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1961-02-08 第38回国会 衆議院 地方行政委員会法務委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月八日(水曜日)     午前十時五分開議  出席委員   地方行政委員会    委員長 濱田 幸雄君    理事 金子 岩三君 理事 田中 榮一君    理事 丹羽喬四郎君 理事 太田 一夫君    理事 川村 継義君 理事 阪上安太郎君       天野 公義君    伊藤  幟君       宇野 宗佑君    小澤 太郎君       仮谷 忠男君    久保田円次君       田川 誠一君    富田 健治君       永田 亮一君    前田 義雄君       安宅 常彦君    佐野 憲治君       二宮 武夫君    野口 忠夫君       松井  誠君    山口 鶴男君       和田 博雄君    門司  亮君   法務委員会    委員長 池田 清志君    理事 馬場 元治君 理事 山口六郎次君    理事 井伊 誠一君 理事 猪俣 浩三君       井村 重雄君    上村千一郎君       浦野 幸男君    小島 徹三君       長谷川 峻君    山村新治郎君       阿部 五郎君    坪野 米男君       畑   和君    中村 高一君       田中幾三郎君    志賀 義雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚子郎君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      三輪 良雄君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         公安調査庁長官 藤井一郎君         公安調査庁次長 關   之君         自治事務官         (選挙局長)  松村 清之君  委員外出席者         警 視 総 監 小倉  謙君         警  視  監         (警視庁公安部         長)      石岡  実君         専  門  員 円地與四松君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  治安に関する件      ――――◇―――――   〔池田法務委員長委員長席に着く〕
  2. 池田清志

    池田委員長 これより地方行政委員会法務委員会連合審査会を開会いたします。  両委員長の協議によりまして、本日は法務委員長たる私が本連合審査会委員長の職務を行なうこととなりましたから、よろしく御協力のほどをお願い申し上げます。  なおこの際、委員各位の御了承を願っておきたいと存じます。御承知通り、両委員会理事間の申し合わせによりまして、本連合審査会における質疑時間につきましては、各会派の持ち時間がきめられておりまするので、この点につきましても、議事が円滑に終了いたしまするようよろしく御協力のほどをお願い申し上げたいと存じます。  これより町会に引き続き治安に関する件について調査を進めます。質疑を継続いたします。田中幾三郎君。
  3. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 嶋中事件をめぐりまして、一昨日から衆参両院におきまして審議が続けられて参ったのであります。大体問題点といたしましては、総理大臣を含めて当局責任問題、資金背後関係、第三には破防法適用の問題、第四には右翼に対する対策という、大体四つの点にしぼられておるようであります。その中でも、ほとんど論議責任問題に集中されまして、いかにもこの嶋中事件の跡始末は責任問題を解決するような印象を与えておるやに存ずるのであります。しかし要は今日、この非常な勢力をもって台頭してきておるところの右翼勢力をいかにして押え、いかにしてこれに対処するかということが今後における最も大きな政治上の論点でありまするし、国民もまたこれに対して大きな関心を持っておると思うのでありまして、後ほどこの点について私は触れたいと思うのでありますが、しかし責任問題も一応明らかにしておかなければならぬと思うのであります。  警視総監は、最初何ら責任のないようなことを申しておりましたが、責任ないとは考えない、反省すべきところは反省すると、やや後退したような答弁をなされてきておるのであります。すでに警視総監責任警察庁長官責任公安委員長責任につきましては、それぞれの法規の上からも論議をされてきたのでありますけれども、今日の段階においては、その責任をとるのか、またいかなる形でとるのかということは必ずしも明らかにされていないのでありまして、この四点を通じて何ら結論に近づいておらないのはまことに遺憾であります。  そこで私は、総理大臣責任については後ほどお伺をいたしますが、今日この段階におきまして、警視総監警察庁長官公安委員長は、この責任に対していかにお考えになっておるか。きのうまではああであったけれども、あの審議を通じて、いろいろ各方面からの質疑を通じまして、さらに私はまたお考えになるところが多かったであろうと思うのであります。従いまして、今日この段階における三者の御所見をまずお伺いいたしたいと思います。
  4. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 今回の嶋中与件はまことに遺憾なことに存じておるわけでございます。警視庁におきましても、事前情勢につきまして、あとう限りの努力をしてきており、中央公論社はもちろん、嶋中邸につきましても、相当警備態勢をとったわけでございますが、その間においてああした不祥事件が突発いたしましたことにつきまして、警察として、全体的に見て反省すべきものは今後において十分反省して参りたいというふうに考え、その責任を感じておるものでございます。私はこの事件に限らず、警察責任ある地位にある者といたしまして、常に全国の警察の事象について、強くみずからを戒め、また警察全体についての機能の強化、責務の遂行ということについて万全を期するように努力をいたしておるわけでございます。  私自身の進退問題につきましては、昨日参議院の連合審査会においても申し上げましたけれども、常に出処進退について誤らないようにいたしたいというふうに考えております。それは単に事件についての責任を負う、負わぬという問題のみに限らず、全体の情勢というものを判断しつつ、退くべきときには退き、踏みとどまって職責遂行に邁進すべきものと考えるときには、あるいは一部の強い批判がありましても、そうした態度をとっていこうということを日ごろ考えておるものでございます。今回の事件につきましては、私といたしましては、ただいま責任をとって辞任するという考えは持っておりません。
  5. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 公安委員長、理由はくどくどしく、要りません。時間がないですから簡単に御答弁を願います。
  6. 安井謙

    安井国務大臣 ただいま責任問題についてのお問い合わせでございますが、御承知通りに、国家公安委員会といたしましては、事件の起きました翌日まず事情を聴取いたしまして、とりあえずやることは、今後こういう問題に対してどういう対策を講ずべきかということについてのいろいろな検討を行なったわけであります。なお、今後世論の動向あるいは国会の御議論等十分参酌をいたしまして、適当なときに適当な方法で全部のいろいろな問題の結論国家公安委員会としては出したいと存じておる次第でございます。
  7. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 それは答弁になっていません。私は本件に対する責任を率直にとるのか、いかなる形でとるのかと聞いておるのであります。しかし、そういう御答弁であれば、ここでイエスかノーか聞くわけにいきませんから、その点はこれでとどめておきますが、警視総監がいかにも万全の措置をとったような口吻でありましたけれども、私に非常な責任があると思うのは、深沢氏の作品が発表されてからひんぴんと右翼団体によって、もしくは個人によって、作者なりあるいは中央公論関係者抗議を受けたり、非常な迫害というか受けておるわけです。ですから、警察庁警視庁の方で、もしこれを未然に防ぐ責任を感じておるならば、私は調べるつもりならば、このうちの数十人の中には三人や五人の脅迫現行犯があったと思う。深沢氏があれほど脅迫を感じて行方をくらましている状態です。これは深沢氏に対するのみならず、一般言論出版に対する大きな圧迫ですよ。これによってほかの一般業者も非常な脅迫を感じていると思う。本件についてはすでにひんぴんとして行動が行なわれている。お調べによりましても、十一月二十八日に愛国党員岡田尚平以下八名、十一月三十日には精忠国民隊宮尾某、十二月二十三日には日本政治革新同盟員及び皇道塾飯島弘行以下八名、十二月十五日には大日本葉隠機関古賀二郎、一月二十八日には全日本愛国者団体会議代表佐郷屋某以下十一名、一月三十日には大日本愛国党及び防共挺身隊員ら二十五名が本件に関して抗議を申し込んでいるわけです。これらの右翼団体党員並びに代表者抗議を申し込んでいるのでありますから、これを突きとめ、そして逮捕する心がまえを持っておりましたならば、私は現行犯の三人や五人はこの事件においてつかまえられたと思う。それをつかまえるという取り締まり心がまえがないからこれを放任しておいたのじゃないか。もしそれ、これを二人なり三人なり逮捕して現行犯として拘置しておいたならば、これがほかの方へ連鎖反応を起こして、この運動というもの、抗議というものはある程度鎮圧できたのじゃないかと思うのです。そこを私は心配する。その点をなぜやらなかったか、あるいはまた、そういうつもりで逮捕にかかろうとしておったのかどうか。ただ漫然としてこれらの行動を終始傍観しておったのか、そうであるとするならば、これは非常な責任の――戸締まりよりもむしろあなたの方の取り締まりがなかったわけです。ですから、その点に対する御所見を伺いたいと思います。
  8. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 中央公論社社長に対しまして、ただいまお話しのように抗議がたびたび行なわれたということは事実であります。警視庁といたしましては、そのつど事前に情報をキャッチいたしまして、抗議現場警察官が立ち会いまして、もしそこで犯罪行為にわたるようなことがあれば、もちろん逮捕する態勢をとっておったのであります。しかしながら、抗議の間において相当激烈な言葉が出るということはあったでありましょうが、嶋中氏もこれに対して誠意を持って応待するということでございまして、抗議にいった者と嶋中氏との間において、その間に物別れになっているというようなことではなくて、直ちに回答されることは回答され、また回答を留保して何月何日に回答するという約束をして引き取るというような状況でございましたので、中央公論社におきまして嶋中氏に抗議に行った事実はございますが、その間において逮捕にまでいくという事態はなかったのでございます。  なお、嶋中氏、中央公論社あて、あるいは深沢氏に対して自宅あて脅迫状と思われるようなものが相当郵送されているわけでございますが、こういうものにつきましては、警視庁においてもしさいに検討いたしまして、罪状に触れるものについては措置をいたす考えでおったわけでございまして、決して漫然と抗議を見のがしておったという状況ではございません。
  9. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 その取り締まり態度がいけない。抗議を申し込んだときに警官が立ち会って、だれが脅迫をいたしますか。私が遺憾に思うのは、交通事故取り締まりなんか、交通巡査が立っておれば違反を起こさないのです。ところが隠れておって、違反の起こったときにうしろから出ていって取り締まるのです。つまり犯罪をこしらえさせて逮捕するというやり方をやっていますが、それとこれとは違う。それを逆にいって、もうこれは脅迫団体なんですから、右翼団体なんですから、立ち会っておるということは、あるいは生命、身体を防ぐところの防犯になるかもしれません。けれども、これはすでに犯罪を犯す団体ということがわかっておる、行動隊ですから。それを立ち会えば、犯罪のつかまるわけがありません。ですから私は、見張りとかそういうことでなしに、元凶と思われる者を逮捕するなら、隠れておって、行ったときに逮捕すればいい。そういうことをしないということは、何か私は右翼に対してあなたの方の取り締まりが、つまり逮捕してこれを抑圧するという強い態度でないという――防犯のことはわかるけれども、これはつかまえて現実にそのものを抑圧しなければだめなんです。トラを町に放っておくのと同じなんですから、悪いやつがいたらやはりこれを逮捕して監禁しておくよりしようがないじゃないですか。そういうことをしなかったということは、あなたの方の知恵の足りなさ――不注意ということが言えないならば、知恵が少し足りなかった、取り締まりとしては非常な不成績だと私は考える。その点はどうですか。
  10. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 嶋中氏がその抗議の申し込みに対して、これを拒絶するという態度であるならば、警察官事前に配備するということの必要はなく、無理に押し入ろうとする者については、それぞれの罪状によって逮捕するということもあり得る。しかしながら、抗議を受けて聞こうという態度であった場合には、その抗議団と会われるということは当然のことであります。これは犯罪にならない。そういう場合に、もしこの間のような人間がその中に入っておって、警察官現場にいないで事態が起こったとしたら、これは警察の重大な責任になる。そういう意味で、犯罪を起こさせてからつかまえて、被害が及ばない状況というものを想定することは非常に困難じゃないか。むしろ、あのときは正当に抗議を受けるという立場に嶋中氏がおるのでありますから、抗議を受けておる状況をつぶさに観察して、犯罪を起こさないような措置をとるということが、私は警察の至当な措置ではなかったかというふうに考えておるのであります。
  11. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 総理大臣に伺います。この事件を単なる殺人事件と解釈してはならない。淺沼氏の場合は、あれはこつ然として起こった事件でありますが、殺された委員長政治的にも非常に地位の高い人でありますから、事件は重大でありました。この事件は女中が殺されたのでありますけれども、事件は単なる殺人事件ではありません。ただいま申し上げましたように、右翼団体が何回かの抗議を申し込んで、右翼というものがすでに動いておるという背景と、その動きの中でこの事件が起こったのでありますから、これは単なる殺人事件ではありません。やはり私はテロにつながったところの事件と思うのであります。しかも総理大臣は、前の淺沼氏事件のときの連合審査会において、十月の二十四日に答弁をされて、「今回の事件の結果にかんがみまして、お話し通り、抜本的の緊急な措置を講じていきたいと考えております。」「総理としては、二度とこういうことのないように全力を尽くさなければならぬ。そうしてこれを防止することが私の務めであると考えた次第であります。」こう申されておるのであります。私は、こういうことを申される以上は、総理は非常な決意を持って、具体的にこの対策を講じなければならなかったと思う。この右翼の台頭は、一つ左翼に対する勢力対決であります。しかし、左翼団体行動については、破防法があって、団体活動としての規制をこの破防法によってやっておるのであります。しかし、右翼はそう多くの集団を持たなくても、テロという一つの武器のもとにこれは活動しておるのでありますから、左翼団体活動とは私は違うと思うのであります。愛国党でも、これは三十人かそこいらの党員しかありません。しかし、これは党員の人数によって右翼勢力が伸びるのでなくして、統率するところの代表者勢力というものが非常に影響を及ぼすのです。二・二六事件を見ましても、五・一五事件を見ましても、北一輝氏、西田税氏、大川周明氏など、必ずしも党員を持っていなかった。自分個人勢力があれだけの影響力を及ぼして、青年将校を動かして、日本右翼革命をやったのでありますから、私は、左翼団体を取り締まる考えをもっては、右翼勢力を取り締まることは、なかなかむずかしいのじゃないかと思うのであります。左翼団体なら、団体規制して解散させればよろしいが、右翼の方は、団体をかりに解散いたしましたとしても、その勢力は、空気のごとく、そこに見えなくても残っておるのです。ですから、この勢力を何とか現実に動かないような対策を講ずるということが、右翼に対する将来の対策であると私は思うのです。  また、資金源についても、いろいろ論じられておりますけれども、検察庁が調べて初めてある右翼団体経理がわかったわけなんです。もしあれをやらなければ、経理は何もわからなかったわけでしょう。政治資金規正法が悪いのじゃないかと私は思うのです。あれは窓口を通って届け出さえすれば、あとは何らの監査はないのです。いかにしてこれが集められたものであるか、いかにこれが使われたものであるかという監査がない。窓口があって監査がない。国家の財政でも、御承知のように会計検査院があって、監査する。会社にも監査役がおって、会社経理監査をする。ですから、やはり資金源についても、ただ届け出をさせる――うそであってもなくても届け出さえすればそれで通っていくのですから、もっとそういうものを監査するという、たとえば政治資金規正法の中に第三者の監査方法を設けて厳重にこれを監査していくということでもやるとか、何とか具体的に施策の上に表わしてこなければ、国民思想がよくなればこういうことがおさまるのだとかいうようなことでは、この右翼勢力というものを抑圧することはできないと思うのでありまして、この嶋中事件が単なる殺人でないということに対して、総理はいかに責任を感じられておるか、またその対策について、ただ言葉だけでなしに、具体的にどういうような制度なり法律を作ってやっていこうという――これは今ここであなたに詳しく聞こうとは思いませんけれども、この前もそう言って何らできていないのでありますから、単なるヒントでもよろしいから、もっと具体的なあなたのお考えを今の責任の問題と同時にお伺いいたしたいと存ずるのであります。
  12. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 今回の事件は、お話し通り単なる殺人事件とは考えておりません。非常に根の深い、言論の自由に対しまする反逆と私は考えておるのであります。従いまして、今後こういうことのないように万全の措置を講じなければなりません。浅沼事件以後におきましても、私はまず関係大臣に、善後策並びに今後に対しての方策をとるように指令いたしております。また、私自身におきましても、党の関係等におきまして、右翼とのつながりを断つように、そしてまた自分としても政治の姿を正すように努力して参っておるのであります。なお、浅沼事件後の具体的の問題につきましては国家公安委員長からお答えいたします。
  13. 安井謙

    安井国務大臣 ただいま総理からもお答えがありました通り淺沼事件以来、警察といたしましてはさらに警備力を強化いたしまして、また身辺のそれぞれの護衛というようなものにつきましても相当な手配をいたしております。またいろんな右翼関係団体監視、捜査もいたしておるわけでございます。いろんな手続を踏んで参ったにもかかわりませず、結果から見ましてこういった不詳な事件が起こりましたことはまことに申しわけないと思っております。さらに戒心しましてこういった点について万全を期したいと思っております。
  14. 池田清志

    池田委員長 田中君に申し上げます。貴党に対する割当の時間が経過をいたしておりますから、この一問で終結を願います。
  15. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 なお右翼勢力というものは非常に強い動きをしておるということは、この「防共新聞」、これに書いてありまする言葉は、「今後かかる事件を起さざるために、刑法に不敬罪等を復活せしめ、また新聞紙法および出版法を制定しなければならぬ。」また、これはいい悪いは別問題として、「池田内閣は、之等を断行して祖国日本を護る勇気あるや否や。吾人は、池田内閣は之を行なう使命を確認して是を断行せざれば存在の意義なしと断定するものである。政府国民国体破壊大逆罪に対して断々乎として、急速に処理しなければならぬ。もし政府が躊躇逡巡せば国民が起たねばならぬ。またまた七生報国の真愛国者出づべし。」非常に激しい行き方であります。  もう一つ全日本愛国者団体会議という新聞にも「少なくともこの問題は日本国民全体の問題として、日本国民が納得出来る方式で万人監視の中で解決しなくてはならぬ。もし池田内閣にして逡巡躊躇して急速なる処理を怠らんか、またまた七生報国愛国者は起たん。」と言っておる。七生報国というのは死んで相手を殺すということです。こういう危険な思想を持った団体がやっておるのでありまして、一昨日でありましたか、坪野君の質問にもありましたが、朝日新聞に今度はあなたをやるのだ、しかしお母さんが生きておるから、お母さんには悪いからといってちゅうちょするというような言葉がありました。きのうは人の身、きょうはわが身でないとだれが保証しますか。ですから私は、この問題の責任問題を追及するなら追及するとして、今後におけるこういう非常に危険な過激な思想を持っておる右翼勢力でありますから、あなたはそれを言葉だけでなしに、この問題に対していかにして対処するか、またこの問題を放置しておくのならば、左翼との激突が起こって血を見る惨事が各所に起こります。新島をごらんなさい。もはやすでに右翼も行っているでしょう。ですから左翼団体に対する規制破防法でやれるのでありますし、もし藤井長官のおっしゃるように条件が可能であるならば、あの破防法をそのまま自動的に適用もできるわけであります。しかし右翼勢力というものは、団体規制だけではできない一つの特質を考えられて、具体的にすみやかに立てられないというと、私は左翼との対決もあり、人命がはなはだしく侵される。あるいは一人一殺主義というようなことで、一人の党が一人ずつ殺すというようななことになってくれば、これがまた一つの大きな社会の混乱を及ぼすかもしれませんから、どうぞ一つ善処をされたい。  同心にわが党は、国会に対して暴力対策特別委員会を設置して下さいということを要望してありますが、あらゆる衆知をしぼって、これはわれわれは政府責任だけに――今後は野党としてもわれわれは責任を負わなければならないのでありますから、衆知をしぼってこの対策を立てるために何らかの方策を立てられるように御要望申し上げて、質問を終わります。
  16. 池田清志

  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 この連合審査委員会が連日やっておるのでありますが、新聞の面を見ましても、世論のささやく声を聞きましても、どうもさっぱり根本的な対策がない、徹底した論議が行なわれておらないという批判を受けております。私は、警備の問題もちろん重要でありまして、警察当局に相断のミスがあるから、相当責任のあることに対してはいなめません。これは警察当局が善処せられるべきものだと思います。しかし、淺沼テロ事件、引き続いて嶋中事件、事はただ警備の問題だけで終わる問題ではございません。深刻にして重大なるわが国の民主政治の破壊的な行動がわれわれ考えられる。そういう重大な認識がありませんと、どうも総理の、私は淺沼テロ事件以来質問をしておりまするが、今にしてさっぱりわからない。一体どういうふうにこの時局に対処しようとするのか。  そこでいろいろお聞きしたいこと多々ありますが、時間がありませんので、私は主として総理並びに公安調査庁長官にお尋ねしたいと思うのでありますが、浅沼テロ事件でも、今回の嶋中事件でも、これはテロも悪いがデモも悪いなんということで解決すべき問題じゃない。必ず政府答弁は、テロはけしからぬけれども、デモの行き過ぎも考慮してもらいたい。嶋中事件についても、はなはだ不都合ではあるけれども、しかし言論の自由をはき違えないようにしてもらいたい、必ずそういう条件をつける。これは私は非常にいけない言葉だと思う。この思想が根本だ。私は本日この産経新聞なんか見まして、国家公安委員の人たちの意見が載っておる。これがみな何と言っておる。一体、デモなんというものも公安条例とかその他の法律に違反している不法なものだ、だからテロだとかデモだって、みな不法な暴力であることは同じことだ。こういうことを言うて、こんなことで一体この凶悪なる犯罪は断絶できますか。これらの人たちの頭を私は疑わざるを得ない。一人の人間の生命を断つことを目的として、突如襲いかかってその生命を断つということは、世にこのくらい凶悪犯罪はないでありましょう。国家公安委員の小汀なんという人はけしからぬと思う。二月三日の朝日新聞の座談会に、一体近ごろのデモなんというものは法律を一つも守っておらぬ、非常に不法である、テロばかり不法の暴力といって憎むのは違う、テロ行為ばかり憎んでもいけない、こういう言論を吐いている。今、今日淺沼嶋中事件で天下粛然としているこの際に、国次公安の重責をになっておる者が何ということを言っているか。なるほどデモ行為の中には公安条例に違反し、道路交通取締法に違反している不法なデモの行き過ぎがあるでありましょう。これはこれとして批判すべきものでございましょう。かるがゆえにテロだけを憎むのは不当だということは、一体何ということだ。こういう公安委員があるからして、今日天下騒然たる際においても警察責任を明らかにすることができない。私はあなたに対してどう考えているか聞きたい。  なお、ついでに申しますが、幾ら右翼団体といえどもむちゃくちゃなテロをやっているわけじゃありません。決して右翼団体デモの行き過ぎがあるからテロをやるのじゃありません。これは彼らがこの民主団体デモ行為、あの驚くべき国会デモ行為は中国、ソ連の国際共産主義の指令に基づいて、扇動に基づいてやっておるんだという、こういうことの認識から立ち上がっておることは山口二矢を調べた係官がよくおわかりでありましょう。いかに彼らが無法な人間といえども、デモ行為が公安条例に違反したりあるいは道路交通取締法に違反した不法なものであるから淺沼を殺したなんということにはならぬでしょう。そうじゃない。社会党なり総評が中国からあるいは資金をもらったり、あるいは彼らの指令に基づいてこういう運動をやって日本を赤化するんだ、赤の手先だ、こういう議論をいたいけな少年にしみ込まれまして、それが凶悪な犯罪にかりたてる原因になっておる。  そこで私はあなたに聞きたい。一体不法なるデモの行き過ぎと一人一殺のこの凶悪なるテロ行為とはどちらもいけない、どちらも不法な暴力でどちらもいけないんだということで相殺論法をとることがはたしていいかどうか。さようなる論法をとっておるからして、テロに対するところの憎しみ、テロに対するところの徹底的な態度が内閣にないんだという印象を与えるのであります。そこでそういうことに対するあなたの認識を承わりたい。  なお、岸内閣のとき、この国会周辺を取り巻いた膨大なる市民の決起、あの安保反対デモ闘争が国際共産主義に踊らされているんだというところの内閣声明が出たはずだ。あなたはその閣僚の一員として参画せられ、のみならず、私の聞くところによれば、国際共産主義の扇動から起こっているんだということを内閣声明に入れることを強く主張したのは池田通産大臣だと聞いておる。はたしてあなたは今日でもそう思いますか。これがそもそも右翼団体を刺激し、かような天下騒然たる原因をなしているんだ。治安の乱れのもとはここにある。これをつかずして右翼団体テロを抑圧することはできませんよ。入れかわり立ちかわりやってくるでありましょう。ただ警察警備なんと言っておったって、これは末梢の問題だ。こういうふうな安保反対闘争が一体ソ連、中国から資金をもらったり、あるいはその指令によってやっているなんというようなこと、あるいは内閣諸公の国際共産主義の働きなんだという声明、あるいは自民党の諸君がかような無責任なる暴言をなす。これが右翼を刺激することは歴然たるものだ。  そこであなたに伺いたいことは、一体不法なるデモ行為と一人一殺のテロ行為とが同じように論ぜられるべきものか。一個の生命は全地球よりも重いという裁判所の判決があります。民主政治下においては、生命の尊重、人格の尊厳ということが民主主義の根源であることは申すまでもない。それを全面的に否定するテロ凶悪犯罪と、表現の自由として許されておるデモ行為の行き過ぎとを同価値に見て、あれも悪いがこれも悪い。要するにこれは相殺論法というものだ。しかもこのデモ行進の背後には赤いひもがついているというような無責任なる宣伝をやる。これが治安が治まらぬ根本原因だと考えます。これに対してあなたの考え方を承りたい。
  18. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は、いかなる意味におきましても暴力は絶対に排除すべきものである、こう言っておるのであります。これが根本でございます。集団暴力とテロの問題、この軽重につきましてはおのずからだれでもわかることです。テロは最も憎むべきものだと、私はこう言っておるのであります。日本の集団テロが国際共産党とのつながりがあるということは、前の内閣において言われたと思います。しかし私はこれについて、これを入れるべきだという主張をした記憶はございません。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたまだそういうことを言っておる。私が聞くことは、不法なる暴力がいけないことは当然です。しかし淺沼が殺され、嶋中のうちがやられておるこの際に、わざわざデモ行進の行き過ぎを持ち出してきて、そうしていかにもデモが悪いからテロが起こるのだというようなことをにおわせることは、ますますテロ行為をやろうとする人たちを激励することになりはしませんか。そうすると、テロをやることによってデモを静める効果があるということになる。私はそれを言うのです。これを同価値に論じてはいけない。(「軽重はおのずからわかっておると言っておるのではないか」と呼ぶ者あり)軽重の力がわかっておるならはっきり言いなさい。このテロ行為をわれわれが言うと、いや、言論の行き過ぎはいかぬの、デモの行き過ぎはいかぬのと必ず言う。しからば小汀公安委員テロばかり悩んではいけないという意見に対してあなたはどう考えますか。
  20. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 テロばかりを憎んでもいけませんし、集団暴力ばかりを憎んでもいけません。絶対に暴力は全部いけないというのが私の考えであります。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、結局テロ行為もデモ行為もあなたはいけないと言っても、そのいけない程度が違うわけでしょう。私は、あなたから徹底的に凶悪犯罪は天人ともに許すべからざるものであるということを声明してもらいたい。一個の生命は全地球よりも重いという判決がある。その趣旨に従って断固たるあなたの決意を承りたい。デモの悪いことは、それはまたデモの悪いことで別に論ずればよろしい。この際にそういうふうな水増し論をやってはいけない。相殺論法をやられてはいけないということをあなたに言っておるのです。それは言えませんか。言えないなら言えないでよろしい。
  22. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 何も相殺論法をやっておるのではございません。テロは最も憎むべきものだ、こう言っておるのです。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 しからばテロが最も憎むべきものであるならば、これはもうすでに昨年の十月二十四日以来私は具体的に例をあげてあなたに質問をしておる。この最も憎むべきテロをやる者に対して一体どういう対策をとったか、こんなものは警備なんというような問題ではないのです。国家公安委員長に説明ばかりさせておってはいけない。あなたは一体どうするのです。世論を聞いてごらんなさい。具体策は一つもないという新聞の論調になっておる。そうしてわれわれの怠慢のように書かれておる。はなはだ心外なんです。私どもは昨年からあなたに言っておる。数カ月たっておるではありませんか。この矯激なる最も憎むべきテロ及びテロをそそのかす団体に対して、内閣総理大臣としていかなる方法で根絶する方針であるか、具体的な確固たるあなたの意思を示してもらいたい。
  24. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私といたしましては、まず政治の姿を正して、国民が安心し、助け合うような政治をすることが一番だ、これが根本でございますから、就任以来それを機会あるごとに言っておるのであります。しこうして淺沼事件発生以来、具体的な問題につきましては私は関係各大臣に言っておるのであります。先ほど説明したようなこともございますが、三十六年度の予算におきましても、私は今までよりもこういう警備につきましては、十分とは申せませんが、相当の人員とかあるいは機能をふやすように努力していっておるのであります。これは単に内閣総理大臣あるいは政府だけの責任ではございません。私は国民全般がほんとうに考うべきことであろうと思うのであります。でせっかくのあれでありまするから、猪俣さんにおかれて徹底的にこれを防止する方法があるならば、お知恵を借るにやぶさかではございません。私も十分に検討いたします。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 私を総理大臣にしていただけば、私は直ちにやりますよ。してくれますか。(笑声)しかし私は、ある程度のあれは出しておるはずであります。第一に右翼テロ団体を根絶しなければならぬ。これは予科練時代の軍事基地と同じものである。そこで特殊の教育を施しては飛び立っておる。たまには目標にはずれることはありましょう。だから、この軍事基地をなくさなければテロ事件は終結しない。そこで軍事基地をなくする方法、第一にはこの資金源を断たなければならない。そこであなたにこの資金源の調査をお願いし、あなたも資金源を断つことが必要であるとおっしゃっておる。しかし、今日までどういう調査をなされて、どういうことになったか、さっぱりわけがわからぬ。おとといも法務省から報告になった。こんなものは政治資金規定法で届けてあるものをまる写しにしたようなものである。われわれは民間にあって権力がありませんから、なかなか調査ができない。右翼資金源について全部調査したいと思いますけれども、なかなかできない。しかし、政府警察も持っていれば公安調査庁を持っている。これはいくらでも調査ができたはずです。それを今日まで明確なる調査をしておらぬ。そこでそれには、あるいは法律の不備があるかもしれぬ。だから政治資金規正法を改正して、もし届け出におかしな点があるならば、ある程度の調査権を付するように改正しなければならぬじゃないかということも私は十月に言っているはずです。それに対してあなたは何の考慮も払っておらない。いかなる右翼団体資金源の調査を命じられたか、政治資金規正法について、一体いかなる改正をしようとあなたが考えたか、一つも私は承っておらぬのだ。なおまた破壊活動防止法の適用についても、私はすでに申し上げておる。これは法務省で研究しておるらしいのでありますが、なお右翼団体を根絶するには、やはり立法措置が必要だ。ドイツは第一次大戦後、いわゆる天皇政治が廃止せられまして、ワイマール憲法ができた。そうすると民主主義に対して反感を持つ右翼が次々にテロを行なって、いろいろの大臣その他反対党の領袖等が次々に殺される。そこで一九二二年に共和国擁護法という法律を作って、テロを扇動する者、及びテロリズムを実行する者、こういう者に対して徹底的な厳罰をし、その財産すべてを没収する、こういう強硬な立法をした。そのために十年間ドイツにおいてテロは閉塞したのであります。一体日本政府並びに警察は、この右翼団体なるものに対してあまりに――これは無理もないのだ、右翼の掲げておる目標は、大体今の自民党諸君やなんかの考えておることと一致しておるのです。憲法を改正する、国防を充実する、天皇は神聖だというようなことを書いている。荒木文部大臣が考えていられるようなよい日本人なんというような思想でやっておるから、皆さんとお互いに主義が一致していると思うかもしれませんが、彼らに対する憎しみが足りないのです。しかしこれは必ずや、今左翼ばかりがねらわれているが、またぞろこれはお互いの頭上にかかってくるかもしれません。私はここに峻厳なる態度をもって、第一次大戦後のドイツの一九二二年の共和国擁護法のような特別法を作るか、しからざれば少なくとも私は連座規定を設けろ、その連座規定でも立証責任を転換すればいい。たとえば愛国党の赤尾君が、あの山口その他小森に対して、あれはどうしても扇動したと思われる。ああいう場合には一応扇動として処罰して、もしそうでないならば、これは愛国党の方からそうでないという証拠を明らかにすることによって無罪を主張する。立証責任の転換くらいはこの際刑法なり特別法を作ってやらなければならぬじゃないか、こういう話も私はしているはずです。それに対して何らの措置が今日まで講じられておらない。一体こういうことに対して、あなたは考えたことがあるのかないのか、それを一つお聞かせ願いたい。
  26. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 資金源を断つという問題につきましては、私は党の総裁になりましてからかたくこれを守っております。それから政治資金規制法の問題は、公職選挙法の問題とともに検討を加えておるのであります。なお、破防法につきましても関係当局考えておりましょう。また立法措置につきましても、わが党におきまして、犯罪防止基本対策要綱というものをきめまして、どういう点を立法するかという点を今検討しております。これは新聞にも出て御存じの通りであります。いろいろなことをやっております。しかし、お話のように強力な立法措置が必要ならば、やはりあなた方の方でもお考え下さるし、われわれの方にもお知らせ下さって、ともにともにやっていくのがほんとうじゃございますまいか。私はそういう考えでおるのであります。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、念を押しておきますが、安保闘争なんていう反対運動は、別に国際共産主義に扇動せられたというような考えは持っておらぬというわけですか。
  28. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私はここで説明するだけの確証は今持っておりませんが、そういう気運がある、そういう考え方があるということは自分も知っておるのであります。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 考え方があることは、もう右翼団体はみなそう言っております。考え方のあることを聞いておるのではない。あなたの確信だ。岸内閣のときは証拠があるとまでおっしゃった。あなたもその閣僚の一人でしょう。証拠を見せてもらいましたか。見たはずだと思いますが、どうですか。
  30. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 閣議において証拠を見ておりません。
  31. 猪俣浩三

    猪俣委員 公安調査庁にお尋ねします。先年の十月二十四日に中国から秘密指令なるものがきておる、これがにせものであるということを公安調査庁でもお認めになった。だれが一体このにせものを作って、どうしたかということについては、手元に今材料がないから後日ということになっておる。そこでこのにせものの実体及びだれが一体こういうものを作ったか、どうも国際的な一つの連関があって、わが国の治安をかき乱しておる心配があります。何びとが一体こういうにせものを作って、あの安保闘争のさなかに中国の指令で動いておるがごときことを宣伝したのか。これはそもそもわが国の治安に重大なる影響があることだと思うのです。こういうことに対しての公安調査庁の調査の結果を発表して下さい。
  32. 關之

    ○關(之)政府委員 御報告申し上げます。安保闘争のさなかに私どもも中共側からの指令として二種類のものを入手いたしました。その二種類は日本左翼団体と中共との関係において共闘委員会が組織されておる。その共闘委員会の向こう側の日本に対するある種の要望、希望事項が記載してあったものが一通、他の一つは中国側の要人の署名がありまして、それがやはり若干指令的な内容を書いたものが載せてある。  これに対しまして私どもとしては、その情報の出方が一見して面をかしげざるを得なかったのであります。さなかであって、まことにタイムリーで考えられないことはないけれども、出方がいかにもおかしい。こういうのが私どもの第六感といいましょうか、商売上のセンスが働いたわけであります。なおそれらの情報がそうたくさんは出なかったようでありますが、一、二カ所へ出て、それらのところからもどうかというようなお問い合わせがあったような記憶があります。そこで調査いたしました結果、まだ本人がちょっと行方がわからなかったり、いろいろなことで、そこまで調べが、終局の段階まできておりませんけれども、現段階までにつかんだ事実によりますと、一通は、東亜ニュース社というのがございます。これは、そこの主幹は金達夫と申す中国系の人でありまして、日本人が一人、二人これに参加して、中国、一般に東亜関係の情報を集めておる。こういうようなところなのであります。そこからどうも出た疑いがありまして、いろいろこれは苦心をいたしまして調べた結果、ほぼその情報はやはりそこで作ったものであろう。そうして、なぜそんなものを作って流したかという問題でありますが、これはどうもわれわれの調査によりますと、やはりそこが金がほしかったものであろう、大したものでもないのですが、金がほしくてそういうものを作ったものであろう。こういうのが一つの方であります。  いま一つの方は、これは名前は江口という男でありますが、これがどこからか入手して参りまして、向こう要人名義のものの名前の載っているものをばらまいた。これもそうたくさんではありませんが、これも私どもから見ますと、その情報の配られ方、出し方がいかにも自然でなく、どうも疑わしいという考え方から調査いたしまして、ほぼこれもにせものであろう、こう思うのであります。  さて、その内容でありますが、内容の点は、これはなるほど指令らしく見えるのでありますが、当時、日本と北鮮、ないしは中共関係の諸団体で、各種の共同声明が出ておりまして、その共同声明の中をよく読んでみると、その中をあるふうに加工して、要点だけを書いたものというようなものが、その内容になっておるのでありまして、内容を読んでみましても、一見これがそれほど重要なものでないということは、よくわかることかと思うのであります。大体今日まで私どもが御報告申し上げる事実は、以上の通りであります。
  33. 猪俣浩三

    猪俣委員 はなはだずさんだと思うのです。こういう重大な問題を、社会党なり総評なりに致命的な打撃を与えるようなこういう文書が他国人によって流されておる。それに対して公安調査庁がまだ陰謀がわからないようなことで、この皆さんが配付した「安保闘争の概要」というのは、実に微に入り細をうがって驚嘆に値するような書物をお書きになっておる。こういう熱意があったら、こんな重大問題をもっとはっきりするべきじゃないですか。まるで見当違いのことばかりやっている。そうしてこれを見ても、国際共産主義なんというような説明ばかりやっている。それもいいでしょう。いいでしょうが、わが国の治安に重大な責任がある。これが右翼団体を刺激した。ですから、社会党を売国政党、売国奴というようなビラが全市に張りめぐらされる。それから浅沼がやられたのもそうであります。右翼批判力のない少年を扇動した根源は、ここにある。ただデモが行き過ぎたからテロをやったなんというものではありません。公安調査庁が考えているような関係ではないのです。ここに根源があって、彼らは明らかに言っているじゃありませんか。二、三日前に朝日新聞の主催で、わが党の本部の書記とこの愛国党の若い青年と一問一答をやった、そのときにも、こういうデモなんぞばかりやっておって、日本が赤になったのだろう。われわれがみな首を切られるから、正当防衛としてその赤運動をやるような中心人物をやるのだ、こういうことを言っている。ですから、彼らは、単にデモの行き過ぎなんというものではないのです。国際共産主義に蠢動しているということで、われわれを売国奴かのごとく彼らは見る。それがそもそも根源であります。それに対して、だから徹底的に、そうでないならないということを明らかにすることが、治安を確保する先決条件じゃありませんか。ただ警察だけつついたって始まらぬ。いかに警察警備を強化しても、社会党や総評がソ連や中国の下請業者となって、そうしていろいろな反対をやっているなんということになっておったら、次々に起こってきます。これは国体明徴運動となって、また日本を昔のような暗い日本に追い込んでしまう。私はそれをおそれる。それについて、公安調査庁がもっと正確なる発表をしなければならぬ。私は週刊新潮か何かに、このにせの文書を作ったのは羅堅白という人物であると言ったら、羅堅白自身から私のところに抗議がきて、私がやったのじゃないのだ、しかしにせものを書いた人物はよく知っている。いつでもお呼び出しを受ければ国会でも警察でもその書いた人間を私は申し上げる、こう言っている。あなた、羅堅白を調べましたか。すぐわかることなんだ。私ども民間の力でも相当関係者がわかっておる。それにかかわらず、公安調査庁は今のようなばくとした報告をしておる。これは将来長くわが国の治安に重大な関係のあることですから、徹底的にこのにせ文書を作った人物――一体、東亜ニュースというものの金何がしというものは、これはどこの人間ですか。中国人ですか、台湾人ですか。
  34. 關之

    ○關(之)政府委員 登録の上から見ますと、もちろん中国人ということになっておりましたが、その思想系統はいずれにあるかは、まだはっきりいたしません。どうも要するに、いずれ側とも見えるような立場をとっているように見えるのであります。
  35. 猪俣浩三

    猪俣委員 どこの人間かもはっきりわからぬのですか。
  36. 關之

    ○關(之)政府委員 今申し上げたように、中国人という登録になっております。
  37. 猪俣浩三

    猪俣委員 台湾人でないのか。
  38. 關之

    ○關(之)政府委員 だからいずれの側にも好意があるような態度をとっているように私には見える。
  39. 猪俣浩三

    猪俣委員 国籍は中国人ですか。これが、私の調査によれば、五月二日、五月三十日、六月十日、いずれも反美闘争連帯委員会――美という字を書くのは、中国ではアメリカのこととをいう。反美闘争連帯委員会から総評国際部あてにきた文書であります。アメリカ帝国主義反対闘争連帯委員会当面の任務、こういうような意味の文書がきている。これをみな公安調査庁、内閣へ売りつけて三百数十万円金をとったということを聞いている。それを、われに証拠ありと称して、岸総理大臣は天下に声明しておる。実際は、おろかもはなはだしいじゃありませんか。それがにせものときているのだから……。だから、こういうふうなテロ行為、右翼団体をばっこせしめ、こういう治安を乱すようになったのは、岸総理大臣、元の総理大臣責任重大だ。池田さんはあまり右翼団体と深入りしていない方だと思う。ですから、あなたに特に私はお願いするのだ。この際、とにかく徹底的にやってもらいたい。ことに、あなたにはやはりその際、私は十月二十四日要望した。自民党と右翼団体の関係です。これは天下公知の事実ですよ。私どもは同僚の名前を一々あげることはあれだから、遠慮して言わないのですが、相当わかっているのです。ただ一言申し上げたいことは、ここに「政治経済」という雑誌がある。これは東洋政治経済研究所というところから出た特集「右翼団体の全貌」とした論文が載っておる。これは戦後出た右翼の研究としては、非常に正確なもので、右翼に重大なショックを与えた論文だそうで、この論文の編集者及び筆者も非常に恐喝せられたと聞いておりますが、その右翼団体の中の一つに、軍人を中心とした日本郷友連盟というものがある。これは非常に保守反動の綱領を掲げておる連盟のようであります。そうしてこれは軍人恩給なんという場合には、圧力団体になるのでしょう。日本郷友連盟、この中に相当の方が加わっている。野村吉三郎、賀屋興宣、ただこの人たちはさておいて、植木庚子郎という名前が出ておる。これは法務大臣じゃないかと思うのですが、一体あなたは、こういう団体の相談役なり、顧問なりをおやりになったことがあるのかどうか。もちろん、この団体が何もテロをやる団体という意味じゃありませんけれども、相当右翼団体、私は政治家はやっぱりこういう特殊の右翼団体には関係すべきものじゃないと考えておる。自民党というりっぱな政党があってそれに所属しているのですから、そんなおかしな政治結社に名前を出すということは、よほど考慮しなければならぬと思うのですが、法務大臣である立場からしても、こういう雑誌に出ておる――これは「政治経済」の昨年の十月号であります。この中に自民党のお歴々の名前がみな出ておる。ところがそれはほかの人のはかまわぬとしても、法務大臣が出ているとするとそれはちょっとお尋ねしなければならぬ。これはあなたに関係なさったかどうか。
  40. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 日本郷友連盟は結成後いつの時期でありましたかは記憶いたしませんが、その趣旨を述べられまして、そうして相談役ですか何かに希望せられまして承諾したような記憶がございます。しかしその後その団体との交渉はあまり深くはございません。
  41. 猪俣浩三

    猪俣委員 これには相談役とか顧問になったように書いてありますが、そういう事実があるのですか、ないのですか。
  42. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 だから今申し上げましたように相談役だったかの依頼を受けて承諾したような記憶をしております。しかしはっきり覚えておらぬくらいの程度の問題でございます。
  43. 猪俣浩三

    猪俣委員 私はもう時間がありませんので、実はもう二時間ぐらいやりたいのですけれども、他日を期しますが、公安調査庁に特に私は要望しておきます。現在右翼団体は、また団体明徴運動みたいに発展せんとする実に民主政治の前途に憂慮すべき現象が起こってきておる。そうしてその口実は反共である。そうして総評及び社会党が赤の手先だという、その根源は岸内閣のときに証拠があるようなことを言うて、国際共産主義の蠢動のようなことを言うておる。その証拠というのがにせ文書だ。これは政府としても十分に調査しなければならぬ。今日まだあなたはあいまいの答弁をしておると思う。大体わかっているのですよ。なぜそれがもっと明白に発表できないのです。もっとその経緯を明白に徹底的に調査して、天下に発表していただきたい。そうすることが日本治安を保つ絶対の道なんです。そうしなければいつまでもこのテロ行為みたいなものがなくなりませんよ。だから治安を乱す根源が内閣にある、公安調査庁にあるなんということになったらどういうことになるか、私はそこに来ていると思うのだ。それを顧みて他を言うような論議ばかりやっておる。これでは根本的に立ち直りません。これに対して長官の決意を承りたい。長官どうするのだ。
  44. 藤井五一郎

    藤井(五)政府委員 あるいは猪俣委員の御質問の趣旨聞き違えているかもしれませんが、公安調査庁は決して先ほど問題になっている文書が真正なりということを公言しておりません。
  45. 猪俣浩三

    猪俣委員 それならなぜもっと真偽をよく確かめないのですか。あいまいなことを言っているのです。相当年月たっているじゃないか。
  46. 藤井五一郎

    藤井(五)政府委員 公安調査庁の権限は相当制約されております。その権限内においてやっております。決して放置しておるのじゃありません。
  47. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすれば公安調査庁が、安保闘争の概要を調べたような、これは一体どういう権限でやったか、同じような方法でやればいいじゃないか。これだけ詳細な調べ、微に入り細に入った驚くべき詳細を調べているじゃないか、何ゆえにこういう重大なにせ文書、しかも国際関係のあるにせ文書について、権限がないとはどういうことだ。何人がその権限があるのです。
  48. 藤井五一郎

    藤井(五)政府委員 それを調査すべく努力しております。
  49. 猪俣浩三

    猪俣委員 そう言えばいいわけだ。権限がないとは何事だ。取り消しなさい。権限がないとは何だ。公安調査庁なんて要らない。私は調査してくれ、もっと徹底的にやってくれという趣旨で追及している。   〔発言する者多し〕
  50. 池田清志

    池田(清)委員長 静粛に願います。
  51. 藤井五一郎

    藤井(五)政府委員 たとえば私がかって裁判官をやっておった経験があるから出たことかもしれませんけれども、もしこれが偽造文書で何か犯罪の容疑があれば、家宅捜索をするとかなんとかいう強制手段もできますけれども、私どもにはそういう権限がない、と申したわけです。その権限内において調査をいたすのであります。
  52. 猪俣浩三

    猪俣委員 公安調査庁が捜査権がないことくらい知っています。なぜそれならばあなたはそれぞれ捜査権があるところと連絡をとって徹底的にこれを明らかにしようとしないのですか。
  53. 關之

    ○關(之)政府委員 お答えいたします。  猪俣委員御指摘のこの文書が偽造であることを天下に公表しなかったかという問題でございます。これにつきましては、私どもは今申し上げたように、金達夫を中心とする東亜ニュース、いま一カ所においてそれが偽造されたものであろうということを、ここで私は責任を持って申し上げたのであるから、その通りに御理解をいただきたいと思います。こまかく何月何日どこそこと申し上げようと思ったのでありますが、猪俣委員の持ち時間の関係で私が遠慮いたしまして簡略にいたした次第でございますから、その点は御了承いただきたいと思います。
  54. 猪俣浩三

    猪俣委員 関さんの点は了承いたしましたが、後日詳しく法務委員会にもそのいきさつを提出していただきたいし、私また法務委員会でよくお聞きしたいと思いますから、徹底的な調査をして下さい。これが日本治安の大いなるガンであることをよく内閣においても御承知願いたい。
  55. 藤井五一郎

    藤井(五)政府委員 もし先ほど御答弁いたしました言葉が悪かったら、おわびいたします。
  56. 池田清志

    池田(清)委員長 志賀義雄君。  この際各委員に申し上げます。志賀君の質疑の参考のために資料を配付されておりますから、御参考までに申し上げます。
  57. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 昨日の参議院の連合審査会で柏村警察庁長官は、今後絶対このような事件がないと言う勇気は私にはない、こう答弁されておるようであります。また警視総監は、淺沼事件については警察警備に最善の措置を講じたと思う、嶋中事件については、今日の限られた警備力の範囲で、しかも事前に予測された限りでは最善の措置を講じた――これは朝日新聞によったものでありますが、大体そのように言われておるようでありますが、どうも私はそこはふに落ちないのであります。と申しますのは、国家公安委員会並びに東京都公安委員会も、警察庁長官警視総監は、この二月一日、犯行が行なわれた日、中央公論をめぐるこの事件に対して、どういう情報、どういう時期だと判断されていたかということが問題になるのであります。私どもからすれば、当時出ていた新聞の報道その他からしても、これはもう必ず起こる、危ない、こういうように思っておったのであります。一口で言えば、右翼暴力団の中央公論社嶋中氏に対する攻撃が頂点に達していた時期だと言えるわけであります。つまりこの委員会に対して配付された公安調査庁の資料によっても明らかなように、中央公論の問題の作品に対する直接攻撃は、昨年の十一月二十八日の大日本愛国党員岡田その他八名の抗議から始まって、十二月二日、十二月三日、十二月十五日、また同じころ大東塾、つまり不二歌道会、、こういうものを初め、各機関紙で取り上げて攻撃をやっているのであります。そうして昨年の十二月二十三日には警視庁右翼情報の七ページに、配付された資料によると出ておりますが、「『殺害を内容とした』脅迫文が二十余通郵送されている。これについては目下差出人について捜査中であるがこれらの動きについては相当警戒の要がある。」と書いてあります。  次に第二の時期になりますが、一月十四日、日本国民会議国民社会党が中心になってやった集会があります。一月二十一日には全日本愛国者団体会議、これは護国団が主であります。一月三十日には帝都日日新聞の主催で日比谷公会堂で千三百名を集めております。この時期には深沢氏が危険を感じて身を隠していたので、中央公論嶋中氏の方に攻撃が集中しました。特に三十日の大会代表者赤尾敏ら抗議団は明らかに脅迫に近く、二月七日の毎日新聞によっても嶋中氏は、私は刺されるかと思ったと言っております。また、日本教育テレビの放送を紹介した新聞記事によりますと、「政府警察放置した責任重大」という大きい見出しで、「殺せといったら殺せ」という見出しであります。「赤尾敏、隊員をそそのかす」とあります。「座談会のなかで赤尾総裁は「とにかく赤尾を信じろ、信じて『あいつらを殺せ』といったら殺す。それではじめて救われる」などと公然と殺人をそそのかしている。」こういうふうに書いてあります。こういうふうにして、一月三十日にはこのままにしておけば第二の山口二矢が現われないとは言えない。一月三十一日に国民大会の状況を報道した帝都日日新聞には淺沼美知雄、赤尾敏などはどういうことを言っているか。淺沼美知雄、これは大日本愛国党参与でありますが、「「中央公論」に掲載されたあの文章を読んで憤激しないものは日本人ではない。この大会後一隊は中央公論社に、一隊は深沢七郎の自宅へ行き、嶋中社長、深沢七郎なるものを素っ裸にし、服部時計店から逆さ吊りにし、中央公論の社屋にガソリンをかけて火を放つ。そういう夢を今夜私は見たいものである。」これは夢物語に引っかけたのであります。このあとが問題であります。「だが夢だけでは効果がない。そこで本日ここに決議を行ない訴えるとともに、逆賊不逞の“中央公論”撲滅のために総決起してもらいたい。」こう言っております。  なお赤尾敏がこう言っております。「今回の「中央公論」のやったこのふざけた行為をだまっていれば、くせになる。このままでおさまりはつかない。池田首相も警察もあてにならない。」――あなたはあてにされていないんです。「これは国民裁判で死刑にすべきである。」「日本の世なおしは、日本人独特のやり方がある。チベット、ハンガリアの悲劇をくりかえすな。私は命をかけてやり遂げる」今私が引用したことで、もうこれは完全な殺人教唆である。これは明白じゃありませんか。一月三十日のことですよ。小倉警視総監のところからも、当日はスパイをだいぶ出しておいでになったでしょう。みんなあなたのところに報告が行っているはずだ。しかもこういうふうにほとんど予定された今度の殺人行為が行なわれている。それでいてあなた方が発表されるものを見ると、万全を尽くした、こういうことを言っておられるわけであります。なお三十日午後五時に中央公論嶋中氏は、二月三日に、中央公論を解散せよという要求に対し、広告業の電通島崎常務などを間に立てて、赤尾、淺沼美知雄とは話し合うことになっていた。これは調査庁の報告にも出ておりますね。つまり危険きわまりない扇動が、もう中央公論社嶋中社長を初め、竹森編集局長、あるいは京谷編集次長に対して、暴行までが行なわれていることは明らかなことです。だから今申し上げた通り、一月三十日から二月三日までは、この殺人が行なわれる。いわばもう一番時期の熟しておったときです。その肝心のときに、あなた方の警備状態はどういうことでした。こういうような情報、機関紙などの、国家公安委員長、報告を受けたことがありますか。
  58. 安井謙

    安井国務大臣 報告を受けたことはございます。
  59. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうですか。それはおかしい。安井英二公安委員は、これは国家公安委員ですか、東京都ですか。
  60. 安井謙

    安井国務大臣 国家公安委員です。
  61. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私は何も聞かないということを新聞に言っていますがね。安井公安委員は聞かないことをあなたは聞かれたのですか。――入れ知恵をされていてはだめだ。あなたの返事を……。
  62. 安井謙

    安井国務大臣 入れ知恵じゃありません。私はかって申し上げましたように、あの事件が起きました翌日、国家公安委員会を開きまして、とにかく朝犯人がつかまったという前後の事情とともに、一切の打ち合わせも協議もいたしたのであります。そのときに安井英二国家公安委員も御出席になっております。ただ新聞に御発表になりました意味は、おそらく、私はただしておりませんが、さらにもっと慎重に前後のこまかい事情を十分聞いた上で自分はいろいろと今後の判断をしたい、こういう趣旨で、こまかい事情をもっと聞きたい、こういう御趣旨であろうと私は解釈いたしております。
  63. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今のあなたの御答弁では、犯人がつかまったという報告を受けたというのですね。私の申し上げるのは、二月一日この事件が起こる前に、今言ったように、昨年の十一月の終わりからずっとこういう情勢が熟してきておった。そのことについて報告を受けて、警察庁に対して適切な処置をとるように公安委員会が指導されたかどうか。そのことを伺っているのです。
  64. 安井謙

    安井国務大臣 二月一日の夜事件が起きたわけでございます。二月二日に十時から国家公安委員会を開きまして、いろいろ対策を協議し、それぞれの指示をいたしております。
  65. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あとからだからだめなんだ、あとからだから……。事前措置のことを――あなただって毎日新聞は読まれるでしょう。そうすれば公安委員長の重職にある人間が、これは大へんな情勢だ、警察庁長官にそのことを当然言われてしかるべきだ。安井委員が言われているのは、事前に何も聞かなかったということを言っておられるのだ。殺人事件が起きてからあと処理をしろと言ったって何になります。こういう問題が今後起こらないためにこの連合審査会も開かれているんじゃありませんか。あなたの今の答弁でいうと、また殺人が起こる、また連合審査会を開く、そこで事件が起こった、逮捕された翌日対策を講じましたという答弁をまたあなたはしなければならない。そんなことで、公安委員長が勤まりますか。そこのところをはっきり言って下さい。
  66. 安井謙

    安井国務大臣 御注意はよく承っておきますが、御承知通り公安委員会は、毎日開くような仕組みになっておりません。しかしこういう状態だから、事前にでも何度も開くようにしたらよかったじゃないか、こういう御注意に対しましては、私ども今後とも十分気をつけたいと思います。
  67. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 おそい、おそい。そこでお尋ねしますが、警察の機動隊ですね、これは東京にどのくらいありますか。
  68. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 全国では約四千くらいかと思いますが、(志賀(義)委員「東京は」と呼ぶ)東京は、現実には千八百程度だと思います。
  69. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 当時公安調査庁の書いた文書によりますと、安保反対運動とか、警職法反対運動とか、こういうものが今はないから、当分右翼の暴行事件は起こるまいというようなことが書いてある。事実、共産党や社会党、労働組合で、今何も去年のような大きい闘争がまだ起こっておりません。これからぜひやりたいと思いますけれども、あの時期には起こっていなかった。ところがあのときには警察機動隊が出て、とうとう死んだ人まで出ておる。右翼も暴行しておる。ところが、そういうことがないときに右翼暴力団がこういうことをやっているのだが、機動隊は一体そのとき何をしていたのです。今度のような事件があるとき、柏村長官は機動隊に対して何か区処しましたか。
  70. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 かわってお答えをいたしますが、機動隊はその任務といたしまして、集団として使います警備実施に使用するのであります。今回の右翼事件につきまして機動隊としてはこれに当てておりません。
  71. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 右翼がたくさんやっているのです。その中の一人が殺したのですけれども、これは個人だから出さないというが、機動隊はごろごろ飯を食って遊んでいたのでしょう。先ほど池田総理のおっしゃるには、予算も三十六年度には増加する、人員も増加する、こういうことを含んでおるわけであります。問題はそこにあるのじゃない。昨日の新聞紙が一昨日の衆議院の連合審査会答弁に対して、一斉に不満を述べているのは、当面のテロ対策をどうするかということを一つも出していないからです。これは連合審査会に対する不満も述べられておりますけれども、こちらは立法機関だから権力は持っていないのです。行政機関の方で権力を持っておられるのだから……。当然そのほかにたくさん遊びがあるわけです。一切の費用一切の人員をあの時期に注入してやること、今後ともこういう事件に対して、これが起こるのは、今私が申し上げたように、その前には歴然と兆候が現われてきている。そういうときに警察予算の全部をぶち込んでも、警察人員の全部をぶち込んでもやること、これが当面一番緊急なテロ対策でありますけれども、三輪局長の御答弁では、それは別に任務があります、こういうことだ。天災なんかがあれば、何をおいても国家機関全部がそれをやるでしょう。それと同じこと、こういう予測された、日本の恥辱になるような事件が起こるときになぜ出せないのです。あなたは、それは全然別のものだと言われるけれども、この前の十月二十四日の連合審査会で私が申し上げた通り左翼にばかりたくさん金を使って、右翼に対して対策を講じてないじゃないですか。特別国会の決算委員会の参議院の矢嶋委員質問に対して、柏村警察庁長官は何と答えたか。芸者の花代を使ったのは、あのときは女中が足りなかったから、女中がわりに呼んだんだというのです。そんなこと聞いているのじゃないのだ。私らは、捜査費の中から芸者の花代を出す、そういうことをやっていいのかと、言うのです。私の言うのは、そういう根性だから今度のようなことが起こるというのです。この前は一つだけあげておきましたが、ここにもう一つちゃんと芸者の花代の出ている勘定書が出ておる。ごらんなさい。捜査費証拠書類綴りの中で、捜査費の中から芸者の花代が出ているのですよ。そんなことをしていいのですか。芸者の名前もちゃんと書いてある。菊弥一千二百円也、千鳥一千五十円也と出ておる。(笑声)しかも、私が、言いたいのは、きょう委員長の許可を得て、私の質問について参考までに申し上げる必要上、政府委員の方にもお配りしましたけれども、島根県警の書類を見てごらんなさい。三十何件右翼にずっと警察から金が出ておる。捜査費から……。右翼警察はぐるじゃないですか。これに対して島根県警の処分は、あなたは何をされたか。当時の県警本部長減俸一カ月、当時の警備課長依願退職。しかも会計検査院が来たときには二重帳簿を作れといった人も、人権をじゅうりんしてやること、その巧妙なやり方を指示した、そこにおられる三輪警備局長も何も責任をとっておられないじゃないですか。下の方にばかり減俸処分をやる。淺沼君のときでもそうです。公安委員長、この体たらくです。芸者の花代を捜査費から出していいのですか、答弁をして下さい。
  72. 安井謙

    安井国務大臣 警察は御承知通りいろいろな方面で捜査の方法がございます。ありますが、今その個々の件名につきましては、私どもももう少しよく検討した上でお答え申し上げます。
  73. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 こういう、下の方にばかり責任を転嫁して、上の方は、われわれに責任はないのだ、人が足りないのだ、予算が足りない、万全の警備を尽くしたというけれども、こういうことをやっておって、しかも柏村警察庁長官の御答弁によると、左翼に対しては九千人の協力者、スパイがある、右翼に対しては千人、こういうことを言っておられる。今の状況からすれば、全部右翼の方に全力をあげるべきところを、こういう建前をくずさずに、しかも左翼関係の方は金が余るから、捜査費からありとあらゆる怪しげな金を使うことになっておる。予算が足りないとか、人が足りないとか、なんとかということは言わせませんよ。食っちゃ寝、食っちゃ寝で、ごろごろしているじゃないか。(笑声)池田総理に申し上げます。こういう体たらくなんですよ。予算が足りないから、人員が足りないからという問題じゃないのです。あなたは総理大臣で、憲法上は最高の責任警察関係には持っておられますが、少くともそういう指示はなさるべきものと思いますが、その点について御答弁いただきたいと思います。
  74. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 よく調査いたしまして、適当な機会に答弁申し上げます。
  75. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 なお、左翼に対してどういうことをやっておるかというと、血液型を調べるのですね。それから家屋見取図まで一軒々々調べる。あなた方なんかみなやられておる。それから潜望鏡ですね、潜水艦の使う、あの潜望鏡までも買っておる。こういうむだ金を使っておるから、今度のような一件が起こるのです。警察が腐敗しているから、こういうことが起こるのです。警察右翼とぐるになっておるから、こういうことが起こるのです。それをやめて、今当面一番必要な、国民が要求しておる右翼テロの全面的な絶滅、この方法を構ずる、国民はこれを望んでおる。これをやられる御意思がありますか、警察庁長官
  76. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 まず機動隊について、ああいうときに機動隊を全面的に出すべきではないかというけれども、私はこれは当を得たやり方だとは思っておりません。また警察活動は各般にわたっておりますので、それぞれ金の使い方というものもあると思います。ただいまお話し右翼に対して全面的に努力すべきだという御趣旨、これは私は一部了承いたします。ただ右翼だけについて全警察力をあげるということは与えておりませんが、右翼テロ等が横行するきざしが見えるというようなことからいたしましても、右翼についての視察は、現に昨年来要員を増強し、視察を厳にするように努めておるわけでございますが、今後ともこの方向への人員経費への増強をはかって、万全を期して参りたい、こう考えております。
  77. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 次に警察長官に伺いますが、右翼団体がアメリカへ資金の調達に、その代表者が出かけたという情報はつかんでおられますか。
  78. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私は承知いたしておりません。
  79. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 公安調査庁長官に伺います。公安調査庁長官、あなたの方はそういう情報をつかんでおられますか。
  80. 藤井五一郎

    藤井(五)政府委員 そういう情報は得ておりません。
  81. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうですか。この「安保闘争の概要」というのは、あなたの方から出された文書ですね。これの二百一ページに「また、国民社会党では党主戸松慶議が、宣伝活動と資金獲得の目的で、六月六日に渡米したが、一方、国内においても」云々、こういうふうになっております。あなたは御承知ないと」買うが、あなたのところで出された文書には、戸松慶議がちゃんと資金獲得の目的をもあわせてアメリカへ行ったと書いてあります。これはどういうことですか。
  82. 關之

    ○關(之)政府委員 お答えいたします。その戸松氏が六月に向こうに渡米したことはその通りでございます。そこには宣伝活動と資金独得の目的ということが記載してあることは確かでございます。そこで、当時としては(志賀(義)委員「あなたの答弁は長いから簡単にやって下さい、持ち時間は少ないんだから」と呼ぶ)社会党側のいろいろな情報の中に、そういう意図があるというふうに言っておりましたから、一応記載したものでございます。さて現実にいかなる効果を現わしたかという点については、まだ情報を入手してはおりません。
  83. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 この戸松慶議という人が帰って、帰国歓迎パーティが開かれております。その案内状があります。これは出席するかどうか返事を寄こせ、戸松慶議氏渡米後援会とあって、椿山荘でやるというので地図なんか入っておりますが、一月二十日に出してある。一月三十日にこれが開かれたらしいのですが、戸松慶議氏渡米後援会の筆頭に、元首相吉田茂という名前が出ております。次に大阪商工会議所会頭小田原大造という名前があります。第三に師友会会長、これは池田さん、あなたが衆議院でも言われた、自分が非常に尊敬していると言われた、先生という字までつけて言われた安岡正篤という名前があります。そのほか荒木貞夫、今村均、どちらも元陸軍大将という肩書きであります。それから右翼に金を出すことで有名な三菱電機会長高杉晋一という名前もあります。そのほか衆参両院議員の名前も出ております。これは控えます。こういうことが行なわれている。資金秘得の目的でアメリカに行った、こういう人の歓迎会に吉田さんの名前が出ている。池田さんの御師匠筋の安岡正篤という名前も出ている。そうなってきますと、アメリカ・吉田・右翼日本国民の常識になっている。その証拠がここにちゃんと出ているじゃありませんか、公安調査庁の出している本の中に。こういうことになっております。ただし 植木さんの名前は出ておりませんがね、この中には。こういうことがほとんど野放しで行なわれている、資金関係で。これはどうです。資金を獲得してきたかどうか、警察庁と公安調査庁と一つ知恵比べをして、速急にその結果を衆議院の地方行政委員会なり法務委員会なりに報告してもらえますか。一つ委員長から請求して下さい。
  84. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 昨日も同様の右翼資金についてのお話がございましたが、警察が今の資金の獲得がうまくいったかどうかということについて、そちらに御報告をすることにつきましては、私はできないと思います。と申しますのは、警察右翼団体資金を調査いたし、これを公表いたしますのは、ある団体犯罪を犯し、その犯罪に対しまして資金が供せられたというような場合に、その犯罪資金の供与そのものが一つ犯罪でございまするから、これを捜査し、検察庁に送り同時にそれを出すことはできるわけでございます。しかしながら、右翼と申しましても、ただいま御指摘の団体は、私ども御説明をいたします中でも、右翼思想を持っておりますが、これは必ずしも暴力的な団体だというふうに考えておるわけではございませんし、また具体的の犯罪に関係するわけでもございません。そういうところの資金が、どこから入ってどうなったということを警察の手でかりにわかりましても、これを御報告する筋ではございません。
  85. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 自治省選挙局長の方でこの点十分に御注意願います。  なお公安委員長一つ伺いたいことがある。「不二」という雑誌御存じですね。公安委員長知りませんか。
  86. 安井謙

    安井国務大臣 はっきり覚えておりません。
  87. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 安井謙参議院議員というので出ております、あなたの記事が。覚えていないとはっきり言われちゃ困りますね。中央公論の問題について「一、場当りをネラウにしても非常識極ると思ふ。」「二、当分執筆を遠慮してもらい度し。載せた中央公論の編輯者の感覚も疑ふ。」あなたが参議院議員であったこれはまだいい。しかしこれはあなたが公安委員長になってから書かれたものでしょう。どうです。
  88. 安井謙

    安井国務大臣 「不二」というその雑誌は、私今言われてよく記憶がありませんが、何かそういう感想を聞かれました際に、そういったことを漏らした覚えがあります。
  89. 池田清志

    池田委員長 志賀君に申し上げます。あなたに割当の時間が経過いたしましたから、この一問で終わって下さい。
  90. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 この本は、一月二十五日に出ているのですから、あなたは公安委員長になられている。記憶がありません、そんなことを語ったこともあるかもしれませんじゃ済みませんよ。公安委員長で現にこの問題が大問題になっているときでしょう。軽率千万じゃありませんか。そういう態度だから、今度のようなことでも、公安委員長、浮かび上がらされている。国会でおわびをする時分に、あなたが代表しておわびをしなければならぬ、いい格好じゃないじゃないですか。それというのも、そういう心がけだからそう いうことになるのです。  そこで最後に私の申し上げたいことが一つあります。今まで伺ったところでは、とにかく当面のテロ対策として警察がよけいな金を使わないで、使ってはならないところに使わないで、左翼の方にばかり金を使わないで、当面ここに集中しなさい、このことを最後に池田首相に伺いたいのでありますが、それを伺う前に申し上げておきます。  どこの国でも政府はこういうことをなかなかやらないのです。イタリア、フランスのような、民主主義の古くから進んだ国でもならない。そこで国民がやります。こういう暗殺行為があったり暴力行為があった場合には、フランスやイタリアでは国民がゼネストをやり、大集会をやり、右翼に対して徹底的にそれが跳梁することを許さないことを政府に迫ります。今この抗議運動がずっと起こってきております。あなた方は万全は尽くした、これ以上何ともいたし方がない、柏村警察庁長官に至っては、これから起こらないということを断言する勇気はないとまで言われておる。しかし国民は勇気を持っておりますから、今後は必ずこういう事件に対してストライキなり大集会なりで抗議をやります。そのときにあなた方が勇気がなくて万全を尽くしてもできないんだ、主権者たる国民は自衛のためにこれをやらなければなりません。これに対してあなた方が道路交通法がどうの、なんだといってこれを取り締まる資格はない。このことははっきり申し上げて、先ほどの池田首相にお尋ねをいたしました、当面テロ対策のために警察の全力をあげるように、憲法上の首相の地位からして指示し、公安委員会その他を、閣僚に安井さんも任命されたんだし、警察庁長官その他いろいろあなた自身に従わなければならぬ場面もあるのだから、その点についてあなたはどういうふうにお考えになりますか。お覚悟のほどを最後に伺いたい。
  91. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 テロ行為撲滅のためには、万全の措置をとるよう私としても措置いたします。なお国家公安委員会等に対しまして、指示はできませんけれども、関係大臣にはその意向を伝えたいと思います。  ただお願いしたいことは、暴に報いるに暴をもってするというようなことは、一つやめていただきたい、こう思います。(志賀義雄君「暴は向こうがやるのだから」と呼ぶ)暴に報いるに暴をもってしないようにお願いいたしたいと思います。
  92. 池田清志

    池田委員長 阪上安太郎君。  阪上君に申し上げます。あなたの持ち時間は二十一分でございますから、御如才なくお願いします。
  93. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私、質問に際して、最初に今委員長から持ち時間を明示されたわけでありますが、先ほどの猪俣氏の質問に対する答弁を伺っておりますると、答弁の技術のまずさから、時間が相当食い込まれている。だからそういうふうにおっしゃらずに、その点については委員長においてもう少し同情ある態度をとってもらいたい、こういうように思います。  ここ数日来にわたりまして、衆参両議院本会議を通じ、または連合審査会を通じまして、この事件の解明が行なわれておるのでありますけれども、どうも質疑の状態をながめておりますと、平行線をたどっておる。この問題の本質的な解明をすることができないような状態のままに、いよいよ連合審査会も終わりに近づいております。私はなぜこれがそういった平行線をたどっておるかということを考えなければならぬ、かように考えております。はっきり申し上げまして、この嶋中事件に対する認識というものが欠けておるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。嶋中事件は、申し上げるまでもなく、これは右翼テロ事件であります。ところが、答弁等を伺っておりますと、政府当局答弁の中には、全く右翼テロ事件としてのものの考え方というものがない。そして一般的な暴力事件殺人事件であるというような考え方に終始されている向きがございます。われわれはこれは単なる暴力事件として処理するのではなくして、あくまでも右翼テロ事件であるという観点に立ってこの問題を解明していかなければならぬ、こういうふうに思うわけであります。  いろいろな観点から今回のこの右翼テロ事件淺沼、河上丈太郎あるいは岸前総理、そういった者に、加えられましたところのテロ行為、あるいはまた質疑応答の中で相当出て参っております言論、出版、そういったものに対するところの圧力事件、こういったものを考えて参りますと、この事件は全くおそるべき日本のファシズムの台頭である、こういう観点に私は立っております。そこで、その背後にはやはり一つ思想があり、そして大事なことはさらに組織がある、こういうことであると思うのであります。そして、その思想の点については、先刻猪俣さんからきわめて重大なポイントを質問されております。そこで、私は特にこの際考えなければならぬのは、この組織の追及ということを忘れてはならないのではないか、こういうことでございます。団体間のつながりというようなもの、こういった一つの横の線の追及ということを忘れてはいけない。この審議を通じまして出て参りました背後関係というものにつきましては、どちらかというと、縦の線が追及されておる、こういうことであります。しかし、われわれはこの場合横の線というものを十二分に追及しないで、こういった右翼テロというものは根絶することができないのではないか。そこで、理論的な右翼、こういうような考え方、あるいは行動的な右翼というような区別の仕方、こういったものをこの際はっきり区別して、そしてテロの手段によって行動をなさんとするところの、そういった組織の根絶というものに対しては、徹底的なメスを加えなければいかぬ、こういうことをわれわれ考えております。  そこで、まず右翼テロ背後関係なのでございますけれども、右翼テロを撲滅する場合において、単に警備体制のみを追及して、それだけで十分である、こういうふうに考えておったのでは、この問題を本質的に根絶こることはできないのではないか、警察責任追及ということにつきましては、この際これは徹底的に行なわれなければならぬと思いますけれども、同時にそれだけではこの問題は焦点がぼけてしまう、問題の本質がすりかえられてしまう、こういう危険があるわけであります。従って、われわれはこの際徹底して右翼テロの背後というものを洗わなければならないのであります。  そこで、私はこの右翼の背後の中で、特にこの際組織について一つ伺っていきたいと思いますが、この公安調査庁から出ております右翼団体の一覧表、これは並列的にずっと並んでおるわけです。こんなものでは今申し上げました右翼組織というものに対する徹底的な追及は私はできないと思う。そこで一つこの際公安調査庁の方で上部団体と下部団体行動右翼、いわゆる街頭右翼といわれておりますものと、それから純正な思想右翼、こういうふうに区別して、一つこの場合上部と下部の関係をこの表によって明らかにしてもらいたい、こういうことであります。
  94. 關之

    ○關(之)政府委員 お手元に拠出いたしました右翼団体一覧表に基づいて申し上げてみたいと思うのであります。一般的に、世の中におきましては、行動右翼あるいは組織右翼、さらに最近の言葉としては街頭右翼というような言葉が使われているのであります。それで、私どもの破防法の観点から見ますと、そういうような分類はむしろ無用でありまして、破防法の観点から破壊活動をなす可能性があるかないかという面から問題を見ているわけであります。ただいまのお言葉もいろいろな本に出ている言葉でありまして、おそらく御疑問の点と思うのでありますが、私が今ここでこれらを御説明申し上げることは大へん講釈的になりまして恐縮でありますから、一般の市販の本その他に譲りまして、私どもの見ているところについて申し上げてみたいと存じます。  右翼という概念の中には、広狭さまざまなものがあるわけでありまして、どこが右翼であるかという問題につきましては、私どもは、現在の段階におきましては、きわめて強い反共的な立場に立って、しかも過激な言説、行動に出る団体というものが右翼である、こういうふうに思うのであります。たとえて申しますと、反共的立場ということが全部右翼の特質だということ、それだけで問題を考えますと、際限もなく問題は広がるわけであります。そういうことは今日の思想的立場から見て正しくない、私たちはその観点から破防法の実施運用ということを考えておるわけであります。さてそれから見まして、資料の一ページに掲げてある団体が、私どもが破防法の観点から見て一応調査しなければならない、こういうふうに考えておる団体であります。この中では一、二三、最後のところ、これは普通の観念でいえば行動右翼といわれるものかもしれません。そういう世にいわゆる行動右翼と申されるものは、やはり行動において過激であるということがいわれるわけであります。  さて、そこの組織の面でありますが、護国団につきましては支部数が二十あるわけであります。これは……。
  95. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そんなこまかいことはいいですよ。もっと、私が今質問したように、横の線をはっきり出して、どの団体がそういった横の線の最上級の団体であるかというようなことがわかっておれば、それを知らしてくれというのです。
  96. 關之

    ○關(之)政府委員 そこで、横の線のつながりという問題でありますが、現在主要なる横の線のつながりといたしましては、愛国団体有志懇談会というのが東京都にあるわけであります。これは国民同志会初め約十団体が横の連結をなしているわけであります。その次のものといたしましては、東京都に日本国民会議というものがあるわけであります。これは国民社会党を中心に四十団体がこれに参加して、一応共闘的なあるいは協議会的な組織をそこに作っているわけであります。その次には全日本愛国者団体というのがありまして、これは護国団、日本国粋会などを中心として、約三十団体がこれに参加して運動をしておるのであります。その次は、これは今はほとんどなくなりましたが、安保改定促進協議会というものがあるのであります。護国団、大日本愛国党日本国粋会等がこれに参加いたしておるわけであります。このようなものが今日見られるおもなものであります。なおこのほかに愛国青年会議というものが東京都にありまして、これは護国団、義人党など約十団体所属の、主として青年層がこれに参加しておるわけであります。これが東京中央の状況でありまして、その他地方に至りますと、関西地方あるいは九州あるいは東北などに若干地方的な横のつながりの団体があるわけであります。このような団体を結成いたしまして、それぞれ右翼の横の連絡をもって運動を推進しておる、こういう状況にあるわけであります。
  97. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これはあまり重要視されていないところの雑誌から承知したのでありますけれども、そういった右翼の非常に広範な横のつながりがあるということを承知いたしているわけなんでありますが、それらの団体が純正右翼と、それから街頭ないし行動右翼というような格好に分かれておるけれども、つながっている大もとは一本である、こういうふうに伺っておりますが、そういうことは公安調査庁の方では承知されておりますか。イエスですか、ノーですか、はっきり答えて下さい。
  98. 關之

    ○關(之)政府委員 私は、右翼全体が一本であるかということは、たとえば共産主義に反対するというような立場であるならば、これはおそらく一つ思想であるかと思いますが、右翼の各団体はやはりそれぞれの独立自主的なものがある。決して一本になれない。その証拠には、この団体が各地で会議を開いてやっても、なかなかこうだというように統一できないというのが現状でありまして、全くそれが一本になっているというような点については、そのようには考えていないのであります。
  99. 阪上安太郎

    ○阪上委員 もう少しこういった問題を追及していかなければ、この問題は解明できないのですが、時間に追られておりますので端的に一つ伺ってみますが、松葉会というのは、右翼団体の中で、今言った横のつながりの中におけるどういった位置を占めておりますか。この点について公安調査庁から一つ伺いたい。
  100. 關之

    ○關(之)政府委員 御説明いたします。松葉会と申しますのは、この私の資料のうしろの方に書いてある団体でございますが、この母体になりますのは、旧関根組を結成の母体としたということになっておるのであります。その綱領は、「天皇を国家の象徴と仰ぎ奉り、正義人道に立脚した真の民主主義の確立を計る。現代青年層における共産主義思想の侵略を阻止し、道義に徹した建設的な愛国精神の積極的育成を目的とする。危険思想を帯びた教員組合、その他の団体の破壊行為に対して、あくまで抗争する。」等々が載っておるわけでありまして、会長は藤田卯一郎氏、総務会長は久野益義氏、支部が東京とその周辺に四つありまして、構成人員三千、こう見ているわけであります。
  101. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私が聞きたいのは、松葉会がこういった右翼団体の中でどういった枢要な地位を占めているかということを具体的に聞きたかったのです。あなたは今何かごちゃごちゃ読んでおられるが、そこで端的に聞きますが、私どもの入手している情報によりますと、松葉会は相当な地場を占めておって、そうして、一説によりますると、資金源におきましては、大体において街頭右翼の諸団体に対しては松葉会を通じてその金が出ている、こういうことをわれわれは聞いているわけなんであります。今追及したいのは、その点ではなくて、こういった松葉会と政界、財界とのつながりの問題なんです。そこで具体的に一つ伺っておきたいと思うのでありますが、松葉会の役員幹部を兼ねている者が国会議員の秘書をやっておる、こういうことなんでありまして、その数は概略十五、六名に達しておるということを私は聞いておるのであります。そういったことについて、これはどなたにお伺いしていいかわかりませんが、公安調査庁ではわかっておりませんか。
  102. 關之

    ○關(之)政府委員 まだそこまでわかっておりません。
  103. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは警察庁の方ではわかっておりませんか。
  104. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 私ども知る限りでは、そういうものはないと考えております。
  105. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これは政党との関係もありましょうから非常に失礼ですけれども、総理は御存じありませんか。
  106. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 存じません。
  107. 阪上安太郎

    ○阪上委員 衆議院の重政さんでありますか、この人の秘書は松葉会の幹部であるというふうに聞いておりますが、この点について、これはそういうことにはなっておりませんでしょうか。総理、御存じありませんか。
  108. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 存じません。
  109. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ありませんと言われれば、これは仕方のない問題であります。いずれこういった問題につきましては、われわれの方でさらに調査をいたしておりますので、おいおい明らかになっていくことと思います。  この点はこのくらいにしておきまして、過日資金源の一部発表が法務省からなされたわけでございますけれども、護国団、愛国党等の中の資金源の中で、債権取り立て依頼によって、その間には不法行為も行なわれておるということをつけ加えられておったのであります。それによって収入がある程度あったというような報告があったように思うのであります。こういった点に対しまして、身元保証人というようなことで、政界の相当枢要な地位の人がそういう立場をとっておるということを伺っておるのでありますが、そういう事実は警察庁としてわかっておりますか。
  110. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私の方ではわかっておりません。
  111. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは次に、私は一つこの責任問題についてお伺いしたいのであります。今回、それから前回の淺沼委員長事件のときにおける本会議総理答弁等によって、あるいはこの間うちからの連合審査のときの答弁によりますと、総理は明らかに、法的責任はない、しかしながら政治責任はある、こういうように御答弁なさっております。そこで、総理がお考えになっておる政治責任はどういったものであるか、あるいはまた具体的に政治責任をとるとお考えになった場合に、どういうふうにおとりになるか、この点について伺いたい。
  112. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 警察行政も国の行政でございますから、行政全般を統括しておりまする私としましては、行政上のいわゆる政治責任はあるので、その責任を私が果たすためには、今後こういう事態の起こらないように渾身の努力をすることが私の責任であると考えております。
  113. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで、前回の淺沼暗殺事件のときには、やはり同じように総理は、法的責任はないが政治責任は負わなければならない、こういうことを言われて、その結果出てきたのが例の山崎大臣の辞任であった、われわれはこういうように考えております。その場合、最高責任であるとかないとかいう論議はございましたけれども、そういうようにわれわれは承知をいたしておるのであります。あの場合そういった政治責任というものは、山崎さんがやめることによって、一応形式上はとられたというようにわれわれ考えておるわけでありますが、今回の場合、同じように治安責任を持っておられるところの国家公安委員長であられる安井大臣は、どうしてこの場合同じように政治責任をおとりにならないのか。淺沼事件については野党第一党の党首の暗殺事件である、今回の場合は一民間人に対するところの暗殺事件である、こういうような観点からそういう責任をとられないのか。考え方によれば、この問題は淺沼事件以上に幅の広い大きな問題であろうとわれわれ考えておるのでありますけれども、なぜ責任をおとりにならないのか、この点を一つ伺いたい。
  114. 安井謙

    安井国務大臣 私は今回の事件淺沼委員長事件より軽いとか重いとか、そういうような比重を別に考えておるわけではございません。今回の事件も非常に重要な事件であると考えております。それで前任者であられる山崎さんの御心境、そのときの状況につきましては、私からとやかく言う筋のものではなかろうと思いますが、私といたしましては、この段階におきまして、こういう問題が再び三たび引き続いて起こらないよう、今後も万全の対策をそれぞれ樹立し、善後措置を十分にいたすことが私の職責であると現在考えておる次第でございます。
  115. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは一つこの問題について総理にお伺いいたしますが、総理は、山崎さんがやめられた理由というものは、やはり最高の責任をとってやめられた、こういうふうにお考えになっておると思うのでありますが、この点はどうでありますか。
  116. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は、山崎さんは自発的に、大所高所から見て政治的に自分はこうした方がいいという配慮から出ておるものと考えておるのであります。私がおやめなさいとか、どうこう言ったわけではなく、自発的に自分政治的配慮からやめたい、こう言ってこられたのであります。
  117. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは、安井大臣に伺いますが、あなたの政治的配慮はどういうことですか。
  118. 安井謙

    安井国務大臣 私は、この段階におきまして、今後十分な措置をとることが公安委員長としての職責である、こういうふうに考えております。
  119. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そういう安井さんの御答弁については、私はどうも納得できないのであります。これは明らかに私は責任回避だと考えておるのであります。あなたがそういう考え方に透徹しておられるということであれば、もう何をか言わんやであります。それでは私はあなたにお伺いしたいのですが、あなたの新聞等に発表されておるところのいろいろな責任問題についての見解なのでありますが、その中には、やはり警察中立の観点に立って、そうしてこれはあくまで中立が守られていかなければならないのだ、従って、政府その他から圧力を加えられてやめるべき性質のものではないという意味のことをあなたは見解として持っておられる。このことにつきまして、もしそういうことでありますならば、私はそれは正しい見解だと考えております。また警察当局におきましても、警察庁長官並びに小倉警視総監等の答弁の内容を見ましても、そういうことは強く言ってはおられませんけれども、しかしながら、外部からの圧力によってわれわれはやめるべきものではないというような考え方を持っておられるように私は思うのであります。その点について私は、こういった事件を解明するために、ただ単に警察の首脳を簡単に更迭するというようなことによってこの事件というものがおさまるものでもなければ、その責任が果たせるものでもないということは私はよくわかります。またそういうようなことによって、こういう右翼テロの背後というものを徹底して追及することができないような状態に追い込んでしまって、そうして一切が終わりだということになれば、いつまでたっても右翼テロの徹底的な根絶ということは期せられない、こういうふうに思うのであります。しかしながら、世論に対しては一体どういうふうにお考えになりますか。政府の圧力、もしそういうものがあったら大へんな問題でありますが、池田総理は、この点についてもはっきりと警察の中立を守るのだということを言っておられる。けれども警察当局において中立を守られるということだけで責任がないということは言えないし、国家公安委員長においても責任がないということは私は言えないと思います。この場合に、そういった圧力によってはやめないけれども、世論の動向によってはこれは屈しなければならないと私は思うのですが、これはどういうふうにお考えになっておりますか、それぞれ伺ってみたいと思います。
  120. 安井謙

    安井国務大臣 もう一回繰り返すようになりますが、御承知通り国家公安委員長というものは、これは内閣総理大臣国務大臣として任命されたものであります。それは完全に池田内閣池田総理の御意思のままになることで、私の心境はただいま申し上げた通りであります。  なお、国家公安委員会というものの性格は、これも御承知でございましょうが、警察全般の機能を調整し統制をするのでございます。個々の事件を処理するのは地方の公安委員会及び地方の幹部にまかせられておる仕事であります。しかし、国家公安委員会といたしましては、こういった全体的な問題をよく総合的に委員会で検討いたしまして、そうして人事案件についてはそれぞれとるべき処置は国家公安委員会ですべき任務がございます。  そこで、私といたしましては、今後の問題に対しまして、いろいろな御意見がございます。一々こういう問題でもし幹部が責任をとるならば、幾つ首があっても足りないじゃないかという御議論もあります。あるいはまた、先ほど猪俣議員も仰せのように、これは一警察だけの問題ではない、今日の社会全体の問題で、いろいろな要件が重なっておるのであって、これを警察だけで幾らじたばたしたってどうにもならぬという御見解もございます。また、このいろいろな過程を通じまして、国会においてもまたいろいろな御議論も伺っております。また、世論等もいろいろ拝聴いたしております。そういうものを総合いたしまして、今後具体的には警察全体としてはどういうふうにすべきものであるか、あるいは個々の身分関係においてはどういうふうにすべきものであるか、こういう点について慎重な検討をいたした上で結論は出したいと思っております。  なお、この警察制度の中立性につきましても、実は参議院でも昨日いろいろ機能上の御疑問がございました。今日までこういう制度ではたしていいかどうか、こういうような御疑問までありました。そういう点につきましても、むろん考えていかなければならぬと思いますが、現在は与えられました制度の上に立って、そうして中立性をはっきり守る機構の上に立って処理をしたいと思っております。  なお、党あるいは政府側から、そういう警察の機構の作用という問題につきまして、何ら今日まで制約を受けておることはございません。
  121. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほど田中委員の御質問についてお答えをいたしたわけでございますが、私は警察の中立性と責任性の問題は全く別のものと考えております。警察はあくまで中立性を確保しなければならないが、しかし、警察においてそのために責任があいまいになるというようなことであってはならないと思います。そういう意味におきまして、私ども幹部の進退については、もちろん法律的に国家公安委員会がこれを握っておられるわけでございますが、国家公安委員会の活動を待つまでもなく、私といたしましては、私の出処進退に誤りなきを期していきたいということは考えておるわけでございます。それは政治の状態、国会の御議論あるいは世論の動向、今後の警察のあり方、あらゆる角度から考えて、とどまるべきか退くべきかということは、これは今度の問題に限らず、私自体も常に真剣に考えておるところでございまして、先ほど申し上げましたように、今回の事件については、私は踏みとどまって今後の警察活動の万全を期すべく努力するようにしむけるのが、私の職責であるというふうにただいまは考えておる次第でございます。
  122. 池田清志

    池田委員長 阪上君に申し上げます。あなたの御要望によりまして、委員長は持ち時間十分経過まで寛容いたしましたから、この一問で終了していただきます。
  123. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ただいまの警察庁長官の御答弁でありますが、あなたも非常に苦しいだろうと私は思うのでありますけれども、現存の心境では、なお踏みとどまって警備に万全を期していきたい、警察行政の完璧を期したい、こういうお考えのようであります。ただその中で、昨日等も新聞に報ぜられておるところによりますと、参議院の連合審査等で、やはり世論の動向というものを考えて、出処進退を明らかにしたいという意味のことを言っておられる。国会のこういった空気、国会審議、これは世論じゃないのですか。
  124. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 世論のうちの重要なるものと私は考えております。
  125. 阪上安太郎

    ○阪上委員 国会審議の過程を通じましてあなたに対する、あるいは小倉警視総監に対する非常な責任追及が行なわれ、暗にやめるべきであるというところまで私はきているように思います。あなた方は、この審議を通じてどういうように国会の意思というものをお感じ取りになっておりますか、この点をちょっと伺いたいと思います。
  126. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私は少し鈍感なのかもしれませんが、私に対して直ちにやめろという御意思があるというところまでは私は痛感いたしておりません。
  127. 小倉謙

    ○小倉説明員 私の考え方も警察庁長官と大体において同じことであります。警視総監としての進退につきましては、慎重に考慮して誤りのないことを常々私は期しているつもりでございます。今回の事件につきましての進退ということにつきましては、私としては考えておりません。
  128. 阪上安太郎

    ○阪上委員 連合審査を通じて、あれだけ与野党を問わず警察に対する責任追及の声が出ておるのでありまして、その中に、賢明なあなた方としてはくみ取らなければならぬ示唆が十二分に私はあったと考えておりますが、どうもあまりはっきりと――鈍感じゃないけれども、非常に一方的なものの判断をされているように私は思うのであります。この点は再考慮される必要があると私は思うのであります。  そこで、そういった責任問題をめぐる議論を聞いておりますと、全く警察中立という隠れみのに隠れてしまって、まるでわが国の政治のあり方というものが、三権分立どころか四権分立のような印象を与える、こういうようなことを私は感じておるのでありまして、これは大へんな問題ではなかろうかと思うのであります。憲法に示されておりますところの行政院として、はっきりと独立独歩の立場を認められているものは会計検査院ではなかろうかと思うのであります。それ以外に、各行政委員会がそれほど厳然たる独立独歩の立場でもってやっていくというような格好のものはどこにも出ていない、こういうことじゃなかろうかと思うのであります。この場合、国家公安委員会のあり方そのものについても、こういったものの考え方で警察の厳正中立というものが考えられていくということであるならば、これは大へんな問題ではなかろうか、こういうふうに私は思うのであります。大体警察の行政責任というものは公安委員会にあるという考え方で、内閣にないという考え方自体に、私は憲法上のいろいろな疑義があるのじゃなかろうかと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、今申し上げましたように、何か四権分立的なものの考え方、警察行政については何ものもこれに対して手を下すことができないのだというようなことであっては、これは大へんな問題じゃなかろうか、私はかように思っているわけであります。こういう点につきましても、国家公安委員長として安井さんは自分の心境は現在のところここまでだ、こう言われるが、そういった点もこの際一つ配慮して、この問題の善処方に当たっていただきたい、私はこういうふうに思うわけであります。  そこで、先ほどから国家公安委員長あるいは池田総理もおっしゃっておるのでありますが、責任をとるということは、結局さらに警備に万全を期す、その他あらゆる方法でもって右翼テロを絶滅していくための努力を今後とも果たすことである、そのことによって初めて責任をとったと言えるのだという責任論に終始されておりますが、それならば私伺いたいのですが、具体的にどういう方法でおやりになるかということであります。先ほどからもこの問題についてはずいぶん質問が出ているようでありますけれども、的確なお答えがないようであります。この点について、今の段階においてそういう何か構想をお持ちでなければならぬと私は思うのであります。その構想を、ぜひ一つこの際発表していただきたい、こういうように思うのでありますが、国家公安委員長から一つお願いしたい。
  129. 安井謙

    安井国務大臣 警察の制度が独立性を保つからといいまして、そのために責任をすべて国民に対して回避してよいというふうには絶対に考えていないわけであります。しからば、どういう対策を講ずるかというふうに言われますと、今までもいろいろと委員の方々からも建設的な御意見がございました。警察だけの力でこれはなかなかできるものじゃないという大方の御意見もたくさんございまして、非常にごもっともであると私ども思っております。しかし、当面、警察としてやらなければならぬことは、やはり暴力に対する徹底的な抗議体制を作り上げ、その絶滅を期するようすべての行政をやる、こういうことでなければならぬと思います。そこで、警察としてやりますことは、直接的には何と申しましても警備力を増強いたす。そうして警備力あるいは警備方法につきましても、従来のままでよしとせず、こういった問題をさらに反省しまして、方法についても十分な再検討を加えて、さらに精緻な効果のある方法をとる。これは今日直ちに検討した結果そういうふうにしむけるように指導いたしたいと思っております。それから、なお、人員その他につきましても、機構上の問題につきましても、これはすでに、これは私の直接の権限じゃございませんが、警視庁におきましては、右翼関係の一課を設けて、直ちにこれに対する対策をさらに強化するということも考えられておるようであります。そういう面に対するあらゆる援助を惜しまないようにいたそうと思っております。なお、しかし、これだけで片づく問題ではありませんので、先ほども柏村長官も言われましたように、国民全体の十分な御理解、そうして環境の浄化といったような運動もあわせて行なっていきたいと思っておる次第であります。
  130. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ただいまの御答弁によりますと、結局やはり同じ線を歩んでおるようでありまして、まだはっきりした線をつかんでおられない。徹底的に絶滅を期したい、こういう観念的な考え方であります。その絶滅の方法を私は聞いているのでありますが、どうも今お持ちでないようであります。この点について、先ほどから、まず第一番に資金源を断つことだということは、連合審査の過程におきまして、そういう意見が出ております。この点について、何か政治資金規正法の強化であるとか、その他いろいろな方法考えられることと思いますが、これは私は当然考えていただかなければならぬ問題である、かように考えております。同時に、私、先ほどから端的に申し上げておりますが、これは単なる暴力事件ではなくして、右翼テロ事件だから、従ってその背後というものは組織だっておるに違いない。従って、その組織根絶を期さなけばならぬ。右翼全部を消そうというのじゃありません。そういう行動右翼的なものに対しては、その根絶を期さなければならぬ。そのためには背後を徹底的に洗う必要がある。警察がこれをやらないということであるならば、一体何のためにやらないのかと言いたい、だれに気がねしてやらないのかと私は言いたいのであります。そういうことでありますので、この背後を徹底的につくということが必要であります。  それと同時に、私は、一つこの際警察当局考えていただかなければならぬと思いますのは、警察警備思想といいますか、警備のものの考え方というものを徹底的に考え直す必要があるのじゃないか、こういうことであります。今回の嶋中事件考えてみますると、それは政治テロからあるいは言論、出版、表現等に対するテロとして現われてきたという、こういう言い方もありますが、同時に、今までは公開の席上で行なわれたテロ、それが個人の居宅に入ってきておる、こういう一つの特色を持っておると思うのであります。居住の自由というものを侵すところのテロであるという考え方が、一つ新たに出てきた、これはもう国民生活にとっては大へんな問題なんです。このことに対して、これは小倉警視総監は、あの場合戸締まりを十分にやっていてくれたらなあ、こういうことを言っておられますが、これは決して小倉さんの本音ではなかろうと私は思うのであります。しかし、日本国民がだれもが今日自分の家に一々戸締まりをしなければ生活ができないという状態に置いておいて、これでどうして警察責任が果たされておるということが言えるのでありますか。いわゆる戸締まり論的な警察、このことについては、徹底的に私はあなた方に考え方を改めていただかなければならぬと思っております。家に戸締まりさえしておけばそれでいいのだといって盛んに防犯協会等を通じて戸締まり論議ばかりやっておる。そんな安易な考え方でもって、警察はどうして法治国家治安というものが維持できるか。もっともっと徹底したものの考え方に入ってもらいたいと私は思うのであります。もう戸締まり論議ではいけませんよ。そんなことをやっておるから、警備上の不備という点をつかれてしまうのではないかと私は思うのであります。この点について警察庁長官の御意見を一つ伺っておきたいと思います。
  131. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 背後関係を十分に糾明しろということ、この点は警察として極力努めて参る考えであります。  それから、警備のあり方も、今戸締まり論というお話がございましたが、これは警視総監がずっと話をしていって、質問の過程におきまして一つの話として出たものでありまして、それに重点が置かれておる話ではございません。警視庁としましては、もちろん、中央公論社について警備の万全を期すると同時に、嶋中邸についても、常時張り込みということこそはやりませんでしたけれども、非常に注意深くパトロールなりあるいは連絡なりをいたしておったわけでございまして、私はこういうテロ行為の基本を断つために、やはり警察自体としては危険分子の早期発見、これについてのできるだけの監視、それから危険を受けられる方々の護衛というような点を十分に考えて参らなければならぬと思いますが、なお、さらに、こうした少年が次々に出てきておるというような社会の状態というものにつきましても、警察の関与する限りにおいてはできるだけ関係機関とも連絡、協調を保ち、青少年の正しい、明るい生活というようなものを指導していくような方面にも――これは、警察はもちろん側面的ではございますけれども、そういうような機運が醸成されていくというようなことによりまして、この問題を総合的に解決に向けていく必要があるのじゃないか。その過程において、やはり各家庭においても――またこれを大きく取り上げると困りますが、やはり防犯的な心がけというようなことも同時に行なわれていくということが必要ではないか。それに重点を置いて、警察は、各自勝手に守っていくべきだ、警察は知らぬよというような態度は毛頭とる気持はございません。警察国民の生命、身体、財産の保護に任ずるという重責を帯びておるわけでございまして、この点につきましては、今後ともできるだけの努力を傾注して参る考えでございます。
  132. 小倉謙

    ○小倉説明員 戸締まりの点で非常に波紋を若干あれしておりますので、私から重ねて申し上げさせていただきとうございます。  前回の委員会でも申し上げましたように、私が記者会見をいたしましたときに、たくさんの事柄につきまして質問事項がございました。その中で、一つああいうような乱暴な行為を何とかして防げなかったろうかという質問があったのであります。それに対しまして、私としましては、警察としてももっともっとやらなくちゃいけない、もっともっと努力しなくちゃいけないというような話をした、そのあと嶋中さんのお宅は平生は、戸締まりが非常によろしいのです。それが犯人の話によりますと、玄関のドアに手をかけたところ意外にもすっと入れて、そのまま応接間に行ったという話でありますから、ああ惜しいことをした、あのときに、普通の通りに戸締まりができておればなあということで、それを、何とかして防げなかったのかという質問に対して、ちょっと申し上げただけでございます。そういうような状況でございますから、御了解願いたいと思います。
  133. 池田清志

    池田委員長 阪上君に申し上げますが、二十五分超過いたしておりますから、簡単に終局を願います。
  134. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今の戸締まり防犯思想につきましては、あなた方はそういうふうに考えておるけれども、末端では依然として防犯などということは戸締りさえやればいいんだというような安易な考え方がある。事実、またそういうふうに指導されておる向きもあるのであります。どうぞ、日本国民が戸締まりをしないで安心して生活できるように、もうそういう考え方というものはこの際払拭してもらいたい。そして先ほど言われた徹底的な、不法行為、たとえば青少年の行為について力を注いでいただきたい、こういうふうに思うのであります。  そこで、最後に一つ伺っておきますが、総理も先ほどから言っておられますが、何とか具体的な対策をほんとうに立てていきたい、こういうことでありますが、これは私の考え方でありますけれども、どうでしょうか、検察審査会法というのがございますが、ああいったものに準じて警察審査制度というものをこの際確立してはどうか、そうして警察権の行使に関して民意を反映せしめて、そうしてその適正を期していくという考え方を持つ。ことに先ほどから三権分化だか四権分立だかわからないような警察中立的な論議もあるのでありますが、あるいはまた警察においても、日ごろ国民警察とのいわゆる民警のつながりということをやかましく言っておられる。総理もこの間の答弁の中には、政府だけではなく、この場合国民全体として考えなければならぬと同時に、社会もまたこの点について大きく考えてもらわなければならぬということを要請されましたが、そういったものを具体的に現わしていくためにも、検察審査会の例にならって、これは諸外国でもやっていると思うのでありますが、警察に対して審査制度というものを確立していく。そして警察事務の改善に関するような建議とか勧告とかがそういう機関によって行なわれていく、あるいはまた警察官の適格審査というようなものもそういった機関によって諮問されていくというようにして、憲法上非常に問題があり、行政組織上問題がありますところの国家公安委員会等の、あるいは警察法等の欠陥をこういったものによって是正して、もっと民意が反映されるような、こういった制度を作る必要があるのではなかろうかと私は思うのでありますが、総理の御意見はどうでしょうか。
  135. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 御意見は承っておきますが、この検察審査会のような役割は、ある程度国家公安委員会がやることになっておるのであります。しかし問題が問題でございますから、十分検討いたしたいと思います。
  136. 池田清志

    池田委員長 次の質疑予定者は中島茂喜君でありますが、同君より質疑の通告を取り下げる旨の申し出がありましたので、お知らせいたします。  これにて本連合審査会の議事はすべて終了いたしました。  これにて本連合審査会を閉じることといたします。    午後零時四十三分散会