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猪俣委員 この
連合審査委員会が連日やっておるのでありますが、
新聞の面を見ましても、
世論のささやく声を聞きましても、どうもさっぱり根本的な
対策がない、徹底した
論議が行なわれておらないという
批判を受けております。私は、
警備の問題もちろん重要でありまして、
警察当局に相断のミスがあるから、
相当の
責任のあることに対してはいなめません。これは
警察当局が善処せられるべきものだと思います。しかし、
淺沼の
テロ事件、引き続いて
嶋中事件、事はただ
警備の問題だけで終わる問題ではございません。深刻にして重大なるわが国の
民主政治の破壊的な
行動がわれわれ
考えられる。そういう重大な認識がありませんと、どうも
総理の、私は
淺沼テロ事件以来
質問をしておりまするが、今にしてさっぱりわからない。一体どういうふうにこの時局に対処しようとするのか。
そこでいろいろお聞きしたいこと多々ありますが、時間がありませんので、私は主として
総理並びに
公安調査庁長官にお尋ねしたいと思うのでありますが、
浅沼テロ事件でも、今回の
嶋中事件でも、これは
テロも悪いが
デモも悪いなんということで解決すべき問題じゃない。必ず
政府の
答弁は、
テロはけしからぬけれども、
デモの行き過ぎも考慮してもらいたい。
嶋中事件についても、はなはだ不都合ではあるけれども、しかし
言論の自由をはき違えないようにしてもらいたい、必ずそういう条件をつける。これは私は非常にいけない
言葉だと思う。この
思想が根本だ。私は本日この産経
新聞なんか見まして、
国家公安
委員の人たちの意見が載っておる。これがみな何と言っておる。一体、
デモなんというものも公安条例とかその他の法律に
違反している不法なものだ、だから
テロだとか
デモだって、みな不法な暴力であることは同じことだ。こういうことを言うて、こんなことで一体この凶悪なる
犯罪は断絶できますか。これらの人たちの頭を私は疑わざるを得ない。一人の人間の生命を断つことを目的として、突如襲いかかってその生命を断つということは、世にこのくらい凶悪
犯罪はないでありましょう。
国家公安
委員の小汀なんという人はけしからぬと思う。二月三日の朝日
新聞の座談会に、一体近ごろの
デモなんというものは法律を
一つも守っておらぬ、非常に不法である、
テロばかり不法の暴力といって憎むのは違う、
テロ行為ばかり憎んでもいけない、こういう
言論を吐いている。今、今日
淺沼、
嶋中事件で天下粛然としているこの際に、国次公安の重責をになっておる者が何ということを言っているか。なるほど
デモ行為の中には公安条例に
違反し、道路交通取締法に
違反している不法な
デモの行き過ぎがあるでありましょう。これはこれとして
批判すべきものでございましょう。かるがゆえに
テロだけを憎むのは不当だということは、一体何ということだ。こういう公安
委員があるからして、今日天下騒然たる際においても
警察の
責任を明らかにすることができない。私はあなたに対してどう
考えているか聞きたい。
なお、ついでに申しますが、幾ら
右翼団体といえどもむちゃくちゃな
テロをやっているわけじゃありません。決して
右翼団体は
デモの行き過ぎがあるから
テロをやるのじゃありません。これは彼らがこの民主
団体の
デモ行為、あの驚くべき
国会の
デモ行為は中国、ソ連の国際共産主義の指令に基づいて、扇動に基づいてやっておるんだという、こういうことの認識から立ち上がっておることは
山口二矢を調べた係官がよくおわかりでありましょう。いかに彼らが無法な人間といえども、
デモ行為が公安条例に
違反したりあるいは道路交通取締法に
違反した不法なものであるから
淺沼を殺したなんということにはならぬでしょう。そうじゃない。社会党なり総評が中国からあるいは
資金をもらったり、あるいは彼らの指令に基づいてこういう運動をやって
日本を赤化するんだ、赤の手先だ、こういう議論をいたいけな少年にしみ込まれまして、それが凶悪な
犯罪にかりたてる原因になっておる。
そこで私はあなたに聞きたい。一体不法なる
デモの行き過ぎと一人一殺のこの凶悪なる
テロ行為とはどちらもいけない、どちらも不法な暴力でどちらもいけないんだということで相殺論法をとることがはたしていいかどうか。さようなる論法をとっておるからして、
テロに対するところの憎しみ、
テロに対するところの徹底的な
態度が内閣にないんだという印象を与えるのであります。そこでそういうことに対するあなたの認識を承わりたい。
なお、岸内閣のとき、この
国会周辺を取り巻いた膨大なる市民の決起、あの安保反対
デモ闘争が国際共産主義に踊らされているんだというところの内閣声明が出たはずだ。あなたはその閣僚の一員として参画せられ、のみならず、私の聞くところによれば、国際共産主義の扇動から起こっているんだということを内閣声明に入れることを強く主張したのは
池田通産大臣だと聞いておる。はたしてあなたは今日でもそう思いますか。これがそもそも
右翼団体を刺激し、かような天下騒然たる原因をなしているんだ。
治安の乱れのもとはここにある。これをつかずして
右翼団体の
テロを抑圧することはできませんよ。入れかわり立ちかわりやってくるでありましょう。ただ
警察の
警備なんと言っておったって、これは末梢の問題だ。こういうふうな安保反対闘争が一体ソ連、中国から
資金をもらったり、あるいはその指令によってやっているなんというようなこと、あるいは内閣諸公の国際共産主義の働きなんだという声明、あるいは自民党の諸君がかような無
責任なる暴言をなす。これが
右翼を刺激することは歴然たるものだ。
そこであなたに伺いたいことは、一体不法なる
デモ行為と一人一殺の
テロ行為とが同じように論ぜられるべきものか。一個の生命は全地球よりも重いという裁判所の判決があります。
民主政治下においては、生命の尊重、人格の尊厳ということが民主主義の根源であることは申すまでもない。それを全面的に否定する
テロ凶悪
犯罪と、表現の自由として許されておる
デモ行為の行き過ぎとを同価値に見て、あれも悪いがこれも悪い。要するにこれは相殺論法というものだ。しかもこの
デモ行進の背後には赤いひもがついているというような無
責任なる宣伝をやる。これが
治安が治まらぬ根本原因だと
考えます。これに対してあなたの
考え方を承りたい。