○広瀬(秀)
委員 だいぶ
大臣長々と
答弁されたわけでありますが、安ければ安いほどいいということをわれわれもそう強く言っているわけではございません。行政水準の問題もあって、取った税金が国民の生活向上のためにどんどん使われ、また社会保障なんかによってはね返ってくるという形が出るならばもこれは税が今の二〇・七%よりもある程度高くなるということはあり得るかもわかりません。きのうの中山先生の
税制調査会における二〇%というものを出したのも、別に大した
税制上の根本的な原則に触れてのめどではないのだ、それは何もめどなしては困るからという一応のめどにすぎないんだということを、言っておられるわけであって、二〇%というものに対してそれほどの深い
意味というものは、中山先生も否定しておられたわけなんです。いずれにしましても、今日までとにかく国民が安いと思うような税金であることが必要
だし、それから公平であるというととが必要だ。さらに税法というものはわかりやすくなくちゃならないのだ。そうすれば非常にわかりやすい税金の中で公平に取られておる。しかも生活の実態からいってもそう重いという感じなしに納められる。こういうことならば、みんなが納得して、喜んで税金を納めることになる。これが理想だろうと思うのです。
ところが、今日の
税体系の中で、その三つの原則をいずれも破っておるものは
租税特別措置法だ、かように私は
考えるわけであります。なぜならば、たとえば今度縮小したと申しましても、今までは配当だけで食べておるという人があった場合には、これは百六十五万円までは標準世帯で税金がかからぬ。片方はようやく今度引き上げて給与所得の場合には三十九万円、こういうことになって、この三十九万円の人が四十万円もらうようになればもう税金がかかる、片方は同じ標準世帯で今度は百三十三万円までかからない、こういうことになる。そのときには四十万円まで今度は上げた、上げた、これは安くしたんだ、負けてやったんだ、こう言ったって、その人は、百三十三万円、しかも資産所得であり不労所得である、そういうものがあるのに、われわれは四十万取ればもう幾らかかかる、四十一万円でもかかる、こういうことになれば、これはやはり安いという
気持はない。これはわれわれの税金は大へん高いんだという
気持にならざるを得ないと思う。これはそういう特別
措置もあること
だし、しかもまた公平の原則からいっても、これは枚挙にいとまがないほどいろいろ問題があると思います。
大体今二十八項目ばかり
租税特別措置が行なわれていて、分類すれば五つくらいに分類できる形でありますけれ
ども、この中で大体において大企業、大
法人——きのう中山先生に私も伺ったのでありますが、大体この
租税特別措置法は、少なくとも大づかみに八割くらい大
法人にその利益というものが集中しているということをお認めになりました。そして、しかも中小
法人なんかについては、ほとんどごくわずかしか
減税の恩典というものは浴さないわけです。大づかみに言っても、そういう非常に不公平な税負担になっている。
税調では、五千万円以上を大
法人と見て、その課税所得と総所得との割合を出しておられますが、大
法人の場合にはその比率は七九・九%くらい——われわれからいえば資本金一千万円で大中小ということをやっているのですが、
税調では五千万円まで上げて、五千万円をこえるものが大
法人だというような形でとりましても、この
租税特別措置があることによって、総所得に対する課税所得の比率が大体七九・九%になっている。ところが、中小
法人の場合には、これは約九二%というような工合になっているということを見ても、いかに公平を失しているかということははっきりしているわけであります。
さらに、基本
税制がある。その上にこの二十八項目にわたって、しかもその
一つの項目についても大へんな長い条文が書かれ、しかもむずかしい条文で書かれている。こういうむずかしいものがあるために、中小
法人なんかは、自分のところであるいは適用されるものがあったにしても見のがすような場合があるけれ
ども、大
法人の場合は、おそらくりっぱな計理士や公認会計士というものがついておって、全部漏れなく完全な適用を受けられるというような形から、そういうことになる。従って、実質課税なんかにおいても、特別
措置があることによって、
税調の資料をとりましても、大
法人の場合にはおそらく実質税負担割合というものは三〇%前後、中小
法人の場合にはこれは四〇%程度になっている、こういう結果が出ておるわけです。こういうことにもなるし、非常に
税体系全体を混乱させ、わかりにくくしておる、こういう点があろうと思う。
租税特別措置法というものはやはりそういうものがあって、しかもこれが作られた中には古い歴史を持つものもありましょうけれ
ども、大体においてシャウプ勧告以後行なわれたものでありまして、当時インフレと戦争によって資本蓄積が非常に後退しておった。この資本蓄積を回復するという
意味で、大体二十七年ころだったと思いますが、約十年前から急激にふえて参ったわけでありますが、そういうようなことで今日まで非課税の
積立金あるいは免税所得、こういうようなものが一兆五千億にも上る、こういうことになるわけです。これをかりに平均税率二〇%ということで
税調のやつを適用しましても、少なくとも三千億というものは負けてやっておるわけです。しかもその八割以上は大
法人のものだ、こういう形になっているわけです。おそらくこれは、その他の
減税項目による減収というものを加えますと、これは十年間に約六、七千億に上がっておるのではないかと思います。会社の数にしましても、おそらく資本金一千万円以上なんというのは八千九百くらいしかありません。それから所得の一千万円以上で見ましても一万二千三百くらいしかないのです。そういうものにそういう膨大な
減税というものが集中しているわけです。さらにまた、きのうの中山先生の
お話によりましても、一般
減税はシャウプ勧告以来七千七百億であります。そうしますと、わずかに所得額で見て一万二千くらいの会社、四十五万からの会社の中で、あるいは資本金にしましても約九千程度の会社に対して六、七千億に上る
減税をやってきた。実質的には五千億くらいになると思いますが、そういうものをやってきた。国民全体に対しては七千七百億程度しかやらなかった。こういうような現状が出ているわけです。
こういう
租税特別措置法に対して、
税調は整理縮小の
方向というものを三十一年に出しました。それを期限付の勧告をいたしまして、利子所得の分離、税率軽減、あるいは配当所得、輸出所得、それから重要外国技術使用料、あるいは航空機の通行税、重要機械輸入関税、あるいは増資登録税、交際費課税、こういうようなものについては期限付の勧告をしたわけです。それは租税の公平の原則というものを極端に害しているのだから、なるべく早い時期に整理縮小するのだということを三十一年にはっきり出しているわけです。それを出しているのに、今度また
税調というものを設けて一年延長したり、三年延長したり——こういうものについてすら一番極端に
税体系の中でも問題があって、非常に悪い、いけないというような
結論が出てそういう期限を付したものを、また今度これを
税調にかけて期限延長をやった。これは相当問題があろうと思う。そういう点で私は
大臣にこの際伺いたいのですけれ
ども、一体、
税制調査会というものが、こういう不合理な、しかも大へん国民の納得のできない
租税特別措置法を——むしろこれが整理縮小の
方向をぼかすために
税調を利用しているのではないか、隠れみのにしているのじゃないか、こういう印象を国民として持たざるを得ないわけでありますが、
大臣のその点についてのお
考えはいかがでありますか。