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岡田(利)
委員 私は、今の問題については、単に待遇をちょっとよくするとかいうような問題ではなく、身分保障の問題——技術屋なんですから、言うなればほかにつぶしがきかぬといっても過言ではないと思うのです。
炭鉱、鉱山以外にはつぶしがきかぬ、そういう
意味ではかたわだ。表現がどうかと思いますけれ
ども、つぶしがきかぬというのが
実情なんです。だから、身分保障なり、将来に対する生活保障、こういうことに対する施策が総合的に確立されなければ、
権限行使なり良心的な
監督はできないと思う。だからこの点はそういう点を十分掘り下げていただくように、これは将来の法
改正にも
関係がある問題ですから、強く要望しておきたいと思うのです。
最後に、現在の
保安法は五十八条ですか、
保安規則は大体三百九十七条からなっておるわけです。これに基づいて現在各山で
保安規程が百五十条から多いところでは二百条くらい作られておるわけです。これに基づいて
炭鉱の
保安を管理していく、こういう法、
規則、規程の体系ができ上がっておるわけです。ところが実際これを運用していく場合に、自然条件は刻々と変化しますし、一度
施設をしたらこれを改善するということはなかなか大へんな問題なんです。莫大な経費を要するということで、初めのうちは施業案あるいは認可基準に合致するのだけれ
ども、時間がたつに従って基準に合致しない、こういう面が出てくるわけです。こういう場合は、大手、中小を問わず、臨時措置ではなくして特に恒久的に、
保安施設に対しては優先的に低利、長期の資金を貸し付ける、こういうような政策がとられなければならぬと私は思うのです。もちろん金を借りなくてもいいところは借りないと思うのですが、どうしてもそういう資金がないためにそれが放置されるという傾向があるわけですから、今回の
災害で臨時的にこの問題を
考えるということは、問題が残ると思うのです。私は、特にこういう点については、恒久的な
対策として立案せられるように要望したいと思います。
もう
一つは、
炭鉱保安の研究の問題なんですが、西ドイツあたりですと、縦坑のゲージのロープが切れて事故が起きた。そうすると即座にそのロープを切断してロープ研究所に持っていく。そしてストランド一本々々について、どうしてこういう事故が起きたか。メーカーが悪いのか、あるいはどういう過負荷がかかってどうなったかということを入念にロープ研究所で研究しておる。ロープ一本の研究のために
一つの研究所が西ドイツの場合にはあるわけです。あるいは防塵、いわゆるコール・ダストの問題については、総合的な機器の研究所がある。博物館がある。教育
施設についても、基準が非常に厳格で、採災夫になるのに三年間の教育を受けて採炭夫の試験に合格しなければ採炭夫になれない。こういう総合的な見地から、ヨーロッパあたりの
炭鉱の
保安が確立されているという工合に見られるわけなんです。ところが
日本の場合は、ガス爆発試験所が直方あるいは札幌の白石にあったわけなんですが、今、資源技術試験所ですか、そういう形になっておりますけれ
ども、
炭鉱鉱山の
保安に関する総合的な研究所で研究をして、たとえば新しい防爆型の警報機を作るとか、あるいは切羽の末端でもガスの予防ができる、あるいは中国では落盤の予報機が今日完成しておるといわれておる。そういうものを専門的に
検討を加えていく。こういう研究
施設に対する補助あるいはそういう研究
施設を総合的に——
日本の
炭鉱は永遠に続くわけなんですから、そういう
意味で、こういう点について十分配慮する必要があるのではないか、あるいは現在のものを一元化して、そういう態勢を再編成する必要があるのではなかろうか、このように私は
考えるわけです。このことは、特に現在の
石炭化学の場合でも、
石炭化学は奨励するけれ
ども、研究については全然予算もないし、そういう研究所もただ民間がやっているだけだ。中途半端な
状態になっておると思うのです。これから
保安の確立をしていく基礎的な
一つの問題点として、特にこういう点を
考えていかなければならないのではなかろうか、このように実は
考えるわけです。
それと、実際問題として五十八条あるいは三百九十七条に及ぶ
保安規則あるいは自主的に
保安委員会できめている
保安規程が完全に順守されている山というものは、極言すれば、私の経験からいって
日本には一カ所もない。もちろん限度の問題は非常にありますけれ
ども、極言すれば一ヵ所もない。こう言っても、おそらく
炭鉱の
保安を知っている人は、実際には別に不思議にも感じないのが今日の常識だと思うのです。中には守れない
規則があるということは明らかです。たとえば切羽のハッパを三十メートル離れてかけているという
炭鉱は
一つもありません。そういう面からいっても
規則は実行できないようになっている。そういう面が多々あると思う。だから
保安監督としては、現在の
規則が守られれば
保安は確立するのだ。よくこういうことを機械的に言うのですが、やはりそういう点について、むしろ
規則を作ってもあまりにも
保安が守られない、技術的に見ても科学的に見ても守られない。そんなものを作っていてもどうにもならぬわけでありますから、むしろ締めるところはシビアーにきちっと
規定を作る、あるいは守らぬものはその点についてある程度
検討するということで、必ず守るという
規則、あるいは
保安規程を作り、
保安規程を認可されたら、
監督員が
保安規程に基づいてこれを
坑内巡回にあたって点検する。やはりこういう筋の通った
保安監督行政が確立されない限り、幾ら
人員をふやしても、幾ら待遇をよくしても、それだけでは問題があると思うのです。だから
監督官が
現地を
調査して勧告していいかどうか、非常に良心的に苦しんで、ほかでもあの程度だから勧告をやめておけというのが、
現地の
監督官の
実情だと思うのです。こういう点について、もう少し責任のあるはっきりとした態度をもって法
改正、あるいはこういう
監督行政に臨まなければならぬと思うのです。こういう点についての御決意のほどを最後にお聞かせ願いたいと思います。