○松前
委員 私は、
国際電信電話株式
会社、
太平洋ケーブルの設置問題こういう問題が現在非常に重要な国際間の問題として現われてきておると思うのでありまして、こういうのが断片的にやってくるというところに、非常な
通信政策としての危険性があるような感じがします。何となれば、
日本のアジアにおける立場ということを
考えると、
通信網が
日本の立場に対して占める役割というものは非常に大きいと思っている。それは何も帝国主義的な侵略目的のためのものでなくして、
日本の
一つの経済的なあるいはまた文化的な高度のレベルを、アジア全体に対して相当な影響を及ぼすというような使命が
日本にはあるのじゃないか。そういうことを
考えてみますると、
太平洋ケーブルがただ
国際電信電話会社と
アメリカのATTとの間の適当な取りきめでここで設置されるということが、ただ単に簡単な商業的なものであるかどうかということを非常に懸念しております。私の
考えでは、少しにおいがいたしまするのは、
アメリカのアジアに対する軍用
通信網の一端として、これがこのようなある
程度の
日本に対して有利な条件を与えながらも、最後には
アメリカによってコントロールされる可能性が非常に強い。こういう
アメリカのアジア
通信網のワン・ブランチとして、
一つの枝として、
日本というものがそれにぶら下がる、こういう
考え方が
アメリカのアジア
通信政策ではないかと私
どもは見ております。それに対して簡単に
国際電信電話会社が商業的な立場からのみ
考えてこれにぶら下がるということはどうだろうか、こういう点について実は非常に疑問を持っております。
そこで少なくともグアム島を中心にして、
アメリカが台湾は台湾でこれにぶら下げる、フィリピンはフィリピンでまたぶら下げる、あるいはまた東南アジア地域はそれぞれお互いの連絡なしに、すべてグアム島を中心にしてアジア
通信網を形成する場合においては、アジアの
通信網が
アメリカの完全な支配下に置かれる、こういう格好になるのでありまして、われわれはこれが平和の目的のためのみであるならば、何もそう疑いを持ちませんけれ
ども、何においてもこういうような
通信網というものは、非常に大きな政治的な軍事的な意味を持つものが多いのでありますから、こういう心配をいたしております。
そこで私は、いろいろな意味において、
日本に
通信政策がないというところに問題があると思うのでありまして、総合的な
通信政策がない。ただいま郵政大臣の、まだ日なお浅いからという
お話が、ほんとうに正直な御
答弁だと思います。一々大臣がおかわりになるたびに、こういう総合的な
通信政策のエキスパートの人ばかり就任されることはないのでありますから、どうしてもやはり学識経験その他のこれに関連した
意見を持っておる方々を集めて、
通信政策に関する
委員会のごときものを、たとえば鉄道審議会のごとき姿において常置して、それが常に
日本の
通信政策というものを一応立案し、政府にこれを建言するというような立場をとっていかなければ、私は将来非常に禍根を残すのではないかという心配を持つものであります。何もこの
ケーブルだけでありませんで、たとえば
放送の立場から
考えてみまするときには、アジアにおいて
日本が今やらなくてはならない問題は、私はやはり中波の大電力
放送であると思います。今のようなちっぽけなNHKの電力ではこれはだめだ、これを千キロなり何なり大きくいたしまして、そうしてやるということの意義は、台湾、朝鮮あるいは中国等におきまして
日本語というものは少なくともある
程度かつては普及しておった。それは
日本の帝国主義的な膨張の
一つの所産であるかもしれませんけれ
ども、
日本が残したもののわずかにたった
一つの文化性のあるものは
日本語であったと私は思うのです。その
日本語の
放送を、
日本の
放送そのままの形で大電力をもって送る、送るわけじゃない、
放送する。自然に向こうに電波は到達する。それを向こうでは聞く。とにかくせっかく残したものの芽ばえを消滅させないようにすることが第一、あるいはまた
日本語に対するいろいろな好感を持たせるというようなことも大事なことでありまして、そういうふうなところから
日本のアジアに対する
通信政策というものが
考えられなければならないのじゃないか、こういうふうに
考えます。これらを総合的に、いかなる順序において、あるいはまたいかなる姿において具現していくか、これが今後のあらゆる、
放送ばかりでなく、国際
通信ばかりでなく、あるいはまた海外の
通信に対する
日本の政策、マイクロの問題も直ちに出て参ります。こういうふうに
通信は国境だとかあるいはまたその他の民族というようなものは超越して、そうして宇宙までも一緒にしようというときでありますから、そこに着眼した
通信政策がここに樹立されなければならないときではないかと私は前から
考えておりますが、どうも各郵政大臣がおかわりになりますが、そういう点について一応の、けっこうな
お話ではあるという御
答弁はありますけれ
ども、
委員会等によるたくましい
日本の党派を越えた国策、こういうあまり党派的なものでない基本的なものが生まれなければならないのが
日本の現状ではないか、こういうふうに
考えますので、これに対しまして大臣はどういうお
考えをお持ちであるか、きょう御
答弁できなければ、いずれ御相談願いまして確実な御所見を伺いたいと思う次第であります。