○山本
参考人 神戸貿易協会理事の山本でございます。本日ここに、
中小貿易業者の代表という形で、
中小商社の声を聞いてやろうということでお招きにあずかりましたことを厚く御礼申し上げます。私は
神戸貿易協会の
理事をいたしておりますけれ
ども、
神戸貿易協会の
意見というものは、すでに文書で皆さんのお手元に行っていると思いますし、またもう
一つ、最近全国
中小貿易業連盟というものができまして、全国の
中小貿易商社千三百社ほど集まりまして、全国組織を作ったのでございますが、これの輸取法に対する
意見も三回にわたって出ております。ですから、私としては、ここでお許し願えるならば、日夜第一線で実際に
貿易、準
貿易をやっている神戸の
中小商社の三等重役はどういうふうなことを感じているかということにお耳を傾けて下されば幸甚だ、こういうふうに、私個人の
意見として申し上げたいと思います。ただし今申し上げますことは私個人の
意見でございますけれ
ども、私の知っている限りでは、全国の
中小貿易業者は私とほとんど同じ
意見じゃないか、いうならば、全国
中小貿易業者の最大公約数的な
意見じゃないかと、私自身はうぬぼれているわけでございます。それで、まずこの
法案に対する結論から先に申し上げまして、あと、なぜそういうことを言うかという理由に入っていきたい、こういうふうに思います。
結論を言いますと、この
輸出入取引法の存在理由並びに
改正理由というものは、客観的に見まして、現在の統制
経済上また、あるいは通商政策上やむを得ざる点はずいぶんあるのでございますけれ
ども、われわれ
中小貿易業者の
立場からすると、必ずしもそうだからといって全面的に
賛成はできない。具体的に申しますと、要綱第一、
需要者または
販売業者の
輸入貨物の
国内取引における購入に関する件及び要綱第八、
輸出貨物の
メーカーに関する
国内の
アウトサイダー規制、これは政策上の必要は十分認めておりますけれ
ども、
中小商社を圧迫するものとして、
賛成いたしかねるわけでございます。
次に、その他いろいろな、たとえば一次産品買付の調整の問題とか、
負担金の問題がございますけれ
ども、これらの問題は、われわれとしては必要やむを得ざる最小限として、消極的に
賛成するというような
立場をとっております。
しからば、なぜ通商政策上この必要を認めながら中山
貿易業者がこの要綱第一並びに第八に対して
反対意見を述べなければならないか、こういうことを申しますと、現在の
貿易政策ないし通商行政に、われわれからいたしますと一本くぎが抜けている、肝心なものが一本ないからであります。それがあればこういうものも必要だと思いますが、それがなければわれわれとしては困るので、きょうここで間に合う問題ではございませんけれ
ども、この際希望申し上げたいことは、これと並行的に
貿易業法というようなもの、流行語で言いますと、
農業基本法と同じように
貿易基本法、そういう一本くぎをさしていただきたい。そうして、中山
商社の保護育成について全体的な
法律体系として持っていっていただきたいというふうに思うわけでございます。
次にその理由を申し上げます。今言いましたように、この
輸出入取引法の
政府の
立場は十分わかりますけれ
ども、
経済政策の効果というものと、社会政策性との関連において若干われわれの見解と違うではないか。こういうことでは、
貿易振興という
経済政策あるいは国家目的のために、そこに犠牲考が出てくる。これに対して手を打たないで
貿易政策だけをやるということは、はたしてこういうふうなデモクラティックな国でよいかどうかという問題であります。
まず
メーカーとの関係でございますけれ
ども、
メーカーといっても、マンモス・
メーカーから四畳半
メーカーまでございます。われわれ
商社と
メーカーとのバランスは、戦後だんだんはずれてきているわけです。やむを得ませんでしょうけれ
ども、戦後
政府の
経済政策は、欠乏
経済から脱却のために
生産中心主義になった。これはものを作らなければならぬから、ごもっともです。あるいは復金とか、
輸入割当によって
商社はあってもなくてもよいというようなことではないでしょうけれ
ども、軽く見られた、こういうことがございます。
第二の問題として、戦後インフレによる一番被害者は
商社です。工場のある方は資産の再評価で、含み資産とかいろいろな画でインフレに対してヘッジングができるが、言うなれば、われわれは流動資産と現金しか持っていない存在であります。この上に
政府の
経済政策が
生産復興
中心になったので、
メーカーと
商社のバランスがだんだんくずれてきた。最初は
生産復興に理由があった。ところが、三十年、三十一年になりまして、統計が示すように、
生産がだんだんふくれてきますと、需給のバランスが回復してきまして、今度は逆に
生産過剰面が現われてくる。そうすると、作る政策から売る政策に転換しなければならぬ。このときに際して、人間の悪いところでございますけれ
ども、
メーカーとしても、一たん握ったものは放したくない。そういうことでずるずるずる
メーカー中心主義が続いてきた。そのために
商社の地位が下がってきた。このときに第八のような
アウトサイダー規制をやられますと、われわれの地位はさらに振り回される。ここに不特定多数の
貿易業者というものがあって、ここに特定少数のカルテルがある。特定少数のカルテルを強化しますと、不特定多数のものが振り回されるにきまっている。、だから、私としては、まことに残念ですけれ
ども、こっちの力も何とかしてもらわぬと、こっちだけ防いでは困りますと言わざるを得ないのでございます。だから
メーカーとの関係で
反対するわけで、われわれは紡績とか鉄鋼とかいうようなマンモス独占資本の工場の足軽みたいにやっているわけですけれ
ども、私的独占カルテルに持っていかれますと、これまた足軽扱いにされるということを心配しております。
次に、
中小商社と大岡社の関係でございますけれ
ども、
政府はいわゆるチャンピオンシスティムというのかなんというか、大
商社中心に問題が片寄り過ぎているのじゃないか。たとえば実績制度をやりますと、実績かせきという問題が起きてくる。実績かせぎでやりますと、成績を上げなければならぬ、成績を上げるためには安く売らなければならぬ、安く売るためには多少損をしなければならぬ。われわれは損したらつぶれるから、損はできない。損のできるマンモス
商社が損をして、実績がそこに集中していく。そのために
政府の
輸出入取引法の実績制度というものは、
中小に対して非常にマイナス的な面が今まで出てきております。だから今まで申し上げましたことを言いますと、結局
輸入の問題では
需要者というものは、言葉は
メーカーと違いますけれ
ども、大体
国内の
メーカーが多いというふうな、大
商社と大きな
メーカーと
中小商社とのバランスという問題であります。言いかえますと、現在の統制方式というものは、満員の電車の中のお客さんの整理をしている、ここで実績があるものあるいはいいものを特別車に乗せてやる、そうするとこっちは相変わらず満員なんです。せめて満員だから窓口をとじて、あとお客さんが入らないようにしてやらなければいかぬと言うと、それは憲法違反でできないとかなんとかいうことで、
中小府社に対しては何らの手心も、何らの恩恵もないような、これはひがんでおるかもしれませんが、そういう感じがいたします。しからば国家として
中小商社は一体存在が必要なのか。単に社会政策的に助けてくれ、社会保障をやってくれというのとわれわれは若干相違がある、というのは
中小商社を育成した方が国家も得であるし、国民も得である。じゃなぜ
中小商社を育成すればいいのかという問題になります。これは言いますと、まず第一に統計上現在の
輸出の大体半分以上は、われわれ
中小商社がやっているわけです。それでまたやっている品物は何かといいますと、雑貨が多いわけです。雑貨というのは何かといいますと、
日本の労働力が最もたくさん付加価値されたもの、労働力が最もたくさん商品化したもの、すなわち最も外貨取得率の高いもの、これが雑貨でございます。それからもう
一つ言いますと、雑貨的備品をさらに、
アメリカとかヨーロッパとかいうふうなところは、これは
メーカーでやってもできますけれ
ども、失礼ながら皆さんの御存じのないような、地理の先生でも知らないような世界の僻地まで、
日本の商品を根気よく売り込み、新しい
市場を開拓するパイオニアとして国家の先駆に立っておるものはわれわれ
中小でございます。ですからわれわれをうまく育てた方が皆さんのお得だというふうに思います。
その次にそれじゃどういうふうにしてわれわれの育成をやるかという問題でございますけれ
ども、現在の統制が商品別、地域別統制になりますと、統制された地域はそれである
程度の秩序回復はできるが、未統制地域に対して商品なり
商社がラッシュしていくわけです。そこで新しい
過当競争と醜い面が出てくるということは、現在の波打ちぎわ
規制といわれるものは
国内の
貿易業者に対しては、全然野放しになっておるわけです。ふろ屋をやるにしても、パーマネント屋をやるにしても、県か市で一札もらわなければなりませんが、
貿易業者は通産省のお墨付がなくても、国
会議員に落選したら、すぐあくる日からできるわけです。だれでもできる。こういうふうなことで、満員電車の入口をあけっぱなしにして電車の中を整理するということでは、われわれ
中小商社としてはまことに納得できない。そこで皆さんにお願いいたしますのは、ここで
貿易基本法なり、名前は
貿易基本法でもよろしゅうございますけれ
ども、やはり一定資格の水準において現在の
業者を登録していただきたい。それから新規
業者に対しては、現在の登録よりもやや高い水準において
——これを全面的に禁止することは憲法上の問題があると思いますから、要許可営業品目にしていただきたい。それから第二の問題はマンモス
商社と
中小商社との間の事業分野の確定、いうなれば百貨店法、小売法というようなものも
貿易関係において必要じゃないか、ということはマンモス
業者の重役の
方々は、非常に社会性の認識が強うございますけれ
ども、社員の人はノルマに追い回されて、何から何までわれわれの分野を侵してくる、こういうことで新たな
過当競争がマンモス
業者によって起こっておるという事実がある。こういう
意味で事業分野の確立と
貿易業者の登録制というものを、ぜひここでお
考え願いたい。事実上これをすぐやれと言いましてももちろん不可能でありますが、これができましてから、
メーカーの
アウトサイダー規制も
需要者の問題も並行しながらやるなら片手落ちではなく、政策として
考えられるが、これなしに片一方だけをやられることは、われわれとして
立場上納得できない、こういうふうに思います。
以上私の希望でございますが、特にこの際申し上げたいのは、いわゆる倍増ブームとか外貨が二十億をこえた
輸出ブームの陰に、こういうふうな
一つの言うなれば
日本残酷物語というものが現に存しておるということを御認識いただきまして、立法関係並びに法の運用、行政関係においても
中小商社育成のために御尽力願いたい、こういうふうに思います。