○丹羽(兵)
委員 私は、今般の三
委員会で行なわれました静岡県庵原郡由比町寺尾地内地すべりによる被害
調査につきまして関係
委員会の合同
調査に参加いたしましたので、本
委員会関係事項につき
調査の概要を御報告いたします。
本
調査班は、本
委員会からは私のほかに
内海清君、建設
委員会からは二階堂進君、兒玉末男君、運輸
委員会からは細田吉藏君、肥田次郎君が参加せられ、
調査はわずか一日でありましたが、つぶさに現地におきまして被害状況を見て参ったのであります。
本
地域は古来よりしばしば山くずれ、地すべりが繰り返され、近時においては昭和十六年の豪雨、二十三年のアイオン台風により山腹の崩落を起こし、国鉄、国道の通行が一時途絶された
地域でありまして、今回の地すべりは中之沢と寺尾沢にはさまれた
地域に発生したものであり、その原因につきましてはまだ明らかにされておりませんが、一応の誘因としては、本年二月に起こった小地震と前日の降雨が作用したものといわれており、地すべりは、国鉄、国道、人家から水平距離約七百メートル、標高約三百メートルの付近において、三月十四日黎明、滑落を起こし、その崩壊土砂は下段一帯に圧力をかけて約二百メートル滑動し、隆起陥没を伴って幅二百メートル余に及ぶ地すべり現象を惹起し、農林省がさきに昭和二十三年より三十年にわたる八カ年において実施いたしました直轄治山
事業及び三十五年以降県が継続実施をいたしました県営治山及び地すべり防止
事業による構造物を一挙に全壊するというすさまじい被害を与え、さらに、八、九ヘクタールに及ぶ農地、農作物、各種施設に損害を与えたものであります。その被害の概要は、農作物四ヘクタール千四百万円、畑八ヘクタール二千五百万円、農業経営施設九百万円、治山施設五千七百万円、計約一億円となっているのであります。
以下、本地すべりの
実情について
調査いたしましたことを簡単に御報告申し上げます。
まずわれわれ
調査団一行は沼津に参り、沼津において県及び関係当局よりそれぞれ本地すべりの概況と陳情並びにその応急対策工事につき
説明を聴取した後、直ちに現地に向かい、災害現場を視察したのであります。
本
地域は、御承知のごとく、東南部は駿河湾に面し、西北部は東海道筋において屈指の急峻狭隘にして脆弱な地質構造を有する民有林地帯であり、さらに、山から五百メートルという至近の距離に民家が集落をしており、しかも、この
地域はわが国産業の二大動脈ともいうべき国鉄東海道本線と国道一号線並びに海岸に高潮来襲の際の迂回路として重用される町道寺尾−倉沢線の三線が並行するという交通上要衝の地であり、今回の地すべりは寺尾沢と中之沢をはさむ
地域において発生しており、この一角がむざんに、ほとんど山が半分えぐりとられたように地はだを現わし、その土砂はこの寺尾部落の近辺までずり落ちて、上部はさらにいつ落ちてくるかわからない急傾斜をなしており、部落民に脅威を与えていることはもとより、国の大動脈たる国鉄東海道線及び国道一号線等に与える被害を思うとき、まさにりつ然とせざるを得ない状況であったのであります。
一行はここで長ぐつとはきかえ、地元民の悲痛な声援を受けながら、立入禁止区域とされているこの一角の登攀を試みたのでありますが、この
地域はそのほとんどが温州ミカン、夏ミカン及びビワ園でありまして、三十年生ほどの夏ミカンの木が根こそぎ掘り返され、平素は一つの木に三十貫はとれるといわれているのでありますが、これが移植もできないまま、あるものはたき木として処分されておるのであります。また、農地は隆起陥没により平素の面影は微塵だもとどめず、この百七十万立方メートルといわれる膨大な土砂は堰堤のほとんどを押し流し、現在わずかに一号堰堤によって辛うじて上部の土砂の流出をささえている、まことに寒心にたえない現状にあるのであります。しかも、その土砂の層はおよそ三
段階に分かれ、上部においては傾斜面は激しく、特に中央部における九十万立方メートルといわれる何のささえも持たない土砂の流出が
心配せられているのであります。
われわれが行きましたときは、天気もよく、土砂は乾燥して地はだにところどころ大きな亀裂を生じていたのでありますが、地質は泥岩または砂岩の互層からなっている関係から、これが一たび降雨ともなれば泥沼と化し、その土砂は流土と化すことは必至であり、六月の雨季を目前に控え、その地すべりの最先端より民家の集落まで約十メートルないし二十メートル、国鉄東海道本線並びに国道一号線までは五十メートルないし六十メートルと、その魔の手はひしひしと迫りつつあるのであり、その対策の早急なる実施が待たれている地元民の心境切なるものがあると同時に、国といたしましても、東海道本線、国道一号線の途絶ないしは東京−大阪間を通ずる電信電話のケーブル切断も憂慮され、産業活動は中断する重大性を持っているのでありまして、国全体の問題として早急な総合的恒久対策を今回の
調査において痛感させられた次第であります。
現在、由比町は、災害警戒連絡所を設け、日夜警戒に
当たり、一朝緊急の場合はサイレンを合図に避難を命ずる態勢をとっているのでありますが、住民はまさに戦々きょうきょうの日々を送っているのであり、これら地元住民が一日も早く安心して生業に復帰できるよう、住民の悲痛な陳情をわれわれは受けた次第であります。
以上、
実情報告を終わりまして、最後に
要望事項について簡単に申し述べます。
第一は、地すべり防止応旧措置費の全面的国庫補助と関係各省一体としての総合的・抜本的な恒久対策を可及的すみやかに講ぜられたい。
第二は、農地災害復旧については、
地域全般にわたる地すべり防止の恒久対策決定後、地すべり防止を加味した機能的復旧計画を樹立するため、これに対する査定を早急に実施されたい。
第三は、国土保全上抜本的対策を必要とする特異な地点につき、災害復旧及び地すべり対策について、国庫負担率の引き上げ等の特別措置を講ぜられたい。
第四に、被災由比町における災害対策費の財政調整
資金の調達に苦慮しつつあり、一方、税の減免、徴収猶予等の措置が考慮せられるので財政措置に困窮をきわめること必至であり、この場合における昭和三十六年度分四月及び六月の概算交付期を繰り上げ交付せられたい。
以上、御報告を終わります。(拍手)
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