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1961-03-10 第38回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月十日(金曜日)    午前十時四十九分開議  出席委員   委員長 坂田 英一君    理事 秋山 利恭君 理事 大野 市郎君    理事 小枝 一雄君 理事 小山 長規君    理事 石田 宥全君 理事 角屋堅次郎君    理事 芳賀  貢君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       金子 岩三君    倉成  正君       田口長治郎君    田邉 國男君       谷垣 專一君    中馬 辰猪君       寺島隆太郎君    野原 正勝君       福永 一臣君    藤田 義光君       本名  武君    松浦 東介君       森田重次郎君    八木 徹雄君       足鹿  覺君    片島  港君       北山 愛郎君    東海林 稔君       中澤 茂一君    西村 関一君       山田 長司君    湯山  勇君       稲富 稜人君    玉置 一徳君  出席政府委員         農林政務次官  井原 岸高君         農林事務官         (振興局長)  齋藤  誠君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  久我 通武君         農林事務官         (振興局園芸課         長)      石井 一雄君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 三月十日  委員淡谷悠藏君辞任につき、その補欠として山  田長司君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  果樹農業振興特別措置法案内閣提出第九九  号)      ————◇—————
  2. 坂田英一

    坂田委員長 これより会議を開きます。  果樹農業振興特別措置法案を議題として、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。田邉國男君。
  3. 田邉國男

    田邉(國)委員 今回果樹農業振興特別措置法案政府提案で出て参りました。日本果樹農業は酪農と並んで非常な日本農業に大きな発展をもたらす役割を持っておることはもちろんでございますが、今回のこの法案を拝見いたしますと、私は非常に失望をいたしておる一人でございます。いろいろの具体的な問題につきましては委員先生方からいろいろ質問がございましたので、私はきょうは要素だけを簡単に質問をしてみたいと思います。  まず第一に、前回の国会に提出いたしました果樹農業振興特別措置法とあまりかわりばえがしない。ただ、内容においては、政府がこの計画を立案するということと、もう一つは金融的な措置を講ずるということで、あまり大きな前進がしてない。こういうところに、果樹生産者、また農業に携わる者として、日本現状からして他産業との格差をなくして農村振興を大いにやろうというときに果樹振興のという法律案を出したものとしては、まことに心もとない法律のように考えております。そこで、三十六年度の融資額というものの総ワクが大体十億円ということが出ております。一体この根拠はどういうところにあるか、その点を局長にお聞きしたい。
  4. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 ただいま、三十六年度予算に計上いたしております植栽資金十億の算定の基礎いかん、こういう御質問でございますので、お答えいたしたいと思います。  果樹につきましては、今度の法案でも規定いたしておりますように、第二条におきまして、長期生産見通しあるいは植栽見通しを立てまして、これによりまして今後果樹園農業経営指導指針にする、こういうことにいたしておるわけでございます。従いまして、この植栽面積なりあるいは生産長期見通しにつきましては、今後われわれの方におきまして早急にその作業に取りかかりたい、そして、また、この法案によりまして審議会が設置されることになっておりますので、この審議会にもかけてきめて参りたい、これに基づきましてある程度生産計画を立てていくということにいたしたい、かように考えておるわけでございます。ただ、それまでにおきましても、予算当時から大体将来の見込みがどの程度であるだろうかという想定をいたしてみますと、従来、大体、新値につきましては一万三千町歩程度改植については千九百町歩程度が一応の毎年における増植面積になるのではなかろうか、実はこういう推定をいたしておるのでございます。これは、御承知のような所得倍増計画における十年後の見通しなり、あるいはそれに基づく各県の生産計画なりを参考といたしまして計算いたしたものでございます。これらのものにつきましてどういう面積対象にこの法律案として考えて参るかということにつきまして、いろいろ検討いたしたのでございます。この法案におきましては、一応今後の果樹経営につきましては集団化されるべき面積というものを対象にして考えておりますので、今申し上げました年々の生産面積の中でどの程度のものが集団化されるかという想定をいたしまして、従来の集団化の率もございますので、その集団化率に基づきまして、大体、新植についての一万三千町歩改植についての千九百町歩、これにつきまして集団化率想定し、さらにそれに対して融資依存率想定いたしまして、そして対象面積を出したわけでございます。   〔委員長退席小枝委員長代理着席〕  対象といたしましてただいま考えております面積は、新値につきましての町当たり単価は大体五十八万円程度改植につきまして四十八万円程度想定いたしておりますので、大体本年度は二千五百町歩になるという想定をいたしております。
  5. 田邉國男

    田邉(國)委員 それから、集落数というものが今回の場合に大体三千六百と予定しているように聞いております。これは十町歩以上の場合のようでございますが、一体、五年間に毎年七百集落くらいを設定するつもりなのか、その点の内訳でございますが、実施別内訳、たとえば県は何県にどのくらい出す、それからまた、木の種類においてどういうような、桃はどう、リンゴは、ブドウは、そういうような種別の割当ができているかどうか、そういう点についてお伺いしたい。
  6. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 実は、先ほど申し上げましたように、一応の資料等作業は進めておりますが、全体の計画につきましてもこれから検討いたしたい、さらにそれから種類別面積想定するという段取りを考えておるわけでございます。従って、まだ、県別に、さらにまた樹種別にどのような種類分けをするということは決定いたしておりません。これから検討して参りたいと思います。ただ、今先生お話しになりました集団化の各県別状況想定するということでございますが、先ほど申し上げましたように、今後の新値面積あるいは改植面積につきまして集団化対象となるべき面積想定し、さらにそれから公庫融資対象となるべきものを想定いたして計画しておるわけでございます。
  7. 田邉國男

    田邉(國)委員 局長お話を聞きますと、まだ研究の途上にあるようなお話でございまして、私どもといたしましては、これが実施されれば直ちにこの融資対象というものがはっきりすると思うわけであります。ところが、提案する農林当局自体が、内容もまだはっきりしない、法案を通したらそれから研究するということであれば、十月になって、また来年になってから実際の内容が明確になる。まことにこの法案内容は不明確なものであるとわれわれは言わざるを得ないのでございますが、そこで、これは局長の構想でけっこうでございますが、一体その融資額の一カ所についての所要額は大体どのくらい出されるか、この点を伺いたい。
  8. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 今、予算で積算の数字で考えておりますのは、先ほど申し上げましたように、町当たりで出しております。新植の場合におきましては事業費を一応五十八万四千円と計算しております。それから、改植の場合におきましては四十八万五千九百円と想定いたしております。融資をする場合におきましては、公庫の一般的な融資基準と同様に八割を融資いたす、こういう考え方をとっております。従って、それによって集団化面積に応じて額が計算される、こういうことになります。
  9. 田邉國男

    田邉(國)委員 今のお話を聞きますと、一カ所に融資する所要額というものは非常に僅少のように思うのでございますが、これによって政府の意図しておる集団化というものが実際に政府計画通りに推進できるというお考えでございましょうか。
  10. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 今のは一カ所ではございません。町当たり単価でございます。従って、かりに十町歩なんということであれば、新植であれば五百八十万円、それから改植の場合は四百八十五万、こういうことになるわけでございます。この単価の中におきましては、御承知おきを願いたい点は、単純な私たちの計算におきましては、種苗費であるとか、あるいは肥料費、諸材料費ということのほかに、新植、改植に伴う必要な土壌の改良費だとか、あるいは園地整備費であるとかいったようなものも含めて一応計算いたしておるわけでございます。従って、それらのたとえば園地整備費が必要でないというような場合にはこれよりも少なくて済むわけでございまして、いわば最高の事業費というものを計算いたしまして、今申し上げたような計数を算出したわけでございます。
  11. 田邉國男

    田邉(國)委員 それから、第四条の第五号の意味でございますが、非常に表現があいまいであると私ども考えるわけです。これによりますと、ほかに融資を受ける方法のあるものはこの果樹経営計画によってこれに基づく金を受けられない、こういうふうに書いてあるように思うのです。しかも都道府県知事がこれを認定する、こういうような表現が書いてある。私どもは、これを見まして、実際の末端の生産者というものが申請をしたときに、都道府県で、いやこれはだめだ、よその金融機関で金を借りろ、銀行から金を借りろ、というふうに認定をされる危険がある。これは、必ずしもそれらが悪いということではありませんが、どうもそこで官僚統制の手心を加える場所が出てくるのではないか、こういう点を非常に私はおそれるのであります。その点につきまして、第四条の第五号というものを、農林省政府は一体どういうように考えておられるか、その点をはっきり伺っておきたい。
  12. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 この法案を通ずる基本の流れといたしまして、われわれは果樹につきましての計画生産というようなことを必ずしも考えておるわけではございません。ただ、今回の法案前回法案との差につきまして申し上げておきますと、前回は、公庫から金を借りたい者は都道府県知事経営計画申請して認定を受けなさい、こういう考え方をとっておったのでございます。今回の四条の経営計画申請につきましては、実は、必ずしも融資と関係なしに、一般的に、今後樹園地経営していきたいというような農家があります場合に、今後の指導指針としまして、あるいは今後の見通しを立てる上におきまして、あるいは立地立地においてどのような適品種を作ったらいいかというようなことにつきまして、知事に一応の適否認定を受ける、つまり、従来とも県とのいろいろ相談ということは事実上はあったと思いますけれども、県の側におきましてその適否についての判断を義務づける、こういうことに認定制度というものを持たしたわけでございます。その上で、もはや自分自己資金経営計画を立てる、あるいは今回の近代化資金融資を受ける、——近代化資金には果樹も当然対象になっておるわけでございますが、そういうような資金でも借りられるというようなものも理論上はあり得るわけでございます。なおそのほかに、植栽資金につきましては、本法による植栽資金償還期限なりあるいは据置期間が相当長期でありますので、こういう資金はぜひとも公庫で借りたいというような者につきましては、第四条の五号にありますような特別の貸付計画についての認定をする、貸付を希望しない者につきましては四号までの認定書を出す、こういうことになるわけでございます。しかし、この経営計画を確実に今後実行していくという場合におきましては、当然資金面等における府県のあっせんというようなものも必要になって参りましょう。従って、むしろ、この規定は、抑えるという意味よりも、他の一般的な近代化資金あるいは農業改良資金等あっせん等もこれによって知事がさせる、こういう意味を持っておるわけでございます。決して、これによって公庫貸付金を押えて他の方に回す、こういうような趣旨でこの規定を書いたわけではございません。
  13. 田邉國男

    田邉(國)委員 それから、第四条の第一号でございますが、この規定の中に「樹園地面積、その集団する度合い」というのがございます。樹園地面積というものは一応十町歩以上ということをしばしば当局説明の中に聞いておるわけでございますが、一体、その十町歩というのは、同じ個所集団しておるものか、それとも点在してあるものを合わせて十町歩というのか、それとも、隣接といいましても他町村にまたがったものでもこれを一つ樹園地としてみなすのか、この規定がどうも明確でないわけでございますが、まず、どういう範囲樹園地として指定するか、その点を一つ伺いたい。
  14. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 第四条第一号におきまして、一つ認定基準として、集団度合い立地条件農林省令で定める基準ということで、この農林省令におきましては一応の集団単位といたしまして十町歩という単位考えておるということは、申し上げた通りでございます。この十町歩というものの集団化度合いがどの程度であればよろしいかというのが御質問の要点であろうと思うのでございますが、この点につきましては、すでに御説明したかと思いますが、必ずしも連続した集団地の形成を意味するわけではないという考えでございまして、今後共同防除あるいはそのほかの共同管理作業が行なわれる場合に、一つの機械を効率的に利用し得る程度にまとまった地域考えておるわけでございまして、たとえばスピードスプレーヤーを利用する場合に、それが利用できる範囲にまとまった個所にあればよろしい、こういう程度考え方を持っておるわけでございます。それから、この地域が他町村にまたがっておる場合にもよろしいかという点でございます。   〔小枝委員長代理退席委員長着席〕 今言ったように、統一的な計画に基づいて管理作業等が行なわれる地域でありますならば、隣接地域に入っておりましても集団度合いの中に含めて当然考えて参りたい、かように思っております。
  15. 田邉國男

    田邉(國)委員 今の他町村にまたがっても差しつかえないということですが、他町村というのが、たまたま三町村に入った場合、それから、面積十町歩にならない、たとえば四町歩くらい、六町歩くらい、こういうように点在する場合がある、そういうものをこの基準に適合すると認定するのかどうか、この問題をさらに伺いたいと思います。  もう一つは、現在の分布密度でございますが、たしか、先般の説明によれば、ミカンは十二町歩から十三町歩くらい、リンゴが三町歩か四町歩夏ミカン十町歩前後、カキが三町歩前後だということを聞いております。そうしますと、果樹種類ごとにまた別々の集団化度合い樹園地面積等をきめる必要があるわけでございますが、現在の日本果樹経営を見ましたときに、大きい経営というものはなかなかできない。これはもう最初のうちは非常に小さい集団化というものを見ていかなければならない。そこで、五町歩という一応のめどもありますが、私は必ずしも五町歩に限定することもないと思う。そこで、初年度における集団化度合い基準というものを一体どこに農林省考えておるか、口では集団化と言いながら、実際には、その基準を強くきめるために、その基準に当てはまらない、こういうような事例がすぐ起きてくると私は思う。この点について局長からはっきりしたところを伺いたい。
  16. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 第一点の、集団する面積が他町村隣接した場合に、これを対象にするかしないかという点でございますが、これは実際問題としてどういう場合がありますか、たとえば同一人がある程度またがつた町村樹園地を保有するというような場合もありましょうし、あるいは、たまたま共同でやろうという者が隣接地にまたがった土地を持っておるという場合があろうかと思いますが、あくまでも、経営単位としてそのような集団地域が形成されておりますならば、われわれといたしましてはこれも対象にいたしたい、つまり、一つ樹園地経営計画という対象に入っておるところでありますればこれは対象にして参りたい、かように考えております。  それから、第二段の、十町歩という程度についてもう少し弾力的に扱ったらどうかというお話でございます。たびたび申し上げますように、この法案一つのねらいが、今後の果樹が伸びていく場合の健全な形として、さらにまた今後のあり得べき事業条件に適合する経営の形態としてどうしても集団化経営計画というものに基づいて指導して参るのが適切ではなかろうか、こういう考え方に立っておるわけでございます。なおまた、その十町歩という単位を、最近におきまする各種の防除施設、たとえばスピードスプレーヤー定置配管、こういった防除施設を中心に考えてみましても、大体十町歩というのが一つ単位になっておるのではなかろうか、こういう意味十町歩という集団単位を設けたのでございます。しかしながら、この法案自身果樹振興にあるわけでございますので、条件をきびしくすることによって結果において対象面積が非常に少なくなる、あるいは必要な資金がこれによって得られなくなる、こういうようなことでは法案自身の目的も達せられないということもあり得ましょうから、われわれといたしましては、この十町歩自身についても弾力的な考え方で運用して参りたいという考えを持っております。その一つといたしまして、たとえば、十町歩という面積現実の形成された樹園地ではないのでありまして、計画面積として十町歩あればよろしい、従って、たとえば五年なら五年間で計画が達成する、こういうことで五年後においては十町歩に形成するんだという場合におきましては、現在樹園地が三町歩でありましょうとも四町歩でありましょうとも対象にしたい、こういう考え方を持っておるわけでございます。  なお、十町歩そのものにつきましても、もう少し基準を下げたらどうであろうか、こういうような御意見も伺っておりますので、現在のところは一応十町歩を今申し上げたような理由において考えておりますけれども、なお検討してみたいと思っております。
  17. 田邉國男

    田邉(國)委員 次に、公庫融資条件でございますが、三十六年度の総融資予定額が約十億円、さきの御説明にもあった通りですが、この金利問題等を調べますと、昭和三十一年から三十五年まで実施されました新農山村建設総合計画、新農村建設という事業がありますが、この融資条件と比較いたしますと、必ずしも有利なものではないという感じが私はするのでございます。それはどういうわけかと言いますと、たとえば、樹園地の造成は、新農村計画の場合に、植栽、苗木、開墾、これがたしか七百九十地区、総事業費が六億円余り、そのうちで国の補助というものがありまして、これが約一億四千万円、それから公庫融資が約一億四千万円、そして、この条件としては、利率が約六分五厘、そして五年据え置きの十五年償還。そうしますと、今回の十億円の融資、この金利を見ますと、据置期間が六分で、償還期間中の金利が七分、そして十年据え置きの十五年以内に償還。こういうことを調べますと、むしろ新農村建設のときの方が金利が安いのじゃないか、こういう感じがする。そこで、今回果樹振興特別措置法をもって大いに果樹振興させようというときに、前回の新農村建設融資よりもあまり恩恵のないような金の出し方というものは、少しおかしいのじゃないか。どうせここで所得倍増、他産業との格差をなくして大いに集団化をやろうというときに、どうもこの金利措置というものは新農村建設から比較してもむしろ高い金利になっておる。それはおかしいのじゃないかと私は思います。そこで、この問題について、局長が、いやこれはそうじゃないのだ、別途にまたもっと特別な措置を講ずるのだ、こういうような話があるのか、いやこれだけなんだというのか、こういうところをはっきり伺いたい。
  18. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 御指摘の通り果樹の直接のためというわけではございませんけれども、新農村建設事業におきまする公庫融資につきましては、今お話しになった通りでございます。しかし、考えてみますると、従来、果樹につきましての助成措置というものにつきましては、融資分野についても特別の措置は講じていなかったわけでございます。新農村も、これは、果樹にというわけじゃなくて、その他いろいろの施設の一環として果樹も入っているという程度融資条件というものをきめて参ったわけでございます。従って、新農村建設事業につきましては、今後といえども果樹地帯におきましてはこれを利用する道が閉ざされるわけでなくて、これは当然将来も続くわけでございます。従って、今回それに加えて新しく融資方法をとることにいたしたわけであります。さらにまた、従来何らの措置が講じられなかった系統資金につきましても、なお近代化資金制度を開くことによりまして、果樹に対する利子補給をし、七分五厘で融資をするという道も開いたわけであります。従って、現状におきましても、これはあまり例にはならないかとも思いますけれども現実には相当の果樹面積、一万町歩近い果樹面積が年々増加しつつある、こういう状況であるわけでございます。われわれといたしましては、それらの資金につきましては、おそらく自己資金なりあるいは系統資金なり、融資されて行なわれておるものであろうと思いますけれども、それを、今回、こういうふうな特別の措置によって、有利な融資条件を作って、これによって指導をして参りたい、かように考えて出てきたわけでございます。お話通り、今後一般的に果樹についての金利をもっと下げるべきではないか、こういうことでありますならば、われわれといたしましても、これで十分である、こう思っておるわけではございませんので、今後とも引き続き研究し努力いたして参りたい、かように考えております。
  19. 田邉國男

    田邉(國)委員 それから、もう一つ、新農村建設の場合には共同防除施設に対する助成というものがあります。その場合には四百三十一カ所を補助助成対象としたわけです。そうして、総事業費が約四億八千万円、そうして国庫補助が一億八千万円、公庫融資額が約一億七千万円、そのほか簡易索道とか集荷場とかスピードスプレーヤー、こういうものに対する補助助成を行なうわけです。ところが、今回はその共同施設の設備に対する助成が行なわれておらないと私は思います。そこで、将来この融資条件についてやはり改善をして、できるだけこの面に融資をするという道を開いてやることが必要だ、こういうように考えます。少なくとも新農村建設のときの助成と同額くらいのものを考える、これはやっていただきたいと思う。  今回の果樹振興法が出るにつきまして、従来果樹生産者というものは政府の援助は少しも受けずに自分の力でやってきた。そうして、天災にあってブドウ園が全部だめになるとか桃が全部だめになるとか、そういう年は全部借金をしてやる。そうして市中銀行から金を貸りる。それもなかなか貸りられない。それからまた高利の金も貸りるというようなことで、非常な苦労をしておる。これはもう長い三十年、五十年の歴史を積んでおります。ところが、今回の場合、新しくやる場合には、このいわゆる樹園地集団計画というものをやる場合にこういう特別な措置を講ずるわけなのですが、一体、一町歩だとか五反歩、六反歩という小さい果樹生産者に対して、どうも政府措置というものは補助対象にならない。こういうところに、新しくやる場合には非常に積極的な方途を講じるけれども、旧来やっておって、なおかつ小さい生産者で、しかも集団できない、こういう者との差は非常に開いてくる。しかも、長い間非常に苦労してきておるそういう人たちが取り残される危険があるわけです。そういう生産者に対する措置というものは今後政府当局はどういうふうに考えておられるか、その点を伺いたい。
  20. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 ただいまの最後の御質問にお答えする前に、新農村事業との関係におきまして、果樹施設についてもっと充実すべきではないかという御意見がありました。ごもっともな御意見だと思います。しかしながら、新農村は新農村としてのまた事業の規模を持っておるわけでございまして、今後といえども、このような助成方法というものは、果樹振興と離れても、農村の行政の一つとして考えていくべきものであろうと思うのであります。たとえば構造改善事業というような面におきまして事業を進める場合におきましても、そういうような施設についての助成ということがやはり必要になってくるだろうと思うのであります。その際、これは果樹の面から見ましてもそういう施設が必要という問題も起こりますけれども、それに加えてむしろ今回の特別の措置を講じた、かように御了解願いたいと思うのであります。それ以外の施設におきましても、果樹振興上利用でき得る施設は、ほかの施設とも相共同して利用するというようなことも、現地におきましてはわれわれとしては指導して参りたい、かように考えております。  それから、第二点は、しからば今後集団化以外の長年苦労した果樹農業者についてはいかように指導するのであるか、とういろ御質問でございますが、御承知のように、果樹につきましては、従来とも民間の努力によりまして今日まで非常な伸展を見てきたわけでございます。従って、民間の隠れた品種の育成者たちの努力に対しましては今後とも大いに期待するものがあるのであります。しかしながら、他面、今後の果樹農業のあり方というものを考えてみますと、従来散在樹の発展形態をとった果樹につきましても、大部分は今後商品化された作物として市場に出て参るだろうと思うのであります。そういうことを考えて参りますると、やはり、一定の荷口を持ち、一定の共同選果をし、規格の統一されたものが大量に取引される、こういう形態というものがどうしても今後の果樹の流通過程においては考えられなければならない問題であろうと思うのであります。そういうことを考えてみました場合に、今回ここに本法案で予定しておりますように、健全な果樹経営計画に持っていって指導して参るということが望ましいのではないかというのがその趣旨でございます。従って、それ以外の農家との間におきまして差が出てくるというのは、ある意味においては当然のことでございますけれども、しかし、果樹の現に行なわれておるものに対しまして、これ以外の施設助成もあるわけでありまして、たとえば近代化資金等につきましては当然そういう農家も借りることができるようになろうかと思います。また、農業改良資金であるとか、あるいは新農村計画の一環としてやるというような場合におきましても、そのような果樹農業者に対しても当然助成を受けられる機会が与えられておるわけでございます。われわれといたしましては、そういう農家につきましても、もちろん自力でやっていこうという者に対しましては、今申しましたような各般の融資措置を講ずる道は開かれておるわけでございますが、ねらいは、そのような農家をそのままとして今後発展させていくいうわけではなしに、今申し上げましたような方向で今後指導して参りたい、かような意味でございます。
  21. 田邉國男

    田邉(國)委員 公庫融資据置期間の問題でございますが、これは、公庫の業務方法書といいますか、これに基づいてやるようになっておると思います。しかし、これを決定する要因ですね。たとえば各果樹の成樹が何年であるか、そうすると、その期間によってこれを判断するのだと思います。いろいろの意見があるやに聞いておりますけれども、一体、その据置期間というものは、桃の場合には大体何年くらい、それからブドウの場合には大体何年くらい、そういう一つの腹案がおありになるのか、その点を伺いたい。
  22. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 御指摘の公庫貸付条件の中で、融資期間あるいは据置期間等につきまして差を設けるか、こういうことでございますが、厳密に言えば、ただいま先生が御指摘になりましたように、ここで予定されておる樹種の中におきましても、結果できます時期というものにつきましてはそれぞれ差があるわけであります。たとえば、ミカンリンゴにしますれば十年以上であるとか、それから、ブドウであれば六年ぐらいでもいいとかいうような時期があるわけでございます。そこで、われわれといたしましては、おのおのの樹種ごとに償還期間なりあるいは据置期間なりを異にするという考え方も成り立ちますけれども、大体大きく分けて、二つのグループくらいに分けて償還期間なり据置期間なりをきめて参ったらどうだろう、こういう考え方を現在のところ持っておるわけであります。
  23. 田邉國男

    田邉(國)委員 麦対策の作付転換の場合に、どうしても果樹に転換したいという者が出てくると思うのであります。そういう場合の融資の道は一体どういうように扱うのか、その点を伺いたい。
  24. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 今後麦の転換を予定する場合におきまして、何をどれだけ植えるかというような具体的な計画生産をするというようなことを必ずしも考えておるわけではございません。ただ、農家の一般的な指導としては、今後の成長、需要のある作物なり、あるいは比較的安定した作物なりを選ぶという一つ指針といたしまして、転換作物についての一応の品目を掲げておるわけでございます。その品目の中には、今御指摘になりましたように、果樹もその一つにおそらくなるだろうと思います。この転換すべき果樹につきまして、かりにこれが従来の既成園と結びつけて転換をし、あわせて一定の集団化の規模になるというような場合におきましては、当然経常計画の作成をし、それに基づいて知事認定を受け、公庫融資対象にする、こういうことになろうかと思うのであります。現在集団化されておるものにつきましても、畑から転換するというような場合には、そういう点も期待されるわけでございます。   〔委員長退席、大野(市)委員長代理着席〕 それ以外の、つまり散在樹の形において転換するというふうな場合においてどういうふうな助成をするのか、こういうことであろうかと思うのでありますが、これは、先ほど御質問がございましたように、従来散在樹の形において長年果樹農業をやっておるものに対する融資措置いかん、こういう御質問に対してと同様の考えでございまして、もし資金措置が必要であるということでありますならば、先ほど申しました近代化資金であるとかあるいは農業改良資金であるとかいったようなものについての融資措置もあるわけでございます。それよりもむしろ果樹一般の指導をやっていくということの方がその場合においてはより必要であろう、たとえば今後どういう果樹について伸ばしたらいいかというような、つまり、この法案に即して言いますならば、市場におきまする長期植栽の見込みなり、あるいは生産見通しなり、これらを一つのよりどころにして各農家が考えていくということ、こういうことにいたしたらどうだろうか、かように思っておるわけであります。
  25. 田邉國男

    田邉(國)委員 公庫融資償還期間でございますが、これは法案では十五年以内ということになっております。そこで、これも各樹種別にどうきめるかという問題があると思います。これを、たとえば桃の場合には大体どのくらい、ブドウの場合には大体どのくらい、こういうところの農林省の案があると思います。その点をはっきり伺いたいと思います。それから、どうして償還期間を十五年にしたか、その根拠があると思うわけであります。その点もあわせてお伺いしたいと思います。
  26. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 先ほど申し上げましたように、据置期間につきましては、大きく分けて二つのグループくらいに考えてみたらどうだろうか。一つ考え方でございますが、目下この案についてさらに検討いたしておるわけでございますが、桃であるとかあるいはブドウであるとかクリであるとか、こういった早く結果の期待できるようなグループと、それから、柑橘、リンゴ等の非常に結果期間のおくれるものにつきましては据置期間を異にするというように、二つのグループくらいに分けて考えたらどうだろうか、こう据置期間については考えておりますが、償還期間につきましては、大体法律で十五年以内と書いてありますので、大体その期間内に償還できるようなことで指導をしていったらどうだろうか、今のところそういうことでございます。
  27. 田邉國男

    田邉(國)委員 私が今伺いましたのは、この十五年の償還期間の根拠はどこにあるかということをあわせて伺ったのでございますが、その点を重ねてお伺いします。
  28. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 据置期間と、それから償還期間、結局一番長いものが二十五年になるわけでございます。大体、果樹別に見ますと、それぞれいわば木によって最高反収をあげるような期間というものが想定されるわけでございます。その前にいわゆる一応経済収支のなり立つ期間というものも想定されるわけでございます。かりに例をブドウにとってみますると、経済的に一応採算の成り立つ期間が六年くらいである。しかし、一番最高反収をあげる期間は十三年目くらいから最高反収をあげる期間になるであろうというように、果樹につきましての樹種別の期間が想定できるわけでございます。そこで、今据置期間十年、償還期間十五年、二十五年というものを置きましたならば、大体ここで想定いたしております各樹種につきましてそれぞれの期間を十分満たし得るであろう、こういうことで想定いたしておるのでございます。
  29. 田邉國男

    田邉(國)委員 次に、この果樹に対する指導上の問題でございますが、三十三年以降から、特別技術普及員といいますか、特技普及員の制度というものができております。ところが、果樹の三カ年計画で二百六十名、これが全国に散るわけでございますが、そうしますと、各県に振り当てられる人員というものは二名ないし三名程度のものだと思います。これだけ積極的に果樹振興をおやりになろうというときに、各県に二名ないし三名の技術員を出して、それで大いに果樹振興ができると考えられることは、これは非常に早計である、非常なあやまちであるとわれわれは思うわけでございますが、一体、将来この増員計画というものをどういうように考えておられるか、そうしてまた、技術指導員というものを将来どういう形で増員をされるか、そうしてまた、この技術指導員が果樹の専門的な知識を持って果樹生産者を十分指導し得るような体制に持っていくのには今後どういう方法を講すればいいか、その点につきまして農林省一つの構想がおありになると思うので、その点を伺います。
  30. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 お話通り、今後果樹振興のために指導網を充実していくことの必要なことは御指摘の通りでございます。今お話のありましたように、現在普及員の中で果樹の特技普及員というのが二百六十名でございまして、それ以外に県で単独に二十六名を設けておるのでございますが、これらの特技普及員だけでは必ずしも十分ではないという点についても御指摘の通りであろうと思うのであります。農林省としましては、今後、改良普及員につきましては、ますます専門分化していくという傾向にございますので、全員を特技普及員化して参りたい、こういう方向で考えておりますけれども、具体的に申し上げますると、現在の普及所の職員は、普及員が一万九百六十四名ございます。そのうちすでに特技普及員になりました者が一千五百九十八名ございまして、これは主として畜産、果樹、園芸、農機具というものでございますが、この千五百九十八名と、それから普及所長を除きました七千七百八十名の一般普及員につきましては、今後五カ年計画をもちまして全員を特技化していこうということにいたしまして、三十六年度におきましては、そのうち五カ年の一カ年分であります千三百五十名を特技化する、こういう計画を立てたのでございます。今後逐年計画通り特技化を進めて参りたい、かように考えておるわけでございます。しかしながら、なおこの指導網のみによっては十分に現在の果樹振興の需要にこたえられない部分もございますので、直接果樹農業者を対象といたしまして果樹についての研修を拡充していきたいということで、昨年度五カ所、本年度は十カ所の果樹についての研修施設を各県に設けることにいたしまして、これによりまして各県の果樹農業者自身の直接的な研修をはかって参りたい、かようなことを考えておるわけでございます。今後とも果樹についての指導網については一そう拡充整備するように努力して参りたい、かように考えております。
  31. 田邉國男

    田邉(國)委員 今の指導所の問題に関連いたしまして、果樹の先進地帯というものは農協がこの問題に対して非常な研究をいたしておる。しかも農協の技術員というものがよく研究をされておられる。そういう地帯の技術員というものは、これは特技普及員と同じような実力を持っておられる。こういう人たちを大いに活用して、たとえば養蚕技術指導員のような制度と同じ形において、中央とのつながりを持った、そしてある程度身分保障をしてやる、そういう形でこの果樹振興に対して役立たせる方途を考えるべきだと思います。この点については農林省はどういうふうに考えておられるか。
  32. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 お話のように、果樹につきましては系統団体におきまして共同出荷とかあるいは共同選果場を設けるという事業をやっておりますし、さらに積極的に営農指導までやるということが現に行なわれております。そして、また、そういう組合におきましては果樹についての専門の指導員も置いておるというところもあるわけでございます。今後果樹経営がだんだん集団化し、あるいは商品作物でありますから市場の条件に合うように計画出荷、大量取引、こういう方向に進みます場合におきましては、あるいは集団自身で果樹の選果場を設けるということも行なわれてくるのではなかろうかと思うのであります。われわれといたしましては、かような指導員自身についての活動には今後とも期待いたしておるわけでございますが、しかし、一面、今の普及の組織から申しまして、特技普及員制度というものがだんだんに拡充されていくことになりますならば、今申し上げた各団体あるいは集団自身の果樹指導者と密接な協調のもとに指導体制を拡充するということを考えております。今お話しになりました養蚕の指導員と同じような形においてこれをどうするかということにつきましては、今の段階におきましては考えておりません。将来の問題として研究はいたすつもりでございますけれども考えられることといたしましては、今申し上げましたように、特技普及員と協調のもとに指導をする、こういう考え方をとっておるわけでございます。
  33. 田邉國男

    田邉(國)委員 この果樹振興法に直接関係はないのでございますが、果樹の規格の問題の中に入ると思いますが、最近ジュースの問題が非常に議論されておる。しかも、これは、農林物資規格法に基づく規格では、オレンジ・ジュースというものは一〇%以上入らなくちゃいかぬとか、それから濃厚オレンジ・ジュースの場合には二〇%以上入らなければならぬ、こういうことになっておるのですが、これは強制力はなくて任意制度です。そして、これを守っているものはほとんどないと私は思う。全生産量の一割もこの規格を守っておるかどうかというのが現状だと思います。私ども、各地でいろいろのジュースを飲んでも、一体これはほんとうに完全な果汁が入っておるかどうかというと、まずこれは人工甘味と着色だけで作ってあるものが多い。こういう果樹振興法が出て、そうして国民が多いにくだものを食べ健康を保持するという意味合いにおいても、これに関連したジュースというものが一つの清涼飲料として出ていく場合に、やはり、フレッシュ・オレンジ・ジュース、それからグレープ・ジュース、こういうものについて、政府が健康保健上の意味においても早い機会に規格を作ってこれを推進するという考え方が出ておらないと、現在のようなあの市場にはんらんしたジュースの状態を見たときに、われわれは一日も早くこれを改善しなければならぬということを痛感するわけでございますが、農林省ではこの問題については体どういう考えを持っておられるか、この点伺っておきたいと思います。
  34. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 お話の点は、われわれも同感でございます。ジュースという名前が、本来は果汁であるわけでございますけれども日本におきましては、果汁というよりもむしろ清涼飲料だというふうな言葉に理解されておって、必ずしも果汁ということについてそれほど消費者の関心がないということが一つの難点になっておるわけでございます。しかしながら、今後果汁の声価を高め、市場を開拓し、果実についての加工部門の拡充をはかる意味におきましては、どうしてもこの面における的確なる指導が必要であろうと私ども考えておるわけでございます。ただ、今御指摘になりましたように、現在原果汁につきましてはほとんど農林規格が励行されておるような状況でございますけれども、ジュース類になりますと、今言いましたように、従来のいろいろの経緯もありまして、ほとんど励行されていない。逆に言えばJASよりもブランドの方が幅をきかせておるということが今日農林規格のJASが通用されていない大きな理由であろうと思うのであります。これには、今お話がありましたけれども、JASといたしましては、果汁の含有率が一〇%以上、一〇・一五とか一〇・二五というふうに刻みがありまして、それを表示するということになっておるわけでございます。市場ではブランドの方が幅をきかせて、JASが守られていない。つまり、言いかえれば、JASについての一般の信頼、評価がまだ徹底していないというところに基本の問題があるのではないかと私は思います。これがもし一般消費者におきまして果汁についての関心が高まりJASについての評価が高まっていきますならば、おのずから消費者の方からJASマークのついた果汁についての声価が当然出てくるわけであります。そうなってきますならば、おのずから業者におきましてもJASマークを積極的に活用するということに相なろうかと思いますが、今申し上げたように、基本は、市場、消費者、需要者におきましてJASについての関心が薄い、あるいはまだそこまでの徹底が欠けておるという点に非常に問題があるのではなかろうかと思うのであります。われわれといたしましては、そういう面におきまして、JASマークの社会的評価といいますか、こういうことについてもっともっと啓発宣伝する必要が第一にあるのではなかろうかと思っております。第二にはそういう評価の高まるに応じましてこれが一般的に業界に利用されるような努力を続けて参る必要があるのではなかろうか。本問題につきましては、今後とも十分検討すべき領域であろう、かように考えております。
  35. 田邉國男

    田邉(國)委員 さらに、それに関連をいたしまして、最近のポートワインの問題であります。ポートワインというのは、たしか、酒税法によりますと、その中にブドウ酒を一〇%入れなければならない。そういうことが前国会か前々国会で成立したと思いますが、従来ならばポートワインというものは全量の純粋なものでなければならない。それが日本においては一〇%入ればポートワインと言えるというわけです。これは私はブドウ生産者にとっては重大な関心のある点だと思う。たとえば、果樹政府が増産をさして、そして出てくるブドウの余剰の一部をブドウ酒に持っていく。現在ポートワインというものが非常に多量のものが日本全国に販売されておる。これがたとえば二〇%その中にブドウ酒を入れるということになれば、今の日本ブドウ酒の生産の全量がおそらく入ってしまう。そうしますと、果樹の増産を幾らやっても、今度はブドウ酒の製造の方へその三割なら三割を回しても、なおかつそれはまたその片方においてポートワインとして飲んでくれる、こういうような状態が可能になるわけでございますから、まあ農林省においても、これは大蔵省の管轄であってわれわれの管轄でないということでなくして、非常に関連したこの計画を力強く推進する上においては、ポートワインのブドウ酒の含有量をやはり二〇%、将来三〇%に引き上げていくといった考え方を強く推進されるお考えを持ってやっていただきたいということをお願いするわけでございます。これは別は局長の意見を伺わなくても、もちろんそうだとおっしゃると思うから、あえて伺いません。  私の質問の時間が非常に切迫をしておりますので、私が最後にお願いしたいことは、先ほども申しましたように、果樹農業振興特別措置法という法律案を作ったのだけれども、これはまだ素案であって、私としてはこれを今ここに出すことははなはだ不満ではあるけれども、しかし、順次これを改正していかれるということであれば、まあないよりもある方がいいということになる。ただ、その中に、私は非常に不満に思っておることは、価格安定の問題がはっきり入っておらない。これは、農業基本法の中でやはり価格安定ということを一つの重大な問題として取り上げているときに、それと並行して果樹振興法を出すときに、価格安定の問題をこの中へ具体的にこうするんだというものが入ってないということは、非常にこの法案の価値を下げておるのだという感じがいたします。  それから、もう一つは、災害補償の問題でございます。果樹の災害補償というものは非常に私はむずかしい問題だと思います。しかしながら、これはむずかしいからといって手をこまぬいておるわけには参らないわけで、早晩においてやはり果樹共済というものを取り上げて、次の国会くらいには果樹共済の問題を具体的に打ち出していくという心がまえを持って、一つ農林省が積極的にこの問題に取り組んでいくという考え方を持っていただきたい、こういうわけです。  それから、もう一つは、流通、加工の問題でございますが、ただ合理化という言葉でこれをにおわしておるわけです。しかしながら、では具体的にこれをどうするかということになると、この法案の中ではっきり流通、加工の問題についてどうするかということの説明が何もないわけです。これは非常に大事なことであって、生産だけを幾らやらしても、そのあとこれを一体どういうように販売して、どういう出荷統制をやって、農協にどういう力を与えてこれを市場に出していくか、こういう問題を考えてやらなければならないと思うのです。現在は、もう果実の生産地帯は、東京の市場に荷を送るときに、いかにして値をたたかれないで自分の果実をあまり変動のない安定した価格で売ろうかということに非常な腐心をしています。私どもの県は東京に近いわけですから、夜中に何百台というトラックが待機をして、そして夜明けの二時ごろに荷をつけて東京の市場にそれをやる。そして、その日に大量の同じくだものが入れば、あとの方は非常に値が下がる。最初は非常に値がいい。こういうことで、私は、この流通対策というものは政府がもっと積極的に考えなくちゃならぬと思う。しかも、これに関連して、市場法というものをやはりあわせて考える時代が来たんだということを一つ認識してこの問題の対策を考えていただきたいと考えます。  それから、もう一つは、日本のこの果樹でございますが、海外への輸出振興の問題が、これまた私は明確に書いてないと思う。この問題は、貿易の自由化の時代に、日本のたとえばミカンは現在英国へ行っておるが、しかし、これは、イタリアにおいてもフランスにおいても、ヨーロッパはどこでも日本ミカンというものを非常に要望しております。こういうものの輸出対策、市場調査というものがまだ非常に欠けておるような感じがする。それから、ミカンに限らず、香港へ行ってみても、日本ブドウがいい、リンゴがいい。しかし、その香港の市場調査というものは何もできていない。そして、日本からは輸出できないんだ、向こうではほしくないんだということですが、現地へ行って調査をすると、そういうものでないということがよくわかります。そこで、私どもは、やはり日本のこの果実というものが、世界にどんどん出るような市場調査と同時に輸出対策をこの際考えていくべきだと考えます。  その他いろいろあるわけでございますが、いよいよ私の持ち時間がございませんので、最後に政府に申し上げたいことは、今まで私が質問をいたしましたこと、それから最後に要望を申し上げたことを一つよく御検討をしていただきたい。果樹振興特別措置法はまことに素案で、実際には芳しくない法律だとは思うけれども、ないよりましだということで私どもは不承々々にこの法案には一応は賛成をするわけでございますが、しかし、賛成をしたからといって、これがいい法律だとは私は思っておりません。ただ、これはとにかく通すということだけであって、その肉づけをすぐ次の国会、臨時国会でやっていくということを、政府当局、特に農林省のこの担当の局長がそういう腹を持ち、農林大臣がそういう決意がなければ、われわれはこれを通しても意味がないと思う。そこで、ぜひ一つこの果樹振興法という法律を将来大いに活用できて、そして果樹生産者のためになる法律として生かすことをお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
  36. 大野市郎

    ○大野(市)委員長代理 それでは、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩をいたします。    午後零時十二分休憩      ————◇—————    午後二時一分開議
  37. 坂田英一

    坂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  果樹農業振興特別措置法案に対する質疑を続行いたします。湯山勇君。
  38. 湯山勇

    ○湯山委員 最初に、この法案について字句的なものあるいは事務的な点を二、三お尋ねしておいて、いろいろ意見を述べながらお伺いいたしたいと思います。  最初に、第三条の二号に、「前号に掲げる果樹農業者が構成員となっている法人」、こういう規定がありますが、この場合は、果樹農業をやっておる者というふうに限定されるのか、あるいは果樹農業をやっていない者もこの中に含まれるのか、それらの点はどのようにお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  39. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 第三条第二号の「果樹農業者が構成員となっている法人」というのは、具体的には総合農協とかあるいは特殊の農協とかを想定いたしておるわけでございます。これらが具体的に果樹農業経営主体としてやっておるということを条件として考えておりません。
  40. 湯山勇

    ○湯山委員 果樹農協、総合農協、そういうことですが、たとえば愛媛に、局長も御存じだと思いますけれども、立間で果樹を中心にした法人ができております。そういうものは対象になるかならないか。
  41. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 当然対象になるわけでございます。
  42. 湯山勇

    ○湯山委員 その次に、第三条の最後のところに、「認定申請は、昭和四十一年三月三十一日までにするものとする。」というように、期間の限定がございます。その理由はどういうところにあるのか、伺いたいのでございます。
  43. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 果樹経営計画計画期間といたしましては、大体五年間くらいにわたってやることを考えておるわけでございます。従って、最後の計画を出したものが、つまり、四十一年の三月三十一日までに出した計画の実施におきましては、大体それから五年先になるわけでございます。従いまして、これから考えてみますと、大体九年間くらいに期間がなるわけでございます。そこで、十年後の所得倍増計画におきまして、生産、市場の見通しをいたしておりますので、大体それをにらみながら、前期五カ年計画、こういう意味で、昭和四十一年三月三十一日というふうにいたしたわけでございます。
  44. 湯山勇

    ○湯山委員 そうすると、この果樹農業振興特別措置法案というものは、ある意味で時限立法であるというような解釈もできるのじゃないかと思います。そのような解釈をしてもいいわけですか。
  45. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 この対象になります融資計画といたしまして、一応想定している面積が、今申しましたように第一次の計画として四十一年三月三十一日と掲げておりますが、さらに、その後の状況によりまして、引き続き果樹経営計画の樹立について推進しあるいは所要の融資措置を講ずるというようなことになりますれば、その際におきましてさらに検討する、こういう考え方を持っておるわけでございます。しかし、それ以外の部分におきましては、たとえば審議会の設置の規定であるとか、あるいは一般的な規定とかがございますので、法律上はかりにこの部分がその際どういうふうに検討されるかを別にいたしましても、審議会自身は存続し得るという建前になるわけでございます。   〔委員長退席、秋山委員長代理着席〕
  46. 湯山勇

    ○湯山委員 前回審議未了になった法律は、大体融資が中心になっておった法律であるというように承っておりますが、そうすると、この法律の中心になる融資の問題がこういうふうに時限立法の形になっておれば、大体期限が切れた場合には当然法改正を必要とするわけですから、時限的な臨時立法であるというような解釈も可能ではないかと思うのですが、その点についてはどういうふうにお考えになっておられますか、伺いたい。
  47. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 との法案の全体の性格につきましては、他の委員の方からも御質問があったわけでございますが、いわば、果樹全体の振興の総合対策というものは、もちろんこの法案以外にもあるわけでございます。今後、この法案を通じ、また行政面、予算面におきまして各種の農業施策を講ずる必要があることは申すまでもないところでありますが、その振興策の一つの特別措置としてこの法案を出したわけでございます。従って、今後、特別措置法案を通じまして、さらにこの法案を改正していくなり、あるいは施策を充実していくということを予定いたしておりまして、今後検討いたしていきたいと考えておりますが、これ自身が法律形式として時限法であるというようには必ずしも考えておりません。
  48. 湯山勇

    ○湯山委員 次は、第五条の貸付金額及び償還期間その他貸付条件の決定について知事認定ということが必要ということになっておりますが、これは認定されれば無条件貸付を受ける対象になるのかどうか。その際、予算のワクとの関係、貸付金のワクとの関係、これはどういうことになるでしょうか。
  49. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 認定を受けました場合におきまして、第五条におきましては、その申請に基づいて公庫貸付を行なうものとするというふうに書いてあるわけでございます。この条文の運用につきまして、あるいはこの条文の解釈的な運用につきましては、認定を受けたものについては当然優先的に公庫から資金の融通を受ける、かようにこれを運用して参りたいと思うわけでございます。ただ、お話しになりました十億というワクがあります。もしそれで満たされなかった場合にはどうするのだという問題がございます。これは、当然、資金計画でございますので、必要な資金量がふえるというようなことになれば、本年度におきましても調整をするような事態が生ずるかもわかりません。あるいはまた、それは来年度の計画量としてさらに資金計画をふやしていくというようなことも起ころうかと思います。ただいまのところは、初年度でもございますので、そういう事態はなかろう、さように考えております。
  50. 湯山勇

    ○湯山委員 今の御答弁の中で、つい聞き間違いかもわかりませんけれども認定を受けたものは優先的に対象になるという御答弁がありましたが、そうすると、認定を受けないものでも場合によっては対象になるということも含めての御答弁でしょうか。そういう意味でしょうか。
  51. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 一応、公庫対象といたしましては、この特別措置法における融資と、それから、それ以外の、これによらない融資というものを建前としては一応想定いたしておるわけであります。従って、本法案の中におきましても能力規定を与えますと同時に、その金利については一般的に八分以内ということにいたしておるわけでございます。大体は、こういう法案ができますれば、この資金で優先的にまずこの特別措置によるものを充足していくという考え方をとっております。従って、この十億は特別措置による融資ということに充てたいと考えております。それ以外のものについては、今のところ想定いたしておりません。しかし、建前としては両建の仕組みに法律上はなっております。
  52. 湯山勇

    ○湯山委員 それでは、もしほかにこういう類似の法律ができて、それと競合するような場合は、ひょっとするとかりに十億のワクというのが、こちらの方へは五億しかこない、向こうへ五億いく、そういうことも極端な場合には想定できるわけですか。
  53. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 これは公庫資金計画の立て方でございますが、資金計画の一応の要素といたしまして、土地改良には幾ら、林業には幾ら、漁業に幾らというような資金計画を立てておりまして、それぞれそれに必要な事業計画想定いたしておるわけでございます。しかし、融資の関係でございますから、年々そこに若干変動がありますと同時に、そういう意味におきまして、公庫資金計画の中には予備費というのがとってあるわけでございます。そういうような場合におきまして、かりに予備費をとるというようなことは考えられますけれども、全体の資金の中で相競合して優先し合うというのは、現在のところでは全然考えられないのじゃなかろうかと思います。
  54. 湯山勇

    ○湯山委員 それから、第十四条に罰則規定があるわけですが、これは、第八条と対照してみますと、報告を求められる対象は、果樹生産農家、そういう者も含まれておるように思われます。そういう者を対象として報告を求めて、報告をしない報合には一万円以下の過料に処すというような規定は、ほかにそういう例がございますか。
  55. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 たしか農産物価格安定法や何かにも同じような規定があったのじゃないかと思いますが、これはちょっと調べてお答えいたしたいと思います。ただ、本条の運用におきましては、生産者を直接考えておりません。むしろ、生産者団体に対して業務に関する報告を徴するというような運用をしていきたい、かように考えております。さらにまた、この八条の具体的運用にあたりましては、大体は第六条におきましていろいろの調査をすることになっておりまして、生産、集荷、貯蔵、販売等の状況を調査するということになっております。この調査につきましては、これに該当するものといたしまして、実は三十六年度予算においては所要の調査委託費を計上いたしておるわけでございます。従って、第六条の調査をやっていく場合において、そういう予算的裏打ちを持った調査をやるわけでありますので、八条を適用してすぐ定期的に報告するという運用は必ずしも考えておりません。ただ、在庫調査をする必要があるとか特別の場合に、八条に基づいて報告の徴収をする、こういう考え方をとって運用して参りたいと思います。
  56. 湯山勇

    ○湯山委員 それで今からいよいよほんとうのお尋ねをしたいと思うのですが、この果樹振興について、農林省としては長期にわたる主要果実の生産計画をお立てになっておると思います。その振興計画のあらましといいますか、概要はどういうふうになっておりますか。何年度から何年度まで、そうしてその作付面積生産量、そういうものはどういうふうになっていくか、それをまずお尋ねいたしたいと思います。
  57. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 お尋ねの長期計画につきましては、午前中もお答えいたしましたように、本法案通りました場合においては、さっそく審議会を開き、審議会には専門委員を置くことに相なっておりますので、この調査の具体的検討、方法等について論議し、計画の作成に当たりたいと考えております。ただ、さしあたりわれわれの草案中の草案といいますか、考え方を申し上げますならば、一つには、一応同じような考え方で国民所得倍増計画が四十五年度まで立ててあるわけであります。さらにまた、各県から今後の長期見通しに基づいた生産計画が出て参っておるのでございます。そういうものを勘案いたしまして、五年先あるいは十年先というような二段がまえで樹種別長期見通しを立てたらどうか、かように考えております。従って、今のところでは、一つの草案中の草案といたしましては、所得倍増計画で四十五年度の事業量を算定いたしております。また生産量についても算定いたしております。これを、五年の段階、十年の段階と二つに分けて、さらに樹種ごとにこれをきわめて参りたい、かように考えております。
  58. 湯山勇

    ○湯山委員 以前に振興局から主要果実の長期生産計画という資料が出ておって、その中に、昭和三十二年度の実績と三十七年度の計画、四十二年度の計画というように、五年区切りの資料をお出しになったことがあるはずですが、このことには局長は何もお触れになりませんでしたが、この計画というものはもう消えてなくなったのですか。
  59. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 その計画資料については、もちろん承知しておりますし、樹種別の作付栽培面積、あるいは今後の作付計画、あるいは今後の反当生産量というものについて一応県から出た報告でございますので、これは有力な資料として活用して参りたいと考えております。ただ、計画といたしましては、今後基本法等においても長期計画を立てることになっておりますので、それとの関連も将来は当然考えて参らなければならぬと考えまして、この府県から出ました三十二年を基礎に置いた四十二年までの計画を、さらに四十五年まで延ばして計画を立てる、こういう考え方でやって参りたいと考えておるわけであります。
  60. 湯山勇

    ○湯山委員 そうすると、今の御答弁では、四十二年までのものは骨子としては認める、さらに四十五年までの分はこれを基礎にして加えていく、こういう御方針なので、原則としてはこの四十二年までの計画というものはやはり骨子としてやっていくんだというお考えなのか、もう一度その点伺いたいと思います。
  61. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 われわれといたしましては、先ほど申し上げましたように、これは有力な生産面における資料であるし、さらに、いま一つは、需要について、今回の法案では長期の需要の見通しに即してというふうに書いてありまして、これらの需要面から来る見通し、それから、今申し上げた県からの四十二年の報告、これを基礎に置きまして、審議会で十分検討してもらって最終的にきめて参りたい、かように思っております。
  62. 湯山勇

    ○湯山委員 今お尋ねしておるのは生産計画の面だけでございますから、その点にしぼって一つ御答弁いただきたいと思います。  これで見ますと、大体昭和三十二年度を基準年度として、四十二年度にはミカンの場合であれば一九一%、夏ミカンの場合が一九九%、リンゴでは一八九%、ブドウが二六八%と、それぞれ約二倍程度昭和四十二年までには生産が増加するという御計画のようですが、昨日、淡谷委員からの御質問に答えておられた実績から見まして、ミカンの場合は大体三十二年、三十三年度あたりで二千町歩程度じゃございませんでしたでしょうか。それから、リンゴの場合も三千町歩強ぐらい。そういうふうな計画でいって、はたして三十七年度に大体この計画に合うような作付面積生産量が確保できるかどうか、あるいはまた四十二年度においてそういうことができるかどうか。大体作付面積生産量とはちょうど比例しておるようです。ミカンの場合で言えば生産量が一九一%になる、作付面積は大体一八〇%程度になっておりますし、それから、リンゴの場合で言えば、生産が一八九%で、耕作面積、作付面積も一九〇%程度になっている。大体これは比例しておると思いますが、はたしてこういうような数が確保できるものかどうか、その点について見通しを伺いたいと思います。
  63. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 そのお答えをいたします前にちょっとお断わりいたしておきたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、この法律の二条におきまして、やはり長期の需要に即してということがあるわけでございます。昨日もお答えいたしたわけでございますが、この生産見通しにつきましては、やはり将来における樹種別の需要量の見通しというものが必要になってくると思います。この樹種別の需要量の見通しについては、今現在までには資料がないわけでございます。今回の計画を立てる場合におきましては、さっそく果実の種類別の需要の見通しを立てたいということで予算も計上し、現在の資料に基づきまして早急に整理する、こういうことで、今作業を進めようとしておるわけでございます。従って、生産計画の、今お話しになりました計画を需要面から生産量について調整するというような点は当然検討すべき余地として残っておる問題でございます。  それから、生産計画についての見通しいかん、こういうことでございますが、大体、最近の見通しから言いますると、新値、改植も含めてみますると、今後十年間にこの計画では約十三万町歩くらいふえるということに相なるわけでございますので、需給計画と合致する限りにおきましては、そういうことに一つ転換をし、増殖を指導して参りたいということでございますが、需要の面におきまする確たる見通しが立つならば、当然伸びていくであろう、かように私は考えております。
  64. 湯山勇

    ○湯山委員 ただいまの局長の答弁によりますと、需要面がどうも心配なので、この通りいかない場合があるというようなふうにとれるような御答弁なんですが、そうなんでしょうか。
  65. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 需要面における心配ということでなしに、これは今の各県におきまする樹齢別作付面積の構成から今後こういう見通しになるだろう、こういう資料でございます。それに対しまして、需要が伸びる、あるいは需要が停滞的なものになる、こういった見通しについて今後われわれとして検討いたさなければならない課題でございます。従って、全体の果樹の需要量といたしましては、こういう面積はそう大きく違っていないと私は思いますけれども樹種別の検討になりましたならば、先ほども申し上げましたように、さらに検討して最終的なものを求めて参りたい、かように考えております。
  66. 湯山勇

    ○湯山委員 そういうことになると、流通過程の問題をやはり取り上げなければならないことになるわけなんですが、そうじゃなくて、私が今お聞きしておるのは、これは振興局の方でお出しになった生産計画なんですから、その生産計画生産面だけから言えばこれだけは各樹種別についてもできるのだ、こういうことなのかどうなのか、そのことをまず聞いて、あとのことはあとでお聞きしたいと思うわけですが、それはどうなんでしょう。
  67. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 この前提出したのはどういう意味でやったのかつまびらかにいたしませんが、これは各県から四十二年までについてどういう計画になるかという報告をとったのです。それが各県から集まったものが一応こういうようになっております。こういう資料なんです。ですから、われわれとしてそれをさらに検討する材料でございまして、これが第二条でいう生産計画のベースであるということには必ずしも考えておらないわけであります。ただ、私が先ほど申し上げましたのは、現在の樹齢別の作付面積というものについてはこれはきわめて有力な資料でありますという意味で、今後ともこれは活用していかなければならぬ、こういうことを申し上げたわけであります。
  68. 湯山勇

    ○湯山委員 その問題は私はまだ問題があると思うのですけれども、これは今需要の問題で場合によればこれはチェックするという場合も予想されるような御答弁でございましたが、もうこの法律は成立すればすぐ施行になる性質のものですが、今そういうことで資料が整わないとか、これから諮ってというようなことでは間に合わないと思うわけです。すみやかにそういう資料をお整え願わなければ審議できないと思いますが、あとの問題についても一つできるだけ正確にお答え願いたいと思います。  その需要の状態ですけれども、生食のこともあるし、加工のこともあるし、いろいろありますが、まず大きい問題から伺うとして、貿易のことを伺いたいと思います。今、こういうふうに大体四十二年ころには生産は二倍に伸びるということが推測されるわけですけれども、その中で貿易にどの程度依存しようというようなことをお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  69. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 おしかりを受けるかと思いますが、正確な四十五年度の計画をまだ立てておりませんので、一応今後の計画指針となる、参考となる国民所得倍増計画について申し上げますならば、倍増計画考え方といたしまして、今後の人口の増、それから所得の増に見合う需要の増を考えまして、三十二年の基準の果実全体の需要量二百四十三万四千トンに対しまして、四十五年には七百万トンないしは七百八十二万トンという需要量を予定いたしております。約二倍とちょっとになるわけでございます。この需要の中におきまして想定いたしておりまするのは、実は生果だけについて輸出の見通しを立てておるのでございますが、生果の見通しといたしましては、三十二年度の三万二千トンから約十四万トン程度増加する、こういう計画を立てております。しかし、生果でございますので、加工製品がもちろん輸出としてあるわけでございます。それについてのはっきりとした計画が出ない関係で、全体の所得の需要増に見合わせて内需の中に入れて計算いたしておるようでございます。
  70. 湯山勇

    ○湯山委員 それでは、今の御答弁は生果だけにしぼってのお答えですから、生果だけについてお尋ねいたしますと、その生果の輸出ですね。それは、大体主要なものについて、たとえびミカンならミカンはその中でどれくらい見込んでおられますか。その輸出先はどういうところをお考えになっておりますか。
  71. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 これも果樹全体として計算をいたしておりますので、倍増計画一つの構想であります。これを今後指針として具体化するという内容のものでございますので、果樹別にどういうものが今後伸びていくだろうかとか、あるいは国別にはどうなるであろうかとか、こういう推測を実はいたして計算したものではないわけでございます。
  72. 湯山勇

    ○湯山委員 今までお尋ねしたところでは、国内生産の場合も需要の状態によってどうなるかわからない、輸出の場合もただばく然と計算しただけでどうなるかわからない、こういう中で、一体ほんとうに農家が安心して計画を立てて、そして今の貸付金を借りてさてやるという意欲が起こるでしょうか。これは農林大臣も言っておるように、成長財として果樹、畜産は重点を置くのだという問題、今の当局がそういうばく然とした見通しで、ばく然とした計画の中でやれといっても、はたしてやれるでしょうか。すでに、ミカン地帯などでは、ミカンを植えろというけれども自分の家の近くでそして立地条件の恵まれたところはやってもいいけれども、そうでないところを無理にやっても将来はあぶないのじゃないかという警戒の声さえ起こっているわけです。局長、もう少し一つしっかり御答弁願わないと、一向質問ができないのです。では、四十五年度のことは申しませんけれども、さしあたってこの次の五カ年くらいのことはお答えが願えると思います。ミカンならミカンの輸出先ということについて、第一期の五カ年計画の中ではどの程度のことをお考えになっておられるか、承りたいと思います。
  73. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 どうもまたおしかりを受けるかと存じますけれども、われわれは、この法案によりまして、永年作物である果樹振興をはかる必要から、今後長期見通しがどうしても必要ではないか、指針として必要である、こういうことでこの法案を出したわけでございます。しからば、もし現実において具体的なものがあるのならば、もちろんこのような制度自身も場合によったら必要でないのかもわからないのでございますけれども、これに関する従来の資料というものについてはきわめて不十分であったと率直に認めざるを得ないと思うのであります。むしろ民間の企業としてどんどん自主的に行なわれてきたというのが実態であると思うのであります。しかし、今今後の成長農産物としての果樹を取り上げる場合に、国が助成し、一定の指針を与えるという必要から、長期計画というものをこれから作って参りたいということでございます。そのためには、今申し上げたようなことでございますから、だんだんにやはりよくしていく、一部においては、やはりこれはトライアル・アンド・エラーというような事態も当然出てくると思うのであります。果樹統計にいたしましても、これは県の統計あるいは農林省の統計、これらの資料をやはりだんだんに活用して具体的な確実な計画にしていく、こういうようなことは当然今後やっていかなければならない問題であろうと思うのであります。そういう意味で、今お話しになりました、十年後の先についての計画がどうなっているか、あるいは五年後における計画がどうなっているかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、一つの資料といたしまして、国民所得倍増計画があり、あるいはまた県の報告がある、これをわれわれといたしましては、今後具体化していきたい、こういうことでございます。
  74. 湯山勇

    ○湯山委員 そうすると、結局、法律が成立しても直ちに第二条に書いてあるような、需要及び生産長期見通しと、それから植栽及びその果実の生産についての長期見通し、こういうようなものの正確な見通しはできない、正直に言えばこういうことなんですか。
  75. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 すべて経済統計、社会統計につきましては長期予測について五〇%のふれがあるというふうに言われておりますけれども、われわれといたしましては、正確といいますか、できるだけそれに接近していくという努力を重ねたいという意味で検討を続ける、こういうことを申し上げたわけでございます。しかし、そうは言いましても、この法案ができました場合におきましては、今申し上げましたような資料に基づきまして早急に草案を作成し、審議会で検討願って、おそくもこの秋くらいまでには公表ができるような準備を整えたいと、せっかく努力いたしておるような次第であります。
  76. 湯山勇

    ○湯山委員 計画の方は五〇%ふれがあっても仕方ありませんけれども改植しようというので切った木はもとへ戻らないのです。だから、そういうようなことでは、農家が計画を立てて改植するとかあるいは新しく果樹園を作っていく、そういうことは非常に危険だと思います。まして、今のような御答弁だと、第四条によると「当該計画に係る事項の達成される見込みが確実であること」というのが認定条件になっておるわけですが、こういう認定は一体だれができるのですか。五〇%くらいのふれがあるのだから、いいかげんに認定をしておいてもよかろうというなら別ですよ。この条文通りいけば、今の局長の御答弁では、何人もその計画が達成される見込みが確実であるというようなことは言えないと思うのですが、こういう点はいかがでしょう。
  77. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 お話の要点がちょっと理解いたしかねるのでありますが、長期予測、長期見通しについての妥当性がどの程度正確性を持っておるかどうか、こういうことが第一の御質問で、第二の御質問は、そのような計画経営計画認定といかに関係があるかという問題であろうと思います。  第一の点につきましては、私もいろいろな国の統計を見ておりますけれども長期観測と現実の姿というものとギャップがあるということは、これは明らかな事実でございます。ただ、それが五〇%もふれがあるということであるならば、計画がずさんだったということになりますし、あるいは条件変動が予想された通りいくかいかないかということによっても大きく変わってくるわけでございます。そういう意味におきまして、予測の要素は別にいたしましても、われわれといたしまして、現在考えられる統計を整備し、それに基づいて一歩々々正確なものに近づけていきたい、こういうことを申し上げたわけでございます。  第二点につきましては、経営計画認定に直接長期計画との結びつきというものはないわけでございます。一般的に今後どういう樹種のものが伸びていくだろう、あるいはこれに対して県なりはどういう見通しを立て指導していくというような計画はあろうかと思いますけれども、具体的な経営計画認定につきましては、どういう立地条件の毛とにどういう品種がどういう規模のもとに設計されておるかというような点に重点が置かれ、さらにまた、ここにも書いてありますように、その地方における市場の条件等もあわせて認定をする、こういう考えでございますから、直接的に、今お話しになりました第一の長期の観点で認定ができるかできないか、こういうことには必ずしもならないと思います。
  78. 湯山勇

    ○湯山委員 ですから、私が危険だと言うのはその点を申し上げているわけです。長期見通しの上に立って新値あるいは改植をする、そうして据置期間があって、それから償還に入っていく。その償還が完了するのは二十五年以降になるわけですから、当然長期見通しの中でそういう計画を立てていかなければ、別のものさしを持ってきてこれでいけるのだと言ったところで、それはきわめてあぶないわけです。そこで、長期見通しの正確さということ、ものさしと、その中での計画、こういうことがからまなければ、何のことかわからない法律になってしまうわけなので、そういうことを指摘しておったわけですが、おわかりになったでしょうか。
  79. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 その点は先生お話通りでございます。
  80. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで、その問題は一応それだけにしまして、昨日局長の御答弁の中で、ミカンは輸出面においては圧倒的に有望でもあるし、出ておるというような御答弁がありました。私がお願いしてもらった資料の中にも、その輸出の状況が詳しく出ておるのですが、カナダに向けて一万トン以上、八億円程度の輸出がある、資料によれば三十四年度においてその程度の輸出があるということですが、これはなお将来伸びる見込みなんでしょうか、どうなんでしょうか。
  81. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 ここでもごらんの通り、戦前に比べてみますと、カナダ向けのマンダリンは大幅な増加をいたしておりますし、三十三年、三十四年を比べましても、約二千トン、二割の輸出増と相なっておるわけでございます。現在におけるいろいろの業界等の見通しによりますと、カナダの輸出先としての将来性は非常に有望である、こういうように聞いております。われわれといたしましても、カナダに対するミカンの輸出宣伝費を来年度の予算においても計上しておるわけでございます。
  82. 湯山勇

    ○湯山委員 その場合に中間経費はどれくらいになっておりますか。カナダに出す場合の中間経費、つまり、カナダにおける小売価格と日本生産者価格、その間の中間経費は、単位はどれだけおとりになってもけっこうですが、どの単位についてどれくらいになっておりますか。
  83. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 カナダ向けのミカンにつきましては、御承知のように、現在日本農産物輸出組合で統制をいたしておるわけでございます。数量及び価格につきまして、承認を受けて協定いたしておるわけでございます。従って、国内のFOB価格ははっきりいたしておりまして、ワン・ケース、FOBが八十セントでございます。向こうの価格が幾らになっておるか、もし詳細な資料が御入用でございますれば、後刻調べてお答えいたしたいと思いますが、向こうの小売価格と比べてみると、大体はFOB八十セントがその倍くらいになっておるのではなかろうか、こういうことでございます。
  84. 秋山利恭

    ○秋山委員長代理 本会議散会後まで暫時休憩いたします。    午後二時四十八分休憩      ————◇—————    午後四時三分開議
  85. 坂田英一

    坂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  果樹農業振興特別措置法案に対する質疑を続行いたします。湯山勇君。
  86. 湯山勇

    ○湯山委員 先ほど貿易面のことをちょっとお尋ねしかかったところであったわけですが、戦後のミカンの輸出の状況を資料によって見ますと、カナダ向けのものが非常に多くなっている。これについては、局長の方も、将来さらに伸びていく見通しであるというような御答弁がございましたが、いずれ長期計画を立てていくということになれば、戦前の状態と比較してみて中国の問題を無視するわけにはいかないだろうと思うのです。と申しますのは、資料によりますと、昭和十三年あるいは十四年の輸出の状況を見てみますと、中国に向けて約五万トンのミカンが輸出されております。現在カナダに向けて出されておる分が約一万二千トンでありますから、それの四倍以上、五倍近い数量が中国には出ておった。こういうことを見てみますと、ことしだけというならば別として、当然、十カ年なりの長期計画を立てるとなれば、生果の輸出先として中国の問題は非常に重要な問題だと思います。これについて局長はどういうようにお考えになっておるか、局長の御所見を伺いたいと思います。
  87. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 戦前中国向けのマンダリンの輸出量が、今御指摘になりましたように五方トンに上っておりますが、最近におきまする中国向けのマンダリンの輸出は皆無に近い状態でございます。今後中国に対する輸出の期待についてどのように考えるかということでございますが、中国への戦前における輸出量につきまして検討いたしておったのでございますが、これは、主として満州なりあるいは旧租借地でありまする旅順、大連等の地帯であるとか、あるいは若干北支方面にも流れておったようでございますが、そういう地帯でございますので、やはり相当部分が日本人の需要にささえられておったのではないかと思われるわけでございます。そこで、今後中国向けの輸出について考えてみました場合に、はたしてどの程度の輸出が出てくるかということにつきましては、今にわかに予断できないのでございまして、中国自身もある意味においては農産物の輸出をいたしておるわけでございます。しかし、香港市場におきまするミカン以外のたとえばリンゴ等につきましては、アメリカもの等が相当入っておるわけでございます。現在香港に伸びておるリンゴや何かはわずか二十万ケースくらいでございまして、三十四年度は二千九百十一トン、三十三年度は三千二百九十三トン、こういう数字になっております。しかし、実際は、相当アメリカものその他の生果が香港市場に流れておって、おそらく何分の一というふうなわずかな状態であると思われます。従って、これらの市場開拓については今後も努力をいたして参りたい、中国向けにつきましては、なお今後の事態に備えまして十分検討、研究を続けて参りたい、かように考えておるような次第であります。  それから、立ちましたついでに、先ほど御質問がありました二点につきましてお答えしておきたいと思います。  第一点は、カナダ向けのミカンの価格がどうなっておるか、こういう御質問でございました。先ほど申し上げましたように、FOBの輸出価格は八十セントでございまして、バンクーバーの卸売業者の価格が一ドル十二セントくらいであろう、これには三十二・五セントの差があるわけでございますが、これは主として太平洋運賃、それから保険料、荷役費その他の諸費でございますので、これを節約するということは困難ではないかと思われます。しこうして、バンクーバーにおける小売価格は一ドル四十七セントでございます。従って、卸と小売との差額が約三十五セントございますので、大ざっぱに言いまして三割くらいの流通経費がかかっておる、こういうことでございます。もっとも、東海岸の方にも流れて参るわけでございまして、ウィニベックとかあるいはカルガリといった地方の小売価格になりますと、これが一ドル八十五セントから一ドル九十セント、二ドル近いものになっておるようでございます。  それから、先ほど、この法律の八条の報告徴収の対象生産者が入っておる、この点についてはほかに例があるか、そういう御質問でございましたが、酪農振興法に同様な規定がございまして、一応生産者からも報告をとり得る、こういうことになっております。
  88. 湯山勇

    ○湯山委員 今の中国に対する評価、これは、局長がおっしゃったように、当時の在留日本人が消費したものも相当あると思いますけれども、実際には現地で相当たくさん消費した実績もあると思います。当時は、今のカナダ向けのようなむずかしい方法じゃなくて、箱の中へバラで詰めて木造船であの東シナ海を越えてずいぶん行ったものです。そういうことを考えてみますと、将来長期にわたる計画の中では、特に果実の輸出ということはあとでも申しますけれどもかなり困難な条件がたくさんあると思いますが、そういうのを克服していくためには、中国というものの評価をしなければならないし、特にこれとの貿易ということは真剣に考えなければならない問題ではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  89. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 先ほど申しましたような考え方を持っておりますけれども、なお今後の事態に備えまして十分検討しなければならないことがあるだろうと思います。しかし、われわれといたしましては、先ほどもちょっと触れましたように、むしろ、生産費等から見ますると、たとえば北鮮のリンゴであるとかいうような、逆に日本に輸入してくるような事態にも十分備えて考えていく必要があろう、つまり、両面から今後は考えて参る必要もあろう、かように考えております。
  90. 湯山勇

    ○湯山委員 そういう問題は、単に技術的な問題じゃなくて、もっと大きい政治的な考慮が必要だと思います。  そこで、これは局長にお尋ねしても、その範囲以上には出ないと思いますので、委員長にお願いしたいのですが、従来の例もありますから、今の中国貿易の問題は大臣が見えたときまで一つ質問を留保させていただきたいと思います。よろしゅうございましょうか。
  91. 坂田英一

    坂田委員長 了承します。
  92. 湯山勇

    ○湯山委員 それと関連して、加工品の輸出等について、昨日の局長の御答弁では、ジェトロを通じていろいろ宣伝しておるから、それを通して輸出を伸ばしていきたいというような御答弁でしたけれども、ジェトロの見解というのは、局長が言われたような楽観的なものではなくて、うんと悲観的なものじゃないかと私は判断しておりますが、その点はいかがでしょうか。時間がないようですから、もう少し具体的に言いますと、たとえば日本のおもなカン詰にしても、非常に原価が高い。パイナップルのカン詰を基準にして考えれば、ミカンのカン詰というのは大体七〇%程度の値段でなければならぬのじゃないかというのに対して、現在はパイナップルととんとんくらいにいっておる模様ですし、それから、奨励なさった桃の黄色種にしても、ジェトロの見解によれば、大体今の原価の二分の一くらいでなければまず競争できないのじゃないかということを端的に述べておるわけです。そういうことになると、結局、国際的な進出をはかっていくためにはそれぞれ市場価格を下げていく、その下げたものが生産者にしわ寄せが来るというような心配があって、その方へ予算を出してそれで宣伝しておるとおっしゃいますけれども、実はそのことが逆なことになって生産者が圧迫されるということになる心配がありますので、この点は私と局長とは見解が違うわけですけれども、その点はいかがでしょうか。
  93. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 ジェトロの海外宣伝、開拓について不十分な点があるのではないかという御質問でございます。果実の消費宣伝あるいは市場開拓につきましては、なかなか、その国その国の趣味嗜好がございますので、これにマッチするような開拓をするということについては骨の折れる部面が多々あるわけでございます。基本的には、今御指摘になりましたように、価格の問題という点が一つであろうと思いますけれども、その地方におきます趣味嗜好に合うような消費形態に入っていくというためには、やはりよほどの努力が必要であると思うのであります。そういう意味で、現在カナダにおけるリンゴの消費宣伝あるいはミカンのカン詰のアメリカ、英国、西独における宣伝等について、その国その国に最も適応した市場開拓の専門家に委嘱いたしまして、たとえば、どういう調理の形態、利用の形態をとれば一般的に普及するかというようなことをやっておるわけでありまして、こういうようなことは、やはり、単純に価格がどうであるからどうだ、すぐ需要が伸びるというわけにもいかない分野が相当あるわけでございます。そういう意味で、マーケットの調査と同時に、需要開拓という意味で、今後とも、ジェトロの足らざるところは強化して、われわれとしてはこの事業を進めて参りたいと考えておるわけでございます。  ただ、基本的にやはり競争関係があるわけでございますから、価格が下がっていけばそれだけ需要が伸びてくるだろうということは、想定するにやぶさかでない点でございます。そういう意味から、価格を引き下げることによって直接生産者団体に影響を受けるのではないか、しわ寄せになるのではないだろうかという点が御指摘になった点でございます。この点は、ミカンについて見ますならば、むしろ輸出業者の方が値くずしをしながらいわば過当競争していくというのが今までの実態だったわけでございます。そういうことで、三十五年から、ミカンにつきましては、輸出組合におきまして数量なり価格なりの協定を結び、統制を行なう、こういうことになったわけでございまして、一時的にそういう市場開拓のあまり値くずしをするというふうなことによって競争することが結果においては大きな市場を失うという面もあるわけでございますので、生産者長期の利益を保護するという意味におきまして、計画出荷、計画輸出という体制は今後とも必要ではなかろうか、かように考えております。
  94. 湯山勇

    ○湯山委員 ジェトロの市場開拓は決してかね太鼓の宣伝でできるものじゃないと思うのです。やはり、品質、価格、こういうものが基礎にならなければほんとうの輸出の伸びは見られないと思います。ミカンのカン詰にしたって、今のようなお話もありましたけれども、このままでは頭打ちだということを言っておるのは局長はお聞きになっておりませんか。というのは、今のような価格ではとても太刀打ちできない。ことに、ことしあたりカン詰原料ミカンがずいぶん高いことを局長も御存じだと思うのです。どうして一体あんなに高くなったか。どうごらんになっておられますか。
  95. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 確かに、最近におきますミカンの需要から見まして、価格が比較的高くなっておることは御指摘の通りでございます。そういうこともございまして、今後の需要の見通しを立てます際、ミカンにつきましては相当期待される分野でございますし、急速な需要に見合って直ちに生産できるというふうな作物でないだけに、これらの果樹については特別の考慮を払う必要がある。つまり、長期の需要に即応して生産体制を整えるというふうな必要があるわけでございます。従いまして、今お話にありましたような点が時期的に今後起こらないようにという考え方で本法案も出したわけでございます。
  96. 湯山勇

    ○湯山委員 もう一つの国内消費ですね。確かに伸びてはおりますけれどもミカンを含めて現在のくだものの値段というものは、一般国民大衆に対して簡単に口に入る値段かどうか、これについて局長のお考えを伺いたいと思います。
  97. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 ミカン長期の需要でございますが、国民所得の計画を作った場合における基礎数量について申し上げますと、現在の一人当たりの四・六二キログラムが、四十五年には十一・三七キログラムに上がるだろう、二倍にふえるだろう、こういう計画計算をいたしておるわけでございます。これは単純に人口の増加とそれから今後の所得の増加に見合う需要を見ておるわけでございます。厳密には、さらに価格が下がることに伴う需要の増を見るということが正しい計算であろうと思います。従って、今御指摘になりましたような価格がさらにある程度下がってきて、もっともっと大衆消費がされるということになれば、おそらくこの需要は国内需要としてももっとふえるのではなかろうか、かように私は考えます。
  98. 湯山勇

    ○湯山委員 局長の御答弁は大へん本末転倒で、さっきの長期計画というようなものは、政府としてかなり正確なものをつかまえなければならない。今おっしゃったのは個人のふところ、これはずいぶん正確に十一・幾らという数が示されて、今度長期計画については非常にばく然としている。これは私はちょっと信用できないと思うのです。もしこういうような資料がほんとうに自信を持って述べられるのであれば、たとえば生産計画なり輸出計画なり、そういうものがきちっと出なければならないと思う。で、今そういうふうにばく然と所得が二倍になるという前提のもとに述べておりますけれども、その点に問題があるのであって、農家の所得が一体どう二倍になるか、果樹経営者の所得がどう二倍になるか、その点を一つ重点として聞きたいと思って今のことを聞いているわけで、これはお答えが逆になっておるわけです。今の輸出の伸び、そのために単価を下げていく、大衆の口に入るようにしていく、しかも農家の所得がそれによっても低下しないで伸びていくということのためには、相当コストを下げる、生産費を下げるということが考えられなければならないと思いますが、私は、この措置ではひょっとすると生産費が上がるのじゃないかということを心配しているわけです。といいますのは、十町歩について五百万円なら五百万円という融資を受ける、これは七分以下というのですが、七分なら七分として、十カ年据え置いて元利合計どのくらいになりますか。
  99. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 今お尋ねの、かりに十町歩として、新値で五百八十万、こういうふうに計算して、十カ年据え渇き、十五年償還の場合における元利がどうなるかという点につきましては、後ほど具体的な数字でお答えいたしたいと思いますが、これによって、われわれは、果樹につきまする生産費の中で最も大きな部分を占めておりますところの防除費が相当軽減されるのではないかと思います。防除費は、御承知のように、生産費の中では五割以上を占めておるという数字が生産費調査によりますと出ておるわけでございます。かりにこれが散在形態から集団化され、四十馬力程度あるいは四十五馬力程度スピードスプレーヤーが利用されるということになりますならば、計算上は少なくとも三割程度生産費が安くなるのではなかろうかというように思われるわけであります。しかし、今御指摘になりましたように、そういう施設を持つことによって逆に償却費がかかってくるではないかという点があると思います。従いまして、こうなりますと、全体の純収益としての額が現在よりどうなるかという点は、厳密に今計算してみなくちゃならぬと思いますけれども、少なくともこういう点だけは明らかだと思うのであります。つまり、集団化することによって、共同の形態に入っていく、あるいは共同の利用の形に入っていくことになりますならば、現在使われておるところの労力よりも節減ができることは、これはもう明らかであります。少なくとも一五%から二〇%ぐらいの労力節減は優にできると思われるわけであります。従って、労働単位当たりの報酬が増加するということは、価格を一定するとすれば当然そういう結果になろう、こういうことが言えるわけでございます。
  100. 湯山勇

    ○湯山委員 という御答弁は、結局農家の切り捨てということと解釈されてもいたし方がないことになるわけなんで、一つこれは資料で出していただきたいと思うのです。大体、今新植をやった、そしてそれだけの借入金をして、複利計算で償還期が来たとき粗収入がどれだけあるか、その中で一体経営がなっていくものかどうか。しかし、実際は今その計算ができていないで、こういう法律をお出しになるということは、うかつだと思う。これで新植を十町歩やった、その中でこうなってこうなっていくから、現在の経営でやっていくよりこれだけよくなるという見通しがなくてこういうものをお出しになることは、私は軽率じゃないかと思うので、これは資料として綿密にお出し願いたいと思います。なおそれについて質問をしたいことがたくさんありますから、次の機会までにお出しを願うことにしたいと思います。  それから、今の農薬の問題ですね。確かに設備面から来る問題もありますけれども、農薬行政に欠陥があるとは局長考えになりませんか。
  101. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 どういう点について御指摘になるのか、ちょっと理解に苦しむのでありますが、果樹については特に農薬が大きな部分を持っております。従って、もし御指摘の農薬につきまして価格対策をどうしろというようなことでございまするならば、これはなかなかむずかしい行政分野でございますけれども、だんだんに新しい薬品もでき、同時にそれが大量生産の方向に向かうというようなことでありますならば、価格としても当然合理的な価格が形成されていくように指導していくべきであると思うのであります。  前の段階で御指摘になりました計算の問題でございますが、これは、おのおの、スピードスプレーヤーを入れた場合における経済計算がどうなるかという計算は、すでにいろいろな資料があるわけでございます。従って、これによって現在よりもさらに悪くなる、あるいは労力の切り捨てになる、こういうことと直接結びついた考え方は全然ございません。
  102. 湯山勇

    ○湯山委員 その点については、資料を見せていただいてからまた検討したいと思います。  農薬の場合は、確かに日本の農薬の生産費に占める割合が大きいことは御指摘の通りですけれども、気候、風土あるいはその他の自然の条件も確かにあるといたしましても、最近農薬が次々新しいのが出てきて、しかもそれらが新しい農薬をずいぶん宣伝する。その宣伝費もずいぶんかかっておるし、農薬自体になかなか安定性がない。ついこの間も聞いたのですけれども、ことし入った農薬はどうもきかなくて、去年の残りの方がよくきいたとかいうようなこともあります。これは農薬というものの抵抗性の問題等もあって変わるということはありますけれども、今のようにとにかくどんどん新しいのを輸入して、宣伝費をじゃんじゃん使ってずいぶん高く売りつけていく、こういうことをそのままにしておくというようなことは、私はどうだろうかと思うのですが、その点についてはいかがですか。
  103. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 最近における技術発展の一つの大きな特色といたしまして、農薬の著しい発展、発達が要因になっていることは御指摘の通りでございます。従いまして、最近におきましても新しい農薬がいろいろと出ておるわけでございます。これに対しましては、いろいろの施用方法等につきまして、農家に十分普及の徹底、指導の徹底をはかるように指導いたしておるのでございますが、それだけにまた新しい農薬についての施用方法からの間違いが生ずる。さらにまた、最近の化学製品の量がだんだんふえることによりまして、虫害等の抵抗性が出てくるというような問題があるわけでございます。われわれといたしましては、試験研究機関あるいは普及員等を通じまして、いち早くそういう点につきましての指導を拡充するという考えでおりますが、今後とも発生予察等の事業の拡充と相待ちまして十分指導に留意して参りたいと考えております。
  104. 湯山勇

    ○湯山委員 この問題は大きい問題ですから、慎重に御検討願いたいと思うわけです。たとえばエンドリンは今自由に使わしておりますか。
  105. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 正確なお答えができませんけれども果樹によりましてエンドリンを使っております。しかし、どういう果樹について制限があるのか、詳細はここでお答えできません。いずれまた調べた上で御答弁いたしたいと思います。
  106. 湯山勇

    ○湯山委員 たとえば、ホリドールは使ってもいい、エンドリンは使わない、エンドリンは使うと魚が死ぬからというような理由があったわけです。一部には使わしておるところもあるようですけれども、魚の命が大事なのか人の命が大事なのかということで、お百姓さんは憤慨しておるわけです。こういう矛盾もありまして、ずいぶんエンドリンを買うために苦労しておるということもありまして、そういうことも非常に原価を高くしておるわけです。そういうようなことも考えなければなりません。  それから、もう一つ生産費の問題で私がお尋ねしたいことは、今の市場側の生産者に対する要求です。たとえば、リンゴならリンゴの形の大きいこと、それからミカンの色とか、ブドウにしても、とにかくくだものの本質に影響のない部分で、しかも非常に手間の要ることを市場側が要求している。これは私がヨーロッパの方で見てきたのですけれどもブドウなんかも、日本のように粒のそろっておるのを要求しておるというのはあまり少ないのじゃないかと思うのです。リンゴにしたって、少々皮にいたみがあったにしても、それは店も市場も別に気にしていない。ひとり日本だけがずいぶんそのことをやかましく言うし、それから、あなた方の御指導もまたそういうところにずいぶん力を入れておられる。普通ならば手間をかけないで済むことに、本質的でないものにずいぶん余分な手間をかけさせている。こういうところに指導上の大きな欠陥もあるのではないか。市場だけの要求をいれる。一般の食べる人たちは、安くておいしいものがよい、そうして見かけのことを言うわけではないのですから、今日までの指導は少し方向を誤っていたのではないかという気が私はするのであります。昨日、淡谷委員も言われたように、デリシャスにしても、本場のものよりもはるかに大きく、向こうがびっくりするくらいになっている。そういうものでなければ市場価値がない。これはどうも一般消費者あるいはほんとうに農家のためを考え指導ではないと思うのですが、その点はどうお考えですか。
  107. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 今お話しになりました点は、多々共感いたすところがあるのでございますが、私も昨日答弁いたしましたように、今後果実が大衆消費の形でどんどん伸びるというようなことを考えてみました場合におきましては、やはり、ある程度値段が下がるということが必要な条件ではないかというように思われるのであります。しかるに、現状におきましては、今御指摘になりましたように、ミカンの玉はだんだん大きくしなければいけない、その方が値段が高くなり、結果においてそっちの方が利益があるということで、生産者の方におきましてもそういうものに関心を持つようになり、あるいは袋かけ等におきましても、もはや農薬の発達によりまして必要でない部面におきましても、光沢をつけるような関係におきまして袋をかけるというようなことがあるわけでございます。これらは、一面、いいものが出てくるということは、これは嗜好品として当然なことであると思いますけれども、他面、大衆消費を考え、あるいはまた農家の手取りをふやしていき、むだを省いていく、こういう面から見れば、今後の指導上は十分留意すべき点であろうと考えるのであります。ただ、それが商品であり、かつまた嗜好品でもありますので、あながち商人あるいは市場が要求するということによってのみ割り切れない面があるわけでございます。十分今後留意すべき指導の要点だ、かように考えております。
  108. 湯山勇

    ○湯山委員 その点については御賛同を得たわけですが、今度の法律によれば、いろいろと新しい種苗の頒布等も考えているようです。従来奨励されて頒布される種苗というものは、あまり評判がよくなかった。ことに継ぎ穂などは剪定して落ちたものを配ったりするものですから、実際には、そういう系統だけでなく、ついでにほかの系統のものが出てきたり、いろいろ批判が強がったと思いますが、今度はそういう点については若干改良がなされるという御説明でしたけれども、さてどういうものを広げていくか、ふやしていくか。いただいた資料の中に、リンゴ等では戦後百品種にも及ぶ品種を導入しておるようですが、これはどういう気持でなさったのですか。新しい品種改良をするための母樹として導入されたのか、あるいはそのままの完成品種として入れられたのか。どういうお考えで百品種ものリンゴを入れられたか。ブドウにしても九十三品種、こういうたくさんの外国品種を導入しておられますが、その意図はどの辺にあったのでしょうか。
  109. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 私も自信を持ってお答えするわけに参りませんが、従来、品種につきましては、ほとんど大部分が民間の品種でございまして、官庁育成の品種数よりもはるかに民間育成の品種が多いわけでございます。ここにあります導入のいろいろの品種につきましては、優良母樹としてそのまま使えるようなものもありますし、それから、今後育成すべき母本となるべきものという意味で導入したものもあるわけでございます。つまり、両面のものがこの中に入っておる、こう御理解願いたい。
  110. 湯山勇

    ○湯山委員 そういう一般的な御答弁をいただいたのではさっぱり話にならないので、方針がどこにあるか、その中のどういうものがどうだという小分けがわかれば伺いたい。一体、一貫した方針があるのかどうか。新しい種類を奨励される、新しい苗を頒布する、ところが、たとえば百品種の中では五十が新しい奨励品種として出すのだ、五十はかりに新しいものを作るための母樹にするのだということにしても、それでは五十も入ってきてどんどんそれを改値していかなければならないということになれば、これはまた大へんなことなので、こういう点はもう少し定見を持って方針をきめてやっていただきたいと思うわけです。  このことと関連してお尋ねしたいことは、新しい品種じゃございませんけれどもミカンの伸びの中で、わせ温州と従来の温州とは率にしてどっちがよけい伸びておりますか。
  111. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 優良苗木の供給ということにつきましては、お話しになりました母樹の指導と相関連いたしまして今後も重要な点であります。われわれといたしましては、もちろん県なりあるいは国なりの試験場というものがこれに関与いたしまして母樹園の設定等をしておるわけであります。今後におきましても、来年度予定しております予算におきましても、県が優良母樹を指定する、こういう考え方をとっておるわけであります。農林省といたしまして、具体的にどういう品種についてどうするというふうに一々やるというわけではなくて、国の試験場、県の試験場などの関係で、従来も県にある程度母樹はわかっておるわけでありますので、そういう指定をしていきたい、こういう考えでございます。  それから、あとの点は、率はちょっと覚えておりませんが、わせ温州の方が伸びはうんと高いわけであります。
  112. 湯山勇

    ○湯山委員 今の県にまかせるというのではなくて、どういう品種はどういう方面に向けられる、カン詰め材料にはどれがいい、ジュースにはどれというふうに長期計画を立ててその方向へ持っていくというのですから、もう品種改良にしても県の試験場まかせという段階じゃないと思うのです。やはり、今の新しい学問の中ではそういう系統を立てた品種改良ということも当然考えられることですから、むしろ国の試験場というようなものはそういうところに重点を置かなければならないと思うわけで、それは要望しておきたいと思うわけです。  わせ温州の方が伸びがいいというのは、結局出荷の時期の問題なのです。品種改良もそういうのが偶然出てくる場合もありますけれども、今の温州をもう少し時期がおくれるようなものにすることができれば、これはずいぶん楽になるわけです。それができなければ、昨日淡谷委員から出荷先へ貯蔵庫を設けるというようなお話がありましたけれどもミカンの場合、むしろ逆で、生産地の方へ貯蔵倉庫を設けてもらえば、そこで貯蔵しておいて出すということは抑制栽培と同じ効果になるわけで、軽い意味で品種改良されたのと同じ効果があるわけです。そういうことも生産基盤というようなことから将来融資対象にするとかいうこともやはり考えていっていいのじゃないかと私は考えるわけですが、いかがでしょうか。
  113. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 今後の果樹農業経営のあり方として集団的な果樹経営計画を作る、それに伴って出荷、流通の面におきましても当然これとマッチしたような形で整備されなければならぬと思うのであります。また、それが一つのねらいになっておるわけであります。御指摘の点は、産地における貯蔵倉庫を作ることによっていわば栽培面における効果をも発揮するというねらいを持ったお考えのようでございますので、十分研究さしていただきたいと思います。
  114. 湯山勇

    ○湯山委員 それから、局長の御答弁では、やはり十町歩というものを基準にするということでしょうが、新しく作っていく場合、あるいはまた改植する場合、あるいは既成のものをできるだけ拡張していくというような場合に、それぞれ条件が違っておると思います。いろいろ問題が出ましたけれども、実際は、四国の南の方とかそういうところは、御存じのように、従来はいもと麦だけしか作っていなかった。そういうような、台風の当たらない、比較的風の害の少ないところを、いろいろ防風林を作ったりなどして小さな果樹園をだんだん作っていっておる。だから、ほとんど果樹園の作れるところというのは果樹園になってしまっておるというような地帯も相当あるわけです。しかし、実際援助しなければならないのはそういうところなんで、そういうところに防風林等についても非常に助成なり融資なりということをやっていけば、これはさらに夏カン等については拡張の余地も出てくるわけで、それにしても、そういうところで十町歩の団地を作るといっても、これはとうていできないことです。かりに作るにしても、今のような防風林から作ってかかるということであれば、今お考えになっておる程度融資ではとても追いつかないし、また、その融資が受けられたとしてもその金利に耐えられなくなってきます。そういうことを考えてみると、実際に十町歩ということを固守していかれるということは、実際は振興の目的を必ずしも達成されないのではないか。ミカンの場合、全国で千カ所ぐらいは十町歩以上のができるというお見込みだそうですけれども、先ほどの資料と同じように、県側はかなりいいかげんに作ったものであります。実際に一つの郡の中でそんなところがどこにあるだろう。一つ町村なんかではそんなところは一カ所もないというような例も相当あります。谷々に作るわけですから、そこで、どうしても十町歩というようなことに固執されないで、もっと幅を持って、たとえば五町歩なら五町歩というところまでおろす必要があるのではないかということを思うわけです。というのは、適地がかえってそういう状態にあるわけですから、そういうことはほかの方も聞かれましたけれども、別の角度からお伺いしたいと思います。
  115. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 お話の点はよくわかるわけであります。ただ、われわれといたしまして十町歩を固守するというわけではございません。十町歩というのが集団化のタイプとしては望ましいタイプであるということを考え十町歩ということを申し上げておるわけであります。それから、十町歩考え方につきましては、計画対象面積であって、現実の現在既成園としてなったものを言っておるわけではないわけでございます。それから、第三に、これを融資し拡張していきます場合におきまして、現実問題として主産地であるべき地帯に十町歩というようなことが現実に合わないというような事態もあろうかと考えます。私の方も、そういうふうな実態でありますならば、弾力的な運用をはかるようなことも検討してみたい、かように考えております。
  116. 湯山勇

    ○湯山委員 果樹園の経営改善促進の実験集落というのを作っておりますね。これでは五ヘクタールないし十ヘクタールという規模でおやりになっておると思うのです。三十五年度で、ミカン三カ所、リンゴ二カ所、三十六年度の御計画では、リンゴ一、桃二、ブドウ二、ナシ二、こう承っております。それは面積は五ヘクタールないし十ヘクタールというような規模だと承っておりますが、それはそうなんでしょうか。
  117. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 いずれも十ヘクタール以上を基準といたしておりまして、現在までのところ、各県とも十ヘクタール以上の規模が非常に多いわけであります。
  118. 湯山勇

    ○湯山委員 それで、五ヘクタールというものも、一体どういうふうにすればやっていけるかということの研究はしておられないのですか。
  119. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 たとえば地形的な関係であるとか、特にミカンのごときは傾斜地が多いわけでございます。従って、その場合におきましては、SSも必ずしも入り得ないわけでございますので、たとえばパイピングをやる場合においてはどの程度のものがよろしいかというようなことも当然出て参るわけであります。さらに、樹種によりましては十町歩は必ずしもなくてもよろしいというものもあるかと思うのであります。しかし、いずれにしましても、今後の作業過程における単位ということも一つでありますと同時に、市場に販売します場合における取引単位あるいは荷口単位としての一定量が集まるということも必要であろうと思うのであります。そういうような市場の条件、出荷の条件、最も有利に販売し得る単位というような考え方も織り込んでこれは考えて参りたい、かように思っております。
  120. 湯山勇

    ○湯山委員 ちょっと議事進行なんですけれども、あとそうたくさんではありませんけれども、実はもう少し時間が欲しいのです。しかし、もう五時前ですから、あと残ったのはまた大臣でも見えた次の機会にさせていただきたい。
  121. 坂田英一

    坂田委員長 では、残余の質疑は次会に譲ることにいたします。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会