○勝部
参考人 この
改正案につきまして消費者、
利用者の
立場からいろいろ
検討させていただいたわけでございますが、全体に
合理化をしているという
努力は今
公社側でも非常にしておられるように見受けられますけれ
ども、まだいろいろな点で
改善さるべき面が多々あるのじゃないか、そういう点で
賛成できない面が多々あるのでございます。
その第一の点としまして
料金につきまして申し上げますと、今度はいろいろ
距離制の問題を
改善しましたり、あるいは近接地の
料金を
改善する、さらに一分制というのを採用する、そういう点で私
ども最初見ますと、何か中身は非常に
合理化されて、これは
値下げになるのじゃないかという印象を受けたのでございますけれ
ども、よくよく
検討してみますと、たとえば
東京から札幌、福岡などにかけました場合には、確かに六分の場合だと同じ値段でございまして、それで中身が刻まれておるのでございまして、その点で非常に
合理化されているということは言えますけれ
ども、たとえば
東京−大阪の例をとって参りますと、そういった中
距離の、ことに
東京−大阪なんかは実は一番
利用度が多いわけでありますが、そういうところで三分の場合でありますと値上がりでありまして、二百九十円が三百十八円になる。六分ですと五百八十円が六百三十六円になる。実は一割の
値上げになるわけであります。四分、五分の場合は確かに安くなるという計算がそこに出て参っておりますけれ
ども、最近
電話が非常に便利になりまして、みなが遠
距離もよく
電話をかけるようになりましたけれ
ども、三分ぎりぎりで用を済ましておりましたのが、四分なら安いという点で、四分、五分をうっかりするとかけてしまうのではないか、そういう点で結果としてはわれわれの支払う代金というものは多くなってしまうのではないか。
公社は三十億の
減収を今度は見込まれておると言われますけれ
ども、これは結果として見なければわかりませんが、どちらかと申しますと、消費者としてはなかなかうまい心理作戦ではないかというようなことさえ実は勘ぐられるわけであります。それから準
市内の場合でも、三分にすれば、二十一円になりますが、従来は十四円でございまして、実際二、三
通話のものが多いわけでありますから、この点もやはり問題があろうかという工合に存じております。
公社全体としましてはやはり五百億以上の
利益が出ているということがはっきり出ておるわけでございますが、私
どもの考えでは
合理化というのは
利益が出ているのだから、三分なら三分の刻みのところは少なくともそのままの姿にすえ置いて、そして一分、一分の刻みで率が安くなるというなら
合理化と考えられるのですが、やはりその
値上げの部分が多いという余地を残した点は非常に問題があろう、ことに
東京−大阪間などは問題があろうと思います。
それから第二点としまして、待時
通話の際に、実際に字のごとく待っている時間が非常に長いわけであります。それですから、みな急報なり特急報にするわけであります。それが待時
通話の場合、普通
料金を一〇〇としました場合に、それに見合います同じ
距離で、即時
通話は一五〇から一八〇という数字になるわけでありますが、急報は二倍とられますから二〇〇であります。あるいは特急報は三〇〇くらいとられます。二倍、三倍とられるわけであります。そうしますと、同じ
距離で即時はすぐかかる、しかしながら待時
通話の方は、特急にしましてもやはり待ってかけなければならぬ、
サービスの
内容が悪いのによけいな
料金を払わなければならぬ、この点はやはり非常に不合理な点があるのではないか、こういう点も
改善されてないという点で問題があろうかというふうに考えております。
それから三点としまして基本料につきましても、先ほどの
参考人も述べられましたけれ
ども、
東京の場合にあの
改定の表によりますと、たしか今度は七十万以上の基準の
大都市ですか、そういう圏内の
基本料金が今千円でありますが、それが千百円になる。さらにもっと人口がふえれば千二百円、千円三百円というところまでランクが上がる。これはどうも
加入者が多いという局の方が基本料が高くなるという、そういう
制度でございますが、それは
加入者が非常に少ないところでは人手もたくさん要りますでしょうからかえって高いというのが普通でございますが、
加入者が多いほど基本料が高くなるというのはどういうわけだろうか、この辺はコスト・ダウンという問題も当然考えられるわけですし、問題があろうかという工合に考えます。便利になるという点では確かに
加入者の多い局の方が便利で、その点で
料金が高いということは言えるかと思いますけれ
ども、ある一定のところで頭打ちをすべきではないか。こういう基本料が上がるというところは問題であろうかと思います。
それから次に第四番としまして、
技術革新、オートメ化、
加入者増大ということの結果、私
どもはむしろ
値下げをすべきである——先ほどからも全体としてはプラス、マイナスがないという計算をしたということでお話がございましたけれ
ども、マイクロウェーブができましたり、トランジスターとかダイオードとかいう電子工業の非常な
発展、これは
日本でも特に
発展しているものでございますが、そういうものが取り入れられてきた。これは驚異的に目ざましいものがあるだろうと思うのです。そういうものが取り入れられてきた場合、特に
公共企業体の中では、鉄道とかそういうものに比べまして電電
事業はオートメーション化が一番可能であり、現実に進んでいるところだと思います。そういう点でコストというものは実際下がっているのじゃないかという工合に考えられます。これは一般的に言えることでございますけれ
ども、オートメ化が進みまして生産性が向上する、企業
利益が増大するという場合、そういう
利益の配分——
利益はオートメ化の前とその後とを比べた場合は、最近は飛躍的に増大しているということが言えると思います。そういう点で配分ということは非常に重要になってきていると考えますが、その配分にあたって、企業
利益はなるべく企業内に置いておこう、消費者の方の
値下げとか、そこで働く労働者の賃上げとか、労働時間の短縮とかいう方にはなるべく回さないでおこうとする傾向が
日本の大企業の中には特に見受けられるわけでござます。それでいて配当率は世界で一番高いといわれるほど高く、
設備投資は非常に行なわれているということがあるわけでございますが、実際購買力を先行きなくしてしまったらどういうことになるか。たくさん作ってもあとで売れるということが
前提でなければならない。そういう点で
技術革新による恩恵というものが消費者にもっと均霑され、特に労働者の賃金の増大となって、それによって購買力をふやすという方向に向けられなければ、企業自身の自殺になるのじゃないか。こういう傾向が
全国的に大企業に多いわけでございますが、そういうような点、
公益事業の中でもオートメ化の花形である電電
公社が——政府は所得倍増の問題につきましていろいろとわれわれに解説されておりますけれ
ども、まず政府の
公共企業体こそがオートメーションの恩恵を正しく分配する方途を身をもって示していただくことが、
日本の産業を堅実に
発展させていくことになるのじゃないか。また消費者大衆も喜ぶことになるのじゃないか。そのように考えるわけでございます。そういう点もぜひお考えをいただきたい。従って年々
収入二千億という中で
利益が五百億も出るという非常にりっぱな、健全過ぎるほどの企業としては、その純
利益を全部
設備資金に回すということでなく、逆に
値下げの方にもっと回して、消費者大衆がこれを
利用できるという方向に回していただくべきじゃないかという工合に考えております。おそらく
加入者がうんとふえましたり、さらにオートメ化が進みますれば、現在の七円の基準をもっと下げて、たとえば五円くらいに下げることも可能ではなかろうかという工合に考えるわけでございます。今度
東京−大阪間が逆に高くなるというようなことが出ておりますが、マイクロウェーブを使っております
東京−大阪間の場合には実際の費用というものはあまりかからない。遠
距離ほ
どもっと下げてしかるべきではないかということさえ考えられるわけでございまして、そういう点もお考えいただきたいという工合に思います。
それから
サービスの点では、近ごろよく聞く声でございますけれ
ども、交換嬢が非常に不親切であるということを聞くわけでございます。これは
公社の方でも
サービス改善の教育ということをぜひしていただきたいわけでございますが、その前に、先ほどから伺っておりましても
通話数が非常に多くなっている、それから労働強化がされてきている、それから
自動化でいつ配置転換になるかわからないといったような不安から、いわゆるストレス的緊張ということで不親切になっているとしたら、
利用者にとっては非常な問題でありまして、こういうオートメ化、
合理化をいたしますときには、そこに働く労働者の保障問題がどうなるかということはどこの産業でも重要な問題になってきているわけでございます。われわれとしましては、もちろん、
自動化され、便利になることは非常に
賛成でございます。
賛成でございますが、そういう保障も十分にやっていただきたい。そうして労使間が大きないざこざを起こさないように、オートメ産業の中で、政府の
公共企業体として最も模範的な労使関係を樹立していただきたい。これがやはりわれわれ末端
利用者の声じゃなかろうかという工合に考えております。
それから最後に
資金面につきましても、もっと
資金運用部
資金を使うべきじゃないか。これは私
どもの零細な郵便貯金とか厚生年金がその
内容でございます。大衆が積み立てた金であります。こういうものはうんと回してもらいたいという希望を実は持っておるわけであります。最近聞きますと、アメリカの証券業者を通じて二千万ドルの外資が導入されているけれ
ども、そういうことをせずにおいても、もっとそういうところを回せるのじゃないかという工合に考えます。
それから需要者も、これからの需要者は一応会社とか
事業場ということが終わりまして、これからは一般勤労大衆が
電話を
利用するようになるんじゃないか。これは政府のいう所得倍増、
生活改善、向上ということが文字通りうまく実現をしたとしましたら、ますます大衆はこういうものを持ってくる。それが実際正しい所得倍増だろうと思いますけれ
ども、そういう点で今度は大衆が引く番になってきておる。この点
電話債を現在の六万円から十五万円に引き上げられましたけれ
ども、これは実際は逆で、
電話を引きにくくしている傾向がある。かえってこれを引き下げるか、あるいは加入予約積立金
制度のようなものを作って、たとえば労働者や農民がよく預金をしたり
利用している労働金庫であるとか農業協同組合、そういうところの組織を活用しまして、目的別に零細な預金をする、加入予約積立をしながらそういう零細な預金もとっていくということができれば、加入申込数というものも明白になりますし、
工事も
計画的に行なうことができる。また
資金の面でも、大衆がほんとうに必要と思いますから実際集めてくるのじゃないか。そういうようなことも考える必要があるのではないか。現在市中銀行を使って月賦をやっておられますが、この月賦の回数ではまだ短いし、大衆はとても手が伸びません。実際のところ大衆が
電話を引くときには、友人から金を借りたり、われわれの方では労働金庫から金を借りたりして
電話を引く。そして、すぐあくる日には証券業者に債券を売っ払ってしまう。そしてつじつまを合わせるということが大部分の一般大衆の
電話を引くときの状況であります。こういう
電話業者をもうけさせるというようなことは、やはり政府
事業としてはよくないことじゃないか。実際に供給が需要に間に合わないということで、こういう現象が起きておるわけでありますけれ
ども、会社や一般
事業者ならやみ価格でも、あとでもって企業採算の中でもとをとるからいいとしましても、一般大衆はちゃんとしたルートで引きたいと考える。それを一年も二年も長い間待っているというのが
現状でございます。だから民間会社にしたらいいじゃないかというような
意見もありますけれ
ども、私
どもはこれは反対でありまして、そういうようなことを実際
公社が採用していただけば十分公営でできるのではないかというふうに考えます。
特に公営
事業であるために、たとえば無医村で
電話のないところ、あるいは母子寮、保育所、診療所、そういう社会施設の金がないところには、採算を度外視した公衆
電話をつけられる、そういうようなことは
公社事業であるからできるわけで、こういうことをどんどんやっていただいて、近代文明の恩恵がそういうところに及ぶようにぜひやっていただきたい、そのように考えるわけです。
全体としまして需要の方が多いせいですか、
公社は
電話をつけてやるとか、つないでやるといったような、どうも与えてやるという考えが現在強いのじゃなかろうか。実際に
全国的に見ましても、どこでも一番りっぱな建物は電電
公社の建物である。
内容はいろいろ技術的な
理由があると思いますけれ
ども、大衆は何かりっぱな建物を見ますと、そこに特権があるのではないか、何かあるのではないかということをねたみがちなものです。そういうところをほんとうに大衆ともう少し密着していただく経常なりやっていただいて、そうして近代的な大衆とともにある
事業体としましてお手本を示していいただきたい、そのように要望いたしまして、以上をもちまして
意見の開陳を終わる次第であります。(
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