○
大澤(一)
政府委員 新しい
時代に古い
監獄法を適用するゆえに、そういう考え方が払拭せられないという御
説明でございまして、私も別にそれに対しては異議があるわけではございません。さような
意味合いにおきまして先ほど政務次官から御答弁願いましたように、最近におきまする矯正思潮ないしは矯正技術の目ざましい発展とともに、戦後におきまする憲法、刑事訴訟法等の
改正に呼応した根本的な
改正の要望、またその必要性というものをわれわれは認めまして、目下その構想を練りつつあるわけであります。先ほども御
説明があったと思いますが、
研究をいたしておるわけであります。しかし
監獄法をさように根本的に
改正いたします場合には、いろいろな大きな問題があるわけでございます。さような点を
一つ一つ解明いたしますと
相当時間も要しますが、しかしわれわれといたしましてはできるだけすみやかにそめ
作業を終了しまして、御期待に沿いまして、そうして新しい
法律のもとに、またそれからにじみ出る新しい思想のもとに、矯正を運用していきたいと存じておる次第でございます。この点
作業がおくれておりましてまことに申しわけない次第でございますが、われわれも駑馬にむちうちまして、すみやかに御期待に沿うように
努力いたしたいと存ずる次第でございます。
なお罰の問題でございますが、現在
刑務所で行なわれておりますのは屏禁罰と減食罰と運動停止の罰でございます。
刑務所内におきまする在
監者の最近の動向はきわめて粗暴なものが多いのでございまして、過般中野
刑務所で戒護中の
職員が逃走をはかった二名の
囚人に殺害せられたというような、われわれの同僚がさような大きな犠牲を受けるような事故がございますし、このような大きな事故はこの数年実際珍しいことでございますが、日々
作業中におきまして、戒護の
職員が
作業の用具で
囚人になぐられたり、あるいはまた同房者の間で、特に最近やくざの派閥
関係の
収容者が多うございまして、これらの者が内部で私闘をするというように、
刑務所の中もかってのように静かではないのでございます。同房者間の闘争あるいはまた看守に対する暴行ということが跡を断たない
状況でございまして、かような者を収容しておる
刑務所におきまして、
刑務所内に一たん暴動が起こりますと、これが治安に及ぼす影響というものはきわめて大きいのでありまして、われわれといたしましては
刑務所内の秩序の維持ということにつきましては、やはりある程度の強制力を持って臨まなければいけないような情勢でございます。さような
意味から現在減食罰、運動停止の罰あるいは屏禁罰というようなものを行なっておるわけであります。
この減食罰と申しますのは、食事の分量を減ずることを内容とするものであります。また運動停止罰は、戸外の運動を停止するということを内容とする罰でございまして、屏禁罰は罰室に屏居をさせまして謹慎させることを内容とするものでございます。いずれにいたしましても、これらのものは食糧とか運動というものを停止あるいは減少するというような、基本的な
生活要素を制限するものでございまして、
収容者の健康に与える影響も決して少なくないのでございます。かような
意味合いで
法令におきましても、さような罰を執行する場合には、
収容者の健康に及ぼす影響を十分考慮して行なうようにという、厳重な制限も課せられておるわけでございますので、現在これらの罰を執行いたします場合におきましては、まず医師が診断を行ないまして、健康に害があるかどうか、よく調べまして、害がないと認められた場合以外には執行しないことにいたしておるわけであります。なお執行中におきましても、常に診断をいたしまして、いささかでも健康に影響があると見られました場合は、執行を停止しておるわけでございます。なおまた執行が終わりました後、もちろん医者の診断を受けさせまして、適切な事後措置をとりまして、健康の保持につきまして十分配慮をしつつ執行しておるわけでございます。
なおかような減食罰ないしは運動停止の罰につきましては、諸外国の例でも、
刑務所の秩序維持というような
意味合いから、世界
各国においてやはりとっておる方法でございまして、
国連の
会議におきましても、この
刑務所秩序維持のために、
処遇の中に、この程度の罰はやむを得ないものとして認められておりまして、われわれといたしましてもこの程度の罰というものは、
刑務所内におきまする秩序を維持する必要上、やむを得ない措置だ。しかしその執行につきましては、ただいま申しましたように十分考慮いたしまして、特に健康にいささかたりとも影響を与えることのないように十分注意しながら、この罰を執行しておるという
状況でございます。また今後もさような方針で、なお一そう留意いたしまして、その執行上間違いないように
努力をしていきたいと考えておる次第でございます。