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1961-03-29 第38回国会 衆議院 商工委員会社会労働委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月二十九日(水曜日)    午後二時二十八分開議  出席委員  商工委員会    委員長 中川 俊思君    理事 内田 常雄君 理事 小川 平二君    理事 岡本  茂君 理事 中村 幸八君    理事 長谷川四郎君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       小沢 辰男君    齋藤 憲三君       笹本 一雄君    首藤 新八君       田中 榮一君    林   博君       原田  憲君    村上  勇君     早稻田柳右エ門君    岡田 利春君       加藤 清二君    多賀谷真稔君       中村 重光君    西村 力弥君       伊藤卯四郎君    大矢 省三君  社会労働委員会    理事 藤本 捨助君 理事 小林  進君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君       井村 重雄君    五島 虎雄君       井堀 繁雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         通商産業天臣  椎名悦三郎君         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 佐藤 一郎君         通商産業政務次         官       始関 伊平君         通商産業事務官         (石炭局長)  今井  博君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      小岩井康朔君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した案件  鉱山保安に関する件      ————◇—————   〔中川商工委員長委員長席に着く〕
  2. 中川俊思

    中川委員長 これより商工委員会社会労働委員会連合審査会を開催いたします。  先例によりまして、私が委員長職務を行ないます。  鉱山保安に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がございますので順次これを許可いたします。長谷川四郎君。
  3. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 おもに保安についてお伺いをいたします。  御承知のように昨年の三月に北海道の夕張、以後今日まで、大きな災害が三つ相次いで起こっておる。これに対しまして、先日来私は現地調査に行って参りました。その結果、今日まで起こった災害というものはいずれも保安という点から起こっている。しかも保安法があり、鉱業法があるのに、その法律鉱業権者、またはそこで働く方々においてもあまり気にしていなかったというようなことが、一つの大きな原因にもなったと考えられます。従って、たとえば鉱業権を許すという場合、ただ単に鉱業権許可をしたのではないと思うのです。それには、それだけの義務づけられたものがなければならない。たとえばお前にこれは許可をするけれども、これとこれとこれと、こういうような条件が鉱山保安法にはあるのだ、それを承知の上で、つまり採炭を始めておる。しかるにそれを履行していない。こういうことが災害の発生する原因になっておる。従って監督官自体が行っても、監督官を受け付けていないではないか。なるほどよく調査してみれば、監督官人員の不足ということも考えられるであろう。しかし監督官威厳そのものか保たれていないというところに、何か不備なところがあるんではないか、行なわしめられないというところに、何か原因はないか、こういう点に対する保安局長考え方一つ述べていただきたいと思います。
  4. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 ただいま監督官が十分に威厳をもって監督ができていないのではないかという御趣旨のようであります。私ども監督官全国で二百二十五名おりまして常時監督をいたしておりますか、これらの監督官が特に石炭関係で年に二万件に余る違反事項を摘発いたしているわけであります。この摘発いたしました違反事項につきましては、毎々申し上げておりますように、必ずトレース・システムをとっておりまして、次の監督官が参りますときには、前の監督官指摘事項が実施されておるかどうかという点につきましては、必ずトレースをするという形式をとっております。従いまして、私ども監督が万全であるとは必ずしも申せませんけれども、一応指摘しました事項が実施されておるかどうかという点につきましては、十二分にあとの者が見ておる、こういうような形になっておるわけであります。  なお、監督と申しましても、私どもの方では格づけ表を作りまして、危険度を内包する程度によって月一回あるいは二回、三回、あるいは半年に一回、年に一回というふうに、場合によりましては年に一回くらいの山もございます。こういう山はもちろん次のものが行ってトレースをしますけれども、その間十二分にできないではないかという御質問もあると思いますが、これらは予算人員関係重点主義をとっておる、こういう実情でございます。  監督官が山に参りまして十二分に監督ができないではないかという御質問に対しましては、もちろん人員その他で十分とは申せませんけれども現状あるいは諸外国の実例——まあ日本状態と違いますけれども、そういう点から見まして、必ずしも日本監督官の数が非常に少なくて全く手薄であるというような状態ではないように、私たち自身考えております。今後の監督につきましてはなお一そう厳重にやって参りたい、かように考えております。
  5. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 政務次官にお伺いいたします。  今度の災害調査してみて、監督官の数が大幅に少ないとは必ずしも私も考えられない。しかし、もう少し増員しなければならないじゃないかということは考えられる。そこで人間の数の上に限定があるのを、その限定された数においてあれだけたくさんある炭鉱監督をするというのには、その人の精神的なものがなければならない。ところが現在の監督官はある一定の、たとえば五等級なら五等級というところまでいくと、それ以上には昇級できないのであります。こういうところに私は一つ欠陥があると言わなければならないと思う。であるから、自分はもうこれより上へ上がれないんだというならば、結局はそこへ土着しなければならない。となれば、何も炭鉱に憎まれたくない。労働者にも憎まれたくないし、鉱業権者にも憎まれたくない。であるからこそ、そこで行なわしめなければならなくても、大目に見る妥当性を持つ。こういうところにも欠陥があることを見のがしてはならない、私はこう考える。従って今ほどの局長答弁でいくならば、人間が少ないならば、もう少し権限というものを与えなければならないのじゃないか。ところが、たとえば監督官が行って、前から注意していることを即時行なわなかった。行なわなかったから、お前これをなぜ行なわないんだということになって、そこでかりに暴力を加えられたとしても、これはその場においてこれを検挙する役割はないはずだ。であるから、もう少し権限というのを、私は司法権そのものを与えろという意味ではないけれども、もう少し司法権を与えていかなければならないのじゃないだろうか。  もう一点は、二百数十名全国におるという監督官に、威厳を保つためにも制服制帽というようなものを与えて、各炭鉱を巡回する場合には必ず二名で回るべきである。たとえば一人がどういうふうに脅迫を受けようとも、どういうふうな言葉で現わされようとも、二人で坑内に入っていくということになれば、安全性と力強いものがある。そういう点で、必ず二人で出張をして、坑内へは二人で入るというような、少ない人間の上に立ったやり方をしたならば、これをある程度防止することができ得る、また監督官としての目的を達せしめることができる、こういうふうに私は考えてきたわけです。私はそういう点について、たとえば制服制帽というようなもので威厳を保つという点と、ある一定の限度まで行ったら、それより上に上らないというあり方であってはならない、その人が懸命に努力することは、すなわち一つの大きな希望と目的のためでなければならないと思う。人間の本能というものは、一たんここへ行けば、働いても働かなくも同じなんだというので、どうして万全を期した監督ができるか、こう私は言わなければならないと思う。こういう点を改正し、威厳を保たせるために、支給すべきものは支給するという点について、政務次官はどのようにお考えになっておられるか。考えばかりではなくて、私が申し上げることは、すみやかにそれを実行せしめなければならないというのが私の考え方でありますから、これに対して御答弁を承りたいと思うのであります。
  6. 始関伊平

    始関政府委員 炭鉱で大きな災害がたびたび起こって参りまする現状から反省いたしまして、保安行政あり方につきましていろいろ改善をいたさなければならない点が多いと存じております。ただいま御指摘の点は、そういった事柄の中の重要な点であると思うのでございますが、保安監督官という立場のままでは、あるところまでしか昇進できない、課長になる者はなるが、課長にならなければ、そこで地位も俸給もストップするという現在のあり方は、ただいまお話のように、保安監督官の強化という点からいたしまして、大へん不適当であると思うのでございまして、現場の第一線の監督をするという立場のままでもっと昇進ができるように、至急制度の改変をいたしたいと存じておる次第でございます。  なお保安監督官がそういったような献身的な立場仕事ができるようにするということと、現場におきまして威令が行なわれるようにするために、作業員が二名くらいで坑内に入るのが適当ではないかというお話も全く同感でございまして、早急に実現するようにいたしたいと思います。  なお制服等の点につきましては、慎重に検討いたしまして、その方が適当だということになりますれば、やって参りたいと存じておる次第でございます。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと関連して。先ほどの長谷川委員質問関連をしてお伺いしたいのですが、長谷川委員から今行政官という立場だけでは保安監督官が十分に仕事ができないんじゃないか、司法官とは言わぬとしても、司法的な立場を持たしたらどうかというような意味質問がありました。私も前に商工委員会でそんなようなことに触れたのですが、そのことについては何ら答弁がなかったのです。きょうは一つ具体的に伺いたいと思うんですけれども昭和二十三年の法第二百三十四号で、司法警察職員等指定応急措置法というのがあります。それからこれはだいぶ古い勅令ですが、大正十二年の勅第五百二十八号によって、「司法警察官吏及司法警察官吏職務行フヘキ者指定等二関スル件」、こうのがある。これによって、たとえば鉄道あるいは林野の関係等々において職務を執行する場合においては、行政官が一時司法警察官、いわゆる司法職員としての職務を行なうというような規定になっているわけなんです。従って先日来問題になっております、たとえば保安監督官監督上の事情から山に行った場合、いろいろな妨害を受けるとかなんとかいうものに対して、保安監督官保安関係上の仕事を行なう場合には、司法警察職員としての権限を行なう、こういうような規定はできないものでありますか、いかがですか。
  8. 始関伊平

    始関政府委員 現在の保安監督官は直接司法権の行使はできませんで、異常な状態がありましたときには、告発権を持つということにとどまっておるのでございますが、先ほど申し上げましたように、この際炭鉱災害頻発の状況にかんがみまして、保安監督を強化するということからいたしまして、ただいまお話のございました司法警察官としての身分を持たせることが、私は法制上はできるものと存じますので、そういう点につきましても検討を進めて参りたいと考えております。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 大体次官は肯定の答弁をせられましたので、私は関連質問でありますから了承はいたしますが、とかく先日来問題になっております保安監督官に対して、いわゆる暴力においてこれを阻止するといったような問題、こういうことが大きく取り上げられている今日では、私はぜひこの職務を行なうに当たって、司法警察職員としての職務を行なう者の指定に入れるべきである、こういうように考えますので、重ねて要望いたしまして、終わります。
  10. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 石炭局長にお伺いいたします。  この際思い切った、つまり鉱山法、これに関連する幾多の法案がありますが、こういう面を抜本的な改革と言おうか、過去を振り返ってみた例によっても、断然修正をしなければならないというものがたくさん出てきていると思うんです。こういう点において、あなたはこれを修正するお考えがございますか。その修正とは、ただいま申し上げた通り、今日まで幾多起こった災害を振り返ってみて、かくしたらば万全であろうというような点を改革するお考えがあるかどうかをお伺いいたします。
  11. 今井博

    今井(博)政府委員 ただいま御指摘になりました鉱山関係法規につきましては、鉱業法によっていろいろな規定が盛られております。あるいは保安関係鉱山保安法合理化関係石炭鉱業合理化臨時措置法、こういう法体系で大体でき上がっております。いわゆる根本の鉱業法そのものにどういう欠陥があるかという御指摘が、まず第一の問題だと思います。この問題は御承知のように鉱業審議会というものを設けまして、ここ一両年鋭意検討いたしております。われわれの石炭関係もこの中に規定として入っておりますので、石炭サイドから見ますと、第一には鉱業権許可する場合には、少なくとも保安の問題あるいは鉱害問題等を十分に担当し得る能力のある人に鉱業権を与うべしという点が、一つの大きな問題でございます。これは一つできる限り能力主義を採用していくという意見を相当強く申し述べております。その他できれば、一般の鉱物資源石炭資源とはだいぶまた様相が違いますので、石炭については特にそういう厳格な規定一つ入れたい、あるいはいろいろな鉱害問題等も起こりますので、そういう鉱害問題を防御する意味におきましても、鉱物の採掘についての制限規定一つ入れてほしいという、いろいろな要望を出しておりまして、これはまだ結論が出ておりませんが、この三十六年度一ぱいには何とかして結論を出しまして、できるだけそういう鉱害問題であるとか保安問題というものに重点を置いた法規改正を加えたい、こう考えております。  それから御承知のように、鉱害関係には臨時石炭鉱害復旧法という法律がございまして、これは現在改正案国会の方に提案いたしております。豊州炭鉱災害等にかんがみまして、ああいう地下の火災等についても、何か応急措置ができないかということで、そういうものも包含し得るような規定を入れまして、現在国会の方に御審議をお願いしている、こういう次第であります。
  12. 長谷川四郎

    長谷川(四)委員 私たちはこの委員会を通じまして、これからいろいろの御質問等があると思います。それを総合いたしまして近く決議案国会へ提出いたします。ということは、現実を見て、われわれ国会の議員としまた政府として、当然なさなければならない大きな役割だと信じているから決議案を提出しようと考えております。  さらにもう一点だけ申しておきたいことは、合理化という今のお話がありました通り合理化法というものが非常に誤って伝えられており、合理化というのは千二百円の石炭単価というものを引き下げなければならないのだ、それが至上命令だ、このように考えている、そこに無理がある、こういうふうに私は見て帰って参ったのでありますが、合理化というのは炭価を引き下げるとか、人間の首を切れということではないのであって、もう少し合理的に機械化し、そうしてその能率を高めていくことが合理化の精神だと私は考える。ただ値段だけを下げなければならぬのだ、保安をそっちのけにして値段を下げる、これでは少しも合理化にはなっておらないと思う。こりいう点についての政府普及ということが、非常におくれているのではないか、間違って伝えられているという点については、一つの責任がありはしないかと考えてきたわけであります。このような点についても十分今後検討をし、そうしてよく普及をしてもらわなければならないし、ただいま申し上げた通り政府みずからも今度の災害を振り返ってみて、当然これらの法案修正しなければならぬというような考えでありますので、そのような御処置を早急にとっていただくことを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  13. 中川俊思

  14. 岡田利春

    岡田(利)委員 内閣総理大臣が来るまで、主として技術的な問題についていろいろお伺いしたいと思うわけです。  今まで各炭鉱で重大な災害が、ここ数年来頻発をしているわけですが、いずれの災害についてもその直接原因はこういう原因である、こういうことで明確に解明された例はないと言っても過言ではないと私は思うわけです。しかしながら直接原因が解明されなければ、これに伴う将来に対する対策、こういうものもなかなか具体的に出てこない。そういうことがやはり保安対策の面で非常にそごを来たしておる傾向があるのではなかろうか、このように考えるわけです。特に今回の上清炭鉱並びに大辻炭鉱の直接原因は、いずれにしてもコンプレッサー室から出火をした。出火の個所はもう明らかになっておるし、しかも共通なわけです。ただその直接原因はまだおそらく不明だと思うのです。しかしながらコンプレッサー室から出火した以上、一体どういう状態において出火が起きるのであろうか。これを実際的にも、技術的にも、あるいは科学的にも究明をする。直接原因がその結果明らかにならないとしても、想定される原因については、それぞれ必要な対策を順次立てていく。こういう積極的な態度がなければ、保安は維持することはできないという工合に私は考えるわけです。そこでお伺いするのですが、コンプレッサー室の場合に、いずれにしても、どういう場合に出火が予想されるか、こういう点についてどういう見解を持っておるか、お伺いをしたいと思うわけです。
  15. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 ただいまの御質問、私どもも全く同感でありまして、大きい災害につきましてはなかなかほんとうの原因がつかみにくい場合の方が多いわけであります。これは私どもの先輩も非常にその点苦慮しておるのでありますが、ただいまお話上清炭鉱につきましては、ほぼ現地原因をつかんでおりまして、もちろんまだ公表する段階ではございませんが、ごく概略を申し上げますと、上清炭鉱の場合は電動機電流に対しましてケーブルが非常に悪化状態になっておった。大体現在使っておりましたあの当時のケーブルの力の百五十馬力くらいな電流がかかっておった。そこえ持ってきて百馬力と五十馬力がたまたま並列運転になっておりまして、百馬力の方から五十馬力の方に少し逆流もした疑いがある。そういう実情から悪化状態はさらに一そう増しておったのではないか。さらにまたケーブルの引いてありますところが、地面の上に乱雑に引いてありまして、そこには水とか油がありまして、絶縁も非常に劣悪の状態になっておって、実際には非常な悪化状態になっておったのではないか。そこで弱いところから火をふき出しまして、それが漏れ出ておった油について、それから板べいその他板囲いに燃え移った、こういうような見方をいたしておるのであります。なおそれらの裏づけにつきましては、現地目下捜査中でありますので、はっきりしたことは申し上げられませんけれども、一応上清火災原因といたしましては、ケーブルのそういった管理面の不徹底に基づく発火、かように考えておるわけであります。今のお話コンプレーサー室から一体どんなところが予想されるかということでありますが、私どもが一応考えておりますのは、ケーブル関係それからレシーバーあるいはスイッチ関係、あの中で火をふき出すというものは電気関係以外にはほとんどありません、もちろん機械そのものから発火する場合もありまするけれども上清の場合は、大学に送りまして検討の結果、機械そのものには故障なしという断定が下っておりますので、あの場合にはほとんど電気関係以外には考えられない。そこでただいま申し上げましたような原因考えておりまして、従ってそれ以外の原因は非常に疑いが薄い。特に中に人が入ってたばこでも吸ったのではないかというお話が出ておりますが、それらの疑いについてはきわめて薄いものであるという見方をいたしております。
  16. 岡田利春

    岡田(利)委員 大体今局長が言われたように、コンプレッサー室から発火をする場合には、そういう原因考えられるわけです。しかし私はもう一つ原因があると思うのです。それはモーターとコンプレッサーとの電動ベルトによる発火ということが考えられる。これは私自身経験をいたしておりますし、しかもまたそういう実例もしばしば私は聞いておるわけです。しかし大手のように、工場のようなコンプレッサー室電動ベルトスリップして摩擦によって火をふく、切断をして火がつくというような場合があっても、大体消化は非常に簡単にできるし、コンクリートで完全な施設がしてあるから出火に至らない、こういう事実があるわけです。ですから、たとえば電動機をいかに整備しようと、あるいは電気施設をいかに整備しようと、場合によって電動ベルトスリップをした場合、スリップによる過熱によって電動ベルトが燃える、こういうことが考えられるのです。そういう二百馬力、三百馬力コンプレッサー電動ベルトが燃えた実例があるわけです。そういたしますと、コンプレッサー室が五十馬力であろうと百馬力であろうと、技術的に現在の保安規則に定められておる防火構造というものはきわめて問題になるような気がするわけです。そういう形で火がつくということがはっきりしている。そういう実例があるとするならば、完全耐火構造にしない限り安全と言えないのではなかろうかと私は考えるわけであります。特にコンプレッサーの場合に五十キロワット以下は設置届けも何もしなくてもいいわけです。五十キロワット以上については設置届け制限がある。ところが大体コンプレッサーの場合には百馬力から五十馬力か使われているのが炭鉱実情です。こうなって参りますと、コンプレッサーの場合には普通の電動機と違って特別に規則改正し、防火構造にあらずにして耐火構造、こういう方向に規則改正する必要があるのではなかろうか、このように私は考えざるを得ないのです。特にコンプレッサー室関係の問題については、各山の保安委員会の議を経てきめる保安規程に待つところが非常に多いわけです。ところがこの保安規程をやはり防火関係保安規定で定めなければならぬ事項、しかもこれは監督部に出して認可を受けるのですが、それを具体的にきめてその通り実行しておれば、われわれが現地で見て不十分な点を指摘することはないはずです。保安規程は適当に作って監督部に出して、監督部文謹上規則に基づくものかどうか、規則で定めているものをきめておるかどうか、こういう書類上の判断だけで保安規程を承認しておる、こういう一連の不備があると私は思うのです。だからコンプレッサー室出火そのものは、それたけを見ては保安規程改正あるいはまた保安規則改正保安規程の謝可問題、防火構造に対する厳密な規定、こういうものは直接的に今回の災害にかんがみて対策として早急にやらなければならぬ問題ではないか、このように私一は考えるのですが、どのような見解ですか。
  17. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 仰せの通りでありまして、上清実例を見ましても、あれが防火構造になっているとは私ども考えておりません。現地監督部におきましても調査の結果、不適当であるという断定を下しているようでありますので、それらの処置につきましては後刻はっきりいたす考えでおります。ただ今お話のような保安規程では少し弱いではないかというようなお話でもりますが、御承知のようにわが国の保安法保安規則は非常に入念にできておりまして、私自身、少しこまか過ぎるのではないかという考えすら持っておるわけであります。従いましてこの保安規程の点は、保安法規で書いてないものにつきまして、各山で事情が違いますから、その事情の違うために保安規程をその山がわざわざきめておるわけであります。大綱につきましては保安法保安規則で縛り、その山の個々の状態によりましてそれぞれ山に合致した規程を、その山で作るために保安規程ができておるのでありまして、保安規程の思想そのものはかなり新しい考え方規則だろう、こういうふうに私考えておるわけであります。従ってこの保安規程を守るか守らないかというのは、全くその山の責任でやる形になっておりまして、もちろん監督官保安規程の内容を見て監督をいたしますけれども、そういうような関係保安規程の違反については罰則も何もございません。これはその山が自主的に保安法保安規則以外の、その山で特に守らなければならない点を山が自主的に規定する、こういう内容のものでありますので、当然監督官は見るわけではありますけれども保安規程こそその山の方々が自主的に守っていただかなければならない。自分たちのためにわざわざ作ったものが保安規程だ、こういうことになっておるわけであります。しかし実際には保安規程の違反も相当でございまして、自主的に作ったはずの山の保安規程が守られていないという事例がございますので、この保安規程の中の一部のものを保安規則に盛るという考え方も当然出てくるかと思います。先ほどちょっとお話がありましたように、今鉱業法の抜本的な改正をやっておりますので、保安法も出然これに従って大きく変わるものと考えております。それまでに間に合わぬようなものがあれば、もちろん早急に改正もいたしますし、私自身としては、鉱業法の大きい改正に伴いまして、保安法保安規則改正も十分に考えたい、かように考えております。
  18. 岡田利春

    岡田(利)委員 今局長も言われておりますけれども、もちろん一般論として国際的に見た場合に、なるほど局長の言われる点はもっともな点があると思う。しかし日本炭鉱の経営の規模、あるいは生産機構の問題、あるいはまた日本炭鉱の採掘計画の問題、こういう面から、取り上げてみますと先進国家の保安規則、こういうものと日本保安法保安規則を比較して、非常にシビアであると一概に私一は言えない面があると思う。これだけシビアにしても災害は現実の問題としてどんどん起きておる、こういう点からいっても事実が証明しておると思うのです。しかも保安法ができるときには占領下であって、大体保安法保安規則、特に保安法の場合はGHQの勧告の英文を訳した、こういう文字も相当この保安法の中には使われておるわけであります。そういう面からいっても解釈が非常にまちまちな面がある。たとえば保安監督員の性格、監督意味、持つ権根の効力といいますか、こういう面なんかも代表的な例であると私は思います。従って今申し上げた通り炭鉱で最も安全な個所はコンプレッサー室あるいはまたポンプ座あるいはまた特免区域、申請をして特免区域の認可が下りれば、そこでは裸火も使用できる、溶接もできる、トロリー貨車も通ることができる、こういう個所が最も安全なところです。最も安全なところで重大な災害が起きている。また夕張、三井山野のガス爆発は特免区域で起きている。こういう点から見ても非常に多くの問題があるわけです。ですから規則とともに保安技術というものをどんどん研究していく、科学的に恒久的に研究を加えていく、こういうものが並用されなければ保安監督行政というものは、単なる規則に照らし合わせてみるというだけに終わってしまうのではなかろうか、このように私は考える。従ってそういう従来の災害実例にかんがみて、具体的にそれらの規則改正は省令でできるのですから、気づいた点についてはさっそく省令を改正をする。保安法については鉱業法との関係がありますから、もちろん抜本的にはできないでありましょうけれども、どうしても保安法改正が必要な個所については一部改正をする、やはりこういう積極的な態度が今日望まれていると思うのです。ですから少なくとも保安規則については、私が先ほど指摘した一点から見ても改正をしなければならぬ面があるのではないか、このように考えるのですが、その改正をする必要がおると考えられるか、ないと思われているか、その点だけお伺いしたいと思う。
  19. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 先ほども申し上げましたように、規則の不備な点も十分痛感いたしております。特に今御指摘の特免区域で災害を起こしているという点につきましては、私どももこれは非常に痛感いたしておりまして、二カ年計画で、もう一度全部洗い直しておるというような実情でございます。かような実情でありますので、御指摘の点の改正につきましては当然考えております。
  20. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで、今回の災害コンプレッサー室から出火した、だから七十一名が死に、救助に向かったあるいは消火に向かった二十四名の人が死んだということだけではないと思う。なるほど直接原因コンプレッサー室出火ではありましたけれども、ここでやはり最も重要視しなければならぬのは、なぜ七十一名が死ななければならなかったか、なぜ二十四名が死んだかという間接的原因一つ一つ究明することが、私は大事だと思うのです。特に間接的な原因としては、コンプレッサー室防火構造がきわめて不満足、不完全な状態にあったということがあげられるでしょうし、あるいは災害が起きた場合に、それを通達する指揮命令の系統というものが、いつでも鉱員がわかるように掲示が張られていない、そういうものは鉱務室にいっても一枚も帳ってない、こういう問題もあるでしょうし、あるいはまた避難訓練というものが一度も行なわれていない、あるいは保安教育というものが全然行なわれていない、こういうような間接的な原因があると思うのです。特に大事なのは、上清の例を取り上げますと、排気坑道が災害当時崩落をしておった。あるいは排気坑道を伝わっていった二十六名の者はその坑道を上がることもできない、なわばしごがない、ロープがない、そういう状態で、二十六名が排気坑道で死んでいる事実もある。こういう排気坑道、退避坑道すべての坑道が完全であったならば、私は七十一名の人間が全部助かったのではないか、こういう気もするわけです。こういう間接的原因というものは、やはり今日中小炭鉱においては、石炭産業合理化の問題もあって、排気坑道は風が通ればいいのだ、何とか通気ができればいいという状態でがまんしておる、こういう傾向が非常に出てきている。あるいはまた上清の場合には、百馬力と五十馬力コンプレッサーの管理者が一名で担当しておった。大辻の場合には遠く離れている二台のポンプ番が一緒に兼業させられていた。これはやはり人減らしか行なわれているから、指定鉱山労働者の資格を有しなければならぬ職場に、常時置かない、こういうところに人の節約が起きている。人がおれば早念にこれが消火できたかもしれない。それが人がいないために発見がおくれて二十四名の者が救助に向かって死ぬ、あるいはまた七十一名の者が死んだ。これらの間接的原因というものは、きわめて私は重大だと思う。だから間接的原因考えていきますと、この整備をはかるためには、今の中小炭鉱の力だけでは解決できないのが実態ではないか。ここに金を入れるとコストが高くなって、千二百円のコスト・ダウンができない。そのためにはやはりしようがないから、こういう坑道あるいは施設をある程度手を抜くという現象が出てくる。人を減らさなければならぬから、機械の管理については兼務をさして、明らかに規則違反の疑いがある状態に置いておる、こういう状態が私は出ておるのではないかと思うのですが、専門の立場からどういう見解を持っておられますか。
  21. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 ただいま御指摘上清の排気坑道の点でございますが、上清の場合はもちろん排気坑道は非常に狭くて、しかも傾斜が強くて、当時避難しようと思っても、おそらくできなかったんではないかという状況であることは、御指摘通りでございます。もちろん一応の処理としましては、鉱業権者の責任を考えておるようでありますが、これは単に処置でありまして、排気坑道というのは非常に重要な点でございまして、おそらく監督官はたれしも、この排気坑道を見れば保安の大体のやり方がわかるといわれるくらいに重要な個所でございます。この排気坑道が中小、特に終閉山に近い炭鉱におきましては、十分できていないという点につきましては、私どもかなり頭を悩ましておるわけでございます。これらの点につきましては、絶対必要な問題でありまして、しかも法にもはっきり二つ以上の通路を、常に持たなければいかぬという規定かできております。しかるに上清の例のごとき、一方が通れないということになれば実質は一本坑道でありますので、それらの監督につきましては、今後どうしてもできぬというような場合には、やはり操業の停止をしてもらう、あるいはまた鉱業権の取り消しをやる、あるいは炭量があって何らかの方途が講ぜられるものならば、ぜひ一つ援助の方法も考えて、炭鉱自体が安全に生きられるような厳正な方途を講じてみたい、かように考えております。
  22. 岡田利春

    岡田(利)委員 今局長は、排気坑道の整備というのがきわめて大事な問題であり、排気坑道の維持状態を見ればその山の保安に対する態度、あるいは熱意というものがわかる、このように言われておるわけです。しかし実際問題として保安監督官がその山に行って排気坑道の目抜き、風洞、換気を入念に見るということは、なかなか困難な問題ではないかと思うのです。たとえば排気坑道の場合は作業個所ではありませんから、これを見る場合には、現行の規則では二名の者が立ち会いでなければ排気坑道に立ち入ってはならないという規定があるわけです。ですからその山の引率者がもし保安監督官を案内しない場合には、監督官が一人で排気坑道を見ることは、監督官みずから保安規則の違反を犯すという結果になるわけです。そういたしますと、案内以外の点について、入念に旧主的な立場で検査を行なう、こういう考え方に立ちますと、一名の監督官の派遣ということ自体に無理があるのではないか。特に暴力炭鉱の問題も出ておるのでありますから、案内しない場合は排気坑道を一人で自分で検査するわけにいかぬという事態に立ち至るわけです。そうすると、保安監督行政というものは、そういう点からいってどうしても二名の監督官を派遣しなければならぬという工合に考えるわけですが、その点はいかがですか。
  23. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 ただいまの監督官を二名以上派遣せよというお話でありますが、もちろん普通監督官が巡回監督に参りますときには、通常は山のどなたか必ず一緒についていくということになっておりますので、一人で行くということはまずないのではないか、かように考えております。暴力関係お話も出ておりますし、もちろん特定の炭鉱につきましては二人、三人、さらに四人でも、五人でも現在考えておりますけれども、原則としてすべての巡回監督に二名以上やるということになりますと、人員増を実現していただかない限りは、むしろ巡回の頻度が非常に低下するということも考えられますので、でき得る限り今実現のお話し合いを進めておりますけれども、はたしてこれらが実現できますかどうか。私ども自体の考え方としては、当然一名で行くよりも二名で一緒に行った方が、いろいろな各分野の保安関係も十分に監督ができますので、もちろんベターではないかというように考えております。ただ今すぐここですべて従来の巡回監督を二名以上で実施せよということになりますと、かなり大きい問題が出てくる、かように考えておりますので、特別に入念に見る必要のあるような炭鉱につきましては、でき得る限り原則に近く二名程度で巡回させるという方向はぜひ実現させてみたい、かように考えております。
  24. 中川俊思

    中川委員長 岡田君に申し上げますが、総理大臣が御出席になりましたので、出席時間に制限がありますから、この際総理大臣に対する質疑を願いたいと思います。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理大臣が出席される前に、今実は二、三の問題について質問をいたしたわけです。この質問の中から、当面保安規則改正は避けられない問題である、こういう点が保安規則上まず言明されておるわけです。もちろん保安法については、その姉妹法の関係鉱業法関係が出て参りますので、鉱業法改正を伴う保安法の抜本的な改正という点で、将来さらに検討をしていく、こういう点が考え方として大体述べられておるわけです。さらにまた、保安監督行政の立場から言いますと、事実問題として福岡監督部傘下で暴力によって監督行政をできないような形にしてしまう、保安監督官が入坑できないような態度に出る、こういう与件が実は八件に及んでおるわけです。あるいはまたその山の鉱業権者もしくは保安管理者が坑内の案内をしない場合には、監督員が一人でその坑内を見ることは、監督員みずから保安規則違反を犯すという結果が出て参るわけです。そういたしますと、どうしてもこれから特に上がり山あるいは中小炭鉱重点にして、保安監督員の派遣は最低二名以上でなければならないという工合に考えられますし、そういう必要性を局長は認められておるわけでありますが、こういう点について規則改正、さらに保安行政の強化という点になりますと、予算の問題も伴うのでありますが、総理大臣として、炭鉱災害の最近の頻発する状況の中で、これらを率直に予算を組み、あるいは規則改正を促進をする考えがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
  26. 池田勇人

    ○池田(勇)国務大臣 最近の炭鉱災害の状況を見まして、私は全く同感でございますし、保安行政につきましては、これはもう石炭合理化以前の問題でございまして、十分検討をいたしたいと考えております。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 政府はさきに所得倍増計画に基づいて、エネルギー小委員会の答申に基づいて、昭和二十八年までトン当たり千二百円のコスト・ダウンをはかる、こういう方針を出して、炭鉱合理化が進められておるわけであります。この答申案に基づきますと、資材、施設関係についはその価格は横ばい、ただし労働質金については三 八%毎年増加することを一応予想いたしておるわけです。ところが昨年の十月には港湾の荷役料が五%上昇しておる。あるいは最近の木材の値上がりによって、炭鉱で大量に使う坑木がトン当たりに換算して十五円上がっておるわけです。国鉄運賃の値上がりによって坑木の輸送費にさらにはね返る。あるいはまた石炭の輸送運賃の問題についても、これは明らかになっておりませんが、これがこのまま実施をされると、トン当たり六十三円のはね返りが出て参るわけです。そういたしますと、この部面だけでも優に百円をこしてしまうわけです。そうすると、今の石炭政策そのものをある程度修正をしなければ、特に炭鉱保安の問題と関連して、人を削減する、あるいは施設をあと回しにする、こういう傾向に炭鉱の経営者みずからが追い込まれるということになるのではないかと私は思う。そういう点について、この石炭政策について再検討する必要があるのではないかという工合に考えるのですが、どういうお考えを持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  28. 池田勇人

    ○池田(勇)国務大臣 昭和三十八年を見越して千二百円切り下げということで、努力をいたしております。その当時は、お話のごとく労働者の賃金につきましては、三%余りの上昇を見ております。その他はこのままでいくという大体の予想でございます。しかるところ、今お話のような点も一時的に出ておりますし、また鉄道運賃につきましてはいろいろ議論がありまして、検討をお願いしておるような状況でございますが、一方におきまして、われわれが考えておった以上の一人当たりの出炭量も出てくるのではないか、こういうふうなことも考えられる。また悪条件といたしましては、重油の相当の値下がり等々も出て参ります。だから随時情勢の変化によりまして適当な措置をとっていくことが、私は妥当な方法であると考えております。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 今総理大臣は、炭鉱の能率が最近非常に上がってきておるということを基点にして答弁をされておりますけれども炭鉱の能率が上がっておると言いますが、わが国の炭鉱能率基準のとり方は、在籍一カ月一人当たりの基準をとっておる。大体ヨーロツパでは、坑内一日一人当たりの基準をとっているわけです。そういう点で非常に大きな違いがある。今、炭鉱の経営規模というものは、漸次坑外関係は全部切り捨てる、坑内だけについては人を重点的に振り向けて補充する、こういう政策をとっておるのですから、出炭量が変わらなくとも、結果的に、指定統計で見る能率は上がってくることは間違いない。これは大手の場合には、全面的に各社が坑外関係の切り捨て、在籍鉱員からの切り離しをすでに実施しておるわけなんです。そうなりますと、簡単に能率が上がったから、それだけ、いわゆる上昇分だけ、炭鉱の経営内容が改善されておるという工合に見ることは、私はきわめて妥出性を欠いておると思うのです。やはり千二百円のコストを下げるということは、これは非常に大へんな問題でありますから、当初策定したそれぞれの重要資材物資の値上がりが、現実の問題として起きて、坑木の代金が値下がりをするということは、一体ではここ一、二年の場合に考えられるかどうか。あるいはまた坑木輸送に、はね返る鉄道運賃の問題は、一体解決できるのかどうか。あるいは国鉄運賃の値上がりについては、総理大臣は今検討されておると言われておりますけれども、実際問題として国鉄運賃の問題については、すでに石炭産業の合理化が進んでおるわけなのですから、そういう面に解明が与えられなすれば、今年度の生産計画、あるいは企業費の投下、あるいはその予算、こういうものが各社で立たないというのが、私は現状じゃないかと思うのです。そういたしますと、国鉄運賃の値上がり自体についても、むしろ積極的にこれを解決してやる、こういう態度と相待って、石炭産業の政策というものを政府としては浮き彫りにして、明確に一つ一つ解明を与えていくという、積極的な態度か今日必要ではないかと私は思うのです。そういう点についてはどうお考えになっておりますか。
  30. 池田勇人

    ○池田(勇)国務大臣 お話のように、三十八年までの分を一応やりましたが、いろいろな事情で、ある程度の坑木運賃高ということが出て参りましたが、私は炭鉱労務者の協力によって、よほど能率も上がりつつあると思うのであります。これは坑外と坑内では、坑外の方の整理が相当進んでおるようでございます。これも炭価につきましては、それだけ有利な条件であります。その場その場ですぐ方針を変えるということよりも、私は大体既定方針でいって、そして石炭運賃については、下げられないかどうかというふうな問題を検討した上で、総合的に、所管官庁が業界と相談の上やるべきだと思っております。今私が、坑木の輸送値段を上げないとか、あるいは今材木関係は非常に値上がりしておりまして、三年くらい前に比べて三割近く上がっておる。こういうことにつきましては、木材全体としての措置を、今政府としてはとっておるのであります。現状のポイントをつかまえてどう変更するかということは、私としてはなかなかお答えしにくいのであります。三十八年を基準にいたしまして、いろいろな指標、いろいろな条件の変化を考慮しつつ、根本的に改正すべき点があるかどうか、あるいはそこまでいかなくても、小さい問題といいますか、具体的な個々の問題で解決していくか、私は、今、後段の方でいくべきだと考えております。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 今、総理大臣が来る前に、今度の大辻炭鉱災害が起きた原因についてずっと質問をいたしておったわけです。大辻炭鉱の場合には、百馬力コンプレッサー室から発火いたしておるわけでありますが、この大辻炭鉱コンプレッサー室指定鉱山労働者は、これはコンプレッサー室の管理と、それ以外に四百メートルも離れているポンプ座二つの管理の受け持ちがきめられているわけです。なぜこういう形になったのか。以前は、一人で百馬力コンプレッサー室を管理しておった。ところが炭鉱合理化が進んで人員を減らさなければならない、そういうことによってコストの引き下げをはかるということで、コンプレッサー室とポンプ二台の管理に切りかえられているわけです。これは、明らかに合理化によって人が減らされ、そういうことから、一方問題があるような業務内容というものがきめられ、その結果管理不十分なために、出火の発見が非常におくれたということが、坑内火災原因一つに数えられているわけです。このことは、大辻炭鉱災害で明らかになったけれども、今日大手、特に中小炭鉱においては、極端にそういう傾向が非常に強く出ているわけです。こういう場合に、政府として今日の炭鉱合理化の問題と、保安という問題について、具体的な指導監督、あるいはまたコストの引き下げが非常にむずかしいということが、中小炭鉱には非常に考えられるわけですが、こういう場合については、やはり無理のない形で合理化がある程度進められていく方向に、政府として具体的な裏づけをしない限り、私はこういう災害は絶えないと思うのです。この点には、やはり政府の根本的な、積極的な政策というものを必要とするわけですが、こういう点についてはどのようにお考えになりますか。
  32. 池田勇人

    ○池田(勇)国務大臣 具体的な問題は、私はよく知りませんが、大辻炭鉱は、私は従来非常にりっぱな経営をして、保安その他につきましても、表彰を受けた炭鉱と聞いておったのであります。原因につきまして、今事務当局から聞きますと、コンプレッサー室から四十メートルだそうであります。四百メートルというのは、間違いだそうであります。それはいずれにいたしましても、合理化ということに走って、合理化々々々でやって、その保安上の手抜かりがあって災害をこうむるということになると、これは元も子もない——と言うのは極端かもしれませんが、大へんなことでございますから、私は、やはり炭鉱保安ということは、ちっともゆるがせにできない、これはますます強くしていかなければならぬというくらいに考えておるわけであります。だから、無理に人を整理するとか何とかいうことは、それは合理化じゃございませんので、私はその点は、監督その他におきましても、十分注意していきたいと思っております。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 今の問題、局長どうですか。四十メートルじゃないでしょう。上清は四十メートルですが、大辻は何メートルですか。二つあるのですよ。
  34. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 ポンプとの距離は四十メートルでございます。ただいまのお話でありますが、大辻の場合二つございます。ポンプは、もちろん二台ございますが、大辻のポンプは、御承知と思いますが、自動運転になっております。従いまして、全くオートマティックに動きますので、通常は人間は要らないわけであります。そこで、山側はどういうふうに考えておりましたか、コンプレッサー室は単独についておって、ポンプももちろん別についておったと思います。それが自動運転になりまして、一人で両方見られるという観点に立って兼務になったのじゃないか、かように考えておりますが、ただいまのお話関連しまして、機械、電気、そういった係員が、だんだん兼務の数がふえてきておるということは事実でありますので、今後そういった管理面の、手薄にならぬように十分見て参りたい、こう考えております。
  35. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私たちが、大辻で経営者にお聞きいたしましたところでは、そのコンプレッサー室と二つのポンプ座を受け持っている人は、巡視にかかって、大体一時間半目にまたコンプレッサー室に帰ってくるそうです。それは経営者から聞いたのですから、大体間違いがないが、こういう状態です。  そこで現在の合理化というのは、なるほど名前は合理化というのは何も保安施設の軽視ではありません、ありませんけれども、現実はやはり保安施設に手を抜いておる、そして直接採炭を やるところに重点を置いておる、こういうことは否定できない事実だろうと思うのです。  そこで私はこの際総理にお聞きいたしたいのは、政府としてこれらの保安施設に対してどういう援助をされるつもりであるか。今度の上清炭鉱につきましても、なるほど発火をしたということがまた問題でありますと同時に、あの程度の発火で七十一名も全員の死者を出さなくても済んだのではないか、あるいは坑道が人が通ることが自由であるならば、それだけの大きな被害を起こさなくてもよかったのではないか、こういう点が考えられるわけです。そこで政府としては一体どういうような処置考えておられるか。具体的に言うならば融資はどういうようにお考えであるか、予算はどういうようにお考えであるか、これをお聞かせ願いたい。
  36. 池田勇人

    ○池田(勇)国務大臣 鉱山保安の重要性は認めております。従いまして今回のような事件が起こりますにつきましては、政府としては今までの心がまえ以上の心がまえでいかなければならぬ。私は昨年通産大臣をしておりましたときに、たびたび火薬爆発が起こりまして非常に迷惑をかけたのであります。従いまして予算におきましても大きい火薬処理場はもちろん、花火程度のものにつきましても政府が特別の補助をして、そして災害が起こりましても、よそに非常な影響を及ぼさないような防弾といいましょうか、防火の措置をとるように言っておったのでございます。たぶん予算も認められたと思います。従いまして炭鉱の問題につきましては私はしろうとでございますが、保安のことにつきましては専門的なことが要りますから、保安官の増員はもちろん考えなければなりません。そして法制上の改正も必要でございましょう。それからまた鉱業権者保安官との間において摩擦の起こらないようなことも、指定しなければいきますまい。そしてまた金融的にどのくらいな低利の金にするか、総額はどのくらいになるか、それから低利だけで済むか、あるいは低利だけで済まぬ場合があるのじゃないかというようなことにつきましては、その炭鉱自体で早急に調べて、ずっと積み上げていかなければいかぬ、また将来非能率でやめなければならぬというふうなものについての融資とか低利とか、そして補助の問題等も多々あると思います。早急に検討するように関係各省に私は言っておるのでございます。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理からかなり積極的な援助の方法が具体的に示されたわけですが、私は総理がお話しになりましたように、低利融資だけでは解決できないだろう、こういうように考えます。火薬の場合に補助金が出されたならば、やはり救命具等は少なくとも何らか援助をやりませんと、大辻といいますとかなり大きな炭鉱であります。それに救命具が六つしかない、その救命具も十分な性能を持っていないのです。ですから所長以下あれだけの幹部が入りましたけれども、マスクをつけないで入っておる。これは単に軽率であっただけではなくて、やはり器具がなかったということに起因していると思うのです。ですからこれらの点についても十分補助を考えていただきたい。それから訓練につきましてもやはり十分な訓練がされていない、そうして定期的に救護隊の訓練が十分なされ、その整備がなされておったならば、もう少しすみやかな処置ができたのではないかという点もありますので、そういった点についてもお願いをいたしたいと思うのです。  それから総理から、保安施設の改善がなかなか困難であるような場合には、これは何らか救済措置をそういう炭鉱にしなければならぬというお話がありましたが、これは従来の合理化整備事業団で買い上げている買い上げのほかの意味ですか、その点ちょっとお聞かせ願いたい。
  38. 池田勇人

    ○池田(勇)国務大臣 これは買い上げにきまっている炭鉱にいたしましてもそれまでの問題とか、あるいはまたきまっていない中小炭鉱におきまして、設備の不備とかいうような点につきましては考えなければいかぬと思います。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 問題は具体的になりますので御承知ないかと思いますが、賢い上げにはかなりの条件があるわけです。埋蔵炭量その他の条件があります。ですから保安施設の整備が困難であるから、必ずしも今の合理化事業団の買い上げの対象になるかどうかわからない炭鉱がかなりある。そこで問題は保安監督行政の強化によって、やめてもらわなければ人命に影響があるという場合には、これは政府として急施をしなければならぬ。その場合の救済処置が一体考えられるかどうか、これを考えていただかないと群小の炭鉱は救われない、その労働者は非常に困るのじゃないかと考えるわけですが、これを一つ関係大臣でもけっこうですからお聞かせ願いたい。
  40. 池田勇人

    ○池田(勇)国務大臣 それは具体的な問題でございまして、今後保安という点につきましては、新しい保安を非常に重要視することになってきますと、保安が大事か、あるいは鉱業権者の利益確保が大事か、いろいろな点から新しい問題として考えなければならぬ問題だと思います。
  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この点私は新しい問題として、この際積極的に考えていただかないと、万全の対策にならないと思うわけです。ですからいわば中の下以上くらいの炭鉱は救われるかもしれませんけれども、それ以下の炭鉱は救われない、ただつぶせばいいという問題ではないだろう、ですからこの処置一つ新しい問題として解決していただきたいと思うわけです。  続いて私は離職者対策をお願い申し上げたいと思うのですが、離職者対策は現在筑豊におきましてはきわめて不思議な現象が起こっているわけです。それは公共事業の賃金が緊就よりも一般日雇い労働者よりも低いという状態、これは全国まれに見る現象です。それはなぜかといいますと、緊就にワクがある。政府はワクがないとおっしゃるかもしれませんけれども、自治体が持てない、仕事がない、予算単価が低いということで、おのずから制限をされて緊就に行ける労働者はまだ幸いであるということになっておる。では一般失対に行けるかというと、一般失対は世帯主でないといけませんからこれに漏れてくる。これが公共事業に行く。そこで公共事業の賃金が一番安いという珍現象が起こっているわけです。これを一体どういうようにお考えであるのか、ですから積極的な失対事業を起こさないとこの悪循環を繰り返しておる、かように思う。そこで中小炭鉱の現在最も零細の炭鉱の賃金は、緊就なんかよりも安いという現象が起こっておる。ですからこの点を一つ総合的に総理はどういうようにお考えであるのか、これをお聞かせ願いたい。
  42. 池田勇人

    ○池田(勇)国務大臣 具体的な問題はよくわかりませんから関係大臣から……。
  43. 石田博英

    ○石田国務大臣 直接には通産大臣の所管に属することもあると思いますけれども、今政府関係各省が集まりまして、災害防止に関する連絡会議を開催中でございます。その会議に私どもの方も参加をいたしておりますので、その立場から今多賀谷さんの御質問にお答えを申し上げてみたいと存じます。  これは単に中小炭鉱ばかりではなく、他の企業の安全施設も含むのでありますが、一般的に低利融資を行ないたいということが一つであります。これはだんだん話が煮詰まって参っております  それからもう一つは、どういう具体的な重点の方法をとるかということになりますと、やはり具体的には、人命に影響あるものとないもの——安全監督にしても保安監督にしても、たくさん要請しておるものを一般的にやるということよりは、もう少し整理して、人命に関係があるものに重点を置くという取り扱い方をしていく必要がなかろうかと存じます。そういうような監督上の整理に伴って、さらに中小炭鉱などの場合は、今お話しのように、お金を借りられない、また借りても早晩売るんですから、売った代価から差し引かれるようなものは貸さないというような状態の場合には、今の制度以上に整理いたしまして、保安施設ができないものについては、やはりもっと現実的な処理を行ない得るようにしなければならぬというような観点から、話がだんだん煮詰まっておるのでございます。  そこで、そういうふうにしたあとで、出て参りました失業者をどうするのだという問題。今福岡県におきまする緊就の実態は、私も実情を正確に承知しておるわけではございませんけれども、あの地域におきまする殺到率の関係を見てみますると、私は、やはりそういうこともあり得るのじゃないかと存じます。特に田川、嘉穂というような地域に対しましては、一般的な労働力の流動性を確保するという雇用促進事業団を中心とする構想だけでは——言いかえると、仕事のある、雇用の非常に伸びておるところへ動かすだけという政策では処理できないものが多いのではないか。やはり人間でございますから、地域的定着性というものを一がいに無視はできないのでございますので、そういうことを加味して、同時にその数をあわせて考えますときには、やはりそういう地域に対しまする集中的な総合施策を急速に行なう必要があるのではないか、こういう観点から、別途に通産省と目下連絡をとりまして、幸い通産省の方では石炭の産炭地関係その他のための調査費もついておるようでありまするので、早急に具体案を考究いたしまして、一方において労働力の流動性を確保いたします諸般の施策を行ないますと同時に、他面において、当該地における集中的な産業開発事業の計画を立てまして、当該地において雇用を増大していくということが、どうしても必要であろうと考えておる次第でございます。
  44. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は産炭地域振興のための法律が、政府から出されるということをかねがね聞いておるのですが、さっぱり姿を現わさないわけです。一体いつごろ国会に提案をされるのか、これを一つお聞かせ願いたい。
  45. 石田博英

    ○石田国務大臣 私の所管ではございませんが、国務大臣としてお答えをいたします。先ほども申しましたように、産炭地に対しまして集中的な産業条件の整備を行なって、そうして当該地において離職者を大量に吸収するという方法が必要でございます。そこで、ただいま法案の準備も進行中でございます。今国会に間に合って出せるか出せないかということを、今まだ申し上げられる段階ではないそうであります。しかし、これは非常に急ぐ問題でありますので、早急に関係省との連絡を早めまして、実現いたしたいと存じております。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理大臣、その産炭地域振興法案が出るということを、われわれ期待しておるのですが、この国会に間に合うかどうかわからないということでは非常に、残念に思うわけです。総理大臣、一体どういうふうにお考えですか。総理の責任でこの国会に出してもらいたい。
  47. 池田勇人

    ○池田(勇)国務大臣 私は、特殊事情で非常に困っているというようなところにつきましては、法律のあるなしにかかわらず、いろいろな行政的措置をすべきだと考えております。ただ、産炭地というものは従来からいろいろ問題がございまして、御承知通り石炭鉱業合理化臨時措置法等々にも出し、あるいは労働関係でいろいろな手を尽しておりますが、通産省でどういう施策を持っておるか、多分そういうことは考えていると思いますが、まだ閣議にはかかっておりませんし、また、施行いたすにつきまして、今すぐやるとしたらどういうネックがあるか等々につきまして検討いたしておると思いますが、ただいまこの程度以上に私からはお答えをする材料を持っていないのであります。
  48. 始関伊平

    始関政府委員 産炭地域振興の法案につきましては、自民党の政調の中に特別の委員会を置きまして審議が進んでおります。関係各省との打ち合わせもだんだん進んでおりますので、ぜひ本国会に提出したいという意向を持って、ただいま準備しております。
  49. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私たちは本国会に提出されるものと期待をしておきたいと思います。  次に、総理から総括的にお聞かせ願いたいのですが、遺族の援護の問題です。総理は、遺家族の援護には遺憾なきを期したいというお話をされておりましたが、具体的にどうなのか。私が具体的に例をあげますと、実は労働基準法によって遺族補償は千円ということになっている。これは御存じのように昭和二十二年からなっているわけです。ところが、昭和二十二年、戦後の千日といいますれば、確かに遺家族の方々も、もらった場合、他の人々は退職金もあまりない時代ですから、これだけもらえればがまんできるという時代でした。ところが今日、賃金は後払いの形、期末手当という形で払われている。あるいは退職金という形で賃金が払われるようになってきたわけです。そこで、月々に払われる賃金あるいは日々に払われる賃金よりも、労働組合としては、あるいは退職後の問題であるとか、あるいは期末の問題にかなり重点を置いて闘争も始めてきた、こういう事情もありまして、後払い賃金が非常に大きなウエートを占めるようになりました。そこで、現在千日分、これは年に直すと二・八年ですが、非常に少ない金額になるわけです。これを改正される必要があると思うのですが、これを一つお聞かせ願いたい。
  50. 池田勇人

    ○池田(勇)国務大臣 お話通り、以前に千日分ときまっており、そして賃金の支払い方法も変わっている。私は、こういう問題につきまして労働大臣その他に御検討を願っておるのであります。災害を防止すると同時に、災害が起こった場合につきましての救済策、これも六十五万円か七十万円くらいになるでしょうが、一度にやるとすぐ使ってしまうとかいうふうななにもありますので、この問題につきましては、十分関係省で検討するように指示いたしたいと思います。
  51. 石田博英

    ○石田国務大臣 遺族給付、遺族の生活の安全を保障するという問題でありますが、ただいまは御存じのように一時金で千日分でございます。しかし、諸外国が年金制を大体とっておることも承知いたしております。そこで災害の責任と申しますか、災害で死亡した人のあとの処理でありますが、わが国では災害の責任を個別業者の責任という建前から、今のような制度になっておるわけでありまして、年金等の問題は厚生年金その他で考えるというのが現在の状態であります。しかしすべての人が厚生年金に入っておるわけのものでもないわけでありまして、外国のように保険自体として年金制を加味していく方法を、これは当然研究していかなければならぬ問題だと思っております。ただこれは社会保障全体の調整というものを、今政府考えておりまして、それを社会保障審議会に御検討を願いつつあるわけなのでありますので、いろいろな他の関連とあわせてこういう問題を処理して参りたいと思います。ただ事実問題といたしましては、六十五万円程度のもので、しかも管理能力とでも申しましょうか、そういうものが低い遺族が、あとの生活を保ち、かつ子女の育英に充てるということが非常に困難でございますことはよくわかっておりますので、外国の事例等を参考といたしまして、社会保障全体調整の途次に、これを処理して参りたいと考えております。
  52. 五島虎雄

    ○五島委員 総理もすぐこれから社労の方に行かれなければならない、時間がないそうですから、関連して簡単に質問をしておきたいと思うのです。  私も大辻炭礦の調査に同僚諸君と参りましたけれども、ちょうどその日に椎名通産大臣も現地を視察されました。地元の新聞等々では、学者等と対談されたりなどして、椎名大臣が感ずるところは、やはり石炭合理化政策は、生産に重点を置くということではなくて、人命尊重に第一義を置かなければならないであろうということを新聞に発表されておったわけです。いろいろ現地について調査をいたしましたけれども、その点については、やはり石炭合理化の線に沿う生産第一義が、保安行政の手薄になるのじゃないか、こういうように私たちは大きい認識を持って帰ってきたわけです。現地石炭関係の管理の方たちといろいろ話をしましたけれども、その石炭合理化の問題については、三十八年度まで千二百円のコスト・ダウンで、その目標によって合理化を行なうんだ、そこで業者諸君は、現在一生懸命掘れば売れる石炭であるから、どんどん掘っていくんだということです。ところがその経営の将来の目標は、千二百円コスト・ダウンの問題に重点を置いて、そうして保安行政等々には手をゆるがせにしておるのじゃないか、こういうようなことです。事実はその千二百円コスト・ダウンがどこからきているかというと、重油との関係の中から、千二百円コスト・ダウンをしなければ石炭産業がやっていけないというようなことから、十万か十二万人が人員整理の目標になってきた。ところが今や重油はますます値下げをしておる。そうすると、石炭が千二百円コスト・ダウンをするということが、だんだんまた不つり合いになってきて、不均衡になりつつあるのじゃないか、これを千八百円程度まで値下げをしなければ、石炭産業はやっていけないのじゃないか、維持できていかないのじゃないか、こういうような傾向があるということです。これが確かにあるのかないのか。そうすると、千八百円程度コスト・ダウンということになると、千二百円から五〇%なおコスト・ダウンしなければならない。今でも保安行政に手が回らないというような現状の中に、千八百円のコスト・ダウンになった場合、千八百円コスト・ダウンしてもやっていける鉱山があるのかどうか。そうしてまた中小零細企業の炭鉱は、これに追いついていくのかどうか。こういうようなことになると、ひいては十二万人の人員整理から、もっともっと人員整理しなければやっていけない、こういうようなことになる場合は、いよいよ災害の続発というようなことになるのじゃないかと思われるわけです。この点について総理はどういうようにお思いになりますか。  それからもう一つは、昨年の十一月二十五日ですか、労働省から通産省に対して保安の問題について勧告が出ました。これは、まだ二回くらいしか労働省から勧告が出ていない。その勧告を見ると、災害の発生の防止のために重点を注ぐようにというように勧告が行なわれておる。そうすると、これに対して通産省は、それを受けてどういうような対策を行なわれたのかどうか、これは通産大臣がおられぬから政務次官でけっこうです。総理と政務次官にお願いします。
  53. 池田勇人

    ○池田(勇)国務大臣 三十八年度を目標にいたしまして千二百円というのは一応の見込みでございます。そのために保安をないがしろにするようなことは絶対によくないと考えております。三十八年までに千二百円できるかできないか、やってもまた重油との関係でどうかという問題は残るわけであります。この問題につきましては、将来の推移を見ながら適当な処置をとらなければ、今どういうことをやりますと言っても、まだ先のことでございまするから、三十八年度からは重油専焼を認めておりまするが、そのときに、やはり重油専焼は既定通りでいくか、そうしてその場合におきましては、重油が下がったのに対しまして、ドイツのような重油の関税引き上げでいくか、あるいは合理化をどの程度にしていくか、いろいろな問題があると思いまするが、これは今ここで私は総理としてお答えすることは、少し早過ぎると思います。しかしいろいろな点は十分検討して善処したいと思っております。
  54. 小林進

    ○小林(進)委員 関連して時間がありませんからほんの一言お伺いします。  私も国会の命令で上清炭鉱災害の視察に行って参りました。視察に行って参りました者の総点を代表して御質問するわけであります。現状のままではとても炭鉱災害は永遠に防止できない、こういう結論を持って参りました。その結論は、大別いたしますとこの三つであります。それは、鉱山保安法という現状法律の上において一つ欠陥がある。第三番目は、この法律を運営する技術の面において一つ欠陥がある。それから第三番目には、いわゆる管轄の問題と申しましょうか、現在の監督行政を分担をいたしておりまする通産省のもとでは、労働者の権利というもの、生命の安全というものはとうてい保障できないのではないか、こういう三つの結論を私どもは持ってきたのでありまするが、この現在の鉱山保安法そのままの現状で、この危害が防止できると一体総理はお考えになっておるかどうか。  第二番目は、保安法三十七条に、「鉱務監督官は、」云々といって、何か警察員としての職務を行なうというような規定がありまするけれども、事実面においては効力が発生しておりません。たとえて言えば、行政処分したところで、鉱山経営者は、それはごめんこうむります、何と言われてもわれわれはこの危険を冒しても穴を掘らなければならぬと言ってその事業を継続しておる場合には、強硬にそれを止め得るような行政的な力がない、こういう欠陥がありまするが、この事実の上における欠陥を、一体総理はどういうふうにお考えになっておるか。  第三番目は、やはり一つの鉱山行政の中にあって、何とか石炭産業を育成していこうという、そういう面に比重がかかる。その監督官庁がそこに働いている労働者の生命やその生活を守ろう、危害を防止しようとするのは、二律背反の形になってうまくいかないのではないか。鉱山保安法の第五十四条には「労働大臣は、鉱山における危害の防止に関し、通商産業大臣に勧告することができる。」、こういうように労働大臣のわずかな監督権を勧告の形で認めておりますが、こんなことで一体ほんとに生命の安全が保たれるかどうか。  以上三つについて、私は総理大臣の御回答をお願いしたいのでありますが、ここで満足な回答を得ませんければ、また日を改めて伺いたいと思います。
  55. 池田勇人

    ○池田(勇)国務大臣 三点のうち、第一、第二の点は先ほど多賀谷君、その他の方についてお答え申し上げたのであります。こういうふうに災害が続発しますにつきましては、保安法につきましても検討を加えなければならぬし、また法律ができましても、鉱業権者監督する人との間の問題、実力の問題と運営の方法の問題等検討しなければならぬ、こう答えたので、これは繰り返して申し上げません。  なお第三の問題は、これは従来からもいろいろ論議されたのであります。先ほどお読みになったように、労働大臣が勧告をし、そうして不備のないようにする規定になっております。だといって、炭鉱保安というものは採掘権と非常に関係のある問題でありますので、今すぐにこれを労働省の方に移すということになりましても、よほどまた不便な点が起こってくると思います。炭鉱の全般と労働の全般を考えて、私はもう少し研究してみたいということであるのであります。
  56. 岡田利春

    岡田(利)委員 労働大臣にお伺いしたいのですが、今小林委員からも覆われたように、五十四条によると、通産大臣に対して労働大臣は炭鉱保安について勧告ができる、このように明らかにされておるわけです。最近の炭鉱災害が続発しておる中で、まず具体的にどういう勧告が行なわれているかということをお伺いしたいわけです。特に問題は現在の保安法炭鉱の事業内に保安法が及ばないところがあるわけです。たとえば福利施設関係等の配給所、その他の安全管理については労働省所管、あるいはまた系列の若干関係ある修理工場等については保安法の適用を受ける。同じ炭鉱の事業地域内でも労働省、通産省の所管別があるわけです。ところが、現地の基準監督局長の意見を聞きますと、少なくとも坑外関係については、工程だけは保安法保安規則の適用を受けて、工程以外については、むしろその方の専門家は基準局の方に多いのであるから、その面についてはやはり基準局の所管にすべきである、こういう積極的な意見を現地の基準局長は持っておられます。こういう点について労働大臣として検討されておるとするならば、お考え伺いたいと思います。
  57. 石田博英

    ○石田国務大臣 今まで労働大臣の勧告権を行使したことは二度ございます。三十二年の九月と昨年であると記憶しておるわけでありますか、その結果通産省と協議いたしまして、たとえば坑内の警報設備の完備その他通風などいろいろな点で、順次改良は見られていると承知しております。しかしこの具体的内容は通産省の方からお聞きしていただきたいと存じます。  それから第二の問題、これはさっきの小林君の御質問にもあったことでございますが、これは非常にむずかしい問題と経緯をはらんでおるわけであります。これは決して私皮肉で言うことではございませんが、実は労働省所管から通産省所管に移りましたのは、社会党内閣の……(「違う違う」「初めから労働省は一回もない」と呼ぶ者あり)最初に持っておったのです、戦後は。(「持ったことはない」と呼ぶ者あり)それは、あるいは私の記憶違いかもしれませんが、社会党内閣のときに移ったように思います。それは私の記憶違いかもしれません。記憶違いとすれば取り消しておきますが、これは一言にして言えば、技術上の問題が非常に多い。特に技術者のいろいろ人事上の問題もございます。ただ、今、岡田さんの御発言の中にありましたように、所管の整理をするという問題は、これは十分研究に値することだろうと存じます。現地の意見をさらにもっと具体的に聞きまして、そして検討を加えていきたいと思います。
  58. 大矢省三

    ○大矢委員 今の問題、私は特に大臣に聞きたかったのです。大臣は忙しいそうだから、あなたに今後の問題、一つ十分考慮願いたいことは、あれは芦田内閣のときでしたが、その当時、当然、山の保安人間が中心だ。そうして、人を第一義に考えなければならぬ。そうすればどうしても労働省にいかなければならぬということで、労働省にいくということにほとんどきまりかけた。ところが通産省の方で横やりを入れて、そのときはどういうことを言ったかというと、第一に、山の保安というものは、もちろん人間本位だが、資材の問題を考えなくてはできないのだ。坑木が足らぬ、あるいはポンプが足らぬ、モーターが足らぬ。これは一体労働省で確保できるか、こういうことになると、どうしたってこれは切り離すことはできないということで、とうとう暫定的にしからばそうしておこう、しかしながら監督官だけは通産省でなくして労働省と一緒になってやる。つまり別個な一つの機関を設けろということもいろいろ議論があった。私は聖なる災害について、この機会に抜本的に考えてもらいたいことは、幾ら金をかけてわれわれは大いに安全の監督をしてやろう、金も貸し、監督も厳重にして、今後繰り返さないようにすると言っておるが、利潤を追求する生産機構において、どんなことをしたって、結局は金を貸す方は生産を高めて利益を追求するということは当然なんです。これはとうてい望み得ないことです、できないことなんです。  そこで、また元に戻るようですが、この機会に抜本的な一つの機構改革、あくまでも人間を中心とする、人を対象として保安を守らなければならぬ。結局所管は労働省に置くということを、この際に思い切ってやらなければならぬ。  それから技術者が足らぬというけれども保安の技術者はある。現実に通産省にたくさんいるのだから、それをやってもっと完備したものをやればいい。それから第一、ただ監督や、金を貸すというだけではだめなんです。これは燃料確保で、石炭はガソリンと同様重要な役割をなしておるのだから、国家の至上命令です。国家の至上命令だからして、計画生産というものにちゃんと国も一部責任を持たなければいけない。ただ命令なんといってもできぬから、金は貸してやる。あるいは廃鉱の山は買い上げる。これは鉱山の方のことでありますが、われわれもこの間見に行ったが、乱掘、盗掘である。金をかけさえすれば、あの外部のところにエア・ポンプが置けるのである。これはほんとうは外に置くものであるのに、外に置いておかぬから、あのように重なって災害が起こる。だからして根本的なことは、これは命令だけではどうにもならぬ。私が今労働大臣にお伺いしたいことは、これを契機として、こういう重要産業に対する国家の発言権をもっと強くして、監督権をもっと強化し、統一した個所に持っていって、何といってもこれは労働省の所管であるという立場に立って、その欠陥などについては技術者その他また十分に考えるべきである。どっちつかずのままいるから、お互いに責任を回避したり、何か事故が出たときに、これは不可抗力だとか、盗掘のためだとかいって、結局結論がわからずじまいになってしまう。そこで、前から問題になっておりますこういうことについて、ぜひ抜本的な責任を持っていただかないと——こういう重要な産業については、もっと国が発言権すなわち監督権を持っていただきたい。これは何も国営にするというのではない。一つ十分に現実に合うようにこの問題に取り組んでもらわなければ、何ぼ言っても繰り返すのです。私はそのことを断言しておきます。今までの質問の中にもずいぶんありましたけれども、何だかあいまいな答弁で逃げている。しかしどうぞその点では思い切って抜本的な施策をせられるようお願いしておきます。
  59. 石田博英

    ○石田国務大臣 私の記憶違いで、芦田内閣のときに現在の機構が本ぎまりになりましたのを、私は従来労働省にあたったものが通産省に移ったというふうに誤解しておりました。しかし今大矢さんがおっしゃったように、そのときの事情が物の面、あるいは物を獲得するという面におもな理由があったとすれば、それは事情が非常に違って参っておるわけでございます。その当時の事情その他をさらに検討を加えてみたいと存じておる次第であります。
  60. 岡田利春

    岡田(利)委員 労働大臣にもう一点だけお伺いしたいのですが、今回の上清の場合は、現地の基準監督局長の名前で、災害者の死体解剖について医師に要請をしておるわけです。ところが医師は死体解剖を行なっていない。わずかに採血をして、その採血した血もどこに行ったか、最後は不明になったという状態です。上清災害は間接的に七十一名が死亡しなければならなかった。ですから坑内火災が発生してから何時間生きておったかということは、今後の対策からいっても、あるいは将来、一体業務上の過失致死なのか、あるいは施設欠陥があってこうなったのか、いろいろ検討する場合に大きな問題だと思うのです。ところがそういう処置を全然とっていないということは、私は非常に遺憾であるし、将来問題ではないかと思うわけなんです。こういう場合には、遺族の了解を求めなければなりませんけれども、当然七十一名の中に選択をして——災害後一体いつ死亡したのか、火災直後三時間も生きておった、あるいは二時間も生きておった、こういう想定が立つわけなんですが、死亡時間がはっきり確認されていないわけですね。そういうわけで、労災の最終的な判断の場合に非常に大きな問題点を残しておるのではないか。私はやはり炭鉱の重大災害の場合には、少なくとも死体解剖をして、一体いつ死亡しておるのか、その死亡をした原因は何であるかということを医学的に明確に確かめておくことが必要ではないかと考えるのです。こういう点については常に下部に指示を出しておるのですか。  時間がありませんからもう一つ重ねてお伺いしたいのですが、豊州炭鉱の水没者の遺体収容がいまだにできない。これを放棄しなければならないということが、最近明らかになってきたわけです。遺体放棄の場合には相当の時間を要するわけなんですが、遺族の救済の問題については、経営者だけで満足な救済ができないということで、人心が非常に不安定であるし、生活上重大な脅威を与えておるわけです。しかも遺体収容ができないという場合には、現地にくぎづけされておるわけですから、海難事故とは違って陸地内の遺体収容ができないという問題なので、国としても適当な立法措置を講ずるなり、適当な救済措置を講ずるなり、積極的に考えるべきではないかと考えるのですが、この二点について御答弁願いたい。
  61. 石田博英

    ○石田国務大臣 上清炭鉱の犠牲者の死因を調査いたしますために、現地の基準局長が解剖を要請したことは、実は私今初めて伺ったので、正確な報告を受けていないのでありますが、そういう具体的な問題は別といたしまして、お説の通り死因、死亡時期というようなものを確実に承知をしておくということは、これは労災保険の取り扱いというふうな問題ではなくして、さらに事故を未然に防ぐ参考資料として、ぜひ必要なことであろうと存じております。やはりそういうものの手段を尽すようにいたさなければならないと存じておる次第であります。  それから後段の問題でありますが、国の力としていたさなければならぬのは労災保険の支払いであります。これは実はただいままで遺族の方々から請求がないのであります。請求があればいつでも全額支払うという準備をいたしておる次第であります。
  62. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の聞いておるのは、もちろん請求があった場合の支払いはされるわけでありますが、問題は遺体収容の場合で、前に八幡市であった小倉炭鉱の遺体収容のできない場合には一年半かかっておるわけです。今度の場合も昨年の九月ですから相当の期間が経過しておるわけです。そういたしますと経営者が十二分な生活補償ができない、家族は重大な生活不安を感じておる。遺族補償を請求して、もらっても、遺体収容が絶望であるかどうかはっきりするまでに、食いつぶしてしまうということになると、遺族の更生はできないわけですね。そういう場合にはやはり積極的に新たな観点からそういう点について生活補償を、経営者ができない場合には、国の施策によってある程度解決するということを検討しなければならぬのではなかろうか、このように考えるわけですが、その点の考え方をお聞きしたい。
  63. 石田博英

    ○石田国務大臣 死亡の確認の問題と、それに非常に時間が要りますから、その間の遺族の救助の問題、これが二点あるわけでございますが、前段の問題は適当な時期に、他のあるいは警察署長の証明とかなんとかいう方法で処理ができると思います。また早くしたいと思います。  後段の場合でございますが、これはやはり原則的には個別の業者の責任でございます。そして支払われなかったらという場合をもし想定いたしますと、責任をのがれるケースが非常に多くなってくる場合があるのではないかとも考えるわけであります。ただ現実的に遺族の将来の保障と申しますか、遺族の将来の生活あるいは子女の育英というものの基礎になるように、保険金が有効に使われるように、現実的な処置としての指導をいたしたいと考えております。こういう場合先ほども多賀谷君からの御議論もありました通り、諸外国のように個別業主の責任は責任としましても、保険制度でこれを処理するという方法は、やはり単に炭鉱災害だけでなく研究をしなければならぬ問題だと思っておる次第であります。
  64. 岡田利春

    岡田(利)委員 たとえば会社の責めによる事故が発生して就業ができない場合には、基準法では八〇%の平均賃金を補償する、こういう問題があるわけです。しかし災害の大きなものは会社の責任か不可抗力かというような問題で、そういう定めがないわけです。ですから豊州炭鉱の場合には、最近になって六〇%の賃金を貸付にしておるというような現状なんです。生活補償していないわけです。まして遺族の場合についても同様なわけです。普通会社が自分の責任による災害があって休業しなければならぬときには、基準法で八〇%の賃金を補償する、こういう義務づけがあるわけですね。そうするとこういう災害は非常に多く発生して参りますと、基準法上生活保障をはっきり明示をする必要があるのじゃなかろうか。そうしなければ、遺族が、たとえば豊州の場合にもし遺体を収容するとすれば、おそらく今後さらに一年半かかるだろうと言われるわけです。それまで遺族が里に帰るとか、あるいはよそに行くということは不可能な問題なんですね。そうするとその間現地におるわけなんですから、その生活はやはり考えなければならぬ。それが個別の企業家が責任を負うとすれば、それもやはり一体平均賃金の何パーセントを補償しなければならぬとか、そういう義務づけを明確にするような検討をすみやかにしなければいかぬのじゃなかろうか、このように考えるわけなんですが、いかがでしょうか。
  65. 石田博英

    ○石田国務大臣 今の御説のように死体が確認されない、その間その人の身分というものの問題がありますし、また今回のように事業が実質問題として継続的に行なわれないという問題がございます。そういう場合の規定は、もう少し具体的にしておく必要があるという御議論は、私も同感でございます。これは検討してみたいと存じます。
  66. 小林進

    ○小林(進)委員 関連して。今の労災の問題、僕はちょっとうっかりしておりましたが、これは鉱業権者に責任がある場合の質問をしましたか。責任のある場合には労災保険の給付が制限をされる、そのために遺族が非常に困っているわけですが、こういう問題について労働大臣は一体どうお考えになっておりますか。
  67. 石田博英

    ○石田国務大臣 これは責任の所在が明確になれば、鉱業権者の責任であることがはっきりすれば、半額は鉱業権者が払わなければならない。従ってそれが明確にならない間は全額払えないという問題が出て参ります。しかし現実の処置といたしましては、豊州炭鉱の場合は現実に御請求があれば全額払う準備を行政的な措置としていたしているわけであります。そのほかの場合にもそういう現実的な処置をしたい。そうでなくても少ないものが半分ですとぼちぼちなくなってしまうが、まとまれば、まとまって使える方法があるわけであります。ただこれは実際上の問題といたしまして会社側が確認されるまでの間、給付をある程度、さっきのお話のように六〇%しておる。そうするとそれとの関係があって、措置がそう機械的にきちんといかない場合も、これは私の方の都合でなくてあり得るということを御了解いただきたいと思います。
  68. 小林進

    ○小林(進)委員 今の上清の場合も六〇%ずつ支払っているのですが、大臣のおっしゃる六〇%ずつ支払っているので事実の面において困難がある、差しつかえがあるというのですか、それはどういうことなのでございましょうか。
  69. 中川俊思

    中川委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  70. 中川俊思

    中川委員長 速記を始めて下さい。
  71. 岡田利春

    岡田(利)委員 今の問題と関連して、これは九州の中小炭鉱の場合の例なのですが、会社の責めに帰するような災害のために人が死ぬ、ところが会社は中小炭鉱のために、あとから会社側に請求するといっても非常に困難で、また会社としても支払いが延び延びになる、こういう実例が実は出ておるわけです。そうしますと遺族が保安監督部に対して陳情に来るわけです。これは会社の責めにしてもらうと労災保険がもらえない、会社は今賃金の遅配でそれどころではない、極端なところでは遺族補償を会社がさらに借り受けて事業資金に使っておる、こういう実例も中小炭鉱にはあるわけなのです。遺族の補償をするという建前に立てば、一応労災保険は遺族に一〇〇%渡す、ただし会社の責めに属する場合には今度半額なら半額をとるということになれば、遺族の補償は完全にできるわけなのですわ。そういう点についてはやはり現実の問題として、私は遺族を保護するという面から検討する価値があるのじゃないかと思うのですが、どのように考えますか。
  72. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいまの労災補償の支給と会社の責任の問題でございますが、私どもはやはり会社の責任は責任として明らかにすべきものと思います。これは単に労災保険の関係のみならず、その他にも関連する問題でありますから、責任の所在は明らかにすべきである。ただしそうなりますと、労災保険の方から半額出まして、あとは事業者の負担となる。事業者の負担分がはたして払えるかどうかという問題が心配になるわけです。その辺の問題につきましては、私どもといたしましては、事実問題として、それが全額御遺族の手に渡るように万全の努力をいたしたい、かように考えております。
  73. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私は通産大臣にお尋ねしたいのですが、上清なり大辻なりの炭鉱に、終戦後園がどれだけの助力、助成をやってきておるか、それからこれまでその炭鉱の経理は相当黒字を見た場合もあるのだろうが、その経理関係は一体どうなっておるか。その黒字を見たときには配当なり何なりになっているだろうと思うのですが、そういう国の助力を得たり、あるいはいいときには黒字経営をずっとやってきておきながら、今このように人間を殺す。私はあの新聞を見て非常に憤りを感じ、今もってそれが消えない。この点に関してはやはり資料を一つ出してもらいたい。福岡の通産省の出張出先では十分にどれだけの助成、助力をしておるかということがわかるでしょう。その資料を一つ出してもらいたいということ、そしてわれわれの道義的な責任追及の立場からいうと、黒字経営になっておった時代の利益を取得した人々は、この遺族救済のためには、その時分に遡及して吐き出すべきだ、私はこういう考えを持つのです。そうして法規云々を越えた措置というのをやってもらわなければならない。そういう点に対する追及が不十分で、ただこれから低利融資だ、国の助力だ、こういうことだけに論議が進むということは、そのことが悪いというのではないけれども、もう少し私たちは企業責任、あるいは国が助力したらそれに対する国の責任、そういうものに対する厳正なる反省というものが先行しなければならぬじゃないか、こういう気持がするのです。この資料を一つ出してもらいたいと思う。私のそういう感情的に走るような意見でありまするが、これに対する通産大臣の見解はいかがですか。
  74. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 資料は一つなるべく御希望に沿うような資料ができると思いますから、作ってお出しいたします。炭鉱災害についてはまことに遺憾でございまして、今後十分にこの保安については力を尽くして参りたい。すでに一般的な問題については、この席に総理が臨まれましてお答えしたそうでございますから、私は重複を避けます。
  75. 西村力弥

    ○西村(力)委員 国が助力、助成して盛り立ててきた、そのあげくの果てにこれだけの人命の災害をもたらしたというようなことは、国としてもそこのところは強く反省がなされなければならぬ、私はそう思う。その資料を一つ出してもらいたいと思うのです。  それから次に小岩井保安局長にお聞きしたいのですが、私、新聞を見たときに、監督官の談話として、あまり厳正に保安監督をやると、身体上の危険を感ずるということとともに、身分上の不安を感ずる、こういう言葉がちらりとありました。身分上の不安を感ずるというのは一体どういうことか。すなわちそれはやはりそういう業態と政治勢力というものとのからみ合わせからくる圧力であるだろうと思う。そういうようなことはあり得べきことではないのだが、現実にはやはり監督を手抜きをやってもらえば、それだけ利益があるのですから、そういう利益を守るためにいろいろと不純なる関係が結ばれて、そこからそういう厳正に審査をしようとする監督賞の上に圧力が加わってくる、こうなってくるのではないか、こう私はあの新聞記事を見たときに思っておったのです。これは日本の政治の現状があの一言に表わされておるだろう、私はそう思って見たわけですが、この件に関しては保安局長は他に顧慮することなく、そういう発言があったということを、この新聞記事を見ないにしても肯定されるかどうか、いかがでございますか。
  76. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 ただいまの監督官監督をします場合に、十分にできないというよりもむしろ威圧を加えられて、場合によっては自分のポストもあぶなくなるというようなお話でございますが、監督に参りますときに威圧を加えられることは事実でございます。すでに新聞にも出ておりますように、何件かの例があがっております。必ずしもあの数だけとも思っておりません。しかし私も先ほどちょっと触れましたように、監督官が山となれ合いになるというような点につきましては、考えているほどのことは全然ないのであります。今までの監督のやり方と申しますのは、何日にどこへ行くということをすっかりきめておりまして、先ほども触れましたように、一度監督をしまして指摘をいたしますと、場合によりましては次の監督官が一カ月くらいですぐあと参ります。参りまして、いかなる点を指摘しそれがどうなっておるかということを必ずトレースさせております。従って前の監督官も自分の回りました巡回監督の成果というものにつきましては、相当の確信を持ってやりませんと、次に来る監督官にすっかり内容を見られるわけであります。それが一つと、監督をいたしますと、必ず山を巡回いたしました講評と申しますか、自分が回った結果を一体どんな程度になっておるかということにつきまして講評をすることにいたしております。そこで本人も相当入念に見て参りませんと、皆さんに納得のいくような講評ができないわけです。もちろん保安の非常に良好な山であれば比較的講評も楽であると申せますが、特に中小炭鉱になりますと、講評自体なかなかむずかしいわけであります。そういうようないろいろのチェック・システムをとっておりますので、自分だけが一回やったあと、だれも来ないというような環境でもございませんし、一たん坑内へ下がりますと、せっかく坑内へ下がって全然見ずに上がるということもとうてい考えられない。従ってまわりで見ているようなルーズな巡回はやっていない。私自身も長い間監督官生活をやりまして、そうルーズな監督はできないという確信を持っております。従いまして、特に山となれ合いになって、その監督をルーズにするという点は考えられないのではないか。もちろん完全に監督官がすべてその職責を百パーセント満足しているとは思いませんけれども、簡単に山となれ合い的にいろいろな摘発事項も隠すというようなことは私はないと考えております。さらに監督官自身のポストを厳格にやると脅かされるのではないかというような点につきましては、なおさら私どももそういった事例にぶつかったこともございませんし、またそういった点でポストをかえるとか、そういうことをいたしたこともございませんので、そういう点は御質問の御心配はないんじゃないか、かように考えております。
  77. 西村力弥

    ○西村(力)委員 山となれ合いとか、物理的な危害の不安とか、そういうことじゃなく、あの新聞記事だと身分上の不安というものは、政治的な圧迫ということになるわけです。そういうものがはしなくも談話に出てきたということ、それを完全にあなたは否定されるのか。しかしこのことは、局長、あなたが保安監督官の総元締めとして、やはり政治的な立場を離れてはっきり言わないと、あなたの部下の二百二十五名の監督官というものは、やはりそういう立場から解放されないということになりますので、そのような発言は、これはあり得べきでないというならば、ない、あるならば、あると、否定、肯定、その点はやはり勇気を持ってやらなければならぬじゃないか、こう思う。あなたはこの事件について進退を考慮せられておるとかいうことを、私は新聞面で承知しておりますが、それほど考えられるならば、この監督官の言うた言葉に対して、はっきり肯定するなら肯定する、こういうきぜんとした答弁があってしかるべきだろうと思う。そうでなければ物事は前進しません。あとのことをいかにうまいことを言っても、これは前進しないと思います。どうですか。
  78. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 ちょっと私、考え違いしておりました。暴力あるいは威圧、そういった点につきましては、十分認めておるのであります。先ほどもちょっと触れましたように、昨年だけでも八件の実例を私どもの方であげておるわけでありまして、そのほかにも隠れたものがあるんじゃないかということも想像いたしております。この暴力の点につきまして、私の表現が多少誤解されております点は、これは実例でもわかりますように、中小の何人かの経営する特殊炭鉱につきましては、そういった事実は明らかにあるのでありますが、全般の炭鉱から見まして、二百二十五名の監督官が、監督のつど非常に大きく広範囲にそういった面に接するという意味ではないのであります。従って非常に数が少ない。数が少ないから放置するというわけではございません。今後ぜひともこういった炭鉱の巡回監督につきましては二名ないし三名、従来もやっておったようでありますが、場合によりましては数名が集団的に、一つ特殊炭鉱でありますから、十分な監督官をつけて巡回監督をさせたい、かように考えております。
  79. 西村力弥

    ○西村(力)委員 どうも答弁が焦点と違うんです。私はそういう身体、生命なんかに与える物理的な危険性ということを言っておるのではない。そうじゃなくて、自分の身分上の不安を感ずる。あまり厳正にやると、こういうことは政治的な圧迫を加えられる、そういう不安のもとにあるということ、そういう発言を、あなたはここではっきりそういうこともあるならあると肯定されるかどうかということなんです。これを言わないと、いかに鉱山保安の問題をいろいろ今後改善するということを言うても、日本の政治の現状からいうて、私たちの立場にあるものが現に圧迫をかけるという具体例が、われわれの周辺にはたくさんあるんですから、そこのところを私はあなたに質問するんです。だからあなたもこれを他にはぐらかすことなくはっきり言うたらどうかということです。
  80. 五島虎雄

    ○五島委員 関連して。西村委員質問に対して、何か的はずれなことを局長は説明をしておられるのですけれども、これをもう少し明らかに言うならば、現地で私たちがあなたの部下、と言ったら語弊があるかもしれませんけれども監督官の人々と一緒に懇談をしてきました。通産大臣もおそらく監督官の人々の陳情を受けられただろうと思うのです。そのとき身分上の保障の問題について、暴力行為の問題について、さっきからいろいろ質問があるように、たとえば一人で会社側の案内を受けて穴に入る。そうするとどこから落盤が落ちてくるかわからぬとか、どういうようになるかわからぬとか、非常に脅威を受ける場合がある。しかしこれを具体的にどこでどうしたということになりますと、私たちの身体の保障がみずからやっていけない場合がある、こういうようなことを監督官の連中が言っているわけです。そうすると局長はそういうことがなかったとおっしゃるのならば、全国に配置されるところの監督官の意見を、どういう場合どういうように聞いておられるか。認識を間違えると、非常に穴は平穏で、そうして一人でも監督がやっていけるのではないか、局長自身が間違えるとこの監督行政という問題は、だんだん間違ってくるのではないか、そういうようなことで西村さんは聞いているのだと思うのです。ですからそういうところは明らかにしてもらわなければ困ると思うのです。
  81. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 私がちょっと勘違いをして聞き違えているようでありますが、監督官自身が厳正にやると監督官自身の身分が少しおかしくなるのではないかという御質問のようであります。そういった事例もございませんし、私どもは厳正にやることを非常に喜んでおりますし、厳正に監督官がやり過ぎて監督官自身の身分をあやうくするというようなことは全然ございません。  それから今の関連質問につきましては、私ども十二分に認めておるのであります。ただ私が先ほどもちょっと触れましたように、多少勘違い、誤解を受けます点は、全般的の大きな範囲のものでないという表現をいたした関係で、部分的に相当な暴力威嚇、そういったものが陰に陽にあることは十分承知しております。
  82. 西村力弥

    ○西村(力)委員 局長はそう仰せられるけれども、ああいう重大事態に当たって、しかも課長補佐である人が自殺をした。そういう事態に当たって保安官自身が申し述べた言葉が真実でないというようなことは僕はないと思う。あなたの政治的配慮のもとにそういうことを言われたと思うのですが、しかしこのことは証拠を出せと言っても、私自身今持っておりませんからどうにもなりませんが、あなたは監督官の人事も担当している。その人事をやる場合に、これは私としても承認できぬという工合に思った例も今まであるではなかろうか、個人の責任に帰属する責任なんかで処罰をしたり公認をしたり、それもあるでしょうが、そのほかに個人の責めに帰する問題でなく、不本意な身分処遇をしなければならなかった事例もないことはないと私は思うのです。しかしこのことは当て推量でやってもだめですが、保安行政に責任を持ってほんとうに厳正にやっていく、そのことは単に職務に忠実なばかりでなく、人命にかかわる問題ですから、そこのところははっきりと確立されていかなければならぬと思う。炭鉱の業者がいろいろ身体上の威圧を加えるという、こんなものは排除しなければならぬとか、いろいろやらなければならぬが、そのほかに、内部からくる、あるいは政治的なそういう圧迫なんかは、これを排除するだけの決意を持っていただかなければいかぬと思うのです。その点はしかし今の答弁でございますので、これ以上追及してもどうもならぬと思います。重々その点は警戒していただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  83. 小林進

    ○小林(進)委員 通産大臣もお見えになりましたから関連してお伺いしますけれども、結局今の問題の関連ですから今の問題をやりますけれども、鉱山監督官が実際には、鉱山保安法の三十五条、三十六条の条項を行なわんとしてもできない場合がしばしばあるというのですね。そうすると、その三十五条と六条が結局行なわれていないことなんですが、これを大臣が一体知っていたかどうかということなんです。大臣が御存じになっていられるかどうか、これを私は一つ伺いしたいと思います。
  84. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 三十何条とか、これは司法警察の問題ですか。——それは実際に発動したことはないと私は承知しております。(小林(進)委員「どうしてできないのですか」と呼ぶ)具体的の問題に触れて、局長からお答え申し上げます。
  85. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 三十六条の命令を出したことがあるかどうかという御質問のようですが、三十六条——非常に数は少ないですけれども、命令を出した例はもちろんございます。私ども監督をいたしますと、普遍徹底させますのは、重大な事項がありますと通達を出しまして、通達でほとんど大半改善ができます。従って特に命令まで出す必要のある場合がほとんどないわけでありまして、普通は監督官の指示でも改善できるし、その中の重要な問題につきましては通達で種々内容の改善をさせ、どうしても通達で改善のできないというような事例につきまして命令を出すことになります。従いまして命令の回数は非常に少ないわけでありますが、事例はございます。   〔中川商工委員長退席、小川(平)商工委員長代理着席〕
  86. 小林進

    ○小林(進)委員 私はその通達をお出しになったとか、あるいは三十五条に基づいて、そういう施設に立ち入ったり、保安施設の状況、帳簿もしくはその他の物件を調査されたとか、そういったことをおやりになったということじゃなくて、それをおやりになろうとするときに、しばしば妨害をされて——あなたのさっきおっしゃった威圧といいますか、あるいは政治的圧力等でそれができないという状況にあったことを、大臣が御存じになっているかどうかということです。知っていられたかどうかということを私はお聞きしているのです。これは法律の問題ではなくて、法律運営の問題なんです。さっきは、何か鉱山局長は昨年だけでも八件あった、あるいはまだ表面に出ないものも何件もあったとおっしゃったが、それを大臣が一体御存じになっていたかどうかということなんです。それをお尋ねします。もう一回御賢答をお願いしたいと思います。
  87. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 歴年の、三十五年のうちで八件圧迫を受けたということは聞いておりますが、今の三十何条かの発動に関連して、どういう妨害を受けたというようなことは、聞いておりません。承知しておりません。
  88. 小林進

    ○小林(進)委員 大臣がそれをお知りになっていて、今日までじんぜん日を過ごされてきたというならば、私は実にふしぎに思うのです。知られて、おお、そうかということで、もう了承されておったわけですか。——大臣にお尋ねしております。最高責任者としての大臣にお聞きしております。
  89. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 三十五条ですか、三十六条ですか。
  90. 小林進

    ○小林(進)委員 威力妨害で、実際に帳簿の検査や立ち入って中の検査をするというようなことができなかったということを、あなたは知っておられたという、知っていられて何らの処置を講じなかったというのは、おかしいじゃないか。
  91. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 保安監督の上において八件の妨害があったということを、事後報告を受けました。
  92. 小林進

    ○小林(進)委員 知っていられたのですな。
  93. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ええ。
  94. 小林進

    ○小林(進)委員 知っておられて何も手段を講じておられなかったのですね。今日までじんぜん日を見送っておられたのですか。
  95. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それが継続されておれば、それは対策を講じておかなくちゃなりませんけれども、そういう事実があったということを聞いたので、今後はそういう脅迫なんかに屈しないで、あくまで職務を遂行し得るようにしなければならぬということは考えております。(「告発はしないのか」と呼ぶ者あり)告発はしません。
  96. 小林進

    ○小林(進)委員 そうすると大臣は、そういう妨害を受けたことは知っていたけれども、何とかしなければならないという程度にとどめて、今日までおいでになった、こう私は了承してよろしゅうございますな。  それからいま一つ監督官がその監督行政を厳格に行なったときに、あるいは鉱業権者、あるいはこれに準ずべきようなその経営者が、今度は通産省の別の局へ来て、ああいうような厳格な監督行政をやられたんじゃ、とても営業として成り立たない、やめてもらわなければ困る。ああいうような幅もゆとりも、融通もきかない監督官はどうかしてもらわなくちゃならぬ、こういうような実際は圧力が出ている。こういうことを御存じになっておりましたかどうか、大臣に一つお聞きしたいと思います。
  97. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 八件の妨害行為があったということを事後に報告を受けまして、その状態がずっと継続しておるという状況でないことがわかりましたので、今後こういうことのないようにしなければならぬと、注意を与えておいたわけであります。  それから、保安監督があまり厳重過ぎてけしからぬというようなことを、上京してどういうところで発言しているか、私はその事実は一向知りません。
  98. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、大臣は、今の御答弁の中に、実に重大な発言をしておいでになると思うのです。そういう威力や圧力によって妨害をされたことを、継続してないからかまわぬでおいた、あとから聞いたら継続だから、注意を促した、——私はこれは実に聞き捨てならぬ答弁だと思っておる。いやしくも監督官監督行政を行なうその途上において、妨害を受けて任務を遂行できなかった。それが一件であろうとも、その事実がある限りは、通産大臣として厳格な処置をとらなくちゃならないものと私は考えておる。それを、継続でないんだから大したことはない、継続だということがわかったから注意をしたという、それが私は鉱山行政全般の大きな間違いだと思う。私をして言わしめるならば、今日のこの災害を起こしたものは、あげて通産大臣の責任であると思って、殺した者はあなたであるとまで極言したいほど、この監督行政は実にルーズなんだ。それを申し上げたい。実際私も上清炭鉱から豊州炭鉱やらをながめまして、あの穴の中に入ってみました。あれは人間の入る穴じゃないと思いました。これはモグラの入る穴じゃないか。実際ああいう穴の中で立つことも、すわることもできない。はっていくような穴の中を人間がはって、あの中で死ななければ不思議です。あれで人間が命を長らえて出てきたのが不思議だと思っている。死ぬのがあたりまえだと思っている。それが聞けば、まだ中小炭鉱の、鉱山局長がおられるが、上の部ですよと言う。モグラのように地獄の中にはっていく。これが上の部であります。そういう考え方で説明しているところに、私は実に重大問題があると考えてきたのでございます。しかもそういうことを黙認じゃないが、あれをあのままにしておいておく。一体どこに欠陥があるか。私はそれをまず第一に大臣にお聞きしたい。保安法の第四条には鉱業権者の義務が明確に明記されておりまするが、ああいうモグラの穴の中に入っていって炭を取るようなことを、いいとも悪いとも何にも書いてない。あの穴の高さが幾ら必要だとか、幅が幾ら必要だとか、あるいは坑木がどうだ、そういう規定が何もない。あれは一体あのままでよろしいものですか。まず法律関係からいってあれでいいかどうか。モグラのように人間を入らしていって、あのままにやっておいていいか、どうか。
  99. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 炭鉱の内部構造について、こまかい規定はないようでありますけれども、大体鉱山を開く場合に施業案というものを作らせる。この施業案の認可があれば、それに違反しない限りは差しつかえないということになっております。
  100. 小林進

    ○小林(進)委員 私はどうもこの問題、大臣、のれんに腕押ししているようですが、的確な答弁をしていただきたい、お互いに大切な時間ですから。ともかく、この二十四条の行政上の処置として、鉱業権者に対して鉱業の停止を命ずることができるとなっているが、これを実際行なったことがあるかどうか。それからいま一つは、実際に停止を出しても鉱業権者がその命令に従って閉鎖に応じた場合があるかどうか。これを一体大臣はどの程度に知っておられるか。
  101. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今まで一回二十四条の命令を出したことがあるそうであります。その具体的な事例は局長から申し上げます。
  102. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 保安が悪いために鉱業権の取り消しをやりましたのが三件ございます。
  103. 小林進

    ○小林(進)委員 お取り消しになって、それを一体鉱業権者が着実に実行したかどうか。その経過もあわせて私はお聞きをしておるわけです。
  104. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 ただいま炭鉱名並びにその後の状況をちょっとここで即答いたしかねますので、後刻お答え申し上げたいと思います。
  105. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは後刻書類をもって、取り消しなり停止の命令をされて、そしてそれに対し鉱業権者がどういう応答を示して、命令を直ちに実施したかどうか、その点を一つ詳細に私は承りたいと思います。それをお聞きしないと話は前に進みませんか、さっきも話したのですが、第四条のところはどうなんですか。いわゆる法律の第四条に鉱業権者の守るべき義務が明らかになっておりまするけれども、一体あの列記事項があれで完全になっておるのかどうか、この問題はどうでありますか。
  106. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 坑道の大きさの点につきましては、先ほど大臣がちょっと触れましたように、鉱業を始めますときに、施業の輪郭を大体施業案で認可を受けます。従いまして、施業案通りにやっておれば、もちろん問題はないわけでありますけれども、坑道は御承知のように当初掘りましてもだんだんそれが小さくなって参ります。ほうっておけば全然なくなってしまうわけでありますから、盤の悪いところは絶えず仕繰りをしまして、もとの大きさに直しているわけであります。従って必ずしも炭鉱は悪念を持ってやったわけではありませんけれども、当初は所定の大きさで坑道を掘さくしましても、そのあとの仕繰りが完全に参りませんと小さくなっておる場合がございます。特に閉山まぎわの鉱山におきましては、坑道を前のような大きさに戻すことがなかなかしかねるのでありまして、先ほどちょっと触れましたように、上清炭鉱の排気坑道は掘ってなかった、違法性を示していると私が申し上げましたのは、やはり全然初めから掘ってないのではなくて、当初掘りましたものがだんだん小さくなりまして、その小さくなったものを絶えずもとの形に直していかなければならぬ、それができていない、こういうような関係にあるのでありまして、ごらんになりましてすぐこれは初めから掘ってなかったんだというような見方は少し酷ではないか、施策案の通りにやりましても坑道は絶えず動きますので、その仕繰りが追いつきませんと、上清のような状態になるわけであります。
  107. 小林進

    ○小林(進)委員 私は穴の広さ、大きさだけにこだわっているわけではない。ただ第四条に鉱業権者の義務が明記されているが、一体これだけでよろしいのか、具体的に言えばあの上清炭鉱なんか、あなたもごらんになっただろうけれども、表でいえばぼやなんですよ。ほんとうに二十坪や三十坪の部屋の中にちょっと火が出て、ぼやぼやとして坑木の上がちょっと焦げた程度なんで、燃え切っていない。こういったほんのぼや程度で、人の命が七十有余名もはかなくも失われているということです。ほんとうに地上ならばバケツ一つで消えるようなぼやで、とうとい人命が七十余も失なわれているこの事実は、何かと私に言わせればあのときたとえて言えば、非常時の振鈴でぱっと知らせるような設備でも一つあれば、私は逃げる余地があったと思う。ところが、電話はあった、電話はじゃんじゃん鳴らすけれども、それを受ける人がいない。鳴りっぱなしで終わったということになっているのだが、その振鈴を一つでも、たとえていえば鉱山保安法の、二十三条の特別の場合、いわゆる海底なり川の底という場合には、そういう振鈴の設備をしなければならないが、一般にはその規定がない。これは一つの例としても、やはり法律上の不備じゃないか、もし法律できちんときめて、非常時に全般に知らせるような設備がちゃんと法律の中に明示されていたら、人の命を失わなくても済んだのではないか、こういうことも含めて、いわゆる鉱業権者として穴を掘っていく上にもっと設備の面を明記して、義務化しなければならない条項が幾つでも法律の面にあるのではないか、その法律の欠点をここで直す必要があるのではないか、こういうことを私は質問しているわけですよ。この点はどうですか。それで第四条の義務規定はこれでよろしいのかどうか、そういう面も完備した法律改正をやる必要があるのではないか、こういうことです。
  108. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 ただいまの警報装置の点につきましては、私ども災害実例から痛感いたしております。従来も海底採掘、あるいは特殊な炭鉱につきましては警報の規定がございますけれども、一般炭鉱には規定としてはございません。もちろん規則改正の場合に当然問題になると思いますが、でき得る限り規則改正し——まあ普通の炭鉱にも電話の連絡装置はあるのでありますが、どうも電話では、最近の実例から見て少し連絡が不十分でありますから、何らか伝達装置を設置できるように検討いたしていきたい、かように考えております。
  109. 小林進

    ○小林(進)委員 関連でございますし、今、社労の委員会で呼びに来ましたから、私は残念ながら質問半ばにして帰りますけれども、とても今までの大臣の答弁局長答弁では満足できません。こんなことだからこそ炭鉱災害は跡を断たないと私は思っている。そしてやはりその根本は、労働に対する監督行政が通産省の大臣の管轄下にあるという、ここに私は重大な欠点があるのではないかと思う。先ほども大矢委員から言われておりましたが、私ども労働行政に携わっている者がこの委員会に来て、大臣や局長の話を聞いていると、何という間の抜けた感じなんだろう、こんなことで人間の命を扱われたんじゃ、幾つあってもたまらない。これは実感ですが、そういう感じを受けた。それは石炭を掘って産業を養成していこう。若干弱少な炭鉱でも、無理にでも石炭を掘って、弱少炭鉱の経営が黒字になるように養成していこう。そういう考え方がどうしてもやはり通産行政の中にはウエートを持っている。そのウエートを持ってくることが、ひいては保安行政なり、労働行政が少し軽く見られる、こういう形がひいてはこんなところへ大きな犠牲者となって現われてくるのじゃないかと、私は考えざるを得ないのであります。いろいろ非公式には、労働省の管轄にすると問題があるということは聞いておりますけれども、そういうささやかな人事の問題やら、あるいは監督の問題その他の問題でこの大局を誤っていたんじゃ、私は永遠にこの問題を抜本的に解決することはできないと思います。この際、どうしてもこの労働者に対する生命の安全と保安の問題は労働省の管轄にまかしたらどうかということが一つ。  それからいま一つは、先ほどから繰り返しているように、あの上清炭鉱は地獄の底に入っていくようなもので、死にに入っていくのと同じだ。生きて帰ってくるのが不思議だ。ましてそれ以下のものが筑豊だけでも百八十もあるのだから、それじゃまるで命をかけて入っていくと同じでありますから、この際は一つ出すべき金はうんと出して、そして政府が買い上げて閉鎖する、つぶしてしまう。そういう抜本的な手段をとらなければ、命はたまらぬ、命の保証はできぬと思いますが、この二つについて大臣から答弁をいただきたいと思います。
  110. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 所管の問題はしばしば問題になるのでありますが、やはりこれは生産と密着する保安でございまして、鉱山の保安は特殊なものであるということで、これを分けてやるのはやはり得策でないということに大体考えております。私もさように信じております。  それから鉱山の買い上げの問題については逐次やっておりますが、今百八十もあるやつを一ぺんに買いつぶせという点につきましては、初めて伺う御意見でございますので、よく保安問題等も調べて考究いたします。
  111. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは、私は関連ですから、これで終わります。
  112. 五島虎雄

    ○五島委員 これまた関連ですから、隔靴掻痒になるうらみがあります。従って数点について大胆、局長の意見を伺っておきたいと思うわけです。  今まで上清炭鉱のことが大体中心になって話されたわけですけれども、大臣が大辻炭礦の調査に出かけられたその日に、われわれも調査に出かけたわけです。豊州炭鉱上清炭鉱、引き続いて発生した大辻炭砿の問題は、これは非常に大きな注目を受けたわけですが、われわれが大辻炭礦についていろいろの面に意見を求めて調査してきた結果によると、この問題の災害の拡大は、炭鉱そのものの設備の不備の点がある。それからもう一つは、それに対する保安のための統一ある行動が行なわれていなかったのじゃないか、従って災害を拡大したうらみがあるのじゃないか。しからば一方行政側としては、監督の面で万全であったろうかどうだろうか。この三点が問題として提起されなければならないのじゃないかというように痛感して帰ってきたわけです。通産大臣は当日、その当時は遺族じゃなかったのですけれども、遺族の方たち、家族の方たちに無言で頭を下げて、衷心からなる哀悼の意を表されたと思うわけです。ところがこの災害というものは、三十五年度になってしばらく低下しつつあった災害状況がまた再び増大してきた。これは、石炭合理化政策が進めば進むほど、この災害が大きくなってくるのじゃないか、トータルからもこういうような類推をすることができるわけです。しからば今後、石炭合理化政策が進めば進むほどこういうような問題がまた発生してくる、それを、いかにして保安の指導と監督をやっていくかというような問題は非常に重大であると思う。従って打ち続く災害以来、政府においては協議会が持たれて、今後の対策等も考究されているようでありますけれども、私はこの中から石炭政策の将来の面についてどういうようにされていくのだろう——さいぜん非常に短時間でしたけれども、総理に聞いたのですが、重油との値段の対抗上、石炭のコストを引き下げなければならない、そうすると三十八年までに千二百円の目標であるけれども、もうすでに重油の値下がりがあっている。そうすると千二百円目標のコスト・ダウンというものを、また変更しなければならないような状態だ。そういうときに、中小零細企業の炭鉱は、保安設備等々にどんどん資金を投下することができるかどうだろうか。従ってさいぜんから言われているように、政府はこれに対して大きい予算をさいて、これに融資なり何なりしなければならぬ。ところが石田労働大臣の新聞談話を読みますと、年間二千億円ばかり灰になっているのじゃないか、こういう面から見ますならば、相当に政府の融資その他の予算上の変更等々があって、そうしてわが国の資源を確保する必要がありはせぬか、こういうように思うわけですけれども、大臣のお考えはどうでしょうか。
  113. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 重油との関係におきまして、どうしても石炭の分野を確保するためには、やはり値段を下げなければならぬ、これは経済の原則でございますから、高いものを使えということを育ったって、自由経済下においては通らない。そこで三十八年までに千二百円の引き下げを実行しつつあるわけでありますが、今日の状態では、三十四、五年と、二年間の間に平均四百五十円ぐらい下がっておりまして、あと三年で七百五十円を下げる、こういうわけであります。しかし重油の値段がますます下がる傾向にある。また日本の重油の値段は国際価段から見るとまだ高い。これはいずれ下がっていくものと私ども考えるし、また下げべきものだと考えております。そうすればまた石炭の千二百円の目標というものが変わるのではないか。そう変えたんじゃ炭鉱もたまりませんから、大口需要者と話をして、そうしておくまで石炭をだき抱えていくということで、大口消費部門、電力、製鉄、国鉄その他五部門ばかりと今話をしている最中であります。それでもし三十八年度に五千五百万トンの生産を上げるということになれば、その程度のものであれば、六割以上のものを五部門でだき抱えていくことができるのでありますから、石炭の保護政策は政府ばかりじゃない、その民間大口部門と一緒に保護政策をやることによって必ず実行して参りたい、こう考えております。  それで合理化の問題から、保安問題が起こってくるのではないかということは、しばしば言われる問題でございますけれども合理化保安の問題とは別です。合理化はあくまで生産面において冗費を省き、能率を上げて、そうしてコストを下げるということであって、保安保安でまた別の問題です。それを合理化をやるから保安の力を怠るということは、これは合理化に籍口して保安の方をなまける、それを正当化するというような釈明に使われるかもしれぬと思うのであります。(「現実はそうだ」と呼ぶ者あり)現実においては経済力の弱いところは自然そうなりがちなんです。でありますから、この点については特別の助成政策を講じなければならぬというので、今せっかく具体的に研究中でございますが、保安施設に関する限りにおいては、低利の比較的長期の金を回して、そうして中小炭鉱でも十分にやれる、手が回るというようにして参りたい、こう思っております。  それからもう一つ心配なのは上がり山といってもう何年も掘れない、先が見えているという山がある。そういうのをいつまでも——こっちも買い上げの問題を一ぺんにやるだけの用意がありませんから、何年もほったらかしておくということになると、つい掘るものは掘る、かけるものはかけない、こういうことになって保安上危険な状態かそこに出て参ります。これは炭鉱の買い上げ問題についても、相当考える問題がそこにひそんでいるのではないか、こういったようなことをしきりに今研究中でございます。
  114. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると通産大臣の今の説明の中あるいは答弁の中から、やっていけない、保安に非常に手薄なところには、長期の低利資金を融資する必要があろうということが考えられている。そうするとさいぜん現在百八十鉱ばかりあるのを、一ぺんにつぶすことはできないというようなことを言われたのですけれども、そうするとどのくらいの資金を要するとお思いになりますか、それが第一点。  それからもう一つは、起きたことは仕方がないということではなくて、起きたことはその原因を適切に究明し、今後災害の起きないように対処しなければならないと思いますけれども、この点についてある方面からは、炭鉱の一せい点検を行なう、その一せい点検は相協力して行なう、その一せい点検をする場合は労働組合の代表者もその中に入って、そうして災害の起きるような欠点のあるところを探し出し、それに対する善処をすみやかに行なうべきである、こういう要望が非常に強くわき上がっておるわけですけれども、これに対して大臣はどういうようにお思いになりますか。
  115. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 百八十の炭鉱を一ぺんに云々ということは、これは少し小林委員も言い過ぎではないかと思うのであります。それでこれは必要にして最小限度のところをねらっていくべきで、ただいまのところはどの程度まで急いでやったらいいか、それの資金との見比べにおいてどういうことになるか、これは私もここですぐ無責任にその数字を申し上げるわけに参りません。考究してみます。  それからもう一つ、これは別に組合代表とかいう意味でなしに、そこで働いておる人のいろいろな最高の良識、英知を集めて保安問題に対処するのか当然のことだと思うのであります。
  116. 五島虎雄

    ○五島委員 それからもう一つは、ただいままで質問が行なわれましたけれども、大臣が行かれたときに、福岡の監督部において監督官全員から辞表が提出された。その辞表を提出するということは、並み大ていの決意ではないであろう。そうして世には、監督官が業者とぐるになって監督行政をゆるがせにしているんじゃないか、こういうような声すら起こる。ところが自分たちは一生懸命やっているんだ。やってもやっても予算が足りない。人員が足りない。あるいは一生懸命穴に入って監督をしても、その手当が非常に不十分だ。身分の保障もない。そうして一生懸命やるけれども、われわれの昇進の道はない。四等級でとまってしまう。さいぜんたれかが質問されました。そうしてそれ以上の等級になった場合は他に転出しなければならぬ。従って監督官としてのベテランというものはどんどんよそに行ってしまう。そういうような状態で、監督仕事ができるであろうかどうか。こういうような意見というものを、私たちは非常に強く印象つけられて帰ってきたわけです。その点で通産大臣も多分陳情を受けられたと思いますけれども、こういうような問題をどういうように解決していったらいいのでしょうか。たとえば災害の起きたときの監督は、穴に入って見て一時間二十四円だ、それから通常の巡回では一時間八円だ、または定期巡回のときは一時間四円だ、——これは間違っているかもしれません。四円、八円、二十四円は間違いないと思います。こういうようなことで、日常の仕事さえも非常に不十分である。幾ら少なくても、自分たちは仕事、責任、義務だと思えば、それをやり抜く気持はあるけれども、やはり身分の保障がなければならぬ。その身分の保障がない上に、さいぜん問題になりましたところの中小、零細、あるいは組合の組織のないような山では脅迫さえ行なわれる。そしてそれを発表しようとすれば、命が保証できないからそれを明らかにすることはできない。こういうような状態を聞いたとき、ほんとうの意味保安行政というものができるだろうか、山の災害を防止することができるだろうかというように私たちは考えてきた。通産大臣も同じことを聞いてこられたと思いますけれども、これらのことについては一体どういうようにお考えですか。
  117. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 全員辞職云々ということも、うわさでは聞いておりましたが、実際問題はそういうことはございませんでした。  それから今の手当の問題、それから人員が足りないとか、いろいろな実際の第一線で当面しておる苦心のほどをつぶさに私は聞きまして、すぐ直し得るものと、それから規則や何かまで相当さかのぼっていかないと、実行ができないという面もございますが、これらの問題については一々大部分はもっともだと思って聞いてきておりますから、できるだけこの点については政善したいと考えております。
  118. 五島虎雄

    ○五島委員 わかりました。大臣は地方の新聞のインタビューに、すみやかにこれらの問題は改正しなければならないれども、法の改正は今のところすぐ必要はなかろう、こういうように談話を発表されて帰られたようでありますけれども、今もそういうように考えられておりますか。
  119. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私の話した法の問題というのは、保安法の問題じゃないかと思います。それはさっきも小林さんから御質問があって、それはなかなか実行はしておらないというような点は、なぜかといいますと、そこに働いておる労務者の生活の問題に響いてくる。そういうような用意がないのに鉱業権者はけしからぬからというので、ただ鉱業権の実行を停止するとかいうようなことはできないので、問題はむしろ法律の問題でなくて、それに伴ういろいろな準備態勢の問題だ、こういうようなことをたしか言って、そのときに私が言った言葉ではないかと思います。
  120. 五島虎雄

    ○五島委員 これでやめますが、さいぜん多賀谷さんが、大臣はおられなかったのですけれども、総理がおられるとき救命具などが非常に欠乏しておる、私たちが大辻炭礦の会社側の軍役さんと話をしたとき、防毒面か何かが六個しかない、そして防毒面をつけられて入られたのかどうかというようなことを聞いたら、そこの責任ある事務系統の重役さんが、しろうとではなかなか面はつけ切れないですよ、こういうようなことで、結局六個の防毒面は倉庫におさまったまま、防毒面をつけないで二十六名が入られた。入られるときはこういうような大きな結果になろうとはお思いにならなかった。そしてまた所長以下が穴に入られたことは率先遂行ということで敬意を表し、そしてその結果については哀悼の意を表しますけれども、防毒面の日ごろの着用訓練すら炭鉱ではできていなかったのかということで、あぜんとしたわけです。そして今日の大きな災害を生んだのじゃなかろうか。こういうことにあまり触れたくはないのですけれども、そういうような訓練状態災害の防止をするということはなかなか困難じゃないか。従って今後は多くの費用をさき、あるいは経営者の責任において、この災害の訓練その他をやらなければならぬと私は痛感してきた。こういうような問題で、どういうように指導される気持があるだろうか。  それからもう一つは、さいぜん総理に質問をしたときあわせて質問して、まだ答弁がありませんけれども、どなたか質問をされたかもしれませんけれども局長さんでけっこうでございますから、昨年労働省から勧告は出されたけれども、勧告は勧告として聞き捨てにされたのかどうか。それが豊州炭鉱災害直後に二回目の勧告が出されていると思う。そして上清炭鉱から大辻炭鉱災害になったということは、やはり注目しなければならないと思うのです。従って最後には、こういう勧告が出されっぱなしならば、そうして勧告を受けて何もそれに対する対応策がないならば、小林委員が言われたように、基準監督、安全監督の面で一貫した監督、強力な監督が必要である。それなくしては、鉱山の災害というものを未然に防ぎ、あるいは小にしてとどめるということはなかなか困難であるというように考えられるが、通産省はそれをどういうように受け入れ、どういうように受けとめたか、この点について質問します。
  121. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 最初に救命器の関係でありますが、救命器の関係は、大辻は甲種炭鉱でございませんから、法規上は必ずしもその山になくてもいいわけであります。六個というのは、一班たいがい六個で編成いたしますから、六個一組持っておったと思います。これは普通の人はつけてはいけないので、平生訓練を受けた者でなければ使用させないということになっておりますから、免状のない者は、所長さんであろうともつけるわけに参らない、これは当然であります。従って救護隊の訓練は規定しておりまして、隊員は必ず訓練をいたしております。ただ器具が十分であったかどうかという点につきましては、まだ連絡を受けておりませんが、いずれ詳しい連絡があることと思います。  救護隊につきましては、御承知のように九州の方では、一つ炭鉱で爆発なり火災なり起こりますと、いずれも周辺の炭鉱が全部救援に参りまして、実質的には困難はいたしておりません。ただ問題になりますのは、救援に参りまして死亡したり重傷したりいたしますと、今までは金が出ないことになっておりましたが、これは最近労働省の方ともよく話し合いをつけまして、業務上の指示、命令といいますか、経営者側の命令によって出たということならば、労災は出すということにお話し合いをつけましたので、従来通り応援に参りまして罹災いたすようなことが万が一ございましても、正常の作業場で起こったものと同じような扱いを受けるということには、話し合いをつけております。それからさらに、後ほど触れますが、共同救護隊の点につきましても、目下急速に予定のものを数多く設置できるように準備をいたしております。  それから労働省の勧告に対して通産側では、ほとんどやっていないではないかというお話でありますが、労働省の勧告に対しましてやっております点を要約いたしますと、まず第一点は、旧坑を十分に把握しなさいということを言われておりますが、三十、五年度の当初に、この勧告に対しまして、石炭、亜炭鉱山の災害防止対策、こういうようなものによりまして、施業案の厳正な審査、あるいは古洞の連絡図、あるいは保安図、こういうものの活用を十分にやるようにということを当然指示いたしております。  それから豊州炭鉱の市大災害がございましたので、特に中小炭鉱災害続発に対する緊急対策という通牒を、三十五年十一月二日に出しまして、次の措置を講ずるように指示をいたしております。  そのうちのイといたしましては、中小炭鉱鉱業権者の会議を各監警部で開催して、豊州炭鉱災害実例を十分に説明して、そして古洞に対する対策の強化を要望いたしております。それからロといたしまして、古洞の対策強化の方法として、特に河底、それから河沼底付近に仕事をしておるところは、鉱業権者に対して、自主的に精密な調査を行なうということを指示しております。それからハといたしましては、通産局でも当然この古洞調査を実施いたしておりますので、その調査の促進は当然でありますが、その結果を十二分に監督部にも連絡をしてもらって、その古洞調査の活用をはかっていく、こういう方法をとっておるわけであります。  それから勧告の二番目といたしましては、出水のおそれがある坑に対して、十分な措置をとってほしいという内容の勧告でありますが、出水につきましては、特に中小が従来非常に災害を多く起こしておりますので、出水指定の強化ということに重点を置きまして、この指定の強化を非常に強力に実施いたしたわけであります。石炭関係におきましては、三十三年の一月に指定坑口が三十九坑口でありましたものを、現在、三十六年の一月では二百三十五坑口と、非常に数多くの、少しでも危険であるというふうに認定のできる坑口につきましては、直ちに指定をいたしまして、ただ指定をするというだけでなしに、指定をいたしますと先進さく孔をしなければならぬということで、先進さく孔さしておりますが、これも中小ではなかなか現実的にはできにくいので、現地に各山を集めまして、簡単な機種のものを、わざわざ監督官に、使用方法、効用その他につきまして、十二分に講習をさしておるわけでありまして、最近中小の坑内出水が割合に少なくなっておりますので、かなりな効果を上げておるのじゃないかというふうに考えております。  それから勧告の三番目としましては、ガス爆発の防止対策、これは非常に重要な問題でありますので、勧告を受けるまでもなく、毎年爆発、特に大きい爆発の防止対策につきましては、入念に監督方針の中に指示をいたしておりますが、この点につきましても、坑口を特に指定いたしまして、これも指定坑口としての数を、三十二年の一月に二百七十八坑のものが、三十六年の一月には四百六十一坑と、非常に指定の強化を行ないまして、この爆発防止、特に中小の爆発防止には非常に大きく奇与しておると、私ども自身考えております。ただこの指定の強化をするということだけでなしに、今後夕張などのごとき大手の爆発におきましても、炭塵その他非常にむずかしい問題がございますので、こういったものは、早急に危険量の検討も目下いたしておるわけであります。  それから最後に可燃性ガスの自動警報装置、これも現在理研で、一個で三方面のガスが検定できるというような機械も作らせまして、目下予算をとって、これが実際に応用した場合に三カ所ばかりでなしに、一つの機械からたくさんアンテナを出して、こういう個所のガス状況を知りたい、あるいはガスがたまった場合には自然に警報を、鳴らすといったものを、ぜひ早急に実現をはかりたいという方向で、まだ理想的なものはできておりませんけれども、理研では、今三カ所ヘアンテナを出して、一定のガス量以上になれば、自動的に警報が鳴るというようなものが完成しております。しかしこれはわずか三カ所でありますので、さらにこれを一つの機械によって何カ所も、希望の個所のガス量を、自由に危険度の感知ができるというふうにぜひ持って参りたい、かように考えております。  それから四番目には、緊急時における対策。これは訓練だとか警報装置でありますが、これももちろん最近の災害で、私ども一番痛感しておりますのは、電話はございましたけれども、どうも電話がいつも災害のたびに働いていない、この点私どもも非常に遺憾に思っておりますので、従来は最前線に電話を置くということで、一応一般炭鉱はやって参りましたけれども、これでは不完全でありますので、まだりっぱな装置自体はございませんけれども、最近作られたものも二、三ございますので、値段その他の関係もございますけれども、でき得る限りこういった警報連絡装置の実施を、場合によっては規則改正によっても、一つ実現に持って参りたい、かように考えております。  労働省からの勧告の点につきましては、決して放置するようなことなく、でき得る限りこの実現の方向に進んでおるわけであります。今後も一そうこの趣旨の徹底ができますように努力を続けて参りたい、かように考えております。
  122. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから、具体的な問題はいずれあらためてやることにしまして、三、四点お聞きしたいと思うわけです。  今の五島委員質問関連するわけですが、救護隊の問題です。この根拠は、いわゆる保安規則に定められておるわけですが、実際問題として救護隊の配置は、ガス爆発に対する考え方が中心になっているわけです。従って乙種炭鉱の場合でも、坑内火災の場合には救護隊の出動を要請する、こういう事態が、今回の上清あるいは大辻の場合に出て参ったわけです。ところが救護隊の場合に、これはそれぞれの企業に配置されておって、しかも救護隊の訓練の仕方あるいは救護隊の待遇、出動の手当、こういうような問題については、企業ごとに各個ばらばらな状態にあるのが現在の状況です。私もかつて救護隊員であったわけですが、これは、北海道には北海道救護隊連盟があり、九州には九州の救護隊連盟がある。北海道の場合には、一年に一回くらいは札幌に全部集まって訓練をする。終戦当時の保安法ができたころは、全国的に集まって訓練を行なった実例もあるわけなんです。ところがこの救護隊の場合には、初めから訓練されており、その教範の中には、ほかから出動の要請があった場合には出動しなければならぬという、大体義務づけがなされているわけです。こうなって参りますと、今自主的に民間で救護隊連盟を作っておりますけれども、この救護隊の隊員の待遇なり、訓練基準なり、こういうものについて、やはり積極的な施策というものを必要とするのじゃなかろうか、このように私は今考えるわけです。ですから、言うならば、救護隊連盟というものは、それぞれ炭鉱経営者のある程度の負担によって作られている。しかしながら、待遇あるいは教育の基準等一切を、全国を統一して行なっていく必要があるのじゃないか。そういう考え方になって参りますと、炭鉱経営者が一方負掛金を負担すると同時に、国もある程度、全国の救護隊連盤なら救護隊連盟に資金を投じて、中小炭鉱で爆発があっても出動していく、こういう弾力的な救護体制というものがとられなければならぬのじゃないか。これは、やはり今の保安法規で定められているものを、一歩前進させなければならぬわけです。ですから乙種炭鉱であっても、こういう災害が起きると、大手の方から出動するわけですから、こういう点を、やはり今回の災害を契機にして検討する必要があるのじゃないか、第一点としてこのように考えるわけです。  それから第二の問題は、坑内火災というものが、こういう状態で相次いで起きて参りますと、救命器を直接必要とするかどうかということについては疑問があるわけです。坑内火災がある場合には、消火するということにまず重点が置かれるわけです。それと、できるだけ早目に坑内におる作業員を退避させる、私はこういうことになってくると思うのです。そうすると、坑内火災に対処する簡易救命器といいますか、簡易防毒マスクといいますか、こういうものは各国にもそれぞれ例があるわけですし、容易に、作ろうと思えばできますし、あるいは鉱員が防塵マスクを携帯しておって、これを活用して助かったという過去の実例もあるわけなんです。そうしますと全炭鉱に対して坑内の緊急火災の場合に簡易防毒マスクといいますか、こういうものは訓練の必要もありません、ただ着面できるといいわけですから、そういうものを一定量配置しておく、保有しておくという義務づけをする、この二つの面が今回の災害を契機にして積極的に考えなければならぬ問題だと思うのですが、この点いかがですか。
  123. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 救護隊につきましては全く同感でありまして、私どももできることならステーション式のものがあって、大手、中小にかかわらず問題があればいつでも出動するというようなものができればけっこうなんでありますが、しかし現実といたしましては、中小でやりましても近辺の大手の炭鉱がみんな応援に参りまして、実質的には非常に支障を来たすということはないわけであります。しかしだからといってもちろん放置する考えはございませんで、現在の方針としましては、中小は中小だけのグループで、何カ所か共同の救護隊を編成するという方向を、現在とって進みつつあるのでございます。大手、中小の一本化と申しますか、あるいは訓練はもちろんただいまお話のように大手は大手だけで金を出し合って、訓練所を作っておりますから、救護隊員の訓練は大手以外のものでも、中小のものでも希望があれば訓練は受けております。従って隊員の訓練自体は支障はございませんけれども、いざ実際に救護に入るという場合におきましては、やはりいろいろな問題が出て参りまして、心中ではなかなか大手の救護隊も喜んで出動するという姿ではございません。従って中小は中小のグループで共同救護隊を編成したいという方向で現在進めております。  それから二番目の自己救命器——これはおっしゃっている点がおそらく私どもの言っている自己救命器のことだろうと思うのでございますけれども、これは私全く賛成でございまして、実は三年以上前に、日本でも必要な炭鉱にぜひ使わせたいという気持でおりましたところ、製品も、一部販売している製品があるのであります。しかしこれをよく検討させましたところ、非常に煙の濃厚な場合、それから時間が少し長引いた場合には非常に温度が上がりまして、逆にそれをつけたためにかえって本人が倒れてしまうというような場合も当然考えられまして、諸外国におきましても、ドイツとかあるいはソ連とか、そういった国では全労務者に使用させております。しかしフランスのごとくこれはいかぬといって反対している国もございまして、私自身としては非常に賛成しておるわけであります。これはなかなかこういった製品が一挙に理想的な品物ができるわけではございませんから、これをつけたら助かるだろうと思われるケースが非常に多いのなら、当然使うべきだという考え方から私賛成いたしておるわけであります。ごく最近これのJISも決定いたしまして、外国に劣らないような製品も、近く製作できる予定でございますから、必要な炭鉱には当然部長の認定によりまして個々に使わせるか、あるいは特定の場所の労務者に持たせるか、その辺のところは検討の余地がございますが、ぜひともこれを使用する方向に持って参りたい、かように考えておる次第でございます。
  124. 岡田利春

    岡田(利)委員 今の救護隊の問題については大臣から聞きたいと思うのですが、問題は中小炭鉱で二山ないし三山が共同して共同救護隊を持つ、これはあるわけです。たとえば北海道で油谷と高根の炭鉱が共同救護隊を持っておる。これはもちろんあるわけなんです。しかし装備その他の面からいって、いざ災害が起きた場合には、それだけでは間に合わぬのが実情なんです。どうしても大手からも要請する。こういう点については人命上の問題ですから、正式に要請されますと、大体大手の場合でも救護隊が応援にかけつける、そして入坑する、こういうことが行なわれているのが実情なんです。ところが出動して坑内に入ったときの手当は各会社によって違うわけです。あるいはまた訓練の手当についてもそうなんです。隊員手当についても企業によって違う。大手、中小においても違うわけです。これはやはり法の精神からいって当然そういう場合には自動的に出動しなければならぬという性格のものなんですから、これは諸外国の場合でも例があると思うのですが、せめてこういう救護隊については全国一本の組織を作って、ある程度これについては助成もする。それからそれぞれ甲種、乙種、中小、大手の負担金等もある程度の基準で負担をする、こういう体制にして、これをもう一歩前進させることが今日必要ではなかろうか、このように私は考えるわけです。事人命の問題でありますから、消防なんかと同じに、要請があった場合にはすぐ出動しなければならぬわけです。しかも救護隊の訓練というものは飛行機乗りと同じように、一時間ないし二時間装備をしてやると相当な疲労を来たすわけです。だからあるところでは訓練が終わると牛乳あるいは栄養剤を支給する、こういうところもあるわけなんです。ですからやはり救護隊の格づけと装備あるいは訓練あるいは待遇というものが、全体的に全国一元化されるべきではなかろうか、それを民間の企業の協力を得て、政府の指導において、そういう組織を作るべきではないか、この点について通産大臣の考え方を聞きたいと思います。
  125. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 大体の考え方は賛成でございますが、しかし従来のあり方及び日本の実際の業界の状況にも照らしまして、最も有効な救護隊を作るように努力したい、かように存じております。
  126. 岡田利春

    岡田(利)委員 有効な救護隊を作るといっても、これはできているわけですから答弁にならぬと私は思う。問題は先ほどから言っているように、訓練、待遇、あるいはそういう装備の問題、いろいろな連携の問題、こういう自主的な救護隊連盟というものはすでにあるわけですから、大体これは石炭協会あたりと一緒に事務所を設けて地方にはあるわけです。北海道の場合には非常に数は少ないし、私は理想的にいっていると思う。九州の場合は北海道に比較すると、ものすごくばらばらなんです。そういう傾向にあるのです。昔は全国集まって訓練もしたことがあるわけなんですが、われわれも参加したことがあるわけですから、そういう面からいって救護隊の問題が特に中小の場合、乙種の場合は救護隊を置かなくてもいいわけです。しかし火災があれば今回のように出動しなければならぬというので問題が出てくる、こういう共通の問題を持っているわけです。ですからこういう点について一歩前進をして十分検討して、いいか悪いか、あるいはさらに若干の法改正をして、今の法の改正でいいのか、そういう点について十分研究、検討する考えがあるかどうか、この点はっきり一つ……。
  127. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 十分に検討いたします。
  128. 岡田利春

    岡田(利)委員 それから通産大臣が九州に参りまして、いわゆる災害が発生をし、事故の処罰として鉱業権の取り消しはしない、こう明確に言明されているわけです。私はこの言明はとりようによっては非常に問題があるのではなかろうか、大体いろいろな場合が災害の発生する場合には想定されるわけです。たとえば保安監督員から常日ごろ強く保安改善の指摘をされておったという実績があった、あるいはまた極端にいえば勧告が出されておったという実例がある。それが改善されないで災害が起きたということになりますと、その場合でも事故の処罰として鉱業権の取り消しをしないということになれば私はゆゆしき問題だと思う。非常にこの点は大臣は何か一般論的に軽い意味で言われたのかもしれませんけれども、この及ぼす影響は、上がり山が非常に多くなってきておる場合、あるいは中小炭鉱が非常に数が多くて、多くの保安行政上、監督行政上問題がある場合には、若干不穏当な面があると思うのですが、この点はいかがですか。
  129. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 誤解があれば訂正しておかなければなりませんが、停止はしないということじゃない。そういう法律は軽々に発動すべきじゃない。ということは、鉱業権者がふらちだからといって鉱業権を取り消すとか、あるいは業務の執行を停止するということは、一応は話はわかるけれども、その職場についておる多数の労務者の生活権の問題まで触れていくので、そういう問題を考えると、十分に準備体制を整えた上でないと、軽々にはこれは発動できないということを、そういう気持で私は記者諸君に話した覚えがあるのです。それをあまり端的にやらないというようにもし書かれたとすれば、これは一種の誤伝でございますから、この際私は訂正しておきたいと思います。
  130. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、これはたとえば災害が起きなくても、保安勧告をする。ところが実行ができない。保安改善が困難で、常に不安な状態がつきまとうという場合でも災害が発生しなくても、予防措置としていわゆる鉱業権の取り消しもあり得るわけですし、災害が起きた場合でもあり得るわけです。そういたしますと、その場合に、閉山によって起こる——特に労務者の問題が中心になると思うのですが、そういう点についての措置を、予算措置を含めて講ずる、こういう見解ですか。
  131. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 予算措置と限りませんが、十分に見通しをつけて、慎重なる配慮のもとに発動をする、こういう意味であります。
  132. 岡田利春

    岡田(利)委員 しかし、現実に勧告をしても保安改善ができないと想定される山があることは、これは大臣も御存じだろうと思うのです。そういたしますと、現実の問題として、保安行政を強化していけば、一応鉱業権を取り消すとか、あるいは作業中山をさせなければならぬ。あるいは貰い上げとか、こういう問題が出てくると思うのです。しかし、買い上げる場合には保安上の問題を想定して買い上げをしているわけじゃないわけです。ですから、これには具体的な基準が石炭合理化法において定められているわけです。そうすると、保安上の問題については、当然積極的に保安行政監督行政をやろうとすれば、そういう山が出てくるわけなんですから、それに対しては当然予算措置なり講じなければならぬと思うのです。でなければいつまでたっても、これは軽々にできないということで、実際に法規上できるんだけれども、実際問題としてはそういう命令というものは出せないということを、固定化してしまうわけなんですから、当然その裏づけをしなければならぬ問題だと思うのです。
  133. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 必ずしも予算措置を待たずに方法があるのではないかということで、ただいま考究中でございます。決して、ただ結論がいつ出るかわからぬというようなのんきな考究じゃなくて、具体的に考究中でございます。
  134. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほど内閣総理大臣は、この問題については明確な言明は避けておりますけれども、当然その点については解決するようにしなければならぬということは言われておるわけですよ。そういう方針で積極的にやっていく、こういうことなんですから、そうするともちろんいろいろな方法が考えられるでしょうけれども、当面こういうものの補償をするという場合に、どこか流用できるところがありますか。ないとすれば、やはり最小限度の予算措置は講じなければならぬということになりませんか。
  135. 今井博

    今井(博)政府委員 ただいまの、保安強化の観点から山の買いつぶし、買い上げを実行する、この問題は、先ほど総理からお答えになりましたように新しい問題でございまして、今までの山の買い上げは、需給関係から山の買い上げをする、しかもこの方式は相互援助という方式によりまして、業界からも納付金をとってそれでやっておるわけであります。今度の問題のように、新しく保安を強化しなければならない、それができないで山の買い上げを申請する、こういうふうな場合には、全く新しい問題でございますので、やはり新しい方式を一つここで考えなければいかぬのじゃないかと思って研究いたしております。従ってわれわれとしては、新しい予算措置が必要なんじゃないかという方向で、実は今研究いたしております。
  136. 岡田利春

    岡田(利)委員 今回の災害が起きてから中央保安協議会が開催されて、大体四点にわたる答申がなされておると思うわけです。保安法に定めている中央保安協議会並びに四地方における地方保安協議会の活用というのは、非常に狭義に解釈して運用しておるのではなかろうか、こういう見解を実は持っておるわけです。もう少し弾力性のある運用をすることが、当面非常に鉱山の災害が多い場合には必要ではなかろうかと思うのです。たとえば重大災害が起きたから労働者委員から、ぜひ地方保安協議会を開催して、そこで対策あるいはまた行政当局の考え方、今後の方針を聞きたい、あるいはまたいろいろ委員としても意見を並べたい、こういうことを申し出ても、なかなか開かれてない。おそらく地方保安協議会が開かれているのは一年に一ぺんか二へんでしょう。私はこれはやはりもう少し弾力性のある運用をして——定期的に毎月開催するとかいうことになりますと、法改正の問題、予算措置の問題も若干ですがあるでしょうが、やはり弾力性のある運用をしなければならないのではなかろうかと思うのです。特に昨今の事情から考えますと、その必要性が非常に強いと思うのです。こういう点について法改正を待つまでもなく、積極的に労使の意見を取り入れる、行政上そういう問題点があれば積極的に解明を与えていくという面で、山元の保安委員会を活用するだけではなく、そういう法に定めている中央、地方の保安協議会の活用を弾力的に行なうべきではないか、こう思うのですが、見解はいかがですか。
  137. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ごもっともでございますから、弾力的に開催して運用して参りたいと思います。
  138. 岡田利春

    岡田(利)委員 現在の保安法の建前は、保安管理者があり、縦の系列において特に鉱業警察規則になかった面は保安監督員という制度があるわけです。保安監督員の権限というのは、法の定めるところによって保安管理者を解任することもできるわけです。こういう面から見ますと、保安監督員というのはアメリカ・システムで非常に権限を持っておるわけなんですが、実際の運用になりますと、たとえば保安監督員になる人は保安課の課長さん、保安管理者は鉱業所所長もしくは補佐役ということで、企業の職制から見ると、その保安監督員は隷属しなければならぬような関係におるのが一般の実情なわけです。この点やはり保安監督員というのは、実際上なかなか法が期待しておるほどの権限、機能を発揮していないように、われわれは理解せざるを得ないと思うのです。ところが経営形態は違いますけれども、フランスあるいはベルギー、オランダあたりでも保安監督員制度があって、特に労働者の代表を鉱山保安に対して参加させる、こういう方式がとられておるわけなんです。わが国においてもやはり保安委員会が一応あるのですが、常設的な問題として労働者の代表の保安監督員制度というものを、十分検討しなければならぬ時期に来ておるのではなかろうか、このように考えるわけです。少なくとも労働者がみずからの生命を守る点については、積極的にそういうことに参画をさせるくらいの進歩的な施策がとられていいんじゃないかと私は思うのですが、こういう点についてはどのように考えられますか。
  139. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 ただいまのお話の中で、保安監督員が保安管理者を解任できるというのがちょっとございましたが、これは誤りではないかと思います。監督員は保安管理者以下係員に勧告をすることができるようになっておりますが、解任はできないと私は考えております。それが一つ。  それから監督員、保安管理者、これらの点につきましては、ただいまお話しのように、保安法施行当初は、所長が保安管理者を兼ねておった場合がかなり多かったように見るのですが、保安管理者には御承知のようにこまかい規定法規できめられておりますので、所長が保安管理者を兼務しておるという姿は、中堅の山まではできるのでありますけれども、少し大きい山になりますと実際には非常に困難であるという実情から、保安管理者あるいは監督員というようなポストがどうも所長さんの下にくる。場合によっては、大きい機構ですと、所長の下に次長がいたり部長がいたりしますので、そういった系列よりも少し落ちるのではないかというような感じを受ける場合ももちろんございます。これらの点につきましてはたびたび論議も重ねておりますし、次回の改正の場合にも当然問題になると思いますので、十分に考慮したいと思っております。
  140. 岡田利春

    岡田(利)委員 今のは、私、確かにちょっと勘違いの点があったわけなんですが、ただ、もちろん今の保安監督員が全然機能を発揮していないということを極言するわけではないのですが、法が期待している機能を発揮していないということは言えると思うのです。たとえば保安監督員がたまに行って指摘をする。ところがその山の保安監督員が一度も指摘をしたことがないという山もずいぶんあるわけですね。これはまことに不思議なわけです。毎日入っていて、常時山にいて、たまに来た人が指摘することがずいぶんあるのに、その山では一度も監督員が指摘していない、こういう実例が非常に多いわけですね。これは、今日の法自体が、職制上、下の地位にある者を保安監督員に選任をして、法の機能を十分発揮できるように期待することが無理だと私は思うのです。やはり人命の問題は労働者みずからが自分の生命を守るという思想に徹底をしなければならぬわけですから、むしろ労働者の推薦による保安監督員——もちろん保安監督員の権限、機能というものを明確に定めておきますと、そう紛争は考えられないわけです。たとえばその監督員が保安管理者に勧告をする、またさらに紛争があるならば保安監督部でこれを討議するとか、あるいはまた保安委員会、地方保安協議会等を弾力的に活用していくというような全般的な検討をすれば、私は、労働者代表による保安監督員制度というものは、国際的な面からいっても進歩的な政策として、十分現行法規の思想の中でも取り入れられる問題ではないかと思うのですが、この労働者代表の保安監督員について検討されたことがありますか、あるいは検討する意思がありますか。
  141. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 監督員を労働者関係から選出したらどうかというお話であります。趣旨は必ずしも反対しているわけではございません。現在の法規でも監督員の選任は鉱業権者におまかせしてありますので、鉱業権者が選任してきた者で資格ある者なら、私どもの方はあえてどうこう申すわけではございません。従って、私どもといたしましては、むしろ労使の間で解決していただけると一番いい問題ではないかと考えております。保安の問題でありますので、労使が一番密接な関連を持っているわけでありますから、労使で話し合いがついて、そうして選任をいたす場合なら、資格さえ満足しておれば、労務者であろうとだれであろうと、私どもの方では決してそれがために却下したりあるいは落としたりというようなことは考えておりません。
  142. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほども鉱務監督官の待遇、格づけ、こういういろいろな問題について質問があったわけなんですが、これは特に大臣にお聞きしたいと思うのですが、待遇改善をするということは、大体、先ほど内閣総理大臣としても強化と、そういう面について待遇を改善するという点については、ある程度肯定しておったように私は受け取ったわけです。しかしながら、私は、単に待遇を若干引き上げるということだけでは、この問題は解決しないと思うのです。私の友人なんかでも監督員がおるわけです。しかし、民間の大手の場合、今技術職員は、二十年たちますと、大体月給は、手取り月の総額で六万か七万くらいもらうのが普通ですね。特に上級の資格を持っておる人はそれ以上になるというように、待遇の水準がそういう状態にあるわけです。そういたしますと、特に先輩が非常に多い、技術的にもそれ以上の経験者が多い山に行って、検査をし、勧告するわけなんですから、そういう社会通念の水準を考えた待遇改善なり格づけなり、身分保障というものがなければならぬと私は思うのです。だから、待遇改善をするという意思はあるのですけれども、そういう点を十分考えての待遇改善なのか、ただ単に低いから若干上げておくという程度のものなのか、この点どういう意思を持っておられますか。
  143. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 単に月給を上げるとかいうことでなしに、相当永続してその地位におって、しかもなお社会的な他の関係に比較して権威を保つような地位の改善ということになりますと、これは制度上の問題でございます。私は、これを別に考えないとは言いません、それも考究いたしますが、そう手っとり早い問題ではないということを、あらかじめ御了承願いたいと思います。
  144. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、今の問題については、単に待遇をちょっとよくするとかいうような問題ではなく、身分保障の問題——技術屋なんですから、言うなればほかにつぶしがきかぬといっても過言ではないと思うのです。炭鉱、鉱山以外にはつぶしがきかぬ、そういう意味ではかたわだ。表現がどうかと思いますけれども、つぶしがきかぬというのが実情なんです。だから、身分保障なり、将来に対する生活保障、こういうことに対する施策が総合的に確立されなければ、権限行使なり良心的な監督はできないと思う。だからこの点はそういう点を十分掘り下げていただくように、これは将来の法改正にも関係がある問題ですから、強く要望しておきたいと思うのです。  最後に、現在の保安法は五十八条ですか、保安規則は大体三百九十七条からなっておるわけです。これに基づいて現在各山で保安規程が百五十条から多いところでは二百条くらい作られておるわけです。これに基づいて炭鉱保安を管理していく、こういう法、規則、規程の体系ができ上がっておるわけです。ところが実際これを運用していく場合に、自然条件は刻々と変化しますし、一度施設をしたらこれを改善するということはなかなか大へんな問題なんです。莫大な経費を要するということで、初めのうちは施業案あるいは認可基準に合致するのだけれども、時間がたつに従って基準に合致しない、こういう面が出てくるわけです。こういう場合は、大手、中小を問わず、臨時措置ではなくして特に恒久的に、保安施設に対しては優先的に低利、長期の資金を貸し付ける、こういうような政策がとられなければならぬと私は思うのです。もちろん金を借りなくてもいいところは借りないと思うのですが、どうしてもそういう資金がないためにそれが放置されるという傾向があるわけですから、今回の災害で臨時的にこの問題を考えるということは、問題が残ると思うのです。私は、特にこういう点については、恒久的な対策として立案せられるように要望したいと思います。  もう一つは、炭鉱保安の研究の問題なんですが、西ドイツあたりですと、縦坑のゲージのロープが切れて事故が起きた。そうすると即座にそのロープを切断してロープ研究所に持っていく。そしてストランド一本々々について、どうしてこういう事故が起きたか。メーカーが悪いのか、あるいはどういう過負荷がかかってどうなったかということを入念にロープ研究所で研究しておる。ロープ一本の研究のために一つの研究所が西ドイツの場合にはあるわけです。あるいは防塵、いわゆるコール・ダストの問題については、総合的な機器の研究所がある。博物館がある。教育施設についても、基準が非常に厳格で、採災夫になるのに三年間の教育を受けて採炭夫の試験に合格しなければ採炭夫になれない。こういう総合的な見地から、ヨーロッパあたりの炭鉱保安が確立されているという工合に見られるわけなんです。ところが日本の場合は、ガス爆発試験所が直方あるいは札幌の白石にあったわけなんですが、今、資源技術試験所ですか、そういう形になっておりますけれども炭鉱鉱山の保安に関する総合的な研究所で研究をして、たとえば新しい防爆型の警報機を作るとか、あるいは切羽の末端でもガスの予防ができる、あるいは中国では落盤の予報機が今日完成しておるといわれておる。そういうものを専門的に検討を加えていく。こういう研究施設に対する補助あるいはそういう研究施設を総合的に——日本炭鉱は永遠に続くわけなんですから、そういう意味で、こういう点について十分配慮する必要があるのではないか、あるいは現在のものを一元化して、そういう態勢を再編成する必要があるのではなかろうか、このように私は考えるわけです。このことは、特に現在の石炭化学の場合でも、石炭化学は奨励するけれども、研究については全然予算もないし、そういう研究所もただ民間がやっているだけだ。中途半端な状態になっておると思うのです。これから保安の確立をしていく基礎的な一つの問題点として、特にこういう点を考えていかなければならないのではなかろうか、このように実は考えるわけです。  それと、実際問題として五十八条あるいは三百九十七条に及ぶ保安規則あるいは自主的に保安委員会できめている保安規程が完全に順守されている山というものは、極言すれば、私の経験からいって日本には一カ所もない。もちろん限度の問題は非常にありますけれども、極言すれば一ヵ所もない。こう言っても、おそらく炭鉱保安を知っている人は、実際には別に不思議にも感じないのが今日の常識だと思うのです。中には守れない規則があるということは明らかです。たとえば切羽のハッパを三十メートル離れてかけているという炭鉱一つもありません。そういう面からいっても規則は実行できないようになっている。そういう面が多々あると思う。だから保安監督としては、現在の規則が守られれば保安は確立するのだ。よくこういうことを機械的に言うのですが、やはりそういう点について、むしろ規則を作ってもあまりにも保安が守られない、技術的に見ても科学的に見ても守られない。そんなものを作っていてもどうにもならぬわけでありますから、むしろ締めるところはシビアーにきちっと規定を作る、あるいは守らぬものはその点についてある程度検討するということで、必ず守るという規則、あるいは保安規程を作り、保安規程を認可されたら、監督員が保安規程に基づいてこれを坑内巡回にあたって点検する。やはりこういう筋の通った保安監督行政が確立されない限り、幾ら人員をふやしても、幾ら待遇をよくしても、それだけでは問題があると思うのです。だから監督官現地調査して勧告していいかどうか、非常に良心的に苦しんで、ほかでもあの程度だから勧告をやめておけというのが、現地監督官実情だと思うのです。こういう点について、もう少し責任のあるはっきりとした態度をもって法改正、あるいはこういう監督行政に臨まなければならぬと思うのです。こういう点についての御決意のほどを最後にお聞かせ願いたいと思います。
  145. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 保安施設に対する融資の問題は、決して当座の問題としてではなしに、考え方の問題でありますから、その道が開かれれば特にこれを変更する、あるいは廃止する事情のない限りにおいては、恒久的なものとわれわれは考えております。  それから鉱山保安の試験研究が、まだ不十分であるという御指摘はごもっともだと思います。これらの点につきましても十分われわれは考えていかなければならぬと思います。  今の最後の法規の問題でございますが、私は十分その知識がございませんが、間々どの法律にありましても、いろいろ時代が過ぎるに従ってそういうむらが出てくるものでありますから、これらの点につきましては、もし改正の機会があれば十分に考えて参りたいと思っております。
  146. 岡田利春

    岡田(利)委員 では終わります。
  147. 小川平二

    ○小川(平)委員長代理 多賀谷真稔君。
  148. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間がありませんから一、二点だけお聞きしておきます。それは今岡田委員より保安監督員に労働者の代表を出せという問題が提起されましたが、それと同じように、この保安監督官実情調査した結果について、保安管理者には勧告するわけですけれども労働者には今まで知らせていない。これは当然公知をする必要があるのではないかと考えるわけですが、これを一つ局長でけっこうですからお聞かせ願いたい。
  149. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 監督官が参りまして注意いたしました事項は、従来はもちろん現在でも鉱業権者に通知をいたしております。これは巡回監督の内容に限らず、鉱業関係のすべての一切の手続は、御承知のように鉱業権者を相手にやっておるわけであります。しかしながら保安のことはもちろん、鉱山に関係して特に現地におります方々みんなのものでございますから、私は保安委員会その他を通じて当然知らせてもらえるというふうに見ておりますが、鉱業権者に対してそれを見せろといった場合に、拒否するような場合がもしあるならば、私どもからお知らせすることは当然であるというように考えております。  ただすべてについて鉱業権者と組合両方に毎回通知を出せということは、でき得ることなら中で何とかいたしてもらいたい。私どもそれにこだわるわけではございませんけれども、すべての書類を一応鉱業権者に対して責任を持たせて通知をいたしておりますから、鉱業権者から聞いてもらうことが原則でありますけれども、もし拒否して知らせないというような事態があれば、もちろん私どもの方はお知らせすることにやぶさかでございません。それに監警官も現在では大がいの場合、組合の方と一諸に下がる場合もありますし、その内容は大体御存じになっておるのではないかというふうに見ておりますが、もちろん全部が全部通じておるというふうには考えておりませんで、もし必要がある場合には、いつでもお知らせするという点については決してやぶさかではございません。
  150. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は現行法のもとではなかなか困難かもしれませんが、立法的には現行法を改正する要があると思うのです。むしろ公知義務を課す必要があるのではないか、かようにさえ感ずるわけです。それは御存じのように就業規則等は労働基準法で公知する義務がある。ですからいやしくも鉱務監督官が勧告したような事項は、きわめて生命に危険な重大な勧告ですから、これは一般の労働者にも周知徹底させる必要がむしろあると思うのです。現在の鉱山保安法でも鉱山保安監督部長あるいは鉱務監督官に対する申告という条項で、法の三十八条に、労働者は、そういう危害を生じ、またはおそれがある場合には、これは申告することができる、こういうぐらい、いわばシビアーな——厳格な規定があるのですから、それならば、むしろ公知をする必要があるのではないか、そうして保安思想の徹底をはかるべきではない、かように考えるわけです。大臣、これは立法論としてはどうでしょうか。
  151. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 立法論としては考え得る問題だと思います。
  152. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 さらに、私は今の監督員の問題も、その基準に該当する者は労働者の中から選ぶ、何も労働組合と言わなくてもいいですから、その働いている従業員の中から選ぶという形も必要ではないかと思うのです。それは当然法律で、いわば被害者といいますか、災害を受ける人々の代表として、その者が保安にタッチするということが必要ではないかと思うのです。先ほどの、通産省の権限を労働省に移管するという問題も、やはりそれから出ておるのですから、行政官庁の機構をいろいろいじることもどうかと思いますが、少なくとも監督員は、従業員の中で資格を持っておる人については、その中から選ぶということも必要ではないかと思うのです。それを自由意思にまかさないで、法律である一定の条件をつけて規制をしたらどうかと思うのですが、その点、立法論として大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  153. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 立法論としても、とにかく鉱業所長ですか、鉱業権者と一身同体の関係において、同じ鉱山の保安を守るという目的においては一致するのですから、別々に選んで推薦をしてくる、推薦制に基づくということも、やはりこれは忘れてはならぬ問題じゃないかと思うのです。今のあなたの、資格のある者ならいいじゃないか、これは私はいいと思います。
  154. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そこで、立法論としては御検討を願いたいと思うのです。これは単に対立するということでなくて、いかにして保安を完全にし、災害を防止するかという意味においては、単に労働条件の周知徹底よりも、あぶない個所を知らすということの方が必要ではないか、その点、御考慮願いたいと思います。  さらに、出水事故に対する問題ですが、本年度は幸いといいますか、雨が少なくて、出水事故は比較的起こらなかった。しかし、豊州炭鉱のような問題が本年度も起こったのですけれども、この筑豊地区の旧坑の調査というものは、私は単に古い人に問い合わしたり、あるいは図面を集めてみて整備したということでは、解決できないと思うのです。現実に起こりました豊州炭鉱の採掘の跡も、この前予算をとりまして、五千万円程度で、三カ年計画でやりまして、あの旧坑の採掘跡は調査済みになっておるのです。豊州炭鉱の跡は調査済みになっておる。その調査済みになったところから、実は、後に災害が起こってから古洞のあったことが発見されたわけです。ですから、私は何のために調査をしているかわからないという状態になると思う。ですから、科学的な調査が必要ではないか。単に聞き込みとか図面を合わすというだけでは、どうにもならない状態になっておると思うのです。そこで、やはりボーリングによる旧保安図の整備ということが必要ではないかと思うのです。この点についてお聞かせ願いたいとともに、先ほどお話がありました先進さく孔の問題も、保安補助金などを出して、やはり先進さく孔をやらせなければ、これはなかなかむつかしい問題ではないか。その二点について、局長でけっこうですから御答弁願いたい。
  155. 今井博

    今井(博)政府委員 古洞の調査につきましては、御指摘のように、毎年八百万円程度の予算をもって調査を実施して参りまして、三十七年度が終わりでございますが、実質的には三十六年度で大体主要な個所は終わることになっております。三十六年度の予算といたしましては約千万円程度、二百数十万円予算がふえておりますが、これは先生の御指摘になりましたボーリングの費用でございます。もちろんそう多額ではございませんが、一応これでやれるではないかと思って、そういう予算を組んでおります。先ほど御指摘の豊州炭鉱の古洞調査はすでに済んでおって、あとからああいう古洞が発見された、こういうことになっておりますが、実はわれわれとしましては、古洞調査はいろいろ緩急順序を考えまして、まず最も近い採掘の方向にある個所につきまして、古洞がありはせぬかという点に重点を置きまして、それを第一類として調査を実施いたしておるわけであります。あの田川地区につきましては、もちろんその意味では調査済みでございますが、古洞、採掘場所に割合遠いところといいますが、やや無関係と思われるところにつきましては、第四類といたしまして、実はあとからやろうということでやって参りました。この第四類は三十六年から七年にかけてやるつもりでおったのであります。豊州のあの地区が第四類では、今から申し上げると恐縮なんでございますが、われわれの調査の予定としては、実はそういう心づもりでおったわけであります。はからずもああいう非常に浅いところ、しかも方向としては採掘場所から非常に離れているところから、ああいう古洞が発見されまして、われわれも非常に反省をいたしまして、古洞の調査のやり方としては、採掘場所から離れておっても、川底であるとかあるいは沼があるとか、そういうところは再調査をすべきであると考えまして、昨年の九月三十日の豊州炭鉱の事故の直後から、そういう指令を各通産局に出しまして、川があるとか沼があるところについては再調査をさして、第四類であとから実施する予定であったところにつきましても、もう一度取り上げてやれ、こういう指令を発して今やっておるところであります。一応これの主要な個所は三十六年度で終わった、こういう程度であります。
  156. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今お話のような状態で、通産局としてはかなりやられておるでしょうけれども、現実には災害の防止には間に合わないという状態ですから、これは一つ徹底的にやってもらいたいと思います。先進さく孔の問題について答弁願います。
  157. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 先進さく孔の点につきましては、従来はもちろんとっておりませんが、ただいま三者の連絡会議で、保安専用区として補助金を考慮するという方向で目下折衝中でございます。
  158. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に、大臣にお願いしておきたいと思います。あすは衆議院の本会議で、炭鉱災害防止に関する決議案が、幸いに三党一致の形で出されるわけであります。続きまして、自民党と社会党の国会対策委員長、さらに政審会長、幹事長、書記長、こういう六者会談が開かれて、この決議案に対する事後処理の問題、いかに法案に盛るか、あるいは予算はどうするか、こういう話し合いがなされる予定になっております。そこで、政府におかれましても、少なくとも緊急な問題については、補正予算を組むなり、あるいは予備金を使うなり、何か本年に間に合うような方法をとってもらいたい、この点について、一つ大臣から答弁を承りたい。
  159. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 もちろん緊急な問題につきましては、それに対応してタイミングを合わせて有効な施策をしたい、かように考えております。
  160. 小川平二

    ○小川(平)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十一分散会