○松井(誠)
委員 この
改正案自体につきましても、実はいろいろお伺いをしたいことがたくさんございますけれ
ども、きょう私は、この
改正案自体についてではなくて、いわばその
改正案の前提になるというか、根底になるというか、そういうものについてお伺いをいたしたいと思います。
その前提になる問題もいろいろございますが、私がお尋ねをいたしたいのは警察官の職権乱用――職権乱用といいましても、刑法上のいろいろな犯罪を構成するような行為、あるいはそこまで至らない人権侵犯の行為、とにかくそういうもの一切をひっくるめて職権乱用という言葉でかりに呼ぶといたしますと、そういう職権乱用の危険について主としてお伺いをいたしたいと思うのです。
なぜかと申しますと、われわれがこの
改正案に反対をする、あるいは重大な疑問を持っておる最大の理由は、この
改正案が警察官の職権の乱用を招きはしないかという重大な疑惑があるからであります。こういうことをお尋ねいたしますと、必ず
政府当局は、いやそれは警察法や警職法にかたく乱用は戒めてある、従ってそういうことは起こらない、あるいは起こらないように厳重に注意いたしますということをおそらく御
答弁なさるに違いないと思います。しかし、おそらくそういう御
答弁によって一般の国民が納得するとはお
考えになっておらないだろうと思います。われわれがこの警察官の職権乱用というものを非常に危惧いたしますのは、少なくとも私の場合は、根本的には現在の国家権力機構というものに対する不信というものがその根底にございます。しかし、そのようなことを論拠にいたして私は警察官の職権乱用を危惧するわけではございません。もし、そういうことを論拠にいたしますと、国家権力に対する
考え方の相違によって、乱用があり得るあり得ないという、いわば一種の水かけ論になるだろう。私が
心配いたしますのは、そのようないわば観念的な論拠の上に立ってではなくて、具体的に過去の実例に徴して、実証的にやはり警察権の乱用というものは招きやすいものである、これを根絶するということは、少なくとも現在の機構がある限りほとんど不可能に近いということを
考えざるを得ないからです。そこで具体的の職権乱用の顕著な例を二、三私はお尋ねいたしまして、そうしてそれらが一体どういう原因で招来されたのか、従ってそういうものを将来なくするという制度的な保障というものを得るためには具体的にどうすればよいのか、そういう問題について具体的の御
答弁がいただけませんと、やはりこの
法律案を審議する中で始終出てくる職権乱用の危険という問題が、根本的に解明されていくということにはならないだろう。こういうように
考えますので、実はこの
改正案の具体的な質問の前提として、二、三の職権乱用の例についてお答えをいただきたいと思うわけです。
そこで、その乱用の例といたしまして、私は最初に、去年の六月十五日に起こりましたあの安保騒動のときの警察官の職権乱用の問題をお尋ねいたしたいと思います。これは決してすでに過ぎ去った問題でも何でもございませんで、現にこれは告訴があり、あるいは告発があって、そのことについてはまだ結論が出ておらないわけであります。そればかりではなくて、これを原因として国家賠償
請求の民事事件がまだ係属いたして、その緒についたばかりでございます。何と申しましても、この事件が警察官の職権乱用の例といたしましては、その量においても質においても私は非常に画期的なものでもあると
考えますので、そのことを最初にお尋ねをいたしたいと思います。そのことにつきまして、告訴あるいは告発は直接に検察庁になされましたので、それに基づいた捜査の現況はどうかということについて、あるいは十分おわかりでないかもしれませんけれ
ども、おわかりの範囲で
一つ長官にお答えをいただきたいと思います。