、従来役員任期は五年ということになっておりましたが、これを三年ということに改めております。それから、もう一点は、従来は、理事五人、監事二人以内ということで、七人以内になっておりましたが、今回は、理事三人以内、監事一人ということにしまして、四人ということに改めております。理由でございますが、これから愛知用水公団事業が終わりまして、従来の施設については維持・管理をいたすわけでございますが、そのほかに豊川承継いたしてやりますが、従来よりは事業の規模は縮小されておりますので、役員名称等を変えましたことと、役員の人数も減らしておるような次第でございます。それから、任期につきましては、愛知用水公団は大体五年で仕上げるということでスタートいたしたわけでございます。それで、五年という期限が切ってあります間に何度も役員がかわるということは事業の運営上まずいのじゃないかということで、工事完成する間は任期を変えないということで五年ということになっていたのでございますが、今度は、そういう必要もございませんので、ほかの農地開発機械公団でございますとか、あるいは森林開発公団などの役員任期と合わせまして、三年ということにいたしております。これが役員関係改正規定でざいます。  次は十八条でございますが、これは業務範囲改正でございます。業務範囲につきましては、従来は、愛知用水公団関係は、ダムを作ります長野県、それから水路の岐阜県、愛知県の三県が関係県であったのでございますが、今度豊川を入れますと、実は豊川は約二万町くらいの面積の中で五百町くらい、静岡県の湖西町というところが若干入って参りますので、静岡県を入れましたことと、今度の豊川事業内容には干拓埋め立てがございます。従来の愛知用水公団にはございませんでしたが、今度の事業にはそういうものが入っておりますので、その規定を入れましたところが、業務範囲が従来よりもふえておるわけでございます。  次に、十八条の二という、国営土地改良事業承継等規定を入れておるわけでございます。これは、従来豊川国営県営事業としてやっておったわけでございますが、今度は、土地改良法ではなくて、この法律によりまして、公団法がきめております事業実施計画でありますとか、基本計画、そういうものの公告をして、異議の申し立て、意見を聞くというような手続をいたしまして、土地改良法との関係を切りまして、今度は農林大臣が告示をいたしますと、これが国営事業あるいは県営事業等からこの公団事業に変わってくる。もちろん、そういたしますと、後来の負担金等公団徴収するというように、従来の国営事業等をこの公団事業承継するという規定を置いたわけでございます。県営等につきましては、これは県から申し入れがありましたときにはそれを公団事業とする、こういうようなことによりまして承継規定を置いたわけでございます。  それから、今御説明で申し上げましたが、愛知用水公団法には国が作ります事業基本計画、それから公団が作ります事業実施計画というものもあるわけでございますが、これは従来は木曽川だけでございましたので一本で作っていたわけでございますが、今度は豊川も入りますので、木曽川と分けまして、従来の事業基本計画事業実施計画と分けまして、豊川水系について事業基本計画、それから事業実施計画を作るという必要がございます。これは後ほど申します経理も当然そうなるわけでございますが、十九条でこれを分ける規定をいたしているわけでございます。  それから、二十三条の二ですが、先ほど申し上げましたように、業務範囲公団埋め立て干拓をいたすという規定を設けておりますので、今度は埋め立て干拓予定地処分が当然要るわけでございます。これは大体土地改良法手続に準じております。今度公団がやります場合と国がやります場合で若干の違いはございますが、大部分土地改良法手続にならいまして、公団大臣の承認を受けまして土地配分計画を定めますと、それに基づいて、そこに入りたい、入植したい、あるいは増反地がほしいというような人が配分申込書公団に出しまして、公団は、そういう人が農業に精進する見込みがあるということになりますと、その人に配分の通知を出すということをいたしまして、公団埋め立て予定地処分をするという規定を入れたわけでございます。  そういたしますと、これは当然、賦課金にも関係して参りまして、干拓埋め立てを行ないましたものについての賦課金徴収規定でありますとか、あるいは、豊川につきまして従来国がやったわけでございますが、一般会計当時国が出しました分で実は農民負担になる分がございます。こういう分は公団徴収をしまして国に納めることになるわけでございますが、こういうものの徴収規定も置いたわけでございます。  それから、次に、飛びまして三十三条の二でございますが、これは経理の区分ということでございまして、先ほど申し上げました通り、豊川水系につきまして基本計画実施計画を作るわけでございますが、経理も、従来はこの公団世銀から借り入れをいたしております。それで、世銀償還の建前もございますので、従来の木曾川勘定というものは別としまして、それと豊川水系勘定というふうに分けて、これは世銀償還関係もございますので、そういう規定を入れているわけでございます。  それから、三十四条に、公団公団債発行する債券発行という規定を新たに入れたわけでございます。これは予算的には三十六年度はこういうものは予定はいたしておりませんが、将来公団資金運用部資金等を借り受けまして事業を継続して参るわけでございますが、その際に資金運用部資金が不足するというような場合に、たとえば国会の議決を経ております範囲内で政府の保証を得て債券を出すというような能力規定を三十四条に六項を追加して置いたわけでございます。これは従来は実は世銀から要求がありました場合にはその場合だけに公団債券発行ができるということになっていたのでございますが、過去においてはそういう実例はございませんでしたが、一般的に公団債券発行できるという能力規定を置いたような次第でございます。ただ、三十六年度の予算にはこれは全然計上いたしておりません。  それから、先ほど公団国営事業なりあるいは県営事業承継するということを申したのでございまするが、その場合には当然にその事業についております権利義務につきまして公団承継するということにいたしております。ただ、県営事業等につきましては、法律でぴしゃっと権利義務承継と書きますと、いろいろ問題もありましょうから、県営事業につきましては、どういうものを引き継ぐ、引き継がぬというようなことを公団と県で相談をする余地を残しているようなわけでございまして、そういう権利義務承継がございますと、当然先ほど申し上げましたように費用の徴収公団がいたすということになるわけでございます。  それから、最後に、附則でございますが、この附則につきましては、公布の日から施行するというふうになっておりますが、ただ、役員関係だけにつきましては、公布後四カ月をこえない期間で政令で定める日ということにいたしておりますことと、従来五年という任期がございましたが、まだ五年たっていない人については、今言いました四カ月以内の期間で定めました場合には、その期間をもって満了するというような二つの附則を置いております。これは豊川用水事業を年度の途中で引き継ぐわけでございます。それで、現在の役員の人々には、今残っております従来の愛知用水公団仕事を、通水のための最後の追い込みの事業をやっていただきますと同時に、実は豊川への移行の問題等につきましてもまだ仕事があるわけでございますので、両方やってもらいますかね合いからいきまして、公布の日からすぐかえるということではなくて、任期につきましては若干の余裕をもってそういう次の新しい役員の方にかわってもらうということにしたいということで、こういう附則を置いたのでございます。大体今までの考えでは八月一日ぐらいから仕事は切りかわってやりたいというような予定をいたしているようなわけでございます。  簡単でございますが、政務次官提案理由説明につけ加えまして説明といたします。
  4. 坂田英一

    坂田委員長 これより本案に対する質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。上村千一郎君。
  5. 上村千一郎

    上村委員 愛知用水公団法の一部を改正する法律案につきまして、重要と思われる二、三の点にしぼりまして、この際お尋ねをいたしておきたいと思います。  実は、この法律案提案理由にも述べられておりまするが、愛知用水公団がその目的としました大部分工事を三十五年度に完了されました。そして、現在豊川水系開発についておくれておりました際におきまして、愛知用水建設工事に多大の成果をあげました愛知用水公団の職員の貴重な経験大型高性能機械を同種の豊川水系事業に一括活用されて、そしてこれが開発をされるという点につきましては、きわめてけっこうなことだろうというふうに思っておるのでございますが、しかし、次の二、三の点につきまして少しく明らかにいたしておきたいと思う次第であります。  まず農地局長お尋ねをいたしておきたいと思います。  元来、この豊川水系開発につきましては、農林省国営事業として従来遂行いたしておったと思いますが、その計画によりますれば、大体所期工事完成予定はいつごろであったであろうかということをお尋ねしておきたい。
  6. 伊東正義

    伊東政府委員 実は、豊川事業は、御承知のように、昭和二十四年度から着工いたしたわけでございます。これは御承知宇連ダム昭和二十四年にかかっておりまして、その後、三河地区特定地域開発というようなことが実は二十九年の閣議決定になったことがございます。それから昭和三十二年に豊川事業につきまして特別会計に入るということがあったわけでございます。先生も御承知のように、豊川事業につきましては、一期、二期というような事業がございまして、宇連ダムから大野頭首工導水路を通りまして渥美半島の方に入る事業一期工事ということになっております。二期工事につきましては一これは蒲郡の方に水路を引いて工事をやるということになっているわけでございますが、その中で、二期工事につきましては、いつまでというような見通しはまだなくて、全然かかっておりません。第一期工事につきましては、三十二年に特別会計をやります場合に、一応三十二年から七カ年でやりたいということで実はかかっておったのでございますが、相当膨大な事業費でございまして、現在までの進行でいきますと、三十二年度からの七カ年完成ということは無理ではなかろうか、相当の期間がかかるということが実は予想されたわけでございます。それで、私どもは、一応第一期工事、第二期工事も含めまして、——先ほど申し上げましたように第二期はまだ全然対象になっておりませんでしたが、第二期工事まで含めまして今度の公団でなるべく早くやっていきたい、私どもとしては、手をつけてから少なくとも七年くらいで二期工事も含めて全部この工事を終わるようにしたい、こういうような考え方を現在では持っているわけでございます。
  7. 上村千一郎

    上村委員 そうすると、従来は三十二年度から七カ年間に第一期工事完成する予定であったけれども、いろいろな事情も伏在してきて、とうていこの七カ年の問には所期事業完成する見通しが立っていなかった、こういうふうに承ってよろしゅうございましょうか。
  8. 伊東正義

    伊東政府委員 七カ年と申しますと三十八年でありますので、実はことしの予算のほかに二カ年残っております。でありますから、私どもといたしましては、不可能ということは申し上げかねますが、三十八年度までやるにはおそらく相当困難が予想される、第二期工事に全然入らぬで、一期工事としてもなかなか見通しはむずかしかったのではなかろうかという予想をもちまして、こういう新しい制度でやった方が早くできる、預金部資金もよけい借りてやった方が早くいくだろうという判断をしたわけであります。
  9. 上村千一郎

    上村委員 そうしますと、七カ年の間に事業所期目的は遂行がきわめて困難だというふうに見通されるようになったというお話でございますが、大体どういうような方面に困難性があったのであるかという点を、簡単でけっこうでございますが、お答えを賜わりたいと思います。
  10. 伊東正義

    伊東政府委員 一番の原因はやはり資金関係がおもであります。これは特別会計で国が約五割二分、そのほか四割八分を借入金をもってやるということでやっておるわけでありますが、私どもといたしましては、こういうことではなかなかむずかしいのではないか、もう少し借り入れもふやしてやる方がむしろ達成可能ではないかというような、資金面等からのことを考えまして判断したわけであります。
  11. 上村千一郎

    上村委員 その点はその程度にとどめまして、実は、農民所得と他産業の所得との格差を縮めようというようなことが大きな問題になっておるわけであります。それで、あの地方におきましても農民所得向上という問題につきましては深い関心も持っておるわけです。反面から申しますと、農民所得はきわめて低い伸び方になっている。それで、この豊川水系開発に関連しまして農民負担するであろう負担額につきまして非常な心配を持っておるわけであります。それで、従来農林省国営といたしまして開発事業を遂行していった際において農民負担するであろう金額は大体反当たりどのくらいのお見通しであったか、その点を承っておきたいと思います。
  12. 伊東正義

    伊東政府委員 農民負担の問題でございますが、それは昭和三十二年に農林省で一度計算をやったことがございます。当時は国営県営団体営とみなございますので、一つ事業で担当いたしましても農民といたしましては全部負担がかかって参りますので、その当時は実は団体営等につきましてまだ十分な調査を行なっていなかったという点もありますが、全部で三万ないし三万五千くらいではないかということを考えたことがございます。私どもといたしましましては、今御審議を願いましたあとで十分な調査もまたし直してきめるわけでございますが、事業内容等から見ますと、実は、この事業は、受益面積等においては愛知用水公団よりは少ないのでありますが、仕事内容等は、ダムを作る、これも三十トンダムで両方同じでありますが、水路を作るというような事業内容愛知用水とほとんど似ております。それで、私ども目標といたしましては、何とか愛知用水負担程度でやれるようにしたいというような考え方で、いろいろ今後基本計画なり実施計画をいたします際に、そこはどういうように負担するという問題をきめてやっていきたいと思っておりますので、今金額的にこれは幾らでございますということまではまだはっきりわかっておりませんが、目標といたしましてはそういう目標でやっていきたいというふうに考えております。
  13. 上村千一郎

    上村委員 では、公団監理官の方に質問をいたしたいと思いますが、この豊川水系開発関係につきまして、本案が成立すれば愛知用水公団が担当していくことになると思うのでございますが、この豊川水系関係所期事業完成いたすに際しましては、大体いつごろまでに完成ができるというふうなお見通しであるか、その点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  14. 伊東正義

    伊東政府委員 監理官が参っておりますが、かわりまして私からお答えいたします。  豊川水系完成の時期でございますが先ほど申し上げましたように、第二期事業というのは全然対象になっておりませんでしたが、これも含めまして、私どもは、公団が手をつけてから七カ年くらいを目標完成したらどうだろうかというふうに現在は考えておりますが、もっとそれを早くするとかいうような問題につきましては、今後の問題として検討したい、現在はそういうふうに考えております。
  15. 上村千一郎

    上村委員 実は、公団が今度豊川水系開発関係をいたして参りますと、農林省国営でやっておった当時よりも、どうしてもいわば農民負担というものがふえやしないだろうかというふうに一応常識的に考えられるわけでございますけれども、その点については、今後公団がこの事業を遂行いたして参りましても、農林省が直営でやっていくという場合と比較しまして農民負担というものが増大しないというようなことは具体的に言い切れるものであろうかどうか、その点についてお尋ねいたしたいと思います。
  16. 伊東正義

    伊東政府委員 先ほどの負担の問題との関連でございますが、現在国営でやっております場合の人件費等負担が当然事業費の中に入ってきております。それで、公団でやります場合に国営でやるよりも負担がよけいかかるようにならぬかというお話でございますが、私ども考え方としましては、現在、豊川のような大事業国営でやっておりましても、一期も二期も含め俵して早期完成するということが相当困難な事情がございます。それで、公団に入れまして、資金運用部資金等を相当大幅に活用するというようなことで事業を早くやっていく、経済効果を早く出すんだということでやって参りますれば、総合的に見れば国営でやるよりも公団でやるがために農民負担が非常に高くなるのだということにはならぬだろう。といいますのは、経済効果等が相当早く発生するというふうに考えておりますので、その点は、公団にいくためにそう増になるというふうには考えておらぬ次第でございます。
  17. 上村千一郎

    上村委員 その点につきましては、農民負担というものは増大するというよりもむしろますます減少させていくということが国の政策にも合致するんではなかろうかというふうに思いますので、それを強く、要望しながら一応打ち切っておきたいと思います。  次に、豊川水系工事完成した場合の水の利用という問題でございますが、ただいま遂行しようとするところの本件事業の水は、たとえば農業用水としてどのくらい、工業用水としてどのくらい、また他の上水道としてどのくらいというようなことは具体的に大作お答えができるかどうか、お尋ねいたしておきたいと思います。
  18. 伊東正義

    伊東政府委員 水の問題でございますが、従来、農業用水につきましては、大体この地域内の河川がかりあるいはため池がかりというようなものを除きまして、補給必要水量として一億三千万トンくらいということが言われております。それで、私の方といたしましては、この事業農業ということで始められたものでございますので、農民が必要だという一億三千万トンというような水につきましては優先的に確保していくという考え方でおります。  もう一つ工業用上水道用でございますが、農業につきましては、先生御承知の通り、灌漑用水は一年のうち短い期間だけ使うわけでありますから、総量から言いますと大体同程度くらいのものが工業用水上水道として必要があの地帯で見込まれるのではないかということで、今、豊川市、県などと相談いたしております。これは共同施設についてのアロケーションの問題と関連してくるわけであります。農業が幾ら持つときまれば、工業用上水道用が幾ら持つというアロケーションの問題とも関連して参りますので、今ここで水量が幾らでアロケートが幾らだということまで申し上げる段階に至っておりませんが、これは御審議を受けたあとで関係者と十分相談いたしまして、農業用水は少なくとも優先的に確保するという態度で参りたいと思っております。
  19. 上村千一郎

    上村委員 その水の問題でございますけれども、大体の経済の趨勢から言いまして、工業用水の需要はますますふえるのではなかろうか。そういたしますれば、工業用水を有利に確保し、また処置することによって農業関係の方々の負担を軽減するというようなものの考え方はお持ちであるかどうか、お尋ねをいたしておきたいと思います。
  20. 伊東正義

    伊東政府委員 私どもは今先生のおっしゃいましたのと同じ考えで、農業用水を最優先に取りまして、あとの水を工業用に回す、できるだけ農業の灌漑の方法等も期間等も考えたりしまして、浮きました水は工業用水なり上水道に回して費用をよけい持ってもらって、農業の水のコストというか、負担をなるべく下げたいという考えは先生と全然同感でございます。
  21. 上村千一郎

    上村委員 その点はその程度にいたしまして、本件の事業といたしまして干拓埋め立てが含まれていると思います。それで、その埋め立てをしたところ、あるいは干拓をしたところ、これは、改正法案を見ますと、大体農業をやられる方に対して処分をしていく、こういうことに相なっているようでございます。これと今後の工業用地ということの関連につきまして何か具体的にお考えがありますれば、この際伺っておきたいと思います。
  22. 伊東正義

    伊東政府委員 実は、ここに干拓埋め立て予定しておりますのは田原湾でございます。私どもといたしまして、農業用地として埋め立てるものは約千町くらいでありますが、埋め立てたものを具体的に何町工業用地に回すということまで実は今確定はいたしておりませんが、先生のおっしゃいましたように、あの地帯は工業用地として相当考えられるところがございます。それで現在農林省がやっております埋め立て等で埋め立てました暁に、工業用地として適当なところは地方公共団体によりましてそういうことに充てるという考え方で現在やっておりますけれども、田原湾等につきまして完成の暁に若干そういう必要があるという場合には、私どもは多目的埋め立てということでやって参りまして、一部はそういうものにさくということも将来の問題としては考えられるというふうに思っておりますが、現在それを三分の一にするとか二分の一にするとかいうところまでは実はまだきまっておりませんし、工場等の名前等もまだきまっておりませんので、一応は農業用の干拓として私どもの方は考えておるわけでございます。
  23. 上村千一郎

    上村委員 次にお尋ねをいたしたいと思いまする点は、従来の愛知用水公団事業でございます木曾川水系を担当しておった際に県営の委託事業といたしまして委託しておりましたところの事業量と、それから今度豊川水系開発関係につきましての県営の委託関係事業量というものの比率がおわかりでございますれば、この際お尋ねをいたしたいと思います。
  24. 伊東正義

    伊東政府委員 愛知用水のときには、県営に委託しておりましたのは四百二十億ぐらいの総事業費の中で約一割の四十数億であります。今度はまだ事業費が確定しておりませんのではっきりしたことはわかりませんが、今度の事業費でも、県営に委託しますのは三十数億でありますから、やはり一割ちょっとぐらいのものは県営事業じゃなかろうかと思っております。ただ、この事業県営事業として委託してやりますか、公団公団として委託せぬでやりますか、その辺はこれからきめて参りたい。ただ、県営の規模として考えられる金額は三十数億じゃないかというふうに考えております。
  25. 上村千一郎

    上村委員 公団が今度受け継いでやっていくということになりました際に、従来農林省国営としてやっておりました際の関連開拓事業関係についてお尋ねをいたしておきたいと思うのでありますが、たとえば豊橋地区あるいは伊良湖地区あるいは一宮地区、谷川地区、大崎地区というような地区におきまして、いわゆる緊急開拓事業あるいは特撮地区あるいは振興地区などに指定されておる諸事業、そういうようなものにつきまして、農林省が直接におやりになっておられた際におきましてはその緊急度というものがよくわかるわけでございますが、公団がこれを受け継いだ場合におきまして、いわばその緊急度というものについて十分な御連絡がついていないと、その水系開発関係だけに当面主力が行って、従来の特振地区あるいは緊急開拓地区あるいは振興地区などとして指定して遂行しておる事業、そういうものがあと回しになるというようなことがありますと、そこの遂行につきまして円滑を欠くと思うのでございますが、その点につきましては何らか配慮されておるかどうか、お尋ねをいたしておきたいと思います。
  26. 伊東正義

    伊東政府委員 今御質問の開拓の点でございますが、開拓は、実は、農林省がやるといいましても、これは当然地方公共団体、県なり何なりと従来も相談いたしております。それで、その地区について、実は伊良湖等で公団事業になればおくれるのじゃないかということを具体的に工事内容を言って来られた方があります。私どもとしましては、開拓もこの公団でやるという前提に立っておりますが、今先生が御心配になりましたような点がないように、——仕事をやります場合に、この公団がその水路を引っぱってきて、そしてそこから水をかけるということは上の方からやってきませんとかかれませんが、そのほかの事業で、たとえば道路をつけるとかあるいはその中に排水路が必要だとか、特に伊良湖などは排水路に問題がございましたが、上から引っぱってきます水路関係なしにできる緊急開拓の中のあるいは特振地区の中の仕事というようなものにつきましては、ここに入りましたからおくれるということがないように、これは利ども県と一緒になりまして工事の順序の差別をつけてやっていってけっこうでございますので、そういう御心配はないように思います。
  27. 坂田英一

    坂田委員長 ちょっと上村さんに御相談しますが、まだだいぶ時間がかかりますか。
  28. 上村千一郎

    上村委員 いいえ、もうこれで終わります。  私は、本件の事業がきわめてすみやかに遂行されることを念願いたしまして、この程度で質問を打ち切っておきたいと思います。
  29. 坂田英一

    坂田委員長 午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十六分休憩      ————◇—————    午後二時二十九分開議
  30. 坂田英一

    坂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際お諮りいたします。  前回の委員会において愛知用水公団法の一部を改正する法律案について参考人出頭要求の件についてお諮りいたしましたが、前回決定いたしました参考人が所用のため出席できない場合、もしくは追加の必要がある場合は、委員長において適宜これにかわるべき人等を人選の上出頭を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 坂田英一

    坂田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  32. 坂田英一

    坂田委員長 愛知用水公団法の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。角屋堅次郎君。
  33. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 愛知用水公団法の一部を改正する法律案審議につきましては、連休前にも、一応この法案は時期的な関係もあって審議を爼上に乗せるべきであるということがいろいろ相談をされたわけですけれども、諸般の情勢から今日まで延期されまして、きょうから本格的な審議に入るわけであります。もともと、愛知用水公団の発足以来今日までの愛知用水事業の問題については、本委員会といたしましても、しばしば現地調査等を行ない、また、その過程でいろいろ問題点等のある場合は委員会審議を通じて事業促進の観点からいろいろ審議をして参ったことは御承知の通りでありまして、その間、公団、県側、土地改良区、それぞれの参考人等も呼んだ経緯もありますが、いよいよ世紀の事業と言われた愛知用水事業関係もほぼ終了の段階になった機会でありますので、あすはそれぞれ参考人等も呼ぶことに相なっておるわけですが、愛知用水事業の完了に伴います諸般の問題について、——基本的な問題についてはいずれ大臣の出席を求めてお伺いいたしたいと思いますが、きょうは農地局長を中心にしたメンバーでありますので、事務的な面、技術的な面、そういうところに焦点を合わせながら若干お聞きをいたしたいと思うのであります。  まず最初に、愛知用水公団法の一部改正の問題で検討を要する問題だと私ども考えますのは、もともとこの公団世銀の借款あるいは余剰農産物の資金の受け入れその他もありまして公団形式をとったわけでありますけれども、今度の愛知用水公団法の一部改正では、従来国営事業でやっておった豊川用水の事業を継承して、そして引き続き愛知用水公団としての事業を継続をしていこう、こういう考え方が提案をされて参っておりますが、これは、過渡的な問題ということでこの一部改正を把握していいのか、あるいは、基本的に、今後の農業関係総合開発方式という問題について、いわゆる従来農地局でやって参りました特定土地改良事業特別会計方式ないしは国営の方式というふうなものとの関連において今後変革を前提としてこの問題を解釈すべきかというところがやはり一つの重要な問題であろうと思うのであります。御承知の通り、今、水資源の開発の問題については、政府・与党内においても二本立の問題を総理の裁定において一木立にするということで、近くその構想が国会に法案の形で提案されるやに聞いておるのですけれども、やはり、そういう問題との関連ということもございます。従って、まず第一に、これは農林大臣にいずれお聞きをしたいと思いますが、農林省の事務的な見解ということでけっこうだと思うのですけれども愛知用水公団法の一部改正考え方の基底に農地局が従来やって参りました開発方式というものを変えていこうという考え方が前提の一つにあってこの一部改正ということになったのかどうか、さらに、水資源開発との関連という問題については、当面どういうふうに考えておられるのであるか、こういう点をもう少し事務的に一つ農林省の見解をお伺いしたいと思います。
  34. 伊東正義

    伊東政府委員 御質問の点ですが、将来の開発方針としまして、先生おっしゃいました、現在やっております特別会計の特定土地の問題と、この公団と二つあるわけでございます。この法案を御審議願っております公団関係につきましては、私どもはこういうふうに見ております。御承知のように、水資源関係につきましては、まだ最終的な閣議決定には至っておりませんが、これは全国を一本にしました公団が将来できるだろうというふうに予想いたしております。これは、地域としましては、おそらくは、利根とか、従来やっておりました木曽水系でございますとか、あるいは豊川、あるいは筑後、遠賀とか、特定のところを開発するという形になってくるだろうと思っております。それで、御審議願っておりますこの公団でございますが、これと水資源の関係は、私は三十七年度以降においておそらく一本になっていくのじゃなかろうかというふうに考えておりますが、将来の開発方式としましては、今申し上げましたような地点については、農業用水ももちろんこれから開発の余地がありますし、工業用水上水道もまた開発の余地があるというようなところにつきましては、一つ公団というような一本の目で見て開発していくという方式がおそらくとられるのじゃなかろうか、その他の地域につきましては、従来農業用水が主でありますれば、従来通り特定土地の特別会計でやる、こういうような二本立になっていくだろうというふうに私どもは考えております。
  35. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 昭和三十六年度の新年度予算編成の過程におきまして、農地局においては、「愛知用水公団の発展的解消による新公団の設立について、水利開発管理公団(仮称)の概要」という構想を昨年九月にとりまとめて、これに基づいていろいろ予算折衝がなされたのではないか。今日水の問題に対する公団の二本立あるいは一本化の問題とも関連して、農林省側の構想ということで私は出ておるのだと思うのですが、この中の新公団設立の趣旨なりあるいは公団の運営の基本方針、さらにまた、事業の種類と内容、こういう中身を見て参りますと、たとえば、事業の種類と内容の中では、工事の実施地区の中に豊川地区あるいは印旛沼地区というふうなものが本年度の計画として考えられ、さらにまた、実施計画地区としては、群馬用水地区、あるいは岐阜県の西濃地区、あるいはまた三重県の三重用水、さらに、調査計画地区として、青森県の津軽総合、あるいは秋田県の八郎潟、埼玉県の埼玉合口、あるいは千葉県の両総用水、愛知県の濃尾第二、さらに、維持・管理地区としては、愛知用水事業が終わるわけですから、この問題を含む、こういうふうな構想の中で、水利開発管理公団の概要というような構想が発表されておったわけですが、こういう構想なるものは、昨年九月の段階の構想であって、経済企画庁あるいは建設省、通産省、厚生省各省間のいろいろな総合検討の中で具体的にこういう構想というものは現時点ではどういう姿になってきておるのか、これはいずれこの種水に関する公団法等が出てくればそこで本格的にやるべき問題でありますけれども、そもそもの愛知用水公団法の一部改正の中身というものは、ここで取り上げた工事実施地区という中の豊川用水でとりあえず息をつなぐというような感が深いわけでありまして、そういう点で、一つこの構想が現時点においてどういうふうな討議の中で落着をしているのかという点を少しくお話し願いたいと思います。
  36. 伊東正義

    伊東政府委員 今御質問になりました内容の水利開発管理公団というような考え方農林省が持ちまして、三十五年度中に各方面に説明をいたしましたことは、御質問の通りでございます。当時、たまたま、農林省だけでなくて、通産省は京葉工業地帯の工業用水等を開発するために公団を作りたい、厚生省は東京地区と九州地区の上水道について何とか公団を作って開発をしたいという考え、建設省は利根川、淀川、それから吉野でありますとか、あるいは遠賀、筑後というようなところを対象にしまして公団を作りたいというような、四省から各公団考え方が出たわけであります。それに基づきましておのおのの予算の要求をしたのでございますが、政府といたしましては、各省に公団を作るということはまずいので、これはなるべく一本にして公団を作ったらどうだろうというような意向が強くて、予算がきまります際には、その四本の公団につきましてこれを一本化しておのおのどこの仕事をやっていくという話し合いが実は予算のときはつかなかったわけであります。でありますので、先生おっしゃいましたように、農林省としましてはいろいろな地点を公団を作りまして開発をしていこうと考えたのでございますが、これは事業内容をごらんになりますと全国的なものでございます。そういう全国的な公団に現在愛知用水公団だけを改正するということは、話し合いのつかない時点では無理だということで、さしあたりと言いますか、とりあえず、同じ愛知県でやっております豊川事業というのがございます。これは規模その他も愛知用水にかなり似ております事業でございますので、さしあたり、愛知用水公団で大部分仕事が終わりまして、機械また人的資源、そういうものも活用できますので、この際豊川だけに愛知用水公団事業を拡張いたしまして、全国的な問題は将来の問題として考えようじゃないかというようなことで、予算をやりますときには、実は愛知用水公団豊川をやっていくというだけが公団事業として予算がついたわけでございます。それで、さしあたりは豊川だけでございますが、先ほど申し上げましたように、まだ最終的な閣議決定にはなっておりませんが、もしも水資源公団というような全国的なものができるといたしますと、おのずと、どういう水系ということがきまってくると思います。先ほど申し上げましたように、今後、農業用水も必要でありますが、工業用水上水道等も相当伸びていく地域というところをやっていこうということを考えますと、おのずと、利根川とか木曽川とか、あるいは淀川とか北九州というようなところに限定されてくるのではなかろうか。これは予想でありますが、私どもが最初考えました、たとえば三重県の三重用水でありますとか、あるいは利根川水系の印旛の問題でありますとか、あるいは埼玉県合口の問題こういうようなものが将来は全国一本に公団ができますれば当然仕事対象になるんじゃなかろうかというふうに考えておりまして、その問題はもう少し先ということに相なるんではなかろうか。ただ、今申し上げましたように、われわれの考えました仕事の大部分がその全国的な公団でまた取り上げていかれるんじゃなかろうかというふうにわれわれは考えております。
  37. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私ども、今度の一部改正というものは、愛知用水公団事業が終わる、そこでその技術陣容等をどう総合的に活用するかという過渡的な問題として豊川用水事業を継承してとりあえずやっていくということのみに問題を解釈しておるのではなくて、先ほど来言っておるように、水資源の問題との関連の中の農林省の構想、あるいは政府・自民党としてきまってくる全体的な構想、こういう問題の中で愛知用水公団というものをどういうように位置づけていくのかという問題が一つあるのと、別の面では、農林漁業基本問題調査会で取り上げた、農林省の行政機構のあり方の中で例の行政の監督指導面と事業面との分離という、こういう一つの重要な意見の具申というものが愛知用水公団法改正の底に流れておる考え方として把握して参りますと、事は非常に重要な問題になってくる。予算委員会で私が周東農林大臣に今後の農林省の行政機構のあり方の問題についてただした際においても、考え方をそういうところに置く置かぬは別として、ともかく根本的に検討をいたして適当な機会にこれを提案いたしたい、こういうふうに申しておったのでありますが、そうなってくると、単に愛知用水公団法の一部改正という問題ばかりではなくて、この前の官行造林の森林開発公団への業務移管の問題とも関連をし、さらにはまた、林野関係特別会計をそういう公団システムにするかどうかというふうな問題、あるいは食糧庁の検査を中心にした事業而というようなものもそういう点で考えるのかどうかというふうな問題、さらにまた、先ほど来言っておりますように、農地局を中心に取り上げておる農地の開発事業というものが今日こういう公団形式で国営関係を取り上げていく、これが将来は発展をしていって、事業面というものについては公団システムでいくのかどうかというふうな問題についても見きわめをつけなければならぬというふうな、全体的な行政事業面の基本的な考え方がどうかというところまで来ると、この問題は単に愛知用水公団仕事が終わってとりあえず総合的に技術陣容を活用するためにというばかりと解釈することのできない問題を含んでおる。これはいずれ大臣の出席を願った際にこういう問題に対する基本的な考え方がどうかという点をお聞きして参らねばならぬというふうに思うのですが、当面、この農地局の事業面、いわゆる特定土地改良事業による農業開発部面、それから、先ほど来取り上げておりますこれから問題になる水資源の開発問題における総合開発との関連性、あるいは当面愛知用水公団法の一部改正に現われた考え方の基調、こういう問題は農林漁業基本問題調査会等の答申の関連で考うべきものであるかどうか、その点事務的な見解を伺っておきたいと思います。
  38. 伊東正義

    伊東政府委員 御質問は二つございまして、もしも将来水資源の全国的な公団ができれば、その中で愛知用水はどういう地位を占めるのだという御質問が一つと、基本法関係といいますか、その中にあります機械の問題と関連して、今これをどう考えておるかという二つの御質問でございます。  第一点の問題でございますが、これは少し先でございますが、もしも全国的な公団法というようなものが御審議を経たあとで何かできるというふうに仮定いたしますれば、愛知用水公団がやっておりました仕事は、木曾川水系豊川が今度入るわけでございますが、それはその仕事として当然その中に入ってきまして、全体が公団の中の仕事に溶け込んでくる。でありますので、全体の公団開発事業のこれは一部だというふうにわれわれは考えております。ただし、それは三十七年度以降の問題でございます。  それから、機構の問題との関係でございますが、これは、今先生のおっしゃいましたように、今後たとえば特別会計は全部公団に切りかえるのだ、こういうような意図を持ちましてこのたび豊川なり何なりを入れるということを考えておるわけではございません。これは、先ほども申しましたように、特定の水域の開発開発公団ということで進もうかと思いますが、それ以外のところは現在のところでは従来の特別会計は存続しているというふうに私どもは考えております。ただ、この問題は、私ども、将来までこうだと割り切って今やっておるわけでございませんで、将来の問題はまた将来の問題としてどうしたらいいかということを別途検討すべきじゃないかというふうに考えております。
  39. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは古証文になった資料でありますから、この問題の中身でお聞きするのはどうかと思いますけれども、しかし、まあ農林省の農地局で考えた構想という中身の問題でありまするから、二、三基本方針に関連した問題でお伺いをしておきたいと思うのです。この基本方針の中で、たとえば資金の問題については、負担金あるいは借入金という形であるわけですが、借入金については、農林中金の余裕金、さららに資金運用部資金というふうなものを活用していくという考え方がこの中に出て参っておるわけです。問題は、今度の愛知用水公団法の一部改正の中では、午前の補足説明でもお触れになりましたけれども、従来の世銀の関連において出す公団債券というばかりでなしに、愛知用水公団独自の公団債券発行ということが一部改正法案でも出て参っておるわけです。資金の面における基本的な考え方というものについて一つ、これは愛知用水公団法の一部改正に基調を置きながらでけっこうですから……。
  40. 伊東正義

    伊東政府委員 昨年、今先生お持ちの書類でわれわれ考えましたときには、資金源としまして、資金運用部資金でありますとか、あるいは中金の余裕金等がありますれば利子補給ででもということを考えたことは事実でございます。その後、新しい公団法、今御審議願っておるわけでございますが、これの中には公団債券発行規定を実は新しく入れたわけでございます。それで、全国的な公団の資金をどうするかということにつきましては、これはまた別途いろいろ考え方もあろうかと思います。ただ、今のところは、公団債券発行ができるという規定がそれにも載っておりますが、今度御審議願っております場合に、公団債券発行は、そう書いてはおりますが、実は三十六年度の予算ではこれは使っておりません。三十六年度の資金手当は一般会計からと資金運用部資金からの借入金で予算はまかなうという形をとっております。それで、この公団債券発行の問題でございますが、午前中にも御説明いたしましたように、これは資金運用部資金等を大体考えているが、資金運用部資金が借りられぬというような場合に政府保証でこの公団債を考えておりますと申し上げたのでございますが、それじゃどこかということにつきましては、まだどこで引き受けてもらうというようなことは実はきめておりません。それから、豊川事業につきましては、目下のところは、世銀から借款をいたしますとか、あるいは余剰農産物を使うということには現在のところは話はきまっておりませんで、三十六年度の予算は、資金運用部資金一般会計。三十七年度以降にもしも公団債発行するということならばどこで引き受けていただきますか、そういう問題はまだきまっておらぬような次第であります。
  41. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今の資金関係の問題については、今度の一部改正の中で、第三十四条の借入金及び愛知用水公団債券というところで新しく第五項を起こして「公団は、次条第一項に規定する場合のほか、農林大臣の認可を受けて、愛知用水公団債券(以下「債券」という。)を発行することができる。」、こういうことで、従来の世銀との関連のこと以外に愛知用水公団債券発行ということを法改正の中でうたっておるし、第三十七条第三項ではこれに見合っての政府保証の問題、さらに、第四十三条のところではこの条項に関する大蔵大臣との協議、こういう関係条項がそれぞれあるわけでありまするけれども、今必ずしも明確にされませんでしたが、一体どこを当てにしておるか。法改正としてやはり三十四条第五項で愛知用水公団債券というものを従来なかった項目を新たに起こしたということは、一応今後七カ年なら七カ年で事業を完遂する過程においてはそういうことが生じ得るということがなければおそらくこういう条項は設けられないと思うのですが、一体、基本方針との関連もありまするけれども、借入金の対象というようなところをどういうところに前提を置いてこの公団債券というものを書かれたのか、これをさらにお伺いしたいと思います。
  42. 伊東正義

    伊東政府委員 重ねての御質問でございますが、この公団の大体の財源として考えておりますのは、一般会計のほかには資金運用部資金でございます。三十六年度もそのつもりでございまして、ただ、債券発行規定を入れましたのは形式的な問題が一つございます。といいますのは、資金運用部資金を借りられるところは債券発行の能力を持っているところということが資金運用部資金関係ので規定にございます。ところが、従来は世銀の要求だけで公団債券発行できる、世銀の要求の場合のみということになっておりましたので、その形式的なつじつまを合わせることが一点と、もう一つは、これは今先生がどこかとおっしゃるのでございますが、資金運用部資金から借りているわけでございますが、今申し上げましたように、資金運用部資金等が原資が不足します場合は、政府保証で、たとえばの話でございますが、これは中金等から引き受けてもらってもあるいはいいかもしれません。ただ、金利の問題がございますので、その辺のところは確実にやります場合にはちゃんと手当をいたしませんと問題になりますが、そういう農村の中で余った金で引き受けてもらう場合には、引き受けるということが政府保証で可能になりますような規定を入れたのでございます。ただ、これが将来先生のおっしゃいますようにどこの金を目当てにしているんだということまでは、実はまだはっきりきまってはおらぬわけであります。それで、三十六年度も、一応能力規定を付与するということだけになっておりまして、現実の借り入れば、債券発行でなくて、資金運用部資金から借りるというような格好になっております。
  43. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 借入金の資金源という問題で愛知用水公団債券と関連して問題を取り上げます理由一つには、例の近代化資金で系統金融の活用ということが出て参っておるわけですけれども、今後の問題として、農業関係総合開発にも、農林省の資料による基本方針からいけば農林中金なり系統関係のそういうものを生かそうという考え方が出てくる。しかし、問題は、こういう総合開発で取り上げる場合には、先ほど来局長の説明のように、特定土地改良事業特別会計でいく国営事業の部面と、それから公団システムによるところの開発部面という二本立でいくということになると、公団システムの側は、おそらく、今後の経済発展とも関連して考えてみると、必ずしも農業ばかりでなしに、工業関係、あるいは都市の上水道関係とか、いろいろなそういう各省にまたがる問題が出て参る。そういう問題に農林関係の系統金融というものが活用される道を開くということになりますと、大体六千億近いと今日言われておりますけれども、これを力点として活用する場合においては、やはり、これからの農業の近代化、いろいろな諸般の問題に重点を置いてやっていくという場合にこの問題にいろいろな方面から目をつけるということでは、なかなか問題も出てくるということもあってお聞きしたわけですけれども、必ずしもこの点については現時点では明確にきまっておるわけでないということで逃げられたわけですけれども、こういう系統金融の活用という場合には、本来こういう問題はどういうところに農業関係から見て力点を注ぐかということと結び合わせて考えてみないと、いわゆるこういう金が結果的には大産業なり大企業なりのそういう部面のプラスのために活用されていって、案外農業関係に還元されるウエートというものは相対的に低くなるということでは問題が生じてくる。考え方として、こういう問題も一つの資金源として考えるということは、それ自身はあえて考え方として問題はないにしても、取り扱いいかんによっては相当大きな問題を生ずる可能性があるのじゃないか、かように思うわけであります。  それから、基本方針の第四のところ、これはやはり愛知用水の場合もそうでありますけれども、今後公団システムでやる場合の問題点ということに相なろうと思うのでありますが、「農民による事業費負担制度にかえて、新たに施設使用権(物権)を設定する。この施設使用権は、特定多目的ダム法によるダム使用権を新公団の建設に係るダム、頭首工、水路等の施設に援用し、当該施設につきその建設費を負担した者又は対価を支払って利用する者に物権たる施設使用権を設定するものとする。」、といわば泥水制度といいますか、そういう考え方というものはこの考え方の中に出て参るわけですけれども、これは今後公団システムでやる仕事の場合の重要な基本方針の項目になっておるわけですが、この基本的な考え方について具体的にさらに説明を願いたいと思う。
  44. 伊東正義

    伊東政府委員 御質問は二つございますが、最初の問題は、中金の金をもしも使う場合に、そういう金がほかの産業、工業用水でございますとか上水道とかそういうものに行くのではまずいのではないかという趣旨のお話があったのでございますが、これは、もしもそういう場合でも、やはりアロケートされた農業分に使用するという場合には農業だけに使って、ほかの工業水道でありますとか上水道の方にアロケートされた分はそれは公共団体が起債で金をまかなってやりますとか、そういう形になろうかと思いますので、先生の御心配のように、農業の金をほかのたとえば工業水道の方に使っているのだということにならないと思います。将来の問題でございます。これが第一点でございます。それから、二番目の施設使用権の関心でございますが、これは、私ども、いろいろ土地改良をやりまして負担金をどうして取っていくのがいいだろうかということを考えておるわけでございますが、先生御承知のように、土地改良法その他におきましては負担金としてこれを取っていく。できました施設に、たとえば今御朗読がありました特定多目的ダム法でやっておりますように、あれは、一応使用権という物権を新しく作って、従来の公物に附属物としてやった上に新しく物権を設定して、それに基づいて今度は水を使う方の人にはその使用料を取っていくというような形のものが一つの合理的な形ではなかろうか。たとえば、水を五十トン使う人でもあるいは十トン使う人でも負担金は面積当たりで一緒だというような考え方でなくて、一つ上の者がたくさん出して、多目的ダム法に考えましたような物権を持って、そうしてその下で水を使う人からは使用料を取っていくということも、全然新しく水を取るという場合には合理的なものではなかろうかというようなことで一応考えたわけでございますが、まだなかなか農業関係ではそこまで参りませんで、今度の愛知用水公団法改正あるいは全国的な公団の場合でも、そういう物権を設定して下の方では水の使用料を払っていくというような形には実はなりませんで、まだ、面積当たりの負担金といいますか、そういう形で金を取っていくというような結果になっております。
  45. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これからの農業情勢の変遷という問題と関連をして、売水制度の問題、つまり、水道を使う場合に水の代価を払うというような考え方で、農業の場合にも売水制度の考え方を取り入れてやっていというほど、農業関係について経済的に条件があるかどうかということは、非常にむずかしい問題だと思いますし、元来、従来の農家の常識からすれば、水というものは天然資源から恵まれて、それを活用しながら、過不足はいろいろできるけれども、いわば金のかからない水を使ってやってきておる、こういう既成概念があろうと思うのですが、これからこの方針が具体的に実現して参りますと、ちょうど都市の人々が上水道の水を買うごとく水を買う、そういうことで現実に農業経営というものがこれからも総体的に非常にむずかしい状態の中で成り立っていくかどうかというところまで十分見きわめないと、売水制度そのものは大へんむずかしい問題だろうという感じが率直に言ってするわけです。これは従来も問題になった点でありますが、水利権という問題、歴史的に水の問題では血の雨の降るような水争い等もあって確保してきた水利権、いわば慣行水利権というものは、今日法的な意味においては必ずしも磐石の体制ではない。総合開発の場合にもこういう慣行水利権というものが具体的に十分活用されるかどうか、どこまでそれが法的に裏づけられるかどうかということは、大へんむずかしい問題になっております。これは、一九六〇年に農地局の方で、「日本農業と水利用」ということで、水の問題に対してある程度検討した資料を出されておりますが、その中でも、農業水利権の性格ということで、この慣行水利権について私権であるかまたは公権であるかの論争が河川法の解釈をめぐって今日までいろいろ展開をされてきて公権説あるいは私権説、いろいろ論争あるわけでありますけれども、慣行水利権に対する農林省の農地局としての統一した見解というものはおそらくあろうと思う。この際、慣行水利権、農家の側から言う水の基本的権利を守るという面から見て、慣行水利権というものをどういうふうに統一見解として解釈されておるかという点を明らかにしていただきたいと思います。
  46. 伊東正義

    伊東政府委員 慣行水利権の問題でございますが、これは今の水利権の大部分が実は慣行水利権になっております。河川法の十七条から十八条、十九条辺で正式に許可を受けまして河川水利権を持っておるのは、おそらく一割か二割じゃなかろうか。全国的な調査はできておりませんが、たしか、昨年水の問題の調査をいたしましたとき、特定の水系をとってみましたときにも、大部分が慣行水利権ということになっていたわけでございます。  それで、慣行水利権の内容、性格でございますが、今先生おっしゃいましたように、これはなかなかむずかしいものでございまして、私どもの解釈としましては、河川法の施行規程というものが明治二十九年にできております。その十一条にございまして、これが慣行水利権の出てきます法的な根拠法でございます。これは、この河川法が施行になります際に河川法もしくはこれに基づいて発する命令により現存しておるものは、これは許可を受けたものとみなすのだというような古い規定でございますが、明治二十九年ごろの規定がございまして、これに基づきまして慣行水利権というものは法的には認められたものだというふうにわれわれ解しております。水利権の内容でございますが、これも先生御承知のように、一定の水量を継続的に排他的に使っていくのだということが内容になっております。  それで、われわれとしましては、慣行水利権につきましても、河川法で正式に許可を受けました水利権と法律上は一緒だというふうに考えております。ただ、問題は、慣行水利権の内容が一体どういうものだ、たとえば何月から何月までに取水をして、その水の量は何トンであるというようなことにつきまして、実は、これは、正式に許可を受けております権利と違いまして、内容が不明確な、いわゆる当時存在しました慣行そのままが認められているというような形になっておりますので、内容としまして正式の水利権より不明確な点はございますが、法的な性格としては許可を受けた水利権と一緒のものだというふうに考えております。
  47. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今の「日本農業と水利用」の「農業水利権の性格」の中で取り上げておる、たとえば表8−6の「水利用の根拠」という資料を見ますと、代表的な水系別に取入口数があり、河川法による許可、あるいは条例規則による許可、許可のないもの、この許可のないものの内訳として、この根拠に、判決、調停、契約、古文書、あるいは水利用の事実のみ、こういうふうな形でそれぞれ数字が出ております。これを見ますと、許可のないものという条項がパーセンテージとしても相当の数を占めておる。やはり、今後、経済の成長に伴いまして水の高度利用という観点から、単に農業関係の利用ばかりでなしに、工業なり都市用水なりということになって、第一次産業と他産業との水の競合関係というようなものが出て参りますと、こういう非常にあいまいな、しかもきっちりしてない慣行水利権という問題が、農民の側のいわば犠牲においてそれが他の用水関係の活用になっていくという危険性は十分出て参ろうと思う。その辺のところはやはり今後水資源の公団の問題を取り扱う場合にも一つの問題でありましょうけれども、水問題というのは、私どもも、これ一冊読むまでもなく、従来から既成概念として持っておるところと比較しながらいろいろやっていますが、なかなかむずかしい問題を含んでおるわけですけれども、正式に認められるもの、あるいは許可がなくても実際慣行水利権として現存しておるもの、こういう問題を、やはり、今後の水の総合開発というような利用の中で慣行水利権の擁護というものを具体的にやっていく場合には、場合によってはもっと法的規制を明確にするとか、いろいろなことをやはり考えていかなければならぬのではないかと思うのですが、そういうような問題に対して、農地局として、今後の慣行水利権の取り扱い問題というものをどういうふうに改善あるいは是正といいますか、そういう考え方があれば、一つ明確にお答えを願いたいと思います。
  48. 伊東正義

    伊東政府委員 慣行水利権の問題は非常にむずかしい問題がございまして、今先生おっしゃいましたように、慣行水利権だけ取り上げまして改善していくという問題は実は非常にむずかしゅうございます。それで、今われわれ考えておりますのは、これはいろいろな慣行水利権等がありますところでその後新しい農業水利上の施設をいたすというようなことがかなり多うございます。といいますのは、今まで慣行水利権で何カ所かで水を取っていたものを一本の合口にいたしまして、せきを一本にして、そこで合併して水利権を一つにして新しく河川法上の許可を受けて、正式な——正式なと言っては語弊がありますが、許可を得た水利権というものに直していくというふうな、何かはかの要素と一緒にやりませんと、慣行水利権それだけ取り上げて合理化ということは、なかなかむずかしゅうございます。でありますので、われわれの態度といたしましては、そういう新しい施設をいたしました場合に、過去の水利権の合理化といいますか、内容をはっきりしていくというようなことで改善をいたしております。ただ、慣行水利権は、これは、場所によりますと、水の量等につきまして非常に大きな量を持っておりまして、現実に使っておるものはこれに比較しまして非常に少ない、まあ水利権だけあって水路は非常に狭くなっているという場合もありますし、水路は広くてもそんなに水は使わなくてもいいというようなことも実はございまして、これから、先生がおっしゃいました工業用水なりあるいは上水道との競合とかいうことになって参りますと、農業の面でもやっぱり反省するところは反省する必要があるのじゃなかろうか。単に慣行水利権があるからということだけで、現実に水を使っておらぬ場合に、そういうものをどうするかというようなことも、これは農業と他産業との間でも合理化する必要ありましょうし、また、農業の内部でも、慣行水利権だといって上流と下流で非常に問題を起こしていることがございますので、農業の内部でも合理化をはかる必要がありますし、また、他産業との問でも合理化をはかるだろう。ただし、それをやります場合には、施設を近代化するとか、何かそういうことをやりませんとなかなか改善はむずかしいというのが現状でございます。
  49. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 たとえば、私の三重県で例をとってみましても、櫛田川の合口によるところの農業関係開発事業をやったわけですけれども、従来の状態よりも、合口をやった自後の水の関係の方が、地域によっては非常に悪化してしまった。こういうことで、負担金がなかなか集まらないという問題が現実に今生じておる。総合開発をしていろいろ経費を使い、それが地元負担で下部におりていく。ところが、水の問題に焦点を合わせてやってみると、地域的には従来よりも、これは設計その他の問題も場合によっては原因になる場合がありましょうけれども、悪化をする。なおかつ工事に伴うところの諸経費というものを負担をしなければならぬという問題が現実に生じてきておる。宮川の総合開発の場合には、ため池その他で水は十分あるから受益地域に入れていらぬという問題がある。各地にも受益地域の含む問題としてこういう問題が出てくるだろう。漁業権の場合で言えば、やはり、工場の誘致に伴う埋め立てとかいろいろなことになれば漁業権補償というようなことでいろいろ補償問題も出てくるわけですけれども、慣行水利権ということは今日の段階では法的にも実際上にも非常に問題か多いわけですけれども、そういう開発前と開発後における差というものをやはり考えに入れないと、地元への実際の直接受益の限界においてという言葉を使っておりますが、ここらあたりが実際問題としては下部の末端の農民の側から見ると割り切れない問題がしばしば各地において出て参ると思う。そういう点で、やはり、慣行水利権を合理化していくということは、これは一つの方向として考えられると思うのですけれども、合理化の過程で、既得権の問題と新しく合理化した姿との差引計算というものをどういうふうに取り扱っていくかということも、水に関する限りやはり一つの問題じゃなかろうかと思うのですが、そういう点は農地局としていろいろ検討されたことがあるのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  50. 伊東正義

    伊東政府委員 今の設例は、農業内部の例を引かれましたが、同じ問題が、まあ水産の問題をあげられましたが、工業その他でもございます。それで、慣行水利権で、たとえば十トンという取水権があった、それがほかの工事関係で九トンしか取れなくなった、八トンしか取れなくなったという場合には、そしてその水をほかに使うのだというような場合には、これは当然補償の対象になってやっております。また、農業内部でございますと、合口をしましたために一方で水の量が減ったというような場合に負担その他でどう考えておるかというお話でございましたが、合口をやります場合には、原則としましては、従来必要であった水だけは流すというのが原則でございます。先生の御設例の場合に、合口をやったところが、たとえば前に十トン水が入ってきたところが、今度は十トン入るということでやってみたところが九トンしか入らなくなったというようなことは、これは設計の間違いでございますとか、何かそういうことがない限りは普通はないのだ、これは、十トンという権利はあったけれども、実際は十トン使ってなくて九トンしか使ってなかった、だから施設を新しくやるから九トンでいいんじゃないかというようなことが私は多いんじゃないかと思いますが、現実に十トン必要であり十トン取れたものが、この合口の結果九トンしか取れなくて量が減ってくるのだというようなことでありますれば、これは、負担金その他のところで、農業の内部で話し合いをして、よけい利益をこうむるところが負担金をよけい出し、そうでないところは減らす、そういう負担金に軽重の差をつけて取っていくということが私は当然じゃなかろうかというふうに考えております。
  51. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今私が例としてあげた点は、合口の場合に矢板等で完全にやるつもりであったろうと思うのですが、設計上はそういうことでやりましても、伏流水の関係でロスがあり、従って、補助のまたせきを作ってやらなければ全体計画として当初考えておったような形の水の受益関係にならない、あるいはまた工事の進捗というものが当初考えておったよりもずれるというふうなことで問題が生じてくるとか、いろいろな問題がからんで、今日事例にあげたところでは相当こげつき資金というような点で問題になっておるわけであります。これは一つの事例で申し上げたわけですけれども、そういうふうに、何でも入れて総合開発あるいは国営事業というようなものをやりましても、地域別に見ると従来使っておる水の状態というものと必ずしも良好状態にないということが、設計その他いろいろな問題もあろうと思うのですけれども、出てくる。そういうふうな場合の問題、あるいは先ほど来言っておるように、慣行水利権というものが今後やはり農業以外の開発も含んでやる場合にどういうふうに擁護されていくかというような問題は、これは水資源の公団の問題が出てきた機会に農業の側からの問題としてやはりはっきりしたものを研究をし打ち出していくということが必要じゃないか、率直に言ってそういう感じを持つわけです。  この問題は時間の関係もありましてこの程度にして、次に移りたいと思いますけれども、今度愛知用水仕事が一応終了する段階に来ているわけです。そこで、各種の基本計画の変更に伴うところの、たとえば変更の資金計画の問題、そういう資金の償還計画の問題、これにからんで農民の地元負担の問題、こういうような問題が前々から何回か論じられてきたわけですけれども、これは、ちょうど事業の終わる段階でありますので、基本計画の変更に伴う変更資金計画の問題について資料もいただいておりますが、国庫補助金、世銀、見返り資金、運用部資金、事業外収入、こういう各項目に分けて、実施計画作成時の昭和三十二年の段階と、修正をいたしました昭和三十六年の今回の計画の場合と対比しながら書いてあるわけですけれども、それに伴いまして、アロケーションの関係で、農業関係、電力関係、水道関係の当初計画のアロケーション、今回のアロケーションの数字、さらにそれに伴います農民負担の点が書かれているわけですが、これらの変更資金計画の点で、特に農民負担の問題、あるいは、場合によっては、これは地元に帰ったとき新聞で見たのでありますけれども、このアロケーションの関係で、県側の負担問題というようなことでもう少し軽減をしてもらいたいというような要望が新聞報道として出ておりましたが、それらの問題が具体的に今日どういう話し合いになってきておるか、これは、いずれ参考人を呼ぶわけですから、県側からの意見なりあるいは土地改良区自身の農民負担に対するいろいろな希望なりというものが具体的に出て参りますから、そのときにまたさらに参考人に意見を聞こうかと思いますけれども、いろいろ工事予算増額その他に伴います今回の修正計画に関連をして、資金計画の今日までの折衝経過、そういう点を一つお話しを願いたい。
  52. 伊東正義

    伊東政府委員 資料といたしまして、お手元に、基本計画を変更いたしましたので、資金調達計画とか負担区分の変更あるいは総償還額がどうなるかというような資料を差し上げておりますが、これは、事業費が、先生御承知のように、三百三十一億ということが実施計画時には予定されたわけでございます。これが、ことしの春正式に基本計画の変更をやりまして、実施計画を作りまして、縦覧、公告、法令の手続を経まして、実は確定いたしたわけでございます。基本計画を変えました中で一つの大きな部分は、今先生がおっしゃいました資金計画、資金の事業費が変わりましたことと、負担区分がそれに伴って変わってきていることが一つの大きな内容の変更でございます。私ども苦慮いたしましたのは、これも、面積か従来は三万三千町歩ということでずっと予定していたのでございますが、今度の基本計画で約三万町歩ぐらいに減っておるわけでございます。それで、この三万町歩ぐらいに減りました前提といたしまして、事業費は約九十億ぐらいふえたわけでございますが、これを何とか農民負担につきましては、総償還額は従来の四万三千円ベースを守っていきたいということで、実はいろいろ折衝をしたわけであります。それで、この負担区分等をごらんになりますとおわかりでございますが、農業の中で、国庫につきましては百三十億が百八十億にふえるというようなこと、県もこれは特別負担をいたしまして四十三億か八十二億というふうにふえております中で、農民につきましては、これは三百三十時代には九十九億という負担額、約百億でございましたが、これを九十億というふうに実は減少いたしております。これは、農民負担をなるべく、面積は減りましても総償還は四万三千円ベースで持っていきたいということから出ました結果でございます。それで、これは、農民負担が減りますには、県の特別負担等ございますし、そういうことによりまして、従来は果樹につきましては全然補助金が出なかったというものにつきまして、国、県で補助金を考えますとか、あるいは開田・開畑等につきましては、従来は国と農民だけで負担をしておりましたものを、県にも負担してもらうというような、いわゆる補助率等につきましてもなるべく農民に有利になるようにというような操作をいたしまして、九十九億を九十億まで、事業費はふえましたが農業内の農民負担を下げていくということを実は考えたわけでございます。それから、負担区分の中で、電力につきましては、従来二十一億くらいでございましたが、これが二十三億になっておる。水道が四十億でございましたものを五十三億というように、電力、水道等につきましても、それぞれ、従来のような考え方で、なるべく公平に負担をしてもらうというような形で負担をきめたわけでございます。その結果、電力、水道、水道というのは県でございますが、県等と、もう資金計画につきましては全部話し合いがつきまして、今お手元に差し上げておりますような負担区分、その償還額というものが、一応予定されたようになったわけでございまして、何とか農民の諸君の負担が上がらぬようにという努力をいたしておるような次第でございます。
  53. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この点は、あす参考人が参ります際に、さらに現地側の御意見と見合ってお聞きすることにいたしまして、各種借入金の償還の問題でありますがこれは、愛知用水事業の終了に伴いまして、国際復興開発銀行の関係、あるいは余剰農産物の関係、さらに特別会計資金運用部資金、各方面についての借入金の償還の問題が出て参るわけです。  最初に、国際復興開発銀行の関係は、利子が年利五分七厘五毛ということで、三十六年五月まで据え置き、据置期間中の利子は元加されて、据置期間の満了後は、現金は、世銀の作成する償還計画表に基づいて、十六年で、利子は経過分を五月及び十一月に支払う、こういうことで、十七億六千四百万円の総額に上る金が支払われていくわけですが、これは大体予定通りこの方針で優先的に支払っていくということでやっていくわけですか。
  54. 伊東正義

    伊東政府委員 ただいまお話しになりましたのは国際開発銀行からの借入金でございまして、先生のおっしゃいましたような償還条件になっておりますので、この通りの方針で、農民から、あるいは電力、水道からも金が返ってくるものがございますので、そういうものを含めまして、そういう償還条件通りに返していくということでございます。
  55. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 余剰農産物関係は、第一次協定分のもの、あるいは第二次協定分のものというふうに、いろいろ協定時の関係の問題があってなかなか複雑になっており、据え置きあるいは支払いの関係等もなかなか複雑になっておるわけですけれども、余剰農産物関係の支払いという問題について、具体的に一つ説明を願いたい。
  56. 伊東正義

    伊東政府委員 余剰農産物で借りましたのは、第一回目が十六億ございます。これは昭和三十三年の三月までが据え置きになっておりまして、これは先生よく御承知のように金利は四分で借りております。それで、据置期間中の利子というのは、四分のうち一厘だけ払いまして、三分九厘というものは元加するというような契約で借りておりまして、据置期間の三十三年の三月以降からは二十二年間で元利均等年賦で支払っております。  第二回目は四十億というものを借りたわけでございますが、これは三十四年の三月までが据置期間になっておりまして、償還の条件は先ほど申し述べました第一次の協定と同じでございます。  それから、第三回目には、これは御承知のように、三十五年の予算をやりますときに、しばらくとだえておりました余剰農産物からまた借りた。これは四十五億でございますが、これは三十八年の三月まで据え置きになっておりまして、そのあとでは、前は二十二年ということでございましたが、これはその後余剰農産物の方の特別会計関係もございまして十八年というふうに若干短くなっております。三十六年度でも十七億というものを借りたのでございますが、これも、今申し上げました三十五年に借りましたときには十八年でございましたが、これは据置期間満了後、三十五年で借りましたものと一緒の時期に償還するということで、十七年間で返すというようなことになっておりまして、国際開発銀行よりは金利その他の点でこの方がかなり有利になっております。
  57. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 あと資金運用部資金関係が二百二十九億二千九百万円あるわけでして、この関係も、据え置き三年、据え置き満了後二十二年の元利均等半年賦償還ということで、年利六分五厘を支払うということになっておりますが、問題は、こういう国際復興開発銀行あるいは余剰農産物資金融通特別会計関係資金運用部資金関係償還問題が、愛知用水事業の実施区域の今後の農業を中心にした開発の成果と見合ってスムースに返還をされていくのかどうか。後ほどそういうこれからの仕上げ問題ということで少しお伺いしたいと思いますが、その辺のところがやはりなかなか問題になります。もちろん、そういうことでせっかく莫大な経費をかけてやった総合開発事業でありまするから、十分成果あらしめるように各方面で努力を必要とするわけですけれども、それと見合わないというと、今の返還計画というものが場合によっては支障を来たす、そういうこともあり得ると思うのですけれども、これはどうなんですか。各種借入金の償還の場合の今の三つの資金の優先順位というようなものは解釈としてあるわけですか。三者同一順位ということなのか、あるいは国際的なものを優先順位とし、国内的な資金運用部資金は、そういういろいろ問題が出てきた場合には次いで考える、こういうことなのか、その辺のところはどういう解釈をしておられるのですか。
  58. 伊東正義

    伊東政府委員 特に優先順位等ということは考えておりません。ただ、先生御心配になります今後の問題としてこういうものが返せるかどうかということでございますが、その点は私どもも今後一番注意していかなければならぬ問題の一つでございます。営農の計画なり今後の施策がうまくいきませんと、先生が御心配になるような事態が発生せぬとも限りませんので、私どもとしましては、県とも協力しまして、今後の農業経営のやり方をどうやっていくかということにつきまして、従来考えましたもの等にも若干変更を加えるというようなことをして、 これはせっかくこれだけの大事業をやりましたので、この金を返していく、そうして、そのあとではまた農業経営が楽になっていくんだというようなことがそこを来たすようなことのありませんように、今後の営農計画等については十分注意をして参りたいというふうに考えております。
  59. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 経済企画庁の総合開発局長を呼んでおったのですが、用の関係で他の人が来られたようでありますけれども、いずれこれは水資源の問題が法案として論ぜられるときにいろいろ問題にして論じたいと思うのですが、この際、参考までに、経済企画庁の方で、今日の時点における農業用水あるいは工業、上水道用水というふうなものの現況、それから、経済の発展に見合って、これは所得倍増計画とも関連がもちろんありまするけれども、今後十年間にそれらの関係のアロケーションが具体的にどういうふうになるという試算等もあろうと思いますが、そういう水開発を中心にした現時点と十年後の数字的な変遷というものをどう考えておられるか、一つお伺いしたいと思います。
  60. 南部哲也

    ○南部説明員 お答えいたします。  実は、今先生のおっしゃいましたような水開発の基本になるべきいろいろな資料につきましては、従来各省おのおのの事業官庁においてばらばらにそれぞれの観点から資料は作っておりますが、これらの相互を調整しましてどういうふうにやっていったならば一番いいかということを確立したものがないわけでございます。私どもの方といたしましては、一応現在ありますのは、倍増計画に見合うところの十年間の所要の需要というものと、それに対してどれだけの供給力が全国的にあるかという問題についての非常に大ざっぱな観点からした供給可能量というものをはじいてあるだけでございまして、これらの問題につきましては、各地域々々につきまして、もっと精査いたしまして、その結果その資料に基づいて総合的な計画を作っていかなければならないということが、今回水資源の審議会を特別に作ったりあるいは水資源開発公団を作ったりするもとになっているわけでございます。従いまして、ただいまのところ、全国的に各政府の意見が統一したそういう需給の計画というものはまだありません。その基礎データがあるにすぎないという現況でございます。
  61. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは経済企画庁としての現時点におけるお話であるのか、あるいはもっとトップ・レベルのところでお話を聞けば具体的な数字というものがもっと明確に試案として出るのかどうか、よくわかりませんけれども、やはり、水問題というのは、単に農業関係ばかりでなしに、工業あるいは都市等のいろいろな所要水量も含めて重要な問題であり、しかも所得倍増計画というものを一つ計画するとすれば、やはり、重要な問題の一つとして、水問題というのがどういうふうにアロケーションとして変わってくるかということは、これは当然の基礎データであろうと思うのです。今抽象的なお話をされて、それでそうですかというわけに必ずしもいかぬと思うのです。御承知のように、日本の国土の総面積三十七万平方キロというふうに大体言われておる中で、年間に五千九百億立方メートルの雨が降るであろう、それがいろいろな形で地下にも入り、蒸発もし、あるいは河川を通じて流れ、そういう中で農業関係に年間所要されておる量は六百億立方メートル程度であろう、これは今後の農業発展の方向、特に畑灌等の導入の問題とも関連して、具体的に十年間で農業関係でどうなってくるか、あるいは工業用水関係についてだって今日どれだけの水を使っており、今後工業の発展に伴ってどれだけの水が必要であろうかということは、これは試算的に出てくるであろうと思います。問題は、そういう試算で今後十年間に十分まかなえるかどうか、そういう問題は別として、もっと具体的な数字がなければいかぬと思ったのですが、せっかく呼んで何もお聞きしないのは悪いので、いずれ法案が出てきたときにさらにお聞きするということにして、きょうはこれ以上聞きません。  法制局の方を呼んでえらいお待ちいただいたようですが、さきに慣行水利権の問題が出て、話が次に転じていったのですが、一つこの際法制局の慣行水利権に対する先ほど来の質問に対する見解というものをお聞きしておきたいと思います。
  62. 吉國一郎

    吉國政府委員 法制局では実は河川法の問題は第二部でやっておりまして、本来ならば第二部長が見えましてお答え申し上げるべきでございまして、先ほどあるいは第二部長もこちらに参ったかと思いますが、第三部長というお話で私こちらに参りまして、担当でございませんので、あまり的確なお答えはできませんでございますけれども、先ほど来農林省農地局長から申し上げましたように、水利権につきましては、もちろん河川法の十七条以下の規定によりまして与えました許可によって生じました水利権と、それから、慣行上生じました火利権と二種類があることは、学説上もあまねく認められておるところであります。ただ、その水利権の内容につきましては、行政法学上はいろいろな議論がありまして、この点につきましても、先ほど来角屋委員のおっしゃいましたこと、あるいは農地局長の答弁申し上げましたところによって尽きておると思いますが、いずれにいたしましても、何分にも河川法は明治二十九年に制定せられまして、終戦後基本的な法律は逐次改正せられまして新しい憲法のもとにおける法制として整備されて参っておるわけでございますが、河川法につきましてはいまだにこの古い法律のままでいる状態でございまして、相当な部分の問題が、あるいは学説により、あるいは判例等により処理されておるような面もございまして、数年来河川法の全面改正というものについては建設省を中心として関係各省いろいろ議論をしておるわけでございますが、なかなか調整に困難なような問題もございまして、まだ依然として明治二十九年の法律が生きておるような状態でございます。いずれこれは近いうちに全面的に改正をせられることと思いますが、その際には水利権の内容等につきましても的確な明らかな規定を設けることが望ましいというふうに考えております。
  63. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この愛知用水公団法の一部改正というものが、一応二十四日までの会期中に通過する場合、これからの新しい公団豊川用水事業を含んでの開始を八月一日ということに予定をしておるようですけれども、御承知の、今度の法改正の中では、農林大臣事業基本計画を作る場合の関係各省への同意手続の問題に対する必要期間、さらに、農林大臣事業基本計画の概要の公表及び事業基本計画公団への指示の法第二十条第一項の問題、それから、公団事業実施計画農林大臣提出という法第十九条第一項、第三項の問題、引き続いて農林大臣事業実施計画の公告及びその縦覧期間、法第二十一条第一項、これに伴うところの必要な縦覧期間の問題これに対しての公団の意見書の審査期間、法第二十一条第三項、施行規則の第四条、それから農林大臣に対する意見書の関係者からの提出期間、これは法第二十一条第七項に関連する問題、農林大臣の意見書の審査期間、施行規則の第七条の関係、それから農林大臣事業実施計画手続終了の告示、法第二十一条第十一項の関係、こういう各般のそれぞれの手続を経て公団豊川用水事業を継承しての事業開始ということになるわけですが、今日、法改正の中身とも関連をして、これは政令の定めるところということで期間を明示してない点もあるわけですが、一応会期末の二十四日までに大体終わるものとすれば、どの辺のところを短縮し、政令の定める期間のめどをどの辺に置いて実際に八月一日に持っていこうというのか、あるいは八月一日が少々ずれるということも考えに入れて今日準備をされておるのか。これは、法的規制の問題が各条項ごとにあるわけですけれども、従って、その条項はその手続を踏まなければならぬということになるわけですが、その辺の、今後のこの法案が通る場合の段取りというものはどういうふうになっておりますか。
  64. 伊東正義

    伊東政府委員 この法案が通りますという仮定でお話し申し上げますと、これは、法律には、附則で、施行の日は公布の日からというふうになっております。それで、ただ役員規定だけが、四月をこえない範囲内において政令で定める日となっているだけで、全般的には公布の日から施行ということになっております。今先生がおっしゃいましたように、法律が通りますという前提で考えますと、今の手続等には法律できめてあるだけで七十五日はかかります。公団から事業実施計画農林大臣に出ます前に農林省事業基本計画というものを作りまして、そしてこれは各省へ相談をいたしましたり、その上で今度は公団に指示するという手続をどうしてもとる必要がございます。これには十日ないし二週間はどうしてもかかるだろうというふうに思います。これは法律には日は切ってございませんが、そのあとで今度は公団が指示を受けますと事業実施計画農林省へ出してきます。それを今度は縦覧・公告をし、審査をし、意見が出るというようなことをやっておりますと、それから七十五日が法的の手続を要する期間でございますので、現在、現実の問題として、公団豊川用水事業を包括しましてやりますのは、八月一日ということは無理になります。ただ、予算には、実は一応豊川国営事業というものは七月までだけに必要な予算を組んでおりまして、あとは公団に移るという形をしておりますので、これは、流用等の手続をいたしまして、若干豊川事業をやりますのが延びます場合には、現在の特定工事で、特別会計でやっております期間予算の流用をやりまして少し延ばすというやり方をするだろうというふうに考えておりますが、これは、法律が若干おくれましても、流用だけで支障なくやっていけるというふうに考えております。だが、あまり八月、九月、十月になるというようにおくれることはできませんが、おっしゃいましたように期間内にこの法律が通りますれば、現実の問題としては実行できるというふうに思っております。
  65. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今度の豊川用水の関係仕事については、承継関係で、補足説明でもありましたように、国営関係の問題の承継はこれは問題はないとして、従来県が豊川用水事業区域内において工事を施行しておる土地改良事業についての公団への継承問題、これについてはやはり双方の話し合いということに建前としてはなっておると思いますが、これらの点は大体話がどの程度までどうするということが済んでおるのか、あるいは、先ほど、午前中の質問でもありましたけれども、いわゆる県でやっている仕事の問題については、これから話し合いをして県でやるべきものあるいは公団が継承すべきものをきめるのか、まだまだ白紙の状態か、相当程度の話が済んでやっておるのか、その辺の状況はどうなのか。灘
  66. 伊東正義

    伊東政府委員 これは、国営は先生のおっしゃったような手続をやれば当然公団事業になりますが、県営につきましては、県の申し込みがあって初めてこれは公団事業になるわけでございます。それで、私の方としましては、この点は県と話し合いをいたしておりまして、これは、県営事業だけではなく、さらに下の末端の団体事業の一部もこれで行なうごとになりますので、そうして初めて公団の一貫施行として効果が同時に発生するということになりますので、当然、私どもは、これは県当局と話し合いを現在もいたしております。
  67. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 愛知県の方で昨年の八月に愛知用水地域農業計画案というものを具体的に作成されて、これからの愛知用水事業の仕上げというものを実態に即してどういうふうにやっていくかという一応のプランが出されておるわけです。これは、私どもかつて現地調査をしました当時から見れば、大きな前進であり、事業完了に伴って並行的に仕上げの方向の仕事が始まっていくという意味においても、県側の努力というものに対しては敬意を表するにやぶさかではございませんが、ただ、この中身の問題と関連をして、単に県がこういうことで具体的に推進するばかりじゃなしに、農林省の農地局の愛知用水事業を完了するにあたってのこれからの指導体制というものも当然関連をして参るわけですが、これを取り上げて参りますとたくさん問題があるわけですけれども、本日はそう大きく触れて参ることはあと時間の余裕もありませんが、先ほど資金計画の点で触れました受益面積の変更という問題が、約三万三千ヘクタール程度から三万九十八・四ヘクタール程度に減っておる。これは、田の場合に一万六千四百四十一・七ヘクタール、畑の場合に八千七百四十一ヘクタール、山林原野の場合に二千七百三十九・四ヘクタール、その場合の開畑・畑地灌漑が二千二百五十二ヘクタール、開田用水補給という面で四百八十七・四ヘクタール、それから、既設畑の開田用水補給という面で二千百七十六・三ヘクタール、締めて三万九十八・四ヘクタールという受益面積の変更があったわけですけれども、この受益面積の三千ヘクタール近い変更の根本的な原因というものはどういうところにあったのか、まずそれを承りたい。
  68. 伊東正義

    伊東政府委員 減りました原因ごでざいますが、一つは、従来の三万三千町を出しましたときの統計調査関係の資料を使ってやりましたことと、今度は、農家の土地台帳を使ってやりました計算から出てくる違いも若干はございます。それはそれとしまして、未墾地買収等で予定しました面積が足りなかったことにも一つ理由がございます。そのほかに、最も大きな理由としまして、実は、工事をやります場合に、水路をどこを通すかというようなことがだいぶ問題になりまして、その土地の買収の問題その他の関係からいたしまして、水路が既定の計画のところを通らないでかなり違った路線を通ることになったというようなことで、水のかかりが違ってきたというようなことも一つの原因になっております。また、もう一つは、都市近辺でございますので、もう農業用地として自分の方は確保しなくていいから受益地から除いてもらってもけっこうだというようなこともありまして、そういうような原因が重なりまして約三千町歩くらい減っております。減りましたが、冒頭に申し上げましたように、その減ったものを前提にしまして、事業実施計画ではいろいろな手を打ちまして、農民負担は四万三千ベースを守りたいということで今検討しておるわけであります。
  69. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 愛知用水仕事のこれからの仕上げの中で、農地の造成あるいはこれの配分、あるいは入植との関連の問題ということが一つ問題になるわけですが、農地の造成に伴ってどういう対象を中心にして経営の拡大をやっていくか、あるいは新規入植というものはどの程度計画ができるのか、こういう問題が一つあるわけですけれども、資料によりますと、農地の造成部面は山林原野を開発して約千五百七十八ヘクタールの耕地、このうち開田が二〇%、畑地八〇%が造成されるというふうな計画のようにこの資料ではなっておるわけです。そこで、この資料の数字でいきますと、経営拡大の面では七十ないし百アールの経営規模の者に対して配分西横として三十ないし五十アールのものを配分していく、あるいは場合によっては二十ないし三十アールのものを配分していく、百五十ないし二百アールの者に対して十ないし三十アールのものを配分していく、これがそれぞれ千六百戸、千二百戸、六百五十戸というのが配分予定対象農家戸数であるというような一応のプランが出ておるわけでありますけれども、こういう形からいくと、配分対象というものは、経営でその地域としては比較的中以上の者に力点を置いて経営の拡大をやっていく、こういう考え方、つまり、農業基本法で言っておる政府の自立経営に近づけるという考え方がここで具体的に出ているのではないかという感じがするわけですけれども農林省の指導としては、県の資料によるこういう考え方で農地の造成分に対する地元増反というものを具体的に指導されていかれるのか、あるいは、これはプランであるけれども、弾力的にやはり現地の実情に見合いながら考えていくという方針であるのか、それが一つの問題。さらに、新規入植の問題については、これは、この資料によりますと、百八十三戸新規入植を計画し、大体二戸当たり百四十ないし百七十アールの範囲配分を考えていく、しかもこの問題については牧尾ダム建設に伴うところの水没者を優先的に受け入れるというような考え方をとっておるようでございますけれども、現実の状態はそういうことで進んでおるのかどうか、こういう農地の造成とその整備関係の問題の現時点における指導なり考え方、実情というものを一つお伺いしたいと思います。
  70. 伊東正義

    伊東政府委員 大部分が増反でございますが、入植につきましては、先生のおっしゃいましたように、牧尾の水没者につきましては、これは優先的に考えていくことは事実でございます。入植者というのは約三百月見当でございまして、大部分が地元の人の増反用に割り当てていくという考え方をとっておることもその通りでございます。具体的の問題は、実はどういう人にどのくらいやるということにつきましては、大体県の審議会等で相談をしてやっております。実は、農地局自身としまして今どういうふうな増反者にどのくらいというはっきりした指示はいたしておるわけでございませんで、これは県等が中心になりましてやっております。ただ、まだやりましたのは一部でございまして、大部分のものは残っておるわけでございます。これにつきましては、県等とよく私の方も相談いたしまして今後進めていきたいというふうに考えますが、今先生が御指摘ありましたように、少しの者にでもだれにでも与えるというやり方よりも、私どもとしては、せっかくやるならやはりある程度の規模になるようにということを考えていくのは、これは当然じゃないかというふりに思っております。  入植の問題は、これは、入植戸数等は先生のおっしゃったように大体二百戸前後でございまして、しかし、これはまだ全都入っておるわけではございません。できたところから入っておるわけでございます。水没者等は優先するということはその通りでございます。しかし、そのほかの人は、大部分は県内の人かここに入植してくるという従来の方針通りでやっております。
  71. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 さらに、農地の造成・整備の関係では、耕地整備事業関係はまだこれからの問題か具体的な実態としてあるわけで、団体の愛知用水耕地整備事菜としての四千五百七十二ヘクタールの関係以外に、愛知用水土地改良の関係では六千四百二十一ヘクタールの問題か本事業採択基準と関連をして一団地二十ヘクタール以上のものということでは対象として出て参るかと数字的に思うのですが、さらに非補助融資事業等も含めて、これから耕地整備事業についての仕事を仕上げていかなければならぬ問題があるわけですが、これらの問題は具体的にはどういうふうに進めていかれるのですか。
  72. 伊東正義

    伊東政府委員 耕地整備の問題は、愛知用水対象にしておりますものは三月末で約八四、五%くらい完了いたしておりますので、これはこれで四月末までには完了するだろうと思います。そのほかのものにつきましては、実は、耕地整備のほかに、あの辺の団体営であります排水の問題でございますとか、実はいろいろ残っております。これは、私の方としましては、三分五厘の融資と、それから団体営事業の補助事業と両方でやっていくということで、ただ、これは愛知県のほかの地区の問題もございますので、ここだけやってほかをやらぬというわけには参りませんで、若干ふれるところも出て参るかと思いますが、今申し上げました三分五厘、それから団体営の補助事業、両方で地元の希望に合うように実は団体官等の排水につきましては今年度からやっております。
  73. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは水田の改良事業の約六千四百七十三土三ヘクタールの問題にも触れて、団体営としてこれからやらなければならぬ五千四百四・四ヘクタールの問題、あるいは二十ヘクタールに達しない場合の非補助の千六十九・九ヘクタールに対する予算措置の問題も含めて出て参ったのでございます。  いずれにいたしましても、愛知用水事業そのものとしては一応終わるといたしましても、今後の耕地整備事業あるいは水田改良事業あるいは営農を含んでの今後の諸問題になると、これからがいわゆる仕上げの時期ということに相なって参るわけですが、その点では、私どもは、愛知用水事業の基幹の仕事については完了したけれども、いよいよこれから仕上げの仕事が芸こまかく始まるという段階に解釈いたしておるわけです。そこで、たとえば新しく畑地灌漑というものを考えていかなければならぬ、あるいは水田の用水補給というようなものも考えていかなければならぬ、さらに農業以外の問題としては工業用水あるいは都市用水の問題も配慮していかなければならぬということになわるけですが、たとえば畑地灌漑の問題については、畑地灌漑ローテーション・ブロックというふうな構想のもとにおいて輪番灌漑というようなものをこれから具体的に考えていこうという構想のようでありますけれども、今後の畑地灌漑の具体的な実施方法というものについての考え方をこの際お聞かせを願いたいと思うのです。愛知県の資料によりますと、これはローテーション・ブロックというふうなものを構想に入れて、このローテーション・ブロックの考え方は、九・六ないし一〇・八ヘクタールのもの、あるいは四・八ないし五・四ヘクタールの範囲内のもの、この二様のような考え方で、大体間断日数六日を前提に考えながらローテーション・ブロックの輪番灌漑をやっていこうという考え方のようでありますが、今後の愛知用水の場合の畑灌の実施方法というものについての農林省の指導的な考え方はどういう点に置かれておるのか、お伺いしたいと思います。
  74. 伊東正義

    伊東政府委員 これは私がお答えいたしますより振興局等でお答えするのが一番いいだろうというふうに考えておりますが、今後の営農のやり方、指導としましては、これは、単に農地局ということではなくて、農林省全部としてやっていく必要があるだろうというふうに考えておりまして、農林省としましては、東海近畿の栽培二部等がございますので、これが中心となりまして県の試験場なりあるいは営農指導員と連絡をしてやっていく、指導していくという体制を考えているわけでございます。営農の指導等につきましては、当然、そういう農林省、県、その県の中で試験場、普及員という形で指導して参るわけでございますが、今先生のおっしゃいましたのも一つ考え方でございまして、大体水計算その他におきましては六日に一回の灌漑をする、一日五ミリということで六日に一回三十ミリの灌水をしていくというような形でやっている水計算をいたしておるわけでありますが、営農の指導といたしましては、先生おっしゃいましたローテーション・ブロックを作るということも当然一つのやり方でございますし、現在でも、実は、畑灌につきましては、七カ所国が補助をいたしまして、一カ所一ヘクタール、これは十戸の農家がそこで実地に畑灌をやりまして、そして展示圃的なものをやっていくというようなことも現在実は考えております。そのほかに、県が単独でも三カ所ばかり設けまして、愛知用水地区につきましては、そういう畑地灌漑の指導圃場を作ってやっておりますことと、普及員等も濃密にここに配置しまして、今後ここの地帯の営農の指導を考えていくというようなことをやっておりますので、それでは現実の畑灌のやり方はどういうのが一番いいかというようなことは、トライ・アンド・エラーと言っては語弊がありますが、これから徐々にやっていく。一番いいというのをなるべく早く、しかし一つ一つ積み上げていってある固定したものを作っていくということが必要じゃないかというふうに考えております。この点につきましてはまた明日でも振興局あたりから御説明いたしたいというふうに考えます。
  75. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 愛知県は、愛知用水地域農業計画、さらにそれに関連した部落営農計画というようなものを一項から七項までのそれぞれの区分に基づいていろいろおぜん立てをしておられるようでありますけれども、この問題の細部に入って専門的な問題に触れてくると、農地局長は必ずしも富農の専門ではありませんので、この程度と言っては何ですけれども、次に移りたいと思います。  今の問題と関連してでありますけれども、国の試験・研究あるいは営農指導体制の問題ですが、御承知の通り、試験・研究の問題では、東海近畿農業試験場栽培第二部というものがそれぞれこれから指導体制の根幹になるということで、武豊富農試験地あるいは東郷の試験地というふうなものに区分生して、計画によりますと武豊試験地関係では基礎研究、東郷試験地関係では応用研究、こういうふりなことで、県の農業試験場、あるいは県庁内の普及部門、あるいはさらに他の全体の試験研究機関との総合的な連携というふうなことでやられようとしておるようですが、この際愛知用水事業ということに必ずしも焦点をしぼる必要は場合によってはないかと思いますけれども、やはり、これに力点を置いての、農林省としてこれからの試験・研究体制の県との関連あるいは農林省自身のこれからの体制というよりなものについて少しくお話しを願いたいと思います。
  76. 伊東正義

    伊東政府委員 御質問でございますが、私がお答えするより振興局が来て御説明すべき問題でございますが、今先生がおっしゃいましたように、農林省としましては、東海近畿の農業試験場の栽培第二部かございます。それが武豊と東郷に試験地を持ってそれぞれ基礎研究なりあるいは応用研究をいたしておりますことは先生御承知の通りでございます。そのほかに実は公団か大府に試験地を持っていたわけでございますが、工事が完了いたしますれば、私ども、これはやめまして、今度はあげて国と県の試験・研究機関で指導してもらうというつもりでおりますが、東海近畿の栽培第二部は、これは愛知用水公団かできますためと言ってもいいくらいに、あそこで畑灌の研究をしようということでわざわざできたものでございますので、今後ともここが中心になりまして愛知用水地区の畑灌の問題は研究・指導してもらう、農地局ではそういう希望を持っております。県の農事試験場か安城なり豊橋にございます。また、園芸試験場も蒲郡とか渥美とか豊出にございますので、県の試験場と今申しました国の東海近畿の農業試験場でタイアップしてもらいまして、基礎跡先なり応用研究をしてもらって、それが県の普及部門におりて参りまして、これが愛知用水地区なり、豊川かできますれば豊川の畑灌地区なりというものを指導してもらうというふうに考えておりますが、何と言いましても、畑灌はあっちこっちにはございますが、これほど大規模に畑灌をやりますところは生国で初めてでございますので、ここの畑灌というものは全国から注目されておる地帯でございますし、私どもとしましても、県と国とタイアップしまして、その辺の指導には万金を期してもらいたいというようなことを農地局としまして関係の部同等に要望いたしておるような次第でございます。
  77. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは関係局長も来てもらっておればさらによかったと思いますが、営農の問題では、やはり愛知用水の関連地域の専業、兼業別農家の実態というふうなものを一つ考えてみましても、県の資料によれば、昭和二十六年が愛知県全体として専業四九・一、兼業五〇・九というのが、三十二年には専業か四三・〇、兼業が伸展をいたしまして五七・〇、愛知用水関連地域全体で見ると、専業が二十六年に五二・七か三十二年には四〇・九、兼業が四七・三が五九・一というふうに、兼業化の方向がどんどん進行してきておる。これは、尾張北都、名古屋東都あるいは知多北都、知多中部、知多南都、それぞれによってまた兼業化の傾向のウエートの差はありまするけれども、そういう問題と知多半島の沿岸地域における今後の工業化の進捗傾向、それに伴う工場敷地ないしは宅地化の傾向というものと関連をし、今後の愛知用水事業の仕上げの仕事と見合っての営農指導体制というようなものを具体的にどういうふうに指導していくべきかということは非常に重要な問題であり、また、その指導いかんによって、先ほどの資金計画に伴うこれからの世銀あるいは余剰農産物、資金運用部資金等の長期にわたる返還問題かスムースにいくか、あるいは場合によって支障が出てくるかというような問題ともやはり相当に結びついてくるし、また、一体、そういう地域で畜産・果樹を中心にしていっても、具体的にその他の農産物も含めてどういう輪作体系でもってやるか、さらに灌漑ということも関連してくると 作付規制的な性格もある程度織り込まざるを得ないというような問題の総合的な営農指導の方向、あるいはそこで出てくるいわゆる政府農業基本法からいけば協業化の方向というものをどういうふうに織り込んでくるのかという各般の問題がなかなかむずかしい問題として出てくるわけですけれども、これらの問題については一体どういうふうにしていかれるつもりですか。
  78. 伊東正義

    伊東政府委員 今先生おっしゃいましたように、この地帯は沢山から師崎までございますが、非常にいろいろな地掛を含んでおるわけでございます。北の方あるいは南の知多の方に参りますれば専業農家が多い、途中のところはかなり兼業が多いというような実態になっていることはその通りでございます。それで、私どもの方としましては、一つは、ここに水が引けるということになりましてこの地帯が一体どうなっていくのだろうかという意味の愛知用水受益地区をしぼりまして、今後の農業経済というものがどんなふうに進んでいくのかということを、実は技術会議が中心になりまして、関係部局で集まりまして、ここにつきましてはかなりテンポが早くいろいろな農業上の変化が出てくるのじゃないか、あるいは他産業との関連の変化が出てくるのじゃないか、全国的な一つのモデルと言っては何でございますが、ここを精密に調査しておけば、あるいはほかの地区でもこういうものは類推できるのじゃないかということで、ここで濃密調査をやろうということを実は農林省として一つ考えてございます。それから、これは調査でございますが、先生のおっしゃいましたように、これから兼業化が進んでいきます場合には、営農の面から言うと土地自体の問題としてはあまり効率よく使われないのじゃないか、そういう場合には、当然、共同経営といいますか一協業経営といいますか、言葉は何でございますが、そういう一部協業でありますとか、あるいは全面的な協業の問題等からもあるいは出てくるかもしれません。しかし、私どもとしましては、現在のところでは、その経営形態がどうたるであろう、あるいはまたどういうふうなものに指導すべきだというまでの経営形態までを考えましての、受益地区の中でこの地区はどういう形態がいい、どういう地区はどういう形態がいいというところまでは、実は農林省としましてはまだ結論は持っておりません。ただし、先生がおっしゃいましたように、ここは相当変化があるだろうと思っております。あとの営農を、どういう形のものを作付し、どうやっていったら農家の所得として一番有利なものができるかということにつきましては、実は、営農の計画等が、先生がさっきおっしゃいましたように、従来に比較いたしますれば、特に果樹、柑橘類でございますとか、あるいは、飼料作物をふやして、ここは十分成り立つところでございますので酪農を入れていくということをいたしまして、従来の営農で考えておりました作物等につきましてはかなり大幅な変化をしていることはたしかでございます。これをどういうふうな経営形態と結びつけていくかということにつきましては、先ほど申し上げましたような営農指導の体系を通しまして、また、これは農民の希望ということもありましょうし、その辺のところは、土地改良区なり、あるいは農協なり、あるいは農業会なりというような、いろいろな農業関係の団体とも相談しまして、最も適当なものを作っていくというふうな考え方をとって参りたい。早急に一定の型を作ってこうやるのだということで持っていくにはなかなかむずかしい地帯であるというふうには思っております。
  79. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 あと丹羽先生の方からもお尋ねがありますので、私たくさん聞きたいことがありますけれども、若干集約をいたしまして、二点ばかりでひとまず終わりにしたいと思うのですが、かねてこの問題を取り扱って参りました本委員会の場合に、愛知用水関係で、当初基本計画としてきめた水の配分問題が、知多半島方面における工業の進展とともに、農業用水関係の水の犠牲というふうなものが出てくるかどうかということが問題になりました。東海製鉄の誘致問題とも関連をして、具体的に兼山で取るべき水は毎秒三十立方メートルという設計断面で実施されているということになれば、おのずから工業用水方面というのは当初基本計画で考えた以上のことはなかなかむずかしい。ところが、その後、灌漑期は別として、非灌漑期に堰堤を作ってそこにためて利用するという問題等の、いわゆる運営問題等も出て参りましたが、こういう農業用水工業用水との競合関係、これが、県自体の計画としてこれから十年間の展望をした場合に、所要の農業関係一あるいは工業、都市用水関係の水がどうなり、それをどういうふうに充足するかという問題については、あす今日の時点における現況というものについてお聞きしたいと思うのでありますけれども、かねて本委同会でも私が取り上げて問題にしたことがあります農業用水工業用水あるいは都市用水との問題の調整ということについての、最近までの話し合いの現況ということについてお伺いをしたいと思います。
  80. 伊東正義

    伊東政府委員 水の問題でございますがこの前基本計画の変更をやりました場合には、農業用水の補給水量を実は変更いたしております。工業用水上水道につきましては四千五百万トンというものはいじっておりませんが、農業用水の一億一千二百万トンを一億四千万トンというふうに増加いたしております。これは、御承知のように、あそこで実は開田の希望がありましてかなりふえましたこと、もう一つは畑地灌漑の期間を延長しております。それから、水田につきましても早期栽培というものが入りまして、ダムの放流を早めるというようなこともいたしましたり、また畑灌のロスが五%くらいだったのを二〇%に見ました関係等からいたしまして、農業用水を一億一千二百万トンから一億四千万トンというふうに基本計画で変更いたしたわけであります。先生の御質問の工業用水上水道の問題でございますが、これは、実は、昨年六月か七月でございましたか、本委員会で実は一トンということが問題になったわけであります。これは、四千五百万トンのほかに、あの農業用水水路を使わぬときを利用して、先生がおっしゃいました約一千万トンの工業用水専門の貯水池を作ります。そこにためておくことにいたしまして、工業用水として増加して使いたい。それは兼山の二百トンという貯水条件を変更しなくても、一トンは従来の水計算からいくと農業に支障なく取れるということで、一トンの問題が出まして、これにつきましては農林省としても農業用水の支障のない限りは協力するということでお答えしたわけでございます。今度の負担の場合には、その一トンにつきましては水道が負担する。水道の負担の中にはそういうものも実は考えてございます。そのほかの問題になりますと、これは、実は、あそこの工業地帯としてまだ水がほしいということは、中京の地帯としては要望があるわけでございますが、これにつきましては、兼山の問題、今渡の貯水条件、その辺のところが今のままでいいかどうかという問題もございますし、また、兼山下流には、これは工業用水上水道水利権はごくわずかでございますが、農業水利権は先ほどお話しの慣行水利権を入れまして相当ございます。全部で七十一、二トン農業、工業、上水道を入れてございます。こういう問題との関係が実はございますので現在のところまでまだ実は結論が出てどうということに至っておりません。ただ、中京地帯といたしましては、下の水利権との話し合いがつきますれば、貯水条件等から考えて中京地帯で使いたいという希望を持っておりますが、これにつきましては、関係機関あるいは農民関係等相当ございますので、まだその点につきましてどういうふうに具体的に話し合いがつくというところには参っておりません。
  81. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今の農業用水と他の用水関係の競合の問題は、これは愛知県の今後の発展の問題ばかりではなくて、木曾川の下流の特に農業関係を中心にした慣行水利権の関係等から見て、兼山地区の取水を多量にすれば、下流地域における海水の逆流の問題、それからまた塩害問題というのは従来から出ている問題と関連してくるわけですから、この点は今後総合的な検討ということになろうと思いますが、あした参考人が参りますれば、名古屋、知多半島方面における今後の産業経済の発展と用水関係の問題についてどういうプランを持っておられるかという点について一つ聞いてみたいと思っております。その点と関連をしてさらに次の機会にまたお伺いをすることにいたしたいと思います。  最後に、愛知用水公団法の一部改正に伴いまして、豊川用水関係仕事を受け入れるということに相なって新しい公団の陣容がきまるわけですけれども、その場合に、愛知用水公団の陣容の中でも、これは総人員ということではないと思いますが、私の手元の数字では、七百七十名中公団の受け入れ人員四百九十名、そのほかに豊川用水からの受け入れ人員を加えて、愛知用水公団法の一部改正に伴う新しい公団事業の発足にすべり出す、こういうことのように話を承っておるわけですけれども、この愛知用水公団関係で、引き続き公団に残る問題、それから、やめて行く人々、それから、農林省もしくは県側で受け入れる人々、こういう問題は直接農地局としても参画をされて今日までだんだんと話を詰めてきておると思うのです。それから、豊川用水関係の受け入れ人員、そういう人員で大体三十七年の三月で五百三十名かと思いますが、この内訳の中では、本省業務関係百名、あるいは愛知用水管理業務関係八十七名、愛知用水残工事業務が五十名、あるいは豊川建設工事関係が二百九十三名、こういうことで、こまかく合うかどうかは別として、法律改正に伴うところの身分の移動あるいはそれに伴うところのいろいろな処理問題というのがあろうと思いますが、こういう関係は具体的にどういうふうに処理してきておるかという点についてお伺いをいたしたいと思います。
  82. 伊東正義

    伊東政府委員 今おっしゃいましたように、愛知用水豊川との人の関連でございますが、まず豊川には大体百三十人くらい現在おります。これが先生のおっしゃいました機構改革と公団はつながるのではないかということで実はいろいろ問題がございましたが、私どもとしましては、豊川の人については一つなるべく希望通りに考えましょうということで、公団に行きたいという人があれば公団にそのまま移ってもらうし、そのほかの、たとえば本省に行きたい、あるいはどの事務所に行きたいというような希望があれば、なるべくその線に沿うてやりましょうというようなことを考えまして、これは私どもはスムーズにいっておるというふうに考えております。ただ、まだ引き継ぎその他ができておりませんので、希望を聞いておる段階でございますが、豊川の人につきましてはそういうようなことを話しまして納得を得ておるようなわけでございます。愛知用水につきましては、先生今数字を述べられましたが、大体五百三十人くらいが予算の定員として計上されてございます。内容は、先生おっしゃったように、一般管理が百名、あるいは豊川は二百九十三人、そういうような数字になって、これは予算が計上されておるわけでございます。そうしますと、三十五年末の定員から見まして二百四十人くらいがどこかに再就職をしなければならぬという事態になるわけでございます。そのほかにさらに豊川からも若干愛知用水に行くということになりますと、二百四十人でなくて、一応二百八十人というものを目安にしまして公団の人に身分の振り方を考えていこうということで、農林省の農地局の中にその関係者で委員会を持ちますし、公団にもそういう係を持ちまして相談に応じておるわけでございます。現在までに、約六十八名くらいの人が、役所に帰りましたり、あるいは県に出ましたり、あるいは一般の民間の会社に就職をするというようなことで、七十人足らずの人が今までにそういう方面に出ております。あと、年末まででございますが、二百名くらいということを考えておるわけでございます。この人たちにつきましては、公団と私の方で本人の希望を聞きながら再就職ということについては、これによってほんとうに失職してしまうのだということでないように職を見つけてかわってもらうというふうなことを考えておるわけでございまして、今までのところでは、そういうことによって、たとえば愛知用水事業最後の追い込みの工事がおくれておるというような事態は来たしておりませんが、しかし、そう言いましても、これは人の就職の問題でございますので、公団と私の方で親身になって世話をしていこうという考えで組合と話し合いをしておるような状態でございます。
  83. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 愛知用水公団法の一部改正に伴う諸問題については、基本的な公団システムの開発方式の問題はもちろん、水の今後の経済発展に伴う総合的利用の問題、あるいはまた、現実に愛知用水事業の完了に伴うこれからの諸般の仕上げの問題等々、基本的にわたる問題があるわけでありまして、明日の参考人の御意見あるいは商工委員会との連合審査の結果等をにらみ合わせながらさらに農林大臣の御所見を承る機会を持つということで、本日はこの程度で質問を終わらしてもらいたいと思います。
  84. 坂田英一

    坂田委員長 次は、丹羽兵助君。
  85. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 昭和三十年の七月でございましたか、愛知用水公団法が大きな使命を帯びて成立をいたしました。自来今日に至るまで、世紀的な大事業をまさに完成してその使命を終わらんとしております。これに対して、常にこれを見ておりまする私は、心から敬意と感謝を捧げる一人であります。ああした大工事を、科学の粋を集め、機械の粋を寄せ、しかも関係者が渾然一体となって自然を征服した。それと同時に、また農林省の非常な指導、よろしきを得て、公団と一体となって今日を迎えることができました。また、地元農民等がこれに対する非常な熱望を抱いて協力したことも、これまた見のがすことのできない工事進捗の原因であります。そういう意味から今日これをながめて見まするときに、この関係区域、特に愛知県の知多半島灌漑区域が一大変化をしたと申しますか、以前と今日とでは想像できない大きな変化をいたしまして、ところにおいては、今の角屋さんのお話にありましたように、将来新しい農業経営を取り入れていこうと希望に満ちているところもある。また、新しくこの水によって臨海工業地帯もでき、そうしてまた工業の振興を見るという変化がございます。重ねて私は関係者に感謝申し上げると同時に、この使命を終わった愛知用水が再びまた大きな事業と取り組んで豊川用水事業工事をやってくれる、これまた愛知用水同様大成功に終わることを心から願うと同時に、この法案の一日も早き成立を地元の議員として期待するものであります。  そうした感謝の気持から、私は率直にきわめて常識的な数点についてお尋ねをしたいのでありますが、これはいやみを持ったただ討論的な質問ではなくて、きわめて建設的に、また、わからないのですから、御方針というかお考えを率直に聞かしていただけばけっこうだ、こう思っております。  午前中質疑とただのいまの角屋先生の御質問等によりましてずいぶんよくわかりました。今度法律の一部改正をせられることの真意を十分つかむことができたのであります。その趣旨の中にはいろいろあるのです。それはもう時間がありませんから申し上げませんが、そのうち特に私のお尋ねしたいのは、特定土地改良事業を七年間の計画でやってきたのだが、事豊川に関する限りは、このままでいけば十年あるいはそれ以上もかかってまだ不安なことになるというようなお話を承りましたが、こうなれば、特定土地改良区は全国にあるわけで、政府が以前にああした特別会計法を審議するときに国民に訴えたような約束を完全に履行していけば、これらたくさんあるうちの心配が一つ抜けるという解釈もできる。そういう意味にもなる。そこで、愛知用水関係豊川用水ということでこの地域は非常な恩恵を受けますが、こういう調子のいいところばかりではない。全国にたくさん特定改良区というものがある。私の方は幸いに愛知用水豊川用水と結べたのですが、こういう恩恵の受けられない、つなぎの持てないところの土地改良事業というものは、これでは全然不安になるのですが、その点どうお考えになっていらっしゃるか、一つ伊東さんに承りたいと思います。
  86. 伊東正義

    伊東政府委員 うがった御質問ではなははだ恐縮でございますが、先ほど午前中説明いたしましたように、豊川事業につきましては、第一期、第二期とございますうち、第一期だけ特定土地改良特別会計に繰り入れまして、七カ年完成ということで進んで参ったわけでございます。第二期はそれについて全然入っておらぬようなわけでございます。それで、豊川というものを第二期工事まで頭に入れて考えますと、非常に膨大な事業費が残るわけでございます。それで、こういうものをかかえまして、全国の特定土地改良七カ年完成ということでやりますには、これはまだ三年先もございますので、見通しの問題でございますから、若干見通しについてどうかという問題はございますが、こういう大きなものを同じレベルのものとして考えてていきますと、ほかの方も非常におくれてくる心配があるのではないかというふうに考えまして、特に大きいこういうものは公団というやり方でやって参る。ただ、このほかに利根とかあるいはそのほかの特別な水系公団ということを考えますが、そういうことをやることによって、残りました特定土地改良工事等については、なるべく前から申し上げておりますような七カ年完成ということを守っていきたいというふうに実は考えております。豊川がこの特別会計の中では飛び離れて大きい事業でございますので、これについて抜き出しまして公団でやっていく、その余のものにつきましては何とか七カ年完成ということを守っていきたいというふうな考え方でおるわけでございます。
  87. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 特定土地改良関係の七カ年完全実施をしたいという望みを捨てない農地局長の気持はよく理解できるし、また、私ども愛知用水並びに改正後の愛知用水、いわゆる豊川用水と関係を持つ議員といたしましては、こういう大きな工事をそれからはずして仕上げてやろうというありがたい気持には心から感謝する以外に何ものもない。ところが、ただ私ども関係が救われるとか早く実現できるということだけでは、他に全国にたくさんあるこうした同じような性格のところがかわいそうだと思うのです。それで、今漏らされましたように、将来においてはまたやがて公団のようなものでこうした方式でも取り入れられるようなところがあれば取り入れていこうという考えは、これまたいいと私は思うのです。きょう、実は、伊東さんにこういうことを言うよりも、大蔵省の連中を呼んでおいてしっかりこの点は頼んでおきたかった。こうした恩恵の受けられる地域から、恩恵の受けられない条件の悪いところに対しても、今日、食糧増産ということよりも、いわゆるもうかる百姓をやらせる、所得のある農業をさせる、近代的な農業をさせるということについて一日も早くやってやらなければいけない。昔の米の足らぬときの食糧増産というような小さい意味ではなくして、もっと大きな意味を持つこうした工事でなくちゃならぬと思うのです。伊東さんがそういう考えを持っておいでになれば非常にけっこうですから、私ども何かの機会に大蔵省の方々にも強く訴えてお願いしたいと思いますので、特別今後残された区域に対する協力を願うことを要望することが今日この法案を御審議いただく関係者としてとるべき処置だと思いますので、そのことを今申し上げておきたいと思います。  次に申し上げたいのは、愛知用水工事を終わって豊川用水の工事へかかる、そしてりっぱなチーム・ワークのとれた技術陣と近代的な高性能な大型機械を持っていって使う、これはいいことだと思うんですね。ただ、愛知用水だけで工事が終わるとするならば、もちろん国としては適当な処理をなさるでしょうが、そう工合よく全部の機械の配置転換ができないと思うのです。今すぐ隣に同じような中に愛知用水ができるといたしますと完全に機械の転換ができるというわけなんです。以前に、私どもは、愛知用水の諸君に会うたびごとに、せっかくこれだけりっぱな機械、性能のいい機械、——まあ人の問題はよくわかり切っておりますから申し上げませんけれども、この機械工事が済んだあとにもう使わないということになるとずく同様だ、こういうことを盛んに聞いておりました。今言ったように、豊川用水にこのまま使うということになると、相当使用価値といいますか、これが高くなってくると思うのです。その点、愛知用水全体の事業費も相当上がって参りましたが、どれくらい変わるでしょうか。ずくでほうってしまうのと、これを今度新しい事業場に持っていくのと、その償却の見方というものは相当変わってくると思うのです。それが少しでも多くなれば、先ほど角屋委員の言われました一番心配しております農民負担が幾らかでも安くなる。書いてあるところによるとそれも大きな理由一つになっているのですね。これは説明があったのですが、もらったのでは数字が全然出ておりませんので、お聞かせ願えたらけっこうだと思います。
  88. 伊東正義

    伊東政府委員 機械の点で御質問がありましたが、機械を買いましたのは、約十三億四千万円ぐらい機械を買ったわけでございます。このほか、機械だけではございませんが、今私ども考えておりますのは、それを償却していきまして、土地等も若干入っておりますが、大体十一億ぐらいが残存価額として残るだろうということで、実はそういうものを織り込みまして農民負担を考えております。機械その他の残存価額が約十一億ぐらいあるだろうということで農民負担の計算をしたわけでございます。その場合に、機械が、先生おっしゃいますようにあまり使い道がないということになると、ほんとうにスクラップのような値段で売らざるを得なくなる。ところが、豊川等でこれを活用していくということになりますと、今申し上げましたようにかなりなものとしてこの機械が考えられるということで、これを一応試算したのでございますが、四万三千円ベースということを言っておりますが、機械関係等が使えることによって、三千円くらいのものがその中に入っているのであります。そういう機械がほとんどだめになるということになると、四万三千円償還ベースと言っておりますが、それがさらに三千円ふえることになるというような計算になるんじゃなかろうかというふうに思っております。私ども計算しました四万三千円ベースにしますときには、残存価額が豊川で使いますのでかなり高いものになるという前提で計算をいたしております。
  89. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 もうすでに、スクラップでいくよりも、そうして他に使用場所を変えて償却だけ見ていこうという、率直に言うとそういう計算で農民負担が計算されておる、もし豊川用水の方へ持っていって使えないとするならば、負担等またそれ相当の増加を見なくちゃならぬ、こういうことの御説明でありますが、そう解釈してよろしゅうございますか。——ありがとうございました。  次に、もう二、三点簡単にお尋ねしたいと思いますが、もうすでにほとんど工事も終わるように報告を聞いております。特におくれるという個所、幹線及び池等で特に六月までに完成できないと考えておられるのがございましたら、なぜおくれておるか、それはいつごろできるか、おくれた理由承知しておきたいと思います。
  90. 伊東正義

    伊東政府委員 通水は大体六月中旬ないし下旬には通水したいというふうに実は考えておるわけでございます。でありますので、工事自体としまして通水に支障を生ずるところはおそらくないであろう、そういうふうに考えておりますが、それでは仕事自体として全部完成したかということになりますと、東郷調整池が全部完成いたしますのはおそらく本年の十一月から十二月の間でなかろうかというふうに思っております。ただ、これは、大体九百万トンぐらいの水をためて下流に対する灌漑を調整するという機能を営むものでありますが、三十六年の六月には通水に支障のない程度に築堤が完成いたしますので今年の春の通水には支障がないわけでございます。しかし、これが一緒に全部完成しませんでした理由は、特におくれましたのは用地買収の問題がございます。ここの地質等の問題、思ったよりも地質が悪かったとかいろいろな問題はございます。そういう技術的な問題もございますが、用地の問題等がかなりおくれまして、着工いたしましたのが、ほかの水路、ほかの調整池よりもかなりおくれましたので、通水は可能でありますが、工事自体として全部完成いたしますのはここだけがおくれたというような事情でございます。
  91. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 通水全体は予定通りいく、ただ東郷調整池、これが十一月か十二月完成を見込んでおる、これは用地の買収に手間取った、もちろん地質調査等にもずいぶん時間がかかったという御説明なんですが、重ねてお尋ねいたしますが、ただいまちょっとお言葉にも出ましたように、この貯水量九百万トンのこの池についてちょっとお尋ねしますが、これはもう最初から九百万トンの予定であったのか途中で変更があって変わったのか、私は技術のことはよくわかりませんが、そんなようなことも関係しておくれたかということを知らして下さい。
  92. 伊東正義

    伊東政府委員 今先生の御質問になりましたように、これがこの池のボリュームを幾らにするかということの関係でおくれたということはございません。これは当初からの大体九百万トンという計画はそう大きな変わりはございませんので、そういう面から工事がおくれたのじゃなくて、私が先ほど申し上げましたような理由でおくれたわけでございます。
  93. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 くどいようにお尋ねしますが、なるほど、その池だけが、これは大へん私どもの地元でも憂慮しておりまするが、用地の買収等でおくれたのです。また、おくれただけに関係者も御苦労なさったのですが、そういうふうにおくれると関係者はより以上に苦労するわけで、お気の毒ですけれども、これは、最初の予定通りのものと、その後できました池とは、規模も変わり、計画が一部変わったように承知しておるのですが、そうじゃございませんか。
  94. 伊東正義

    伊東政府委員 先生おっしゃいましたように、この問題は、最初の基本計画では、東郷調整池という名前そのものは出ておりません。ただこの地域内に千五百万トンを貯溜する補助ため池を築造するのだということに最初なっております。それで、実は東郷調整池という名前は最初は出ておりません。具体的に東郷調整池という名前をあげてそこへ幾らということにはしておりませんで、千五百万トンの貯溜をするため池を作るのだということで当初の基本計画になっております。それで、現実の問題としては、松野池、三好、両方で約五百万トン貯溜することにいたしております。それから、ここへ九百万トン貯溜いたしまして、当初事業基本計画で千五百万トンと言っておりましたのを、現実の計画として、三つの池で千四百万トンを貯溜するというふうに実はなっております。
  95. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 やはり、私が考えておりましたように、三十年の七月に私どもがこの法案審議いたしました当時の局長の説明と、第一次に示された計画と、明らかに途中で変わっておるのです。そして、今日全体工事がまさに終わろうとしておるのに、これだけが残っておる。それはそういういろいろな事情があって、ため池を調整池にしなければならないというような問題ができておる。これをとやかく言う者じゃないですよ。とやかく言うのじゃないが、あくまでも、前に私ども法案審議したときと、あなたの方で第一次の計画を示されたときとそのままだと言われると、違うということを私は申し上げておきたい。そして、それがただ一つ残っておる。それだけまた皆さん方が御苦労なさる。これはとにかく十一月、十二月ごろまでには早く完成をしていただけるような努力を願いたい。そうして、この池が、途中でたくさん寄せて大きな規模のものになって調整池という名をつけた、その趣旨に沿って一つ十分機能を発揮するように今後御配慮を願っておきたい、こう思うのです。  次にお尋ねしたいのですが、今度の法案改正の要点の中の一つ役員関係がございます。総裁理事長になったり、副総裁が副理事長になったり、数が減らされたり、そして任期が短くなったりしている。これはどういう関係改正なされますか、その趣旨をお聞かせ願いたい。
  96. 伊東正義

    伊東政府委員 役員の点でございますが、これは三点ございます。先生おっしゃったように、任期は五年が三年になりました。人数は、総裁、副総裁理事監事を入れて九人でございましたのが六人になりました。もう一つは、総裁、副総裁理事長、副理事長という名前になりました三点でございます。任期の点は、実は、愛知用水公団は、法律には書いてございませんが、大体五年間で仕上げようということで、実施計画が一応五年になっております。それで、当初から、愛知用水公団事業といたしましては五年間で完成するということであれば、その間に三年というような期限を入れますと、役員がまたかわるというようなことにもなりますので、五年間は同じ役員でやっていった方が事業の遂行上いいのではなかろうかというようなことで五年ということでやって参ったわけでございます。今後の問題といたしましては、実は五年間でこれを片づけるというようなことも考えておりませんので、その点につきましては、ほかの公団役員と一緒に、任期は三年なら三年ということでいいのではなかろうかということで、ほかの公団役員と一緒にいたしました。もう一点の人数の点でございますが、これにつきましては、豊川仕事愛知用水公団仕事よりも規模、事業費その他においてもやはり減っておりますので、そういう管理の面等からいたしましても、従来の人員を減らしていいのではないかというような考えで人数を減らしました。総裁、副総裁の点は、これも事業規模を縮小したというような意味で名前を変えたような次第であります。   〔委員長退席、芳賀委員長代理着   席〕
  97. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 ただいま御説明いただきましたのですが、そういう程度の考えだけで、他の振り合いだとか、工事内容だとかいうこと、また、あわせてできるだけ経費を安く仕上げるということもありましょうが、私は、そういうことも考えまして、先ほど角屋委員からの御質問にもありましたように、全部の人が職場転換もできないでしょう、一、二の人、あるいはある程度の者はやめなければならない者もできるでございましょうが、できるだけ経費のことも考えて役員まで減らしていくというような御心配の向きはわかりますが、そうした諸君には準公務員並みの退職金なんかいただけるのでしょうか。片一方ではそういう経費の節減を考えておられますものの、大きな使命を終わって職を退いていく諸君には、規定はあるようですけれども、できるだけ手厚い退職金なんかもやるようにしてほしい。片方で、何度も言いますように、今度の公団法の一部改正役員を減らしてそういうものの費用を軽減するのだという考えで、今度その考えが強く浮かんで、退職をなさる方々に軽いようなことでは困るのですから、大きな事業をなさった、どんな名義の人も十分考えてやっていただきたい。私はそれが申し上げたかったのでありまして、お願いしておきたいと思います。  次に、これはもう神様でなければわからぬことかもしれませんが、愛知用水は最初三百二十一億でした。それが、今日、四百二十三億、ざっと百億増なんですが、それは池田さんが盛んに所得倍増をおっしゃいますからやむを得ないかもしれませんけれども、五年間に百億、三割の値上がりはちょっとえらいですよ。所得倍増でいろいろ事情は変わってきたので上がってきた。池田さんの所得倍増はこういうところまで影響しまして、今度豊川用水でも、まだ計画は出ておりませんが、どうだろうという非常な心配をするのです。その点いかがですか。今言ったように、神様でなければわからないことでしょうが、あまりにもその当時の計画がずさんであったというか、緻密になされていなかったと言えるかもしれませんが、あまりにもひどいですね。それはあなた方はそうだとはおっしゃらないでしょう。何かの理由はおつけになりましょうが、国民の立場に立って考えると、そう大して大きな変更はない、目に見えたような大きな変更はない、計画通りに、できた、できたものは同じようなものだ、金だけは百億も変わってきたということで、しかも、十年、二十年ならともかく、五年間です。それで三割違った。それはあまりにもえら過ぎるですが、今度どうでしょう。豊川用水もこういうことのないようにやってほしいと思いますが、非常に不安を抱くのですが、どうお考えになっていらっしゃいますか。
  98. 伊東正義

    伊東政府委員 退職金の問題でございますが、これは、先生御心配になるようなことじゃなくて、公団につきましては一般的に公務員よりも若干有利なような退職金の規定が実はできておりますので、その点は、公務員並みといいますか、あるいはそれ以上のことは考えられるということになっております。  それから、もう一点、事業費の問題でございますが、いろいろ言うだろうとおっしゃいましたから、一切なぜ上がったかは申し上げませんが、今日四百二十三億になったことは確かでございます。それで、豊川につきまして今度はどうだという話でございますが、実は、まだ金額はこうでございますというふうに申し上げる段階に調査は至っておりませんが、法律が通過いたしましたならば、これは正式にしっかりした調査をもう一度やりたいというふうに思っておりますが、われわれとしましては、やはりその時点でできるだけ正確なものを作っていくという態度で一つ事業費をはじいてみたいというふうに思っておるわけでございます。
  99. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 なるほど、結果から申しまして、局長初め皆さんのお骨折りで、最初の予定より農民負担はいろいろ御配慮いただいた結果、愛知用水に関する限りべらぼうに上がっておりませんから、農民としては感謝しなくてはなりませんが、国民の感情から言って、百億から上がったということになると、もっと安くやってくれとか、計画が正確であったならばという感じを持つのですから、その点十分今後の御計画、御調査の場合には御配慮願うようにしておきたいと思います。  なお、退職金の問題ですが、その点、できるだけお考えをいただいて、せっかく国会が行政のチーム・ワークを考えてこのセットを考えて新しい対処される仕事を与えてあげるのですから、退職金を幾らやってくれというようなことは私から申し上げることではないが、できるだけお考えいただいて、犠牲者の一人もないように御心配を願うように、こう思っております。   〔芳賀委員長代理退席、田口(長)委   員長代理着席〕  次にお尋ねしたいのですが、同僚の先生方に御迷惑をかけますから簡単に話をいたしますが、これは地元の者でないとわからない。しかし、現地御調査をいただいた方々にはわかるであり’ましょうが、場所によっては開渠、場所によってはトンネル、そして勾配が非常に強い。あなたの方で言えば非常になだらかだとおっしゃいますけれども、すっと見た瞬間非常に強い感じがするし、コンクリートばかりでございますから、石垣ができない。あれが相当の早さで水が通るようになる。暑いときに子供が遊びにいって落ち込んだら、これは一人も助からないですね。つるつるに水あかがつく、相当のスピードで水が流れる、そして隧道の中へ吸い込まれたら、これはもう助からない。入口に金網を張りますけれども、金網に押しつけられたらどうにもならぬ。発電所なんかの取入口でも毎年全国的にたくさんの死者がある。暑いとき子供に行くなと申しましても、これは行く。残念なことですが、こういうことが当たってはなりませんけれども愛知用水がいよいよ水を通し出したら、おそらく一夏に数人の死者ごときではない、もっとたくさんの人が出ると思う。ところが、工事の方に追われておるのか、予算がないとか言って、公団の方は水路の危険防止の入口のあれを全然やっておりませんが、これは地方でも非常にやかましく言っておりますけれども、これの処理は、公団を引き揚げるということになって管理方式になると、あとはだれがやるか、この点お聞かせ願っておきたいと思います。
  100. 伊東正義

    伊東政府委員 御質問の点、ごもっともでございまして、特に先生がおっしゃいました開渠、オープンでやっておりますところが、全体で約七十キロくらいございます。トンネルその他を除きまして、百二十キロのうち約七十キロがそういうところでございます。これは、全線に先生おっしゃいましたような金網を張りますとかいろいろやりますと、また膨大な費用が実はかかるのでございまして、公団と地元や何かで相談いたしておりますけれども、たとえば県道なり市町村道と交差いたしますところ、あるいは学校の児童等が通学によく通るところ、あるいは校庭の近所を横切る、そういうようなところにつきましては金網を張るというようなことで、まあ延べにしまして四キロ足らずくらいの金網は実は張っておりますが、全線張るということになりますと、これは相当な金がかかるわけでございます。今後事業費としては実は残り少なくなっておりますので、どの程度安全が保てるかということは問題でございますが、これは地元の市町村とも相談しまして、必要な場所には最低の施設はしたいというふうに考えております。現在までは四キロくらいのところに金網を張るということをしておるわけでございます。
  101. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 御説明ではちょっと納得、ができないのですが、今までのところは十分伊東さんの御説明で了承したのですが、一番こまかい問題になってきてどうも了承しかねる。それは、この設計自身がアメリカの指導をいろいろと受けた。アメリカのように、あの広いところで、人口密度が少ない、まばらなところでやった設計なんですから、そういうところではいいかもしれませんが、名古屋周辺の、しかも貧弱な国民の生活をしておるところで、アメリカあたりのようにプールはありませんし、もう水を見れば走り込みたい、これは子供の気持なんです。そういうのがうようよおるときに、広いアメリカで用水工事をやったような方式を持ってきては、わかりやすく言うとネコの前にカツオぶしを置くようなものですよ。子供に来るなと言ったって、プールはなし、暑くなればここへ入り込む。つるっとすべり込んだら全部死にます。私も昔土建屋をやっておって知っておりますけれども、一年たって水あかがついてつるつるになったら、もう上がろうといったって上がれるものではない。長い問にところどころ上がる階段のようなものがつけられますが、そこまで流れていく問に死んでしまう。ほんとうにわかっておることをやらずに、非常に危険を来たすということになるのですから、事業費が残ってないということならば、今後できまするところの管理関係で特別御心配を願うようにしたい、こう思っております。  次に申し上げたいのですが、施設管理ですね。私ども聞いておるところによりますれば、幹線水路が百十二キロ、補助のため池が四つ、こういうようなもの、それから支線水路なんかは管理の国庫補助の対象になってない、こう聞いておるのですが、そうなりますると、徴収なんかのために管理の事務所に百名前後の人が残るようですが、非常に大きな金が支線の管理なんかにはかかるのです。今日全国の土地改良区で一番困っておるのは、常にどの同僚の議員の方々も言われますように、土地改良区の維持経費というのは非常に膨大な金になっておる。そこへ持ってきて、愛知用水なんかでも、幹線水路から幾らか抜け、ため池も補助の対象にならない、ましてや支線水路なんかは土地改良区の方でやれと言われたって、これはとても大へんなことですから、今後、いかがでしょう、支線水路の取り扱い、これは専門調査室の方でも大へんこれを問題にしておっていただいているように私は聞いておりますが、こういうのは、みんな農民の自己の負担で管理していくのか、公団である程度幹線と同じように補助の対象にしていただけるものか、それを承らしていただきたい。
  102. 伊東正義

    伊東政府委員 管理の問題でございますが、先生も御承知のように、今田で管理につきまして補助金を出しておりますのは、管理自体としてはございません。実は、三十五年の予算から、あまり大規模なものでありまして二府県以上にまたがるようなものについては、一つこれは国が直轄管理をしようじゃないかということで、従来は全部土地改良区に管理の委託をしておりましたものを、一部のものについて国が直轄管理をするという制度にしたわけでございます。全国で、三十六年には北海道の大夕張ダムというようなものにつきまして国の直轄管理をいたし、三十五年度は内地では白河矢吹とかあるいは十津川でそういう予算を組みましたが、そういうものは要らぬといって断わられたところがございますが、二カ所ばかり三十五年度にございます。しかし、全般的には管理につきまして補助金を出すということはまだ実行されておりません。愛知用水公団につきましては、今申し上げましたように二府県以上にまたがるような施設の管理をするのであるから、これは国から補助金を出してほしいというようなことで、公団に対しまして三十六年度の予算で二千百万円の管理の補助を出しております。しかし、これは公団のやりますところでございますので、先生のおっしゃいましたように管理規程で土地改良区に管理を委託しますところにつきましては、実は予算で補助金らぬわけでございます。
  103. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 その点は、お話のように、管理に対する補助金は国としては出しておらないけれども、国にかわって公団が管理するということで、公団の管理費の方にことしは二千百万円の国庫補助をつけるということですが、それは、計算の対象が、私ども聞き及んでおるところによれば、幹線ですら百十二キロからそれを抜かれておる、ため池すら、これまた四カ所も抜かれておる、こういうことなんです。これだけ大きな工事をやって、管理に相当かかると思うのですが、それをなぜこれだけ抜いておられるのか。これは、いつでも、土地改良事業のときに、土地改良区の運営で、維持・管理費というのは非常に金がかかるので、どこでも農民からその費用を取るのに難儀をしておるのですが、今度は農業の画期的な大改革をしようという池田さんの新農業政策と相待っての愛知用水受益地ですから、何とか考えがつかぬものか、もう一ぺんお聞かせ願いたい。
  104. 伊東正義

    伊東政府委員 二千百万円を積算いたします場合は、ダム、それから兼山の取水の施設、東郷調整池の操作というようなものが実は補助対象になりまして、先生おっしゃいましたように、水路は実は入れておりません。従来も、国が直轄管理しましたのも実はダムの管理でございまして、下の水路まで国が直轄管理をするということは実はしなかったわけでございます。それと同じような考え方で、水路につきましての管理の補助金は出しておりません。まして、支線については、先ほど申し上げましたように、取っていないわけでございます。先生のおっしゃいますように、実は管理の問題についてはいろいろ問題がございまして、私どもとしましても、国が管理するだけでなくて、ある程度のものは県が管理したらどうだ、県が管理をしてそこに補助金を出すということはどうだろうかということで、実は大蔵省に予算の要求をしておるわけでございますが、まだ三十六年度も実現いたしておりません。これは愛知用水だけの問題ではございません。ほかの問題も全国的な問題でございますが、三十七年度以降またこれをどうるかということにつきましては、実は大蔵省には二年間要求したのでございますが、その辺のところも中でもう少し検討させていただきたいと存じます。
  105. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 せっかくの御努力、御尽力をいただきますように要望いたしておきたいと思います。  もうあと一、二点だけ簡単にお尋ねさせていただきますが、先ほど角屋さんからも慣行水利権のことについていろいろこまかに質疑が行なわれたのであります。今のような維持・管理費というものが支線につかないということになると、一支線から農民は何個かの水を取り入れる、そしてそのために負担も出すし、水も買っておる。その水を使うということが一つの既得権になる。特に、知多半島の一角なんかは、これは同僚の皆様方におしかりを受けるかもしれませんが、なるほど今は農業水でお助けいただくのですけれども、数年先には農業以外に土地が利用される区域も出てくる、工場敷地に転用しなければならぬところも出てくるでしょう。そういうときに、この取り入れている一つの支線全体が要らないようになったときに、この支線の水利権、既得権というものは一体どうなるのでしょうか。私はこれは一つよくお聞かせを願っておきたいと思う。今、農民諸君は、先ほどあげましたように、貯水池なんかのようなところは、非常に多数のものになるというので、相当無理を言って役所を困らせ、公団を困らせ、中に入った県庁を困惑させて土地の価格がきまるわけです。しかし、水路になりますと、これまた百姓の考え方というものは変なものでございまして、自分たちの水が通るのだ、自分たちの使う水を通していただくのだ、そういう工事をやっていただくのだということで、また逆に非常に協力するのです。通る水というものはいつまでも自分たちのものだということで大へん協力してきたのですが、一つの支線にもう水が要らないようになる、農業水としては要らないようになる、しかし、取り入れていた権利はあるというときに、その取り入れていた権利というものは一体どうなるのか。そして、今後とも国の方では水路に対する維持・管理の補助金すらやらない、お前の方で維持しろということになると、この水の権利というものはあくまで農民のものだと言わざるを得ないことになるのですが、長い間守をしてきた、負担金を納めたその水を将来工業者が勝手に使う、百姓は何とも言えない、できるときは自分のものだと思って協力した、こういう変な形になって参りますが、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  106. 伊東正義

    伊東政府委員 非常にむずかしい御質問でございまして、先ほど水利権のお話でやりとりがあったわけでございますが、今度の問題で三十トンという水利権を持っているものは実は公団でございます。土地改良区が水利権を取るという形でなくて公団が水利権を取っておるわけでございます。それが、今先生のおっしゃったような事例で、たとえば一つの支川全部、これは極端な例でございますが、水が農業用に使われなくなったという場合に、それではその支川を勝手に工業用水に使えるかということになりますと、これは公団が勝手に工業用水にそれを使わせるということには私は参らぬと思っております。それで、そういう場合には、一応水利権というもの自身につきましては公団で持っておりますので、用水にまたそれを分けていくというような問題になりますれば、当然これは工業用水にどういうふうに建設費なり何なり負担をさせるかという問題がまた別な問題で出てくるわけでございますので、これは、そこの農民が、もう水は要らなくなって、負担金だけ出して、その水が工業用水にいった場合に、全然それに対して恩恵がなくなるということに法律的になってしまうかどうかということは、これは問題がございまして、工業用水にいきます場合には、工業用水にある程度負担をさせるという形になりますので、農業の方の持ち分が減ってくる、建設費に対します持ち分といいますか、建設費を農業負担する分が減るというような形になって、回り回ってやはり農民の方に有利になるのだというようなことにしていく必要があるのではないか。ただ、支川別に全部水利権というものを作るかどうかということになりますと、これは非常に問題でございまして、その点は、今私ども考えでは、各支川別に水利権を作るという考えはとらぬというようなつもりでおりますが、そうかといって、それが全部農民の犠牲になって工業用の方が有利になるというようなことにはならぬようにいたしたいというふうに思っております。
  107. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 なるほど、ここで支川々々に水利権を与えるとか、あるいはまた、その水に対する権利というよなもの、そういうものをこの国会の委員会ではっきり言うことはできぬということは私もわかるのですが、しかし、農民の立場から考えたら私が先ほど申し上げたことも言い得るのですから、ただ負担金がそういう水の転用によって幾らか安くなった、だから百姓はその水の権利は一切失うのだという考え方は、これまた、農民の感情から言い、今日の農民の立場から考えて言い得られないことですから、十分今後研究していただきたい、こう思っております。  最後お尋ねしたいのですが、改正の二十三条の二のところですね。午前中の質疑、また御説明のうちに、埋め立てだとか干拓だとかという話があった。そうして、埋立地も干拓地も全部農業入植なりあるいは増反なり農地としてのみ使うとは言えない、他にも使う計画があれば、まだ今は立ってなないけれども、将来考える向きもある、こういうきわめて適切なお話がございました。私はあれで十分だと思うのですけれども、二十三条を見ますと、これから予定するときに、公示して申込者があってそれをやる、そうしてあとで配分を受ける者の規定が書いてあるんですね。ここには農民だけがこの配分を受ける規定があるのですが、先ほど午前中の局長さんの御説明では、これはもう、どこを工場地にしょうが、ときには住宅地になってもやむを得ない、大きく飛躍した解釈で言うならばそういうことにもなるが、ただ農民が農地として受けるときだけにこういう規定があって、工場関係その他の関係には規定をつけないということは、どういう意味なんですか。
  108. 伊東正義

    伊東政府委員 あくまでもこの規定干拓埋め立てをいたします農林省関係といたしましての規定でございまして、これは原則として農地を作っていくのだというのでこれに入っておるわけでございます。それで、法体系といたしましても、これはほかの多目的なものを作ってやっていくということになりますと、また通産省関係と一緒に問題になりますとか、非常に問題がございます。それで、一応法律はこういうふうになっておりますが、先生のおっしゃいましたような場合、また私が説明いたしましたような場合に、それはどうしてやれるのだというお話でございますが、これは、現在も、干拓地の農業用地としての配分につきましては、実は土地改良法手続でこういう申し込みを受けてやっておりますが、それを工業用地等に売ります場合には、これは国有財産法の規定を使いまして、そちらで地方公共団体にだいぶ売っております。この土地改良法で売りませんで、現在でも、国有財産法の売り払いという、そういう規定の方で実は工業用地等に売っておるわけでありであります。でありますので、農業の体系としましては、あくまでも、土地改良法なり、あるいは今度新しく公団法規定しているわけでございますが、これは農地としてできたものを農民に分ける場合の規定でございます。そのほか、農民に分けないで頭から工業用地にするのだということでありますれば、分けますときに、ここからここについて農業用地としてやるから申し込みを受けるという面積を明示いたしましてこの規定でやり、残余の分につきましては国有財産法の方で処分するというようなやり方でやっていくつもりでございます。
  109. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 最後に重ねてその点をもう一度お尋ねしたいのですが、ここで第二十三条の二の「埋立予定地の処分」と書いてあるのは、埋め立てをするであろうということを予定した土地を処分をするのですか。「埋立予定地の処分」、これはどういうことですかね。私どもは、社会通念から考えて、土地を造成する予定地とか造成地とか言うのですが、「埋立予定地の処分をしようとするときは、」云々と書いて、そして、その埋め立てしない先に、「事業の完了前、農林大臣の認可を数けて土地配分計画を定め、」ということで、今あなたのおっしゃったのはそこにいくのではないかと思いますが、それから、「これに基づき、埋立予定地の所在、予定配分口数及び予定配分面積を公告しなければならない。」、そうしておいて、ずっとあと見ていくと、農地として配分されたところについてはどこにも書いていない。全部「埋立予定地」としてある。そして、農民だけが一々届出をして、工場関係のものはもう予定地なら問題ない、こういうことなら、それはあまりにも農民保護とは私は言えないと思いますが、いかがでしょう。
  110. 伊東正義

    伊東政府委員 これは、予定地と書いてございますが、たとえば現時点でということになっております点、これは、将来埋めるから申し立てろ、申し込みしてほしいということではございませんで、そういう手続をいたしますときは政令で定めますが、これは大体でき方がもう完了に近いというときになって初めてやるわけでございます。現在のようにたとえば田原湾が海である現況において、ここからここにどうしようということでございませんで、事業としましてはその事業完了前ということでございますが、これは完了に接着して大体予定がつきましたところで、どこの面積を幾らということをやるので、現時点でやるというのじゃなくて、埋め立ての完了する直前にそういうことをやるという趣旨でございます。
  111. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 そうすると、こういうことですか。ここを干拓とか埋め立てするのだ、そういう予定が立つと、これの配分計画を、農地としてどれだけ、工場敷地としてどれだけ、こういう配分を役所で立てる、こういうことですね。それから、そのうちに工事が進んでくる。工事が進んでくると、その農地として予定された分にだけ、済む前に申し込みをする、それで適当なのは取り入れていく、こういうことですか。農業だけに関してはそういうふうにして、あとの方の工場だとかその他に転用・流用されるというのは全然束縛はない、こういう解釈になるのですか。
  112. 伊東正義

    伊東政府委員 先生おっしゃいましたように、事業完了前に直結しましたところで、農業には、たとえば八百町のうち六百町なら六百町は農業用に使う、それはどことどこの地域で一戸当たり幾らだというようなことをこれは出すわけでございますが、そのほかの、たとえば残った二百町歩につきましては、これはどういう工場であればいいとか、どういう工場であれば悪いとか、鉄ならいいけれども化学工業では悪いというようなことは、これは公団で選択するということもなかなかむずかしいと思います。それで、法律的に公団がどういう工場に売るのだということはこれはなかなか法令でも書きずらいことでございまして、現実のやり方としましては、その地帯にどういう工場が入ってくるかというようなことは、その地方の市町村の誘致の関係もございましょうし、あるいは県の考え等もございましょうからして、工業用地として使う、あるいは住宅地として使うというようなことがありますれば、これは、公団がどの会社とかそういうことをきめるのでなくて、地方公共団体、県なりあるいは市町村に売るというような売り方をするのが一番いいのじゃなかろうか。どの工場から申し込みを受けて、公団が一々、お前の工場はいい、お前の工場は悪いというような選択をするのでなくて、地方公共団体に一括売り渡しでやった方が一番適当じゃなかろうかと実は考えております。現に、土地改良法でやりました干拓地を農業用地あるいはそれ以外に売りますような場合には、農業用地として売ります場合は、この公団法に書きましたのと同じような手続土地改良法にございますので、それでやっておりますし、それ以外のところにつきましては、ほとんど大部分のものが公共団体にその土地を売るというような形でいっているわけでございまして、公共団体がどういう工場を入れるかというようなことを選択しているような実情でございます。
  113. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 質問の冒頭に申し上げましたように、私どもは、この愛知用水公団法の一部が改正されて、そうして、現在の特定土地改良区の特別会計ではなかなか早期完成の実現を見るに心配だ、こういうのを、この方法により、こうした改正によって救われるということは、大へん感謝しているのでございまして、どうか、幸いにこの法律ができましても、たくさんのまだ特定土地改良区が全国にございまするから、私どもだけが救われたということでこれで満足はできませんので、先ほど伊東局長の言われましたように、全国のこういう区域がいろいろの方法といろいろの創意によってこれらと同じような恩恵を受けられるように、また、特別会計のワクをうんと増大していただく御努力を願って、私どもも微力ですけれどもそうしたところに対しても全力をあげて協力申し上げたい、こう思っています。どうか、質問のうちにいろいろ私は感謝の気持とまた地元として今後の要求、要望を訴えましたが、むずかしいこともございましょうが、お役所として考えられることもあるのですから、考えていただくように、特に危険防止なんか、これは人命は何としても取り返すことができませんし、大した金がかかるものじゃないのですから、もう事業費がないとか、愛知用水に関する限り公団の期限がないなんと言っておらずに、どういう方法を講じてでも危険の防止対策を十分配慮願って、せっかくのありがたい愛知用水が人の命を奪うような魔の愛知用水になっては、これは情けないことで、せっかく御協力いただいた同僚の皆様方に対しても相済まぬことですから、十分配慮していただくことをお願いして、大へん長い間私の質問におつき合いいただいた同僚諸君に感謝し、私の質問を終わります。
  114. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十七分散会