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森本委員 私は、
日本社会党を代表して、議題の案件に対し、
承認を与えることに賛成の意を表するものでございます。
この議案の
内容をなすものは、
日本放送協会の
昭和三十六
年度収支
予算、事業計画及び資金計画でありまするが、これらの収支
予算等は、
昭和三十三
年度を初
年度とする
NHK放送事業五カ年計画の一環として、その早期達成をはかることを目標として策定され、当
年度の事業運営については、
ラジオ放送における難聴地域の解消、混信の防遏、設備の改善、
テレビジョン放送における総合、教育両
放送網の早急整備、
ラジオ、
テレビを通じての
放送番組の刷新、充実、受信者対策の積極化、
国際放送の拡充、
研究部門の強化等を重点的に行なおうとしているものであります。事業の各般にわたるこれらの重点的諸施策は、全国民に基本的
放送を保障すべき
協会の使命に照らして適当なるものと思われ、わが党は、計画の大綱を是認すると同時に、その
成果に大いに期待をかけるものであります。しかしながら、この収支
予算等については、その
内容の一部、またはその取り扱いの上において、若干の疑義と危惧とを感ぜざるを得ないものがございます。
以下、これらの諸点を
指摘するとともに、わが党の見解を明らかにし、
関係方面の関心を喚起したいと存ずる次第であります。
まず、その第一は、本案の
国会提出遅延をめぐる問題でございます。当
年度収支
予算等の編成に関しては、かねてから
NHKと
政府、与党との間の折衝が難航しておると伝えられておりましたが、はたせるかな、本案の
国会提出ははなはだしく遅延し、三月九日に至ってようやく提案されるという異常な始末となったのであります。かかる提案の遅延は、
国会審議の上からきわ止めて不都合であるばかりでなく、その延引の事情について重大な疑惑を招くものでございます。
NHK当局は、この間の事情について、
政府当局との事務的な
意見調整のためであると説明しておりまするが、今回のごとき異常な遅延は、かかる理由をもってはとうてい首肯し得ないのでありまして、前述の
新聞報道等より見て、事務的以上の折衝が行なわれたと見られてもいたし方のないところであろうと思うのでございます。御
承知の通り、現行
放送法には、収支
予算編成に関する
協会の自主性を確保するための格段の定めがあり、
NHKの立場をささえる重要な柱の
一つとなっているのでありまするが、このたびの
予算案策定の
経過をめぐって伝えられた消息は、その内情のいかんを問わず、外部に報道された限りにおいては、
放送法の立法精神を無視ないしは軽視した、不当な権力的容喙が行なわれたと見られる節が多く、言論機関としての
NHKのあり方に対して暗影を投げかけたことは、いなみ得ない事実であろうと思われます。かかる事態が今後にわたって再三繰り返されていくときは、
NHK放送に対する国民の信頼と親近感とは、次第に失われていくおそれがあり、大いに戒心を要するところでございます。
NHK当局は、かかる点に思いをいたし、経営の主体性護持については格段の考慮を払われたいのであり、また
郵政省当局は、
放送法施行の管理者として、
NHKの主体性擁護について不断の配慮を続けられるよう、強く希望する次第であります。同時に、将来における重波
放送のあり方、特に中波
放送、
FM放送の分野、さらに
テレビにおける
UHF帯の使用等について、さらには微
電力の配置等、根本的な
放送政策の早期樹立を
政府に強く要望しておくものであります。
次に申し述べたいことは、議案の
内容に関する二、三の疑点でございます。
まず、その第一は、今回数たに開設せられようとする
受信料前納者に対する割引制度についてであります。この制度について、
NHKは、前納割引は
受信料徴収手段の問題として、受信規約の改正によってこれを実施しようとしておりますが、割引額は、一般の
受信料に対する例外を設定するものと見るほかはなく、
受信料は、毎
年度国会の
承認によって定められるものでありますから、収支
予算の総則中にこれを明示すべきが当然であります。従って、次
年度以降においては正当な
方法をとられるよう、この際特に要望いたしておきたいと思う次第であります。
次に申し上げたいのは、本案
審議の過程において、わが党より
指摘いたしましたように、
研究費、特に
技術関係研究費が少な過ぎるという点であります。申すまでもなく、
NHKの
研究機関は、わが国における
放送関係研究のトップ・レベルとしての期待をになうとともに、基幹
放送としての
NHKの地位よりして、民放を含めた
放送界全般に寄与すべき責任を有するのでありまして、その
研究の
成果は、わが国
放送の水準に直結するばかりでなく、
日本産業の花形である電子工業の発展にも影響を与えるものであります。しかるに、その
研究費の現状は、一民間事業社のそれに比してもなお劣るという状態であり、寒心にたえないところであります。三年後に開催の
東京オリンピックに際しましては、全世界
放送陣による
放送オリンピックの出現も予想されるおりから、
研究の飛躍的充実が望まれるものでありまして、この点、
NHKの適切な
措置が期待をされるとともに、
政府当局も
放送法第三十四条、第三十五条を空文にせず、活用すべきものであると
考えるのであります。
次に申し述べたいことは、この収支
予算において新例を開かれた
受信料収入の一部
建設費充当についてであります。
事業収入の
建設費繰り入れば、電電公社においてはかねてから相当大幅に行なわれてきたところでありますが、拡張
施設が直ちに加入者の利便増大につながる電気通信事業と異なり、
施設の拡充が必ずしも受信者の利益に直結をしていない
放送事業においては、現在の受信者に将来の
施設のための経費を負担させることは、若干の疑義があり、また、視点を変えれば、この
建設費充当は、
受信料収入に余剰があるとの見方もでき、むしろ、この額だけ受信者の負担を軽減すべきであるという
議論も成り立ち得ると見られるのであります。かかる諸点よりいたしまして、
受信料の構成要素としての
建設費充当の是非、その許容限度等につきましては、なお、詳細な検討の余地があると認められるところであります。
最後に、この収支
予算に付せられた
郵政大臣の
意見書では、
放送受信料に関し、
昭和三十七
年度実施を目標として、安定的な料金体系の確立につき、根本的検討を行なう必要がある旨の
意見が述べられており、事実、最近における
ラジオ受信契約者数の激減は、
NHKの
ラジオ事業の将来に大きな問題を投げかけておる問題であり、
協会としては、
テレビジョンの伸長と
ラジオ受信契約の減少との新情勢に対応した新しい
受信料制度の確立の必要に迫られておるものと
考えるのであります。わが党も、本件については、新年喪中に真剣に検討し、結論を得て当
委員会を通じて
発表したいと
考えておりますが、
政府及び
NHK当局が、この問題を慎重に検討し、おそくとも来
年度までには確固たる方策を樹立されんことを、特に要望しておきたいと
考えるわけであります。
さらに、本
年度予算において、従業員の待遇改善について若干の向上が認められるものの、現在の物価情勢、さらに、職員の労働力の密度とその強化等を
考え、
予算案実行上、できる限り従業員の待遇改善等には、
協会は全
努力を傾注すべきであると
考えるのであります。
最後に、
協会の新職員制度その他における従業員の身分上の
問題等については、
協会と労働組合側がしんぼう強く話し合いを進め、円満な労務行政が遂行され、
公共放送としての使命に遺憾なきを期せられんことを特に希望いたしまして、私の賛成討論を終わります。