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1961-06-02 第38回国会 衆議院 地方行政委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年六月二日(金曜日)    午前十一時三十四分開議  出席委員    委員長 濱田 幸雄君    理事 金子 岩三君 理事 田中 榮一君    理事 丹羽喬四郎君 理事 吉田 重延君    理事 太田 一夫君 理事 川村 継義君    理事 阪上安太郎君       伊藤  幟君    宇野 宗佑君       小澤 太郎君    大沢 雄一君       亀岡 高夫君    久保田円次君       田川 誠一君    富田 健治君       前田 義雄君    安宅 常彦君       佐野 憲治君    二宮 武夫君       松井  誠君    山口 鶴男君       門司  亮君  出席国務大臣         自 治 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         自治政務次官  渡海元三郎君         自治事務官         (行政局長)  藤井 貞夫君  委員外出席者         専  門  員 円地与四松君     ————————————— 六月一日  委員亀岡高夫君及び山口鶴夫辞任につき、そ  の補欠として綾部健太郎君及び山中日露史君が  議長の指名委員に選任された。 同日  委員綾部健太郎及び山中日露史辞任につき、  その補欠として亀岡高夫君及び山口鶴男君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 五月三十日  観光地の浄化に関する請願星島二郎紹介)  (第四三九三号)  道路交通法の一部改正に関する請願濱田幸雄  君紹介)(第四四八六号)  派出売春婦組織取締りに関する請願星島二郎  君紹介)(第四五五三号) 六月一日  道路交通法の一部改正に関する請願外二十件(  齋藤邦吉紹介)(第四七〇三号)  同(中村庸一郎紹介)(第四八〇〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出  第一八五号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 濱田幸雄

    濱田委員長 これより会議を開きます。  地方自治法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。佐野憲治君。
  3. 佐野憲治

    佐野委員 ただいま議題となっている法案ですけれども、一見読んでみますと、そしてまた提案理由をお聞きいたしましても、非常に簡単に、現実事態に照応してそれぞれの手続をきめた。こういう関係のものが五つに分かれておると思うのですが、そこでやはりお聞きいたしておきたいと思いますことは、大臣がおいでになれば言うつもりでおったのですけれども、先般の銃砲刀剣類等所持取締法の場合を見て参りますと、非常に提案理由なり立法者意図なりというものが親切丁寧に説明されておるわけであります。しかしながら、あの法案自体性格にもよりますけれども、非常に法律規定があいまい、かようにとられる内容を含んでおる。こういう点を指摘しておったのですが、今度の場合を見て参りますと、理由はまさしく簡単であって、現実事態発展して参ってきておること、その現実事態に照応するためにそれぞれの手続をとるのだ、こういう工合に述べられてあるだけなんです。もちろん法律技術的にながめてみますと、そのへんてつもない整理された条文となっておるわけですが、それだけに私は、やはりこの法律改正あるいは条文を新設しようとする意図というものがやはり逆に大きくあるのではないか、簡単にあっさりとかまえておられますけれども、しかしながら、こういう自治法改正しようとする意図なり考え方というものの中には、もう少し重大な要素というものがたくさん含まれておるのではなかろうか。こういうことを考えるわけであって、そのことはたとえば去年だったですか、経済同友会から地方開発についてのいろいろな意見が出て参っておる。あるいはことしになってからも経済団体連合会からやはりこの産業基盤立地条件の確立に関する要請書が出てきておる。そういうことを今記憶に呼び起こしますと、やはりそういう財界のいろいろ要請というものと、これらの法を改正しようとすることが、非常に関連した背景となっておるのでなかろうか、こういうことも感じられますので、あまりにも提案理由があっさりいたしておりますので、一つこの機会に、この法律提案されました理由についてもっと率直に、現在自治省としてはどういう事情に立っておるのか、今後はどういう方向に向かって進まんとしておるからこれが現実状態として必要なんだ、しかもこれは本質的なものとして解釈していいのか、あるいは過渡的な便宜的な一つの手段としてこういう法改正をやられようとしておるのか、これらの点をもあわせて、この法案を提出しなければならなかった理由について、もっと具体的に説明していただきたいと思います。
  4. 渡海元三郎

    渡海政府委員 この法案の裏に、提案説明あるいは法案条文そのものでは便宜的と申しますか、実情に即しての簡単なものであるが、これを提案するに至る大きい何かを意図するものがあるかというふうな御質問でないかと思います。われわれ事実ためにするための段階としての改正というふうなことを考えず、提案理由そのもの通り考えておりましたので、あるいは質問の御意図と反するかもわからぬと思いますが、自治法は、昭和二十二年に制定されましてから、累次の改正が行なわれてきたのでありますが、こういった地方の根本的な制度というものはできるだけ安定して、そうひんぱんな手直しというものはやるべきでない。かように私は考えますので、従来の経緯にいたしましても、地方制度調査会におきまして答申がございました昭和三十一年に、いわゆる特別市制の問題にからみ、相当大幅な改正が行なわれましたが、それ以後は各種法案改正に伴いますところの改正程度にとどめてきた、かように考えておるのでございます。今回の改正は、現実経済界発展その他現在と合わせまして必要な規定を整備したというのみでございまして、別に深い魂胆があったわけではないのでございます。  なお地方制度調査会で、いわゆる地方制度なる問題が答申され、すでに答申も出ておるのでございますが、これらの根本的な改正ということにつきましては、わが国制度上非常に重大な問題でも、ありますので、早々に実施すべきでなく、十分な研究と研さんを積み重ね、準備を行なって後に行なうべきものであるというので、目下慎重な態度をとっておる次第でございまして、今回の改正は、これらとは離れてあくまでも現実状態にマッチすべく必要最小限度改正を行なう意図に出たものでございまして、その佐野委員の御指摘のような意図は全然なかったことを御了承賜わりたいと存じます。
  5. 佐野憲治

    佐野委員 私たちが聞いておる範囲では、昨年の九月十二日、日本国連との合同阪神都市圏計画調査団研究報告発表になっておりますね。この発表内容契機として、自治省がたとえば今五つの法の改正、整備をしようとするのですけれども、公有水面にかかわる市町村境界を定める手続並びに広域にわたる総合計画作成するための地方公共団体協議会を設ける、これに伴う手続ですね、これらのことは一貫した関連性を持っていると考えられますし、あとの議員並びに長が請負禁止規定に該当するかどうかという規定、あるいは別表の改正、これはそれぞれの現実的な要請に基づいてやられたのですけれども、前段にありますところのこの点を改正に踏み切られた直接の動機というのは、やはり日本国連との合同調査による報告、これに基づいてこの法改正に踏み切られたのだ。かように聞いておるのですが、その点はどうですか。
  6. 渡海元三郎

    渡海政府委員 直接あの報告に基づいてあれによって踏み切ったということはございません。現実におきまして、近時経済発展とともに水面埋め立て等も、今まで小規模だったものが非常に大規模公有水面埋め立てが行なわれるような状態になっております。しかもそのために数市町村にわたる埋め立てが行なわれますので、現実におきましても、そういった紛争を生じて困っておる状態でございます。また将来このような計画が非常に大きく、取り上げられておる現在でございますので、ぜひともこれを簡素化して、将来の紛争を断ちたいという現実の姿に基づいて改正に踏み切った次第でございまして、たまたまこういった姿が現実の姿でございますので、あの報告の中にも指摘されておったのではなかろうかと思います。なお、広域総合計画に基づくところの協議会の設定といいますことも、町村合併以来相当自治体も大きくなったのでありますが、なおこれ以上に町村合併の姿において進めていくということは無理でございますし、また困難ではなかろうかと思います。しかしながら、他面現在の大きくなった市町村といえども、それだけの行政都市作りなりあるいは産業立地条件を整備していくことができるかと申しますと、決してそうでない。むしろ広域考えにおいて今後の経営その他を進めていかなければならないというのが現実の姿でございますので、それに基づいてこの協議会制度を法的に定めさせていただきたい、かように考え提案させていただいたような次第でございます。
  7. 佐野憲治

    佐野委員 ただいまの説明でもどうもこういう改正をやらなくちゃならないという理由がやはり納得されないと思うんですよ。それで研究報告は、発表せられたものの骨子は一体どういう骨子であつたか。というのは、それと関連いたしまして、私たちは本委員会を通じてはまだ明らかにされていないのですが、新聞紙を見て参りますと、自治省事業庁案なるものがしばしば流布されておる。あるいはまた地方開発基幹都市建設法作成準備をしておるとか、あるいはまた各省間との折衝が行なわれておるとか、こういうことが流布されておるわけですけれども、そういう事業庁構想なり、あるいはまた地方開発基幹都市法内容なるものを新聞紙を通じて理解しておる点から見て参りますると、やはり国連日本との合同調査による研究報告書か非常に大きく影響を与えておるのじゃないか、かようにも考えられますし、これらのことと関連してもう一つだけこの研究報告骨子と、あるいは事業庁案なるもの、あるいはまた基幹都市構想なるものは一体どういうものであるかということを、この際明らかにしていただきたいと思います。
  8. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 国連調査団につきましては、これはまだ最終的な報告か出されておる段階でございませんので、とりあえず視察調査の結果、中間報告が提出されておるのであります。これは行政社会経済の名分野に広く言及をいたしておりますが、さしあたり地方行政という面から見まして特に関係あると思われまする点について御説明を申し上げますと、その点は市町村府県間の協力関係を助長することを主たる目的とする地方自治法改正、ことに府県を異にする市町村間並びに府県市町村共同行動を容易ならしめる点に特別の考慮が払わるべきである。これらの場合における協力体制は現存する法律並びに諸条件のもとにおいてはきわめて困難である。こういうことが指摘をせられておるのであります。それで私たちといたしまして、この中間報告というものを貴重な参考意見という考えておることは、これは申し上げるまでもございません。しかし国連調査団中間報告自治体が、やはり現実社会発展実情と、それと現行の地方制度その他の国の諸制度との、ギャップと申しますか、そういうものが出て参っておりまするために、それの是正を求めることが必要であるという結論が出て参っておるに違いないと考えるのであります。単なる理想的な将来の計画設計というものを描くというだけでなくて、現実の諸制度と、それから現象というものの開きというものを見つめて、それを是正していくという現実的な解決方法というものを指示しておるのではないかというふうに受け取っております。われわれ自身も、この中間報告の示唆いたしておりますことは、かねがね考えておったところでもございまするし、たまたま中間報告が出されたということも契機になったことは事実でございますけれども、それと直接、これがあったからということでなくて、かねがね地方からも要望もあり、また私たちも必要ではないかと考えておりました点、それを基礎にいたしまして、さしあたって必要な措置一つ講じてみることがよいのではないかということで今度の改正案提案をいたしたような次第でございます。  なお事業庁、さらには地方開発基幹都市の問題についてお尋ねがございましたので申し上げておきたいと思いますが、現在地方行政というものが当面をいたしておりまする問題の中で、一つの点は、先刻申し上げたことに関連をいたしまする地方団体相互間の協力体制というものをもう少し整備しなければならぬという点が一つございます。それから全国的にわたって地域所得格差というものをなるべく是正して、国土の均衡のとれた発展をはかっていかなければならぬ、こういう要請が大きくあるのではないかというふうに考えられるのであります。これに対する方途といたしまして考えられておりまするのが、事業庁とか、あるいは地方開発基幹都市の構成であろうかと思います。むろんそのねらいといたしますることは同一のものであるというわけではございませんですか、そういうことにねらいを持って、これらの点がいろいろ論議をされてきておるというふうに考えておるのであります。その中で事業庁についてまず申し上げてみますと、現在わが国には御承知のように公社公団といったようなものがかなりできておりまするし、またそれが増加の趨勢にあることは疑いのない現象でございます。また、県とかあるいは市とかにつきましても、地方団体組織機構とは別に公社というようなものが作られていく傾向が漸次ふえてきておるのであります。これは何ゆえにこういう現象が出てくるかということを考えてみますと、これはいろいろ原因がございましょうけれども、やはり広域にわたって処理していかなければならぬという必要性があるにもかかわらず、現在の地方団体規模地域というようなものが狭小に過ぎる、それを何とかカバーしてやっていくためには広域的な、全国的視野に立つところの公社公団というようなことを考えていく必要があるのではないかという点、さらには資金の獲得の方法といたしまして、地方団体自体がやって参りますと、どうしてもこれは起債とか、そういうような点で制約を受けてくる。そういう点で公社公団等でもって経営して参りますと、その財源の手当等について、これは割とスムーズにいくというような点、さらには事業の実施の方法等につきまして、契約の締結その他について例をとるまでもなく、それが地方団体組織運営の形で行なわれますと、これはどうしても慎重な手続に相なりますので、それをもっと臨機応変に、身軽に弾力的に措置をいたしていくというような必要性、そういうところからこういう公社公団というものがだんだん出てきておるのではないかというふうにわれわれ理解をいたしておるのであります。しかし、私たちといたしましては、本来地方団体が処理しなければならぬ事務、あるいは処理し得る事務というものを、今のようなたとい事情があるにいたしましても、これを無批判的に公社公団というような地方団体以外の人格にやらして参るという方向については、これは私たち手放しで賛同はいたしかねるのであります。公社公団になりますれば、そういう長所もございますけれども、一面住民の直接の批判、監視というものからは遠ざけられる機構でございまするので、そういう点やはり十分に考えていかなければならぬのではないか。しかし、現実公社公団の設立を促します要因がもっともなものでありますれば、私たちといたしましても、そういう原因の除去には積極的に努力していかなければならぬ。単に抽象的に公社公団というものは地方自治の建前からいってけしからぬのだということばかり言っておりましても、これは現実の情勢に合わない。そこで私たちといたしましては、地方自治法ワク内においてできることはやっていく、あるいは地方自治法ワク内でなかなかおさまり切れないというものにつきましては、住民批判その他の制度的な保障というものを確保しながら、資金面なりあるいは運営面なりにおいて弾力的な措置がとれますような方途考えていってはどうかということを考えておる次第であります。その一つ構想の現われが事業庁といったものでございまして、現在地方自治法上では、よく御承知のように、協力方式といたしましては、一部事務組合方式あるいは全部事務組合方式と、さらには協議会方式、機関の共同設置事務の委託と、この四つの方式を認めておるわけでございますけれども、これでは十分身軽に運営ができない、あるいは国の資金の導入というような点についても差しつかえがあるというような点から、国、地方団体というものが参画してここに別個の団体を作って、しかもそれは私たち構想としては、やはり特別地方公共団体たる性格を持たせまして、そして地方団体としての性格を持ちながら、しかも当面の要請にはこたえ得るようなそういう機構というものを考えていってはどうかというのが事業庁構想でございます。しかし、この点についてはまだ私たちといたしましても調査研究段階でございまして、現在公社公団、特に地方で設立されておりまする公社公団等についても、もう少し突き進んだ調査が必要であるということで目下検討中でございますので、それらの調査検討の結果とも相待ってこれらの点についで成案を得たいということで、なお検討を続けておるような状況でございます。  なお、第二に地方基幹都市の問題でございますが、これは地域開発必要性ということにかんがみまして現在いろいろな手が打たれております。その一つといたしましては、国会に提案になっておりまする低開発地域工業開発の問題がございます。そのほかにやはりもう少し大規模地方の中心の都市作りをやっていく、このことによって大都市へのこれ以上の人口並びに産業の集中を抑制をいたしまするとともに、地方所得格差というものをできるだけ是正をしていく。そういうようなねらいをもちまして地方基幹となるべき都市建設をしていくという必要性があるのではないか。これは全国的にもある程度機運が高まってきておる段階でもございますし、私たちといたしましても、やはり将来にわたる地方団体の財政の限界その他を考えて参りますると、どうしてもそういう都市作りというものを推進する必要があるということで、目下各省と連絡をいたしながら成案を得るように努力をいたしておるのであります。まだ最終的な成案を得るに至っておりませんが、できるだけ早い機会成案を得たいというふうに考えておる次第でございます。  それはそれといたしまして、今度御提案を申し上げておりまする計画作成のための協議会というのは、それとは無関係とは申しません。関係は非常にございますけれども、当面地域を越えて広域的に計画的に処理を行なっていかなければならぬ事務というものが非常にふえてきております。これは未開発地域だけではなくて、あるいは大都市の再開発ということだけではなくて、たとえば具体的に申しまするならば、阪神間にいろいろ衛星都市が非常に並んで併存いたしておりますけれども、それらにわたってやはり広域的に計画的に事柄を処理して参りませんと、文化の関係、教育の関係、あるいは交通関係のみならず、現実に一番市民生活関係のございます清掃の関係等につきましても、きわめて困難な事態が起こって参っております。それらについて、やはり広域的な角度からお互いに関係市町村というものが相集まりまして計画を作って、その計画に基づいて事柄を処理していくということに相なりますれば、市政の混乱、将来にわたる紛議というものを最小限度にとどめるためにはきわめて有効適切な措置ではあるまいかという点を考えまして、さしあたりこういう協議会について新たなるタイプのものを設けようというふうに踏み切ったわけでございます。それらの点、いろいろ関連のあることは私も十分承知をいたしておるのでございますけれども、さしあたり当面必要とされておりまするこういう計画作成というものについて協議会を作りますことが、地方からの要請にもこたえるゆえんでもあり、現実事態に対処する方策としてこれは確かに  一歩前進のことになるのではないかということで協議会設置ということを御提案申し上げた次第でございます。
  9. 佐野憲治

    佐野委員 ただいまの説明をお聞きしまして、関連はあるけれども、また都市現実的な要請に基づいてやったんだ。こういう意味なんですけれども、私はそうとはちょっと解釈できないんじゃないか。逆に、事業庁構想というものを進めたいのだけれども、いろいろな障害にぶつかっておるので、とりあえず便宜的処置としてこういう改正をやろうじゃないか、こういう意味に解釈しておるわけですけれども、これはまた質問の中においてもう少し突っ込んでお聞きいたしたいと思います。  それでまず最初に、境界紛争のための手続として九条の三を新設されたわけですが、このことに関連いたしまして、現在地方公共団体海岸埋め立てをやっておる。これは膨大な数量に上っておると思うのですが、昨年ですか、イスラエルで開かれた地方自治団体国際会議において日本代表団からレポートが出ております。このレポートによりますと、現在一九五五年から五年間で一万七千エ−カー埋め立てを実行しておる。今後十年間においては大体四万二千エ−カー埋め立てをする計画を持っておる。これは現在の工業用地海津埋立需要量の約六五%に相当するものである。こういうレポートが出ておるわけですけれども、これに対しまして、一体自治省としてはどのように考えておりますか。地方自治団体地方行政力を充実するために、あるいは地方産業の育成のために、住民経済生活保障のために、いろいろなさらなくてはならない仕事がたくさんあるにもかかわらず、しかも資本立地条件一つであるところの海岸埋め立てのために、地方自治団体資本家要請しているうちの六五%も、この貧弱な地方公共団体が受け持たねばならないという現実は、一体どこから来ておるか。こういうことは地方自治団体仕事としてはどうお考えになりますか。
  10. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 公有水面埋め立て関係でございますが、むろん無計画にただ土地を作ったらいいというようなことでやるようなことは十分に慎重に考えなければいかぬだろうと私は思います。しかし、現実住宅用地なりあるいは工場用地なりということで用地要請というものが出てくる、その需要がふえてくるという場合に、精細な見通しのもとに計画を立てて、埋立地を造成するということは、それは私は当然地方団体計画を持ってやっていくべき仕事ではないかと考えております。むろんその場合に、何を重点に置いてやっていくか、今御指摘になりましたように、地方団体としてやるべき仕事は幾らでもあるわけであります。その中で重要なものを差しおいてやるかやらぬかという点については、当該自治団体の判断によるものと思いますけれども、計画的に十分の見通しを立ててやります限りにおきましては、やはり土地造成をやっていくというのも一つの現在におきまする重要な行政のなすべき内容ではあるまいか、かように考えておる次第でございます。
  11. 佐野憲治

    佐野委員 では諸外国の地方自治団体が、こういうような資本家みずからの手でなさなければならない工場用地公有水面埋め立てのためにやっておる国が一体見られますか。地方自治団体としてやっている公有水面埋め立て、たとえば所得倍増計画の中におきましても、いわゆる工業用地が一億四千万坪も不足しておる。これから造成しなければならぬ。そのうち公有水面埋め立てによって八千八百万坪を臨海工業地帯として確保したいのだ、こういうことを言っておるのです。今局長さんの言われる単なる地方自治体の住宅あるいは地方住民の福祉、いろいろのために土地が必要なのだ、こういう形で埋め立てておるのは戦争前にもあったと思います。諸外国にもその例があるだろうと思いますけれども、今日わが国地方自治団体が行なっておるような、大規模にして、しかもこれが工業用地の確保である、こういう形において行なわれている例が諸外国にありましょうか。あったら一つ教えていただきたいと思います。
  12. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 私、現在諸外国の具体的な実例については、詳細に今承知をいたしておりませんですが、そのような埋め立て等をやっておりますることは絶無とは言いがたいのではないかという感じを持っております。今お話しのように、単なる工場用地の成造ということだけのために、当然それは事業者がやるべき事柄地方団体がかわってやるのはいかがかという点でございますけれども、しかし、その点やはり日本実情の場合、その埋立地自体に工場等が入って参りますれば、それに伴って税収もふえていく、将来の財政の見通しも明るくなっていくというような点から、きわめて積極的になっておるという点については、私はそのことを一がいに非難すべき問題ではないのではないかという感じがいたしております。特にそのことが、卒業あるいは工場に対しまして不当の利得をただ単に一方的に供与するというようなことではございませんで、埋め立ての場合におきましては、当然これによって造成された土地というものは十分の対価をもってそれらに提供されていくというようなことに相なるわけであります。その場合、地方団体が実施をいたしますることが何かにつけて便利である、またスムーズに参るということは、事実問題としてこれは私たちも認めざるを得ないことでございます。そのことが工場誘致等につながってくる、工場誘致の必要性につながってくるということに相なりまするならば、地方団体といたしましても、やはり非常に積極的にならざるを得ない。ただ私といたしましても、その点につきましては、無計画事柄を取り入れていくということは、これはやはり慎重に考えていただきたいものだ、計画的に十分の配慮をいたしてやっていく限りにおきましては、公有水面埋め立てということにつきましては、一がいに不届きなものだというふうに言う必要はない、こういう考え方に立っておるわけであります。
  13. 佐野憲治

    佐野委員 もちろん第九条の三が新設されましたのも、そういう皆さんのお考え方に基づいて公有水面埋め立てが行なわれておる、しかも公有水面埋め立てを通じて一番争論となっておるのがいわゆる土地境界である。すなわち埋め立てたのを工場用地としてこれを使いたいという一心であるし、そのことの原因も、今御指摘になったような工場誘致によって財政力を強くしたい、こういうことから起こってくる原因だろう、かように考えるわけであります。そこで、こういう原因を作って参りますことを通じて、一体工場誘致というものが日本の自治体にこれほど真剣に取り上げられて参ったのはいつごろからか、こういう点を一つ振り返って見て参りましても、あるいは時事通信の地方行財政調査ですか、あれを読んでみても、全国の府県のうち工場誘致条例を持っていないのは八つくらいしかなく、あとは全部持っておる。多くの市町村も持っておる。こういうような形の状態が急速度に出て参ったのは、町村合併法の制定、それ以後、並びに地方財政の赤字というのですか、再建法ですか、この法律が出て参りましてから、急速に全国的に広がって参っておるだろうと思うのです。そういたしますと、私がここでお聞きいたしたいのは、一体町村合併というものは、合併法の目的を読んでみましても、皆さんがしきりに地方自治体に対してアピールされましたことも、町村合併することによって適正規模の町村になり、いわゆる地元産業地方住民の生活あるいは経済活動と行政区域とが一致するのだ、いわゆる経済領域と行政区域を一致させることによって行政内容が充実する。財政力が強まるのだ、こういう工合に主張して参られたと思うのです。ところが、現実においてはそうではなくて、みずからの力によって地方産業を育成していく、地方行政内容を充実していくという傾向が出てこなくて、逆に今度は工場誘致をやらなければどうにもならないのだ。こういう風潮が生まれて参ったということです。しかも外からの資本力によれば地方団体の財政力が充実して参らないので、あるいはまたそういう工場誘致を可能にする立地条件を整えなければ国からの補助金がもらえないのだ、国からの仕事がもらえないのだという逆な形になって、町村合併することによって自主的な自立性、地方、自治の基礎が確立するはずだったのに、逆に中央からの資本を入れなければならない、あるいはまた国の財政援助が得られなければ地方自治団体はやっていけないのだ、こういうような形が出てきたのに対して、一体どういう工合にお考えになっておりますか。
  14. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 町村合併によりまして、産業の誘致あるいは企業の誘致がそれを契機として起こってきたというふうには私たちは理解をしておらないのであります。町村合併のねらいは、今佐野先生のお話しになりました通りでございまして、むろん見方によりましては、まだまだ、十分な成果は上げていないということが言えるかと思いますけれども、しかし一面においては相当の実績は上げてきておるということは、やはり疑いのない事実ではないかと思うのであります。また町村合併をやっておきましたがために、その後における経済社会発展に伴っていろいろな事業をやらなければならぬ、また事務がふえて参ったというものにも曲がりなりにも対処していけておるのではないかというふうに考えるのであります。町村合併を行ないましたがために、かえって国に対して財政措置要請する声がふえたというふうには私たちは理解をいたしておらないのであります。ただ、町村合併で町村の規模が大きくなりますると、経費の節約になる面もございますけれども、また一面住民の福祉の向上のためにいろいろな施設、あるいは事業というものをやって参らなければならない。そのための裏づけとなりまする財源に対する需要というものは、だんだん、だんだんと無限大に大きくなって参る。そう申しましても、その足らずまいというもののすべてを国から求めるというのでは、地方団体の自主性の面から申しまして疑義が出て参ります。そういうような点から産業の誘致というものを考えて参るということは一つの自然の方向でございまして、その傾向自体についてとやかく言うべき筋合ではないのではないかと思っております。ただ、往々にして見られますように、工場誘致に非常に熱心なるあまり、あまりにも有利な条件を誘致産業に対して約束をしすぎて、そのために当該地方団体がにっちもさっちもならないような財政負担を背負い込んでしまうというような無計画なやり方をしておる向きもございます。そういうやり方等については厳に戒慎を加えて参らなければなりませんし、そういうことについては積極的に国自身といたしましても十分指導の万全を期さなければならぬ、かように考えておる次第でございます。ただ、今申し上げましたように、町村合併ということが直接の契機になって、それから工場誘致というような関係が非常に盛んになったというふうには私は考えておらないのであります。
  15. 佐野憲治

    佐野委員 私の言うのはそうではなくて、町村合併によって、あるいはまた赤字団体の再建法が出て参ることによって、自立性、自主性、それが地方自治の基盤になるわけですが、これを作っていくのだと言われました趣旨とは逆に、中央からの援助、中央からの力によらなければ地方自治団体は立っていけない、こういう風潮が全般化してきておる。こういう傾向を一体どうお考えになるかという点と、そういうために現在の工場誘致が地方の既成産業そのものを不振に陥らしめている等いろいろあるでしょう。そのために工場誘致をやるのは一つの手段として考えられたものが、今日では工場誘致そのものが目的となってしまっておる。工場誘致をやるそのために、やはり立地条件を整えなくてはならない。あるいはまたそれに関連する産業設備を充実していかなければならない。もう地方自治団体のやっておる仕事は、そういう工場誘致が目的かのごとき現象も呈してしまってきておるのではないか。そういうことと同時に、町村合併をやって、そこに財政的な裏づけが与えられていない結果として、こういう方向にいかなくてはならないのではないか。同時にもう一つ、今公有水面において争論が起こっておるという原因も、やはりそれの一環として土地の取り合いをやっておるのだということを考えて参りますときに、今皆さんの方が特に第九条の三を新設され、従来における境界紛争に対するそれぞれの手続法がきめられておるにもかかわらず、こういうものを新設されて、しかも今までは申請を待って知事が調停に当たるというのを、今度は関係市町村の同意を得て調停する、あるいは裁定を下す、こういう強い規定をなぜ設けなければならないのか。こういう点に対してやはり疑問を持つわけなんですが、関連いたしまして一体なぜこういう強い規定——従来におけるところの境界紛争手続でやっていけばいいのに、今このような指導権に似た強い規定をあえて設けなければならない理由はどこにあるのですか。
  16. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 従来の紛争解決の手続よりも若干解決を促進する意味合いをもちまして、指導権を知事に与えていくという方向の政正案の内容であることは御指摘の通りでございます。ただ、こういうことをやらなければなりませんのは、埋め立てがどういう方向でなされていくか、何を原因としてなされるか、また埋め立て自体に対する価値判断というものは別問題といたしまして、埋め立てが行なわれて、そのために土地が造成される。その土地につきましての所属の確認をしなければならない。ところが、その所属を確認する際に海面における市町村境界というものが明確でありませんために一種の利害関係の衝突が生じまして、その手続が進まない。現在の規定で参りますと、境界変更あるいは所属未定地の編入ということをやる場合におきましては、これは当該関係市町村から申請があって初めて手続が進め得るということになるわけです。申請がない限りは、いつまでたってもその編入処分が行なわれないわけであります。ところが、その所属未定地の編入処分につきまして、どちらもダブつたような申請が出て参りましたのでは、これは知事は処分のしようがないわけであります。そういうようなことでもって解決が長引きまして、まだ最終的に決定を見ておらないというものが全国になお七カ所あるようであります。しかもそれらにつきまして、今後埋め立てというものが、何といたしましてもどんどんふえて参る趨勢にあることは事実であろうと思います。そういう場合に、そういう紛争が解決をされないという状態のままで参りますることは、地元の関係から申しまして、地元の発展の点から申しましても適当なことではございません。そういうような意味から、一方それを進めやすいようにする手続考えてみてはどうかというのが今後の改正の要点でございます。この場合に地方自治体の自主性というものを頭からなくしてしまう、たとえば公有水面関係しては、市町村境界等は知事が専断できめてしまうのだというようなことになりましては、適当でないことは申すまでもないと思います。ただ申請がいくまで待っておったのではいつまでも解決しないという場合に、指導権を知事に与えまして、知事の方から市町村にはかってその同意を得て事柄を進めていく、そういうふうにいたすことによって若干手続を進め得る可能性が出てくるのではないかという点を考慮したのであります。あくまで同意でありますから、同意がなければ事柄は決定をしないということになるわけでございまして、その配慮は十分にいたしておるつもりでございますので、これによって市町村の自主性というものが、全く没却せられるということには相ならないと考えます。
  17. 佐野憲治

    佐野委員 私の申し上げますのは、皆さんの言われるような同意を前提とするのだ、地方自治団体の自主的な解決を念願するのだ、こう言われるのだったら、あえてこういうのを新設しなくても、普通のいわゆる七条の規定でやっていけるのじゃないか。あえてこういう規定を設けられるところに、やはり強い一つ要請というのですか、強い圧力を地方自治団体に与えておると思うのです。このことは次における広域行政に対する計画作成のための協議会設置に対して、知事並びに自治大臣は勧告することができる。こういう強い規定——これも勧告だから大したことないと言いますればそれまでですけれども、勧告という強い規定をあえて挿入せられるということの中に、中央の考え方を地方自治団体に押しつけようという考え方、こういう考えになるのは地方自治団体の側としては当然じゃないか、かように考えるわけですけれども、こういう規定を設けられたことと関連しまして、私は政府の所得倍増計画による十カ年間の行政投資というのを見て参りますと、十六兆一千三百億円の行政投資を十年間にわたってこれから行なう。こういう行政投資の内訳ですね。こういうのを見て参りますと、国の行政投資そのものが所得倍増計画を推進するために投資され、行政投資、そのものの向けられている面は、何といいましても地方自治団体と非常に関係の多い事業になってくるのじゃないか。今申し上げましたところの公有水面埋め立てということも、一つの大きな行政投資の対象になってきておる。それからまた産業条件を整備しなくてはならない。道路、港湾、あるいは工業を誘致したのと関連いたしまして、水道、下水道、塵芥処理、こういう公益的な仕事もやっていかなくてはならない。そのためには行政投資をしようじゃないか、こういう計画が政府において作られてしまっておるわけですね。ですから、地方自治団体といたしますれば、こういうものをやらなくてはならない。しかもその裏づけとなっておる経済企画庁の答申を見て参りますと、先ほど申しましたような工業用地が一億数千万坪不足しておる。そのうち八千八百万坪は公有水面埋め立てるのだ。そのための財政投資は大体幾らか、こういう計算がちゃんと積まれておるわけですね。ですから、その方向地方自治団体がいかなくては困る。またいかせなくてはならない。こういう国の強い要請の結果として、やはりそれを可能にする現実要請にこたえる条文の整備、こういう形をもって生まれて参ったのではないか、かように考えるわけですけれども、その点はどうですか。
  18. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 地方自治というのも国の行政制度の一環でございますが、わが国においてもその点については変わりはないわけでありますので、地方行政運営自体もやはり大きな国の施策に照応してやっていく、それに協力をするという関係にあったことは、これは当然のことであろうかと思うのであります。ただ、私たちといたしまして、今度の場合公有水面埋め立てに関して紡争処理の方法等を簡素化していきたい、また有効にしていきたいというようなことを考えましたこと、あるいは協議会について新しい一つ方式考え出してみたいと思っておりますこと、これは別に直接にそういう、今お話しになりました所得倍増計画と国の大きな方針、そういうようなものに照応して、こういう措置をしなければ倍増計画が達成できないからというようなことでもって考えたものでは決してございません。むしろ現実の問題といたしまして、所属未定地の編入をめぐって長年にわたって紛争が絶えない。何とかやはりこういう点は解決を促進するような方途を講ずべきではないかというような地元からの要請もございます。県の方からの要望も盛んに参っております。そういう現実事態に対処して、これを一歩でも前進させるというためにはどうすればよいかということを考えました最小限度規定の整備でございますし、協議会につきましては、阪神関係以外にどんどんとそういう共同処理の要請というものが出て参っておりますので、その要請にこたえますることが、やはり計画的な行政処理というものを行なって参りますための一歩前進の方策ではないかということを考えまして、今次の自治法改正案を得提案申し上げた次第でございます。
  19. 佐野憲治

    佐野委員 国の政策国の方針に地方自治団体としてはやはり従っていかなくてはならない、そのためには中央統制もある程度やむを得ないのだ、また中央統制をやるのだ、こういう意思表示が背後に隠れていると思うのです。同意を得て行なわれるのだ、こう言われますけれども、やはりこれはやらなければならない事情に追い込まれておるし、そのための紛争をやってもらっては困る。早く解決しなくてはならぬためにある程度の強行措置をとるぞという考え方がやはり背後に出て参っておるのではないか、こういう点を感ずるわけです。  そこで現在の法規においても、たとえば今のいろいろな広域行政として私は、本来の中において広域行政として、あるいは共同処理、こういうものは諸外国においても自然に地方自治団体の中に発生しておりますし、また当然地方自治団体の閉鎖的な状態から今日のような状態に進んで参りますとともに、そういう必要な部面が出てくると思うのです。しかしながら、今日提案になっていること並びに今日の日本現実状態というものはそうではなくて、一つ方向のためにこういう手段がとられているのではないか、こういう感じを持つわけです。  そこで私は、大臣がおられないので次官にお尋ねするわけですけれども、昭和二十五年に国土総合開発法というものが制定されたわけですが、国土総合開発法によりますと、国としての開発における地方開発、あるいは地方自治体自身が持つ開発、こういうことの意味から四つの計画が立てられるということになっておるわけです。地方自治体自身によるところの自主的な計画、こういうことに対して一体自治省としてはどういう指導とどういう援助を与えておりますか。またどういう計画なりどういう要請が実際出て参っておるか、こういう点に対してお聞かせ願いたいと思います。
  20. 渡海元三郎

    渡海政府委員 国土開発計画そのものは経済企画庁その他でやっておられますから、直接には私たちは関与しておりません。今御質問地方の自主的な地方開発という面に対しましては、私たちは、各県におきましてそれぞれ行なわれています部面に対しまして、あるいは補助の形において公共事業をながめており、または起債の面においてこれをながめて、財政力と合った自主的な地域開発というものに対しまして援助もし、推進もするように計画に対する協力を与えているような次第でございます。
  21. 佐野憲治

    佐野委員 私は、昭和二十五年にこの国土総合開発法が制定されましたのは、国自体の考えよりも、やはり地方からの要求が強まってこの法律が制定された。かように理解をしておるわけですが、当時私たち地方の議員といたしまして、敗戦の後における混乱、貧窮、食糧危機、いろいろな混乱の中からようやく立ち直って、ともかく地方的な計画を立てようじゃないか、地方発展というものをみずから住民と一緒に、住民の参加によって立てていこうじゃないか、こういうために国が地方計画を立てるという場合に、あくまで国全体から見て立てる、地方地方なりにおいて府県計画を立てる、こういう考え方であの法律が制定されたと思うのです。ところが、そういう最も本来のあり方であるところの国土総合開発法による計画は、それらの中に盛られておるいろいろな諸事項は、地方自治の今日解決しなければならない多くの問題を持っておると思うのです。特に地元産業、既成産業の不振を一体どう克服していくか、地方住民の生活をどう守って育てていくか、こういうことが中心になっての計画になってくるだろうし、その努力が進められて参ったと思うのです。ところが現在はそうではなくなって、総合開発計画が順次電源開発計画性格を変えていかざるを得なくなって参った。と同時に、町村合併後においては新町村建設計画なるものが生まれて参る、これはやはり国が直接いろいろな方向の指導性を与える。そこへ所得倍増計画がまた出て参る。財政投資・金融計画、あるいはまた行政投資に対しましても、十年間の大体の見通しを立てた年次割り振り、しかも使用区分が明らかにされて参ってきておる。こういうことになって参りますと、地方の自治体の本来の行政内容を充実する、こういう意味からくる考え方というものはほとんど薄れてしまっているだろうと思うのです。ですから私は今の御答弁を聞きながら、やはりそういう本来のことがなされなくて、今の所得倍増計画を中心とする方向地方自治体が奉仕する、あるいは地方自治体の仕事がその方面に重点的に指向されるという方向に向けられている気がして仕方がないわけです。そういう意味からもう少し私は突っ込んでお聞きしたいと思うのですが、十二時半から何か緊急代議士会だというお話でありますので、一応午後からまた質問をさせていただきたいと思います。
  22. 濱田幸雄

    濱田委員長 それでは午後二時から再開することといたしまして、これにて休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      ————◇—————    午後二時二十四分開議
  23. 濱田幸雄

    濱田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  地方自治法の一部を改正する法律案に関する質疑を継続いたします。佐野憲治君。
  24. 佐野憲治

    佐野委員 先ほど来の質疑を通じまして第九条の三を新設いたしたのも、決して地方自治体に対する干渉がましい考え方ではなくて、あくまで同窓に基づいてやるのだ。あるいはこの広域行政計画作成するための条項並びに協議会手続に対して合理化した、これも決してそうじゃないのだ、県知事並びに自治大臣の勧告というのも軽い意味における要素を持っておるのだ。こういう現実的な要請にこたえるための措置にすぎないのだという工合にお話しになっておられるわけですけれども私は、そういう意味において善意にも解釈できると思うのです。しかしながら、ここ数年間において地方自治法が次から次に改正されて参っておる。そういうのはやはり、その当時その当時における速記録をわずかながらも読ましていただいても、やはり当面の現実的な処理の必要上やるのだという意味における提案説明だったと思うのです。そういうほかに町村合併促進法なりあるいはまた財政再建整備法、こういうものが出て参っておるわけです。しかしながら実際問題として、そういう政府の説明と法、案だけを照らし合わせてはなかなか理解できないで、やはり日本の政治、経済の流れ、特に社会経済発展段階に即応して自治法改正が常に取り上げられて参っておる。そういう現実の流れを離れて、単なる事務的ないろいろな空間があるとか、あるいはまた矛盾している面がある、そういうのを解決するために出されておるのではなくて、そういう時代的な背景というものが常に大きな要素を占めておる。こういう意味からも今の条文というものを理解しなければ、なかなか皆さんの考え方というものがわからないのじゃないか、こういう工合に考えるわけです。そういう意味から先ほどもお尋ねしておったわけですが、やはり何としても昭和二十五年までは地方自治の拡充時代であり、官治政治から地方自治、こういう考え方が非常に日本の政治を大きく支配しておったと思う。ですから、地方自治の拡充のためのいろいろな法案あるいはいろいろな整備がなされて参ったと考えるわけでございます。ですから先ほども指摘いたしましたように、国土総合開発法の場合を見て参りますと、よくその性格が出ておると思うわけですが、たとえば地方の問題も、国の全体の中の一部における地方、あるいはまた地方自体の問題として開発計画を立てる、また立てなければならない、こういう地方住民要請があの法案を作って参ったと、かように考えるわけです。そういう意味において下からの地方総合開発、あるいはまた地方行政内容をいかに充実するか、そのために住民地方自治に参加する、そういう住民の創意と工夫と努力の中から計画を立てる、それを国として吸い上げていく、こういう考え方であったけれども、現実的に当時における地方行政実情というものは、財政に支配され地方財政に対するいろいろな国土保全としての災害の問題も起こってくる、終戦後から荒廃しておるところの公共施設の充実、いろいろな要求が山積しているにもかかわらず、企業の育成のためにすべてのものがさかれていった。そういった中で、地方自治に対していろいろな干渉が行なわれてくるし、抑圧手段がとられてくる。財政が逼迫しておるというようなもとにおいて、逆に自治権が、いろいろな意味で分散され、削減され、束縛されて参るということは、この自治法における改正の部分々々というものを、その年代に合わせて拾っていきますと、よく理解されるだろう、かように考えるわけであります。  そういう意味において、大臣もお見えになりましたので、率直にお伺いしておきたいと思うのですけれども、現在におけるところの国家予算が一兆九千五百二十七億七千万円ですか、人食いになるという国家予算、地方予算は、記憶術を応用するとまことに皮肉なんですが一兆九千百二十六億、これは幾重にもというごろになりますから、幾重にも中央に縛られる。中央の予算は民生の安定その他住民の生活に結びつくものは人食いになる。地方財政はそういう国の方向に向かって幾重にも縛り上げられておる。こういう表現になっておることを私も皮肉だと思うのです。そこで、現在におけるところのそういう地方財政計画の中で見て参っても、いわゆる補助金制度のもとにおいて、広い意味と狭い意味を合わせまして、やはり項目にして八百八十幾つかの種類に分かれておる。委託金その他を合わせますと、一千四百三十をこえるという膨大な網の目のごとく張られておるわけです。昭和二十五年を契機として、今まで地方自治の拡充という方向に進んで参っておりましたことが、いろいろな意味におけるところの中央の方針に地方が緊縛されていく、こういう結果として現在見られるような一千四百三十幾つに分かれる種目によって地方が緊縛されてきておる。かつまたそういう補助金制度という財政面だけではなくて、人事の面から見て参りましても、部長級以上は大体中央官庁から出向しているのは一三%ですか、課長級以上になりますと二七・四%、この統計にもいろいろな時期の違いもありますけれども、大体そういう形になっておると思うわけです。国と地方というものは共通目標のために努力していかなくちゃならないことはわかるわけですけれども、地方が従来の固有事務なりあるいは地方本来の行政内容を充実していく、いわゆる地元産業と既成産業を育成して、地方住民の生活を守り育てる、これが何としても地方自治体の根源であろう。こういう使命を果たしていこうとするときに、中央の方から今申し上げましたような形の補助金制度の名のもとにおいて、あるいはまた人事面を通じて、地方の歩みが一定の方向に向けられてしまってきておる。こういう現実に対してどのように御理解になっておりますか、お聞かせ願いたいと思う。
  25. 安井謙

    ○安井国務大臣 地方自治体に対する補助金の面、あるいは人事の面で縦横に制約が加えられている、実態じゃないかという御質問でございますが、ある面におきましては、御指摘のようなものが相当あるということは否定できなかろうと思います。大体私ども、でき得る限りそういうものは数を減しまして、だんだんと狭くしていきたいという方針で従来もやっておりますが、一つには実態的に見まして、自治体の数自身が非常に細分をされておる。一番大きい都道府県でさえ相当狭い範囲でありますために、国なら国として全体の計画を立てて、そこだけ切り離してまかせ切れないという面がかなり多いために、そういったものもあろうかと存じます。しかし、だんだんとそういうものはつづめていきまして、でき得る限り地方の自主性において、財政面においても財源においても片づき得るようにいたしたいと思っておる次第でございます。  なお人事の面につきましても、いろいろな便宜上から、多少人事の交流というような意味地方官庁と中央官庁の交流があることは必ずしも悪いことじゃなかろうと思います。ただ、それがあくまで中央からの指令通りで動くという行政の面であってはなるまいと思いまして、そういう点も十分今後気をつけていきたいと思っております。
  26. 佐野憲治

    佐野委員 私は大臣のそういうお気持もわかるのですけれども、過去における行政のあり方として、政府の方針に地方自治体が非常に忠実に従わざるを得ないし、また従ってきた。その結果として、一体どういう現実が生まれて参っておるかという点は、午前中にも質疑の中で申し上げたように、日本国連との合同調査が京阪神都市問題について行なわれた。そういう中においていろいろ御指摘になっておる通りだと思います。それからまた政府において今度いろいろな長期政策を樹立になってきておる。たとえば道路整備緊急措置法ですか、あるいはまた治山治水緊急措置法、あるいは港湾整備緊急措置法、それぞれ五年計画なり十年計画をお立てになっておるわけですけれども、私がここでお聞きいたしておきたいのは、過去において一応政府の政策に忠実な歩みを続けてきた地方自治体、しかも日本の現状から地方自治体をながめてみますと、国連の方の指摘を待つまでもなく、わが国におけるところの経済成長はすばらしい歩みを続けてきておる。だから財政投融資計画にしろ、国家予算にしろ、地方予算にしろ、大企業の育成というものとタイアップして参った。その反面に、本来の地方自治体の公共施設なり、あるいはまた住民福祉の施設なり、こういうものがほとんど荒廃してきてしまっておる。特に道路一つながめてみましても、まことに惨たんたる状態の中に放置されてしまっておるわけです。こういう点から考えて参りますと、企業を充実成長させるためにいろいろな施策をやって参ったことが、逆に今度は企業そのものの伸長の隘路となっておる原因を作っておる。それは港湾にしろ、道路にしろ、あるいは交通関係を見て参りましても、ほとんど立ちおくれてしまって、すばらしい経済成長に比較いたしまして、現にある地方における公共施設というものは荒廃状況になってきておる。これが逆に経済成長の隘路となって今出てきておる。そういう隘路を打開するために、今申し上げましたような長期計画が立てられて参ってきておるだろう、かように考えるわけです。ですから、地方自治体は政府の言う通り一生懸命やってきた結果、今度は逆に今そういう事実に直面しておるわけです。  そこで、私、お伺いいたしたのは、長期計画がそれぞれ立てられておるのも、今申し上げた諸点が強く主張されておりますけれども、そういう結果としてその長期政策を進めるにあたって、地方自治体の現在の行政水準を高めることができるであろうか、こういう点に対して大臣はどのようにお考えになりますか。高めるという御確信を持つことができますか。
  27. 安井謙

    ○安井国務大臣 今の日本経済の伸びのテンポが非常に早かったり、予定より大きい面がありましたために、それに対して公共施設が追っかけていって、おくれておるというような面も相当私はあろうと思います。あろうと思いますが、全体として見ました場合には、地方団体それ自体の財政面も行政面もやはり逐年向上しておるわけがありまして、部分的に取り上げますといろいろそういった問題もあろうかと思いますが、私は全体で行財政の面がこの数年来非常に後退しておるというふうには考えておらぬわけでございます。
  28. 佐野憲治

    佐野委員 私は後退しておるというのではなくて、前進していないということを言っておるのです。たとえば建設白書一つ見て参りましても、電源開発を中心とする、あるいは愛知用水公団、こういう方面の公共事業昭和二十八年から三十四年までは五九%伸びておる。しかしながら、道路、港湾は相当一、二年間政府は力を入れておるはずですが、そういうものを平均いたしましてもわずか三七・二%しか伸びていない。ですからエネルギー資源なり、いろいろな財政金融投資なり、政府国家予算なりを中心にして企業の育成、それに関連せる施策のために全力を傾けて、本来地方住民と直接関係の深い公共施設その他の面が非常に放任されておった。後退したとは言わないのですが、放任されておったということは、政府の既刊の建設白書の中にも出てきておるだろうと思うのです。そこで私は、今長期計画そのものをいろいろここで議論するわけではないのでありますけれども、こういう長期政策の中においてとられている点を一つ指摘しておきたいと思いますことは、たとえば公営住宅の場合におきましては、府県市町村が資料を作成して、それから主管大臣である建設大臣が計画を樹立する、こういう規定になっておる。これだけではないかと思われるわけです。その他の長期計画、河川にしろ道路にしろ港湾にしろ、すべてが主管官庁がこれを決定して地方自治体に通知をする。これだけにすぎないという状況になっておると思うのです。それが公団あるいはいろいろな公庫ですか、こういうのがどんどんこの長期政策の計画の問題と関連していろいろ生まれて参っておる。そういう公団というものは結局、地方自治体の持っておる権限、地方自治体が住民のためにいろいろと自治法においた保障されておるものが、公団という名のもとにおいてどんどん剥奪されていく。しかも長期計画に基づく法律が出て参りますけれども、この法律のもとにおいては地方自治体が何ら参与でき得ない、逆に一方的に通知をもらっておるだけだ。公営住宅の場合はある程度民主的にはなっておりますけれども、その他の場合はほとんどこういう形式をとられてきておる。こういうことになって参りますと、補助金その他の政策面から、あるいは人事面から、地方財政に対する国の方針に従うための指導、勧奨、監督がなされて参った。今度新しい構想のもとに出て参りましたのは、地方自治体の持っておる権限を長期計画の中において、国、地方を通ずる一貫的な計画であるという名のもとにおいて、そういう地方自治体固有の権限がどんどん剥奪され、縮小されてきておる。こういう傾向が出てきておることに対して、大胆としてはどういう工合に努力をなさっておられるわけですか。
  29. 安井謙

    ○安井国務大臣 国の財政が大企業中心に配分されておるというふうな点につきましては、私は全体の配分必ずしもそうじゃないと思っておりますし、また国の全体の経済力の伸張に対して部分的には先ほどお話しのような公共施設の漏れというか、おくれがあるという点は確かにあろうと思います。これはやはり民間企業の機動性と、それから国のような機構の予算の執行というような面から若干のズレができる場合もあろうと思いますので、これは今後とも十分長期計画その他を立てる際にも、あるいは年次の計画を立てる際にも気をつけてやらなければなるまいと思うわけであります。  公団によってだんだんと中央集権化されるのではないかという御意見につきましても、私どももこの公団方式というものがすべていいというふうには必ずしも考えていないのであります。でき得る限り地方の自主的な仕組みにおいて仕事もできるようにしたいというふうに常々考えておりますが、だんだんといろいろな施設を長期的に、やる、あるいは全区域にわたって総合的に計画をする、あるいはまた仕事の能率を一般的に上げる必要があるというような場合に、公団方式もまたやむを得ない場合も出てこようかと思うのであります。しかし、そういうような場合に、既往の自治体のいわゆる自治権といいますか、権利を剥奪することのないように、これを一々公団法その他を作ります際におきましても、自治省としては最大細心の注意を払ってやっておるわけでありまして、この公団方式がいいか悪いかということになりますと、なかなか利害得失相半ばするわけでありまして、ただ地方自治体だけが連合体のような形式で企業を進めていけばいいじゃないかということもありますが、それだけではやはり今日合理的にかつスピードを持ってやっていくためには、いささか不便な面もありますので、一がいに公団がいかぬと言うわけには参らないかと思います。しかし、今御指摘のような欠陥あるいは自治権を侵害するような面につきましては、十二分に今後も配慮をしたいと思っております。
  30. 佐野憲治

    佐野委員 配慮というよりも、現にあるところの道路公団にしろ、あるいは農業機械開発公団にしましても、あるいは有料道路——自動車高速公団ですか、こういうような公団、いろいろな道路計画一つをとってみましても、あるいは港湾計画一つをとってみましても、港湾の管理者は地方自治体であるにかかわらず、ほとんど単なる国が一方的に決定してそれを通知をするというだけになっていて、事前に地方自治団体として参加できるかどうか。たとえば道路計画にいたしましても、道路五カ年計画の二兆一千億円の中には、ちゃんと地方の単独事業というものも計画の中に組まれてきておる。しかもそういうことに対して一体地方自治体はどういう相談を受けておるのですか。
  31. 安井謙

    ○安井国務大臣 道路の計画というようなものにいたしましても、やはり日本全体を通したバランスをとった計画ということが必要なので、これはやはり一応中央で総括的に取りまとめるということが必要になろうと思います。しかし、道路のそれぞれの需要度等につきましては、これは自治体からも十分な意見の反映をしていると思いますので、そのために——むろん中央でまとめておるために若干かゆいところへ手の届かないというような面も中にはないとは言えないと思いますが、全体として必ずしも非常に勝手ほうだいを国だけの立場でやっておるというふうに言えなかろうと思います。
  32. 佐野憲治

    佐野委員 たとえば農業基本法の場合と見て参りましても、ああいう形でこららとの連合審査はついに開かれなかったわけですけれども、しかしながら農業基本法でも、第三条には地方自治体は国の基本目標に対して協力しなくてはならぬ、あるいは二十三条において協力して参らなくてはならぬというような規定がどんどん入ってくるわけですが、基本計画がどうなるか、ちっともわからぬうちに、法律においては地方自治団体もこれに協力してくれ、一体どんな目標なのか、何に協力していけばいいのかわからないのに、法律上は地方自治団体もこれに協力しなければならないという義務規定を入れて参る。しかも片方には公団その他を設けてくる。長期政策がどんどん出てくる。この長期政策には、地方には関連がありますけれども地方は参画することができ得ない。ただ審議会の学識経験者の中に地方代表というものを少し入れておいて、その意見を聞いたではないかという形で、しかもこの審議会なんていうものは要するに大臣の諮問機関にしかすぎない。そういう自治体の主張というものがいれられていないわけです。そういうことになって、しかも中央から地方にばらばらの形でいろいろ施策がやってくる。各省におけるところの連絡、連結、それを受ける地方自治体は一つであっても、各省からばらばらのものがそういう形になって出て参って、しかも自治体のそれに対する発言権、そういうものが封鎖せられて、みずから持っておる権限が法律によって奪い取られてしまっている。こういう形になってきているのが最近の特徴ではなかろうか、かように考えておるわけであります。  同時に、そこで全般におけるところの経済成長という形における企業自身に対する育成、こういう措置に重点を置いてきた。今日における経済情勢は、指摘されるまでもなく、そういう成長を伸ばしていくために逆に隘路となっておるところの公共施設を拡充しなくちゃならない、あるいは工事用地を確保しなくらやならない、公有水面埋め立てをしなければならない、あるいは過剰になっている都市を整備していかなければならない、工場地帯が設けられることによる学校あるいは水道、下水道、塵芥処理、こういうことをやっていかなければ、もはや生産の隘路になってしまう。いわゆる産業基盤の拡充というのが、今日の長期計画そのものを貫いておる一つのなにではないか。そこでこういう所得倍増計画なるものは大臣にも非常に参考になると思うのです。ですからやはり読んでいただきたいし、そういう計画の中におけるところの、たとえば行政投資を一つ見て参っても、十六兆一千三百億円と大体試算されておりますが、この内容を見て参りますと、大臣はそう後退していないのだと言われますけれども、やはり政府自身がこれほど立ちおくれておる。諸外国と比較しても、道路は一体どうか、港湾はどうだ、現在におけるところの生産力についていけない現状になってしまっておるじゃないか。ですから、これを解決するのだ、このために行政投資は十六兆円向けるので、その大体の区分も明らかに示されてきておると思うのです。  そういたしますと、ここで、特徴的に理解できるのは、今まで経済成長をやっておったのが、今度は逆に経済基盤の拡充というために、国の政策が大きく転換していく。しかしながら、これは経済成長の年次計画と一緒に地方行政の水準を引き上げるという形をもって出されておるのじゃなくて、経済基盤を拡充するために政府は重大な決意を持って、ある程度の地方自治権を侵害してでも、民主主義の基盤である地方自治をある程度まで阻害をしてでも、能率と緊急性のためにやっていかなければならぬという意思が、あらゆる法案の中に含まれておるだろうと思うのです。特に四大工業地帯、それに付随する太平洋ベルト地帯における工業用水の不足なんというものは、これは政府があらゆる場合に大きく危険信号を掲げておると同時に、工業用水をいかに確保するか、これを確保しなかったら実際経済成長もできないじゃないかという緊急性が生まれて参る。あるいはまた大阪、千葉、東京を見ても、いわゆる公有水面埋め立てなければ工業用地を確保できないのではないか、こういう緊急性が出て参っておる。それに国の政策は大体従っていく、そこに重点的な予算の配分をやっていこう、こういう計画がすでに明らかになってきてしまっておるわけです。  そういたしますと、地方自治体にとりまして、町村合併はしたけれどもちっとも行政内容の充実には役立っていない。地元産業そのものを現在の状況の中から振興していくために、第一次廃業をどうもり立てていくか、あるいは地元の第二次産業をどう育成していくか、こういうことに対してもはやこの所得倍増計画なり、十年間の国の歩みというものは、地方自治体とはほとんど縁の薄い存在となってきてしまっている。逆に今申しましたところの産業基盤を拡充するための工業用水をどうするか、あるいはまた過剰投資を他の方に分散させる、その地方におけるところの工業地帯の産業立地条件をどのように整備していくか、ここへ重点的なものが向けられるということになってきておるのじゃないか、かように考えるわけであります。そういう意味において、今、国会に出されておるところの水資源開発公団ですか、この場合を一つとってみましても、一体大臣はどのように考えておられるかという点をお聞きしたいと思うのです。午前中において、どうも自治省事業庁構想というものを持っておった。しかしながら事業庁構想になって参りますと、現在の各官庁のセクショナリズムなりあるいはまたいろいろな関係において抵抗を受ける、反発を受ける、あるいはいろいろな意味における誤解も持たれるということの中から、これをすべていわゆる広域行政に対する計画作成と共同処理ということと、もう一つ、今九条の三を新設して公有水面における埋立地をめぐる紛糾、争論を解決するということにとどめるということで、便宜的にこの自治法改正をやっておられるのではないか。実際のねらいは、やはり国のそういう経済基盤の拡充という形にいかに協力していくかというような考え方のもとに立っておられるのではないか。そういうもとに現在の法案改正を出されて参って、この改正そのものは事務的な問題だと言われますけれども、背景として、やはりそういうものがあるのではないかという感じを持つのですが、この点に対しては大臣からお答え願いたい。
  33. 安井謙

    ○安井国務大臣 一つは非常に基本的な問題があろうと思うのでありまして、自治体というものを中心にすべての施設、行政考えていくべしという観点に立ちますならば、これは今あります三千五百の団体、あるいは四十六府県を別に総合的にそれぞれ政府が所管していくというような考え方に極端な場合にはなり得ると思う。そうでなければ言葉のような意味の理想的なものにはいくまいと思います。しかし、これは狭い国土の中で、しかも相当広地域にわたるいろいろな道路の計画にしましても、水の計画にしましても、総合的にやって、初めてその地域、その地域でものが生きていくというような、ものの能率、効率を上げますためには、やはり中央でまとめた総合的な計画の推進力ということはどうしても必要な面があろうと思います。そこで農業問題については農林省が主管して全国的に考えるし、あるいは水の問題についてはまたそれぞれ必要なまとまりを政府がつけるというようなことに相なろうかと思うのであります。  そこで、実は農業基本法の問題でも、この委員会じゃなかったのですが、ある委員会では、やはり農業基本法のような精神をもっと徹底させるならば、今のような自治体のあり方じゃだめだ、むしろ農林省から県へ機関を移して、直轄的に総合的な中央の指導をもっと強化しなければだめじゃないかというような御意見も一面から、これは社会党の先生でございましたが、出るというようなこともあったわけです。といいますの、仕事の全体的な効率だけからいいますと、そういう問題も私は一応考えられる面があると思うのです。しかし、そういうことまでいきますと、自治権の非常な侵害にもなります。農業基本法で協力はしなければならないが、同時に中央と地方仕事の区分をはっきり明確にしてやる。むろん、この日本の農業全体をよくしてやろうというのが国の方針でありますから、これに自治体も協力するということはあたりまえなことなんであります。しかし、その中には、国のやるべきことと地方のやるべき仕事の区分は明確にして、お互いに侵すというようなことのないようにするという配慮は、少なくともあの法案の中には自治省は主張し、それも取り入れられてあると思うのであります。  水の問題等にたいしましても同様でございまして、自治体が事業庁あるいは一部事業組合のような形のもので仕事をやっていく考え方も確かにありますし、今でもなくなっておるわけではないのであります。今後もそれの方が有効で可能な部面について極力推し進めていこう。しかし、全体的な、総合的な水の利用計画、水資源の配分計画を立ててそれを実施する場合には、やはり公団方式をとるということもどうもやむを得ない。しかし、そういう場合でも地方の県の知事の持っておる水利権を侵すことのないように、あるいはその施設のために技術的にやむを得ない部分は公団が占有し、あるいは工事もやるにいたしましても、それについては十分に事前に知事と協議もするし、あるいは総合計画を立てる場合に、知事の意見も十分に聞いてやっていくというふうに仕組んであるつもりでありまして、すべてが事業庁あるいは一部事業組合の方式で全体的な、総合的な各府県にわたるような問題まで全部やるには、地方団体がやるとしますれば、一々議会の手続あるいは官庁の支出というような面から、あるいは地域的に制約があるというようなことから、能率が非常に上がりにくい面もあろうと思います。そういう面については公団方式もやむを得ない。でありますから、この狭い国土を分けてそれぞれ自治体にしておるので、できる限り自治体の権限は伸ばさなければなりませんが、しかしその伸ばすというやり方は、やはりかね合いの問題があって、中央で相当総合的にこれを検討していくということも必要じゃないかというふうに考えております。
  34. 二宮武夫

    ○二宮委員 関連をしてお尋ねをいたしますが、今度の自治法改正五つのポイントがあるように思います。佐野委員から御質問があり御答弁がありました問題につきましては一応省略をいたしたいと思いますが、具体的な問題としてお尋ねをいたします前に、午前中の佐野委員の御質問の中で、渡海政務次官から明確な御答弁があったわけなんですが、提案の中の第三番目の問題でございます。広域にわたる総合的な計画作成するために、地方公共団体協議会を作る。これに対して自治省が勧告をすることができる、あるいは知事が市町村に対して勧告をすることができる。こういう法文ですが、ここで心配されますことは、こういう既成の事実を作って、いわゆる地方制度調査会等の答申とは関連があるかどうかわかりませんが、いわゆる道州制といいますか、広域行政地域を作ろうとする一つの布石になるのではないか、こういう心配があってお尋ねしましたところが、政務次官からは、これは全く地方住民の公共性の上に立って福利のためにやることであってそういうことはないのだ。こういう明快な御答弁があったわけですが、その点を大臣からもう一ぺんはっきりお答えを願っておきたいと思うのです。
  35. 安井謙

    ○安井国務大臣 これは今おっしゃる通りでございまして、決して道州制に持っていく前提にするとかなんとかいう意味ではないのでありまして、自治体相互間で共同して仕事をやります際に、でき得る限り便利に能率の上がるように協議機関を設けるなり何なりで進めることを明確にしたわけであります。ただ道州制自体の問題がいいか悪いかという問題になれば、これはまた別個の問題であります。これにもまたいろいろ御議論もあるかと思いますが、今ここへ出しております法案そのものには、そういう趣旨のものは盛っておりません。
  36. 二宮武夫

    ○二宮委員 具体的な問題ですから行政局長にお尋ねいたしますが、地方議会の議員がその所属する地方団体と請負契約をやるという問題については、従来判定機関として不明確であったので、今回は地方議会の三分の二の議決を経てそれを判定するのだ、こういう法の修正のようでありますが、この法の修正自体も実はまことにとらえどころがないのではないかというふうに、私は実際問題として実は心配をするのです。非常に具体的にこれを当てはめていく場合に、地方議会の議員の人が同じ同僚の議員の中に、どのような姿で請負をやっておるのかという実態を犯握して、そうしてその議会が三分の二の議決をもって、お前やっているのだからやめろ、欠格事項としてそれを指摘していく。こういうことになりますと、この法律改正というのは実はあまり付を折って効果の上がらぬ法律ではないかと、私は適用の場合の具体的な問題として考えるのです。もちろん知事が副知事に対して解職するとか、あるいは市町村長が助役に対してこれを犯した場合に解職するとか、こういう問題はある程度なんですが、これは前にもお尋ねいたしましたしたけれども、今まで自治省の見解として、私は立法の精神というものはもう少し明確  にしておかなければならぬと思うのです。というのは、自治省の答弁として、地方体の自治体から尋ねますと、同一人が同一年度において請負の金額のうちの大体五〇%をこえない程度の請負であれば、この法には抵触しないのだ、こういう法解釈を地方に流しておる実例があると思うのです。そういう考え方をもってすれば、これは全くのざる法であって、立法の精神は、不明朗な、地位を利用して地方の自治体から請負をやったりして利益をむさぼるということをやってはならない、こういう精神だと思うのですけれども、こういうものについていろいろ実例があるので問い合わせますと、自治省の方では、大体五〇%、事業実績の五割程度をこさなければ、この法についてもし訴訟に持ち込まれても大体いいのだ、こういうような解釈を法解釈として私は出しておるのではないかと思うのです、そういうようなことをやつて、そうしてしかもこれに準ずべき者というものの実態は実は把握しにくいのです。明確に無限責任社員であるとか、いろいろなここに示されているような立場をとってやる人はなくて、実際は、その印鑑だけは自分が握っておる。お金の出納は全部自分が持っておるけれども、表面には隠れみの着せて出しておるという行き方をやって、この法の立法の精神を踏みにじっておるというのが私は地方の実態じゃないかと思う。そこで今度の法の改正で、これは行政指導の面では非常にむずかしいと思いますが、このような改正ではして九十三条の二というものは事実効力を上げ得るとあなたはお考えになりますかどうか。
  37. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 御指摘になりましたような御疑問の点は、これはごもっともな点も多いと思います。事実現在の議員について申しますれば九十二条の二にその規定があるわけでございますが、この規定のやり方、解釈の仕方等につきまして、不明確と言えば不明確な表現があるためにいろいろ問題を生じておる点は確かにあるのであります。ただ、これらの点につきましては長い間の沿革を持ってやって参っておりまするし、その間だんだん判例あるいは行政実例というものの積み重ねでもって内容が具体的に明らかになりつつあるのでありまして、個々具体の問題になりますると、なお問題は絶無ではございませんけれども、その点だんだん内容が積み重ねによって明らかになってきておるのではないかと思います。ただ現在のこの規定に抵触をするということがありました場合に、当然法律規定によりますると、その職を失うということになっておるわけでありますが、それの認定機関がございませんために非常に問題になる場合が間々出てくるわけであります。たとえばある県の県会議員さんが、この規定の適用を受けることの事実が生じたといったような場合に、これを実現をいたしまするためにはどうなるかといいますると、これは本人が私は該当するに至ったからといって自発的にやめる、議会にも出てこない、そういうようなことが一つであります。これはほとんど期待ができないということは言い得ると思います。その次にはどういうことがあるかと申しますると、議長か自分の職権で、某議員は兼職禁止条項に該当したということで当然これは失職したのだから議員に欠員が生じたということで、選挙管理委員会に対してその旨の通知をする、そういう場合があり得ます。それからもう一つの場合は、知事なり市町村長が、当該議員が失職をしたからとして当然議員の身分を失ったのだから、それに対して報酬を支給する根拠がなくなったということで、報酬の支給というものを停止してしまう。そういうようなことが現実に行なわれることによって初めてこの規定の実効が期せられるというような工合になっておるのであります。しかし、この点はなかなかむずかしいことでございまするし、議員の身分等につきまして、長の方でもって実質上認定に当たるような事柄をやってしまうということもいかがであろうかということが一つあるわけであります。そのために、最近の事例もあったわけでありまするが、たとえば当該地方議会の議場におきまして、議会におきまして、失職しておるかどうかということの議決を求めまして、それが僅少の差、すなわち一票の差でもって失職をするのだというような議決をやった。これは現在の法的の構成では何ら法的効果は生じないと申しますものの、本人が全然事実なしと言い張っておりましたために、いろいろな政治上の紛争の結果も随伴したと思いますけれども、その結果、議会でもってそういう決定をやったというようなことがございます。そこでやはり問題としては認定権者というものをはっきりさせて、それが乱用に陥っては困りますから、三分の二の多数議決ということにいたしまして参ることが、現在の状況よりもやはり一歩前進になるのじゃないか。御指摘のように根本的に非常に割り切った解決になるとは私も思っておりませんけれども、やはり一歩前進した解決になるのじゃないか。特に議員の場合は、やはり被選挙権の認定いかんも議会自身がいたしますので、その認定機関であります議会にこれをおまかせをするということが、少なくとも現状よりも一歩前進の措置に相なるのではないかということを期待いたしておるのであります。
  38. 二宮武夫

    ○二宮委員 立法した立場から一歩前進を御期待をなさるということはわかるのですけれども、必ずしも実際の問題としては一歩前進したかどうかということは、これは一年間か二年間実例を見なければわからぬと思いますが、むずかしい問題です。しかもこれは行政指導をうまくやらないと、ほとんど土建業者が地方議会の議員に出たがって、しかも所属する委員会は土本委員会に所属したがる。その地位を利用して予算その他を裏から見て、そして仕事を受け持っていく。そういうところに政治の姿勢を正さなければならぬ問題が非常にたくさん、地方では住民からひんしゅくを買うような問題があるわけなんです。従って、これが一歩前進して議会の三分の二の議決で認定をするということにしてやることは、法の体制としては一歩前進かもしれませんが、実効を上げるという問題では、私はあまり期待が持てないのじゃないかというふうに思うのですよ。従って、この点については今後の行政指導でよろしくお願いを申し上げたいと思います。  それからもう一点は、改正点第五で別表を改正するという問題ですが、これはそれぞれ三十三年に別表を改正して、その後法改正があったものを一括してこの際改正をしようという提案の趣旨のようでありますが、従ってこれらに費用の要するものについては、それぞれ精神御生法に基づいての強制収容措置に対する費用を出すというような法的裏づけのある問題であろうと思うのです。ただ私、実際にこの別表に修正を加える点で心配になります問題は、この法律案の二十七ページですが、国民年金法に基づくところの都道府県がやらなければならない仕事として修正を加えているという点、これに対する被保険者または受給権者に関する調査をする事務を行なうという、項目が一つ修正として出てきておるのです。それから別表第四の市のやるべき事務の中にもそういう同じ関連に基づいての改正があるわけですが、この問題について厚生省とあなたの方で十分事務打ち合わせをして——所管の内容は厚生省だろうと思うのです。しかしあなた方がこのように別表を変える以上、内容については十分熟知しておらなければならぬだろうと思うのですが、国民年金の実際の運営をやって参ります、調査並びに事務を進めて参りますところの費用については、これは私は一部の例でありますけれども、調べて持っておりますが、これは行政局長の方で一人当たりの事務単価というものはわかりますか。厚生省でなければわかりませんか。
  39. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 私、正確には覚えておりませんが、たしか昨年は五十円でありましたものが、本年度は九十円ということに相なっておると思います。それから今のことに関連して申し上げますが、別表の改正はここで新しく事柄をつけ加えたりなんかする趣旨では全然ございません。法律並びに現行の政令、その規定を一日瞭然たらしめる意味もありましてここに列挙しておるという趣旨であります。
  40. 二宮武夫

    ○二宮委員 その趣旨はよくわかっているのです。しかし、こういうようなものを別表として修正を加えて、その自治体にこれを通達する以上、やはり自治省行政指導の面で内容についても知っておかなければならぬ問題だと思うのですが、国民年金の事務については今九十円と申されましたが、私の調査では一人当たり七十七円八十九銭になっておる。それに加入人員をかけまして、それに対する七割程度のものを事務費として支給をする。ところが実際問題はこれに要する費用が非常にたくさん要るわけなんですね。と同時に、加入者が少ないために宣伝をやり、啓蒙をやり、いろいろなものでPRをやっておるところの費用は国その他でもってたくさん支出をしなければならぬ。これは百パーセント入ってきた段階においてはよくなるのだと思うのですが、これは自治体においては前もって、このような交付金のある以前に市町村でもって立てかえて、これの調査事務を進めておるわけですね。極端なところは全く問題にならない交付金、半分にもならないような交付金をもらって、実際の事務は一生懸命やらせておる。こういうような問題はずいぶんたくさんあるわけなんでして、こういうことで、実際の内容については厚生省に注意すべき問題だと思うのですけれども、こういう表改正別の際に、法律がこうなったんだからこれで済むということでなくて、うのみにするのでなくて、これで地方自治体が財政的にどのように圧迫を受けるかというような問題についてもやはり十分検討しておく必要があると思うのです。その例として国民年金を出したのですが、これは消防法の問題でも同様の問題があるわけです。地方自治体としては、法改正に基づいて非常に問題があるわけですが、いろいろお聞きしたい問題がございますけれども、関連でございますので私の質問はこの程度にいたします。
  41. 佐野憲治

    佐野委員 大臣の顔を見ましたものだから、ついいろいろな問題に飛び火いたしまして、大庭にゆっくりいろいろな気持をお聞きしなければなかなか理解しにくい点が多くあるわけです。この前の委員会では、銃砲刀剣所持の場合におきましては、どうも目的は暴力追放、いろいろよくわかるのだけれども、法律規定が実にあいまいだということであったんだけれども、今度の場合は、目的というものは案外省略されて、事務的な処理だ処理だと言われますけれども、何が目的か国民にもう少しわかるように、実はこういう現実があるからこういう改正もやりたいんだという工合に説明していただく方が、一番大切じゃないか。こういうことも考えられましたので、一体こういう改正をしようとする背景には何があるのだろうかという点を、幸い大臣の顔を見たものですから、ゆっくりお聞きしたい、こういうので今まで質疑をやって参ったのです。  大体今までのお話を通じましていろいろ皆さんの善意ある気持も理解できるわけですけれども、しかし私は、一番おそろしいと申しますか、心配になってくる点は、先ほど二宮委員指摘しておりましたように、これがやはり道州制への一つの過程として考えられるのじゃないか。というのは、さっき言うような客観情勢の変化の中で歩いてきておる地方自治の歩みを見て参りますと、やはりそういう心配が常に一隅から起こってくるわけです。と同時に、もう一つ心配な点は、こういう現在における地方自治そのものの歩みの中に、地方自治の権限がだんだん縮小されてくる、国の政策が強く出て参る。しかもそれが、国の政策に一応協力していかなければならないのはわかりますけれども、しかしながら、現在一番問題となってきているのは、用地をいかにして確保するか、公有水面をとにかく埋め立てなくてはならぬ、工業用水を確保しなくてはならない。新しくできてきた、既成の工事地帯に対してやはり施設を充実していかなくちゃならぬ、こういうせっぱ詰まった中に立たされておる日本の今の経済、ここにだけ日本のわれわれの地方自治体が動員されていく危険性があるんじゃないか。本来の地方行政水準なり行政内容なりというものが打ちどめを食って、当面するそういう方面に、国の施策もそうなりますし、地方におけるところの方向もそういう方向を持っていくんじゃないか。そういうためにやはりある程度の強い自治権に対する干渉もしなくちゃならないというのが、工業用地を確保するために今までのような申請でなくて同意という形をもって強い意思表示を一つやっておる。あるいは協議会方式にいたしましても、やはり勧告することができると、私は善良な意味におけるところの共同事務の処理方式というものを否定するものでもなし、今日の社会においてこれは当然だろうと思う。しかしながら、今提案されておるところのせっぱ詰まったところの理由というものは、工業用水を確保して関連工業施設をやっていきたい、そのためにいろいろ地方自治権がじゃまになる。だからそこに勧告という言葉が出てくるんじゃないかという点をおそれるのと、それと関連して自治省がよく新聞に事業庁構想だとかあるいは基幹都市建設だとかいう言葉が出て参りますけれども、これもやはりそういう中にあって、処分における隘路となっているものを打開するために相当強に強権力を加えていく、こうしなければ工業用水権あるいは県知事が持っている水利権というものは押え得ないというような考え方になってくるでしょうし、あるいは国の施策そのものを国が一方的にやっている、だけでは地方自治はますます空洞化され、名目化されるから、地方自治団体もこれに参加していくという形をとって、結局、国の方向自治省地方、自治団体を監督するという危険性も事業庁構想に多分に持っておると思うのです。善良な意味におけるところの地方のいろいろな施策を国と一緒にやっていくというのじゃなくて、国の施策を下請しなくちゃならないという事業庁構想にも転化していく危険性があるんじゃないか。こういうことを考えて参りますときに、率直に申し上げて、町村合併のときにも論争されたわけですけれども、地方議員の定数が非常に多い、こういう定数を縮小しなければならぬということが、しばしば自治省あたり、あるいは地方制度調査会あたりでも取り上げられておった。しかし、これをまともに真正面に出てくると、地方議会の反対を食らう。ですから、結局町村合併をやることによって、実際に本来のねらいであった地方議員を縮小することが可能になってきた。同じような形で、今の第九条の三を新設する、あるいはこの協議会形式に対して大臣の勧告権をも与えていくというのは、もっと他に一つねらいがあって、それをまともに出しては非常に抵抗が強い、だからこういう形でやっていくのだということを心配したわけですけれども、いろいろな質疑を通じてある程度まで理解できた点もありますし、大臣においても、今日道州制というものは考えていないし、そういうことは地方自治の健全な発展というために対しましても慎重に考慮しなくちゃならない点も含んでおるということをお聞きいたしましたので、これ以上私は触れることを避けますけれども、ただここでやはり私は最後に思い起こしますことは、ギリシャ神話の中に、危険な贈りものという言葉があるものですが、非常に親切な贈りものだと思われますけれどもしかしながら、これが逆に地方自治体を束縛する道具と化していく危険性もやはりあるので、このギリシャの神話をも常に想起されて、今日において自治体の陥っている現状、こういう現状を一体どう打開していくかという——住民の福祉あるいは地元産業、地元のこういう経済というものは一体どのような状態に今追い込まれておるか、国の経済成長率のはなばなしい中に、じみな町村は一体どういう形になってきておるか。こういうためにもやはり今後十分努力していただきたい。かように希望を申し上げて一応私の質問を終わりたいと思います。
  42. 濱田幸雄

    濱田委員長 本案に関する質疑はこれにて終局いたします。  次回は来たる六日開会することとして、これにて散会いたします。    午後三時二十五分散会