○
八木(一)議員 私は、日本社会党を代表して、ただいま
議題に相なりましたわが党
提出の
一般国民年金税法案、
労働者年金税法案、
国民年金特別会計法案の三案を一括して、趣旨、
理由並びにその
内容の大綱を御
説明申し上げるものでございます。
本三
法案は、本三
法案が大蔵
委員会に付託されると同時に、社会労働
委員会に付託になりましたわが党
提出の
国民年金法案・
国民年金法の施行及び
国民年金と他の年金との調整に関する
法律案、
国民年金の
積立金の運用に関する
法律案の三
法案と一体をなすものでございますので、御
説明中右の
内容にも及びますことをあらかじめ御了承いただきたく存じます。
申し述べるまでもなく、現在の
国民年金法は、
昭和三十四年、第三十一
国会において成立し、同年十一月一日施行、昨年三月三日より、その無拠出部分、すなわち
福祉年金の
支給が開始され、本年四月一日よりその拠出年金の部分の
保険料徴収が予定されております。
そのうち、
福祉年金につきましては、きわめて不十分であり、
給付要件等に相当不合理な点もありますけれ
ども、とにもかくにも、今まで年金
制度に
関係のなかった老人、母子家庭、障害者に年金が
支給され、これらの人たちの生活を幾分でも明るいものにしたことは、一つの大きな前進というべきでありましょう。このことは
国民の要望にこたえ、自民党内閣よりも先に何回も
国民年金法案を
提出して、無拠出年金
制度発足の原動力となったわが日本社会党の喜びとするところでありまして、われわれはさらにこの
制度を急速に飛躍的に
改善すべきものと考える次第であります。これに反して、拠出年金
制度に関して、
現行法ははなはだしく不十分であるばかりでなく、その組み立てばきわめて不合理であり、社会保障の名にそむくものでありますがゆえに、わが党は、
審議当時これを強く
指摘し、その意味をもって
政府案に反対したのであります。この拠出年金の
保険料徴収の時期が近づくに従って、
国民各層から強烈な批判が燃え上がり、拠出年金制の抜本的
改正、その
改正の実現までの拠出制実施延期等の声がほうはいとして全国に高まるに至ったことは、各位の御承知の通りであります。この世論にろうばいした
政府は、幾ばくかの
改正意図を発表いたしておりますが、その
内容は、
改正を要する本質的な点には全然触れておらず、死亡一時金等
給付金額増加も総体から見ますれば九牛の一毛にしかすぎない僅少なものでありますために、
政府の行なわんとする拠出年金制に対する批判の声はますます高まり、厚生省の高圧的なやり方をもってする必死の努力にかかわらず、その
登録は本年二月十五日現在全国で七三%、特に東京、
大阪等の六大都市においてはわずかに平均三〇%前後の状態であります。
元来、
国民の大きな期待と完全な理解のもとにその協力を得て発足すべき
国民年金制度において、このような状態の発生したことは全く
現行拠出制年金の重大な欠陥によるものでありまして、それを根本的に是正するためにわが党は本
国民年金関係の六法を
提出したわけであります。従って、
提出の具体的な
理由を御
説明申し上げるためには、
現行法、特に拠出年金制の欠点を
指摘することが最も必要と存じますので、以下要約して申し述べてみたいと存じます。
まず第一に、
現行拠出年金制の最大の欠点は、その組み立てが社会保険主義で貫かれ、社会保障の精神と全く相反する点があることであります。
その一は、定額
保険料主義であります。このために、
保険料は大衆にとって割高に相なります。
その二は、
年金支給額が拠出
期間比例制によっていることであります。このような
制度では、割高な
保険料を納入することの困難な、すなわち年金をより必要とする
国民大衆はきわめてわずかしか年金の
支給を受けられないことに相なります。
〔
委員長退席、毛利
委員長代理着席〕
その三は、老齢年金受給
資格がきわめてきびしいことであります。通常の場合、二十五年間免除適用を受けた人でも、十年間の
保険料実際納入がなければ年金を
支給されないことになっており、これでは、年金
保険料納入が最も困難な、そして年金を最も必要とする人に年金が
支給されないことに相なります。
その四は、受給
資格に達しない人々に対する
保険料返還
制度、今回の
政府改正案では、特別年金という期限付減額年金
制度となっておりますが、いずれにいたしましてもそれらの
制度の要件は最もきびしく、大部分の人がその適用を受けられないことであります。
保険料納入
期間と免除
期間の合計年数が三十年に満たない人の
保険料は、この
制度の適用がなく、かけ捨てになることであります。
政府は、かけ捨て反対の世論にびっくりして、死亡時のかけ捨てについては、死亡一時金という一時しのぎの
制度を作ることによって批判を避けようとしておりますが、最も苛酷な生存時のかけ捨てについては、本質的な対処をしようとしておらないわけでありまして、この点は、まさに、社会保障の名において生活困難な大衆から収奪をするものであります。
その五は、
現行法の免除
制度が対象者にとって実効がほとんどないことであります。
政府は、
国民の批判に対して、免除
制度を隠れみのに使っておりますが、この免除は実に無意味なものであります。元来免除を考えた場合、免除が
保険料実際納入と同じ効果を持つものでなければ意味がないのでありますが、
現行法の免除は、そうではなく、
保険料を実際に納入した場合のように、老齢年
金額を増大する要因にならないのでありまして、従って、免除を受けましても
保険料強制徴収を受けないというだけのことであり、貧困な
国民大衆がその部分だけ年金
制度から締め出されるということになるだけであります。
さらに、ひどいことは、この免除
期間には国庫支出がされないことであります。具体的に考えてみますれば、六十五才、月三千五百円の場合、そのうちの三分の一、すなわち月千百六十六円の原資は
一般会計から国庫負担として出るわけでありまして、
保険料実納可能な中間層以上の人はこの国庫負担を自分のものとすることができますが、最もこれを必要とする人々には国庫支出分も
支給されないという結果に相なります。社会保障の一つの大きな柱である年金に対する国庫支出は、所得再配分という性質を持つべきものでありますが、この場合それとは全く逆な作用をするわけであり、金持ちの土持ちに用いられることに相なっているのであります。
以上五点を要約して考えれば、
現行拠出年金制は、なき浅沼
委員長がなくなられる寸前まで
国民に訴えられたように、保険
制度として組み立てられているのであって、社会保障では断じてないのであります。社会保障なら、その
給付を必要とする人に、必ずその必要の度合いに対応する
給付がなされなければなりません。
保険料納入困難なすなわち年金が特に必要な人の年金が減り
支給がなくなるのでは、社会保障ではないのであります。それらの人が年金の
支給を受けたいがために苦労して納めた貴重な
保険料が、わずかのところで息が切れて要件に達しないばかりに、
政府に没収されたり、大切な国庫支出が所得再配分の逆になったりする欠点は、収奪であり、金持ちの土持ち政策であって、断じて許すことのできないものであります。このように、組み立てが全く不合理である点が、
現行拠出年金
制度の最大の欠点でありますが、それ以外にも大きな欠点が枚挙にいとまがないのであります。
第二に
指摘しなければならないことは、年
金額があまりにも僅少であることであります。三千五百円というのは、
現行制度立案当時の生活保護基準一人分を大体の基準とし、わが国の
経済成長をきわめて過小に、すなわち年率二%と見、さらに大事をとって年
金額は一・五%ずつ増大すべきものとして
計算して、四十年後に三千五百円という
金額を設定したわけであります。その
金額実施がさらに五年延ばされて、
国民が四十年間
保険料を納めて、四十五年後に現在の生活保護を受けている人々と同じような意味の生活がやっと保障をされるというのでありますから、全く所得保障の名に値しないことは明らかであります。
経済成長九%を豪語する池田内閣としては、後日年
金額を改定するというような逃げ言葉は許されないのであって、この目標年
金額はただいま直ちに改定されなければならないと信ずるものであります。
第三の点は、老齢年金開始時期のおそ過ぎることであります。六十五才という開始年令では、生活が困難で苦労した人の場合、残念ながら早く年をとり長生きをする人が比較的少ないことから見て、適切ではありません。もちろんそのような状態は急速に是正されなければなりませんが、そのころには各産業ともオートメーション化が進んで、年配の人はある程度で生産点を若い人に譲ってもらわなくてはならないし、従って六十才くらいからは完全な老齢保障が必要な時代がくるわけであります。これらの両面からして、六十五才開始は断じて不適であり、六十才開始にすべきであります。
第四は、貨幣価値変動に対する処置、すなわちスライド
規定があいまいな点であります。戦後のインフレの苦い
経験を持つ
国民は、
現行法のようなあいまいなスライド
規定では、安心して拠出年金制に協力できないのはむしろ当然であります。
第五は、障害年金及び母子、遺児、寡婦年金等の年金の
内容のきわめて貧弱なことと、その適用要件が過酷きわまることであります。死亡時のかけ捨てに対して
政府が死亡一時金
制度を作ろうとすることは、ないよりはましでありますが、元来、死亡時かけ捨て論は、
現行法の
遺族年金の不完全、不十分なことからきた議論であり、遺族
関係の年金について根本的に
改正をしないところに大きな怠慢があります。
第六は、通算制であります。
政府は、今回通算年金通則法、通算年金
制度を創設するため、
関係法律の一部を
改正する
法律案を
提出してこの問題を解決しようといたしております。この
改正点は、自民党
政府としては比較的努力したところが認められますが、完全なものとは断じて言い得ないのであります。
第七は、
積立金運用の問題であります。社会保障
制度審議会、
国民年金審議会の答申を無視し、特別
勘定を作ろうとしないのみか、厚生年金の新しい
積立金も合わせて二五%は還元するという宣伝をしながら、福祉資金に直接に用いられるものはそれよりはるかに少なく、被保険者団体に還元されるものは話にならないほどの少額であります。これに反して、資金の大部分は依然として大資本に、特に軍需に
関係ある産業に融資されているのでありまして、このような
政府の態度は全く
国民を愚弄したものといわなくてはなりません。
現行拠出制には、以上のように枚挙にいとまがないほどの欠点があり、
政府の数点の
改正点もその本質的な欠点を補い得るものではありません。
これに対して、わが日本社会党の
国民年金六法は、以上
現行法拠出制の欠点を一切解決し、全
国民に期待を持って迎えられる
内容を持つものであり、無拠出年金においても、
現行法の欠点をなくし、その
給付を飛躍的に増大する
内容を持つものであることを正しく御理解いただきたいのであります。
以下、わが党六
法案の
内容について申し述べるわけでありますが、詳しく申し述べますと数時間を要しますので、その要点のみを抽出して、できる限り簡潔に御
説明を申し述べたいと存じます。
本案の
内容は、大別して特別
国民年金と普通
国民年金の二つの部分で構成されています。特別
国民年金はいわゆる無拠出年金であり、
現行法の
福祉年金に相当し、普通
国民年金はいわゆる拠出年金でありますが、労働者の年金
制度を含んでおりますことが
現行法との大きな相違であります。
まず最初に、特別
国民年金の方から御
説明申し上げます。
これは、さらに養老年金、母子年金、身体障害者年金の三
制度に分かれており、おのおの
現行法の老齢、母子、障害の三
福祉年金制度に対応したものであります。
養老年金は、本人の年収十三万円以下の老人に
支給されるものでありまして、六十才から年一万二千円、六十五才から年二万四千円、七十才から年三万六千円を
支給することを基本といたしております。ただし、七十才未満の老人には年収三十六万円未満の家庭の場合に、七十才以上の老人の場合は年収五十万円未満の家庭の場合に
支給することとし、そのうち、世帯収入の少ない方に基本額を、多い方にその半額を
支給いたすことに相なっております。基本額で
現行法と比較いたしてみますと、六十九才現在で、
現行法では
支給額ゼロであるのに対して、本
法案では通計十八万円となるわけであります。七十二才現在の比較では、
現行法三万六千円、本
法案二十八万八千円と大きな開きがあることを御理解いただきたく存じます。
母子年金は、年収十二万円未満の母子世帯に年三万六千円、多子加算は、一人当たり年七千二百円とし、年収十八万円未満の世帯にはそれぞれのその半額を
支給することにいたしてありまして、もちろん準母子家庭、生別母子家庭にも
支給いたすわけであります。
現行法と本法との違いは、まず、
現行法に対し本
法案が年
金額及び加算額が三倍であること、第二に、
現行法では子供が十六才をこえれば適用要件がないことになっておりますが、本
法案では二十才に達するまでは要件たり得ること、並びに、
現行法では所得制限が約十三万円であるのに対し、本
法案では十八万円とその制限が緩和されていることでありまして、わが党案の
内容が心あたたかいものであることを御理解いただけると存じます。
身体障害年金は、年収十二万円未満の身体障害者に対し、一級の場合は年四万八千円、二級の場合は年三万六千円、三級の場合は年二万四千円、配偶者並びに子女に関しての
支給加算は、等級にかかわらず、家族一名につき年七千三百円ずつ
支給することに相なっており、年収十八万円未満の障害者にはそれぞれその半額を
支給することに相なっております。
現行法は、障害者に最も冷酷であり、二、三級障害には
支給せず、内科障害者の場合は一級でも適用しない、家族加算がない、所得制限がきつ過ぎる等々の欠点を持っておりますが、これらの欠点をすべて本
法案で解消しようとするものでありまして、
支給金額より見ても大きな違いがあります。すなわち、一級障害、家族三人の場合、
現行法では年一万八千円、本
法案では年六万九千六百円に相なるわけでありまして、その間に大きな差がありますことを御理解いただきたいと存じます。
以上で特別
国民年金の御
説明を終わり、次に、普通
国民年金すなわち拠出年金について申し上げます。
この
制度は、
一般国民年金と労働者年金に大別され、それぞれ老齢年金、障害年金、
遺族年金の
給付があります。主として老齢
年金給付につき御
説明申し上げることとし、まず
一般国民年金より申し上げます。この
制度は、すべての自営業者無職者に適用されるものであり、言いかえれば労働者本人以外の全
国民が対象となるものでありまして、その対象者は
現行国民年金法の対象者と大体において見合うものであります。
年
金額は、全部一律で、
制度が完成した場合は六十才から年八万四千円であります。この六十才開始、年八万四千円は、
現行法の六十五才開始、年最高四万二千円とは
金額から見て大きな開きがあるのでありまして、かりに六十四才現在で比較すると、
現行法ゼロ、本
法案通計四十二万円であり、六十七才現在では、
現行法最高十二万六千円、本
法案一律六十七万二千円と、数十万円の違いがあることを明らかにいたしておきたいと存じます。六十才開始を基本といたしてございますが、この場合、もし本人が、六十才より早く、またおそくから
支給を受けたいと希望する場合、五十五才から六十五才までの間において、希望の年からそれぞ減額、あるいは増額した年金を
支給できることにいたしております。
国は、この八万四千円の
年金給付の五割を
一般財源より負担し、支払いの年に
特別会計に払い込みます。また、別に、
特別会計で積み立ておくため、対象者の属する世帯より
一般国民年金税を徴収いたします。拠出
期間は二十才から五十四才までの三十五年間、税額は大体一名平均月百六十六円に相なる
計算であります。
国民健康保険税の場合と似た方法で、均等割五、所得割三、資産割二という
割合で徴収することになっておりますので、収入資産の少ない人はずいぶんと安くなる見込みであり、さらに、納入困難あるいは不可能の人については、減額あるいは免除をすることにいたしております。免除は、五人家族の場合において月収一万七千円、すなわち年収二十万四千円以下の場合適用することに相なっておりまして、
現行法で
政府が考えておりますものよりははるかに範囲が広いのであります。減額の範囲は、五人家族の場合、月収二万二千円、年収二十六万四千円以下の場合であり、これまた相当多数の該当者が見込まれております。
特に申し上げておかなければならないことは、何回減免を受けた人でも、極端な場合は、全
期間免除適用を受けて、一円も年金税を納めない人でも六十才になれば、他の人と同じ
金額の年金が無条件で
支給されるということであります。このように、所得比例の年金税、完全な減免
制度によって、現在のような拠出年金
制度に対する疑惑批判反対の根拠の主要な部分が解消されるものと信ずるのであります。
障害年金の場合は、一級年八万四千円、二級年六万三千円、三級年四万二千円が基本額でありまして、
現行法よりはるかに多額でありますとともに、
現行法と違って、内科障害にも
支給するわけであり、
現行法のように
給付を受けるには三年以上、
保険料納入後の原因によるものでなければならないというような苛酷な要件は、一切ないことを明らかにいたしておきます。
遺族年金は、老齢年金の半額、すなわち基本実額は四万二千円、子供一名につき一万四千四百円の加算をつけることに相なっております。
現行法の母子年金よりはるかに多いのであります。また、
現行法では、遺児年金は母子年金より年
金額がはるかに少なく、寡婦年金は適用要件がはなはだしく過酷でありますが、本
法案では、それらの遺族がみな母子と同様の
給付を受けるわけであり、さらに男性の遺族にも
支給の道を開いているわけであります。
以上、
一般国民年金全般についてさらに申し上げておきたいことは、年
金額に課税がないこと、並びに、年
金額が、消費者物価または生計費のいずれか一方の一〇%以上の変動の際に、それに応じて必ず改定されることであります。
現行法第四条の
規定がはなはだしくあいまいでありますが、本
法案のごとく、はっきりと
規定してこそ、
国民は信頼して拠出年金
制度に協力してくれるであろうと、かたく信ずるものであります。
次に、労働者年金について申し上げます。
本
制度は、あらゆる職種の労働者本人に適用されるものであって、五人未満の
事業所の労働者、日雇い労働者、山林労働者等にも適用されます。
老齢年金は六十才から
支給されることが原則でありますが、炭鉱労働者、船員、機関車労働者等は五十五才開始といたしておりますことは、
現行厚生年金保険と同様であります。老齢年
金額は、
制度が完成された場合、
一般国民年金と同額の八万四千円を基本額として、定額とし、それに標準報酬額に比例した
金額が付加されます。その
金額は、現存の賃金水準では平均年六万三千円になる
計算でありまして、合計平均年十四万七千円に相なります。従って、将来賃金水準が上がった場合には、この平均額が上昇いたします。
労働者年金税法案に
規定されている労働者年金税は、もちろん標準報酬の高低に従って定められております。
一般国民年金の場合より年
金額が多いのでありますから、年金税はある程度高くなりますが、この場合、使用者が半分以上負担することに相なっておりますので、労働者負担はあまり重くなく、平均して月二百円程度であります。低賃金労働者の負担は、標準報酬が少ないため、右の平均よりはるかに少額に相なることは当然であります。国庫負担については、実質上
一般国民年金と同額程度が確保されるようになっており、その他、拠出
期間、繰り上げ減額年金、繰り下げ増額年金
制度、非課税及びスライド、免除、また害障、遺族
給付については、
一般国民年金と同様の
内容あるいは仕組みに相なっております。
そのほか、特に申し上げて置かなくてはならないことは、通算について完全な方法がとられることであります。本
国民年金法内の両
制度間はもちろん、既存の年金との通算の場合も、途中の職業転換、
制度転換によって一切損をしない仕組みになっていることを明らかにいたしておきます。
以上、
一般国民、労働者、両年金
制度について申し上げましたが、そのおのおのの年金税は、減免に対する国庫補てん分を加えまして、
厚生大臣の管理する
国民年金特別会計において積み立てることに相なっております。この
積立金は、当然受給
資格者のものであるとの観点に割り切って、その運用の方法を定めてあります。すなわち、
積立金のうち相当の部分を
福祉施設建設等のため運用することとし、その中で、需給
資格者の団体に対して直接に貸し付ける道を大きく開くことにいたしてあります。残部は、全部の予定利率六分を維持するために、資金運用部に七分で貸し付けることにいたしておりまして、
所要の
法律改正をこの中に盛ってあります。資金運用部のこの資金の運用についても
国民の福祉に役立つ方面に用うべき旨の規制を加えることにいたしてあるわけでありまして、軍需産業資金に用いられるようなことは断じていたさせないわけであります。実際の運用については、
国民年金積立金運用
審議会において審
議決定した方向に従い、
厚生大臣が行なうことにいたしてありまして、この
審議会の構成は、
一般国民年金、労働者年金の受給
資格者の代表おのおの五名、
学識経験者五名、官庁代表三名という、使用主代表を加えない画期的な構成にいたしてあります。
以上が、本
国民年金制度の
内容の大綱であります。
本法の施行期日は
昭和三十六年四月一日、年金の支払い開始及び年金税の徴収開始は同年十月一日からであります。
国民年金法施行に要する
一般会計よりの
経費は、平年
計算にいたしまして、その第一年度約二千百二十四億円であり、その内訳は、養老年金約一千三百三十億円、母子年金約三百十六億円、身体障害者年金約四十五億円、
国民年金税減免の補てん分約二百十億円、普通
国民年金の障害並びに遺族
年金給付に関する国庫補助金、労働者年金の使用主としての国庫負担分等約百十億円。年金支払いに要する
事務費約六億円、労働者、
一般国民、両年金税法施行に要する
経費それぞれ十五億、八十七億、小計約百二億円であります。以上の国庫支出の大部分が賦課方式でありますので、自後逐年逓増をいたします。本年金
制度完成時すなわち四十年後には約年九千億円に達し、それ以上は大体増加を停止し平準化されることになります。
以上のごとく国庫支出は相当の程度に達しますが、その最初の
金額は、最近の財政状態から見て、
政府が社会保障を本当に推進しようとするならば直ちに実現可能であり、後々の支出増も財政上はいささかの心配のない程度であります。と申しますのは、各位の御理解のごとく、わが国の
経済が逐年拡大、国家財政もまたそれに従って拡大するからであります。ただいま各党とも
経済拡大に自信を持っておのおのその成長率を発表しておるわけでありますが、かりに、故意に各党の態度よりはるかに控えめに、明治以降のわが国
経済成長平均率四%で考えてみましょう。この率でわが国の
経済が拡大すれば、四十年後には約五倍に相なりまして、同じ率以上で財政が拡大し得ることは当然でありますが、これも大事をとって同率と見て約十兆の財政のワクが考えられるわけであり、相当の減税でワクがそれより縮まったとしても、九千くらいの程度の国庫支出はきわめて容易なことであり、それが全
国民に対するものである限り、その支出は
国民に理解賛成されるものであると信ずる次第であります。
以上、大体の御
説明でございますが、賢明なる同僚各位には、この
国民年金関係六
法案が、
国民から批判を受けている
現行法の欠点のすべてを解決し得る
内容を持ち、憲法第二十五条の精神をほんとうに実現することのできる社会保障に徹した案であることを、しかも直ちに実現容易な案であることを、御理解いただけたと信ずるものであります。それとともに、このような案であってこそ、所得保障という本来の大切な目的を果たすとともに、他の重要な面に非常な好影響を与えるものであることも御理解いただけると存じます。すなわち、本
制度を通じての所得再配分によって
国民生活の不均衡が相当程度是正され、これによって継続的な有効需要が確保されることによって、諸産業の振興安定に資するところ大なるものがございます。このことは、雇用の増大と安定を招来するものでありますが、さらに、完全な所得保障によって不完全就労を減少し、労働力化率が低下するという好ましい効果の面も加えまして、完全雇用への道を進めるものであります。さらに、十分な年金
制度は、雇用労働力の新陳代謝を促進し、鉱工業生産力を増大せしめるとともに、農業、中小商工業の経営権を若き世代に移すことによって、その近代化協同化への原動力と相なるわけであります。以上の諸点もあわせ御理解をいただきたいと存じます。
以上、きわめて簡単でございましたが、社会党
国民年金六
法案に関する
全般的な点の大綱を御
説明申し上げたわけであります。
これより三
法案の
内容の大綱について御
説明申し上げます。
まず、
一般国民年金税法案より申し上げます。
この
法案は、
国民年金法案第四十条第四項の
規定に基づきまして、
一般国民年金税の賦課徴収その他
一般国民年金税に関する
事項を定める
法律案であります。
まず第一に、
一般国民年金税は、毎年世帯主より、世帯主及びその世帯に属する
一般国民年金の受給
資格者につき均等割額、所得割額、資歴割額の合計額により課するものでありまして、均等割額は、
一般国民年金の受給
資格者一人につき年一千円であります。所得割額は、世帯主及びその世帯に属する
一般国民年金の受給
資格者の前年の合計所得
金額の合計額を課税標準とし、それに百分の〇・二八を乗じて算定いたします。世帯主が労働者である場合、その状態に見合うべき程度の控除をいたすことにいたしてございます。資産割額は、世帯主及びその世帯に属する
一般国民年金の受給
資格者が所有する固定資産(これは居住用の財産を除きます)の固定資産課税台帳に
登録されたものの合計額に百分の〇・二四を乗じた
金額であります。この場合世帯主が労働者である場合には、その状態に見合う程度の控除をいたします。右は普通の場合でありますが、徴収不能または困難な世帯では、減免、すなわち税額控除あるいは非課税にいたしますことは前に述べた通りであります。前年の世帯の所得合計から二万四千円を控除した
金額を世帯員数で除した
金額が三万六千円をこえ四万八千円以下の場合、第十一条の税額控除が適用され、その控除率は百の十から始まり、九段階に分かれ、一番多いところは百分の九十に達します。右の
金額が三万六千円以下、または生活保護法適用家庭は、非課税に相なります。納期は毎年六月から翌年三月まで毎月十分の一ずつ徴収することに相なっており、農家の場合は、政令の定めるところにより、申請により七月末、十一月末に、二回に分けて納入することができるよういたしてございます。
民主的構成による中央
国民年金審査会、地方
国民年金審査会を置き、不服の際に審査を受けることができるよういたしてございます。
事務は市町村長がつかさどることになっており、
国税局長がこれの監督をすることに相なっております。その他税法上必要なすべてのことにつき細目の
規定をいたしてございます。
本
法案の施行期日は
昭和三十六年十月一日、本
法案施行に要する
費用は前に申し述べました通りであり、税収入額は、初年度百六十二億円、平年度約三百二十三億円でございます。
以上で、
一般国民年金税法案の御
説明を終わり、次に、
労働者年金税法案について申し上げます。
この
法案は、
国民年金法案第四十六条第四項の
規定に従いまして、労働者年金税の課税標準、税率、その他労働者年金税に関する
事項を定める
法律案であります。
まず、第一に、労働者年金税の課税標準は、
事業主の使用する
事業用ごとの労働者年金の受給
資格にかかわるその月の標準報酬の
金額の合計額といたしてございます。標準報酬については
国民年金法案第四十九条において、第一級三千円より第三十級七万二千円まで三十等級に分けてございます。
次に、労働者年金税の税率は百分の二・七であります。ただし、生活保護法の適用を受ける労働者が、
国民年金法第四十六条第五項ただし書きの
規定により同項本文に
規定する労働者負担をしない場合は、納税義務者である
事業主はその分だけ税額の控除を受けられることに相なっております。この労働者年金税は毎月納入されるべく
規定されております。不服あるものが地方
国民年金税
審査会、中央
国民年金税
審査会の審査を受けることができますことは、
一般国民年金税法案の場合と同様であります。
事務については、税務署が直接当たり、市町村長に委託はいたしません。その他税法上必要なことのすべてにつき細目の
規定をいたしてございます。
本
法案の施行期日は
昭和三十六年十月一日、本法施行に要する
費用は前に申し述べました通りであり、税収入額は、初年度約六百三十七億円、平年
計算にして第一年度約一千二百七十四億円であります。
以上で、
労働者年金税法案の御
説明を終わり、次に、
国民年金特別会計法案について申し上げます。
この
法案は、
国民年金法による
一般国民年金事業及び労働者年金
事業に関する
政府の
経理を明確にするため
国民年金特別会計を設置し、
一般会計と区別して
経理する目的を持ったものであります。
この
会計は、
一般国民年金勘定、労働者年金
勘定の二つに区分され、それぞれの
勘定においては
一般国民年金税あるいは労働者年金税、
一般会計からの
受入金、
積立金から生ずる収入、借入金及び付属雑収入をもってその
歳入とし、
一般国民年金あるいは労働者年金の
給付金、借り入れの償還金及び
利子、一時借入金の
利子、
業務取扱費並びに付属諸費をもって
歳出とすることに相なっております。この
会計は
厚生大臣が法令に従って管理するものであり、
厚生大臣は、毎
会計年度
歳出歳入予定
計画書を
大蔵大臣に送付しなければならないことといたしてございます。内閣は、毎
会計年度、この
会計の予算、決算を作成し、
一般会計の予算決算とともに
国会に
提出しなければならないことにいたしてございます。
その他、余裕金の預託、借入金等について
規定をいたしてございます。厚生年金保険、船員保険中年金部分、農林漁業団体
職員共済組合等は、労働者年金に即時統合されることに相なっておりますので、従って、以上の
制度の
積立金等の権利義務は本
特別会計に承継されるべき旨を定めておるわけでございます。
本
法案は、
昭和三十六年十月一日から施行され、
昭和三十六年度予算から適用されることに相なっております。
以上で、
国民年金特別会計法案の
説明を終わります。
これで、日本社会党の
国民年金制度に関する考え方と、それを実施するための具体的な
法律案としての三
法案の御
説明を申し上げた次第でございます。何とぞ、三
法案を建設的に十分に御
審議賜わり、一日も早く満場一致御可決あらんことを切に御要望申し上げて、御
説明を終わる次第でございます。