○原
政府委員 非常に深い重要な問題でございます。私、昨年の四月に長官を拝命いたしまして以来、ただいま
お話のありましたような筋目の問題は、おそらく私の
仕事として一番大事な
仕事ではないかと思っております。同時に、税務行政というものが、長い国の歴史において、国があれば
税制というものはもう必須のものであり、税務行政というものは国の行政の中でおそらくきわめて重大な部面を受け持っておるものであって、歴史的に連綿と続いておる。しかも、五万の職員にそれぞれ努力を傾けてやってもらっておることでありますから、私、原が長官になったというので、その面について私だけでどうということはなかなかできにくい。長く続きました伝統の中で、私としての今の
段階での任務を謙虚に一生懸命尽くすという気持でやっております。
〔
委員長退席、山中(貞)
委員長代理着席〕
そういう角度で物事を
考えまして思いますのは、やはりおっしゃいました税務職員の誇りといいますか、そういうような問題について、今まさに十分再思三省すべきときだと思っております。私は実はその誇りを持てというような形では申しておりませんけれ
ども、特に
考えてもらいたいことが三つある。これは三つだけではないのでありましょうが、とりあえず私就任以来特に強く申しておりますのは、第一に、税納者に近づきやすいように、一分でも二分でも税務署の敷居を低くして納税者と接するようにということ。それから第二は、ただいまも
お話が出ました税務の根本の姿はやはり適正な課税である。従って適正な課税に努めなければならぬ。それで行き過ぎがあったならば、もうちゅうちょすることなく下がって減額をいたしなさい。しかし、また不当にのがれておるというようなことがあってはいけないから、それはちゃんと適正にいただきなさい。第三に、やはりこの職場の一番の支柱は綱紀の厳正なことである。この三つをあげまして、あらゆる機会にそれを言い、部内一般にこれらの面について工夫をするようにというようなことを要望いたしております。もちろんこれだけで事は済むと思っておりませんし、また、これらのことにしましても、ただいま申しましたような長い伝統のある職場で、現に五万の具体的の人がおるところでありますから、なかなかすぐには結論が出ないと思いますが、私としては、そういう角度から問題を取り上げて、そうして具体的に必要なことをときどきに手を打って参るというようにいたしております。
ただいま
お話のありましたのに
関連して申し上げますれば、
一つには、徹底的にやれば十分取れるが、それでは良心がおさまらぬというあたりの問題は、かなりデリケートな問題であると思います。率直には、私十年前に税務行政におりましたとき、
主税局の方と一緒にやっておった時期がありますが、その時分にはそういうことを非常に強く私は感じました。当時そのために法律改正をせなければならぬということで、当時は御承知の通り占領下でありましたから非常に制約があったのでありますが、私は、端的に言うと、もう正直に履行できないような
税法というものは変えてもらわねばならぬというようなことまで言って、
税法改正に努力をいたしたつもりであります。そうして、現在どうなっておるかということについては、私あるいは横山
委員と判断が若干違うかもしれませんが、税務行政としては、
税法がきつくて、そのままやっては良心がとがめるというような法律であってはならぬというふうに私は思います。今の
税法ではとうてい良心的には守れない、また税務官吏としても良心的にはやれないというふうには、私は実はどらも思っておらぬのじゃないかと思っております。そうして、やはり
税法には忠実に、そうして適正にという
考えで執行するように。そういたしませんと、いつの日かそこの悪循環を断ち切りませんと、税務官吏が、これはどうもきつ過ぎるから自分が権衡をということをやるのでは、やはりどらも暗い面が出て参ります。かつての時期にそういうような傾向がより強かったということはおっしゃる通りであります。それがだんだん減りつつある。その減りつつある
段階の見方の違いかもしれませんが、なるべく早く税務官吏は、
税法に忠実に、そうして適正な課税をする。もちろんそういう際に、納税者の事情、いろいろな経費その他の見方について、十分思いやりのある、
実情に即したやり方をするというようなことはもう当然でありまして、それはただいま申した適正にというのの意味として教えておるつもりでございまするが、
方向としてそういう
方向に向かいたいし、もう私
どもそろそろそういうような
考え方でいっていいのではなかろうかというふうに
考えております。
もう
一つ、
お話の中の、歳出面のいろいろな使い方に対する批判、ないし
税制上大企業その他に対する優遇に対する批判というようなものが、税務官吏の税務の
仕事のやり方についていろいろと影響するという
お話がありました。もちろん、税務官吏も、社会人として、歳出の批判をするという権限は持っておりまするし、また
税法についての批判もあると思いまするが、私は、それがゆえに、税務官吏というものが、そういう判断で納得しなければ足が出ぬというのでは困るので、やはりその辺のところは、
政府のそれぞれの担当の部局なりあるいはそれらを審査される国会の審査なりということに待って、税務官吏は、与えられた
税法のもとにおいて、それに忠実に
仕事をするということを、私は期待しておるものでございます。おっしゃる気持は、一社会人としては私はわかりますが、税務官吏としてはやはりその辺は割り切って
仕事をしてもらいたいというふうな気持でおります。
なお、加えて、
所得、法人、間接、徴収という各部面における税務官吏の間に、いろいろ
立場のよい悪いがあるという点についての
お話がございました。この点は私といたしましても実は非常に頭を痛めております。実際そういう
——今の言葉はどの
程度言われておるか私知りません。まあ耳にいたすこともありますけれ
ども、実際にかなり喜ぶ
仕事と、それから非常にじみでやりにくいといわれる
仕事があるというのは確かであります。従いまして、具体的にこの人々をどういうふうに配置するかというような問題については、なかなかむずかしい問題であって、私としては非常に心を痛めております。それをやるのにいろいろなことが議論されておりまするが、何分長年の沿革に乗ってきた問題でありまするし、私、まだ今結論としては、どうというふうにきめかねておる。ただ、なるべくこのじみな
仕事をやる
人たちには、
仕事は
仕事として、いろいろな面で思いやりのあるような扱いができるならばするということで、できる限りのことは今もやっておるつもりでありますけれ
ども、それで問題が解決し切ったというふうには思っておりません。なお今後相当深刻に
考えてみなければならぬというふうに思っておる次第でございます。