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坂村政府委員 お答え申し上げます。
農業金融の
制度を新しくあるいは今後も考えていきます場合に、欧米諸国の
農業金融の
制度を十分参考にする必要があろうと思うのでございまするが、実は、御
承知のように、日本の経済全体が欧米諸国に比べまして蓄積の面から言いましても非常におくれておるのでございまして、そういう
関係で、欧米と比べまして日本の全般の
金利水準というのは非常に高いわけでございます。そういうようなことを頭に置きまして外国の
金融事情も見てみる必要があろうと思うのでございます。
それから、先ほどお話がございました、いわゆる農地の移動について
金融制度があるということを考えて参りますと、大体外国におきましては農地担保の
金融機関というものを
相当確立をしておるわけでございまして、そういう
関係におきまして農地を担保にしての
金融というものが行なわれております。日本では今のところ農地担保
金融という独立した
金融制度というものはございません。まあ一部、先ほどの自作農創設
資金というものがあるいはそういうようなものに幾らか近い性格を持っているのじゃないかというふうにも見えるのでございますけれ
ども、そういうような
制度が確立していないわけでございます。そういうようなところを
一つ頭におきながらこの問題は考えてみる必要があるのじゃないかというふうに考えておるのでございます。
全体的に申し上げますると、これは少し資料も古いのでございまするが、昭和三十五年で比べてみますと、全体の中央銀行の割引歩合というものを比べてみますと、日本では、御
承知のように、このときには一銭九厘ということでございまして、これを年利に直しますと六分九厘四毛、こういう率になるのでございます。これをアメリカでとってみますると、公定歩合が四分、それからカナダでは三分五厘というようなことであります。それから、ヨーロッパにいきまして、フランスでは三分五厘、それからイタリアでも三分五厘、西独でも四分というような
状況でございまして、全体の
金利水準がこれだけ違っておる、倍くらい高くなっておるというような
状況でございます。ですから、それに伴いまして、
農業金融につきましても、いわゆる条件が非常に違うのでございまして、
農業金融の
金利と
融資期間というようなものを見てみますると、
長期金融をとってみますと、合衆国では大体五年ないし三十五年という
融資期間でございまして、年利に直しますと四分五厘というものが大体平均的な
金利になっております。これは連邦土地銀行の
金利でございます。それから、フランスにおきましては、
長期金融では三十年ないし七十年という
融資期間でございまして、これは
金利は平均しまして三分というようなことでございます。これは、
金融機関としては
農業相互信用金庫というのがございまして、とれがいわゆる
農協の
信用事業のみをやっている中央金庫のようなものでございますけれ
ども、そういうものの
金利と条件はそういうような
状況でございます。それから、西独では、四年以上ということで、最高限がちょっと
調査がございませんけれ
ども、年利にいたしまして四分ないし五分というようなことで、これはドイツ
協同組合金庫というものの条件でございます。日本の場合におきましては
農業金融としては
農林漁業金融公庫が一番安いのでございますが、これをとってみますると、五年ないし二十五年ということで、年利にいたしまして
金利は七分五厘ないし三分五厘ということでございまして、最低のものは、いわゆる低いものは
相当あるわけでございますが、高いものは大体七分五厘というようなところまでいっておる。しかし、これの平均利回りをとりますと五分五厘でございまするので、大体平均いたしますとここでも
長期の
金融については五分五厘というところで押えていいのではないか、こういう
工合に考えておるのでございます。
それから、
中期のものを考えてみますと、
中期におきましては、アメリカでは、大体一年ないし七年の
融資期間に対しまして
金利は五分、これは、一例といたしまして、
政府出資でやっておりますところの
農家更生
金融制度というのがございまして、これは非常に弱小の
農家に対する
金融を
政府出資でやっておるものでございますが、これをとってみますと一年ないし七年で五分という条件でございます。それから、フランスにおきましては、
農業相互信用金庫、先ほど申し上げました
協同組合の中火壷庫でございますが、それから出ておりますものが、十五年以下でございまして、六分という
金利になっております。それから、西独でも、四年で四分ないし五分という
状況でございまして、日本の場合には、大体一年以上というところで押えてみますと、これは
農業協同組合の
金融がそれに当たると思うのでございますが、
金利といたしましては、九分六厘をこえまして一割四、五分くらいまでいっておるのがございます。ですから、大体九分六厘以上でございます。
それから、
短期の
資金といたしますると、アメリカでは、大体一年以下でございますけれ
ども、これは年利にいたしまして五分五厘から六分くらい。それから、フランスでは、十八カ月未満、一年半未満でございますが、笠利は六分。西独でも、四分ないし五分。こういう
状況でございます。日本の場合におきましては、九分一厘から一割五分くらいまでというような
状況に相なっておるのでございまして、全体といたしまして、各国と比べてそういう
状況にあるのでございます。
今後いろいろ蓄積等が増加いたしまして、そうしてこれがどんどん
投資にも回っていくというふうに経済が伸びて参りますと同時に、
金利というものも全体の水準が下がっていくという
方向にあろうと思いますし、そういうことでまた
政府としても努力しなければいかぬと思うのでございます。その中でも、特に
農業については、各国の状態を見ますと、
政府出資でやっているものも
相当ございます。しかし、アメリカにいたしましても、それからフランスにいたしましても、初めは
政府出資で
相当やっておりましたけれ
ども、だんだん
農協等の出資あるいは
農民出資がふえて参りまして、
政府出資を肩がわりして、最近ではほとんど
農協資本でやっている、あいは
農民出資でやっているというような形になりつつあるものが外国の
農業金融機関においても大体非常に多くなって参っておるのでございまして、そういう意味から申しまして、日本の
農林中金等が最初は
政府出資で発足をいたしましたけれ
ども、だんだん
農協出資に肩がわりしてきているというのも、それに見合った
一つの
方向に動いているのじゃないだろうかと思っておりますが、何といたしましても、全体の
資金の
コストが、
農業ばかりではございませんで全般的に高いものですから、
農業金融においても外国の例ほど条件等もなかなか容易に緩和できないというような
状況にあるのではあるまいかというふうに考えております。