○武藤
委員 私は、
日本社会党を代表して、
揮発油税法の一部を改正する
法律案及び
地方道路税法の一部を改正する
法律案に対し、反対の討論をいたしたいと思います。
私
どもが本案に対して反対をする理由は大体五つございます。第一は、池田内閣の公的無視という点であります。第二に、税
負担の公平化が侵害をされておるという点であります。第三は、目的税の範囲を逸脱した無謀な引き上げであること。第四は、
道路整備五カ年計画の内容が非常にずさんであること。第五に、
物価引き上げを一そう促進して大衆
負担の増大をもたらすという点であります。以上の諸点について具体的にこれから申し述べ、
ガソリン税引き上げに反対をするものであります。
第一の
公約無視の点についてでありますが、池田内閣は、昨年十一月の総
選挙に際しまして、
減税を
国民に
公約し、
国民は一千億以上の
減税を楽しみに期待しておったのであります。しかるに、
減税はわずか六百三十一億円にすぎず、それのみではない。逆に
国民負担は増大の一途をたどるような施策を行なってきたのであります。国鉄
運賃の
値上げ案四百八十六億円、郵便料金の
値上げ案五十五億、加えて
ガソリン税引き上げ百八十億円、
国民年金の掛金三百億円や医療費の
値上げ三百二十億円などを私
どもは
検討いたしますときに、まさに
国民負担は大衆の生計を圧迫するばかりでございます。これらの施策の結果は、他の諸
物価をつり上げ、
値上げムードをさらに作り上げておるという印象を受けるのであります。自民党内閣の
公約に
揮発油税引き上げなどはみじんも見られなかったのであります。しかるに、今回
道路税を含め百八十億円の
増徴を行なわんとすることは、
国民の期待を裏切るものであり、民主主義
政治家のとるべき道ではないと思うのであります。かかる
公約違反は
国民の名において糾弾をしなければならぬと存じ、第一の反対理由に掲げる次第であります。
第二には、税
負担の公平化ということであります。
揮発油税は昭和三十三年度に一キロ当たり五千三百円の引き上げ、三十四年度に四千四百円、さらに今回またまた三千四百円の引き上げを行なうものであります。昭和三十年と
比較し、わずか五カ年間に倍額以上、地方
道路税が倍額に引き上げられているのであります。わずか五カ年間に税金が倍額になったものは他に例を見ないでありましょう。
政府は、引き上げの理由として、
欧米諸国に比してなお低率であると言うが、
国民所得と
ガソリン税負担の
割合を認べてみますと、イギリス、西ドイツの三倍の高さであり、
日本より高いのはイタリアだけであります。さらに、国内の他の間接税である物品税、
消費税に比しても、はなはだしく均衡を失していると思われる。たとえば、小売価格に対する税率を見るならば、たばこ、かりに「いこい」六四・二%、光六三・七%、二級酒が四一・七%、ビール五六・一%、電気冷蔵庫四〇%、砂糖四六・二%などと
比較してみますと、
ガソリン税が五〇%以上の率になっておるということは、他のただいまあげましたような奢侈品やあるいは嗜好品的性質の物品税や
消費税とやや匹敵する税率であります。生産増強のための必需品である
ガソリンにこれだけ高額の税率を賦課するということは、これらの税との均衡という点から、私は均衡を失するものであると思うのであります。
主税局長は、昨日の答弁で、まだ
増徴の余地が多少あると言明し、全く無謀な態度といわなければなりません。製油
会社の
収益率が高いから
増税するというならば、これらの大
会社に対しては他の方法で課税すればよい。特別措置法の適用をはずすとか、新たに
会社負担の課税をして、
消費者に
負担の及ばない方途があるはずであります。なおまた、
道路をほとんど使用しない農民の耕耘機が使用する
ガソリンまでが
道路整備の目的税を
負担するのは、全く公平を欠くものであって、許しがたい
増税といわなければなりません。これでも
一体公平であると主張するつもりがあるか。この点が反対する第二の理由であります。
第三に、目的税の範囲を逸脱した無謀な引き上げであるという点であります。現在、
道路整備の
財源は、
ガソリン税及び軽油引取税による税収がその大部分を占めており、国の直轄
道路整備費はその九〇%を
ガソリン税収によってまかない、
一般財源による
負担は微々たるものであります。三十六年度計画では、総額一千四百九十八億八千九百万円のうちわずか百億円で、十三分の一が
一般財源であります。元来、
道路の
整備は、単に
自動車使用者の
利益にとどまるものではなく、国の
経済全体を潤す公共事業、社会資本ともいうべきものであります。従って
一般財源から相当の支出をなすべきであり、十三分の一ではあまりにも少ない。特に
ガソリンの使用は、先ほど
広瀬議員からも指摘がありましたように、
中小商工業者、農民が六〇%以上消費しております。かかる
関係からこれらの層が
道路整備費の大半を
負担することになり、全く目的税としては過酷に過ぎるものであります。しかも、
政府が勝手に計画を膨大化し、そのつど
財源が不足すると称して税率を引き上げられるのでは、全くたまったものではありません。同じ
ガソリンを使用しても、船舶用は無税である、
道路を使用しない農民や他の零細業者が使用する
ガソリンは
道路整備の
財源に捻出をさせられる、こういう不公平な税の取り立ての方向というものは、全く誤っておるといわなければなりません。この目的を逸脱しておるという点が第三に指摘しなければならぬのであります。
第四に、新
道路整備五カ年計画はずさんであります。無理があります。わが国の
道路が悪いということは世界的にも定評になっている。これはまた
経済成長の隘路となっている。そういう点は何人も否定することはできません。特に地方道に至っては極度にひどいものであります。わが国の
道路投資年額は、昭和三十三年に五カ年計画一兆円が始められて、世界第六位となったが、
アメリカ、カナダ、西ドイツ、フランス等は、はるかに
日本の追従を許さない現状であります。こうような実情から、
政府が
道路計画拡長に血道を上げているのも、ある
程度まではうなずけるわけでありますが、しかしながら、その
政府計画の内容を見るとき、幾多の疑問を抱かざるを得ません。まず第一は、実行不可能な計画、地域的不公平な計画を安易に立てていると思われます。予算額が膨張したというだけでは、
道路が
整備されるものではないことは、御承知の
通りであります。わが国の建設業界の能力、動員できる労働力の限界、必要資材の供給力等、多くの
要素が整わなければ計画は完成されないのであります。過去の実例を見ても、五カ年間一兆円の計画が三カ年間に四・五六%の進捗率であり、計画
通り遂行されるならば六〇%にならなければならないはずであります。かくのごとく予定
通り進まず、計画の立て直しをしているのが実情であります。しかも新
道路整備計画はそれの二倍以上の額になるのである。一兆円計画の遂行能力のないものが二倍の計画をこなせるであろうか。結局、工事は進まず、血税だけが乱費される結果になりはしないかと憂えるものであります。特に
予算編成当初、大蔵省は一兆八千億円の計画を支持したようであります。それを自民党が無理やりに二兆一千億円にふくらませたのであると新聞は報じております。全く自民党の思いつき的計画であると断定しなければなりません。もう一点は、この膨大な計画のための
財源を
ガソリン税、軽油引取税に求めているという点であります。これらのものが実際に
道路を使用しているものだけに賦課されるならば、目的税としてある
程度了解もできるが、全く
道路を使用しない農業用機械に消費される油、すなわち耕耘機などに使用する油にまで目的税として税を課するに至っては、全く論外、笑止千万と言うべきであります。従って、自民党の諸君すら、今になって野党のわれわれの追及にあわてふためいて、
政務次官に将来の約束をさせんとするがごとき卑劣な態度に出たといわざるを得ません。
第五に、
ガソリン税の引き上げが、諸
物価、料金の引き上げを誘発し、大衆
負担の増大をもたらすという点であります。池田内閣は、
所得倍増内閣ではなく、
物価引き上げ内閣、家計圧迫内閣だという悪評がみなぎりつつあります。かかる
物価値上げムードのあるとき
ガソリン税を引き上げることは、
運賃や料金、
物価引き上げをさらに誘発することは明瞭であります。昨日横山議員の
質問に対し、
ガソリン税引き上げは原則として
消費者が
負担するかもしれない、そこまで覚悟していると
主税局長は答弁し、暗に大衆
負担になるであろうことを明らかにした。また、運輸省も、三月七日の閣議了解があるので、慎重に対処するが、個々の申請内容を
検討して、バス料金や
運賃の引き上げは処置する旨を答えております。
政府は最初
消費者に
負担が転稼されることはないような答弁をしていたが、ついに料金、
物価の
値上げとなって
消費者の
負担増になることをやや
認めるに至ったのであります。われわれは、初めから、
ガソリン税引き上げは
運賃引き上げの口実となり、ひいては
物価値上がりをもたらし、
消費者大衆に多大な
負担をしいることになると心配をし、忠告をしてきたのであります。たはせるかな、バス業界では、二月一日号の「
自動車と石油」という雑誌の中で、バス料金は七%から八%の
値上げを
検討し、と報じておる。さらに、協会の会長である伊能さんば、税金引き上げの交換条件として
運賃値上げははっきり
認められてはいないが、暗黙のうちには
政府、自民党が
認めている、と
理事会で発表いたしたそうであります。この七から八%のバス料金の
値上げを暗黙のうちに自民党が
認めているという発表がもし事実であるとすれば、
主税局長や運輸省の答弁である今後のはね返り率というものは全くうそになるが、こういう点からも料金の引き上げは必至であります。また、
トラック業界の主張を聞いてみますと、公共的輸送機関の輸送量は、鉄道、海運も含め、全輸送量の七四%に及んでおるのであって、この輸送される貨物に今回の
ガソリン税の引き上げがかなりの
影響を与えることを、口をそろえて発表いたしております。このことは諸
物価に大きな
影響を与え、
国民生活に多大の犠牲をしいることは、これまた明瞭であります。
結局、低
物価政策を宣伝し、
所得倍増を
公約した池田内閣は、これらの
公約は全く幻想にすぎないということを、新年度予算早々
国民の前に暴露したといわなければなりません。この
ガソリン税の引き上げは、国鉄料金の
値上げと同様、
国民大衆を収奪する以外の何ものでもないと断ぜざるを得ないのであります。わが党は、
国民大衆の生活安定と
所得増大のために、かかる
増税に断固反対し、
政府の
公約無視を追及すると同時に、
政府みずからの今後の反省を深く求めて、反対討論にかえる次第であります。(拍手)