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1961-02-15 第38回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月九日(木曜日)委員長の指名で、 次の通り小委員及び小委員長を選任した。  税制及び税の執行に関する小委員       伊藤 五郎君    岡田 修一君       金子 一平君    簡牛 凡夫君       高田 富與君    藤井 勝志君       細田 義安君    米山 恒治君       平岡忠次郎君    堀  昌雄君       安井 吉典君    横山 利秋君       春日 一幸君  税制及び税の執行に関する小委員長       簡牛 凡夫君 ――――――――――――――――――――― 昭和三十六年二月十五日(水曜日)     午前十一時四分開議  出席委員    委員長 足立 篤郎君    理事 鴨田 宗一君 理事 細田 義安君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 辻原 弘市君 理事 平岡忠次郎君    理事 横山 利秋君       伊藤 五郎君    岡田 修一君       金子 一平君    簡牛 凡夫君       田澤 吉郎君    谷垣 專一君       永田 亮一君    西村 英一君       藤井 勝志君    佐藤觀次郎君       田原 春次君    藤原豊次郎君       堀  昌雄君    武藤 山治君       安井 吉典君    春日 一幸君  出席政府委員         大蔵政務次官  大久保武雄君         大蔵事務官         (銀行局長)  石野 信一君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 山際 正道君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  金子  鋭君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 二月十三日  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第二四号)  揮発油税法の一部を改正する法律案内閣提出  第二五号)  地方道路税法の一部を改正する法律案内閣提  出第二六号) 同月十一日  国家公務員等退職手当及び同施行令中の外地勤  務期間通算に関する請願神田博紹介)(第  二二四号)  同外一件(床次徳二紹介)(第二二五号)  農業協同組合に対する法人税課税免除等に関す  る請願外一件(赤城宗徳紹介)(第二三六  号)  同(荒舩清十郎君外一名紹介)(第二三七号)  同(植木庚子郎君紹介)(第二三八号)  同外一件(大高康紹介)(第二三九号)  同外三件(加藤高藏君紹介)(第二四〇号)  同(北澤直吉紹介)(第二四一号)  同(古賀了紹介)(第二四二号)  同外一件(佐藤洋之助紹介)(第二四三号)  同外一件(塚原俊郎紹介)(第二四四号)  同外一件(中山榮一紹介)(第二四五号)  同外一件(丹羽喬四郎紹介)(第二四六号)  同外一件(橋本登美三郎紹介)(第二四七  号)  同(福永健司君外一名紹介)(第二四八号)  同(山口六郎次紹介)(第二四九号)  同(安藤覺紹介)(第二七九号)  同(竹下登紹介)(第三四八号)  たばこ販売手数料引上げに関する請願加藤高  藏君紹介)(第二五〇号)  同(野田武夫紹介)(第二五一号)  旧陸軍の永年勤続女子共済組合員年金支給の  請願辻寛一紹介)(第二五二号)  家具物品税撤廃に関する請願外一件(小川半次  君紹介)(第二七八号)  勤労者住宅建設促進のため厚生年金還元融資わ  く拡大に関する請願澁谷直藏紹介)(第二  八〇号)  長野県旧武徳殿払下げに関する請願増田甲子  七君紹介)(第二八六号)  ガソリン税等引上げ反対に関する請願足鹿  覺君紹介)(第三七三号)  農業協同組合に対する法人税課税免除に関する  請願外一件(小林ちづ君紹介)(第三八八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十三日  政府資金による短期融資融通期限延長に関す  る陳情書  (第六九号)  国民年金積立金運用に関する陳情書  (第七七号)  葉たばこ収納価格引上げに関する陳情書  (第一四〇  号)  特別税理士試験制度存続に関する陳情書  (第一四二号)  小、中学校用地のうち国有地無償払下げに関す  る陳情書(第一四  四号)  勤労者福祉施設拡充のため厚生年金還元融資  わく拡大に関する陳情書  (第一七二号)  勤労者住宅建設促進のため厚生年金還元融資わ  く拡大に関する陳情書  (第一七三号)  農業協同組合に対する課税免除等に関する陳情  書  (第一九二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  金融に関する件について参考人より意見聴取      ――――◇―――――
  2. 足立篤郎

    足立委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は、金利引き下げ及びこれに伴う金融政策上の諸問題について、山際日本銀行総裁及び金子全国銀行協会連合会会長のお二人より御意見を聴取することといたします。  参考人には御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。まず本問題について参考人より御意見を述べていただき、その後に質疑を行なうことといたします。  では、山際参考人にお願いいたします。
  3. 山際正道

    山際参考人 御承知通り日本銀行におきましては、先月二十六日からその公定歩合日歩一厘方引き下げることにいたしまして、実行いたしております。その背景となりました日本銀行考え方等につきまして、この際一言申し上げたいと存じます。  御承知通り、一昨年の暮れでありましたか、いわゆる投資ブームと申しますか、設備投資需要が非常に多くなりまして、その影響が、また一昨年は御承知伊勢湾台風被害等もからみ合いまして、秋口から年末に向かい物価上昇等の徴候が現われましたので、いわゆる景気行き過ぎの生ぜんことをおそれまして、日本銀行といたしましては、一昨年の十二月に公定歩合日歩一厘方引き上げたのであります。自来その経過を見ておりましたところが、昨年になりまして、国際収支の面においても、また物価の面におきましても、その他資金需給関係設備投資動向等につきましても、だんだん事態が落ちついて参ってきたように思われました。そういたしますと、ちょうど昨年でありましたが、将来の日本経済発展のために、世界経済貿易為替自由化ということが基本的な方針として必要であるということが、これは西欧諸国情勢にもかんがみられまして、大きな国の政策として進行いたして参ったのであります。かかる情勢から考えまして、わが国金利一般水準西欧諸国に比べまして割高でありますことは、御承知通りであります。将来貿易為替自由化に伴い漸次熾烈化を加えるでありましょう国際競争におきまして、いかにしてわれわれが日本貿易拡大して参るかということを考えまするときに、もし他の事情が許すならば、なお金利国際水準方向へ一歩でも近づけていくという努力は、まことにこの際考うべきことと実は考えておったのであります。しかるに、今申し上げましたような情勢で、昨年に入りましてから、年初来事態がずっと落ちついて参りました。そこで、昨年の八月でありましたか、日歩一厘方公定歩合引き下げましても、なおかつそれによって投資行き過ぎを生ずるとか、あるいは物価高騰を招くとか、景気を刺激するというような弊害はないと考えましたので、八月に一厘方の引き下げを行ないましたわけであります。しかるに、その後の情勢を観察しておりますと、大体においてこれまた諸般の情勢落ちつきぎみに、着実な経済拡大発展を示して参ったように考えたのであります。国際収支の面におきましても依然として黒字は累積を続けて参りましたし、物価関係におきましても、一時非常に心配されました高騰気配も、むしろ近代化設備あるいは合理化設備の完成による物資の種類によりましては、弱含みの傾向さえ現われて参るという情勢でございました。かかる情勢下において、さらにこの際金利を、前段申し上げましたような国際金利との比較の問題等から考えまして、将来のわが国経済発展のために弊害なしとすれば、ここでさらに引き下げを行ないまして、かたがた起伏に富むところの経済界要請に対して、日本銀行公定歩合操作というものを弾力的に行ない得る余地を作るという意味におきまして、さらに一厘方再引き下げをすることが適当であろうという判断に立ち至りましたので、今申し上げました本年の一月の二十五日でありましたか、そのことを決定いたしまして、二十六日から実施をいたしたわけであります。むろん、これに至りますにつきましては、各般情勢、なかんずく総選挙後における政府その他の各般事情等十分観察をいたしておりました。あるいは税制の問題であるとか、そのほか一般経済界金融界動向であるとか、あるいは企業界における企業意欲の問題であるとか、資金需給の問、題であるとか、内外にわたりまして各般事情を総合いたしました結果、ただいま申しましたような結論に達しましたので、この一月にさらに一、二厘方の引き下げを実行いたした次第であります。  自来、これがいかように経済界その他一般に受け入れられたかということは、非常に私どもの関心を払ったところでありますが、幸いにこの事情は非常にすなおに受け取られて参ったように思うのであります。すなわち、一月に金利引き下げましたけれども、これは景気を刺激する意味でも何でもない。また金融を特に緩和しようという趣旨でもないのであります。だんだん申し上げましたように、将来の日本経済発展がおもむくべき方向を勘案いたしまして、しかもなおこの程度のことはこの際実行しても経済情勢変化を起こすまい、刺激的ではなかろうという判断で実行いたしましたことが、現在までの段階におきましては、大体その予想通りに動いて参っておるように思うのであります。従って、そのこと自体は別に問題はなかったと実は考えております。ただ思うことは、世界経済動向は、本年に入りまして、なかなか将来は変化に富んでおるように思うのであります。従って、その推移いかんによっては、あるいはまた国内におけるいろいろな事情推移いかんによっては、日本銀行公定歩合操作というものは、機に臨み変に応じて弾力的にこれを操作すべきものであるという考えはむろん持っておりますので、常時事態推移は注意深くこれを観察いたしております。かかる態度をとることによりまして、金利水準を一段と引き下げまして、かくて国際競争力増加いたしまして、今後の発展に資する、しかもなお一面において弊害なきを期する、またもしその必要あるならば、何どきでも弾力的にこの金利操作の発動によりまして、この弊害を除去していくという態度はくずさずに、今日に及んでおるという情勢でございます。  以上、簡単でございますが、大体の荒筋だけを御説明申し上げました。
  4. 足立篤郎

    足立委員長 次に、金子参考人にお願いをいたします。
  5. 金子鋭

    金子参考人 それでは御説明を申し上げます。  先般行ないました市中貸出金利引き下げ銀行資金需給中心とした最近の産業資金状況について御説明を申し上げたいと思います。  市中貸出金利につきましては、かねてより検討して参りましたが、去る一月二十五日、公定歩合引き下げ決定に伴いまして、一律日歩一厘の引き下げを決定いたしまして、一月三十日よりこれを実施した次第でございます。今回の市中貸出金利引き下げは、国際水準に比べ割高でありますわが国金利水準引き下げをはかり、今後貿易自由化に対処する産業界国際競争力強化に資することを目的としたものであります。従って、この点より見ますれば、政策的な金利引き下げであるといってよかろうと存じます。しかし、だからと申しまして、銀行が欲せざることを政府から一方的に押しつけられ、これをのんだものと見ることも当たらないわけであります。すなわち、わが国経済は、ここ二、三年国際収支黒字基調のもとに、目ざましい発展を遂げて参りましたが、この高度成長を持続し、国民所得水準をなお一そう引き上げるためには、産業国際競争力をつけることが至上の命題であるわけでございます。申すまでもなく、わが国金利水準世界主要国のそれに比し割高であることは疑いないことでございまして、これを漸次国際水準まで引き下げて、今後のきびしい国際経済情勢下におけるわが国産業国際競争力増強に資する必要があるわけであり、金融機関といたしまして、このための努力を怠ってはならないと考えるものであります。一方、金利水準は、原則的には資金需給関係により決するものであります。しかしながら、現在のわが国のように成長テンポの早い経済下におきましては、資金需要は概して強く、金融緩和を待って金利引き下げを行なおうといたしましても、その好機はなかなかとらえにくいわけであります。規正の資金情勢から申しますれば、金利引き下げ環境として必ずしもふさわしいものではないのでありますが、物価国際収支等はおおむね順調に推移し、経済基調として大体落ちつきを示しておりますから、金利引き下げることが絶対困難な環境だとも申せないものと考えられるのであります。そこで、金融機関といたしましては、多少の無理はありましても、大局的見地より金利引き下げを行ない、国家政策に協力することが、その公共的使命に即するゆえんであり、また下げられるときに下げておくことが、今後の金利の弾力的な運用余地を増大せしむるものであると判断いたした次第であります。  すでに明らかでありますごとく、今回の利下げは、景気に対する刺激剤とか金融緩和目的としたものではないわけであります。最近の経済は順調に推移し、落ちつきを示しておりますが、なお、金融面におきましては、後ほど御説明申し上げますごとく、依然として資金需要は旺盛であります。従って、銀行といたしましては、引き続き慎重なる貸し出し態度を堅持していく所存であり、また今後の経済動向には不断の注意を払いまして、その運用を誤らざるよう十分配慮して参りたいと考えております。この意味におきまして、金利底下により、企業が、金利負担の軽減されるのを利として、自己資本蓄積努力を怠り、借り入れ依存をさらに高めたりいたしますならば、今回の引き下げの意義は全く失なわれるのみならず、金利弾力的運用見地からも金利の再引き上げが問題となるものと考えられるわけでありまして、一般産業界におきましては、この金利引き下げ趣旨を十分理解せられ、その効果が国際競争力の培養に資するよう配意されることを希望しておる次第でございます。また、今回の引き下げ趣旨にかんがみまして、長期貸出金利のほか、社債金融債貸付信託投資信託の利回り、株式配当率等頭貯金金利を含め、一連の関連金利につきましてその引き下げを期存しておるわけでございます。  今回の利下げによりまして、公定歩合は、先進諸国に比すればなお割高でありますが、戦後最低の水準となり、市中貸出金利はほぼ先進国水準に近づいたものと思われるのであります。なお、今回の利下げは、前に申し述べましたごとく、政策的な観点に基づきまして行なわれたものでありますが、当面の資金情勢景気動向にかんがみまして、財政金融政策の運営にあたりましては、通貨価値安定維持には一そうの配意が必要であると考えられます。また、金利水準引き下げのためには、銀行として一そう合理化努力し、これにたえ得る力を養っていくべきものと考えておりますが、同時に引き下げのための環境の整備が必須の要件であると考えるものであります。特に今後の経済政策には成長政策という新しい要請も加わりまして、資金需要は引き続き旺盛に推移するものと考えられます。これに対応していくためには、民間資本蓄積を一そう促進する措置が推進されることが必要であり、また景気動向をにらみながら適時適切なる信用の供与を行なっていく必要があります。その意味におきまして、日銀貨し出しと並んでオペレーションの活用等資金供給円滑化のための諸施策をあわせ進められることが望ましいと考えております。要する  に、昨秋以来の金利引き下げの論議も、市中貸出金利引き下げ決定により一応終止符を打ったかのごとくでありますが、実はまだ緒についたばかりでありまして、関連金利引き下げが今後どのように推移するか、今回利下げ目的としたものがどう展開していくか、あるいは金利引き下げが今後の金利政策の上にどう生かされるかなど、今後に多くの課題が残されているものと考えておる次第であります。  次に、最近の産業資金状況を、銀行貸金推移中心として、御説明申し上げたいと思います。  本年度経済拡大傾向を反映いたしまして、産業界における資金需要はきわめて活発でありまして、銀行の貸出金は昨年度に引き続きまして高水準推移いたしております。三十五年四月ないし十二月の九カ月間の全国銀行貸出金増加は一兆一千五百四十三億円に達し、すでに前年度年度間の増加額を上回り、前年同期に比べ約四割の増加となっております。このように銀行貸し出しが急増いたしましたのは、一昨年末ごろより急激に増加して参りました設備投資と、これに伴う増加運転資金を主とする資金需要が、銀行借り入れに大きく現われて参った結果と見られます。貸出金増加のうち、特に設備貸し出しは、四月ないし十一月で一千九百十六億円の増加で、前年同期比五八%も上回っており、三十五年度景気の支柱と見られております活発なる設備投資を端的に反映いたしておるのでございます。業種別には、鉄鋼、電力、自動車、電気機械石油精製等基幹産業成長産業増加が顕著でありまして、これら製造業向け貸し出し増加は、前年同期の増加を八割上回っており、一方三十四年度増加の著しかった商社など卸売業向け貸し出し増加は、三十五年度においては前年度増加をかなり下回ってきております。  銀行貸出金のうち、中小企業向け貸し出しについて申し上げますと、三十五年十二月末の全国銀行貸出残高八兆一千百六十六億円のうち、中小企業向け貸し出しは二兆五千七百十四億円で、約三二%を占めておりますが、その割合は前年十二月末と変わっておりません。また、全金融機関中小企業向け貸し出しのうち、全国銀行の占める割合は、同じく三十五年十二月末で五三%で、これも三十四年十二月末と比べ同水準を維持しているわけであります。すなわち、大企業向け貨し出しの増加と同じテンポで伸びているわけであります。なお、ここで中小企業向けとしておりますのは、資本金一千万円以下、従業員三百名以下の企業に対する貸し出しをさしているものであります。  全般といたしまして、銀行に対する資金需要は引き続ききわめて旺盛でありまして、毎月融資実行額に数倍する借り入れ需要銀行としてかかえている現状であり、当面社債増資払い込み等、他の調達面拡大が予想されておりますが、現在の貸し出しテンポが急速に低下すると見ることはできないように思われます。  一方、銀行の頭金は、四月ないし十二月で一兆九百十七億円で、前年同期の増加を二九%上回っておりますが、貸し出し増加に比べて低調を免れなかったわけであります。これにつきましては、三十五年度財政資金の対民間資金じりは、好況を反映して租税収入等自然増収が多額に上ったため、四月ないし十二月間の支払い超過が三千百六十三億円にとどまり、前年同期を八百億円下回りました一方、日銀券はこの間三千五百七十五億円の増発となったため、財政面よりする本源的な預金増加の要因が全くなかったこと、次に企業活動に伴い増加する預金通貨需要に対し、貸し出し面調整の結果として企業預金が伸び悩んだことのほか、株式投資投資信託拡大等、最近における顕著な効きから、銀行定期性預金増加が鈍化しておることも無視できないように思われます。  以上、銀行の預貸金状況中心として申し述べましたが、産業界における銀行借り入れ需要はなお、旺盛である現状であります。銀行におきましては、各銀行間の協調態勢も漸次整い、全国銀行協会連合会に設けられております資金調整委員会中心といたしまして、資金調整面において成果を上げつつあるわけでありまして、今後さらに各行連絡協調態勢を推進し、行き過ぎを来たさざるよう慎重なる貸し出し態度をもって臨まねばならぬと考えております。かくして、銀行といたしましても、経済安定成長に必要なる最低限の産業資金要請にこたえていく必要があるわけであります。しかしながら、一方、銀行自体健全経営見地より、オーバー・ローンは回避して参らなければならぬのでありまして、そのためには、貸し出し面において調整に努めねばならぬのはもちろんでありますが、それとともに、銀行産業供給する資金のもととなります預貯金をいかにしてより多く吸収していくかということが、理論的にもまた実際的にも正道であると思うわけであります。企業資本構成の是正、金融正常化という観点から、社債市場資本市場育成強化の必要が強くいわれており、産業資金供給面におきましても、社債株式による資金調達が期待されるわけでありますが、それにいたしましても、産業資金供給に対する銀行の役割は今後なお引き続き大きいものと考えております。特に、現在の段階におきまして、銀行供給資金源であります預貯金伸び方がはかばかしくないといたしますと、産業資金調達面において問題を生ずるものと考えられますので、この点、最近投資信託あるいは社債等の異常な増加に照らし、ややもすると預貯金重要性に対する認識が薄れてきているやにもみられますことは、はなはだ遺憾に存じておるわけであります。銀行といたしましては、預金吸収に今後一そうの努力を傾注していく所存でありますが、皆様方におかれましても、社債株式調達重要性もさることでございますが、預貯金重要性につきましても一そうの御認識をいただき、いやしくも預金吸収に障害となるがごとき措置はおとりにならないように、預金増強面について今後とも格段の御配慮をお願い申し上げる次第でございます。  以上でございます。
  6. 足立篤郎

    足立委員長 続いて質疑を行ないます。  通告があります。これを許します。堀昌雄君。
  7. 堀昌雄

    堀委員 最初に日銀総裁にお伺いをいたします。  ただいまお話を伺っておりました中で、今度公定歩合を一厘お下げになったことによって、公定歩合操作の弾力的な措置を行ない得る余地を残すことになった、こういうふうに承ったわけでありますが、私は、過去数年間の日本金融情勢経過を見ておりますと、日本銀行は、この公定歩合上がり下がり関係なく、常に窓口規制を強力に行なって資金需要を押えつつ指導をしてこられた、こういうふうに見受けておるわけであります。そうしますと、今の日銀のとっておられるこの窓口規制ウエートと、金利引き下げによる弾力的な処置の余地というものとの関係は、一体いずれがウエートが高いのか、ここを一つ伺いたいと思います。
  8. 山際正道

    山際参考人 ただいまお尋ねがございましたいわゆる窓口規制の問題であります。これは、日本銀行に借入金のございます銀行、これは大部分は都市銀行であります。その銀行個々につきまして、その貸し出し情勢なりあるいはその他の資金需要情勢なり将来の見込みなりを徴しまして、個々行き過ぎのないようにということで、具体的に個々銀行をとらえて指導いたしておる方法でございます。これに対しまして、公定歩合操作の問題は、むしろ広い範囲において、経済界一般に対して通貨価値の安定をその至上命令とする日本銀行が、今の旧態をどう考えておるかということを示す一つの目標として、一般的にその理解を求めておる操作であろうと思うのであります。従いまして、おのずから同じような効果は伴いまするけれども、直接その対象とするところは、公定歩合操作の方がむしろ中央銀行としては中心的なもしくは指標的な操作でございまして、窓口規制によっていたしますよりも、もっと広範な内容を持っておる、かように御理解を願いたいと思うのであります。
  9. 堀昌雄

    堀委員 ただいま、公定歩合の方は経済界の今の事態をどう考えておるかということに関連して行なわれると、こういうふうにおっしゃったわけですが、そうすると、今度の場合はちょっとまた違うのじゃないか。今回の引き下げは、経済界の今の事態をどう考えているかということとは、必ずしも同じ問題の取り扱いではないように理解をいたしますが、その点はどういうふうになりますか。
  10. 山際正道

    山際参考人 広く経済界一般をどう考えておるかという点につきましては、むろん各般の立場があるわけであります。日本銀行が行ないまする範囲は、日本銀行を通じての金融操作に関する範囲においてこれを考えるということが表明されるわけです。その意味におきまして、先ほど申し上げましたように、いろいろな外的な要素が考えられまするけれども、少なくとも金融面からいたしまする限りにおいて、日本銀行の持つ操作としてここで金利を下げましても、それが経済界一般に対して刺激ないしは行き過ぎを生ずるおそれはまずなかろう、という判断でいたしましたわけなのであります。これがわが国経済界の見方の全部を代表するとはむろん申せませんけれども、日本銀行金融操作を通じて見る範囲においては、さように考えておるということの意思表示と御理解をいただきたいと思うのであります。
  11. 堀昌雄

    堀委員 最初のお話の中で、このことは金融緩和をするという意味ではないとおふれになっておりますから、私もそう理解いたしますけれども、ものの本質としては、私は、ちょっとこの問題と今の窓口規制の問題とは、相反する性格があるのではないかと思うのであります。一体、今後日本銀行としては一もちろん公定歩合の問題は今の市中銀行に対する窓口規制とは別個であるとおっしゃられれば、それまででありますけれども、しかし、現実の資金需要の問題の上におきますと、私はやはり今ウエートが非常に窓口規制にかかっていると思うのであります。窓口規制ウエートが非常にかかっているとするならば、弾力的な処置を行ない得る公定歩合操作というものとの関係は一体どうなるのか、この点は私は非常に疑問でございまして、あとで金子さんの方にも私はあわせてお伺いしたいと思うのでありますが、この点は今後の見通しとして一体どうなるでございましょうか。依然として強い窓口規制を続けながら、さらに再引き下げを行なうような事態が行なわれるのかどうか、この点についてちょっとお答えをいただきたいと思います。
  12. 山際正道

    山際参考人 お尋ねの窓口規制事態という金融操作は、私は中央銀行としては本格的な操作とは考えておりません。今の過渡的な事態においてやむを得ずとっておる操作と申し上げた方がよろしいと思うのであります。すなわち、銀行のすべてがこの規制を受けておるわけでもございませんし、また引き受け方も銀行個々の立場によりまして相当異なっております。相なるべくは、金融の流れが、本来持つ金融傾向、すなわち金利中心としてその繁閑が規制せられるという正常な状態が浸透いたしますならば、私は、この規制という、何と申しまするか、便法は廃止せられるべきものだと考えております。ただ遺憾ながら、現状において、一般的な金利の趨勢というものが、そこまで金融需給関係を調節する機能が十分でございませんために、むしろ補足的な手段としてこの窓口規制を活用しておると考えます。従って、今度なるべく早い機会に、銀行が、先ほど会長からもお話のございました健全経営その他の見地からいたしまして、あるいは企業自己資本調達等も順調に行なわれ、この窓口規制による方法がその需要度を失いまして、だんだんとこれが廃止の方向に向かい得るような情勢の来たりますることを、実は願っておるという立場でございます。
  13. 堀昌雄

    堀委員 正常な状態がくることが望ましいとおっしゃるわけですが、正常な状態をこさせるためには、一体どういうふうにすればなるのでしょうか。実は今日本金融問題は曲がり角に立っておるように私は思うのです。会社の自己資本を充実する方にもしドライブをかけていくならば、今のような公社債の投信その他の方にウエートがかかって、元来国民の余剰資本といいますか、預貯蓄に回り得るものはおおむねワクがきまっておるとするならば、その方を片方の証券その他公社債の方に流していくならば、銀行健全経営というものが進み得るのかどうか。そうすると、今おっしゃったような正常な状態に進めるためには、一体どうすれば進み得ると総裁はお考えになっておるか、ちょっとこれを承りたいと思います。
  14. 山際正道

    山際参考人 金融の正常化は長い間の懸案であり、現にわれわれも努力しておりますが、その内容に至りましては実に広範な問題を含んでおります。金融機関自体といたしましても、先ほどお話もございました健全経営見地から、そのみずから調達し得る資力の範囲において金融需要に応ずる、いわゆるオーバー・ローンの解消という問題もございます。あるいはまた、遺憾ながら時によると金融機関その他の行き過ぎた競争との関係もございます。これも是正されるべきであろうと思います。一方また、借手の企業側におきましても、必ずしも健全な経営ということよりも、むしろ過当競争といったことで行き過ぎを生ずるという点もあろうと思います。この方の圧力がもし減少いたしますならば、金融の正常化に非常に役に立つと思います。むしろお話のように企業自己資本調達の道がだんだんと発達しており、一面において行き過ぎた競争は金融機関側においてもあるいは企業側においてもだんだん是正されていく、すべてが正常の姿に返る、その大きなてこが、日本経済全体として申しまするならば、また為替貿易自由化という問題にもつながろうと思います。これらのものが平仄を合わせましてその効果を発揮して参るならば、そこに正常な金融の姿が現われて参る。そういたしますと、私は、やはり金利というものを中心として、資金の流れがいろいろと調整されていくという姿が出てこようかと思いますが、長い間の経済の仕組みがそれとは反対の方向で従来歴史を重ねて参りました関係上、急速にこれを実現するということにつきましては非常に問題がございまするけれども、できるだけその方向に近づけたいと思って努力をいたしております。
  15. 堀昌雄

    堀委員 そこで、それは望ましいことですが、私は、この問題が前進していくためには、非常に矛盾がたくさんあると思う。高度成長資金需要の問題、そして今の金融政策の転換の問題、これらは必ずしも同じ方向で競合しないで進むものではなくて、ややもすると競合する格好で問題が発生してくる余地が非常に多いと思いますので、総裁のおっしゃるように、うまくいくかどうか疑問でありますが、次に二つだけちょっと伺っておきたいのは、再引き下げという問題がやはりまだ起り得る余地があるということが一つと、あとはオペレーションというものがどういう格好で今のこういう資金需要の中で行なわれるか、この二つについて今後の見通しを一つ承りたいと思います。
  16. 山際正道

    山際参考人 公定歩合引き下げの問題は、今私どもは全然考えておりません。これはむろん荷引き上げも同じでございますが、経済情勢金融情勢のいかんにかかわることでありますから、予定すべきことではなかろうと私は考えております。世間は、あるいは先ばしって、再引き下げの考えがあるかのごときことを報道されることがあるかもしれませんが、私、責任者といたしましては、何らその点は考えておりません。  そこで、いわゆるオペレーションというものが今後どうなっていくかという問題、私はこれはやはり中央銀行が行なうにふさわしい金融操作の正常な手段だと思っております。ただ、それが正常に行なわれますためには、正常な債券市場、証券市場というものが建設されねばならぬと考えるのであります。遺憾ながら、現在の状況は、なるほど社債も発行せられ、あるいはその他の証券類もできておりますけれども、しかし機能は十分ではございません。従って、日本銀行が、債券類を相手として、広く一般資金供給を行なうオペレーションをするにいたしましても、たとえば相場がわからないということもございますし、広く公衆に対してこれを行なうということもなかなか方法がない。結局側々の銀行相手に、その銀行が持っておる債券をどういう条件で買うかということに帰着いたしますので、いわば貸し出しの変形のような操作しかできない現状であります。その意味におきまして、私は、社債市場、債券市場というものが急速に育成せられまして、そうして正当にその市場を通して金融の繁閑を調整できるオペレーションの機能というものを中央銀行が持つようになることを、極力育成いたしたいと考えております。
  17. 堀昌雄

    堀委員 最後に、今の点でございますが、当面は政府保証債その他がオペレーションの対象になっておると思いますが、今おっしゃった、一体どの程度にそういう公社債市場が育成をされたら政府保証債以外のものがオペレーションの対象になるか。これは非常に将来のことで恐縮でありますけれども、大体のその見通しをちょっと伺いたいと思います。
  18. 山際正道

    山際参考人 将来の望ましい姿といたしましては、できれば債券市場というものがそこに形成されまして、相当量の債券類の売買取引が行なわれる。従って、自由公正なる価格の形成が行なわれる。同時に、その買いまたは売手の関係者も、単に銀行ばかりでなしに、いろいろな資金がそこに集中的に移動する。ちょうど、たとえていいますと、アメリカなりイギリスなりに現在あるような市場の形成ということが、このオペレーションによる金融操作がその効果を十分に上げて参る望ましい条件だと実は考えておりますので、その方の建設に努力をいたしたい、かように考えております。
  19. 堀昌雄

    堀委員 再引き下げ問題につきましては、もちろん今はおわかりのないことでありますが、いろいろさっきからお話しになっておる中で、この一月二十六日の公定歩合引き下げというものが、そういう公定歩合操作の本来の姿から適当な時期であったかどうかについては、今適当な時期であるとは言えないようなお話がちょっと出ておりましたようなわけでありますが、そうしますと、この再引き下げの問題も、やはり今おっしゃるように、上げ下げの問題ということとは別の角度から行なわれる可能性の方があり得るのではないか。さっき、国際金融情勢の関連において、とおっしゃっておるわけでありますから、そういうことが行なわれるということになると、日銀が好むと好まざるとにかかわらず、そういうことが行なわれる時期があり得るというふうに判断してもよろしゅうございますか。これはいかがでございましょう。
  20. 山際正道

    山際参考人 日本銀行が持ちます各種の金融操作を行ないますのは、むろんみずからの総合した判断の結果でございます。おっしゃるように、国際情勢変化からするとその方が望ましいという情勢も、あるいは起こり得るかもしれない。あるいは、国内的情勢からいたしまして、それは望ましくないというような情勢も起こり得るかもしれない。それら各般の事項を、すべて日本銀行みずからが、この際とるべきことはこれが適当だという判断でいたすべき問題でございますから、従いまして、客観情勢によってそれがやむを得ずそうなってくるということは、実は私どもは考えておりませんし、今後もそういたしたいと思います。
  21. 堀昌雄

    堀委員 次に、金子全銀連会長にお伺いをいたします。  今、日銀の方でお話しになっておりました点で、実は本日の朝刊を見ましても、市銀の方はそう影響がないようでありますが、地方銀行においては著しい預金の減が現われて参っておるようであります。それは、今私どもは、さっき申し上げましたように、政府政策が間接投資から直接投資へという方向をとっておるように感ぜられますので、その現われであるかと思うのでありますが、そういう地方銀行と証券との問題と、今の窓口規制の問題。市中銀行については窓口規制が大きな問題であろうと思いますが、この二つの問題については一体どういうふうに今お考えになっておりますか。
  22. 金子鋭

    金子参考人 今の預金の最近の情勢についてのことから申し上げますが、これは一月二十六日にわれわれの側でも貸し金利を一厘引き下げましたし、世間一般で見ておられるところでは、われわれの方の預金利息また郵便貯金もやがて下がるのではないかというような予想が一応ありますところに、いわば株式投資信託でも、ある限度を越えた分は社債の組み入れをしなければならぬということになっておったところに、社債オープンが今度出まして、これがおそらく当事者でも予想以上の成績を上げたのではないかと思うのでありますが、そういうことがそこに出て参りましたために、そういう現象が事実どの程度ということはまだはっきり私らもわかりませんけれども、われわれの立場からいたしましても、戦後われわれの銀行中心とした間接投資資金の流れが片寄り過ぎておったということは、前々から感じておったことでございます。従って、われわれの自分の力だけでは、資金需要はなかなかまかないかねまして、御承知のように日本銀行からも多額の借り入れをしておるような現状でございます。それはやはり正常の姿ではないということは考えていたわけであります。従って、この社債の発行等が従来よりももっと促進されることは、われわれの立場としても歓迎するところで、むしろそらあるべきだという考えがあったのであります。その意味では、今度社債投信ができまして、最初のときから相当の成績が出たということはけっこうだと思うのであります。これはおそらく世界にもあまり例がないことかと考えますので、日本ではむろん最初の経験でございますから、これからいろいろ反省もされ、また、正常化もされていくものであろうと期待しておりますが、この傾向としては、社債の発行が従来よりも促進され、一般の大衆の方々が社債に従来以上の関心を待たれたということは、非常に私はけっこうだと思うのであります。今はちょっと異常な形も出ておるように思いますけれども、やがてこれは正常な姿にだんだんなっていくだろうと思います。今はその一つの過渡期でもあろうかと考えております。そういうわけで、これは日本人の国民性にもよるものかと思いますけれども、こういう新しいものができて非常に魅力がありますと、一時ぱっといくという空気もありますので、今だけで私は将来を判断すべきものではないと思います。ですから、今銀行預金がある程度そういう方向に流れておることは、これは確かであろうと思いますけれども、目先だけでものは考えたくないと思います。  それから、今の日本銀行窓口規制の問題でありますが、先ほど総裁からもお話がありました通り、これは変則の形でありまして、今申します通り、われわれが自分の資金だけで資金需要をまかないかねて、多額の借り入れをしております。そういう状態からきておることでもありますが、同時に、さっき私の説明にも申し上げましたように、私たちは需要家からの申し込みの月々何分の一も実際は融資ができないという状態にあります。同時に、近米の資金需要、ことに設備資金中心とした増加運転資金等でありますが、これは、一々説明を聞いてみますと、ただ生産をふやしたいというようなものは少ないのでありまして、合理化、近代化の設備関係中心にしたものであります。従って、大方のものは、できれば取り上げていきたいという性格の需要が多いのであります。そういうことから、今総裁のお言葉の中に銀行間の競争の話も出ましたが、近来は手元もそういう状況でありますし、一時のような激しい競争状態はございません。けれども、相手の話を聞いてみると、そういう資金需要でありますために、銀行としてはやはりこれもやってあげたいというものが多いのです。そうしますと、結局日銀でやはりある程度の窓口規制を行なっていただきませんと、競争という関係でなしに、行き過ぎになるおそれが出てくるわけであります。そういう意味で、今のところはやはり相当シビヤーな窓口規制を行なわれるのが実際に合っておると思います。この状態はしかし決して正常でもありませんし、できるだけ私らも早い時期に脱却したいと思っておりますけれども、現在としては私は必要であると考えております。
  23. 堀昌雄

    堀委員 最後に、もう一つこれだけ伺います。今金子さんは大へん広い視野からのお話であって、私銀行側としてはもう少し強い御希望が出るかと思っておりましたけれども、それは大へんけっこうだと思います。ただ、さっき日銀総裁がお話しになったように、金融正常化方向へいくためには、いろいろ問題が今後銀行で出てくるのではないか。要するに、債券市場をどんどん育成するということになれば、全体のワクの中の資金の流れというものがそちらへ参りますから、そうするとますます銀行預貯金の方は相対的に減るのではないか。そうすると、資金需要の方は一定量はやはりあるし、成長政策の中でそういうことはなかなか下がらないということになれば、結局これは日銀のオーバー・ローンの方をふやすということ以外になかなか問題は前に進みにくくなるのではないか。いい方向へいくのではなくて、逆の方向へいくような感じもするのでありますが、銀行側としてはこれをどうお考えになるか。私最後にお伺いしておきたいと思います。
  24. 金子鋭

    金子参考人 おっしゃることはごもっともな点がございますが、われわれといたしましては、先ほども申しましたように、戦後間接投資の方へ資金の流れが非常に片寄ってきたことは、いつのときかある程度是正すべきものだと考えておったわけであります。それが、私たちの希望から申しますならば、できるだけなだらかな線で、不自然な形でなしに、そういう経過をとりたい、こう考えておったわけでありますが、先ほども触れましたように、ちょっとここでは異常な形が出ておるように考えておるのは遺憾でありまして、これはやがて私は是正、されると思っております。  そういうことで、一方で強い資金需要をどうしてまかなっていくのかということになりますが、これは、一方には今のように社債の発行が促進されること、また増資も先般配当の扱い等で税法上の優遇措置も考えられておるようでありますが、増資の促進もこれから一そうはかられていくと思います。結局直接投資の方へ資金需要がある程度吸収されていく。われわれの方の側といたしましては、少なくもこれ以上オーバー・ローンはふやしたくない。そのためには、先般来機会がありますたびに総裁とも意見の交換をいたしておるわけでありますが、やはり窓口規制と同時に、ある程度のオペレーションを一つ軌道に乗せていただきたいということをお願いもしておるわけでありますが、そういうことで、今のオーバー・ローン以上にはできるだけふやしたくない、むしろこれはできるだけ減らしていきたいということを考えておるわけであります。しかし、これも、今のような経済の伸びが急テンポでありまして、資金需要が引き続き旺盛の見込みでありますから、ある時をかけないと、この結果はなかなか得られないというふうに今考えておるのが実情でございます。
  25. 足立篤郎

    足立委員長 関連質問を許します。辻原弘市君。
  26. 辻原弘市

    ○辻原委員 今の金子さんのお話でありました銀行と証券の問題でございますが、今堀委員からもお話がありましたように、新聞紙上等に伝えられている話をわれわれがそのまま受け取りますと、一月のボンド・オープンの募集状況から現われてきた最近の特に地方銀行預貯金の減少等の問題を含めて、銀行側が、この最近の傾向にある間接投資に移行してきている資金の動き、こういうものに非常に神経が敏感になってきて、何かそれに対する具体的な対策を政府等にも要望されておるようなこともわれわれ聞いておるわけでありますが、今のお話を聞けば、その点については一時的な現象ではないか、こういうふうなことで、かなり金融全体としては長期に考えられているように承ったのです。先般政府に対して申し入れをせられておるようでありますが、それについて今のお話で大体わかったのでありますが、巷間どうも、最近の金融情勢から、何か証券業界と銀行との間の調整というものにうまくいかない点があるんじゃないかという印象を受けておるわけですが、そういった点については、ただいまのお話のように、銀行側としても、新しい社債市場あるいは新しい投資市場というものをあくまで長期に育成されるという、そういう立場でこの問題をながめられておるかどうか、この点についていま一度もう少し具体的に承っておきたいと思います。
  27. 金子鋭

    金子参考人 最近の預金に対する影響につきまして銀行が深い関心を持つのは、これは当然だろうと思います。同町に、先ほど私申しましたことも、私自身としてはその通りの考えでありまして、今の直接投資がもう少し助長されていくということは、根本的には私は異議はない、むしろ賛成であります。しかし、おのずからその程度にも問題がありましょうし、またそこへ移行する経路につきましても、先ほど申しましたように、できるだけなだらかな線でいくようにということを期待しておるわけでございます。私の根本的な考えといたしましては、今まで長い歴史を見ましても、金融界と証券界というものは相携えてきた業界であります。今後も私はそうありたいと思います。ただ、今度の投資信託関係で大きく浮かび上がってきましたのではっきりしているわけですが、これは金融に非常に大きな直接的な関係を持ってきたということです。ですから、今のことに社債オープン、株の投資信託も含めてですが、こういうものを大きな今の金融のワクの中に入れてこれから考えていかなければならぬ、こういうことはあろうと思います。それはぜひ一つ御当局も考えていただきたいと私たちは考えております。今申し入れをしたとおっしゃいましたが、申し入れをしたわけではありません。この前実は愚見の交換をしたことはありますけれども、こちらからいわゆる要求という意味の申し入れをしたことはございません。どうぞ誤解のありませんように……。
  28. 辻原弘市

    ○辻原委員 もう一点。今オーバー・ローンの解消という問題についても触れられましたが、現在の通貨の供給方式というやつは、これは一般的に追加貸し出しはほとんど日銀に仰いでおる。従って、資金需要の旺盛な時期には、これは必然的にオーバー・ローンの傾向が強まってくるということはいなめない事実だと思いますが、今お話しの買いオペの問題、これは具体的に総裁もおっしゃっておりましたが、今後の新しい通貸資金調整の方法として、強力にこれを推進といいますか、検討されるということらしいのでありますが、問題は、結局間接投資から直接投資に移ってくるという、この一般の大衆の一つの投資態度あるいは預貯金に対する態度傾向から見ていきますと、これは私はどの程度になるか、そうじたばた騒ぐほどのことではなかろうと思うのでありますけれども、しかし、傾向としては漸次いわゆる高金利といいますか、そういう方向への投資態度にだんだん大衆が移っていくことは、これは必然だろうと思います。その場合に、先ほどから触れられておるように、金利問題が、本来の金融調整という面でなくて、政策的な面で行なわれている。これが、ただいま公定歩合引き下げから始まって、郵便貯金その他短期のものからさらには長期のものに手をつけてきている。ところが、今あなたも触れられましたように、結局はしかし銀行としては預金吸収ということが、これはやはり本来根本的な問題である。ところが、漸次そういった低金利政策ということに銀行が右へならえをするわけでありますから、そういう場合に、今の大衆の直接投資への傾向とにらみ合わせて、はたして今後いかなる具体的な手をもってこの預金吸収をはかるか。これが私は今後の銀行を通ずる一つの金融問題としては重大な問題ではなかろうかと思うのです。そういう意味で、大蔵省方面とも新しいいわゆる金利改定の問題について話し合っておられるようでありますが、ここではどうかと思いますけれども、一体具体的に——これは証券会社筋あるいは直接投資の面においてはいろいろな手が講ぜられております。しかし、銀行筋としては、おそらく事業資金等の関係預金増加することがあっても、一般の消費者を中心とする大衆の資金吸収ということについては、漸次一歩立ちおくれてくるのではなかろうかというような印象を、これは常識的に受けるわけです。そういう場合に、あなたはその具体策というものを先ほど検討したいということをお述べになりましたけれども、具体的なその中身内容というものについてはお話をいただけなかったわけでありますが、一体どういうような方策をお考えになっておられるか、また、今回の金利改定にあたって、銀行筋の態度として一体どの程度の金利幅にとどめたいというような考えで交渉せられておるか、その辺のところについて少し承っておきたいと思います。
  29. 金子鋭

    金子参考人 預金吸収の問題につきまして大へん御配慮を願ってありがとうございますが、ただ私考えますのに、銀行も、やはり戦後は、戦前と比較いたしますと、どこの銀行でも非常に広く大衆にサービスをしていくという行き方をとっておりますが、これが今までのサービスだけがサービスであるかどうか。いま一つの現われとしましては、まだ小さな現われでございますけれども、一種の消費者金融にも銀行は手をつけておりますが、これはやはり消費者に対するサービスでありまして、これはむしろ消費者金融というよりも、今まですでに出ておりますのは、消費者に対する私はサービスであると考えておりますが、今後こういう分野その他につきまして、銀行もあらためてここでまた創意工夫をしていかなければならぬところにきたのではないか、というふうな考え方も持っております。同町に、先ほども申しましたように、直接投資資金への移行につきましても、できるだけなだらかな線でいきますように、同時に長期金利と短期金利、このバランスの問題が今後にあろうと思います。今度の金利引き下げが一つの契機となりまして、日本金利体系の整備という考え方も自然と大きく浮かび上がってきておると思いますが、この機会に、そういう全般の金利水準引き下げが行なわれると同時に、金利体系の整備にも一歩を進めていくということになりますならば、そう急激な変化ということは、必ずしも懸念しないでもいいのではないかと思います。われわれの側で、預金吸収の面でマイナスの面が確かに出て参っておりますが、これは自分たちの努力によりまして、新しい創意によって、新しい分野の開拓でこれを埋めていくということが、私たちの側の考え方であろうと考えております。そういう意味で各行とも努力しておりますが、まだ表面に出すところまでいっていないのが多いので、一つこの程度で御了承願いたいと思います。
  30. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは七日の産経新聞でございましたか、金子さんの消費者金融についての意見を私拝見させていただいたのです。この中にも、将来の着眼として、やはり大衆へのサービスというような点が、今の金融情勢の中で、銀行筋としても考えなければならぬという意味で、西欧各国において取り上げられておる消費者金融の問題について論ぜられておるわけであります。ただしかし、これは、今の金融情勢から見て、直ちに一般産業資金等の需要の旺盛な時期にやることは困難である。しかし将来はそれを考えなければならぬ。われわれも大いにそれを歓迎するわけであります。やはり金融政策全般としての問題と同時に、また一つの社会政策としても、そういう大衆への奉仕、それによって大衆が魅力を感じ、そこに預貯金が集まるといったような具体政策銀行筋が御検討いただくことが、私は一方において直接投資の新しい方向を育成する道でもあり、また銀行それ自体新しい分野を開拓をしていく心でもある。そういう点について、時間があればいま少し具体的なものも承りたいのでありますけれども、将来そういうことも御検討をせられるという意味に承りました。拝聴いたしておきたいと思います。私どもの感じとしては、このまま、銀行はただこれだけ預かって、あとは領かったものを貸すだけということでは、今の現状においては、私は、やはり預貯金吸収などという具体的問題は、かなり深刻な問題が出てくるのではないかということを予想いたしますので、そういう点についても、将来御検討いただきたいということを希望申し上げます。
  31. 金子鋭

    金子参考人 いろいろ御注意ありがたく拝聴いたしました。私の一つの考えを申し上げますと、手前みそに聞こえるかもしれませんが、いわゆる貯金をする、預金をするということは、国民の思想的に考えて、私は非常にこれはやはり重要なことだと考えております。われわれは、そういう預貯金を扱っておる立場だということを、ここでまたあらためて私たちも認識しなければならぬのじゃないか。それで、今とかく預貯金に対して魅力が総体的におりてきているような感じを世間に与えておるのでありますが、これはわれわれの努力でもう一ぺん盛り上げなければならぬ。この預貯金が依然として高い水準でふえていくということは、国民思想的に見ても私は非常にこれは重要なことだと考えております。そういう意味で、今後は、自分の立場も認識し、自分の生活も認識し、預貯金というものの必要性もそういう意味であわせて認識いたしまして、ここで新しい努力をお互いにしていくべきだと私は考えております。どうぞ御了承願いたいと思います。
  32. 足立篤郎

  33. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私は山際総裁にお尋ねしたいと思います。  先般の大蔵大臣の財政演説におきましても、金利引き下げ問題に関連して、その理由づけとしまして、自由化の進展に伴って国際競争力強化するために、国際的にも割高なわが国金利水準国際水準にさや寄せすることが重要であるということを説かれました。きょうの日銀総裁のあなたの説明の中にも、昨年八月の一厘の引き下げ、あるいは今回の引き下げの背景としまして、この貿易為替自由化に即応する必要から、このことをなすのだということが強調されております。ところで、この点は別段争う必要はないと思うのですが、実はもっと手近な問題としまして、米国のドル防衛に協力するという国際連帯的な立場ということが、わが国の場合におきましては一つも説明されておらないのであります。西独とかイギリスにおきましては、国際的連帯の立場から、公定歩合引き下げをしておるわけであります。特にこの引き下げの場合におきまして、国内的な問題からの要請ではないがというまくら言葉まで付しまして、引き下げ説明をしているくらいであります。こういう国際的連帯というような要請から今回の引き下げが行なわれた、あるいは一部そういう理由のもとにこの引き下げを必要としたという事実があるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  34. 山際正道

    山際参考人 御承知通りわが国におきましては、現在なお非常に厳重な為替管理がございまして、金融市場はなかなか世界の自由な金融市場とは疎通いたしておりません。従いまして、過般来ドル防衛の見地において英国がとった措置あるいはドイツがとった措置は、国内の金利引き下げという問題ではなかなかその効果ができていないのでございます。しかし、将来を私は考えまして、やはり為替貿易自由化せらるべきものだということのために、いろいろ努力いたしておりまするが、将来においてこれが西欧並みに自由化されますと、あるいはお話のような国際的見地というものも相当強く入って参ることもあり得るかと思いまするけれども、何と申しますか、日本金利の上げ下げは、為替管理、貿易のあれがありまして、国際金融市場には実はそう響かぬのであります。従いまして、残念ながら今回の措置もその要素は取り入れておりません。むしろそれに対する準備あるいは国内的理由ということで、御了解願いたいと思います。
  35. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そういたしますと、私はもっと直截に国内的要請の伏線として次のような点がないかどうかをお伺いしたいのです。と申しますのは、今回の予算の中における政府のとられました税制政策、租税政策を見ますと、目一ぱい取っておりまして、政調の答申の国民総所得に対する国税、地方税の合算額は二〇%程度にとどむべしという線を上回りまして、二〇・七に及んでおります。内容をいろいろ調べてみますと、法人税にしましても、あるいは所得税にしましても、各種の間接税にしましても、まことに目一ぱい、取っておるようにわれわれは判断している。そうしますと、三十七年以後におきまして、なかなか減税どころではない、そういう印象をわれわれは受けておるのであります。そういたしますと、池田首相は、来年とか再来年において赤字公債発行はせぬと一応は言明しておりまするけれども、私どもといたしますと、どうやらその必要を生じてくるのではないか。そのために、戦時中の低金利政策と同様に公債発行の素地を作っておきたい、こういう観点から低金利政策も長期間時間をかけて推進していこう、こういうかまえがあるいはあるのではないかというふうに考えられます。このことにつきまして、日銀総裁はどういう御所見を持っておられまするか。
  36. 山際正道

    山際参考人 予算の編成の方針、ことに将来の予算等につきましては、どうも私がお答えするだけの力もございませんし、また立場でもない。しかし、今回の引き下げは、少なくとも将来の公債発行の素地を養うという意味では全然私どもは考えておりません。むしろ、前段申し上げます通り、将来日本経済拡大するのには、どうしても世界経済の間に入り込んでいかなければならない。しかも強力なる勢力に入り込まなければならぬ。そのためには国際競争力を培養する。その一助として、ここに弊害なき限り金利負担も軽減をする努力もいたしております。その他のことは、御指摘の点は考えておりません。
  37. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 本日の御論述になかったことでありますが、せっかくお出ましですから、お聞きしたい点が二、三ございます。  実は自由円レートは現在〇・五%上下変動幅となっておりますが、〇・七五%にすべしとの議論がございます。西欧各国はすべて現在〇・七五%の変動幅を持っておりますし、なおIMFの規定では上下一%の幅といたしておるわけであります。さらに、先般のケネディ白書によりますと、IMFの一%幅の規定を変更拡大すべき意図を持っておられるようであります。このような国際金融動向からいたしまして、為替川場変動幅の拡大は必至と思いますが、その際は、相場の急激な上下を回避するために、平衡操作が必要となってくるように感じます。これに関します日銀の御見解はどのようでございましょうか。
  38. 山際正道

    山際参考人 現在政府為替管理上とられております為替相場の変動の幅については、御指摘の通りでありまして、将来これが拡大する方向に向かうか、あるいはしばらく現状のままで推移するか、これは一つの問題だろうと私は考えておりますけれども、現在の場合において、これを拡大することがわが国為替政策上必要だとは実は考えておりません。が、将来もし条件が整備されまして、あるいはその範囲が拡大されるということになります場合、為替平衝操作ということが必要だということは、これまた当然随伴的に考えられるところと考えます。しかしながら、これを、どういう場面において、どういう仕組みにおいて取り扱うかということは、これはなかなか広範な影響を持ちますので、あるいは貿易関係においても、金融機関資金繰りの関係においても複雑な関係を生じますので、これはそのままにおいて特に慎重に考慮すべきことであるということは間違いないと思いますけれども、現在の場合、まだ実はそこまでは考えておらぬということでございますので、御了承願います。
  39. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 先のことを今から質問するのはなんですが、大体かまえとしまして平衡操作をしていく場合の基本的かまえと申しましょうか、これは為替市場の相場形成機能を第一義的に尊重しまして、補完的にその急変を避ける緩衝的操作、こういうふうに観念していいと思うのです。従いまして、平衡操作の実施にあたりましては、市場の刻々の動向や海外各地の動きなどにつきまして常時これを把握する、こういう必要があろうと思うのであります。要するに、為替市場自体の機能をできるだけ生かして、官製的相場を押しつけるというようなことは厳に避けるべきものと私は考えております。この意味で、世界各地に手足を持ち、そうして情報網を持ち、いい意味での商業的センスと判断力を持つ為替銀行の活用のよしあしの問題が、当然問題になってくると思うのでありますが、もともと為替専門銀行法は、このような事態に対処し得る有力な為替銀行を育成するために発足しまして、ほぼその任にたえるべき実をあげていると私どもは考えております。平衡操作の運営機構は、従いまして日銀為替専門銀行が相協力して行なうべきであり、またそうしなければ円滑な実施は不可能と考えますが、日銀総裁の御所見はいかがでございましょう。
  40. 山際正道

    山際参考人 将来の問題でございますが、この平衡資金をこしらえて、その操作によって為替相場を安定させていくということは、まあ考えられることであります。また各国においてその例は乏しくないのであります。多くの場合において、今御指摘のございました政府並びに中央銀行は緊密に協力してやるということは、間違いないのであります。その場合において、純然たる民間銀行をその代行機関に使うかどうかという点については、これは各国にあまり例を見ておりませんですが、その場合においては、これは十分検討しなければならぬ例だろうと思います。いずれにいたしましても、将来のことでございますので、今ここで可否を申し上げるわけにも参らぬかと思います。
  41. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 問題を変えまして、金につきまして御質問します。金保有はどのくらいふやすつもりでおりますか。現在日本の金保有率というものは一四・八%、これに対しましてイギリスが八〇・九%、ベルギーが八九・七%、オランダが八六・二%、スイスが九三・八%、フランスが七七%、西独が四二・五%、イタリアが六八・八%、このようになっております。日本の金保有率をもっと強化しなければならぬと考えられますが、この点はどのようにお考えでしょうか。
  42. 山際正道

    山際参考人 各国の通貨当局において保有せられておる金の割合については御指摘の通りでありますが、日本におきましても、私自身の感じといたしましては、いま少しく金の保有をふやしたい考えでおります。これは、ちょうど、先般私が新聞紙上で拝見いたしましたが、水田大蔵大臣に対してどなたからか御質問がございまして、大臣もさような御意向をお示しになったかと考えますので、その点は私も同感であります。何分にも日本の外貨がふえましたのは、ここ一両年の急激な伸びが非常に多うございますし、また、その内容的方面から申しましても、割合に短期資金の流入による外貨の保有がふえております。どの程度の率が日本経済をまかなう上において安定的に保有し得る金の量であるかということの見きわめも必要と思います。さらにまた、問題なのは、今世界における金市場というものが一種の変則な状態にございます。これは、御承知のように、大手の生産者が売りに出たりあるいは売りどめしたり、いろいろな操作がございまして、そこに金の相場というものが相当乱高下いたしております。あるいはまた、アメリカとの経済関係において、金流出の問題などによって、各国の中央銀行、各国の政府は協同をしてしばらく金の買い入れをやめよう、控えようという考え方もございますし、かれこれいろいろ複雑な要素を持っておりますから、実行の時期及び方法につきましてはよほど複雑かつ慎重に考えねばならぬと思いますが、全体といたしましては、機会あらば日本の金保有量は私はふやすべきだと考えております。
  43. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 今のお答えの中に、各国が協力して金の買いあさりというようなことはすまいという、そういう点が日本に道徳的な制約を負わしているように思います。法律的には米国が外国政府または外国の中央銀行の買いには応ずることになっているはずであります。そこで、日本の金の保有高の割合を高めるためには、当面やってやれる手段としては、米国から金を買い付けることができるわけです。それは、今の場合、ようやらぬでおこう、やらぬでおく方がいいと、こういう判断をされておると思うのです。そこで、これは米国への協力といましょうか。自由国家群の協力態勢という点にウエートがあるわけですけれども、といって栄襄の仁を施しておるばかりにもいかぬと思うのです。そこで、日本といたしまして、現在十五億ドルほど米国の銀行や証券に預託し運用しておると思うのです。従いまして、ケネディもドルの引き下げはせぬということを言明はいたしておりまするけれども、やはり日本の責任の衝にある当局としましては、日銀としましても、政府としましても、もしドル貨の切り下げの場合、手持ちドルの損失を生じないように、米国政府に保障を取りつけていく必要があると思うのです。このことにつきましてはどのようにお考えでしょうか。
  44. 山際正道

    山際参考人 現在の米国の法制が、お話のように、外国の中央銀行あるいは政府に対しては一定のレートで売っていこうという規定がありますことは、御承知通りでございます。ただ、これがその結果として及ぼす世界の金市場への影響、それがまた世界貿易に及ぼす影響等を考えますとき、日本としていずれが是であるかいずれが得であるかということは、簡単に金の率を増すということでは解決し得ない、非常に複雑な情勢にあると思います。金市場もまた先ほど来お話にございました一種の過渡的な状態にございますので、しばらくこの推移を今注意深く見守っているという段階でございます。将来もし米国がドルの価値を切り下げた場合に、得べかりし利益が減るではないか、あるいはまた、それについてケネディはそう声明したのだが、保証を取りつけたらどらかということも一つのお考えでございますけれども、これはアメリカに申しましてもアメリカは別に保障はしない。現在すでにもう規定があるのだから、これ以上保障する必要はないと申すだろうと思いますが、いずれにいたしましても、現在の私どもの見込みは、考えられる範囲において米国のドルの切り下げというものはないという前提に実は立っております。しかし、それは人によってそう考えておるのであって、あるいは早晩そうなるのではないかということを言われれば、それまででありますけれども、責任の衝に当たります者といたしましては、いろいろな得失を判断いたしまして、しかして米国の経済の将来を予想いたしまして、そうしてできるだけの判断をそこにとっていくということ以外にないと思います。その見地からいたしますと、この際において、米国の政府に対して、ドル切り下げの場合の保証を取りつけるというような問題は、私は実は適当でないと考えております。これは、過般の予算委員会その他で、総理大臣が実は答えられたように新聞で見ておりますので、あの点につきましては実は同様に考えております。
  45. 足立篤郎

  46. 春日一幸

    春日委員 私は、山際総裁に対しまして、公定歩合がこのほど相次いで一厘ずつ二回引き下げられたことについて、お伺いをいたしたいと思います。  ただいまのお話によりますと、総裁は、この引き下げは、金融緩和することのためでもなく、また景気を刺激するというような目的も考えていない、ただ単に国際経済動向に見合わせるためにこのことをやったたのだが、さて経済界の受け入ればすなおにそっと受け入れられたものと見なされておるようでございます。かくのごとくに述べられたのでありますが、私はここで若干不安なしとはいたしさないのでございます。ここ数カ年間のわが国経済動向と、それから日銀のとっておられます公定歩合の上下を通じての金利政策、これの及ぼす影響、その足取りをたどってみますと、これは今山際総裁が述べられたような形をとってはおりません。原因と結果とがさまざまに作用しいたまして、はからざる結果を招いて参っておるのでございます。と申しますのは、昭和三十一年に初めて神武景気というような言葉ができましたが、その当時設備投資が過大に行なわれまして、そうしてこのような状態が続くならば必ず外貨の危機を招来するであろう。ちょうど景気が上昇の一途をたどっておりましたそのさなかにおいて、たしか当時日銀の調査局長であられました関根君から、いわゆる関根報告というのが出されておりました。そのときは、これはすべからく公定歩合を引き上げて、そうして金融を引き締めるにあらざれば、国内において消費を刺激して、そのために輸入の増大を余儀なくして、手持ち外貨の大消耗を来たすであろう。このことは円価価というものを危うくするので、これは、ただいま申されております通り日銀としては、円価値の安定という至上命令からするならば、この際公定歩合を引き上げなければならぬ、こういう強い要請が、たしか昭和三十一年の夏ごろでありましたか、述べられておったと思うのであります。ところが、当時政府はそれに対して反対の意見を述べておりました。私は、経済企画庁の景気観測、日銀調査局の景気観測、さまざま見ておりまするけれども、結果的には日銀景気観測があやまつところ非常に少なかったと見ておるのであります。そこで関根報告で公定歩合を引き上げろと警鐘乱打しておった形でございますが、政府はあえてそのことをなさなかった。そういたしますと、当時外貨の保有がたしか十二億ドルちょっと上にあったと思うでありますが、それが設備投資、それから消費等を通じましてみるみる減って参りまして、やがて十億ドル台を割り、九億ドルにかれこれ参りましたときに、初めて、時の池田大蔵大臣でありましたか、昭和三十二年の二月でありましたかに、公定歩合を一厘引き上げました。それでも効果が現われないというので、五月になって二厘引き上げをいたしました。そして、いわゆる設備投資の抑制、それから輸入金融の抑制、そんなようなこともいろいろやりまして、それでも追っつかないというので、その年の予算で議決されておりました財政投融資までも、これは千数百億でありましたか、大なたをふるって実行を見合わせて、外貨の減損を防止することのために非常の措置をとったと思うのであります。私は、今考えますとき、あの神武景気のときに、わが国経済がさまざま試練を受けたと思うのでありますが、昭和三十五年から今にかけて、今やこれが岩戸景気といわれております。ことしはこれがさらに上回って高天原景気といわれておるのでありますが、私は前年の轍を踏んではならないと思うのであります。昭和三十二年の神武景気から、いきなり、これは横山君が発明した言葉でありましたが、仁徳不景気に直線落下いたしまして、それからしばらくなべ底景気が続いて、国会においてはなべ底論議がかれこれ一年も続いたということは当然総裁御承知通りであろうと思うのであります。そして、今金子さんの御報告の中にもありましたが、銀行貸し出しが現実に急増いたしておる。それが設備投資中心としながら、それに対するさまざまな原材料をまかなうことのために、さらに随伴いたしまして、運転資金の融資もこれまた激発をいたしておる状況であるといわれておるのであります。しこうして、もう一つの要素は、本年度の積極予算、かれこれ七千億になんなんとするところの財政投融資、こういうものを通じて大きな消粍があろうと思うのでございます。これは限界輸入性向が本日の時点でどの程度のパーセントテージを占めておりますか、日銀では当然御計算になっておるでありましょうが、いずれにしても、こういうものと、それから膨大な財政投融資が、市中銀行からのこれまた設備投資を誘発するでありましょう。このことから来たるところの外貨消粍というものを一体どのように計算をされておるのであろうか。本年度から少なくとも来年度にかけまして、為替貿易自由化によりまして、それを大胆にやってのけようとわが国政策として決定いたしておりまする限りにおいては、輸入超過のことがあってもよろしいという腹がまえの上で、この方式に踏み切っておると思うのであります。  そういたしますると、私が今申し上げたいことは、集約いたしますると、片方においては積極予算、積極財政投融資、それに随伴するところの、現実にその徴候を現わしておるところの過大なる設備投資銀行貸し出しの急増、これがあり、片方には為替貿易自由化に伴うところの外貨の減損を見越していかなければならない。そういうようなものをにらみ合わせまするとき、かつてわれわれがやったことは、すなわちあなた方がやられたことは、昭和三十二年にはこのような時点において何をやったか。日本銀行は、公定歩合を引き上げることによって、景気の引き締めをやった。すなわち、とにもかくにも輸入を抑制したり、物資の消粍を来たさないことのために、さまざまな経済活動を抑制いたしました。ところが、現在あなたの方がおやりになったことは、まるっきりそれとは逆であって、これは金融を緩慢にする意図でもないし、景気を刺激する意図でもないとは言うてはおられまするけれども、現実に公定歩合引き下げられれば、伝えるところによりますと、この四月からは預金金利も下がってくるのでありましょう。貸出金利もそれぞれどんどん下げられつつあるようでありますが、これは景気を刺激せざるを得ない。設備投資を刺激せざるを得ない。消費ブームはさらに高まってくると私は思うのです。だから、かつてやったことと今回やったこととが、同じような経済背景の中において全然逆のことをやられて、なおかつ日本銀行に課せられておる至上命令である円価値の確保、この使命をはたして全うできるかどうか。私はこの点若干の危惧の念を抱かざるを得ないのでございます。従いまして、この際総裁からお伺いをいたしたいことは、あのときはああなったのだが、このときはそういう心配の要素が絶無である、こういうことを、われわれがよく納得できるように、一つごうんちくを御披瀝願いたいと思います。
  47. 山際正道

    山際参考人 昭和三十二年の事例は、私がその衝におりましたから、よく存じております。御指摘の通りでございます。そこで、ただいま全体として御指摘いただきました今日の経済情勢と、あの当時の経済情勢の比較というものが、実は私の最も頭を悩ましておる点でございます。しかるにかかわらず、私が先月金利引き下げましたゆえんのものは、今日なるほど好況が数年続いており、しかもなお予算は相当大きな予算が組まれておるという事実、これはもう否定することができない。しかも、その際に、金利水準をだんだん国際水準に近づけようという企てをなぜしたかということであります。私は、当時と一番変わっておりまする点は、一つは国際経済情勢だと考えます。それから第二は、あの当時の経験を経たということが一つの大きな違った点になっておると私は思うのであります。  第一の点から申し上げますると、どうしても、国際経済情勢は、今後国際経済協力その他によって発展をしていかなければ、世界経済が縮小するという段階であります。世界の国際経済協力の仕事というものは、私はだんだんふえて参ると思う。これは自他ともに繁栄する道でありますが、自然合理的に発展する可能性を持つわけです。それに日本が参加し得るやいなや、これはまた一つの大きな問題であります。ぜひともこれに参加しなければ、日本経済は一向ワクがふえない。ふえないときに、国内で大いに事業を興し、膨大予算を組めば、三十二年の轍を踏むのではないか、こういう結論になるのでありますけれども、私がいま一つ考えておりますことは、そのかけ橋として、いわゆる貿易為替自由化というものがすでに始まっている。そして、日本経済を将来拡大していくためには、ぜひとも勇敢に実行しなければならぬプランだと思っておりますので、このプランが、当初定められました通り日本経済全体を国際的レベルに上げていくということが成功されますならば、私は、今のような情勢でいきましても、三十二年の轍を繰り返すことはなかろうと実は思っておるのであります。  そこで、今日までは、御承知のように、外貨はどんどんふえて参りまして、一月末でもって十八億八千二百万ドルという数字を出しております。そしてまた、ここ一、二カ月の見通しから申しますると、三月の年度末には、二十億ドルをおそらく越すだろうと私は考えております。しかし、長い目で見ますと、やはり今申し上げました為替貿易自由化を通じての国際経済への参加、かくしてこそ、国際経済拡大とともに日本経済拡大する。この方向を見失いましては、私は非常に危険だと思うのであります。  そこで、私は、一月に金利操作を行ないましたけれども、決してそれで安心はいたしておりません。常時諸般の内外の情勢に注目いたしておりまして、先ほど金利操作に弾力性を持たせると申し上げました意味も、実はその含みを持っておるつもりでございます。もしそれが所期のごとく進まぬならば、進まぬに応じての金融操作を直ちにとらなければならない、そういう態勢でしばらく続けていく立場に現在あるのであります。もしも現状の諸政策がそのままに支障なく遂行いたされますならば、当面のところ、三十二年度にわれわれが経験しましたような事態は避け得るものと、実は考えておる次第であります。今申し上げましたように、世界情勢は非常に変わりやすい状況でありますから、これらの点につきましては今後とも常時注意を怠らずに進みまして、必要があれば直ちにそれに即応する弾力的な操作をとる、こういう考えでいきたいと思っております。
  48. 春日一幸

    春日委員 本年度の国際経済が波乱含みのものであるということについては、総裁御自身も述べられておるところでございまして、また一様にそのような見方がなされておるかと思うのでございます。すなわち、アメリカにおいてはドル防衛政策があり、効果が上がらなければ、さらに第二段、第三段の強硬措置もケネディがとろうとしておるように見受けられるのでございます。さらに、諸外国におきまして、特にまた日本の輸出市場相手国においてドル手持ちが何となく減りつつあるというような悪い要因もまた指摘されておるのでございます。こういうような波乱含みの経済情勢に対応いたしまして、今国内的には過熱の要素を持っておる。神武景気と岩戸景気とは同質のものである。しかも、一方においては財政投融資、それから予算の編成があのときと同じように積極的になされており、いわば危険な要素というものが相当ここに露呈をいたしておると思うのでございます。こういう段階において金利引き下げられましたということは、なるほど、総裁が御指摘になっております通りに、一面においては為替貿易自由化という国際的な至上命令があるから、わが国経済としてもそれに見合わせなければならないという、国際的な連関性はあるではございましょうけれども、しかし、それは長期展望のことであって、今ここでやることによって、もしも昭和三十二年のあの轍をわれわれが踏むようなことになるならば、私は、日銀総裁のきんたまが百個あっても、それこそころんころん、からんからんになってしまうのではないかと思うのであって、はなはだ心配であります。  あの当時、あなたの御記憶にあるでありましょうけれども、それこそ多くの中小企業者が倒産、破産をいたしまして、国民大衆の受けたところの惨禍というものは目に余るものがございました。さればこそ、本委員会においては、この問題を重視いたしまして、当時政府に対してさまざまな警告も発し、時の大蔵大臣に責任をとったほどでございます。当時の池田大蔵大臣はわが国の財政経済通であるが、あの関根報告がなされたにもかかわらず、その当時の御答弁、方針は、あたかも今山際日銀総裁の述べておられるような、いわば楽観論を述べられて、わずか半年たたないうちに、経済現象の激変を見て、あのような破綻を生じたことによって、みずからは責任をとり、国民は惨禍の中にさらされた。私が今ここで指摘いたしますのは、そういうようなことをまた繰り返さないように——しかしながら、今総裁のお言葉の中に、今これをやってみるけれども、これによって外貨に相当の影響力を現わしてきて、円価値に心配を生ずるようなことがあったら、直ちに弾力性ある手を打つと言われております。私の論旨もむしろそこにウエートを置いているのでございますので、どうかその点は一つ万全を期していただきたいと存ずるのでございます。  次は、銀行協会の金子さんにお伺いいたしたいのでありますが、こういう点を一つお伺いしてみたいのであります。それは今の公社債の投信でございます。投資信託の制度ができまして、そして膨大な大衆の資金が直接産業投資に向けられている。このことは、資金社債によって調達すべしという基本的な理論からは、歓迎すべき一つの方向ではあるけれども、しかし、私がここでちょっと心配いたしますのは、わけて中小企業金融政策の立場から心配をいたしますのは、この投信、すなわちこの社債投信に応募いたします資金の源泉は、いわば大衆の金であろうと思うのであります。いわば零細な金というものの結集したものが、そういう形をもって流れている。そういたしますと、そういうような資金は大体において地方銀行に預託されていると思うのです。ところが、公社債というものは、実例に見ます通り、電力債を中心とする信用ある銘柄ということになりましょうから、そういうような金が今回の公社債投信を通じて、大企業の側に直流していくことになりはしないかと思うのでございます。そういたしますと、その資金を受けた大企業は、その金をすぐ使えば別でありますが、かりに手持ちで保有いたします場合には、その預託先は、これは地方銀行や相互銀行ではなくして、当然大銀行に預託されてくる。こういう形になってこの制度が継続的に行なわれて参りますと、投信の正常な足取りから見ましても、うまくいけばこれは急速に伸びていく。そうすると、地方銀行資金を大きく蚕食して、そうして大銀行へ持ち運ばれていく形になりはしないか。そこに金融機関としての一つの問題があるのでありましょうが、それよりもむしろ大きな問題は、地方銀行や相互銀行金融は、何といっても中小企業に重点が置かれておるのでありましょうし、ウエートも多く占めておるでありましょう。今までそれらの金融機関が持っておりました金は、銀行のクッションを通じて貸し出すということになると、これは中小企業により多く参ります。ところが、それが引き出されて投信に応募してしまいますと、それは電力会社や大企業は直流してしまって、しかもその金は、その債券発行会社に余裕がある場合には、大企業に還流していく。こういう形で、これがこのままの形で継続的に行なわれ、さらにこれが投資信託と同じような足取りで発展いたします場合、中小企業金融というものに大きな穴を生ずるようなことになりはしないか。この点を心配するのでありますが、これに対して金子さんはどのように理解されておりますか。なお重ねて、一般金融政策といたしまして、中央銀行総裁の山際さんは、こういうような傾向を生ずるようなことがありはしないか、あった場合はどうしたらいいか、この点についてそれぞれ御所見を承りたいと思うのでございます。
  49. 金子鋭

    金子参考人 ただいま春日さんから御指摘の点は一応ごもっともの点だと考えております。先ほども申し上げましたように、社債投信が一月の成績——この金というものはある意味から言うと異常なものでもあろうかと思いますし、おそらく社債金利、長期金利もやがて全体の金利水準引き下げの一環として金利低下がはかられていくであろうと私は想像してもおりますし、おそらく遠からずもう一段落ちついた形でこれが進展していくものと考えておることが一つでございます。  同時に、この社債で集まった金が大体大銀行に入ってくるだろうという御指摘でありますが、これは、相当の部分は貸し金の返済なり預金なりの形で都市銀行へ入ってくる分が確かに多いであろうとは思いますが、必ずしもそうとばかりは限らぬと思います。その面では、むしろわれわれといたしましては、大企業社債資金調達いたしました分を、自分の設備中心の使途に使うことは当然でありますが、しかし、今までよく問題になっておりました点は、大企業の系列と申しますか、関係の深い中小企業に対する支払いの問題があると思います。これは、すでに私たちが会った大企業の幹部の中には、今後そういう批評も出るだろうし、そういう傾向もある程度はいなめないと思うから、自分の関係の深い中小企業に対する資金のめんどうを見ていかなければならぬということを言っている向きが相当すでに出ておりますが、一つはそういうルートで中小企業関係資金のめんどうも見ていかれると思うのであります。また一方、今こういうふうに新規の社債投信というものがまだ端緒でございますから、一般の方の関心がその方にぱっと向いておりますが、これもある程度落ちついて参ろうと思います。同時にまた、銀行預金にくる性格の金というものがある程度は期待できると思いますし、そのほかにまた銀行としても、先ほど申しましたように、新たな創意と工夫、努力によりまして、自分の預金を確保していきたいという努力は各行とも真剣にいたすでありましょうし、全体を考えましたときに、ここしばらくは非常に目につく形が出ておるようでございますけれども、遠からずある落ちついた形が出て、現在とそう大きな変化なしにいけるのではないかというふうな見方を私はいたしております。その点では、今の直接投資を扱う側でも、金融に大きな関係を持ってきたということを十分に認識していただいて、私たちの従来の金融業者関係ともいろいろな機会に話し合いもして、金融全体があまりゆがんだ形にいきませんように、急激な変化をいたさないようにいくことに協力していただきたいと考えておる次第でございます。
  50. 山際正道

    山際参考人 ただいま御質問のございました中小企業金融の問題でございますが、御承知のように中小企業金融わが国経済における地位というものは非常に重要でございます。従来とも実はその点は非常に重要に考えまして、銀行の融資態度等もよく注意いたしております。大銀行といえども中小企業金融の方面に力をいたしておることは、現在でもすでに相当実績を上げてきておると私は考えております。地方銀行もとよりであります。  ところで、今回別のルートができまして、資金が大企業の資本充実に役立つということからして、中小企業金融向けの不安度が出るのではないかという御配慮につきましては、私は絶対にそういうことをさせないつもりで注意していきたいと思うのです。社債その他によって、あるいは増資によって資金ができましたならば、その資金は当然大銀行その他に還流するはずであります。その還流された資金をしからばいかに運用するかという場合において、中小企業金融ウエートというものを十分に認識してやってもらうように、注意を促していきたいと考えております。私どもの考えますのは、中小企業が、中小規模、中小なるがゆえに不当な扱いを受けるということは間違っておる。りっぱな内容であれば大企業と何ら遜色はないのでありますから、その間においてさような原因による行き詰まりがないように、私は常時注意をいたして参りたいと考えております。
  51. 春日一幸

    春日委員 それは、総裁としての心がまえは示されましたけれども、しかし制度としては何ら保障はございませんし、総裁が、今堀君が指摘されておるように、一々窓口指導をされると言ったところで、これもまたおのずから限界があろうと思います。そういうわけでありますから、私は、もしそれこういうような制度が継続的に行なわれて、そうしてその努力にもかかわらず、現実には中小企業金融機関の地方銀行、相互銀行資金がそこに結集され、そうしてこの社債投信によってこれが大銀行に運ばれるということでありますと、今総裁からもお話のありました通りに、ギャップは現実に何とかしてふさがなければなりません。今大銀行の中小企業貸出率を金子さんから御指摘になりましたが、これは八兆何千億の中で三二%といって、企業数、総生産数等から比較いたしますれば、これはもっと高めなければなりません。にもかかわらず、現実にはこのように低いのでございます。そうでありますから、これは当面はとにかく窓口規制で何とか指導してもらうにいたしましても、制度として何らかの配慮がなければ、現実の問題として困難を生ずると思うのでございます。たとえば、そういう投信の中に、何らかの措置を講じて、中小企業関係金融機関金融債をここに食い込ましていくような方法もございましょう。あるいは中小企業金融公庫に新しく金融債発行の制度を設ける等の方法もありましょうし、また利回り等の点について問題を生じて参りましょうが、これは政治的にまたほかの道もあろうと思うのでございます。いずれにいたしましても、この制度が中小企業金融に大きな障害をもたらすことのありませんように、どうか一つ金融の総元締めとして、また全国銀行協会の責任において、ぜひとも御善処が願いたいと思うのでございます。  時間が参りましたので、最後の一つだけお伺いをいたしておきたいのでありますが、一方投資信託があんなふうに盛んに行なわれております。そうして今度新しくまたこのような社債信託が行なわれております。利回りは七分以上でございます。現在いわば大衆資金が直接投資自体に移行しようといたしておりますようなときに、このような時点の中で、あなた方は預金利子を引き下げなければならぬ制約のもとに置かれておると思うのでございます。そういたしますと、銀行に預けておく金利と、これから特に社債なんかは元本の保証がないといったところで、これは現実にはあるのでございますから、確実な形ということになりますと、この社債投信には安心感を持ってそこへさらに流れて参る傾向が助長されてくるのではないかと思うのでございます。従いまして、この四月に実施されるとか聞いております預金金利引き下げと、それからこの社債投信の利子のにらみ合わせ、これをどのように調整をはからんとされておるのか。当然政府に対してさまざなま要請がなされておると思うのでありまするが、できることならこの際あなたの方のお考えを承っておきたいと思います。
  52. 金子鋭

    金子参考人 この問題は、要するに社債金融債貸付信託、そういったようなものの一連の長期金利をこれからどうするかという問題になると思うのでありますが、これはまだはっきりした線がどこにも出ておらない段階であると考えております。同時に、各方面であまり延び延びにしないでその線を考えて下さらなければならぬということで、今それぞれ検討しておられるのが現在の段階であろうと思いますので、どの程度にどうということを今ちょっと申し上げることは適当でないと思いますが、私たちの立場から申しますと、郵便貯金もまだどれだけの利幅で下げられるのか、私たちはっきり存じておりませんが、郵便貯金、われわれの方の預貯金金利引き下げ、こういうものとできるだけ見合った下げ幅でこの長期金利関係も下がっていくことを、私は期待しておるわけであります。そういうことで、従って、それが今の社債投信の配当にも当然関係してくるわけでありましょうし、それと、先ほどから申しました社債投信の今後のあり方について、社債投信側でいろいろ配慮していただいて、そういうことで何とかあまり郵便貯金や銀行預金に相対的に大きな魅力減を来たさないように、われわれとしては努力をしていきたいと考えておるわけであります。
  53. 山際正道

    山際参考人 主として公社債投資信託をめぐる影響についてのお尋ねと思いますが、実はこの問題は、何と申しますか、ごく最近に思いがけない大きさで起こった問題でございまして、それが及ぼす影響、またその事態のあり方響につきましては、関係当局で鋭意今研究を持ち寄っておる段階でございます。お話のように、この権衡を失することは私は一番いかぬと思います。今金子会長が言われました実際の場合の調整の幅なりつり合いをどうとるかという点については、お尋ねの点、十分考慮に入れてきめられていくであろうと思うし、また私どももそう考えたいと思っております。
  54. 足立篤郎

  55. 横山利秋

    横山委員 続いて、お疲れのところでございますけれども、各委員の質問、また御答弁の中に含まれておりまするように、きわめて重要な段階でございまして、私どもとしては、引き続いて今度は証券の方の皆さんの御意見も聞く機会を持ちたいと思いますので、いましばらくごしんぼう願いたいと思います。  この問、端的にいってこういうキャッチ・フレーズを私は聞きました。「銀行よさようなら、証券よ今日は」。これはまことに、何と申しますか、今日の時点をつかまえた、庶民に対する非常な影響力のあるキャッチ・フレーズだと私は思っています。事の内容のよしあしはともかくといたしまして、今日の金利状況から考えますと、確かに一つの説得力のある話で、とうとうとして大勢がそちらの方へ流れようとしておるということをいなむことができないような気がいたします。今お二人の御意見は、今日の社債の問題については異常な状況であって、じきにノーマルな状況になることを考えておるし、そう期待すると言われ、そして決心は述べられたのでありますけれども、しからば具体的にどうすればいいのかという点については、今春日委員も言われたように、確たる方策を私どもお伺いすることが実はできないのであります。きょう、新聞を見ますと、大蔵省は、証券対策を検討して「公社債、投信の登場が金融界に多くの波乱を招き、また若干募集面で行き過ぎ傾向はあっても、これが起債市場拡大への有力な足固めになるとしており、今後は金利体系整備のプログラムを早急に示して証券界の不当な思惑を押える一方、社債市場政策としては流通面の整備に特に力を入れる方針である。」これが伝えられる基本方針だというのでありますが、この考え方の根本になりますのは、多少行き過ぎはあっても、根本としては望ましい方向である、従って、行き過ぎはためる、同心に、もう一つは金利体系の整備のプログラムを示す、こう言っておるのであります。で、この金利体系につきましては、本委員会で、もう各委員からしばしば取り上げられておる問題でございますが、第一にお伺いしたいのは、この大蔵省の方向について、先ほどいろいろお伺いをして、お三人の意見を聞いておるわけでございますが、この方向に  ついては御異存がないのであるかどうか、まずそれからお伺いをいたします。
  56. 山際正道

    山際参考人 実は、大蔵省の御方針としてただいまお示し下さいました記事は、私まだよく承知いたしておりません。しかしながら、要するに、たびたび金子会長も言われております通り金利、証券、その他同様の種類の社会において、あまり急激な変動を生じていずれかに偏するということは、これは避くべきことだと思いますので、おそらく当局もさようなことのないように配慮はされると思うのであります。ただ、たびたび言われるように、だんだん大衆の投資知識が向上いたしまして、間接投資に対して面接投資の比重が比較的増してくるという傾向自体は、これは経済社会の一称の知識と申しますか、経験と申しますかが向上を示す証左として、原則的に実はけっこうだと思うのであります。また、従来、先ほどもオペレーション問題に関して申し上げました通り、公社債オペレーションがうまくいかない原因の一つは、市場がないということ。その市場が健全に育成されます一つのよすがとして使用されるということは、好ましいことだと思うのであります。ただ、そのために具体的にどうするかという方向はこれから研究するということでありますが、それはその成果に待つよりほかいたし方がございません。けれども、いずれにしても撹乱的なことのないように、全体のつり合いをとって、そうしてまた流るべき方向においてだんだんその比重が移っていくということ、が望ましいと考えております。おそらく大蔵省もさような方針でいかれることと期待をいたしております。
  57. 横山利秋

    横山委員 私の査問にまだ率直にお答えになっていないようでありますが、それでは中の一つを取り上げまして、今後は金利体系整備のプログラムを早急に示すということであります。先般来、本委員会は、金利引き下げは、一般的な原則的な方向として今後もしたいと思うという政府側の御答弁でございましたが、他方において、私どもが言うておりますのは、金利の内容、体系についてどう思うかという質問を繰り返しいたしておったところなんであります。それといいますのは、お話も出たようではありますけれども、金利の低下がどういうふうに結果に現われてくるか。結論的に申しては恐縮でありますが、それでは一体中小企業に対してほんとうに金利の低下がそのまますなおに反映していくか。預貯金金利引き下げがいわゆる貸し出し金利に何らの関係のない預金者だけにしわ寄せをする結果になり、下へ行けば行くほど預金金利の低下ということは効果のないことであって、上へ行けば行くほどその効果があるという工合を何とするか。あるいはまた、財政投融資につきましても、その金利関係を見ますと、大企業については金利が非常に好条件である。これは政策金利であってもなくても、客観的に見た場合にはそうなっておるではないか。従って、この際金利引き下げと相並んで金利の体系の問題を取り上げるべきではないかと言っているわけであります。きょうの新聞を見ますと、金子さんは社債の条件改定を非常に主張されておるようでありますが、こういう点につきまして、日銀総裁として、金利体系について一般的な低下だけでお考えになっていらっしゃるのか、将来どういう構想をお持ちなのか、また、金子さんがきょう言っていらっしゃるような意味を含んで、この問題についてどうお考えになっておるのか、お伺いをいたしたい。
  58. 山際正道

    山際参考人 金利体系が将来どうあるべきか、正常化の一環としてどう是正されるべきかという問題のお尋ねかと思います。たとえば、大ざっぱに申せば、長期金利に対して短期の金利との均衡はどうであるか。今までしばしば言われておりましたのは、短期になるほど金利は高くて長期になるほど金利が安いのはおかしいじゃないか。あるいは公債の発行条件と社債の発行条件が違い過ぎのではないか。いろいろなことが具体的に言われております。しかし、先ほど来申し上げておりまする通りに、一つの印刷は立ちましても、具体的に、しからばこの社債はどうする、この預金はどうするかということをこれからきめていきませんと、はっきり申し上げかねますことはむろんであります。しかし、いずれにいたしましても、体系整備において、長短両金利の間になお是正すべき点があるという点については、私も実は同意見でございます。ただ、今申し上げました通り、具体的に、しからばこれは今度どうする、これはこのくらいの金利でよいということは、実はまだ研究が完成いたしておりません。たびたび金子会長も言われます通り、これからの研究問題で、目下やっております最中でございます。ここに明確にお答えできないのは残念でございます。ただ公定歩合の問題につきましては、これはおのずから別に景気一般と関連をいたしまして、もう日本銀行は常にフリーハンドでいこうという考え方でおります。それはまた別に一つお考えを願いたいと思います。
  59. 金子鋭

    金子参考人 今度の利下げは、先ほどから総裁のお話にも私の御説明にも申し上げましたように、これはすでに自由化に踏み込んでおります今日の日本経済といたしまして、どうしてもわれわれは、ことに貿易収支じり、国際収支を非常に重要視しておるものでありますが、そういう立場から、国際競争力強化、そのために金利引き下げというものが必要であろうという考え方から考えたのでありまして、従って、そのためには、一本の金利水準全体が引き下げになるということでなければその意味は徹底しないことでもありますし、私はこれは政策的な政府の一つの大きな方針でもあると承知しておりますので、当然それが考えられておるものという考え方で今日まで参っておるわけでございます。従って、われわれは、貸出金利を先般一厘公定歩合に伴って下げました。そのあとできるだけ早い時期にこの関連金利をどうするかということを明確にしていきたいという念願を持っておるのでありますが、しかし、そういうことは考えましても、これはそれぞれいろいろ関連もあり、また立場の違う点もありますので、そうすぐ、あすの日にどうするということを一々できるとも考えておりませんでしたし、また事実そうでありますが、しかし、ここでできるだけ早い時期に、今お話の出ましたように、金利体系の整備、その中で長期金利その他をどうしていくかということを明確にしなければならぬという空気が盛り上がってきておることは事実のようであります。これがどういう線、どういう結果になるか、これからの問題でございますが、その中で今のような社債投信等も出て参りました今日といたしましては、前から私は主張してきたところでありますが、相対的に預金金利の魅力が従来よりもあまり落ちないようにということを、あらゆる機会にお願いもし主張もしてきたわけでありますが、そういうことを念頭に置きまして、われわれの側としては対処したいと考えております。
  60. 横山利秋

    横山委員 これも一つ率直に金子さんの御意見を伺いたいと思うのですけれども、先ほどから証券業界と手をつなぎ合っていくのであるという基本的なお考えを承りました。由来この金融業界は相当の歴史を持ち、機構も整備され、組織も比較的きちんとなっておるのでありますが、一方におきまして、証券業界は、御存じのように四大証券を中心にいたしまして、あとはがたんと落ちて、しかも組織の整備も金融業界に比べては低いと私は思っております。金融と証券の比較を、一例をもって、たとえば店舗の問題をもって考えますと、金融業界では、店舗の増設なり何なりは厳重な政府の許可認可事項となっておりまして、今日店舗を開設するには相当の難関があるのでありますが、一方においては、証券業界の店舗の新増設等は自由な状況にあります。自主規制をしておるところもあるのでありますが、全般としては任意な状況で、単なる届け出制度になっておることは御存じの通りであります。今日先ほどからの預金増加という問題を取り上げましても、さだめしあなたの方としても、それに付随して、何か今日の銀行行政について、あるいはほかの方の問題ではあるけれども、何か証券行政についての御意見があろうかと思います。私どもとしては、これを機会に、今日の金融の問題と証券の問題につきまして本格的に取り組む最初のときでございますから、どうぞ御遠慮なく参考になることを公述されんことを私は望んで、あなたの御意見を承りたいのであります。
  61. 金子鋭

    金子参考人 今例におあげになり御指摘になった点は、それぞれわれわれの業界としては非常に深い関心を持っておるところでございますが、しかし、先ほども繰り返して申し上げます通り、この投信社債投信、ことに社債投信はほんとうに発足したばかりでありますし、こういう際に、そういう今お話しのような点には深い関心は持っておりますが、それをどういうふうに出していくか、証券業界との間をどうしていくかということは、これまた私は、慎重な態度をわれわれの側としては必要とするものと考えております。こういう際に、直接利害を伴う関係にあるわれわれの業界として、あまり始まったばかりの社債投信あたりを取り上げまして非難攻撃をするというような態度がもしわれわれにありましたならば、これは、おそらく、証券業界として反省してもらう点も、なかなか実際は逆に出てくるようなことも考えられるものであろうと思いますし、私は、そうでなしに、こっちがある意味でこういう面では先輩であるだけに、そういう一種の態度、考え方を持って臨みたいと思っておりますが、これについてまた反省を求める点は、時期を得て証券業界と話し合いもしたいと思っております。おそらく、証券業界としましては、こういう社債投信、投信というものを始めましてから、金融関係した面では大きく性格が変ってきておると私は考えるのです。それは最近のことでありますから、まだ心がまえその他が社内末端まで徹底して行なわれているということがはなはだむずかしいので、今日のような形も出ておるのじゃないかとも考えますが、これはあまり私たちが短兵急な態度、考え方をもって臨むのは適当でないと考えております。同時に、証券業界の力でも、やはりわれわれの方と基本的にはタイアップしていくべきものであるという考え方は、幹部は持っておられますから、私は期待をしております。機会があるときには、われわれの心がまえを作りながら、しかるべく話し合いもし、また御当局の御指導も両者で受けながら、できるだけ早い時期にいい形を出していきたい。これを含めた全体の金融がほんとうにいい姿になり、順調にいくようにということを期待し念願をしておるわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  62. 横山利秋

    横山委員 お気持はよくわかるのでありますが、きょうはみんな真剣になって議論をしておるのでありますから、できますならば、その誤解のような点については、ここで言ったから証券が誤解するというふうなことでなくして、あなたの言うところの正常な——今はアブノーマルだから正常な状況に、必ず将来両方の車のわだちのようになるというふうにおっしゃるけれども、しかし、それについては、放置しておいてそうなるものとは私ども思わないのであります。とうとうたる大勢は、多少カーブがゆるむことがありましても、今日の情勢がまたもとへ戻るとは私どもは実は考えない。あなたはもとへ戻るというようなお考えを持っていらっしゃるのでありますが、異常な情勢が正常な情勢に返る——正常な情勢というのは大体どういうふうなところをながめて、この投信や社債の急激なものが金融界を多少脅かしておる。それがある程度緩和されるというのはどういうふうな状況なのか、またそれに対してはどういう措置を——証券をいじめるという意味じゃなくして、どういう措置をとるべきであるか、それをわれわれは合同して研究をしておるのありますから、いま少しお考えの向きがございましたら、遠慮なく一つ御意見をお願いいたしたいと思うのです。それとあわせて、私の申しましたのは、金融行政、証券行政、行政面についての御意見もあろうかと思います。それらの点を重ねてお伺いいたします。
  63. 金子鋭

    金子参考人 私も、もとへ戻ると今おっしゃいましたが、まるまるもとへ戻るということを考えておるわけではございませんで、先ほども申しましたように、資金の流れがある程度従来以上に直接投資に向かっていくことは異議がないということを申し上げたわけでありますが、そういうことを含めて追って正常な姿になるであろうと期待する、こういうことを申し上げたわけでございます。今行政面のお話もございましたが、これは先ほどお話に出ましたが、申し入れをしたというわけではありませんけれども、大蔵御当局と意見の交換をしました際にも、所管が銀行局と理財局に分かれております。また法律も今御指摘のように逢っております。そういう点で、従来いろいろありますが、違っておる面があるのであります。今度金融に大きな分野を証券界が占められるようになりましたにつきましては、そういう意味で一つ行政指導の面も両局で十分御連絡、御検討願って、あまりアンバランスなりちぐはぐのないようにこれからお考えを願いたいということを希望として申し上げてございます。決してただ考えてだけいるんでなしに、機会があればいろいろなことを必要な方面には申しあげてもおりますし、 また証券業界との問にもそういうことを考えておりますが、同時に証券業の幹部は私たち常日ごろ非常に懇意な人たちばかりでございますが、こういう方々でも、投信なり社債、投信の近来の形につきましては、やはり将来をある程度心配しておられる向きも相当ございますので、この辺で一つ今までを振り返ってみなければならぬ、先を考えてみなければならぬという考え方、気持もすでに出ておるように思いますので、だんだん行政指導もございましょうし、われわれ同士の話し合いもこれから行なわれていきましょうし、そういうことでだんだんいい形を期待したい、こう考えておるということを申し上げているわけでございます。今具体的にどういう方法があるか言えとおっしゃいましても、ちょっと今申し上げるわけにも参りませんし、適当でないと考えますから、御了承願いとう存じます。
  64. 横山利秋

    横山委員 山際さんにお伺いをいたしますが、この問題について、証券とタイアップして、相互唇歯輔車の立場で進めていくというような意味の御発言が御両者からございましたが、たとえばそういう方向でいきますと、今証券界が期待しておる公社債の対象となる社債日銀のオペレーションの対象に組み入れることや、証券金融会社による社債買い取り金融のワクの大幅な拡大という点についても、好意を持っておやりになるということを含んでのお話でございますか。その点についての見通しをお伺いします。
  65. 山際正道

    山際参考人 前段のオペレーションと新しい投資信託の問題との関連でございますが、これは実は、先般私は、機会がございまして、初めから買い入れた証券を日本銀行で買い取ってもらって資金化することを前提とするような投信は困る、そうではなしに、みずから必要な場合にはこれを資金化できるという確信のある程度において、これを保有し、かつその方法をつちかっていくということでスタートして下さい、初めから日本銀行をたよりにしないでやって下さいということを、実は公社債投資信託の幹部に申し上げておいたのであります。今御指摘のありました、具体的に考えておるオペレーションにこの投信が買い入れた証券を扱うかどうかという問題、 そのオペレーション自体も実はまだ検討中でございまして、具体的にまとまっていない際でもありまするし、今スタートしたばかりの投信については、先ほど来申し上げましたような趣旨において、それがすぐ入ってくるものとは考えておりません。願わくば、まずこれを資金化するときに、とるべき方法を十分考えながら着実に進んで参りたい、かように考えております。  それから、第二点でお尋ねをいただきましたのは、これも実績をよく見まして、結局あの設定については大蔵省の指示を仰いでおるというのが投信の実情だろうと思います。よく協議をいたしまして、資金の片寄りがないように、その金融情勢によって調整をしていくことをよく連絡いたしたいと考えておりますが、実は私の一番期待しておりますのは、始まったばかりの仕事であって、その仕事の内容、実態がどうであるか、はたして外観とふさわしいような内容でできておるかどうかという点は、今実は大蔵省でお調べになっておるということを聞いておりますので、その結果に非常に期待しております。それを材料といたしまして、将来正すべき点は正すということでいくのがよろしいかと考えております。
  66. 横山利秋

    横山委員 あまりおそくなりましたから、最後に、先ほど春日委員からも御発言がありましたことですが、今度の金利引き下げなり、あるいはまた直接投資への誘導方策等を考えてみますと、何としても私どもとしては中小企業金融がこれによってうまくいく、あるいはまた中小企業自己資本がこれによって充実をされるという点については、危惧なしとしないのであります。先ほど金子さんからお話が冒頭にございました、昨年と本年と比べて貸し出しの中小企業のワクは変わっていない、引き続き努力をしておる、こうおっしゃるのでありますが、むしろ私どもは、昨年とことしと変わっていないことに、私どもの長年の主張でありますにかかわりませず、その努力が現われていないということを逆に痛感をするわけであります。しかも、今後の経済情勢変化を考えてみますと、新たに何かの方法をもって、中小企業金融のワクの増加なり、あるいはまた自己資本の充実が中小企業の中に行なわれるような方法を積極的に行なわなければ、結局これはだめではないかということが痛感されてならないのであります。その点について積極的なあなたの方の方策はないものか、具体策をとるお考えはないのか、これを金子さんに伺います。
  67. 金子鋭

    金子参考人 ただいまの御懸念はごもっともと思います。私たちもそういう点があまり出てこなければよいがということを心配しておる一人でございますが、しかし、その点につきましては、中小企業関係に非常にマイナスの影響が出ませんように、私たちの銀行協会全体として努力していきたいと考えております。銀行協会連合会の中には資金調整委員会というものを設けております。これには関係の深い大蔵省、日本銀行はもちろんですが、それから通産省、運輸省の局長さんに参与として御出席会議のときには願うのでありまして、これで銀行協会としての資金調整をはかっておるわけであります。これは相当実績をあげておりますが、こういう機関を十分活用いたしまして、中小企業への資金のそういうマイナスのしわ寄せが出ませんように、できるだけ努力をいたしたいと考えておりますから、その点で御了承を願いとうございます。
  68. 横山利秋

    横山委員 最後に、山際さんに一つ別な角度でお伺いをしたいのは、今度の金利引き下げはむしろ政策金利引き下げであって、政府側から要望されたという意見が非常に各方面にみなぎっており、さればこそ、日銀としても、みずから指導権をとるのを避けて、市中銀行金利引き下げが変更したんだというような方向にもしたかったんだというふうに伝えられておるわけであります。いわゆる日銀の中立性の問題がいま一度議論の対象になってきておるような節がございます。先般来、日銀法の改正は、すったかもんだかやって、えらい学者さんを集めて一年も二年もかかって、結局何となしに発表したままになって終わっておるわけでありますが、この日銀法の改正について今後いかにあるべきか。またあなたとしては現行でよろしいというお考えであろうか。この答申をも含め日銀法の改正を一歩を進めたいとお考えになっておられるのか。この点をお伺いいたします。
  69. 山際正道

    山際参考人 お尋ねの第一点、今回の金利引き下げがはたして政府の誘導によって行なわれたかどうかという点につきましては、私は絶対にこれを否定いたします。私ども独自の判断で決定をいたしました。私どもといたしましては、前段申し上げました通り政府の施策も含めて、予算の問題も含め、税制の問題も含め、市中銀行動向も含め、また産業界企業心理も考え合わせた上で、これがよろしいというところの総合判断でみずから決定をいたしております。決してこれは政府によって指示されたとかなんとかいうことはないのであります。どうもそういうふうに言われますことが非常に残念であります。事実はさようになっておりませんから、御了承願いとうございます。  第二の制度上の中立性の問題につきましては、現在でも中立性は保持されておるわけであります。政策委員会というのがございまして、政策委員会が重要な政策を独自に決定する建前になっておる。われわれはこの独自に決定する建前を今後の改正にあたっても貫きたいということを主張しておるのです。これに対して他の議論はございます。そう独自に決定されては他の経済政策との調和が十分でないから、あるいは困る、その他いろいろございまして、今も御指摘のございました金融制度調査会でいろいろな意見が出たわけでございます。私どもの意見といたしましては、やはりこれは一定の権限を法律でおきめ願って、その権限の範囲内においてはどこまでも中立性を厳守していく。あとは運用の問題で、その人を信ずるやいなや、これはまた別問題でありますが、建前といたしましては、その中立を維持することに努力したいと考えております。
  70. 横山利秋

    横山委員 ちょっとお言葉がわからないのです。中立性云々の議論はわかりましたが、一定のワクを法律できめて、あとは運用の問題だという——私の質問は、その法律改正の必要を考えておられるのか。中立性という点はわかるのですが、現行法を改正する必要を考えておられるかどうかという点であります。
  71. 山際正道

    山際参考人 現在の日本銀行法は、昭和十七年の制定でございまして、戦争に入りましてからの制定でございます。実はその当時私が大蔵省の銀行局長をいたしておりまして、私が立案をいたし、この席において御説明を申し上げたと記憶をいたしております。私は、事態が全部変わりました今日、もう一ぺんこれを再検討して書き直す必要はあると考えております。ただ、それではどの程度の緊急性があるかという問題につきましては、ぜひそれはあした変えなければならないというほどの緊急性とは思っておりません。その点は運用において現に十分カバーされておると思っておりますが、今お尋ねの中立性の問題だけは、これは戦後後において政策委員会という特別の法律改正がございまして、その改正が今残っておるわけでありますが、この中立性の保持ということは私は適当だと思っておりますので、主張いたしたいと考えております。
  72. 足立篤郎

  73. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 山際さんにその点をちょっと質問いたします。今横山君からも話がありましたが、私はこの前にも日銀法の改正の問題でここでいろいろ議論をしたことがあります。そこで、今大蔵大臣にも関係ない、日銀の独自性、中立性でやられたと言っておりますが、これは、大蔵大臣は、われわれが質問すると、なるほどいかにも日銀にやらしたようなことを言いますけれども、金利体系はやはり政府の独自の案で考えたようにも言われるわけです。そこがあいまいもことしておる問題でありまして、山際さんは、大蔵省のベテラン官僚で、なかなか答弁がうまく、口がかたいから、ほんとうのことを言われないのでありますけれども、御承知のように、日本銀行というのは、イギリスの中央銀行と違って、そこのところが政府のあれに動かされるのじゃないか。そこで、今度の金利の値下げでも、どうも日銀がばっとやったようではない。やはり政府の指導によって——これは前回も堀君が郵便貯金の利下げの問題でいろいろ質問したのでありますが、どうもその点がはっきりしない。そうするためには政策委員会があるじゃないか、日銀法を改正するにも政策委員会があるじゃないかと言うけれども、政策委員はだれが任命するかというと、大蔵大臣が任命しておるわけであります。これは大蔵大臣が都合のいい人を任命しておるとわれわれは考えます。大蔵省の役人が多い。また大蔵省と同じ考え方を持っておる人が多いので、独自性がある、独自性があると言っても、日銀法の改正というのは、これは民間の人がやるならば別だけれども、政策委員会というのは大蔵大臣の指名のような形で出ておるわけです。山際さんは、口がかたい人でありますから、なかなかうまいことを言って答弁を逃げられますけれども、私は、前から、日銀法改正でも、白銀の独自性という立場からいろいろ質問をしたのでございますが、一体あなたは、正直なところ、今の日銀法をこのままでいいだろうと、ほんとうにお考えになっておるのかどうか、この点を第一点に伺っておきます。
  74. 山際正道

    山際参考人 政策委員会の規定につきましては、まだ十分御了解を願っておらぬ点があろうかと思います。実は大蔵大臣の推薦する人を国会で御承認を得まして任命されております。しかして、これは、関係官庁の代表者としての投票権のない政策委員外の専門の政策委員の方々には、役所の先輩は一人もおられません。商工業界、銀行界、その他そういう方面の知識経験の深い人が任命されておる実情でございます。制度はそうなっておりますから、この点は一つ御了承いただきたいと思います。それでもなお実際は、今度はそうじゃなかったのだろうというお疑いでありますが、私はそれほど自分の権威を下げておるつもりはございませんので、御了承願いたいと思います。
  75. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 同僚委員からたくさん質問がありましたから、もう一点だけお伺いしておきますが、日本金利は外国より非常に水準が高いということをいろいろいわれます。きょうも、簡単な説明でありましたけれども、そういう御説明がありましたが、一体日本金利はどのくらいまで下げるのが理想でありますか。これは理想ですよ。理想のことですから、そうとらわれなくていいから、そのことを一つ率直に、山際さんの気持で、日本金利は高いといわれるけれども、一体どのくらいにしたら理想であるか、ちょっと御意見だけを伺っておきたいと思います。
  76. 山際正道

    山際参考人 私は、日本経済の将来が大いに発展をいたしまして、大体西欧の一流経済国と肩を並べる程度まで伸びることを期待いたしております。希望いたしております。そういたしますと、その金利の点も、同じ程度の蓄積ができて、大体英米並みの金利まで持っていくのが当面考えられる理想だと思っております。遺憾ながら前途はまだよほど時間はかかるだろうと実は思っておりますが、理想としてはそういうふうに考えております。
  77. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 金子さんにお伺いしたいが、金子さんもだいぶ風当たりが強いし、最近銀行は魅力がない、斜陽産業だという声があります。これは同僚の横山君や春日君からもいろいろ意見がありました。あなたは大正十三年に安田銀行にお入りになったそうでありますが、そのころの銀行の勢い、特に安田銀行銀行界のベテランで、それから三十数年、今銀行の頭取として最高の地位におられるのですが、そのころの安田銀行の勢いと今日の銀行の状態をお考えになり——あなたはお年をお召しになりましたから、多少元気もなくなったでございましょうけれども、私も大正十年ごろ中学校を出た当時の安田銀行の姿を知っております。その当時の勢いというものは、ちょうど今日の投資信託のような勢いでなかったかと思われます。そこで、あなたも都合のいいような——今まで大体銀行は、われわれの選挙区の地方では、一番上座にすわる人が銀行の支店長、その隣は税務署の署長ということなんです。ところが、わずか十五年くらいの間にだいぶ変わって参りまして、銀行の影が薄くなりました。これはおそらく金子さんは昔からよく御存じだろうと思うのでございます。そこで、いろいろあなたもきょう御注文もありましたが、大体今まで銀行なんというものは、人の金をただ借りて、利息を、取って高く貸している商売で、信用だけで、人のふんどしで相撲を取るという商売、私もおふくろから銀行員になれということを言われましたけれども、そういういい商売だと思うのです。そうでしょう。人の金で高い利息をかけてもうけているのです。このくらいいい商売はない。これは信用でやっておられる。けれども、夢よもう一度といっても、夢はなかなかそうはないと思う。そこで、私が今あなたにいろいろお伺いしたいのは、一体今あなた方の銀行は、今度預金の利子を下げられる。おそらく、私は、郵便局も——これもこの間堀君が責めたのでありますけれども、なかなか大蔵省はかたくて口を割らない。利息が安くなれば一般市民の預金が減るが、郵便貯金まで金利の下げをやるような形なんです。しかし、何といっても、これは今の市中銀行にも魅力がなくなったというように思います。それは、投信の方はこの三、四年の間に資金が大体十倍くらいふえておる。ところが銀行は二倍か三倍ぐらにしかなっていないのです。これは金子さんは実際に頭取をやってよく御存じだと思うのです。何か市中銀行で今あなたがこうやったらこの斜陽産業を何とか盛り立てるようなことができるか、こういうことを一つ伺っておきたい。これは座談のような話でございますけれども、われわれも直接関係がありますので、伺っておきたい。
  78. 金子鋭

    金子参考人 ただいま銀行を斜陽という言葉でおっしゃいましたが、実は私は一つも斜陽と考えておりません。と申しますのは、欧米では、すでに今の投資信託——社債信託はどうも聞きませんけれども、これは前から相当に発達をしておりますが、しかし銀行銀行として相当の立場をとって今日でもちゃんと現存しておりますので、結局日本でも同じことがいえるのじゃないかと私は考えておるのであります。今のように、戦後日本が戦争に負けましたその影響だと思いますが、灰から立ち上がって今日まで参ります間、必要によって資金の流れが間接投資に片寄っておったということは、先ほど申し上げましたように実際否定はで春ないところでありまして、これがまず日本経済がここまで成長しました関係で、近来もう少し直接投資へ向かうのがほんとうだという議論が強くなってきたことであろうと思いますが、そういうことから今度の投信、社債投信も出てきておるというふうに私は解釈しておるのであります。従って、銀行の立場が今までと今後とは相対的に変わっていくことは、これはある程度否定はできないと思いますけれども、決して斜陽ではないと私は考えております。今後も銀行の立場というものは相当重要性を持っていくべきものであり、いき得るものであると私は考えておるのであります。ですから、今のところ、ある意味日本経済成長によるこれは過渡期だ、私はそう見ております。ですから、われわれの方として、私らちっとも悲観もいたしておりません。私が入ったところの銀行の置かれている立場と、今日の銀行の置かれておる立場というものは非常に違っております。そのころは、安田銀行の裏には安田保善社というものがあり、大きく財閥というものが存在しておったのが一つの事実であります。また、金融機関といたしましても、今の相互銀行さんも、信用金庫さんも、その当時は今のような規模やら形ではなかったのであります。従って、その当時の置かれておる銀行と今日の銀行の立場は、それは町の変わりで、非常に大きな差異が出ておることは事実であります。そういうことも考慮に入れなければなりませんが、同時に、それを入れますと、今後ともやはり銀行の役割というものはそう軽いものではなく、私は決して悲観的に考えておるものではございません。今のところは過渡期だと私は思っております。
  79. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 先ほど春日君からも中小企業金融の問題について話がありましたが、私は、大都市市中銀行、特にあなた方大きな銀行が中小企業金融にあまり役立っていないということを、遺憾ながら考えざるを得ない点があるのです。特に零細者に対してはないと思うのです。そこで、今そのために中小企業金融公庫とか、国民金融公庫という問題がありますが、あなたにお伺いしたいのは、今二厘下げるのに大へんでございますけれども、現在実際はやみ金利日歩二十銭くらいのあれがあると聞いております。こういうようなやみ金利に対しては、金子さんはどういうようにお考えになっておるか。これは現実にわれわれ公定を一厘下げるのにこれくらい大へんなことになっておりますけれども、実際やみ金利というものがある。これは高利貸しその他いろいろありますけれども、そういう点について現実にあなたは銀行をやっておられるから御存じだと思います。そういう点についてどういうお考えを持っておるか、これを一つ伺っておきたいと思います。
  80. 金子鋭

    金子参考人 ただいまの御質問はちょっと私はお答えする資格がないのかもしれません。銀行というものは高利の金を扱っておる方にはあまり関係がないでしょう。また、そういうものを借りている方が取引先の中にありましても、銀行に来てそういう金を借りているとは決しておっしゃらない。ですから、その実情というものは私らにはあまりよくわかっておりません。しかし、あとで手をあげた方なんかを見ますと、高利の金を使っている人が多いのです。高利の金を使うようなときは、ちょっともうまずいときでもあり、同町にそれを使うと雪だるまのようにふえていきますから、こういうものがあまり行なわれないことがいいだろうとは思いますけれども、今のようなわけであまり縁が深くありませんから、よくわかりません。
  81. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 時間があまりありませんから、最後に伺っておきますが、先ほど、日銀の総裁も金子さんも、現在の投資信託も何々オープンとかいういろいろな社債投資の問題も、これは一時的な現象だろうというふうに楽観をしておられます。しかし、私は昭和二十二年に代議士で出たのでありますが、昭和二十三年に証券民主化運動というものが国会にありまして、そのころは戦後で微々たるものでありましたけれども、証券を民主化するために非常に当局が困ったような時代があります。それを考えて今日のこの事態を考えると、わずか十五年足らずの間に、これくらい膨大な一般民衆の——われわれ金がありませんからようやりませんけれども、現、実は証券に対する魅力というものがおそらく非常にあると思うのです。そういう点で、これは日銀総裁にも伺っておきたいと思うのですが、これはやはりやむにやまれない一つの流れだと思うのです。ちょうどプロ野球を私らが戦争前に初めて知ったころ、洲崎でやったときには、二十五、六人くらいしか入らなかった。ところが、現在は神宮球場に三万、四万と入る。それと同じように、現存証券が大衆化しておることはこれは宣伝もやっておられますから——銀行の宣伝は少なくても、何々オープン、何々オーブンとテレビやなんかに出るから、むろんそういうような宣伝力、PRもありますけれども、私はこの問題がそう一時的な現象だとは思われないように思います。そういう点について、日銀総裁金子さんはほんとうに一町的だと正直に思っておられるかどうか。あるいは、これが一時的でないとすれば、何らかの方法において堅実な道を歩かせる方法がないか。これは私あした証券の問題で大蔵当局に質問するつもりでありますから、あしたはいろいろ材料を持っておりますから申し上げますが、しかし、私たちは、今のようなとうとうたる勢いでいくと、そういうものに対する逆の作用が起きて、そうして正直者がばかを見たり、あるいはこれにつられていってどえらい損害をするような大衆もなきにしもあらずということを心配しておるわけであります。こういう点について日銀の総裁と金子さんの御意見を承っておきたいと思います。
  82. 山際正道

    山際参考人 私は、いわゆる証券民主化運動で、大衆が直接投資に関心を持ち、その知識を深めてその圏内に入っていくということは、国の経済の構成からいえば喜ぶべき進歩した現象だと考えます。これは自然の発展方向として助長する必要があろうと考えます。しかしながら、一面においてその量が多くなればなるほど、その関与する人々の公共的な責任というものは大きくなるわけであります。よほどうまく公共的立場から公益を守ることに注意をしてもらう必要があろうと思います。ことに今日のようにだんだん投資信託関係株式においても公社債においても増大をして参りますと、これは一国経済に占めるウエートが高くなると同時に、その大衆に対する責任がますます加わるのでありますから、この監督に対して十分に遺憾なきを期してもらいたいと思っております。これはかねがね関係当局もやっておられることではあろうと思いますが、今にわかに起こったオーブン社債投資信託の問題については、これはおそらく今材料をいろいろお集めになって新しくお考えになるだろうと私は期待いたしております。かような段階を経てこれが健全に発達いたしますならば、これは非常に望ましいことである、しからずんばかえって民主化運動に逆効果を来たす、こういうことだろうと思います。願わくば、当局の監督によって、適正な証券投資運動というものが軌道に乗って増大していくということを私は歓迎いたします。
  83. 金子鋭

    金子参考人 一町的と楽観しておるとおっしゃいましたが、今のような異常な形はある意味で一瞬的であろうと思う、またあってほしいということを申し上げておりますわけで、この社債投信が今後も相当順、調にいくことは、おそらくそうであろうと思いますし、またそうあってほしいと思っているわけです。だから、決して、一時的だといって、たかをくくって楽観しているということじゃありません。  あとは、今総裁からもおっしゃいましたように、これが金融に非常に大きな部分を占めることになったこと、それからこれだけ大きな資金が集まってくるということになれば、責任も非常に大きくなったということ、そういう点を十分考えていただきたい。また、一面から申しますと、最初に社債投信がこういう異常なほどの大きな数字を出したということは、これが一つの契機になりまして、世論もまたこれに注目するようになっておりますし、また主務官庁も特に関心を深くしておられる。こういうことから、これが結果から見たら案外なだらかな線で出たよりも正常化が早くいくかもしれぬということを期待しておるわけです。そうあってほしいと思います。災いといっては悪いのですが、災いを転じて福となすというような行き方にぜひなってほしいと考えておるわけです。
  84. 足立篤郎

    足立委員長 毛利松平君。
  85. 毛利松平

    ○毛利委員 時間も長くなりましてお疲れでございましょうし、各委員からいろいろお話がありましたので、重複をなるべく控えて二、三の質問を前置きなしに簡単にいたします。今度の公社債投信によって、金融界は静かなる革命だと世にいわれております。そこで、資金供給投資者の保護という二つの前提に立って、前置きは抜きに質問いたします。  低金利政策を行なわなければならぬことはよくわかりますが、これを行なったことが次元を誤まっていはしないかということが一点。今までは長期資金は長期信用銀行なり興銀によってまかなわれておった。社債の消化をする銀行によってまかなわれておった。従って監督官庁の監督が非常によくいっておったように思われる。ところが、今後設備投資基調が緩慢になってくるのではないか。従って、政府の財政投資その他の大量の資金と相待って、この現象が非常な過剰投資を起こすのではないか。これが二点です。三点は、国際競争力を増す上に金利を下げるというこの理屈はよくわかりますが、内応があくまでも逆コースであること。四点は、この投資信託なり公社債投資によってコールを二割持っておる。これがはたして保証の限界として万全を期しておるかどうか。もし買いが多く出た場合に証券会社はこれに保証ができるのかどうか。だれが保証するのか。日銀ははたして保証するかどうか。結論から申し上げますと、こういう諸条件をそろえまして証券界をすみやかに規制する必要があるのではないか。公社債の利子をすみやかに下げる必要があるのではないか。いろいろ御説明がありましたが、端的にお答えを願いたい。  もう一点は、先ほどから直接投資、間接投資の問題がいろいろありましたが、直接投資を意図してこの問題が行なわれておることもよくわかります。個人が証券を通じて直接投資をやる。はたしてこれが直接投資であるかどうかという問題であります。換金が自由であるということを建前にして、零細な貯蓄を集めておる。従って、再投資する限り間接投資とはたしてこれが言えるかどうか。先の点とあとの点を日銀総裁に御答弁を願います。
  86. 山際正道

    山際参考人 お尋ねの第一点は、金利引き下げの時期は当を得ていないのではないかというお話がございました。この点については先ほど来るる申し上げました通りでございまして、私といたしましては、内外の諸情勢を考えまして……。
  87. 毛利松平

    ○毛利委員 金利引き下げはごもっともだと思うのです。社債の利子の問題について、それを行なった時期、内容……。
  88. 山際正道

    山際参考人 それはそれといたしまして、公社債金利引き下げの時期及びその内容、これは実は目下検討中と聞いております。私自身の方につきましてもまだ別にまとまった結論もございませんし、監督官庁である大蔵省その他においても、まだこれはせっかく検討しておられると思うのです。どういう結論が出ますか存じませんが、これは、先ほど来お話のございます通り現状に対して非常な変革的な激変を与え混乱を生ずることのないように、均衡のとれた姿において逐次これを進めていくという観点から決定されるだろうと思います。  それから、第三の過剰投資を生みやせぬかという御疑念であります。この御疑念に対しては、私は実は先ほど申したつもりでございますが、為替貿易自由化というものが非常に大きなてことなっておる。やたらに量的に拡大しさえすればいいという企業家の心理というものは、今日は相当落ちついておると思います。それからまた、業界自身も、先ほど御指摘のありました昭和三十二年来の経験を経ておりますので、昨今の態度は相当私は慎重だと考えております。今の時期にかような公社債投資信託発展が行なわれても、これによって過剰投資を生むということは、まず避け得るのじゃなかろうかと実は考えております。  それから、証券行政の問題につきましては、その比重が非常に高くなりました。これはだんだん強化されていく必要があるし、またおそらく当局もそうお考えになっておられるだろうと思いますし、国民経済活動の中の重要部分を占めております証券界に対して、どうかそういう観点から、万全の保護措置を講ぜられたいと思います。日本銀行が直接これにてこを入れる、あるいはこれに対して変動を押えるということは今考えておりません。そうじゃなしに、そういうことを考えずに、それ自身として完全な姿で発展するように、そのために所要の監督をする、あるいは所要の取引の方法を考えるということでいってもらいたいものだと思っております。  それから、一体売買自由なようなものが投資と言えるかというお尋ねでございますが、これは考え方だと思っております。投資を大きくいたしますためには、やはり社債なり社債債券という形においてこの資金調達いたしまして、その一部に何らかの理由で換金を必要とする場合においては、証券なるがゆえにそれが転売されて資金化できるという構想を加えますことの方が、いわゆる貯蓄投資を増進するゆえんである。やはり本質から申しますと、公社債類を増加するということは、直接投資方向がそれだけ進んだのだと考えてよろしいのじゃないかと実は思っております。  いろいろの点をお尋ねでございましたので、あるいは漏れておるかもしれませんが、さような点は重ねてお尋ねを願いたいと思います。
  89. 毛利松平

    ○毛利委員 それじゃ、金子会長に。先ほど来各委員から、投資信託なり公社債信託というものは、上場株なり大会社のものを預かっておる、従って、その大会社、大企業というものは資金が安定している、従って中小企業に大きな穴が起きるんじゃないかという質問がある。これはいろいろ議論があると思いますし、私は大きな穴が起きるんじゃないかと思いますが、一応説明を了といたします。ただし、地方銀行の最近の情勢は、一、二月は金が余って、三月に不足するというのが例年の情勢でありましたが、すでに地方銀行は、一、二月コールしている現象がなくなっております。従って地方から公社債なり投資信託に集まっておる金がかなり多いんじゃないか。中央と地方の格差がどうしても起こってくるんじゃないか。この一点。それもいわゆる中小企業の穴、地方に非常に資金が枯渇して、地方の産業政府の言うところの格差解消の逆をいくのじゃないか。この一点。  その次には、今は資金の量のことを申し上げましたが、質の変化が大きく起きておるんじゃないか。銀行における長期定期が短期預金にかわって、銀行が不健全になる。これを健全にあろうとする場合には、どうしてもコールを買ったり、政府保証を買ったり、あるいは国債を買ったり、こういうことになる。と同時に、企業の系列をながめた場合でも、さらに高度の内容のいい大企業に融資せざるを得ない。営業が主体である以上そうなってくる。この質の点において大きな変化がくる。この面から見た場合に、中小企業への資金は言わずして窮屈になってくるんじゃないか。量の面も一応ありますけれども、特に質の変化によって中小企業に穴が起きるんじゃないか。地方の格差はどうなるか。非常な格差が起きるんじゃないか。この二点を御質問いたしたいと思います。
  90. 金子鋭

    金子参考人 これは、先ほどから申し上げておりますように、今度の投信関係の影響がそう遠くない将来にある落ちつきを見せるだろうと私は期待しておりますし、それを一つの前提として考えておるのであります。これは今度の、ことに投信関係は、地方銀行さんの方もむろん影響は受けておられると思いますが、都会はあまり目立たないだけで、都市銀行も相当の影響を受けておることは、まず程度はあまり変わらないんじゃないかと私は考えております。こういうブームが一応落ちつきを見せたときのことを想定して考えてみますのに、先ほども申しましたように、銀行の置かれておる立場全体が従来とはある意味で変わってきておるということは、これは僕は、ある程度は、 程度の問題ですが、否定はできないと思います。それだから地方銀行の内容が非常に悪くなるとか、非常に今までと違ったマイナスの面が出てくるとは、私は必ずしも考えておりません。これはその間に銀行努力もありますし、また地元関係というものもありましょうし、また資金源にしましても、預金に向かう資金という性格のものも確かにあると思います。これは一時今のようなブームのときには一つの心理で非常に急激に動きますけれども、また戻るものは戻ってくるんじゃないか、そういう範囲も私は相当に考えておいていいんじゃないかとも考えますし、ここで世論が正しい方向を指示され、また主務官庁の行政指導もしかるべき方向をたどり、われわれもしかるべき、行き方、態度をとったならば、私は、そういう姿に持っていくことは可能である、こういうふうに考えております。
  91. 毛利松平

    ○毛利委員 その質の問題はわかりましたが、量の問題でもう一点。投資信託なり公社債が安全とは私は思わないのでありますが、二割のコールを預けている点において、それだけやはり市中銀行資金が減ったという見方は誤まっているかどうか。おそらくコールの金利は高いから、よほど必要性がなければ銀行はコールを借りないと思います。コールへ二割入れている。証券界に集まった投資信託なり公社債の二割をコールに安全のために預けている。それだけ資金が減ったという見方は誤まっているかどうか。大蔵省の統計を見ますと、大体コールに二割入っている。投資信託なり公社債から入った金を、安全を見るために二割入れているというのですが、そうすると二割市中の資金が減っているということになる。銀行がコールを借りるためには高いでしょう。簡単に借りないでしょう。
  92. 金子鋭

    金子参考人 証券会社がコールを非常に多面に取っているのは御存じでしょう。従来投信関係で私の承知しておりますのでは、コール市場に出ている金と証券会社が取っている金とは、ほとんどとんとんぐらいです。最近までそれが実際でしたが、今のお話はちょっとわかりかねます。
  93. 毛利松平

    ○毛利委員 それじゃけっこうです。
  94. 足立篤郎

    足立委員長 この際委員長より一言ごあいさつを申し上げます。両参考人には、御多用中のところ長時間にわたりまして御出席をいただき、御意見をお述べいただきましたこと、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次会は明十六日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時七分散会