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1961-05-23 第38回国会 衆議院 商工委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月二十三日(火曜日)    午前十一時三十四分開議  出席委員    委員長 中川 俊思君    理事 内田 常雄君 理事 小川 平二君    理事 岡本  茂君 理事 中村 幸八君    理事 長谷川四郎君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君       有馬 英治君    岡崎 英城君       小沢 辰男君    神田  博君       齋藤 憲三君    笹本 一雄君       中垣 國男君    林   博君       岡田 利春君    加藤 清二君       小林 ちづ君    多賀谷真稔君       中村 重光君    西村 力弥君       伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君  出席政府委員         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衞君         通商産業事務官         (石炭局長)  今井  博君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局長小岩井康朔君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 五月二十日  石炭鉱山保安臨時措置法案内閣提出第二〇五  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第七一号)  石炭鉱業安定法案勝間田清一君外二十八名提  出、衆法第一〇号)  産炭地域振興臨時措置法案内閣提出第一八四  号)  産炭地域振興に関する臨時措置法案勝間田  清一君外二十八名提出衆法第三五号)  臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一六一号)  石炭鉱山保安臨時措置法案内閣提出第二〇五  号)      ————◇—————
  2. 中川俊思

    中川委員長 これより会議を開きます。  石炭鉱山保安臨時措置法案議題として審査に入ります。     —————————————
  3. 中川俊思

    中川委員長 まず趣旨説明を聴取することにいたします。通商産業大臣椎名悦三郎君。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいま議題となりました石炭鉱山保安臨時措置法案につきまして、この提案理由及び法律案要旨について御説明申し上げます。  最近相次いで炭鉱重大災害が発生しましたことは、政府としてまことに遺憾とするところであります。申すまでもなく人命の尊重は、何よりも重要なことでありまして、政府としても従来ともこの方針のもとに保安行政を推進してきたのでありますが、最近の状況は、さらに徹底した対策の必要なことを痛感せしめるに至ったのであります。また国会におきましても事の重要性にかんがみ衆参両院において炭鉱災害防止に関する決議が行なわれたのであります。政府はこの決議趣旨を十分に尊重し、かつ中央鉱山保安協議会その他の関係者意見をも勘案の上、さきに鉱山保安確保のための具体的対策と当面必要となる予算的措置について閣議決定をいたしたのでありますが、そのうち法律を要する重要事項について、ここに成案を得て急速提案することとなったのであります。  炭鉱保安をはかる基本的方向が、鉱山保安法鉱業法の厳正なる運用にあることは申すまでもありません。政府としても常々この点に留意し、保安監督強化をはかってきたのでありますが、今日における中小炭鉱実情を見まするに、一方において保安監督強化をはかるかたわら、他方各炭鉱実情に即して抜本的な施策を講ずる必要があるのであります。このため政府といたしましては、このたび石炭鉱山実態を総合的に調査することとし、その結果に基づいて保安に関する設備整備の促進をはかるとともに、保安確保することが困難な石炭鉱山に対し廃業を円滑に行なわせるための措置を講ずることといたした次第であります。  次に本法案要旨について御説明申し上げます。  第一は、石炭鉱山実態を的確に把握し、その保安確保をはかるため、採掘権者または租鉱権者について、自慰条件経理的基礎及び技術的能力並びに保安に関する事項に関し総合的調査を行ない、その結果必要があるときは、保安に関する事項改善勧告をできるようにするとともに、保安設備整備に必要な資金確保することに努めることとしたのであります。  第二は、総合的調査の結果保安確保することが困難であると認められる採掘権者または租鉱権者に対して鉱業の廃止の勧告をできるようにするとともに、勧告を受けた者が、勧告に従って採掘権または租鉱権を放棄したときは、石炭鉱山整理交付金交付することができることとしたのであります。  第三は、この交付金について、未払い賃金及び鉱害賠償債務に優先的に充当するための措置を講じたことであります。そのために交付金は、石炭鉱業合理化事業団を通じて交付することとし、石炭鉱業合理化事業団は、鉱業を廃止した者にかわって未払い賃金及び鉱害賠償債務の弁済を行なうこととしたのであります。  第四は、今後新たに保安確保ができない石炭鉱山の発生を防止するため、交付金交付を受けた者に対しては、自己の放棄した採掘権または租鉱権の区域に再び権利を設定することを禁止するとともに、石炭鉱業合理化臨時措置法坑口開設許可制度を改正し、保安確保するために必要な経理的基礎及び技術的能力を有しない者は、鉱業を行なうことができないように措置したのであります。  なお、この法律は、石炭鉱山保安確保緊急対策としての性格にかんがみ、有効期間を二年とする臨時措置法といたしました。  以上簡単でございましたが、この法律案提案理由及びその要旨について御説明申し上げました。  何とぞ慎重審議の上御賛同あらんことを切望する次第であります。     —————————————
  5. 中川俊思

    中川委員長 以上で趣旨説明は終わりましたが、本案並びに内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案勝間田清一君外二十八名提出石炭鉱業安定法案内閣提出産炭地域振興臨時措置法案勝間田清一君外二十八名提出産炭地域振興に関する臨時措置法案、及び内閣提出臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。岡田利春君。
  6. 岡田利春

    岡田(利)委員 前会に引き続いて、石炭関係法案についての質問を行ないます。  特に時間が制約されておりますので、私は端的にお聞きしたいのですが、千二百円のコストダウンを目標にいたしまして、今日合理化が進められておりますが、特に今日の合理化は、生産部面において千二百円のコストダウンする、この方向に非常に急速に合理化を進めておる傾向が強いと思うわけであります。そこで千二百円の炭価引き下げのうち、流通関係合理化に伴ういわゆる炭価引き下げ額は、一体どの程度考えておるのか、これを端的に一つお答え願いたいと思うわけです。
  7. 今井善衞

    今井(博)政府委員 流通関係につきましては、北海道−京浜間約二百円、阪神−九州間約百円、平均いたしまして百五十円程度コスト引き下げというものを考えております。
  8. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の記憶では、当初流通関係炭価値下がり分は、二百円ないし四百円を想定しておった。ところがこれを生産性部会等でいろいろ検討したけれども、なかなかむずかしい。その理由は、やはり今日の炭鉱における三千に及ぶ銘柄、これらの統一が、各企業の強い反対のためになかなかできない。あるいはまた実際問題としてそれぞれの貯炭場共同化、あるいは荷役設備共同化等についても、いろいろ各社企業縁故があって、これも順調に進めない。こういうような面で、流通関係合理化は非常に後退をしておる、このように私は判断をしておるわけです。こういう流通関係合理化というものは、合理化に対する当初の意欲と同様に、この方向が進んでおるのかどうか、こういう点についてまず端的にお伺いしたいと思うわけです。
  9. 今井善衞

    今井(博)政府委員 流通関係合理化につきましては、御指摘通りなかなか困難な問題がございまして、ただいまのところどの程度まで進んでおるかということを、まだ数字的に申し上げる段階には至っておりませんが、たとえば海上輸送合理化という問題をまずとらえてみますと、そのうちでわれわれとしましては、配船調整実施というものに重点を置きまして、これはすでに北海道関係では、輸送委員会が発足して調整の仕事をやっております。これはある程度進捗いたしておると思っております。次には、専用船建造というものを計画いたしておりますが、これは現在十隻程度運航いたしておりまして、そのほかに約七隻か八隻程度建造中のものがございます。これは、それぞれ少なくとも一割五分あるいは二割程度運航費コストダウンをはかることができると思いますし、その方向で促進したい、こう考えております。そのほかにも、荷役設備港湾設備整備という輸送合理化の問題がございますが、荷役設備につきましては、だいぶ計画がおくれておりまして、近代化資金を貸し付けて助成しようという計画が、昨年度は完了いたしませんでしたので、本年度に相当移行しておりますが、この点は若干おくれておるという実情でございます。  それから御指摘のありました、一番大きな問題の銘柄の統一問題、これは規格炭の方式ということで、極力推進するという方針でおりますが、御承知のように銘柄が非常にたくさんあるという点で、これはまだ実効のあるところまでいっておりません。政府としては少なくともこれについてはある程度計画を立てまして、たとえば電力用炭というようなものについては、できるだけ個別的に促進したいというふうに考えておりますが、まだ実効あるところまで至っておりません。
  10. 岡田利春

    岡田(利)委員 これは大臣にお伺いしたいのですが、いわゆる流通関係合理化は、今日相当行政指導強化するか、ある程度強力な規制をしない限り、私はこの石炭流通関係合理化は達成できないという工合に考えるわけです。山元で一トン四千円の石炭が、東京では一万二千円もする。これはちょうど牛乳と同じで、三倍の値段で一般消費者に売られている、こういう実態にあるのが今日の炭価実情なわけです。ですからこういう面から考えても、単に自由企業競争主義だけでは、流通関係合理化はできないと思うのです。こういう点について大臣は、いわゆる企業者にまかせておいて、今日流通関係合理化ができて、その面におけるコストダウン期待できるとお思いになりますか。
  11. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御承知のように、非常にたくさんの銘柄をそのまま踏襲しておるということでは、私は非常にむずかしいだろうと思うのであります。相当科学的根拠に基づいた混炭をいたしまして、そして規格をもっと少なくする、銘柄を少なくする、そしてこれらの問題に対処する必要があるのじゃないか、そういう方向について、ただいま研究をしておる状態であります。
  12. 岡田利春

    岡田(利)委員 大臣の今の答弁は、答弁として一応理解はできるのですけれども、実際このことは、今までも長い間論議をされておるわけです。学者の意見では、三千の銘柄を大体七つか十くらいに統一すべきではないか、こういう意見すらも出ているわけです。この問題が提起されてから、もう五、六年にもなるわけでありますから、三千の銘柄を十種類にするということは困難かもしれませんけれども、一千くらいの銘柄に統一するくらいのことは、もう実行されなければならぬと思うのです。しかし、これには非常に強い企業家の抵抗があるのが実情なわけです。こういうことであっては、私は流通関係では、おそらく昭和三十八年の十月になっても、炭価引き下げというものは、ほとんどゼロに等しい、全然期待ができないというのが実情だと思います。これを強力に検討する、あるいは検討した結果そういうものを実施に移していく、こういうためには、現在の単なる石炭鉱業合理化審議会生産性部会等で論議することで、一体可能と思われますか。
  13. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 全然不可能とも思っておりませんが、私どもとして考えなければならぬことは、今の銘柄の縮小でありますが、大口需要者、たとえば電力等に対しましては、需要者との話し合いによって、その銘柄をぐっと縮小することができるのではないか、現に特殊の石炭鉱業炭鉱についてはそういうことが行なわれていることは御承知通りであります。大口需要者との了解のもとにこういうことをして参りたい、またそういう段階に達しておると私どもは考えております。
  14. 岡田利春

    岡田(利)委員 先週の金曜日の石炭協会佐久参考人の供述によりますと、今のままでは、流通部門におけるいわゆるコストダウン炭価引き下げというものは、全然期待ができないということを、みずからはっきり意見として述べておられるのです。このことは、政府が、やはりある程度強い行政指導なり、今日の合理化臨時措置法に基づいてある程度規制をしていく、こういう積極的な態度がない限り、私はこれは解決できないと思うのです。なぜ私がこの流通関係の問題を強く取り上げるかということは、今日流通関係合理化がなかなか進まない、しかし昭和三十八年までに千二百円コストを下げなければならぬということで、今日のコストダウン方向が、労働賃金方向に強く向いている、こういう現実を私は非常に重要視するわけです。これは最近の統計でありますが、石炭経協統計によりますと、今年の一月の炭鉱労働者労働賃金は、坑内夫で一カ月、大体二割近くの基準外労働をしているが、これを含めて二万七千三百四十三円、十二月の、能率が二十トンをこえた画期的な月においても二万八千六百五十三円、坑外夫においては一万九千五十四円、平均いたしますと二万五千五十三円。この労働賃金は、今日の鉱工業労働者労働賃金水準からいって、大臣は、地下で働いておる炭鉱労働者労働賃金として高いと思われますか。妥当と思われますか。むしろ安いと思われますか。この点、まず見解を承りたいと思うわけです。
  15. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一般の工業の全体の労賃から見ると、平均よりも少し高いという程度でございますが、しかし特殊な事情もございますから、はたしてこれがいいかどうかということは、よほど考えなければならぬと思います。
  16. 岡田利春

    岡田(利)委員 −わが国炭鉱労働者賃金は、西ドイツに比べると、実に半分なわけです。西ドイツ炭鉱労働者賃金水準から比較すると、二分の一である。ところが今日の大手企業合理化というものは、一体どういう内容を持っているか。一例を申し上げますと、現在争議中の杵島炭鉱においては一カ月平均一万円の賃金ダウンを提案している。白炭高松においては一カ月八千円の賃金ダウンを提案している。あるいは雄別炭鉱においては一カ月八千円の同様に賃下げの案を出して、今年のベースアップも全然話し合いに応じていない。あるいはまた宇部においてもその通り。貝島においては二千五百円の賃金ダウンした。あるいはまた大正においては六千円近い賃金ダウンする。あるいは太平洋、三井においてもそれぞれ賃金ダウンが行なわれている。このように大手関係は軒並みに今賃金ダウンが行なわれておるわけです。ですから、千二百円のコストダウンは、積極的に能率を上げて近代化方向によって千二百円のコストを下げるのではなくて、大幅に労働賃金を削減して、千二百円のコストを下げようとしておるわけです。このことは明らかに池田内閣所得倍増政策の全く逆を行くものであって、炭鉱労働者の方は、むしろ所得半減方向に向いている、こう言っても私は過言ではないと思うのであります。こういう池田内閣所得倍増計画の中における石炭産業実態、これに対して政府としてどういう対策を立てていくのか。地下で働いている恵まれない、災害とガスと炭塵の中に働いておる炭鉱労働者賃金は、一体どの水準を考えておるのか、この点を起点にして今日石炭政策が組まれない限り、石炭産業の不安定どころか、石炭産業に働いておる労働者は、日雇いに緊急就労で働いておる者より若干上回る賃金しかもらえない結果になると思うのです。こういう点、非常に私は石炭政策の中で重要視しなければならぬと思うのですが、この点について、千三百円のコストダウンは、エネルギー小委員会答申を見ますと、現行の賃金に毎年三・八%のベースアップを見込んで、合理化によって千二百円のコストを下げるんだ、これがエネルギー小委員会答申案です。これと全然違った合理化方向について、通産省として何らか積極的に勧告をするなり、あるいは調査をするなり、実態を明らかにするなり、こういう態度を持たれておるかどうかお伺いしたいと思う。
  17. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 千二百円のコストダウンに関しましては、当然賃金の合理的な上昇を見込んでの計算でございます。しかるに今具体的におあげになりましたが、これらの実態を十分に確かめてみたいと思うのでありますけれども、概して申し上げるならば、賃金を削減することによって千二百円を生み出すというようなことは、われわれとしては全然予想しておらないところであります。でありますから、あくまで合理化によってこのコストダウンをするという方向に進むべきである、かように考えております。具体的な問題につきましては十分に調査して対処したいと思っております。
  18. 岡田利春

    岡田(利)委員 ではこの賃金の問題は一応おくことにしまして、もう一つの問題を質問したいと思うのですが、今日炭鉱近代化等助成金については、昨年度は二十一億四千二百六十万円、今年度は二十五億四千百三十八万八千円、こういう予算がついて、それ以外にもずいぶん炭鉱関係について政府予算をつけておるわけです。しかもこの近代化資金は、一割以上の配当をした会社には貸付をしない、こういう基準があるわけであります。そこで各社は、一割以上になる場合には、配当を一割に据え置いて近代化資金を借り、株主に対しては無償交付等の方法で優遇措置を講じておる事実がある。またこのように膨大な資金政府から受けながら、炭鉱会社が全然別な方向に、いわゆる企業外投資を盛んに行なっておる。こういう事実があるわけです。もちろんこのことは、私は資本主義のもとでは絶対悪いということは言いませんけれども、今日このように石炭産業が危機であり、政府保護措置がとられ、いわゆる助成資金が投入されておる、こういう一時的な期間において、こういう投資がどんどん行なわれるということは好ましくないし、むしろ規制さるべきことではないか、このように私は考えておるわけです。この点、まず初めに石炭局長から、こういう石炭関係合理化資金が投入されてから、各社はどのように関連企業もしくはそれ以外の新規企業自己資金投資をされておるか、しかも大臣からは、これらに対する見解を承りたいと思うわけです。
  19. 今井善衞

    今井(博)政府委員 ただいま石炭会社社外投資状況についての御質問でございますが、手元にございます資料によりますと、三十四年度は二十三億、三十五年度は二十四億、三十六年度の見込みとしては二十七億程度社外投資という数字がございます。ただこれは、関係会社の株を持っておって、そういうものの払い込み金、たとえば銀行に対する株を持っておる、それの払い込み金なんというふうなものは一応除外いたしておりまして、直接に子会社に対する投資でございますとか、あるいは石炭関連事業への投資というものを一応集めてみた数字でございまして、大体二十四、五億程度というのが毎年の状況のようであります。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 配当の問題でありますが、配当は一割以内にしておいて、そうして無償交付をやっておる、あるいはこれに類似したようなことをやっておるということにつきましては、それは擬装された配当にすぎない。擬装された配当に該当する場合は、やはりこれは一割を越える配当、こう見て規制すべきである、こう考えております。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 かつて西ドイツ炭鉱が戦後復興する場合に、いわゆる配当は全然停止をした、そういう中で西ドイツ炭鉱が復興されて参ったわけです。わが国石炭産業がきわめて重大な未曾有の非常に困難な事態に直面している、こういう場合において労働賃金がどんどん下げられていく、一方においては社外投資が、今説明があっただけでも毎年二十三億ないし二十七億の社外投資が行なわれている、そうして一方では労働賃金を下げていく、そうして政府からは毎年近代化資金の無利子の金を借りている、消費構造については保護措置がとられている、あるいは失業者に対しては政府はいろいろな措置をとられている、今度の石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正案内容も、首切りをするために保証基金を三億の金を出して保証しよう、払えない場合には二分の一を銀行に払うというのが今度の改正案です。こういう工合首切りによる保証金政府が積もうといっておる、こういう面からいきますと、もちろん社外投資の場合でも、石炭化学あるいは火力の共同発電あるいはカーボンブラックコーライトあいブリケット、メタノール、こういう関連企業は一応いいとしても、あるいは石炭を輸送する輸送会社等はいいとしても、少なくとも、ホテルの経営をしてみたりあるいは観光事業に手を出してみたり、建築、関係のない工作機械、建設、土木、セメント、ハイヤー、自動車会社あるいは不動産、石油の販売、このような方向に今日の炭鉱企業社外資本投資するということは、昔の炭鉱独占資本が、炭鉱で吸い上げた金をどんどんほかの産業投資をして、財閥を形成したという夢を忘れていない証拠だと思う。こういうものにある程度規制措置、強い勧告をしないで今日の石炭政策が一体できますか。今大臣は、一割の配当であって、いろいろ擬装された場合には、これは当然考慮する、こういう答弁がありましたけれども、これらについても勧告するなり、規制法律的にしなければいけませんけれども、しかし正式に勧告するなり、政府の考え方を明らかに示して企業家に協力させていく、こういうはっきりした態度を示すお考えがあるかどうか、御見解を承りたいと思います。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 経済のやりくりといいますか、これはなかなか複雑微妙々ものでございまして、一がいに甲乙をつけることができないような場合もあります。たとえば、具体的な問題を言うのじゃありませんが、担保に取ったものを何とかこれを活用しなければならぬ、これを処分するかあるいは活用するかというような場合に、ただ二束三文でこれを処分するよりも、ある程度これに手を入れて活用すれば、もっと収益が出てくるというような場合もありましょうし、いろいろやりくり関係は微妙でございますから、それらの趣旨については、とにかく炭鉱合理化というものを阻害するような、しかも炭鉱から生み出した資金を、阻害するような、にぶらせるような方面に使うというようなことは絶対に避けるべきであります。別に勧告権というような権利は法規に設定されておるわけではありませんけれどもいかようの形においても適当なる反省を求めることは、もちろんやぶさかでございません。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 もちろん今日私企業でありますから、それぞれ社外投資をしようと労働賃金を幾ら下げようと、それが自分の力でやれればいいのだ、こういうことを一応言えるかもしれませんけれども、しかし逆に鉱工業水準よりも賃金が下回っている、しかも社外投資が行なわれている、配当は一割を必ず保証している、賃金の万は下がっている、人はどんどん首を切られていく、これでは私はいわゆる不合理な合理化だと思うのです。合理化に名をかりた手段でございまして、こういうものは政府自体としては考えていないと思うのです。ですからこれらの総合的な関連性において石炭政策対策というものを考えていかなければ、一方を押すと一方の方からあんが出る、ちょうどあんもちのような状態でつかみどころがない、いつまでたっても不安定である、労使関係においても非常に不安定な状態が続く、こういう結果になると私は思うので、特にその点についての強力な対策というものを要請いたしたいわけです。  次に、先般第百十八回のILOの理事会で、これは一九六一年、今年の三月ジュネーヴで石炭産業の三者技術者会議が開かれておるはずです。これは第一部から第五部に基づくこの会議における一応の結論を出して、それぞれ各国に勧告をするといいますか注意を促すといいますか、こういう措置をとるように決定されたように聞いておりますが、この点について日本の政府には正式のそういう書類が来ておりますかどうか、お伺いしたいと思います。
  24. 今井善衞

    今井(博)政府委員 ILOの関係につきましては、労働省の方にそういう連絡があったやに聞いておりますが、まだ私の方にはそれをいただいておりません。ただその内容は、われわれの仄聞するところでは、勧告ということでなくて、連絡、通報という趣旨のものと聞いております。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 もちろん私は勧告と言っておるわけではないのですが、通報よりもちょっと強い、勧告との中間くらいの注意を喚起する、促す、こういう内容だと思います。これは私の資料によりますと、今年の四月二十一日に小坂外務大臣あてに書簡が来ておると思うのです。それがなぜ石炭関係の所管の通産省にまだ回っておらぬのですか。四月の二十一日に来ておるように私の資料ではなっておるわけです。こういう場合には所管の通産省に、こういうものについてはすみやかに回報すべきものだと思うのです。ふだんこういう問題については、外務省なりに来た場合には、労働省なり外務省なりにあたためておいて、通産省には関係がないというのでよこさないものですか。
  26. 今井善衞

    今井(博)政府委員 そういうことではないと思います。われわれの聞いておりましたのは、労働省で今翻訳をしておるというふうに実は聞いておりまして、それが四月の何日に外務省に連絡があったということについては、それほど以前にあったと思っておりませんでしたので、さっそく外務省と連絡をとりまして、その辺を確かめたいと思います。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 これは間違いなく二十一日に外務省に来て、それから労働省で翻訳したのか何か知りませんけれども、来ておるはずであります。  そこで、このILOに出席をした日本政府の代表は、いろいろ日本の石炭産業実情について説明をいたしておるわけです。大体私の読んだところでは正直に報告されておると思うのですが、特に産炭地並びに産炭地周辺における政府の施策というものについて、七項目かに触れておるわけであります。この演説の内容を見ますと、少なくとも産炭地及び産炭地周辺の地域の振興については、積極的に工場の誘致とか、あるいは関連施設を整備していろいろな産業を誘致する、あるいは移動性の少ない炭鉱離職者の雇用を増大する、こういう点についてはもう具体的に検討しておって、もう大体の成案ができておる、こういう演説がなされておるわけです。ところが一方において今年の春、この三月こういう演説が堂々と述べられておって、今度出てきた産炭地振興法を見てみますと、これはきわめてお粗末な、申しわけ的な法案、単なる調査をするという調査立法にすぎないわけです。これはどうも正式にILOの会議において日本の政府代表が示している態度と、今国会に提案されておる産炭地振興法の内容を見ますと、だいぶ食い違いがあると思われるわけです。この点はもう一歩進めて、ILOの会議の中で日本の政府代表として演説をしたその態度を、そのままやはり今度の法案の中に盛っていくべきではないか、むしろそういうもう一歩進んだ立法内容にすべきである。でなければ、どうもPRで言っておることと、やっておることが違うということになると思うのです。この点についてはどう考えておられるか、見解を承りたいと思います。
  28. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本の政府代表として炭政課長が行っておるわけでありますけれども、前のわれわれの意図は、事業団を作ってやろうということであったのですが、その事業団のねらっておる事業内容を相当御披露したのではないかと私は思いますが、その後いろいろ政府部内等において論議の結果、さしあたりまず調査を始める、こういうことになったわけであります。志すところはわれわれとしては変わっておりませんけれども、今回具体的に調査をして、そしてそれからスタートする、こういうのでありまして、将来の努力目標を述べたものと考えます。結局、お粗末になるか、あるいはそうじゃないことになるかということは、産炭地振興調査会の今後の機能いかんによることでありますので、なるべくりっぱな成案ができ上がりますことを期待しておる次第でございます。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、日本のエネルギー構造の変化に伴う、わが国のいわゆる危機にある石炭産業に対する政策というものは、ヨーロッパ諸国に比べて気づき方も非常におそかったわけです。その気づいたのもおそいし、当然それに伴う対策も三年程度おくれておる、このようにいわれておるわけです。このことは、それぞれヨーロッパを視察した方々のお話を聞いてみても、そういう感を非常に強くするわけです。そうするとわが国のエネルギー構造の中で占める石炭産業実態から考え、雇用の実情、あるいは社会的影響から考えて、この対策わが国の場合には相当テンポを早めなければならぬということになると思うのです。テンポを早めてみても、ヨーロッパ諸国に追いつくことはまだまだ時間がかかるということは、私は間違いのない事実だと思う。そうすると、すべての政策というものが相当テンポを早めなければならぬと思うのです。ところが出してくるものは調査をする——それと、この具体的な一つの道しるべといいますか、路線というものがはっきりと確信を持って意欲的に敷かれていない。これであっては、単に今の石炭対策というものをいろいろな法案を出して、これもやる、あれもやるで、中途半ぱに上だけをさわっておいて、そしてわれわれは石炭対策を総合的にやっているんだという。しかし全体から見ると、通産省内部においても、あるいは政府自体においても、石炭関係についてはあまり関心がないというか、わからないというか、できるだけさわらないように、何とかその場その場を糊塗して問題を避けようという傾向すらあると思う。こういう点については、むしろテンポを早めていって、まだおそいんだ、こういう見解を私は持っておるのですが、大臣はこれからの石炭政策を進めるにあたって、どういう考え、立場をとられるか、見解を承りたい。
  30. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ヨーロッパの先進国から比べると、確かに対策がおくれておると思います。これはいろいろなやむを得ざる事情が積み重なって、こういう事態になっておると考えるのであります。今日から御指摘通りテンポを早めて、産炭地の疲弊の現状をできるだけ早く矯正するようにしたいと考えます。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと産炭地振興法につきましても、もちろん三千万の調査費がついて調査をするということになっておるわけですが、これをテンポを早めるとすれば、来年になってからということでは、私はテンポが早まらぬと思うわけです。少なくとも調査をすみやかにして、できるものから着手してやっていく、こういう態度が当然必要であろうと思うのです。そういたしますと当然通産省が当初考えておった、あるいは石炭合理化審議会が当初考えておったものを早急に具体化する必要があるのではなかろうか、このように考えますと、一応調査をするかたわら、できるものからやっていく。おそらく産炭地振興といっても、私はやはり中小企業、こういうものを当初は誘致をして、滞留している失業者を若干でも雇用さしていく。それから長期的なものについては、長期的な検討あるいは調査研究を加えていく、一時的なものについては一時的な対策を立てて——中小企業鉱工業を誘致するとか、あるいは火力発電等を計画的に考えていく、こういう態度がなければならぬと私は思う。そうすると早急に実施する部面について、やはり具体的に配慮を願わなければならぬと思うのですが、こういう点については十分話し合いをして、そういう意味を、今度の提案されている本法の内容についても十分考える意思があるかどうか、そういう用意があるかどうか、気持があるかどうか、一つお伺いしたいと思います。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはりただ急ぐ急ぐといっても、無我夢中に、計画もなしに走り回るというわけには参りません。やはり相当具体的な計画を立てて、そうしてそれを逐次実行するということでなければならぬのであります。もしそれが年度半ばにおいて具体的にはっきりしますれば、当該地区の地方自治体を中心として起債額を拡大してもらいまして、それをもってこれに措置する、それくらいの用意は持っております。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 これらの問題に関連をして、さらにまたあとから同僚議員が具体的に質問をすると思いますので、この問題については私はこの程度でとどめておきたいと思います。  次に、先ほどから炭鉱合理化方向について、特に労働賃金、労働条件にしわ寄せをされて、いわゆる十九世紀的な感覚のもとに炭鉱合理化が進められておるということを、私は指摘をいたしたわけですが、そういう点から考えて、これからの日本の炭鉱の経営のタイプといいますか形式といいますかスタイルというか、炭鉱経営というものの考え方が問題になってくると私は思うのです。たとえばある岸鉱においては、石炭の生産からその積み出し、これに伴う福利厚生施設、社会的な施設を含めた炭鉱経営も行なわれておるし、一方においては、ただ穴を掘って石炭を出す。資材も施設も何もない。選炭も満足にしておらないという炭鉱すらもあるわけです。ですから石炭企業の安定あるいは合理化をはかっていくという場合に、大体石炭山の規模、それに伴う経営構成のスタイルといいますか、要因と申しますか、そういう構成というものが、やはり相当具体的に考えられていかなければならぬ問題ではないかと思う。特に最近、無差別的に病院を切り離すとか、第二会社にしてしまうとか、あるいは全部やめてしまうとか、あるいは福利厚生関係はもちろんのこと、石炭運搬の工程の坑外運搬系統までも下請にする、こういう傾向が合理化の中において強く出てきておるわけです。こういう点について、炭鉱の経営構成について一体どのように考えられておるか、お聞きしたいと思うわけです。
  34. 今井善衞

    今井(博)政府委員 石炭の経営規模の点につきましては、これから新しく山をやるという場合には、私は少なくとも年産十万トン程度以上の山でないと、投資価値がないといいますか、なかなか経営がむずかしいというふうに考えておりまして、新しい山の規模としては少なくともそれ以上でなければいかぬだろうという考え方をとっております。現在は中小の炭鉱、それ以下の炭鉱が非常にたくさんございまして、その数もふえておるのでございますが、これはやはり過渡的な現象でございまして、やはり今後の新規開発という場合には、少なくとも先ほど申しましたような程度の経営規模というものを考えておるわけであります。  それからさらに、経営の様式としまして、たとえば今の福利厚生施設について、これは会社がみずからやるか、あるいはこれを切り離して別の部門でやるかという点につきましては、御指摘のように、漸次これを切り離してやっていく傾向が強くなっておるわけであります。ただ外国の例なんかを見ますと、やはりこれはできるだけ切り離すというか、別の会社でやっておる場合が多いようでございます。日本の場合も、最近は産炭地付近も社会的にも文化的にも相当進んで参りまして、そういう関連の施設部門が独立してやれるという場面がだいぶございますので、これはやはりもちはもち屋にまかせるというふうな考え方で行きますと、場面によってはそういうものは別の部門で、別の一般の形態でやらした方が能率が上がるのじゃないかという面がございます。  それから日本の坑内坑外の比率を考えますと、坑外の方の生産トンあたりの消費工数というものが外国に比べて非常に高くなっておりまして、これはやはりそれだけ生産性が薄い、低いということにもなりますので、やはりできるだけ合理的に切り離すという方向については、これをいかねととめるわけにはいきませんので、合理的な方向で切り離していくという点については、やはり必要であろう、こう考えております。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 炭鉱の構成そのものにはいろいろな見解があると思うんですが、しかし最近は直轄従業員が減って、逆に臨時夫あるいは組夫、特に組夫の場合には雇用がむしろふえておる一わけです。いわゆる普通の炭坑夫、直轄鉱員が減って、臨時鉱員がふえておる、こういう傾向が非常に強くなってきている。それから系列のあるものもどんどん下請に、あるいは白ズリの捨て場、あるいは坑外の運搬関係、そういうものが下請に出されておる。出すことは、これは厳密にいえば職業安定法の違反だ、こういう工合に考えておるのですが、そういうことが平気で行なわれておる。中小炭鉱では極端なことをいうと直轄従業員よりも臨時夫、組夫の方が坑内で行動しているのが非常に多い。それも法違反を犯して石炭を採掘している、こういう傾向もあることはいなめない事実であるという工合に私は考えるわけです。こういうことに目をつぶって合理化を進めていくというところに、今日石炭政策の無理があるのじゃないでしょうか。あるいはまた、ちょうど鉱山保安局長も来ておりますが、先般三菱の直系の方城炭鉱においてガス爆発が起こった。このガス爆発の現場は組夫の現場でしょう。しかもそこで石炭を掘っているではありませんか。これは今日の法規で一体許されることなのかどうか。幾ら方城が上がり山とはいえ、こういうことが一体許されていいのかどうか、ここに私は根本的な問題があると思うんです。こういうことを政府は放置をして、石炭合理化を進めるという考えですか。
  36. 今井善衞

    今井(博)政府委員 現在の鉱業法は本人稼行主義、こういう原則をとっております。石炭の採掘は、やはりその鉱業権者がやるということを建前にいたしておりますので、そういう組夫あるいはそういうものが下請の形で、石炭を採掘するということは禁止いたしております。そういう方向合理化を進めていくことは毛頭考えておりません。
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 しかし保安監督官が自分の権限に基づいて、法に基づいて監督をする業務をも拒否をする実態があるわけなんですから、まして私が今申し上げた実態というものがあることは当然予想もされるし、皆さんが調査をされれば明らかなことなんです。こういう点について、特に本日提案された保安法の問題、保安の問題とも関連があるし、炭鉱の経営の合理化とも関係のある問題なんです。こういう点について具体的に調査がされておりますか、ないとすればこういう点について具体的に調査をする御意思がありますか。
  38. 今井善衞

    今井(博)政府委員 先ほども申しましたように、そういうことは法律違反でございますので、そういう事実があったら厳重に取り締まりをやりたい、こう考えております。もしもそういう傾向があるということがわかりました場合には、もちろんさっそく調査を進めたいと思います。
  39. 岡田利春

    岡田(利)委員 今私が申し上げましたような傾向というものは、特に中小炭鉱、租鉱炭鉱においては、そういう傾向が非常に強いようであります。私は具体的に多くの山を実例としてあげていいのですが、そういう点について特に態度が明らかになりましたから、その点については保留いたしておきたいと思います。そこで石炭鉱業合理化審議会の中では、先般も公聴会で若干私が質問したわけです。当初坑口開設の認可基準を作るときに論議をされて、一委員から租鉱の坑口開設認可については考えをはっきりしておく必要があるのではなかろうか、特別に配慮を払う必要があるのではなかろうか、こういう意見が出されまして、これに対して現在二十万トン程度しか租鉱では出炭がなされていないというような答弁があって、それで終わっておるわけです。その結果今日の坑口の開設の認可基準が設定をされておる事実がある。これは昭和三十一年と私は記憶をいたしております。ところがその後、今日の租鉱炭鉱を見ますと、大手でも百十一をこえておる。中小では百四十程度の租鉱炭鉱があるというととで、租鉱炭鉱の出炭は実に四百五十万トンに及んでいる。そこに働いている炭鉱労働者は二万人に及んでおる、こういう方向で非常に租鉱関係がどんどん拡大をされておるわけです。しかも直轄から急に翌日から租鉱に切り落とすという、今日の社会常識では想定されないことも平気で行なわれておる。一方鉱業法では租鉱契約は五年をこえてはならない、延長する場合にはさらに申請をして認可を受ける、しかも坑口開設許可場基準を見ますと、能率、鉱量等の一応の規定はありますけれども、この許可基準には幾らでも合致でき縛る施業案は私は出し得ると思う。小さければ小さいほど高能率になることはきまっております。でなければ炭鉱経営はできないのであります。ここに坑口開設基準についても、大きな矛盾があるという工合に私は考える。しかも百万トン以上の出炭をする炭鉱はわずか七つか八つしかない今日、六百四十の炭鉱の約半分の炭鉱の出炭量はわずか三%程度でしょう。こういう中小企業というか零細というか、あわつぶのような炭鉱が非常に多いのが日本の特徴のわけです。しかもそういう中小炭鉱がさらに租鉱をやっている。このことは石炭鉱業の安定と逆を行っている姿ではないか。しかも昭和三十二年ごろに石炭需要が一時に拡大をした場合に、無差別的に許可をしておるという傾向がありました。極端なことをいいますと、事業団で買い上げた山の盗掘をも見て見ぬふりをしている、こういう傾向すら私はあったと思う。こうなって参りますと、私は今日の租鉱の問題というのは、石炭産業の安定という面を逆で行っているという工合に考えるわけなんですが、この租鉱について坑口開設の認可基準等も含めて再検討する意思があるかどうか、お伺いしたいと思います。
  40. 今井善衞

    今井(博)政府委員 ただいま御指摘の坑口開設の許可の基準は、仰せの通り昭和三十年に設定したものであります。従って今日相当合理化が進んできておりますし、この基準というものは、私は当然引き上げて考えるべき問題と考えております。昭和四十二年度を目標に、今いろいろ計画を考えておりますが、それとの関連において私はこの基準を引き上げたいと考えております。  それから、租鉱権の問題は現在鉱業法の改正審議会で検討中でありまして、やはり租鉱権制度そのものは、日本の石炭実情から考えますと、やむを得ない制度であるという結論が、大体出かかっておるようでございますが、まだきまっておりません。しかしその場合におきましても、租鉱権の認可については、相当はっきりした基準を設けるという意見が出ております。私も大体その方向に従って租鉱権の認可基準——これはもちろん従来からもございましたけれども、若干明確を欠くきらいがあった。と申しますのは、地方の通産局長にまかしておりまして、地方の実情によって若干その辺の運用が違っておったのではないか。そういう明確を欠くきらいがあったように思いますので、この点は今回租鉱権の認可の基準を、もっとはっきりしたいということで、原則として五年をこえるものは許可しない、あるいは主たる鉱床については租鉱権を設定しないというふうな明確な基準を設定したいと考えております。
  41. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、申請する場合には、五年分だけの鉱区を租鉱させるということを鉱区所有者は言う。ところが炭層は続いているわけですから、五年たつと、またあとの五年分を租鉱させる。これではいつまでたっても際限がない。こういう場合は一体どのように考えられるか。一応そのブロックはどう見ても五年分よりない、あとは別に遠くに離れて坑口をつけなければ、鉱量はないということならわかると思うのです。ところが、ずっと続いておって、二十年分も三十年分も五十年分もあるというような場合には、どういう考えで判定を下されますか。
  42. 今井善衞

    今井(博)政府委員 五年と申しましたのは、原則として五年というものを堅持したい、こう申し上げたわけでございますが、今の考え方としては、鉱業法の改正審議会では、十年にしたらどうかという意見も出ておりまして、一回だけは延長を認めるというふうな趣旨も考慮に値するのではないかと思っております。また御指摘のような非常に続いておる場合、これは相当大きな鉱量になると思いますが、やはり延長するにしても一回で、十年程度が最も適当じゃないか。それから今仰せられましたような、非常な鉱量が続いておる場合で、断層があったりあるいはいろいろな鉱床の関係等で切り離せないというような事態がはっきりいたします場合には、これは技術的に分割ができないことも考えられますので、そういう場合にはやはりその辺の考慮が相当大きくなるということも、例外的にはあり得ると思いますけれども、しかし租鉱権趣旨からいいまして、あまりにも鉱量の大きなものにつきましては、やはり今申しましたような考え方で、主たる鉱床については租鉱権を設定しない。しかしその主たる鉱床から離れて別の炭層があって、それは租鉱に出す方がいろいろなかね合いから見ていい、しかも分割譲渡が非常に困難だというふうな特殊な場合には、今御指摘のような方法もあり得ると思いますけれども、しかしそれはきわめて例外的なものでありまして、そういう場合には個別によほど厳正に検討してから租鉱権を設定していきたいと考えております。
  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 大臣にお伺いしたいと思うのですが、大体メタルの場合には、メタルにもいろいろありますけれども、概して鉱床といってまとまって賦存しておるわけです。ところが炭鉱の場合には層状をなして累層的に賦存しておる。保安の問題でも、同じ鉱山でも炭鉱の場合はメタルと相当違いがあって、特に石炭関係保安法、保安規則というものは膨大な規定がなされておるわけです。保安法でもそうなんですが、鉱業法についても、こういう租鉱等の問題はありますし、あらゆる面から検討して参りますと、単に機械的にメタルも石炭も一緒にして、一本の鉱業法規制するということに、あまりこだわる必要はないのではないか。むしろわが国の場合にはメタルの鉱業法石炭鉱業法というものが二本建てになっていいのではないか。あるいは石炭保安法というものが、法自体メタルの保安法と別途に単独に立法されていいのではないか、こういう気が私の検討の過程を通じて強くするわけなんです。こういう点について、特に鉱業法審議の中で十分に検討してもらいたいと思いますが、こういう点について大臣はどうお考えになっておるか、見解を承りたい。
  44. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘通りでございます。メタルと石炭鉱業とはだいぶ行き方が違っておるのでありますから、今回の鉱業法改正に際しましても、この点が相当大きな課題になっておると思います。われわれは十分に専門家の研究の結論を期待しておるわけでありますが、やはり通産省の従来の経験から見て、とにかくこれを無差別に一本で規制するということは、非常に困難であるというふうな考え方をもって、とにかく結論を待っておる次第であります。
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間もありませんからもう二、三点で終わりますけれども、現在の石炭鉱業合理化臨時措置法の中に、未開発地域の指定という条項があるわけです。話には、有明海域の開発、あるいは北海道空知の北部あるいは南部の開発、あるいは釧路炭田、白糠炭田の開発とかいろいろいわれておりますけれども、この合理化臨時措置法に基づいて未開発地域を指定したことがありますか。まずこの点をお聞きしたいと思います。
  46. 今井善衞

    今井(博)政府委員 したことはまだございません。
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 合理化臨時措置法というのは単に悪い山を買いつぶして、現在稼行しているいい山をどんどん合理化して生産性を上げていくというだけのものではなくして、一方においては未開発の地域を開発するという積極的な意味もあると私は思うのです。こういうようないいところは、もう六年にもなるけれども、一度も法が発動されていないということがある。悪い方だけ予算をつけて、どんどんその方向を進めていっておる。これは私は法の精神からいっても、片手落ちではなかろうかという工合に実は考えておるわけです。しかも未開発地域の指定に伴って、鉱区の問題があれば鉱区調整協議会というものがあって、ここで鉱区の調整について論議をするわけです。この鉱区調整協議会というのが法にはあるのですが、これは一体構成されておるかどうか、これもお伺いしたいと思うのです。
  48. 今井善衞

    今井(博)政府委員 鉱区調整協議会は、法律ではさまっておりますが、まだ設置はされておりません。これはいろいろと事情があるわけでありますが、現在のところまだ設置されておりません。
  49. 岡田利春

    岡田(利)委員 これは大臣にお伺いしたいと思うのですが、せっかく現在の合理化臨時措置法の中に鉱区調整協議会があるわけですから、これをもう少し範囲を拡大して、協議会というか、この性格を強いものにして、当面の鉱区調整を話し合う機関、調整する機関にしてはどうか、このように私は考えるわけです。たとえば比較的構造規模も優秀な中小炭鉱がある。ところが鉱区がなくなってきたけれども、租鉱はさしてくれない。租鉱はさしてくれないし、鉱区譲渡もしてくれないということで、豊州炭鉱もしくは上清炭鉱では一時的な盗掘を行なっておる。こういう事実も今回の災害の場合に明らかに出てきたわけです。このように盗掘をするのですから、いつかやめなければならない。ですから設備にも金を投じない。これでは炭鉱合理化もできないし、その山の安定もはかれないし、保安確保もできないということは、火を見るよりも当然だろうと思います。そうすると、当該中小炭鉱が、鉱区調整協議会なら協議会を作って、そこに申請をした場合に、協議会で討議をして、これは現在の炭鉱の経営の規模、設備実態からいって、そこに鉱区を分譲することは不合理だ、こういう場合には分譲しないという結論を出してもいいと思う。しかし設備近代化されておるし、しかも保安の面についても、あるいは資本的に見ても、十分石炭産業の安定に資することができる、こう認定した場合には、当該の隣接地域を分譲すべきである。この価格の基準は、一応基準を策定して分譲さしてやる。土地の問題の場合には、公共の場合には取り上げるという法案が、今国会に出ておるわけですから、鉱区の場合にも、どんどん炭鉱をつぶしていくという場合には、こういうものを作らなければいかぬじゃないか。これは、今の合理化臨時措置法の鉱区調整協議会の性格を強めた法改正を、若干すれば可能であると私は考えるわけです。むしろこういう点を今国会あたりに、法改正案として出すべきが至当であるという見解を私は持っておるわけなんです。この点についてどうお考えになりますか。
  50. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御趣旨については全く同感でございます。この問題の実際上のいきさつ等につきましては、所管局長から説明いたさせます。
  51. 今井善衞

    今井(博)政府委員 合理化法に、未開発地域についての鉱区調整協議会を設けるという点がございまして、これは先ほど申し上げましたように、まだ設置をいたしておりませんが、設置をいたします場合には、まず地域指定をやりまして、地域指定に基づいて鉱区調整をやる場合に、この鉱区調整協議会が働くわけでございまして、これには現在いろいろな事情がございまして、地域指定をしなくても、いろいろ鉱区調整なり、他産業との調整というものが、一応現在の地域についてはなされておりますので、現在見送っておるわけでございます。しかし今後、たとえば釧路炭田のごときも、大体調査が六月中に完了する予定でございまして、その中間報告によりまして、場合によっては鉄道との関係とかいうことで調整を必要とするというふうな場合には、具体的に一つ検討いたしまして、鉱区調整協議会というものを設置してやりたい、こう考えております。今までの三池炭田北部のような、こういうところにつきましては、すでに幸い調整がうまく行きましたので、現在のところはまだ設置を見ないのであります。  それから第二に御指摘の、今までのは未開発地域の問題でございますが、既開発の鉱区調整につきましては、確かに岡田委員の御指摘のように、こういう委員会にどんどん申請して調整するという御提案については、われわれも今まで相当検討はしてきたのでありますが、何分鉱業権というものは財産権でございまして、現在の鉱業法の建前では、通産局長がいろいろあっせんするということになっておりまして、これをもっと強化する方向で考えたらどうか。そこで調整委員会のようなものを作りまして、ここへかりに——中小炭鉱の中でも相当優秀な炭鉱が、鉱区をほしいというふうな例が多いというのでございますが、実際問題としますと、あそこの鉱区がほしい、向こうの鉱区がほしいということで、委員会のような組織で、そういう非常に複雑な利害関係のからんだ鉱区調整をやることが、はたして適当であるかどうかという点については、私は若干疑問を持っておりますので、これはいま少し時間をかけて検討させていただきたいと思って、今回そういうような提案はいたさなかったような次第であります。
  52. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、特にこの鉱区調整の場合に、もちろん現行法のもとでは、どんぴしゃりと結論を出し、その裁定に従ってもらうということは困難だと思います。しかし大手間の場合には話し合いがつくのですが、大手、中小間においては、きわめて話し合いが困難であるという現象が随所にあるわけです。しかもどうしても分けてもらいたいという場合には、極端なことを言いますと、いわゆる可採炭量一トンにつき三百円の値段に換算して、鉱区を分譲しておるという事実すらあるわけであります。そういうところに一トン三百円の金を払って、一体今日の炭価引き下げの中で、炭鉱経営ができるかということになると、私は非常に疑問があると思います。そういう面からいっても、やはり妥当な検討をして、そしてサゼスチョンをしていく。もちろんそれできまらないこともあるでしょう。しかし積極的にそういう解明を与えていくというのが、石炭産業合理化と安定のために、私はどうしても必要じゃないかと思う。だからむしろ力関係といいますか、資本的に弱い炭鉱の救済措置の方に私は重点が向けられると思います。大手同士は、それぞれお互いに分譲し合うという点で、ある程度話し合いもついている傾向もありますが、それでも非常に困難なところが、私の知っているだけでもずいぶんあるわけですから、鉱区調整については、現行法で許される限度において、もう一歩進めて積極的に取り上げてやる、こういう態度を私はとってもらいたいと思います。  それと、今日租鉱料の問題は、一応売炭価格の五%程度というものを基準にして租鉱料がとられておるのですが、これも最近はだいぶ直りましたけれども、昔は一トン八百円の租鉱料をとっている山もあった。今日は百円の租鉱料もあれば、百五十円、三百円をこす租鉱料も実はあるわけです。こういう租鉱料がとられておって、千二百円の炭価引き下げて、いわゆる石炭産業の中で安い石炭を供給していくということが、この租鉱の山の場合に可能であるかどうか、こう考えて参りますと、一応五%という基準を設定しておるけれども、これもまた問題だと思います。そうすると、社会的な要請に基づいて炭価引き下げをしていく、こうなると、むしろこの租鉱料等についても、積極的にある程度ぴしっとしたものを打ち出していく必要があるのじゃないか。行政指導をする考え方の基準程度は、単に五%というだけじゃなくて、原料炭、一般炭、賦存状態等いろいろあるわけですから、ある程度基準を考えて、こういう点についてやはり協力を業界に要請をしていく、あるいはそういう注意を促していくというようなことも、私は石炭鉱業合理化、安定のためには必要じゃないか、このように実は考えるわけです。今日の租鉱炭鉱の場合を見ますと、五年間で租鉱契約をして、生産した石炭はおれのところによこせ、これは一トン三千円なら三千円で、たとえば原料炭であっても、極端の場合には、二千八百円、二千三百円程度で買い上げている山がある。三千円程度はざらである。そして一括買い受けるということを条件にして租鉱炭鉱の契約を結んでいるところも実はあるわけです。これは公正取引からいって、地位を利用した不当な契約であって、私は違反ではなかろうかという気持すらするわけでありますが、こういうものが放置されておったんじゃ、いつまでたっても石炭鉱業合理化、安定というものはできないと思うが、こういう点についてどのように考えられているか、お伺いしたいと思います。
  53. 今井善衞

    今井(博)政府委員 ただいま御指摘の租鉱料の問題は、別に基準を設けて条件というか、そういうことは現在いたしておりませんで、業者の間の話し合いになっておるのでございますが、仰せの通りわれわれの手元の資料では、平均百五十円程度というふうに聞いております。しかし御指摘になりましたように、六百円とか八百円とか、こういうとほうもない租鉱料の契約が前にもあったわけでございまして、最近は比較的よくなっているのじゃないか、こう実は考えております。しかし、租鉱権というものを認めて、これが合理的に運営されるということが、現在の石炭産業の安定の上から見て、私は、やはり必要であると思いますし、かりに、租鉱料が相当上がる、あるいは、そういう特殊な優越的な地位を利用して、親権者が租鉱権者に対して相当圧迫を加えているというふうな事実がございましたら、これは、その程度いかんによりましては、私はやはり法律の問題にもなろうと思いますので、そういうケースが起こるような場合、あるいは租鉱料が相当上がりそうだというふうな問題が起きました場合には、やはり私は行政指導でもって、少なくとも五%ないし一〇%というふうな基準を考えて、行政指導を強化していきたいというふうに考えております。
  54. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間もありませんから、特に最後に大臣にお聞きしたいと思うのですが、今私が質問した中でも、ずいぶん石炭合理化ということが言われておりますけれども、いろいろな点に問題があることは、大臣もお聞きになっておわかりになると思うわけです。しかし、なかなか石炭産業実態というものは解剖されないという傾向があるわけです。これは、私もずいぶんいろいろなものを読みますけれども、日本の石炭産業実態をあらゆる面にわたって解剖するという点では、実は総合的に解剖された文献にぶつかったことはないわけなんです。しかし今日、日本の産業政策の中で石炭産業政策というものは非常に重要な問題なわけですから、まあ石炭産業白書といいますか、こういう点で、やはり今日の石炭産業というものを、あらゆる面から総合的に、徹底的に分折をしてみる必要があるではなかろうか、このように私は考えるわけです。しかも、そういう厳正な批判と反省の中で、今日の総合エネルギーの中で、石炭産業の位置づけをはかっていく、こういう態度がなければ、多くの人々の共感を呼ぶことができないし、理解を得ることも非常に困難だと思うのです。そういう中で、政府は責任を持って総合エネルギー政策の中における石炭産業の位置づけを明確にしていく、こういう態度が必要ではないかと私は思うわけなんです。従って、それと同時に、総合エネルギー政策の中における石炭産業の位置づけの問題なんですが、いろいろ参考人等の意見を聞いても、大臣答弁を聞いても、一応今日の段階で、石炭政策について、もう少し検討を深める必要があるということを大臣答弁されておるわけなんです。その点、私は全く同感なわけであります。そこで、今国会中は無理でありましょうけれども、通産省の設置法に関係のない、それに該当しないような一つの委員会、総合的な委員会構成を作って、日本の総合エネルギー政策、この中における、特に国内資源である石炭産業の位置づけ、あるいはまた、これに関連する国内資源もあるでしょう、そういうものの検討をやはりして、明確な方針を出していくという態度が必要ではないか。ただ、現実に通産省内部にエネルギー調整協議会という四者で構成されたもの、そこで現実的な話をしていくのではなくして、総合的にこれからの経済高度成長に伴うエネルギー政策というものを確立していく、こういう点でそういう積極的な態度というものが必要ではないか。具体的な一つの専門機関を作ることが、今日非常に必要な段階にきておるという工合に思うわけなんですが、この重要な石炭産業政策を担当している通産大臣として、こういう問題について、どういうプランと積極的な態度をお持ちですか、お聞きしたいと思うのです。
  55. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただ口頭禅でなしに、全く日本の石炭産業というものに対しては、相当深く反省すべき点が多々あるように考えるのであります。ある人が石炭というものは、ダーク・ビジネスだというようなことを言った言葉を、私まだ記憶しているのでありますが、掘る方については相当整理をして合理化が進んでいるが、先ほど御指摘になった取引関係なんかについては、実に乱脈きわまっている部面が相当あるのではないか。こういったような点をもう少し掘り下げて、そうしてこれらの問題に対して適当な対策を立てることによって、日本の石炭というものはまた相当まかなえるではないか、かように考えるのであります。せっかく資源が存在するのでございますから、日本の石炭産業については、御説のようにもっと掘り下げて、そうして解剖、分析して将来の対策を根本的に立てるというかまえが必要であるということを、私は考えている次第であります。
  56. 岡田利春

    岡田(利)委員 特に最後の問題については、いずれわが党の国対あるいは政審会を通じてわが国の総合エネルギー政策、特に問題になっておる石炭産業の位置づけ、こういうものを真剣に検討する点についての具体的な提案なり要請があると思うので質問したわけでありまして、大臣もその点十分頭の中にとどめて置かれて、これらの問題について対処をしていただきたいという工合に、私は考えるわけであります。  最後に、資本主義の国で、石炭を四千万トン以上産出しているところでは、石炭企業に対する制約というものが、西ドイツを見てもその通り。あるいはフランスの場合はモネ・プランにおいて、半官半民の公社制度である。イギリスにおいては国有国営である。あるいはオランダ、ベルギーなど労働者の積極的な意見を反映さして、社会性を持たした制約を加えている。こういうような方向でヨーロッパにおける石炭産業というものは、社会的に基幹産業としてある程度規制を加えられていることはいなめない事実であると思う。このことは、やはり石炭産業は、好むと好まざるとにかかわらず、将来生き残っていくためには、やはり社会化の方向をたどらざるを得ない。私は、極端な社会主義というようなことを言うわけではありませんけれども、好むと好まざるとにかかわらず、そういう点は避けられないではなかろうかと思う。今日、エネルギーの中に占める石炭産業の将来を考えれば、そういう時点に立っていると思うのです。この点において、やはり石炭経営者は、もう少し真剣に考えるべきだと思うし、政府もまた、そういう意味で、もう少し積極的な確信を持って石炭産業の政策を進めていくということでなければ、わが国石炭産業の安定は、将来にわたって築くことができないと思うのです。ですから私は、石炭産業をただ保護するという代弁者ではなくして、そういう点きちっとして、しかも総合エネルギーの中における石炭産業の位置づけをしていく、こういうことであれば、相当多くの企業家からも協力を得られるではないかという工合に考えておるわけでありまして、そういう点について社会化の方向、こういう規制という問題についても、ある程度決断を持って石炭産業政策に臨むべきではないか。特にきょうの新聞の発表によると、電力は昭和四十二年に二千万トンの石炭を買い付ける。低品位炭については別ワクである。三十八年には一千八百万トンの石炭の長期契約を一応考えておられるようであります。しかもこの電力用炭はそれぞれ長期計画というようなことで、小口輸送で流通関係合理化しないが、これがもし、たとえば将来できる苫小牧あるいは室蘭、小樽等の港湾が指定をされて、そこで一括して納入体制を共同化して作れば、これはもう値上がりの面についても、ある程度の実績を勘案しても相当、しろうとが考えても合理化ができて、その部面だけで百円や百五十円のコストダウンができることは明らかだと思うのです。その方は、自分の経営保持を考えて全然熱意を示さず、労働賃金を下げて首を切っていく、こういう安上がりの、政府が考えていない方向に今日の合理化が進んでおるというのが実態なのでありますから、そういう点については、どうしても、やはり政府近代化資金も貸す、あるいは失業者についても考えていく、首切り基金についても政府は今度は三億を出した、あるいはまた石炭価格の研究についても金を出している。技術研究といえども補助している。それだけれでも、やはりこういう点については、こういう方向で、こういうことはこの通りやるべきであるという規制を加えておるが、こういうものがきちっとできないと、これはもういつまでたっても、石炭産業の政策はとれぬし、その中で石炭産業政府の政策も十分にとられない。企業家は、自分の山だけが生き延びればいいという主義でやっているうちに、石炭産業の衰退がどんどん進行していくということになると思うのです。これは一つ椎名大臣の決断と、石炭産業の将来にわたる方向づけを大臣として、就任中に一つ達成していただきたいという強い希望を私は持っておりまして、最後にその決意のほどを聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  57. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはり社会化とかなんとかいう言葉にとらわれずに、石炭産業合理化、全般の合理化推進のためには、政府がどうしても今日以上に相当関与する必要があると私は思います。放任でなしに、政府がこれに対して相当関与するということがどうしても避けられない、そういうことによらずんば石炭の正しい姿というものは出てこない、かように考えます。
  58. 中川俊思

    中川委員長 この際暫時休憩いたします。  本会議散会後再開の予定であります。    午後一時二分休憩      ————◇—————