○
松尾政府委員 法律的な問題といたしましては、
先ほど申し上げましたように、このチケットは本来
割賦販売で物を買う
一つの証票であって、会員証を持って、しかも
自分が買うときに会員証を示し、記名捺印をして、それで初めてチケットの
法律的な
効果が発生するような性質のものであります。従いまして、そのようなチケットがかり譲渡、質入れという形で他人の手に移ってそれが使用されます場合には、これは
法律の
形式論で申しますと
——形式論に過ぎるかもしれませんが、申しますと、それを譲り受けて、記名捺印、それをどうするかわかりませんが、いわば他人がこれを使えば、本来の、いわゆる本人の名義を偽って使用したということに、
法律構成としてはなるわけであります。そういう問題は一応別といたしまして、
現実問題としては現在私
どもの調査で、最近はだいぶチケット金融の専
業者の数は減りつつあるというふうに聞いておりますが、流通部会でこの問題を取り上げられました当時の
実情から申しますと、チケットを買います、チケットで金融をいたしますということが盛んに新聞広告に出る。しかもそのチケット金融の行なわれておる場所というのが、やや不健全な、あるいは相当不健全な競技の場所等で、その近くで小さな立て看板
程度で、その営業の場所というのはせいぜい五、六坪くらいの小さなところでやられておる。金融の形として実質的にもかなり不健全だ、そういうものが本来の
割賦販売に付随して非常に盛んになるというようなことを
考えれば、その弊害は非常に大きいではないかというようなことが非常に議論されました。そういうことから
実情をだんだん調べてみますと、
現実には金融
業者はこれによりまして、大体月七、八分くらいの利息を利息天引きで貸して融通をしておるようであります。そしてその際に、
先ほど申しました本来のチケットには記名捺印しなければならないわけでありますが、おそらく大
部分の場合は全部記名をさせて捺印をとっておくか、あるいは
契約書の中に
——私
どもの入手しましたチケットの譲渡
契約の中にも「購買券で任意に券名義人の名を以て額面金額の物品を購入されても異議なく、券名義の印鑑が必要の場合は何時でも御申出次第持参捺印すべきは勿論、券
行使期限の
関係上その暇なき場合は、適宜調製の上」、適宜というのは名前を書いて、適宜判こを押して「御使用下さるも差支ありません。」というような
契約書になっておるわけでございます。いかにも不健全な仕組みになっておると思います。そういう形で、その金融をしたものが返ってこない場合には、どういうふうに行なわれておるか、具体的な場合はいろいろあると思いますが、切符には大体二カ月の使用期間があるわけであります。従いまして二カ月の使用期間までに金が返ってこないときには二カ月を待つわけには参りませんから、大体一カ月くらいでまたそのお客さんの方に催促をして、新しい切符と差しかえてもらう。金も持ってこられない、差しかえもできないという場合は、一月カくらいで質流れという形になりますから、それをブローカーに渡す。ブローカーはそれを買い集めて
——これはいろんな場合があると思います。さらにお客さんを探すという場合もあると思いますが、それよりはむしろ一括して、どうせブローカーは割引して買いますから、割引で買って、しかも券面金額で、私
ども聞きましたところではウイスキーとか酒類を買い、従って安く買ったウイスキーその他洋酒をバーその他に卸しておるブローカーもあるそうであります。もともとそのチケットは券面金額の七割しか貸さないわけでありますから、そのまま質流れとなれば七割でそのまま売れるし、ディスカウントできるわけであります。そういう弊害がある。またそういうことでなければチケット金融というものは成り立たないということになっております。またある場合には、チケット金融
業者の店に行けば、ディスカウントされて安く買えることもあるということを承っております。そういうことを
考えますと、本来の用途以外にそういう不健全な取引を業として助長するようなことは、この際
法律で改めるべきであるということに相なったのが従来の経緯であります。ただ
現実問題としましては、
先ほど岡崎先生の
お話もありましたように、
現実にやっておる者がこれで当面不測の
損害をこうむるようなことだけは防がなければならない。一応
法律的には六カ月くらいの猶予期間がございますので、その間に一人当たり五千円くらいの
代金を
回収して従来の営業そのものに不測の
損害を与えるようなことを防ぐことは必要であろうと思います。