○
武藤委員 私は、
日本社会党を代表して、ただいま採決に付されんといたしておりまする
産業投資特別会計法の一部を
改正する
法律案に対して、反対の討論を試みんとするものであります。
すでに、この問題につきましては、
予算委員会あるいは本
会議におきまして、わが党代表から、鋭く
政府の猛省を促し、
財政法違反であるという点は明白に
指摘をいたしたところであります。従って、私は、あまりこまかい点に及ばずにおおまかに、現在
政府の提案したこの取り扱いの仕方というものが、非常に法の精神をじゅうりんしておるという点を
指摘し、今後の行政官並びに
政府当局の反省をぜひ求めるという意味からも反対いたしたいと思うのであります。
第一の反対の理由は、
財政法第二十九条に明らかに違反しておるという点であります。
第二は、予算のぶんどり合戦の圧力に屈服して、当初予算に計上したにもかかわらず、途中にそれが
財源不足を来たし、三十五年度の
補正予算に組むという、まことに行政的な不手ぎわを暴露いたした
補正予算であります。そういう行政的な不手ぎわが第二の妥当でないという点で、本年度予算に批判をせざるを得ないのであります。
第三の理由は、政治的な責任の問題であります。
大蔵大臣は、特別
国会の際に、第二次
補正は組まないということを議事録の中にも明らかにいたしておりましたが、突如これを組んできたという政治的責任論の
立場からも、本
財政投融資に関する
財源の組み方に対しては、賛成をするわけにはいかないのであります。
そこで、以下少しく詳細に申し述べてみたいと存じますが、今
横山委員からの二十九条違反ではないかという
質問に対して、
主計局長は、
政府は違反だとは思わないという
答弁でございますが、
予算委員会の議事録を通読してみましても、
大臣は、最終的には
疑義が生じておる問題だから、今後十分
検討することにやぶさかではないと、こういうふうにはっきり
大蔵大臣が
答弁をいたしておるわけでありますから、この
疑義が出ておるという点について、
主計局長はその後何ら誠意ある
検討をしていないというふうに、私はただいまの
答弁で承ったのでありますが、そういうことでは行政官としてまことに責任のない態度ではないかと私は思うわけであります。
大臣が、
財政法第二十九条との
関係において
疑義も出ておることであるから、今後
政府において十分
検討することにやぶさかではない、こういう
答弁をしておるのであるから、ただいまの
横山委員に対する回答な
ども、もっと親切丁寧、科学的な
検討をした結論を
答弁すべきであります。そういう点からも、まことに私は
政府は怠慢であると思うのであります。試みに、法第二十九条を見ますると、予算を編成した後に必要避くべからざる経費、その場合には
補正予算を組んでもいいということになっている。その必要避くべからざるという要件を一体満たしておるのかどうかということです。それが私は一番問題だと思います。その必要避けることのできない経費というのを、今回の
補正予算を見ると、
財源が余ったから隠し
財源的な意味を含めて、将来足りなくなった場合にはこの金を
財政投融資に使うという、プールをしておく一つの隠し
財源的な意味を含んだ
補正予算であるということを、はっきり私
どもは認識する以外に、どう考えても必要避けることのできない経費と
政府の
答弁通りに受け取るわけにいかない。しかも、もっとけしからぬことは、三十五年度にどうしてもこれだけの
投資が必要だというなら、まだ話がわかる。三十五年の必要経費は特別
国会で百二十億円を第一
補正で組んでおいて、三十六年度、三十七年度に使う予算を三十五年度の
歳入からまかなうということは、全く緊急必要避くべからざるものであるとは断定できないと思うのであります。こういう点が過般の
予算委員会においても強く
指摘されて、
大蔵大臣も、最後に、
疑義があるから十分
検討するという答えをしたと思うわけであります。そういう点から、これはぜひこの際、野党の
主張といえ
ども、正論は正論として卒直に受け入れる態度が必要だと思います。特に政治の浄化や姿勢を正すという総理の見解からいっても、予算を編成する最も基本的な憲法ともいうべき
財政法の精神に反する
補正予算を組んだのであるから、卒直にこれは撤回をして、
政府の反省をすなおにすべき性質のものであったと私は考えますが、そういう点からも本
補正案にはどうしても賛成をするわけに参りません。
さらに、必要避けることができないというだけではなくて、
会計年度の独立性の法の精神や余剰金が生まれた場合には二分の一を国債償還に充てるという法の規定などから見ても、こういう規定を総合的に判断した場合には、自然増があったから、めんどくさいから、それを
資金運用部に入れておけば、
財源を始末しておくのには一番便利だという、法の抜け穴、盲点を
大臣みずからが作り出して、国民の血のにじむような税金がこういう形に簡単に動かされるということに対しては、がまんならぬのであります。こういう点
政府は十分反省しなければいけないと思うわけであります。
さらに、その
融資の内容についても、百五十億円をどのように使うかということを、もっと具体的に大蔵
委員以外のすべての議員に発表し、資料を配付した後にそういう問題が
議論されたのならよろしいけれ
ども、おそらく大蔵
委員以外にはそういう詳細な資料も提出されていない。ただ、百五十億円を三十六年度に使用します。二百億円を三十七年度に使用しますという、それだけの提案で、必要避けることのできない経費だなどとは、三つ子もなるほどとは了解するわけにはいかぬと思うのであります。
大蔵大臣は、
予算委員会で、これは自然増というものがあったから、それを
補正予算に組んだのだと、率直な
答弁をした点もございます。そうだとしたら、なおさら私は、
財政法に反することを知っておりながら、予算を提案をしたと批判をしなければなりません。そういう点今後十分考えて予算の編成をしなければ法の精神は全くじゅうりんをされてしまいます。
さらに、第二のけしからね点は行政的に非常に不手ぎわだと
指摘しましたが、
最初当初予算に百五十億円の予算を組んでおったところが、やっさもっさと圧力団体や自民党の顔役の
人たちから大蔵省が圧迫をされて、その百五十億円の当初予算も他の地域に全部ぶんどられてしまって、とうとう三十六年度当初予算には組めないからというので、いよいいよ自然増がたくさん出そうだというので、急拠三百五十億円の予算を上程してきた。こういうように、大蔵省が圧力団体やあるいは党内の力のある者から圧迫を受けて、とうとう自分の信念を貫くことができない——必要なら当初予算に二百五十億円計上すればよろしい。それをなさずにこういう態度をとるということは、私は行政手腕の不手ぎわという点でも責任は免れないと思うのであります。そういう点で十分大蔵当局は心すべき点があろうと思いますので、これらの点についてもわれわれは鋭く批判をしなければいかぬと思うわけであります。
第三は、政治的責任という
立場からこの
補正に反対だと申しますが、その政治的責任とは、ついこの間の十二月の特別
国会で水田
大蔵大臣は、第二次
補正は出す考えはない、こういうことを言っておった。ほんの一カ月か一カ月半の間に急速
補正を組まなければならぬということは、私は政治家としてその発言に十分責任を持たなければならぬと思うのであります。ところが政治は生きものなどと与党の諸君は申しますけれ
ども、いやしくも長い役人生活をいたし、
大蔵大臣という地位にある者が、十一月ごろ自然増がどのくらいあるか、十二月ならどのくらいになるかという判断がつかず、一カ月か一カ月半の時期で三百五十億円の自然増が生まれるか生まれないかということがわからないはずはないわけす。当然わかっておるはずです。もしわからないとしたら、私は
大蔵大臣としての資格がほんとうに疑わしいといわなければならぬと思うのであります。なぜわかっておったのを第一次
補正にも組まない、当初予算にも組まなかったかといえば、当時の
状況は公務員の賃金
ベース・アップを認めろという人事院勧告があった。そこで自然増があるということになりますと、人事院勧告の方へ回したらいいじゃないかという声がおそらく強くなったと思います。そういうような
状況を判断して、
大臣は
財源の見通しがつかなかったというごまかしの
答弁をして、一月になるや
財源はこれだけありましたというので、三十五年度に組む。しかも必要避けることのできないという判断は全く持てないような経費に三百五十億円支出するに至りましては、まさに法の精神を踏みにじるもはなはだしいといわなればなりません。私
どもは、今後かような
財政法を踏みにじるようなことの再びないためにも、今回の提案に対し、単に多数の力を持っておれば法律に反してもそれが押し通せるという安易な考え方や、あるいはせっかく
政府が作った基本法ともいうべき
財政法の精神を、自分の都合のいいように、隠し
財源をするために必要だとあれば、これは必要避くべからざるものだというような態度できめていくという政治の姿勢は、決して正しい政治の姿勢ではないと思うのであります。
日本社会党が本案に対して反対をするゆえんのものは、かかる観点から、ほんとうに国民の血税が正しく科学的に野党にも納得のできる態度において編成されることを心から望むがゆえに、われわれは本案に対する反対の意思を表明するわけであります。今後
政府の猛省を促して、反対論にかえる次第であります。(拍手)