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1961-05-18 第38回国会 衆議院 商工委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月十八日(木曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員   委員長 中川 俊思君    理事 内田 常雄君 理事 小川 平二君    理事 岡本  茂君 理事 中村 幸八君    理事 長谷川四郎君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       有馬 英治君    岡崎 英城君       小沢 辰男君    笹本 一雄君       首藤 新八君    田中 榮一君       田中 龍夫君    中垣 國男君       林   博君    岡田 利春君       加藤 清二君    小林 ちづ君       中嶋 英夫君    中村 重光君       西村 力弥君    渡辺 惣蔵君       伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       砂原  格君         通商産業事務官         (石炭局長)  今井  博君         通商産業事務官        (公益事業局長) 大堀  弘君         中小企業庁長官 小山 雄二君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した案件  商工会の組織等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一八〇号)  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第七一号)  石炭鉱業安定法案勝間田清一君外二十八名提  出、衆法第一〇号)  産炭地域振興臨時措置法案内閣提出第一八四  号)  産炭地域振興に関する臨時措置法案勝間田  清一君外二十八名提出衆法第三五号)  臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一六一号)      ————◇—————
  2. 中川俊思

    中川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案勝間田清一君外二十八名提出石炭鉱業安定法案内閣提出産炭地域振興臨時措置法案勝間田清一君外二十八名提出産炭地域振興に関する臨時措置法案、及び内閣提出臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案、以上五法案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。笹本一雄君。
  3. 笹本一雄

    笹本委員 私は石炭鉱業合理化改正案並びに産炭地振興法案につきまして、おもに石炭政策基本的な問題の数点に対して、大臣に質問いたしたいと思うのであります。  石炭鉱業は、数年来世界的に急激なスピードをもって進出している重油等流体エネルギーに対抗するために、昭和三十三年当時の炭価を基準にして、昭和三十八年度までには千二百円炭価引き下げるべく、目下懸命な合理化努力を行なっておるのでありますが、重油価格の値下がりの速度は、当初の予想に比べて、はるかに速いということであります。最近の重油価格の推移並びに炭価との差はどのようになっているか。さらにまた重油価格は、今後とも従来のようなスピードでまだまだ下がるかどうか。どの程度まで下がるのか。最近アメリカあたりでは、重油価格値上がりする傾向にあるという話も聞いておりますが、またドイツでは、重油価格はすでに底をついたという観測をされておるようでありますが、政府重油価格見通しについて、どのような情勢判断をしておるか、まずこの点についてお伺いしたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 諸外国傾向はしばらくおくといたしまして、日本重油は、国際価格から見てはるかに高値であります。そこでどうしても日本重油値段というものは、今後とも私は下がるものと考えております。そうすると、石炭との値段の開きが出て参りまして、千二百円の合理化では追っつかないのではないかということになるのでございますけれども、将来の重油値段いかんにかかわらず、電力あるいは鉄鋼セメント界、これら燃料を多量に扱う産業とただいま話し合いをしておりまして、重油値段というものは将来どうなろうと、とにかく三十八年度までにトン当たり千二百円のコスト引き下げる、そして五千五百万トンの生産量を維持していく、こういう基本的な建前のワク内においては、相当責任を持って日本石炭を使っていくという話し合いを今進めておるわけでございます。重油見通しいかんにかかわらず、石炭の方の関係はまずまず、とにかく大丈夫な線を維持するという見通しがついておるわけであります。
  5. 笹本一雄

    笹本委員 私も、石炭価格がどこまでも下がるとは思っておりませんが、世界石油カルテル戦略によりまして、石油価格は、炭価を幾ら引き下げても、常に炭価を若干下回る線に置かれるという可能性は十分にあろうと思うのであります。従いまして、昭和三十八年度までに千二百円炭価引き下げても、石炭が裸で重油と対抗することは事実上不可能という事態は当然予想されることであります。そのような事態に立ち至ってから石炭政策を立てるのでは、時すでにおそく、すでに今日から、昭和三十八年以降の長期石炭政策の樹立について検討を始めるべきであると思うのでありますが、このような観点に立って、第一にお尋ねしたいことは、石炭石油貿易自由化との関係であります。貿易自由化世界の趨勢ではありまするが、石炭石油についても、近い将来に自由化する方針であるかどうか、ガットの関係等によって、どうしても自由化しなければならないかどうか、自由化至上命令であって、絶対に実施しなければならないものであるかどうか。私は、最近の貿易自由化考え方は、経済性ということを追求するということにあまりにも急であって、そのためには外貨の問題は考える必要はないとし、または国内産業が破壊してもかまわないというきわめてドライな考え方に走っているような感じもするのでありますが、貿易自由化実現の線に沿って、国内経済構造を改造していくことはもちろん必要でありまするが、私はやはり国内産業育成擁護こそ主であって、自由化は従であるという考え方を失ったならば、国の経済秩序は保ち得ないと考えるのであります。自由化を進めるに際しても、国境は見失わないという考え方政府のバックボーンとして堅持してもらいたいと考えるのであります。政府は、石炭石油貿易自由化についてどのような方針をとっておられるのか、この際これを明らかにしていただきたいと思います。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 昨年の六月に、自由化の大体のスケジュールをきめたのでありますが、それによりますと、三年間の間に八〇%自由化する。なお九〇%自由化するためには、一〇%上げるためには、石炭石油等エネルギー自由化しなければならない。このエネルギー関係自由化を三年間にするかしないかということは、スケジュールとしてはまだ確定しておらない状況でございまして、日本自由化を急ぐべしという世界各国の気持は、ひしひしとわれわれの方に迫って感ぜられるのでございますから、それらの状況をも十分に考え、そしてまた国内経済産業体制というものをくずさない、自由化によって崩壊しないという確信を早く固めていく、この両方をにらみながら、エネルギー関係自由化考えていかなければならぬと考えておるのであります。従いまして、今御心配のように、何ら大丈夫だという確信を持つことなしに、ただ自由化の熱に浮かされて誘い込まれるというようなことのないように、十分の戒心をいたしておる次第でございます。
  7. 笹本一雄

    笹本委員 次に伺いたいことは、石炭合理化基本方針であるところの炭価千二百円引き下げは、今後も堅持していくのかどうかということであります。御承知のように、電力料金運賃等値上げされたのでございまするが、賃金につきましても、最近値上げ傾向がきわめて強くなっているように思われるのであります。千二百円の炭価引き下げを既定の方針として推進していくとすれば、これらの原価要素値上がりをどのようにして吸収していくのか、政府石炭合理化計画には、物価の値上がりはどの程度計算に入れているのか、最近の原価要素値上がりと千二百円の炭価引き下げ計画との関係について、政府考えを聞かしていただきたい。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結論としては千二百円の線はあくまで堅持する考えでございます。最近賃金値上がり等は、どうしても所得倍増に伴って合理的な賃金の上昇は認めざるを得ない。この問題につきましては、すでに織り込み済みでございます。その他運賃電力料金等値上がりがございますが、運賃電力料金値上げによって千二百円の線がくずれるかどうかという問題でございます。この問題に直面して相当に石炭業界が苦しい立場に置かれておりますけれども、われわれはできるだけ実質上の負担を軽減して、そうしてあくまで千二百円の線を堅持したい、かように考えております。
  9. 笹本一雄

    笹本委員 次に私は石炭産業一般産業との性格の差異について伺ってみたいと思うのであります。  鉱業は、国の貴重な地下資源を合理的に開発することによって、国民経済に寄与するという意味において、一般製造工業と比べて、はるかに公益性の強い産業であるということは当然であります。また石炭産業は今日衰退産業といわれておるのでありますが、衰退産業であれば、当然他の成長産業と異なった観点から政策が立てられるべきでありまして、単に経済的合理性という観点からのみ石炭産業を見ることは誤りであると思うのであります。また最近国際収支の動向が問題となっておりまするが、わが国エネルギー外国依存度は急ピッチで高くなろうとしておる情勢下にありまして、外貨節約の点から可能な限り国内エネルギーの活用をはかるべきであると思うのであります。  さらに石炭問題を考えるにあたっては、私はやはり一たん事がある場合を考慮に入れなければならないと思うのであります。一たん事がある場合と申しましても、わが国が他国と戦火を交えるようなことを予想しているわけでは決してありませんが、しかし数年前に起こりましたスエズの動乱の勃発により、イギリス、フランスなどは石油不足によって経済界は一時的には麻痺したという打撃を受けたということがいわれておるのであります。最近にはラオス、キューバ、コンゴ等に見られますように、局地的の紛争が今後も起こらないとはだれも保証できないのであります。あるいは軍事的な紛争以外の経済上の戦略ということもありましょうし、このような場合、外国エネルギー価格が暴騰したり、あるいは輸入の所要量確保が困難となるというような事態は十分に考えておかなければならないと思います。このような場合を考慮しまするとき、外国エネルギーに全面的に依存するという体制をとってしまうことは、きわめて危険であると思うのであります。従いまして確実に入手できる国内資源については、たとい一時的には外国品と比べて割高であろうとも、長い目で見た国の経済の安定のためには、やはり国内資源一定量は安定的に確保していくという政策がとられなければならないと考えるのでありますが、この点に対して政府の見解をお伺いします。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 エネルギー産業というものは、一般工業との比較において、言うまでもなくエネルギー産業一般工業基本をなすものでありますから、その重要性は論ずるまでもないと思います。  なお石炭を五千五百万トンの数量を維持して参るという点は、雇用量それから今お話がありましたが、自国の資源をあくまで活用する、そういう立場に立つことは申すまでもないところでございます。でございますから、御指摘のように、ただ経済性というだけの問題でない、日本石炭資源というものを相当量維持して、そうしてこれを活用していくということは、ただそろばんの結論ではないのであります。従ってわれわれといたしましては、あくまでこの線を確保して、国内資源というものを活用し、雇用関係を維持して参るという考え方でございます。
  11. 笹本一雄

    笹本委員 次に、石炭産業一般産業と異なって、多分に公益的性格を持っているということ、あるいは石炭産業を単に経済性という観点からのみ見るべきではないということ、確実に入手し得るところの国内資源一定量確保考えるべきであること、さらに今日の石炭産業の実体は、社会問題として考えなければならない事態にある等の点から考えまして、石炭産業わが国経済に果たすべき役割はきわめて重要なものであると考えるのであります。  エネルギー選択の自由は経済の原則であり、従いましてエネルギー選択に対する直接的抑制策、現行の石炭保護の諸政策が現在のまま続けられるべきであるとは決して考えられませんけれども、しかしやはり石炭産業の果たすべきところの役割を十分に認識した土で、石炭産業わが国エネルギー構造上に占める位置を明確にし、その上で新たな長期的な石炭政策を樹立すべきであると思うのであります。そのためには、電力石炭石油天然ガス等について総合的なエネルギー政策を樹立し、それぞれの役割助成政策を明確にすべきであると思うのであります。私は、現在のわが国エネルギー政策各個ばらばらであり、統一的一貫性のある総合エネルギー政策は存在しないと思っておるのであります。電気事業設備増強コスト高の矛盾に悩み、石油にしましても、国内石油開発石炭同様外国石油との競合に悩み、石油精製業者は、原料安の一方、過当な販売競争に悩んでいるような状態であります。またエネルギーの各産業間で激しい競争を行なっているわけであります。  このようにエネルギーの各産業ともその健全な発展は、いろいろの隘路によってはばまれている状態であると思います。従いまして私は、政府が、長期的な一貫性のある総合エネルギー政策を樹立することを、今日ほど強く要請されているときはないと思うのであります。政府エネルギー審議会のごとき強力な機関を作って、総合エネルギー政策を一刻も早く、しかも強固な政策を樹立していただくとともに、総合エネルギー政策一環として、確固たる石炭政策を樹立していただきたいと思うのでありますが、この点について政府方針を伺いたいと思います。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 総合エネルギー対策をいやが上にも強化することは、まことに同感でございます。ただいま総合的見地から現実の問題を論議し、これを処理するというために総合エネルギー対策協議会を設けておるのでありますが、この問題の重要性にかんがみまして、その組織運営等をさらに強化して参りたい、かように考えます。
  13. 笹本一雄

    笹本委員 次に私は、石炭需用確保電力用炭との関係について若干伺いたいと思うのであります。  石炭の最大の需要者は何といっても電力であります。将来石炭需要に占める電力用炭の割合はいよいよ増大させるところの必要があると思うのであります。私は数日前北九州に参りまして、電源開発会社の若松におけるところの低品位炭火力発電所建設状況並びに九州電力の新小倉火力建設状況を視察をしてきたのでありますが、私はこのような山元発電を急速に拡大して、石炭山元消費してしまうという体制を実現することが、将来の目標でなければならないと思うのであります。今回の産炭地振興法のねらいの一つも、ここになければならないと思うのであります。はたしてこの法律の内容で所期の目的を達し得るかどうか。通産省が立てておられるところの山元発電拡大計画の構想、その計画による石炭需要はどの程度確保されるのか、また超高圧送電技術研究はどの程度進んでおるのか、この点について説明を願います。
  14. 今井博

    今井(博)政府委員 御指摘のように石炭需要の一番大宗をなすものは電力用炭でございます。現在三十五年度で約千六百万トンの電力用炭消費されております。これがさらに年々おそらく百万トンずつくらいの増加を見るだろうと思っております。ただこの場合に、やはり経済性という問題が一番中心でございまして、何といってもやはり安い石炭を供給しなければならぬという問題がございますので、そのような見地からいたしますと、やはり山元発電をするということが、一番経済性にかなうことになるわけであります。ただここで問題になりますのは、御指摘のように電力消費地というものと産炭地というものが非常に離れておるという日本の実情からいたしまして、山元発電を今回の産炭地振興の方策の一環として極力われわれは推進するつもりでございますが、何と申しましても、それを主たる消費地に運ぶ場合に送電コストが非常にかかる、この点が一つの大きな問題でございまして、その点が解決されないと、産炭地発電を大いに行ないましても、そこに大きな限界があるわけであります。この点は電力の方でもこういう高圧送電については非常に研究されておるようでございますが、われわれとしましては、産炭地でできるだけ発電を起こし、これを合理的に経済的にできるだけ消費地に送って、電力用炭消費というものをできるだけ経済的に拡大していく、この場合には送電についての国家的な補助も場合によっては必要になってくるとすら考えておるわけであります。
  15. 笹本一雄

    笹本委員 次に、生産する石炭のほとんどを、産炭地消費するという体制を実現するまでには、なおかなりの年月を必要とするわけでありまして、それまでの間、現在電力石炭業界で進められております電力用炭長期引取協定締結に待つほかはないわけでありまするが、聞くところによりますると、両業界の間において協定締結は難航をきわめているということであります。このような状態では昭和三十八年度まではもちろん、将来の石炭需要確保はきわめて困難であり、従いまして石炭合理化計画的に順調に進めることもなかなかむずかしいのではないかと思うのであります。  もちろん私は民間企業間の話し合いだけで協定が結ばれ、問題が解決することは最も望ましいと思うのでありますが、しかしながら電力用炭石炭業界死命を制するところの超大口需要であり、従いまして、電力需要石炭産業に対して優位の立場にある。さらに電力事業公益事業であり、政府支援指導も十分に行なわれる立場にあることを考えますとき、協定の円満なる締結について話し合いができない場合は、政府が強い行政指導を行なうこともやむを得ないのではないかと思うのでありますが、長期引取協定に対する政府の態度、並びに行政指導を行なうとすれば、どのようなやり方をなされようとするのか、その点について説明をお願いしたい。
  16. 今井博

    今井(博)政府委員 御指摘のように、電力用炭石炭死命を制する問題でございまして、何と申しましても長期取引契約といいますか、長期取引保障大口需要家にやってもらうということが、石炭の需給安定の一番キー・ポイントでございます。このような見地から、昨年来大口需要家との間に、経団連を中心にいたしまして長期取引協定交渉が進んで、一時だいぶ難航しておるとか、いろいろ新聞で伝えられておりましたが、これはやはりいろいろ電力以外にも鉄鋼セメント等関係がございまして、だいぶ時間がかかっておりますけれども、最近、この長期取引話し合いは、大体まとまるんじゃないかという見通しを持っております。御指摘のように、これがまとまらない場合どうするかということにつきましては、私はこれは十分まとまるという確信を持っております。その民間協定がもちろん基本になりますが、役所の方でも石炭局公益事業局とが、今いろいろな話し合いをいたしておりまして、これを十分補完するような形で長期取引に筋金を入れたい、こういうふうに考えております。
  17. 笹本一雄

    笹本委員 今の問題はきわめて石炭産業にとって大事なことでありますが、特段の配慮をお願いします。  次に、今回の合理化法改正による保証制度について若干お伺いしたいのでありますが、この制度の真のねらいはどこにあるかということであります。石炭合理化過程において、ある程度人員整理が行なわれることはやむを得ないと考えるのでありますが、保証制度の創設は、政府みずから首切りを促進しようとする措置ではないかという疑いが生ずるのでありますが、これに対する政府考えを聞かしていただきたい。
  18. 今井博

    今井(博)政府委員 今回炭鉱整備保証基金制度合理化事業団の中に設けまして、離職される人々の退職金未払い賃金の十分な支払いを確保したいという制度法律として提案しておるわけでございますが、これは現在の石炭合理化過程におきまして、スクラップ・アンド・ビルドという政策をやります場合に、これは総体的に過剰雇用というものを圧縮していかなければならぬという問題がどうしても出て参るのでございまして、これについてはいろいろ離職者援護その他の対策を練っておりますけれども、何と申しましても離職する人に対して十分な退職金、あるいは未払い賃金というものを確保する必要があるわけであります。現在の石炭鉱業の経理の状況では、会社によってはそれが十分なし得ない会社もあるようでございまして、これに対して国が必要な債務保証を行なうということをねらっております。ただこれは人員整理促進——これがために人間をよけいに首切って、人間整理を促進するというふうに逆用されないように、この運用にあたりましては十分慎重を期するつもりでございまして、具体的に申しますれば、これはやはり組合とのいろいろな話し合い交渉というものが十分行なわれているかどうかというものを確認した上で、この保証制度を適用したい、こういうふうに考えております。
  19. 笹本一雄

    笹本委員 今日の炭鉱労働者は、合理化に伴う首切り炭鉱災害と、両面から恐怖のはさみ撃ちになっているようなもので、まことに気の毒にたえないところでありますが、私はやむを得ずして整理の対象となる労働者に対しては、今お話のあった通りに、できるだけ会社自体でも再就職、あるいは移民——けさ新聞に出ておりましたが、ドイツにおいてはたくさんの経験者を招聘したいというような記事も出ておりましたが、これらにつきましてはもちろんでありますが、会社自体関連事業を起こすことによって極力吸収すべきであると思うのでありまして、この面について行政指導を十分にやっていただくとともに、援護会による就職あっせん、生活の安定に対して、さらに対策を強化していただきたいと思うのであります。援護対策が弱体であれば、離職者長期集団的滞留という今日の社会問題をますます深刻にするばかりでなく、人員整理をめぐる労使の対立を激化し、さらに長い目で見るとき、炭鉱労務者の質を低下することとなって、石炭鉱業近代化を困難にするものと考えます。炭鉱離職者援護対策の強化について政府の所信を伺いたい。
  20. 今井博

    今井(博)政府委員 炭鉱の離職される方に対するいろいろな対策につきましては、昨年来離職者援護会と、あるいは緊急就労広域職業紹介、いろいろ政府として考えられるできるだけの手を打って参ったつもりでございますが、なおこれは、現状からいたしますと、まだ不十分であると私は考えます。本年度はさらに援護会雇用促進公団というようなものに強化拡充いたしまして、もっと全国的に就職あっせんをやり、住宅の建設ないし世話をするという政策政府としてはとるつもりでございますが、やはり何と申しましても会社人間整理する場合には、その人の就職先というものを十分見きわめる必要もございまして、その点はできるだけ経営者の方ともそういう話し合いを進めておりますが、今度は各会社就職あっせんを行なって、できるだけ就職の見込みのっけられるよう十分努力してもらうというような方式にできるだけ切りかえていきたい。現在就職あっせんというものはだいぶでき上がっておりまして、この点はさらに一段と前よりは前進するのではないかと考えております。  それから、何と申しましても現地労務者が滞留するという傾向は避けられませんので、今回も提案いたしておりますように、産炭地振興対策というものを——おそいというおしかりがございますが、できるだけ一つ早目にこの政策を浸透させまして、現地でもって就職の機会が増大するように、あるいは産炭地そのものの充実、振興ができ上がりますように力を入れたいと考えておるわけであります。
  21. 笹本一雄

    笹本委員 次に私は、炭鉱災害防止対策についてお伺いしたいと思います。私はさきに災害を起こしました豊州炭鉱、上清炭鉱あるいは大辻炭礦のその後の状況を視察して参りましたが、現地の方々からは再びこのような痛ましい災害が発生することのないように早急な対策を樹立してほしいという要望が強かったのであります。衆議院におきましては、去る三月本会議におきまして異例の決議を行ない、強力な対策の樹立を要望したのでありますが、政府はどのような対策を講じておられますか、この点についてこの際詳しく説明を願いたいと思います。
  22. 今井博

    今井(博)政府委員 炭鉱の災害については、過般異例と申しますような国会の決議がございまして、それに基づきまして政府としては今いろいろな対策を考究いたしておるわけでありますが、第一に保安の監督の強化という問題については、保安監督員の人間の増加であるとか、あるいは保安巡回の強化であるとか、現在の保安監督について緊急にでき得る強化充実策というものを一つ強力にとろうということで、予算措置等もいたしまして、さらにできるだけ早い機会に実態調査団を現地に派遣いたしまして、そのすべての今後の保安対策の前提である実態調査を至急実施したいと考えております。さらに第二の対策といたしましては、現在の保安の設備をできるだけやはり強化させるということも必要でございますので、過般来問題になっていますこの保安の設備については政府としての強力な援助をやろうという考え方で、保安の専用の機器については一定の補助金を出して参って、保安の専用の機器の整備をはかりたいと考えております。  それから保安の融資につきましては、これは最近予備金等において処置をとったのでありますが、現在石炭合理化事業団にございます近代化資金というものを活用いたしまして、これと中小金融公庫との金と抱き合わせて、保安の融資というものを特に中小炭鉱については、その整備には力を入れていきたい、こういう考え方でおるわけでございます。ただその場合に、できるだけ保安というものを強化させる方向に指導するつもりでございますが、何分中小炭鉱の中には、保安というものをやろうにもなかなかうまくいかない山もございますし、あるいは経理的にもなかなかそういう面がうまくいかぬという山もあるようでございますので、そういった山についてはやむを得ずこの際山を閉めてもらう、そうして閉めるにあたっては、政府としてもできるだけ一つ援助をしたいという方向で、終閉山については一種の補助金、これは交付金という名前でありますが、一種の補助金を出して、円滑な終閉山というものを実施したい、やむを得ずそういう措置をとらざるを得ない、こういうふうに思っております。この点につきましては目下一応の予算措置が第一次分としてきまりましたので、さらに実態調査をやりまして、第二次分というものを確定し、さらに今法案一つ準備いたしております。できるだけ早い機会に法案を国会に提案したいと考えております。
  23. 笹本一雄

    笹本委員 私は非能率な炭鉱あるいは保安不良の炭鉱をなくするためには、一方におきましては買いつぶしを行なっても、このような炭鉱が再び発生しないようにしなければ、どこまでいっても石炭鉱業の構造上の合理化はできないと思います。  現行の合理化法によって、坑口開設の制限規定が定められておりますが、もちろんこの規定の厳重な施行を期してもらいたいのでありまするが、私はこの規定だけで十分かどうかはなはだ疑問に思うのであります。私は施業案認可の段階で強い規制を行なうこと、さらに根本的には鉱業法の鉱業権の付与について再検討する必要があるのではないかと思うのであります。石炭の場合は他の産業と異なって、地下の賦存状況は明確になっておるのでありますから、これをいかに合理的に開発し得るかに問題があり、従いまして鉱業権の付与は現在のように先願者であれば、技術的にまたは経営者の能力があろうとなかろうと、許可されていくようなやり方はいかにも時代錯誤の感が深いし、公共の福祉にも著しく反する結果となると思うのであります。従いまして石炭鉱業については鉱業権の付与は先願主義を、能力主義に改めるべきであると思うのであります。また現在の租鉱権制度も、非能率炭鉱発生の最も大きな原因の一つであると思うのであります。従いましてこれらの点を改め、石炭の採掘は高能率大規模な炭鉱に集中生産させる体制を作るべきであると思うのであります。鉱業法の根本的改正が早急にできないのであれば、施業案認可の方法について、何らかの改善策を講ずべきであると思うのであります。  これらの点について目下鉱業法改正審議会で、鋭意検討されていると思うのでありまするが、どのような審議がなされているか、また政府方針がどうであるか、この租鉱権の問題については一つ大臣に御答弁願いたいと思います。
  24. 今井博

    今井(博)政府委員 鉱業法の改正問題は、御承知のように石炭鉱業法改正審議会というもので、相当長い年月研究いたしておりまして、今年度中くらいには結論が出る予定になってございます。この場合に、石炭側から見ますと、一番問題になりますのは、御指摘の能力主義を採用したらどうかという問題でございます。石炭鉱業としてはどうしてもこの能力主義を採用したいとわれわれも考え、そういったことを提案いたしておりますが、まだ結論までには至っておりません。これはできるだけその方向に持っていきたいと思っております。ただ今回のように、石炭の災害防止対策といたしまして、こういういろいろな措置をとっておるのでございますが、この場合におきましても、この鉱業法の改正を待つまでもなく、そういう保安的に問題になる山が今後出てこないように、やはり別途いたすことが必要でございまして、この点につきましては先ほど御指摘の坑口の開設の許可の条件をさらに強化すると申しますのは、坑口の開設の許可は現在能率の高いものに限定する、こういうことになっておりまして、生産性が中心になっておるのでございます。もっとも生産性の向上というものは十分考えておるのでございますが、この際は特に一項を設けまして、保安的に問題がある場合には坑口の開設の許可は与えない、こういう制度に改めたいと考えておるわけであります。
  25. 笹本一雄

    笹本委員 石炭鉱業合理化施策は、世界石炭生産各国において、今日国の最も重要な施策として真剣に取り組んでいるのでありますが、聞くところによりますと、欧州各国は共同して長期石炭対策を樹立しようということを申し合わせたということであります。またアメリカでは国防長官の命令によってアメリカの陸海空軍に、外国原油より高い国産原油を優先的に使わせることにしているということであります。アメリカでさえも、国内資源産業の擁護に、このような手を打っているのであります。政府においては、欧米各国の石炭政策を十分参考にして、可及的すみやかに長期的な、一貫性のある、確固たる石炭政策を樹立されるよう、強く要望したいと思うのであります。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほど租鉱権の問題についてお尋ねがございましたが、お答えいたします。租鉱権に関していろいろな弊害が出ておること、これは御指摘の通りであります。ことに石炭産業鉱山についての租鉱権の問題は、いろいろその点が論議の的になっておるのでございますが、これを存廃問題まで掘り下げて考える必要がはたしてあるかどうか、私はそこまでは考えなくともよろしいのではないか、やはり租鉱権の存在理由というのはあると思う。ただその運用の点においていろいろな弊害が起こっておるのでありますから、これらの問題につきましては、十分に研究いたしまして、鉱業法改正の際にその結論を取り入れたい、そして弊害をできるだけ除去する方に努力したいと考えます。  さらに、欧米先進国における石炭産業に対する政策等を引用されまして、日本石炭鉱業に対する所見をただされたと考えますが、この点につきましては、先ほど申し上げたように、ただに経済的な合理性だけではなしに、やはり雇用力とか、あるいは国内資源の活用、国際収支の問題、そういった問題を総合的に考えて、日本石炭産業というものは重要である、これを活用するということに、やはり政策基本を置くべきであるというふうに考えておる次第であります。   〔中川委員長退席、長谷川(四)委員   長代理着席〕
  27. 笹本一雄

    笹本委員 さきにも申し上げまたしが、私は北九州の現地を視察して参ったのでありますが、炭鉱地帯のいろいろな面において、全く惨たんたる状況をまのあたりに見て参ったのであります。その中で、産炭地振興法に対して、各地で非常に期待をしております。しておりますが、ややもすると、産炭地振興というと、各市町村がいろいろ税の関係がありますので、産炭地から離れたところに持っていって、産炭地を犠牲にしているのじゃないか。たとえば、さいぜん話しました火力電気というものは海岸地帯に多く、実際炭鉱のないところへ持っていくというようなこともいわれて、誤解されているのでありますが、これらの点について関係各省を通じて、末端にこの産炭地振興の真の考え方を徹底するように指導してもらいたい。  その悲惨な一つの例として、いろいろ見て参りましたが、いかに悲惨かということは、その地区の名前は申しませんが、行った日に百五十キロから走って各地を見たのでありますが、あるところへ参りましたところ、そこの説明が終わりましたので、そのバスの案内の女の人に、この辺の観光の説明でもしないかと言いましたところが、この辺は観光を説明するところではありません。私は長い間ここに勤めておりますうちで、ほんとうに忘れることのできないことが一つありましたから、これを御披露いたしますということでありました。それを聞きますと、多分本年の三月と思いましたが、その近所の中学卒業の男女が集団で就職したそうであります。その五、六十人をバスが迎えにきた。そのときの情景というのは、母親の愛によって洗いざらした着物を着せられて、これがさながら再び会えないような感じであった。これが豊かであって、都へ進学のために出るということであるならともかく、長い間の炭鉱の不況のために、全く生活にも困っておる人々がそれを送り出している。行く子供たちも、お母さん一生懸命働いて、そしてお金ができたら送ってやるからと言っている悲惨な現状を見たときに、そのバス・ガールは全く涙を流したそうで、どうか視察の皆さん方、早くこの炭鉱を悲惨な中から救ってくれというようなことをバス・ガールから聞かされたのであります。このように実際に現地は疲弊している。  しかしまた一方に行きますと、土地の名前は言いませんが、その土地に参りまして商店街を見ますと、掛売りはお断わり、現金でなければお断わりしますというような張り紙がしてある。それで案内の人がいわく、この辺は子供に至るまで不良化して、よそへ就職に行ってもみな帰されて、職がなくてごろごろしている、非常に人気が悪くて因ったところですというような話を聞かされた。これなんかは、産炭地振興で大工業を持ってくるばかりではなく、中小企業の招致もして、そして産炭地の生活を豊かにさせてやろうというねらいの上からいうなら、何としても受け入れ態勢がよくなければならない。今、後段で話しましたように、人気が悪くて、子供に至るまで不良ばかり多くて手がつけられない町ですというようなことを言われたんでは、いかに工業を持っていこうとしても二の足を踏んでしまう。こういう点において市町村もともに、失業の町に工業を誘致したならば、われわれに仕事を持ってきてくれるのだからというので、ほんとうにあたたかい気持をもってそれを育成するような、そういう心がけができたときに、初めて産炭地振興の真の姿ができるのじゃないか。これらは関係官庁その他市町村を通して、こういうふうなことに指導していってもらいたいということをお願いするわけであります。これで私の質問を終わりますが、もしそれに対して大臣に何かお考えがあるなら、それに対するお考えを承りたい。
  28. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 経済といえども、やはり人間基本でございます。地方の気風、民情というものが、やはり何といっても根本でございますから、そういう点につきましても、今後十分考えて参らなければならぬ、こう考えております。
  29. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員長代理 岡田利春君。
  30. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 質問に入る前に委員長にお願い申し上げておきますが、時間もありませんので、大臣に対して特に重点の問題を取り上げて質問してみたいと思うのであります。従って、後日またあらためて総合的に質問させていただけるようにお願い申し上げたいと思います。  今笹本委員からも質問がありましたが、今度上程されている石炭関係内閣提出法案、特に社会党からも二つの法案を出しているわけです。このことは、やはり今日の日本産業政策の中で、きわめて重大な問題として、一つには農村政策、第二には零細企業に対する政策、第三には石炭産業政策があげられなければならぬと私は考えるわけです。特に石炭産業の場合には、わが国における政策というものは、石炭需要見通し、こういうものに対して非常に見通しが甘かった、その結果、石炭政策も非常に一貫性を欠いて場当たり主義が多かったのではないか、私どもはこのように考えざるを得ないわけです。従ってヨーロッパの石炭政策から見ますと大体昭和二十九年、三十年当時で、三年か四年くらい石炭対策というものがおくれておる、このように指摘をされておるのでありまして、私はその点については全く同感なわけです。そこで今日石炭政策というのは、今まで考えてきたような石炭政策では、日本石炭産業の技術的な発展を遂げることはできないのではなかろうか、やはり石炭政策というものは、わが国総合エネルギー政策というものの中から石炭産業の位置づけを行なう、こういう総合的な政策をとらない限り、いつまでたっても石炭産業の安定というものは期すことができないのではなかろうか、そういう意味で、私は、石炭鉱業合理化臨時措置法ができてから実に六年も経過するのでありまして、この石炭政策は今日もう再検討の段階にきている、こういう時期ではなかろうかと考えるわけです。そういう上に立って石炭産業の位置づけ、やはりこういうものをはっきりしない限り、場当たり的な、あるいはいろんな政策を出してもどうも一貫性を欠く、どうしてもどこかが留守になってしまう、こういう感じがするのでありまして、この点について、この石炭政策について、大臣はそういう検討をするべき時期と認められるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  31. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 石炭産業の安定がいつまでたっても期せられない、これは結論からいうと全くその通りでございます。しかし合理化法案の目ざすところは、やはり石炭産業を安定したベースの上に繁栄させようというねらいであったわけです。ところが最近になりまして、世界的にエネルギー産業の構造的な変革に遭遇いたしまして、根本が非常にぐらついてきた、こういうのではなかろうかと思うのであります。それでございますから、この際において、この環境の中において、またあらためて石炭産業というものを安定したベースにおいて繁栄させるにはどうすればいいか、こういう問題が当然取り上げられなければならぬと思うのでございます。その点におきましては御同感でございます。
  32. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 当面の石炭政策は、昭和三十八年度までに千二百円の炭価引き下げをはかる、このことが基本になっておるわけです。しかし千二百円のコストのダウンをはかるには、産炭構造あるいは流通構造あるいはまた消費構造の合理化をはからなければならぬ、このようにいわれておるわけなんですが、資本主義の国を見て参りますと、コスト・ダウン、炭価引き下げのみに重点をかけた石炭政策というものは、わが国と、あるいは条件の悪いベルギーくらいではなかろうか、私はこのように考えておるわけです。そこで、では三十八年にトン当たり千二百円のコスト・ダウンができれば、それで石炭産業というものが安定するのであろうか、私は、もし千二百円下がったとしても、決して石炭産業の安定を期すことはできないと思うのです。特にわが国の産炭構造における、特に地理的な条件、あるいは地質構造、あるいは炭層の成層状態、あるいはまた賦存状況等から考えてみて、千二百円下がったからといって石炭産業が安定する、競合エネルギーとの間に、十分競争し得るという条件にならぬと私は思うのです。しかも千二百円で満足してないんだ、さらに炭価引き下げは行なっていかなければならない、このようにまた言われる面もあるのです。しかしわが国炭価は、高度成長、特に所得倍増、こういう政策の中でおのずから限界コストというものがあるのではなかろうか、このように私は考えざるを得ないのです。そういう点について千二百円のコスト・ダウンができた状態で安定し得るという具体的な裏づけが一体あるのかどうか、この点について見解をお聞きしたいと思います。
  33. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 とりあえず三十八年度までにトン当たり千二百円のコスト・ダウンをする。そうしてこの線で産地の事情、大口需要部門との協調によって五千五百万トン・ベースの数量を消化していく。これはとりあえずの措置でございまして、こうして一応落ちつけておいて、さらに石炭産業の将来というものに対して第二段の政策を実行していかなければならぬ、さように考えております。
  34. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 ではその三十八年度に千二百円の炭価引き下げができた、こう仮定した場合、資本主義の、特にヨーロッパ諸国が、その対象にならなければならぬと思うのですが、炭価国際価格から見て、一体千二百円引き下げされた日本炭価は、ドイツやあるいはフランス、オランダ、あるいはイギリス、こういう国々の炭価と、比較して、一体日本炭価は高いものであるかどうか、あるいは今日においてどうなのか、これは石炭局長でもいいですが、その点について、その内容、あるいは見通しをお聞きしたいと思います。
  35. 今井博

    今井(博)政府委員 現在の日本石炭値段は、アメリカとは特段の違いがありますから、これは別ですが、ヨーロッパの国と比較しますと、やはり大体二割くらい高いというふうに考えております。これは、特にヨーロッパにおきましては、消費地と生産地が大体同じでございますので、日本の場合に、消費地に持って参った消費地値段と向こうと比較しますと、二割は少なくとも高い、こういうふうに考えております。従って現在の合理化計画で千二百円のコスト・ダウンを実行した場合に、おおむね二割程度値段の低下を考えてございまして、大体そのくらいのところで追いつけるんじゃないか、能率も欧米のそれに追いつけるんじゃないかと考えておりますが、欧米の方はさらに第二段の合理化考えておるようでありまして、向こうがさらに能率が進む場合には、やはり若干の差がそこで出て参ることに相なるかと思います。
  36. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今、局長から炭価見通しについておっしゃったのですが、私はロビンソン報告を読んでみたり、あるいはいろいろな資料を検討してみた場合、ヨーロッパ諸国における炭価見通しは、その割合に下がらぬのではないか、こういう見解を持っておるわけです。という理由は、これは労働賃金で比較しますと、日本炭鉱労働者と西ドイツ炭鉱労働者では、大体日本の方が半分なのです。西ドイツ日本炭鉱労働者の二倍の労働賃金を受け取っておるわけです。しかもこの賃金はさらに上昇する傾向にあるわけです。ですから能率が上がったとしても、コスト中において占める労働賃金、そういうものを見ていきますと、炭価というものはおおむね限界にきておるのではなかろうか、こういう見解を私は持っておるわけです。   〔長谷川(四)委員長代理退席、委   員長着席〕 そういたしますと、わが国の千二百円の炭価引き下げが実現したという場合には、当然国際的に見て炭価のつり合いは大体とれてくるのではなかろうか、こういう判断を私はするわけであります。しかも今日この炭価を千二百円下げるために、近代的な合理化炭価引き下げを行なっておるのではなくして、むしろ積極的に大手においても労働賃金を一カ月八千円、少ないところで二千四百円、このように西ドイツの半分の労働賃金をさらに下げているというのが、今日大手炭鉱の実態なわけです。そういう面から見てわが国炭価コストの限界というのがおのずからくるのではなかろうか。この点を十分検討しないで、炭価引き下げについてあまり楽観をすると重大な誤りを犯すのではないだろうか。むしろ所得倍増計画に基づくエネルギー小委員会の答申を見ますと、毎年炭鉱労働者は三・八%のベース・アップをすでに想定しているのです。ところが今度千五百円上がったけれども、それ以上の賃下げが随所に行なわれているというのが現状なのです。ですからエネルギー小委員会の答申の最低三・八%のベース・アップ、労働賃金を引き上げていく。こういう前提に立つ場合には、結局限界コストというものがおのずから出てくるのではなかろうか、そういう限界コストを一体どの程度に想定を置くかということが、特にこれから石炭政策を進める場合に非常に大事なポイントだと思う。しかも高度成長、所得倍増政策政府がとっている限り、この問題を度外視して石炭政策はあり得ない、このように考えられるのですが、その点はいかがですか。
  37. 今井博

    今井(博)政府委員 最近の傾向から見まして御指摘のような点は非常にあると私は思います。現在考えております合理化計画のポイントももちろん油の値段との比較において、それを指標にして立てているのでございます。しかし同時にそれの裏の問題として、やはり雇用問題、日本炭鉱の自然条件とかそういうものをも考えまして、その面から見ても千二百円というのが一つの限度じゃないか。これは合理化としては今までのものに比べて相当激しい合理化だと思いますが、それが限度じゃないかということの一面を非常に持っていると思います。従って千二百円を下げて、さらにどの程度までコストが下がるかという問題につきましては、われわれも現在いろいろな計算をいたしておりますが、そういう単なる計算では非常にむずかしいのではないか。やはりもっと、今おっしゃいましたような労働賃金の今後の問題、あるいは社会的な側面も考えて、今後の合理化というものはもっとなだらかな合理化でなければいかぬだろうというふうに考えておりまして、特に最近の賃金の上昇は一つの必然的な傾向を持っております。そういう面、それから先ほど申しましたような社会的な側面等も十分考えまして、三十八年度以降の合理化については、やはり相当現実に沿ったものを立てていきたい、こういうふうに考えております。      ————◇—————
  38. 中川俊思

    中川委員長 この際商工会の組織等に関する法律の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。  本案につきましては前会すでに質疑を終了いたしております。本案に対しまして自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三派を代表して、小川平二君外二名提案の修正案が提出されております。この際小川卒二君より趣旨の説明を聴取することにいたします。小川平二君。
  39. 小川平二

    ○小川(平)委員 私は、小川平二、松平忠久君及び伊藤卯四郎君より提出いたしました自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三派共同提案にかかるところの、本案に対する修正案について、三派を代表してその趣旨を説明いたします。  まず案文を朗読いたします。    商工会の組織等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案   商工会の組織等に関する法律の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   第五十五条の十七第二項及び第三項の改正規定中「五分の一以内」を「十分の一以内」に改める。   第五十五条の十七第四項の改正規定中「、「都道府県連合会の会員たる商工会」」を「「都道府県連合会の会員たる商工会」と、「十分の一以内」とあるのは「五分の一以内」」に改める。修正案の趣旨を申し上げますが、単位商工会におきましては理事は二十名以内、運営上特に必要である場合に十分の一以内に限ってこれを認めることとなっております。県連においても理事はひとしく二十名でございますので、なるべく理事は構成員をもってこれに充てるのが望ましいことでもございますから、単位商工会の例にならって、原案の五分の一を十分の一に改めようとするものでございます。ただし全国連合会の場合は理事は十名でありますので、十分の一以内では全国連合会の事業の性格等から見ましても、運営に支障を生ずるおそれなきを保しがたいと思われますので、五分の一以内、すなわち二名以内に限ってこれを認めるのが至当と考えられるのでございます。  以上が修正の趣旨でございます。
  40. 中川俊思

    中川委員長 以上で趣旨の説明は終わりましたが、本修正案につきまして松平忠久君より発言を求められておりますので、これを許可いたします。松平君。
  41. 松平忠久

    ○松平委員 私は討論をするつもりはないのです。この趣旨は、私も提案者の一人でありますのでもちろん賛成であります。が、この際ちょっと大臣に確認をしておきたいことがありますので、以下申し上げる点につきましてお答えを願いたいと思うのであります。  その第一点は、本委員会において質疑応答がありましたけれども、まだ若干不明な、あいまいな点がありますので、その点についての大臣の明確なお答えを要求するわけであります。それは第五十五条の八でありまして、都道府県の連合会が、第五号によって「商工業に関する技術又は技能の普及又は検定を行なう」ということがあるのでありますが、全国連合会においても、一般的な指導は行ないますけれども、場合によったらやはり技能の普及とかあるいは技術の普及もしくは検定というものを行なう必要があるのではないか、こういう質問が過般あったのであります。それに対して政府当局の答弁におきましては、この第五十五条の八の第二項の三によって、必ずしもそれは禁止されておることではないからできるのだ、こういうことでありましたが、法文上からいいますとその点がやや明瞭を欠くわけであります。従って全国連合会は一般的な指導を行なうほかに、技術、技能の普及または検定をやはり行ない得るのだということでなければならぬと思うのであります。その点について大臣の確認を求めたいと思います。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この点につきましては明確にしておきたいと思いますから、私からお答え申し上げます。  商工業に関する技術または技能の普及または検定という事業につきましては、都道府県連合会において行ない得るということは明確に書いてありますが、全国連合会におきましてもその主要な事業として積極的にこれらの問題の指導、連絡等を行ないますのみならず、場合によりましては、全国連合会が、それ自体が技術または技能の普及または検定等の事業を直接実施することにいたしたいと考えております。
  43. 松平忠久

    ○松平委員 もう一点は、この法案に関連しての要望でございますが、それは本年発行されておる政府の生活白書によりますと、各都道府県の管内にあるところの商工業者、ことに商業者の数が、逐年増加をしてきております。そうしてその二戸当たりの平均収入は逐年減少をしておるという傾向でありまして、いわゆる零細商工業者をもってするところのこの商工会、これの平均の収入は公務員の収入よりも少ないし、また東京における一般労働者の収入よりも少ないという統計が、政府の生活白書の中には出ておるわけであります。そこでこれらのいわゆる零細業者を主体とするところの商工会というものを運営していく上におきましては、やはり予算的措置というものを十分考えなければならぬと思います。ことに普及員の身分の保障につきましては、先般来の本委員会におきましてわが党小林委員からも質疑があり、当局からもそれに対する回答があったわけでありますが、すみやかに普及員の身分の安定をはかるということと、もう一つは活動費であります。現在たしか五人に一台くらいの割合でオートバイ等が支給されておるように思います。これらの普及員の活動費を十分増額するということにしなければならぬと思います。同時に商工行政全般を通じまして、もう少し都道府県を通ずるところの間接行政というものを徹底する必要があると思うのであります。そういう意味からも都道府県に対してこの商工会を指導するというための必要なる経費、こういうものの増額について、来年度におきましてはこの増額方について努力をするということを、この際一つ大臣からも所信を明かにしてもらいたいと思います。
  44. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘の点はまことにごもっともでございます。商工会の普及状況が意外に私はよろしいと考えておりますので、これらの点を考慮し、もっともっと予算措置等については、われわれは考えなければならぬ。中央における指導費のみならず、直接指導に当たっておる府県に対しましても、予算措置をもちろん考えて参りたい。また普及員を置く以上は、やはり安心して仕事に精励してもらわなければならぬのでありますから、その点も十分に考えたいと存じます。     —————————————
  45. 中川俊思

    中川委員長 次に本案並びに修正案を一括して討論に付するのでありますが、両案につきましては討論の申し出もございませんので、これを行なわないで、直ちに採決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 中川俊思

    中川委員長 御異議なしと認め採決いたします。  まず自由民主党、日本社会党、民主社会、三派共同提案の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  47. 中川俊思

    中川委員長 起立総員。よって本修正案は可決いたしました。     —————————————
  48. 中川俊思

    中川委員長 次にただいまの修正部分を除く原案を採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  49. 中川俊思

    中川委員長 起立総員。よって修正部分を除く原案は可決され、本案は、三派共同提案の動議の通り修正議決することに決しました。  お諮りいたします。ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書等の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 中川俊思

    中川委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。      ————◇—————
  51. 中川俊思

    中川委員長 一時中断いたしました石炭関係法案を議題として質疑を続行いたします。岡田利春君。
  52. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 大体先ほどの質問で石炭価格の将来の見通しについてお伺いをしたわけでございます。特に石炭と競合関係にある重油価格の問題でありますが、重油価格見通しについては、一体どういう見解を持たれておるか。私は特にその重油価格の将来の見通しについては、もちろん国際的に石油産業の現状等から分析をしますと、あながち石油産業コストによって左右されるというよりも、非常に弾力性を持っておりますから、それぞれの石炭価格を若干下回るところに、重油価格いうものが必然的に設定をされる。ですから千二百円の単価が下がれば、さらにその単価より若干下回ったところに重油価格が設定される、こういうことでその競合エネルギーに対応して、将来ともこの重油価格というものは相当長期的にそういう形で決定されるんじゃないか、こういう見解を持っているんですが、この点についてはどういう見通しでございますか。
  53. 今井博

    今井(博)政府委員 油の値段見通しの問題は、今非常にむずかしい問題でございます。過日ヨーロッパへ調査に行かれました土屋、稻葉両氏のお話もいろいろ聞いてみたのでありますが、なかなかそれを予言することはむずかしい、こういうことでございます。ただ今岡田先生が御指摘になりました、石炭値段を幾ら下げても油は若干それを下回るところに常にいるんじゃないかという点です。こういう石炭石油との価格の相関現象は、今日までは確かにそういった傾向で、日本の油の価格というものは維持されておったわけであります。最近の油の非常な増産に伴いまして、世界的に油の値段は非常に下がって参っておりますので、今後は必ずしも今までのように、石炭より若干下回るというところで落ちつくというのではなくて、やはり油は油自体の需給計画、過剰傾向、そういった要素が非常に入って参りますので、現在でもわれわれが当初三十八年度で八千四百円というふうに予定しました油の値段をはるかに下回った値段大口直需口においては出ております。七千五百円という数字も出ておりますが、この点は従来の傾向とは、将来は必ずしも一致しないんじゃないか。やはり油自体の需給状況によって、相当上がったり下がったりするという様相を考えなければいかぬのじゃないかと思います。ただどのくらいになるかということにつきましては、これはさきにも申しましたように、非常に予想が困難でございます。ただ現在七千五百円という原油の値段が、もうすでに電力用油の値段として出ております。これはさらに五百円程度は少なくとも下回るんじゃないか、こういうふうに予想を一応いたしております。
  54. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 大臣が時間がないそうですから、飛び飛びで大臣に御質問申し上げたいと思います。  実は三十四国会で延長決定されました重油ボイラー設置等に関する規制法でございます。これが三年間延長で、三十八年の十月までその効力を実は持っておるわけです。しかもこの法案が延長されるときに、通産省では重油専焼火力の問題がすでに出ておりまして、本委員会で本件についてずいぶん質疑が行なわれておるわけです。そこでこの場合にボイラー規制法の二条五号の口の項だと思うんですが、これによって例外中の例外として、当面三地点もしくは四地点、多くて五地点程度重油専焼火力は設置をする、こういう形で、あくまでもこれは例外中の例外で、原則は規制をするということである、こういうことが明らかになっておるわけです。その後の審議会で五地点の八十五万一千キロの重油専焼火力が決定をしている。さらに昨年の十二月の審議会では百九十七万六千キロの重油専焼火力の設置が決定をされておるわけです。聞くところによると、近く予定をされておる電源開発調整審議会には三百万キロに及ぶ膨大な重油専焼火力の設置が予定されておるという工合に聞いておるわけです。従って、このボイラー規制法の関係からいって、どうもこの考え方というものが今日も無原則にあって、ボイラー規制法は有名無実で存在してないかのごとき感じを非常に強くするわけです。この点について、まず通産大臣の見解を一つはっきり承りたいと思います。
  55. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 法律の建前はあくまで尊重して参らなければなりません。しかしまた経済的な実勢もやはり考慮していかなければならぬ。それからまたいわゆる石炭産業の活用というわれわれの堅持しておる線をどこまでも維持していかなければならない。こういう三つの問題を考えていかなければなりませんが、その調和点をどこに置くかという点は、これは具体的に当面して研究してみたいと思うのでありますが、いずれにいたしましても、五千五百万トンの数量を確保し、そして三十八年度において千二百円のコスト・ダウンをする、こういう建前のもとに電力鉄鋼、セメント、こういう大口需要部門にその相当部分を使用してもらうという点はどこまでも貫いて参りたいと存じます。われわれ今考えておるのは、三十八年度から四十年度にかけて、電力は二千六百万トン、四十二年度においては三千万トン、鉄鋼、ガス部門において千二百万トンから四十年度においては千五百万トン、セメントは、大体ならして六百万トン、こういたしますと、この部門だけで四千四百万トンから五千百万トンくらいの石炭を使用するということになるのであります。それであとは産炭地発電等、あるいは産炭地振興等において現地において比較的安い石炭を使うということをいたしますれば、大体においてこの五千五百万トンのほとんど大部分が確実な安定したベースにおいて消費されるのではないか、こういうことを確実につかんで、しかる上に専焼火力の問題等も、これはやはり経済性を無視するというわけに参りませんから、適当にやはり電力コスト・ダウンということも必要でありますから、その点を考えたいと思います。
  56. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 大臣の言われておる気持はわかるのです。しかし厳然として昭和三十年の八月十日、それから三十四国会で延長が決定されている重油ボイラーの設置の制限等に関する臨時措置に関する法律、これは三年間延長されたわけなんです。ということは、これは初めから経済性の問題については予測をしておるわけです。経済的な問題を考えるならば、この法律を作るとき自体に問題にされなければならなかったと思うんです。ですから、あくまでも重油ボイラーの設置に関しては厳然と今日制限をされておるわけです。だから当時の池田通産大臣はこれはあくまでも例外中の例外である、二条の五号のロの項に基づく通産省の省令によってこの設置を認可する、こういうことに相なっておるわけです。どのようにこれを読んでも、解釈をしても、例外中の例外としてのみ措置をとるのだ、こういう思想で間違いはないのじゃなかろうか。もしそれがそうでないとするならば、これは非常に重大な問題といわなければならぬわけです。ただ実際問題として、最近電力需用というものが非常に極端に伸びてきておる。これに対応しなければならぬ。そのためにどうするかという実際問題については、私もある程度考慮を払わなければならぬ大きな問題があると思うんです。しかしながら、法の解釈なり立法した精神、思想というものは——これはあくまでも私が申し上げたように、重油ボイラーについては例外中の例外である、そういう場合において通産省令で認めるということについては動かすことのできない事実だと思うのですが、いかがですか。
  57. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘のように、あくまで現存する法規は尊重して参らなければなりません、その趣旨で運用して参りたいと思います。
  58. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そこで先ほど申し上げた通り、現在決定はされていないのですが、一応十三地点の電力発電所の設置の申請がなされておるわけです。そのうち二地点としては、合計三十四万五千キロ、これは北海道第二江別、これと今度の二十二万キロの共同火力、さらに一地点は東京電力十七万五千キロ、これは石炭重油混焼ですね。それから東北を含めて残りの十地点で三百二十六万九千キロ、これは東北の場合にはガス、重油の混焼かと思いますけれども、ほとんど重油専焼の火力発電の申請がなされておるわけです。しかも前回は、先ほど申し上げた通り百九十七万六千キロの重油専焼が設置されている。それ以前は八十五万一千キロの重油専焼の火力発電所がすでに建設されている。しかもこれが電力事情から見て、ボイラー規制法の期限の以内において完成せられる個所も随所に出てきておるわけです。このように膨大な重油専焼の火力がすでに建設にかかるということになりますと、今大臣は詳細にわたる石炭長期取引について話をされておりますけれども、これも実際的な裏づけがあるかどうか、こういう点について私は非常に疑問を持たざるを得ないのです。しかも九州産炭地における高圧送電の問題は、今日まだ具体的に解決されていない。第二の産炭地である北海道の場合には、本年北海道開発庁で海底送電の調査費が一千五百万円ついておる。しかも、これも北海道から海底送電が早急にできるという見通しは実はないわけです。しかも北海道の電力というものは、これはほかと違って広域利用ができないという面がありまして、どうしても産炭地以外における石炭火力という問題を真剣に取り上げていかなければ、幾ら長期取引といっても、その裏づけというものがはっきり出ていないのではなかろうか。しかも最大の発電をしている関西電力及び東京電力中心にして、この石炭専焼の火力の問題を今日も十分に計画の中に取り入れて具体化しなければ、幾ら大臣が今ここで答弁をされても、時すでにおそしという結果になるのではなかろうか、このように私は考えざるを得ないのです。従ってそういう具体的な火力発電所の建設計画の中における石炭専焼火力の問題について、大臣は一体どのように具体的に検討され、指示されておるのか、その見解を承りたいと思います。
  59. 大堀弘

    ○大堀政府委員 具体的になりますので私から御説明申し上げたいと思います。  御指摘のように、昨年三百万キロワット程度重油専焼火力を認めたのは事実でございます。三十六年度におきましても相当大幅に重油専焼火力を作るという計画で、現在検討を進めております。今日の電気の需給の情勢から参りますと、早急に火力発電所を建設して、三十六年度、三十七年度あたりは過去に建設したものの供給力にすでに限界がございますので、現在着工しますのは三十九年度あるいは四十年度を目標にして需給バランスを合わせよう、しかもそれは短期間に供給力をふやすということで、火力重点に現在建設を進めておるわけであります。かりに四十二年あたりの需給の状況から推算いたしますと、石炭換算で五千万トン以上の電力を必要とすることになっております。その中で、先ほど大臣から申し上げましたように、長期契約によって石炭産業から電気事業長期的に安定的に買い付けようというものは、約二千万トンくらいは最低限度買っていく。それから九電力以外に電発でございますとか、あるいは共同火力等で現在考えられて具体的にきまっておりますものだけでも、六百万トンくらいのものは石炭を買うことになっております。さらに今後建設されるわけでございますが、そういう長期契約によりまして、また山元発電の推進によりまして、石炭産業に対して電気事業が協力をして、石炭産業振興のために協力するという考え方で参っておりますが、それをやりましても、なおかつ電力需要に供給が追いつかないわけでございますから、何も石炭を使わないとか、押えるという意味ではなくて、重油専焼火力を相当大幅に入れませんと需給がつかないというのが現状でございます。ただいま申し上げましたように、四十二年度といいますと、石炭換算で五千百万トン以上の電力が必要である。そういう意味で、ボイラー規制法でも、ただいま御指摘がございました重油専焼火力を通産大臣が例外として認める場合には設置を認めるということによりまして、われわれは石炭産業の事情を考えながら、相当大幅に重油専焼火力を入れていかなければならぬ現状にあるわけであります。われわれといたしましては、何地点というふうな考え方も、かつてはあったのでございますが、それ以上にむしろ石炭を安定的に、電気事業長期契約で買い付けていく、山元発電に最大限度協力してやっていくという点に考え方中心を置きまして、石炭局とも話し合って、そういう方向に開発計画を進めております。
  60. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先ほど大臣お話があって、公益事業局長も答弁をいただいたわけですが、非常に電気事業が伸びて、火力発電がものすごい勢いで比重が増していく。火力発電建設を促進しなければならぬ。この点は私はわかるわけです。この点を否定しているわけではないのです。ただ運用の問題で、ボイラー規制法が厳然として存在している。しかも今年度申請の分でも、中には三十八年度の八月に完成する重油専焼の火力もあるわけです。関西電力の尼崎の第三が一基、これは三十八年の八月に完成する。あるいは三十八年六月には川崎の石炭の四基が完成をする。三十八年の十一月には横浜の重油専焼が完成をするということで、これすらもどんどん繰り上げられていく。前回きまったものも繰り上げられておるわけです。ですから、こういう重油ボイラーの設置の制限に関する法律があるわけですから、やはり火力発電の開発については、長期的に具体的に資料を出して、そして石炭火力についてこういう計画を持っている、しかもそれに伴う石炭産業政策はこういう方向であるというものがはっきりしないで、火力発電の開発が進められていくと、将来相当問題を残すのではなかろうか。特にすでに設置されている石炭火力で老朽化しておるものは、これをつぶして将来重油に切りかえる、こういう傾向もあるわけです。しかも、現在は石炭火力の七に対して重専発電は三である。四十二年には五、五になる。四十五年には逆に石炭火力は三で重専が七、こういう計画もいろいろな機関を通じて発表されておるわけです。そういう点からいいますと、私はどう考えても、重油ボイラー設置制限の法律が三十八年の十月に切れてしまう。今度は重油専焼の火力発電がどんどんできていく。老朽化した石炭火力はつぶされていく。この点について、一応長期取引はあるけれども、では具体的に計画の裏づけを持った石炭長期取引石炭消費する電力関係計画というものが今日示されないで、重専がどんどん許可されていくということになれば、私は非常に問題ではないかと思うのです。その点の長期取引と、これから認可していく火力発電の開発の計画、将来老朽化した石炭火力を淘汰してさらに切りかえていく、こういう長期にわたる計画というものが裏づけされておるのかどうか。これが第一点です。  それからもう一つ問題なのは、産炭地発電ということがいわれて、低品位炭火力の問題が最近大きくクローズ・アップされておるわけです。しかも九州では若松、今度の九社共同火力が決定し、すでに常磐では第三期にかかっておる、こういう形で、低品位炭火力がどんどん開発されつつあるのですが、これは大体三千五百カロリーの低品位炭火力なわけです。大体三千五百カロリーの炭をたく、こういう計画で進められておるわけですが、三千五百カロリーの炭というものは、北海道のような場合には今まで投げておったといっても差しつかえないと思うのです。ですから、三千五百カロリーの低品位炭火カというものは、即石炭消費に大きくプラスをするのではなくて、むしろ今まで投げておったボタ、これにある程度良質の炭がまじって、三千五百カロリー程度の炭が作られる。わが国石炭は非常に歩どまり率が低いわけでありまして、大体六〇%から六五%くらいが全国の平均だと思います。低品位炭火力を作ることによって歩どまりが上がる、そのことによって炭鉱経営というものが非常にプラスになる、こういう方向はむしろ低品位炭火力の場合に強調されるのであって、従来の精炭ベースでこれが低品位炭火力の場合に大幅に石炭消費の面でプラスになるということにならないと私は思うのです。それは九社の共同火力の場合でも、すでにボタ山の管理が今日行なわれて、ボタを精炭と混合されて低品位炭火力に回す、こういう計画があるわけですから、即それが石炭消費にプラスになる、こういうことにならないと私は思うのです。そういう面からいっても、この石炭火力の問題については、低品位炭火力の場合と、大体五千カロリー以上の火力の場合とは、おのずから認識を変えなければならぬ問題ではなかろうか。そうでなければ、精炭五千五百万トン・ベースは私は根本的にくずれると思うのです。そういう点について、公益の場合、火力発電の設置を許可する場合には、どういう考えで検討されておるか、お伺いしたいと思います。
  61. 大堀弘

    ○大堀政府委員 長期電力用炭確保についての裏づけといいますか、この点についてのお尋ねにつきましては、私ども現在民間業界話し合いをして、長期契約をして、政府をこの裏に立てて保障する形になっておりますが、民間ベースで長期契約の形で保障することになると思うのであります。先ほど来御質問がございました中で、数量を約束しても実際上確保ができるかどうかということでございますが、石炭火力発電所をかりに無理に作らせましても、これは現在全部混焼設備でございますから、あまり無理をしいますと、混焼率を上げて、そこで逃げてしまうということになりますので、むしろ私どもは、やはり引き取り数量を具体的に確約さしておく方が実効が上がるではないか。ことに東京、中国、関西のような中央地区で各社がどのぐらい使うかということを計画さして、それによって、かりに石炭消費がその線に達しないというおそれがありますような場合は、電力の稼働につきまして、重油専焼火力の稼働を落として石炭火力の方をベース・ロードに入れて運転を上げさせる、あるいは重油の混焼率を引き下げさして、石炭をよけいたくようにする、こういった保証をつけてでも長期契約で具体的な量を確約するということが、むしろ実効があるのではないか。ただ、設備だけ作らせましても、実は設備を作りますと、東京のように非常に建設を急いでおりますところは金もよけいかかるわけでございます。二十五、六万のものを作りますと、三十億から五十億の金が建設にかかるわけであります。しかも、コストは相当に違ってくる。キロワットアワー五十銭も違ってくる。そういうことを強制することになりますので、私どもは、できるだけやはり石炭火力にできる限りさすように指導いたしておりますけれども、全体といたしましては、やはり量を具体的に確約さして、それを引き取る義務を負わせるという方向に指導することが最も合理的ではないか、かように考えております。また、私どもはそれを実行させることが可能であると考えております。  それから、低品位炭火力につきましては、御指摘ございましたように、現在九州では電発の若松、先般来問題になっておりました西日本共同火力、これが話がまとまりまして、来月会社を設立することになっております。それから北海道につきまして、先般も御質問ございましたが、釧路火力につきましては、先般来私ども関係方面と話し合いを続けました結果、四十一年にはこれを入れるということに約束を確立いたしましたので、これも間違いなく進められると思います。常磐火力につきましても、さらに現在の計画以上に促進をいたしたいと考えております。こういった意味で、山元発電につきましては、われわれとしても最大限度に努力をいたしたいと考えております。ただ、低品位炭の問題について、実は九州で今度の火力を作りますについても、二号機をさらに作ろうかということになりますと、実際低品位炭が入手可能であろうかどうか、ものがないのじゃなかろうかという議論がありますが、その辺につきましては、やはり石炭局とも政府とも相談いたして参りたいと思います。私どもは、精炭であろうと低品位炭であろうと、電力業界石炭を使うことは全般として石炭業界合理化なり振興のために役に立つことと考えまして、そういう広い見地で努力をしようという方針でやっておるわけでございます。
  62. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これは公益事業局石炭局の両方に関係があると思いますが、火力発電の燃料別の将来的な計画、大体想定されている資料があると思います。これを具体的に提出願いたいと思いますが、よろしいですか。なお、今の質問は、まだやはり相当整理をする必要があると思いますが、大臣がおられませんから、ここでこの問題を整理することは非常に困難であります。私は、三十四国会の当委員会における論議の内容から見て、本国会では石炭関係法案もかかっているわけですから、本件については系統的に整理をして見解の統一をはかる必要があるではないか。そうでなければ、われわれが作った法律をみずからじゅうりんをする、こういう結果になると思います。従って、この点は後刻大臣が出席した委員会で再び質問をするということで、保留をしておきたいと思います。  それと、時間もありませんから若干公益事業局長にお聞きいたしたいのでありますが、今日九電力会社の小口電灯料金と小口電力料金大口電力料金、これは九社別に相当な格差があるわけです。この点、三つの料金について、最高と最低についてどういう状態になっておるか。平均は一体どういう程度になっておるか、この点ちょっとお聞きしたいと思います。
  63. 大堀弘

    ○大堀政府委員 突然のお尋ねでございますから、最近の数字はございませんが、三十四年度の数字につきまして、これは先生御指摘のように、各社別の原価計算によりまして、しかも各社別に需用内容について個別の原価計算をいたしておりますから、それぞれ電灯、電力、小口、大口料金が違っております。御質問の御趣旨がちょっとなんでございますが、大分けいたしますと、火力地帯がどっちかといいますと平均単価では高く出ております。電灯、電力の合計で、関西以西は、関西が五円六十六銭、中国が一番高いので六円四十三銭、四国が五円六十八銭、九州が、最近値上げをいたしまして少し変わっておりますが、約六円十銭かそこらになっていると思います。それに対して、東京が現在五円二十八銭、中部が五円三十八銭、この辺が中位でございます。東北、北陸は平均単価が比較的安くなっております。東北は四円三十五銭、北陸が三円六十五銭、これが総合平均単価であります。それに対して大口電力をとりますと、北陸の場合は二円六十四銭、東北が二円六十九銭、東京が三円三銭、これに対して関西以西は三円七十銭あるいは三円八十銭程度でございます。小口電力はやはり同じような傾向でございますが、全体といたしましては、高いととろが七円四、五十銭、安いところが六円程度でございます。電灯は十一円ないし十二円程度でございまして、これは各社別のその地域の送電発電原価で出ております。
  64. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今の電気料金は原価主義でやっているわけですが、私の調べたところでは、電灯料金で最高は四国の十二円六銭、最低は東京の十円八十二銭、小口電力においては、最高が北海道の八円十二銭、最低が東京の五円五十四銭、大口電力は最高が四円九銭、最低が北陸の二円五十六銭、大体こういうことになっておると思いますが、間違いありませんか。
  65. 大堀弘

    ○大堀政府委員 多少年度によって計算が違っていると思いますが、大体そういうことではないかと思います。そう違った感じではないと思います。
  66. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そういたしますと、原価主義をとっておる建前から、小口電力料金のような場合には相当の差があるわけです。これは三十三年度の統計だと思うのですが、一キロワットアワーで大体三円四十二銭程度最高と最低の差があると思うのです。北海道が最高で八円十二銭ですから、最低は東京の五円五十四銭としますと、一キロワットアワー当たり三円くらいの差があるわけです。これは相当な開きがあるわけなんです。わが国産業電力消費産業である、このように言われている。これは電気事業の歴史的な面から見て、産業発展の過程等を振り返ってもそのことがいえるわけです。しかも、このように九社に分断をされて、小口、大口電力料金の差があるわけなんですが、これがわが国産業に及ぼしている影響といいますか、あるいは電気料金のコストに占める割合といいますか、この点、一体地域的に、各産業別に今日どのようになっておるかということが、やはり将来、相当問題だと思うのです。この点資料がなければ、あらためて後刻でもいいのですが、九電力会社、しかも電力の単価が違う、これがわが国産業に及ぼす影響はどうなのか、たとえば鉄鋼でいえば、北海道の室蘭に富士鉄がある、あるいは日鋼がある、これは京浜地帯にもあるわけです。そういう業種別に電力料金の占めるコストエネルギーコストということが非常にいわれておるのですが、では一体具体的に今日わが国産業に及ぼしている影響はどういうものがあるのか、この点は今日非常に大きな問題ではないかと私は思うのです。この点具体的に資料を出していただけますか。きょうはちょっと無理だと思うのですが、いかがでしょう。
  67. 大堀弘

    ○大堀政府委員 資料は後ほど調製して出したいと思いますが、影響と申しますと、コストのうちで電力料金の占める割合ということでありますれば、大体ございます。  それから地域的の問題につきましては、これは基本的な問題になろうかと思いますが、やはり全国一本の料金がいいか、あるいは地域的に立地条件に応じた——ほかの石炭も九州は安いが阪神は高い、それと同じように、電気は発電コストが安いところは安いが高いところは高い、従いまして東北北陸あたりの立場からいいますと、ほかの方と一緒に平均されたら損だから今のままがいい、高いところは平均した方がいいという御意見がありますけれども、現在再編成して九地区に分けて、九地区別の電気料金になっておるわけでありまして、それに応じた産業配置が行なわれておる。そういう意味で理論的には別として、現状はそういう形にできておりまして、たとえば東北には従来電気化学工業が相当集まっておる。また北陸においては大口の電気を使用する産業が集まっておる、そのほか安いところに集まってくるという形が自然に出てくるかと思いますが、実態につきましては資料を調製いたしまして差し上げます。
  68. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今各産業製品の中に占める電力料金コストということが非常に問題にされておるわけです。そのことは重油専焼、石炭火力の場合も、これは燃料コストの問題が大きな問題になっておるわけですが、非常に注目すべきことだと思うのです。しかしながらある面から見ますと、相当な単価の差があるにかかわらず、競争面ではそう影響が現われていないという産業も非常に多いように私は調査をしておるわけなんです。そういたしますとあながち電力料金を極端に安くしなければならぬということだけが強調されていいのか、それともある程度資源主義的な立場に立って、日本資源消費をする。しかもそれ以外の産業でも合理化をして、その中で電力料金の占めるコストを下げて、総合的に産業政策考えていく、こういう面が、やはりもう少し深く検討されなければ重油専焼の問題あるいは今疲弊して非常に首切りが行なわれ、あるいは賃金が下げられて、将来が非常に見通しが明るくない、困難な石炭産業政策というものが、はっきり自信をもって打ち出されないような気がするのです。そういう点を配慮した一つ資料を出していただきたいということを要望いたします。  時間がありませんから、ごく一部だけの質問になりましたけれども、あとは質問を保留いたしまして終わりたいと思います。
  69. 中川俊思

    中川委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十九日金曜日午前十時より開会いたします。  散会いたします。    午後零時三十四分散会      ————◇—————