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1961-02-06 第38回国会 衆議院 地方行政委員会法務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月六日(月曜日)    午後二時五分開議  出席委員  地方行政委員会    委員長 濱田 幸雄君    理事 金子 岩三君 理事 中島 茂喜君    理事 丹羽喬四郎君 理事 太田 一夫君    理事 阪上安太郎君       天野 公義君    伊藤  幟君       宇野 宗佑君    小澤 太郎君       大竹 作摩君    亀岡 高夫君       仮谷 忠男君    久保田円次君       田川 誠一君    永田 亮一君       渡邊 良夫君    安宅 常彦君       佐野 憲治君    二宮 武夫君       野口 忠夫君    松井  誠君       山口 鶴男君    和田 博雄君       門司  亮君  法務委員会    委員長 池田 清志君    理事 田中伊三次君 理事 馬場 元治君    理事 林   博君 理事 山口六郎次君    理事 井伊 誠一君 理事 猪俣 浩三君    理事 坂本 泰良君       井村 重雄君    一萬田尚登君       上村千一郎君    小島 徹三君       千葉 三郎君    南條 徳男君       羽田武嗣郎君    長谷川 峻君       山村新治郎君    阿部 五郎君       木原津與志君    坪野 米男君       畑   和君    原   彪君       中村 高一君    田中幾三郎君       志賀 義雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚子郎君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         法制局長官   林  修三君         総理府総務長官 藤枝 泉介君         警察庁長官   柏村 信雄君         警視監         (警察庁警備局         長)      三輪 良雄君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         公安調査庁長官 藤井五一郎君         自治事務官         (選挙局長)  松村 清之君  委員外出席者         警 視 総 監 小倉  謙君         警  視  監         (警視庁公安部         長)      石岡  実君         専  門  員 圓地与四松君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  治安に関する件      ――――◇―――――   〔濱田地方行政委員長委員長席に着く〕
  2. 濱田幸雄

    濱田委員長 これより地方行政委員会法務委員会連合審査会を開会いたします。  両委員長協議によりまして、地方行政委員長たる私が本連合審査会委員長の職務を行なうことと相なりました。よろしく諸君の御協力をお願い申し上げます。  これより治安に関する件につきまして調査を進めます。両委員会理事連合打合会協議に従いまして議事を進めることとし、直ちに質疑に入ります。田中伊三次君。
  3. 田中伊三次

    田中(伊)委員 まず警察庁長官に伺います。現在わが国の右翼団体、その右翼団体の数はどれくらいあるか、それからその右翼団体に属しております人員の数は全体としてどのくらいあるか、第三にはその右翼団体に属するものの中で、いわゆるテロをやりそうな危険人物と目されるものは、人員がどれくらいあるか、さらにそれが東京に何人くらいおるか、これだけのことを数字だけでけっこうですから、先にお答え願いたい。
  4. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 お答え申し上げます。右翼団体と申しましても定義いたすのに非常に困難でございます。警察として注意をいたさなければならないいわゆる暴力行為等に出るおそれのある右翼団体の数について申し上げたいと思いますが、それは二十数団体構成員約一万でございます。しかしそのうちテロを含めまして暴力行為等に出るおそれのあるものは約千名と考えております。しかもその大部分と申しますか、相当数東京に在住しておるというふうに考えております。
  5. 田中伊三次

    田中(伊)委員 ずいぶんおるものですね、暴力行為に出そうなものの数が千名。私はもう一つ伺いたいのは、凶器を持つ。凶器といってもいろいろな意味がありましょう。性質上の凶器もあれば用法上の凶器というものもありましょうが、凶器を持って暴力行為に及びそうな危険のあるものはそのうちどれくらいおりますか、東京で。
  6. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 情勢の変化によりまして、そういう危険性を強く持つ場合とそうでない場合とございますので、数もしかと申し上げるわけには参りませんが、常に非常に危険な状態において凶器等を所持するおそれがあるというものは百名くらいおります。
  7. 田中伊三次

    田中(伊)委員 その百名くらいな人々、これは大した数ではありませんね。その百名くらいの人々に対して警察警備という観点に立って、常に情報をとっておるでしょうか。その情報とり方はいろいろ世間で言われておるが、情報とり方はどういう具体的な努力によってどういう方法でおとりになっておりますか。
  8. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 情報とり方は、これはまさに警察の手の内でございまして、具体的に申し上げることは困難かと思いますが、たとえばその団体に属する比較的穏健な者から直接その団体状況を聞くとか、あるいは近所の者によってその団体構成員行動等を聞く、あるいは直接尾行、張り込みをいたすような場合もございます。そういうことによって動静を観察いたしておるわけでございます。
  9. 田中伊三次

    田中(伊)委員 この情報をおとりになるということも大事なことだが、情報をとることよりもっと大事なことが警察の任務の上からはある。それは彼らの行動監視をするということが、こういう事件が起こってくるということから考えるともっと大事だ。情報情報というが、情報をとることもいいが、危険なる人間のことも監察するということが大事であろうと思う。これはどんなやり方をしておりますか。
  10. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私ども情報収集と申しておりますが、犯罪に至る前あるいは犯罪後におきまして、その者についての監視をするということまで含めまして、情報収集というふうに申しておるわけでございます。本人監視につきましては、協力者によって事情を見るということもございますけれども、非常に危険な者につきましては私服の警察官をもってこれを尾行し、あるいは張り込みをするというような方法をとっておるわけでございます。
  11. 田中伊三次

    田中(伊)委員 このたびの申しわけのない事件を犯した少年であります。少年法に基づいて名をここで言いませんが、問題の少年ということでこれから申し上げます。問題の少年が、問題になっておる愛国党にいつ参加をしたのかということを、警察はいつ知ったのですか。
  12. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 今回の事件犯人たる少年は、一月三日に愛国党入党いたしておりますが、警視庁におきましては四日にこれを探知いたしております。
  13. 田中伊三次

    田中(伊)委員 大へん具体的なことを尋ねますが、この少年は今長官のおっしゃった百名の危険人物ワクの中には入っておるのかおらぬのか。
  14. 小倉謙

    小倉説明員 私からお答えいたします。私の管内東京で大体注意を要する者は約三百名ございます。その中には入っております。というのは、愛国党に所属しておるということで注意をしておりますが、しかし上京してきましてから日わずかでございます。特異な行動もございませんので、その二百名の中に入っておりますけれども、御指摘の百名という中には入っておらないのであります。
  15. 田中伊三次

    田中(伊)委員 この少年身元は――事件が起こったわけではないわけですが、情報をとり行動監視するという以上は、十七才になる少年がある団体入党をした、加入をした、こういう事実はわかっておるわけでありますが、この少年身元は洗ったのですか洗わないのですか。
  16. 三輪良雄

    三輪政府委員 お答えいたします。警視庁におきましては愛国党入党をいたしましたのがわかりましてからその身元を割り、長崎県等にその前の情報連絡を求めておるのでございます。長崎におりましたときに特異な事情はないということを承知いたしておるのでございます。
  17. 田中伊三次

    田中(伊)委員 身元を洗ってみた結果、これが危険人物ワクの中に入っておるという警視総監の話でありますが、どういう点を抑えた結果、危険人物と認定をしたのか、その点は具体的に一つ。
  18. 三輪良雄

    三輪政府委員 山口矢事件が起こりましてから、愛国党地方の若い者で入党を申し入れる者が間々あったわけでございます。本人の従来の長崎県における特典な――警察的に見て特異な事態はございませんでした。その後家出をし転々として、愛国党に入った。しかも愛国党に入るということは、入る際に、自分意見はこういうことであるというようなことを述べて、いわば採用されるわけでございます。愛国党という団体が特別ああいう団体でございます関係から、警視庁としてはこの者をその監視の中に入れまして、ただいま報告も手元にございますけれども、その後何日にどこでどうしたということを把握いたしておるのでございます。
  19. 田中伊三次

    田中(伊)委員 それほど具体的に少年行動を抑えてみて、これは感心をせぬ者だということで、あぶない部門の中に加えられておったということが明瞭になったわけですね。  そこで私は進んで伺いたい。十一月ころに発刊をしたものでしょうが、問題の中央公論という十二月号の雑誌に問題となっておる「夢譚」 時間がかかりますから内容を申しませんが、そういう「夢譚」と称せられるものが発表せられた。警察はこの「夢譚」というものに対して右翼がだんだんと動きかけたということはいつごろ知ったのですか。
  20. 三輪良雄

    三輪政府委員 十一月二十四、五日でございます。
  21. 田中伊三次

    田中(伊)委員 右翼動きかけたということを知った以上は、どういう団体に属する右翼の何という者が何月何日どういう場所に出かけて行ってどういう抗議をした、どういう言葉で腕をまくったということは、一々警察御存じでしょうね。
  22. 三輪良雄

    三輪政府委員 各団体抗議に参りました状況承知をいたしておりまして、あらかじめその情報を入手して警察官が立ち合い、その状況もつぶさに承知をいたしております。また現場におきまして不法行為にわたるおそれがある場合には警告をして、これを制止いたしておるのでございます。
  23. 田中伊三次

    田中(伊)委員 どの団体に属する者がいつどういう場所でどういう抗議を行なったか、そこでどういう不穏な言動を吐いたか、これの一々については、ここは裁判所じゃございませんから私は聞こうとしない。私がここで聞きたいと思うことは、そういう具体的な事実があったとするならば、私は結論だけを聞いておきたいが、団体数はどれぐらいな団体数に及んで、人間はどれくらいな人間が、回数は何回ぐらいにわたって中央公論を中心にして弾劾的行動に出ておるか、こういうことを一つ聞いておきたい。
  24. 三輪良雄

    三輪政府委員 お答えをいたします。中央公論礼に対する抗議といたしましては、団体数で申しますると五団体でございまして、それが六回にわたって会社に対して抗議をしておるのでございます。人数につきましては、時によって違います。一名で行った場合もございますが、最大は二十五名の者が行っておる機会がございます。
  25. 田中伊三次

    田中(伊)委員 この中央公論の本社に向かってそういう行動に出たことはこれはわかりましたが、中央公論社出版最高責任者と見られるべき問題の嶋中君の宅に対してはどういう動きがあったのか。時間がかかりますから私がしゃべっておきますが、聞くところによると脅迫電話がかかっておる、命がないぞという電話、それから人の訪問もある、脅迫の文書もきている。嶋中君のみならず、問題の小説をものした作者の家庭に対しても、これに似たようなことがあったと聞くのであります。どういう内容のものですか。
  26. 三輪良雄

    三輪政府委員 最初に、先ほどのお尋ねに対して数を数え違いましたので、おわびをして訂正いたします。九団体五十五名でございます。  それから脅迫状の問題でございますが、これは会社の方にはまあ脅迫状と言えますものですかどうですか、三十数通、そのうち十数通につきましてはほぼ内容脅迫になるおそれがありますものとして、警察捜査をいたしてございます。お宅の方につきましては、脅迫電話ということはございませんが、一月の二十一日に御連絡をしたときに、近ごろときどき夜に電話がかかり、御主人はおるかということで、不在の旨を告げると、そのまま名を言わずに切ってしまう電話がかかることがあるということを伺ったのでございます。お宅について脅迫状があったということは聞いておりませんし、またお宅に脅迫的な意味で人がたずねて行ったということも承知いたしておりません。問題の小説の作家に対しましては、これは所在が明らかでないというようなことが週刊誌等に出ております。留守宅に向かって三十数通の脅迫状が出ておりまして、その中で所在の明らかなものにつきまして、これは任意取り調べをいたしておるものも一件ございます。なおその留守宅と申しますか、たまたまおられたわけですけれども、そこにたずねていった者がございまして、警察に知らせがあり、これをすぐ取り調べましたけれども、危害を加えるという目的でもなし、またそういうものも持っておりませんで、所在を確かめる趣旨であったということでございますので、厳重に説諭をして帰したことがございます。
  27. 田中伊三次

    田中(伊)委員 ごく最近のことのようですが、この問題をめぐって、いわゆる国民大会というものが右翼の手によって開かれた。この国民大会でどういう動きがあったかということは、警察はこれを知っておるはずですね。国民の名において断固死刑にすべきだというような、非常に極端な文言を用いた演説が行なわれ、いろいろな決議が行なわれておる。これは御存じですか。
  28. 三輪良雄

    三輪政府委員 一月三十日日比谷公会堂におきまして行なわれた演説をさしておられるものと思いますが、承知をいたしておりますし、情報収集並びに警戒のために、警察官を派遣いたしております。演説内容等も、私ども自身が派遣した者からも聞いておりますし、その演説内容につきましては翌日の帝都日日新聞に出ております。そういうものにつきまして捜査当同としての検討はいたしておるところでございます。
  29. 田中伊三次

    田中(伊)委員 そこで警視総監に伺いたい。警備最高責任者たるあなたの御意見を聞くのであります。今警備局長からお話のような内容事件、そういう動静の中でございます。最高責任者としてこれに対処して、これは非常に具体的に聞くのでありますが、どのような警備上の対策を講ぜられたか。こういう情勢があるのは、これは動かぬのですね。この情勢は平穏でない。だれが見ても、何か起こりそうだ。九団体、五十五名の者が、腕をめくって談判をしておる。胸ぐらをとってなぐったという事実もある。命があると思っておるかという脅迫もある。国民大会の席においては、血相を変えていろいろな言動が行なわれておる。部下から全部聞いて知っているでしょう。警視総監は事を未然防止をする目的から、具体的などういう努力を払われたか。こうした、ああしたということをお聞きしたい。
  30. 小倉謙

    小倉説明員 私がこの「風流夢譚」を承知いたしましたのは、「中央公論」が発刊いたしましてほとんど直後でございます。こういう小説が出た、その内容について相当反響を呼んでおるということで、これは右翼が問題にするぞということで公安部長から話を受けまして、直ちに情報収集を開始したのであります。はたせるかな、右翼動き出したのであります。従いましてこの問題につきましては、当初から私承知をいたしております。従いまして、どことどこには特に気をつけなくちゃいかぬ。具体的に申しますならば、中央公論社はもちろん、社長宅、それから深沢七郎氏宅、また前の編集長の竹森氏宅、こういうところは、特に気をつけなくちゃいかぬということで、その警戒方法等につきましても、具体的に本庁関係の署と打ち合わせをさせまして、警らの強化あるいは警察官自宅訪問等による密接な連絡警戒注意ということに、できるだけの措置を講じてきたつもりでございます。
  31. 田中伊三次

    田中(伊)委員 大へん注意深くよく御注意になったということは今のお話でよくわかる。社長の宅のみならず、編集長の宅に対しても、筆者の宅に対しても手配をしたのですね。時間がないから私はずばっと聞くのですよ。手配をしたというお言葉はよくわかるのだ。どんな手配をなさったでしょうか。
  32. 小倉謙

    小倉説明員 具体的に申し上げますと、所轄警察署及び本庁の担当の課が協議いたしまして、まずすぐ所轄の署からその当該のお宅に出向いて、こうこうこういうような問題がある、相当注意をしなければならないということで、警戒方法あるいは何かあったときの警察との連絡方法、あるいは何か異状があったらすぐ知らしてもらいたいというような自宅訪問しての連絡警戒、これをやる。それから警ら要点に指定いたしまして、所轄派出所員またはパトカー警らの際に特に注意させる。パトカーとしても、そういう点を要点として回るというような方法でございます。なお、その後中央公論社抗議右翼団体等が押しかけておりますし、絶えず中央公論社側警察との連絡は密接でございますので、その間にいろいろまた具体的に打ち合わせがあったものと存じておりますが、大体さような方法でやっております。
  33. 田中伊三次

    田中(伊)委員 警視総監、問題のこの少年が問題の行動をとったその日のこと、これは社長宅というものは警ら要点にはしておったのでしょうね。
  34. 小倉謙

    小倉説明員 十一月二十六日ですか、それ以後ずっと警ら要点にいたしております。
  35. 田中伊三次

    田中(伊)委員 この警ら要点に指定をして警らをなさしめるということは、まことにけっこうな方法であったと思う。ところが文字が示す通り警らというものはいわゆる警らだ。警らで事の発生未然防止できるものじゃありませんね。私は結果にウェートを置いてものを考えるのかもしれぬけれども、一応の努力はわかる。張り込みはやらしたのですか、やらさぬのですか。急所々々に張り込みということはやったのかやらないのか。
  36. 小倉謙

    小倉説明員 張り込みはやっておりません。と申しますのは、従来の警護の方法といたしまして、政界関係あるいはその他の関係においても同様でございますが、大体先ほど申し上げましたような方法でやっておりますことと、嶋中邸について見ますならば、いつも係員が行って様子を聞きますけれども、大体異状もない、またたずねてくる者もないというような状況でもありましたし、また従来の例からいいまして、二面において警らをしておるとともに、先ほど申し上げましたように、自宅からの早急の連絡によって直ちにパトカーがかけつけて、その人間を取り押えるというようなことは常に行なわれておりますし、現に今回の事件におきましても、深沢七郎氏宅において、そのような事例によって右翼のある人物を取り押えておるのでございますが、そういうような方法でやっていけるというような考えで、格別張り込みをさせる、またそういうような常時警察官を履いてもらいたいというような要請ももちろんありませんし、こちらといたしましても、大体その方法でいけるというような考えでおったのであります。
  37. 田中伊三次

    田中(伊)委員 警視総監、あなたの警備配置やり方というものはどうもよくない。これは私、あなたにお目にかかって話をするのはきょうが初めてじゃないでしょう。浅沼委員長がああいう御不幸になられたときに、同じ合同委員会を開いて質問に立ったのは僕が立った。答弁はあなたがなさった。いつでもその配置が悪いのだね、あなたのおやりになっておることで。悪いという注意は克明に、具体的にあのときもあなたに御注意申し上げたでしょう。私の所見をもってすれば、浅沼事件未然防止をすることができたのですよ。どうして公会堂の入口を押えなかったのか、こう言うのです。何時何十分に入ったということはあとから推定をして時間をきめているので、あの少年が入った現場警察は知らぬのだ。まず入口を押えていない。これで十分だと思っておりました、それはいいけれども、十分にやっておっても事が漏れるわけだ。入口が押えてない。会場の内部でいうと、演壇そでといわれる演壇そで上がり口から飛び上がることが一番便利だ。犯人が飛び上がる、危害を加えようとする者が飛び上がるならば、あの高い演壇は飛び上がれない。そでから上がることが一番便利だ。だれが見たってわかっておる。その左右のそで入口人員配置がなかった。あなたが認めた通りだ。入口配置がない。演壇に飛び上がるそで上がり口人間配備が行なわれていない。はるか離れたところには配備があった。間に合わぬ。あっと思った瞬間に上がってしまった。さらに大事なことは、池田総理を初め、野党両党の委員長がいやしくもそこにおいでになるのにかかわらず、肝心の危険のある舞台全体を監視する監視員配置されていない。池田護衛官はおるのです。浅沼護衛官はおる。西尾護衛官はおる。しかしそれは西尾が動けば護衛官は動くものなんですよ。池田が動けば池田護衛官は動くに従って動くものだ。それはおったけれども、そういうものとは関係なくて、この舞台全体ににらみをきかす監視役配置が一人もなかった。これはあなたが認められた通りです。この三つの何でもない、このしろうとの私たちが見て、何でもない、理屈で考えてわかるこの三点が注意をされておったならば、浅沼事件は起こっていない。これはあとから言う言葉のように思うかもしれぬが、そんな考えじゃいかぬのですよ。しっかり聞かなければいかぬ。これだけのことができておれば、この不幸な事件は起こっていない。そこで政府与党の立場においては、とにかくまことに申しわけがないことであるということで、このまことに申しわけのない事実の発生ということに着眼をして、山崎公安委員長は高度の責任をとった。泣くに泣けない事件です。警察、万全を尽くしたというのだが、その万全の尽くし方に手落ちがある。あのときの私とあなたとの速記録を出して読んでみてもいいのだが、御記憶になっておればわかるように、手落ちがあることを認めたことはいいが、なぜ辞表を出さぬのか、なぜやめないのかというような責任論には言及することを控えましょう。この経験に照らして、今後はしっかり間違わないように、警視総監として采配をふるえ、あなたの采配が間違うといけませんぞ。警備配置についておる警官は、命をかけておるのだ。片手がほとんどばらばらになるくらいに刃物をもって切られておる。警官は命をかけて配置を命ぜられた以上は、配置の責めを尽くしておる。警視庁管内警官は実によく働いておる。配置の仕方が悪い。もっとわかりやすくいえば警備計画がなっておらぬ。こういうことを何度も言っておる。私はいやなことは言うことはきらいな男なんだ。しかしあなたに対してはいやなことを言った。警官が悪いのじゃないぞ、警官は命がかかっておるのだぞ、あなたの警備計画がなっていないのですよ。ここで首をねじ切るような話はいたしかねると私は考えたから、首の話はしません。反省をして、誤りなきを期してくれ。田中君は弾劾質問をしたのだか、何かを頼んだのかわけがわからぬといって、友人たちに笑われたほど静かなおさまりで、反省を求めて演説を終わったことを御承知でしょう。今回のこの事件はどうです。あなたがみずからおっしゃる通りに不穏な形勢があった。承知するという形勢があった。ところが一方、中央公論はなかなか取り消しに応じない。何か取り消し記事を出したかと思うと、その取り消し記事内容は言いわけであって、取り消し記事ではない。自分たち真意はそうでなかった、その真意を誤解されたことはまことに遺憾である。それは取り消しにならぬじゃないか、右翼はますます激高をしている、こういう事実はわかっておるのでしょう。  もう一度聞きますが、あれだけ私からくどく公の席において論及をして、警備に万全を期すということの約束で、実は首の話に及ばずして別れておるという解散前のいきさつがある。これは張り込みしたって大したことはないじゃないか。中央公論社の本社が一つ、筆者が一つ、編集長一つ、社長一つ、どんなに数えたって四カ所じゃないか。一日二十四時間張り込みをさせてみたって、今の警察警備力で及ばぬことでございましたとは言えぬでしょう。これは言えますか。群衆の見ておる前で十数個の警察の自動車が焼き打ちされたような事件とは事件が違うでしょう。警察の手が及ばなかったなんということは、これは言えないのじゃないか。どうしてこういう情勢を知りながら張り込みという平凡なことをしなかったのか。部下が悪いのじゃないですよ。計画が悪いのですよ。どうもあなたのやられることを見ておると、足跡はね。どうも人間の欠点というものは完全に直らない。これは私は無理なことを言うのじゃない。どうしてこれは気がつかないのだというのです。犯人は「今日は、ごめん下さい」と言って声をかけたというのでしょう。表があいておったから入った。なるほど奥さんがかぎをかけることを忘れておった。これは女中さんか奥さんか知らぬが、これに欠点がある、こんなことを国会で言うことじゃないのです。殺された女中さんがかぎをかけることを忘れておったということに責任があるということをあなたはおっしゃったそうだが、そんなことを言ってはいけませんよ。そんなことを言ってはいかぬ。おのれの責任考えなければいけない。かぎがかかっていないのでドアをあけて入った。廊下を通って応接室に入って一服吸っておった。これで警備ができておるか。そこへ女中がやってきて黄色い声を張り上げたので、メスを抜いたという事件なんです。最近出た有名な事件で、これくらい警戒の不十分な、これくらい警戒手落ちのある事件というものは、私たちしろうとで聞いたことがない。これはどうして配置しなかったのか。ちょっとそこで言ってごらんなさい。どうしたのですか。
  38. 小倉謙

    小倉説明員 警視庁管内で、そういう意味合いで警戒をいたしておるものはもちろんほかにもいろいろあるのであります。二十四時間中常時張り込みを続けるということは、相当の具体的な動きというような点についてはもちろんそうすべきでございますけれども、先ほど申し上げましたように、嶋中邸におきまして考えますると、大体において異常はないという状況でございます。私服員あるいは制服員が数多く訪問いたして、特に注意あるいは警戒連絡をしておったということと、警ら要点にして、そこをできるだけしげく回るということでやっている。他にもいろいろ事例がございますが、何びとかがたずねてきた場合には、玄関で、表といいますか、応対しておる。そこへすぐ連絡によって警察官がかけつけていくという体制でやっていけるものという判断をいたしておったのであります。  私の方の予測違いということをしいて申し上げまするならば、あのように家族に対して無軌道な犯行に出るということまでは、率直に申し上げまして私といたしては想像をしておりませんでした。犯人の自供を聞いてみますると、嶋中さんをやるつもりで行ったが、玄関から意外にもすっと入れたので、そのまますっと――ちょっと声をかけましたけれども、だれも出てこないので、応接間に忍び込んだ。そこを女中さんに見つけられて、そうして言ったところが、主人はいないということで、とっさのことで、奥さんをやってしまえということでやったというようなことを申しております。私どもの予測しておりましたところが、家族までやるというふうに思わなかったという点につきましては、率直に申し上げまして至らなかったと思いますが、ただ、今までの大体の例からいいまして、何度も申し上げますように、玄関口等で応対をしておる間に警察官が飛んでいって押えるということでいけるという判断で、そのような警備をしておったような次第であります。  なお、かぎの点をちょっとおっしゃいましたので申し上げますが、実は私もちょっとかぜをひきまして、やっと出てきたときに、記者の諸君につかまっていろいろなことを聞かれたのでございます。その際の一つに、何とかこれを防ぐ方法はなかったかというような話が出まして、それは警察としてもまだまだやらなければいかぬ点が、あとから考えてみればあったということと関連して、これは非常に言いにくいことだけれども、かぎでもかかっておって――嶋中さんのお宅は平生は非常に戸締まりのいい御家庭だそうでございます。たまたまどういうかげんか、そういうことがあったのでございます。私が何もしいてかぎの点を申し上げたつもりではないのでございまして、その点は一つ御了承願いたいと思います。
  39. 田中伊三次

    田中(伊)委員 警視総監、あなたの話を聞いてみると、大体パトロール強化でやっていけるものと思ったという言葉の裏を私が聞くと、普通一般の事件と似たような対策しか考えてなかったということだ。それはあなたの認識が悪いのではないか。この右翼が騒いでおる事件は、右翼が腕をまくっておる事件はどういう事件だと思う。これは普通の事件じゃないですよ。言論に対する迫害という事件なんですよ。中央公論社がけしからぬというのは後段で言う。これは話は別にする。よくとも悪くとも言論、書いたことがいけなければ、言論によって対抗すればいいという原則に立ち戻っていいのだ。これを乗り込んでいって暴力によってひざ詰め談判するという態度はよくない。この態度は、一つ間違えば言論、出版の憲法で定められた自由に対する迫害なんだ。あなたの在任中には事ばかり起こっておるが、さきに毎日新聞の襲撃事件があるではないか。この事件と同等の重要性を持っている、言論、出版という国民の基本的権利に対するこれは迫害なんです。これを普通と同じように、パトロール程度でいいだろう、かぎのしっかりかかる家だから、表まで犯人が来たときに、電話でもきたら、行ったら間に合うだろう、そういう感触でものをお考えになっておるということは、右翼が何を怒っておるのか、何に刺激されているのか、その原因はどこにあるのだ。言論にあるのだ、出版にあるのだというこの重大な憲法上の問題ということに着眼が足らぬのじゃないか。過去の話をすることはいやなのですけれども、毎日事件の――妙なことばかり僕は発言しておるけれども、毎日事件の本会議における弾劾演説も私が立った。こんなことばかりしておるということになるわけです。しかし毎日新聞のときも――警視総監、ここは大事なことですよ。警視総監に私が言いたいことは、毎日新聞のときもこれらの暴漢が某所に集まって協議をして、服装を変えて凶器を持ったという事実まで事前にわかっているのでしょう。ただいつ乗り込んでくるかという時間がわからなかったという事件なのです。予測も準備の現場を押えているのでしょう。こういう事件が、警官が飛び込んで行く時間がおそかったがために、間髪を入れずに新聞社は一一〇番に連絡電話をしたのにかかわらず、あの事件が起こった。国会では、この言論、出版に対する迫害というのは根絶しようという約束になっている。わざわざ決議文まで作った。何も根絶の努力をしておらぬじゃないですか。言論、出版に対する迫害事件であるといわれるような大事件が起こっておるのに、表へだれか来たら、あやしいと思ったら一一〇番へ電話をかけたら、行って間に合うだろうと思った。普通と同じように警戒をしておりましたなんという、そんなことが言えますか。そんなおかしなことが言えますか。この国会に出てきてそんなことを言っていいですか。あなたとは二度も三度もこんなことを言うておる。手落ちというたら悪いけれども、予測をしておきながら、予測のできた事柄に万全の手が打てなかったという警備手落ちは同じことである。もう根本的にあなたという人はお考えを変えていただかないと悪いのじゃないか。同じことですよ、いつでも。毎日新聞も予測ができておった。来るのがおそかった。来てみたらガラスをたたきこわして輪転機に砂をぶち込んで、犯人が表へ出て車に乗ってさようならというところをつかまえた。あのときもそうでしょう。これは反省をしてみられて、こういう重大な言論、出版の迫害といったような事件に関する場合には、急所の場所はわずかしかないのだ。三カ所か四カ所しかないのだから、ここには張り込みをさせておいた方がなおよかっただろうと、結果から見て反省をされる点はございませんか。警視総監……。
  40. 小倉謙

    小倉説明員 おっしゃる通り、ああいうような無軌道な行為というものがあるということであれば、もちろん結果から見まして警察官配置しておけばよかった、率直にそう思います。
  41. 田中伊三次

    田中(伊)委員 おっしゃる意味は、作者を殺したとか、あるいは社長自身を殺したということならば想像がつくけれども、女子供に手をかけたということは思わぬ観測違いだった、そんなことは予想もできなかったことである。予想もできなかったことに対する結果に対しては、どうにもいたしようがない、こういうお考えですか。そこを私はもう一度聞いておきたい。ここはこまかいところですから、予想ができなかったことだから責任がないのだ、あとから考えてみてもそんな配備は要らなかった、やはりいたしようがなかったのだ、あれで万全であったのだ、こういうふうにお考えなんですか。  私はもう一口申し上げますが、この少年は思わぬ人を殺したのじゃないのですよ、犯人の心理というものを観測をすると。嶋中君を殺しに行ったと本人も言っておるでしょう。嶋中君がいなかった、そこでやいばの先が狂って奥様を傷つけ、お手伝いの御婦人に凶刃が及んだという事件です。わかりやすく言うと、目標に向かって拳銃を撃ってみたところが、たまが隣に当たったという事件だ。これは警衛、護衛というような観点から言うと同じものです。もっとわかりやすく言うと、奥さん、女中は別の世帯で、別の家庭におったのじゃない。嶋中君の住まいをしておる家庭に奥さんがおられ、犠牲になられた御婦人がいらっしゃったという事件なんだ。警衛の手心なんか変わるべきものじゃないでしょう。これは嶋中君の家ですよ。手元が狂って弾丸が隣に当たったという事件なんだ。わざわざ別宅を訪問して、思わぬところで凶行が演ぜられたという事件じゃない。そこのところはいかがでしょう。どういうふうにお考えになりますか。
  42. 小倉謙

    小倉説明員 もちろん今回の事件につきましては、ほかの事件についても同様でございますが、決して警察責任がないなんということは毛頭考えておりません。私はどんな事件でも警察責任があると思います。従いまして結果的に見まして、反省すべき点は反省していかなければならぬ、かように考えております。
  43. 田中伊三次

    田中(伊)委員 よくわかりました。  もう一つお伺いいたします。これからのこともあります。あなたばかりではない。だれが警視総監をやるにしても、これからのことがある。私、もう一つ伺っておきます。あなたは私とこんなことばかりで、何度も会うておるわけですけれども、何ですか、事件が起こった後の善後措置ということには、全力を尽くしていますか、それを私聞きたい。警察というものは。パトロールもやったのだ、聞き込みもやったのだ、電話連絡も家庭とはしてある、やれるだけのことはやったのだから、命をとられるような結果があっても警察責任じゃない、こういうお考えにおなりになっては国民が気の毒だと思う。もっとわかりやすい言葉で言いますと、日本国国民はだれでも、予想のできぬことはいたし方がないが、予測ができる限りにおいては、警察は全警備力を傾けておれたちの生命、身体、財産を守ってくれるのだという安心感の持てるような警衛ができておらなければいかぬ。これが大事だ。やれるだけのことはやったのである、どこに欠点があるのだ、何が責任だ、これでは何のための警察だ。警備ができたりできなんだりする場合があり得る。予測ができぬことを結果において責任を負えということを私は言うのじゃないのですよ。予測のできないことについて、できごとに全部責任を負えというなら、一億の国民がおったら一億の警官がおらなければならぬ。そんなことを言うのではない。予測ができておる限りにおいては万全を尽くせ。被害者から言うと、警察もあんなにしてくれたのだから、これはいたし方がないと冥目をするだけの万全の措置が講じてなければ、警察の任務は勤まらぬ。この私の言うておることは、幾らか結果にウエートを置き過ぎた所論ではあるのです。私はわかっておる。しかし国民の声を代表するものが代議士の発言なんです。結果的責任を負えと言わぬばかりの説明に近い話を私はしておるのだということは、話をしておる私はよくわかっておる。けれどもこれは言わずにはおれぬのです。手は尽くしたのだけれども、普通の護衛、普通の警官、普通のパトロール要点で事が済むと思っておりました、思わぬことになったのだということでは、今後の警察のあり方はこれではいかぬ。不十分な予算を持たし、不十分な頭数で警察に御苦労をかけておることは、国民全体がわかっておる。国会もわかっておる。しかしこの事件は、今日警察の持っておるところの警備力をもっていかんともいたしようがなかったというハガチー事件とは違うのです。樺美智子さんが圧死した事件とは違うのです。何千名という警官の目の前で十数台の警察の自動車が焼き討ちになったという事件とは違うのです。それは警察が無能だとは言っておらぬ。警察はけしからぬとは言っていない。あれだけの大事件が起こっておって、なぜ警察責任をとらぬかということを言った日本国民は一名もいない。大事なのは私の言うことが大事なことなんです。全力を尽くして見たが――ああしてくれたのだからというところまできていないでしょう、この事件は。善後措置がもう一つよくない。この事件ばかりじゃない。この事件だってしっかり善後措置をしてもらいたいから僕は言うのだが、いやしくも野党の党首ともあられる浅沼委員長があのような御不幸におあいになった、これに対して善後措置はできておるのですか。これは警視総監に次いで公安委員長にも話を聞きたい。善後措置はしておるのか、部下はどういう処分をしたのか、あなたの責任は私は手心を加えて追及しなかった。しかし部下に対してはどういう処分をしたのか。その後において警戒の体制、警戒とり方警備やり方警備計画の持ち方というものは、具体的にどういう熱意を込めた変化があるのか、この二点。警備計画は実情に沿うよう再び手落ちなきように、どういうふうに変えてきたのか。右翼課を設けるというようなことを聞いておるのじゃないのですよ、答えを違わぬように。そんなことを聞いておるのじゃない。どういう具体的な警備計画の上に反省が出ておるか。野党第一党の党首がなくなられた不幸な、この残念な事件について、第一線の担当者にどんな処分をしたのか、この二つ。
  44. 小倉謙

    小倉説明員 お答えいたします。浅沼さんの事件の善後措置と申されましたが、部下に対する措置といたしましては、所轄の丸の内警察署長に対しまして、国家公安委員会の訓戒処分が行なわれております。そのほか警視庁警備部長、公安部長警備課長、公安二課長、公安二課関係、丸の内署関係で四名、これに対しまして私の方で訓戒処分をいたしております。それからその後の警戒の強化でございますが、当時問題になりました演説会等に対する警戒警備につきましては、特にその当時の事件にかんがみまして反省せられました諸点、御指摘の配置の点その他あるいは主催者側とのさらに密接な協定、また目標とされやすい人たちに対する身辺警戒自宅等の警戒の強化、これはその後約十数名のお方について行ないました。そのような点を進めるとともに、抽象的に申し上げますが右翼の視察強化等の面についていろいろな手を講じて参った次第でございます。
  45. 田中伊三次

    田中(伊)委員 善後措置としては訓戒をした、訓戒とはどういうことですか。何か文章を紙に書いて渡すのですか。痛いこともかゆいこともないのだね。野党第一党の党首がゆえなくして天下公衆の面前で刺殺されたという事件なんです。何をやるかわからぬ。その事件の処分は何ですか。何か紙に文字を書いて、それを郵便で送るのか読んで渡すのか知らぬが、訓戒か。それを私は伺いたい。私は国民を代表して憤慨にたえぬです。どういう訓戒をやったのか、訓戒の文章の内容を読んで下さい。どういう訓戒ですか。まず署長の分だけでよろしい。あとこまかしいものは読まぬでもわかっておる。
  46. 小倉謙

    小倉説明員 当時警視庁においてこの事件の措置について種々調査いたしまして、その結果警察庁の方に上申いたしまして、丸の内署長につきましては国家公安委員会において訓戒処分に付せられたのでございます。
  47. 田中伊三次

    田中(伊)委員 警察庁長官、その文章の内容を読んで下さい。
  48. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 いきさつはただいま警視総監から申し上げた通りでございますが、ただいまお話がございましたので、後刻取り寄せるようにいたしております。
  49. 田中伊三次

    田中(伊)委員 どうもその善後措置が悪い。それから一つ前にさかのぼると、前内閣の現職内閣総理大臣の岸さんが刺されたという事件、その岸さんが刺された事件についての善後措置はできておるか。現職総理大臣が白昼刺された事件は、ああいう場面では歴史にないのです。これは当時の新聞にも、朝日か何かに書いてあった。犯人が突いた部所が一、二寸間違っておれば岸は即死しておる。これは大へんな事件なんです。私は伺いたいが、何もやっておるかおらぬか聞かぬ間に、やっておらぬということはおかしいようだが、やっておらぬと僕は思う節がある。表に現われた節がある。それはどういうことかというと、まあ何にしたところがこれは警備手落ちでしょう、どうです。現職内閣総理大臣が刺されたのです。その当時岸さんの身辺を護衛をしておった護衛官が一人も改まらないでそのままそっくり――あぶない話だが池田さんの護衛官になっておる。これは池田さん本人御存じないのだ、知っておったらあぶなくてやれない。その岸の護衛官池田護衛官にそっくりそのままきておるので、更迭もなければ何もない。警備内容というものは、警備配置ということに反省がないのじゃないか。こういう現象に現われたところを見ると、また紙に書いた訓戒程度で、大したあのときの処分もしてないじゃないか。一体このような重大事件に対してどういう内容の訓戒をしたのかと国民代表から尋ねられて、これこれ、これこれの内容の訓戒でございますということが記憶にない程度の訓戒しかしておらぬ、そんなべらぼうなことがありますか。訓戒の内容が記憶にないなんていう訓戒があるか。現職総理大臣が刺されたという事件ですよ。野党第一党の党首がいやしくも御不幸になったという事件だ。そういう不始末はよくない。私はいかぬと思う。これは国民に対して申しわけない。こういうことをやっておったのでは、警察に対する不信の観念というものは――第一線の警官というものはほんとうに命をかけて働いてくれておる。それが幹部、首脳部のものの考え方というものが実に不徹底だ。その善後処置というものを完全にやることは何に意味があるかというと、第二の事件が起こらないようにすることに効果がある。それに善後措置を加えるということは、第三の事件が起こらないことに意味がある。あなたの在職中に起こっておる事件を見ても、河上先生の事件が起こっておる。これはしかしあなたばかりの責任じゃない、半分は衆議院議長が警察権を持っておる構内の一部もその原因である、こういうことだから、あなたの責任は三分の一くらいしかないのでしょう。何にしたって起こっておるじゃないですか。岸の事件が起こっておる。浅沼さんの事件が起こっておる。これは何回目だ。数えると四回目の事件でしょう。これは一つしっかりお考えを願わなければならぬのではないか。しかし私は大事なことを申し上げることがきょうは目的でございますから、その前提になることをくどく言っておって時間をかせぐゆとりはない。あなたは前提になることで、警察責任は絶無でない、警察でも大事な責任を自覚をしておるというお言葉がいやしくもある以上は、このことは二度と触れない。一歩前進をして話を進めます。現在の警察制度というものは政治的に中立が許されておる。そういう法律はだれが作ったのかというと、この国会で作った。国民を代表する私たちが、不当な政治から警察を独立させておくことが必要だというので、憲法上独立機関ではないけれども、同じ行政府の内部において、とにかく政党色、政治色というものから中立的存在に置いておくことが望ましいということで、ここにその中立を確立しておることが、御承知通り、大ざっぱに申しまして、警察のわが国における地位であります。これはおわかりになっておりますね。そういう立場をとらしておる警察という制度のもとにおいてこういう事件がひんぴんとして起こってくる。その責任をとる責任とり方についてはどういうことが大事なのか、こういうのです。国会が言うんじゃない。独立の許されておる、中立の許されておる警察の部内においてお考えを願いたいことを僕が言うのです。どういう考え方に立って責任を明らかにすることが大切かというと、他人から言われるまでもなく、高度の道徳観、高度の良識によって国民の声に耳を傾け、そしてあくまでも警察に対する国民の信頼ということが失われないように、自主的、自律的――人に言われずという意味は、警察部内以外の人に言われないように、公安委員長以下公安委員警視総監以下の役人、そういう意味において広く警察の部内において、自主的、自律的な責任を明らかにせられるということが、制度本来の真義に立脚をすると大事なんです。これを忘れちゃいかぬ。これを忘れちゃならぬというところまでこれを国会は言わなくてはならぬ。妙な話をするが、かりにそのことを忘れて、おれは政府から任命を受けておるのじゃない、国会の承認を得ているものじゃないんだ、警視総監の地位というものはそういうものでないのだから、中立という看板のうしろに隠れてとるべき責任をとらぬでいいんだ、明らかにすべき責任を明らかにせぬでいいんだ、やるべきことをやった以上は手落ちはないんだ、みずからがおのれのことを判断すれば事は足りるんだというような無反省なことがありとするならば、国会はわが国の警察制度の存在なるものに対して検討を加えなければならぬと私は思うので、非常に大事なことだと思う。人に言われずに、警察全体として国家公安委員長以下の人々が深刻に反省をしてみてとるべき措置をとることが、国家国民のために大事なことではなかろうかということが私の意見であります。くどくは申しません。私はあなたに何月何日までに辞表を出すべし、これはやめなさい、やめるだけの価値があるじゃないか、なぜ一体やめぬのかなんというようなことは言わない。それは言うたことになるかもしれないが、そういうことは言わない。あくまでも自主的、自律的に責任ありということをお認めをいただいた以上は、これ以上のことを言うことはない。言うことは国会の行き過ぎであります。みずから作った制度に対する反逆である。私はそれは言わない。  そこで私はあらためて安井公安委員長たる国務大臣に、政府から派遣をされておる担当大臣でありますから、大事なことを聞いてみたい。あなたにものを聞くというても、制度以上のことは聞けないので、あなたが制度の上でどういう地位の上に乗っかっておるかをちゃんと調べた上でないと、制度にないことを言えというたって答えができてますまいから、あなたが制度上答えざるを得ない義務のあることを大事なことで聞いてみたい。それはどういうことかというと、国家公安委員長は国家公安委員じゃない。委員でない、委員長だ。委員長というものは議長になる資格があって、何を議題にするかということをきめる資格があって、何月何日何時何分に会議を招集するかということをきめる権限があるだけで、わかりやすく言うと、発言権はあるが、表決権がない。五人の委員がおって、五人のうちで一人が欠席をするか、病気をするか、沈黙を守るか、棄権をしたときに、可否同数となりたるときにそれに対してこれを決定する権限があるだけのことである。本件に関してこれを申せば、こういうことがあなたの権限内容であります。そこで、あなたの権限内容に属する事柄について私はものを聞いてみたいと思うが、自主的、自律的に責任を明らかにすることをこの席で国民を代表して要望をするのだが、その結果――仮定の話じゃないですよ、その結果、もし警視総監の辞意が表明せられる、警察署長の辞意が表明せられる、だれの辞意が表明せられるか僕は知らぬ、知らないが、重要なポストにある人が深く私の言うことを聞いて反省をして、自主的、自律的な自分の意思によって何人かがここに辞意の表明をせられ、辞表というものを提出せらるるに至った場合においては――前回の例もある。出した辞表を持って下がれと言った。あなたの方が言った。あなたはかわっておるが、公安委員会が必要なしと言った。そういう前回の例にこだわらず、すみやかにその辞意の表明もしくは提出された辞表を取上げて、これを議題とし、複雑な事情がありましょうから簡単には参りますまいが、可及的すみやかに委員会を招集して慎重審議をしてもらいたい。それをする意思があるかどうか。前回の例にならって、持って下がれというようなことを言うのかどうか。それは言うというかもしれないというなら、今聞いておかなくてはならない。あなたにものの言いようがある。おどすわけではないけれども、これはしっかりと頭に入れて、この点について御答弁を願いたい。
  50. 安井謙

    ○安井国務大臣 ただいまのようなことは一応仮定の問題ではございますが、状況が生じました場合には、国家公安委員会として、公正に前のいきさつ等にとらわれることなく、慎重な審議をいたすべく取り計らうつもりでございます。
  51. 田中伊三次

    田中(伊)委員 私は続いて最後に伺いたいと思います。今の警視総監の言明及び担当国務大臣としての安井国務大臣の御発言に心から信頼を持ちまして、りっぱな態度で堂々たる事態の収拾ということを私は希望する、これだけのことを申し上げて次に移ります。  先ほどから申し上げることと非常に矛盾をするようなところがあるやにお聞き及びかもわかりませんが、お聞きを願いたいのは、いやしくも中央公論の言論の自由、作者の言論の自由、表現の自由、それから公論社の出版の自由というものに対しては、警察は毎日新聞事件同様に非常な意欲を持って、非常な熱意を持って、これに対して事を未然防止するための努力をしなければならぬということを言ったのであります。同時に、私は本件事件関係してもう一つやらなければならぬことがあると思う。それはどういうことかというと、言論の行き過ぎということである。一体問題になっておる雑誌というものを皆さんお読みになっておりますか。どんなことが書いてあるか。私は読んでみて驚いた。皇太子殿下及び皇太子妃殿下が宮城前の広場において人民から処刑をされる現場が夢物語の中に出てくるのである。その文章を読んでみると「マサキリはさーっと振り下ろされて、皇太子殿下の首はスッテンコロコロと音がして、ずーっと向うまで転がっていった。」「マサキリはまた振り上げられて、こんどは美智子妃殿下の首がスッテンコロコロカラカラカラと金属性の音がして転がっていった。」と書いてある。ほかにいろいろなことが書いてありますが、私が記憶しておること、ここに原稿はございませんけれども、私の書っておることと一口も間違わぬことを原稿に書いてあります。こういうことを書いてあるのを読むと、一ぺん読むと忘れられぬ。一体こういう出版の自由というものがあるのだろうか。これは美智子妃殿下、皇太子殿下でなくとも、具体的人名をさして、具体的人間の名をさして、仮名でなくて実名を示して、こういう形で処刑をされたということが書かれるというと、美智子さんや皇太子さんでなかったって、僕だってこれは困る。田中伊三次君の首が金属性の音をたててスッテンコロコロカラカラとはるか向こうへころがっていった。(笑声)工合が悪いじゃないか。  そこで私は伺ってみたい。私はここで政府に伺ってみたい。一体こういう内容の出版ということが行なわれ、そういう作品を筆者が載せておる。むろんこの小説の前後を十分に読んでみると、非常に暗い気分のする作品ではありますけれども、表現が非常に精緻をきわめておる。従ってその現場の描写というものは、この作者独特の作品であるという点に顧みるというと、そういう点、具体的名をさしたという点を除けば、いくらか文芸的な価値が絶無であるとは言えぬのではないか。これを私も考えて何度も読んでみた。しかしいかに価値のあるものであっても、国民の一人々々は言うまでもなく何人からも名誉を棄損されない、おのれの名誉を保持する権限が基本的人権として認められておるわけでありますから、他人の基本的人権を侵害して、名誉を棄損して具体的名をさす、そういうことが行なわれていいものじゃない。ただこれは政府が行なったことじゃない、民間が行なったことでありますから、この国会の議場において取り上げる問題としては勢い政府に関係のあることしか、私は質問をしたり答弁をしていただくことができぬことになるわけでありますが、幸か不幸かわからないが、この被害者は皇太子であり美智子妃殿下である。皇太子なり美智子妃殿下は刑事訴訟法にのっとって一国民として告訴の権能が認められるわけでございます。何人が代理をするかは別の問題であります。これを一体告訴をしないで放任をしておいていいものか。皇太子さんや妃殿下でさえ、具体的名前を書かれて処刑の現場をさらし出されても問題にならぬのだろうか。それは不問に付せられるのだろうか。われわれ国民においておやという考え方、そういう風潮が出てくることを私はおそれる。皇室が国民を告訴をするという問題については、告訴手続上の困難な問題がございましょう。よって起こる諸般の方面の影響ということも顧慮に入れなければなるまい。事の重大性ということにかんがみて簡単なわけに参りますまいが、これは同時に簡単に不問に付するということができないものじゃないか。一つの見方を申し上げますと、このような重要な影響を持つものに対しては断固たる告訴手続をとって、身柄を収容して厳正な裁判にかけて、事の真相を究明するということが必要なんじゃないか。やがては憲法上象徴たる地位におつきになる人であります。やがては皇后となる人である。その名誉を棄損したる場合において、特別の不敬罪という罪名が法律上ないことは私は心得ておる。しかし皇太子、皇太子妃殿下という人を一国民として考えてみても、これは不当なことじゃないか。一国民たる皇太子、一国民たる妃殿下に対しても、その実名を示し、名ざしをして処刑の現場を夢物語の中に載せて、これを公に公刊するということは行き過ぎておるのではないか。この行き過ぎに対して反省の手を政府が打つということは重大な意味がある。いろいろ逆に困難なことがございましょうが、これは一つやるべきではなかろうか。すみやかに逮捕をすべし、すみやかに身柄を収監すべし、すみやかに厳正な裁判によって厳正な審判を下すべきものである。私はこういう意見を一面において持つのであります。これは特に総理大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  52. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 「風流夢譚」につきましては私も読みました。お話の点があることは承知いたしております。事皇室のあり方、また皇室と国民との関係考えまして、十分私は考えなければならぬ重大な問題と思っております。
  53. 田中伊三次

    田中(伊)委員 私の質問は、大事なことが済みましたからこれで終わります。ありがとうございました。
  54. 濱田幸雄

  55. 木原津與志

    ○木原委員 田中委員に引き続きまして、私はまず最初に治安責任者は一体だれかということについて、特に警察責任のあり方をどう総理は考えておるかということをまず総理にただしたい。  総理は、自分が行政上の最高責任者であるから、国民並びに国会に対して治安に関する政治上の責任を負うのだということを、過ぐる本会議で言われた。ところが警察の直接の管理運営をやっておる公安委員会並びに警察当局、この人たち警備手落ちはなかったということで、けりをつけてしまうというようなことが、新聞紙上に出ておる。御承知のように、右翼による事件は、今度の嶋中事件発生以前において、すでに最近の事例だけで見ましても、安保のあの闘争の際におけるたくさんな傷害事件、それに社会党の河上顧問の刺傷、さらに自民党の岸前総理が官邸において右翼と称する人に刺されておる。昨年の十月十二日には、わが党の浅沼委員長も、白昼総理大臣の面前において暗殺をされておる。さらに引き続いて今度の嶋中家のこういった負傷刺殺の事件が生じておる。こういう一連の事件について、警察当局は全部不可抗力だということで済ましてしまっておる。先ほど田中委員質問の中で、警察当局の人たち責任者はそれぞれ処罰を課したということを言っておられるが、それは単に下僚の人たちに対する訓戒、訓告に終わっておるにすぎない。浅沼事件について国家公安委員長が高度の政治的な判断に基づいて辞表を出したということ以外に、いずれの場合においても、未然にこれを防ぐことができなかった、不可抗力であったということで、警察責任をのがれるということになっておるのであります。そこで、一体こういったような責任の受け取り方で、はたしていいのか、これで済ましていいのかということは、国民全体が今や切実に治安責任の問題について非常に大きな関心を持っており、不安を持っておる点なのであります。人の話を引用するわけではございませんが、過般の新聞紙の報道によると、自民党の副幹事長の大橋武夫氏が、こういうあつかましい人たち警察の上部におって、そうしててん然として恥を知らない態度をとっておるということは、まことに不可解きわまる。また不可抗力としてこれだけの一連の事件がいずれも警察側に警備責任はないのだというならば、まさに日本は無警察の国家ではないか。こういったようなことを談話として言っておることが、新聞紙に発表せられておる。私もまことにこれは国民全体がそう感じるところだろうと思う。ところが警察当局は、警察は御承知のように警察中立の上に立っており、この警察中立の上に立ってあぐらをかいている。あぐらをかかれる場合に、一体治安はどうしようもないということです。しかも事件は、このままの状態でいったら今後も続発するであろうということを、われわれは非常におそれるのであります。総理大臣は、政治上の責任を負うて、その責任自分は今後の警備体制の万全を期するという意味において果たしたいということを言っておられるが、この政治上の責任と法律上の責任とが食い違う場合、すれ違う場合、こういう場合に一体国家の行政の最高責任者として、警察警備上の責任に対して総理はどのような考え方を持っておられるか、この点をまず総理にお聞きしたい。
  56. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 警察行政に対しましての総理大臣の責任につきましては、本会議で述べた通りでございます。ただ問題は、今後こういうことが二度と起こらないようにいたしますためには、私は総理大臣として、制度上あるいは予算上、あるいはまた行政運営上いろいろ考えていきたいと思っております。
  57. 木原津與志

    ○木原委員 私があなたにお聞きしたいことは、これだけの不祥事件が起こり、またさらに今後も起こる可能性をわれわれは非常に心配する。だから国民に対して、具体的に警備責任はどうする、また今後の予防の措置についてはどうであるということを具体的に一つ示していただきたい。
  58. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 警察の具体的運営管理につきましては、御承知通り国家公安委員会並びに都道府県公安委員会責任でございます。われわれにつきましては、その運営管理につきましての指揮監督権は内閣総理大臣にはございません。しかし行政全般につきまして私が責任を負う関係上、しかもまた今後そういうことが起こらないようにするのにはどうやったらいいか、これは私としては予算の立て方、あるいは法律制度の改廃、あるいは行政運営につきましていろいろの点を考えていかなければならぬものだというので、この事件が起こります以前におきまして、わが党におきましては、治安関係につきまして委員会を設けて、そして何とかこういうことが起こらないように検討いたし、大体結論が出かかっておったところでございます。私はそういう問題につきましても、今後十分検討いたしまして、万全の措置をとりたいと思っております。
  59. 木原津與志

    ○木原委員 警備上の責任については、これは国並びに地方公安委員会が終局の責任だということになっておるようでございます。ただ総理大臣は、行政の最高責任者として、これに対して政治上の責任を負うとおっしゃるが、政治上の責任だけでなく、行政の最高責任者として、法律上の責任も、私は、たとい管理運営の権限がなくとも、総理大臣にも責任があると思うのであります。そこで、そういったような立場に立って、もし公安委員会が適切な責任についての措置を、警察中立の上にあぐらをかいて、適切な処理を国民の前にやらないという場合において、これは当然そのこと自体が行政の最高責任者としての総理の責任にも相なろうかと思うのでございますが、その点について総理はどういう見解を持っておられるか。
  60. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほど申し上げましたように、法律的、政治的というのはどうかと思いますが、内閣総理大臣は、国家公安委員会等に対しまして指揮監督の権限はないのでございます。だから法律的には、私はこれはいかんともしがたいと思います。
  61. 木原津與志

    ○木原委員 それでは質問をほかに転じます。こういうような一連の右翼事件については、その背後関係を徹底的にこれを究明されなければならないと思う。過去において幾多の日本の政治史に例がある。いろいろなテロ事件がひんぴんとして起こった事実を戦前戦後を通じて考えてみますれば、この悲劇の起こった理由は、背後関係を政府が何ゆえか、事右翼に関しては遠慮して、どういう気持か知らないが、この背後関係を徹底的に洗うことをしなかったところに、過去のこの種の事件の連発という、日本の政治史の悲劇があったと私は思うのでございます。浅沼事件が起った当時、総理は、この背後関係を徹底的に洗うということを言明されたと私は承知しておりますが、この右翼の背後関係というものについて、一体どのようにその実態の究明に努力されたか。さらにまた右翼というものを、一体総理は、戦前戦後の日本の右翼――戦前における右翼、あるいは戦後一たん解散をされた右翼が、ちょうど講和条約の発生後から続々とできてくる。今、大小合わせて三百に近い右翼団体があるということでございますが、総理は日本のこの講和条約以後に発生した右翼、これとあるいは戦前の右翼と比較して、一体右翼というものに対して、総理はどういう御見解を持っておられるか、それをお聞きしたい。
  62. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 右翼にもいろいろございますが、明治初年から欧米思想、いろんな制度が入りまして、そうして日本の国粋保存というところから始まってきておるんじゃないかと思います。あるいは、民族主義とか、あるいは帝国主義とか、国粋的な考え方でいっておったのが、戦前におきましては、一時軍部とつながっていろいろなテロ事件を起こしたことは御承知通りで、ございます。戦後におきましては、大体そういう思想からきておりまするが、加うるに、いわゆる反共、共産主義撲滅という、こういうことが戦前と違ってきたんではないかという見方を私はいたしておるのでございます。占領中は連合軍から解散を命ぜられましたが、その後講和条約成立後におきまして、だんだん遺憾ながらこういう右翼団体というものがふえつつあることは御承知通りでございます。  なお、先般の事件後この背後関係につきましては、検察、警察の方に申し出まして、背後関係を十分調査するようにいたしております。具体的な問題は所管大臣からお答えいたさせます。
  63. 木原津與志

    ○木原委員 浅沼事件捜査結果を新聞に公表した東京地検の見解がございます。これは昨年の十一月十八日に地検が発表をいたしておりますが、この中にこういう発表がある。「この事件に関連して大日本愛国党、全アジア反共青年連盟など右翼団体の資金源を調査した。この結果、これらの団体に三業地、一流会社などから資金を出していることをつきとめた。内容関係者のうちに総選挙に立候補している者もあり、公表できない。」こういう発表をしておる。さらにつけ加えて、「国会で質問があれば内容を明らかにするだけの資料はそろっている。」ということを東京地検が発表しておる。この背後関係、特に資金関係についての東京地検の発表をわれわれは待っておったのでございますが、今日までこれを発表しない。なぜ今日まで、発表できるだけの資料を持っておるといいながら発表しない理由、だれに気がねして発表をしないのか、いつ発表をするのか、発表しないのか、この点を法務大臣にお伺いする。
  64. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 お答えいたします。  浅沼事件に関連いたしまして、ただいま御指摘の右翼団体の資金源の状況につきましては、捜査当局におきまして厳正な態度をもって調査を続けております。なお今日……(「いつまでやるか」と呼び、その他発言する者あり)なお現在調査中でございますので、そのために発表がおくれておるということを遺憾に存じます。
  65. 木原津與志

    ○木原委員 大臣、完全な調査ができるには相当の日にちがかかりましょう。しかしすでに十一月の十八日に東京地検発表として、「右翼団体の資金源を調査した。この結果、これらの団体に三業地、一流会社などから資金を出していることをつきとめた。内容は」云々、それで「国会で質問があれば内容を明らかにするだけの資料はそろっている。」ということを地検が発表しているではないか。もう三カ月も前に資料はそろっているというておる。しかも国会で質問があれば内容を明らかにするというのでございますから、この地検の発表通り、私が今あなたに資料の内容を明らかにしろということを要求しますから、この場でその山口二矢関係事件から収集された資金源についてのあれを今公表して下さい。
  66. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいまの御要求の資金源の発表の問題につきましては、近日中にとりそろえたいと存じておるのでありますが、まだ調査中に属しておりますので、今日ただいまここで御発表する段階に至っておりません。その点を御了承願いたいと存じます。
  67. 木原津與志

    ○木原委員 まだ捜査続行中だという点については私も了解します。その点はもういい。しかし今までにすでに資料ができておる。十一月十八日においてすでに国会で質問があれば内容を明らかにする準備があると言っている。その当時の十一月十八日までの調べたこの資料と、十一月の十八日から最近までにまとめた資料、これをあわせてここで質問に対してお答えをするということは困難なことじゃないと思う。あなた方自身、検察庁自身が、国会の質問に答えて明らかにするということを言っておるのだから、大臣がやらないと言うことはないじゃないか。一体だれに気がねをして発表を拒むのですか。何か気がねをするものがあるのじゃないかと私ども反対党は勘ぐるのですよ。発表すればどこかで悪いところがあるのだろう、だから発表しないのだ、こういうふうに勘ぐりたくなるのです。だから、検察庁が公文書で、国会で質問があったら今までできた資金源についての捜査資料を全部提供します、国会に明らかにしますということを、すでに昨年の十一月に言っているのですから、もしできなければ、十一月十八日現在の資料だけでもいいですから、これを今直ちに出して下さい。
  68. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいまの重ねての御要求に対しましてお答えいたします。  当時、検察庁当局におきまして発表し得る程度のものがあるという表現になっておりますが、法務省におきましてなおその内容を判断してみますと、どうもまだ調査に不十分な点がございますので、そのために調査を続行いたしておるのでございます。従ってその調査が完了次第御発表することにいたしたいと思いますが、なおこれは捜査中の問題でございますので、事務的な問題については刑事局長からお答えいたさせます。
  69. 濱田幸雄

    濱田委員長 関連質問の申し出があります。この際これを許します。坂本泰良君。
  70. 坂本泰良

    ○坂本委員 昨年の三十七回特別国会におきまして、十二月二十二日の法務委員会で、ただいまの資金源の問題で私が質問をしましたところ、竹内刑事局長は、まだ調査中だ、こういうようなことで逃げたのでありますが、さらに坪野委員質問に対して、「数カ月要するなんというようなものじゃないと思います。もっと早く御報告ができると思います」こういうことを言われておるわけであります。従って、当日の法務委員会では、新聞などではのれんに腕押し、こういわれておったのですが、われわれが入れかわり立ちかわりその発表を迫っておるのに対して、捜査中であるということで逃げ、それでは来年の休会明けの国会でやれば二月ごろになるじゃないか、こういう質問に対して、そうはかからないと思う、こういう答弁があるのです。従ってもうこれは発表しなければならない、こういうふうに考えるのですが、いかがですか。
  71. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 お答えいたします。ただいま御指摘のように、昨年末の法務委員会におきまして、私さように答弁をいたしております。そのことにつきまして、東京地検当局に対しまして、速記録ももちろん見せまして、捜査の促進方を申し入れております。東京地検におきましても、鋭意捜査を進めておりまして、ほぼ捜査を完了しておるやに伺っておるのでございますが、この委員会に提供するだけの準備がまだ整っていないということでございまして、今も内部でいろいろと作業をしておると思いますが、きわめて近い時間に御発表できるかと思います。
  72. 坂本泰良

    ○坂本委員 今竹内刑事局長の答弁はどうも詭弁であると思います。昨年の十二月二十二日の法務委員会において朝日新聞――その他の新聞もありますが、朝日新聞によって今木原委員が言われたようなことをわれわれは質問をしたわけです。そうして、数カ月なんてかからないのだ、もう早くしたいのだけれども捜査関係でできない、こう言われた。まだ浅沼事件捜査しているのですか。どうです。捜査の段階ではできぬというなら、その点は捜査を打ち切ったらみずから発表すべきである。そうでしょう、こういう重大な事件を発表するのですから……。発表できないということはないと思う。この発表は本会議を休んでもしなければ――こういう問題を発表せずにやったから、さらにまた右翼団体が出てきて今度のような不祥事件が起きたと思う。これは政府の怠慢ですよ。総理大臣の責任ですよ。これを早く委員会で発表した上でないと、ほんとうの嶋中事件、今国民が不安を来たしておるところのこの暴力の問題、右翼団体の問題に対しての究明はできないと私は思う。すぐ出せるかどうか、その点をお聞きしたい。出せないことはないと思う。出せない以上はこれを休憩してやらなければならぬ。さらに検事総長を出してもらいたい。法務大臣、あなたはぬらりくらりしていてだめだ。もっと大臣の見識でやってもらわなければならぬ。
  73. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 重ねてお答えいたしますが、発表の問題につきましては、過日の本会議におきましても、私からも、いずれその時期を得ましてなるべく早く発表いたしますということは申し上げてあるのでございます。本日の段階におきましては、遺憾ながらまだ発表し得る段階に至っておりませんので、何とぞ御了承願いたいと存じます。
  74. 木原津與志

    ○木原委員 大臣は発表する段階じゃないと言っておりますが、私どもが発表しろということを言うのは、何も法務省の過去における発表を明らかにしろというのじゃない。これは東京地検の発表で、それによって、すでに資料はできておる、質問があれば内容を明らかにするということを十一月十八日に言っておるのでありますから、法務大臣が発表をしないというならば、私は委員長に要求するが、検事総長をこの委員会に呼んでいただく。そうして検察庁の発表ですから、検事総長は発表できないとは言わぬだろうと思う、こういう地検の発表をやらしているのですから……。だから検事総長をこの委員会に呼んでもらって、そうしてこの資金関係を明らかにしていただきたい。これが明らかにならなければ次の質問ができない。
  75. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 重ねてお答えいたします。発表の問題につきましては、当時の検察庁当局云々という、御指摘の発表し得るものがあると答えております点は、これは一検事の談話でございます。そうしてこの問題につきましては、そこにも答えておりますように、国会において御質問等がありましたならば御発表ができるだろうというようなことを言っております点は、われわれ当局におきまして、当時から内容を見てみますと、なおその一検事の意見では、発表し得る程度のものではないということがわかりましたので、従って引き続き調査を続けておるのであります。  なお、重ねて申し上げますが、この問題につきましては、単に当局だけでやり得る問題ではございませんし、捜査中の問題でございますので、警察当局ともいろいろ打ち合わせをしておるのであります。その打ち合わせもいずれ間もなく完了すると思いますから、遠からざる時期におきまして発表し得るかと考えておるのでございます。
  76. 木原津與志

    ○木原委員 大臣は一検事の発表だということを言われますが、この発表の形式は、この一検事の発表じゃないのですよ。東京地検の公安部の発表になっておる。そうして、その東京地検の公安部と警視庁とが同時に、この事件の経過、さらにまた公安委員会もそのときに日を同じゅうして丸の内署長の訓戒というものも出しておる。従って、この山口浅沼事件に関する東京地検と警視庁と公安委員会との三つが、これに対して日を同じゅうして発表をしておる。それが十一月の十八日の朝日新聞に、それぞれ地検、警視庁、国家公安委員会、この三つが併行してこの事件についての発表となったのでございますから、決して大臣が言われるように、地方検察庁の一検事の発表ではありません。これは東京地検の発表であり、この地検の発表は、地検だけで単独でやることはない。検事総長の指揮を受けての発表であるに違いない。同時に警視庁の発表も、これは警視総監の指揮によって発表されておる。こういうような官庁の公式発表を、今になって大臣が一検事の私見だくらいのことをおっしゃったって、それは通りません。委員長、どうか一つ検事総長をここに呼んでもらうようになにして下さい。理事会を開いて下さい。
  77. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 先ほども申し上げましたように、関係警察当局とも捜査中の問題でございますので、研究しておる。あの事件につきましては、なお引き続き資金関係の問題については捜査をしておるのでございます。しかしながら、その点も、先刻来申し上げます通り、だんだんと完結の時期に近づいておりまして、関係警察当局とも始終話し合いをしておりますから、いましばらく御猶予を願いたいと思います。
  78. 木原津與志

    ○木原委員 資金源について全部を捜査するということは、これはまだ今日直ちにできぬかもしれぬことは私もわかる。ただ私があなたに申したいことは、この十一月十八日、地検と警視庁と公安委員会とで、三者がおそらく連絡をとって発表したんだろうと思う。この地検の当日の発表の中で、国会で質問があれば内容を明らかにするだけの資金源に関する資料を整えておるということを公式に発表しておるから、その程度でこれが完全なものかどうかは知りませんが、少なくとも捜査当局が発表をしていい、国会で要求されれば発表していいというのでありますから、それでこれらの発表を要求する。私ども捜査が終わった完全な姿において発表しろということを要求するのじゃない。この十一月十八日の現在において作られた資料、これを質問によって出すというのですから、これをあなたが出させぬという根拠は一体どこにある。なぜ出さないのです。これを出してもらわなければ、次の私の質問が続かないのですよ。
  79. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 たっての御要求でございますから、ただいま警察当局とも打ち合わせまして、その結果、ただいまの段階においてお答えし得る点を刑事局長をして答弁いたさせます。
  80. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 浅沼事件の背後関係捜査する過程におきまして、関係団体のいわゆる資金の収支関係を究明する必要が生じましたので、必要な限度におきましてその収支関係を調査いたしましたところ、入手の方法等に関しまして若干不正な手段を用いたのではないかとの疑いも考えられましたから、捜査をさらに行ないまして、今日現段階における状況を御報告することができる次第でございます。  まず全アジア反共青年連盟関係から申し上げますと、同連盟は昨年六月結成されたものでありますが、浅沼事件発生した十月までの状況は、合計約二十五万円、月額平均五万円程度でありまして、その内訳は債権取り立ての方法によったもの、連盟員からの醸金、右翼関係者からの借入金、会社、銀行等から新聞賛助金として入手したものなどでございます。  右のうち、新聞賛助金として会社、銀行等から入手したものの詳細は、次の通りでございます。株式会社新世界、二万円。三菱銀行、二千円。電気化学工業株式会社、三千円。第一銀行本店、二千円。大和証券本店、二千五百円。野村証券、二千五百円。山一証券、二千五百円。日興証券、二千五百円。株式会社松坂屋上野支店、一千円。東京都競馬株式会社、二千円。住友銀行東京事務所、二千円。浅草信用金庫、一千円。富士製鉄株式会社、五千円。千代田化工建設株式会社新橋分室、二千円。川崎重工株式会社、千円。東邦生命保険相互会社、一千円。三信建物株式会社、千円。日活株式会社、二千円。日本石油株式会社、三千円。三井銀行、三千円。東海銀行、五百円。三井金属鉱業株式会社、二千円。東洋高圧工業株式会社、二千円。三菱地所株式会社、千円。大映株式会社、三千円。これらは、会社、銀行等から、新聞賛助金として入手したものであって、これらの金員につきましては、いずれも、相手方が同連盟の主義主張に賛同した結果によるものとは認められません。不本意ながらも、いわゆるおつき合いとして金を出した事情が認められましたが、脅迫その他の犯罪に当たる程度に達する方法に出たと認められるだけの証拠はなかったものでございます。  これらの金の提供につきましては、右のような事情が認められるばかりではなく、その金額も五百円、千円または二千円等些少な額であり、とうてい団体を支援するためのいわゆる資金供与とは考えられないものと思うのでございます。  債権取り立ての方法によったものとは、増山実から九万左千八百四十二円を入手したものでございまして、これは吉村法俊及び中堂利夫が他から債権取り立てを依頼されて、債務者である増山氏より右金員を受領し、連盟の資金に流用したものであり、横領罪に当たることが判明しましたので、すでにこの行為につきまして、両名を起訴処分済みでございます。  次に大日本愛国党関係でございますが、昨年一カ年における収入の状況は、おおむね月平均三十万円と認められ、その内訳は、党員の納入する党費、新聞売上金、赤尾敏等の拠出、会社等からの新聞賛助金、または広告料などとして入手したもの等でございます。  会社等から新聞賛助金等の名義で入手した金員の詳細は次の通りでございます。なおこれらの金員の拠出の趣旨につきましても、全アジア反共青年連盟の場合と全く同じ事情が認められると思います。株式会社伊勢丹、これは三千円。三菱石油、三千円。森永乳業、千五百円。三越、三千円。日本通運、二千円。明電舎、二千円。小松製作所、五千円。大洋漁業、五千円。麒麟麦酒、三千円。住友化学工業、二千円。日本麦酒、三千円等でございます。  次に防共挺身隊関係、収入としては同志関係等からの拠出、福田進の事業収益などによっているものと考えられ、その額は一カ月三十五万円程度ではないかと推定されます。しかし収支の詳細は明らかにすることができませんでした。なお、事業収益を除いたその他の収入は、月額十万円程度と推定される状況でございます。  以上、御報告を申し上げます。
  81. 木原津與志

    ○木原委員 今刑事局長が読み上げられたその資料は、その資金源の発表は、この十一月十八日に東京地検の公安部で発表したものと同じものですか。
  82. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 東京地検で発表したというお言葉でございますが、東京地検では内容については発表いたしておりません。
  83. 木原津與志

    ○木原委員 東京地検では、右翼団体の資金源を調査した。その結果、これらの団体に、三業地、一流会社などから資金を出していることを突きとめたという発表なんです。その内容は、関係者のうち総選挙に立候補している者があるから公表できない、こういうことなんだが、今あなたの発表されたものには、もちろん一流会社も入っておるが、三業地からの基金、それが明らかにされていない。どうもその地検が発表したこの準備しておる資料というのと、今あなたが発表された資料とは、少し内容が違うようだがどうでしょう。
  84. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 地検で当時新聞に報道されました内容は、これは正式に発表したものではございませんで、新聞記者諸君と雑談をしております間に、そういうような記事になるような発言をしてしまったということでございます。そういう意味に私は承知をいたしております。ところで、東京地検で当時用意しておりました資料とは何であるかということでございまするけれども、私の報告を受けておりますところによりますと、本件の被疑者または重要な参考人、後に被疑者になりました者の家宅捜索その他によりまして押収した文書の中から資金関係の記載がある、それをもとにしての意見ではないかと思いますが、捜査の結果と申しますのは、それらの記載だけでは不十分でございまして、それがはたして真実にその名あて人から出ているかどうかということを突きとめ、それがどういう趣旨で出されているかということを突きとめまして、初めて公に発表をして差しつかえないことになるかと私は考えております。そういう意味で、根拠になっております資料は、東京地検に押収しております書類に記載してあるものが主になっておると思いますが、捜査の結果に基づいてあるいは若干変更になっておりますか、私がきょう申し上げましたのは、検察当局からの報告に基づくものでございます。
  85. 木原津與志

    ○木原委員 今公表されたアジア反共連盟と愛国党、防共挺身隊、この三つに関しての資金源の一部でございますが、これは、今発表になったものは政治資金規正法によって届け出されたもの以外のものですか。
  86. 松村清之

    ○松村政府委員 お答えいたします。ただいま刑事局長からお話しのうち、私どもの手元にありますのは、今問題になっておる大日本愛国党でございますが、これは政治資金規正法によりまして、政治団体として届け出がなされておる。最近三十五年の上半期の収支状況も百八十万円という届け出がなされております。
  87. 木原津與志

    ○木原委員 この愛国党に関しては、政治資金規正法によって届け出されたものと今あなたはおっしゃったですね。この政治資金規正法によって届け出されたものは、これは何も地検が発表をしなくても、資金源として資料を集めた、特に資金源が明らかになったといって地検が公表すべき性質のものじゃないのですよ。これは政治資金規正法によって自治省に届けられてある。これはだれでも見られるものなのです。だから、そういったようなものを、そういったようなだれでもわかるようなものを、特に地検が捜査の結果、資金を出しているところを突きとめたという発表を――そんな、自治庁に届け出てあるようものを麗々しゅう資金源だと言って発表するはずはない。地検で発表したこの資金源というのは、公に自治省に届け出られていないものに対する捜査の結果の資金源のことを意味しておるんだろうと思う。そうでなければ意味はないじゃないか。自治省に届けられたものは、これは何も地検が麗々しゅう発表しなくても、こういったような本にでも雑誌にでもちゃんと載っているんだ。国民が知りたい、われわれ国会が知りたいのは、そういったような公式の届出の金額でなくて、裏の、それ以外、われわれとしては知ることのできないものを捜査機関が捜査してつかんだろう、そのつかんだものを意味しておるというふうに考えるから、今あなた方の発表されたものは地検で言う資料というものとは、私は違うと思う。重ねて一緒のものかどうか向いたい。
  88. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 一緒のものであるかどうかということでございますが、自治省に届けられましたものを引き厚してただいま御報告申し上げたのではなくして、先ほど申しましたように、関係者の家宅捜索をいたしました際に押収した文書の中に表われておる資金の関係を、出した人につきましても、なお確かめました上で御報告を申し上げたのでございますので、地検では発表いたしておらないことは先ほど申した通りでございますが、地検の資料と申しますのは、そういう経過によって出てきたものでございます。従いまして、自治省の数字とぴっしゃり合うかどうか、これは自治省の選管に届け出たものと比較してみなければわかりませんが……。
  89. 木原津與志

    ○木原委員 今の刑事局長の答弁をされたことが、昨年の十一月浅沼事件について地検が発表した資金源についての資料を持っておるという、その資料の内容と同一のものであるとは私はちょっと考えられないと思う。従って、他日これは検事総長を本委員会に喚問して、これの内容についての質問をしたいと思いますので、この点はこれだけにして、次に池田総理にお伺いしたいと思います。  これは世間のうわさということだけでなくて、いろいろ日本の右翼だとか、あるいは右翼関係資料、こういったようなものに記載されておる内容、単なる新聞あるいは週刊誌の記載でなくて、責任ある出版物に基づいて記載されてあるものによって、私どもがぜひともその事実の真否について、総理にうそか、ほんとか事実をお尋ねしたいと思うのですが、そういったわれわれが入手し得た資料によれば、自民党と――特に自民党の幹部の人たち右翼との間に非常に密接な関係があるといわれておる。特にまた池田総理自身も、右翼とは若干関係があるんだということが書いてある。また世上そういったうわさも私は耳にするのであります。従って、池田さんが政治の姿勢を正すということを言われた。これは非常に私は敬服にたえない。その政治の姿勢を正すというものの中には、多分こういった世間でうわさされておる人で、あとで名前を私一々あげますが、こういう従来の自民党と右翼との縁を断ち切ってしまうという心がまえの中にも、この政治の姿勢を正すということが意味を持っておるのじゃないか。私はそう考える。そこで具体的にちょっとお伺いしてみたいと思うのですが、勤評闘争、警職法の闘争、さらにまた昨年の安保条約の改定阻止の闘争、この三つの闘争の中で非常に日本の右翼が表面に出だしたということがいわれておる。そのときに、昨年の安保闘争のときに岸内閣が、財界から自民党に献金をされるいわゆる経済再建懇談会からの献金の一部、この一部の一億五千万の資金を右翼の動員に回した、そういうことがいわれておるのでありますが、そういう事実があったかどうかということを総理からお答え願いたい。
  90. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は当時党の経理に一切関係しておりませんので、事実は存じません。総裁就任以来、そういうことには一切お金は出さぬように厳命を下しております。
  91. 木原津與志

    ○木原委員 それじゃあなたが総理に就任されてからのことをお尋ねいたしますが、六月十九日に――まずそのほかに、あなたの後援団体に宏池会というのがある。この宏池会の事務長をやっておる人が、興論社の小野秀樹という人だそうでありますが、この点はどうでしょうか。
  92. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 宏池会の代表の田村君がだれと交際しておるということは、私は存じません。
  93. 木原津與志

    ○木原委員 あなたが右翼と密接な関係があるといわれる一番端的なものは、あなたの後援団体である宏池会の事務長をしておられる小野秀樹という人が右翼の興論社の人だというところに、あなたが右翼と切っても切れない関係があるのではないか、またそのほか自民党の幹部の人たちにもこの右翼の人たちと非常に密接なつながりがある、そこで、自民党は右翼を洗うということを言うておるけれども、こういう実際に人的つながりがあるから、右翼を洗うことができないのだというのが、もっぱら世論なのです。ここのところをきっぱりとあなたの方でされないと、政治の姿勢を正すということは私はできないと思う。今参考までに私どもの集まった資料によってこれを読み上げてみます。こういうような自民党と右翼との関係があるのです。それは岸内閣のときに、これも政治結社ですが、内容は暴力団体の松葉会を岸さんが使われて、安保闘争のときにこの松葉会の人たちを院内に導入をした。さらに松葉会の人たちに自民党から金が渡って、この金が右翼の松葉会を中心とした右翼の動員の資金に使われておるということ、さらにまた六月十九日のアイクが来るように予定されておったときには、岸さんの命令で、建設大臣をしておった橋本登美三郎氏が、三万五千の右翼団体の動員を計画しておった、こういうような事実も言われておる。さらに河野一郎さんが右翼の児玉誉士夫と、さらに佐藤榮作氏が殉国青年隊の豊田繁隆という人、さらにもとの幹事長の川島正次郎氏が肥後享という、これも右翼の頭目の人、こういう人たちと手を結んでおるということが世上のうわさになり、さらにこれがうわさだけでなくて、単行本となり、さらに右翼の資料にもなっておる。この一連の関係がほんとうかうそか知りませんが、これをしっかり切りとってしまう、絶ってしまうということが、私はあなたの政治の姿勢を正すということになると思うのです。これは事実かどうか知りませんが、もし事実に反するということになれば、個人の私が名前をあげた人たちに釈明を求めてもよろしゅうございますが、とにかくそういうように自民党と右翼との間に従来人的にあるいは資金的にも非常に密接な関係があるということがいわれておる。これに対して総理はうわさだからおれは知らぬと言って一蹴されるか、あるいはその点についてももしあれば今後とも何らかの措置を講ずるという御決意があるかどうか、この際承っておきたい。
  94. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 他の方々につきましては、私は存じませんから申し上げませんが、私に関することにつきましては、はっきり申し上げます。  宏池会の代表者は田村敏雄君でございます。私は今お話の何とかいう方は全然知りません。代表者は田村敏雄君でございまして、これは大蔵省で何十年間一緒に勤めました。そうして彼は満州に行き、ソ連に引っ張られて、昭和二十六年に帰った男でございます。決して右翼ではございません。彼の思想をごらんになればわかります。この田村君が代表であるということは存じておりますが、私は御指名のような人は全然知りません。会ったこともないと思います。  それからほかのことにつきましては私は申し上げられません。ただ自由民主党総裁といたしましては、今の経理局長、また前の経理局長、これが一切彼らの責任でやっておりますが、そういうことは全然ないと聞いております。
  95. 木原津與志

    ○木原委員 総理は今否定をされましたが、私が今あげましたことは単なる風説だけではないと思う。りっぱな責任ある本の資料の中にそうしてあげてあるのでございます。しかし私はこれの事実を立証する証拠を持ちません。証拠を持ちませんが、単なるうわさでなくて、責任ある本の内容にそういうことが記載されてあるということを申し上げるのであります。  そこで今度は警察についてお尋ねしますが、今前回の田中委員質問に、警察警備の問題については、いろいろと説明がありましたが、私は一連の不祥事件右翼テロ事件発生とにらみ合わせて、はたして今の警視庁警備状態の中で、完全な警備状態にあるかどうかということについては、これは事件が起こったからそういう言葉を言うのだとあなた方は言われるかもしれぬが、われわれが警備に非常に危惧を抱く、あるいは国民一般がそういう危惧を抱くというものの中には、警察官が、取り締まりの警備の第一線に立っておる警官が、非常に右翼の人たちと何らかの関連を持っておるのではないかというようなことを指摘されるものが多々あるのです。たとえば、昨年六・一五の新劇俳優の襲撃事件東京地裁における公判において、石井一昌被告が、警察官から酒を飲まされて、そうして襲撃の誘導をされたのだということを言っておる。こういうような一つの事実を見ましても――事実がほんとかうそか、これも被告の供述ですから、その真疑についてはなお検討の余地はあるかと思いますが、こういうようなことを国民が聞けば、たまたまその後に発生した浅沼事件、あるいは嶋中事件、こういうようなものについても、ほんとに警備責任を十分に警察が尽くしていないのではないかということを、国民が疑惑を持つのは当然だと思う。この点について警察当局は右翼に対してどういう関係を持っておられるか、この点をお聞きしたい。
  96. 三輪良雄

    三輪政府委員 第一線の警察官右翼と非常に関係が深いのではないかというお尋ねでございますが、情報をとるという意味右翼に接することはもちろんありますけれども、お尋ねのような意味で、いわゆるくされ縁というようなものがあることは絶対ありません。公判において石井一昌被告が、警察にそそのかされてやったんだということを発言したことは、仰せの通り事実でございます。これにつきましては、警察部内はもちろんでございますが、事が公判廷の発言でございますので、検察庁におかれても取り調べの結果、それは全く事実に反するということが明らかになったのでございます。警察官がその前日情報をとりに参りましたということは事実でございますけれども、警察官がそそのかして、あのような乱暴を行なったということではないことは、その後検察官のお調べによって、本人も述べておるところでございます。
  97. 木原津與志

    ○木原委員 今の御説明でありますが、これは石井一昌がはっきりそれを明言しておるし、また国民の多数はそういうあなたの説明には納得し得ないものがあろうかと思うのです。特に警察が何でもかんでも警備の万全をとっておるということを言っておりながら、この警備関係でなく、犯罪捜査面においても、一体本腰を入れて捜査をやっておるのかどうかということについてさえ、警視庁に関しては、私ども疑いを持たざるを得ない点がある。これも一例をあげますが、たとえば椎名通産大臣、この椎名通産大臣の選挙違反の事件につきましても、すでにこの事務長の松川昌蔵という人が奥さんを連れて逃亡をしてからもう三年になる。しかもその人は東京市内に某氏がかくもうておるんだということまでうわさが飛んでおる。三年間かかってなおこの重要な人が警察の力で逮捕されないという姿をわれわれ国民も同じく見せつけられれば、これは時の大臣の選挙違反であるから、警察が特に手心を加えて、所在はわかっておるにかかわらず、わざと逮捕を遠慮しておるんだというような陰口も国民の間から出てくるのです。弱い者だけが警察捜査の網に引っかかって、そして時の権力者の選挙違反その他のものについては、警察が本気に捜査をしておらないんだというようなことも世上言われるようになるのであります。この椎名通産大臣の選挙違反の捜査はその後どうなっておりますか。それもついでにお聞きしておきます。
  98. 濱田幸雄

    濱田委員長 ちょっと木原委員に申し上げますが、国会議員のこういうようなことにつきまして、いわば本人の名誉にも関係することでございますから、その点は極力御考慮を願ってこれから発言願うようお願いします。
  99. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 お答えいたします。警察といたしましては、たとい大臣の関係者であろうとも、犯罪捜査については極力捜査を続けるわけであります。
  100. 木原津與志

    ○木原委員 形式的にはそういうふうに答弁をしなければ答弁にはなるまいが、委員長の御注意もありますから、その点はこれ以上お聞きしません。  さらに時間が経過しましたから結論に入ります。これは総理に要望しておくのですが、現在のこの右翼の実態、実勢力というものは大した力ではないと私は思うのです。しかしこれが将来、たとえば国際的な反共勢力、こういうようなものとこの右翼が結ぶ、あるいはこれに利用をされるというようなことにでもなると、これは大へんなことになるのじゃないかと私は思う。今日の単なる一少年の暗殺事件どころの騒ぎではないと思う。だから今度のこの事件を契機として、一つ日本の民主主義を守り抜くという総理の御決意に基づいて、どうか一つ今後とも――右翼全部が悪いとは私は申しません。この右翼のうち特にテロを標榜しておる右翼、この右翼をこのまましておくということは、これは非常に重大な結果を日本の政治の上に引き起こす。また引き起こした例も戦前においてあるのであります。これが軍部と結託をして、そして日本を破滅に導く糸口となったというこの苦い経験にかんがみまして、こういったような暴力右翼、暴力を標榜するこの右翼に対して徹底的な御決意を持って今後とも政治をやっていただきたいということを最後に要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  101. 濱田幸雄

    濱田委員長 門司亮君。
  102. 門司亮

    ○門司委員 質問に入る前にちょっと委員長に聞いておきたいのです。さっきの理事会の話し合いでは、総理は五時ごろまでしかここに在席できないという話でしたが、そうだとするともう時間が非常に迫っておりまして、私はこの前の委員会関係もあるものですから、主として総理大臣にお聞きをしたいと思うのですが、時間の関係はどうですか。一応総理と打ち合わせていただきたいと思います。
  103. 濱田幸雄

    濱田委員長 門司さんに申し上げます。総理の方は五時半までいいと言われるから、できるだけそれまで総理の方に御質問願います。
  104. 坂本泰良

    ○坂本委員 ちょっと関連して。――門司さんの了承を得ましたから。――総理は、さっきは五時半から八時半までということでしたが、五時半から八時半までと申しますと、三時間あるわけでありまして、その間にまだ多数の質問者がありまして、三時間も総理が席をはずされるということになれば、その間は進行ができないと思うわけです。従って明日の午前中これをやってもらいたい、こういうことです。
  105. 濱田幸雄

    濱田委員長 私の委員長としての意見を申し上げます。総理の方は、きょう五時半から渉外事項につきまして席をはずされることになっております。それで、総理が五時半に御退席をなさるときには、暫時休憩に入りたいと思います。そしてあとからすぐ理事会を開いて、あとの議事の進行についての打合わせをしたいという考えでおりますから、あしたのこととか、きょうのこととかいうことは、理事会でも十分に相談をすべきものであって、今私としてこれについてとかくのことを申し上げることは適当でないと思います。門司君どうか……。
  106. 門司亮

    ○門司委員 まず最初に総理にお聞きをしておきたと思いますことは、前の浅沼委員長の刺殺事件の動機と、今回の嶋中事件の動機とは、同じ団体の行為ではあるが、その動機について多少異なったものがあるというように考えておりますが、総理はどうお考えになっておりますか。
  107. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 今回のものはまだ取調べ中でございますし、新聞の報道あるいは断片的のところから見ますと、同じ団体に属しておりましても、ちょっと動機が違うのじゃないかというような気もいたします。どこがどう違うかということは、今はっきり申し上げられませんが、調査後におきましては私ははっきりできると思います。
  108. 門司亮

    ○門司委員 この前の委員会でもお尋ねをしましたように、前の事件は、政治に対する不信感がかなり認められたと思います。また総理もそのようにお答えになったと思います。今回の事件は、そうした一つの現象的の現われでなくして、思想的にも非常に根深いものがありはしないかということであります。そのことはたまたまこの事件の起こります直前に、御承知のように出版社その他の名前によって、この問題の糾弾の演説会等が開かれております。さらにまた明日は大阪の中之島公会堂でも開かれるやに私ども聞いております。こういうことを考えて参りますと、右翼という一つの団体をバックアップいたしておりますものが、今回の場合は、そういう業界の争いがその背後にありはしないかということが考えられるのでありますが、こういう背景はお考えになりませんか。
  109. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 出版業界の争いの結果とも私は断定できないと思います。
  110. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、どこまでもこの問題は右翼のいわゆる何といいますか、直接行動によるものであって、右翼団体の中でさらに考えなければなりませんことは、思想的の右翼の運動とこうした直接行動に出る右翼との関係であります。この関係について総理はどうお考えになるか。いわゆる行動右翼と称するものにこれは部類するのではないかと考えております。思想によって思想に対抗するという考え方でなくして、この種の団体は、明らかに私は直接行動に出る一つの団体であって、いわゆる行動右翼と称せられる団体に属するものだと考えておりまするが、そのようにお考えでございますか。
  111. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 まあ行動右翼の範疇に属するものではございましょうが、ただその思想が政治的の問題か、あるいはほんとうに何と申しますか、日本の社会制度の問題か、いろいろむずかしい問題があると思いまするが、行動右翼ということは私は言い得るのではないかと思います。
  112. 門司亮

    ○門司委員 行動右翼ということになりますと、一つの団体でございまして、従って問題は例の破防法に抵触する危険があると私は思います。この点について総理としてのお考えはどうでございますか。行動に出るということは、破防法の四条に書いてあるものに該当する行為であるのであります。いわゆる刑法の百九十九条殺人の行為ということが書いてありまして、こういうことに該当するのではないかというふうに私は考えるのですが、総理はどうお考えになりますか。
  113. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 法律的にむずかしい問題でございまするが、今度の少年は、あの団体の一員としてやったのではないようでございます、脱退しておりまするから。  しこうして、破防法にかかるか、かからぬかという問題はなかなか厄介な問題であります。私は、この点につきましては、専門の政府委員から答弁をさせたいと思います。
  114. 藤井五一郎

    ○藤井(五)政府委員 お答えします。今日の例の問題が、破壊活動防止法に抵触するかどうかということにつきましては、これには厳格な条件がございまして、今日の調査の状態におきましては、ここで破防法に抵触するということを申し上げる段階でないのでございます。調査の進展によって破防法を適用するかどうかはわかることで、今日まだ申し上げる段階にございません。
  115. 門司亮

    ○門司委員 今の御答弁については、これもまた質問の過程の中でもう少し申し上げてみたいと思うものがございますので、あとに譲りますが、その次に一応聞いておきたいと思いますことは、内閣の責任論の問題がいろいろ議論されております。そこで、これもしばしば聞かれたことだと思いますが、昨年の浅沼さんの事件のときに、この委員会で同じように総理は、二度とこういう事件が起こらないように善処したいということを言明されております。ところが、その後のこうした右翼に対する取り締まりというものは一体どういう形で行なわれておりますか、具体的に一つお話を願いたいと思います。
  116. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 関係当局にこういう事件の起こらないように、具体的に措置するよう指令いたしました。従いまして、関係当局より御答弁申し上げます。
  117. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 法務省当局といたしましては、当該具体の事件につきまして、峻厳なる態度をもって調査を進めました。そうして、そのよって来たるところを尋ね、また関係の部分について十二分の研究をいたしております。また公安調査庁におきましては、特に当時以来、これらの団体を調査する人員についても差し繰りをいたしまして、そうして調査を進めております。なお、団体等につきましては、五、六の団体について特に注意を払っておる次第でございます。
  118. 門司亮

    ○門司委員 今のでは答弁にならぬのですがね、私は具体的にどういうことをされたかということを聞いておるのであって、調査研究中にこういう事件が次々に起こってきたのでは、これは国民がかないません。去年の十月に起こった事件以来どういう措置を具体的にとられておるか、こういうことを聞いておるのであります。
  119. 安井謙

    ○安井国務大臣 前々回の事件等にもかんがみまして、いわゆる警備力を増強いたしております。人員等を増強し、そうしてさらに危険な団体に対する監視、調査というものを厳重にいたし、また襲われる危険のある方々に対する警備ということも、非常に意を使ってやっておる次第でございますが、たまたま今度のような事件が起こって申しわけないことと存じております。
  120. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、こういうことになりますか。気を使って、そうして警備人員もふやしてやっておったが、たまたまこういう事件ができたんだ、こうお答えになっておりますが、そういたしますと、この事件責任所在というものは一体どこにありますか。検討は十分やっておったつもりだが、こういう事件ができたんだ、こういうことだけでは、国民は私はこの際納得しないと思いますが、一体この責任所在をどこにお考えになっておるか、その次の段階を一つ聞いておきたいと思います。
  121. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 浅沼事件が起こりましてから、私といたしましては、こういうテロの起こらないように、国民が、何と申しまするか、暴力排除の気持になって、そうしてそれがムード的になるようなことに努力してきたのであります。その一環として、刃物を持たない連動等もその現われでございますが、これは十分ではございません。従いまして、青少年の教育とかあるいは順法精神の普及とか、法的にどういうふうな措置をとるべきかということも考えなければなりますまい、こういうことで努力して参ったのでございます。従いまして、行政全般を担当しておりまする私といたしましては、全般的な政治上の責任があることは私は認めておるのであります。ただ、具体的の問題につきましては、これは国家公安委員その他警察当局の方で具体的の措置をとっていただくようにお願いしておる次第でございます。
  122. 門司亮

    ○門司委員 今総理大臣から答弁はございましたが、これはいずれも抽象的でありまして、それから刃物を持たない運動というようなことは今始まった運動ではありませんで、これはほかの法律にもちゃんと書いてあるのでありまして、十分に取り締まりのすることのできるように、警職法その他でできております。だから私はそういうことではなくして、もう少しこの種の事件については、政府がはっきりした責任所在というものを明確にすべきだと、こう私は考えております。総理大臣は、なるほど憲法の六十五条の行政権は持っておる、しかし警察に対しての指揮監督権は持っていないというようなことをときどき言われますけれども、私は同じ憲法でも七十二条には、明らかに総理大臣の職務と書いて、そうして一番最後の条項を見てみますると「並びに行政各部を指揮監督する。」とこう書いてあるのですね。そういたしますと、総理大臣の言われるような、ただ単に六十五条の行政権はあるが、しかしそれは末端のことでなくて、指揮監督をしない。――ただその間に問題になるのは、政府の逃げ口上に使われることは、これは警察で出した本の中に書いてありますから言っておきますが、どういうことを書いておるかといいますと、「総理大臣の所轄のもとに」とこう書いてある。これは監督権限ではない、広い意味における権限であって監督権限をさしたものではないということを警察自体から出た本の中に書いてあります。だから私は総理大臣はおそらくそういうことで逃げられようかと考えておりますが、しかし警察の本に書いてありまする「所轄のもとに」という字句については後ほどまた議論をしたいと思いますが、今申し上げましたように憲法においては七十二条には明確に行政一般の指揮監督をする、こう書いてありますから、私は単なる六十五条だけの解釈では済まされないと思う。やはりこれは内閣に原因と申しますか、責任があると解釈する方が私は正しいと思うのですが、その点は総理大臣どうお考えになりますか。
  123. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は行政一般につきましては、内閣総理大臣責任でございますが、行政の一部を特定の委員会に委ねることができることになっております。国家公安委員会というものは、これが警察行政の具体的責任を持つ。ただ憲法上そういうものに一部委任されましても、国家の体系としてはやはり総理大臣の所轄内に固く、こういうことでございまして、総理大臣といたしましては、予算とかいろいろな法的の問題につきましては、総理大臣があれしますけれども、警察行政の管理運営につきましては、総理大臣は関係ないものと私は解釈しておるのであります。詳しくは法制局長官からお答えいたします。
  124. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは門司委員もよく御承知だと思いますが、行政委員会と内閣との関係の問題でございます。憲法には、行政権は内閣に属するとあり、また内閣総理大臣は内閣を代表して行政各部を指揮監督する、こういう規定がございます。この規定から申せば、内閣総理大臣は、全般的な行政についての指揮監督権を持っておるわけであります。しからば他面非常に中立的な、政治的中立性を要するような行政あるいは技術的な行政について、いゆわる行政委員会というものを作ることが憲法違反かどうかという問題になって参りますと、これは例の人事院の際にも国会でいろいろ御議論になったところでございますけれども、やはり行政の一部、特に特殊の性格を持っておるという行政について、それを行政委員会というものに権限を持たせるということは、これは必ずしも憲法違反ではないというのが一般の学説でございます。国家公務員法、警察法もそういう意味で憲法違反にはあらず、かように考えられておるわけであります。行政委員会の場合、それでは総理大臣の指揮監督権との関係がどうしてどうなるかということでございます。これはいゆわる普通の指揮監督権は、要するに下級の行政機関に対してああしろ、こうしろということを言うわけでございます。そういうふうに総理大臣なら総理大臣の監督下に、すべての行政機関が一々指揮監督に服するならば、実は合議制の行政機関を作る必要はないわけでございます。合議制の行政機関というものは、要するにその委員の合議によって事を決するという性質のものであります。従いまして、それは性質からいって上級機関の事実の指揮監督権に服するになじまないものであります。つまり、また指揮監督に服するに適しないものについて行政委員会を作るという問題になってくるわけであります。これを逆に申せば、行政委員会というものは性質上独立でなければ意味をなさない。独立してないものをわざわざ行政委員会を作って、何人かの委員の合議で決するということは、そういうものは必要ないわけであります。そういうものであれば独任制の機関で十分であります。そういうところからくるわけであります。これは憲法あるいは内閣法の解釈としても、特殊のそういう行政委員会については、やはり所管大臣あるいは内閣総理大臣というものの指揮監督権は及ばない、かように解釈するのが相当である、かように考えられております。それを表わす言葉としては、今門司委員もおあげになりましたが、警察法には、内閣総理大臣所轄のもとに国家公安委員会を置くという表現になっております。あるいは国家公務員法をごらんになりますと、内閣の所轄のもとに人事院を置く。あるいは独占禁止法をごらんになりますと、やはり内閣総理大臣所轄のもとに公正取引委員会を置くという言葉が出ております。その所轄という意味は、またあとから御議論があるかもわかりませんが、われわれの法令用語としては、つまり総理府にある。内閣総理大臣の下にはあるけれども、指揮監督権は持たない。そういうところを表わす言葉として実は使っております。指揮監督権を持つ場合には、管理のもとにというような言葉を使います。所轄というのは、そういうものではないという性格を表わすためにこれは使っている言葉でございます。これは言葉からもそうでございますし、また委員会というものの性質上、そうでなければ委員会を作る意味はない。またそういう行政委員会を特殊の行政分野について作ることは、必ずしも憲法違反ではない、かように従来からも考えられております。そういう意味で今の警察制度というものは、やはり政治的中立ということに相当重点を置いて、これも内閣の影響下から極力離そう、全く離してしまうのは問題でございますから、人事権等ではつながっておりますけれども、そういう意味で具体的な指揮監督権には服さないようにしよう、こういうことでできておるわけであります。
  125. 門司亮

    ○門司委員 法制局長から長い御答弁をいただきましたが、もう少し法制局長は法律の関連性を考えて私は御答弁が願いたいと思います。私も行政委員会が憲法違反であるとかないとかいうことを今論じておるわけではございません。行政委員会があることは事実であります。しかし、この警察に関する行政委員会は、他の人事院やあるいは公正取引の委員会とは性格が違っております。条文も違っております。どこが違っておるかといえば、警察法の十一条の二項を読んでごらんなさい。どう書いてあるか。総理大臣の任命する国家公安委員長、国務大臣が、出席委員の過半数で決しない場合、可否同数の場合においては委員長これを決すると書いてあります。これは総理大臣が推薦されて国会が認めた他の五人の委員のほかに、内閣総理大臣に直属した、いわゆる任命権によって指名されておりまする国務大臣が、場合によっては可否同数のときは決することができるのであります。これは普通の行政委員会とは違うということだけは、一つはっきり法制局長も知っておいてもらいたいと思う。表決権の問題、ここに問題があるのであります。従って、どんなにあなた方が、行政委員会は違法でないから、総理大臣の権限が及ばないのだからとおっしゃいましても、警察法の十一条の二項にこの条文を入れたということは、明らかに、あなた方の言葉を使えば、政府の政治責任を明らかにするために、昭和二十九年の警察法改正のときにこれは取り入れられたと思う。その当時の警察法改正に対する議論の中にこれはあったはずだ。そういたしますならば、現行警察法の十一条の二項というものは、明らかにその責任所在というものが任命権者である内閣総理大臣に及ぶものであるということを申し上げても、私はちっとも差しつかえないと思う。他の委員会とは違うのであります。他の委員会にこういう委員会がありますか。警察委員会だけでしょう。だから、今法制局長は長い間御答弁をなさいましたが、それは警察法と憲法との関連性というものをもう少し十分に一つお考えを願えば、これが純然たる行政委員会でないということはおわかりのはずなのだ。また、そういうことを基礎にしてこの警察法はできているということ、私どもが反対したにもかかわらずこの警察法はできているということである。従って警察法の建前からいえば、あくまでもやはり責任内閣総理大臣にあるといわなければならないと私は考える。この点について内閣総理大臣は一体どうお考えになりますか。法制局長はいろいろ答弁されましたが、私はあの法制局長の答弁だけで承知するわけには参りませんので、あらためて内閣総理大臣に聞いておきたい。
  126. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 お話しの通り、昭和二十九年の改正で入ったのでありますが、それだからといって私は内閣に責任があるという断定はできないと思います。
  127. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど御答弁いたしました点、補足いたしますが、お説の通り警察法では委員長は国務大臣をもって当てるということになっておりますが、これは昭和二十九年の改正の際には非常に御議論になったこと、これもよく承知しております。また御議論もございました関係で、これは原案も御承知のように委員長には表決権を与えないで、いわゆる裁決権だけを与えておるわけであります。しかも裁決権は、委員が五人でございますから、普通の場合には裁決権を行使することはあり得ない。一人が欠席した場合だけにそういう問題が起こるわけでございますが、そういうふうに非常に影響は間接になっております。行政委員会でほかの例で、たとえば首都圏整備委員会、これは国務大臣が当然委員長になっております。それからこれは行政委員会ではございませんが、行政委員会に準ずるものとして原子力委員会、これは科学技術庁長官たる国務大臣が委員長になっております。これはみな警察法ほどの実は手当も施してございません。しかし、これはやはりすべて一種の行政委員会でございます。原子力委員会は行政委員会ではございませんが、首都圏整備委員会は行政委員会でございます。行政委員会の性格から申しまして、これはかりに国務大臣が委員の一人に加わりましても、これはやはりその委員としての問題でございまして、その国務大臣に、それはもちろん内閣からの影響はございますけれども、これは何人かの一人の人の票しかないわけでございます。つまり独任制の行政機関のように、当然に指揮監督を受けるという関係にはならない。もしそうであれば委員会を作る必要はないわけであります。従いまして、やはりこの警察法は政治的中立ということに非常に重点を置く。しかしそれでは内閣の治安責任上欠けるところありということで、二十九年の改正で国務大臣を委員長にするという改正が入った。しかし、そういう委員長をただ入れたのでは問題があるというので、お説の通り委員長の表決権は削ったわけでございます。つまり可否同数の場合だけの裁決権にしておるわけでございます。いろいろな手当はしてあるわけであります。しかし行政委員会であるという性格は、これは払拭されておりません。従いまして、われわれとしては、やはり普通の独任制の機関のような指揮監督権は及ばない、こう解釈すべきだ。それで、いわゆる「内閣総理大臣所轄の下に、」という表現は、そういう表現から出ております。
  128. 門司亮

    ○門司委員 今の法制局長官の答弁は駄弁でありまして、そのくらいのことは承知しておるのです。わかっていることなんです。ただ、普通の行政機関と違う総理大臣の権限が及ぶようになっているのである。国務大臣が裁決することができるのであります。これは表決よりももっと強いのですよ、裁決権を持っているのですから。自己の判断でどんなにでもなるのですから。一番やっかいなといいますか、一番の権力の行使は、これは場合によっては、内閣総理大臣の任命する国務大臣でちゃんとやれるのです。そこにこの警察法の一つの大きな問題が残されているわけです。だから、内閣が責任がない、あるいは憲法の六十五条がどうだと言われておりますが、この条項をお入れになったのは、やはり善意に解釈して、七十二条の総理大臣の職務、「行政各部を指揮監督する。」というように解釈する方が、私はこれは正しいと思う。  私に与えられた時間が非常に短いのでありますし、総理大臣がおいでにならないというのですから、これ以上長くお話しは申し上げませんが、次に明らかにしておきたいと思いますことは、これもあげ足をとるようでありますが、一応総理大臣に聞いておかなければならないと思いますことは、本会議におきまして、総理大臣の御答弁の中に、言論、結社というか、言論あるいは文書等についても、おのおの節度があるというような言葉を使われております。これは総理大臣の考えとしては、そうした言論、結社あるいは意思の表明は憲法で自由に認められておるが、その節度というのは一体どの程度を節度とお考えになっておるのか。その点をこの際総理大臣に一つはっきりとしておいていただきたいと思います。
  129. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 むずかしい問題でございますが、良識と申しまするか、とにかく放縦なことはいかぬ、こういう意味でございます。行き過ぎはいかぬということでございます。
  130. 門司亮

    ○門司委員 これは人の思想と考え方と表現の自由ですから、おのおのとる人の考え方によって私は非常に違うと思います。総理大臣は、おそらく通俗的にこの節度という言葉を使われたと思いますが、この言葉は、この種の問題を論議いたしまする場合に、私はかなり社会的に大きなウエートを持つものだと考えております。従って、この際もう少しはっきり何とか表現できませんか。たとえば、この事件の直接原因でありましたいわゆる「夢譚」というようなものについて、どういうことが節度に入るかというようなことは、具体的に一つ言われませんかな。
  131. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 お話しのように、非常に関係するところが多いのでございまして、はかりでいく、ものさしでいく問題じゃないので、やはり良識で考えるべき問題だと思います。その意味で言ったのでございます。
  132. 門司亮

    ○門司委員 私は、大臣のそうした言葉が、往々にして世間をある程度迷わせはしないか。この間の本会議の総理大臣の御答弁を聞いておりますると、何か節度を片一方が守らなかった、だからこういう事件が起こったのだというような印象を国民に与えるようなことが考えられて参ります。そういたしますと、お互いに言論や結社やそれから表現の自由を持っておる国民に、ある程度自由を抑制するというような形が強く出てきて、その反面には、行なった行為自体が、これは私の言い過ぎかもしれませんが、ある程度肯定されておるものである、当然ああいう事件が起こるべきであったというようなことが肯定されておるものじゃないかというような、右翼団体には都合のいい解釈ができやしないかと私は考える。この点は非常にむずかしい問題でありまして、ものさしではかったり、はかりにかけて目方をはかるというような、きちんとしたものではないと思いますけれども、しかし及ぼす影響は非常に大きいと思います。受け取り方によっては両方に都合のいいことを受け取って、この種事件の絶えない原因をこしらえはしないかと考える。だから、恐縮ですけれども、もう一回一つはっきり御答弁願いたいと思います。
  133. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は、あの問題についてどうこういう批評を加えたわけではないのです。言論の自由にいたしましても、これはもう絶対重要なことでございますが、やはり社会不安とかいろいろな点を考えますと、お互いに行き過ぎないようにしようという意味で私は言っておるのでございます。
  134. 門司亮

    ○門司委員 きわめて抽象的でありますが、時間の関係でどうもやむを得ませんが、その次に聞いておきたいことは、先ほどしばしば言われております警察の中立性の問題であります。警察制度の中立性というのは一体何を意味するのかということ、それと警察責任というものとの関連性を、これは別々に質問を申し上げた方がよろしいかと思いますけれども、時間がございませんので一緒に申し上げておきますが、警察の中立性と警察国民に対する責任性というのは、どういう判断をすればよろしいのか、こり際教えていただきたいと思います。
  135. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 警察権というものが、時の政府その他の指揮監督を受けない、ほんとうに国家公安委員会が独自の考えでいくというのが、中立性と考えております。それから責任体制というものは、これは国家公安委員やその関係の人が自分考えるべきことであると思います。
  136. 門司亮

    ○門司委員 国家公安委員会自分考えるべきであるという御答弁だとしますと、国家公安委員長にお答えを願うようになるかと思いますが、その前に聞いておきたいと思いますことは、先ほど申し上げましたように、総理大臣は、少なくとも憲法によって、行政の長であり、同時に各部を指揮監督するという二つの条文がございますので、行政上の責任は私は総理大臣にあると考えます。従いまして、行政委員会にまかしておるからといういわゆる判断、その事件の裁量に対する判断でなくして、日本の国の政治責任者としてのこの警察国民に対する責任というものはどうあるべきかということを、もう一度一つ御答弁を願いたいと思います。
  137. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 指揮監督権はございませんが、全般の行政につきましての責任がございまするから、こういう事件が起こらないように、自分としては与えられた範囲におきまして努力いたします。ただ、責任論になりますると、われわれの方から公安委員会にどうこう言うべき筋合いのものではございません。これは良識で国家公安委員会がお考え願うべきことだと思います。
  138. 門司亮

    ○門司委員 そうしますと、これは国家公安委員長にお聞きをしなければなりませんが、国家公安委員長はどうお考えですかね。警察の中立性というのはまあわかります。が、しかし私は、今の警察が、今の警察法によりますると、必ずしも中立性を保っておらない。背の警察制度であるならば、これは行政委員会単独の力でやれるのでありますが、政党政治を認めておりまする今日、少なくとも政党から選ばれた大臣が、ある場合においては裁決権を持っておるという警察の仕組みというものは、行政権に基づく中立性を強調したものとは私は言えないと思う。少なくともある一角はもうくずされておると考えておる。しかし、そういたしましても、警察の中立性というものが叫ばれておる。そうして今度の事件についても、何か警察は中立だから、国民責任を負わなくてもよろしいのだというような考え方が、どうもありそうなんですね。だれも責任を負う者がないのです。警視総監もやめなくていいのだといわれておる。警察庁長官もやめなくていいといわれておる。それじゃだれが一体国民責任を負うのです。中立性という言葉は、ただ単に行政上の言葉であって、国民に対する責任を抹殺する言葉じゃ私はないと思う。少なくとも今日の警察は、天皇の警察とは違うでしょう。主権者である国民に行政委員会は運営管理をまかされておるとはいっても、その責任は私は背負うべきものだと思う。主権者である国民を忘れて、そうして警察の中立性々々々、何人にも干渉を受けないのだ、それはけっこうだと思う。警察の中立性の問題と、警察国民に対する責任というものは違うと思う。従ってこの際、警察のこの種事件に対する国民に対する責任所在を、私は明確にしておきたいと思うのだが、その点についての御答弁をこの際承りたいと思います。
  139. 安井謙

    ○安井国務大臣 お話しの通りに、警察の中立性という問題につきましては、今の総理のお答えの通りのことであろうと思います。しかし、中立であるから国民に対して責任を負わなくてもいいのだというようなことは毛頭考えておりません。国家公安委員会といたしましては、国民に対して十分な責任考えて、それぞれ措置すべきものは措置するというふうにものは考えております。ただ、国家公安委員会は、これまた、直接の指揮命令権は個々の事件についてないという状況も、これは門司委員承知通りであろうと思います。
  140. 門司亮

    ○門司委員 もう少し深く考えてもらわぬと困るのでありますが、御承知のように、国家公安委員会にまかされておりまするものは、警察の運営管理という言葉を使っております。そうして警察権の行使、権限の行使については、警察庁の長官なりあるいは警視総監が持っておるということは、警察法の示す通りであります。そうだといたしますと、その警察権力、いわゆる国家権力の作用とまでいわれております非常に強い行政権を持っておる警察の権力の行使の職務については、一体どういう責任がこの際生まれて参りますか。今日の警察制度というものは、そういう点は非常にややっこしいのでありますけれども、私はそういう点をもう少し明らかにしてもらいたいと思う。私どもが考えて参りますと、一段階においては、内閣が責任を負うべきである、あるいは直接指揮監督をしておる諸君が責任を負うべきである、二段階としては、直接の警察権限を行使する諸君にその責任というものが当然及ぶべきである、こういうように解釈することが、今の民主警察法の正しい解釈だと私は考える。その点について、一体どうお考えになりますか。
  141. 安井謙

    ○安井国務大臣 お話しの通り国家公安委員会で決定をいたしました事項を、国家公安委員会の管理のもとに警察庁長官がこれを行使するわけであります。その行使する仕事の内容は、これも御承知と存じますが、大体警察の制度の問題、予算の問題、あるいは機能の問題、それから特別災害が起きたような国家的な問題のときに直接動くわけであります。その他の個々の問題につきましては、いわゆる地方の都道府県の公安委員会が決定いたしまして、その管理下にその土地の長、警視総監あるいは警察本部長が責任を持って運営するわけであります。この間の法律的な問題につきましては長官からもお答えをさせたいと思います。
  142. 門司亮

    ○門司委員 今の大臣の答弁ですが、そういうようなことは警察法でもはっきり書いてありますから、わかっております。ただ私の聞いておりますのは、国民に対する責任所在というものを究明いたします場合に、今申しましたように、総理大臣にあるのか、あるいは公安委員長所在するのか、さらに実際の問題としては、警察権の行使をやっておりますその最高の責任者に責任があるのか、この警察法には幾つかの段階がございます。従って、この種の事件が起こった場合に、ややともすれば、警察の中立性、警察の中立性ということで、たとえば自民党の諸君が意見を言えば、警察の中立性を侵すものだ、われわれが意見を言えば、これまた警察の中立性を侵すものだ、警察は中立だ、だからそういう意見には屈従しないのだというような、妙なひがみがあって、いつまでたっても警察のこういう問題に対する責任所在というものは国民の前に明確にならぬじゃないですか。浅沼事件のときだってそうです。あなた方は何をやられましたか。ただ単に日比谷の公会堂の警備に当たっておった警察官の罰俸だとかあるいは譴責だとかいうことをして、現地におって命がけで仕事をしておる警察官には処罰が及んだが、それ以外の人は何も処罰をしていないじゃないですか。そしてまたこの事件が起こっても、警察の中立性だからというようなことでこれを逃げられようとしておる。これでは国民は納得しません。これでは国民はお互いの生命、財産というものを警察にゆだねる、頼んでおくということはできないと思うのです。非常に大きな不安にかられると思うのです。こういうところに治安の乱れる最大の原因が出てくると思います。もう少し警察ははっきりした中立性というものと、警察国民に対する責任性というものを明確にされてしかるべきだと考える。この点についての心がまえがほんとうにおありになるかどうか、再度御答弁願いたいと思う。
  143. 安井謙

    ○安井国務大臣 お話通りに、この責任性という問題につきましては、一定の資格者、警視正以上の者につきましては国家公安委員会がこれに対する責任を持って処理すべきものでございます。決して中立性という理由のもとにすべての責任を回避しようというような委員会の取り運びはいたすつもりはございません。
  144. 門司亮

    ○門司委員 もう総理大臣の時間がありませんので、私の質問はやめなければならない時刻だと思いますが、今の安井公安委員長の答弁を聞きますと、何らかの責任を明らかにされるというように解釈して差しつかえないものだ、私はこう考えております。従って、その結果がどう出るかということをさらに見守っていきたいと考えております。  次に、これは総理大臣に聞いておきたいと思いますことですが、たとえば破防法の適用をするとか、あるいはこの種の事件をなくすることのために別に法律をこしらえるとか、あるいは青少年法の改正をするとか、いろいろな議論がございます。これらについて一体総理大臣はどういうお考えをお持ちになっておりますか、端的に一つ御答弁を願いたい。
  145. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 これは、法律の改正をいたすにつきましては、内容をどうするかという問題がございますので、私は、内閣におきましても検討いたしますが、党並びに国会議員全般におかれても相当お考え願いたい問題じゃないかと思っております。今、改正するかしないか、するとしてどうするかという結論には達しておりませんが、私はどうしてもこういうものを絶滅するために渾身の努力を一つしてみたいという気持を持っております。
  146. 門司亮

    ○門司委員 そういたしますと、総理大臣の御答弁をそのまま受け取って参りますと、私はこういうことを一つ考えておるのでありますが、これについてのお考えもあわせて伺いたいと思います。  今幾つかのこれに関連した法律の適用あるいは新しい法律を設けるかどうかというようなこと、あるいは関連法規を改正するかどうかというようなこと、こういう幾つかの問題があろうかと思いますので、これについて国会に特別委員会を設置してこれを研究するというような考え方を私どもは持っておるのでありますが、これに対して総理大臣の所見を一つ伺っておきたいと思います。
  147. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 内閣総理大臣としては、それがいいとか悪いとか言うことは差し出がましいことでございまして、国会の方で、党等で一つお考え願いたいと思います。しかし私は、私自身といたしましても、この問題につきましては、内閣総理大臣として検討してみたいと思っております。
  148. 門司亮

    ○門司委員 時間がきましたから一応これで終わります。
  149. 濱田幸雄

    濱田委員長 この際暫時休憩いたします。    午後五時二十七分休憩      ――――◇―――――    午後七時五十六分開議   〔丹羽(喬)地方行政委員長代理、委   員長席に着く〕
  150. 丹羽喬四郎

    ○丹羽(喬)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。坪野米男君。
  151. 坪野米男

    ○坪野委員 私は池田総理並びに植木法務大臣、関係閣僚あるいは責任者に対して、右翼テロ根絶の根本策についてお尋ねしたいと考えるわけでございます。  先ほどからの質問者の質問は、主として警察警備の不備について鋭い責任追及あるいは質問がなされておったようでございますが、警察警備の不備、手落ちという点についての責任追及もとより必要でございます。また、不可抗力でない――先ほどの質問にあった通り警察側に何らかの落度があったとすれば、それに対して法律上あるいは政治上の責任をとって、その責任所在を明らかにすることももとより必要なことでございます。けれども、私は、単に警視総監が辞職をする、あるいは国家公安委員長責任をとるというだけでは右翼の暴力テロを根絶することにはならないと考えるのであります。総理も本日の朝日の記事をお読みになったと思うのでありまするが、朝日新聞の「右翼テロの根」という続きものの中に、これは大日本愛国党青年行動隊隊長という肩書きを持った二十才の少年の、あるいは青年のと申しますか、対談の記事でありまするが、その中に「ようし、そんならでかいことやって、こいつらのハナをあかしてやろうかと思う。ぼくなら嶋中なんかじゃなく池田首相をやる。あの小説、起訴させなかったのは池田がわるいんだから。そうでしょう」云々。このように語っておるのでありまして、右翼テロの対象は単に左翼の進歩的な言論人あるいはまたわれわれ革新陣営の国会議員あるいは労働組合の幹部に向けられるだけでなしに、このような形で池田総理の身辺にさえも及ぼうという、非常に不穏な考えを持った少年がおるということは現実でありまして、また同じように二月四日の朝日の朝刊によりますと、河盛好蔵氏が「ハダ寒い世相」という中で、「嶋中事件におもう」ということで、「正直に白状すると、私はこんなものを書きたくないのである。右翼の悪口を言うには、いまや生命の危険を覚悟しなければならないからである。」また同じく「私はこんなことを書きながらも、こわくてしかたがないのである。特定の人間をマークして、あいつを殺してやるという放言が天下を横行することが許されるような国では、国民の所得が二倍になろうが、三倍になろうが国民は断じて幸福になることはできない。」さらにまた最後に河盛氏は「危険は私たちの身辺にまで迫っている。こんな言いかたは私の好まないところであるが、事態はそれほど重大なのである。」こういった記事を見て、私はこの右翼テロを根本から断ち切らなければ、これは単に進歩的な文化人あるいは言論人に対する攻撃にとどまらず、ひいては政府高官の身辺にも及ぶ、とどまるところを知らない事態を招来すると考えるのでありまして、私はただ警察当局の責任を追及するというだけでは、とうてい問題の解決にならないと考えるわけであります。先ほど池田総理も、民主主義を破壊するこのようなテロ行為を根絶するために特別の立法措置について政府も考えておる、また国会においてもこういった問題を十分検討してほしい、こういう御答弁があったわけでありまするが、むしろ過去の責任追及、もちろん右翼の資金源追及、そうしてこの右翼テロの根源をまず明らかにし、しかる後にこの根源を断ち切る方策を講ずる必要があるわけでありますけれども、むしろ、今日政府に具体的にこの右翼テロを根絶する決意があるかどうか、またその決意を実行に移す決意があるかどうかということに問題がかかっておる。研究の段階ではないと考えのでありまするが、私は最初に、池田総理右翼テロを根絶をするための決意をお持ちかどうかということについてお尋ねをしたいと思います。
  152. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 テロ行為が何人に向かおうとも、これはわれわれ民主主義を守ろうとする者の共同の敵でございます。だからこれを根絶することは、私は政治の根本であると考えます。内閣におきましてももちろん考えて参りますが、やはり国民全体として一つ同じ憂いを除く方向で進んでいきたいと思います。
  153. 坪野米男

    ○坪野委員 ただいまの池田総理の御決意に対して私も同感でございます。そこでお尋ねしたいのでありまするが、民主主義の敵である政治テロ、私はあえて右翼テロと言う必要を認めないのでありまするが、この政治テロを根絶する具体策の一つとしては、こういった右翼暴力団あるいは右翼団体に資金を供給しておるそういった資金源を断つ、資金源を法的に規制するという具体的な措置が必要であろうかと考えるのでありまするが、この右翼に資金を提供する資金源を断つための、あるいは資金を規制するための措置について具体的にお考えであるかどうか、この点をお尋ねいたします。
  154. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 テロを断つためにつきましては、お話しのように資金源を断つことももちろん必要でございましょうが、それにも増してやはり各方面から考えなければならぬと思うのであります。御質問の資金源につきましては、私は、自由民主党の総裁になりまして以来、そういう方面への資金は絶対に出していないことを申し上げます。今後もそのつもりで参りますが、資金源をどうこうという問題もさることながら、ほかの問題につきましてもわれわれはやはり共同で一つやっていきたいという気持でございます。
  155. 坪野米男

    ○坪野委員 自民党総裁として、自民党から今後は右翼に資金を供給するようなことは一切しない決意だ、こういうお話のようでございますが、そうでなしに総理として、ただ自民党から資金が流れることを規制するということではなしに、財界その他の個人または団体から右翼団体に資金が何らかの方法で供給されるそういうものを規制する、そういうことについての方策を政府当局として具体的に講じておられるかどうか、そういうお尋ねなのであります。
  156. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私の責任のある立場におきましては先ほど申し上げた通りでございますが、民間におきましても、私は良識を持って行動してもらいたい。やはり人おのおの考え方がございますが、私は、良識を持ってやってもらいたいということを申し上げるだけであります。今右翼団体に法律で規制するということは、これは考えなければならぬと思います。私の考えとしては良識でやってもらいたいということであります。
  157. 坪野米男

    ○坪野委員 今の右翼団体への政治資金の規制について、民間団体その他は良識を持って善処してほしいという趣旨の御答弁で、それ以上に政府が適切なこの種の政治資金の規制について現在のところ対策を講じておられないようでありますが、今後もそういった適切な対策、法的な規制を加えるお考えがおありかどうか、そういう点を重ねてお尋ねいたします。
  158. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 この問題は重要な問題でございますので、先ほど申し上げましたように、政府としても検討いたしますが、国民全体として、ことに国会におきましても御検討願いたいというのが私の考えでございます。私は各方面からとにかくこういうことがないように、単に資金源々々々と申しましても、先ほど言っておりますように、千円とか三千円とか五千円とか、こういう問題も私は軽くは見ておりませんけれども、これによってどうこうという問題じゃない。これのみが原因ではないのでございます。全体の問題として考えなければならぬと思います。
  159. 坪野米男

    ○坪野委員 次に考えられるテロ根絶の対策としては、先ほどからたびたび質疑応答がありました警察警備手落ち、不備、これを補うために警察力を強化する云々、あるいは予算措置を講ずるとか、いろいろ御答弁がありましたが、私は、警察の取り締まり権限の強化ということは必ずしも必要がない。むしろ政府に、あるいは警察当局に、右翼の根絶の決意があれば、現行の警察法規あるいは刑事法令をもってしても、警察活動あるいは防犯活動が十分に講じ得ると考えるのでありますが、今までの質疑応答の中で、ただ警察の取り締まりの不備あるいは警察をして犯罪を予防せしめるという点に重点が置かれておったようでありますけれども、もう少し私は根本的に、この政治テロ根絶の対策として新たな立法あるいは現行法の改正を通して、あるいは刑罰を強化する、あるいは適正な法改正を行なって、テロ根絶の一有力な手段とする必要があるのではないかと考えるのでありまするが、その新たな立法あるいはまた現行法の改正について具体的な対策をお持ちであるかどうかという点についてお尋ねいたします。
  160. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 警察力の強化、あるいは新たな立法、これも必要かもわかりません。しかしそれよりも、私はやはり別に政治のあり方として国民テロ暴力は絶対にいけないのだという気持をみなぎらせて、ほんとうに法を守り、社会の秩序を正しくしなければならぬという気持を起こしてもらうような政治が根本的に必要だと思います。警察力の強化あるいは法制の改正ということにつきましても、先ほど申し上げましたように、研究はいたしますけれども、いろいろな点から私は全体的によくしていく方法考えたいと思っておるのであります。
  161. 坪野米男

    ○坪野委員 ただいまの総理のお答えでありますが、このような暴力テロの生じないような社会風潮を作り、あるいは政治の姿勢を正しくするということももとより必要でありましょうけれども、日々こうして言論人に対する脅迫行為が続いておるということも事実であります。先ほど私が例をあげました河盛好蔵氏の場合もそうでありまするが、私たち国会議員が言論の府において、こうして右翼テロ根絶策について政府の所信を聞いておる、またわれわれがその所信を披瀝する、こういった行動に対しても直接、間接に脅迫が加えられておるということを聞き及んでおります。一、二の例を申しますならば、本日のこの連合審査会において質問をした一社会党の委員に対しても、昨日でありましたか、宿舎に脅迫めいた電話がかかってきたという事実を私は聞き及んでおります。また昨年の三十七特別国会の予算委員会において、右翼山口二矢の慰霊祭に警察官が香典を持って出席した云々という委員会質問に対しても、社会党の予算委員に対して現実に脅迫が行なわれておるという事実がございます。私は政治の姿勢を正すのが一朝一夕にしてなるものではないということを考えますときに、今日われわれがこういった言論の府で右翼テロ根絶を論ずることさえも恐怖手段をもって脅かされるというようなことでは追っつかない、間に合わないと思うのであります。私は政府が強力な対策、それはもちろん先ほど言われたことも必要でありましょう。しかし外国にも立法例があるようでありますし、また日本の実情に沿って右翼テロ根絶のための具体的な強力な措置を講ずる必要が差し迫っておると思うのであります。   〔丹羽(喬)地方行政委員長代理退   席、濱田地方行政委員長着席〕 私は首相の最初のお言葉に反して疑いを差しはさむのは、政治の姿勢を正す、その他非常にきれいごとでもってこの右翼テロ根絶を一日も遷延されようとするならば、私はその根本に、左翼の、あるいは労働組合の大衆運動に対する策対として右翼の温存が必要であるというようなお考えが、あるいは政府当局あるいはまた財界筋にあるのではないか、はたして右翼テロを根絶するというほんとうの決意があるのかどうかということを疑うわけでありますが、もう一度この右翼テロ根絶の決意はあるのかどうかということについてお尋ねをしたいと思うのであります。
  162. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 どうも最近におきまする情勢が、私がさきの国会でも申し上げました通り、左か右か、あるいは敵か味方かというふうに、あまりに日本人は割り切り過ぎているのではないかという気がするのであります。先ほどのお話のように、左翼に対してそれと戦うために右翼を温存するのだ、こういうふうな考え方は、やはり敵か味方かという思想にとらわれていると思うのであります。やはり国民全部がわれわれの社会を、われわれの国をよくしようというところに平和な文化国家ができるのでございます。敵か味方かという考え方を払拭して、お互いにりっぱな社会を作り出すのだという気持にならなければいかぬと思うのであります。それのために法を制定して取り締まるといっても、これは本筋ではない。やはりお互いが姿勢を正し、身をおさめていくところにその効果が現われる。それの補完作用としてやはり法律制定を考えるべきだと考えております。
  163. 坪野米男

    ○坪野委員 私も、もちろん刑罰法令をもって右翼テロが根絶できるというふうにはとうてい考えておりません。しかしながら、現実に差し迫ったテロの恐怖にさらされている今日、民主主義社会は危殆に瀕していると私は考えるのでありますが、こういった場合に根本対策を講ずるとともに、当面する対策として、やはり民主主義を守るために、たとえば仮称民主主義擁護法とでも称すべき立法をもって政治テロ、政府の高官あるいは国会議員あるいはまた言論人に加えられる殺人行為あるいは殺人未遂、殺人の予備あるいはまた傷害、傷害未遂といった生命、身体に対する攻撃、しかもその理由が全く政治的行為のゆえになされる攻撃、あるいはまた言論活動のゆえになされるこのような不法な攻撃、こういったものは通常の怨恨、痴情その他の通常犯罪における原因と違って、計画的になされる攻撃でありますから、こういった攻撃に対して特別に重い刑をもってこれを守るということも――私は必ずしもそれで根絶できるとは考えませんが、すべての右翼テロリストがみずからの命を投げ出してまで対象者を刺殺している場合とは限らないと思うのであります。たとえば少年法の五十一条の盲点からして少年を使嗾し、少年を扇動して刺させる、そういった場合にも、どうせお前は死刑にならないのだ、無期懲役を食っても、十年くらい行ってくれば出てこられるのだ、その間家族のめんどうは見てやる、こういった扇動、教唆がなされた場合に、みずから自殺の決意を持たずして、こういったテロ行為に及ぶ犯人も私はあると思うのであります。死刑の威嚇的効力というものが私は絶対的なものだとは考えませんけれども、総体的にはまだそういった刑罰の一般予防的効果というものは、私はあるのではないかというように考えるわけであります。一九三〇年に施行されましたドイツの共和国擁護法の中で、もちろんテロ行為そのものを処罰するだけではなしに、このテロの教唆、扇動、その他共謀、非常に広範な処罰規定があるようでありまするが、私は、この際やはり適切な法的措置を講じて、この種憲法を破壊する最も憎むべき犯罪者に対しては、極刑をもって臨む必要があると考えるのでありまするが、政府はそういった刑罰法令の強化、特にそれに関連して少年法の一部改正といったことについて、具体的な決意、計画を持っておるかどうかということについて、総理あるいは法務大臣にお尋ねしたいのであります。
  164. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 われわれ同士の間におきましても、今回の事件が起こる以前に、すでにそういう問題につきまして検討を始めておるのであります。ただ私は、こういう問題につきましては、刑罰の強化につきましても、これは考えなければなりませんが、その他万般のところから総合的に対策を講じていかなければならぬと思っております。
  165. 坪野米男

    ○坪野委員 今の刑罰強化の新立法に関連いたしまして、私は先ほどの自民党委員からの質疑の中に、中央公論社で出版された「風流夢譚」について、あれが名誉棄損のものじゃないか、言論の自由にも限界がある、こういう論がなされておったわけであります。もちろん、言論の自由にも限界があることは当然でありましょう。現在の刑法の中でも言論犯罪というものがあるわけであります。たとえば名誉棄損罪あるいはまた猥褻罪、言論による犯罪行為は、反社会性を帯びた言論、単なる言論でなしに、それが言論行為となって現われた言論については、現行刑法でもってしても処罰の対象となり得るわけでありまするが、私はこの「風流夢譚」がはたして名誉棄損になるかどうかということについてはここでは触れないわけでありますけれども、むしろ私は言論の自由に限界があるということは私も認める立場に立ちまして、先日来浅沼事件あるいは今回の嶋中事件において大日本愛国党の総裁赤尾敏氏が新聞紙上に新聞記者に対する談として発表されている中で、まことにけしからぬ言論の自由を逸脱した発言がなされておるわけであります。そういった行為についてこれが直ちに現行刑法をもってして殺人の教唆になり得るかどうか、あるいはまた殺人の予備行為になるかどうか、いろいろ考えてみまするが、必ずしも現行刑法をもってこの言論行為を取り締まりの対象とすることは困難だということも考えられるわけであります。破防法の適用その他いろいろ問題がございましょう。しかしながら私は、今後このような言論が今日の民主社会において許されていいのかどうかという観点に立って新たな対策を立てるといたしまするならば、まさにこのような殺人行為を是認し、あるいは殺人を教唆扇動する、こういう言論は、しかもそれが公然と、あるいはまた集会において、ある特定の集会において、あるいは言論人に対する談話の形をもってすれば、当然これは新聞紙上を通して国民の前に発表されるわけでありまするが、公然あるいは集会においてこのような言動をなす。たとえば嶋中事件について、嶋中氏が攻撃を受ける、あるいはその家族が攻撃を受けることもやむを得ないのだ。やむを得ないのだじゃなしに、ああいう事件が起きないようではだめだと、常識では考えられないような傍若無人な言葉を吐いておるわけであります。あるいは、浅沼委員長が刺殺されたことは当然である、山口はよくやったといった、こういうテロ行為を賛美したり、あるいはこれを名士的に嘉賞する、ほめたたえる。こういった言行、これは私はまさに犯罪言動、言論だと思うのでありまするが、こういった言論に対しても法的規制を加えるということもテロ根絶の一方策ではないかと考えるのでありまするが、この言論の自由の限界、特に今日右翼の首領が発しておるこの種の不穏な言動について法的な規制あるいは処罰をもって臨むということの必要性について政府当局のお考えをお尋ねいたします。
  166. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 政治上の主義もしくは施策を推進するとか、あるいはその施策に反対する者につきまして、殺人を教唆したり扇動したり、こういうことにつきましては破防法におきましてもこれははまるわけでございます。しかし、そういうことを直接にせずに、いろいろな自分意見を発表することが、そういう事態に対しての批判的な意見につきまして破防法その他の刑法の適用を受けることにつきましては、なかなか今の状態では困難であります。いろいろな事態を想定いたしまして、こういうことにつきましては刑罰をもって進むとかどうかという問題は、国民の人権に関することでございまするから、治安の問題と人権の問題とのかね合いで、とくとお互いに検討していかなければならぬ問題だと思っております。
  167. 坪野米男

    ○坪野委員 ただいま総理が人権の擁護とのかね合いで慎重を要すると申されましたが、もとより当然のことでございます。政治テロ、政治活動のゆえに人を刺す、あるいは言論活動のゆえに人を刺すという、こういう政治テロ、これこそ民主主義を破壊し、憲法を破壊する憲法の敵だとさえ私は言って差しつかえなかろうと思うのでありまするが、このような民主主義の敵に対して、人権擁護の立場からもとより証拠裁判その他の人権上の保障はございますけれども、このような民主主義の敵に対して刑罰を強化するということ自体は、何ら人権無視にはならないと考えるのであります。ただ問題は、新たな立法をする場合に、この強化された刑罰法令を悪用、乱用いたしまして、正しい大衆運動に弾圧の口実を与える、あるいはまた警察の取り締まり権限を強化することによって、一般犯罪に対する取り締まりの警察権限が強くなるために、人権無視あるいは人権じゅうりんの事実が生じやしないかという考慮が必要であろう。従って新立法においても、いわゆる今までの警察、検察当局が行なってきた拡大解釈、あるいは類推解釈といったことを許さない、明らかに政治テロそのものを厳罰に付する、あるいはこれを教唆、扇動する、あるいはそのような犯罪的な言論を吐く行為を限って立法すれば、必ずしも人権擁護との関連において支障は来たさないと考えるのでありまするが、こういった点について目下研究中ということでございまするが、私は早急に具体的にこれらの対策についてもお考えをいただきたい。ただ刑罰法令の強化だけで右翼テロが根絶できるというように甘くは考えておりません。もっと抜本的な対策が必要であることはもとよりでございまするが、この立法措置も一つの方法であるとして具体的な対策に政府が取りかかられることを強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  168. 濱田幸雄

    濱田委員長 林博君。
  169. 林博

    ○林委員 総理にまずお尋ねいたしますが、名誉毀損罪について刑法二百三十二条の二項に「告訴ヲ為スコトヲ得可キ者カ天皇、皇后、太皇太后、皇太后又ハ皇嗣ナルトキハ内閣総理大臣、」「代リテ之ヲ行フ」こういう条項がございます。これは先ほど御質問いたしましたが、皇太子妃が抜けておるのであります。内閣総理大臣かわりてこれを行なうということになっておるのでありますが、この内閣総理大臣の告訴権限というものは、天皇の御意思に関係なくなされるものであるか、あるいは全く天皇が告訴する意思がないというときには告訴しなくてもいいものであるかどうか、その点をまず明らかにしてもらいたい。
  170. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 刑法第二百三十二条に規定しております、告訴をなすべき者が天皇、皇后、皇太后、皇嗣である場合におきましては内閣総理大臣かわりてこれをなすということは、何も天皇の委任を受けてどうこうという問題ではございません。内閣総理大臣独自の考えでいたすべきものと考えております。
  171. 林博

    ○林委員 本件の警備責任その他に関しましては、すでに田中委員その他から十分の質問がございました。それで私は一点だけにしぼってごく簡単に御質問を申し上げてみたいと思うのでありますが、今回のテロ事件発生いたしましたのは、私は原因があると思うのです。私も、もちろんこの事件は絶対に撲滅しなければならないという考えを持って進んでおるのでありますが、しかしながら原因があって、その原因によってこういう犯罪が非常に多発的に発出するという場合には、警備だけをもってしてはなかなか防ぎ切れない場合があるのではないか。それだからといって、私は今回の事件警備当局、警察当局に責任がないというのではない。もちろん責任があるとは思うのでありますけれども、しかしながら、こういう原因をやはり除去していかなければ、こういう犯罪というものはなかなか防ぎ切れないものであるというふうに私は考えております。昨年浅沼事件が発色したのは、やはり安保闘争以来の社会情勢が、よしあしにかかわらず一つの原因になっておると思う。今回の事件は、やはりあの「風流夢譚」という一つの架空の小説が原因になっておると考えるのでありますが、その小説内容等についてはこの際時間がございませんから申し上げませんけれども、ここに毎日新聞の世論調査がございます。  この世論調査を見ますと、これを読んだうちの半数以上は非常に不愉快な感じを持ったということが書いてある。しかも非常に重要なことは、そのうちで問が「もし「風流夢譚」の作者に危害を加えた事件だったらどう思うか。」あの事件は家族に加えられた事件であるが、これがもし作者に加えられたらどう思うかという問に対して、驚くなかれ、よしと肯定したのが七・六%、この数字では七十七人、一〇〇%のうちの七・六%の者が作者に危害を加えてもいいんだという考えを持っているのですよ。これはとんでもないことです。今社会党の方がおっしゃった通りとんでもないことです。とんでもないことではあるけれども、少なくとも七・六%の人は作者に危害を加えてもいいんだという考えを持っている。この人がもし度胸のある人だったら、やるということは十分考えられてくる。これが一つの原因なんです。私は、こういう原因を作ることがいけないと思う。総理は言論にも自省と節度が必要であると言われたんだけれども、私は、これは単に常識の問題だとかなんとかいう問題じゃないと思う。やはりこの問題は、こういう七・六%の人が作者に危害を加えてもいいという根拠には、これは皇室に対する名誉棄損であり侮辱であるという考え、やはり日本の大多数の方々は、皇室に対して敬愛の念を持っておる。その皇室に対して名誉棄損なりあるいは侮辱的な言辞を弄せられたことに対して非常に憤激いたしております。こういうことは単に自省だの節度だのという問題ではない、名誉棄損に該当するかどうかの重大な問題であると思う。しかもこの問題は、告訴権限は総理大臣にあるわけであります。これは天皇の御意思にかかわらない、総理大臣にあるわけでございますけれども、一体総理はこの問題に対してどの程度の検討を加えられたのであるか。しかも総理がこの問題を検討したかどうかということは、犯罪関係があるのです。先ごろも新聞に出ておったように、国会も取り上げない、言論機関もこの名誉棄損の問題はあまり言わない、また総理大臣も告訴しないから、われわれがやるよりしようがないんじゃないか、これは誤った考えではあるけれども、そういう思想が根底に流れておるということは、この新聞の世論調査に出ておる。これを防遏することが政治であると私は思うのでありますけれども、この問題に対してどの程度の検討を加えておられるのか、その点を伺いたいと思います。
  172. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 名誉棄損か侮辱罪かという法律問題ももちろん私検討いたしております。また事、皇室に関する問題でございます。皇室のあり方、また皇室と国民との関係等を考えまして、私はただいま慎重に考えておる次第でございます。
  173. 濱田幸雄

    濱田委員長 太田一夫君。
  174. 太田一夫

    ○太田委員 最初に総理にお尋ねをいたしたいのは、総理は先ほど「風流夢譚」につきましてはよく読んだ、考えなければならない重大なことがあるという御発言がありましたが、「風流夢譚」をお読みになりまして、もう少し具体的にどのようにお感じになりましたか、それを一、二承りたいと思います。
  175. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は総理大臣として、ああいう文章につきまして自分考え方を申し上げることはいかがかと思いますが、私は実はちょっと読みまして、これはひどいなと思ってやめたのが実情でございます。またあとから読んでみましたが、どうも私には文学的の才能がないのか、ちょっと私の範疇に合わぬようなところが多かったのであります。
  176. 太田一夫

    ○太田委員 率直にお話しになったと思うのですが、先ほどたしか田中伊三次氏の質問に答えてのお答えだと思うのですが、内容を読んだが、考えるべき重大問題だと思う、こうおっしゃったので、相当ショックをお受けになったのか、痛感された点があると思うのです。そう思いましたが、ちょっと読んでやめたとおっしゃると、あなたは、どこがあなたの思想にごつんとさわったかという点について明らかでないのでありますけれども、しからば、私があと質問の都合上、少し読んでみますから、あなたに一つ感想を聞かしていただきたいと思うのです。  それは、深沢という人がこれを書いた、夢に託して響いたのです。これは祖国に対しましてはどういうことを意図して書いたか、深沢氏の心の中に映った祖国に対して何を意識してこの小説を書いたと達観をされましたか。全部をお読みになったのではないから、そこから感じられた感想を承りたい。
  177. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は内閣総理大臣といたしまして、ああいうものに対しての作者の感想を、ここで批判申し上げることは差し控えたいと思います。
  178. 太田一夫

    ○太田委員 大事な点ですが、御批判がないようですから、あまり深追いするのもいかがかと思いますが、もう一点お尋ねをいたしたいのです、あの小説は、赤色革命を教えているものだとお考えになったり、あるいはそういう話を聞いて、なるほどそうかとお考えになったことがありますか。
  179. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 そういう問題につきましては、先ほど申し上げている通り、告訴は私の権限内にありますので、私の仕事でございますので、あの作家の考え方に対しての批評は差し控えたいと思います。
  180. 太田一夫

    ○太田委員 そうなりますと、従って、あまり文学類はお読みにならない、そう考えてよろしゅうございますか。
  181. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 文学の書物を読む、読まぬの問題と、御質問に対しての答えの問題とは、別個の問題でございます。
  182. 太田一夫

    ○太田委員 しからば、文芸春秋新社が発行しております文学界という雑誌がございますが、これは最近非常に話題になっておりますが、御存じでございますか。
  183. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は、まだ読んでおりません。
  184. 太田一夫

    ○太田委員 これは一つ安井自治相にお尋ねいたします。「政治少年死す」という、文学界の二月号の小説をお読みになりましたか。
  185. 安井謙

    ○安井国務大臣 私、まだ読んでおりません。
  186. 太田一夫

    ○太田委員 話ができなくて困るのですが、植木法相はお読みになりましたか。
  187. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 まだ読んでおりません。
  188. 太田一夫

    ○太田委員 取り締まり当局において、これをごらんになった方がありますか。
  189. 三輪良雄

    三輪政府委員 お尋ねの文書は、私は読んでおります。これがまた「風流夢譚」に続いて、第二に問題になる可能性のあるものとして、十分考えておるところでございます。
  190. 太田一夫

    ○太田委員 警備局長はそれをごらんになって、重大な内容を持つとお感じになっている以上、上司にこれを報告されていらっしゃると思うのですが、警察庁長官内容御存じでございますか。
  191. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私も警備局長の読んだあと、その内容を見ております。
  192. 太田一夫

    ○太田委員 局長にお尋ねいたします。あなたはまっ先にお読みになったのだから、相当感じられていらっしゃると思うのですが、この「政治少年死す」は、いわゆる「風流夢譚」の外編という形で、何か非常に関連がある。従ってこの中には、実は重大なことが示唆されていると思うのです。何かこれについて、これは非常にあぶないと思った、あるいはこれは参考とすべきだと思った、これは読んだ方がよかった、どういうふうにあなたはお感じになりましたか。少し詳細にお願いしたい。
  193. 三輪良雄

    三輪政府委員 私は、立場上その作品の価値を論ずる必要はございませんが、これが御承知のように、山口二矢の名前こそ仮名でございますけれども、これを諷して書いたものと、一見だれにもわかる状態で書いてあるわけでございます。しかもこれに対しまして、右翼の言うところによりますと、きわめてわいせつな状態で、これを侮辱をしておるのだということでございまして、従って、この作者並びにこれを発行いたしました者につきましても、中央公論社並びに「風流夢譚」の作者に対しますと同じように、抗議が行なわれるものと考えるわけでございます。
  194. 太田一夫

    ○太田委員 たとえば、山口少年とY少年でしょうか、その何かをそんたくをして書いておるのだと思うのですが、しかし、はたしてわれわれは勝ったのだろうかと自己反省をして、これは勝ったのじゃない、国会のまわりにおいて、お金をもらって、そうして学者をなぐったり、左翼の者をなぐったりするだけでは、何も警官と変わらぬじゃないか。そこで、さて可能ならば、クーデターをやろうということになっている。そうですね。
  195. 三輪良雄

    三輪政府委員 そういう点でございますけれども、私は、直接の治安上の問題としてただいま考えておりますのは、これに対する抗議が起こり、第二の事件が起こることを心配いたしておるのであります。
  196. 太田一夫

    ○太田委員 私が申し上げましたのは、一つの小説に書いてある筋だけの話でありますけれども、従って何か起こる、その起こるのが相当予測されておるとするならば、中央公論社と同じような問題が、文芸春秋新社に対して加えられる徴候が見えている、ないしはその危険があるとお考えになっていらっしゃるのでありますか。
  197. 三輪良雄

    三輪政府委員 同出版社に対しまして、すでに抗議が行なわれておりまして、これに対して遺憾の意を表し、次の号にこれを取り消すというようなことで、社としても誠意を尽くしたようでございまして、一応了解をしたという形になっているように聞いております。
  198. 太田一夫

    ○太田委員 しからば、作者の大江健三郎なる人は、並びにその家族は、身辺の危険を感ずる必要はないのでございますね。
  199. 三輪良雄

    三輪政府委員 これは、一応話がつきましたと申しましても、警戒をしないでいいという状態ではございません。警察警戒をいたしておるのでございます。と申しますのは、先ほどの「風流夢譚」に対しましても、中央公論社抗議をいたしまして、社長が遺憾の意を表し、三月号でこれを取り消す、なおその他の要求については、二月の六日にお答えをするという約束でございまして、三十一日の帝都日日新聞にも、そういうことを認めたのだということを書いてあるような状態でございます。従いまして、通常考えると、その誠意を信じ、次の回答を待って事を論ずるということになると思ったのでございますけれども、それがああいった事態を引き起こしましたようなことから見ましても、一応話がついたということで、安心するわけにはいかないと思うのでございます。
  200. 太田一夫

    ○太田委員 しからば、もう一つ古い話で恐縮でありますが、昭和三十二年の三月に発行されましたカッパ・ブックス、いわゆる光文社の編集になる「三光」という本が発売されております。これは警備局長内容御存じでございますか。
  201. 三輪良雄

    三輪政府委員 申しわけございませんが、読んでおりません。
  202. 太田一夫

    ○太田委員 柏村長官、この「三光」にまつわる物語を、何かお聞きでございましょうか。
  203. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私も読んでおりませんが、何か残虐な物語を書いておるということを聞いております。
  204. 太田一夫

    ○太田委員 安井自治相にお尋ねをいたしたいところでございますけれども、就任以来日が浅いので、柏村長官の方にかわってお答えをいただければけっこうだと思います。この「三光」というのは、殺光、焼光、略光と申しまして、いわゆる殺し尽くす、焼き尽くす、奪い尽くすという、この意味を「三光」というておる。従って、これは日本軍が大東亜戦争の際に、大陸において行ないましたところの残虐物語であるということは、数葉の写真とともに、これは歴然たるものでありますし、内容もまた目をおおうようなものであった。しかも、それは内容がそうであったということだけを、私が皆さんに御存じですかと申し上げるわけじゃない。これにまつわって、当時、今日の中央公論社ないしは文芸春秋新社に対して及ぼされたような、ああいう現象があったのではないかと思うのですが、いかがでございますか。
  205. 三輪良雄

    三輪政府委員 私は、その本を読んでおりませんのみならず、今お答えができませんのは、そういうことに関しまして、同様な事態が起こらなかったわけでございます。右翼のああいった不法行為が非常に表に出て参りましたのは、先ほど来私のお答えのうちにありましたけれども、昨年来のことでございます。三十二年にそういう意味抗議が行なわれたかとも思いますけれども、今日のような事態が起こるおそれは当時なかったものと考えます。
  206. 太田一夫

    ○太田委員 総理にお尋ねをいたしますが、当時岸内閣の時代、暴力追放の金看板の時代でありますから、従ってそのような暴力の萌芽に対し、あるいは暴力の発展する傾向に対しては、十分関心が持たれていたと思うのです。ところが今の光文社の「三光」という本にまつわるところの脅迫というような世情のうわさは、今警備局長の御答弁にありましたように、知らないとおっしゃるのですが、事実は、私はその真相が少し違うのじゃないか。だれかがそれを知っていらっしゃると思う。そういうことを全然警備当局、警視総監もまた警察庁においても情報がなく、また内閣においてもそのような話がなかったということになりますと、私は少々物足りなく感ずるのですが、総理として当時出版の自由、言論の自由に関して加えられた迫害というものが、その光文社に対してまず行なわれたということをお聞きになりましたことはございませんか。
  207. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 三十二年のいつごろか、内閣におったり、また途中からはやめておりましたが、私はその「三光」でございますか、その本も読んだことはございません。存じておりません。
  208. 太田一夫

    ○太田委員 これは取り締まり当局としては、警察庁においても、警視庁におきましても、光文社といえば同じ音羽町でありますから、すぐ近くに所在する本屋さん、そこでいろいろなことが起きておるということが全然わからないとするならば、私はその本屋さんが一切を内密にしていらっしゃったのだろうと思うのです。けれども、脅迫ということがあったというのは世間に伝わっておる。それをあなたの方がほんとうに御存じないというのはいかにもおかしいのですが、どんなものでしょう。
  209. 三輪良雄

    三輪政府委員 私曠職のそしりを免れないかもしれませんが、ただいまのところ存じないことは事実でございます。
  210. 太田一夫

    ○太田委員 これはそういうことであるならばやむを得ません。これは当時日本の恥辱ものであるというので、光文社が非常に攻撃をされたといううわさがあったのです。従って、その本は今なお市販はされておりますが、当時しばらく影をひそめたことがあったのです。最近になってまた売られておりますが、最近ではいろいろな取りざたは聞いておりません。その当時としては、日本の国辱ものだ、恥辱ものだというわけで、ずいぶんとそういう右翼の暴力団の方々と言われる方の脅迫があった、こういうのです。従ってそれが埋もれてしまい、秘密にされてしまって、永遠のなぞになったということになりますと、まことに残念だと思いますが、すでに三十二年ごろに相当なものがあったということを私は特に申し上げておきたいと思うのです。  さて、そこでこういうことに関しては、国家に対するところの屈辱だとか、日本に対するところの恥辱だとかいうような言葉によって、その出版社や編集者がおどかされておる、こういうことなんです。私は祖国とか日本とかいうことについて、もうちょっと皆さん方の考え方を聞いておきたいと思うのですが、特に「風流夢譚」などは、これは世間では狂人が書いた、気違いが書いたと言われているわけです。しかし気違いが書いたものでも、祖国日本を台なしにするような心配があるとするならば許せないということになったならば、許せないという考え方は正しいか正しくないか。たとい気違いが書いても、それは祖国日本というものに対してはマイナスになることだ、台なしにするようなものだから、それは許せないとこう言い切ったならば、それは今日の日本国民としてはたして正しい考え方であるかどうか、この点を安井自治相、国家公安委員長にお尋ねいたします。
  211. 安井謙

    ○安井国務大臣 大へんむずかしい問題だと存じます。言論の自由とその言論の及ぼす反社会的な影響の限界というものにつきましては、非常にデリケートの問題があろうと思いまして、一がいにお答えもいたしかねるかと存じます。
  212. 太田一夫

    ○太田委員 一がいにお答えができないとおっしゃると問題があります。狂人でも許さないということは、たとい相手は気違いであっても、あのようなものを書いた場合には、たとえばそれは今の少年言葉を借りれば、皇室に対する非常な不敬罪、たとい気違いが書いても、それは許さぬぞ、殺してしまうぞ、命はもらうぞというようなことを公然と言われるやつは、それは私ははっきりといいとか悪いとか割り切ってもらわなければ、世間というものは政府の見解に対して非常に疑惑を持つではないでしょうか、国家公安委員長としてどうお考えですか。
  213. 安井謙

    ○安井国務大臣 「風流夢譚」の件につきましては、これは私どもの常識をもってすれば、読んでそれが非常にいい感じのものというふうには申せませんが、しかしそのゆえをもってこれを発売禁止をしなければいかぬという性格のものではなかろう、こう思います。
  214. 太田一夫

    ○太田委員 総理にお尋ねをいたします。同じことです。気違いが書いたことであるけれども、祖国はあれによって恥辱をこうむる、許すことはできないという愛国心というものはあなたはお認めになりますか。
  215. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 あれに対して許すべからざるものというのが愛国心かどうか、それは別問題であります。私は先ほど申し上げましたように、本件につきましては責任者でございます。ここで意見を申し上げることは差し控えます。
  216. 太田一夫

    ○太田委員 意見をおっしゃらないのは、必要ある場合にはいいと思うのですが、責任者でありましても、愛国心の問題についてはもう少し議論をしていただきたいと思うのです。愛国心が議論できないということはないと思う。あなたは、愛国心とは一体どういうものとお考えになっていらっしゃいますか。
  217. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 国を愛し、民族を愛し、文化を愛する、そうしてそれが世界の平和に通ずることを愛国心と考えております。
  218. 太田一夫

    ○太田委員 その中には自分意見と違うものも許さないという思想があるのですか。違っておってもそれは許していこう、話し合っていこうという寛容の気持がありますか。
  219. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 許す、許さないという言葉がわかりませんが、私はたといその人が反社会的なあれであっても、これはお互いに導いていくのが愛国心の発露だと思います。
  220. 太田一夫

    ○太田委員 従って、愛国心の中には大事な大事な、憎しみではなくして、愛情というものがウエートが多い。あるいはまた排撃でなくて、包容するというような、そういう国民一般の、周囲の国民をすなおな気持で、お互いに愛情を持ちつつ、意見が違っておる者があるならば、それは大きくは許して、その中でできるだけ話し合いをして、そうして打開の道を開く、平和的な話し合いで日本の国を大きくしていこう、強くしていこう、これがほんとうの愛国心に近いものである、愛国心である、こういうようにお考えになっていらっしゃるわけですね。
  221. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私ばかりでなく、皆さんがそうお考えになっていらっしゃると思います。またそうお考えになっていない方には、そうお考えになるようにお勧めしたいと思います。しかし非常な罪を犯した者を弾圧、たとえば凶悪な殺人で、法の命ずるところによってこれを死刑に処す、これはお気の毒であるという気持はございますが、これもやはり愛国心だから死刑は廃止すべきだということにはならないということを前もって御了承得たいと思います。
  222. 太田一夫

    ○太田委員 それから、先ほど総理は本会議におきまして、たしか自由というものには限界があるということをおっしゃったと思います。その自由の限界というものは、その限界率が大きければ大きいだけ自由というものは実は不自由になると思うのです。総理はその自由の限界というものはどの程度に置かれる御所存でありますか。
  223. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 国民の良識をもって判断すべきものと考えております。
  224. 太田一夫

    ○太田委員 国民の良識といいますけれども、たとえば中央公論社長宅を襲った方も国民であると思うのです。それは自分自身として良識をもって判断したと思う。しからば、一国の政府の中心である総理として、日本の国民がこれから自由というものをはき違えないためにも、こうあるべきだ、自由というのはこういうものだ、愛国というものはこういうものであるというように、間違わない考え方をどこかではっきりとお示しになることが必要なことだと思うのですが、その点はいかがですか。
  225. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 嶋中邸へ入り込んで殺人あるいは傷害をした人もこれは自由と考えておりますが、これはもう節度のない、はずれた自由です。もしそれが自由と考えておったならば、こういうことは排撃しなければなりません。従いまして、ほんとうの民主主義、ほんとうの愛国心というものをつちかっていかなければならぬのが政治の目標でございます。
  226. 太田一夫

    ○太田委員 その点では別に間違いがあるとは思いませんけれども、とかく在来の施政を見ますると、自由を制限するということが、公共の利益というような名のもとに、徐々に強大に現われてきておるような気がするのです。そういうことがそもそも日本の国民の愛国心とかあるいは日本国民の自由に対する観念を、また徐々に昔の明治のころに引っぱっていくんじゃないか、こういうおそれが生じておるのですが、総理はそのような御心配はないと考えていらっしゃいますか。
  227. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 そういう心配もないことはございませんが、自由の名のもとに、民主主義の名のもとにはき違えた民主主義、自由主義があることも認めなきゃいけません。これは両方の極端をなくすることが政治の目的だと思います。
  228. 太田一夫

    ○太田委員 植木法相にお尋ねいたしますが、あなたはやはり一国の法をつかさどるものとして、順法精神というものは非常に大事なことだとお考えになっていらっしゃると思うのですが、今の自由という――国民はどの程度の自由を持つべきであるか、自由と民主主義との関連について植木法相の持っていらっしゃるほんとうのお気持を率直に一つ御表明いただきたいと思います。
  229. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいま総理のお答えになりましたお考えと同じでありまして、多数国民の良識に従っておのずからその限界が定まるべきものと考える次第でございます。
  230. 太田一夫

    ○太田委員 しからば別の言葉でお尋ねいたします。愛国心ということ、先ほど少々総理にお尋ねいたしましたが、法相としては、愛国心というものは民主主義とどう位置するものと割り切っていらっしゃいますか。
  231. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ちょっと御質問の趣旨がはっきりいたしかねましたが、愛国心というものは、これはやはり現在の憲法の定められたる条章の範囲内において、しかも世界平和に相通ずるものでなきゃならぬ、われわれはかように考える次第でございます。
  232. 太田一夫

    ○太田委員 世界の平和と民主主義の関係を申したり、愛国心のことを申しておるわけではない。愛国心と民主主義との関係をあなたにお尋ねをいたしておる。今の凶悪なテロ事件を見ますると、愛国心というのが悪用されておる、民主主義というものが悪用されておると思うのです。従って、民主主義と愛国心というのは実は重大なる課題だと思うのです。われわれとしては、今日この事態のもとに立って愛国心を正当に評価し、そしてまた民主主義を率直に正しく理解しない限りにおいては、この事態を切り抜けることはできない。従って、愛国心と民主主義とはどういう関係にあるべきか、そのことについて、今何か率直にずばりとおっしゃることができなきゃならないと思いますが、今のお答えでは少し不満足なんですが、もう一度はっきりとお答えをいただきたい。
  233. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 愛国心と民主主義、これをわれわれ日本国民として、真に平和を愛し、国を愛しということになるわけでございますが、その点につきましては、多数国民の、あるいは全国民がそうあることを期待いたしますが、良識に従っておのずからそこに判断が生まれる、かように私は考えておるのでございます。
  234. 太田一夫

    ○太田委員 柏村長官にお尋ねをいたしますが、今の民主主義と愛国心の関係ですけれども、私はこう考えるのです。民主主義から絶縁されたところの愛国心というのが今残っておるからああいう問題が起きるのだと思うのです。この点いかがですか。
  235. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私は、愛国心と民主主義は全く両立し得るものである、また両立すべきものであるというふうに考えております。  なお、先ほどの光文社の「三光」の問題でございますが、これは事件として取り上げようということで捜査を進めたのでございますが、その取り調べにつきまして、社長脅迫されていないという供述がありまして、事件としては成立していないという実情がございますので、お伝えしておきます。
  236. 太田一夫

    ○太田委員 暴力の問題というのは、なかなか表面に出がたい。もちろん、出たときには命が失なわれたり、あるいはその人の身体が不自由になっておるのです。ですから、昭和三十二年ごろの問題でありましても、そういうことはないといわれたから、そのことについては捜査を打ち切ってしまったとか、それはなかったものと認定しようということは、これは何かしら魂が抜けておるような気がしますけれども、やむを得ない点もあるでしょう。どうしても供述が得られないときにはやむを得ないと思いますけれども、その点で今お答えになりました、民主主義は愛国心から離れていてはいけないとおっしゃったことは私同感でありまして、まことにけっこうなる御答弁で、そういうふうになるならば、今先ほどからのテロ事件というのは、あのように人を許さないということ、寛容の精神を備えない、自分の気に入らないものは絶対にこれを許さない、存在を認めないというような、ああいう非寛容な愛国心なるものがこりかたまって、そうしてそれに反するものを暴力をもって排する、排撃をしてくる、場合によっては殺人、傷害を繰り返していく、こういうことになるわけでありますから、この際において、愛国心の中心となる愛情というようなもの、これはあなたたちも十分身につけておいて下さい。先ほど来の御答弁のように、それは関係のないことではいけないと思うのです。たとえば、古い明治のころの文献を見ますと、そのころから右翼ファシストというものはあったのです。明治の玄洋社ないしは黒竜会、ともにそれは憲則なり綱領を持っておりますけれども、その当時の観念右派といわれておりますけれども、テロに出るというようなことは少なかった。だが、その中にはどういうことがあるか。必ず、「人民の権利を固守すべし」というのが玄洋社憲則第三条にあった。あるいは黒竜会の綱領の中には、「人民の自由を束縛し、時勢に常識を欠き、公私の能率を障碍し、憲政の本旨を没却したる百般の宿弊を一洗し」というように、非常に進歩的な思想が添えられていた。しかし、これがだんだんと日がたつに従って、大正から昭和の初期へとたつに従って、それが狂暴性を増加して、だんだんと強くテロの本質を表わしてきた。こういうことは歴史の証明するところでありますけれども、今日、終戦後再び日の丸の旗を振りかざして、そうして言論の自由に対して挑戦をする、気に入らないことを書いたのは、これは抹殺すべきだというようなことから、極端なる行動に出るというような風潮をかもし出したのは、これはいみじくも総理が喝破されましたけれども、政治の姿を正す。いわゆる政治する人の心が曲がっているから社会の実相が曲がってくる、こう言わざるを得ない。私はその点につきまして、もう少し今の右翼に対するところの割り切り方――あれはどうでこうで、有害であるとか、あるいはあれは破壊活動であるかないかとか、いろいろなことを議論されますけれども、人が間違ったこと、自分に気に入らないことは絶対に認めないというような、そういう似たようであって実は本物でない愛国心などというものがだんだんと世の中にのさばって参りますと、民主主義というのは元来が気の弱いものですから、どこかにそれが傷つけられることになろうと思うのです。この点は一つ総理としても十分お考えいただいて、小説は読まないとか、批判ができないとおっしゃらずに、大事なことはやはり小説から出ているのだから、そのことも十分読んでいただきたい。  ついでにこれは総理にお尋ねをいたしますが、先般新島におきまして暴力沙汰がありました。あれは一説によりますると、防衛庁が模倣して暴力をさせておるというような、私はデマだと思いますけれども、こういう説がありますが、まさかそれはないでございましょうね。
  237. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 防衛庁はそういうことはいたさないと思います。またそういうことはいたすべきではないと思います。
  238. 太田一夫

    ○太田委員 そこで最後に一つお尋ねいたします。これは柏村長官にお尋ねをいたしますが、現在のあなたの方の右翼の政治活動ないしは右翼団の取り締まりは、公安第二課によって行なっていますね。この警備、公安の組織というのは、非常に労働組合とか民主団体動きに対しまして過酷なる取り締まりをするようにできておると思うのですが、これはひが目であるかどうかは別としまして、われわれはそう考えておる。けれども、右翼に対しての取り締まり、右翼に対する備えというのは、これは警視庁でございますが、非常に弱い。しかも先ほどの発表によりますと、ほとんどは帝都の区域に右翼団の凶悪なるものが存在するという以上、非常に危険なことだと思いますが、この組織、この機能は、あるいは拡充強化するというような御用意はあるのかないのか、これをお尋ねをいたします。
  239. 三輪良雄

    三輪政府委員 私からかわってお答えをいたすことをお許しを願いたいと思います。  ただいまお尋ねの右翼につきましては、公安二課だということでございますが、警察庁におきましては警備第一課でございます。警視庁が公安第三課でやっておるわけでございます。右翼の取り締まりの警察官につきましては、前々お答えいたしております通り浅沼事件以後増強いたしておりまして、ことに警視庁におきましては、直ちに二十名を増員し、近くまた十名を増員いたしまして、来たるべき四月から独立の一課にするという準備をいたしておるところでございます。
  240. 太田一夫

    ○太田委員 そこで、労働組合とか民主団体という方に対する警備、組織という方から、逆に右翼テロに対してその組織の強化されるものは回していく、こういう方向で強化さるべきものだと思うのですが、その点はいかがですか。
  241. 三輪良雄

    三輪政府委員 警察全体といたしまして、そのときの治安情勢にかんがみて、最も必要なところにさけますところからさくわけでございます。
  242. 太田一夫

    ○太田委員 もう一つお尋ねをいたしますが、これは警視庁小倉総監にお尋ねをいたします。最近警視庁の中におきまして、係長というとはたして正確であるかどうか存じませんが、その中堅クラスの方々の間の気風が、昔の言葉でいう下剋上の気風を醸成しつつある。それで右翼とも手を結んでいるという傾向が顕著になっているといううわさがありますが、そのような心配はございませんか。
  243. 小倉謙

    小倉説明員 お答えいたします。私はただいま初めて聞いたことで、全然今まで聞いておりませんが、そういう心配はないと考えております。
  244. 太田一夫

    ○太田委員 終わります。
  245. 濱田幸雄

    濱田委員長 両委員会理事間の申し合わせによりまして、本日はこの程度にとどめ、残余の質疑は、明後八日の午前十時より本連合審査会を継続開会して、これを行なうことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後九時十六分散会