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1961-03-16 第38回国会 衆議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月十六日(木曜日)    午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 足立 篤郎君    理事 鴨田 宗一君 理事 細田 義安君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 辻原 弘市君 理事 平岡忠次郎君    理事 横山 利秋君       伊藤 五郎君    岡田 修一君       金子 一平君    簡牛 凡夫君       田澤 吉郎君    津雲 國利君       永田 亮一君    米山 恒治君       有馬 輝武君    佐藤觀次郎君       田原 春次君    広瀬 秀吉君       藤原豊次郎君    堀  昌雄君       武藤 山治君    安井 吉典君       春日 一幸君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一一号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第二四号)  揮発油税法の一部を改正する法律案内閣提出  第二五号)  地方道路税法の一部を改正する法律案内閣提  出第二六号)  金融に関する件      ————◇—————
  2. 足立篤郎

    足立委員長 これより会議を開きます。  この際、金融に関する件について、横山利秋君より発言を求められております。これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 先般、私どもの方からお願いいたしました諸般の問題につきまして、理事会の御決定に基づきまして、大臣に御質問をいたしたいと思います。  私が質問をいたします点は、本日は、その中の一つ労働金庫関係する問題であります。すでに大臣には内容は昨日お話しになっておると思いますから、できる限り簡単に一つ大臣の意のあるところをお聞かせ願いたいと思います。労働金庫の問題を三点に分けまして、一つずつ大臣にお伺いいたします。  その第一は、恩給等担保金融取り扱いであります。恩給年金担保金融は庶民の生活金融でありますので、性格的にもふさわしい労働金庫でこれを取り扱えるよう、関係法律改正要望するというのが、私ども趣旨でございます。これにつきまして大臣のお考えをお伺いいたします。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 恩給担保貸付は事務的に非常に複雑で、国民金融公庫で統一的に行ならことが最も効率的であるということから、法律でその措置を講じておるわけでございますが、これを他の機関にやらせるということは不適当だという私ども考えでおります。ただし、今までの状態を見ますと、この資金の需要はかなり充足されておって、たとえば三十五年の四月から去年の十二月までの実績を見ますと、申し込みの貸出比率で、件数では九九・三%、金額では九四・四%というような充足状態でございますので、この点は今のところは非常にうまくいっていますが、なお今後においても恩給担保貸出資金を拡充する必要がございますし、取り扱い代理所を見ますと、去年の暮れの数で公庫の支所が八十四カ所、それから二百四十五の代理所がこれを扱っているといろ状態で、今後この代理所をふやすというような場合に、労働金庫国民金融公庫恩給担保貸付業務代理所にするかどうかという問題については、私どもはこれは検討したいと考えておりますが、大体ストレートに労働金庫にこれを取り扱わせるということは、今のところ不適当であろうというのが私ども結論でございます。
  5. 横山利秋

    横山委員 語尾がちょっと濁るのでございますが、そういう御回答では少し不満足なのであります。大臣としては代理業務を扱わせるととならば差しつかえないというふうに、そこだけまず区切ってお話をいただいて、政府として差しつかえないということであるならば、私どもとしても諸般準備を直ちにいたしたい、こう思っておるわけでございますから、将来云々ではなくて、今日の問題を議論して、今日の諸般事情から議会でそういうことになったのでありますから、その辺の折り目をはっきりさせていただきたいのでありますが、代理業務なら差しつかえない、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 取り扱い代理所を今後ふやしたいとまあ私ども考えておりますので、その場合に労働金庫に受託するということは、これは考えられるから検討しようということでございます。
  7. 横山利秋

    横山委員 もう一つ詰めてお伺いしますが、私どもはもう準備ができておるわけであります。今から政府提案をなさるということも実際問題として困難であろうから、場合によれば委員長ともおはかりをして、本委員会でまとめて関係改正法案を出したい、こう考えておるわけであります。法案が出ましたときに、大臣がこれに対してノーとおっしゃるはずはないと思うのでありますが、その点の大臣のお気持一つはっきりさせておいていただきたいと思います。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 大体ノーと言わない方向検討いたしたいと思っております。
  9. 横山利秋

    横山委員 第二番目の問題でありますが、中小企業退職金共済事業団業務代行の問題であります。この「事業団は、労働大臣認可を受けて、金融機関に対して、退職金等の支給並びに掛金及び申込金の収納及び返還に関する業務の一部を委託することができることになっているので、労働金庫受託機関となれるよう措置されたい。」こういう希望を出しておるところでございますが、この点についてはいかがでありますか。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 この問題は中小企業退職金共済審議会というものがございますので、この審議会意見によって、労働大臣認可するかどうかはきめるという建前になっております。今までのことを言いますと、この審議会では、労働金庫にこれを行なわせることは時期尚早だという意見が強くて、今のところ労働大臣がこれを認可するというところまではいっておりませんが、これは今後審議会意見も聞き、労働大臣がこれをどうするかという問題で、これは直接私どもの方が関係していない問題でございます。
  11. 横山利秋

    横山委員 そういう形式的なことはよく承知をいたしておるのでありますが、金融の一部でございますし、閣僚の一人としての水田さんに、諸般事情から、こうして御質問をせざるを得ない状況になりまして、本委員会及び理事会でいろいろ御相談の結果こういうようになったのでありますから、この辺は大臣としてもよく御承知をして下さって、御返事を願いたいのです。形式的に審議会答申があることが一つのリミットであろうということは存じていますけれども、しかし、一方においては、審議会質問がありましたら、これに政府としては異存がないというようなお考えをなさって下さるかどうか、また閣僚の一人として、金融機関担当者として、大蔵大臣が本問題についてどういうお考えをお持ち下さるのか、あるいはまた、与野党がいろいろ法案審議を尽くして参りまして、いろいろな意味からこの問題が俎上に上っておる政治的意義考えて下さって、水田さんとして十全の努力をして下さるのかどうか、そういうところが問題の焦点になっておるわけでありますから、諸般事情をお考え下さって、御答弁を願いたいと思います。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは私どもも部内でいろいろ検討はしましたが、従来の審議会意見も大体わかっておりますし、結局そういうところから出てきて、労働大臣からの相談があったというときには、われわれも相談に乗って検討すべきことと思うが、従来のいろいろな問題もございますし、今大蔵省がこういうふうにしたらこれはこうだという意見を述べるのは不適当だということで、労働大臣からの相談があったというときには大蔵省として考えようが、今われわれとしてはこう考えるというようなことは、なかなかそう簡単にすぐ結論を出せないのじゃないかというのが、私ども検討した結果でございまして、これはやはり管轄大臣からの相談を待ってから、われわれが相談に乗るという態度をとる方がいいのじゃないか、私もそう思っております。
  13. 横山利秋

    横山委員 くつの裏から足をかくような答弁で、私の言う意味もわかっていらっしゃると思うのですが、そういう点では、いま一歩進んだあなたの御答弁がなくては困る情勢にあるのです。これは私が困るのではない。あなたもお困りになる情勢にあるのですから、閣僚の一人として本問題について十分努力をなさるお気持をぜひ承りたいと思います。執拗に言って恐縮でございますが、そういう情勢にあるのですから、大臣一つ理解ある御答弁を願いたい。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 おっしゃることは十分わかりますが、今申しましたようにこれは大蔵省が……。
  15. 横山利秋

    横山委員 閣僚の一人として……。
  16. 水田三喜男

    水田国務大臣 閣僚の一人としても、私が大蔵省責任者でございますので、これは認可事項労働大臣に属することでございますから、この席で私がその意見を待たないで、こうああと言うことは差し控えたいと思います。
  17. 横山利秋

    横山委員 どの席ならいいのですか。
  18. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは政府部内で労働大臣から要求があったというときには、われわれは十分事情を聞いて検討をすることにしたいと思います。
  19. 横山利秋

    横山委員 労働大臣から相談があったならば、それでは私ども趣旨、主張について十分考慮をして、そのようにするというふうに理解してよろしゅうございますか。
  20. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは相談があればむろんいろいろ考えますが——まあ大体そういうことです。
  21. 横山利秋

    横山委員 それは率直なことを言って、大臣少しお約束が違うのでございます。ちょっと雰囲気としては、大臣に私どもが本委員会でなぜこういうことをいろいろ言うかという点についての雰囲気が、大田の耳に十分に入ってないようでございます。その点につきましては、きょうはあと発言者もたくさんございますから、本件については私はきわめて不満の意を表しておきます。こういうことでは少し話の筋道が違うのだということだけ、一つ大臣の耳に入れておいていただきたい。  第三番目の年金福祉事業団業務代行の問題。「事業団は、厚生大臣認可を受けて、金融機関に対し、福祉施設の設置又は整備に要する資金貸付業務の一部を委託することができることとなるので、労働金庫受託機関となれるよう措置されたい。」この点について御意見を伺います。
  22. 水田三喜男

    水田国務大臣 この前分科会であなたからの御質問がございましたが、御承知のように年金福祉専業団委託業務については、現在の年金福祉事業団法では、労働金庫はこれを行なってはならぬと格別排除はむろんしておりません。実際にこれを行なわせるかどうかについては、事業団事業内容が確定しなければ、これはまだわかりませんので、この事業内容が確定してから、厚生大臣から相談があるというようなことでしたら、私ども検討したい。この事業対象のうちで、被保険者である者で組織された法人とか、被保険者等福祉の増進に必要な業務を行なう法人というものについては、追って政令で具体的にきめられることになっておりますが、その内容は、母体的にきめる前には、社会保障制度審議会に諮ってきめなければならぬということになっています。その場合、労働金庫関係法人としては、消費生活協同組合とか労働者住宅福祉協会というようなものが今のところ予想されるのでございますが、それらについては場合によっては労働金庫委託業務を行なわせるということも考えていいのじゃないかというふうにも思われますので、これは、この前も分科会お話ししましたように、そういう方向で、厚生大臣から話があるという場合には、委託するということも差しつかえないのじゃ、ないかということをこの前お答えしたのでありますが、大体そういうふうに考えております。
  23. 横山利秋

    横山委員 非常に消極的なものの言い方で、私が揚げ足を取りはせぬかというような御心配がまさかおありになるとは思われないのですが、繰り返し申しますように、いろいろと与野党相談の結果、二、三は、委員長の仰せには、間違いでなかろうかというようなお話もあったのですけれども、しかし、いいだろう、ではお前があしたトップでこの点を大臣確めろ確めて多分大臣はイエスと言うはずだという話になっているのです。あなたは寝て忘れちゃったのではないですか。全部これはよろしい、よろしいというふうにおっしゃれば、それで話はあとはすらっといくのですけれども、何かどうも靴の裏から足をかくような気がしてなりません。三番目のお話は、そうすると大臣としては、年金福祉事業団業務代行労働金庫に認めてもよろしいと私は思う、こういうようにさっぱり理解してよろしいですか。
  24. 水田三喜男

    水田国務大臣 積極的でないことは確かでございますので、ただ、長い間いろいろ御要望があっても、いろいろな事情で実現してないことでございますし、しかも大蔵省面接自分自身できめられる問題でもございませんから、御要望に応じて、みな関係者検討して、できるだけ理屈が立って、差しつかえないというものは、御要望に沿うようにしたいという気持から検討するということを申し上げたのでありまして、これは差しつかえないからやるという積極性はあまり持っていないことは事実でございます。しかし、今話しましたように、三つともいろいろそういう問題がございますので、その進み方によって、私ども十分意に沿うように考えたいという気持でいるだけは確かでございます。
  25. 横山利秋

    横山委員 それでは話が違いますから納得できません。それでは、いろいろと他に関連がありますから、時間の関係上、あまりここで時間をとるのは私はいやでありますけれども、特に三点については、どうも話があまりにも違い過ぎるので、非常に不満なんです。あなたの言う将来の問題であることは事実だけれども、もうすでに予算委員会から分科会から社会労働委員会から何回も何回も議論をしておることなのです。本件については何にも特に取り立ててこれがだめだという理由はないはずなのです。大臣もここで答弁されたことは三回目なんです。きょうはそれだけの理由があって私も質問をしているのでございますから、本件に関しては将来いろいろのことがあるかもしれませんけれども、今日の厚生年金福祉事業団設立の経過、それから審議状況からいって、もう少し大臣としてははっきりした御答弁をなさっていい段階だと私は思う。今後検討の結果というのはもう済んでおる。ここは政治的に、大臣として、それじゃ年金福祉事業団業務代行労働金庫に認めてもいいと思うと、かりに言うならば、私は、思うということだけでもはっきりおっしゃっていただかないことには、どうも議論が進みませんから、この点は、諸般事情をお考え下さって、御答弁を重ねてお願いします。
  26. 水田三喜男

    水田国務大臣 率直に言いまして、私どもがすぐ御要望に沿うとしましたら、最初恩給掛保の問題は、これは法律を要しないことでございますので、これはもうそう検討と言わなくても、やろうと思えばすぐにやれるのじゃないかと思っておりますが、あとの二つは、いろいろ関係省を持っておることでございますので、私がここでやるとかやらぬとかということは一人の考えで言えませんが、第一の問題は、もう法律も要らないことでございますから、相談をきめるならすぐにもきまることと思います。
  27. 横山利秋

    横山委員 私の言うことに答弁されてないじゃないですか。第二、第三の問題は、これは関係大臣のあることも承知の上、それから第二の問題は審議会もあることも承知の上、第三番目は七月から発足するということも承知の上だ。けれども、こういう状況にあって私が質問をするのには、それだけの理由があるのだから、大臣としては、将来のことであるけれども自分自身としてはそういうように考えるから、こういうふうに努力をするというふうな御答弁があって差しつかえない状況ではないか、こう言っておるのでありますが、何も大臣がうんと言ったからといったって、ほかの大臣存在やら審議会存在を私は決してなおざりにしているわけではない。けれども大蔵大臣といえば内閣の大黒柱であります。水田さんがうんと言えば、大ていはうんといくというふうに私は思っているわけであります。そう思いながら、なおかつ大臣として、私としてはそういうふうに努力をするし、そういうふうにしたいと思っておるというふうな御答弁がこの段階において私はいただけるはずだと思うわけです。だいぶ立ち入って私も答弁を要求しておるのでありますから、そんないつまでもきわめてあいまいなお話では、今後の審議に差しつかえる点も多々出てくると私は思う。きのうの立場とだいぶ違いますので、だれがあなたにお話しなさったのか知りませんけれども、用意していた答弁答弁として、こういう状況もお考えの上、第三番目については、福祉事業団業務代行はそれでは労働金庫に認めたいと思うし、そういうふうに努力するというふうにおっしゃっていただければ、私の質問はこれで終わりますが、いかがですか。
  28. 水田三喜男

    水田国務大臣 大体私ども考えはおわかりだと思うのです。第一はそうですし、第三は、分科会でも申しましたように、私はこれは差しつかえないと思うと個人の気持答弁しておりますし、問題の難物は第二でございますが、これは実は時間もございませんで、労働大臣そのほかとの打ち合わせをしてない答弁でございますので、そういうところからの相談があれば私は検討すると申しているのでございまして、まだ関係者間でこの問題については私相談してありませんので、そう申し上げただけの話であります。
  29. 横山利秋

    横山委員 わかりました。それでは、第一、第三の問題はお引き受けになったと思うのです。第二の問題は、本来こういう雰囲気なのですから、労働大臣とお打ち合わせの上で御答弁をして下さったものだと思ったのですが、そうでないというならば、これは一つ別途保留をいたします。なるべくすみやかに労働大臣とお打ち合わせして下さって、大臣がどうしても御都合悪い場合には、次官なりその他の人から第二番目の最終回答をお伺いいたしたいと思います。  では、これで私の質問は終わります。      ————◇—————
  30. 足立篤郎

    足立委員長 次に、所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案揮発油税法の一部を改正する法律案及び地方道路税法の一部を改正する法律案の各法律案を一括して議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。有馬輝武君。
  31. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私は、まず第一に、税制調査会答申に対する政府態度についてお伺いいたしたいと存じます。国民が減税という声を聞きますときに、確かに税率に対する意識というものも相当程度あることは事実でありますが、それと同時に、やはり租税負担公平の原則からいいまして、不均衡感といいますか、こういったものの是正に対する強い要望があることは御承知通りであります。昨日中山参考人から税制調査会の討議の経緯についてお伺いいたしまして、その間租税特別措置並びに間接税については、率直に言ってわれわれとしても自戒しなければならない面があるというようなお話がありましたが、私は、税制調査会答申というものは、これは最低限じゃないか、このように考えておるわけであります。そういう意味で、今年度の税制調査会答申自体が、自然増収に見合う間接的な減税案であったのに対しまして、日ごろからあるこの租税特別措置法の手直しについて政府が積極的な手を打たなかった理由、これについてお伺いいたしたいと思いますし、また、今後のこれに対する一つ基本方向といいますか、それについてお伺いいたしたいと思います。
  32. 水田三喜男

    水田国務大臣 税制調査会から答申された意見をほとんどそのまま私どもは採用したわけでございますが、おっしゃられる通り減税案としては大体私も最低限のものではないかと考えております。問題は税制個々ばらばらにいじることの弊害は御承知通りでございますし、やはり税制一つ体系を持って均衡ある姿にならなければなりませんので、そういう意味で、減税については、特にこの税制調査会に三年という期間を与えて、そこで本格的な論議をしていただいて、そしてりっぱな税制を作りたいという考えで出ておりますので、そこで一挙に行き過ぎた減税ということをやっても、今度はまだ残っている中央地方を通ずる税源の配分問題とかいうような、もっと大きい問題も今後検討に残されておりますので、やはり全部の検討が済んでからほんとうの体系というものができるんだというふうに私ども考えておりますので、まず最初所得税法人税を中心とする案としては、一応妥当な案ではないかと考えて、私どもその通りにやりました。ただ意見通りにやらなかったのは、御承知通り百八十万円以下の所得者に対しても意見が出ておるのでございますが、私どもが七十万以下ということにしたのは、大体所得税納税者の九五%は七十万以下でございますので、そうすれば減税の目的は大体ある程度達するというような考えから減らしたのでございますが、税制調査会の案よりも、その点においてはこちらの方が下回ったということでございますので、まだまだこれは今後の検討によって、そういうところの再検討もこれから出る問題でございますし、今後も引き続いて減税はやるつもりでおりますので、そのように御了承願いたいと思います。
  33. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 特に私がお尋ねした主眼といいますのは、自然増収がこのように期待されておる時期に、やはり税体系の根本的な再検討ということがなされるべきだし、そういう意味税制調査会答申を尊重しておるという大臣のお答えでありましたが、私は、その税制調査会答申というものは、先ほど申し上げましたように、これを最低限として、そこに政府としての積極的な考え方というものが打ち出されてしかるべきだし、またそれには一番適当な時期ではなかったかと思うわけであります。そういう意味で、ただ税調まかせだという考え方ではなくて、やはりそういった政府の積極的な意図というものを、今後は税調に待つという形ではなくて、むしろ税調に先ばしって示していただくような御努力をぜひお願いしたいと思うわけであります。  次に、これも非常に抽象的な質問で、おわかりにくい点があろうかと思いますが、御承知のように、農民の所得倍増については、これは経済企画庁長官あるいは農林大臣も、その間に難点のあることを機会あるごとにお認めになっております。それで、やはり曲がりかどにきておる農政に対しましては、各般の施策というものが必要なことは当然でありまして、金融あるいは生産基盤の強化、あらゆる点から努力していかなければ、なかなかこの第一次産業の伸びというものは期待できない。そういう意味で、私は、税制の面からも相当お考えをいただかなければならないのじゃないか、こういう立場から、せんだって主税局長にお伺いいたしました。その具体的な問題といたしましては、農協に対する課税の問題等でありました。ところが、主税局長の御答弁では、他の均衡ということをもって、なかなかこれを積極的に進めるわけにはいかない、こういう御答弁で大体貫かれておったようであります。その意味で、たとえば農協に対する、積立金留保分に対する四分の一までの非課税、こういうものを二分の一にするとかいうような積極的なことを考えていただけないかどうか、この点について大蔵大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  34. 村山達雄

    村山政府委員 私から技術的な問題だけお答え申し上げておきますが、今回農業につきましてあまり税制改正考えていないというお話でございますが、実はわれわれはできるだけ考えたつもりでございます。その一つは、専従者控除というようなものは、もちろん低所得者たる事業所得者全部に適用があるわけでございますが、実際問題としては農家労働に着眼いたしまして起こした制度でございます。また、この問題の発端も、農業法人がとかく論議された。これが発端になっております。今度の白色申告者に対する専従者の控除の創設というのは、直接的には低所得者である農業所得者、家族従事者の多い農業所得者を中心にねらっているということは、御案内の通りだと思います。そのほかに、ここで何回か申し上げましたように、今度耐用年数の短縮を考えておりますが、これにつきましても、中小企業と並びまして、農業方面につきましても十分実情を考慮していく、こういうことを考えておるわけです。  さらに、農協の問題につきましては、この前もお話し申し上げましたように、現行の税法で、おそらく他国の税法に比べ、他の法人に比べて非常に優遇されておる特別の税率を持っている点、あるいは課税標準について例外なく他の法人と違う例外規定を設けている点、これらの点が現行法においてもすでに法人税法において他の法人よりも優遇されている。そのほかに、租税特別措置法におきまして、再建整備団体であるものにつきましては、お話のように資本金の四分の一に積立金が達するまでは、その事業所得者に対して課税しないという規定があるわけでございます。ただ、措置法でございますので、そのときどきの政策を見まして、大体主務官庁の政策の済んだものにつきましては、それは一応終わりといたしまして、また新しい問題が出てきた場合については、新しく考慮するということを申し上げたわけであります。今回農協につきまして新しい問題になっておりますのは、町村合併等に伴いまして、従来の農協等が新しい区域に編入されて参ります。しかるところ、農協につきましては御案内のように基盤の弱い組合もございまして、今後の農協の基礎を完全にするという方向で、だんだんこれを合併して参りまして、それでその基礎強化の方に持っていく、それによりましてその組合員を指導していく、こういう政策、方向がとられております。われわれも、この点を十分考慮いたしまして、きょうはそのお話が出ておりませんが、近く租税特別措置法の第二次分といたしまして、合併に伴う清算所得の課税、あるいは被合併農協あるいは漁業組合の赤字を新設の会社にそのまま認める、引き継ぎを認めて、自己の繰り越し欠損の対象にするという、全く前例を見ない法律措置をも考えておるわけでございまして、お話のように、われわれも、協同組合が今後果たすべき経済使命というものを考えまして、それに即応した税制を今国会においても検討しておるということを申し上げておきたいと思います。
  35. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今局長からだんだんのお話がございまして、確かに専従者控除の問題も取り上げていただいておりますし、試験研究機関の助成、あるいは産業の助成、あるいは低開発地域の促進というような各角度から、今お話しのような措置がとられておることは事実であります。またこの点については敬意を表しておりますが、は、たとえば他の国よりも云々というようなお話がありましたけれども、そういった均衡論で律せられないところまで日本の農業がきておる点に、私は一番大きな問題があろうと思います。そういう点で、ただ常識的に均衡をとった形で手当をすればそれで済むのだというものではなかろうと思います。やはりそういう点で、いま少し積極的な施策というものを税制の面でも考えていただく、こういうことがぜひ必要だと思うのでありますが、抽象的でけっこうでございますから、大臣、この点についてのお考えを聞かせてもらいたいと思います。
  36. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、今、国税に関する限りは、農業に対する配慮というものは相当行き届いておる、と言っては言い過ぎかもしれませんが、他のものに比較して相当優遇措置がとられておると思います。専従者控除によりましても、今まで四十何万という納税者が十二、三万に減少しておりますし、地方税に問題はありましても、国税に関する限り、農業課税だけは相当私ども考えるだけ考えておるというのが実情ではないかと思っております。
  37. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今大臣からお話がありましたように、少なくとも所得税については、農民の場合ほとんど問題にならないわけなんです。ですから、やはり農民に対する税制面での手当をしようとするならば、当然私は住民税に及ぶような施策というものが必要だったと思うのでありますが、今回は見送られてしまいました。これについてできるだけ早い機会に御検討いただく用意があるのかどうか、この点を伺いたいと思います。  それから、たとえばことしの地方財政計画におきましても、やはり国の伸びに見合いまして相当膨張いたしております。それだけに住民に対する負担も大きくなっておるわけでありますが、個々の農家にとりましては、ただ税だけではなくして、目に見えない公租公課というものが非常に大きな負担になっております。私どものところでも、月に何日というものは、政府がやってくれないから、市がやってくれないから、町がやってくれないから、畑の仕事をほったらかしておいて道路の整備に出なければならない。これは水田さんのところでもどこでも同じだろうと思うのです。そういう面で、私は、今申し上げますように、住民税に及ぼすような措置というものが一番先に取り上げられなければならぬと思うのでありますが、とれに対する将来の見通しについてお聞かせをいただきたいと思います。
  38. 水田三喜男

    水田国務大臣 税制調査会検討事項も今後地方税に及んでいく予定になっておりますし、地方税の検討はこれからわれわれが十分しようと思っておりますが、今申しましたように、国税の分野においては、農業課税については私どもはできるだけのことをしているつもりでございますので、これからは、さっき申しましたように、地方税の検討を十分したいと思っております。
  39. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 国税々々とおっしゃるのですけれども、その国税の恩典を受けるものは現在一割にも満たないのです。ですから問題はやはり地方税なんです。  これに関連してお伺いいたしたいと存じますが、私は国税と地方税の体系を根本的に再検討すべき時期にきておるのではなかろうかと思います。もちろん、地方交付税制度をとった経緯からいたしまして、それにおのずからリミットがあると思います。それにいたしましても、私は、この際国税と地方税の体系を根本的に再検討してしかるべきではないか、このように考えておりますが、今大臣の御答弁にありましたような地方税のことを考える際に、根本的に再検討していただくような考えはないか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  40. 村山達雄

    村山政府委員 税制調査会での地方税についての経緯だけ申し上げておきますと、有馬先生も御案内のように、今度の改正におきましても、白色専従者の控除の創設に伴いまして、少なくとも事業税におきましては、これを五万円といたしまして取り入れたわけであります。これによる減収も相当多額の金額を見込んでおるわけであります。おっしゃる点は、おそらく住民税になぜ及ぼさなかったかという点にあるだろうと思いますが、これは、この前も御説明申し上げましたように、今度の専従者控除というのは、給与を出しておるかどうかにかかわらず一律に認めるという点がございます。しかも、地方税は、税の性格といたしまして、広く住民に負担を求めて、そのかわりに税率は非常に安い累進税率でいく。大体原則として国税の五分の一くらいの軽度の累進税率でございます。地方税というものは、そういう負担分任の精神から薄く広く求めるという本来の基本的な性格がございます。かたがたさっき申しました専従者控除を設けたというのが、給与を払ってなくても認める、こういう事情と、地方ごとに先ほど申しましたように家計と企業の分化の程度が違う、こういう点とあわせて地方財政の問題を考慮いたしまして、地方税においては事業税だけに専従者控除を取り入れることにとどめるべきである、こういう結論が一応出たわけでございます。しかしながら、おっしゃるように、地方税と国税を通じての体系という問題は絶えず検討して参らねばならぬと思います。今年度におきましては、税源配分の大きな問題が残っておりますので、好むと好まざるとにかかわらず、この税源配分を通じまして再び税体系の問題が出て参ると思いますので、その際におっしゃるような趣旨も十分勘案いたしまして、全般的にさらに再検討を加えていきたい、かように考えております。
  41. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 ぜひ今の局長の御答弁のように根本的な再検討を加えていただきたいと存じます。  次にお伺いしたいと思いますことは、これは小さな問題でありますけれども、農民にとりましては大問題でありまして、この前予算委員会において周東農林大臣にお伺いしましたところ、米の買い上げにつきましては昨年度の一万四百五十円を下回らないという御答弁をいただきまして、なお予約減税その他の問題については米審の答申に基づいて検討するということで、確たる御回答がありませんでした。ところが、その際にも私は周東農相にも申し上げたのですけれども大蔵省あたりの意向として、予約減税は廃止するという考え方がある、こういうことが一部に報ぜられました。この点について、今後も相当期間にわたってこれは存置していくのだというお考えがあるかどうか、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  42. 村山達雄

    村山政府委員 これは、われわれ税制を預かっておる者の考え方といたしましては、予約供出に対する減税が行なわれた際と今日における負担関係、また現在予約米の減税を実際に受けておる農家の全農家に対する比率その他を考え、またその軽減割合等を考えてみますと、税制としてはすでに廃止していい段階ではなかろうか、こういう結論税制調査会でも一応出ておるわけでございます。しかしながら、先ほど有馬委員がおっしゃったように、農業の問題については、単に税制上の考慮だけでなく、もっと広く農政上の観点からさらに総合的に勘案する必要がある、こういう声がございますので、われわれといたしましても、それらの問題を総合的に検討していただく意味で、来たるべき米価審議会における米価決定の際において、総合的に検討していただくということにお願いしているわけでございます。税制調査会考えとしては一応そういう考えであります。
  43. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 どちらかわからぬような御答弁なので困るのですが、ぜひあとの方の各般の状況から勘案するという、その趣旨をぜひ貫いていただきたいと思います。  とにかく大蔵省というところは均衡論、筋だけを言われるので、筋を通して、足が引きつったり、手が動かなくなったりするのが現状でありまして、そういう意味で、今局長もちょっと触れられましたように、日本の農業に対してはそういう特別の手だてというものを存置し、また新しく作っていかなきゃどうともならない。二・五%くらいずつしか伸びないやつを、所得倍増というようなことで、物価の値上がりでとことんまで追い詰めていく現状なのですから、やはりそこには深い洞察とあたたかい手というものがぜひ必要なんです。それを、他との均衡あるいは外国との均衡というようなことで、あるいは税制調査会が言ったからこの際というようなことで米審に臨まれないように、ぜひこの点はお願いをいたしておきます。  次に、ガソリン税の問題について少しお尋ねいたします。この点については同僚委員の方からもあとで詳しくお尋ねがあろうかと存じますが、大体六三・四%ガソリン税に道路整備の費用をおんぶしなければならない、三税におんぶしなければならないという行き方は、私は税制に対する根本的な態度からいたしまして問題があろうかと思うのであります。二十四年にできてから一年越しに増徴してきた、それを今度は、当初大蔵大臣としては見送るというようなお考えがあったようでありますが、どたんばになってなぜこのような形でさらに増徴しなければならないのか。道路整備について主税に大幅な負担をかけていいのかどうか、この点についての大蔵大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  44. 水田三喜男

    水田国務大臣 私どもは、今の道路五年計画で一兆円ということになっておりましたが、これでは今の実情に対処できない、この計画を強化する必要があるということから、いろいろな財政的な問題、実際の工事の効率的な促進の問題等考えて、一兆八千億円程度の計画が至当ではなかろうかというのが私ども考え方でございました。もしその程度の計画でよろしいということであったら、ガソリン税等の増徴を見合わせてもこれはやっていけるという考えから、当初ガソリン税増徴ということは考えておりませんでしたが、御承知通り一兆八千億ではどうしても要望に対処できないということでございまして、計画を二兆一千億円に変えることにいたしました。そうしますと、この財源は、特にこの税は目的税として今後道路の整備に充てるということでできている税でございますから、結局道路計画を大きくするのなら、一般会計で負担できる分は負担するし、その他はこの税金の増徴によるほかはございませんので、いろいろ考えました結果、また現在諸外国でガソリンに課している税金も考え、また小売価格の外国のいろいろな例を見ましても、日本のガソリンの値段にはまだ相当の余裕があるということから、一五%程度の増徴はやむを得ないという結論で、ガソリン税の増徴をきめたわけでございます。
  45. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 諸外国と比べて、あるいは道路整備新五カ年計画の一兆八千億が二兆一千億になったからやむを得ずというようなだんだんのお話でございますが、やはりガソリンの使用というものがどのような形で行なわれておるかという点に対する認識を現実にマッチさせていかなければ、政府の現在とっております生産の伸び、産業の伸びというものは、少なくとも、その使用状況から見まして、むしろこの増徴によって手足をもがれるという限界にきておるのではないか。六三・四%、これでは、政府が当初掲げました公共事業を政策の一番大きな柱にしておられた、その趣旨からもはずれてくるのではなかろうかと思うわけであります。この点につきましては、私ども、この委員会におきまして十二分に政府考え方をただしておきたいと思いますが、今みたいなただ一兆八千億が二兆一千億になったからやむを得ないということでは、なかなかこの問題は解決しない。このことだけを申し上げまして、私の本日の質問はこれで終わります。
  46. 足立篤郎

    足立委員長 細田義安君。
  47. 細田義安

    ○細田(義)委員 ただいまもお話がありました政府の道路整備新五カ年二兆一千億計画、この中において財源にガソリン税を一五%上げるということでありますが、私は、これに関連をいたしまして、予算の配分等に関しまして二、三の点を大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。  去る二月二十四日に出ておりまする時事通信でありますが、この官庁速報によりますると、大蔵省は、道路整備新五カ年計画の事業内容について検討を進めておるが、有料道路事業の東海道幹線自動車国道には相当額の事業費を認める方針なのに反しまして、いわゆる中央道については、建設省、自民党筋の中央道にもぜひ事業費を配分すべきだという強い要望があるのでありますが、これに対しましては、その必要なしとの従来通り態度で臨んでおる、こういうふうに記されております。これは、両道路法案が昨年国会に提案された際の交通関係閣僚懇談会におきまして、財源の関係上二つの道路事業を同時に着工することは避けるとの了解が成立したことをたてとするものと、大蔵省があたかも中央自動車道路の建設を阻止しておるというような印象を受けるような報道があるのであります。このような関係からいたしまして、現在、この報道が、関係地元民及び私ども会議員の間におきましても、大きなセンセーションを起こしております。私はこの報道は必ずしも百パーセントの事実を伝えていないと考えておるのでありますが、この点についてお尋ねして参るわけであります。たとえば現行の昭和三十四年度を初年度といたしまする道路整備計画、この五カ年計画におきましては、中央自動車道、東京から小牧間の建設費といたしまして、百二億円が計上されております。これはもちろん大蔵省が了解の上で計上されたものでありますから、この事実から見れば、大蔵省が中央自動車道の建設に従来から否定的であったという報道は、真実を曲げておると私は指摘したいのであります。しかし、この官庁速報が部分的に事実と異なる報道を行なっているとはいえ、この報道から受ける全般的な印象というものは、きわめて重大な問題をはらんでいます。そこで、われわれは念のためにこの質問を行ないまして、このあやまちがあるかどうか、この点を率直にお聞かせを願いたいのであります。  まず第一にお伺いをしたいことは、大蔵者は、中央道については自民党、社会党、民社党も同様の態度でありますが、建設省の中央自動車道にもぜひ事業費を配分すべきだとの要望に対して、その必要はないとの態度をとっておるという官庁速報の記事であります。はたしてこれは事実かどうか、この点についてのお答えを願いたいのであります。  次に、さらにお聞きしたいことは、去る一月十一日に、大蔵大臣は、非公式の席で、新道路整備五カ年計画に対しては、大蔵省として全体的な投資額のワクについては意見を述べるが、個々の事業費の配分に対してまで意見を述べることはしないとの見解を表明しておるようであります。大蔵大臣のその見解は今日といえども変更はないかどうか、大臣の明快な答弁を伺いたいのであります。  次にお聞ききしたいことは、池田総理大臣は、中央自動車道は、東京から富士山麓までは東京オリンピックまでには完成させたいと公約しておるのであります。大蔵大臣もこの公約を御存じのことと思いますが、大蔵大臣はこの公約を実現することに努力を払う考えはないかどうか。  最後に、質問の第四点は、国民の生活費及び所得の地域格差の問題は今日大きく論議されておりますが、所得倍増計画の一大眼目であります大都市と地方との間に地域格差を免じた最大の原因というものは、交通とか運輸とか、こういうものの便不便によると思うのであります。従いまして、新道路整備、五カ年計画は地域格差の是正が大きな眼目となって策定されなければならぬ、私どもはかように考えておるのであります。このためには、既存の道路の改良だけでは目的を達成できるものではありません。いわゆる先行の構想を強力に押し進める必要がございます。また、当面する交通幅湊対策の名目のもとに、大都市周辺や東海道地域だけに道路整備の重点を置くならば、地域格差は是正どころかさらにますます倍加して参ることは確実であります。政府及び自民党は、地域格差というものをなくそうということを主張しておるのでありますが、この政策は、このような点からいたしましては、一片のかけ声にすぎないというようなことにもなるわけであります。中央自動車道は、六大都市を結びまして、高速自動車交通網の幹線としてその使命を帯びるものであるばかりでなく、本州中部の未開発後進地域を縦貫いたしまして、この地域の国民の所得を十五年後におきましては五倍にする効果を持つ、こういうことを目標にやっておるわけであります。この見地から、政府は、中央自動車道、東京から小牧間の建設を積極的に行なうべきである、私どもはこれを強く主張しておるのでありますが、この点について水田大蔵大臣はいかような御見解をおとりでありますか、お伺いしてみたいと思います。
  48. 水田三喜男

    水田国務大臣 道路計画は、当然地方の格差をなくすための一つの基盤を作る計画でございますので、おっしゃるような配慮は十分われわれはしたいと思います。しかし、所得倍増計画にもありますように、現実に必要に迫られておるところをほっておいて、そうでないところへ資金をつぎ込むというようなことは、資金効率の上からいっても、また実際の必要性から見ても、これは不合理なことでございますので、そこらをどう勘案して、当面の必要に対処すると同時に、将来のための未開発地域の開発にそれが資するような策を立てるかというところが問題でございまして、これは、建設省当局において、そこらを見合った事業計画を立て、事業量の配分もすることになっております。そこで、たとえば今の中央国道について見ますと、東京−名古屋間の全線を予定しているこの中央道は、建設省が調査した結果の報告によりますと、工事が非常に困難であること、これは当然でございますが、高速自動車国道としての機能が割合に低いということ、これも言えると思います。   〔委員長退席、山中(貞)委員長代理   着席〕 それから、維持費が非常に高くて、有料道路としてはなかなか採算のとれるめどがつかないというようなことが報告されておりますが、しかし、そういうような困難性も克服してこの道路を作ることが国策としていいんだということで、この道路を作るという踏み切りを国としてはつけたわけでございますが、さてその場合に東海道幹線の自動車道路との関係をどうするか、この重複問題で、関係省の間に、同時にこれを一緒にやることはできない、まず当面問題になっている、実際の必要性に迫られているところから始めるという、一応相談があったということは、私は聞いております。ですから、いろいろな卒業の配分も、建設省では協定通りにやるのならそういう方向でやるのがほんとうだと思いますが、今おっしゃいましたような問題もございますし、所得倍増計画のように、最初の十年間は、たとえばこの問題で言いましたら東海道線をやるのがほんとうだ、あとの十年計画のときにそういうものを取り上げるというふうに、やはり順序は考えるというのが倍増計画の考え方にはなっておりますが、それだけの思想は貫けない。ですから、これはやはり一部必要な場所は資金計画が許す範囲で中央道路も着手すべきだという意見がいろいろ起こっておりますので、それをどうするかについての案は建設省で今やっておるところでございまして、四千五百億円の有料道路計画の内訳というものはまだできておりませんし、従って私どもにこれが示されておりませんので、この建設省の考えをもとにしてわれわれは慎重に検討したい、こう考えております。
  49. 細田義安

    ○細田(義)委員 私ども、予算の編成の経過におきまして、一兆八千億から二兆一千億に押し上げたということの理由は、これらの問題もひっくるめて解決の方途に向かってもらいたいということで、ガソリン税の値上げも万やむを得ないというような点で、党をあげてこの問題に取り組んだわけであります。それから、われわれに対する党の態度も、また双方は一緒にやるべきであるとか、いろいろの見解はありまするが、国会においてほとんど満場一致をもってやるべきであるという判断が与えられておるわけであります。そこで、私は、前の佐藤君とかいう道路局長がおりましたときに、いろいろお話を伺ったのでありますが、どれもできない話ばかりなさっておりまするから、君の意見を聞いてもだめだ、われわれが与えた問題を解明できない、これがやっていけないという腕前であるならば君は下がれ、私どもは問題を与えたのだ、わしの技術ではできないということであれば、それを率直に訴えなさいということまでも申し上げたのであります。そこで、私は、同時に主計局長にも尋ねたいのでありますが、現在大蔵省は建設省からこの問題についていかような交渉を受けておるか。
  50. 石原周夫

    ○石原政府委員 先ほど大臣からお答えをいただきましたように、二兆一千億の新しい五カ年計画、その中におきまする四千五百億円の有料道路について、これをどういうような案にいたしまするか、検討中でございまするので、まだ事務当局といたしまして相談を受ける段階に至っておりません。
  51. 細田義安

    ○細田(義)委員 まだ大蔵省相談を受けていない、従って意思表示もしていないということでございます。そこで、しからばお願いするのでありますが、私どもは、数年間苦労して皆様にお訴えをいたしまして、後進地域を開発しようということに力を注いで参ったわけであります。これはまた多くの人たちの共感を呼んでおる問題でありまして、東海道は込んでおりまするし、お話通りでありまするから、この問題を解決することについて、われわれは何ら容喙するものではありません。同時に、所得はどんどんふえて参る、政府の力を借りないでも、国民の総努力によって日本の経済が非常によくなっておる、こういう際にこそ、後進地域を開発して百年の後に備えるということは、目前のことに追われてごたごたしておるときに、私はすばらしい仕事だという考えを持ってやって参っておるわけであります。どうか、建設省から御相談がありました場合におきましても——これは地元の一国会議員が叫んでおるという問題ではありません。御存じの通り、多数の方々がわれわれの意見に賛同いたしまして、この法案通り、予定法案通りまして、これから日の目を見ようというときであります。ただ、選挙のときに、総理大臣がやってきましていろいろ返事をしただけでは、政治は進みません。行政を通じて現実に車が通れる道路を作ってもらわなければ、われわれ承知ができない、こういう立場でございます。従って、大蔵大臣、大体主計局長のところでさばくわけでありますから、あまりつれない、冷たい態度一つやめてもらって、われわれも喜べるようなよい案をお示し願いたいと思うのであります。これは山梨から向うの方へ行ったら大きな問題ですよ。水田大蔵大臣には長年私どもも世話になっておりまするが、あと一年も二年も大臣をやっておられるわけではないのだから、よい案を一つおみやげに残して、後進県を開発してやる——一つの会社でさえ五百億、一千億に資本金を乗せようという時代に、一国をあずかっておって三百億や五百億の金がさけないということでは、財政についての腕前がないとさえ私どもは感ずるわけであります。そういう点で、一つ思い切って勇気を出して、勇敢に将来に備えての施策を御推進願いたい。これがお願いでございます。
  52. 水田三喜男

    水田国務大臣 御趣旨も十分わかっておりますし、さっき申したように、急を要するものに限るという趣旨だけで貫ける計画ではございませんので、十分心得ております。
  53. 山中貞則

    ○山中(貞)委員長代理 辻原弘市君。
  54. 辻原弘市

    ○辻原委員 税に関しまして二、三大臣に伺いたいと思います。これは今まで当委員会におきまして相当論議をして参った問題でありますし、また予算委員会等でも基本的な問題として取り上げられております。かつ、きのうは税制調査会の中山会長からもいろいろ御意見を承ったのでありますが、今回の税制改正を総覧してみました場合に言えることは、改善は行なわれておるが、根本的な問題には触れられておらぬということであります。説明等におきましては、税の公平負担、あるいは低額所得君の免税、こういうことを並べられておりまするが、税制体系上根本的な問題は今後に見送られておると私は考える。従って、その立場から問題を提起いたしてみたいと思うのでありますが、その一つは、直接税と間接税の問題であります。これは、きのうも中山さんから承りますと、われわれの意見について同感の意を表されておりましたが、今回の改正については間接税は見送っておられる。しかも、シャウプ税制改正以来の傾向は、間接税と直接税の比較をいたしまして、年々この率が増加をしておる、こういう傾向をたどっておる。さらにまた、間接税の内部におきましても、今日いろいろな矛盾を持ってきておる。たとえば繊維製品の中においては、高級奢侈品といわれるものは税率は高いけれども間接税全体を見てみた場合に、たとえばよくいわれる酒税等を見ても、あるいはたばこの消費税等を見ても、それと繊維製品における最高級品と比較してみても、なおかつ酒税の、たとえばしょうちゅうに対する税金の方が高いというような問題が、間接税の内部においてもひそんでおるわけであります。特にまた間接税が大衆課税であるという面において、これに手をつけられなかったということについても、それ相当の理由がなければならぬと思いますが、しかし、今回見送られておるということはまことに遺憾であります。この間、大臣は、この問題について来年は必ずやるというお話でありましたので、そのことはあえて触れませんけれども、要するに、税の公平負担という立場からいきますならば、すみやかに間接税全般に手をつけるべきである、こういうことを私どもは主張をいたしておきたいのでありますが、重ねて大臣の積極的な御意見を承っておきたい。
  55. 水田三喜男

    水田国務大臣 前に申し述べましたように、税制改正の日程としましては、来年度は間接税についての改正を私どもはやりたいと思っております。
  56. 辻原弘市

    ○辻原委員 間接税を来年度おやりになる、そのことはまことにけっこうであります。あわせて、私は入場税の問題について承っておきたいのでありますが、今おやりになるという構想の中には、入場税も当然含まれると理解してよろしいかどうか。
  57. 水田三喜男

    水田国務大臣 むろん入場税は検討の対象でございます。
  58. 辻原弘市

    ○辻原委員 その場合、一国の文化保護という立場に立って、大臣のお気持を承っておきたいのでありますが、きのうも参考人からこれに対する御意見を承りますと、すでに国際的にも、ユネスコ等においては、文化保護という建前において、それをセーブするかのごとき税制は、これは撤廃するという各国の申し合わせが行なわれて、先進諸国等においては、セーブよりはむしろ助成というような積極的な立場をとっておるところがあるやに聞いておるわけです。それに比べますと、わが国の入場税制は、いかにも文化に対するものの考え方が足りないように私どもは感ずるのであります。もちろん入場税といいましても千差万別でありまするから、その中には検討を要する部面もあるではありましょう。しかしながら、総覧をしてみた場合に、少なくとも今日の三〇%から一〇%に至る税率というものは、現実に少し高過ぎるじゃないか。少し過酷じゃないか。また一面免税点を設けておるが、あるいは二十円あるいは三十円といったような免税点は、現在の物価指数から考えてみて、いかにも不適当じゃないか、時宜に適した免税措置ではないというふうにわれわれは理解をするのでありますが、検討するということでなくして、積極的にこれを撤廃あるいは相当量の軽減をはかっていくというお気持を今日お持ちになっておらぬだろうか、これを伺いたいと思います。
  59. 水田三喜男

    水田国務大臣 今申しましたように、入場税は十分検討いたしますが、入場税の中でも特に映画興行の状態を見ますと、家庭で見るテレビには税金がかからなくて、外へ行ったらかかるというような非難も出ておりますし、また興行の実態から見ましても、斜陽産業といわれておるような実情でございますので、特にこういう点については慎重に検討したいと思います。
  60. 村山達雄

    村山政府委員 入場税につきましては、御案内のように三十四年に大幅な減税をやりまして今日の姿になっておるわけでございます。しかし、入場税については、なお御指摘のようないろいろ検討すべき事項があると思います。おっしゃる点の、文化保護的な見地でさらに検討せよというお話でございますが、現行税は、御案内のように、純音楽等につきましては、かりに百円をこえておりましても、最高税率二〇%ということにされておるわけでございます。ただその見地ももちろん必要でございますが、一方料金の高さにもよるわけでございまして、担税力は原則としては料金の額によって見る、この見地と今の純音楽、純舞踊、そういう文化方面の見地と、どの辺で調整するかという点が問題になると思いますが、現行法でもある程度は考慮しておるのでございますが、今のような点もありますので、さらに来年度全面的な改正につきましては、この点をあわせて検討したい、こういうように考えております。
  61. 辻原弘市

    ○辻原委員 大臣の言われた、現在テレビが非常に普及をして、映画産業それ自体非常な斜陽産業の部類に入ってきて、経営が困難に至っておる、そういった面から、これに対して映画そのものが持つ一つの文化に対する意義、こういう点から考えて、経営上の採算、これを救っていこうというための入場税の問題、これが一つあると思います。同時に、見るものは不特定多数の一般庶民大衆である。ところが、映画の企業あるいは興行というものは、採算ということを考えて入場料を徴収する。それが高額な税金を課せられておるために、結局は、税とか一般の入場料とかという区別なくして、大衆の肩にかかってくる。そこでせっかく見たいものが簡単に見られないという問題が起こってくる。だから、たとえば映画の経営者等の意見をわれわれが聞いてみても、少なくとも今映画を税金というものを頭に置かずに国民に見せるならば、大体百三十円から百五十円くらいの入場料をもって十分映画は採算が立つし、一般に公開できるという自信のほどを示されておる。そういうことを考えたならば、やはり採算という問題と、入場料金を低くしていい映画を、あるいはいい興行を文化のために国民に見せていくということには、どうしても根本的な改正を要するとわれわれは考えるわけです。今、局長の説明によると、百円をこえても、純音楽とかあるいは純芸術的ないいものについては、税法上特別の考慮を払っておるのだというお話がありましたけれども、しかし、それとても税率の二〇%を適用するだけであって、しかもその金額は百円なら百円という一つの金額を押えておる、そういう押え方にやはり問題があるのではないかと思う。  それから、もう一つは、入場料の多寡によって担税能力をはかるというものの考え方、これは、一面経済的なものの考え方をもってすれば、そういう理屈ももちろんあるわけでありますけれども、しかしながら、芸術的な、あるいは文化的なものの場合には、必ずしもそうはいかない。きのうも菊田さんあたりからそれを盛んに力説されておったわけでありますが、入場料を高く払うからその人のふところ工合がいいのだ、だから税金は高くしてもいいのだということは、事入場料に関しては一律にはいかぬというわけです。そういう点も十分考慮すべきではないかと私は思うのですが、それらについて、局長、もう少し立ち入った御意見があれば、この機会に承っておきたい。
  62. 村山達雄

    村山政府委員 お話のように、今の入場税の税率その他が高いかどうかという問題だろうと思うのでございますが、一般に間接税でございますが、税金は安ければ安いほどいいということは間違いないのでございまして、ただこれは間接税全般のバランスを考えまして、それぞれどの程度の税率を盛ることが、他の政策の要素も考えて、常識的に納得できるかという問題に尽きるのではないかと思うわけであります。文化の保護も必要だ、それからまた安い酒を飲ますことも必要だ、安い生活必需品を供給することも必要である、あるいは芸術品を供給することも必要である、それぞれ物品税なりあるいは酒税に響く問題でございます。全般的に直接税、間接税を問わず、負担は安くて済めばそれに越したことがないことは言うまでもないことでございます。おっしゃる通り十分考慮いたしまして、全体の税体系のバランスをはかりつつ、おっしゃるような方向にできるだけ持っていきたいと考えておるわけであります。
  63. 辻原弘市

    ○辻原委員 この税金は、三十五年度を見ても百三十五億、ことし取ろうとしておるのが百六十二億。四千億近い自然増収のある今日の税金全体からながめてみると、これはきわめて小さな部分を占めているわけです。ところが、その与える影響は、一国の文化に対して実に深刻な影響を与えておると思う。そういう立場から——もちろん今お話しの、税制全般から考えなければならぬという意見もわかるけれども、もう少しそれよりも高次な立場に立って十分検討されるように、私は希望しておきたいと思います。  次に、大臣に承りたいのは、所得税の問題であります。今回の改正の中身についてはいろいろ議論もありましたので、ここで一つ新しい問題として大臣に承っておきたいのは、きのうも私ちょっと申し上げたのでありますが、いわゆる所得税内部の不均衡、言いかえると勤労所得と資産所得のバランスが、今日どう考えてもとれておらぬと思う。たとえば山林に対しては、今日五分五乗の制度がとられておる。しかも、山そのものは固定資産税はかかるが、立木そのものは一体どういうことになっているのか。山の木そのものは、今日これくらい大きな資産はない。しかも特定の個人には相当大きく集中をしておる現状から考えてみれば、これは一体どういうことか。そういう一つのひっくるめた、あるいは譲渡税等の問題もありましょうが、税は軽いに越したことはない。同時にできるだけ公平にやらなければならぬが取れるところからはやはり税を取っていくという建前も、税制の上で一面重要な問題なんです。そういう意味でいって、私は、特にこの所得税といわれる中における相互矛盾、不公平、不均衡というものをもう少し是正をする立場から、税制改正検討さるべきではなかろうか。ところが、今回の税制調査会等におきましても幾分は検討されておるけれども、しかし数多くの問題については依然として未解決に残されておる。こういう点について一体大臣はどうお考えになりますか。
  64. 水田三喜男

    水田国務大臣 まだ所得税内部における不均衡という問題はずいぶんあると思います。今回の改正は、特に個人と法人と、青色申告と白色申告と、この間の均衡をとることには非常に苦心いたしましたし、また勤労所得と財産所得との関係も相当調整したつもりでございますが、まだそういう問題はあろうと思いますので、これは今後順次一応の体系を整えてから、さらに再検討によって是正していくというよりほかには仕方がないのじゃないかと思っておりますが、今のような問題についての税制調査会及び主税局がどういう考慮をしたかという問題については、主税局長から御説明いたします。
  65. 村山達雄

    村山政府委員 これは税体系全体を見てバランスを考えねばならぬと思いますが、所得税の分野におきまして、ただいまおあげになりました資産所得、勤労所得のバランスの問題、一つの例として山林所得をおとりになっておるわけでありますが、御案内のように所得税の税率は累進構造を持っておりまして、その年の所得の高さによりまして、比例税率以上の非常に高い、一〇%から七〇%までいくわけでございます。山林でございますと、普通四十年が伐期でございます。従いまして四十年の所得が一挙に出てくる。これを年々の所得と同じように課税したら、これは非常に過重の負担をこうむる。その調整方法といたしましていろいろなことがございましょう。今日の案は、いろいろ紆余曲折を経てきました結果、五分五乗という方法をとっておるわけでございます。何年かの所得が一挙に出てくるという点を着目して五分しておる。分離課税にしておりますのは、大体考えてみますと、山林業者というのはほとんど専業でございますから、他の所得と分離いたしましても、そうでなくても、実際の負担は変わらない、こういうところに所得税体系としては一応バランスはとれているんじゃないか、こう考えるわけでございます。  お説のように、固定資産税をなぜかけないかというお話でございますが、これは山林所得の山の素地はもちろん固定資産税の対象になるわけでございますが、立木というのは、考えてみますと、たなおろし資産と同様の性質を持つわけであります。これに固定資産税をかけるというのは、ちょっとやはり税制としてははみ出ておるのではないか。ただ、御案内のように、立木には全然かかっていないかといいますと、地方税で木材引取税というのがかかっております。これは二%かかっております。固定資産税では一般に標準税率が一・四%かかっておるのでございますが、それぞれ税制の目的、性格に照らして、現在の税体系はできておるわけであります。われわれとしては、この現行の租税体系につきましても、絶えず再検討を加えて参りますが、今おっしゃったような点で、特に不均衡であるというふうには考えていないわけであります。
  66. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は、山林の問題を一例にあげただけで、これを論ずることが主目的ではありませんけれども主税局長が若干われわれの認識と違う御意見を今吐かれましたので、申し上げておきますが、最近木材需給が御承知のように去年あたりから非常に急速に上がっております。原木の不足を告げておる。ところが、山に行ってみると、大きな原木が切られもせず、そのままあたかも骨董品のような姿で実際並んでおる。そして木材需要に対して非常なこれは障害になっておる。それは何を物語るかといえば、山そのものの価値は、これは木を抜いたはげ山にあらずして、木がはえているから山そのものの価値がある。だから、私は、今固定資産税をかけろと言ったのではありませんけれども、何かもう少し考える方法があるのじゃないか。しかも四十年伐期と言ったけれども、山林法その他においても、何ら山を切るという強制力を持った法律はないわけです。もちろん憲法上の問題があるから、いろいろ議論のあるところではあるけれども、そのままに放置されておる。だから、四十年はおろか、六十年、七十年、場合によれば山なんか立ちぐされにしても切らないという例が最近非常に多い。そうなれば、いわゆる適時伐採をやっているならば、それは立木いわゆるたなおろし資産というふうなものの考え方が通用するかもしれぬけれども、なかなか容易に切らぬで、りっぱな山だ、大きなでっかい木だといって、ただ見ているだけのものなら、それを流動資産と見ることが現実に即した一つのものの考え方、見方であるかということに私は疑問を持つわけであります。しかし、直ちに、それは土地そのものと同じように固定資産が適当であるという意見は申しませんよ。意見は申し上げませんけれども、何かそこらに、公平の原則から考えて、税法の取り扱い上問題があるのではないか。常に戦後今日まで山の値上がりの急速なことは、これは一目瞭然なのです。なぜそんなことになるかを考えておかなくちゃならぬ。従って、それによって、今日木材需要ということについてのバランスの上にも、かなりの影響を与えて、原木の値上がりは、これはもう日を追うて上がっている。だから、私は何も重税を課せと言うわけではございませんけれども、同じ税金でありながら、一方勤労所得税においては源泉で頭から引かれ、経費も何も認められない。また小さい個人企業であれば、自家労賃すら満足に認められない。そういう税制が片方では存在しながら、片方には、これはたなおろし資産と同然ですからということで、事実上非常な恩恵を与えられている。また、木材の引取税にいたしましても、こういう席で私は現状を申し上げませんが、必ずしもこれが公平に行なわれているとは考えられない。だから、そこらに——これはごく一例でありますよ。あるいは譲渡所得なんかの問題についても、具体例をあげれば限りはないと思います。ですから、単に勤労所得税を、少しばかりの扶養控除を上げて、名目的減税をして、これによって軽減をいたしました、これによって税の公平の負担のあれがかなり実現いたしますなんということは、ほんとうにくつの裏から足をかくような一つの施策であって、もう少し抜本的なものの考え方をやるべきだということの一例に申し上げただけでありまして、いま少しそういう点についての認識を主税局長一つお持ちを願いたいということを申し上げておきます。時間がありませんので、それについては私の感想を申し上げておきます。  次に、これはきのう中山さんに私お尋ねしたのでありますが、法人税の問題で、今回の改正では大体三点、それから特別措置の問題を入れると四項目にわたって改正が行なわれております。ところが、所得税は先ほどお話しになったように高度の累進課税を採用しておりますが、法人税については、現在あれほど大資本と中小の法人との格差ということがやかましくいわれておりながら、税法上はそういうことはあまり考慮されておらない。質問をいたしますと、それは日本の場合には法人擬制説をとっておるから、どうしても累進課税という方式は採用されないのだ、こういうふうな説明を私はしばしば聞くのであります。しかし、実情から見て、今日のようないわゆる法人税収が相当高額に上っておるおりには、やはり少々取ってもへこたれないようなところからは取るべきだ。ところが、ちょっぴり取ればがたがたになるような弱小法人に、大法人と同じように、それに近いような税率を課しておくということは、これはますます私は大企業と中小以下の企業との間に差を生むものだという認識を持っておる。だから、せめて、一挙に高度累進課税にはいかなくても、今回われわれ社会党が提出をいたしておりますような段階的な、グループ、グループによってある数段階を設ける程度の、そういう一つの課税方式というものは採用してもしかるべきではないか。現在ではわずかに二百万円以下が五%軽減されているにすぎない。この法人税に対するものの考え方、私はできるだけ単なる所得比例制でなしに、累進的な課税方式を加味してはどうかということを意見として申し上げるわけでありますが、大臣の御意見一つ承っておきたいと思います。
  67. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは税理論の上からいっても非常に大きい問題で、簡単な問題ではございませんので、今その方がいいとか悪いということはちょっと私としてここでは申し上げられません。
  68. 村山達雄

    村山政府委員 ただいま大臣お話し申し上げましたように、非常にむずかしい問題を含んでおるのであります。   〔山中(貞)委員長代理退席、委員長   着席〕 現行は、御案内のように、法人税は二百万以下とそうでないものに五%の差を設けている。さらに、事業税におきましても、少額所得については軽減する、こういうことはやってはおりますが、所得税におけるほど激しい累進税率構造を持っていない。各国の例を見ましても、法人税というのは大体比例税率が原則でございます。日本における過去の例を見ましても、資本に対する超過所得税をどれだけかけるか、あるいは過去の基準年度に対しまして所程の増加した場合に、その部分について特別税率をかける、いわゆる臨時所得税考え方、こういう形で出ておりまして、累進税率で課税しているというのは、過去においても、諸外国においてもない。なかなかこの辺がむずかしいところでございまして、法人の実態というものをどう考えるか、しかも企業というものが所得の発生源であるという点を考えますと、なかなかむずかしい問題だということでございます。さらに、戦前のような、たとえば超過所得税のようなものをかけたらどうかというような意見が、今度の政府税制調査会においても、実は非常に真剣に論議されたわけでございます。そのときに、一つ法人というものの本質をどう考えるかという問題と、それからもう一つは、実行上の見地から、もしそういうことになりますと、その資本金というものが非常にやかましくなります。比例税率でございますと、ある年度の所得に属するか、翌年の所得に属するかということは、そうやかましく言わなくても、いずれは取れる。同じ額を負担すべき運命にあるわけでございます。しかし、もし累進税率ということになり、あるいは超過所得税ということになりますと、その所得がいずれの期間に発生したかという問題は、非常に厳密に、やかましく言わざるを得ない。そうなりますと、実際の企業の会計の方から申しますと、ある程度の税務会計に拘束される点はやむを得ないにしても、それも非常に必要以上に縛られますと、相当弾力性のある経理をする必要が企業というものには現実には存するわけでございますが、それが非常に阻害されてくる。かたがた実行上その問題をめぐって非常な波乱も起きてくる。そういうやかましい措置をとることは、非常に根本的にも問題があり、実務的にも問題があるので、この点については今度は実は否定的の答えが出ておるわけでございまして、むしろやるべきことは、今度の改正であげられたような、そういう方向に向かって考えるべきである。中小法人その他の問題については、そういう今度の改正項目ごとにその辺十分落ち度のないように考えよう、こういうことで政正案もできておりますし、政府の案もそういうふうに提案されているわけであります。
  69. 辻原弘市

    ○辻原委員 技術的に困難だということはよくわかります。だから、一挙に所得税と同じような累進方式を採用することに問題があるとしても、現在少なくとも二百万円以下五%という一段階を設けておるのでありますから、もう少し段階をふやして、グループ的に課税をしていくという程度のことは可能ではないか。それから、もう一つ申し上げたいのは、諸外国の例、戦前の例を言われますけれども、戦前と比較して今日では法人の形態は非常に違っておると思います。また、世界の各国と比較をするということにおいて、日本の事業形態と必ずしも私は同一には論ぜられないと思います。ということは、御承知通りやかましく言われる日本の産業構造には、中小企業というものが世界に例を見ないほど発達をしておる今日の段階において、また日本の状態においては、どうしてもこれを健全な方向に育成していくためには、税法上もう少し根本的な方向考えなければならぬという意味において、せめてグループ的なそういう取り扱いをおやりになってはいかがなものか。われわれ社会党としましては、今回の税制改正の私ども一つ考え方として、四段階に分けたグループ制を提示しておるわけで、そこらあたりまでは現実から見て可能じゃないか。それについてはどうなんですか。
  70. 村山達雄

    村山政府委員 現行でも、先ほど申しましたように、二段階法人税は設けておる、事業税に至りましては四段階を設けておる、こういうことでございます。今おっしゃった点が実は非常にむずかしい問題でございます。およそバランスを考えるときに、個人からたとえば一億以上の法人というところまで段階があるわけでございます。おそらく個人と一億以上の法人の税率のバランスを合わせていったら、実感が出ないのが普通だと思うのです。個人の所縁と一億以上の法人の税率のバランスは一体どこで比較をとるのか。片方は企業をやっておるわけです。片方は所得が帰属するところである。非常に縁の遠いものだ。ところが、だんだん置いてみますと、今度は個人の隣にすぐ同じ形の同族法人がございます。これと個人の問題がすぐ問題になる。それからその次に大体非同族会社の中小法人があるわけです。これとまた個人と類似の同族法人というものは実態においてそう差がない。だんだん言って参りますと、従業員の数もふえ、資本金もふえ、株式も公開しておる、こういう大会社までずっとあるわけです。ですから、理論的に言いますと、抽象的にはそれぞれのバランスの問題というものが当然考えられるわけでございます。特に日本におきましては、九〇%以上が同族法人である。四十万余りのうち九〇%以上が同族法人であるという法人形態は、他国に例を見ないわけでございます。それだけにバランスをとるということがむずかしいわけでございますが、そういう意味のバランスを一体どこからどこの限界にとるかということも、実はバランス、バランスと言いながら、非常にむずかしい問題なんでございまして、先ほど私が申しましたのは、決してそういう考えが一がいに成り立たぬということを申し上げているわけではなくて、実行論として考えられる案を考えてみますと、先ほど申し上げましたような累進税率とかなんとかいうことになると、非常にやかましい期間、損益の問題が出てきますし、実行上もあるいは経済的にも非常に大きな影響を及ぼす。おっしゃる点は、おそらく、二百万以下というのをもう少し芸をこまかくしたら、あるいはその角度をもう少し出したらどうか、どういう問題であろうかと思いますが、この問題は実は当初は五十万からスタートしたわけであります。それを百万に上げ、二百万に上げてきている、こういう事情にございます。おっしゃるような点もございますが、これは、全体の法人の本質という問題とからみまして、なかなかむずかしい問題でございますので、今後さらに検討を進めて参りたい。今すぐにその考えが非常にけっこうでございますとも、あるいはその考えは成り立ちませんとも、なかなか申し上げかねる非常にむずかしい問題だということだけ申し上げておきます。
  71. 辻原弘市

    ○辻原委員 今だんだんのお話で、資本金の問題を基準にされているような印象を受けたのでありますが、われわれが考えているのは、法人の所得を一つの基準にしてグループ制を設けている。そういうことならば、現存やっておる制度とものの考え方においてはそう変わらない。ただそれを、累進課税の方向というか、大企業と中小企業の本質的なバランスという面から、その格差を縮めるという意味においての税体系を作るという考え方から止まれるものであるから、必ずしもあなたの言われているほどそう深刻に問題と取り組まなければならないとは私は考えないのですが、その点はどうなんですか。
  72. 村山達雄

    村山政府委員 単純に今申しましたおそらく中小同族法人のことが頭にあると思いますが、これを減税いたしますと、個人の減税が当然相次いで起きなくちゃいかぬ問題でございます。その辺がなかなか問題だ。個人の減税をいたしますと同時に、各種所得の格差のバランスの問題で給与所得まで全部及ぶ、こういう問題を下の方には全部含んでおるわけでございます。上の方には、さっき言ったように、どこまでがバランスとして税制上とるべき問題であるか、おそらくは程度の問題であろうと思うわけでございます。先ほど私が資本金を申し上げましたのは、何といいますか、大企業から個人に至る間いろいろなものがございます。そういう例として、資本金が大きいものもありますし、小さいものもありますということを言いました。おっしゃることは所得グループでお考えになっているのであろう。そういう点はわれわれも考えておるわけであります。
  73. 辻原弘市

    ○辻原委員 それが個人に及びまた所得税全般に及ぶというのは、私はむしろけっこうじゃないかと思う。なぜ今日同族会社がはびこっておるかというと、個人の税金が高いからなんです。また、法人にしても、大企業と同じ税率を課されても、中小法人は、いろんな方法を講じていかなければ成り立っていかぬ状態にあるから、四苦八苦している。そういう意味からいって、中小法人に対する税制を設けてランクして軽減していくことが個人に及んでも、私は差しつかえないのじゃないかと思う。そこで給与所得いわゆる勤労源泉徴収所得とバランスをとるという形に始末をつけても、税体系としては一向かまわない。むしろ一つの理想ではないか。それはそれぞれ意見の分かれるところでありますから、それ以上申し上げませんけれども、しかし、現状において何ら手をつけられていないということ、そういう点についてはもう少し考慮を払ってもいいのじゃないかということを、今回の改正について印象を受けます。もちろん、そのほか同族会社の給与所得の軽減あるいは企業課税に対する取り扱い問題等は、まことにこれはけっこうであります。あるいは専従控除を認められたことはけっこうでありますけれども、しかし、法人税取り扱いの中において軽減をするということよりも、むしろ配当に対する課税の問題等は、企業、産業そのものを振興させるという資本充実の立場から取り上げられた一つ税制改正のにおいが強いのであって、そういう面を取り除いていけば、中小法人そのものの税負担を低めていく、あるいはそれに合わせて個人企業のバランスもとっていくという術における軽減、そういう目的を持った税制改正ということが、今回の税制改正にあたっては比較的少ないように私は思います。問題はだから今後にありますから、そういう点について、どうか一つ大臣としても、大きな問題であり困難な問題であるかもしれぬけれども、日本の中小企業の状態、日本の産業構造の実態に立って、いま少し積極的に御検討を願いたい、こういうふうに私は希望を申し上げまして、だいぶ時間もたちましたので、残余の質問はこの次にいたしたいと思います。
  74. 足立篤郎

    足立委員長 広瀬秀吉君。
  75. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣にお伺いしたいのでありますが、税金は原則として安いことが一つあげられると思います。もちろんこれは安ければ安いほどいいという単純なものではございませんけれども、適正な、しかもその時代その時代における生活費に絶対食い込んではならないという意味に理解してもらっていいわけでありますが、それが一つある。それから特に公平でなければならない。税法というものは非常にわかりやすいものでなければならない。こういうような場合に国民は納得して税金を納めるのだ、かように思うわけでありますが、大臣の御所見はいかがですか。
  76. 水田三喜男

    水田国務大臣 税は確かに安いに越したことはございません。これは安いほどいいと思います。ところが、前に税制調査会から、大体国民の負担は国民所得に対して二〇%前後の負担率が一応妥当だという意見が出ましたので、私どもも一応その意見を尊重して、なるたけ二〇%台の負担率くらいの税のかけ方を考えていきたいというふうに考えて、今回も減税に非常に苦心いたしましたし、今後の国民所持の伸び方を考えますと、その負担率をこえないようにするというためには、これはもう毎年減税をやっていかなければいかぬ、こういうふうに私ども考えております。しかし、なぜ税金の負担率が少なくなければならぬかということは、結局国民所得の実態からくることでございまして、国民が一万円しか所得がないというときの一割と、十万円の所得の一割では、もう質が違いまして、一方は九千円しか残らぬ、そうしたら標準生活はできないということになりますし、一方は九万円残るというのでしたら……。
  77. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そんなことを聞いているのではない。今の原則を認められるかどうかということを聞いている。
  78. 水田三喜男

    水田国務大臣 いや、その原則の問題です。で、九万円ということになれば、同じ率でもこれは実質が違うのでございます。そういうことを考えますと、私は最近疑問を持ってきまして、所得倍増計画あるいはこれが三倍、四倍といくようなときに、税金というものはやっぱりどうしても安くなければならぬという原則でいくべきかどうか。ほんとうに負担力が出るというときには、国家のする仕事もありますし、民族が伸びるためのいろいろな必要経費というものが出てくる場合に、税率というものは上がってもいいんじゃないか。現に先進国はみな日本よりもそういう税の負担率は高いということを考えると、私は、当分は、日本の国民生活の実態から見て、税は安ければ安いほどいいという原則を認めますが、ほんとうにわれわれの政策が実現して日本がよくなるというときになったら、安ければいいという原則は、これはいいか悪いかという疑問を持っています。なるたけ税の負担率は高くなってもいいという国民生活を築くのが、これからの政治の目的じゃないかとすら思っていますので、この問題は安ければいいという原則だけはそう簡単に貫けないのではないかと思っています。
  79. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 その他はいいわけですね。
  80. 水田三喜男

    水田国務大臣 その他はいいわけです。
  81. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 だいぶ大臣長々と答弁されたわけでありますが、安ければ安いほどいいということをわれわれもそう強く言っているわけではございません。行政水準の問題もあって、取った税金が国民の生活向上のためにどんどん使われ、また社会保障なんかによってはね返ってくるという形が出るならばもこれは税が今の二〇・七%よりもある程度高くなるということはあり得るかもわかりません。きのうの中山先生の税制調査会における二〇%というものを出したのも、別に大した税制上の根本的な原則に触れてのめどではないのだ、それは何もめどなしては困るからという一応のめどにすぎないんだということを、言っておられるわけであって、二〇%というものに対してそれほどの深い意味というものは、中山先生も否定しておられたわけなんです。いずれにしましても、今日までとにかく国民が安いと思うような税金であることが必要だし、それから公平であるというととが必要だ。さらに税法というものはわかりやすくなくちゃならないのだ。そうすれば非常にわかりやすい税金の中で公平に取られておる。しかも生活の実態からいってもそう重いという感じなしに納められる。こういうことならば、みんなが納得して、喜んで税金を納めることになる。これが理想だろうと思うのです。  ところが、今日の税体系の中で、その三つの原則をいずれも破っておるものは租税特別措置法だ、かように私は考えるわけであります。なぜならば、たとえば今度縮小したと申しましても、今までは配当だけで食べておるという人があった場合には、これは百六十五万円までは標準世帯で税金がかからぬ。片方はようやく今度引き上げて給与所得の場合には三十九万円、こういうことになって、この三十九万円の人が四十万円もらうようになればもう税金がかかる、片方は同じ標準世帯で今度は百三十三万円までかからない、こういうことになる。そのときには四十万円まで今度は上げた、上げた、これは安くしたんだ、負けてやったんだ、こう言ったって、その人は、百三十三万円、しかも資産所得であり不労所得である、そういうものがあるのに、われわれは四十万取ればもう幾らかかかる、四十一万円でもかかる、こういうことになれば、これはやはり安いという気持はない。これはわれわれの税金は大へん高いんだという気持にならざるを得ないと思う。これはそういう特別措置もあることだし、しかもまた公平の原則からいっても、これは枚挙にいとまがないほどいろいろ問題があると思います。  大体今二十八項目ばかり租税特別措置が行なわれていて、分類すれば五つくらいに分類できる形でありますけれども、この中で大体において大企業、大法人——きのう中山先生に私も伺ったのでありますが、大体この租税特別措置法は、少なくとも大づかみに八割くらい大法人にその利益というものが集中しているということをお認めになりました。そして、しかも中小法人なんかについては、ほとんどごくわずかしか減税の恩典というものは浴さないわけです。大づかみに言っても、そういう非常に不公平な税負担になっている。税調では、五千万円以上を大法人と見て、その課税所得と総所得との割合を出しておられますが、大法人の場合にはその比率は七九・九%くらい——われわれからいえば資本金一千万円で大中小ということをやっているのですが、税調では五千万円まで上げて、五千万円をこえるものが大法人だというような形でとりましても、この租税特別措置があることによって、総所得に対する課税所得の比率が大体七九・九%になっている。ところが、中小法人の場合には、これは約九二%というような工合になっているということを見ても、いかに公平を失しているかということははっきりしているわけであります。  さらに、基本税制がある。その上にこの二十八項目にわたって、しかもその一つの項目についても大へんな長い条文が書かれ、しかもむずかしい条文で書かれている。こういうむずかしいものがあるために、中小法人なんかは、自分のところであるいは適用されるものがあったにしても見のがすような場合があるけれども、大法人の場合は、おそらくりっぱな計理士や公認会計士というものがついておって、全部漏れなく完全な適用を受けられるというような形から、そういうことになる。従って、実質課税なんかにおいても、特別措置があることによって、税調の資料をとりましても、大法人の場合にはおそらく実質税負担割合というものは三〇%前後、中小法人の場合にはこれは四〇%程度になっている、こういう結果が出ておるわけです。こういうことにもなるし、非常に税体系全体を混乱させ、わかりにくくしておる、こういう点があろうと思う。租税特別措置法というものはやはりそういうものがあって、しかもこれが作られた中には古い歴史を持つものもありましょうけれども、大体においてシャウプ勧告以後行なわれたものでありまして、当時インフレと戦争によって資本蓄積が非常に後退しておった。この資本蓄積を回復するという意味で、大体二十七年ころだったと思いますが、約十年前から急激にふえて参ったわけでありますが、そういうようなことで今日まで非課税の積立金あるいは免税所得、こういうようなものが一兆五千億にも上る、こういうことになるわけです。これをかりに平均税率二〇%ということで税調のやつを適用しましても、少なくとも三千億というものは負けてやっておるわけです。しかもその八割以上は大法人のものだ、こういう形になっているわけです。おそらくこれは、その他の減税項目による減収というものを加えますと、これは十年間に約六、七千億に上がっておるのではないかと思います。会社の数にしましても、おそらく資本金一千万円以上なんというのは八千九百くらいしかありません。それから所得の一千万円以上で見ましても一万二千三百くらいしかないのです。そういうものにそういう膨大な減税というものが集中しているわけです。さらにまた、きのうの中山先生のお話によりましても、一般減税はシャウプ勧告以来七千七百億であります。そうしますと、わずかに所得額で見て一万二千くらいの会社、四十五万からの会社の中で、あるいは資本金にしましても約九千程度の会社に対して六、七千億に上る減税をやってきた。実質的には五千億くらいになると思いますが、そういうものをやってきた。国民全体に対しては七千七百億程度しかやらなかった。こういうような現状が出ているわけです。  こういう租税特別措置法に対して、税調は整理縮小の方向というものを三十一年に出しました。それを期限付の勧告をいたしまして、利子所得の分離、税率軽減、あるいは配当所得、輸出所得、それから重要外国技術使用料、あるいは航空機の通行税、重要機械輸入関税、あるいは増資登録税、交際費課税、こういうようなものについては期限付の勧告をしたわけです。それは租税の公平の原則というものを極端に害しているのだから、なるべく早い時期に整理縮小するのだということを三十一年にはっきり出しているわけです。それを出しているのに、今度また税調というものを設けて一年延長したり、三年延長したり——こういうものについてすら一番極端に税体系の中でも問題があって、非常に悪い、いけないというような結論が出てそういう期限を付したものを、また今度これを税調にかけて期限延長をやった。これは相当問題があろうと思う。そういう点で私は大臣にこの際伺いたいのですけれども、一体、税制調査会というものが、こういう不合理な、しかも大へん国民の納得のできない租税特別措置法を——むしろこれが整理縮小の方向をぼかすために税調を利用しているのではないか、隠れみのにしているのじゃないか、こういう印象を国民として持たざるを得ないわけでありますが、大臣のその点についてのお考えはいかがでありますか。
  82. 水田三喜男

    水田国務大臣 租税の特別措置ということは、もともと税の公平とか均衡とかいう理論からは全然問題にならない措置でございまして、そのときの経済の実情とか、いろいろのものから、こうすることが必要であるという政策的な見地から作られた措置でございますから、税理論から見たら、これは一日も早く、その政策の目的が達成したら、すぐにやめるべきものだと思います。政府も、そういう方針によって、その目的が達成されたと思うものはできるだけ整理するという方針で昔から臨んでおりますし、税制調査会も、その方針で、この問題については今度は真剣な検討をしていただきましたが、結局まだ現状においては存続の必要ありとか、この程度に合理化して改正する必要があるとかいうようなことで、その意見に従ったわけでございます。わざわざこれを存続するためにあそこを隠れみのにしたというような事情は全然ございません。この税制調査会の討議の模様を記録を見ていただければわかりますが、どうしてこういうものを整理しようかということを真剣にやった結果の結論でございまして、私どもももう目的を達成したと思われるものは、今後もどんどん整理するつもりですが整理すると同時に、また新しいいろんな事態が出て参りましたので、さっきお話がありました、たとえば農業協同組合の合併とか、これを促進させる必要があるということになりますと、税制上から見て、この繰り越し赤字も引き継がせるというような措置をとって、税をかけないことが目的に合うんだというようなことから、一方まだ整理しながら、一方特別措置は必要によってどんどんしてもいかなければいかぬというような情勢がございますので、これはもうそれでいいんだと私は思います。新しい措置ができると同時に、古い措置で目的を達したものは順次整理するという方針に変わりはございません。大企業とかいいますが確かにこの措置によって八割程度のものが大企業の関係になると思います。たとえば輸出控除の問題にしましてもいろいろ問題がございますがやはりここで、私どもとしまして輸出を相当振興させなければならぬという事情も現実にございますし、そういうときに、そういう目的でできた措置を今ここでとることがいいか悪いかというような問題、どれ一つを見てもそういう問題ばかりでございましたので、これは慎重に検討した結果でございまして、今度の改正程度はやむを得ないと私は思っております。
  83. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 経済政策を推進するためにやったということは、私も、先ほど言ったように、資本蓄積をはかるという経済目的があった、それで、課税公平の原則というものを非常に犠牲にしながら、これをやってきたのだということはわかっているわけです。三十一年の税制調査会、このときは名称は何といいましたか、臨時税制調査会ですか、ここで期限を切った。そういうものはもうそろそろ経済目的を達成したのだ、こういう見通しに立ってこういう勧告をされておるわけです。答申をされておるわけです。それをまた延ばす。こういうようなことは、期限一年延長したものを、来年になったらまた税制調査会にかけて、また延ばすというようなことをおやりになるつもりですか。それとも、もうすっきりと、期限をつけられたものは期限をぴしっと切るつもりがありますか。その点をはっきりお答えいただきたい。
  84. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは討議の経過がございますので、主税局長から説明いたさせます。
  85. 村山達雄

    村山政府委員 期限をつけましたものにつきましても、答申のところにいろいろ述べておりますように、これはその時点でもう一ぺん再検討する意味でとりあえずつけたというようなもので、たとえば預金の利子の分離課税の一〇%を据え驚くというような問題につきましては、今回の金利の引き下げ政策の方向に合わしてやってみる、一年間だけ延長する、それとバランスをとりながら、配当課税の力についても、三十七年一月一日以降受け取り分について控除率を圧縮するというふうにできておるわけでございます。こういうものにつきましては、あらかじめそのときの金融情勢検討の上、再検討するということになっております。そうでなくて、およそこの程度のものというふうに期限をつけましたものについては、われわれも、原則としては、現在のところ、その時点が参ったら切るつもりでおります。  なお、先ほどお話のありました特別措置の問題でございますが、おっしゃるように、確かに政策方向でございまして、そこから発足しておるわけでございまして、大企業に片寄っておるという点はわれわれも認めておるわけであります。ただ特別措置の整理は三十一年以来ずいぶん整理されてきておる。なるほど現在では減収額は千四百九十億ございますが、大体実額で六百六十八億くらい。それから今日の貨幣価値に直しますと千二百億くらいの整理、従ってちょうど半分くらいになります。もう一つ考えられるのは、全体の税収に対する特別措置による減収額の比率がある程度規模を現わすわけですが、これは年々縮小して参っております。もう一つ端的な見方は、三十一年から整理をしておるのですが、現在の所得に三十一年当時の税法を適用した場合と現行の税法を適用した場合の税負担関係が、大企業の場合はどれくらいになり、中小企業の場合はどれくらいになるということをやるのが一番端的な方法でございますが、われわれサンプルをそれぞれ十くらいとってみますと、大法人の場合は、三十一年当時の基本税法、特別措置法、全部適用した場合と、今日の税法を適用した場合ですと、今日の方が約一・五倍から二倍以上増徴になっておる、こういう結果になっております。それに反しまして、中小企業の方は、当時の負担に比べて大体七、八割程度の負担になっておる。これが一番端的に現わしておるわけであります。考えてみますと、なるほど、その当時から考えまして、法人税率は、先きほど申しました少額所得に対する軽減税率の適用がございます。それから法人税の基本税率の引き下げがあるわけです。租税特別措置法は、三十一年以来どんどん圧縮しておるわけであります。大法人は当時から見ると、その観点でいえば、もう増徴が二倍くらいの増徴になっておる、逆に、中小法人の方は、当時から見ると七、八割程度になっておる、こういうことになるわけであります。ただ、われわれは、租税特別措置は、負担の公平の原則からいえば好ましくない、従って、できるだけいろんな政策方向は基本税制の中に公平の要素とともに織り入れて、漸次廃止して参りたい、こういう気持には変わりございません。  それから、先ほどお話のございました簡易平明化という問題でございます。これはわれわれもずいぶん考えておるのであります。ただ、税法は、負担の公平をはかるとか、こういう公平の原則の方から参りますと、どうしてもきめがこまかくなって非常にむずかしくなりやすい。だんだん話がこまかくなりますから、だんだん公平の原則に従うこまかい規定が入ってくる。一方できるだけわかりやすくしなければならぬ、こういう要請がありますので、われわれは、ことし一年かかりまして、この税法の全面的な簡易平明化あるいは再編成、こういう問題を真剣に取り上げて、できれば来国会に全文改正の形で、それぞれの法案について、この見地からの提案をいたしてみたい、かように考えております。
  86. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いろいろお答えいただいたわけですが、かなり疑問の点がありますが、こまかい技術的な問題についてはあとで伺うことにいたしまして、今日四十数万の会社の中で、税調の資料に基づきますと、資本金一千万未満の会社の数は九七・四%を占めておるわけです。一千万円未満の会社の所得を見ますと二八・三%、五百万未満を見ますると二三・九%というような形になっておるわけです。残りはそれ以上のごくわずかな一・九%程度の数の会社に利益が集中している、所得が集中している、こういうような姿になっておるわけであります。こういう姿が今日言われる経済の二重構造ということだと思うのです。こういうことが、先ほど私があげた、資本蓄積のために税制において約一兆五千億からのめんどうを見てやる、それを内部留保の自己資本的な働きをさせてきた、こういう形の中に最近における大企業と中小企業との極端な所得の格差が生まれてくる大きな原因があった。今日、シャウプ勧告以来十年間にわたってこんなはなはだしい差ができるほど——九七%の数を占めているものは所得はわずかに二八%だ。あとのわずか二・六%のものに七二%の所得が帰属する。この租税特別措置法において公平の原則を極端な形で無視いたしまして、そういう原則を犠牲にしながらとってきた経済政策の結果というものは、こういうところに現われている。はたしてしかりとするならば、これは、大臣が、先ほど、経済政策の面からこの税制考えてきたんだ、だから公平の原則は犠牲にするのもやむを得ないんだ、こういうことを言われましたけれども、そうだとすれば、もう政府の経済政策とは、金融税制の面、特に税制の面でこんなに大きな優遇を与えることによって大企業を育成して、その所得をうんと増大さして資本を蓄積さして、そして非常に数多い中小企業に対してはこんなに差ができるような形にしてしまった、こういうことが言えるじゃありませんか。この点をお認めになりますか。これは先ほどあげた数字でも大へんな大資本優遇だと思う。これだけの優遇があれば、大資本が、今申し上げたような構成比にもかかわらず、所得がまさに逆転している、そういうものが出るのはあたりまえだと思います。そういうことをお認めになりますか。
  87. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、そういう日本の中小企業が圧倒的に多くて、企業集中の傾向が出てきているということは認めますが、それが何に原因するかという問題から見ますと、その税制からきている問題だとは私考えていません。この前大阪へ行って大阪財務局の管下のそういう数字も私は見ましたが、近畿地方の構成比を見ますと、総法人のうちの九三・四%が中小企業で、六、七%がいわゆる大企業ということでありますが、その所得の割合はやはり大体今あなたがおっしゃられたような割合になっていると思います。では、税負担の割合はどうかと見ますと、この六、七%の企業が六割以上の税負担を持ち、九〇何%に及ぶ中小企業の持ち方が三〇何%という税負担になっておる。この比率が全く逆になっておるというような点から考えますと、確かにそういう特別措置はあっても、この税負担は割合に均衡的になるように、長い間かかって改正、改善されているのじゃないかと思います。ですから、こういう企業の集中傾向は産業政策の別の問題からくることでありまして、税との関係で、この特別措置があるためにこういう不均衡が出たというふうに私は考えません。
  88. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣答弁にも数字をあげられましたが、矛盾があるわけであります。それというのは、この大企業が六割も税金を納めている。それは本来ならばもっと納めなければならない。またそれだけの担税力を持っているのです。それで、中小法人の方は減税における恩典にも浴しないということから、税金を納められるほど企業が発展しない、停滞している、むしろつぶれている、中小の場合非常に多くの法人が欠損法人になっている、そういう形にあるわけであります。それで、中小法人も税金を納められるような条件というものを作ってやるようにこの租税特別措置法はあったけれども、中小法人にはほとんど及ばないということは、これはお認めになっておるはずであります。そういう形になっておるわけなのです。だからその点は大臣のお考えは間違いだと思います。六〇%だったらほんとうはもっと取るべきであって、七〇%大法人が納めるべきであったかもしれないのを、六〇%に切っておるわけであります。そういう格好になっておるわけでありますから、その点は一つ考え方そのもの、見方というものを大臣に変えていただかなければならないと思います。  最後に、大臣にもう一つお尋ねしたいのでありますが、ここ十年間この特別指貫法をやって参って、昭和三十三年で八百七十億ですか、三十四年九百九十億、三十五年は一千四百七億という工合にして、ことしはまた一千四百九十五億という形が出ているわけですが、そういうようにしてずっと減税をやってきておる。大企業と中小企業には現実こういう格差が出ていることになってきているわけなのですが、今度高度経済成長政策をやられる。所得倍増計画をやられる。長期経済政策というのですか、新長期経済政策、正式には政府でそう称しているのかもしれませんが、そういう中で、この租税特別措置による減税の操作によって、私どもからいえば非常に問題の多い——私どもというよりも、国民の目から非常に怨嗟の的になっていると言ってすら過言でないと思うこの税制を、若干は整理されるというようなことを言っておりまするけれども、大きくこれを修正する立場に立って、そして廃止すべきものはどんどん勇敢に廃止していく。そして、もちろん経済政策の面においては企業を発展させるということで、課税における公平の原則というのをあまりにも無視して経済成長をはかっていくというやり方、税制でそれをやるのだということには非常に問題があるし、これは国民の納得を得られない問題であります。そういう形で今日までやってこられた。それで、これからも、高度経済成長政策においても、税制と高度経済成長というものをそういう角度で考えていかれるのかどうか。三十一年以来税制調査会が、そのつど、これは長期化してはならない、さらに既得権化してはならないということを強く戒めているわけですが、経済政策上理由があるからという形で、今度の高度経済成長の政策の中にもやはりこれに相当重点を置いて進められていくのか、それとも、税の基本原則に立ち返って、これを大幅に整理縮小をする決意があるのか、そのどららなのか、この点を一つはっきりお聞かせいただきたいと思います。
  89. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき主税局長からも言われましたように、大体今までのところ特別措置は半分は整理されてきたというのが実情だと思います。今後もその方針によってやろうとすることには間違いございませんが、ただいわゆる基幹産業という問題がございます。たとえば石炭なら石炭が今ここで壊滅するというようなことだったら、全産業がみなその影響をこうむるという問題がある。これは十分おわかりのことと思いますが、そういう問題にからんで、一産業について特例を置くということが、その産業自身を助けていることじゃございませんで、全経済に影響を持つ。ですから、持つようなものについてここで一つ措置をとらなければ困るではないかというような問題が起こって、そのつどこういうふうに特別の措置が積み上げられてきているというようないきさつもございますので、さっきから申しましたように、もうこれをとっても全体への響きはない——一大企業を助けるというような観念から私どもは見ているわけではございませんで、もうこの目的は達したではないかと思われるものについては、勇敢に今後とっていくという方針でむろん臨むつもりでおります。
  90. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 非常に不満でして、私が質問した点について率直にお答えになっていないと思いますし、また今のお話の中にも非常に問題が多いわけです。もちろん経済を成長させるという面にわれわれは反対しているわけではありません。諸外国等においてもやはり若干の租税に対する特別措置があることも承知しておるわけですが、日本の場合には、租税特別措置というものが、きわめて大幅に、しかも非常に多くの国民からすれば、何としても納得できないような形で今日まで行なわれてきた。なるほど少しずつは整理してきた。その累計額も、現在の貨幣価値に直して千何百億になると言っておられますが、現実に毎年々々、これはおそらく整理する速度よりも減収額の方がふえていっているのではないか。去年は千四百七億だった。ことしは千四百九十五億だ。これが、地方税へのはね返りなどを見れば、おそらく二千数百億になっている。その八割以上のもの、少なくとも八割くらいのものが大企業に集中しているという姿は、どうしたってよほど腰を据えて——経済成長を税金によってやるのだ、そのほかに方法がないというのならば、これはやむを得ないかもしれない。しかし、経済政策としてはほかにいろいろ方法があるわけです。正しい経済の原則に立って成長をはかる経済政策というものがあり得るはずなんです。それを税制にだけ、しかもこれは法律できめてしまえばそれがずっといく。しかもそれになれてしまって、企業努力を怠るという現実が出ているのではないかということすら言い得るわけであります。中山先年にもきのうお伺いいたしましたが、そういう傾向はなしとしない。特に企業努力による資本充実というものが、税制でこうやってくれるから——これは国民の一部から私直接聞いたことなんですけれども、一体政府はどんな基準でどのくらいの時期を切ってこれを廃止するのだろうか。その基準すら明確でないじゃないか。しかも、今大臣がおっしゃったように、将来にわたっての方針というものを明らかにされていない。どうやらこれは与党に対する政治献金との関係があるのじゃないかというようなことすら、今日この問題をめぐって疑われているわけなんです。従って、大蔵省村山主税局長以下事務当局が一生懸命課税の問題と取り組んでおるかもしれませんけれども、そういう大きなところで左右されるのではないかという国民の疑惑が今日出ているということに対して、大臣は明確に答弁をされて、そういう疑惑を一掃される措置をとっていただかなければならぬと思います。その点いかがですか。
  91. 水田三喜男

    水田国務大臣 私どもはそういう疑惑のあるような税制指貫をとっているつもりではございません。ただこれは、事の性質上、今言ったように大企業の優遇のような形になっておりますが、これはただ大企業優遇々々ということで片づけられるべき問題じゃなくて、さっき申しましたように、産業の基幹的な性格を持ったものの発展が国民経済にどういう影響を与えるかというような、大きい視野からの措置でございまして、ただ特定の一大企業を助けるための税制というようなものじゃございませんので、そこら全体を見てもう目的を達したというものについては、私どもはいつでもこれを廃止するという方針で検討しているわけでございます。この租税特別措置法が大企業優遇策々々々ということを言われるのは、どうも私どもにはあまりぴんとこないので、これはもっと広い立場から見るべき問題だということを、私はさっきから行いたかっただけでございまして、あなたのその御方針については、それはその通りに私ども最初からやるつもりでおります。
  92. 足立篤郎

    足立委員長 次回は明十七日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十七分散会