○東畑
参考人 今御紹介にあずかりました東畑でございます。
一昨年の七月でありますか、内閣に
農林漁業基本問題調査会が設けられまして、私が不敏でありますが会長の任務を仰せつかりまして、昨年の五月の中ごろでございますが、「
農業基本問題と
基本対策」という報告書を
総理大臣に
提出いたしました。
農林漁業基本問題調査会は、
農業以外に、漁業のこと、林業のことがございまして、漁業及び林業につきましては最終報告が昨年の十月にできましたので、それを
総理大臣の方へ
提出いたしました。きょうは、漁業、林業の方を抜きまして、もっぱら
農業の方に限って元の会長といたしまして簡単に御報告いたしますが、
調査会の運営といたしましては総会をもって主とするのでありますが、
総理大臣から
農林漁業に関する
基本的
政策の確立に関して貴会の意見を求めるという、きわめて簡単な諮問案になっておりますが、この諮問案の
説明はなかなか複雑なものでありまして、一言で申しますというと、
農林漁業は戦後非常に
拡大をいたしまして、また、国民
経済の発展に、復興に非常に寄与することが多かったのであるが、農山漁民の
所得が他の
産業従事者に比べて大きな格差を持っておる、そういう点から考えて、新しい角度から
農業経営とか、価格の問題及びそれに関連する雇用、貿易等の問題等について総合的な審査を期待する、こういうことになっておりました。
委員会としましては、総会を開きますことが九回でありました。そのうち二回は漁業と林業に充てまして、実質上の総会を七回開きました。しかし、問題が広範でありまして、ほとんど日本の
農業政策の全面にわたっているものでありますから、いかにこの問題を処理していくかということについては皆が相当苦労いたしました。論議の末、これを三つの小
委員会に分かちまして、
一つは
構造、
一つは
農産物需給、もう
一つは
所得、この三つに分かちまして、委員各位が大体におきまして二つを兼ねられるということになって審査を進めた次第であります。しかし、同じ問題を各
方面からやるものでありますから、結局それだけではほんとうの小
委員会運営ができませんので、さらに小
委員会の間に連絡小
委員会を設けまして、各小
委員会からまた若干の人に出ていただきまして、全体としての意見の調整その他をやりました。しかも、その上に三つの小
委員会の合同小
委員会というのを設けまして、結局総会までにこぎつけまして、昨年の五月、第九回総会で、「
農業の
基本問題と
基本対策」という
答申案を出したのであります。その
答申案につきまして、なお附則といたしましてこういう注文をいたしたのであります。何分日本の全
農政に関する問題でありますので、議論はある意味におきましてきわめて抽象的といいますか、つまり、問題のあり方がどこにあるかというようなことを述べたようなわけでありまして、実際
政策としてこれを具体化するのには、いろいろ既存の法律あるいは新しい施設、立法とございまするので、
政府は一年以内にわれわれの
答申の大綱にのっとったような施策及び具体的な
政策あるいは
政策の順序だとかタイミングだとかいうことについて検討をしてほしい、こういう附則をつけました。そして、その際、もう
一つ御了解を願っておきたいことは、何分、長期の
政策といいますか、ものによりましては十年あるいは十五年ということを頭に描いておるのであります。あまりにそのときどきの問題に大きく支配されるということもどうか、また、事実今日の問題につきましては意見が一致するということはなかなかむずかしいと思われましたので、五つばかりの点につきましては、いろいろ異論がありまして、まとまらなかったと言っては少し言い過ぎかもしれませんが、とにかくも意見をあまり出さなかったという点が五つございます。
一つは、米の管理制度の今後のあり方についてという問題点、それから、もう
一つは、作物の保険制度について具体的な提案をすべきかしないかということにつきましてもまとまりませんでしたので、これも除外いたしました。それから、
農業法人につきましても、いろいろと積極的な
考え方もあり、そうでない
考え方もございました。これもそのままにいたしました。それから、
自立経営の
規模ということにつきましても、
拡大したものを
想定するということもありまして、具体的には一町、一町五反、二町ということになっておりまして、もっと
拡大すべきではないかという意見もありましたが、この点も保留いたしました。それから、個々の
農産物の価格につきまして具体的な
見通しをするということが必ずしも適当でないという意見もありまして、これにつきましても意見を明確に述べるということを差し控えました。それから、第五点といたしまして、
耕地を新しく
造成するということは一体
経済性があるかないかということにつきまして、消極的な意見もあり、この点につきましてもリザーブいたしました。大体大きな問題といたしましてはその五点につきまして意見を差し控えました。全体といたしまして長期の
考え方ということに立ちましてこの
答申案を出したのであります。
そこで、内容につきまして、先ほど
委員長から簡潔に
説明しろという
お話でありましたが、あまりに全国的にわたっておりまして、実は私の能力ではちょっと簡潔に申しにくい点があります。そこで、客観的になろうと思いますが、大体、この
農業基本問題というものを考えるについて、委員の各位に共通なと私が思うことを、
考え方について申し上げて、
あと細目につきましては御
質問に応じて
お答えした方が適当ではないかと思います。何分一年前のことでありまして、実は昨日お伺いいたしまして急に一年前の記憶をよみがえらせるべく努力をいたしたのでありますが、もうだいぶごらんの
通りぼけておりますので、どうもこれをうまく伝えにくいのじゃないか、むしろ私自身が皆さんのお
気持はこうだったろうと思うことを述べた方が、こちらも述べやすいし、勢いが出るかと思いますので、その点
委員長に
一つ御了解をいただきたいと思います。
基本問題調査会をやりましたときに、事務局がございまして、現在の農林次官小倉武一君が事務局長になられまして、
調査会としては非常に大
規模な事務局を置きまして、非常なこまかい点まで調べていただいたのでありますが、案の
考え方につきまして、結局、過去の日本の
農業、まあ大きく言いまして戦前の日本の
農業の中になくて今日起こりつつあるところの大きな変化には注目しなければならぬ。
その
一つは、
農業人口が
農業から離れ出す、日本の
農業人口は御
承知のように
兼業という形をもちまして多少ずつは
農業から離れておる。現在ももちろんそうでありますけれ
ども、
兼業という形において一方において
農業をやりながら部分的に
農業を離れるということでなしに、
農業自身を離れていくという人がふえて参りました。たしか、
基本問題調査会の調査によりますと、日本の
農業人口は千四百万でありますが、男女合わせて千四百万の
農業人口というのは長い間の戦前の固定した
数字でございましたのですが、その千四百万の
農業人口を、老人が引退したり、あるいはなくなったりして補充していくということになりますので、補充するのには約四十万足らずと思いますが、四十万足らずの青年男女が老人の跡を継いでいくという形で
農業人口というのはずっと固定した
数字に長いこと維持されて参ったのであります。ところが、その補充数四十万というのは、今日におきましては非常に減りつつある。われわれが始めたときは、たしか二十七万か二十八万であった。そういうときにわれわれは考えて、四十万が二十八万より補充されないでこの状態が続くと、人口が激減するのじゃないかと思いました。ところが、事実問題といたしましては、その後二十三万になりました。一昨年はたしか十七万かと思っております。昨年はわずかに十三万の人が
農業に入ってきたということであります。ですから、
農業人口はそういう形で減りつつある。大体四十万の
農業人口、——男二十万、女二十万でありますが、これは長男もしくは養子になった人が跡を継いでいくのであります。今日男女合わせて十三万になったということでありますが、これは長男も非常に減りつつある。こういう重要な事態が日本の
農業界に起こっておる。私
どもが
調査会をやっておるときは、そういう
数字は実は予想もいたしませんでした。もうちょっと多い
数字でありますが、補充がもっと多いと思っておりました。しかし、いずれにいたしましても、
農業人口の絶対数が減少するということは、日本の
農業開闢以来の事実であります。この点も
一つ注目しなければいかぬ。それが第一点。
第二点といたしましては、これも、
調査会をやりましたころは、まだ昨年の米作の結果はわかりませんが、過去四年間豊作ということが米につきましてはございましたのですが、いろいろと日本の食糧需要の分析をやりまして考えていきますと、どうも、米の需要が、十年先人口一億をこしたころの人口の
増加ということを考えましても、おそらくは千三百万トンをこすことはあるまい。それで、もう千二百三十万トンぐらいでありましたか、その辺の
生産ができるようになって参りました。昨年は、御
承知のように、一そうそれがふえまして、千三百万トンに近寄ったわけでありますが、いずれにいたしましても、日本の米作
技術の進歩というのは、遠からずして日本の千三百万トンの天井を突いた需要に到達するのではないかという予測も
一ついたしました。実際上いろいろ検討いたしますと、日本の食生活を考えてみますと、全体として穀物でとっておるカロリーが七〇%以上になっておる。
あとの三〇%足らずが穀物以外で、これは、菜っ葉から、果物から、肉から、魚から、全部入れてでありますが、そういう
程度の食物の構成になっておる。ところが、
所得がだんだんふえていくとともにエンゲル係数が変わるが、エンゲル係数の内容においてまた大きな変化があるのではないか。ちょうど、われわれがやりましたころに、ドイツの平均国民
所得が日本の三倍でございました。三倍であったのでありますが、ドイツ人が体格上われわれよりは多少カロリーはよけいとっておったのですが、しかし、平均食物の費用が、物価はあまり変わらないと思っておりますが、日本人がほぼ平均頭割りで二万円、ドイツ人が約五万円食っておる。それも非常に内容のいいものを食っておる。ドイツのものを調べますというと、穀物でとっておるカロリーが、ちょうど日本と逆になりまして、三〇%くらいである。
あとの七〇%は穀物以外でとっておる。ちょうど日本と内容が逆になっておる。日本はまだその当時は平均国民
所得はドイツの三分の一であります。もしも
所得倍増ということによって日本の個人
所得がふえていくと、もちろんドイツの状態にまで急激になるということはとても考えられませんけれ
ども、穀物に対する需要は一個
人々々々とすればむしろ減ってくる。それから、人口がふえますから、その
増加分ももちろんございますけれ
ども、主として大きな需要を持ってくるのは、つまり、一言で言えば
畜産物である。とてもドイツ人のようにその国の物価で五万円食べるということは遠い先の話かもしれませんが、
所得の増進とともにそういうことを期待することが長期
計画としては賢明なのではないか。日本の米の
生産が天井を突くということが近くなれば、何らかの形におきまして、日本の農民の持っておる
土地だとか、あるいは労力、肥料、
技術というものが米以外にもなお伸長すべき必要があるのではないか。それは何であるかという問題につきまして、おそらく委員の各位は大体の見当においては等しかったと思います。それが第二点であります。
第三点として、もう
一つ、日本の
農業でかってなかった大きな問題は、
農業と他の
産業とが組み合ってくる
程度が非常な勢いでふえつつある。他の
言葉で申しますと、つまり、農機具、トラクターをうんと使う、ガソリンを使う、化学肥料を使う、あるいは農薬を使うということは、他面におきまして、日本の
農業をほんとうに維持するためには、今申しましたような諸
産業がかたわらにある。こういう
程度は戦前に比べまして非常に
程度を深くいたしております。ついでに申し上げますが、アメリカの、一九五五年だと思いますが、五五年の
農業人口統計で計算いたしますと、たしか
農業人口は九百万と思っております。ところが、資材
産業に従事しておる人が九百万、それから加工その他に従事しておる人がたしか二百万だと思いますが、これは加工したり、カン詰を作ったりする人だと思いますが、いずれにいたしましても、九百万の資材
産業に従事している人があって、九百万の農民があのように活動して
生産力を上げておる。それを三十年くらいさかのぼりますと、アメリカの
農業人口はおそらく二千万足らずだったと思います。そのころは機械は使いませんで馬を使っておる。化学肥料は使いませんで、厩肥、堆肥を使っておる。まず
農業生産は
農業の中だけで循環いたしておりました。ところが、他の
産業との組み合わせがだんだん強くなってくることによりまして、九百万の農民の
生産というものは、
農業関連
産業の九百万の人口があって、それによって初めて
農業が成り立っておる。ただ
農業人口だけを見ておってはその実態はわからない。合わせて一本というとちょっと言い過ぎかもしれませんが、あわせて考えるべきではないか。日本の
農業も今申しましたような計算ができればけっこうだと思っておりますが、残念ながら持って参りませんでしたが、いずれにいたしましても、他の
産業の
生産物が
農業に投入されるということは非常に強くなってきました。これも戦前の日本の
農業界に対して非常に新しい要素である、こういうことであります。
それから、第四点といたしまして、なお考えていただきたいのは、農民のものの
考え方が非常に変わりつつあるのではないか。これは人によりましていろいろ
考え方、解釈の仕方は違うと思いますが、人によりましては、あるいは
農地改革ということもあっただろう、あるいは他面におきまして民主思想ということも非常に大きく関連しておるが、農民の心がまえというものが非常に変わったと思います。場合によっては行き過ぎたということもありましょうが、とにかく
気持が変わってきた。これを
産業家としての農民の
気持に翻訳し直しますと、農民に企業的観念が強くなったといいますか、事業をやっておるという観念が強くなってきた。過去の日本は、御
承知のように、
農業に対する見方というものが、何か企業ではない、金のためにやっているのじゃないのだというような教えが少し強過ぎたと思っております。現在の農民の
気持、ことに若い連中の
気持というものは、
産業家というと強過ぎるかもしれませんが、とにかく、
産業的意識というか、企業的意識というものが非常に強くなりつつある。昔の農民は単に勤勉であったことは確かでありますけれ
ども、現代の農民は、勤勉といっても、ただ先祖代々のことをやっている勤勉ではなくて、何ものか新しい創意工夫をする、そういう意味の勤勉といいますか、その勤勉がつまり他面におきまして企業的な精神を多少作っていくという
基礎になると思いますが、勤勉に対する
考え方がよほど変わってきているのじゃないか。それと、もう
一つ考え方の中に重要なことは、つまり、農村の婦人連中が発言権を少し強くした、こういうこともあります。総じて、自分の
農業というものに対して、婦人が入ったために一そう——これは
農業以外に農民の生活面というものがございますが、こういったことにつきまして、単に黙々として働くというのでなしに、もう少しお互に創意工夫をつけていく、よりよきものにする、こういう気分が、私は日本の農村にだんだん非常に強くなってきたと思っておりますし、実は、
基本問題をやり出しました一昨年ごろに、私自身が考えておりましたよりも、
基本問題調査会を引き受けまして、しばらく離れておりました
農業のことに関心が出て参りましていろいろ聞いているうちに、今申しましたような心持の変化がなかなか強いものであるということを感じました。
そういうことによりまして、
農業の形態といたしましては、今までは、農村でもそうでありますが、地主の場合なんか、
土地をよけい持っている順序に並び、農民の場合も、大きく
経営しているか小さく
経営しているかというようなことが農村の社会の順序になっておったと思いますが、事実は変わりつつありまして、いい
経営をしているかどうか、たとい一
町歩同士でも、いい
経営をしているかどうかということが農村の社会の順序になっております。ことに、今まであまりなかったことでありますが、どれだけ
投資を
農業にしておるか、
投資のいかんによって農民の順序をつけていくということになりました。単純な幾何学的
面積で
農業を判断するというよりも、
面積はもちろん大事なことでありますが、
投資ということが農民の大小といいますか優劣を判断することに一歩ずつ動きつつあるのではないかと思います。
〔
委員長退席、小山
委員長代理着
席〕
戦前から、妙な話ですが、スイスでは、
農業の
規模を表現するのに、牧場とかなんとかいうものによりませんで、家畜の数でもっぱら大小をきめておった。つまり、これは
投資のいかんによるということの観念が非常に入っております。
農業が企業的になっておるところは当然のことでありますが、日本も今申しましたようなわけで、農民の
気持が変わってくるとともに、田畑を見る眼が少し変わりつつある、こういうふうにわれわれは考えておる。
以上申しましたような四つの新しい事実というのは、まず戦前にはあまりなかったことで、戦後見られることであり、しかも、これらのことは年々
程度を強くして現われてくるのではないか、こういうのが、
基本問題をやりまして考えるときにおそらく大多数の人の頭にあった事実ではないかと思います。他面におきまして、それにもかかわらず、なお考えなければならぬ点が三つある。
一つは、
農業従業者の
所得が他の従業者の
所得に比べて劣っておる。これが一点。それから、日本には実に多数の小農民がある。これが第二点であります。第三点は、
農業が他の
産業のように非常に気楽に運営できるものじゃありませんで、ことに自然上の災害その他がございまして、
農業経営としてはなかなかやっかいなものである。こういうような点も非常にみなの頭にあったと思う。そこで、今申しましたような初めの四つの点と三つの点をいろいろ組み合わせまして、
基本問題調査会では、
構造という点と、需給及び
所得という三つの点でいろいろやったのでありますが、そのこまかいことはまた別の形で御報告願うことにいたします。
これからはほんとうの私的な意見になって恐縮でございますが、こういう点であります。その
一つの点は、過去の日本の
農業はいわゆる保護
政策ということによってずいぶん養われて参りました。また、必要な保護
政策がたくさんあったわけでありますが、今申しましたような大きな変化があるときに、保護
政策ということにつきまして、二つの内容をそこに考えていただきたい、こう思うのです。
一つは、例は非常に悪いのでありますが、つまり、だんだん先が細くなってくるものがある。そういう細くなってくるのを安楽死をはかるという意味の保護
政策はやってもらわなければならない。しかし、他面におきまして、これから非常に伸びていく、人間で言えば赤ん坊のものが伸びていくということにつきましては、これまた保護
政策が必要であるけれ
ども、二つの保護
政策というのは非常に性質が違うものである。先ほど日本の食糧の問題のときに申したのですが、新しく
畜産その他が加わらなければならぬ。新しく
土地を求めるということも少々できますが、なお、既存の
農地ということにつきましても、これの転換をはかっていかなければならぬ。その転換というのは、一方において安楽死をはかり、他方において他のものの成長成育をはかる、こういうことになります。保護
政策ということにつきましては、二つのもののつまり内容をなるべくはっきり考えていただきたい、こういう点であります。
それから、もう
一つの点は、今後の日本の
農業の
構造について、だれが主要なにない手になるか、だれがやるのか、こういう問題であります。家族
自立経営ということも
一つの
考え方であります。あるいは共同ということも
一つの
考え方であります、
基本問題調査会におきましては、一両またでいく。家族
自立経営という形のものも日本のりっぱなにない手になり得る。他面におきまして、また、非常に小さいところで共同
経営をするということ、これもなかなか芽ばえがあります。両方の、形において、今後十年、日本の
農業のにない手は二つの形をとっていくだろう、こういうことでありますが、共同
経営その他をするのにつきまして、どうも
農地の
移動性ということにつきましては非常な制限がございまして、よそへ出ていったが、帰ってきたときには
土地がなくなった、それではどうも出にくいという人もありましょうし、人に貸して共同
経営をすることになりますと、返ってこないのじゃないかということがあります。
農地の
移動性ということにつきましては、日本には非常に制約がございまして、こういう点につきまして、むやみな
農地の集中ということはもちろん
農地法の精神上これはとることができませんけれ
ども、利用するという意味の
移動性をふやしていくということは、日本の
農業の
自立経営の成立ということにつきましても、あるいは共同
経営の成立ということにつきましても、非常に大事な
前提条件ではないかと思います。
問題として申し上げたいのはそういう点でありますが、最後になお言い足したい点は、これは私自身の考えになるかと思いますが、長期
計画というのが、一たんきめたらそれでどうのということではありませんで、毎年その結果について大筋を追いながら具体的な検討を重ねていく、こういうことが実は長期
計画じゃないかと思います。そういう点につきましては、もっと具体的な
政策が行なわれた後に毎年々々検討すべきもので、長期
計画を立てればそれでしまい、こういうものではないと思うのです。
簡単でございますが、これで報告を終えまして、なお御
質問がございましたらできるだけ
お答えいたしたいと思います。(拍手)