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1961-05-26 第38回国会 衆議院 商工委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月二十六日(金曜日)    午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 中川 俊思君    理事 内田 常雄君 理事 小川 平二君    理事 岡本  茂君 理事 中村 幸八君    理事 長谷川四郎君 理事 板川 正吾君    理事 松平 忠久君       有馬 英治君    遠藤 三郎君       小沢 辰男君    神田  博君       藏内 修治君    齋藤 憲三君       笹本 一雄君    正示啓次郎君       田澤 吉郎君    田中 榮一君       田中 龍夫君    中垣 國男君       藤井 勝志君    南  好雄君       米山 恒治君    加藤 清二君       小林 ちづ君    多賀谷真稔君       中村 重光君    西村 力弥君       伊藤卯四郎君    春日 一幸君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         通商産業大臣  椎名悦三郎君  出席政府委員         法制局参事官         (第三部長)  吉國 一郎君         通商産業政務次         官       始関 伊平君         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衞君         通商産業事務官         (石炭局長)  今井  博君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局長小岩井康朔君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 五月二十六日  委員海部俊樹君、野田武夫君、濱田正信君、林  博君、西村力弥君及び渡辺惣蔵君辞任につき、  その補欠として正示啓次郎君、田澤吉郎君、米  山恒治君、藤井勝志君、三鍋義三君及び岡田利  春君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田澤吉郎君、藤井勝志君及び米山恒治君辞  任につき、その補欠として野田武夫君、林博君  及び濱田正信君が議長指名委員に選任され  た。     ――――――――――――― 五月二十五日  諸物価値上げ抑制措置に関する陳情書  (第八六一号)  同(第八六二  号)  同(第八六三号)  同(第八六四  号)  同(第八六五  号)  同(第九一六号)  公共料金等物価抑制に関する陳情書  (第八六六号)  同(第八六七号)  同(第八六八号)  同(第八六九  号)  同(第九一  七号)  同  (第九九八号)  公共料金引上げ中止に関する陳情書  (第八七〇号)  公共料金値上げ反対に関する陳情書  (第八七一号)  同(第八  七二号)  同(第八七  三号)  離島振興法の一部改正に関する陳情書  (第八七四号)  石炭産業振興対策確立に関する陳情書  (第八七五  号)  国民生活安定に関する陳情書  (第八七六号)  金属鉱業安定法制定に関する陳情書  (第九一八号)  低開発地域工業開発促進法案成立促進に関す  る陳情書(第九一  九号)  兵庫県低開発地域に低開発地域工業開発促進法  適用に関する陳情書  (第九二〇号)  諸物価値上り抑制措置に関する陳情書  (第九五〇号)  同  (第九五一号)  物価政策等に関する陳情書外四件  (第九五二  号)  同  (第一〇五四号)  貿易振興対策確立に関する陳情書  (第九五三号)  小売商業調整特別措置法第十四条に基く政令に  関する陳情書  (第九九六号)  中小企業業種別振興臨時措置法による業種別指  定に医薬品販売業を指定に関する陳情書  (第九九  七号)  石油資源開発第二次五箇年計画樹立に関する陳  情書(第九九九  号)  街灯電気料金免除に関する陳情書  (第一〇〇一号)  中小企業振興施設充実等に関する陳情書  (第一〇三一号)  愛媛県における工業用水確保に関する陳情書  (第一〇三四号)  街灯電気料金引下げに関する陳情書  (第一〇三七号)  中小企業に対する金融円滑化に関する陳情書  (第一〇三九号)  四国地方開発促進計画事業国庫補助率引上げ  に関する陳情書  (第一〇四〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入に関する件  輸出入取引法の一部を改正する法律案内閣提  出第一五三号)  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第七一号)  石炭鉱業安定法案勝間田清一君外二十八名提  出、衆法第一〇号)  産炭地域振興臨時措置法案内閣提出第一八四  号)  産炭地域振興に関する臨時措置法案勝間田  清一君外二十八名提出衆法第三五号)  臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正す  る法律案内閣提出第一六一号)  石炭鉱山保安臨時措置法案内閣提出第二〇五  号)      ――――◇―――――
  2. 中川俊思

    中川委員長 これより会議を開きます。  まず、連合審査会開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。  目下建設委員会において審査中の水資源開発促進法案及び水資源開発公団法案の両案について、建設委員会連合審査会開会を申し入れることにいたしましたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中川俊思

    中川委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、開会日時等に関しましては、建設委員長と協議の上決定いたしたいと存じますので、さよう御了承願います。      ————◇—————
  4. 中川俊思

    中川委員長 次に輸出入取引法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。  質疑の通告がございますので、順次これを許可いたします。板川正吾君。
  5. 板川正吾

    板川委員 私は輸出入取引法改正に関連しまして、総理経済政策に対する基本的な考え方、こういうものをまず確めたい、こう思うのであります。  そこで第一に私が伺いたいことは、独禁法に対する池田総理大臣考え方であります。独禁法の第一条には、「この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等方法による生産販売価格技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達促進することを目的とする。」こういうのが独禁法目的なのでありますが、これは要約しますると、競争制限しないで、競争を確保して、そうして独占大資本が一方的に集中することを避けて、民主的な経済発展を期する、これが独禁法目的だろうと思うのでありますが、この独禁法目的考え方というものを、総理はどういうふうに理解をされておるか、その点を第一にお伺いいたします。
  6. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 自由経済建前といたしておりますわれわれといたしましては、その取引が自由かつ公正でなければならぬことは当然であります。そういう意味におきまして、独禁法を制定いたしておるのであります。われ一われは、この独禁法はあくまで守っていきたい、こう考えております。
  7. 板川正吾

    板川委員 私は独禁法目的思想というのは、総理経済政策に対する考え方と、また基盤が一致しておるものと思うのであります。ところが、御承知のように、今回の輸出入取引法改正というのは、国内取引に関してアウトサイダーを非常に拡大していくのであります。そしてこの輸出入取引法というのは、独禁法適用除外法でありますから、この輸取法を拡大していくということは、独禁法法制に大きな穴をあけていく、こういう結果になろうと思うのであります。そこで岸内閣時代から、この輸取法改正しようということで、今回で四回目の提案がされております。これは、アメリカダレス外交が現在残っておって、ケネディ外交に非常に支障を来たしておるのと同じように、岸内閣時代ならば、まあまあ出すこともある程度理解されるのですが、池田総理になって、この輸取法改正案を出されるということは、これはどういうお考えなのか、一つこの点の総理考え方をお伺いしたいのであります。
  8. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 自由かつ公正という建前は堅持しなければなりません。しかし国際貿易におきまして、いろいろ各国間の利害が錯綜しておりますときに、何でも自由だというわけには、もちろんいかないのでございます。言論の自由がありましても、それは公共の福祉ということを考えなければならぬと同様に、国際貿易につきましても、私は向こうに迷惑をかけないように、またこちらが損をしないように、適正、公正な貿易を行なっていくというときには、おのずからその事態に応じていろいろのワクを考えなければならぬと思います。しかも、それはあくまで最小限度にとどめなければならぬ。今までの日本輸出入におきましては、為替貿易管理を強力にいたしまして、金の面でこれを押えておったのであります。しかるところ、貿易自由化為替自由化世界の線に沿いまして、この流れに移り変わっていく場合において、しかも日本経済事情また低開発国先進国等各般事情考えますると、ある程度の規律、規則というものを設ける必要がある。それも最小限度にとどめなければならぬことはもちろんでございます。私は岸内閣池田内閣というのでなしに、前の通産大臣をしておった岸内閣におきましても、輸出入取引法改正は、貿易為替自由化に沿って最小限度改正を加えなければならぬということは考えておったのであります。いよいよ自由化が急速に進んで参りました場合において、また国際間の取引を正常にするためにおきましては、私は、自由かつ公正の建前をとりながらある程度制限を加える必要があるということを考えまして、御審議を願っておる次第でございます。
  9. 板川正吾

    板川委員 ある程度カルテルなりを認めることはやむを得ない、こうおっしゃるのでありますが、日本独禁法制、またこれの適用除外法制というのは、私は世界先進諸国法制から見て、これはちょっとある程度の域を越しているのじゃないかと思うのです。総理も御承知かと思うのですが、アメリカにおいては独禁法というのが非常にきびしい、しかし輸入は別ですが、輸出関係においては、今言ったある程度カルテルなりは認めておるようであります。しかしそれはわずかにウェップ・ポメリン法という法律によって、五カ条で認めておるのです。また西ドイツではわずかに競争制限禁止法の中で六条と七条、二カ条です。それからイギリスにおいてもわずか一カ条です。こういうようにごくわずかなのでありますが、日本では輸出入取引法は数十条にわたって、法律を見れば、ほとんどが、カルテルをどうやって認めていくか、こういうことになっておるので、私は程度の差を越していると思うのです。こういう点で、現状においても程度の差を越しておるのに、さらに国内取引におけるアウトサイダー規制とか、あるいは需要者カルテルを認める、こういうような形をとっていくことは、世界的な立場から見ても行き過ぎじゃないか、私はこう思うのですが、この点はどうお考えですか。
  10. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 これはその国の経済状況によって違うのでございまして、条文の数によってどうこうという問題じゃないと思います。世界の人が日本に対してどういうことを願っているかということをお考えいただきますと、日本が非常に安売りするとかフラッドするとか、いろんなことを言われて、輸出貿易支障を来たしておるのであります。これは日本経済の構造から、また国際貿易ということに対しての日本人の考え方からもくるのでございましょう。そういうことが日本発展途上において起こることは、国情からいってやむを得ない。従って日本がそういうふうに条文をたくさん置いて比較にならないほどやっているじゃないか、こう言われまするが、しかもそれでいて日本貿易は非常に正常に行なわれているかといったら、外国人からいえばそうでない、また外国人から見るばかりでなしに、われわれから見ましても、やはり輸出には、正常な、他人に迷惑をかけないような、そして長い目で見て、日本が損をしないような規制を加えることが、今の状態で必要だ、これはまことに遺憾なことであるかもわかりませんが、実情によってきめていかなければならぬと私は考えております。
  11. 板川正吾

    板川委員 しかしこの独禁法制というのは、ガットにおきましても、あるいはヨーロッパ共同市場、あるいはヨーロッパ貿易連合、そういうところにおいても、輸入輸出に関する国内取引まで、幾らその国の事情があるといえどもカルテルを認め、さらにアウトサイダー規制を設けておる国は、私はどこにもないと思うのです。その点からは総理と見解を異にいたしますが、こまかいことはまた委員会で私は質問したいと思うのです。  そこで総理にお伺いしたいのですが、独禁法制に関する二つ論文があるのです。この論文のどちらに総理考え方が近いか、こういうことをテストというのですか、総理考え方を聞きたい。  第一はこういうのです。「かくのごとき劇甚なる競争が、国民経済全体からみて放置できないに至って始めて、これを制限する必要が生じてくるのである。今日の国際経済界における国際的競争に対抗するうえからいっても、わが経済界の難局を打開する必要からいっても、わが重要産業部門における不必要なる競争を制することは、緊急の必要あるものといわねばならない。このままに放置すれば、ある部門産業全体が共倒れ的に潰滅するほかないものすら存する。……かかる状態はわが国民経済の健全なる発達を策する上から、とうてい黙視できぬところといわねばなるまい。」これがある有名な政治家発言であります。  もう一つは、「自由価格の機能を排除しようとする者は——それが国家によって行なわれようとカルテルのような企業者の組織によるとを問わず——競争を死滅させ、経済を硬直させるものである。」「だから競争経済の長所がすでに歴史的に証明ずみのいかがわしい権力集中の不利益によって相殺されてしまうことのないように法律的にこれを確保する必要がある。」「国家競争競争の結果得られる能率の増進の促進法的措置によって確保し、これに対するあらゆる阻害的要因を除去しなければならない。」  こういうある有名な政治家二つ論文がありますが、総理考え方はいずれに近いですか。
  12. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 たての両面を見なければならぬところを、一面について見た議論でございます。両方とも正しいところもあります。両方とも誤ったところがあります。その間を縫うていかなければならぬと思います。
  13. 板川正吾

    板川委員 前のは岸さんの重要産業統制法に対する解説の中の文章なんです。あとは、エアハルト文章です。私は総理経済的思想というのはエアハルト思想に一番近いだろうと思う。たとえば、総理月給二倍論を持ち出しましたけれども、その数カ月前と思いますがエアハルトが来て、日本労働者の賃金は低いから二倍くらいには上げることも可能であろう、そういう発言をしたことがあるのですが、そういうところからヒントを得て総理月給二倍論も出たんじゃないか、こう思う。それで私は、エアハルト競争経済というのは、総理が異常な熱意を持って貿易自由化を進めようとする思想と、やはり共通している点があるんじゃないかと思う。だから、西のエアハルト東池田勇人、こういうことになるのじゃないかと思う。しかし私は、この論文の中では、前はカルテルの必要を強調している、うしろ自主経済のよさを主張しておるのですね。こう考えると、両方ともいいところがあり、悪いところがあるというのじゃ、総理のこの考え方はどうも中途半端じゃないですか。どうですか。前はカルテルを強調している。うしろ自由経済を強調している。そうすると総理はどっちに近いかといえば、それはエアハルト考え方の方に近いというのがほんとうじゃないですか。
  14. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 表と裏があるということを言ったのはそれでございます。それはあくまで自由主義経済ということを私は言っておるので、どっちかといえば市場経済という点を、エアハルトはそういう言葉を使っておるようでございます。だから自由主義経済建前にいくわけなんです。ただ国際的に他人に迷惑をかけたり、自分が損をするような場合においてはある程度制限したり、規制したりすることが必要であるのであります。アウトサイダー規制をするということはいかにもひどいようでございますが、これは国内的には全部自由なんです。ただ輸出という場合につきまして、国内と同じようなことにいかぬ場合がある。それをある程度最小限度にやろうとしておるのであります。その最小限度にやるところを見て、これは戦時統制のときのような思想じゃないかと言われることは、これは片寄り過ぎた議論でございます。表と裏とがあるのでございます。その点をうまく調整して自分の国のためになるように、そうして相手国に迷惑にならないようにしていくのがほんとう経済だと思います。
  15. 板川正吾

    板川委員 輸出入取引法独占禁止法取引秩序に対する法律であることは間違いないと思うのです。そこで私は、輸出入取引法というのは、本来ならば波打ちぎわから外側輸出入取引法規制をする、そうした波打ちぎわから内側独禁法分野に入る、これが法域の区分からいって正しいあり方だ、こう思うのです。それで国内には自由競争を確保する、しかし輸出面にはいろいろ外国に迷惑をかける場合もあるでしょう、だから輸出面においては多少の規制はやむを得ない、こういう意味から波打ちぎわから外側輸出入取引法内側独禁法、こういうことになるのがほんとうじゃないかと思うのですが、総理考え方はいかがですか。
  16. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 原則はその通りでございます。輸出入取引法というものは、波打ちぎわより外の方をするのが原則でございます。しかし外の影響を内に非常に受ける場合があるというときに、絶対にこっちへは入れぬというわけのものではないと思うのです。外の影響考えるときに、内側でその影響について、どういう措置をとるかということは外からくることなんです。だからそういう原則はあなたのおっしゃる通りでございます。しかし例外として、波打ちぎわよりも外のことを考える場合に、内のことは全部それでいいかというとそれではいけない。外のことをよくするために、そうして国のために、最小限度内側においてもある程度規制ということは考えられるのじゃないか。まあ程度問題でございます。
  17. 板川正吾

    板川委員 独禁法でもたとえば不況カルテルとかそういうものは認めておるのですね。ですから私は、波打ちぎわから外側影響をどうしても国内的に調整する必要があるというならば、それは独禁法分野でやるべきじゃないでしょうか。輸出入取引法をどんどん広げていって、そうして独禁法の穴をどんどん大きくしていくというのは、どうも立法上問題があるのじゃないでしょうか。この点どうお考えになりますか。
  18. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 それは輸出入取引法でやるか、独禁法でやるかというのは議論のあるところでございましょうが、われわれといたしましては、国内生産どうこうというのじゃない、それが国外との関係におきまして行なわれる場合におきましては、輸出入取引法でやることが、私は普通の道じゃないかと考えます。
  19. 板川正吾

    板川委員 諸外国立法例を見ますると、独禁法輸出入関係とは大体同じ法律の中にドイツにしろ、イギリスにしろあると思うのです。日本独禁法は非常にきびしい形をしておる、しかし日本ほど適用除外法のある国はないのです。そしてこういう輸出入取引法で、国内取引までどんどんアウトサイダー規制を認めていく。なるほど国内取引輸出と違うと区分ができればいいのです。ついこの間キャノネットというカメラの国内取引におけるカルテルを調査した結果は、結局輸出におけるカルテルをそのまま国内適用しておる。ある一つの会社が輸出商品国内商品とを別々に区別することはできない。輸出におけるカルテルを認めるということは、国内におけるカルテル裏カルテルといいましょうか、実際上は認める結果になるのです。ですから、非常にきびしい考え方をとらなくちゃならないと思う。輸出のためあるいは輸入のためだからといって、ある程度措置はいいということは、実質的には国内カルテルを広げていく結果になるのですが、こういう点はどういうふうにお考えになりますか。
  20. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 御承知通り独禁法占領下におきまして早急に作った法律でございます。私はそれがいいとか悪いとかは申しませんが、早急に作った法律であり、しかもあのときの日本経済というものと今とは違ってきております。だからよそのような法制でない場合もこれはやむを得ないと思います。  第二の輸出国内取引についてどうこうとおっしゃいますが、これは十分監視してそういうことは厳重に取り締まらなければならない。具体的の問題につきましては事務当局からお答えさせますが、輸出に名をかりて国内取引までどうこうしようということは、これはわれわれの考えておることとは違う。十分監視しなければなりません。
  21. 板川正吾

    板川委員 輸出入取引法が今度改正提案されたのは四度目であります。提案された当初から、輸出入取引法改正しないと日本産業秩序が乱れて、貿易上非常な不利があるという宣伝をなされておった。しかし輸出入取引法独禁法とうらはらの関係があって、結局独禁法改正輸出入取引法改正、こういうことでやったものだからわれわれが反対して、今まで三年間阻止してきたのです。しかし輸取法改正しない三年間の実績というものは貿易が非常に好調なんです。なるほど多少問題もあるかもしれませんけれども、前から見て決して競争は激化していない。全体から見て貿易が非常に伸びておって輸出入が好調である。そうですと、総理改正を強行しろと言っているそうですが、私は輸取法はあえて改正をする理由がないじゃないかと思う。これが第一点の質問なんです。  それからもう一つは、カルテルの歴史というものを調べてみますと、大体カルテルというものは不況のときに結ばれるのです。有名な海運同盟カルテルにしましても一八七三年の不況のときに持たれ、それが好況のときにそのまま存続してくる、さらに不況のときにカルテルが生まれ、それが好況のときに存続される、こういう形であって、そうすると今好況のときにカルテルをあえて認めるということも、どうも考え方としておかしいんじゃないか、これが第二点なんです。それからカルテルというのは、一たん許可しますと消えるものじゃないのです。やみカルテル裏カルテル、もう朝めし食いながら作ったってカルテルは生まれるのですから、カルテルは悪だというエアハルト思想に帰らないと、私いカルテルが蔓延して——なるほど法律的にはひっかからないようにできている。あるいは公取なんかはろくな仕事をしてませんから、ひっかけようったって見つからない、こういう情勢になっておるかもしれません。だから私は、この質問の第一点、第二点は、まず好況の中であえて改正する必要がないんじゃないか、こう思うのですが——それから好況の中でなぜ改正しようとするのか、この点を一つ……。
  22. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 今回の改正は、好況とか不況とかいうことから出ておるのじゃないので、取引秩序を正常化するという考え方でございます。日本輸出はお話の通り国民の努力によって伸びて参りました。しかし日本輸出状況につきましては、日本輸出が伸びると同様に、外国においては相当非難があるわけであります。ガット三十五条の問題等々におきましても、日本輸出取引外国人に合わない、非常に無秩序な点があるということなんかは、好況であろうが不況であろうが、それにかかわらず起こってくるので、ことに好況であればあるほど起こりがちだということは、板川さんも御存じだと思うのでございます。だから、輸出好況不況と、国際取引の秩序をよくしていくということとは無関係でございます。もちろん国内におきましての独禁法のあれ等につきましては、これは不況による場合が例が多いことは、私も承知いたしております。今回の改正輸出入取引につきましての秩序を正すということが主でありまして、好況不況ということとは直接のあれはありません。
  23. 板川正吾

    板川委員 輸出入に関する秩序を保ちたい、これが改正の趣旨だそうでありますが、輸出入取引法の第一条、目的ですか「この法律は、不公正な輸出取引を防止し、並びに輸出取引及び輸入取引の秩序を確立し、もって外国貿易の健全な発展を図ることを目的とする。」こういうことでありますが、この不公正の取引か不公正でないかという基準は一体どこにるあのでしょうか。ここに定義があるようであります。不公正な取引とは、第二条の定義の中で「国際取引における公正な商慣習にもとる輸出取引であって、政令で定めるもの」こういうふうに定義をされておるのですが、国際取引における公正か不公正かの基準というものは、ガット思想が中心になりませんか。ガット国際取引における商慣習の公正な基準じゃないでしょうか、この点はどうお考えでしょうか。
  24. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 ガット考え方は公正と言い得ましょう。しかしそれのみで、それをやっておれば十分と言えるとは思いません。輸出入というものは非常に雑多な状態が現出するのでございまして、ガット考え方はもちろん公正な考え方であろうと思いますが、それで十分だとは言い得られないと思います。いろいろな問題が起こってくると思います。
  25. 板川正吾

    板川委員 ガットは方向を示しているんですね、ですからガット規制に反したから、すぐ違反だとか何だとかいうことを言っておるんじゃないと思う。しかしガットというものは、国際取引における最終的な基準というのを世界各国で承認しておる、こう思うのですが、このガットの総会で、最近カルテルに対する申し合わせをしたことを御承知だと思うのです。それはとにかくカルテルの弊害を第一に認めております。これをどうして除去しようかということで、数回のガットの総会を持った結果、なかなか弊害を具体的に除去するという方法が見つからない。そこでこの弊害を受けた国が申し出をして相手国と話し合う。その結果をガットに報告する。そしてガットに報告した結果、ガットで将来具体的なカルテル防止法の対策ができたら、ガットの取りきめとしよう、こういうことにきめたと思うのです。このカルテルの弊害というのはガットは認めておるんですね。そういう考え方からいうと、どうしても今度の輸出入取引法——私は改正を全部悪いと言うのじゃないですよ。重要な数点は、明らかに今の日本の実情からいってガットの方向と全く相反するもの、こう私は思うのです。特に、何か不公正な取引、あるいは秩序を乱すということで、ガット三十五条を援用しておる国がある、こうおっしゃられましたが、イギリス外十四カ国が三十五条を援用しておるというのは、日本の低賃金によるダンピングという形で、これを一番問題にしておるのです。それはほかのこともあるでしょう。しかしそれらの国で三十五条を援用しているというのは、最低賃金制の実施もない国、低賃金の国、こういうことがその理由の大半なんです。だからこの三十五条が、ただ単なる貿易秩序を乱したということで援用されているのじゃない。その理由も多少はあるでしょう。しかし大半はやはり低賃金によるダンピング、こういう形が私は三十五条援用の理由だと思う。日本が少なくとも欧米の先進諸国のような賃金水準を持っておって、そうして優秀な安い品物を出すのに、相手国が三十五条を援用したり、あるいは非難する理由は、ガットの精神から生まれてこない。あるいは東南アジアとか小さな——これは弱小国といわれますと問題ですから、経済力の少ない国なら別ですがね、三十五条援用の理由というのは、私は秩序を乱したやり方じゃなくて、低賃金の方にある、こう思うのです。この二つの点について総理考え方をお聞きしたい。
  26. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 ガットは、国際カルテルの問題につきまして非常に関心を持っておるのでありまして、一般のダンピングの問題につきましても、これを防止するような考え方を持っております。私は今板川さんの御意見に賛成できないのは、日本が低賃金だからユナイテッド・キングダムが三十五条をはずさないんだ——これは僕は最近の考え方からいってお間違いだと思う。私、はっきりそれは言えます。外交交渉をやっていて、みなフラッドが多い、そして日本が不当に安売りする、こういうことなんです。安売りをしたりフラッドをやる、これが主でございまして、最近アメリカの学者なんかが来まして、問題の紡績業なんかについても、今の厚生施設その他をずっと考えると、低賃金ということは向こうの学者は言っていないと思います。だから今の三十五条の問題は、非常な過当競争による安売りとか、それからフラッドとか、こういう問題が主になっておるということを、私は外交交渉上聞いておるのであります。その点は一つ誤解のないように願いたい。低賃金と申しましても、アメリカの賃金とイギリス、ドイツの賃金はどうかといったらこれは五十歩百歩で、アメリカの賃金は二倍くらいになっておる、私はそれをわれわれの国で言うことは国際的にどうかと思います。とにかく問題はそれは全然低賃金だということがないとは申しません。今の問題は、私は安売り競争とフラッド、こう思います。これが今回御審議を願うもとであるわけであります。
  27. 板川正吾

    板川委員 問題はなぜ安売りができるかということにあると思うのです。日本がヨーロッパ諸国、先進諸国並みの賃金水準をしておって、しかも安く売るというなら私はガットの精神からいって反対する理由はない。ガット三十五条の援用を撤回してほしいという運動を政府がしても、なかなか相手方が承服しないということは、やはりそういう点に原因があるのであって、日本の賃金は西欧諸国から比べて高くないのだという理屈をこじつける人もありますけれども、これは内弁慶と同じで、日本の内部で言っているのであって、世界では通用しない言葉じゃないか、やはり安売りの原因は低賃金にあるということが非難の最大のものであろうと私は思います。  時間がありませんから先に進みます。  次にもう一つお伺いしたいことは、カルテル政策と並んで消費者行政について総理はどう考えておるかということを伺いたいと思います。  政府が高度成長政策を掲げて、それに呼応した民間の設備投資というものは膨大なテンポで進んでおる。こういうふうに生産力が拡大してきますと、近い将来に有効需要が不足する、この有効需要を起こすための政策の一つとして消費者行政というものが、私は重要な行政の一つの課題になってくると思うのです。この消費者行政というものに対して、総理はどういうふうなお考えを持っておられるか、この点についてまずお伺いしたいと思います。
  28. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は経済政策の根本は、輸出の増進と国内の健全な消費の育成、こういうことを考えておるのであります。健全な消費育成が国の経済の高度成長に不可欠のものだということを私が言い始めますと、輸出を度外視しておるという非難を受けますが、輸出はもちろん必要であります。ただ高度成長のためには、国内の健全な消費ということも考えなければならぬということを従来から言っておるのであります。そのためには金融面、価格面でいろいろな施策を要すると思います。私がさきに通産大臣のときに割賦販売業法を御審議願ったのも、こういう意味からの消費行政の一端として考えておっかたらであります。また価格の問題につきましては、先ほどお話のございました公取の監視あるいは物価その他につきましても、企画庁の活動とかいうことを、私は期待しておるのであります。あるいは聞くところによりますと、ノルウエー、スエーデン等におきましては消費者省というものを設けておるようでございます。省を設けるか設けないかということは別問題といたしまして、金融面そうしてまた価格面で相当の注意を従来以上に払っていく必要を、私は認めてその方向で進んでおるのであります。
  29. 板川正吾

    板川委員 日本では政治に産業界の意見というのは十分取り入れられると思うのですが、消費者の意見というのはどうも今までは政治に反映しなかったと思うのです。たとえば物価の問題にいたしましても、卸売物価についてはきちょうめんな正確な指数なりが出るのですが、しかし消費者物価指数となりますと、これは都合のいい資料しか出ないで、ほんとうに実態に即した消費者物価の指数なんかは出ていない、不十分だと思うのです。そういう点で企画庁等を強化するというのですが、消費者行政の国内における元締めは一応公正取引委員会だ、消費者に対する行政機関としてあるものはそれはおのおの関係するにしましても、一応公取だと思うのですが、総理大臣はどうも公取をあまり高く評価しない、私はおかしいと思うのです。独禁法を守るという公取委員会について総理の見解というのは、どうもあまり公取を重く見てない感じがするのですが、そういう考え方はありませんか。
  30. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 公正かつ自由な取引をあれしておる公取委員会というものの任務は非常に重大なことであります。ただあれは派手でございませんから、政府として非常に重大視しておるが表面にはじみでございますから出ませんけれども、これは国家の必要な一機関で、ことに独占禁止というものが消費者に非常な関係のあるということは十分承知しております。
  31. 板川正吾

    板川委員 さっき総理も言われましたけれども、スエーデン、ノルウェー等では消費者省というのを作って物価の関係とか、あるいは国内取引等に関して消費者省が発言権を持って、消費者のための政治を行なっているというのですが、日本ではそういう点はある意味では公取が一番役割を果しておるのです。その公取を総理があまり重要視しない、実はあんなものはあってもなくてもいいと思っている理由は、今年の予算が前年度に比較して二四%ふえておることは御承知通りでございます。公取の予算はわずか二%ですね。ですからしまいにはあってもなくてもいいんじゃないかという気持を持っておるんじゃないか、こう思うのです。外国ではそういう点は、消費者省を作って消費者のための行政を強化していこう。イギリスアメリカでは消費者省を作る、こういう法案が出ているそうですが、こういうようなときに、私はもっと公取等を、総理が真剣に強化すべきじゃないかと思うのです。  それと強化の方法として、現在公取では委員が五人なんです。私の関係している問題で審議を始めて六年間も結論を出さない問題があるのです。とにかく五人で、日本全体の取引関係を公正化し、監視しようというんじゃ、あまりにも少ない、こう思うのです。諸外国の消費者省なんか見ると、委員はふえておる。特に日本の公取の場合は、私は非常勤の委員をふやす必要があるんじゃないか、五人じゃあまりにも少ないんじゃないかと思うのですが、予算と関係して、どうですか、これはふやしてもうちょっと公正取引委員会というのを強化して、将来これを消費者庁なりあるいは消費者省なりに拡大していく前提として強化する必要があるんじゃないか、これは総理のお考えはいかがですか。
  32. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 予算で全体が二 〇数%で公取が一一%、私はその数字ははっきり知っておりませんが、一般予算の方で二四%、公取は人件費、旅費が主でございます。これで一一%もふえたら、今までの公取の予算の状況をごらんになったら、今度は非常にふえた結果が出ていると思います。今人件費、旅費が主でございます。私はそう考えております。ただ、五人じゃ少ないからどうこうと、こうおっしゃいますが、私は単に人をふやしたからどうこうというのではないと思います。ことに公取は審判的なあれでございますから、下の方の調査その他の部分のスタッフは実情に応じて考えなければならないが、審判的なものはあまり数をふやすのは、私はいかがかと思います。五年もかかってまだ結論が出ないと言われますが、事情を知りませんが、これはよほどむずかしい問題で、調査を要する問題だと思います。今の機構につきまして、上をふやすということよりも、もしふやすならば下の方をふやす、こう私は考えております。
  33. 板川正吾

    板川委員 次の機会には、どうしてももうちょっと公取の機構をふやして、国内取引における公正な秩序を確保させる必要がある、こう思うのです。  もう一点だけお伺いしたいのですが、これは簡単にいたします。総理は今度渡米されますが、その渡米される課題で、日中間の解決の問題が、私は、一番大きいと言ってはなんですけれども、大きな課題だろうと思うのですが、日中問題について総理は、今渡米を前にして結論が出ましたか。出たらば、一つお聞かせ願いたいと思うのです。
  34. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 まだ出ておりません。私はこの問題を解決するというのではなくて、この問題に対する認識につきまして、ケネディ等の意見も聞かなければならぬ、そういうことが主でございます。今この問題が、ケネディと会って解決のつく問題ではございません。だから結論も出ておりませんが、今検討しております。会ったからすぐ結論が出るかといったら、そうもいかない問題であります。
  35. 板川正吾

    板川委員 総理の日中問題に対する一つ考え方というのは、私、商工委員会で再三聞いておりますから、考え方は知っております。  そこで、最近の新聞によると、韓国にクーデターがあって、反共体制が強化された。だからわが国においても、日中問題を解決の方向に向けるのじゃなくて、とにかく韓国の情勢に呼応して日本の反共体制を強化するためには、日中問題は従来以上に遠ざかった方がいいのじゃないか、こういう意見が自民党内部にある、こういうようなことが報道されておりますが、韓国のクーデターによって、総理が従来持っておる日中問題に対する認識に特別な影響、変化があったですか。この点一つ……。
  36. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 韓国のクーデターの実態につきましても、まだ十分つかみ得ていないのでございます。そういう状態でございますので、これについてどう考え方が変わったかということは、申し上げるところまでいっておりません。御了承願いたいと思います。
  37. 板川正吾

    板川委員 最後に、きのうの朝日新聞の夕刊を見ますと、輸出入取引法改正案で、政府は需要者カルテルははずしてもいい、こういうことが報道されております。われわれもはずすことは別に反対しているものじゃないのですが、はずした需要者カルテルは、次の国会にまた出し直す、こういう趣旨のことが載っておりますが、法案を出してはずされたら、またその分だけ来年必ず出すという、これが政府の方針ですか。
  38. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私はそれをお願いしようと思っておったのですが、たまたま最後にそれが出ました。この輸出入取引法改正は、最小限度にとどめておるのであります。日本経済の高度成長、そして日本貿易の健全な発展のため、必要最小限度のあれでございます。中小企業関係その他国内影響があります場合におきましては、はっきりそういうことは考えてやる、こう条文にも入れております。これは、もとは私が通産大臣のときに、この分だけはぜひ一つ御決議願いたいということでこしらえたものでありまして、いろいろ御心配もございましょうが、その点は政府において十分考えて、そしてまた施行後におきましては、今後引き続いて国会の監視、意見を聞く建前でありますので、一つ原案通りぜひ通していただきまして、日本経済の高度成長と、国際信用の向上に努める、これが趣旨でございますので、私はこの案を撤回するとかなんとかいう気持は毛頭持っておりません。最小限度でありますから、どうぞ一つ御協力を願いまして、もし結果においてよくなかった、悪いということがありますれば、いつでもあなた方のお話によりまして修正いたします。これで一つ最小限度の施策をやらせていただきたい、こう思って、実はお願い方々所信を申し上げるのでございます。ぜひとも原案通り通過させていただきますことを、総理として特にお願い申し上げます。
  39. 板川正吾

    板川委員 これはどういうふうにお頼みになっても、輸出入取引法改正案を原案通り通す意思は絶対にありませんから、それは一つ御了承願いたいと思います。どうもこの報道を、総理は何か知っておるような感じがするのですが、面子にとらわれて改正せざるを得ないというようなことがどっかにあります。これは理屈としては私は筋が通らないと思う。今まで改正提案が三回で、今度四回目だから、これで落っことされたんじゃ面子が立たないというので、面子で法案を出したり引っ込めたりするという考え方は、私はまことに不都合な考え方だと思う。しかし、これは総理発言でもないし、総理の意向を受けたわけでもないのですが、その点は私どもまことに遺憾だ、こう思います。  とにかくカルテルというものは法律だけじゃない。国際カルテルなんか法律じゃなくても、網の目のようにカルテルがあって、これは政治力よりもカルテルの支配力の方が強い、こういうことさえいわれているのです。アメリカとドイツと戦争をしているときに、アメリカカルテルの当事者は、敵国のドイツの資本家とも、カルテルを守っていこうという約束さえしているので、カルテルというのは、私は最小限というのは、波打ち際から外側考えるべきであって、内側に拡大していくということは、どうしてもこれは承服できないのでありまして、なお詳細については、委員会なり小委員会なりで申し上げたいと思います。  総理に対する私の質問は、そのほか国際収支に関連して聞きたいと思ったのですが、時間もございませんので加藤委員に譲って、私の質問はこれで終わります。
  40. 中川俊思

    中川委員長 加藤清二君。
  41. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私はただいま上程されておりまする輸出入取引法の一部改正に関しまして、せっかくの機会でございまするから、総理に二、三質問を試みてみたいと存じます。  まず第一番に、総理は国会の正常化、これは国民の声であると同時に総理が最初に公約なさったことでございまするが、国会の正常化のカルテを一つお示し願いたいと思います。
  42. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 国会は与野党が十分論議されまして、政府提出の法案、予算案あるいは議員提出の法案が十分審議されることだと存じます。
  43. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 実は本委員会の様子を見ておりましても、きのうもおとといも流れているわけでございます。ところがそれは委員長がなまけているわけじゃない、理事の皆さんが怠慢しているというわけでもないのです。さりとて野党が出席を拒んだというわけでもない、暴力をふるったためしもないのです。にもかかわらず流れているのです。帰するところは出席がないからなんです。しかしそのあとを受けたきょう、総理が御出席になりまするというと、とたんに出席がよろしい。私はしみじみ総理の実力というものを身にしみて感じているわけです。ほんとうに本委員会を正常化しようとなさるならば、総理が毎日出てきていただけることが一番いいことじゃないか、こう思うのです。私自身は、国会の正常化ということは、あなたがお考えのように、国会内の暴力を排除するとか、あるいは国会周辺の暴力を排除するということも大切かもしれぬと思いまするけれども、それよりなお大切なことはまず出席することである、かように思うわけなんです。一体総理はこれに対してどうお考えでございますか。
  44. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほど申し上げましたように、十分法案その他を審議することが正常だと思います。
  45. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そこで総理にお尋ねしなければならぬことは、国会の正常化についてもさようでございまするが、どうも肝心な点を忘れておって、そうして制限をするとか、あるいは制約をつけるとか、そういうことにウエートが置かれておるようでございます。たとえば貿易振興輸出振興についてもさようでございまするが、これが所得倍増のポイントである、日本経済発展の中心が輸出振興であるということは、だれしもわかっておることでございまするけれども、本委員会にかかっておりまする法案をながめてみますると、輸出振興関係する法案はこれだけなんです。しかもその内容は、中小企業に心配をかけるとか消費者に憂いを持たせるとか、そういう犠牲のもとに輸出振興がはかられようとしておるようでございまするが、これがはたして総理の本旨でございましょうか。
  46. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 輸出振興につきましては各般の施策を講じておるのであります。そうして今回御審議願いました輸出入取引法改正は、先ほど来申し上げておる通り貿易為替自由化の進展に伴いまして、貿易促進に必要最小限度改正を試みんとしておるのであります。
  47. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 中村理事から参議院のお話が出ておるようでございますが、私はまだ立ったばかりなんです。ですから委員長一つ御了承願います。
  48. 中川俊思

    中川委員長 わかっています。
  49. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 国会の正常化について、もう一度承りたいことがございます。それは出席が非常に悪い。これをよりよくせんければ、本委員会にかかっておりまする法律、これだけでも二十の余あるわけでございます。予算に関係ある法律だけで六つも残っておるわけでございます。これは決して社会党の非協力なるがゆえではございません。つい最近までは、どんなに委員数が少なくても私どもは協力をし、法律を通してきたはずでございます。従って本委員会を通過した法律の数は、他の委員会と比較して決して多いということはあっても少ない比率ではないと思う。ところが、私どももかんにん袋の緒が切れたと申しましょうか、あまりにも非協力的である。通産大臣が上程なさいますときに、ぜひ御協力願いたい、こう言うておられまするにもかかわりませず、そのおりに二人か三人しかいらっしゃらない。きょうは少ないじゃないかとおっしゃるが、わざと少のうしてある。従って大臣に承りたいことは、あなたは教員に対しては勤務評定をぜひやれ、こういうことであのことが強硬に行なわれたわけでございます。私は、勤務評定は、毎日まじめに教育に専念している教員よりも、むしろ欠席しがちな本委員会、あるいは国会にこそ必要だ、こう思うのでございまするが、所見を承りたい。
  50. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 議員その他の問題にからむ問題でございまして、私は国会議員だから規定によりまして勤務評定をやるというようなことは考えておりません。
  51. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この法律が大事である、ぜひ通していただきたいと総理は先ほどおっしゃいました。ところが、今までながめておりますると、どうもこの法律を通す意欲と申しましょうか、そういうことがないのじゃないかと思う。なぜかならば、第一は、某選挙が最近行なわれたことがございまするが、そのおりにも、この法律は社会党が反対をしているから通らないんだという旨の発表があったはずです。これが新聞に麗々しく出ております。まだこれは一度も審議してない、反対しているか賛成しているかわからない、そういう時期にそのような発表が行なわれた。本委員会の出席率はごらんの通り。きょうはよろしい。ところで、先ほど同僚委員板川君の質問にも出ましたように、昨晩の新聞発表によりますれば、需要者カルテルは削除する、情報を考慮している、そこまではけっこうでございます。ところが情報を考慮して通した暁においては、その削除された分は次の国会には必ず提出する、こう書いてある。そうなりますると、これを通すためには一歩引き下がるけれども、通しておいて次の国会には、またはっきりと本性を現わしてくる、つまり先にとりでを取って、次には外堀を埋めさせ、内堀を埋めさせておいて、あとはほんとうの天守閣を乗っ取ってしまう、こういう手段がここに歴然と現われているとしか見られないわけであります。こういうことを言われて、はたして私どもがその手に乗ることができるかできないか、この点も一つよく御考慮願いたい。
  52. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 あなたの御質問の前提が違っておりませんか。政府はそういうことを発表した覚えは一切ございません。そういう政府の考えていないことを、新聞に載ったからといって、それで言われても、これは答えようがございません。
  53. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 答弁されている最中に脇からこうやられるものだから、次に何を言うていいかわけがわからなくなってしまう。私は気が小さいので……。ちょっと中止して下さい。
  54. 中川俊思

    中川委員長 それではこの際一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      ————◇—————    午後二時十九分開議
  55. 中川俊思

    中川委員長 休憩前に引き続いて会議を開きます。  輸出入取引法の一部を改正する法律案について質疑を続行いたします。加藤清二君。
  56. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 池田内閣の所得倍増論は、政策のうちでも最たるものであると承っておりますが、その所得を倍増いたしまするには必然的に輸出振興をはからなければなりません。その輸出振興に対しまして、所得倍増計画によれば北米あるいは欧州等高所得地域に対しては、基準年度の四倍を予定していらっしゃるようでございまするけれども、この際総理にその四倍を造成するにあたっての基本構想がございましたら、御所見を承りたいと存じます。
  57. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 経済の高度成長をはかりますためには、お話のように輸出の増進に重点的に力を入れなければなりません。また私は、高度成長のもとをなす健全な国内の消費も考えなければなりません。またどの国にどれだけになるかということは、これは十年先のことでございまするから、なかなか一々申し上げるわけにはいかぬと思いまするが、何と申しましても、輸出は多々ますます弁ずでございます。従いまして、そのためには今の国際競争力をつけるということ、そしてまた輸出に対しての便益、いろいろな点での助成策を講ずるということが必要であると考えます。そういう方向で、今後進んでいきたいと思います。
  58. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 輸出振興のもう一つの柱に、貿易自由化ということがうたわれているようでございます。もしそれ今後制限貿易をだんだん解除していくということでございますれば、それぞれその地域別、国別の構想があると思います。一体自由化はいずれの方向に向かって行なわれようとしておるのでございまするか、総理の見解をお願いします。
  59. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 経済の高度成長、これはわが国のみならず、世界的に見ましても、世界貿易の拡大はやはり自由貿易から生まれてくることと考えるのであります。従いまして私は、一昨年来貿易自由化、為替の自由化の方向に向かって進んでおるのであります。自由化はグローバルで、どの国に対してはこれだけの自由化、どの国に対してはその自由化をもう少し縮める、こういう考えのものではないと思います。ただ特殊の場合に、通商協定その他の締結の有無によっていろいろ違って参りまするが、原則としてどの地域に対しても自由化でいきたい、こう考えておるのであります。
  60. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 しからば共産圏貿易もあるいはポンド地域、ドル地域と同等にお考えでございますか。
  61. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 御承知通り共産圏地域でも一律にはいっておりません。友好関係にあります国とまた政治的に承認していない国等におきましては、そこに差異があることはやむを得ぬ状況でございます。
  62. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたの方から提出されました所得倍増計画によれば、ドル地域、ポンド地域はより多く伸ばし、共産圏地域はそのあとに続いているようでございまするけれども、この基本方針には変わりはないわけでございますね。
  63. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 他の場合において言っておるのでございますが、所得倍増計画というのは、企画庁で諮問しました一応の計画を私は三十二年度のあの長期計画にかえるものとしておるのでございます。それに載ってある通りをやっていくという気持はございません。われわれの考え方と違っている点が多々あることは、予算委員会その他で申し上げている通りでございます。しこうして御質問のドル地域、ポンド地域あるいは共産圏というものにつきましては、その案を作成した人が、過去の実績、そうして貿易制限等いろいろな事情を加味して一応の計算をしたのだと思いますが、その通りいくわけのものでもないのであります。
  64. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 安保条約の第二条及び日米友好通商航海条約等々によれば、特にドル地域と申しましてもアメリカとの貿易を一そう緊密化し、発展させようという政府の努力がうかがえるようでございまするが、これは間違いでございましょうか。どう受け取ったらよろしゅうございますか。
  65. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 各国とも、それが共産圏であろうがソ連であろうが、われわれは貿易発展は望むところであります。従いましてソ連圏との貿易状況を見ましても、すでに御承知通り、年を追って活発化、拡大化していっておるのであります。アメリカとの関係は、従来もそうでございまするが、両方の国の置かれた地位、いわゆる産業上の点等々から考えまして、貿易経済交流に特段の努力を払っていこうということは、安保条約第二条にも規定しておる通りであります。
  66. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もし総理のお答えが真実とすれば、わが党といたしましても、アメリカとも中ソとも、ともに仲よく親交を進めると同時に、貿易の伸展をはかろうとしておるわけでございまして、これは完全に意見が一致すると言わなければなりません。いずれにいたしましても、その点が一致するとすれば、私どもは一そうアメリカとの貿易を伸ばしたい、こう思うているわけでございまするが、遺憾なことに、貿易自由化され、安保条約の第二条でますます自由化発展経済の交流の発展をはかろうとしていらっしゃいまするにもかかわりませず、日本アメリカとの貿易は、常に過去におきましても赤字の累積でございます。なお安保条約以後の貿易状況を見ますると、まことに残念なことに、買いはふえておりまするけれども、売りは一向にふえておらないようでございます。これについて一体総理としてはどのようにお考えになり、どのような対策をお考えでございましょうか。
  67. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 貿易の動きというものは、やはりその国の置かれた産業状況によって違ってくるのであります。またそのときどきの経済情勢によっても違ってくるのであります。従来アメリカ日本との関係は、原料その他すなわち産業機械等々におきまして輸入超過の場合が多いのであります。
  68. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 常に、アメリカとの貿易の帳じりの赤字は、やがてその赤字を埋めるために他の地域との貿易において黒字をかせがなければならぬというのが常套的手段と申しましょうか、過去のならわしになっておったようであります。他の地域において黒字をかせがなければならぬ日本の運命は、やがてその相手国をして日本商品を警戒させるという機運を生み、その結果ガット三十五条の援用ということに相なっているようでございまするが、少なくともいずれの国におきましても、貿易はでき得べくんばフィフティ・フィフティでいきたいというのが、貿易に対する理念ではないかと思われます。従ってでき得るならばアメリカ日本貿易におきましても、そこだけフィフティ・フィフティでいくという方向にいくべきだと存じますが、これについて総理はどうお考えでございましょうか。
  69. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 その考え方には私は全面的に賛成できません。そういう考え方もありましょうが、貿易には採算というものがありますから、高いところの原料よりも安いところの原料を買った方が得だということになりますから、必ずしもフィフティ・フィフティでいくというわけにはいきません。これはどこの国におきましても一どこの国とは従来から輸入超過になっており、どこの国とは従来から輸出超過になっておる。それがマッチしまして国際的自由貿易が盛んになっていくのであります・ガットの三十五条を援用しているのは、日本から輸出が多い、というのは輸出超過の国がガットの三十五条を援用しておるとは言えない。これは今朝申し上げましたようにいろいろな観点からきておるのであります。歴史上の問題もございましょう。新たに国際連合に加盟した国が、当然そういう権利を主張すべき筋合いのものではないのに、慣例上三十五条を援用するという強がりを言っているところもございます。輸出入の不均衡からきているとは考えません。それからフィフティ・フィフティという原則を貫かなければならないという意味のものでもございません。全体としては輸出入バランスが、どちらかといえば黒字であってもらいたいというのが各国の希望で、それは全体を通じているわけです。しかし個々の国とも均衡をしようという気持はみなあると思いますが、またそれでなければならぬというわけのものでもないということであります。
  70. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 フィフティ・フィフティでいきたい。しかしながら日本のように材料のない国は、それを諸外国に求めなければならぬ。従ってその材料は安いほどよろしい。その安い材料を加工して輸出することによって国の経済を成長させる、私もその意見には賛成でございます。にもかかわりませず、私はここに残念な統計を申し上げなければならぬのでございます。材料はアメリカから買っている。しかもその買っている量はアメリカ生産の三割から四割、ときにはそれを越したということもあるようでございます。ところが売りの場合、それを加工していざ輸出をしようとするということになると、それが制限を食らう。それはラッシュしたからである。こういう意味で、ラッシュしたのはこちらが悪いからというので自主規制をした。自主規制をしてみたらその誠意を相手国が買って、せめてその年の貿易量を維持してくれるかと思いきや、残念なことに貿易量は低下の一途をたどっているということがあるのでございます。すなわち過去の輸出貿易につきまして、最長の歴史と最大の功績を発揮した繊維製品でございますが、これが一九五八年には、日本アメリカに向けての綿製品の輸出は七一・七%でございました。そこで自主規則をいたしました。一歩引き下がって自粛をしようということになりました。ところがそれをやりますと、翌年はとたんに四一%と下がっていきました。そのまた翌年には一七・六%と下がっしまいました。これは量のパーセンテージでございますが、金額においても同じような下がり方を示しているわけでございます。ところがこれが世界じゅうからアメリカ輸出しておるところの綿製品がずっと低下してきたというならば話がわかります。日本ひとり下がっておりますおりに、香港その他は、一・五%から一二・三%にふえ、一六・一%にふえ、しかもその材料たるや減った日本アメリカからほとんど材料を仰いでいる。香港その他はエジプト綿あるいは自国産の材料を使っておる。一体かようなことが正常な姿ということができるでございましょうか。総理の御見解を承ります。
  71. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 日本アメリカとの綿製品の輸出の分は、総体の数量はあまり下がっていない、金額は少しくらい上がっておると思います。ただ問題は、アメリカ輸入する輸入全体のうちで、日本輸出の占めておる割合が一九五七年に七五%だったのであります。その後お話のようにインドあるいは香港等々からの輸入が急激に伸びました。そのために絶対量はあまり動きはございませんが、占める割合が減ったのでございます。そこでわれわれとしては、自主規制によって輸出を相当押えて、話し合いを守っていっておるにかかわらず、よその国からの輸出、すなわちアメリカ輸入が非常なふえ方をしておる。こういうことをしなかったら日本も力があり、ふえなければならぬものを、自主規制で押えておる。この事実を何と見るかということにつきましては、先般来アメリカに申し入れておるのであります。五年間のあれでございますから改定期になっております。この問題は先般経済使節団が商務省にも話をし、私の聞くところではケネディ大統領にも話をしようとしたところが、ケネディ大統領もすでにそれを知ってわかっておるということを言ったと、ほのかに聞いておりますが、お話のような問題につきましては、以前からわれわれは提起しておりまして、アメリカはどういう措置をとるかということを、今交渉いたしておる次第でございます。
  72. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いささかデータに相違があるようでございますが、仰せの通り絶対量はなるほどさほどは減っておりません。それはスクェア・ヤールに換算すると、ある程度そういうことが言い得る。しかしそれとても減っていないとは言えないのでございまして、この計算でいきましても、なお七七が六七に減っておるのでございますが、もっと大事なことは、先ほどの年度に金額を当てはめてみますと、四六%が翌年三六%に減り、その翌年の数量も減った時期には二八・二%に減っておるのでございます。このデータは、私は日本アメリカ駐在の公館からとっておるわけでございます。この点は先の予算分科会におきまして、別なスタイルで質問をいたしましたおりに、通産大臣も認めていらっしゃるところでございます。経企庁の長官も認めていらっしゃる。これは冷厳なる事実です。これについてなるほどお話の通り業界もいろいろな手を打たれた、ケネディさんも御存じである、こういうことなんです。しかし当然のことながら輸出振興のキャスチング・ボートは政府にあってしかるべきなんです。私は予算委員会のおりに、通産大臣に当然の義務としてこの苦況を打解する方途を考究していただきたい旨を述べておきました。一体その後どのように伸展を見ておるのか。また幸いなことに、ちょうどおりよく今総理のおっしゃいましたように自粛契約の五ヵ年間というものが、本年に至ってピリオドを打つ時期になっておる。更新しなければならぬ時期がきているわけなんです。そこへもってきて相手国もケネディさんにかわった。なおかつ総理は国会が終わればすぐにアメリカへ御出張との旨を承っております。チャンスが重なってきているわけでございます。従ってこの好機を逸せず、材料を全部向こうから仰いでいる品物くらいは、何とかなってしかるべきである。それはまた業界を初めとして日本国民のひとしく希望しているところなんです。アメリカヘかしま立たれるにあたっての総理の本件に関する御所見を承りたい。
  73. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 この問題は、各国との比率の問題でございます。日本の分は数量価額につきまして一九五七年のあの当時とあまり動いておりません。ただアメリカ輸入する全体の綿製品のうちの日本品の割合は七五%から一八%に減っている。絶対数量、価額はあまり違いはない。向こうでもいわゆるそういう輸出入国全体の会議を開いて、綿製品のクォータと申しますか、今後どうやっていくかという会議を持とうとしておるようでございます。日本といたしましても今後どの程度ふやしてくれろということは申し入れておりますか、申し入れようと計画しておるようでございます。詳しくは当局よりお答えいたします。
  74. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 このたびの総理の渡米、国会が終わって直ちに出発なさる渡米で、この問題を解決するということに一歩前進をぜひしていただきたい。ケネディ政権の成功とアメリカ国民の良識を考えますならば、と同時に総理の蓄積された経済的なうんちくをもってすれば、当然これは行なえるはずでございます。もし行なえなかったとするならば、総理の愛国心を疑わなければならぬ、こういうことに相なるわけでございまして、ぜひ一つこれは総理の力によって——かつては労働組合の代表もこの問題についてすでに審議をして参りました。業界の代表もある程度の成功をおさめて参りました。いよいよ最後の総まとめをなさるのが総理の責任であると思いますが、この点についてはいかがでございますか。
  75. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 ケネディ氏との会談時間にも制限がございます。この綿製品の問題は、もう相当両方とも研究を始めておるところでございます。私は、個々の問題について解決をつけるという考え方でなく、全般についての日米両国の責任者の会談ということにいたしたいと思っておりますので、この問題がこちらの思う通りにいかなかったら日本総理大臣の愛国心に影響するというようなことでは私はないと思います。そういうことがもし外国にでも知れましたら、日本の人は外交の問題をそのくらいに考えておるのかと言われますので、外交の問題とは関係のないことだと思います。
  76. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 なるほど綿製品だけを取り上げてみれば、そういうことになるかもしれません。私は時間が足りないがゆえにあえてそれだけを例にとったのでございますが、毛製品についても大同小異の問題があるわけでございます。五%というクォータがある。それが諸外国から買う量である。日本輸出は五%以上に伸びたためしはない。にもかかわらずこれも自主規制をした。陶器の場合もしかり、ベニヤ板の場合もしかり、家庭用ミシンの場合もしかり、特にきのうきょうの状況は、事陶器に関する限りは、すべての産業が伸びつつあるという矢先に、ノベリティやあるいはモザイクタイルのごときはほとんど注文がとだえて参りました。従いましてこの工場は、せっかく九州からスカウト代までも払って三年、四年前に連れて参りました従業員、ようやく仕事を覚えて一人前に仕事ができかかった今日において、これを九州へ再び帰さなければならない、北陸へ帰さなければならない、こういう問題が起きているわけでございます。私があえて愛国心と申し上げましたのは、決して綿製品だけのことではない。この問題がやがて産業界に悪影響を及ぼし、その結果は勤労者に及ぶ。その勤労者は帰るに場所がないのであります。時に名古屋駅や、時に東京駅に立ってその日のたつきをかせがなければならぬという状況に相なっているわけです。あえて私が愛国心と申し上げるのは決して言い過ぎやはったりではないと思います。綿製品だけではございません。重ねて総理の御所見を承ります。
  77. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 輸出の増進、日米経済交流の躍進をはかることはわれわれの望むところでございます。その方向に向かって努力いたしたいと思います。
  78. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 次に、この輸出入取引法国内に及ぼす影響でございますが、先ほど同僚議員が独禁法との関係につきましては質問を試みたようでございますので、私は重複を避けます。ただ池田内閣に限らず、歴代の内閣の経済方針は常に上に厚く下に薄い、こう思われている。この法律が実行されることによって上に厚く下に薄くなる、かようなことが私には予想されるのでございますが、総理はそういう点についてはいかようにお考えでございましょうか。
  79. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は国全体のことを考えて、そうしてまた上に厚く下に薄くということは努めて避けなければならぬ、こう考えておりますので、お話のようにはならぬと思います。
  80. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 総理は避けるべきであると考えて、そうしたいと希望していらっしゃる。私はその精神に敬意を表します。しかしながらまことに遺憾なことに、この法律が実行されなくても、今までの法律のみによっても、つまり言いかえれば、カルテル行為がゆるやかであった、カルテル行為が少なかった、こういうときの法律でさえも、終戦後から今日の状況を見ますと、常に総合貿易商社は伸びたけれども、専門商社は伸びていない。その結果なるほど通商部門における、流通部門における商社が伸びたと、こう言われますけれども、その内訳を調べてみますと、伸びたのは総合大商社が多くて、中小のものは倒れた数の方が多いのでございます。ましていわんやこのたびの法律が実施されることによりまして、カルテル行為、アウトサイダー規制、それが強化されるということになりますれば、専門商社の生きる道はますます狭められていくと見ざるを得ないのでございます。もし時間があれば、逐条私は大臣に質問したいのでございますが、もうすでに何やらこういう通知が来ておるようであります。話が佳境に入りかけるといつでもこういうことになる。そこで、それはいずれ担当の大臣にお尋ねしますが、総理ほんとうに上に厚く下に薄くしたくないと——上に厚くしたもののおこぼれだけを下がもらっておけばよろしい、そういう考え方でないと、こうおっしゃるならば、万一この法案実施によってあなたの意図せざる方向に経済界が向いたとするならば、その点を撤去するにやぶさかではございませんか。
  81. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 国全体をよくし、そうして、上も下も、特に下をよりよくするのがわれわれの考え方でございます。従いまして今度の輸出入取引法改正の問題にしても、力のあるものがあまり荒らびない、ひどいことをしないように、また力の少ないものが力のないことをして非常な失敗をしないで、国全体、上も下もよくなるということで、この法案を出しておるのであります。その実例その他につきましては、総理よりも事務当局へお聞きになる方が適切かと思います。
  82. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 総理の言たるや、ほんとにもって瞑すべし、その言葉が具体的事実として実行されるならば、おそらくや専門商社も感謝感激することでございましょう。しかし終戦以来の過去の実績というものは、遺憾ながら、まことに残念ながら、それとは違った方向をたどってきたようでございます。そこで、もし審議の過程において具体的事実を、データを——しかもそのデータは政府の調査によるところのデータを提出して、なるほどそうだということに相なりました場合に、総理としては一体どのように処置をなさいますか、その点だけを除去するにやぶさかでないのか、あるいはそれでも、いやおれの思ったことは絶対間違いないのだ、無理でも、横車でも押し通すんだとおっしゃいますか、その点……。
  83. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 民主政治の世の中に横車なんか押すことはあり得ないし、あってはならないことであります。ただ、いろいろな事例を申されますが、これが輸出入取引法改正するから起こった問題か、その原因その他につきましては、各方面から検討しなければいかぬ問題でございます。国全体のこと、そして外国との関係、そしてまた国内の業者の問題等々、全体がよくなるようにしていくのが政治と思います。
  84. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 総理があのような、ほんとに道徳者流の見解を述べていらっしゃいますが、それにつきまして、通産大臣、あなたにお尋ねいたしますが、審議の過程において総理の見解、総理の良識、これとは違った結果が出てきた場合に、通産大臣はどうなさるお覚悟でございますか。
  85. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 具体的に問題に突き当たってみないと、実は何とも申し上げられませんけれども、しかしながら総体的に総理考えておるような方向と違った方向がもし明らかになるならば、それに対する修正の措置考えていかなければならぬ、こう考えます。いずれにしてもその場合に、具体的な問題に入って検討してみたいと考えます。
  86. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 具体的な問題に入って、もしあやまちであるとするならば、それを改めるにやぶさかでない、つまり修正の用意があるというお言葉を信じて、私は結論を申し上げたいと思いますが、具体的実例をたくさん持っております。ただ時間の関係上言いません。  最後に、ほんとうに今の話のように、大だけを生かして小を殺すのではなくして、小をも生かすことを考えている一なおそれから受けるところの消費者、一般国民大衆への悪影響、これがもっと重大であると思うのでございますが、中小の商社をもなお生かしたいという親心がありますならば、当然のことながら、国民大衆がその結果、法律の制定によって悪影響を受けることが大きいと気づかれたときに、それを事務当局の手によって、ないしは担当大臣によって修正が行なわれた場合に、総理としてはどのような態度に出られますか。
  87. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 国会は国権の最高機関であります。そういうことは問題にならぬ。あなた方の方で、国会で議決されれば、総理どうこう言う筋合いのものじゃございますまい。私は民主主義というものはそう考えておるのであります。
  88. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 総理の良識を信じまして、その良識が具体的に実現されることを期待して、本日はこの程度にとどめ、残余の質問は留保いたします。      ————◇—————
  89. 中川俊思

    中川委員長 次に内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案勝間田清一君外二十八名提出石炭鉱業安定法案内閣提出産炭地域振興臨時措置法案勝間田清一君外二十八名提出産炭地域振興に関する臨時措置法案内閣提出臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案及び石炭鉱山保安臨時措置法案、以上六法案を一括して議題とし、審査を進めます。  前会に引き続き質疑を続行いたします。伊藤卯四郎君。   〔委員長退席、中村(幸)委員長代   理着席〕
  90. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 炭鉱問題について、多くの質問に対する政府側の答弁をいろいろ伺っております。ところがその答弁によりましては、全く建設的な、熱意を持って指導していこうというものが何にもございません。そこで私伺っておって感じたことは、この産炭地域振興法案を初めとして、地方から押されたからやむを得ずにこれを提案をした、そういう感じを受けたのであります。全く私は失望した一人であります。そこで政党内閣でありますから、従って産炭地振興法案のごときは、自民党池田内閣の政策として立案されなければならなかったものだと思います。ところが大体内容を見てみると、通産省の関係官僚の諸君が一つの弥縫策として作成をして提出したものにすぎないという感じがするのです。そこで自民党池田内閣産業大臣である椎名通産大臣は、このような出し方、答弁の仕方、そういうものをもって事足れりとおそらくお考えになっておられないと私は思うが、政党内閣の大臣としては、いやこの程度でよろしいのだというようなお考えかどうか、その辺の心境を一つ先にお聞かせ願いたい。
  91. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 産炭地の振興対策につきましては、われわれは現状にかんがみて最も憂慮しておるものでございまして、それの振興につきましてはあらゆる努力をしたい。ただしかし、その気持を一体具体的にどういうふうに表現し、どういうふうな効果をおさめるような手段を進めて参るかということにつきましては、これはやはり相当用意をしてかからなければならぬのでございます。そういう意味におきまして、これは産炭地振興一つのワン・ステップである、出発点である、こう考えるのであります。そしてしかも、この中央、地方に持たれる審議会、これはその事情に精通する人は地方審議会、また大局を動かす学識経験者は広く中央に集めまして、しかも迅速に具体的な再建方策を結論として出したい。こういう今熱意に燃えておるのでありまして、これがすなわち最終の案ではない、出発点であるということを一つ十分に御了承願いたいと思います。
  92. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私が今通産大臣の心境をお伺いしたのは、実はこの産炭地域振興法を内閣がお出しになるにあたって、各省との間の折り合いがなかなかつかない。各省がなわ張り争いをして、内閣提出法案としては無理である。そこで何とか議員立法として各党の間で話し合いをして一つ提出をしてもらえないかという動きが相当ありまして、その相談を私なども受けた一人である。そうすると、これは今大臣がおっしゃったように、自民党池田内閣が内閣の政策として積極的にやられるものなら、私は何もそういうこまかい各役所のなわ張り争いにとらわれる必要はなかったと思うのであります。そういう点から見て私は先に伺ったのです。そこで、この法案を出すこと自体にさえ各省の間のなわ張り争いがあって、なかなか通産省の係官の人々も苦労されたことも私は知っておる。そこでしからばこの法案が成立をして、いよいよ基本計画なり実施計画を調査立案をされて、いよいよ実行に移そうという場合になれば、もう何倍という各省のなわ張り争いが熾烈になってくると思うのであります。そうなってくると、一体この実施の衝に当たるのは通産大臣か、あるいは別途に内閣にかわる何らかの総合調整をする機関をもって、この実施案を実現させようということに当たられるつもりかどうか。その辺の見通しやら計画、考えについて一つはっきりお聞かせ願っておきたい。
  93. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 なわ張り争いとおっしゃいますけれども、各省がその所管の事務に対して非常に熱心の余りいろいろ主張が錯綜する場合もあるのでありまして、これはむしろ大きな問題がだんだん結論に到達する過程として当然あっていいことでございまして、そのためにじんぜん日を過ごして問題の本質に非常な悪影響を及ぼすということは、これは避くべきでございますけれども、必ずしもおっしゃるようななわ張り争いがあってそれが云々というようなものでは私はないと思います。  それから審議会等において具体的な産炭地域振興方策というものがきまりました後におきましては、一体その実行はどうなるかというお話でございましたが、これはそれぞれの各省の所管に応じて仕事を進めて参るということになるのであります。現に苅田港とか裏門司の振興方策が具体的に立っている。これは審議会の審議を待つまでもなく直ちに実行し得る問題でございますから、これにつきましてはそれぞれの地方の公共団体が中心になって、そして特別の起債ワクをこれに与えて直ちにスタートすることになっている。この一つの事例を見られても、あるいは自治省、港湾の修築の問題は運輸省、道路は建設省、工場誘致の問題は通産省、こういったようなことになりまして、その具体計画の内容に応じて各省がこれに協調してやる、こういうことになるわけでございます。
  94. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今大臣は各省のなわ張り争いでなくて、熱意の現われだと言っておられたが、まあ池田内閣の閣僚の一人ですから、私はそう弁明されるのはやむを得ないと思います。もし立場がかわってあなたが野党の立場に立っておられたら、私が今言ったよりもっと強い言葉でおそらく内閣を責められるだろうと思う。  そこでこの産炭地域の法案を見ますと、この審議会を作ることになっておりますが、この審議会によって調査、それから立案、そういう実施期関をお作りになっているようでありますが、この審議会機関の人的構成はどういうような機関をもって構成されるのか、その辺についてお伺いをしておきたいと思います。
  95. 今井博

    今井(博)政府委員 産炭地域振興審議会の委員は、全体で五十名ということになっておりまして、これは各関係省の次官を、そのほかに学識経験者をもって構成する、こういうことになっております。ただし実際には審議会に部会を設けますので、地域部会が四つできるわけでありまして、その地域部会にそれぞれ地方の各県市町村、それから財界あるいは学識経験者、そういうことで地域部会が中心になりまして地域部会でそれぞれの案を練っていただく、それを中央の審議会にかける、こういう仕組みになっております。
  96. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 審議会の会長は委員の中からお選びになるのですか、大臣がその任に当たられるのですか、どっちですか。
  97. 今井博

    今井(博)政府委員 審議会の委員の中から選ぶことになっております。
  98. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 この産炭地域振興の調査実施期間を二カ年というようにいわれておるようでありますが、この二カ年というのは、全炭田地区をそれぞれ調査をされて、その上に立って、どの地域にどういう事業を起こした方がよろしいということの全部を完成した上に立っておやりになるというところから二カ年という、このかなり長期な期間を作っておられる、そういう意味において二カ年間とされておるのですかどうですか。
  99. 今井博

    今井(博)政府委員 仰せの通りであります。
  100. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 さらに伺っておきたいが、その調査実施計画が出てから、それぞれ着手をされるということですか。
  101. 今井博

    今井(博)政府委員 先ほど大臣からも申されましたように、実際にはやはりまだ計画が立っていないものが多いと思いますから、それと実施にあたっては最も効果的に実施しなければいかぬということも考えまして、実施計画が決定してから着手する、こういう考え方であります。
  102. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 御存じのように、本法案の実行予算を三千万円とされておるようでありますが、今、石炭局長が御答弁になったことと相当違う。というのは、すでに通産省が発表した。しなければ、こんな具体的なものは出てこないと思うのです。たとえば、福岡県の今川、祓川等の工業用水開発調査に九百六十万円使う、ボタ山処理事業調査に六百万円を使う、筑豊地区開発適性工業選定調査費に二百五十万円を使う、全体の三分の二をこの三つの計画に使う。さらにボタ山の処理等は鉱害復旧事業団に委託してやらすということが具体的に新聞に出ていますが、これは通産省が出さなければ、こういう予算の金額まで出てくる道理はないと思うのですが、この辺について、今の答弁とすると相当私は違ったものがあると思います。こういうことであれば、もう審議会をそう拡大したもの、あるいは二カ年間も期間が要るというようにも考えられぬが、これはどうなんです。
  103. 今井博

    今井(博)政府委員 先ほどちょっとお答えいたしましたように、実施計画がある程度固まっておるものはその計画の線に沿って早く着手をする必要があるという問題が一つございますので、今川、祓川のようにある程度県の方で具体的な計画をお持ちのケースにつきましては、これを単なる基礎調査でなくて、実施調査というふうな含みで、これに調査費を配分したような次第でございまして、ただいま先生の御指摘になりましたような調査費の配分は、これは通産省で一応計画を立てまして各地方に連絡をいたしております。この調査と申しますのは、審議会が調査をいたすのではなくて、通産省が各県、自治体と協力をして調査をいたし、それに基づきましてでき上がった計画を審議会にかけて決定する、こういう仕組みになっておるわけであります。
  104. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 そういたしますと、通産省の方で一応の具体的な案を審議会の方に提出をされて、その条項に基づいて審議会が調査なり実施案を作る、こういうことになるわけですか。
  105. 今井博

    今井(博)政府委員 そうでございます。
  106. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それならば、この審議会というものは大臣というか、通産省の単なる一つの諮問機関として作られるものであって、特別にそれぞれの権威者をもって権威ある振興策を作り上げる、こいうものではないわけですか。
  107. 今井博

    今井(博)政府委員 これは形は計画を審議会にかけて決定するということになっておりますが、運用といたしましては、もちろん振興の基本的な考え方、基本計画につきましては、最初に審議会を開きまして、そういう経験のある学識経験者から、いろいろな、産炭地という特殊なこういうところを振興するのにはどういう方法をもってしたらいいかということは十分に御意見を聞くつもりでおります。それから地域の部会におきましては、そういう実施計画を調査する過程におきまして、こういうものを調査しておるんだがということで、それに十分意向を聞きまして、実施計画を完成するまでには、十分その意向を計画の上に反映していきたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、これは運用としましては単なる諮問機関、でき上がったものをかけるというふうには考えておりません。
  108. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 そうすると、二年間の後においてそれぞれの振興事業を着手するというのか、あるいはその調査の過程において、それぞれ調査実施案が作られたものは建設に移していく、そういうことでおやりになるのか、その点はどうです。
  109. 今井博

    今井(博)政府委員 これは実施計画ができ上がったものから着手していく、こういう考えでございまして、二年待ってから、全部が完成してから手をつけようということではございません。
  110. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 三千万円の予算というのでは、すでに先ほど私が申し上げたように、今川と祓川、ボタ山処理とで三分の二を使うことになる。そうすると、あと三分の一だけしか残っておらぬことになるので、私は北海道を除く全炭田の老朽、老廃した地区に、それぞれの近代工業を起こしていくという調査、あるいは実施案というようなものを作っていくのについては、やはり人的な関係その他の関係において相当の予算も要ると思うのであるが、三千万円ではわれわれはいかなる意味においても問題にならぬほど少額じゃないか、そういう点から相当不足を生ずると思うが、この点において不足を生じた場合には予備費などからでも出して十分まかなって完成さすということについてのお考えがあるかどうか、この点、大臣どうです。
  111. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御指摘のような点につきましては、もし急速に調査をして、そうして具体的にまとめるためにどうしても費用が不足する、達成できないというようなことが起こりましたならば、もちろんこれは予備費を流用することを考えなければならぬと考えております。
  112. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 審議会によって調査実施案が立案された、そこでいよいよそれぞれに適する近代鉱業等を起こしていくという場合において、その起こす事業は県なり市町村の自治体の誘致運動にまかすものであるかどうか、あるいは国が積極的に半官半民というか、そういう形の事業として大きなもの、重要なものは動かしていくというような腹づもりというものを持っておられるのかどうか、この点を一点伺っておきたいのです。  さらに法案等を見ますと、何か税の上において減免の処置を講じとか、あるいは幾分助成をするとかいうことなども言われておるようでありますが、この税の問題については、自治省などでは批判的な意見が出されておるようであります。たとえば市町村の関係がそういう税の減免ということになると、徴税の意欲をなくするという重大な問題が起こる危険性もあるのだ。そこで地方交付税で補うということになれば、また影響が他の市町村にも起こってくるので、そこらの点は相当問題が残るのであるというようなことなどを言っておるようでありますが、こういう点において炭田地区の自治体等に、相当やはり安心を与えるということも必要であるし、それから通産省が調査立案をしてくれるが、その結果一体どういう形で実際上建設されることができるのだろうかどうだろうかという問題等についても相当疑問がありますから、これらの点について大臣から、炭田地区の市町村並びに働いている労働者などにも、非常に重大な関心を持たれている問題であるから、それらの点において大臣のお考えになっておる点を一つ明確にお示しを願いたいと思います。
  113. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 工場誘致の問題でございますが、それは地方の誘致運動にただまかせるというのでは、産炭地の振興というようなことはただ荒唐無稽に終わるのみだと思うのであります。でございますから、どうしても政府みずからが陣頭に立って、行政指導によって適当な工場の誘致に努力するということが必要である、またそのつもりでおります。それ以上何か特殊な法人を作って、そこに政府の息のかかった工場を建てるか建てぬかといったようなことにつきましては、これはよく研究してみなければ、ただいま結論を申し上げる段階ではないと思います。それから地方税等の問題について、その当該町村に難色のあるはずはございません。これについては国としても適当な補てんをもちろんしなければならぬ問題であります。多少こういうものに対して、自治省あたりに方法の問題についていろいろ意見があるかもしれませんが、こういったような問題については大きな見地から必ずや調整は可能である、かように考えておる次第であります。
  114. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 これは一部私の意見が加わることになりますが、今大臣が行政指導によって炭田地区に新たな工業を起こさすようにすると言われておるわけですが、民間というものはどんなりっぱな案を示されても、結局は営利事業でありますから、そろばん勘定の上で、はたしてそれが引き合うか引き合わないか、事業を起こすか起こさないかは民間資本がきめるところであります。でありますから、行政指導というだけでは私は実際民間資本を動かして建設するということにはならぬので、やはりそこで事業をやらすのについては、民間がこの経営はそろばんが合う、やはり経営が成り立つというところの特典がなければ、資本主義の経営体においては国家への奉仕者ではないのですから、従ってやはり国自身がそこでやらしても資本は十分成り立ってくるというような特典を与えない限りにおいては、どんなにりっぱな調査実施案が作られても、どんな行政指導を強力におやりになっても、それだけでは結局絵に書いたもちにすぎないという形になる。そういう点等がありますから、これらの点についてはさらに一つ大臣よほどお考えにならないと、計画倒れということになる危険性が多分にあります。今大臣から国の問題等をどういうように扱うかということについては慎重にというようなこと等がありましたが、今のような点等を十分お含みになっておかれないと、うまくいかぬのじゃないかということ等も考えますので、この点はかなり地元側が関心を持っておる問題ですから、いま一回それについて相当責任を持ってやるということについての大臣の深い考え等を伺っておきたいと思います。
  115. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まず先進地方の産業基盤の条件になるものが、相当に脆弱になっておるという点を考慮いたしますと、地方によりますけれども、産炭地方に相当りっぱな道路、りっぱな心配のない工業用水あるいはその他用地の問題、そういうようなものがそろえば、行政指導によってもかなり工場誘致というものは見込みが立って参るのではないかと思うのであります。しかしそれでもなお足りないというような場合におきましては、いずれは審議会の審議の結論として出てくるだろうと思いますが、それらの結論とも相待って、さらに政府としていかなる施策をすべきかというようなことについて考究をはかって参りたい、かように考える次第であります。
  116. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 これもまた幾分意見を加えますが、すでに御存じのように、石油開発の株式会社については、半官半民といういわゆる国家資本が半分以上投入されてあるわけでありまして、かなり成果をあげてきているようでありますが、やはりそういう形を並行して相当お考えになっておかないと、私は期待倒れということで、あれだけ大がかりにかね太鼓入りでやったけれども、さて実施、建設ということになったら、うやむやになってしまったのではないかということの起こる可能性が多分にあると思いますから、この点は大臣一つ十分考えておいてもらいたいということをつけ加えておきたいと思います。  それから、三十八年度までに炭鉱の在籍者一人当たりの出炭能率を二十六トンから七トンくらいまで上げる、炭価をトン当たり千二百円引き下げるということ等が当初計画として、それが今実施中であります。ところがこの当初計画というものは、実際上私は実行できないというところへきてしまっておるのじゃないかと思うのです。というのは、すでに御存じのように鉄道運賃は値上がりになりました。もちろんこれはさきの商工委員会でこの値上げはいかぬということを超党派的に決議をしておりますから、大臣はおそらくこれを内閣の方に持ち込んで努力をされておると思います。ところが、電力も上がっておる、あるいはその他の炭鉱に必要な機材も上がっておる。物価が上がっていくと同時にまた労働賃金も上げなければならぬ。こういうことが起こって参りますから、従って当初のこの計画は実際上実行不可能になるのじゃないか。これを無理をしてやるということになって合理化を強行しなければならぬということになると、労使の間でこの問題をめぐって泥沼闘争のようなことで、どうすることもできない。さきに三池炭鉱に起こったようなことが民間の大きいところでは絶えず起こってくる。それから設備の近代化ということになれば、相当国家資金を投入してやらなければならない。そこでこれらについて大丈夫だ、やれるという準備をどれだけ持っておられるかを、大臣からお聞かせ願います。
  117. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 石炭運賃の問題を除きますれば、賃金それから諸物価等のその程度の値上がりは、実は織り込み済みでございます。しかし今後さらにわれわれの予想を裏切って賃金もますます上げなければならぬとか、物価も高騰して参るということになりますと、これは計算違いということになりますから、その点に当面した場合には研究しなければならぬということになりますが、大体において織り込み済みであります。それで運賃の問題につきましては、今お話しがございました超党派的の決議もございますし、私も関係各省と折衝して実質上の負担のないように努力しておる最中でございます。そういう状況でございまして、三十八年度における千二百円の引き下げは可能である、また可能にしなければならぬ、私はこう考えておるわけであります。  そしてまたこれは申し加えますが、いずれにしても五千五百万トンの出炭量を円滑に消化するためには、電力、鉄、セメント、ガス等、いわゆる大口の消費部門の協力を得なければならぬ。その協力を得るためにただいま折衝中でございまして、これまた全体の数量の八割ないし九割の相当の部分を消化し得るように、ただいま協議を続けておる状況でございます。
  118. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今、大臣が答弁されたことで私は満足できませんし、また将来を見越しての不安を解消するということにもならない。これはお手並み拝見というだけでは済まされない深刻な影がある。ということは、これが完全に実行されていくということになれば、どうしても合理化が相当強化されなければなりません。この当初計画が実行されていくということになると、十万人以上の炭鉱の失業者が出るということが明らかにされておるわけです。ところが、今日までの炭鉱の合理化による失業者は依然としてそれぞれの地区に残っている。地元市町村はこの失業者をかかえて全く悩み抜いている。さらに生活保護者がふえてくるので全く苦境に陥っておる。これはおそらく大臣の手元にも地元側の陳情が相当あったと思うから、御存じでしょう。そこでこの石炭の当初計画の目的を達成しようとすると十万人以上の失業者が出る、これを一体どうするかという問題です。この問題の不安が解決されなければ、労使の間における深刻な戦いは至るところで起こってこざるを得なくなるわけです。なるほど現在でも技能工、熟練工は工場側の方で相当必要としておりますから奪い合いもある。ところが炭鉱の人たちがそういうところに行くためには、どうしても再教育、再訓練を受けなければならぬ。ところが再教育、再訓練所はあき家同然であると、よく言われております。というのは再教育、訓練所に入っても飯が食えない。たとえば、あれは二百幾らですか、失業保険をもらっておる者がそこへ入れば失業保険がもらえなくなる。生活保護を受けておる者は保護資金がもらえなくなる。そうなれば結局飯が食えないからというので、せっかくの再教育、訓練所に入り手がない。せっかくの教育を与えても、これまた鶏の卵の生みつ放しでかえさないのと同じで、この再教育、訓練をした人を政府が責任を持って、それぞれの適地に完全に再就職をさせておらない。こういうことをそのままにしておいて、この石炭の当初計画を達成する、合理化を強行してやるということになれば問題が起こってくる。その事態を政府が責任をもって解決しようということになっておらぬと私は思う。そこで私たちはやはりどうしてもこれを解決することが先決だ。そこで完全雇用のために雇用基本法というか、再教育、再訓練所で訓練をした者を——必ず国がこのアンバランスを解決するとか、そういう問題等を椎名通産大臣は特に深くお考えにならなければならぬ。あるいは社労委員会等で、雇用促進事業団というようなものをなにしましたが、これを見ましてもお茶を濁す程度である。この問題に労働大臣、通産大臣は特に取り組んで、今後十万から出てくる失業者の問題をどうするかということについて深刻にお考えにならなければならぬと思うが、そういう点について労働大臣との関係あるいは閣議との関係、内閣全体として、石炭の当初目的を達成するために、どうしてもこの合理化を強行しなければならぬ、近代化のために国家資金を投入しなければならぬ、これら問題をどうするかということについて、相当お考えになっておるかどうか私は知りませんけれども、これは重大な問題ですから、一つ私の納得のできるような答弁をしてもらいたい。
  119. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 問題は、その雇用の問題が一番重大だと思うのであります。それでこれらの対策は、もちろん今日の程度では足りないことはわかっておるのでありますが、いずれにいたしましても相当の国家財政上の問題でもございますので、労働大臣とも寄り寄り協議しておるわけであります。失業保険の積立金の問題等については、これは大蔵省が管理しておるのでございまして、この方面との折衝を重ねた上で結論が出るわけでありますけれども、大体においてこういったような雇用問題に還元するというような考え方で、何とか今の数倍あるいはそれ以上の施設を実現するという方法はあるまいかというような問題につきまして、寄り寄り協議中でございます。われわれといたしましては、この問題が解決のかぎとでもいえるのでございますから、合理化問題に不可分の問題として、この問題を処理して参りたいと考えております。
  120. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 これは非常に重大な問題だと伺ったわけであるが、大臣の今の答弁程度では私にとっては問題になりません。これは将来起こってくる非常に大きな問題をかかえでおるわけですから、池田内閣としてこれを実行されるためには、通産大臣としてこういう問題を解決してもらわなければならぬということについて、真剣に取り組んで、石炭の当初目的を達成するためにいろいろなトラブルの起こるということは、はっきりしておるわけですから、この問題が起こらざるよう一つ責任をもっておやりになるようにということを強く私は要望いたしておきますから、お含みを願いたいと思います。  それから、これは私の提案の形の意見になるのですが、十万人の失業者が今後出るということは必至です。そこで一人一カ月一万五千円の失業手当をもらう、それが十万人で六カ月だと九十億の失業保険金を出すということになるのですが、そこでこれを失業者に失業保険金として給付するということは、国家経済の上から見ても大きな損失であるし、またもらった御本人たちも、実は生活なり仕事に対する非常に大きな不安が依然としてつきまとっておるわけです。でありますから、さっきから私がこの産炭地振興法について質問しましたように、失業者一人一カ月一万五千円を十万人の六カ月とすると九十億円、これを失業者にやるか、もしくは生産資金に、炭鉱地区の新たな工業建設に使うか、あるいはさらにこれに国家が資金を加えてやるかということになれば、いわゆる失業者にやるより、むしろそういった炭鉱地区において新しい工業を興す、その方に思い切ってそういう金を投入していく、そうして失業者が炭鉱から出てくる者は一人もないようにするというぐらいの計画と、強力な実行方針をもってやるということが、政府としてとるべき一番聡明な策ではないかと思う。そういうことについての私の今の意見に対して、大臣などはそういう点をどういうようにお考えになりますか。
  121. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ごもっともでございまして、失業者の起こらないように政府において施策しなければならぬと思うのであります。金の計算はどういうことになりますか知りませんが、はたして九十億で十分なものができるかどうか、私はなかなかそんなところでは間に合わないのではないかという気がいたしますが、いずれにいたしましても、これは政府が一人でやるというわけにはいきません。どうしてもそこに民間の資本、事業というものを誘致することによって、初めて解決される問題でございますから、その政府の誘導する費用として、相当多額のものをこれに費やしてもよろしいのではないかというふうに、私どもも考えておる次第です。
  122. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私も今失業の保険給付金の九十億円で新しい工業を興されるなどとは考えておりません。ただ、失業者に保険給付としてやったのでは生産化したものではない。そこでそういう金も炭鉱地区の新たな工業を興すために投入をする。さらに国家もこれに国家資金を相当加えて投入いたしていく。民間もこれに対して一つ協力しろ。こういう一つのポンプの迎え水としてその熱意を示すところに、初めて産炭地区における新たな工業の建設がやれるという、その熱意をそういう点の一端として示すべきであるという意味において私は言っておるのです。だから、そういう点等に政府がどれだけ熱意を持つかどうかという問題が、結局建設に対する指導をするかどうかという点にかかってくる、こういう点を私は言っておるわけです。この点は一つ大臣も肝に銘じておいてもらいたい、こう思います。  それから、先日この委員会で石炭問題について八名でしたかの参考人の方方に出席をしてもらって、いろいろ意見を聞き、私ども質問をしました。そのとき参考人からこういう意見が出ております。これは炭労の野口という副委員長でございましたが、三十八年度までに在籍一人当たり二十六、七トン、石炭単価は千二百円引き下げる、こういうことで合理化が強行されてくるということになれば、その結果は炭鉱に働く労働者の一人当たりの賃金が五千円下がるということになる、こういう意見を発表されております。この目的を達成すれば、失業者はたくさん出る。そして結果においては、炭鉱労働者は一人当たり五千円の収入が能率と比例して下がる、こういうことで、私は炭鉱労働者の協力的な意欲は起こってこないと思う。だから、こういう点において、この参考人が述べられておるようなことがその通りになるのかどうか。いやそうじゃないのだ、この目的が達成されればこういうように賃金、待遇はよくなるのだ、失業者の問題はこういうようにして解決されるのだ、こういうこと等が明らかにされなければ、炭鉱労働組合がこの政府が指示しておる石炭の当初目的達成の成果を上げることはできないと私は思うので、こういう点について、この野口参考人の意見、あるいは今申し上げるような私の意見等について、一つはっきりした政府側の見解を聞かしてもらいたい。  それから、日本の石炭は欧州各国より高いということが報告書などでもいわれておるが、大体イギリスは国営、フランスは公社、西ドイツは民営でございますが、ここらの国々と比べて、一カロリー当たりの日本の石炭というものは、どのくらい高いのかという問題、これを一つお聞かせ願いたい。なるほど能率は日本の現在の能率より二倍上がっております。しかし労働賃金は日本の炭鉱労働者より四倍、これらの欧州の国々の労働賃金は高い、こういう数字が出ている。こういう点について、これらの多くの複雑な問題を解決するために、政府はどのような考え方をもってこれを指導しようとしておられるか、これをお聞かせ願いたい。
  123. 今井博

    今井(博)政府委員 最初に炭労の野口副委員長の陳述に関する御質問でございますが、これには若干誤解があるのじゃないかと私は思います。私の拝聴しました野口さんの御意見は、千二百円を下げる過程におきまして、三・八%のベース・アップを政府は計画しておる。にもかかわらず、現実に貝島であるとか、あるいはその他一部の中小炭鉱におきまして、賃金の引き下げの提案がなされておるという御指摘がございました。これは合理化を労働者のしわ寄せにおいて行なうという御陳述でございました。そういう点があったことは、私も拝聴いたしておりますが、全体としましては、やはり賃金のベースは、三十年から今日まで非常に上がって参っておるわけでありまして、われわれの計画におきましても、三・八%毎年ベース・アップするという計算に基づいて、千二百円の引き下げが可能であるかどうかという計算を、実は全体としていたしております。ところがことしの賃金は、約七・二%のベース・アップになる予定であります。ところが昨年度が二・五%程度でございまして、それを平均いたしますと、当初の計画の三・八%より若干上回る約四・何%ということになると思いますが、全体としてはそういうふうにベース・アップが行なわれておるわけでございます。しかし一部の炭鉱特に地方大手の炭鉱におきましては、いろいろ特殊な事情等もあると思いますが、賃金を当面下げないとやっていけないという炭鉱もあるようでございまして、しかも賃金ベースが必ずしもそう低くないという炭鉱のようでございます。一部の炭鉱にはそういう事例があるように私は聞いておりますが、これは全体の現象ではございません。また三十八年度になってそういう結果になるということではございませんで、その間にあるいは若干の誤解があるのじゃないかと私は思っております。合理化と申しましても、労働意欲がやはり中心でございまして、必要なるベース・アップは当然やっていかなければならぬと思います。ただしことしのような七・二%という大幅なべース・アップが、毎年行なわれるということになりますと、これは先ほど大臣からも御指摘がございましたように、経営が相当苦しくなることになるかと思いますが、今日程度の、約四%程度のベース・アップというものは、十分合理化でもって吸収し得るという見通しをわれわれは持っております。  それから次にヨーロッパの石炭と日本の石炭との値段の違いは、どのくらいかということでございますが、これは大ざっぱに申しまして、約二割程度日本の石炭が高いということに相なっております。これは日本の揚地市場、たとえば京浜における原料炭の値段と、ドイツの原料炭の値段と比較いたしますと、その程度の開きがあります。しかしドイツにおきましては、御承知のように山元に鉄の工場があるという、ちょうど八幡と九州のような事例が一般でございまして、日本の場合はこれを揚地へ持ってこなければならぬということのために、山元においてはほとんど違いませんが、揚地市場、消費市場においてそれだけの差を来たしておるというところが、日本の非常に大きな弱点でありまして、これにつきましては、やはり運賃の問題、流通機構の問題について、今後合理化の観点から相当なメスを振るわなければいかぬということをわれわれは考えております。  それから賃金の問題も、御指摘のように、日本の炭鉱労務者の賃金の方が、これは確かな数字を私は持っておりませんが、やはり三割程度低いのじゃないかというふうに聞いております。しかし一般の産業全体の賃金水準が、やはりドイツと比べて日本が全体として低いということと大体比例いたしておりますので、日本の炭鉱労務者だけが、特にそのほかの産業よりもドイツに比べて低いというふうには、実に考えておりません。しかしこの格差というものは、決してこのまま放置しておいていいという問題じゃございませんので、やはり合理化を促進して能率を上げて、賃金というものはなるべく上げていく方向にいかなければならぬと思っております。
  124. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 最近において炭鉱災害が、引き続き大きな事件が起こっておりますので、そういう点から、今度の災害立法が出されておると思うのですが、これは私は、やはり考え方を根本的に改めてもらわなければ、なかなか防止できないのじゃないかと思うのです。それというのは、今日までのように経営権が最優先をして、人命というものはそれに従属するものだという考え方が、経営者はもちろんだが、どうも行政監督側にも、そういう点がわれわれは依然としてあるということを、はなはだ遺憾に思っておるのです。たとえば現行法の二十四条を見ましても、大臣が、あるいは危険と感じた場合、あるいは設備を怠っておった場合には、経営を中止させ、あるいは鉱業法によって経営権を取り上げるというようなこと等も、やればやれぬことはないのです。ところが、やはり鉱区というものを財産権と、こういうように古い時代の認め方というものがあるので、こういう点に触れることができないでおるのじゃないかと思うのです。そこで、やはり考え方を一ぺん変えるという上に立たなければ、この法律だけをどういうように改正しても、なかなかその実行ができないじゃないかと思うのです。こういう点において、今度のこの災害に関する法律をお出しになったその考え方と、今私がお尋ねしている問題とおわせて、一つお聞かせ願いたい。
  125. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今度の災害措置法は、災害防止に関して従来よりも強くこれを指導する、そして災害防止対策というものに、もし当該鉱業権者あるいは租鉱権者等が従わないというような場合には、それは財産権も尊重しなければならぬけれども、人命にかえるわけに参りませんから、山の鉱業権の実施を停止する、そしてこれに対する対策を講ずる。この二をねらっておるのでございまして、考え方を変えたと申しますか、従来の考え方をさらに徹底したと申しますか、そういう点においては私は顕著な前進であるということを考えております。
  126. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今度のこの災害問題を解決をしていくために、全国に炭鉱が六百ほどあるのを、そのうち三百ばかりを対象として調査をするということを言われておるようでありますが、この六百のうち三百と限定されたということ、その三百をもって総合的な調査というものが行なわれ、対策が立てられるかどうかという問題、それから保安上不良炭鉱と認定されたものに廃止勧告をする、ところが相手側がこれに応じないという場合にはどういうようになるのですか、この点も一つ……。
  127. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 今回の新しい法案によりまして成績の悪い不良炭鉱を廃止の勧告をやる、そのときに廃止の勧告に従わなかった場合にはどうなるか、この点は法案にもありますように非常に保安が悪い、そうしてどしても直す見通しがつかない、こういうような場合に勧告をいたすのでありまして、その勧告に従わない場合は保安法でいくよりしかないわけであります。従って今お話の保安法によってとめてしまう、その場合にはもちろん補償金は出ない、こういうような結果になるわけであります。  その前に三百炭鉱の鉱山を調査するというお話がございましたが、現在中小の炭鉱の数としましては六百数十炭鉱ございます。しかしその中で特に悪い、比較的悪い、調査を要するという対象の山は、現在私どもの考えとしましては二百四十炭鉱ばかり考えております。これを二カ年で調査をします。従いまして今年度におきましてはその半分の百二十炭鉱を調査する、大体二十班編成で今年度は半分を調査する、こういうようになっております。
  128. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 この廃止炭鉱に対する補償の問題は、これは国家資金ですか。
  129. 今井博

    今井(博)政府委員 国の補助金でございます。
  130. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 非能率炭鉱を買い上げるのは、現存しておる炭鉱が金を出し合ってその炭鉱を買い取るということとして取り扱われておるわけですが、この保安不良炭鉱は国家がこれを廃止、買いつぶす、そうすると非能率炭鉱を買い取っておる現存炭鉱が金を出し合っておる諸君との間に、それならおれたちの方の非能率炭鉱の方にも一つ国家が当然資金をこういうように出すべきだ、われわれ炭鉱屋のみの負担にすべきじゃないじゃないかという問題等も、当然起こってくるような気がするが、そういうものに対する、この問題が起こった場合の解決方法としてはどうお考えになりますか。
  131. 今井博

    今井(博)政府委員 非能率炭鉱の買い上げは相互扶助という観点から、業界の納付金というものを中心にして行なわれておりますが、昨年度からこれに対して政府の補助が出ることになりまして、鉱業権の評価に対して、採掘権の評価に対して約半額の補助が政府から出ておりまして、現在全体の何から言いますと、全体の買い上げの価格に対して国の補助が二割程度ということになっております。ただしこれは買い上げの価格の方が、このたび実施いたします山の整理に対する補助金の何よりも全体の金額が多いものでございますから、二割ということになっておりますが、考え方としましては、このたびは採掘権を放棄させるということに着目いたしまして、この採掘権に見合って国が補助金を出そう、こういうことになっておりまして、先ほどお話のように買い上げの場合におきましても、その採掘権の半分は国の補助が出ておりますので、その辺はバランスがとれるのじゃないかと考えております。
  132. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 不良炭鉱をいわば国が廃止、買いつぶすことになるのですが、そういう場合に悪用されるということも私は出てくるのじゃないかと思います。たとえば保安を不良にしておくと、保安監督局の方からこれは廃止を命ずるというようにして、国家資金によってつぶしてもらって、そこで国がつぶしたのだからというので、たとえば労働賃金の未払いにしてもあるいは鉱害の賠償にしても、その他の債務にしても、そういうものを踏み倒すような者も出てこないとは言えないと私は思う。   〔中村(幸)委員長代理退席、内田委   員長代理着席〕  そうすると結果においては、国が不良炭鉱として廃止、買いつぶすということが債権者泣かせというようなことの起こる場合が往々にしてあると私は思う。きのうでしたか、多賀谷委員からもこの退職金を含まない問題等で、いろいろ議論がされておりました。退職金を含まないというのはおかしいのです。国が不良だからその炭鉱をやめさせる、労働者には何も罪はないのです。そこに働いておる労働者に国が不良炭鉱だから買いつぶすといって廃止命令を出しておって、そこに働いておる労働者の退職金をこれは含まないから国は知らぬぞということは、私は筋が通らないと思う。それこそ退職金はこの非能率炭鉱を買いつぶすと同じように、当然退職金は含んでこの解決をしてやるということは、これはあまりに理の当然だ、それと今言ったように悪用されるということと債権者泣かせというような問題について、どのようにこれを処理されようとしておるか。
  133. 今井博

    今井(博)政府委員 御指摘のように形としては悪用されるという事例があるかと思います。従いましてこのたび山の整理をする場合の補助金を国から出す場合におきましては、まず第一に優先するものとしては賃金の未払い、これを何よりもまず優先させる。その次に鉱害の処理の金を優先させる。そういう考え方で交付金を出します場合は、鉱業権者にじかに渡さずに、合理化事業団を法定代理人といたしまして、そこでもって未払い賃金を代位弁済させる、あるいは鉱害の何を別途差し引く、こういうことをいたしまして、その残った金を鉱業権者に渡すということを考えまして、賃金の未払いと鉱害については、法律的にそういうことができるようにしたわけであります。これは公租公課よりも——公租公課の差し押えあるいは民法上のいろいろな差し押えもその賃金の問題と、それから鉱害の処理に必要な金については、差し押えすることができないということの規定も特に設けたような次第であります。従って悪用される問題につきましては、できるだけそういう不都合な現象が起こらぬように特に配慮を用いたような次第であります。ただ退職金の問題におきましては、これは実はこの中小炭鉱の実態をわれわれの方で相当調べてみましたが、実は退職金に関するはっきりした協定がある炭鉱がほとんどないということでございまして、これを法律に明記するということはどうかという点、それから合理化法では山を買い上げております場合も未払い賃金と鉱害というものは優先的に考えておりますが、退職金については、やはり事実上の問題として処理しておるということとのバランスから考えまして、法律的に公租公課よりも優先するというような性質のものとしては、やはり賃金の未払いと鉱害ということが優先する、こう考えた次第でございます。  それから退職金の問題は、これはまあわれわれの杞憂かもしれませんが、はっきりしたものがないだけに悪用されるおそれも相当あるのじゃないか、そういう心配から、公租公課の差し押えよりも、さらに優先するということについては、この際はどうか、これは事実上の処理の問題として、そのつど相談していったらどうかというふうに実は考えた次第でございます。
  134. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 非能率炭鉱を買いつぶした場合においても、整備事業団は、労働賃金、それに伴う退職金というものとを最優先的に取り上げて、この退職者の解決をしておるわけであるから、従って、整備事業団にこの問題を取り扱わせることになれば、今石炭局長が答弁されましたように、やはり労働賃金が最優先するというのなら、それに伴って、退職金というものは整備事業団に買取炭鉱の離職者の扱いと同じように扱わす、優先するものである、こういう考え方でいいですな。どうです。
  135. 今井博

    今井(博)政府委員 現在合理化事業団が山を買い上げております場合に、未払い賃金については代位弁済をいたしまして、何よりも優先するということをはっきり規定しておるわけでございますが、退職金については、実は、はっきりしたものがございませんので、事実上、未払い賃金と同じような扱いを、各関係者と相談してやっておるということでございますので、法規の中にはっきり書きますのは一これは、われわれの方は賃金の未払いということにいたしまして、退職金の問題は、実は今度の中小炭鉱の場合には、はっきりした協定のあるものがほとんどないという実情からいたしまして、そういうもののある場合は、事実上われわれの方も、いろいろな協力をいたしまして、そういうものが優先するように、ちょうど整備事業団がやっておりますと同じように扱うように各方面と折衝する、こういうつもりでおります。
  136. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今、石炭局長の答弁で、大体明らかになったので、私もそれを信頼いたします。従いまして、労働賃金が最優先すると同時に、それに伴って、そういう場合には、退職金というものを、他の公租公課あるいは債務より優先するものである、こういうふうに私も受け取りまして、この問題は、通産省の方で責任を持って、問題の起こらぬようにされることを希望いたしておきます。  もう一、二点でありますからお願いいたします。鉱山保安監督官の待遇の問題です。私がなぜこういうことを質問するかと申すと、これは通産大臣も保安局長もおられるから、一番御存じであるが、大学出の優秀な技術官というものは、ほとんど保安監督官になり手がありません。なぜなり手がないかというと、あるいは課長、部長——局長になれば別ですけれども、それでなければ五等級として平均二万四、五千円ですか、それより上がらぬのであります。従って、非常に待遇が悪いというところから、こういう優秀な諸君が役所におりましても、民間がみんな引き抜きおる。そういうところから、保安局長が一番御存じだが、だんだん優秀な保安監督官がいなくなってしまう。従って、鉱山の保安指導が近代的に行なわれないという状態になっている。これらのところを改められないと、せっかく法律を作っても、また厳重にやれといってもなかなかやれないではないか。そういう点から職階制の給与の問題を、特にこの保安監督官などについては優遇する意味でこれを研究職というか、そういう形で優遇しなければ、実際問題として有能な保安監督官を置けなくなりますから、これらの点について、私は、この際これらの人々を優遇することが、まず保安の完璧を期する上に一番急を要する大事な問題であると思いますので、それらの優遇方法について何かお考えになっているかどうか、あるいは考えておられぬとするならば、今後これをどのように扱おうとしておられるかという点と、今度法律が制定されるならば三、四十名保安監督官を増員してやらせようとしておられる。これはまことにけっこうなことであります。ところが、大蔵省との話し合いは、大体進んでおるようにも伺っているが、人事院とか行政管理庁の了解などについて、なかなか意見のあるようなことも聞いております。これらの増員の問題について今どういうように進行中か、一つお聞かせ願いたい。
  137. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 ただいまの監督官の優遇策でありますが、お話のように、監督官、特に石炭関係の鉱務監督官は非常につらい内容の仕事をやっているわけであります。従いまして、今お話のように、よい人が来ないというほどひどい現象はありませんけれども、比較的楽な金属方面に希望者が多いということは事実であります。特に優秀なものが会社からねらわれるというような姿はございますが、とにかく石炭関係の鉱務監督官というものは、非常につらい仕事をやっておりますので、私どもぜひ優遇策を講じたいと、今相談はいたしております。内容は、全般的に監督官の俸給について調整額一二%増してもらう。しかし、これは鉱務監督官のうちでも石炭関係のほか金属関係、石油関係みなかなり種類がございますので、一様に調整額だけで始末をつけてしまうという点にも多少問題があります。現在私どもの希望しておりますのは、調整額を増してもらうということ。それから変災のときあるいは抗内巡視のとき、従来は、坑内の一般巡視の場合には時間八円、災害調査の場合には二十円、こういうごく少額のものがついておりますが、これではとうてい、危険の中で十分な調査もできませんので、調整額と並行いたしまして、でき得ることなら、災害の場合には時間二百円くらい、それから普通の一般巡視の場合にも時間百円ぐらいに増額を希望しております。だいぶ折衝いたしておりまして、現在人事院の方では、両方というのはなかなかなんだから、どちらか考えようというようなお話もありますが、まだ最後の結論の段階には達しておりませんが、私どもの希望の実現に最善の努力を尽くして参りたい、かように考えております。  それから鉱務監督官の人員増強の点でございまするけれども、私ども当初は、巡回監督を倍増していく、それから特に九州のごとく暴力炭鉱その他で、原則として二名で監督をやるといったような考え方から、当初百十九名という人員増強を話し合いしておりましたが、実際補充の面で非常に困難をいたしておりまして、過般の現地から参りました監督部長会議で、その人員充足の点も十分にわかりましたけれども、各地区で予定の人員を補充することは、とうてい困難であるということで、大体現地の部長の意見では、予定の半数もむずかしいということでありましたが、今年度は、苦しい中で何とか方法を立てるという意気込みで、五十四名のお話し合いをしておりましたが、先ほどの先生のお話しのように、大体四十名前後くらいのお話し合いはきまるのじゃないかとは思っておりますが、まだ最後の段階には至っておりません。  人員の増強、それから監督官の優遇措置、私どもの考えております案が実現できますように、最後の努力を続けておるわけでございます。
  138. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣、今お聞きのように、私の質問、それから保安局長の答弁等の解決は、これは保安局長だけでは、私は非常に困難性があると思う。これこそはやはり大臣が責任を持って、この優遇の問題、それから増員の問題についても——いろいろ難点のあるのは、やはり優遇の問題にからまる点があります。でありますから、これらの点については、今保安局長が答弁をされておるような、いやその程度でも、実はまだ大学出の優秀な諸君を、技術屋を持っていくことはなかなか困難じゃないか、であるから、これらの問題を解決するということは非常に重大な問題ですから、これらの点について、大臣、お聞きになっておって、どのようにお考えになりますか、ちょっとお聞かせ願いたい。
  139. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今保安局長から申し上げました内容は私も承知しております。この程度は必ず実現するようにいたしたいと思っております。
  140. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま一点だけ質問をして終わりたいと思いますが、この産炭地振興法案を出さなければならなくなったということは、結局のところ、北海道を除く以外の炭田地区が、いずれも老朽老廃化してしまったということであります。従いまして炭鉱として栄えていた地区が、すでに炭鉱が老朽老廃して、残っておるものは鉱害とボタ山と失業者だけだ、こういうことになっておる。従って炭田地区の市町村自治体は、税の収入は少なくなった、出費をして解決しなければならない問題のみを多く残されている、こういうことが、老朽炭田地区の大きな悩みになっておるわけです。従いまして、鉱害の問題につきましても、鉱害の責任者である鉱業権者、こういう諸君がだんだんいなくなってしまう、それから無資力者が続出してくる、行方不明が出てくる、こういうところから、被害を与えた鉱業権者、負担すべき本人が今申し上げるような状態になってしまって、結局は市町村自治体あるいは鉱害を受けておる住民、そういう人たちが一そう困ってきてしまっておる。そういう点から、鉱害に対する従来の考え方というのを変えなければならぬ問題が起こってきておる。それは何かといえば、やはり無資格者鉱害というものの上に立って、鉱害復旧を国が責任を持ってやるということが、いや応なしに私は起こってきておると思う。またこの観念に立ってやらなければ、この鉱害復旧問題は解決できないと思うのです。さらにまた、たとえば炭鉱をやっておる諸君から——大手は信用があるということになってますが、特に中小などになれば信用がない。だから出てくる石炭からトン当たり幾らという鉱害復旧の積立金を厳重に取り立てて、本人が無資格になろうと、行方不明になろうとどうなろうと、とるものはとっておく、こういうこと等を厳重におやりにならぬと、今までの鉱害法の建前からいくと、鉱害復旧はなかなか困難じゃないか。いわゆる無資力、無資格者を認定する上についてはなかなか時間がかかる、時間がかかるところに鉱害の復旧はやれない、こういう問題等が起こってきておるわけでありますから、従ってこれらの点についての考え方を、新たに持たなきゃならぬという問題が起こってきておる点において、どのようにお考えになっておるかどうかということでございます。  それからさらに、老朽老廃炭田になってきておると、だれが掘った鉱害かわからないという問題が非常に起こっておるわけです。たとえば炭層が三つある。上の炭層は甲が掘った、その次の炭層は乙が掘った、その下は丙が掘った、非常に入り乱れておるところから、おれの鉱害じゃない、おれの鉱害じゃないという鉱害のぬすり合いをしておるために、何年たってもその鉱害の復旧ができないという問題等も起こっておるわけです。せっかくこの法律に測量制度を作られてあるのに、やはり通産局の方でそういう場合にだけの鉱害だということを測量によってきめられるのだけれども、やはり経営者に気がねをしてなかなかきめ切らぬという現実問題があるわけです。こういう点なども鉱害問題を深刻化しておる一つの問題になっておりますから、これらの点について、測量制度をほんとうに法に従って徹底的にやって、そういうものを解決してやる。それから今申し上げたように、無権利者鉱害というものを、やはり国が責任を持ってやらなければ復旧ができないという現実が起こっておる。これは将来ますます大きくなってくる。こういう点についての鉱害復旧に対する新たな考え方を持たなければならぬが、これらに対してどのようにお考えになっておるかどうか、これを一つお伺いしたい。
  141. 今井博

    今井(博)政府委員 鉱害問題につきまして、これから無資力者、無権者の鉱害復旧について、無資力認定制度による国家資金による復旧は大いに必要であるという御指摘であります。これは、最近のいろいろな傾向からして確かにそのことはあります。従いまして今までに無資力認定で国の金及び県の金でもって復旧いたしました鉱害は、約五億から六億くらいに及んでおります。ことに最近になりまして、約年間二億から三億程度の復旧をやっておりまして、従来の倍以上になってきております。これからはそういうケースがふえていくという傾向にあることは確かでございます。しかし、これは何と申しましても国の金でございますので、それをルーズに運用するというようなことは、やはり国全体の負担、税金でございまするので、その点は厳格に運用していく必要があろうかと思います。しかし情勢によりまして、やはり相当弾力性を持ってやる必要があるということはわれわれも考えております。ただその場合に、今先生御指摘になりましたように、たとえば鉱業権者から一定の積立金をどんどんとって、それでもって鉱害の復旧に充てたらどうかという御指摘につきましては、われわれもその必要があろうかと考えまして、この積立金を損金処理で落とせるようなシステムにしたいということで、税制の改正のつど実はそういう要望をいたしておりますけれども、御承知のように指定鉱害についてのみ未払い金という格好で経費支弁ができるということが、一昨年からできておりまして、全体の積立金を損金処理するということについては、まだ税制改正審議会の承認を得るに至っておりません。鉱害の予想というものは非常に困難でありまして、やはりまだ鉱害理論が確立いたしておりませんので、どの程度の鉱害が出るかということをはっきりと予想して、損金処理をしていくということについては、まだ資料等も薄弱でありまして、この点われわれは十分努力いたす必要があると思います。全体の積立金がそこまでいくというところにはまだ至っておりませんが、今回臨鉱法の改正審議会を通じまして、その点はもっと掘り下げてもう少ししっかりしたものにしたいと思っております。ただこれについては実はいろいろな案がございまして、そういう予想鉱害量に応じて鉱業権者から金をどんどんとって、それをどこかへ積み立てておいて、その金をプールして、鉱害が起きたらその金でどんどん直していくという案が、私は鉱害を復旧するという面から見ると一番実効的じゃないかと思います。しかし、この予想鉱害量というものは、先ほど申しましたようにまだ非常に不確かなものが多い、あるいはまたこれを悪用されるという点もございまして、その点についての成案をまだ得るに至っておりませんが、いずれにいたしましても、鉱害問題につきましては、産炭地の最近の疲弊状況等にかんがみまして、やはりもっと突っ込んだ対策を立てなければいかぬということは十分考えておりまして、ことし一年、臨鉱法の改正審議会を通じまして、これはたくさんいろいろな問題がございますので、その点につきましては一つできるだけ掘り下げて実効のあるような運用をいたしたい。  それから先ほど、鉱害の認定の問題について、非常に複雑でありまして、なかなかきまらぬじゃないかというお話がございました。この点につきましては、今回臨鉱法を改正いたしまして、ほうっておけば非常に危害が及びそうだというふうな鉱害、あるいはいろいろな行政上放置できないという鉱害につきましては、だれが鉱害の責任者であるか、あるいはその範囲はだれかということがはっきりいたしません場合には、今度の改正で加えました緊急認定制度というものを活用いたしまして、これは一応無資力認定ということにいたしまして、国及び県の出費で鉱害の復旧をとりあえずやりまして、その負担関係等につきましては、調査を完了してから処理する、こういう緊急の処理制度を設けたのでありますが、これによって一部その問題の前進ができたと私は思います。  それから今回の三十六年度予算におきまして、わずかではございますが、鉱害の価額認定予算というものを五百何十万円計上しております。これは、ボーリングとか電探とか、あらゆる方法を用いまして、特に問題になっております鉱害の認否の論争のある個所につきましては、大学の先生を網羅しておる委員会で価額認定をやろう、先ほど先生のおっしゃいましたような二重三重になっておる炭層についての鉱害の責任の問題については、その価額認定制度をぜひとも活用したい、この制度をできるだけ伸ばしていきたい、これも従来の鉱害の測量という問題についての一歩前進であろうかと思っております。まことに遅々たる感はございますが、一歩々々前進していきたいと思っております。
  142. 内田常雄

    ○内田委員長代理 次は藏内修治君。
  143. 藏内修治

    ○藏内委員 合理化法並びに産炭地域振興法、いろいろ関連がありますので、どの法案ということでなしに、一括してごく要点だけを質問して簡単に済ませるつもりです。  鉱山保安局長には一点だけしか質問がございませんので、先に鉱山保安局長の方に伺って、お引き取りを願ってけっこうです。  今度の石炭鉱山保安臨時措置法案は、現行の保安法から見ますと、確かに一歩前進でありまして、大へんけっこうだと思うのです。けっこうだと思いますけれども、鉱山保安なるものの基本的な考え方をもう少し考えてみる必要があるのじゃないか。現行の法規を見てみますと、たとえばガスの場合、水の場合、それぞれこういう施設をしておけば安全であるはずだという建前で書いてあります。ところがすべての事故、災害というものは、安全であるべきはずのところに不測の事態が発生するのが通常のことでありまして、特に労働環境からしますと、地底何百メートル、何千メートルという非常に労働環境の悪いところで本来作業しておるわけでありますから、そこで鉱山保安法の建前を施業案と並行して、労働者の安全といいますか、そういう措置が考慮せられなければ、やはり鉱山保安法としての本来の使命が達成できないのではないかという気がするわけであります。ところが現在の制度でいきますと、要するに施業案というものは、一方的に鉱業権者が作り上げてこれでやっていく、でき上がった坑道及び坑内設備そのものについて鉱山保安法規は適用されていく、これではやはり根本的に坑内という労働環境の安全性を本来確保していくということが非常にむずかしいのじゃないか。そこで鉱山保安というものが施業案のときに同時に加味されて認可されていくべきじゃないか、こういう考え方は、考え方として現行法規上非常にむずかしいことなのか、不可能なことなのか、それともそういう考え方ができるものならば、一つまた将来の改正においてそういう点を考えていただきたい、こう思うのでありますが、保安局長の御答弁をお願いしたい。
  144. 小岩井康朔

    ○小岩井政府委員 現在の鉱業施業案の中には、もちろん生産関係、保安関係両方ありまして、施業案の申請がありますと、まず、建前としましては通産局長あてに正副二通出て参りますので、その正副二通出ましたときに、一通は保安監督部の方に書類が回りまして協議を受けることになっております。従いまして、現在の施業案の内容から見ましても、当然保安に関する内容は持っておるわけでありまして、監督部におきましても保安に関する事項を施業案の中で見ておるわけであります。ただ、現在の施業案はそう詳細に記述がしてありませんので、施業案によって保安の全般を見てきめていくという程度のものではございません。ごくあらかたの筋だけが記載してありますので、結局施業案に従ってやりましたあとの実際問題につきましては、保安法、保安規則によって見ていくわけであります。ただ今の考え方としましては、施業案の見方は各個人によって非常に解釈が違いまして、いろいろ審査の基準もできておりますけれども、各監督部によって多少相違がございます。従いまして、今仰せのように施業案だけで十分に保安を見るという状態ではありませんけれども、現在鉱業法の改正に伴いまして施業案の点も触れておりますので、かなり大きな改正考えられております。実際にどういう姿になりますか、まだ決定いたしておりませんが、従来の施業案のやり方については大きい批判が加えられておりますので、かなり形の変わったものができると考えておりますが、現在の施業案で保安を十分に見ておらないという点については、十分私たちも検討いたすつもりでおります。
  145. 藏内修治

    ○藏内委員 それでは順序は不同になりますが、先に大臣に対する御質問だけを一点済ませます。前の伊藤卯四郎委員質問の中にもありましたが、炭鉱の合理化の進行とともに非常に大量の失業者が発生をしてくる。この失業者の発生は、やはり国が非常に多額の国費をかけて処理をしていかなければならないにもかかわらず、この失業者の発生源である炭鉱におきましては、鉱業権者の一方的な採算点という観点で、無制限にというと語弊がありますが、幾らでも失業者が出てくる。こういう状態をそのままに放置しておいて、はたして妥当であるか、そういう点について大臣の御見解をちょっと承りたいと思います。
  146. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 炭鉱の合理化に従って失業者が必然に出てくるのでありますが、これらの整理人員の数及びその時期等については、われわれの方といたしましても大体予測ができるわけであります。これらの離職者に対する対策といたしましては、とりあえず政府が施策をしたわけでありますが、もちろん今後その数がふえるに従って、その対策をまた現在の程度以上に高めて参らなければならぬのであります。それをただ鉱業権者の恣意にまかして、政府はこれに対して傍観しておるというようなことではもちろんいかぬのでありまして、その対策の一つとして産炭地振興対策というものをこれから考えていこう、労働省においてもいろいろな職業訓練あるいわその他の施策をやっておるような状況でございまして、単に鉱業権者のその場その場の恣意にまかせるというような考え方はもちろんとっておらないのであります。ただ今日の施策で十分であるかということになりますと、これはまだまだ足りない。そのギャップをどうして縮めて参るか、埋めて参るかということにつきましていろいろ苦心をしておるような状況であります。
  147. 藏内修治

    ○藏委員 そこで今までの整備事業団、合理化事業団の買いつぶしのなにを見て参りますと、やはり見るからに低能率の炭鉱を買いつぶしておると思いますが、日本の炭鉱の能率からいいまして、平均能率を越えた炭鉱でも買いつぶしておる。そういうところで整理の、合理化の進行にも必ずしも一定の基準といいますか、その辺にどうもはっきりした基準というものが感じられないような点が間々あるのであります。そういうことが先ほど申し上げましたような炭鉱の整理の実情と並行してあるものですから、ますます何といいますか、炭鉱の整理が確固たる一つの方針というものによって整理されていっていないのではないかという印象を私どもは受けておるわけです。その点について大臣からでも、局長からでもけっこうですが伺いたい。
  148. 今井博

    今井(博)政府委員 合理化事業団等が買い上げております山につきましては、はっきりした基準を実は設けております。現在は能率十八・四トン、六千二百カロリーということを基準といたしておりますので、非常に能率のいい炭鉱を買い上げておるということはないと思います。ただほかの方の大手炭鉱あたりで山を整備いたします場合に、その会社の中で悪い山をしめて一いい山に生産集中する、そういう関係におきまして中小炭鉱から見れば割合に能率がいいという山が、あるいは整理されておるという例があるかもしれませんが、これは大手炭鉱としてその山の経営が赤字になるという場合であろうかと思います。
  149. 藏内修治

    ○藏内委員 大臣にもう一点だけ御質問いたしますが、最近合理化の進行とともに大手の炭鉱の閉鎖がかなり顕著にあります。たとえば明治鉱業の豊国であるとか、あるいは古河の峯地、こういうところで閉山をしていきましたものにつきまして、中小がこれを買い取りたい、あるいは借り受けたいという希望が殺到しておるというような現状であることは、大臣も御承知であろうと思います。こういうものを中小に肩がわりさせていくということは、むしろ現行の合理化法の精神と逆行するようなおそれもございます。といって中小が優秀鉱区といいますか、そういうものに乏しくて非常に困っておるという実情も現在あるわけであります。こういう閉山をして参った大手の鉱区というものを、中小に対して今後稼働させていくかどうかという、そういう点について基本的な大臣の御方針なり何かございましたら、一つお示しを願いたい。
  150. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これはその当該の山の実情によって判断しなければならぬ問題だと思うのでありますが、大手の方としてはほかに優秀な山があって、その方面の坑道をどんどん進めていった方が、その会社が企業全体としてはるかに利益である、であるからして比較的引き合わない炭鉱は手放していこうという場合が常識的に考えられるわけでございますが、そういう山について、もう大手が見放すようなものだからこれをつぶしてしまえと一がいに言うことができない場合があるのではないか。私はその山々によって考えなければならぬと思うのでありますが、まだとにかく掘れば掘れる、そしてその地方の炭鉱従業者も大体においてそれを希望される、当該市町村もやはりそれを継続してほしいというような場合でございますと、やはりそれをつぶすべきでない、こう考えるのであります。ただ中小の連中の間に買い手があるから、ほとんどあがり山同然だけれどもえり抜いていこうという場合でございますと、これは問題だと思うのであります。そういうような問題につきましてはやはり具体的に検討しないと結論が出ないと私は思うのであります。
  151. 藏内修治

    ○藏内委員 大臣はもうけっこうであります。あとは局長にお尋ねして参りたいと思いますが、現在の日本の石炭政策の基調といいますのは、御承知通り石炭鉱業審議会できめられました答申、これによって合理化が進められておるわけです。その合理化の一番大きな方針といいますと、三十八年度に大体五千万トンから五千五百万トンの出炭を見込む。それから炭価を年度にして三十八年度において大体千二百円下げる。その間重油規制は続ける。これが大きな方針であって、結局昭和五十年度に七千二百万トンを目標とした企画庁の長期計画、こういうものはここで完全にくつがえったといいますか変更せられたわけであります。今見込まれたこういうものによりまして、結局三十四年度は四千八百万トン、三十五年度で五千二百万トンという生産抑制といいますか、そういう方向にきているわけであります。  ところでこの産炭地振興法の第一条にあります石炭需要の安定的拡大、要するに需要があるならもっと掘っていいんだという考え方と、この合理化法の考え方、この関係を御説明願いたい。世間ではやはりどうかしますと、合理化法は生産抑制であるのに、産炭地振興法というのは増産を目標としているのだ、この間にしろうとには、なかなか理解しにくい点があるという工合に思っているのが偽らざる実情であります。そういう点について、合理化法の精神は私どももわからぬじゃありませんが、その間に今までに生産抑制ということがかなり強く出てきておりましたし、合理化がますます進むと同時に、こういうものの二つの矛盾といいますか、考え方がやはり世間的に一般に了解できない点が出てきておると思うのであります。そういう点について局長から一つ、この二つの間の考え方を御説明願いたいと思います。
  152. 今井博

    今井(博)政府委員 石炭の合理化法の一番考えております点は、石炭の合理化を促進しないと石炭鉱業が安定しない、実はそういう見地に立っておるのであります。それの一番中心になります考え方は、ことに昨年度から出しました石炭の新政策としてスクラップ・アンド・ビルドということが、今石炭対策の中心になっております。従いましてできるだけ非能率な山をやめて、いい山に生産集中するということが基本になっておりまして、生産を調整するとかいうことは、決して合理化法が本来ねらっておる問題ではございません。ただ合理化を進行する過程におきまして、石炭のいろいろな需給の不均衡が起きるという場合に、石炭の需給調整をもやり得るような規定を設けておりますが、何と申しましても一番中心の問題はやはりスクラップ・アンド・ビルドという問題が中心でございます。従いましてわれわれの方は三十八年度で千二百円のコスト・ダウンをいたします場合には五千五百万トンという生産の規模を考えておりますが、その場合におきましても、相当やはり能率の悪い、カロリー八十何銭というコストの山が入っておるわけでございまして、その生産をかりに六千万トンにいたしますとカロリー九十銭から一円というコストの高い山が入ってくる。そういうことでは最近の競争燃料の値下がり等から考えましてとても対抗できないし、やはりできるだけ全体のコストを下げていかないといかぬ。そうなりますとどうしても生産の規模を押えざるを得ない、こういうことになるわけであります。しかしこの目的が達成されましてスクラップが相当うまく進んで、いい山に生産集中していくということになりますと、やはりこれは相当増産になって参ります。また増産をしないと優良な山はコストが下がりませんので、そうなりますと規模が次第にふえてくるという傾向にあるということはいなめないと思います。合理化法における合理化と生産関係はそういうふうに考えておりますが、今度の産炭地振興法におきまして、安定的拡大というふうに書いてございますのは、これはまた違った考え方でございまして、基本は実は同じでございますが、産炭地におきましてはこれは十分競争燃料に対抗できるのだ、従ってそういうところでどんどん事業を興し、石炭の需要を拡大していけば、これは実は安定的に拡大できる、こういう考え方に立っておりますので、この点は従来の石炭政策に対して新しい観点を加えた、こういうふうにお考え下さればけっこうだと思います。
  153. 藏内修治

    ○藏内委員 局長のお話はよくわかるのですが、実は五千五百万トンという数字を決定するについて、石炭鉱業審議会の基本問題部会のなにを私一部写してきたのですが、それによりますと、利益率の上からいうと四千万トンくらいの方がむしろ非常に好都合じゃないかという案もあったわけです。そういうものについては、非常に急激な縮小策をとるということは、いろいろな意味でリアクションが出てきて危険がありはしないか。それからいま一つ六千万トン程度の出炭を見込んだ方がいいのじゃないかということについては、六千万トンになりますとかえって非能率炭鉱を温存する結果になるのじゃないかという意見があって、五千五百万トンという数字に落ちついたわけです。この五千五百万トンという三十八年度の達成目標は、三十五年度の現在五千五百万トンに行っております。この数字は将来にわたって維持されるつもりか、さらにまた伸縮性を持たして、数字的には変動をもって計画を練り直されるお考えか、その点について一つ……。
  154. 今井博

    今井(博)政府委員 ことしの生産数量が五千五百万トンに近くなるということは必須でございまして、この意味においてはこの五千五亘万トンの関係はどうするかという問題が一つございます。ただ石炭鉱業審議会におきまして決定いたしました五千五百万トンというのは、出炭規模として五千五百万トンということをきめた次第でございます。出炭規模がかりに五千五百万トンということにいたしますと、これは従来の経験値によりまして、上下五%くらいの開きというものが、従来の石炭生産の実績から見ますとございます。これは生産がかりに五千六百万トン、七百万トン近くなりましても、生産規模としては五千五百万トンということとほぼ合致するわけでありまして、若干の上下の開きというものはいたし方がない、こう考えております。ただ、現在でもすでに五千五百万トンという規模のほかに、雑炭が五百万トンくらいございますし、四十二年度にはこの雑炭が八百万トンくらいになるだろうと想像いたしておりますので、その辺の数字によりまして生産規模がどうだという議論が出るけれども、生産規模としてはやはり五千五百万トンで、四十五年度までこの形を維持するのが、現在の需要から見合った場合に一番いい数字だと考えております。
  155. 藏内修治

    ○藏内委員 次に千二百円コスト・ダウンの問題であります。前回の委員会で多賀谷委員が、この千二百円の中を物品費あるいは労務費というような分け方で御質問があったと思いますが、その分け方と考え方をちょっと別にして、石炭鉱業審議会における場合には、千二百円のうち八百円は企業努力で下げられるだろう、それから残りの四百円のうち二百円は流通面で操作をするし、あとの二百円は政府の助成、近代化資金であるとか税制面の考慮、そういう面でやるということになっていたと思うのでございます。この千二百円コスト・ダウンの内訳は現在のところ、今言った政府助成とかあるいは流通面の軽減等、予測通り進行しておるのかどうか、この点について一つ伺いたい。
  156. 今井博

    今井(博)政府委員 現在の合理化の過程におきましては、当初予定いたしました線に大体乗って三十四年度、三十五年度とコスト・ダウンが行なわれております。これは能率の面におきましても、コストの面におきましても一応予定通り進行いたしております。ただ先生御指摘になりました二百円流通経費で下げるというふうなのに該当して、流通者費がかくのごとく下がっておるかどうかという点は、遺憾ながらまだ、そういうふうになっておりませんので、むしろ全体の合理化、全体の山のコスト・ダウンというものが、予想よりも順調に進捗しておる、こういうふうに実はお考えになった方がよろしいと思います。
  157. 藏内修治

    ○藏内委員 そこで、合理化の進行していく上についての業界の合理化計画に伴う資金計画、この点について業界自体は、設備投資において千四百億くない五ヵ年間にかかるのじゃないか、そのうちの五百億くらいは、やはり部外の資金に待たざるを得ないのじゃないかという見方をしておるわけであります。この点は局長も御承知だと思いますが、そのほかにもまた人員整理に必要な退職手当が、十万ないし十一万人としてこれも五百億くらいかかる。その五百億の中でも百五十億ばかりは、やはり借入金に依存しだければやっていけないのが現在の石炭業界の、これは大体大手でありますけれども、考え方できておるわけであります。そういう点から見て、こういう外部の資金に頼らなければならない。その中で最も開銀の資金に頼っているわけでありますけれども、この開銀の融資にしても、やはり融資面と回収面との悪循環が依然として絶ち切れていません。こういう実情にありまして、こういう点について基本的な改善策なり、見通しなりをお持ちであるかどうか、この点について一つ承りたい。
  158. 今井博

    今井(博)政府委員 御指摘のように設備資金の調達は面常に重大な問題でございまして、これの根本的な改善策としましては、開発銀行の金をできるだけふやしていく、近代化資金をさらにふやしていく、こういうことより基本的な方法はないかと私は思います。開銀資金につきましては、御指摘のように、去年、おととしくらいはほぼとんとん、それ以前は回収の方が多かったという事例もございまして、この点は昨年度からワクが八十億になりましたことと、設備融資の期間か十五年というふうに相当延びましたので、これは従来よりは非常に改善されてきておると思いますが、しかしなお八十億ではまだ不足でございまして、もう少し設備投資額をふやさなければならない。近代化資金ももう少しふやしていかなければならないと考えております。
  159. 藏内修治

    ○藏内委員 そこで、合理化資金としての開銀資金の効果をもっと大きく上げさせるという意味において、そうして開銀の救済をたな上げする方式を非常に業界が望んでおるわけであります。これは大手も中小も同様でありますけれども、そういう措置を講じてみるという御意思が当局におありかどうか、この点について伺います。
  160. 今井博

    今井(博)政府委員 特に問題になりますのは、復金時代にありました救済でございまして、これがやはり三十数億に上っておるのであります。これのたな上げ問題は従来からしばしば問題になっておりましたが、結局実現いたしませんでした。今日においてもそういう問題は確かにあろうと思いますが、やはりこの救済をたな上げするということは、開発銀行の全体の運用から見まして、今までのそういう融資の実績から見ましても、それは非常にむずかしいのじゃないか。私どもとしてもそういうことはやりたいとは思いますが、国全般のバランスからいいまして、そういうことは非常にむずかしい問題でございまして、また別途の違う対策でむしろやるべきじゃないか、こう考えておるわけであります。
  161. 藏内修治

    ○藏内委員 設備投資全般につきまして、石炭というものが斜陽産業であるかないかというようなこと、これ自体にまだ相当議論の余地があるとは思いますが、世間一般に石炭は斜陽だというような見方をしておりますために、必要以上にこれが金融機関の石炭に対する融資意欲というかこういうものにブレーキをかけておるのではないかという気がするのであります。そこで炭鉱会社もみな資金繰りには非常に苦労しているわけでありますし、その合理化の一つのかぎである人間の整理といいますか人員整理のための資金でも、これも運転資金ということにみなしてなかなか貸さない、そういうことが現状であるわけでありますので、この点については、そういう人員整理のための資金調達については、政府が相当強力な助成をやってやらなければ、私は企業体自身ではこれはなかなかむずかしいのではないかという気がするのであります。そこで合理化資金の別ワクとして、この人間の整理のための退職金を別ワクとして認める方法はないか、こういう点について局長のお考えはいかがでありますか。
  162. 今井博

    今井(博)政府委員 確かに御指摘のように整理資金は非常に長期の資金でございますので、運転資金と申しますか非常に借りにくい、それが漸次多くなってきておるということは事実でございます。その点に実は着目いたしまして、このたびは合理化事業団の中に整備基金制度というものを設けまして、これはことしは約三億でございますが、その金でもって炭鉱会社が市中銀行から借り入れる場合の債務保証をいたしたい、こう考えて今回合理化法の改正をお願いしておるわけでありますが、このほかに、今先生御指摘のように、むしろ別ワクで合理化資金というものを別に持って、じかに退職金の金融をいたしたらどうか、こういうお尋ねのようでございますが、これができますれば一番端的で非常に実効も上がると思いますが、これをいたしますと実は非常に莫大な金がかかりまして、今回はその債務保証基金というもので、わずかな金でもって大きく金を動かすことが金融のやり方としては効果的じゃないかと考えまして、そういう案を現在国会に提案いたしておる次第であります。
  163. 藏内修治

    ○藏内委員 資金関係が今後の合理化政策の推進に非常に大きなキー・ポイントをなしておる、そういう点について金融機関がなかなか融資をしぶるというような場合には、政府資金であるとかあるいはまた政府の保証というような措置をできるだけ幅広く強力に推進していただきたい。これは希望として述べておきます。  そこで、この合理化政策の発端であります石炭審議会の基本問題部会の答申の最後には、こういうことが書いてあるのです。「このようなエネルギー間の調整措置は、あくまでも臨時措置であって、」、要するにこの石炭合理化はあくまでも臨時の措置であって、そして「一定の時期に石炭が制度的な支柱のない自由企業として存立することができるよう、その角度から合理化の目的達成を期待するという立場」を一貫してとっておる。要するに緊急にこれだけの措置をしてやる、あとは石炭鉱業がとにかくひとりでやっていける時代になるであろうし、やっていくべきだ、こういう考え方になっておるわけでありますが、この一定の時期というのは、やはり合理化制度の一応の目標としてある三十八年度として理解していいのか、それともそれとこれとは別な時期であるか、はたして三十八年度であるとするならば、三十八年度までに石炭が企業として自立できる企業になるとお考えであるかどうか、その点について局長の御意見を伺っておきたい。
  164. 今井博

    今井(博)政府委員 石炭鉱業審議会の答申をいたしましたときは、一応三十八年度ということを予定いたしておったと思います。しかしその後の状況を分析いたしますと、三十八年度では油の値段にとても対抗できないという事実が実ははっきりいたしておりまして、これは三十八年度以降相当期間がずれてくるのではないかというふうにわれわれは見ております。
  165. 藏内修治

    ○藏内委員 もしこの石炭審議会の期待するような石炭の自立というものが、非常に近い将来において困難であるとするならば、やはり自由化政策の一環としての石炭と重油の問題についても考え直して、一つ基本的な政策を策定すべき時期にきておるのじゃないかという考え方を私は持っております。さらに重油にいたしましても、ただいま年間三千万キロリットルくらいの輸入が年を追うて幾何級数的にふえるだろうと思いますが、はたして相当長期の間、日本の重油輸入が可能であるかどうか。日本の場合にはアメリカの石油資本とつながって重油を輸入しておるわけでありますが、世界的に重油の消費の増大ということとにらみ合わせて、はたしてアメリカもいつまでも石油の輸出国としての立場が存続できるのかどうか。そういう状態になってきた場合に、日本の重油の輸入が可能であるかどうかという長期的な見通しを立てて参りますと、石炭に対する政策もおのずから規定されてくるのではないか。石油がなかなか入手困難というか、輸入困難な事態になった場合に、石炭にわが国の唯一のエネルギーとしての存在価値があると思うのであります。そういう事態があるとすれば、石炭に対する長期的な政策として、現在の合理化政策がはたして妥当であるかどうかという点について、非常な疑問と一まつの不安を感じるわけです。そういう点について政府の長期的な御見解を承りたいと思います。
  166. 今井博

    今井(博)政府委員 現在の石炭エネルギー政策の基本は経済性を確保するということと、国際収支の問題、雇用の問題、そういった問題を中心に実はエネルギー政策を考えておりまして、今先生の御指摘になりました安全保障の問題あるいはスエズ動乱のようなエマージェンシーの問題については、実はまだ十分な考慮が払われていないのじゃないかと考えております。ただ考慮を払うといたしましても、どの程度にそれを考えたらいいのかということが非常にむずかしいようでございます。しかしこれは今後のエネルギー政策を考えていきます場合には十分に考えていかなければならぬ。今回も電力用炭のいろいろな取引の問題をやっておりますが、これはやはりその問題もございますので、電力会社としても、単に油に比較して石炭は高いけれども、やむを得ず引き取るのだというのじゃなくて、一種の自衛手段として、経営方針として、引き取るのだということを相当はっきりいたしておりまして、これは確かにその問題も考慮していると思います。これをどの程度に全体の計画に反映していったらいいかという問題については、われわれとしても十分検討したいと思います。
  167. 藏内修治

    ○藏内委員 最後に一点だけ承っておきたいと思いますが、今の石炭政策の一つの大きな流れとして、合理化政策は当面やはり妥当なものであろうとは考えるわけでありますが、この合理化政策というものは、一方において非能率炭鉱を買いつぶし、高能率炭鉱を飛躍的、集中的に開発をやるというこの裏打ちとして、やはり政府のこれに対する強力な助成措置というものが並行していかなければならぬのじゃないか。そういう点から見ますと、政府の近代化資金にいたしましても貧弱な程度であって、これではなかなかいかぬのじゃないか。やはり制度として立てられたからには、きびしく合理化を推進すると同時に、強力な助成措置というものが並行して行なわれていかなければならぬと思うのであります。そういう点については、合理化が大勢としてかなり強力に推進されている割に、政府の助成措置の方は、資金的な裏づけというものが非常に貧弱だと思うのであります。こういう点について一つ将来飛躍的な措置を希望すると同時に、局長のお考えを承っておきたいと思います。
  168. 今井博

    今井(博)政府委員 この点は私もまことに同感でございまして、このたび土屋清さんと稲葉秀三さんに、ヨーロッパのエネルギー事情の調査に行っていただきまして、先生方の帰朝の報告はまだ出ておりませんが、あらましの報告では、やはり現在の合理化というものは、世界の大勢から見てあくまでもやらなければならぬ。しかしそれによってこうむるところの社会的な側面というものについては、日本はもっと力を入れなければならぬ。端的にいえばもっと金を入れなければならぬ、こういう御報告でありまして、われわれも合理化を達成させる助成のみならず、それのもたらす社会的側面の問題の解決について、これは幅広い石炭政策の一環として、今後とも努力したいと思います。
  169. 内田常雄

    ○内田委員長代理 この際委員諸君に申し上げます。すなわち明日開会の予定でありました水資源関係二法案についての、建設委員会を主管とする連合審査会は、他の委員会とも協議の結果、来たる三十日火曜日に開かれる予定となりましたので、右御了承を願います。  本日はこの程度にとどめ、次会は来たる二十九日月曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時十七分散会