○川村(継)
委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、本法案に反対の意見を申し述べたいと思います。
これまで長時間審議を続けて参りましたが、まだまだ逐条にわたって実は当局の見解を聞きたいことがたくさんございます。それらを割愛してこの採決に持ち込まれているわけでございますが、今日までの審議過程で、われわれがなぜこの法案に反対の意見を持っておるかということは、わが党の各
委員のそれぞれの
質問を通じて明らかになっているわけでございますので、ここであらためて詳しく反対の意見を申し上げる必要はないと思いますけれ
ども、要約いたしまして、二、三点にわたって反対の理由を申し述べてみたいと思います。
その第一は、この法案が提出されました
考え方について、どうしてもわれわれは納得いかないものがございます。すなわち、浅沼
事件あるいは嶋中
事件と、まことに残念な
事態が次から次へと起こって参りましたが、これらの
暴力犯罪に対して、
政府は、さきに
暴力犯罪に対する防止
対策要綱をきめております。ところが、この
対策要綱を一読して参りますと、一体何が実施に移されておるかと申すと、これといって
指摘できるものはないのじゃないか、こう言わざるを得ません。ただ。言うなれば、法制上の
措置として、この刃物の取り扱いに対する
取り締まり法律の一部を
改正するという
措置が出されたにすぎないのじゃないか、このように
指摘できると思います。特にこの
暴力犯罪の
取り締まり、特に
青少年の
暴力犯罪の増加に顧みるときには、
青少年対策、特に非行少年をいかにして補導するかということが私は
政府の施策の
中心でなければならない。こう
考えて参りますと、
政府がなすべき
措置は緊急なものが山ほどある。それらについて強力なる
行政上の
措置を講ずることが最も緊要であって、これまでの質疑に明らかになっておりますように、この刃物の取り扱いについての
改正を意図しただけでは十分なことは行なえない。こう
指摘せざるを得ないのでございまして、われわれが最も強く今日まで念願しております
青少年補導
対策、こういうものが全く熱意を欠いておる。その言いわけと申しては過ぎるかと思いますが、そういう形でこれが提出されてきたということについて納得いかないものがあるということが、反対の意見を表明しなければならない第一の理由であります。
第二の理由といたしましては、いわゆる
改正の内容に見られます二十四条の二の点であります。これは昨日の参考人の意見に徴しましても、実は意見が二つに分かれておる。われわれが最も注意をしなければならないと思いますのは、
基本的人権というものと、公共の福祉というものとが、どういうふうに
考えられるかという点であろうかと思うのであります。ややともすると、公共の福祉ということに名をかりて基本的な
人権が侵されていくという
傾向一がなきにしもあらずであります。何といっても
憲法で保障する
基本的人権を最も重要に
考えるということが民主政商の
根本でありますから、これを忘れてはならないと私たちは強く
考えております。そういう
意味から
考えて参りますと、二十四条の二の挿入のごときは、その行使を
一つ誤れば、
人権を侵すことの非常に大きなものを含んでおる。そういう点で私たちとしては、どうしてもこのまま賛成するわけにいかない、こういう見解に立っておるわけであります。もちろんこの条文そのものがすぐ
憲法違反であるとは申し上げられないかもしれませんけれ
ども、これまでもだんだん
指摘して参りましたように、また
政府も申し述べておりますように、この「第一項並びに第二項の規定による
警察官の調査及び一時保管は、相手方の行なう提示、開示又は提出の
行為を前提とするものでありまして、
警察官が捜索したり、差し押えたりする
権限を認めたものではありません。」こう言っておりますが、その通りだと思います。しかし、この通りだといたしますならば、これまただんだん
指摘して参りましたように、あるいは精神的、心理的に効果はありましても、また小者と申しましょうか、割合にわか作りのような、少年の乱暴な者の持っておる刃物のようなものを押えることはできても、ほんとうにおそるべき
犯罪を犯そうとしておる者、その者の持っておるところのこういう刃物というものは、これはなかなか取り上げたりあるいはそれを提示させたりいたしまして危害を防止することには役立たないじゃないか、こういうことになるわけであります。そこでそれをやろうとすると、これはある点
強制でどうしてもやらざるを得ない。
長官のこれまでの
答弁を聞いて参りましても、洋服の上からポケットを押えるくらいは差しつかえないだろうという御意見でございますけれ
ども、これはそういうことでは済まないのでありまして、ほんとうにおそるべき
犯罪の危害を防止しようとするならば、これはどうしても
警察署あるいは派出所に連行をしていくとか、そのほかいろいろな
強制的な手段によってその行使をやらなければ
目的を達しないということになって参りますと、そういうような解釈が成り立つといたしますと、うっかりすると、いわゆる善良な者に対してまでもこれが乱用される危険なしとしない、こういうような危惧を禁じ得ないわけであります。そういう
意味合いにおきまして、私たちはどうしてもそのような見解からこのまま賛成できないという
考え方に立っているわけであります。法が一応制定されまして、運用の
段階になりますと、これは
大臣及び
長官それぞれこういうことを起こさないようないろいろな御意見もあったようでありますけれ
ども、法が一応動いて参ると、あるいは予想外の
事態が起こるかもしれませんが、
一つ十分その
警察官の教養あるいは訓練等には御配慮いただくことはもちろんでありますけれ
ども、でき得べくんばこういうような形でなくて、おそるべき
暴力犯行、そういうものを取り締まる
考え方で
一つ善処してもらいたいものだと
考えておるわけでございます。
そういういろいろの基本的な
考え方からいたしまして、私たちはこの法案に賛成しかねる。それだけの意見を申し上げて、反対の理由といたしたいと思います。(拍手)