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1961-05-25 第38回国会 衆議院 地方行政委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月二十五日(木曜日)    午前十一時二十九分開議  出席委員   委員長 濱田 幸雄君    理事 田中 榮一君 理事 丹羽喬四郎君    理事 吉田 重延君 理事 太田 一夫君    理事 川村 継義君 理事 阪上安太郎君       伊藤  幟君    宇野 宗佑君       小澤 太郎君    大沢 雄一君       大竹 作摩君    亀岡 高夫君       仮谷 忠男君    久保田円次君       田川 誠一君    永田 亮一君       前田 義雄君    二宮 武夫君       野口 忠夫君    松井  誠君       山口 鶴男君    門司  亮君  出席国務大臣         国務大臣    安井  謙君  出席政府委員         警察庁長官   柏村 信雄君         警視監         (警察庁保安局         長)      木村 行藏君         警視監         (警察庁警備局         長)      三輪 良雄君  委員外出席者         検事         (刑事局刑事課         長)      河井信太郎君         専門員     円地与四松君     ————————————— 五月二十四日  鹿児島県宮之城町旧佐志村の消防施設整備費国  庫補助に関する請願池田清志紹介)(第四  〇三三号)  大口市上水道事業費起債に関する請願池田清  志君紹介)(第四〇五一号)  道路交通法の一部改正に関する請願濱田正信君  紹介)(第四〇七〇号)  同外一件(藤本捨助君紹介)(第四二四六号)  農業関係固定資産税の引下げに関する請願外三  件(堂森芳夫紹介)(第四一五八号)  長野県軽井沢町に国際親善交歓センター設置の  起債に関する請願松平忠久紹介)(第四二  三八号)  新市町村建設促進法の一部を改正する法律案に  関する請願池田清志紹介)(第四二四五  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一七六号)      ————◇—————
  2. 濱田幸雄

    濱田委員長 これより会議を開きます。  銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を継続いたします。松井誠君。
  3. 松井誠

    松井(誠)委員 法務省の方にお尋ねをいたしたいのでありますけれども、昨年の六月十五日の警察官のいろいろな職権乱用につきまして、被害者からの告訴なりあるいは第三者からの告発なりいろいろあったと思いますけれども、その状況をまずお知らせをいただきたいと思います。
  4. 河井信太郎

    河井説明員 昨年六月十五日発生いたしましたいわゆる安保反対デモ行進参加者に対する特別公務員暴行陵虐事件等告訴告発事件の件数は合計二百三十五件でございまして、その告訴告発をいたしました人は合計五百十九名でございます。この告訴告発事件における被害者の総数は合計七十名でございまして、その内訳は、告訴人が三十五人、告訴人以外の重傷者が三十五人でございます。告発あるいは告訴されました警察官合計は約四千百五十名でございます。  現在までの取り調べ状況を申し上げますと、被害者合計七十名のうち、取り調べを終わりました者が六十四人、その内訳告訴人三十五名、その他二十九人、残りの六名は不出頭のため取り調べがまだ済んでおりません。、取り調べ済み人員合計約四千二百六十六名で、その中には被疑者目撃者その他の参考人を含んでおります。また告発人合計三百六十一人につきましては、さきにアンケートを発しまして、当日国会に行ったかどうか、国会に行ったとき事件を目撃したかどうか、というふうなことを問いただしたのでございます。この捜査項目について照会いたしました結果、現在までに回答のありましたものが三百六十一人の中で百四十四人でございまして、そのほかは回答がございませんので、告発をされておる方すら返事がない状況であるため、捜査に難渋いたしておる状況でございます。捜査当局といたしましては、全力をあげて事案真相究明努力いたしておるのでございますが、何分にも被疑者関係者多数のため、捜査終了の時期は現在のところ未定で、ちょっと見当がつかない状況で、ございます。今日までに捜査に従事いたしました者は、検察官延べ約六百五十九名、捜査事務官延べ約八百三十九人という状況になっております。
  5. 松井誠

    松井(誠)委員 このアンケートに対してその回答を寄せないという人たちが、取り調べをされた四千百五十名の中には入っていないのですか。
  6. 河井信太郎

    河井説明員 取り調べ済み人員合計四千二百六十六名でございまして、この中でアンケートを発しましたのが三百六十一名、返事のありましたのが百四十四名ですが、この方々は入っておりません。従って取り調べ済みということになれば、四千二百六十六名に百四十四名を加えるかどうか、こういうことになると思います。
  7. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、この告発人に対する取り調べというのは、アンケートによる回答を求めるという方法だけで、直接にお呼びになって調べるという方法はとらなかったのですか。
  8. 河井信太郎

    河井説明員 もちろんその中にアンケート返事のありました方については、直接おいで願って取り調べております。アンケートを始め発しましたのは、当日国会に行って事件を目撃しておられるかどうかということをまず確かめませんと、現在の刑事訴訟法のもとにおきましては、また聞きの証拠というのは非常に制限された証拠能力しかございませんので、そういう意味アンケートを発した、こういうことでございます。
  9. 松井誠

    松井(誠)委員 この四千人余りの取り調べをされた人員の中で、被告訴人あるいは被告発人である警察官は何人くらいありますか。
  10. 河井信太郎

    河井説明員 警察官の数は約四千百五十二名でございます。
  11. 松井誠

    松井(誠)委員 告発あるいは告訴をされた警察官が四千二百六十六名と言われたと思いましたけれども、それは間違いございませんか。
  12. 河井信太郎

    河井説明員 告発された警察官合計は約四千百五十名で、ございます。
  13. 松井誠

    松井(誠)委員 この四千百五十名全員についてお取り調べになったということになりますか。
  14. 河井信太郎

    河井説明員 取り調べました警察官は四千百五十二名でございます。ですから告発された警察官よりも数は二名だけ多いことになります。その中で検事調書を作りました者が六百三十五名ございます。
  15. 松井誠

    松井(誠)委員 この捜査規模についての数字は先ほど伺いましたけれども、この程度規模事案捜査陣としては、適当な規模であるとお考えですか。
  16. 河井信太郎

    河井説明員 何分にもこの捜査を担当いたしております東京地検は、限られた人員と限られた時間で活動いたしておりますので、現在の人員でまかない得る範囲としては最大限の努力をし、人を充てているというふうに聞いております。
  17. 松井誠

    松井(誠)委員 地検では、この事件を専任で担当するという検察官は何人くらいおりますか。
  18. 河井信太郎

    河井説明員 この事件が発生いたしました当時におきましては、特捜部検事刑事部検事と合同いたしまして、今その数を正確にいたしておりませんけれども、二十名近くの検事が従事しておったと思います。その後だんだんと人員が減りまして、現在においては専従しておる検事は二人というふうに聞いております。
  19. 松井誠

    松井(誠)委員 この事件とは別に、いわゆるデモ隊に対する刑事事件捜査もあったわけでございますけれども、その捜査の陣容は、これとは全然別ですか。
  20. 河井信太郎

    河井説明員 全然別でございます。御承知のように、この事件被疑者警備係警察官であるという関係から、特別公務員暴行陵虐罪成否という問題がからんで参りますので、東京地検におきましては、特に平素さような警察官と接触のない特捜部検事及び刑事部検事をこの捜査に当たらせたのでございます。
  21. 松井誠

    松井(誠)委員 この告訴告発事件内容は、まあ非常に多岐にわたっておったと思いますけれども、大体概略を申しまして、どういうところが主たる事実であったかということ、告訴告発内容を伺いたいと思います。
  22. 河井信太郎

    河井説明員 本件告訴告発事実の概要は多岐にわたっておりますけれども、おおむね昭和三十五年六月十五日夜から翌日の午前一時ないし二時ごろにかけまして、国会議事堂正門付近から衆議院南通用門首相官邸前を経てグランド・ホテル前に至る道路上等おい行動いたしました警察官による主として教授団に対する特別公務員暴行陵虐事件告訴事件告発事件中心になっておるのでございます。
  23. 松井誠

    松井(誠)委員 教授団に対する暴行傷害中心だ。そのほかにもいろいろございましたでしょうけれども、それがおそらくは中心であったであろうと思う。そうしますと、告発人のうち二百何がしかが回答を寄せてこないというだけで、それだけの理由でこの捜査結論が出るのがおくれておるのか、あるいはそれ以外の理由でおくれておるのか、もう一年になんなんとしておりますけれども、その理由一つお聞かせ願いたい。
  24. 河井信太郎

    河井説明員 事件の処理が非常に延びておる点はどういう原因にあるかというお尋ねだと思いますが、もちろん告訴告発事件におきましては、通常の事件でございますれば、告訴告発人というのは資料をそろえて、そして捜査協力していただけるのが原則でございます。本件におきましては、どういう事情でございましょうか、三百六十一人の告発人に対しまして、おいで願って、目撃された供述なりあるいは持っておられる証拠なりについて、検事としてそれを提供願って、事案真相を究明するという方向へ進みたいと思って、まずアンケートを出しましたところ、三百六十一名のうち百四十四名の方が回答されただけで、あとの方は全く回答がない状況でございましたので、その回答された百四十四名の方につきまして取り調べを進めて、いろいろな証拠を収集して参ったのでありますが、その中で現場におそくまでおられて、教授団被害を受けられたころまでおられた方は、この回答を寄せられた百四十四名の中の二十三名にすぎないのでございます。そうしてその百四十四名中で告発事実を目撃された方はわずかに三名にすぎないということが、今日まで捜査いたしました結果判明した事実でございます。あとの方は、回答は寄せられましたけれども、いわゆる伝聞でございまして、また聞きでございます。刑事訴訟法規定によりますれば、伝聞証拠というのは刑事訴訟法三百二十条以下の規定によりまして排斥されますので、このまた聞きの証拠だけで人を起訴するというふうなことはできないのが原則でございます。そのために的確な証拠を収集するために非常に苦心をいたしておるというのが現在の状況でございます。
  25. 松井誠

    松井(誠)委員 告発人のことは別としまして、被害者である告訴人はそのようなことがなくて、やはりそういう捜査協力すると申しますか、そういう態度であったんじゃないですか。
  26. 河井信太郎

    河井説明員 その通りだと思います。
  27. 松井誠

    松井(誠)委員 伝聞証拠のことはその通りだと思いますけれども、しかし普通の場合に、被害者の証言しかないというようなことで捜査されておる事案というものも決して珍しくはないわけですね。そこへもってきまして、これの資料というのは、何もそのような形式的な告発人けが問題ではなくて、その当時発表をされたいろいろな新聞雑誌、そういうものに数多くあると思うんです。そういうものをやはり全部御検討になったんでしょうか。
  28. 河井信太郎

    河井説明員 御指摘の点につきましては、検事はあらゆる角度から新聞雑誌はもちろん、当時の放送された事情とかあるいは現場に居合わせた第一二者とかという人を、あとう限りの手を尽くして捜査するのが検事の職責でございますから、もちろんやっておるのでございます。ただ問題は、被害を受けた人が存在するという場合に、被害者が、この男が私を殴打し、その結果傷害を受けたというそのつながりがはっきりいたしますれば、率案はきわめて簡単に解決するので、ございますが、その人のつながり、犯行した人と受傷との関係つながり証拠を確定するということに非常に骨を折っておるというふうに聞いております。
  29. 松井誠

    松井(誠)委員 その加害者である警察官固有名詞がわからないということにつきましては、私はあとでまたお尋ねをいたしますけれども、大体教授団事件というのは第五機動隊中心でございますね。
  30. 河井信太郎

    河井説明員 第五機動隊も当時現場にいたというふうに聞いております。
  31. 松井誠

    松井(誠)委員 その被告訴人が大体第五機動隊であるということは、その当時の社会党不当弾圧特別委員長外の人々の答弁にも大体書いてある。第五機動隊人員が一体何人おるか知りませんけれども、大体そのように事件が特定して、従ってその加害者である機動隊人員というものもそれほど多くはない。しかも告訴人告発人以外のいろいろな書類というものが、状況証拠というものが、非常にあの当時たくさん出ておった。それでもまだこの全貌がはっきりしないというのは、少し怠慢のそしりを免れないのじゃないですか。
  32. 河井信太郎

    河井説明員 ただいまの点につきましては、告訴状によりますれば、第四機動隊あるいは第七方面隊というふうなものも現場にいたということになっております。もちろん今御指摘のように、これだけの人員がおってけがが発生しておるのだから、その点の結びつきというものはそうわからぬことはないじゃないかというお尋ねだと思いますが、確かにそこに第四、第五機動隊あるいは第七方面隊等警察官がいたことは客観的に確定できるのでございますが、問題は、その中の警察官がどのような方法で、いつ、だれを殴打してけがを与えたか、あるいは与えたことがあるかどうかという点の問題に帰するのでございます。その点は、私どもの経験からしましても、多数の人のおる場合の傷害事件というふうなものの証拠の裏づけというのは非常にむずかしいのでございまして、あらゆる証拠を収集して事案真相を究明するよう、検事としては最大の努力を払っておるという状況でございます。
  33. 松井誠

    松井(誠)委員 私さっき第五機動隊と申しましたけれども、これは間違いで、何といいますか、第五方面本部というのですか、それの配下であることには間違いないですね。
  34. 河井信太郎

    河井説明員 日本社会党不当弾圧対策特別委員会からの告発状によりますれば、警視庁第四機動隊長それから警視庁第七方面隊長、そして三十五年六月十五日午後五時以降十六日午前六時ごろまで国会議事堂南通用門付近に出動した警視庁機動隊員全員ということで、警視総監以下を告発になっておるのでございます。それに基づきまして、捜査もただいままで申し上げましたような方法で行なわれておる、こういう状況でございます。
  35. 松井誠

    松井(誠)委員 それでは、この教授団に対する職権乱用事件というのは、主としてどの機動隊かという程度まではもうおわかりでございますか。
  36. 河井信太郎

    河井説明員 もちろん、その点につきましては、時間を追いまして、どの機動隊がおり、その点の配置はどういうふうになっておったかというようなことは全貌が明らかになっております。
  37. 松井誠

    松井(誠)委員 それでは一つ区切ってお尋ねいたしますけれども、今の教授団に対する告訴事件というものについては、大体事実は判明したという段階で、ございますか、あるいは先ほど言いましたように、こういう告発人協力がない、その他のことで、まだいつ捜査が完了するか、かいもく見当がつかないという段階でございましょうか。
  38. 河井信太郎

    河井説明員 今お尋ねの後段の方でございまして、何も告発人協力が得られないということだけで事案真相が究明できないということではないのでございますが、何分にも事案そのものが非常に多衆集合した中において起った犯罪でございまして、今のところいつこの結果が得られるかということはちょっと見当がつかないという状況でございます。
  39. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると、捜査の困難はそういう告発人協力しないということではなくて、具体的な傷害者加害者との結びつきがはっきりしないという根本的な理由が一番の障害になっておる、こういうように伺ってよろしゅうございますか。
  40. 河井信太郎

    河井説明員 告発人協力が十分得られないという点と、もう一つ事案真相を確定するために、犯罪特殊性から傷を受けた人と犯行との結びつきが十分でない、この二つがおもな原因であるというふうに申し上げられると存じます。
  41. 松井誠

    松井(誠)委員 それではこのようにお問いをしたいと思うのですが、では、具体的な加害者固有名詞はわからなくても、あの当時の警察官行為の中でいわゆる通俗的な意味職権乱用という、そういう事実があったというそのこと自体は大体間違いございませんか。
  42. 河井信太郎

    河井説明員 六月十五日に衆議院南門おいて、いわゆる安保反対デモ隊が押し寄せたときに警察官のとりました行動が、特別公務員暴行陵虐になるかならないかという問題は、それはただいままで御指摘のように、第何機動隊がとった行為がそうであるかどうかという問題とは別に、個々の人のいわゆる個別的にその人のとった行動刑事責任を負うべき事実であるかどうかという問題と二つあると思うのでございます。その点につきましては、結局表裏をなしておる問題でもございまして、目下その点について捜査を進めておるというのが現状でございます。
  43. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると、お伺いいたしておりますと、全体としての不法性さえもまだ見当がつかないという、いわば捜査のまだ端緒的な段階であると言わざるを得ないと思いますけれども、これは仮定の問題ですけれども、固有名詞はどうしてもわからない、しかし客観的に不法な事実があったということは間違いないということになったときに、少なくとも責任者に対する刑事処分というようなものについてはどのようにお考えになっておりますか。
  44. 河井信太郎

    河井説明員 申し上げるまでもなく、刑事責任というのは個別的な責任主義でございまして、部下刑事責任の生ずるようなことを、氏名はわからないが何人かがやっておるから、その上司刑事責任を負うという規定日本刑法にはございませんので、行政上の責任は別といたしましても、さような場合において、上司が全くその行為について犯罪を構成するような行為がないのに刑事責任を問うということはございません。ただ、まだ捜査の着手当時と同じでちっとも進んでいないじゃないかというお尋ねの点につきましては、犯罪捜査と申しますのは、たとえば的確な証拠一つ出て参ればすぐ急転直下解決するというふうな場合も中にはございますので、入口であるか終末に近づいたかといこうとは、結局は証拠の収集の問題に帰するわけでございます。そこが非常にむずかしいのでございますが、いずれ捜査が終了いたしますれば、全貌を御報告申し上げる時期が参ると思いますので、さよう御了承願いたいと思います。
  45. 松井誠

    松井(誠)委員 私は何も部下が悪いことをやったら長官刑事責任を負うというようなことをお尋ねしておるのではない。刑法上の共犯理論から、一体この共犯理論がこの場合に適用されるという可能性があるかないか、それは全然共犯という範囲ではないのだというようなお考えになっておるのか、そういうことをお聞きしたかったわけであります。
  46. 河井信太郎

    河井説明員 もちろんいかなる場合におきましても、犯罪捜査いたしております立場から申し上げますれば、直接手を下した者、これを命令した者、あるいはこれを助けた者につきましては、共同正犯なりあるいは教唆幇助成否ということを常に頭に入れて捜査をいたしておりますので、もし御指摘のような点につきまして、共同正犯なりあるいは教唆幇助成立が認められるような証拠があります限りは、もちろんその責任を追求するということは検事の責務でありますので、当然さような点についても捜査が進められておると確信いたしております。
  47. 松井誠

    松井(誠)委員 私が捜査端緒的な段階だと言ったのは、全体としての不法があるかないかということもはっきりしない。固有名詞もはっきりしない。そしてその間に、そういう共犯理論というものが一体どうなるかということの見当もまだついていない。ところが個々の具体的な事実については、その当時出た新聞雑誌で大体の見当はついているわけです。従って、それを法律的に確定するということが私はむしろ残された唯一の仕事じゃないかと思われるくらい材料はころがっておるのであります。それなのにその肝心の点がわからないということでは、まだ捜査端緒ではないかということを申し上げたのであります。先ほどのお話では、一つの決定的な証拠が出れば急転直下解決する、確かにそういう事件もあるでございましょう。しかし、このような公衆の犯罪というものには、そのような決定的なきめ手というものが第一あり得るはずがないと思う。それはやはり一つ一つ証拠を固めていくよりないと思う。そうしますと、そのような出現を待っておるからまだ端緒だというようなことは全くの詭弁で、やはり捜査の全体についてお話を伺っておりますと、ほんとうに一体積極的に、しかも時期を早く結論を出そうという熱意があるかどうか、非常に疑問に思う。なぜ私がこういうことを申し上げるかといいますと、あの樺美智子さんの死因の発表がございましたときに、やはり告訴告発人に対するそういう人たち協力が非常に少ないということを捜査が困難な理由にして、それだけではございませんけれども、それを一つ理由にされておったように思う。今度もまたそういうことでやられるとすると、一体警察のこのような不法行為に対する救済というものは国民はどうして持てるのか。そういう不安がある。ですからほんとうにそのような、これは告訴告発があろうとなかろうとやるべき問題でありましょうけれども、これだけの大ぜいの人数の人が告訴をし、告発をしておるこのような事件に対する捜査方法としては、私はやっぱり非常になまぬるいという気がしてならない。その点についての御所見を重ねて承りたい。
  48. 河井信太郎

    河井説明員 告訴告発人等被害を受けられたような方のお立場からいえば、もとより御指摘通りの問題があるだろうと存ずるのでございます。何分にも、何らかの行為がなければ傷害という結果は発生しないことは事実でございますから、そういう点について御不満なり御指摘のような問題があることはよく存じておるのでございます。ただ捜査に従事いたしております検察官が、この段階でどの程度白なり黒なりの心証を得たか。どこらまで一体この事件犯罪として成立する確信を得たかという問題になりますと、これは捜査が終了いたしました段階で御報告申し上げる以外には方法がないのでございまして、またそれが犯罪捜査の常道でございまして、今その点を、この程度犯罪成立が認められるとか、あるいはこの程度どうも認められないとかいうことを御報告申し上げることはいたしかねる状況でございますので、その点は御了承願いたいと存ずるのでございます。
  49. 松井誠

    松井(誠)委員 今のお答えのように、まだ捜査段階だから答えられないということでありますれば、その答えの当否は別として、一応わからないではない。しかし、先ほど言われたようにあれもこれも皆目見当がつきませんということでは、どうしても私は納得できないということを申し上げたい。  そこで具体的な事実としてどうかという問題は別といたしまして、教授団に対する暴行というものがこの告発事件中心になっている。この教授団に対して一体警察官が襲いかかった、襲いかかったという言葉をためらわれるならば、警察官教授団との間にごたごたがあって、そうして教授団がいろいろな被害を受けたという、最小限度そのような事態はおわかりになっておりますか。
  50. 河井信太郎

    河井説明員 個々事案につきまして、どの教授団がどのような被害を受けたかということは、診断書なりあるいは告訴状記載の事実について一応さような事実を承知いたしておるのでございます。しかし、それが警察官が襲いかかったことによって生じたのか、あるいは警察官正当業務行為によって生じたものであるのか、あるいは法令行為に基づいて生じたものであるのかというふうな点が、やはり捜査中心になっておると考えられますので、さような点につきましては、この捜査が終了いたしましたときには全貌が御報告申し上げられると存じます。
  51. 松井誠

    松井(誠)委員 私が今お尋ねしたものは、襲いかかったという言葉をわざわざ訂正したのは、とにかくその両者の接触で傷を負うたということ自体——それが正当な行為であるか、業務上の行為であるかということは別として、つまりそれが刑事責任原因になるかどうかということは別として、とにかくその接触の過程で傷を受けたということ自体は間違いないかということをお尋ねしている。
  52. 河井信太郎

    河井説明員 問題は、その点を確定するのが捜査でございまして、非常にむずかしい問題でございます。その事実があるかないかということを確定するのが犯罪捜査でございます。いずれ明らかにして御報告申し上げる時期が参ると思います。それまでお待ち願いたいと思います。
  53. 松井誠

    松井(誠)委員 それはその教授団がいた場所というものは大体おわかりだと思いますけれども、そこへあの時刻に警察官が出ていった理由というものはどういう根拠に基づいてその場所に出ていったのかという、そのことをお伺いしたい。
  54. 河井信太郎

    河井説明員 さような点ももちろん犯罪捜査の面では確定できておると存じます。さような点につきましていずれはっきり御報告申し上げることができる時期が参るかと思いますが、何分にも目下捜査中の事件でございますので、その段階でここに警察官がいた、ここに教授団がいた、ここにはだれがいたかというふうなことを御報告申し上げることはお許し願いたいと存じます。
  55. 松井誠

    松井(誠)委員 じゃあ、今の点はあと警視庁お尋ねをするといたしまして、私が今お尋ねいたしましたのは教授団に対する問題でありますけれども、そのほかにたとえば報道陣に対するいろいろな暴行傷害、あるいはこれは特に顕著な例でございますけれども、三宅坂で青山学院の某講師に対する傷害事件、そういうものも告訴告発の対象になっておりますか。
  56. 河井信太郎

    河井説明員 三宅坂の事件告訴告発になっておりません。
  57. 松井誠

    松井(誠)委員 じゃ、それについて刑事捜査はされておりますか。
  58. 河井信太郎

    河井説明員 もちろんさような点を含めて当時の六・一五事件についての全般の問題を捜査いたしておりますので、その点もやっておることと存じております。
  59. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、そのような個別的ないわば派生的な事実についての取り調べもされておる。これは非常に範囲の狭い問題でありますので、これは少なくとも事実は大体確定をされておりますか。
  60. 河井信太郎

    河井説明員 その三宅坂の事件についてどのように捜査が進んでおるかという点は一々つまびらかにいたしておりません。いずれ全部捜査が終了いたしますれば御報告申し上げることができると思いますので、それまで御猶予願いたいと思います。
  61. 松井誠

    松井(誠)委員 私は、一昨日冒頭に申し上げたのですけれども、われわれが刃物取り締まりの法案に反対をする一番大きな理由というのは、警察官の乱用の危険をどうしてもぬぐい去るわけにいかない。従ってそのような具体的な事例というものをお伺いをして、それに対して具体的にどういう処分をされるのか。そしてそれが一体どういう原因に基づいたのか。従って将来そういう乱用がされないという保証がされるためには、具体的にどういうことをされようとしておるのか。そういうことをお聞きしないと、そういう大前提が解決しないと、この審議が、審議の途中で同じことを何べんも繰り返すにすぎない、そういうことで私は申し上げているのです。そこでこの警察官の乱用というのは、権限を使い過ぎて、いわば行き過ぎの乱用ということもありますけれども、しかし何にもしない、し過ぎないという乱用もあり、やるべきときにやらないというのも乱用の一つだ。そういう意味で、やはり六・一五のときの顕著な例といたしまして、これは告訴告発の対象になっておるかどうかということをまずお伺いいたしたいと思います。  あの参議院の第二通用門といいますか、あのあたりで起こった新劇人その他のデモ隊に対する右翼のなぐり込み、それによって非常な被害を受けた人たちが、あの第二通用門の中に入ろうとしても、それを入れないばかりでなく、またそこへ出て、そのような右翼の暴力というものに対してこれを制止しようともしなかったという事実、こういう事実が告訴告発の対象になっておるかどうかお伺いいたしたいと思います。
  62. 河井信太郎

    河井説明員 ただいまお尋ねの点は、六・一五の維新行動隊のなぐり込み事件と私どもは呼んでおりますが、新劇人等十一名からの告訴が一件ございまして、本件に関する被害者は十一名で、全部告訴人でございます。この被告訴人、すなわち犯罪の嫌疑を受けた者は合計三十三名でございます。そのうち石井百日維新行動隊の隊長外十七名につきましては、告訴時期前である昨年の七月七日、東京地裁へ暴力行為等処罰ニ関スル法律違反で起訴いたしまして公判請求いたし、また少年二名につきましては三十五年八月十一日に、同じ罪名で東京地裁へ公判請求いたしたのであります。  それから警察官関係被告訴人合計六百十四名の告訴事件については、現在捜査中であり、ただいままでに取り調べ済み警察官合計三十名であるという捜査状況でございます。
  63. 松井誠

    松井(誠)委員 私がお伺いしたのは、右翼に対する告訴のことではございません。私がきょうお伺いしておるのは、この六・一五の問題は非常に多くの問題を含んでおりますけれども、先ほど申し上げましたように警察官職権乱用という一点にしぼってお伺いしておるのです。従って、今の場合は右翼に対する告訴告発の問題でなく、それを拱手傍観しておった第四機動隊に対する告訴告発事件が具体的にどうなっておるかというお等ねなんです。それに対して今のお話では、被告発人が六百数十名で、取り調べをされた人が三十何名というのはそのことでございますね。
  64. 河井信太郎

    河井説明員 そうです。
  65. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、先ほど四千何がしかの警察官、被告発のほとんど全員あるいはそれを上回る警察官をお調べになったと言いましたけれども、この六百何十人のうち三十何名しか調べないということになりますと、この六百何十名というのは四千何がしという数字と別の数字でございますか。
  66. 河井信太郎

    河井説明員 別でございます。
  67. 松井誠

    松井(誠)委員 それでは、この場合における警察官職権乱用の問題については、現在どの程度の事実が判明しておりますか。
  68. 河井信太郎

    河井説明員 ただいま御報告申し上げましたように、三十名について取り調べが済んでおるという状況であり、維新行動隊の分については起訴してあるという状況であります。
  69. 松井誠

    松井(誠)委員 これは一般論として、警職法の三条によりますと、官は国民が身体の危険があり云々というときに、文句は忘れましたけれども、救護の義務があるということ、それから、これは警視庁の方にお尋ねした方がいいかもしれませんが、警視庁警察職員服務規定の十三条には「急訴に接したときは、勤務の当否、管轄の内外にかかわらず、迅速、機宜の措置をとらなければならない。」という規定が、ございますけれども、このような規定に照らしてみて、あの拱手傍観しておった四機の警察官はどのような評価をされておりますか。
  70. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 ただいまの点につきましては、かつてもお尋ねがありまして、お答えをいたしたわけでございますけれども、警察側の調べによりますと、拱手傍観をしていたというふうなことはないと考えるのでございます。最初のなぐり込みがございました際に、第四機動隊員三名、これは構内におりましたわけですが、車両をもって阻止をするための車両の上におりました者が、門の上を飛び越えて出たのでございます。それを含み、白バイの要員、本庁私服、それから麹町署員七名、合計十六名が出まして、最初になぐり込んだ者を引き分け、連れ戻しておるのでございます。そのうちのわずかの者がかえってデモ隊の中に巻き込まれてなぐられておるというような状態、さらに維新行動隊が第二回目になぐり込みましたときには、第四機動隊の一個中隊、城東大隊四名、深川大隊の五名、本所大隊の一個中隊が警備配置についておったのでございます。これがややおくれまして、五時二十五分ごろには丸の内部隊八十三名も現場に到着いたしまして、現場検挙いたしました者は任意に麹町に同行を求めまして取り調べをいたしたわけでございます。そういう意味で、御承知のように境に鉄条網等もあったわけでありますが、それを乗り越えて出るというようなことであり、あるいは門を飛び越えて出るというようなことであり、そういう点で被害を受けられる方としては非常におそかったという感じを受けられたかもしれませんけれども、警察といたしましては、当事そこにおりました者ができるだけすみやかに出て処置しておったように聞いておるのでございます。
  71. 松井誠

    松井(誠)委員 では、一つ警備局長にお尋ねをしたいと思います。先ほど申し上げましたように、警視庁の警察職員服務規定の十三条、この規定の精神にのっとって、そのときの機動隊行動をしたというふうにお考えになっておりますか。
  72. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 服務規定の中に、御指摘のようなものがあるわけでございます。通常これは警察官個々に部署について勤務いたしておりますので、急訴についてこうすべきものであるという規定かと思うわけでございますけれども、いかなる場合にもこれが適用がないというわけではないと思います。しかしながら、部隊として配置をされております場合に、個々警察官行動するのは部隊長の指揮によるのが優先すると思うのでございます。この場合に、そこにおりました者が、部隊に配置されておりました者も、第二回目のなぐり込みのときには部隊長の命令によって飛び出しているわけでございますし、最初の場合にも二回目の場合にも、そこにおりました者で個々に飛び出ている者もあるわけでございまして、この「急訴に接したときは、」云々という服務規定に当時の警察官が違反したというふうには考えられないのでございます。
  73. 松井誠

    松井(誠)委員 その部隊長の指示とか命令とかいうその部隊長というのは、中隊長とか大隊長とかあるでしょう。具体的にはどういうことなのですか。
  74. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 具体的には中隊長が指揮をしておるわけでございます。
  75. 松井誠

    松井(誠)委員 私のお伺いしたいのは、中隊長の指示がなければ動けないという意味なのか、あるいは大隊長の指示がないと動けないという意味なのですか。
  76. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 先ほどもお答えいたしました通り、本来この服務規定と申しますのは、個々警察官個々に交番等に配置してあるのが原則でありますので、そういうことを前提とした規定だと思うのであります。部隊行動をいたしております際に、そういうことが必要になりました場合には、そこにおります単位部隊の部隊長としてすみやかに処置をとらすという判断をすべきでございますので、そういう場合にはそこにおります部隊長の指揮によると思うのでございます。しかしながら、その大隊の指揮と申しましても、大隊長の指揮を受けることが新しく目前の事態の収拾におくれるということでありますれば、そこにおります現場の単位部隊長が指揮をしてやるのが適当と考えるのでございます。
  77. 松井誠

    松井(誠)委員 私がそういうことをお伺いしておりますのは、現実にこの場合にはそのときにいた中隊長が大隊長の指揮を求めて探していた。ところが大隊長がどうしてもいない。そこでまごまごしているうちに約十分くらいたってしまった。やっと大隊長の許可を得て百名くらいの者がさくの外に飛び出して行ったときには大体勝負がついておった。そういう状況が記録として残っておりますので、そういう場合に一体機動隊としてのやり方としては、やはり大隊長を探して、大隊長がうんと言うまでは動けない、そういうものか、これは十二条の規定と照らし合わせて、私は非常に疑問に思うので、それをお伺いしております。
  78. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 繰り返すようでございますけれども、部隊運用という問題と目の前に起きました具体的な事実の収拾と両方を考え合わさなければいけないと思うのでございます。同級部隊長がすぐそばにおりますならば、その高級部隊長の指揮をもってやるということが適当と思うのでございます。ただ、その高級部隊長の指揮を受けるいとまがない、それがおくれるということでございますれば、中隊長の判断でやるのが適当でございましょう。いずれにいたしましても、急訴の精神を除外するというのではございません。すみやかに処置をするのが適当だと考えます。
  79. 松井誠

    松井(誠)委員 そして現実には百名余の者がさくの外に出ていったときにはもう大体済んでおった。それで急訴の云々というこの規定の精神にやはり合致するというお考えかどうかということです。
  80. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 結果から申しまして、もっとすみやかに出れば被害が少なかったということは批判があるだろうと思うのでございますけれども、当時そこにおりました部隊といたしましては、できるだけすみやかに出るという考え方で障害物を排除して出た、そしてできるだけすみやかに処置をしたというふうに聞いておるのでありまして、この服務規定に反するというようなことではなかったように聞いておるのでございます。
  81. 松井誠

    松井(誠)委員 できるだけすみやかにというようなきれいな言葉で御答弁になっておっても、国民の不安というものは実際少しも消えていかないわけです。ですから今の御答弁をいろいろ聞いておりますと、警察にはほとんど非がないかのごとき——国民としては、もうあれほど公然たる明瞭な警察官暴行というものが、警察の目から見ると、あるいは捜査当局の目から見てさえほとんど非違いがないかのごとき印象を受ける。それでは一体乱用の危険を具体的にどうして防ぐという証拠があるのか、そういうことを危惧するものでありますからお尋ねをしておるのであります。  だいぶお急ぎの人がおるようでございますので、これは警視庁あるいは警察庁、どっちでもけっこうでございますけれども、警棒のことについて一つお尋ねをいたしたいと思います。警棒の使い方が非常に乱用されておる。そして六・一五事件のときも警棒の使い方が一つの非常に大きな要因をなしておる。そういうことで警棒についてお尋ねをいたしたいと思います。  この警棒というのは、本来の性格は武器ではなくて制止をしたり警告をしたりするときの用具である、しかし特定の場合には武器として使うこともできる、そういう性格のものであることは間違いないですか。
  82. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 元来が武器ではないということではございませんが、ただ使い方が警職法の制止等に当たります場合には用具として使いますし、第七条に該当いたします場合には武器として使うことができる、両様の使い方があるわけでございます。
  83. 松井誠

    松井(誠)委員 私はそういうお答えがあろうとは実は予期してなかった。これは警視庁警察官警棒等使用及び取扱規程というのがあります。それの六条、七条に用具としての使用、武器としての使用が書いてありますけれども、六条は用具としての使用、そして七条は「前条による使用のほか、」云云、「武器として使用することができる。」こういう規定になっておるわけです。この規定の体裁自体から見ましても、この警棒というものは元来用具であって、武器として使うのは警職法七条の場合に限られる、そういうように解釈をすべきじゃないですか。
  84. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 その通りでございますけれども、警職法第七条に当たる場合には武器でございますから、本来警棒が武器でないものを特別な使い方をするというのではなくて、第七条に該当いたします場合には武器として使うわけでございます。従って、平素警察官といたしましては、警棒術として、武器として使います場合の基本的な訓練もいたしますし、また用具として制止等に使います訓練もいたしますし、そういう意味でいずれの使い方が主であるかといえば、場合によりましては用具として使う場合が多うございましょうけれども、いずれの使い方もあり得るということを申し上げたのでございます。
  85. 松井誠

    松井(誠)委員 私は、警視庁警察官にどういう教育をなさっておるのか知りませんけれども、この警棒というものは、実際には用具としてではなくて武器として現実に使用されている。そういう場合の方が圧倒的に多いのじゃないか。これは元来は用具なのだ、しかしこういう特別な場合にだけ武器として使用し得るのだという、そういう御教育はいろいろなさっておらないのですか。
  86. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 私のこの言葉がどういうふうに御理解いただけないのかと思うのでございまするけれども、官とういのは再々申します通り個々の部署について勤務するのが原則でございます。従いまして、交番で勤務をいたしまして凶悪犯人の訴えがあれば一人で逮捕に向かうわけでございます。そこで武器として使用をいたすという段階になるわけでございまして、用具として使用する場合もあり、武器として使用する場合もあり、そのいずれの場合もあり得るということを申し上げたわけでございますけれども、決して用具としての使用よりも武器としての使用を重く見るという意味でお答えをしたわけではございません。
  87. 松井誠

    松井(誠)委員 警視庁でも、この六・一五事件の調査は、少なくとも行政処分の前提として、その対象として調査をされたことは間違いないと思いますけれども、その調査の結果、全般を通じてこの六・一五事件のときにおける警棒の使用というものは、一体用具として使用されたのか、武器として使用されたのか、そういう点についてはどのように御判断をされておりますか。
  88. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 これは両方の場合があったと考えます。
  89. 松井誠

    松井(誠)委員 それでは用具として警棒を使用するということは、逆に言えば、用具として使用する限りは相手に殺傷を与えないような方法で使うということを当然予定しておると思いますけれども、それはその通りでございますか。
  90. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 その通りでございます。
  91. 松井誠

    松井(誠)委員 相手に傷害、殺傷を与えないで用具として警棒を使用するというのは、具体的にたとえばどういう使用方法がございますか。
  92. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 たとえばある場所に入りますことを制止いたします場合に、警職法第五条の精神によりますような場合には、これを両手でかまえて入れない、何と申しますか、この警棒の圧力によって入れないというかまえをするだけでございます。
  93. 松井誠

    松井(誠)委員 かまえをして威嚇をしたけれども、結局接触をしたという場合はどうですか。
  94. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 接触をいたしましても、この警棒で押えて、これによって物理的な力によって向こうの力を排除いたすということになるわけでございます。
  95. 松井誠

    松井(誠)委員 もしその結果、殺傷等の結果が生じたといたしますると、その警察官行為はどういうことになりますか。
  96. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 正当な行為によりまして用具として使っております場合にも、何分にも、たとえば制止をいたしますところに入ろうとする物理的な力のぶつかり合いでございますから、これを積極的に振り上げるとかなんとかいうことでない場合でも軽微な傷を受けるということはあり得るだろうと思うのでございます。私どもからいたしまして、正当な職務の範囲でこれをそういう制止に使いました結果、そういう事態が起こりましても、それによって故意、過失がなければ刑事的な犯罪にはならない。ただ、その使い方が、何と申しますか、使い方の限度を越えておるということでございますれば、ある場合には刑事事件にもなりますし、ある場合には部内の徴戒と申しますか、そういうことにもなると思いますけれども、その場合に負傷が生じたから直ちにそれが責任を問われるということではないと思うのでございます。
  97. 松井誠

    松井(誠)委員 この六・一五事件のときに、いろいろな形で警棒が使われましたけれども、たとえば学生のデモ隊に対する警棒の使用の根拠あるいは教授団に対する警棒の使用の根拠、そういうものについて御検討になりましたか。
  98. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 原則的には公務執行妨害の排除という意味でこれを使うのでございます。しかしながら、御承知のように七条にありますように正当防衛にはこれを武器として使うことがあり得るわけでありますので、そういう意味で相手側の攻撃に対して防衛的な意味で使った場合もあろうかと思います。
  99. 松井誠

    松井(誠)委員 一般論としては私もそういう理屈はあり得ると思います。それで私、先ほど一般論としてお聞きしたのですけれども、制止をする場合に用具として警棒を使った。ところが相手が聞かない。聞かないということで何かの現行犯というような考え方に変わる。あるいは公務執行妨害だというそれの現行犯というような考え方に変わる。従って、ここでは武器としての警棒を使ってもいいのだ、そういうように簡単に用具から武器に早変わりする。そういう性格のものですか。
  100. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 制止をいたします際に相手が聞かない。公務執行妨害としてかりに検挙する場合もございましょうけれども、警職法の第七条の要件には該当いたしませんから、これをもって武器として使用するわけには参りません。私が申し上げましたのは、正当防衛ということで警察官が使うことがあり得るということを申し上げたのであります。
  101. 松井誠

    松井(誠)委員 学生デモ隊に対する警察官の接し方と、それから教授団に対する警察官の接し方とは根本的に違わなければならないのではないかと思うのです。デモ隊は、いろいろ議論はありましょうけれども、ともかく国会の中へ入るということをやった、そういう行動をした者があったことは間違いない。ところがこの教授団というのは、そのような形でのいかなる意味のデモでもないわけです。従って、これに対して一体どのような根拠で警棒を使用されたのかということと、国会の中に入ろうとする学生に対して警棒を使用したということとでは非常に違うのではないか、これをひっくるめて、こういう場合もあるしああいう場合もあるという一般論で片づけられないものがあるのではないですか。ですから教授団に対する警棒使用の根拠とデモ隊に対する警棒使用の根拠と区別して、具体的にお調べになったりお考えになったことがあるか、重ねてお伺いいたしたいと思います。
  102. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 当日の状況は、私は現場を知りませんけれども、午前一時二十分ごろになりまして、ガスを撃ち、中におりました者を排除するという状態で門のところまで参りました際に、当時約四百人くらいの学生から猛烈な投石があり、あるいは竹ざおを横にかまえておる者もあり、そういうところで警察が職務を執行したわけでございますが、その中に白たすきをかけた人が来て、話し合いをしようということを五機の中隊長に申しましたが、そういう中でございますから話し合いの時期ではないということを言った。それがあと教授団の方であったということであるようでございます。その辺の状況から申しますと、学生が四方八方から石を投げてくる、あるいはたき火した残り火を投げてくるというような状況の中でございまして、教授団というのは全く離れて、明らかに教授団と認められる状態においてそこにおられたというふうには聞いておりません。そういう意味で、その当時のやや混乱した状態の中で、区別してなかなか行ない得なかったのではなかろうかと思うのでございます。しかしながら、これは私どもの今まで聞きました範囲からいろいろ推定を加えたものにすぎませんので、具体的な問題といたしましては、事柄が警察官責任の問題でございますから、第三者的な意味で検察庁においてつぶさに検討をしていただいておるところでございまして、先ほど来刑事課長からもお答えがありましたように、関係警察官もすべて取り調べを受けておるような状態でございますので、いずれそういう方から公正な結論が出ると考えるのでございます。
  103. 松井誠

    松井(誠)委員 私がお尋ねすることは少し飛びますけれども、そうすると、行政処分というものは、これは第三者の結論が出るまではされないということを、この前も警察庁の長官が実は言われたのですけれども、その第三者の判断がはっきりするまでというのは、これは具体的にどういうことですか。起訴、不起訴の処分がきまるということなのか、あるいは起訴されて判決が確定するということなのか、それまではじっとすわって待っておるということですか。
  104. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 前回お答え申し上げましたように、ああいう大きな問題として取り上げられ、多数の者についての事件でございますので、何らか一応の結論を待って公正に処置を考えるというのが警視庁の態度のように聞いておるわけでございますが、結論が出るといっても、裁判の結果まで待つというわけではございません。従来もこういう場合におきまして、起訴になるあるいは不起訴になるというようなこと、それよりもおくれるということは、今までもあまり例はないわけでございまして、具体的に警視庁でいつやるということを私聞いておりませんけれども、大体の目安としては、そういう刑事責任があるかないかということは処分の上でも非常に大きい問題になるわけでございますので、それを待つということが正しい道であろうと思います。
  105. 松井誠

    松井(誠)委員 その点はあとでまたお伺いをいたしますけれども、そうしますと、その第三者の判断にまかせるという意味で、事実の調査も警視庁あるいは警察庁ではされないわけですか。
  106. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 警視庁におきましては、主として警務部の人事関係をやっておりますところと、警備の主として人事関係をやっておるところでございますが、関係警察官から報告書をとり、また個々に調査をいたして事態を明らかにすべき努力をいたしておるのでございますが、検察側の関係者取り調べが始まっておりますので、これを待って処分をきめたいというふうに聞いておるのでございます。
  107. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると、件になるかならないかという問題は別としたしまして、刑事事件にまでは至らないけれども、警察官の実力行使の方法としては不穏当であるというような事柄についても、調査はされないわけですか。
  108. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 調査は先ほど申しましたように、関係者全員についていたしておるのでございます。しかしながら、責任の問題と申しますのは全体を見て考えなければなりません問題でございますから、検察側の刑事事件に対する御意見を承って後に全体を通じて考えたいということのように聞いておるのであります。
  109. 松井誠

    松井(誠)委員 その処分の問題はまたあとで実はお伺いをいたしたいと思いますので、中途になりました警棒の問題にもう一度返りたいと思います。  この警棒の使用につきましては、先ほど来何度も申しまする例の答弁書に、警棒の使用はその当時三回あったということを答弁されておりますけれども、この三回の警棒の使用の根拠はどこにあったのでございますか。
  110. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 当日の第一回は午後五時三十五分から七時三十分の間、南通用門付近の学生たちに対しまして、投石、建造物損壊、侵入等に対しまする制止及び、これは犯罪がすでに起っておりますので検挙及び、繰り返し申しますように非常に強い攻撃があったわけでございますので、この正当防衛のために使ったのでございます。第二回は午後九時四十四分から十時十八分までの間、国会構内侵入中の学生たちが正門方向に移動をするために警察官に対しまして突入をし、投石等の挙に出ましたので、これが制止等のために使用いたしたのでございます。これは用具、武器として使用したわけでございまして、その過程で要するに正当防衛の場合には武器として使用したということでございます。第三回は十六日午前一時十六分ないし一時二十五分の間、正門付近で投石、放火などを繰り返しておりました学生たちを特許庁方面に規制するにあたりまして、これは用具または武器として使用いたしたのでございます。これは第五機動隊の一部と聞いておるのでございます。
  111. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると、教授団に対する警棒の使用というのは、この三回の中には含まれていないわけですね。
  112. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 時間的に申しますと、この第三回のときに当たりまするけれども、具体的に教授団に向かってどういうふうに使われたかにつきましては検察側のお調べに待ちたいと思うわけでございます。
  113. 松井誠

    松井(誠)委員 警棒の使用を開始するときと終了するときには、やはり指揮官の指示なり命令なりがあるわけですね。
  114. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 警視庁の警棒の使用及び取扱規程の中に「騒じょうの鎮圧、群衆整理、その他部隊活動をする場合においては、指揮官の命令によって使用すること。ただし、指揮官の命令によるいとまのないときは、この限りでない。」ということになっておりますので、原則として指揮官が命じて使い、またはおさめるのでございます。
  115. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると三回目の警棒の使用については、警棒をおさめてというのですか、そういうような指令はいつごろされたのですか。
  116. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 受けております報告では、この第三回の場合には、隊長の命を請ういとまのない状況下に各自の判断で使用したということを聞いておるのでございます。つまりただし書きの場合に該当するというふうに考えるのでございます。
  117. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると三回目の警棒の使用は、全部指揮官の指揮命令によらない警棒の使用なのですか。
  118. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 第三回に使用した場合には、そういうふうに聞いております。
  119. 松井誠

    松井(誠)委員 この答弁書の中に三回にわたる使用を書いてありますね。第一回が午後五時三十五分ごろ、第二回は午後十時ごろ、第三回は、これは時間は書いてございませんけれども、これは当然規定によって報告があるわけでしょう。その時間は一体何時から何時までですか。
  120. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 これは先ほどもお答えいたしましたが、十六日午前一時十六分から二十五分ごろの間ということでございます。
  121. 松井誠

    松井(誠)委員 その三回目の警棒の使用の根拠について、この答弁書によりますと、いとまがなかったので、身の危険を感じて警察官が各自使ったのだというように書いてありますが、先ほどの局長の御答弁ですと、公務執行妨害の排除というようにお答えになったと思いますが、その辺に食い違いがあるわけです。
  122. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 第三回はガスを使って排除をするときでございまして、先ほどもちょっとお答えしましたように、まだ投石あるいは火の燃えがらなどをぶつけられるという情勢で、非常な危険な状態でありましたので、警察官が排除に際して身の危険を感じて正当防衛という意味で使ったように聞いておるのでございます。
  123. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると三回目には公務執行妨害の排除じゃなくて正当防衛だ、先ほどは三回とも公務執行妨害というようにお聞きしたのですけれども、それは違いますか。
  124. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 全体として公務執行妨害の排除でございますけれども、第三回に部隊指揮官の指揮によることなくやったのは、今のようなそういう危険な状態にありましたので、正当防衛というふうに使われたということを申し上げたのでございます。職務全体といたしましては、そこに侵入した者を排除いたします公務の執行でございまして、これに対する抵抗の排除ということは前提としてあるわけでございます。
  125. 松井誠

    松井(誠)委員 私がさっきから繰り返しお尋ねしているのは、教授団に対する警棒の使用の根拠と、それからデモ隊に対する警棒の使用の根拠とは、区別をして考えなければならないのじゃないかというお尋ねに対して、それもこれも公務執行妨害の排除だと言われた。今のお話ですと、三回目は正当防衛だと言われた。正当防衛ということは絶対成り立たないと私は思いますけれども、ともかくその二つの問に警棒の使用の根拠が違うということは最小限度お認めになってしかるべきだと思いますけれども、また先ほどのお尋ねの繰り返しになりますが、いかがですか。
  126. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 先ほどお答えしました中にも、第一回、第二回も公務執行妨害の排除、それから検挙、それから正当防衛、第三回につきましても、公務執行妨害の排除等のために使ったということを申し上げておるのでございまして、全体として職務としては公務の執行を行なったわけでございますし、これに熾烈な抵抗がありますれば、これを排除するために警棒を使うわけでございますけれども、さらに身の危険を感ずるという場合に、これが正当防衛として使われることがあるわけでございます。  なお、教授団の場合と違うではないかというお尋ねに対しましては、先ほど私ども推定を加えて申しましたけれども、相当に混雑しておったように聞くのでございますけれども、この教授団に対する使い方あるいは当時そこにおりました学生に対する使い方につきましては、検察側のお調べに待った方がよかろうかと思うのでございます。
  127. 松井誠

    松井(誠)委員 この警棒の使用規程第八条の五号、六号というところには、これは十分御承知でありましょうけれども、「頭部等を打撃することのないようにつとめて心掛けること。」「やむを得ず使用した際といえども、つとめて相手を傷つけることのないように心掛けること。」という規定があるわけです。この警棒の使用規定は、もとより武器としての使用の場合も含めてのことでありますけれども、このような規定だけを見ますと、警棒というものは非常に安全なものなのだという印象を受けるわけです。しかし現実にあのときに約千人に近い人がけがをした。これは警察官じゃないですよ。そのうち七百人くらいは病院に運ばれている。これははっきりしている。病院に運ばれた人だけで七百四十何名なのです。それだけの傷を与える警棒の使用というものと、この規程から受ける感じとは全く違う。ですから全般的にいってまだお答えしにくいかもしれませんけれども、この警棒の使用の面から考えて、あの六・一五のときの警察官の実力行使の方法というものは、少なくともこの警棒の使用規程の精神にマッチしたといえるか、この程度のことはお答えいただけるのではありませんか。
  128. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 警棒は、武器として使用いたします場合にも頭部を打たない、なるべく相手に必要以上のけがを与えないで制圧することがいいのでございます。そういう心がけでやることということがこの訓令にもあるところでございます。従いまして平素の訓練におきましても、頭を打たないという訓練をいたしておるのでございますけれども、ああいう場合、先ほど申しましたような七百人からの病院に運ばれたけが人が、警棒によってというお言葉であったかと思いますけれども、同時に警察官も七百二十幾人ほどのけが人が出ておるのでございます。投げ込まれました石が、あとで集めましたものだけで個数にして二千七百何がし、二・三トンというような石が投げ込まれておるのでございまして、非常な重傷を負った警察官も多いわけです。そういう中にありまして部隊として相手を制圧するということでございますから、十分そういう意味の平素の訓練、心がけでいたしたと思いますけれども、結果としてけが人があったことはある程度やむを得ないのではなかろうかというふうに考えておるのでございます。
  129. 松井誠

    松井(誠)委員 実はこの警棒というのは、先ほど申し上げましたように、警察官が具体的に職権を乱用するいわばよりどころになっておるわけです。ですからこの点についてもう二、三お聞きをしたいのですけれども、そのほかに、このような処分が第三者の判断を待つという、私はこれはあとで申し上げますけれども、非常に実際的でない処分の仕方をとっておりますために、警察官職権乱用というものが非常に大目に見られている。それが一つ援用されて、新島のミサイル基地でも同じような職権乱用事件というものが、これはまだ真新しいのですが起きておる。こういうことをお尋ねいたしまして、そしてこの銃砲刀剣の改正案と、政府が前に発表になりました治安対策要綱、犯罪防止対策要綱ですか、あれにおけるこの改正案の位置、それから警職法とこの改正案とのつながり、そういうものを全般的にお伺いをいたしまして、それからあと具体的にこの銃砲刀剣の改正案の内容についてお伺いしたい、このように考えますけれども、もう一時でございますので、これからあとの私の質問を保留をいたしまして、この程度でやめたいと思います。
  130. 濱田幸雄

    濱田委員長 午後、多分二時、ころと思いますが、本会議終了直後に再開いたしまして、質疑を続行することといたします。  これにて休憩いたします。    午後一時休憩      ————◇—————    午後二時五十八分開議
  131. 濱田幸雄

    濱田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案に関する質疑を続行いたします。阪上安太郎君。
  132. 阪上安太郎

    ○阪上委員 本法は、御案内のように治安立法であります。現在議会の中における与野党の勢力分野というものははっきりいたしておりまして、自民党が過半数を占めておられるのであります。そこですべての法案は無理をすればこれは多数で押し切ってどれでも通る、こういう一応格好になっているわけであります。そういうわけでありますので、問題はやはりどの法案にいたしましても、その法案が通るということよりも、むしろそういった状態にいくまでの間における審議の過程というものがきわめて重要だということは巷間一般の意見の一致するところであります。従って、私どもといたしましても、特に本法案が御案内のごとく治安立法でありまするので、十二分に審議を尽くしていかなければならぬ、こういう考え方を持っております。さような意味合いにおきまして、この際一つ大臣にお伺いいたしたいのでありますけれども、こういった治安立法の提出の手続、立案の手続というものはどういう状態であったのかということをまずお伺いいたしておきたいと思う、こういうように思うのであります。今回のこの銃砲刀剣類等所持取締法の一部改正が一体どういう動機から、どういう立案の手続を経て内閣提出の形をとってきたか、この間についてのいきさつを一つ伺いたい、かように思います。
  133. 安井謙

    ○安井国務大臣 この銃砲刀剣類に関しまする法律は、私ども実は純粋の治安立法とは考えてないわけでございまして、むしろどちらかといえば、一般の、特に最近横行しております刃物を持った青少年等を中心にした犯罪の件数がふえておりまするので、こういうものを一般の凶悪犯罪の防止のために役立てたい、こういう趣旨で出しておるわけでございます。ただ経過といたしましては、御承知のように、昨年の淺沼さんの事件、あるいは嶋中事件その他の事件等がみな青少年を中心にした刃物による凶行といったような事態もございます。また政府としましても、全体のこういった犯罪、暴力を根本的に取り締まるという要件から、犯罪防止取締法の要綱をこの二月に発表いたしたわけであります。その一環として、私どもこういったさしあたり非常に有効であろうと思われる、特に青少年あるいはそういった危険を有する人たちの刃物所持に対する制限をいたして、一般の凶悪犯罪の防止をいたしたい。こういう趣旨でこの法案を提出いたしたわけでございます。
  134. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私が今伺っているのは、提案の趣旨ではないのでありまして、それ以前の本案を提出されるときの立法手続、こういったことについて、どういう経路をとって出されたかということを伺っておるわけであります。
  135. 安井謙

    ○安井国務大臣 この法案につきましては、昨年の秋以来、公安委員会におきまして、いろいろと青少年あるいは刃物を中心犯罪防止に対する立法措置あるいは対策というものを協議をいたしておったわけでございます。たまたまそういったものと並行して嶋中事件等も起こり、さらに政府でも犯罪対策の要綱を決定をいたしたわけでありまして、その要綱の一部を実現するという趣旨で、公安委員会あるいは政府においてこの法案を出すことを決定をしたわけでございますが、その間におきまして、むろん政党内閣でございますし、自由民主党の与党の中でも、治安対策特別委員会の方でも、いろいろとこういった犯罪防止につきましての御研究がございました。従いまして、党の方のいろんな御意見といったようなものも聞きました上で、この成案になったわけでございます。
  136. 阪上安太郎

    ○阪上委員 だいたいただいまの御答弁によりまして、立法手続の経過というものが概略わかってきたわけでございます。ただ、一つ気になるのは、先ほどこの法案は治安立法じゃない、こういうようにおっしゃったのでありますが、それじゃこの銃砲刀剣類等所持取締法という法律は目的は何なんですか。
  137. 安井謙

    ○安井国務大臣 治安立法というものは、政治的な犯罪であるとか、集団的な暴力とか、あるいは行き過ぎたデモ禁止とか、そういうようなものを常識上さすという意味で、いわゆる治安立法というのには必ずしも当たるまい。むろん広い意味で治安を確保するために犯罪を防止するという趣旨からは、それは広い意味の治安立法でないということは申せないと私も思っております。そういう意味でありますが、これは特に政治犯を対象にするとか、集団的な暴力を対象にするということより、今日世の中で非常に起こっております凶器を中心にした個々犯罪、これを全体的に取り締まるということを主たる目的にいたしておると思うのでございます。
  138. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そういうことで議論をいたそうとは思いませんけれども、この法律、ことに今度の改正法案の中で新しく刃物というもの、本法で取り締まることができる刃物というものの範囲が拡大されておる。そうしてそういう刃物を不当に所持するということは、これは明らかに犯罪なんです。その犯罪を取り締まるというのがこの法律の大きな部分を占めておると私は思う。もちろんこういう刃物を持つことによって、危害を自分自身に加えるという危険を防止するという意味もこの中に含まれておるけれども しかし今度の改正点等を見ましても、これは明らかに今言ったような意味における治案立法だと思うのです。それともこれは福祉立法的な性格を帯びておるというのであるならば、その点大臣の見解をこの際さらに伺っておきたい、かように思います。
  139. 安井謙

    ○安井国務大臣 犯罪を取り締まる——この法案自体は犯罪を摘発して、その処分をしようという目的というよりは、むしろ犯罪を予防しようという趣旨が多分に含まれておるわけでございますが、しかし犯罪を取り締まるという趣旨からは、これはなるほどこの全体の治安ということに関係があるという意味では、そういう広い意味の治安立法であることは私も肯定いたします。
  140. 阪上安太郎

    ○阪上委員 警察法の二条あるいは警察官職務執行法の目的に、犯罪予防というのは警察の任務であって、取り締まりの対象になるものであるということははっきりしておるのでありますから、何もここで大臣が力をこめて、これは治安立法ではないと言われる必要はないと私は思います。何か少し先の方を見通し過ぎて、そういうことをおっしゃっておるのじゃないかと、私はこういうふうに思うのであります。  この議論はこの程度にいたしまして、私は率直に言いまして、この間、本会議で池田総理が、例の自民、民社党か其同提案で出て参りました政治的暴力行為防止法案に対するわが党の質問に答えて、率直に、こういったものは政府の責任おいて出すべきじゃないか、こういう質問があったのに対して、池田総理は、いや、それはそうじゃないのだ、こういった治安立法というものは、やはりなるべくならば各党の了解のもとに、話し合いのもとに、議員提案として出すことがほんとうは正しいのだ、という意味の答弁をなさっておったのであります。敵ながらあっぱれだと私は思って拝聴いたしておったのであります。今回のこの法案は、先ほど承りますと、政府の方から政府提案として出されたその立法手続の内容については、政党政治であるので、与党である自民党早川委員会でありますかに相談してやったのだと、こういうふうにおっしゃっておるのでありますが、いかがでしょうか、私はこの場合も、池田さんがおっしゃったようなものの考え方で、当然これは議員立法として出されることの方がはるかに国民も納得するのじゃなかろうか。とかく警職法の改正問題以来、こういった一連の治安立法につきましては、国民の中にも非常に恐怖心が強い、このことは大臣もお認めになるのじゃないかと思うのであります。そういった場合に、こういった立法を、特に一党だけと相談されて、そのこと自体が違法であるとかなんとかいうことを私は申すのじゃないのですが、そういうものの考え方でお出しになるところに、これは警職法の焼き直しじゃなかろうかというような批判を世間からちょうだいしなければならぬような羽目になるのじゃないか。私たちも十二分にそういうことのないようにという警戒のもとに実はこの法案に接しなければならぬと、こういうことになっておるわけであります。なぜこういった法案をあなた方は議員立法として出すだけの態度をお持ちにならなかったのか、この点一つ御所見を伺っておきたいと思います。
  141. 安井謙

    ○安井国務大臣 阪上委員お話しの、議員立法によって出してはどうかということもごもっともな御説であろうと思います。ただ私どもこの法律につきましては、かねて国家公安委員会でもいろいろ検討をいたしておったわけでございまして、そして法案の内容自体に相当技術的な要素もございますので、これは政府提案でやる方が好ましかろう。ことに政治的な色彩のきわめて薄いものでございます。警官の一般の行政措置をむしろきめるというような性質のものでございますので、今まで検討しておったこと、あるいは技術的に多少細部にわたるといったような問題もある点から、政府の案としてこれは提出なしたわけでございます。
  142. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私は、将来ともこういう法案が出てくる可能性はなきにしもあらずだと思うのであります。こういった改正のまま出てくることもあり得ると思うのであります。警察関係の立法は、必ずしも警察官職務執行法ばかりではありませんし、ほかに幾多の取り締まり法規というものがあるわけであります。そういったものが改正される場合に、私としては、むしろこういった治安関係のもの、ことにその基礎を警職法に置いている、そうしてその執行の範囲というものをその他の単独立法で規定していくという形の法体系を持っておるところの一連の警察関係法規については、むしろ、この際警察の厳正な中立を保持する建前からいっても、これは議員立法として出されることの方がはるかにいいのじゃないか。そのことを、政党政治でありますので、政党の方に相談を持ちかけられるということは、私は手続上差しつかえないと思います。そういう形をおとりになることが私は正しいと思うのであります。将来のこともありますので、重ねて一つお伺いいたしたいと思います。
  143. 安井謙

    ○安井国務大臣 ものの扱いによりまして、今お話しのように議員立法をお願いするとか、あるいは慫慂するといったようなことも確かに一つの行き方だし、いいことだとは思っております。ただ、この法案は、先ほど申し上げましたように、前々から国家公安委員会でも検討いたしておったものでございますし、それに技術的なものも入った。こういった行政的な警官の措置をきめようというものでございますから、そういった専門的な法律であるというような趣旨からも、これは今までも認められておる政府提案とした方がよかろうかと思って、そういう措置をとったわけでございます。
  144. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ただいまのお答えの中に、本法案が警察関係のきわめて専門的な法案である。専門的な法案であるがゆえに、裏を返せば、議員立法などという形で粗雑に出すべきものではない。こういうような内容が含まれておったように私は思うのでありますが、これは憲法軽視もはなはだしい大臣の答弁ではなかろうかと思うのであります。なるほど憲法七十二条には、内閣は国会に議案を提出することができる、こう書いてあります。しかしこの議案というものが、法律案を含むか含まないかにおいては、今日といえども、なお憲法学者の間に疑問がある。私どもの解釈といたしましては、予算については七十三条の五号、八十五条あるいは八十六条によりまして——国庫債務負担行為等は八十五条でちゃんと出すことができるようになっている。あるいは決算については九十条でちゃんと規定されている。それから皇室関係財産授受に関する議決のごときは憲法八条でもってちゃんと規定されておる。条約の承認を求める議案については、御承知のよううに七十三条三号のただし書きで、これははっきりしている。こういうようにいたしまして考えて参りますときに、今政府等は、予算、法律案の提案権というものは、本筋は内閣にあるのだというような誤った考え方を持っておられるのじゃないか、こういうふうに思うのであります。そういう考え方をお持ちになって、そういう誤った考え方の上に立って責任感を感じて、このような警察専門の技術を要するようなものについては、これはあくまでも内閣がやらなければいけないのだ、こういうようにお考えになっているのじゃないか。今日議会全体の運営の中にもそういうものが出ておりますけれども、そういうふうに議員立法というものを軽く見ておられるというところに、今回こういうふうな軽挙盲動されたところの出し方になってきたのじゃないかと思うのでありますが、もっともっと憲法を研究していただいて、そうしてこういったことに厳正中立を保たなければならぬ。自分たち警察官行動するところの、その行動を律するところの法規というものを、自分たちで出してくるというようなことは、これはちょうど、ときどき文句を言われるが、議員のお手盛り法案であるとよく言われるようなものと同じようなものであって、軌を一にしておると私は思うのです。この点、大臣、少し議会軽視と認識の欠如の点が現われてきたのでありますが、いかがでありましょうか。
  145. 安井謙

    ○安井国務大臣 私の言葉が少々足りませんために誤解をいただき、御叱正をいただきましたことはまことに恐縮でございます。私は議員提案法律を大ざっぱなものであるとか、また大事な法案は内閣が出すものだというふうな片寄った考えは毛頭持っておりません。ただ、たまたまこの法案につきましては、今制度上も厳正中立な機構である国家公安委員会が種々検討もいたしております。専門的という言葉がつい誤解を招いたかと思いますが、非常に技術的に検討もいたしてきた法案でありますので、これは政府で出してしかるべきものであろう、こういうふうに判断をしたわけでございます。決して国会からの提出権を軽く見るものでもございませんし、同時に、内閣にもそういった法律の提案権はあってしかるべきものだというふうに考えております。
  146. 阪上安太郎

    ○阪上委員 少しくどくなりますが、この際だめ押しをしておきたいと思います。将来、こういった法案の提出については、議員立法で出す方がいいのか、内閣の手で出すのがいいのか、こういったことについての見解はどうでしょうか。
  147. 安井謙

    ○安井国務大臣 これはやはり一がいにきめられまいと思います。そのとき、そのときのケースによって、あるいはその成り立ちによって、政府で出す場合、あるいは議員提案でやっていただく場合、それぞれあろうかと思います。しかし、いずれにしましても、どららを従だとか、特に議員立法を軽視するというふうなつもりはありませんし、今後も議員立法によっていいものをいろいろ出していただくことにつきましては、われわれとしては大歓迎をいたしたい、こう考えております。
  148. 阪上安太郎

    ○阪上委員 警察庁長官に伺いますが、この問題とからんで、あなた方が自分でほんとうに出したいと思っておる法律、これは何も警察官のための利己主義的建前から言っておるのではない。そういう場合に、あなた方が議長立法でやりたいという場合に、与党であるところの自民党に話しかけて、その法案の提出を要請するということは、できることだと私は思うのですが、どうでしょうか。
  149. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいまお話しのような場合も、私はもちろん可能であるし、与党のみならず、野党の方にもお願いして、共同提案でお願いした方がさらによろしい、できるならばそうした方がいいというものも多々あろうかと思います。
  150. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで今回この一部改正につきまして、警察庁の方から何とか委員会ですか、自民党の暴力取締法等の委員会でありますか、それにあなたの方から話しかけられて立法の手続をとられたのかどうか、これをちょっと伺いたい。
  151. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 これはそもそもの起こりは、飛び出しナイフを禁止すべきでないかということがかなり各委員会等でも強くお話がございました。これは何もことしに入ってからとか、あるいは去年に入ってからということでなくて、前々からございました。ところが、その前回の改正の際に、政府の原案が修正されまして、五・五センチメートル以下のものは認めるということになったいきさつもありますので、直ちにまたその点について政府提案で出すことがいかがであろうかというような気持を私持っておった時期もございました。しかし、今回提案するに至りましたことは、治案対策特別委員会の方で、例の暴力犯罪防止要綱でありますか、これをお作りになったために、それに促されてわれわれが急速に立案して提出するようにしたということでなくて、先ほど大臣からお話がございましたように、そういう飛び出しナイフも含めまして、全体として現下の情勢に合うような犯罪防止の一方途といたしまして立法化すべきではないかという考え方が、公安委員会、警察庁の中に出て参りまして、たまたまそういう際に、自民党の方におかれましても、犯罪防止対策ということに非常な力を入れて、それの要綱をお作りになるということになったわけでございます。その際に、そういうものをお作りになるなら、この銃砲刀剣類等所持取締法の改正というようなこともぜひ一つうたっておいていただきたいということは、むしろこちらから申したようなわけでございまして、委員会との関係は、もちろんお互い協力するという態勢にはございましたけれども、どちらかと申せば、警察庁の方でその前から考えておったものに同調していただいたというのが真実だというふうに考えております。
  152. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今、前から考えておった、こう言われますが、その前というのは、かつて大騒ぎをいたしました警察官職務執行法の一部改正、そのときを含んで前ですか。
  153. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警職法の改正のときはもうだいぶ前になりますが、そのころから銃砲刀剣類等所持取締法の改正を考えておったわけではございません。最近、正確に覚えておりませんが、大体去年の秋ごろから改正をすべきではないかという気持になって検討を続けてきておったようなわけであります。
  154. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それで大臣にお伺いいたしますが、先ほど大臣が、この改正についてはかねがね公安委員会おい考えてもおり検討をいたしておった。こういうようにおっしゃっておるのでありますが、このことについて何回くらい公安委員会をお開きになったのでしょうか。
  155. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 去年の秋ごろからそういう話が出、検討をするようにお話のあったことは、先ほど大臣からもお話のあった通りでありますが、具体的に案として御検討を願ったのは、一月以降相当回数が多かったように思います。
  156. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私は、なぜこういうようなことを御質問申し上げるかといいますと、かつて警職法が出てきたときに、政府与党の中でもほとんど御存じがなく、ごく特定の人がきわめて秘密裏にああいう法案をでっち上げて、そうして突如としてこれを出してきた。公安委員会に聞いてみれば、公安委員あとで声明まで出して、あれはわれわれは警察の厳正中立の建前から関与していないというようなことを発表されておったように私は記憶しております。いずれにしても、そのことによって警職法に対する非常な疑惑というものがあの当時巻き起こったわけであります。それと同じように、今回のこの法案にいたしましても何かはっきりしない。警察にほんとうに厳正中立の心がまえがあるならば、与党に相談されることも必要でありましょうが、われわれにだって、先ほど言ったように、もともと議員立法的な性格を持った方がいいのだという考え方にあなた方がなっておったならば、社会党さんの方もこれは一体どうでしょうかというぐらいの相談があってこそ、ほんとうに話し合いのりっぱな法律が出てくると私は思うのであります。ことに地方行政のごときに至りましては、いまだかつてわれわれは与野党対立して激突するような場面を作ろうとも思わないし、作りもしなかったのでありまして、もっともっと話し合いの場所があったのじゃないか、こういうように思うわけであります。今回のこの法案につきまして、私は他の方面からまたいろいろなことを聞いております。あまりそういった点に関するデマ等は信じたくありませんので申し上げませんけれども、何かこそこそとやっておる。どうも警察の方が挙動不審だというような感じですが、私はなぜこんなばかげた法案を警察が買って出て出したのだろうということを実は最初から心配しておったわけであります。今、公安委員会がこの問題と取り組んできた、こういうことでありますが、具体的に公安委員会としての本改正案に対する意見というものはあったのかどうか、これを一つ伺いたい。あったらどういう御意見があったのか、まことにけっこうなことでございますということで終わったのかどうか。
  157. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 御承知のように公安委員会は合議制でございまして、だれがどういう意見を述べ、それについて一々決をとっていくという形でございません。私どもがいろいろ検討したことを申し上げ、それについていろいろ意見を承るということがむしろ主になり、また公安委員の方から、こういう点はこういうふうに考えたらどうかというような、われわれ考えないことも発案されるという問題もございますが、そういうふうな会議の進め方でやっておるわけでございます。従いまして、去年の秋ごろから話が出て、一月以降何回にもわたって案もいろいろと変えて参ったわけでございますので、その間に具体的にわれわれと非常に意見が違って変えたという記憶は私ないのでございます。そういう意味おいて、もっと強くなければいかぬじゃないかというような御意見もあったかと記憶いたしますけれども、大体われわれも皆さんの御意向をそんたくしつつ立案し、皆さんもわれわれから事情をお聞きになってこれを御了承になるという雰囲気でございますので、非常に意見が食い違ったり、あるいはわれわれ考えていなかった意見が突如として出てきたというように、きわだった意見としては私記憶に残っておりませんが、そんな状況で進めて参ったわけで、十分御納得いくような審議は尽くしておるわけでございます。  また、ちょっと前のことでございますが、警職法の場合におきましても、実は私どもとしては一年もかかって検討をしてきたわけでございます。なるほど国会方面に対して案を事前に早くからお示しするようなことはいたさなかった点はございますけれども、公安委員会につきまして数回御審議を願っておるわけでありまして、先ほどお話しのような、公安委員会が政治的中立の立場からこの問題に関与しなかった、そんなことを声明されたことはないわけでございまして、あの警職法の改正について今私ここで議論しようと思いませんが、これも十分に公安委員会の御了承を得、御支持を得てできたものでございますので、その点御了承願いたいと思います。
  158. 阪上安太郎

    ○阪上委員 警職法の場合に、公安委員の出席が悪くてほとんど会合を持っておられなかったという例はある。そのことから私はそういう考え違いをして申し上げたのではないかと思います。あるいは誤っておったかもしれません。今の公安委員の構成メンバー、この人たち考え方全部が全部じゃありませんけれども、先ほど御説明になった本改正案を出す動機となった一つ理由は嶋中事件ですが、あの嶋中事件に対するものの考え方というものが、公案委員の中には、ああいうことをやってもこれは仕方がないのだということを新聞で堂々と発表しておられるような公安委員がおるわけであります。そうして集団暴力を一方でやっているのだから、一方においてああいうテロ行為があってもしようがないのだということを平気で言った公安委員がおる。私どもは、あの場合ぜひそういう公安委員国会に来てもらって、ほんとうにあの人たちの発言の真意を問いただしたいということを実は前々から考えておったわけでありますが、いろいろな関係からこれが今日までできておりません。びっくりせぬでもいい、私は今ここへ公安委員を一人々々呼び出そうというのではありませんから……。そういう公安委員が寄ってこの法案を審議して、そうしてこういう形でこれが出てきておるということなのであります。私は公安委員会のものの考え方というものに、本案提出理由一つである嶋中事件における公安委員の態度から考えて、私は非常に不安を持つわけであります。従いまして、もう少し突き進んで公安委員の中において、この改正法案に取り組んでこういう問題点が出てきたというようなことがありましたならば、ぜひこの際伺っておきたいと思うのであります。先ほどから警察庁長官に答弁を求めていないのに、せっかくここに国家公安委員長がおられるのに知らぬ顔をしておられるので、公安委員長からこの点を伺っておきたいと思います。
  159. 安井謙

    ○安井国務大臣 国家公安委員会としましても、今長官から実態について御説明を申し上げました通り、何度かにわたりましてこの法案についての御議論をいただいたわけであります。結論といたしましては、強い弱いといったような個々の御感想はございましたが、この時勢においてはこれは妥当なものであろうという結論を得て、この法案を提出したわけであります。
  160. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今おっしゃいました強い弱いということ、その強い意見と弱い意見と二つに分けて一つお教え願いたいと思います。
  161. 安井謙

    ○安井国務大臣 こういった種類の犯罪防止といいますか、行政措置をいたします場合にも、単に任意だけで目的が達せられるであろうか、その点だけでは目的達成に少し不十分じゃなかろうかというような、参考的な御意見はあったわけであります。しかし、どうしてもそうだからこれを強制的なものにしろとか、しなければだめだというふうな御意見じゃないのであります。いろいろと縦横から御検討願っておる際、個々の御意見としてそういうものもあった。一方からいえば、こういうものを制定することによってまた警察官おいこらを復活さすようでもいかぬが、その点は大丈夫であろうかという点もあったわけであります。そういう点を十分御検討願いました結果、この法案は妥当であろうという結論に相なったわけでございます。
  162. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこまで伺っておけばけっこうでございます。  それでは今度は改正の理由につきまして、今から若干お伺いしたいと思います。この理由を眺めてみますと、とにかく最近銃砲刀剣類または危険な刃物を用いての暴力犯罪を犯す傾向が高まってきておる、そして社会不安が増大しておる。こういうことが大きな原因であって、それを何とか除去していくという考え方であろうと思います。そこで、一体危険な刃物というが、危険でない刃物というのはあるのですか。この法律によりますと、五・五センチ以上の飛び出しナイフは危険だ——直線であるとかないとか、わかったようなわからぬようなことが書いてありますけれども、そういったものが危険であり、六センチ以上のあいくちに似たようなものは危険だ、こういうことになっておるのでありますが、それ以下の刃物でもって殺人傷害等の犯罪を犯した例はないのですか。そういうことも含めて、これは一体警職法でいうところの凶器に類するのかしないのか、こういった点も明らかにしておく必要があると思います。
  163. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 刃物というのは、結局用法によりましては人を殺傷——少なくとも傷つけることができるようなものでなければ刃物にならぬという意味おいて、用法によっては危険性ありということは刃物一般に通ずる性質であろうと思うのでございます。ただ刃物というものはそれぞれ刃物の用途があって、その用途に従って使うことは、また人間の生活にきわめて必要なものが多いわけでございます。従ってそういう効用の面を生かしつつ、悪用されないようにするということでなければならないということが、この銃砲刀剣類等所持取締法を流れる精神でございまして、今回の改正もそういう根本の考え方に立って、現在の情勢を勘案しつつ改正案というものを考えて参ったわけでございます。もちろん刃物である以上凶器というものに該当するものが大部分であろうと思います。
  164. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この法律で所持を禁止されている、あるいは許可がなければ持てないという刃物は、これは凶器ですか。
  165. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 凶器というのは、その使い方によって凶器になるわけでありまして、魚を料理している刃物それ自体、料理している場合にこれを凶器だということにはならないだろうと思います。
  166. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そうしますと、そういった禁じられた刃物を持つということ自体は直ちに凶器とは考えられない、問題はそれを使う使い方によるのだ、そういうことだと思うのですが、そういうふうに解釈してよろしいのですか。
  167. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 そういう解釈でよかろうかと思います。
  168. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そうしますと、五・五センチも六センチもあったものじゃない、すべてこれは使い方によって凶器になる、こういうことに私はなろうかと思うのです。私は今逐条の審議をしているのではないのでありますが、もしそういう理屈であるならば、刃物は使い方によってすべてみな危険だということになってくるのじゃないかと思うのでありまして、従って、先ほど公安委員会の中に強い意見もあり弱い意見もあったということは、私にほんとうじゃなかろうか、この程度のことをやって、はたして取り締まりが十二分にできるだろうかという問題が出てきたのじゃなかろうかと私は思うのです。理論を進めて言うならば、関の孫六とかいいますが、飛び出しナイフは関で作られておるそうでありますし、あるいは肥後守は九州が本格らしいのでありますが、どうも最近は兵庫県で作っておるらしいのであります。ああいうものによってもずいぶん最近傷害を犯している者も出てきておるということになっておりまして、ほんとうに思い切った取り締まりをやろうというなら、刃物の製造と販売を禁止しなければでまないという結論になってくると思うのであります。  そこで、それはまた逐条でいずれお伺いしますが、そういう観点に立つということになりますと、刃物があるから犯罪が起こるのだということになっていく可能性も私はなきにしもあらずだと思うのでありますが、一体どうなんですか。最近あなたの方から出されているこの資料によりますと、銃砲刀剣類等の違反を犯している件数はふえてきておりますが、この件数というものが、禁じられた刃物を不法に所持しておったという件数であるのか、その刃物によって暴行傷害その他の事件を起こした件数であるのか、この点はどうなんでしょう。ふえておるとおっしゃるから一ぺん聞いてみたい。
  169. 木村行藏

    ○木村(行)政府委員 お手元に白表紙の資料で、国家公案委員会の名前で「銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案についての資料」というのを差し上げておりますが、その中で、三十ページ以下第一表、第二表、第三表というふうに逐次表が載っております。この中で、第一表は所持自体が違法であって、いわゆるこの取締法の違反として検挙した数字でありまして、これによりますと、三十一年から三十五年まで五カ年間の統計が出ておりますが、銃砲も入れまして三十五年が一万九千八百七十件ということになっておりまして、三十一年に比較して指数で一五八、約六〇%ふえておるわけであります。これは逐年ふえております。第二表はその細分類であります。第三表、これは三十二ページでございますが、ただいま阪上委員お話しの中にありました刃物あるいはピストル、銃砲などを用いて殺人、強盗・強姦、傷害などの凶悪犯罪を犯したその発生件数であります。これは三十一年から三十四年までの統計でありまして、これも逐次ふえているということになっております。第四表は、三十五年の内容をさらに詳細にわたって細分類した状況でありまして、これは検挙の状況であります。これも非常にふえている、こういう状況であります。
  170. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そういった刃物を所持して、それを使用することによるところの犯罪がふえているという事実は、この統計では明らかに出ております。しかし、そこで問題になりますのは、かといって刃物全体の製造を禁止するわけにはいかないし、販売を禁止するわけにいかない、こういうことでありましょう。使用する場合におきましても、そういった刃物は本人が所持していなくても、そこらに至るところにころがっておる。家庭の中にもどこにもころがって、おる、こういう実態もあります。そこで、刃物の面から犯罪を取り締まっていくという考え方も一つ考え方であろうけれども、公安委員会の中で問題になったように、そういったものから取り締まっても取り締まりができないという現状が考えられるということではなかろうかと思うのでありますが、この理由をながめてみますると、社会不安が増大する、危険な刃物を持っての暴力犯罪を犯す傾向が高まったので、社会不安が増大した。こういう導き方になっておりますが、これは逆の考え方でしかるべきじゃなかろうかと思うのであります。社会不安が増大しておるので犯罪がふえておるという考え方の方が、私は万国共通じゃなかろうかと思うのです。ところが、警察はどうしてこういったふうに、何か危険な刃物を用いての暴力犯罪を犯す傾向が高まって、そのためには社会不安が起こっている、こういうようなお考え方をなぜお持ちになるか。私は、この点で警察側はまだまだ国民に愛されるところの警察に伸びていく素養を持っておりながら、こういう考え方を持っておられるから、何か警察というやつはやかましいやつだというような考え方に導かれてしまって、全く必要悪のような状態をいつまでも続けていかなければならぬ、こういうことになるんじゃなかろうかと思うのであります。この理由をながめてみましても、そういうことが読みとれるのであります。どうでしょうか、そんな考え方でほんとうにこれから警察行政をおやりになるんですか。
  171. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私どもも、いわゆる刃物による犯罪がふえるから、そのために社会不安が起こるんだというふうな一本調子なものの考え方はいたしておりません。むしろ大きく申せば、社会のいろいろな病巣、病源というものによって犯罪が醸成されてくるということが、むしろ大きい原因としてはあるであろうと思います。そういうことで各種施策や何かについて、貧困をなくすとか、不道徳をなくすというような方向がもちろん考えられるべきであるけれども、警察の立場といたしまして、現実に刃物による犯罪というものがふえている。これを長い目で見た一つの施策によって非常に緩慢におさめていくということだけで済むのか、あるいは最近の傾向として、刃物を持つ犯罪が多いということならば、やはりそれに対する措置としての警察のあり方というものもあっていいのではないか。警察がそれを取り締まるということだけで抜本的なものが解決するなどとは毛頭考えておりませんが、恒久的な、非常に大所高所からの国の施策、社会的な風潮というようなものを期待しつつ、なおかつ目の前に起こりつつある悪い現象というものをできるだけ少なくしていくための警察措置ということも、やはりあわせて考えていくべきではないか、そういう意味おいて私どもはこの改正を考えたわけでございまして、これが最上の施策であるというようなことは毛頭考えておりません。
  172. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この前の例の酔っぱらい法案の審議の際にも私質問をいたしたのでありますが、こういった警察関係の一連の法律というものは、どうも旧憲法の治安維持、公共の安全と治安の維持、そういう考え方にウェートが置かれて、そうして新憲法が持っておるところの公共の福祉、そういった一歩前進した前向きのものの考え方というものにどうも欠けているように思うのであります。しかしながら、今長官から伺いますると、刃物等によるところの犯罪が多いので社会不安を起こしておるという、それも原因であるけれども、むしろ社会不安の方が逆に犯罪を増高せしめる傾向にあるということの認識というものもはっきりされたわけであります。それならば、私はそういった社会福祉の方向へ一歩前進するために最低限治安の維持というものは行なわれなければならぬということは、もちろんこれはもう論議する必要もないことだと思うのです。この法案は、先ほども言うたように、内容を見ると、全く治安立法的なものであって、そうした福祉行政的な面というものがちっとも盛られていないのであります。警察取締法の基本法であるところの警職法においては、私はやむを得ないと思います。しかし、こういう警察官の職務執行をさらに範囲を限定して、しかも明白にしていこうというために作られているこういった法案につきまして、もう少し福祉立法的なものの考え方で立法をやっていくという考え方を持つ必要があるのではなかろうか、私はこういうふうに思うのであります。この点どうでありましょうか。
  173. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私も、根本的には阪上委員お話に同感でございます。ただ先ほども申し上げましたように、今度の改正というものは、現行の銃砲刀剣類等所持取締法におきましては、携帯禁止等の範囲についても非常にあいまいさがあるという問題、それから所持禁止についても、これはむしろ国会などにおいてずいぶん御意見のあった点でありますが、飛び出しナイフというようなものについては全面禁止すべきじゃないかというようなことについて、所持禁止の範囲を少し広げる。こういうことは、先ほども申し上げましたように、刃物の効用という問題を尊重しつつ、効用があまりなくて害が多いというようなものは、これを所持禁止なりあるいは携帯禁止、携帯を制限するという方向に持っていこうということでございまして、そういう刃物の効用と害悪と、効用を生かしつつ害悪を除くということに相当苦心したつもりでございまして、阪上さんのお話のような福祉立法というようなことまでは参らぬと思いますけれども、福祉立法的考え方というものも入れて、われわれはできるだけ必要最小限度の制限を加えつつ、その他の面におきましては、社会教育の面であるとか、一般の風潮の面であるとか、その他各般の施策をこうした犯罪の防止、公衆の福利ということに向けるようにして、全体として犯罪を防止する方向に進めつつ、さしあたって激増しつつあるものについてこれを取り締まる若干の手を打って参ることが焦眉の急ではなかろうかという考え方に立って立案をいたしたつもりでございます。
  174. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは具体的に伺っていきますが、今禁止されておる五・五センチ以上の飛び出しナイフですか、ああいうふうなものは功罪を拾っていくと、社会になくちゃならぬものなんですか。
  175. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 飛び出しナイフにつきましては、社会的効用というものはあまりない。ぴんと出るから非常に便利だということにおいて文明の利器だという主張をされる方もありますけれども、私どもとしては、ほとんど社会的効用というものはないというふうに考えておりまするし、登山家とかあるいは電工夫であるとか、そういうふうな比較的片手でいろいろな仕事をすることが必要だと思われるような向き向きにもいろいろ照会をいたしましたけれども、飛び出しナイフをそういうものに使っておるという例はあまりないようでございます。従いまして、飛び出しナイフは原則として全面禁止にしようというのが今回の改正の一つのねらいでございます。
  176. 阪上安太郎

    ○阪上委員 だから私は申し上げるのですが、何もかも控え目にやれと私は言うのじゃない。ほんとうに効果のある方向というものを考えなくちゃいけないということです。それは福祉立法的なものの考え方に立っていうならば、それ自体福祉立法でないかもしれませんけれども、とにかく社会的に効用のないものの製造販売を行なわすこと自体がいけないのじゃないですか。本法律を見ましても、法によってある一定の規制を加えて製造、販売等についても規制をしておる条項があると思います。なぜそういう条項をあなた方がさわられないかということを私は言うのであります。そういうものをさわらずに、〇・五センチだけ制限を強化する。この問大阪で中学生が人殺しをやっておる。あれは刃渡り五センチの刃物です。そういうところに、先ほどあなたはいろいろおっしゃるけれども、口と心と違ったようなものの考え方が出てきているのじゃないか、こういうことを言うのです。なぜそれならば、そんなに社会的に効用のないものを、ことに犯罪の大きな凶器となるようなものを販売させるか、製造させるのか。製造さえ禁止すれば、なるほど最近の子供は場合によっては自分で武器を作るかもしれませんが、そういうこと自体も取り締まりができるのではないかと私は思うのです。そういう方向へ頭を向けないで、何かこういうきわめてオーソドックスな治安維持みたいなものの考え方ばかりに終始した法の改正をなぜなさるかということを私は聞いておるのです。これはどうなんですか。
  177. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ちょっと私御趣旨を取り違えてお答えしたかもしれませんが、飛び出しナイフを原則として今度禁止するということを先ほど申しましたが、さらに進んで、なぜこれの製造、販売まで禁止しないかという問題だと思いますが、これは、実は相当輸出に向けられておるわけであります。それで率直に申しまして、関市等におきましては相当の産業になっておるということでございまして、外国のことはかまわぬという趣旨ではございませんけれども、外国では、外国でそれぞれ取り締まる必要があれば取り締まるし、喜んで買っていくというものまでとめる必要はない。たとえば拳銃についても、日本では全面的な所持禁止をしておりますけれども、諸外国において拳銃を持つことを認めている国も多いわけでございまするから、そういう輸出をするというようなものについては、これは何も警察の立場から禁止していく必要はなかろう、所持禁止にすれば自然国内において売られるということもなくなってくるという間接的な考え方をもちまして、警察の立場としては製造、販売ということについての規制をせずに、国内における所持の禁止ということで事足りるという考え方に立ったわけであります。
  178. 阪上安太郎

    ○阪上委員 あるところでは、警察は、はれものがあるとまずうみを出して、それからはれものができてくる原因を直していこうという考え方が出ているわけですけれども、今おっしゃったように、所持を禁止することによって自然製造が禁止されていくだろうというようななまぬるいものもまた出てくるわけであります。聞くところによると、ある党の政調関係の人で関市出身の人がおられて、警察は、この製造、販売を禁止したいという意向を持っておったけれども、なかなか猛烈な反抗にあってどうにも手がつけられなかったということです。そういう話を巷間承っておるのでありますが、真相はどうなんですか。
  179. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察としては、消極的かもしれませんが、初めから製造、販売を禁止するという考えは持っておりませんでした。
  180. 阪上安太郎

    ○阪上委員 先ほどもあなた方は、経済的に考えられて、輸出振興の建前から禁止すべきでないという一つ理由をお示しになったわけであります。しかし、輸出入についても、これは禁止することはできるわけです。たしかそんな条項があったと思う。私はその条項は見ておりませんけれども、製造、販売、輸出、こういうことにつきましては禁止することはできると思うのであります。現に毒物、劇薬等の取り締まり等につきましても、製造、販売、輸出入の関係というものを規制をしているという事例もございます。できないことはないと私は思うのであります。その場合、輸出振興の建前から外国輸出だけを認めてもいいのではないかという考え方も出てくるかと思うのでありますが、そういった点で警察がもう少し勇敢に立ち回ったって、日本国民はだれもが一ことに青少年犯罪等について、刃物は切り離すことができないような状態に今置かれているので、世の人々はおそらく、警察はよくやったといって謳歌するのではないかと私は思うのであります。そういう勇気はお持ちにならないですか。
  181. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 別に勇気を持つ持たぬのは問題でなしに、当初から製造、販売というところまで考えずに、においては所持禁止ということで事足りるし、事足りる程度の措置をすることで警察はよろしいのではないかという気持でございまして、十分これで目的を達し得るのではないかというふうに考えているわけであります。
  182. 阪上安太郎

    ○阪上委員 またいずれ機会を見てこの問題は研究してみたいと思います。  次に私はお伺いいたしたいのだが、この理由の中に、最近における青少年犯罪というのが非常に幅広く理由として持たれている。もっともだと思いますが、ところが、こういった少年犯罪関係いたしまして、前々から本委員会でも青少年対策が問題になっておりますし、しかも今回再び必要性を認めまして、本委員会の意思でもって小委員会が作られておって、青少年対策が今進められつつある段階にございます。この際、先ほど言いましたような福祉的見地に立って、青少年犯罪防止、青少年保護という見地に立って、青少年対策というものをもう少し率直果敢に進めないと、こういったものができましても、下平をすると、いたずらに憲法違反の職権乱用的な、人権侵害的なものが、背中合わせですれすれで出てくるというような危険が出てくる。そういう危険な行き方をしなくても、そういう青少年対策をまじめに果敢に急速に推し進めることによって、こういった問題が解決されていくのじゃなかろうかと思うのであります。ところが、わが国の青少年対策をながめてみますると、全く支離滅裂でありまして、どこが責任を持って統一して青少年対策を推し進めているか、その所在がわからないという状態にあります。私は、こういう法の改正をやるよりも、そちらの方に重点を注いでこそ、ことに警察の困っておる、なかなか処理をすることができないような青少年問題を解決することができるのじゃないか、こういうように思うのであります。この問題についてはかつて私もこの席上で柏村長官の意見を徴したのでありまするが、こういう法案が出てくることになり、ことにそのねらいが青少年対策がおもであるということになってくると、もう一ぺんこの問題をむし返さざるを得ないのであります。そこで、これは公安委員長にお伺いいたします。公安委員長は青少年犯罪防止対策について卓越した見解をお持ちだろうと思うのでありますが、お聞かせ願いたい、こういうように思うのであります。
  183. 安井謙

    ○安井国務大臣 卓越した見解と言われますと、どうもはなはだ恐縮でございますが、今まで御指摘通り私は、この犯罪と社会不安と申しますか、特にその不安の中にある青少年の問題に対しましては、ほんとうに関心を持って十分な対策が講じられなければならぬと思っております。政府におきましても青少年問題協議会というものを置いておりまして、各方面からやっております。また教育方面から申しますと、これは政府があまりにあちらこちらに一方的に指示するというふうなものじゃなく、むしろ、それぞれの地方団体を中心に教育もやられるべきであろうと思います。そういうものを中心にして教育の問題、一般の青少年の問題あるいは犯罪をかもす温床の問題といったようなものを総合的に取り上げなければならぬと思います。それをある程度考慮して今立っておる犯罪防止対策要綱もその目的の一つであろうかと思っております。さらに今の青少年問題協議会をうんと活用いたしまして、十分な成果を上げたいと考えておる次第でございます。
  184. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今の大田のいろいろな青少年対策に対する考え方、そういうものが暴力犯罪防止対策要綱にある、こういうようにおっしゃっておられるわけです。われわれ遺憾ながら、その暴力犯罪防止対策要綱というものをまだ見たことがないのであります。これはわれわれちょうだいすることができぬのでありますか。これは警察庁長官に、そのくらいは長官に聞いておきたいと思います。
  185. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 暴力対策要綱はもちろんこれは差し上げられる、もう差し上げてあるのじゃないかと思っておったくらいでありまして、さっそくこれは準備をいたしまして……。
  186. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この暴力犯罪防止要綱というやつはぜひいただきたい。私はこの提案理由の説明を見まして、その中にも暴力犯罪防止対策要綱云々ということが書いてあるので、これはいただいたのかどうか探したのですが、見当たらなかった。それで、これは何か特殊な極秘扱いしなければならぬものかという疑惑まで持ったのですが、今出してやろうということで安心しております。さっそくこれは出していただきたいと思います。  そこで青少年対策でありますけれども、一つこの際自治省大臣としてお答え願いたいと思いますが、その要綱を見ればわかることだろうと思いますが、おそらく私は要綱の中にもろくなことが書いてないのじゃないかと思うのです。また観念的な抽象的なことしか羅列してないのじゃなかろうかと思います。中身を見ないで申し上げることは失礼にあたりますので、これ以上は言いませんけれども、そこで一つ自治大臣として、青少年対策として現在やらなければならぬ問題は何かということをつかんでおられたならば、要綱の中からでもけっこうですから、一つお答え願いたい。
  187. 安井謙

    ○安井国務大臣 暴力犯罪防止対策要綱は至急お手元へお届けしてごらんをいただきたいと存じますが、なかなかいいことも書いてあるのであります。ただ、それじゃ今の社会の中でどれだけ実効が上がったかということになりますと、御批判の余地も多分にあることを私どもも認めざるを得ない。青少年に対しましては、やはり環境を浄化して将来の希望を持たせる、あるいは社会人としての修養と申しますか意識を強化していくというふうな方向から漸次向上をはかっていきたいと思っております。
  188. 阪上安太郎

    ○阪上委員 先ほど御答弁の中に中央青少年問題協議会というものがあったとおっしゃったが、あんなものはだめですよ。ああいうもので一切青少年対策というものがやられておってはいけません。あの人たちも一生懸命やっております。私もメンバーの一人ですが……。しかし何の権限もなく、ただもうほんとうに青少年善導のためのPRをやるにすぎないような団体でありまして、それ以上の域を出ないのです。しかし、今日そのくらいのことをやってみたとしても、それでは根本的に青少年対策というものは進められない。ほんとうに青少年対策を真剣に進めていくには、やはり統一した責任あるところの行政機関というものが私は必要じゃなかろうかと思う。しかもその中で大事なことは、今環境の整備とおっしゃったそのことなんです。環境の整備のために、それでは公安委員会としてあるいは警察としてどんな青少年のための施策を今おやりになりましたか、一ぺん伺っておきたい。
  189. 安井謙

    ○安井国務大臣 警察の方から申しますれば、今の麻薬を取り締まるとか、そういったような犯罪の温床になるべきものを極力取り締まりを進めておるわけでございますが、これもなかなか跡を断たない。さらに努力を要するということも事実であります。さらに環境の整備について具体的な問題といたしましては、たとえば町の中でいわゆる暗がりをなくして犯罪をしにくいようにしむけるというようなことから街灯等の増設をする。またそれについては、必要に応じては政府も相当な援助をするが、さしあたりまして大都市においてそれぞれ自発的に相当な金額を投じて街路を明るくするということをことしから実施するように、これはそれぞれの地方団体、特に大都市を中心に打ち合わせもいたしております。  そこで今お話しのように、もっと強力な青少年対策の行政機関を持たなければならぬということは、私どもかねがねそう考えておるわけであります。しかし、環境の浄化、青少年の補導というものは非常に多岐面にわたりますのと、それからあまりにもこれが中央で画一的に指導をしていく、あるいは強制指導をするというふうになりましても、また逆効果のある場合があろうと思いまして、そこらのかね合いがなかなかむずかしいものでございますから、私どもそういう機関の必要性は十分感じながらも、目下この点についてはどういう機構を作るかを検討中であります。
  190. 阪上安太郎

    ○阪上委員 青少年対策につきましては、ここ数年来大きな問題になっておる。総理の毎年々々の施政方針演説におきましても必ず青少年対策は取り上げられておる。ところが、その予算措置などをながめてみたら全く九牛の一毛にすぎないようなわずかな予算措置しかしていません。おそらく各地方団体におきましても、なるほどある程度進んでおります。地方へ行けば地方団体の方が力を入れている。けれども、その予算措置等を考えてもわずかのものしかありません。まして一番警察の取り締まりの苦手である青少年、これに対しての警察予算などというものは、私はわずかなものしかないんじゃないかと思うのであります。そんなものを盛っておっていつまでたっても検討中だ検討中だ、こういうふうにおっしゃる。それがいけないんじゃないでしょうか。だから、こういうふうな役にも立たぬような法案を出してこなければならぬようになる。もう少し真剣に青少年問題と取り組む必要があるのじゃないかと思います。諸外国の例を見ましても、これは出さなければおさまらないから言うのですが、西ドイツあたりにおいては、そんな間抜けた青少年対策なんかやっていないのであります。環境といいましても、ただ単に街灯を整備いたしまして町を明るくする、そのことも大事であります。しかし町を明るくすることは必ずしも青少年だけの問題ではないのでありまして、ほんとうに青少年の環境をよくしていこうというためには、青少年と密接不可分の関係にあるものを考えてやらなければいけない、こういうことじゃなかろうかと思うのです。そのためには子供がほしがっているものを与えてやることがまず第一番に大事なのであります。ほしがっているものを与えてやらない、身近に手に入らない、そこでボタンを押したら飛び出すような飛び出しナイフというようなものについつい興味を引かれていく、こういうことになってそれが犯罪のもとになっていくのじゃないかと思います。映画などにいたしましても、ここにも中央青少年問題協議会から出ているマスコミの青少年に与える影響などという本は出ております。取り調べはできておるのでありますが、これは出しつばなしでありまして、これに対して何らの手も打てない、こういうふうな状態であります。いい映画を与えるというようなたった一つの着意ですら、今日わが国においては、何ら国の施策として大きくこれを取り上げて少年に満足感を与えていくというようなことになっておりません。スポーツ一つにいたしましても、青少年は非常に好きであります。こういうものについても、これを十二分に国の力で、公の力で、地方公共団体の力で与えていくというような形にはなっていないのです。映画、演劇、音楽、ダンス、スポーツ、手芸、読書、こういった青少年が最も好むものをふんだんに、常にいかなる場所ででも与えてやるというような施設は、日本国中探してもどこにもない。こういう状態のままに青少年をちまたにほうり出しておる。そうして百貨店の窓を見たら、ほしくてしょうがないようなものがずらりと並んでおる。貧しい子供は指をくわえてこれを黙って見ておる。そしてごく安い飛び出しナイフというようなものに飛びついていくというようなことでありまして、ほんとうに青少年に対するところのもっと真剣な対策を推し進めない限りは、この法案もある程度役に立つかもしれませんけれども、とてもこのようなものでは解決はできません。警察官が朝から晩まで刃物を追いかけていって刃物をあげていかなければならぬということになります。今全国の警察官が何名おるか、どうしてこんなもので徹底的に取り締まりできるでありましょう。そういうことを考えたときに、もっと福祉立法的なものの考え方に立脚した青少年対策というものを推し進めないと、そういうことをいつまでも繰り返して、あとからあとから追っかけ回しているようなことをやっておったのでは、私は、もっともっとこんな法律を強化して全く人権侵害の領域にまで入らなければならぬようになってしまうのじゃないかと思うのであります。  そこでこの際国家公安委員長としてでもけっこうでありますし、自治省大臣としてでもけっこうでありますが、もうぼつぼつこの際踏み切ってもいいと思う。ほかの各省ではごたごた言っておってようやらないのであります。しかもこういった青少年対策というものは地方自治体と密接な関係がありますから、どうです、自治省において思い切った手を打つ考え方はありませんか。私はこんな法案を審議するのは情けないと思っている。こんなものを審議しなくても、今言ったような方向への施策というものをどんどん進めていくならば、必ず私は所期の目的は達成できる、かように考えております。もっと極端に言いますと、そういったことをやるためには金が要る。青少年対策のために、青少年対策を公共聖業と認めて、そして思い切った財源付与をやっていくという考え方をはっきりお持ちかどうか、警察においても青少年対策費を大幅に増額する考え方があるかどうか、こういった点について一つお伺いしたいと思います。
  191. 安井謙

    ○安井国務大臣 今いろいろ御指摘通り、青少年問題は非常に多角的な面から扱っていかなきゃならぬと思います。これが一自治大臣あるいは国家公安委員長立場ですべてが解決するものとは考えておりませんが、しかし同時に、自治省なりあるいは国家公安委員会といったようなものが相当の部面にこれに関心を持って、また対策を講じなければならぬという御説に対しましては、私ども全面的に賛成でございます。また、その御鞭撻に対しましても今後十分おこたえできるような対策も、今までも考えてはおりましたが、なかなかその結論が出ておりませんが、早急に対策を樹立していきたいと考えておる次第でございます。同時に、そういう方面は全面的に賛成でございますが、それだからといって、この法律は要らないというわけにもいくまいと思います。これはこれで当面の一つ犯罪防止対策という意味で御審議を願い、御賛同をいただきたいものだと思っております。
  192. 阪上安太郎

    ○阪上委員 えらい慎重な御答弁をいただいておるのでありますが、自治省大臣だけでは何とも財政措その他についてお答えできないということであります。これは一つ、この法案審議と関係いたしまして連合審査でもしていただいて、この問題は大いに今後追及いたしたい、かように思うわけであります。
  193. 太田一夫

    ○太田委員 関連。
  194. 濱田幸雄

    濱田委員長 ちょっと申しますが、松井君も前の質疑がまだ留保せられたのがありますから、その時間のこともお考えの上で関連質問をお願いいたします。
  195. 太田一夫

    ○太田委員 関連ですから長いことお尋ねをしようとは思いませんが、ただいまの件について公安委員長としての安井自治相の見解をお尋ねしたいのですが、今の、それはそれとしてこれはこれで必要だとおっしゃったわけですね。銃砲刀剣の所持を取り締まる法律は必要だ、それはそれなんだが、それはそれとするそれの方は完成しておるのですか。これはこれで必要だ、これはいいでしょう。問題として目の前で今審議している。それはそれとしてのそれの方は今完備しておりますか。
  196. 安井謙

    ○安井国務大臣 どうも私の言葉の使い方がときどき不適当であるといいますか、不十分なことがありましておしかりを受けるようであります。それは恐縮でありますが、私はやはり両方の面から考えていかなければなるまいと思います。従いまして、さいぜんからいろいろお話のあります青少年対策というものにつきましても、政府は決してこれをおろそかにしておるものではありません。いろいろな方面からやっていきます。しかしこれは文部省なり厚生省とか、そういった各省の関係も十分あるわけであります。それから警察自体としてやる青少年の補導あるいは犯罪の防止といったような問題も、それぞれの分野で今までもやってはおるつもりでございます。しかしこれで十分である、あるいはそのためにこちらの法律案さえ通せばこれで十分であるというふうにはわれわれは考えていない。さらにそういった基本的な青少年対策につきましても、今後十分に施策を進めていきたいと思っております。
  197. 太田一夫

    ○太田委員 決意のほどを伺ったわけですが、あわせて柏村警察庁長官お尋ねしますが、警察法の元来の建前からいいましても、予防警察というのは重大な使命を持っておる。それで特に最近は青少年の非行事件が多いのですから、この青少年非行をいかに防止するか、善導するかというのが大きな課題になるわけです。そこで刃物を持ってはいけない、あるいは鉄砲を持ってはいけない、刀を持ってはいけないというような殺傷道具を中心にしたもの以外、昔から何も人を殺すには刃物は要らないということがあるんです。刃物ばかりが殺人の用具ではありません。そこで青少年を犯罪にかり立てておる要素というものは、実は非常に文化の頽廃に基因したものが多い。その頽廃しておる文化をいかに正しい姿に引き戻し、これをほんとうの正しい方向に発展せしめるかということを、どこかがしつかり本腰を入れてやらなければ、日本の国の犯罪というものはあとを追ってばっこするばかりで、少しも絶滅できないと私は思うのです。その点について、それはそれの方なんですが、警察庁長官として何か覚悟とか御腹案でもお持ちでしょうか。いかがですか。
  198. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいまのお尋ねは阪上委員の御質問の従来のお話の線と御趣旨同じだと思うのでありまして、確かに警察のかくすべからずというような警察だけの予防措置ということで十分でないのみならず、それは本筋のものとは私も考えておりません。青少年対策としては、ただいまお話しの健全な文化、青年がはつらつとして生活をしていくような環境を作っていくということがもとでありまして、そういう施策を進めつつ、それでもはみ出してくる悪というものを何とか予防し、最悪の場合はこれを取り締まっていくということが、警察に課せられた仕事でありますので、私どもが文化の面でかりにできることがあるとすれば、今十ばかりの府県でやっておりますような、不良な映画、興行というようなものについて青少年にこれを見せないというような問題と取り組んでいる。これは府県が府県条例できめまして青少年に対してそうした措置をとっているという問題がございますが、警察は元来せいぜいできてその程度のことで、消極的な行政でございます。しかしながら、私どもの願いとするところは、ただいま太田さんまた阪上さんのおっしゃったような大きい筋の青少年対策というものを非常に希望いたし、そういうものをもととして、それと並行して警察の予防、取り締まりというものがいくことが必要であろう、それで初めて警察の活動というものも十全を期していけるというふうに考えるわけでございます。ただ、こういうものを何もほかの方がなまけているからというわけではございませんが、なかなかむずかしい問題で、政府としても熱意は持っておっても、なかなか実現ということに、特に総合的にこれを実現していくということはなかなか手間ひまのかかることでございますので、それはそれとしてと大臣おっしゃいましたが、私も同じようにそういうものはやはり政府全体として大いに進めていただく。それと並行して警察としての活動もできるだけのことはして参りたい。今回の法案の改正も、そういうものをカバーして、これでよくしてやるのだというような大それた考えを持っておるのではなくて、そういう総合施策ができましても、並行し得る程度の問題としてわれわれは今度の改正案を考えているわけでございまして、そういうものができればこれは要らなくなるということは、まず当分はなかろうと、これは要らなくなるくらいの世の中になるにはやはり相当の総合施策も決定して参るということにならなければならぬと思いますので、少なくともここしばらくの間は、かりに総合施策がずんずん推進されるような段階になりましても、これと並行してこの程度の規制措置というものは私は必要ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。
  199. 太田一夫

    ○太田委員 大へんいいお話を承りました。さすがに知性に輝く柏村長官でございまして敬意を表するのですが、たとえば今お話しになりました映画、演劇などでも、地方の条例が自主的に青少年に見せないということは、一つの例としていいことだというお話、その通りであります。たとえば先般封切られて天下の注目を浴びました「用心棒」という映画、ごらんになった方があるかないかは知りませんけれども、あの映画はチャンバラ映画であり、飛び道具を持った映画ですから、そう静かな映画ではありませんけれども、最初からしまいまで見た方が、青少年が悪に走るということに興味を感ずるというものがなくて、逆に興行的に非常におもしろい映画であるけれども、最後には、何かしら人間のよさというもの、人間性に立脚しなければ一切の刀もピストルもいかなる武芸百般もだめだということを悟るのだと思うのです。だから人気がいいのですよ。別に天然色の映画じゃないけれども人気がある。だから、ああいうものは少なくとも公安委員会推薦映画くらいにして、青少年にはただ見せるくらいの予算をとってもいいじゃないかと思いますが、これには与党の委員も御賛成だと思う。映倫の検閲を受けて映画が上映されるというけれども、政府は青年に悪影響を与えるような、あるいは魔術をかけるようなそういう頽廃した映画というものを見せない、作らせない、こういうところまで進んでいかなければだめだと思うのです。それから放送においても、ラジオはNHKが若干粛正したようでありますけれども、あんまりおもしろくなくなってはこれはいけませんよ。けれども、もう少し、売らんかな、宣伝せんかなのそういうスポンサーつきのテレビというものは、ある程度どこかでチェックするところがあってもいいのじゃないか。これもあまり行き過ぎてはいけませんけれども、総合的な対策——はそこで初めて犯罪防止基本法というものが出てくるわけです。それくらいのものを作るという意気込みがなければ、飛び出しナイフを禁止しましたところで、これは技葉末節にしかすぎない、こんな気がするのですよ。実はそういうものを使わせるもとは何だというならば、その辺にはんらんしておる不良な音楽、映画、頽廃したところのいろいろな放送、こういうものが中心をなしておる。週刊誌もある。これらを国家権力をもってやれと言うわけではありませんけれども、犯罪防止の基本的な倫理というものが、この世の中にアピールされてもいいじゃないかと思う。その方面を手がけていらっしゃらなくて、今これはこれとして、たまたま銃砲刀剣類等所持取締法があったから、これだけを改正しようとするのは、何かしらちょっとした手すさびにしかすぎないというような感じを与えるのですが、もうちょっと深いどっしりとした、魂胆のすわった覚悟はおありでしょうかね。安井公安委員長、いかがでございますか。
  200. 安井謙

    ○安井国務大臣 いや、先ほどからの御説は文字通りごもっともでございまして、私どもも、その基本的な線が片づかなければほんとうに末端の犯罪は根絶できないということには、全面的に賛成でございます。  今もお手元にお配りいたしております犯罪防止対策要綱にも、そういった方面の対策についても相当うたってあるわけであります。こういう線に沿って、たとえば二ページの3の総合的な犯罪防止対策を確立するというところで、「青少年の保護、育成のための総合的施策の推進、青少年の犯罪防止、非行青少年の補導、少年保護、福祉に関する施策の整備をはかるとともに、青少年に悪影響を与える環境の浄化、不健全な映画、演劇、放送、出版物等の排除のため関係方面の協力を求め、必要な方途を講ずる。」また「犯罪を誘発する不良有害環境の改善、犯罪の温床となる不良生活環境の改善をはかるほか、犯罪を誘発するおそれのある場所をなくするため必要な措置」これは先ほど申し上げました町を明るくする施設等に入るわけでありますが、さらにまた再犯を防止するための保護、矯正、これも警察の分野に相当関係ございます。こういう基本線に沿ってこれからもでき得る限りの強い施策を打ち出すつもりでおります。
  201. 太田一夫

    ○太田委員 公安委員長いかがですか。それはここに書いてあることですが、これに基づいて何か具体化しておるものがあるのでしょうか。参考資料としてわれわれが審議する上に、ここに書いてあることは、考究するとか、法制の整備をはかる、そういうことが具体的にどういうようなものか、近々出てくる予定であるか、そういう改正案の何か体系の芽、萌芽というものがあるのですか。
  202. 安井謙

    ○安井国務大臣 こういった今ごらんいただきましたような各方面からその施策を進めていかなければなりませんし、同時にこれは民間の御協力といったようなものも十分に必要であります。また同時に、この今も御指摘のような青少年の環境、学校教育の方面における社会的な倫理の確立といいますか、そういう教育の拡充も必要であろうと存じます。そういうものを逐次それぞれの部門で進めておるのでありまして、どこかの省でこれを全部まとめて一かたまりにしてこうだというふうな仕組みには今なっていないわけであります。しかし一例を申し上げれば、今の暗いところをなくし、環境を明るくするといったようなものは、もうすでに実施に移しております。またこのあとにあります法的措置の整備というようなものの一環として、この刃物取り締まりの法律案も御審議を願っておるというようなことでございます。そういうような逐次一つずつ取り上げまして、でき得る限りこういった青少年の補導といいますか、育成をはかっていきたいと思っております。
  203. 太田一夫

    ○太田委員 一つだけもうちょっと具体的に焦点を当ててお答えいただきたいのですが、映画とテレビ、これですね。映画界とテレビ界、これでは映画界の協力を得る、放送界の協力を得るとおっしゃるのですが、それは映画界じゃないと思うのです。特にテレビの場合においては、一番問題になるのは、今のところはスポンサーですから、そういうテレビを商業放送に利用する人、この人をあなた方が、たとえばここにありますように、犯罪の防止あるいは青少年の何とかの協議会とかいうようなものに、あなたの方の協力委員に任命をして、そうしてそういう人たちが自主的にテレビのそういう間違った番組に投資しない、こういう慣行を作るようにすれば、テレビはおのずから粛正される。それを商売のテレビの業者に言ったところで、それはおもしろい方がいいですよ。だから、そいつは業者に幾らその世界の御協力を得たところでできっこないのです。映画でも、やはり見る方の問題ですから、やはり作る方と見る方と両方が一致しなければいかぬのですから、その世界だけのことでなしに、もうちょっと本腰を入れて、ほんとうにいい映画を作ってもらう、ほんとうに芸術的な映画を作ってもらう、ほんとうに見たいテレビを作る。有益な、おもしろく、興味深くして、しかも深みのあるテレビを作るというような工合に、国家の資本を出したっていいじゃないですか。そういうようなことから、もう専門に本腰を入れたことをそろそろ一つ芽を出していただかないと、刃物の方は一生懸命やったけれども、片一方は野放しでは、刃物が泣くと思います。肥後守も泣くと思います。そう思います。関連質問ですから、またあとやりますが……。
  204. 阪上安太郎

    ○阪上委員 だいぶ太田さんにやっていただいて……。青少年対策につきましては、これは私も長い間この問題に携わってきたのであります。結論から言いますと、べからずじゃだめなんです。何しちゃいかぬ、かにしちゃいかぬ、何持っちゃいかぬじゃ、これは青少年対策になりません。飛び出しナイフを持ったって悪用しないような子供の育て方でなくちゃいけないと私は思うのであります。そのためには、べからずじゃなくして、青少年が欲するものを与えてやるということなんです。世界各国の青少年対策をながめてみましても、あるいはまた青少年犯罪の発生状況を見ましても、西ドイツのような国におきましては、ただ単に経済復興が戦後日本と同じような非常なスピードで伸びたということだけでなくして、その中には青少年対策に対する大きな施策というものがぶち込まれておる。そのことによって西ドイツというものが伸びてきたのであります。そうしていずれ各国におきましても、犯罪はふえておることは事実でありますけれども、西ドイツのような国におきましては、青少年対策が実にうまくいっておりますので、犯罪はふえない傾向にある。こういうことじゃなかろうかと思うのであります。しかし、そのねらっておる施策、打ち出しておる施策をながめてみますと、それはみごとなものであります。日本には日本の行き方がありましょうから、必ずしもあのまま取り入れろとわれわれは言わないわけでありますけれども、少なくともべからず主義の青少年対策というものは今ごろ出しておりません。ところがこの法案を見ましたら、これは明らかにべからず主義の法案であると言っても差しつかえない。こういった点を追及いたしますと、警察庁長官もやむを得ないのだ、こう言われておる。わかります。それならば、こういうべからず主義の法案などにいつまでもたよっていないで、今申しましたような与えていくところの法案、福祉立法的な方向へぐんぐん——青少年に与えていく、彼らの好んでいるものを正しい姿で与えていくという方向というものを今こそ打ち出さなければ、これはいつまでたってもだめだ。そのためには、中央青少年問題協議会がありまして、いろいろな研究をされておりますし、プランニングもあります。遺憾ながら財政的にそのプランを実行するような場面に入っておりません。私は、閣僚の一人として安井さんにお伺いするのでありますけれども、あなたは自治省の長官だから自治省のことしかおっしゃらぬ。こうおっしゃるけれども、そういうことをおっしゃらずに、だれかがこれを言い出さぬと、現在のところ鼎立してしまって、だれか頭になってものをやるというような格好はできてないのですから、こういう問題を幸いとここで論議されているのですから、そういった国会の意思を一つ尊重していただいて、そしてあなたが先頭に立ってこの問題を処理していくだけの熱意を持っていただきたいと思うのであります。これだけのことを申し上げて、この青少年に関する本法、案の審議はやめたいと思います。  次に、若干憲法と本法案改正の問題点を一つお聞きいたしたいと思います。申し上げるまでもなく、憲法の三十五条には「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」そして「捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。」こういうことになっておりますことは御存じだと思います。本法案の改正案が出ましたときにも、この憲法三十五条との関係おいて問題があるのではなかろうかという批判が出ておった。この点について、今回の改正案の二十四条の二等で押収に類するところの領置とかあるいは一時保管という言葉を使っておりますが、そういったものが出てきておるのでありますけれども、これは三十五条の違憲ではないでしょうか、この点どうでありましょうか、一つ詳細に見解をお伺いいたしたいと思います。
  205. 安井謙

    ○安井国務大臣 いろいろ専門的な問題につきましては、また長官あるいは局長から御答弁もあろうと思いますが、三十五条に示しておりますのは、今までもわれわれ申し上げております通り、明らかに刑事手続上の問題を規定しておるものだと解釈しております。しかしこの法案は、行政措置としての犯罪予防という立場で行政上の措置をきめておる法律である。従いまして、そのまま三十五条がこれへ適用されるものだとはわれわれは考えておりません。しかしこの三十五条の精神そのものは、やはりいろいろな行政措置上にも尊重はしていかなければならぬ。従いまして、領置であるとかあるいは保管といったような場合におきましても、あくまでこれは強制的な措置とかというようなことではなく、任意を前提にして、しかもでき得る限り有効にその目的を達したいという趣旨でこの法案は作られておると思っております。
  206. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この三十三条の場合、これは現行犯だと思いますが、三十三条の現行犯の場合を除いては押収することができないということは、それはあくまでも刑事訴訟関係の問題である。こういうようにおっしゃったと思うのであります。行政関係ならば今申されたような解釈をもってやっていくことは正しい、こういうようにお考えになっていますか。
  207. 安井謙

    ○安井国務大臣 行政措置としては、必要な限度においてそういった措置をとることはやむを得ないと考えております。
  208. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そうしますと、この法律で所持を禁止されているところの刃物、その刃物を持っておるということ自体犯罪である。こういうように私は考えるのですが、そのことはそれでいいのでありますか。
  209. 安井謙

    ○安井国務大臣 これは一がいにきめ切れないのでありまして、なるほど禁止された刃物を持っておるという場合に、これは一種の犯罪になる要素を含んでいる場合もあります。また正当な理由があって持っておる場合もございます。そういうような場合に、この法律犯罪を摘発して犯罪そのものを追及しようという目的より、そういう状況おいて何か不穏な形勢を起こさせまいということの取り締まりといいますか、予防の方面に重点を置いておるというふうにわれわれは解釈しております。
  210. 阪上安太郎

    ○阪上委員 憲法との関係でそういことになって参りますと、非常に問題が起こってくると思うのであります。禁止されたところの刃物を持っておることが犯罪でないということになるならば、どういうように取り締まりするのですか。警察庁長官どうですか。
  211. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 禁止されたものを持っているということが明らかならば、犯罪の現行犯ということになろうと思います。
  212. 阪上安太郎

    ○阪上委員 禁止された刃物を持っておるのは犯罪だというのは、おっしゃる通りなんです。そうしますと、それは憲法三十三条にいわれているところの現行犯、刑法犯ということが言えると思うのであります。そうしますと。これは押収するということは全然差しつかえないのだ、こういうふうに解釈されるわけなんですか。
  213. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 現行犯の場合でありましても、現行犯逮捕するか、現行犯としてそれを認定して何も逮捕という措置をとらないという場合もあるわけであります。現行犯逮捕した場合におきましては、お話しのような措置もとり得るわけであります。
  214. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ですから、逮捕の場合は除きまして、一時保管するということ、これは押収と同じですか。
  215. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 本法の改正におきます一時保管というのは押収ではございません。押収というのは強制措置でございますが、押収ではなくて任意に提出させてこれを保管するという措置でございます。本法の改正におけるものは任意措置でございます。
  216. 阪上安太郎

    ○阪上委員 しかし、持っておること自体もうすでに犯罪を犯している、こういうことになるのでしょう。そうすると押収という場合に当たるのじゃないですか。
  217. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 現行犯として逮捕する必要がありとして現行犯逮捕をした場合においては、捜索、押収するということがあり得るわけでございます。しかし、現行犯であるが後に書類送検するというような程度のものである、何も逮捕する必要がないという場合においては、押収という手続は起こってこない。
  218. 阪上安太郎

    ○阪上委員 刀剣を不法所持しているということであるならば、それは逮捕しなければ押収できない、こういうように承ったのですが、それはちょっとおかしいのじゃないですか。
  219. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 捜索、押収というのは現行犯逮捕に伴って行なわれるものでございます。従いまして、逮捕する必要がないという場合におきましては、その犯罪を認めても逮捕しない場合もあり得るわけでございます。そのときには押収もしない。
  220. 阪上安太郎

    ○阪上委員 しからば、その場合には令状がなくちゃ一時保管もできないんじゃないかと私は思うんですが、どうでしょう。
  221. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 今度の改正の一時保管というのは、犯罪捜査と関連のない行政上の危険を防止するための措置でございますので、三十三条、三十五条というものは直接適用はないわけでございますので、行政上の必要から法律で手続を定められればできる。しかしこの場合、強制までしてやるという強い制度とせずに、任意提出させて保管するという手続を定めようとするものなのでございます。
  222. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そうすると、令状がなくても一時保管させることができる、こういう解釈だ、こういうことなんですね。
  223. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 今回の改正の案におきましての考え方は、そういう考え方でございます。
  224. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それはどこから出てくる考え方なんですか。
  225. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 これは憲法の三十三条、三十五条というのは刑事手続に関する規定でございますので、直接その適用はない。従いまして、行政上の必要から法律によって手続を定められればそれで足りるというのが通説でございます。その通説に従っておるわけであります。このような例はほかにも相当あるわけであります。
  226. 阪上安太郎

    ○阪上委員 警職法の改正の場合に、二条の二項並びに特にこの場合三項でありますが、三項に「兇器その他人の生命又は身体に危害を加えることのできる物件を所持しているときは、一時保管するためこれを提出させることができ、又、これを所持していると疑うに足りる相当な理由があると認められるときは、その者が身につけ、又は携えている所持品を提示させて調べることができる。」こういう規定がありますが、この改正案というものは通過しなかった。そしてそれと今回のこの銃砲刀剣類等所持取締法規定されておるところの刃物、その刃物というのとこの凶器というのと読みかえると、全くこの前の警職法の改正のときと同じ構想を持ったものである。こういうふうに考えられるのですが、そういうふうに考えていいでしょうか。
  227. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 この前の警職法の改正は、凶器という広い概念でございましたので、敬一補職法の改正の一部としてただいまお述べになりましたような規定の改正を考えたわけでございます。今回は銃砲刀剣類等に限っておりますので、銃砲刀剣類等所持取締法おいて改正することが適当であろうということで、改正案を提出したわけでございます。
  228. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでまた先ほどへ戻りますが、そういった憲法で非常に保護されているところのこの憲法の精神を考えるとき、行政措置であるから、憲法で厳重に現行犯以外には令状がなくちゃ押収してはいけないとまで規定されているこの精神にかんがみて、行政措置ならば何をやってもいいんだという考え方に立っておるように私は思うのですが、憲法解釈については、いろいろ今おっしゃったようなことはわれわれも知っておりますけれども、そういう考え方でいいのでありますか。
  229. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 何をやってもいいという考え方ではございませんので、最少限度に必要な手続というものを国会によって定めよう、こういうことでございまして、たとえば公職選挙法におきまして、選挙に関して凶器を持っておる場合はこれを領置することができる、これは強制的に取り上げてしまうわけでございます。そういうことも法律によって定められて行なわれておることでございます。それよりは弱い規定でございます。
  230. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この規定は青少年に適用されますか。
  231. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 青少年にも同じく適用されるものでございます。
  232. 阪上安太郎

    ○阪上委員 現行警職法でこの措置はできないのですか。
  233. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 現行警職法の規定に直接にはございませんけれども、警察法並びに警職法の精神から申しまして、全く任意に預かるということは、これは警職法の規定からくるのでなくて、警察法二条の警察の責務からほんとうに必要があったときに任意にこれを預かるということは、それまで違法であるというふうには考えておらないわけでございますけれども、そういう点につきまして、この一時保管の前の、持っていると疑われるものを提示させるとか、あるいは隠されていると思うものを調べるとか、一時保管をするというようなことについても、どの程度できるかということを明記することが警察の責務と権限とをはっきりするという意味おいて必要であろうということで規定をいたしたいと考えておるわけでございます。
  234. 阪上安太郎

    ○阪上委員 少し細部に入り過ぎると思うので遠慮しておるのですが、この所持と携帯、この関係はどうなるのですか。
  235. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 所持ということは事実上支配をしておる、占有しておるというようなことでございます。たとえばうちに持っておっても所持でございます。ところが携帯というものは、これを身に帯びて運んでおるといいますか、身に帯びておる。たとえば路上等において身に帯びて持っておるというときは、これは携帯ということになります。
  236. 阪上安太郎

    ○阪上委員 少年がやはりこういう状態にありますときに、そしてこの不法所持をいたしておるという現行犯を認めたときに、この青少年に対してこれを提出することを要請されると思いますが、こういった不法所持の刃物は、これは取り上げてしまうということになっておると思うのですが、その通りに解釈してよろしいですか。
  237. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 単に不法所持ということだけでそのものを取り上げてしまうということは、直ちにはできないわけでございます。
  238. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで本人の都合の悪いとか、あるいは交通取り締まり上非常に都合が悪い、不利であるということを認めたときには、これは警察署に連行するのですか。
  239. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察署、駐在所その他適当な場所に同行を求めるというのは、これは警職法の二条の規定に基づいて任意に来てもらうということの規定がございます。それに基づいてやるわけであります。
  240. 阪上安太郎

    ○阪上委員 その場合に、それを青少年が拒否したときはどうしますか。
  241. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警職法二条の同行を求めるということは、あくまでも同行を求めるということでありますから、あくまでも拒否するという場合におきましては、強制的に連れていくということはできないわけでございます。
  242. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今度は各条関係に入りますが、各条関係に入ると非常にこまかい問題が出てくると思いますので、私はきょうは総括質問だけにとどめておきたいと思います。
  243. 濱田幸雄

    濱田委員長 次会は明二十六日開会することとして、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十六分散会