○横路委員 先ほどの私の質問に
防衛庁の
長官は答弁していないのですよ。これは答弁されなければこの審議は進まないのです。
委員長もお聞きだと思うのです。いいですか、第五条に基づいて武力攻撃があった、
アメリカは集団的自衛権で出動した。さて
日本は個別的自衛権に基づいて七十六条で国会にかけたら承認されなかった。自衛隊は出ていかない。
アメリカだけは集団的自衛権で出ていった。
国民、国会は戦場の拡大を
希望しない。これは平和的な手段でやろうとして、国会が否決をして、
国民の意思は決定した。それであるのに
アメリカ軍は集団的自衛権を発動して、戦場は拡大をしていった。やめろということはどこで言い得るのかと聞いたら、それは条約以前のことだと言う。これでは答弁にならないです。
西村さん、これで答弁になると思ったら間違いです。
今石橋委員から言われている点をもう一ぺんあなたに聞きますけれ
ども、今度は第五条で、同じく
日本における
アメリカ軍事
基地が攻撃をされた。
アメリカは個別的自衛権で出動している。これに対して、
日本国内における
アメリカ軍軍事
基地に対して、
日本は個別的自衛権を発動して直ちに出なければならないということを第五条で言っているが、これには国際法学者は全部反対です。全部というと、一橋大学の大平君のように去年来て賛成したのもあるから、ほとんどと言いましょう。なぜかといえば、先ほど
加藤官房長もそこで承認されているように、自衛権の発動というものは、
一つには急迫不正の侵害の場合に行われる。
アメリカの軍事
基地がロケットその他で——もちろんそれが原爆、水爆が落ちて放射能によって
周辺の
日本国民が
被害を受ければ別ですよ。普通火薬に基づいて、的確に
アメリカの軍事
基地がいかれた。
日本国民には何も影響がない。その場合、ただ領空侵犯だ領海侵犯だというだけでいけますか。法律学者もそういう点については全部こう言っているじゃないですか。自衛権とは
一体何なのだ。本来国内の治安維持を目的とする警察隊が、急な場合に外敵を排除するために抵抗するとか、あるいは国内にいる民衆が立ち上がるよう国家が
要求する、国際法のいわゆる軍民蜂起の形で民衆が武器をとって抵抗するといったものも、自衛権の発動の
一つである。しかも自衛権というのは
権利であって、これは義務ではないのですよ、ですから、
日本国内における
アメリカ軍軍事
基地が攻撃された、これは
日本にとって何も急迫不正な侵害ではないのですよ。急迫不正の侵害の場合もあるかもしれない。原爆、水爆による放射能におおわれている場合もあるかもしれないけれ
ども、そのときに直ちに武力をもって反撃せよというようなことは、本来から言えば個別的自衛権ではないのです、この点は憲法第九条との
関係があって——
加藤さん、あなたも知っているように、本来から言えば集団的自衛権ときめておけばこういう議論は成り立たなかった。集団的自衛権であれば、条約で共同の義務を背負ったのだから、国内の
自衛隊法との
関係でなしに、出なければならなかったのを、それを集団的自衛権と言えば、憲法第九条に抵触する海外派兵が行われるのではないかということになるから、苦しまぎれに個別的自衛権であるということになった。個別的自衛権となるから、こんなものは一般的に、国際法的に
認められないのです。ですから先ほど来言っているように、自衛権発動のもとにおいては、
日本国内の
米軍基地に対する攻撃を
日本国内に対する攻撃であるとして、武力行動を起こすことは無理なんです。無理なんだから、七十六条において、今石橋委員が言ったように
防衛庁長官が何ぼ国会で通してくれと願っても、
国民全体はやめてくれということになる。多数の意思ですから、国会は承認しないということになるのです。
長官、そうなんですよ。あなたは
アメリカとの条約上の信義とかなんとか言うが、ここがこの条約の問題点です。どうですか。
日本国内における
米軍基地が、第三国からロケットで攻撃された、それは
核兵器ではなしに普通の火薬で攻撃された。しかも的確に攻撃された。
被害はその
基地の中にとどまった。こういう場合に、
日本はこの第七十六条に基づいてやること
自体が無理なんです。やること
自体無理なんだから、従って国会にかければ否決されることは当然なんだ。だからあなたがどんなに
希望したいとかなんとか言うてみたって無理なんですよ。